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特許7372332結晶材料をレーザ・ダメージ領域に沿って切り分けるための担体アシスト法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】結晶材料をレーザ・ダメージ領域に沿って切り分けるための担体アシスト法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20231024BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/304 601B
H01L21/304 611Z
H01L21/304 631
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2021538066
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 IB2019061409
(87)【国際公開番号】W WO2020136621
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】62/786,335
(32)【優先日】2018-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/803,333
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/274,045
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】ウルフスピード インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】WOLFSPEED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ドノフリオ マシュー
(72)【発明者】
【氏名】エドモンド ジョン
(72)【発明者】
【氏名】コン ファ-シュアン
(72)【発明者】
【氏名】バーカス エリフ
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-125390(JP,A)
【文献】特開2016-032062(JP,A)
【文献】特開2017-034255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
介在する接着材料を用いて、半導体を含む結晶材料の第1の表面に、800ミクロンよりも大きい厚さを有する剛性担体を一時的に接合することであって、前記結晶材料は、前記第1の表面に対するある深さに表面下レーザ・ダメージ領域のある基板を備え、前記剛性担体は少なくとも20GPaの弾性率を有し、前記接着材料は25℃よりも大きいガラス転移温度Tを有する、一時的に接合することと、
前記剛性担体、前記接着材料、および前記基板から除去された前記結晶材料の部分を備える接合された組立体が得られるように、前記表面下レーザ・ダメージ領域に沿ってまたは近接して前記結晶材料を破砕することであって、前記接合された組立体において、前記基板から除去された前記結晶材料の前記部分は少なくとも160μmの厚さを備える、破砕することと、
を含み、
前記結晶材料の前記破砕は、(i)前記剛性担体の少なくとも一部に曲げモーメントを付与するよう、前記基板を越えて横方向に延在する前記剛性担体の少なくとも1つのエッジに近接して機械的な力を適用すること、または、(ii)前記剛性担体が結晶材料よりも大きい熱膨張係数を有する場合に、担体を冷却すること、を含む少なくとも1つのステップにより実現される結晶材料加工方法。
【請求項2】
前記接着材料として、熱可塑性材料を含む材料が用いられる、請求項1に記載の結晶材料加工方法。
【請求項3】
前記接着材料は少なくとも35℃のガラス転移温度Tを有する、請求項1に記載の結晶材料加工方法。
【請求項4】
前記接着材料は、前記接着材料が25℃であるときに少なくとも70のショアDデュロメータ値を有する、請求項1に記載の結晶材料加工方法。
【請求項5】
前記接着材料が、前記接着材料が25℃であるときに少なくとも7MPaの弾性率を有する、請求項1に記載の結晶材料加工方法。
【請求項6】
前記接着材料は50ミクロン未満の厚さを有する、請求項1に記載の結晶材料加工方法。
【請求項7】
前記剛性担体は第1の面と前記第1の面の反対側の第2の面とを備え、
前記接着材料は前記第1の面と接触させて配置されており、
前記第2の面は接着材料を全く含まずかつ応力生成材料を全く含まない、
請求項1に記載の結晶材料加工方法。
【請求項8】
前記剛性担体として、結晶材料を含む部材が用いられる、請求項1に記載の結晶材料加工方法。
【請求項9】
25℃において前記剛性担体の熱膨張係数(CTE)は前記基板のCTEよりも大きい、
請求項1に記載の結晶材料加工方法。
【請求項10】
前記破砕は、前記剛性担体または前記基板のうちの少なくとも一方に超音波エネルギーを適用することを含む少なくとも1つのステップにより実現される、請求項1に記載の結晶材料加工方法。
【請求項11】
前記剛性担体の少なくとも一部の最大長さまたは最大幅のうちの少なくとも一方は、前記基板の対応する最大長さまたは最大幅を上回っている、請求項1に記載の結晶材料加工方法。
【請求項12】
前記結晶材料の前記部分が前記接合された組立体の一部のままである間に、前記結晶材料の前記部分に対して少なくとも1つの追加の加工ステップを実行することを更に含む、請求項1に記載の結晶材料加工方法。
【請求項13】
前記破砕の前に、前記第1の表面の反対側の前記結晶材料の第2の表面に、少なくとも20GPaの弾性率を有する追加の剛性担体を接合することを更に含む、請求項1に記載の結晶材料加工方法。
【請求項14】
前記結晶材料として、SiCを含む材料が用いられる、請求項1に記載の結晶材料加工方法。
【請求項15】
前記接着材料を用いた結晶材料の前記第1の表面への前記剛性担体の前記一時的な接合の前に、(i)前記結晶材料の前記第1の表面、または(ii)前記剛性担体の隣接する表面のうちの少なくとも一方を、粗化、テクスチャ化、および/またはエッチングすることを更に含む、請求項1に記載の結晶材料加工方法。
【請求項16】
前記基板から除去された前記結晶材料の前記部分は、少なくとも1つのエピタキシャル層をその上に成長させるように構成されている自立できるウエハを備える、請求項1に記載の結晶材料加工方法。
【請求項17】
前記基板から除去された前記結晶材料の前記部分は、その上に成長させた少なくとも1つのエピタキシャル層を含むデバイス・ウエハを備える、請求項1に記載の結晶材料加工方法。
【請求項18】
半導体を含む結晶材料の第1の表面に第1の結晶担体を接合することであって、前記結晶材料は、第1の表面に対するある深さに表面下レーザ・ダメージ領域のある基板を備える、接合することと、
前記結晶材料の第2の表面に第2の結晶担体を接合することと、
前記接合するステップの後で、前記第1の結晶担体と前記基板から除去された前記結晶材料の部分とを備える接合された組立体が得られるように、前記表面下レーザ・ダメージ領域に沿ってまたは近接して前記結晶材料を破砕することとであって、前記接合された組立体において、前記基板から除去された前記結晶材料の前記部分は少なくとも160μmの厚さを備える、粉砕することと、
を含む、結晶材料加工方法。
【請求項19】
前記第1の結晶担体を前記結晶材料の前記第1の表面に前記接合すること、または前記第2の結晶担体を前記結晶材料の前記第2の表面に前記接合することのうちの、少なくとも一方は、陽極接合を含む少なくとも1つのステップにより実現される、請求項18に記載の結晶材料加工方法。
【請求項20】
前記第1の結晶担体を前記結晶材料の前記第1の表面に前記接合すること、または前記第2の結晶担体を前記結晶材料の前記第2の表面に前記接合することのうちの、少なくとも一方は、接着材料を利用する接着剤接合を含む少なくとも1つのステップにより実現される、請求項18に記載の結晶材料加工方法。
【請求項21】
前記第1の結晶担体は第1の面と前記第1の面の反対側の第2の面とを備え、
前記接着材料は前記第1の面と接触させて配置されており、
前記第2の面は接着材料を全く含まずかつ応力生成材料を全く含まない、
請求項20に記載の結晶材料加工方法。
【請求項22】
前記接着材料は、以下の特性(a)から(c):(a)前記接着材料として、熱可塑性材料を含む材料が用いられる、(b)前記接着材料が、前記接着材料が25℃であるときに少なくとも70のショアDデュロメータ値を有する、または(c)前記接着材料が、前記接着材料が25℃であるときに少なくとも7MPaの弾性率を有する、のうちの少なくとも1つを含む、請求項20に記載の結晶材料加工方法。
【請求項23】
半導体を含む結晶材料の第1の表面に剛性担体を接合することであって、前記結晶材料は、前記第1の表面に対するある深さに表面下レーザ・ダメージ領域のある基板を備え、前記剛性担体は、850ミクロンよりも大きい厚さを備え、且つ、少なくとも20GPaの弾性率を有し、前記剛性担体は結晶担体である、接合することと、
前記剛性担体および前記基板から除去された前記結晶材料の部分を備える接合された組立体が得られるように、前記表面下レーザ・ダメージ領域に沿ってまたは近接して前記結晶材料を破砕することであって、前記接合された組立体において、前記基板から除去された前記結晶材料の前記部分は少なくとも160μmの厚さを備える、粉砕することと、
を含む、結晶材料加工方法。
【請求項24】
前記剛性担体を前記結晶材料に前記接合することは、前記剛性担体と前記結晶材料の間に配置されている接着材料を利用する接着剤接合を含む少なくとも1つのステップにより実現される、請求項23に記載の結晶材料加工方法。
【請求項25】
前記接着材料は、以下の特性(a)から(d):(a)前記接着材料が25℃よりも大きいガラス転移温度Tを有する、(b)前記接着材料が前記接着材料が25℃であるときに少なくとも70のショアDデュロメータ値を有する、(c)前記接着材料が前記接着材料が25℃であるときに少なくとも7MPaの弾性率を有する、または(d)前記接着材料として、熱可塑性材料を含む材料が用いられる、のうちの少なくとも1つを含む、請求項24に記載の結晶材料加工方法。
【請求項26】
前記結晶材料の前記部分が前記接合された組立体の一部のままである間に、前記結晶材料の前記部分に対して少なくとも1つの追加の加工ステップを実行することを更に含む、請求項23に記載の結晶材料加工方法。
【請求項27】
前記破砕の前に、前記第1の表面の反対側の前記結晶材料の第2の表面に、少なくとも20GPaの弾性率を有する追加の剛性担体を接合することを更に含む、請求項23に記載の結晶材料加工方法。
【請求項28】
半導体を含む結晶材料の第1の表面に剛性担体を接合することであって、前記結晶材料は、前記第1の表面に対するある深さに表面下レーザ・ダメージ領域のある基板を備え、前記剛性担体は、少なくとも20GPaの弾性率を有し、前記剛性担体と前記基板との間にCTE不整合を提供するため、25℃において前記剛性担体の熱膨張係数(CTE)は前記基板のCTEよりも大きい、接合することと、
前記剛性担体と、前記基板から除去された前記結晶材料の部分と、を備える接合された組立体が得られるように、前記剛性担体と前記基板との間の前記CTE不整合により生じた力により、前記表面下レーザ・ダメージ領域に沿ってまたは近接して前記結晶材料を破砕することであって、前記接合された組立体において、前記基板から除去された前記結晶材料の前記部分は少なくとも160μmの厚さを備える、粉砕することと、
を含む、結晶材料加工方法。
【請求項29】
前記剛性担体は、第1の面と前記第1の面の反対側の第2の面とを備え、
前記第1の面は、前記結晶材料の前記第1の表面に近接し、
前記第2の面は、応力生成材料を全く含まない、請求項28に記載の結晶材料加工方法。
【請求項30】
前記接合された組立体において、前記基板から除去された前記結晶材料の前記部分は少なくとも240μmの厚さを備える、請求項1に記載の結晶材料加工方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の記載]
本願は、2019年3月5日に出願された米国特許出願第16/274,045号、2019年2月8日に出願された米国仮特許出願第62/803,333号、および2018年12月29日に出願された米国仮特許出願第62/786,335号に対する優先権を主張し、上記出願の開示の全体がこれにより参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本開示は結晶材料を加工するための方法に関し、より詳細には、表面下レーザ・ダメージのあるブールまたはウエハなどの基板から、結晶材料の比較的薄い層を切り分けるまたは除去するための、担体アシスト法に関する。
【0003】
[背景]
マイクロ電子、光電子、およびマイクロ加工の様々な用途において、様々な有用なシステムを製作するための開始構造として結晶材料の薄層が必要とされている。結晶材料の大径の結晶インゴットから薄層(例えば、ウエハ)を切り出すための従来の方法には、ワイヤ・ソーの使用が含まれている。ワイヤ・ソーイング技術は、シリコン、サファイア、および炭化ケイ素などの様々な結晶材料に適用されている。ワイヤ・ソー・ツールは、1つまたは多数のガイド・ローラの溝に通される極細の鋼線(典型的には直径0.2mm以下)を含む。2つのスライシング方法が存在する、すなわち、遊離砥粒スライシングと固定砥粒スライシングである。遊離砥粒スライシングは高速移動中の鋼線にスラリー(典型的には油中に砥粒を懸濁させたもの)を付着させることを含み、ワイヤと被加工物の間で砥粒が転動する結果インゴットが切断される。残念ながらスラリーの環境的影響は無視できない。そのような影響を低減するために、固定砥粒スライシング法としてダイヤモンド砥粒を固定したワイヤを使用する場合があるが、これには水溶性冷却液(スラリーではない)しか必要とされない。高効率の平行スライシングによって、単一のスライシング手順で多数のウエハを生産することが可能になる。図1は、ローラ4A~4Cの間に延び、インゴット2をインゴット2の端面6と略平行な面を各々有する複数の薄い切片(例えば、ウエハ8A~8G)へと同時にソーイングするように配置されている、平行なワイヤ区域3を含む、従来のワイヤ・ソー・ツール1を示す。ソーイング工程中、ローラ4A~4Cによって支持されたワイヤ区域3を、インゴット2の下にあるホルダ7に向かって下向き方向5に押すことができる。端面6がインゴット2の結晶学上のc面と平行であり、ワイヤ区域3がインゴット2を端面6と平行にソーイングした場合、結果的に得られる各ウエハ8A~8Gは、結晶学上のc面と平行な「オンアクシス(on-axis)」端面6’を有することになる。
【0004】
結晶学上のc面と平行ではない端面を有する、微斜面(オフカットまたは「オフアクシス(off-axis)」としても知られる)ウエハを作り出すこともまた可能である。他の材料(例えば、AlNおよび他の第III族窒化物)の高品質なエピタキシャル成長のための成長基板として、4度のオフカットを有する(例えば、SiCの)微斜面ウエハが多くの場合採用される。微斜面ウエハの生産は、インゴットをc軸から離れる方向に成長させ(例えば、微斜面種材料の上に成長させ)このインゴットをインゴット側壁)に対して垂直にソーイングすることによって、または、インゴットをオンアクシス種材料から開始して成長させこのインゴットをインゴット側壁に対して垂直な方向から離れていく角度でソーイングすることによって、のいずれかで行うことができる。
【0005】
結晶材料のワイヤ・ソーイングには様々な限界が存在している。切断ごとの除去された材料の幅に基づくカーフ・ロスはソー切断において不可避のものであり、これは結晶材料のかなりの損失を表している。ワイヤ・ソー切断がウエハに加える応力は比較的高く、その結果ボウおよびワープ特性はゼロではなくなる。単一のブール(またはインゴット)の加工時間は非常に長く、またワイヤ破断などの事象によって加工時間が延びる、かつ望まれない材料損失につながる可能性がある。ウエハの切断表面上のチッピングおよびクラッキングによって、ウエハ強度が低下する可能性がある。ワイヤ・ソーイング工程の終了時には、得られたウエハからデブリを取り除かなければならない。
【0006】
高い摩耗耐性(ならびにダイヤモンドおよび窒化ホウ素と同程度の硬度)を有する炭化ケイ素(SiC)の場合、ワイヤ・ソーイングにはかなりの時間およびリソースが必要となる場合があり、このためかなりの製造コストが生じ得る。SiC基板は、望ましいパワー・エレクトロニクス・デバイス、無線周波デバイス、および光電子デバイスの製作を可能にする。SiCはポリタイプと呼ばれる異なる多くの結晶構造で現れ、特定のポリタイプ(例えば、4H-SiCおよび6H-SIC)は六方晶構造を有する。
【0007】
図2は、4H-SiCなどの六方晶用の座標系を示す斜視結晶面図であり、c面(エピタキシャル結晶成長の[0001](垂直)方向に対応する(0001)面)は、m面((1-100)面)およびa面((11-20)面)の両方に対して垂直であり、(1-100)面は[1-100]方向に対して垂直であり、(11-20)面は[11-20]方向に対して垂直である。図3は、c面と非平行な微斜面9を示す、六方晶の第2の斜視結晶面図であり、(微斜面9と直交する)ベクトル10が、[0001]方向から離れる方に傾斜角βだけ傾斜しており、傾斜角βは[11-20]方向に向かって(僅かに)傾斜している。図4Aは、c面((0001)面)に対する微斜面ウエハ11Aの配向を示す斜視ウエハ配向図であり、(ウエハ面9Aと直交する)ベクトル10Aは[0001]方向から離れる方に傾斜角βだけ傾斜している。この傾斜角βは、(0001)平面とウエハ面9Aの投影12Aの間に跨る直交傾斜(orthogonal tilt)(または配向ずれの角度)βと等しい。図4Bは、微斜面ウエハ11Aを画成する元になったインゴット14A(例えば、(0001)面と平行な端面6Aを有するオンアクシス・インゴット)の一部に重ね合わせた、微斜面ウエハ11Aの簡略化した断面図である。図4Bは、微斜面ウエハ11Aのウエハ面9Aのアライメントが(0001)面から傾斜角βだけずれていることを示す。
【0008】
図5は、(例えば、(0001)面(c面)と平行で[0001]方向に対して垂直な)上面26を含み、(11-20)平面に対して垂直で[11-20]方向と平行な(長さLを有する)プライマリ・フラット(primary flat)28を含む、(直径Dを有する)略円形のエッジ27を横方向の境界とする、例示のSiCウエハ25の上面平面図である。
【0009】
SiCの作製および加工に関連する困難さに起因して、SiCデバイス・ウエハのコストは様々な他の結晶材料ウエハと比較して高い。SiCのワイヤ・ソーイングから生じる典型的なカーフ・ロスはウエハあたり約250ミクロン以上になる場合があり、ワイヤ・ソーイング工程から得られるウエハの厚さがおおよそ350ミクロンであり、これは、その後に最終用途に応じて約100から180ミクロンの最終厚さまで(研削によって)薄化されることを考慮すると、全く無視できないものである。ウエハを約350ミクロンよりも薄くスライスすることは、ワイヤ・ソーイングおよびデバイス製作の問題を考慮するとこれまで現実的ではなかった。
【0010】
ワイヤ・ソーイングに関連する限界に対処する試みとして、バルク結晶から結晶材料の薄層を除去するための代替の技法が開発されてきた。制御スポーリング技術と呼ばれる一
技法は、基板の表面(例えば、Ge(001))に引っ張りストレッサ層(例えば、ニッケル)を成長させ、基板のエッジ付近にクラックを導入し、クラックを(例えば、テープなどの可撓性のハンドル層を使用して)表面に沿った単一の破砕前縁として機械的に導くことによって機能する(Bedellら、J. Phys. D: Appl. Phys. 46 (2013)を参照)。しかしながら、そのような技法は結果的に、非常に高い応力の適用および除去される層の過剰なボウイングをもたらす場合がある。より大きい結晶からの炭化ケイ素の層の除去を含む別の技法が、Kimら、「4H-SiC wafer slicing by using femtosecond laser double pulses」、Optical Materials Express 2450頁、vol. 7、no. 7(2017年)に記載されている。そのような技法は、レーザ・パルスを炭化ケイ素に衝突させて表面下ダメージを誘起し、続いてロック用治具に結晶を接着し引っ張り力を加えて表面下ダメージ・ゾーンに沿った破砕を生じさせることで、レーザ書き込みトラックを形成することを含む。レーザを使用して材料の特定のエリアを弱化し、続いてこれらのエリア間で破砕を行うことによって、レーザ走査時間が短くなる。しかしながら、上記の破砕技法を、インゴットから薄いウエハを破損させることなく確実に除去するように適用できるか、および/または工業向けの体積にまで拡張できるかには、疑問の余地がある。結晶材料のレーザが誘起した表面下ダメージ・ゾーンに沿って破砕を生じさせるための当技術分野で知られている別の技法には、結晶材料に超音波エネルギーを適用することが含まれるが、超音波破砕は必要なレーザ・ダメージの程度がより高く、薄いウエハに適用すると結果的にウエハ破損率がより高くなる可能性があるため、そのような方法で薄い(例えば、350ミクロン以下の)ウエハを得ることに関する信頼性には、疑問が呈されている。
【0011】
米国特許出願公開第2010/0289189A1号に開示されている別の技法は、固体状態の材料の上にポリマー層(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS))を適用することと、(最初は300℃以下の温度である)固体状態の材料およびポリマー層を室温未満の温度(または約-20℃未満の温度)に曝すことと、を含む。そのような冷却によってポリマー層が収縮し、このことによって固体状態の材料に機械的応力が誘起され、これによって材料のある深さの平面に沿って材料が破砕される。PDMSは架橋ポリマーであり、その剛直性は、架橋密度を異ならせることによって(例えば、硬化剤対プレポリマーの重量比を変更することによって、および硬化条件を変更することによって)制御可能である。PDMSのヤング率値は、その機械的特性を向上させるための取り組みが成されている場合であっても、約4MPa未満の範囲内であることが報告されている。例えば、Kimら、J. Micromech. Microeng. 23 (2013) 095024を参照されたい。
【0012】
バルク結晶から結晶材料の薄層を除去するための更なる技法が、米国特許出願公開第2018/0126484A1号に開示されている。レーザ放射が固体状態の材料に当てられて脱離ゾーンまたは複数の部分的脱離ゾーンが作り出され、続いてポリマー受け入れ層(例えば、PDMS)が形成され、材料の残りの部分から脱離ゾーンに沿って固体状態の材料の薄層を分離させる機械的応力を誘起するための、(任意選択的に高速回転と組み合わせた)冷却が行われる。
【0013】
ポリマー層界面破砕を利用するこれらの技法の1つの欠点は、得られるウエハが望ましくない高レベルのボウイングを呈し得ることである。ポリマー層界面破砕を利用する技法の別の欠点は、固体状態の材料上にポリマー層を適用し硬化させるのにかなりの時間(例えば、30分以上)を要し、また得られるウエハからポリマー材料を除去するために追加の時間を要することである。ポリマー層を必要とする技法の別の限界は、そのようなポリマー層が、精確な寸法取りが要求され得る次のウエハ加工ステップに耐えるのに適さない場合のあることである。
【0014】
バルク結晶から結晶材料の薄層を除去するための更に別の技法が、米国特許出願公開第2018/0243944A1号に開示されている。クラック進路を明示するためにドナー基板にレーザ放射が当てられ、ドナー基板に接合層を介して担体基板(すなわち、800ミクロン未満の厚さを有する)が接合され、担体基板上に応力生成層(例えば、PDMS層)が設けられ、応力生成層に熱負荷がかかると(すなわち、冷媒、特に液体窒素で冷却されると)担体基板および接合層を通して応力が伝達されて、ドナー基板に応力が生じ、この結果、ドナー基板から固体層(およびそこに接合された担体基板)を除去するための、クラック進路上に伝播するクラックが発生する。ドナー基板および担体基板は、好ましくは同じ材料から成るが、様々な材料からなっていてもよい。応力生成層からドナー基板へと応力を伝播できるためには、担体基板の最大厚さが制限されていることが必要であるように見える。上記した技法の1つの限界は、ドナー基板を覆うように少なくとも3つの層を設ける必要のあることである。別の限界は、この技法が非常に低い(例えば、液体窒素)温度での熱誘起の冷却に限定されるように見えることである。更に別の限界は、担体基板の最大厚さが800ミクロンを上回ることができず、このことによりドナー基板からの分離後の接合された組立体の剛性が制限される可能性のあることである。また更に別の限界は、担体基板を再利用するには、その両面から組成の異なる残留材料(すなわち、接合層の材料および応力生成層の材料)を除去する必要のあることである。
【0015】
したがって、当技術分野では、従来の方法に関連する問題に対処する、基板から結晶材料の比較的薄い層を切り分けるまたは除去するための改善された方法が、依然として模索されている。
【0016】
[発明の概要]
本開示は、表面に対して非ゼロの深さに表面下レーザ・ダメージのある結晶材料の表面に担体(例えば、剛性担体)を結合し、その後で表面下レーザ・ダメージ領域に沿って結晶材料を破砕することを含む、結晶材料加工方法に関し、様々な態様をとる。そのような破砕によって、担体と基板から除去された結晶材料の一部とを含む、接合された組立体が得られる。この破砕は、担体を覆うように配置される別個の応力生成層を必要とすることなく行われる。インゴットから結晶材料の薄い層を連続的に除去してウエハを形成するために、上記したステップを繰り返すことができる。特定の実施形態では、担体は結晶のような特性を有してもよい。特定の実施形態では、剛性担体を接着剤接合によって結晶材料の表面に結合することができ、剛性担体は800ミクロンよりも大きい厚さを有することができ、剛性担体は、少なくとも20GPa(または本明細書で開示する別の閾値)の弾性率を有し得る。特定の実施形態では、接着材料は、25℃(または本明細書で指定する別の閾値)よりも大きいガラス転移温度Tを有する。基板から除去された結晶材料の一部はウエハを具現化し得るもので、この部分が接合された組立体の一部である間に更なる加工ステップを受けることのできる状態である。特定の実施形態では、破砕前に基板の両面に第1および第2の剛性担体が接合され得る。特定の実施例では、結晶材料の破砕は、(i)担体の少なくとも一部に曲げモーメントを付与するために、担体の少なくとも1つのエッジに近接して、(例えば、任意選択的に1つまたは複数の箇所に局所化された)機械的な力を適用すること、(ii)担体が結晶材料よりも大きい熱膨張係数を有する場合に、担体を冷却すること、および/または(iii)結晶材料に超音波エネルギーを適用すること、によって促進され得る。
【0017】
一態様では、本開示は、介在する接着材料を用いて結晶材料の表面に剛性担体を一時的に接合することであって、結晶材料は、第1の表面に対するある深さに表面下レーザ・ダメージ領域のある基板を備え、接着材料は25℃(または本明細書で指定する別の閾値)よりも大きいガラス転移温度Tを有する、一時的に接合すること、を含む、結晶材料加工方法、に関する。方法は、剛性担体と接着材料と基板から除去された結晶材料の一部と
を備える接合された組立体が得られるように、表面下レーザ・ダメージ領域に沿ってまたは近接して結晶材料を破砕することを更に含む。
【0018】
特定の実施形態では、剛性担体は800ミクロンよりも大きい厚さを有し、剛性担体は少なくとも20GPaの弾性率を有し、接合された組立体において、基板から除去された結晶材料の一部は、少なくとも160μmの厚さを備える。
【0019】
特定の実施形態では、接着材料は熱可塑性材料を含む。特定の実施形態では、接着材料は、少なくとも35℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、または本明細書で指定する別の閾値の、ガラス転移温度Tを有する。
【0020】
特定の実施形態では、接着材料は、接着材料が25℃であるときに少なくとも約70のショアDデュロメータ値を有する。特定の実施形態では、接着材料は、接着材料が25℃であるときに少なくとも約7MPaの弾性率を有する。
【0021】
特定の実施形態では、剛性担体は800ミクロンよりも大きい厚さを有する。特定の実施形態では、剛性担体は、少なくとも20GPa、少なくとも100GPa、または本明細書で指定する別の閾値の弾性率を有する。特定の実施形態では、剛性担体は結晶材料を含む。
【0022】
特定の実施形態では、剛性担体は第1の面と第1の面の反対側の第2の面とを備え、接着材料は第1の面と接触させて配置されており、第2の面は接着材料を全く含まずかつ応力生成材料を全く含まない。
【0023】
特定の実施形態では、25℃において、剛性担体の熱膨張係数(CTE)は基板のCTEよりも大きい。特定の実施形態では、破砕は、表面下レーザ・ダメージ領域に沿ったまたは近接した結晶材料の破砕を促進するために、少なくとも剛性担体を冷却することを含む。
【0024】
特定の実施形態では、破砕することは、超音波エネルギーを剛性担体または基板の少なくとも一方に適用することを含む。
【0025】
特定の実施形態では、剛性担体の少なくとも一部の最大長さまたは最大幅のうちの少なくとも一方は、基板の対応する最大長さまたは最大幅を上回っている。特定の実施形態では、基板は、当該基板の少なくとも1つのエッジに沿ってノッチまたはフラットを備え、剛性担体の少なくとも1つのエッジの少なくとも一部は、ノッチまたはフラットを越えて横方向に延在する。特定の実施形態では、破砕は剛性担体の少なくとも1つのエッジに近接して機械的な力を適用することを含み、機械的な力は剛性担体の少なくとも一部に曲げモーメントを付与するように構成されている。
【0026】
特定の実施形態では、結晶材料は六方晶構造を含み、曲げモーメントは、六方晶構造の<11-20>方向に対する垂直方向から±5度以内に配向される。
【0027】
特定の実施形態では、方法は、結晶材料の一部が接合された組立体の一部のままである間に、結晶材料の一部に対して少なくとも1つの追加の加工ステップを実行することを更に含む。
【0028】
特定の実施形態では、方法は、上記破砕の前に、第1の表面の反対側の結晶材料の第2の表面に追加の剛性担体を接合することを更に含む。
【0029】
特定の実施形態では、表面下レーザ・ダメージ領域は、複数の実質的に平行な表面下レーザ・ダメージ線を備える。
【0030】
特定の実施形態では、方法は、接合された組立体から結晶材料の一部を除去することを更に含む。
【0031】
特定の実施形態では、結晶材料はSiCを含む。
【0032】
特定の実施形態では、方法は、接着材料を用いた結晶材料の第1の表面への剛性担体の一時的な接合の前に、(i)結晶材料の第1の表面、または(ii)剛性担体の隣接する表面のうちの少なくとも一方を、粗化、テクスチャ化、および/またはエッチングすることを更に含む。
【0033】
特定の実施形態では、結晶材料は、表面下レーザ・ダメージ領域に沿ってまたは近接して結晶材料を破砕する前に、少なくとも500ミクロンの厚さを備える。
【0034】
特定の実施形態では、基板から除去された結晶材料の一部は、少なくとも1つのエピタキシャル層をその上に成長させるように構成されている、自立できるウエハを含む。特定の実施形態では、基板から除去された結晶材料の一部は、その上に成長させた少なくとも1つのエピタキシャル層を含むデバイス・ウエハを備える。
【0035】
別の態様では、本開示は、結晶材料の第1の表面に第1の結晶担体を接合することであって、結晶材料は、第1の表面に対するある深さに表面下レーザ・ダメージ領域のある基板を備える、接合することと、結晶材料の第2の表面に第2の結晶担体を接合することと、接合するステップの後で、第1の結晶担体および基板から除去された結晶材料の一部を備える接合された組立体が得られるように、表面下レーザ・ダメージ領域に沿ってまたは近接して結晶材料を破砕することと、を含む、結晶材料加工方法、に関する。
【0036】
特定の実施形態では、第1の結晶担体または第2の結晶担体のうちの少なくとも一方は、少なくとも100GPaの弾性率を備える。特定の実施形態では、第1の結晶担体または第2の結晶担体のうちの少なくとも一方は、800ミクロンよりも大きい厚さを備える。
【0037】
特定の実施形態では、25℃において、第1の結晶担体の熱膨張係数(CTE)は基板のCTEよりも大きく、破砕は、表面下レーザ・ダメージ領域に沿ったまたは近接した結晶材料の破砕を促進するために少なくとも第1の結晶材料担体を冷却することを含む。
【0038】
特定の実施形態では、表面下レーザ・ダメージ領域に沿ったまたは近接した結晶材料の破砕は、第1の結晶担体または基板のうちの少なくとも一方に超音波エネルギーを適用することを含む。
【0039】
特定の実施形態では、第1の結晶担体の少なくとも一部の最大長さまたは最大幅のうちの少なくとも一方は、基板の対応する最大長さまたは最大幅を上回っている。
【0040】
特定の実施形態では、基板は、当該基板の少なくとも1つのエッジに沿ってノッチまたはフラットを備え、第1の結晶担体の少なくとも1つのエッジの少なくとも一部は、ノッチまたはフラットを越えて横方向に延在する。
【0041】
特定の実施形態では、表面下レーザ・ダメージ領域に沿ったまたは近接した結晶材料の破砕は、第1の結晶担体の少なくとも1つのエッジに近接して機械的な力を適用すること
を含み、機械的な力は、第1の結晶担体の少なくとも一部に曲げモーメントを付与するように構成される。特定の実施形態では、結晶材料は六方晶構造を含み、曲げモーメントは、基板の表面と平行な六方晶構造の<11-20>方向に対する垂直方向から±5度以内に配向される。
【0042】
特定の実施形態では、第1の結晶担体を結晶材料の第1の表面に接合すること、または第2の結晶担体を結晶材料の第2の表面に接合することのうちの、少なくとも一方は、陽極接合を含む。
【0043】
特定の実施形態では、第1の結晶担体を結晶材料の第1の表面に接合すること、または第2の結晶担体を結晶担体の第2の表面に接合することのうちの、少なくとも一方は、接着材料を利用する接着剤接合を含む。
【0044】
特定の実施形態では、接着材料は、25℃よりも大きいガラス転移温度Tを有する。
【0045】
特定の実施形態では、第1の結晶担体は第1の面と第1の面の反対側の第2の面とを備え、接着材料は第1の面と接触させて配置されており、第2の面は接着材料を全く含まずかつ応力生成材料を全く含まない。
【0046】
特定の実施形態では、接着材料は熱可塑性材料を含む。
【0047】
特定の実施形態では、接着材料は、接着材料が25℃であるときに少なくとも約70のショアDデュロメータ値を有する。
【0048】
特定の実施形態では、接着材料は、接着材料が25℃であるときに少なくとも約7MPaの弾性率を有する。
【0049】
特定の実施形態では、方法は、結晶材料の一部が接合された組立体の一部のままである間に、結晶材料の一部に対して少なくとも1つの追加の加工ステップを実行することを更に含む。
【0050】
特定の実施形態では、表面下レーザ・ダメージ領域は、複数の実質的に平行な表面下レーザ・ダメージ線を備える。
【0051】
特定の実施形態では、方法は、接合された組立体から結晶材料の一部を除去することを更に含む。
【0052】
特定の実施形態では、結晶材料はSiCを含む。
【0053】
特定の実施形態では、基板から除去された結晶材料の一部は、少なくとも1つのエピタキシャル層をその上に成長させるように構成されている、自立できるウエハを備える。特定の実施形態では、基板から除去された結晶材料の一部は、その上に成長させた少なくとも1つのエピタキシャル層を含むデバイス・ウエハを備える。
【0054】
別の態様では、本開示は、結晶材料の第1の表面に剛性担体を接合することであって、結晶材料は、第1の表面に対するある深さに表面下レーザ・ダメージ領域のある基板を備え、剛性担体の少なくとも1つのエッジの少なくとも一部は、対応する基板の少なくとも1つのエッジを越えて横方向に延在する、接合すること、を含む、結晶材料加工方法、に関する。方法は、剛性担体および基板から除去された結晶材料の一部を含む接合された組立体を得る目的で、剛性担体の少なくとも一部に曲げモーメントを付与し表面下レーザ・
ダメージ領域に沿ってまたは近接して結晶材料を破砕するために、剛性担体の少なくとも1つのエッジに近接して機械的な力を適用すること、を更に含む。
【0055】
特定の実施形態では、剛性担体の少なくとも一方のエッジに近接して機械的な力を適用することは、剛性担体の少なくとも一方のエッジに近接した単一の場所において、機械的な力を局所的に適用することから成る。
【0056】
特定の実施形態では、剛性担体の少なくとも1つのエッジに近接して機械的な力を適用することは、剛性担体の少なくとも1つのエッジに近接した複数の空間的に隔離された場所において、機械的な力を局所的に適用することと、剛性担体の中央の場所において対向する機械的な力を作用させることと、を含む。
【0057】
特定の実施形態では、剛性担体の少なくとも1つのエッジの少なくとも一部は、対応する基板の少なくとも1つのエッジを越えて、横方向に少なくとも約100ミクロン、または少なくとも約500ミクロン(または本明細書で開示する別の距離閾値だけ)延在する。
【0058】
特定の実施形態では、基板は、当該基板の少なくとも1つのエッジに沿ってノッチまたはフラットを備え、剛性担体の少なくとも1つのエッジの少なくとも一部は、ノッチまたはフラットを越えて横方向に延在する。
【0059】
特定の実施形態では、結晶材料は六方晶構造を含み、曲げモーメントは、基板の表面と平行な六方晶構造の<11-20>方向に対する垂直方向から±5度以内に配向される。
【0060】
特定の実施形態では、剛性担体を結晶材料の表面に接合することは、剛性担体と結晶材料の表面の間に配置されている接着材料を利用する接着剤接合を含む。
【0061】
特定の実施形態では、方法は、機械的な力の適用の前に、第1の表面の反対側の結晶材料の第2の表面に追加の剛性担体を接合することを更に含む。特定の実施形態では、機械的な力の適用は、第1の剛性担体と追加の剛性担体の間の分離を大きくするために、第1の剛性担体と追加の剛性担体の間に局所化されたこじり力を作用させることを含む。
【0062】
特定の実施形態では、基板から除去された結晶材料の一部は、少なくとも1つのエピタキシャル層をその上に成長させるように構成されている、自立できるウエハを備える。特定の実施形態では、基板から除去された結晶材料の一部は、その上に成長させた少なくとも1つのエピタキシャル層を含むデバイス・ウエハを備える。
【0063】
別の態様では、本開示は、結晶材料の第1の表面に剛性担体を接合することであって、結晶材料は、第1の表面に対するある深さに表面下レーザ・ダメージ領域のある基板を備え、剛性担体は、850ミクロンよりも大きい厚さを備え、以下の特徴(i)または(ii):担体が結晶担体を含む、または(ii)担体が少なくとも20GPaの弾性率を有する、のうちの少なくとも一方を備える、接合することと、剛性担体および基板から除去された結晶材料の一部を備える接合された組立体が得られるように、表面下レーザ・ダメージ領域に沿ってまたは近接して結晶材料を破砕することと、を含む、結晶材料加工方法、に関する。
【0064】
特定の実施形態では、剛性担体は結晶担体を含む。特定の実施形態では、担体は、少なくとも20GPa、少なくとも100GPa、または本明細書で指定する別の閾値の弾性率を有する。特定の実施形態では、剛性担体を結晶材料に接合することは、剛性担体と結晶材料の間に配置されている接着材料を利用する接着剤接合を含む。
【0065】
特定の実施形態では、接着材料は、25℃よりも大きいガラス転移温度Tを有する。特定の実施形態では、接着材料は、接着材料が25℃であるときに少なくとも約70のショアDデュロメータ値を有する。特定の実施形態では、接着材料は、接着材料が25℃であるときに少なくとも約7MPaの弾性率を有する。
【0066】
特定の実施形態では、剛性担体は第1の面と第1の面の反対側の第2の面とを備え、接着材料は第1の面と接触させて配置されており、第2の面は接着材料を全く含まずかつ応力生成材料を全く含まない。
【0067】
特定の実施形態では、25℃において、剛性担体の熱膨張係数(CTE)は基板のCTEよりも大きい。
【0068】
特定の実施形態では、破砕は、表面下レーザ・ダメージ領域に沿ったまたは近接した結晶材料の破砕を促進するために、少なくとも剛性担体を冷却することを含む。
【0069】
特定の実施形態では、破砕することは、超音波エネルギーを剛性担体または基板の少なくとも一方に適用することを含む。
【0070】
特定の実施形態では、剛性担体の少なくとも一部の最大長さまたは最大幅のうちの少なくとも一方は、基板の対応する最大長さまたは最大幅を上回っている。特定の実施形態では、基板は、当該基板の少なくとも1つのエッジに沿ってノッチまたはフラットを備え、剛性担体の少なくとも1つのエッジの少なくとも一部は、ノッチまたはフラットを越えて横方向に延在する。
【0071】
特定の実施形態では、破砕は剛性担体の少なくとも1つのエッジに近接して機械的な力を適用することを含み、機械的な力は剛性担体の少なくとも一部に曲げモーメントを付与するように構成されている。
【0072】
特定の実施形態では、結晶材料は六方晶構造を含み、曲げモーメントは、六方晶構造の<11-20>方向に対して垂直な方向から±5度以内に配向されている。
【0073】
特定の実施形態では、方法は、結晶材料の一部が接合された組立体の一部のままである間に、結晶材料の一部に対して少なくとも1つの追加の加工ステップを実行することを更に含む。
【0074】
特定の実施形態では、方法は、上記破砕の前に、第1の表面の反対側の結晶材料の第2の表面に追加の剛性担体を接合することを更に含む。特定の実施形態では、方法は、接合された組立体から結晶材料の一部を除去することを更に含む。
【0075】
特定の実施形態では、結晶材料はSiCを含む。
【0076】
特定の実施形態では、基板から除去された結晶材料の一部は、少なくとも1つのエピタキシャル層をその上に成長させるように構成されている、自立できるウエハを備える。
【0077】
特定の実施形態では、基板から除去された結晶材料の一部は、その上に成長させた少なくとも1つのエピタキシャル層を含むデバイス・ウエハを備える。
【0078】
別の態様では、本開示は、非垂直なエッジ・プロファイルを排除し垂直なエッジ・プロファイルを形成するために、結晶材料の厚いウエハのエッジを研削することであって、厚
いウエハは、第1の表面、第1の表面の反対側の第2の表面、および第1の表面上にまたはこれを覆うように成長させた少なくとも1つのエピタキシャル層を含み、第1の剛性担体と少なくとも1つのエピタキシャル層の間に配置されている接着材料を用いて、少なくとも1つのエピタキシャル層を覆うように第1の剛性担体が一時的に接合される、研削することと、垂直なエッジ・プロファイルの形成後に、厚いウエハ内に表面下レーザ・ダメージ領域を形成するために、厚いウエハの第2の表面を通してレーザ放射を当てることと、を含む、方法、に関する。
【0079】
特定の実施形態では、方法は、厚いウエハの第2の表面に第2の剛性担体を接合することと、(i)第1の剛性担体、接着材料、少なくとも1つのエピタキシャル層、および厚いウエハから分割された第1の薄いウエハを含む、第1の接合された組立体、ならびに、(ii)第2の剛性担体および厚いウエハから分割された第2の薄いウエハを含む、第2の接合された組立体、が得られるように、表面下レーザ・ダメージ領域に沿ってまたは近接して厚いウエハを破砕することと、を更に含む。
【0080】
特定の実施形態では、方法は、結晶材料の主表面に第1の剛性担体を接合することであって、結晶材料は主表面に対するある深さに初期表面下レーザ・ダメージ領域を有する基板を含む、接合することと、第1の剛性担体および基板から除去された結晶材料の一部を備える初期の接合された組立体が得られるように、初期表面下レーザ・ダメージ領域に沿ってまたは近接して結晶材料を破砕することと、厚いウエハを作り出すために、第1の接合された組立体から結晶材料の一部を除去することであって、厚いウエハは結晶材料の一部を含む、除去することと、を更に含む。
【0081】
特定の実施形態では、方法は、厚いウエハの非垂直なウエハ・エッジを形成することと、非垂直なウエハ・エッジを作り出した後で、厚いウエハの第1の表面上にまたはこれを覆うように少なくとも1つのエピタキシャル層をエピタキシャル成長させることと、を更に含む。
【0082】
特定の実施形態では、第1の薄いウエハまたは第2の薄いウエハのうちの少なくとも一方は、250ミクロンよりも小さい厚さを備える。特定の実施形態では、結晶材料はSiCを含む。
【0083】
別の態様では、本開示は、表面ダメージのある第1の表面を備える結晶材料ウエハを加工するための方法に関し、第1の表面はエッジを境界としており、方法は、表面ダメージの第1の部分を除去するために、第1の表面を少なくとも1つの第1の研削装置を用いて研削することと、少なくとも1つの第1の研削装置を用いた第1の表面の研削の後で、面取りされたまたは丸められたエッジ・プロファイルを形成するためにエッジをエッジ研削することと、エッジ研削後に、表面ダメージの第2の部分を第1の表面を化学機械平坦化による更なる加工に適したものにするのに十分な程度に除去するために、少なくとも1つの第2の研削装置を用いて第1の表面を研削することと、を含む。
【0084】
特定の実施形態では、方法は、少なくとも1つの第2の研削装置を用いた第1の表面の研削の後で、第1の表面をその上で半導体材料の1つまたは複数の層をエピタキシャル成長させることができるようにするために、第1の表面を化学機械平坦化によって加工することを更に含む。
【0085】
特定の実施形態では、少なくとも1つの第1の研削装置は、5000グリット未満(例えば、1000グリット、1400グリット、2000グリット、3000グリット、4000グリットなど)の研削表面を有する、少なくとも1つの研削ホイールを備え、少なくとも1つの第2の研削装置は、少なくとも5000グリット(例えば、5000グリッ
ト、7000グリット、8000グリット、10,000グリット、15,000グリット、20,000グリット、25,000グリット、30,000グリットなど)の研削表面を有する、少なくとも1つの研削ホイールを備える。
【0086】
特定の実施形態では、少なくとも1つの第1の研削装置を用いた第1の表面の研削は、20ミクロンから100ミクロンまでの(例えば、20ミクロンから80ミクロンまでの、40ミクロンから80ミクロンまでの、40から60ミクロンまでの、などの)厚さの結晶材料の除去を含み、少なくとも1つの第2の研削装置を用いた第2の表面の研削は、3から15ミクロンまでの(例えば、5から10ミクロンまでの)厚さの結晶材料の除去を含む。
【0087】
特定の実施形態では、表面ダメージはレーザ・ダメージと破砕ダメージとを含む。
【0088】
特定の実施形態では、結晶材料は炭化ケイ素材料を含み、第1の表面は炭化ケイ素材料のSi終端面を含む。
【0089】
別の態様では、本開示は、表面ダメージのある第1の表面を備える結晶材料ウエハを加工するための方法に関し、第1の表面はエッジを境界としており、方法は、表面ダメージの第1の部分を除去するために、第1の表面を少なくとも1つの第1の研削装置を用いて研削することと、少なくとも1つの第1の研削装置を用いた第1の表面の研削の後で、表面ダメージの第2の部分を第1の表面を化学機械平坦化による更なる加工に適したものにするのに十分な程度に除去するために、少なくとも1つの第2の研削装置を用いて第1の表面を研削することと、少なくとも1つの第2の研削装置を用いた第1の表面の研削の後で、第1の表面上に保護コーティングを形成することと、第1の表面上で犠牲材料を成長させた後で、面取りされたまたは丸められたエッジ・プロファイルを形成するためにエッジをエッジ研削することと、エッジ研削後に、第1の表面から保護コーティングを除去することと、を含む。
【0090】
特定の実施形態では、方法は、第1の表面からの犠牲材料の除去の後で、第1の表面をその上で半導体材料の1つまたは複数の層をエピタキシャル成長させることができるようにするために、第1の表面を化学機械平坦化によって加工することを更に含む。
【0091】
特定の実施形態では、少なくとも1つの第1の研削装置は、5000グリット未満の研削表面を有する少なくとも1つの研削ホイールを備え、少なくとも1つの第2の研削装置は、少なくとも5000グリットの研削表面を有する少なくとも1つの研削ホイールを備える。
【0092】
特定の実施形態では、少なくとも1つの第1の研削装置を用いた第1の表面の研削は、20ミクロンから100ミクロンまでの厚さの結晶材料の除去を含み、少なくとも1つの第2の研削装置を用いた第2の表面の研削は、3から15ミクロンまでの厚さの結晶材料の除去を含む。
【0093】
特定の実施形態では、保護コーティングはフォトレジストを含む。
【0094】
特定の実施形態では、表面ダメージはレーザ・ダメージと破砕ダメージとを含む。
【0095】
特定の実施形態では、結晶材料は炭化ケイ素材料を含み、第1の表面は炭化ケイ素材料のSi終端面を含む。
【0096】
別の態様では、本開示は、レーザ加工ステーションに供給される結晶材料基板に表面下
レーザ・ダメージ領域を形成するように構成されている、レーザ加工ステーションと、レーザ加工ステーションによって加工された結晶材料基板を受けるように配置されており、結晶材料基板から除去された結晶材料部分を形成するために、表面下レーザ・ダメージ領域に沿って結晶材料基板を破砕するように構成されている、破砕ステーションであって、各結晶材料部分は表面ダメージを備える、破砕ステーションと、破砕ステーションの下流に並列に配置されており結晶材料部分から表面ダメージの第1の部位を除去するように構成されている、複数の粗研削ステーションであって、複数の粗研削ステーションのうちの少なくとも第1および第2の粗研削ステーションは、異なる結晶材料部分の表面ダメージの第1の部位を除去するために、同時に操作されるように構成されている、複数の粗研削ステーションと、複数の粗研削ステーションの下流に配置されており、結晶材料部分から表面ダメージの第2の部位を、各結晶材料部分の少なくとも一方の表面を化学機械平坦化による更なる加工に適したものにするのに十分な程度に除去するように構成されている、少なくとも1つの精密研削ステーションと、を備える、材料加工装置、に関する。
【0097】
特定の実施形態では、装置は、少なくとも1つの精密研削ステーションの下流に配置されており、各結晶材料部分の少なくとも一つの表面を化学機械平坦化による更なる加工に適したものにするように構成されている、少なくとも1つの化学機械平坦化ステーションを更に備える。
【0098】
特定の実施形態では、装置は、面取りされたまたは丸められたエッジ・プロファイルを形成するために、各結晶材料部分のエッジを研削するように構成されている、少なくとも1つのエッジ研削ステーションを更に備える。
【0099】
特定の実施形態では、各粗研削ステーションは、5000グリット未満の研削表面を有する少なくとも1つの研削ホイールを備え、少なくとも1つの精密研削ステーションは、少なくとも5000グリットの研削表面を有する少なくとも1つの研削ホイールを備える。
【0100】
特定の実施形態では、各粗研削ステーションは、各結晶材料部分から20ミクロンから100ミクロンまでの厚さの結晶材料を除去するように構成されており、各精密研削ステーションは、各結晶材料部分から3から15ミクロンまでの厚さの結晶材料を除去するように構成されている。
【0101】
特定の実施形態では、レーザ加工ステーションは、複数の結晶材料基板に表面下レーザ・ダメージ領域を同時に形成するように構成されている。
【0102】
別の態様では、上記した態様ならびに/または本明細書に記載する様々な別個の態様および特徴の任意のものを、追加の利点が得られるように組み合わせてもよい。本明細書にそうではないと示されていない限りは、本明細書で開示する様々な特徴および要素の任意のものを、1つまたは複数の開示された他の特徴および要素と組み合わせてもよい。
【0103】
本開示の他の態様、特徴、および実施形態は、続く開示および付属の特許請求の範囲からより十分に明らかになるであろう。
【0104】
本明細書に組み込まれその一部を形成している添付の図面は、本開示のいくつかの態様を図示しており、本説明とともに本開示の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1】従来のワイヤ・ソー・ツールに受けられワイヤ・ソーイング工程を受けるインゴットの斜視図を提供する第1のフレームと、ワイヤ・ソーイング工程によって得られた複数のウエハの斜視図を提供する第2のフレームと、を含む図である。
図2】4H-SiCなどの六方晶用の座標系を示す第1の斜視結晶面図である。
図3】c面と非平行な微斜面を示す、六方晶用の第2の斜視結晶面図である。
図4A】微斜面ウエハのc面に対する配向を示す斜視ウエハ配向図である。
図4B】インゴットの一部に重ね合わせた図4Aの微斜面ウエハの簡略化した断面図である。
図5】例示のSiCウエハの上面平面図であり、重ね合わせた矢印は結晶方位の方向を示す。
図6A】結晶材料のオンアクシス・インゴットの概略側方立面図である。
図6B】4度回転させた図6Aのインゴットの概略側方立面図であり、インゴットの端部を切断するための重ね合わせたパターンを伴う。
図6C】c方向に対して非垂直な端面を提供するように端部を除去した後の、インゴットの概略側方立面図である。
図7】表面下ダメージを形成するために結晶材料の内部にレーザ放射を集束するように構成されている、可動レーザ・ツールの概略斜視図である。
図8A-8D】結晶材料内に表面下ダメージを形成するための、結晶材料に対する例示のレーザ・ツール移動経路を提供する図であり、図8Dは、結晶材料の六方晶構造の[11-20]方向に対する表面下ダメージ線の配向を示す重ね合わされた矢印を含み、それらの線はまた結晶材料の表面と平行である。
図9】中間に配置された接着材料を用いて剛性担体に結合されている表面下レーザ・ダメージのある結晶材料基板を含み、剛性担体との接合面に沿った結晶材料の周縁部の少なくとも一部の周囲に露出した接着剤リップを含む、組立体の側方概略断面図である。
図10A】表面に接着材料が結合されている剛性担体の側方概略断面図である。
図10B】接着材料に近接した表面下レーザ・ダメージ領域のある結晶材料基板に結合されている、図10Aの剛性担体と接着材料とを含む組立体の概略断面図であり、組立体は図9に示すものと類似しているが、露出した接着剤リップがない。
図10C図10Bの組立体の概略断面図であり、剛性担体の表面は水冷チャックの形態の冷却装置上に位置付けられている。
図10D】表面下レーザ・ダメージ領域に沿った結晶材料の破砕後の、剛性担体と基板から除去した結晶材料の部分とを含む、(水冷チャックの上にある)接合された組立体から分離された結晶材料基板の大部分の概略断面図である。
図10E】上側に面する表面に沿って残留レーザ・ダメージがある、水冷チャックから取り外した後の図10Dの接合された組立体の概略断面図である。
図10F】加熱した真空チャックによって支持された、結晶材料の一部の概略断面図であり、剛性担体および接着材料は、接着材料の熱軟化および解放の後で、結晶材料部分から離れる方へと横方向に並進されている。
図11】液体冷媒の槽内に配置されている水冷チャックの形態の冷却装置上にある、図10Cに係る組立体の概略断面図である。
図12】液体冷媒(例えば、気化冷却システムから受けられるメタノール、液体窒素など)を受けるように配置された容器の底壁に近接して配置されている真空チャックを含む、冷却装置の斜視図である。
図13A-13E】結晶材料の基板に各々結合された様々な形状の担体を含む、接合された組立体の上面図である。
図13F-13G】それぞれ図13Dおよび図13Eの、接合された組立体の側方概略断面図である。
図14】剛性担体に接合された表面下レーザ・ダメージのある結晶材料の概略断面図であり、結晶材料および担体は超音波発生器の液槽内に配置されている。
図15A-15D】担体の少なくとも一部に曲げモーメントを付与するために担体の一方のエッジに近接して機械的な力を適用することを含む、表面下レーザ・ダメージのある結晶材料を破砕するためのステップを説明する概略断面図である。
図16A】担体の両側の縁部に沿って機械的な力を適用して担体の複数の部分に曲げモーメントを付与することによって、担体が接合された表面下レーザ・ダメージのある結晶材料を破砕するための装置の概略断面図である。
図16B図16Aの装置を使用してバルク結晶材料から分離された、剛性担体と基板とを含む接合された組立体の概略断面図である。
図17A-17D】レーザ放射をそれぞれ、ベア基板内に、担体によって支持された基板の表面を通して、担体および接着剤層を通して基板内へと、ならびに担体を通して基板内へと、集束させることによる、結晶材料の基板への表面下レーザ・ダメージの形成の概略断面図である。
図18A-18O】デバイス・ウエハ分割工程のステップを説明する概略断面図であり、これらに従って、結晶材料から厚いウエハを破砕し、厚いウエハ上で少なくとも1つのエピタキシャル層を成長させ、厚いウエハを破砕して担体と厚いウエハから分けられた薄いウエハとを各々含む第1および第2の接合された組立体を形成し、第1の接合された組立体は、動作可能な半導体ベースのデバイスの一部として少なくとも1つのエピタキシャル層を含む。
図19】表面下レーザ・ダメージを作り出し、剛性担体を結晶(例えば、SiC)材料のインゴットに接合し、その後に担体と結晶材料の一部とを含む接合された組立体をレーザで切り分け、その後に接合された組立体を更に加工し、デバイス・ウエハ上にエピタキシャル層を形成し、インゴットおよび剛性担体を工程の始めに戻すための各ステップを、概略的に説明するフローチャートである。
図20】表面下レーザ・ダメージを示す図19の結晶材料基板の一部の概略断面図であり、重ね合わせた点線によって、レーザ・ダメージおよび続く表面加工(例えば、研削および研磨)に起因し得る、予期されるカーフ・ロス材料領域が識別されている。
図21】レーザ加工ステーションと、材料破砕ステーションと、並列に配置された複数の粗研削ステーションと、精密研削ステーションと、CMPステーションと、を含む、一実施形態に係る材料加工装置の概略図である。
図22図21の実施形態と類似しているがエッジ研削ステーションが精密研削ステーションと粗研削ステーションの間に配置されている一実施形態に係る、材料加工装置の概略図である。
図23】レーザ加工ステーションと、材料破砕ステーションと、並列に配置された複数の粗研削ステーションと、精密研削ステーションと、表面コーティング・ステーションと、エッジ研削ステーションと、コーティング除去ステーションと、CMPステーションと、を含む、一実施形態に係る材料加工装置の概略図である。
図24A】一実施形態に係る、側壁に対して非垂直な端面を有するインゴットを保持するための第1の装置の概略側方断面図である。
図24B】一実施形態に係る、側壁に対して非垂直な端面を有するインゴットを保持するための第2の装置の概略側方断面図である。
図25】線形熱膨張係数を温度の関数としてプロットした、サファイアについての折れ線グラフである。
図26】線形熱膨張係数を温度の関数としてプロットした、SiCについての折れ線グラフである。
図27】様々な結晶材料および金属の線形熱膨張係数の比較を提供する棒グラフである。
図28】3つのグループに分類した様々な材料の弾性率(ヤング率)値をプロットした図である:(1)金属および合金、(2)グラファイト、セラミック、および半導体、ならびに(3)ポリマー。
【発明を実施するための形態】
【0106】
本開示の態様では、担体(例えば、剛性担体)がある深さに表面下レーザ・ダメージのある結晶材料の表面に結合されており、結晶材料が表面下レーザ・ダメージ領域に沿って
破砕されて、担体と基板から除去された結晶材料の一部とを含む接合された組立体が提供される、結晶材料加工方法が提供される。この破砕は、担体を覆うように配置される別個の応力生成層を必要とすることなく行われる。インゴットから結晶材料の薄い層を連続的に除去してウエハを形成するために、上記したステップを繰り返すことができる。特定の実施形態では、担体は結晶材料を含む。特定の実施形態では、剛性担体を接着剤接合によって結晶材料の表面に結合することができ、剛性担体は、少なくとも20GPaの弾性率を有し得る。接着材料は、25℃(または本明細書で指定する別の閾値)よりも大きいガラス転移温度Tを有し得る。基板から除去された結晶材料の一部はウエハを具現化し得るもので、この部分が接合された組立体の一部である間に更なる加工ステップを受けることのできる状態である。特定の実施形態では、結晶材料の破砕は、(i)担体の少なくとも1つのエッジに近接して(例えば、任意選択的に1つまたは複数の箇所に局所化された)機械的な力を適用して、担体の少なくとも一部に曲げモーメントを付与すること、(ii)担体が結晶材料よりも大きい熱膨張係数を有する場合に担体を冷却すること、および/または(iii)接合された組立体の少なくとも一部に超音波エネルギーを適用すること、によって促進され得る。
【0107】
以下に記載する実施形態は、当業者が実施形態を実施するのを可能にするために必要な情報を表し、実施形態を実施する最良の形態を示す。以下の説明を添付の図面の各図に照らして読めば、当業者は本開示の概念を理解し、これらの概念の本明細書で詳しく扱っていない用途を認識するであろう。これらの概念および用途は、本開示および添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが理解されるべきである。
【0108】
第1の、第2の、などの用語が、本明細書において様々な要素を記述するために使用される場合があるが、これらの要素は、それらの用語によって限定されるものではないことが理解されよう。これらの用語は、ある要素を別の要素から区別するためにのみ使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶこともでき、同様に第2の要素を第1の要素と呼ぶこともできる。本明細書で使用する場合、用語「および/または」は、関連する列挙された事物のうちの1つ以上の、ありとあらゆる組合せを含む。
【0109】
ある要素、例えば層、領域、または基板が、別の要素の「上に」存在するまたは「上へと」延在すると言及される場合、その要素はその別の要素上に直接存在するもしくはその別の要素上へと直接延在するか、または介在要素が存在してもよいことが、理解されよう。対照的に、ある要素が別の要素「上に直接」存在するまたは別の要素「上へと直接」延在すると言及される場合は、介在する要素は存在しない。この場合も、ある要素、例えば層、領域、または基板が、別の要素の「上に」存在するまたは「上に」延在すると言及される場合、その要素はその別の要素上に直接存在もしくは直接延在し得るか、または介在要素が存在してもよいことが、理解されよう。対照的に、ある要素が別の要素「上に直接」存在するまたは別の要素「上に直接」延在すると言及される場合は、介在要素は存在しない。また、ある要素が別の要素に「接続されている」または「結合されている」と言及される場合、そのある要素はその別の要素に直接接続もしくは結合され得るか、または介在要素が存在してもよいことも、理解されよう。対照的に、ある要素が別の要素に「直接接続されている」または「直接結合されている」と言及される場合は、介在要素は存在しない。
【0110】
本明細書では、図に示すようなある要素、層、または領域と別の要素、層、または領域との関係を説明するために、「下方の」または「上方の」または「上側の」または「下側の」または「水平方向の」または「垂直方向の」などの相対的な用語が使用され得る。これらの用語および上で考察した用語は、図に描写されている配向の他にもデバイスの様々な配向を包含するように意図されていることが理解されよう。
【0111】
本明細書で用いられる専門用語は、特定の実施形態について記載することだけを目的としており、本開示を限定するものとなることを意図していない。本明細書で使用する場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上そうでないことが明確に示されていない限り、複数形も含むことを意図している。用語「備える(comprise)」、「備えている(comprising)」、「含む(include)」、および/または「含んでいる(including)」は、本明細書で使用するとき、言及された特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を明示するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を除外しないことが、更に理解されよう。
【0112】
別様に定義されていない限り、本明細書で使用する全ての用語(技術および/または科学用語を含む)は、本開示が属する技術の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。本明細書で使用する用語は、本明細書および関連技術の文脈におけるその意味と矛盾しない意味を有するものとして解釈するべきであり、本明細書において明示的にそうであると定義しない限りは、理想化されたまたは過度に形式ばった意味に解釈されるものではないことが、更に理解されよう。
【0113】
本明細書で使用する場合、「基板」とは、基板と実質的に同じ横方向寸法(例えば、直径、または長さおよび幅)を有する少なくとも2つのより薄い部分に分割可能であり、(i)1つまたは複数の結晶材料層のエピタキシャル成長をサポートするべく表面加工(例えば、ラッピングおよび研磨)するのに、および任意選択的に(ii)剛性担体から分離されたときに自立するのに、十分な厚さを有する、インゴットまたはウエハなどの結晶材料を指す。特定の実施形態では、基板は、略円筒形状を有し得る、かつ/または、以下の厚さのうちの少なくとも1つもしくは複数とほぼ同じ厚さを有し得る:300μm、350μm、500μm、750μm、1mm、2mm、3mm、5mm、1cm、2cm、5cm、10cm、20cm、30cm、またはそれ以上。特定の実施形態では、基板は、2つのより薄いウエハへと分割可能なより厚いウエハを含み得る。特定の実施形態では、基板は、複数の電気的に動作するデバイスを有するデバイス・ウエハの一部としての(任意選択的に1つまたは複数の金属コンタクトと連携した)1つまたは複数のエピタキシャル層が上に配置された、より厚いウエハの一部であり得る。デバイス・ウエハは本開示の態様に従って、より薄いデバイス・ウエハと、(任意選択的に1つまたは複数の金属コンタクトと連携した)1つまたは複数のエピタキシャル層が続けて上に形成され得る、第2のより薄いウエハと、が得られるように分割され得る。特定の実施形態では、基板は150mm以上、または200mm以上の直径を備え得る。
【0114】
本明細書で開示する方法は、様々な単結晶および多結晶の両方の様々な結晶材料の基板に適用することができる。特定の実施形態では、本明細書で開示する方法は、立方晶、六方晶、および他の結晶構造を利用することができ、オンアクシスおよびオフアクシスの結晶方位を有する結晶材料を対象とし得る。特定の実施形態では、本明細書で開示する方法を、半導体材料および/または広バンドギャップ材料に適用することができる。例示の材料としては、限定するものではないが、Si、GaAs、およびダイヤモンドが挙げられる。特定の実施形態では、そのような方法は、4H-SiC、6H-SIC、または第III族窒化物材料(例えば、GaN、AlN、InN、InGaN、AlGaN、またはAlInGaN)などの、六方晶構造を有する単結晶半導体材料を利用し得る。本明細書で以下に記載する様々な例示的な実施形態では、一般的にSiCについてまたは特定的に4H-SiCについて述べるが、任意の好適な結晶材料を使用できることが諒解されよう。様々なSiCポリタイプの中で、4H-SiCポリタイプはその高い熱伝導率、広バンドギャップ、および等方性の電子移動度に起因して、特にパワー・エレクトロニクス・デバイスにとって魅力的である。バルクSiCの成長は、オンアクシスで(すなわち、その
c面からの意図的な角度の偏向を有さず、非ドープまたは半絶縁性材料を形成するのに好適である)、または、オフアクシスで(典型的にはc軸などの成長軸から、典型的には0.5から10度までの範囲(または2から6度などのその下位範囲)内の非ゼロの角度で離れていくものであり、これはNドープされたまたは高導電性の材料を形成するのに好適であり得る)、行うことができる。本明細書で開示する実施形態は、オンアクシスおよびオフアクシスの結晶材料、ならびに、ドープされたおよび意図せずドープされた結晶材料に適用可能である。本明細書で開示する特定の実施形態は、オンアクシス4H-SiC、あるいは、1から10度までのもしくは2から6度までの範囲内のまたは約4度のオフカットを有する微斜面(オフアクシス)4H-SiCを利用できる。
【0115】
図6Aおよび図6Cは、本明細書で開示する方法とともに使用され得る、インゴットの形態のオンアクシス結晶基板およびオフアクシス結晶基板を概略的に示す。図6Aは、c方向(すなわち、4H-SiCなどの六方晶構造材料の[0001]方向)に対して垂直な第1の端面16と第2の端面17とを有する、結晶材料のオンアクシス・インゴット15の概略側方立面図である。図6Bは、4度回転させた図6Aのインゴット15の概略側方立面図であり、端面16,17に近接したインゴット15の端部を切断および除去するための(点線で示す)重ね合わせたパターン18を伴う。図6Cは、c方向に対して非垂直な新しい端面16A、17Aを提供するように端部を除去した後の、図6Bのインゴット15から形成されたオフアクシス・インゴット15Aの概略側方立面図である。表面下レーザ・ダメージを形成するために第1の深さのレーザ放射がインゴット15の端面16を通して供給される場合、端面16には担体(図示せず)が結合され、インゴット15は表面下レーザ・ダメージに沿って破砕され、その後オンアクシス・ウエハが形成され得る。逆に、表面下レーザ・ダメージを形成するために第1の深さのレーザ放射がオフアクシス・インゴット15Aの端面16Aを通して供給される場合、端面16Aには担体(図示せず)が結合され、インゴット15Aは表面下レーザ・ダメージに沿って破砕され、その後オフアクシス・ウエハが形成され得る。
【0116】
本明細書において様々な基板、担体、接着剤、および破砕技法が開示されているが、基板、担体、および/または接合方法の様々な組合せに応じて、それらの破砕技法を個々に使用できる、または、所望の分離を達成するように破砕技法の任意の組合せを同時におよび/もしくは連続的に使用できることが、諒解されるべきである。
【0117】
[担体特性]
本明細書で開示するような、表面下レーザ・ダメージ領域に沿って結晶材料を切り分けるための様々な担体アシスト法で使用される担体が企図される。本明細書に開示する結晶材料を切り分ける(すなわち、破砕する)ための様々な方法を考慮すると、望ましい担体特性は具体的な破砕方法によって異なり得る。
【0118】
様々な実施形態において、剛性の特性を有する担体に言及する。特定の実施形態では、剛性担体の少なくとも切り分けられることになる結晶材料の近位の部分、または全部は、少なくとも約20GPa、少なくとも約50GPa、少なくとも約100GPa、少なくとも約200GPa、または少なくとも約300GPaの弾性率(ヤング率としても知られる)を備える。例えば、サファイアは345GPaの弾性率を有する。弾性率は、固体材料の剛直性の尺度となる機械的特性である。これは、一軸変形の線形弾性率レジーム(regime)において、材料における応力(単位面積あたりの力)と歪み(比例的な変形)の間の関係を定めるものである。
【0119】
本明細書に開示する分離方法の結果の、(例えば、PDMSまたはシリコーンなどの低剛性の接合面材料および低温破砕を使用する)従来の方法に対する改善の理由に関して、何らかの特定の理論に縛られることを望むものではないが、比較的剛性または剛直性の高
い(すなわち、高弾性率の)担体が表面下レーザ・ダメージ領域に沿って破砕されるべき結晶材料に接合されていると、この担体によって、再現性の高い結晶材料分離結果が得られると同時に、ウエハのボウイングおよび/または破損を低減できると考えられている。分離(例えば、機械的な、CTE不整合の、および/または超音波の手段による)に必要な機械的側面に加えて、担体は、分離中および分離後の機械的支持も提供する。このことは分離後の加工に有用であるが、その理由は、分離された結晶材料を、剛性担体に取り付けられこれによって支持されたままである間に、研削、研磨、等することができるからである。このことにより、1つまたは複数の分離後の加工ステップを行うために、破砕後にウエハを剛性担体に接合する必要性が回避される。
【0120】
剛性担体が基板に接着剤で接合されることになる場合、特定の実施形態では担体は一般に、半導体、無機材料、金属、半金属、非金属、セラミック、結晶材料(例えば、特性が単結晶または多結晶)、非晶質材料、ポリマー材料、ガラス、および複合材料を含む、より広範囲の材料を含み得る。特定の実施形態では、担体は、様々な従来の手段によって1つに接合または結合される、2つ以上の材料を含み得る。当業者が認識するであろう他の材料を使用してもよい。
【0121】
剛性担体が接着剤を用いた基板への接着剤固着に限定されていない場合、より狭い範囲の担体材料が望ましい場合がある。特定の実施形態では、剛性担体に接着剤固着されるとは限らない担体は、単結晶材料(例えば、特性が単結晶または多結晶)、半導体材料、セラミック材料、半金属、無機材料、および複合材料を含み得る。
【0122】
特定の実施形態では、剛性担体は、剛性担体に接合された結晶材料の表面下レーザ・ダメージの深さを、1、2、3、4、または5倍上回る厚さを備え得る。様々な実施形態では、剛性担体は、剛性担体に接合された結晶材料の(分離前の)厚さよりも小さい、これと等しい、またはこれよりも大きい厚さを備え得る。特定の実施形態では、剛性担体は、少なくとも500μmの、800μmよりも大きい、少なくとも850μmの、少なくとも900μmの、少なくとも1mmの、少なくとも1.5mmの、少なくとも2mmの、または少なくとも3mmの厚さを有することができ、上記の範囲は任意選択的に、適宜1mm、2mm、3mm、4mm、または5mmの上限値を境界値としている。特定の実施形態では、剛性担体は、0.5から5mm、または0.5から3mm、または0.5から2mm、または0.8から5mm、または0.8から3mm、または0.8から2mm、または0.85から5mm、または0.9から5mm、または1から4mm、または1から3mm、または1から2mmの範囲内の厚さを有し得る。
【0123】
特定の実施形態では、剛性担体は望ましくは、そこに接合された基板の対応する寸法と少なくとも同じ大きさの、またはそれを上回る横方向の伸び(例えば、直径、または長さおよび幅)を有し得る。剛性担体に結晶基板の直径と少なくとも同じ大きさの(またはそれよりも大きい)直径を与えることは、本明細書に記載する様々な破砕工程中の破砕の開始を容易にすると考えられている。
【0124】
特定の実施形態では、剛性担体の少なくとも一部の最大長さまたは最大幅のうちの少なくとも一方は、基板の対応する最大長さまたは最大幅を上回っている。特定の実施形態では、剛性担体の少なくとも1つのエッジの少なくとも一部は、対応する基板の少なくとも1つのエッジを越えて、横方向に少なくとも約100ミクロン、少なくとも約200ミクロン、少なくとも約500ミクロン、少なくとも約1mm、または少なくとも約2mm延在し得る。そのような横方向の重なり合いは、機械的分離を利用する実施形態において特に望ましいが、その理由は、その重なり合いが、剛性担体に破砕を開始するためのモーメントを付与するのに適したツールの、少なくとも一部を受けることができるからである。特定の実施形態では、基板は、当該基板の少なくとも1つのエッジに沿ってノッチまたは
フラットを含み、剛性担体のエッジ(または少なくとも1つのエッジ)の少なくとも一部は、ノッチまたはフラットを越えて横方向に延在する。
【0125】
本明細書には単一のおよび2つの担体を含む実施形態が開示されている。分離されるべき基板が薄くなるにつれて(例えば、厚さ約5mm未満)、2つの担体は実際的に必要なものとなる。表面下レーザ・ダメージ領域の近位に配置されている担体は前面担体と呼ばれる場合があり、そこから遠位に配置されている背面担体と区別されている。本明細書で開示する特定の実施形態によれば、前面担体は、表面下レーザ・ダメージ領域に沿ってまたは近接して結晶材料の分離を促進するように特に意図されている。対照的に、背面担体は、破砕工程中に基板の分離を促進することを意図されていない。この理由から、表面下ダメージ領域に沿った基板の破砕を促進するために担体と基板の間のCTE不整合を使用する場合、背面担体は前面担体とは異なるCTEを有し得る。特定の実施形態では、背面担体は、前面担体よりも基板に対して、より低いCTE不整を有し得る。特定の実施形態では、背面担体は、基板とCTE整合またはほぼCTE整合していてもよい。
【0126】
[結晶材料に対する担体のCTE特性]
特定の実施形態では、第1の熱膨張係数すなわちCTEを有する剛性担体が、第2の熱膨張係数すなわちCTEを有する、表面下レーザ・ダメージのある結晶材料の表面に接合または結合され、このとき所望の温度において(例えば、25℃において)または所望の温度範囲にわたって)、CTE>CTEである。その後、少なくとも担体は冷却され、これにより、担体のサイズがCTE差に起因して結晶材料よりも迅速に収縮する。そのような差のある収縮によって、担体および結晶材料に応力(例えば、せん断応力)が生じ、そのような応力によって、表面下レーザ・ダメージ領域に沿った結晶材料の破砕が引き起こされる。発明者らはSiC基板とサファイア担体の組合せを幅広く試験したが、本開示の利益のある他のCTE不整合のある材料の組合せを、当業者は容易に判断し得る。
【0127】
基板に十分な応力を付与するためには、本明細書で開示する様々な実施形態に係るCTE不整合のある基板は、特性として剛性を有することができ、担体材料の機械的特性(例えば、弾性率)だけでなく、担体厚さも考慮に入れられる。特定の実施形態では、剛性担体は、800ミクロンよりも大きい、少なくとも850ミクロンの、少なくとも900ミクロンの、少なくとも1mmの、少なくとも1.5mmの、または本明細書で開示する別の閾値の、厚さを備え得る。
【0128】
様々な材料について、CTEは温度とともに変化し得る。結晶材料のCTEよりも大きいCTEを有する剛性担体の場合、特定の実施形態では、剛性担体は、所望の温度において(例えば、25℃において、100℃において、200℃において、300℃において、0℃において、および/または-100℃)、または、所望の温度範囲(例えば、-100℃から300℃の範囲、-100℃から200℃の範囲、-100℃から100℃までの範囲、0℃から200℃までの範囲、50℃から150℃までの範囲、または本明細書で開示する任意の他の好適な温度範囲もしくは下位範囲)にわたって、結晶材料のCTEよりも大きいCTEを有する材料を含み得る。
【0129】
特定の実施形態では、(結晶材料基板の表面下ダメージ領域に近接して配置されることになる)剛性担体のCTEの大きさは、結晶材料基板のCTEの5倍未満、約4倍以下、約3倍以下、約2倍以下、約1.5倍以下である。特定の実施形態では、剛性担体のCTEは、結晶材料基板のCTEよりも約1.25から約4までの範囲の倍率で大きい。上記したCTE不整合比の一部または全部は、(本開示の背景部分に記載されているような)従来のニッケル・ベースまたはポリマー・ベースのスポーリング(分離)技法で使用される材料のCTE不整合比よりも、顕著に小さいと考えられている。例えば、ニッケルまた
はニッケル含有金属(担体として使用可能)とSiC(結晶材料として使用可能)の間のCTE不整合率は少なくとも5以上であり得、ポリマーとSiCの間のCTE不整合率は10から100またはそれ以上のオーダーであり得る。
【0130】
表面下ダメージのある結晶材料に結合されておりそのCTEよりも大きいCTEを有する剛性担体に言及してきたが、特定の実施形態では、第1および第2の剛性担体の間に、表面下レーザ・ダメージのある結晶材料が配置され得る。そのような実施形態では、第1の剛性担体は、表面下レーザ・ダメージに近接した結晶材料の第1の表面に結合されており、第2の剛性担体は、表面下レーザ・ダメージから遠位の第1の表面の反対側の結晶材料の第2の表面に結合されている。特定の実施形態では、第1の剛性担体および第2の剛性担体はいずれも、結晶材料のCTEを上回るCTE値を有し得る。他の実施形態では、第1の剛性担体は結晶材料のCTEよりも大きいCTEを有し、一方、第2の剛性担体は結晶材料のCTEよりも小さいかまたは等しいCTEを有する。例えば、特定の実施形態では、SiC基板の前面担体はサファイア製であってもよく、これはSiCに対して大きいCTE不整合を呈するが、一方で背面担体は、CTE担体に対する不整合のないSiC製とすることができる。別法として、SiCウエハの前面担体は(SiCよりも大きいCTEを有する)サファイア製であってもよく、一方で背面担体は、(SiCウエハとのCTE不整合のない)SiC製であってもよい。
【0131】
破砕を促進するためにCTE不整合を利用する特定の実施形態では、分離後の接合された組立体(すなわち、担体およびこれに接合された破砕された基板部分)のボウを低減するために、所望の分離を可能にするのに必要な最低限の量のCTE不整合を提供するのが望ましい場合がある。SiC基板およびサファイア担体を使用するとき、直径150mmのSiCウエハについて200ミクロンのオーダーのボウイングが観察されている。そのようなレベルのボウイングは、接合された組立体を加工中に平坦にする役割を果たす、研削中に使用される真空チャックによって課される機械的な力および研削力の両方に起因する研削を介して、容易に対処できる範囲内にある。対照的に、過剰なボウイングは先行技術の工程が直面する主要な問題である。
【0132】
[結晶材料への担体の接合または結合]
表面下ダメージに沿って破砕を促進する目的で、表面下ダメージのある結晶材料の表面に剛性担体を接合または結合するために、様々な方法を使用できる。1つの方法は接着剤接合を含み、これには、剛性担体の近位の表面に接着材料を適用すること、接着剤を表面下レーザ・ダメージのある結晶材料の表面と密着させること、および(例えば、担体/接着剤/結晶材料の積層体を高温および高圧に曝すことによって)接着剤を硬化させることが含まれ得る。
【0133】
特定の実施形態では、剛性担体と表面下レーザ・ダメージのある結晶材料の間の接合は一時的な特性のものであり、例えば、特定の条件下(例えば、室温)では接着力を維持しようとするが、除去条件下(例えば、接着材料を流動させるのに十分な温度である、および/または、接着材料を弱化もしくは分解するように構成されている化学薬品への曝露)では接着力の低下を呈することになる接着材料を使用することによって行われる。一時的接合媒体の使用により、本明細書に開示する方法に従う破砕(例えば、低温での熱誘起の破砕、機械的な力の適用によって誘起される破砕、および/または超音波エネルギーによって誘起される破砕)を可能にすべく、結晶材料を担体に接合することが可能になり、しかも、その後で(任意選択的に、剛性担体に取り付けられている間の結晶材料部分に対する1つまたは複数の他の加工ステップの実行後に)、剛性担体に接着された結晶材料の除去された部分を除去することが可能になる。本開示の様々な実施形態とともに使用可能な接着材料の望ましい特性は、結晶材料の破砕を誘起するために使用される方法にある程度依存し得る。
【0134】
一時的接合材料の重要なパラメータとしては、(a)凝集力、(b)接着強度、(c)弾性率、(d)ガラス転移温度、および(e)厚さを挙げることができる。好適な一時的接合材料(例えば、一時的接着剤)は、担体と結晶材料の間に分離力を効果的に伝達して表面下ダメージ領域に沿って破砕を生じさせるための、上記したパラメータの適切な組合せを有するべきであり、そのような接着材料はその場合にも指定された条件下で容易に除去、破壊、または作用不能化(例えば、化学分解、光分解、熱分解、等)されるものであり、好ましくは残渣除去のために過度な労力を要することがない。
【0135】
凝集力に関して、望ましい接着材料は、表面下レーザ・ダメージのある結晶材料を破砕するために必要な力を受けたときに接着材料がその完全性を維持し破壊されないような、十分に高い凝集力を有するべきである。接着材料の接着強度は、表面下レーザ・ダメージのある結晶材料の破砕に必要な力が接着材料にかかるときに、周囲の材料(例えば、担体または結晶材料)への接着を維持するのに十分な高さであるべきである。接着材料によってはより低い温度において接着強度および凝集強度の低下を呈するものがあり、したがって、相対的により温かい温度を伴う破砕技法を採用するのが望ましい場合のあることが留意される。
【0136】
接着材料の弾性率および厚さに関して、望ましい接着材料は、結晶材料の破砕を生じさせるのに必要な応力を接着材料に過度な量で吸収させることなく、担体から結晶材料へと適切な量の応力を適切に伝達するように機能すべきである。このことは、接着材料による応力の吸収を阻止しながら応力伝達を促進するための比較的薄い層として存在する、比較的率の高い(すなわち、比較的剛直な)接着材料を選好する傾向を示す。
【0137】
ガラス転移温度(T)に関して、担体と結晶材料の間のCTE不整合を利用する場合、T値が小さくなるほど、表面下レーザ・ダメージ領域に沿って結晶材料の破砕(例えば、自然発生的な破砕)を生じさせるために担体を冷却しなければならない温度は低くなる。例えば、接着材料のTが0℃であり、十分な応力を導入するために70℃の温度変化が望まれる場合には、担体を-70℃まで冷却しなければならない。残念ながら、非常に低い温度では、接着材料特性(応力伝達効率を含む)が低下し得る。したがって、本開示の実施形態とともに使用するのに、相対的により高いT値を呈する接着材料が好ましい場合がある。
【0138】
特定の実施形態では、接着材料は、高温熱圧縮接着剤接合と適合性のある接着剤を含み得る。高温熱圧縮接合の場合、接合要件が非常に高温になるのを回避するために、および、分離された結晶材料部分/剛性担体の組立体が室温で過剰なボウを有するのを防止するために、より低いガラス転移温度(T)が望ましい。しかしながら、特定の実施形態では、特に、結晶材料の破砕を生じさせるために基板/担体のCTE不整合と組み合わせて冷却を利用する実施形態で使用される場合、接着材料のTは低過ぎてはいけないが、その理由は、Tの低い材料は冷却時にTを経る前に基板/担体のCTE不整合の応力を過度に多く不本意に吸収し得るからである。ポリマー材料のガラス転移温度とは、ポリマーが硬質のガラス状物質から軟質のゴム状物質へと転移する温度領域である。
【0139】
特定の実施形態では、接着材料は、紫外(UV)光で硬化可能な接着剤を含み得る。そのような接着剤ではより高いTが使用され得るが、その理由は、接着接合部を室温(例えば、約25℃)で形成することができ、このことにより室温で分離された結果的な材料におけるどのような残留応力も最小化されるからである。特定の実施形態では、結晶材料の破砕を生じさせるために基板/担体のCTE不整合と組み合わせて冷却を利用する実施形態において室温で所望のレベルの残留応力を生じさせるために、室温より上でUV硬化性の接着接合部を形成することができる。そのような実施形態では、担体とこれに接着さ
れた結晶材料部分の間のCTE不整合によって分離を達成するのに必要な温度差を小さくするために、この残留応力が望ましい場合がある。
【0140】
様々な接着剤接合工程および/または硬化工程を考慮すると、破砕を生じさせるために冷却および担体とこれに接着された結晶材料の間のCTE不整合を利用する特定の実施形態では、接着材料は、約25℃の、または25℃よりも大きい、50℃よりも大きい、75℃よりも大きい、100℃よりも大きい、もしくは150℃よりも大きい、ガラス転移温度(T)を有し得る。特定の実施形態では、上記の下限閾値は、上から(適宜)約250℃未満、約200℃未満、約150℃未満、約125℃未満、または約100℃未満の上限閾値を境界値とすることができる。更に、様々な接着剤接合工程および/または硬化工程を考慮すると、特定の実施形態では、接着材料は、50℃よりも大きい、100℃よりも大きい、150℃よりも大きい、また200℃よりも大きい融点を有し得る。
【0141】
特定の実施形態では、接着材料は熱可塑性接着剤を含み得る。少なくともある熱可塑性接着剤は、望ましい機械的特性および接着特性(比較的高いT、高い弾性率、高い凝集力、望ましい担体および結晶材料への高い接着強度、ならびに(例えば、室温に近い)所望の温度範囲における硬度を有し得るとともに、高い温度まで加熱および/または溶液に曝露されると、依然として容易に除去可能である。本明細書に開示する方法とともに使用するのに好適であり得る接着材料の例としては、Brewer Science, Inc.(Rolla、ミズーリ州、USA)から市販されているBrewerBOND(登録商標)220、WaferBOND(登録商標)HT-10.10、およびBrewerBOND(登録商標)305熱可塑性接着剤、ならびに、Aremco Products(Valley Cottage、NY、USA)から市販されているCrystalbond(商標)509熱可塑性接着剤を挙げることができる。これらの接着剤に関して選択される熱的および機械的特性値を、以下で表にまとめる。
【0142】
【表1】
【0143】
上の表には、製造者によって第1および第2の接着剤の薄膜の硬度値が提供されているが、かかる値は通常、ナノ・インデンタ法を使用して確立される、Pascal(例えば、MPaまたはGPa)で表される値であり、一方で第4の接着剤の硬度値は、出願人がショアD法を使用して決定したデュロメータとして表される。出願人は、ショアDデュロメータ値から第4の接着剤の弾性率値を計算した。ショアの尺度とヤング率の間には直接的な理論的関係は存在しないが、経験的に得られた、これらの間の変換に有用な数学公式が存在している。出願人が(Microsoft Excelを利用して)使用した公式
は「EXP((Durometer+50)*0.0235-0.6403)」であり、この式でDurometerはショアDデュロメータ値を指す。第4の接着材料(Crystalbond(商標)509)のショアDデュロメータ値73.2は、丈夫なトラック用タイヤ(ショアD値は約50)および高密度ポリエチレン製ヘルメット(ショアD値は約75)のショアDデュロメータ値の間にある。また、第4の接着材料のショアDデュロメータ値は、測定したワックス(すなわち、日化精工株式会社から市販されているSHIFTWAX7607、および、Galaxy Technologiesから市販されているGalaxy Waxのそれぞれ)のショアDデュロメータ値50.51および54.25よりも顕著に高いが、これらのワックスは、出願人が試験し、本明細書に記載する熱誘起の自然発生的な分離方法および機械的に誘起される分離方法を使用して表面下ダメージ領域に沿って結晶材料の破砕を誘起するには、適していないと判断されたものである。ワックス材料は、ワックス材料がワックス自体の中で分離するのが観察され、破砕を誘起するには凝集力が不十分であると判断された。このことは、ワックスが有する分子間引力(ロンドン力)は非常に弱いため、他の分子をそれほど強くは捉えないことを示唆するオンラインの記載と一致する。
【0144】
本開示の検討後に当業者が認識するであろう、本明細書で上記した熱可塑性材料に留まらない他の接着剤を使用してもよい。特定の実施形態では、接着材料は、0℃よりも大きい、5℃よりも大きい、10℃よりも大きい、20℃よりも大きい、25℃よりも大きい、30℃よりも大きい、35℃よりも大きい、または任意の好適なより高い閾値の、ガラス転移温度を含み得る。特定の実施形態では、上記の下限閾値は、上から(適宜)約250℃未満、約200℃未満、約150℃未満、約125℃未満、または約100℃未満の上限閾値を境界値とすることができる。そのような接着材料は、極めて低い温度(例えば、液体窒素または類似の冷媒を必要とする、-75℃未満または-100℃未満)での冷却の必要性を回避することができる。液体窒素を使用してマイナス100℃以下の非常に低い温度にする場合、発明者らは、本明細書で既に開示した熱可塑性接着材料を使用したときに、曝露の時間に応じた接着剤の壊滅的な不具合を観察した。そのような熱可塑性材料は非常に低い温度でクラック発生およびクレーズ発生が生じるように見えるが、このことは、極めて低い温度(例えば、マイナス100℃以下)は避けるべきであることを示唆している。
【0145】
極めて低い温度までの冷却を必要とする接着材料のクラスの1つがシリコーン(PDMSを含む)であり、-110℃から-140℃までのガラス転移温度(T)範囲を有する。シリコーンの容易な除去は困難であり得る。シリコーンはそのガラス転移温度を超えると非常に低い弾性率を呈するが、この弾性率は材料がそのガラス転移温度未満に冷却されると、複数桁の単位でGPa範囲へと変化する。発明者らは、担体を約-110℃の温度まで冷却することによってCTE不整合に起因する表面下レーザ・ダメージ領域に沿った自然発生的な破砕を誘起するための試みにおける、SiCインゴットとサファイア担体の間の接合材料として、シリコーンを試験した。破砕は首尾よく達成されなかった。サファイア担体、接着材料、およびSiCインゴットの冷却中にシリコーン材料が応力吸収材として機能したこと、ならびに、シリコーンのTに達したときの担体と結晶材料の間のCTE不整合の高さが不十分であったことが理論付けられている。サファイア担体とSiCインゴットの間のCTE不整合は室温で大きかったが、-110℃の低温ではCTE不整合は相対的に僅かな値へと低下した。とは言え、シリコーンが効果的な応力伝達特性を呈することが仮定的に想定される場合であっても、超低温への曝露によってデバイスがダメージを受ける可能性があるため、デバイス・ウエハの分離に際して超低温(例えば、液体窒素温度)を回避するのが依然として有益であり得る。
【0146】
特定の実施形態では、接着材料は、エポキシなどの化学的に架橋した接着剤を含み得る。特定の実施形態では、剛性担体および結晶材料基板を結合するために、反応性触媒型の
多成分接合剤(例えば、二成分エポキシ)が使用され得る。
【0147】
任意の好適な厚さの接着材料の層を使用することができるが、特定の実施形態では、接着剤層は比較的薄くすることができる(例えば、約100ミクロン未満、約50ミクロン未満、約40ミクロン未満、約30ミクロン未満、約20ミクロン未満、または約10ミクロン未満(上記した上側閾値はいずれも任意選択的に、適宜少なくとも約2ミクロンの、少なくとも約5ミクロンの、または少なくとも約10ミクロンの下限閾値を限度とする)。薄い接着剤層を設けることによって、破砕中の剛性担体と結晶材料の間のせん断応力のより直接的な伝達を促進することができ、このことにより、破砕を完了するために必要な力および時間が低減される。しかしながら、最適な接着剤厚さは、接着剤の弾性率、接合方法、分離技法、等といった、複数の要因に依存し得る。
【0148】
剛性担体と結晶材料を結合するために使用できる様々なタイプの接着剤の存在を考慮すると、様々な接着剤接合方法を採用することができる。特定の実施形態では、(高温での圧縮力の適用を含む)熱圧縮を使用することができる。一例では、接着剤で(例えば、単結晶サファイアの)剛性担体に固止された直径150mmの結晶材料基板(例えば、4HSiC)に、180℃の温度に曝露しながら1800から3000Nまでの力を加えることができる。特定の実施形態では、剛性担体と結晶材料基板の間のUV硬化性接着材料にUV放射を当てながら、圧縮力を加えることができる。液体のまたは流動可能な接合媒体が使用される場合、特定の実施形態では、接合媒体は接合中に押し潰されると、結晶材料基板の側壁を部分的に登って(および剛性担体の近位の表面に沿って)延びることができ、この結果、結晶材料の周縁部の少なくとも一部(または全部)の周囲に周縁リップが形成され、そのような周縁リップは、基板と担体の間の接合強度を僅かに大きくする役割を果たし得る。
【0149】
特定の実施形態では、剛性担体と結晶材料基板を接合するために、プラズマ活性化陽極接合、または任意の他の好適な陽極接合工程を使用することができる。結晶材料基板と担体の間の陽極接合に関連する詳細が米国特許出願公開第2016/0189954号に開示されており、かかる公開の内容はこれにより参照によってあらゆる目的のために本明細書に組み込まれている。
【0150】
特定の実施形態では、接着を容易にするために、剛性担体および/または結晶材料の近位の表面を、接合(例えば、接着剤接合を含む)の前に任意の好適な方法で粗化、テクスチャ化、および/または表面活性化することができる。実行できる表面処理の例としては、限定するものではないが、マイクロパターニング、機械的アブレージョン、化学エッチング、反応性イオンエッチング、およびプラズマ処理を挙げることができる。特定の実施形態では、剛性担体は、マイクロパターン化された表面を有する単結晶サファイアを含み得る。
【0151】
特定の実施形態では、剛性担体は、担体に接着された(既に切り分けられた)結晶性の部分の除去が望まれるときに接合解除を容易にするように構成されている、1つまたは複数の特徴を含み得る。そのような特徴の例としては、剛性担体の近位表面に近接して配置されているおよび/またはこの近位表面との流体連通を可能にする穴または空洞を提供するための、穿孔および/またはマイクロパターン化された表面を挙げることができる。
【0152】
(既に切り分けられた)結晶材料の部分と剛性担体の間の接合解除を促進するために、様々な工程を使用できる。特定の実施形態では、熱による、機械的な、化学的な、および/または光による接合解除が採用され得る。特定の実施形態では、熱的スライド・オフによって接合解除を行うことができ、これには、接着剤固着された組立体を、剛性担体が所定位置に固定されている(例えば、真空チャックによって保持されている)間に十分な温
度まで加熱して、接着材料を軟化および/または流動させることが含まれ、結晶材料の一部には外部せん断応力をかけて、その部分を剛性担体から横方向にスライドさせることができる。特定の実施形態では、接着剤はUV吸収材料を含有してもよく、この場合、結晶材料部分の除去を可能にするべく結晶材料部分と担体の間の接着剤の(例えば、加熱による)分解を引き起こすために、切り分け後の接着剤へのUV放射の照射が使用され得る。接着剤の化学的除去には、接着力を低下させるおよび/または接着材料を分解するのに十分な、任意の好適な化学薬品が利用され得る。化学的な接合解除を使用する場合には、化学物質が接着材料に接触できるように、担体に1つまたは複数のアクセス開口部(例えば、穿孔)を設けることができる。
【0153】
[表面下レーザ・ダメージ形成]
当技術分野では結晶材料にレーザ表面下ダメージを形成するためのツールが知られており、株式会社ディスコ(東京、日本)などの様々な供給者から市販されている。そのようなツールによって、結晶材料基板の内部にレーザ放射を集束することができ、基板に対するレーザの横方向移動が可能になる。典型的なレーザ・ダメージ・パターンは、結晶材料基板内のある深さで互いに対して横方向に離間されている平行線の形成を含む。レーザ・ダメージを付与するために集束深さ、レーザ出力、並進速度、および表面下ダメージ線間隔などのパラメータを調節することができるが、特定の因子の調節にはトレードオフが伴う。レーザ出力を上げるとより大きい表面下ダメージが付与される傾向があり、このことは(例えば、破砕を完了するために必要な応力を小さくすることによって)破砕の容易さを向上させ得るが、より大きい表面下ダメージによって、破砕によって露出した表面に沿った表面不規則性が大きくなり、この結果、そのような表面を次の加工のために(例えば、電子デバイスに組み込むために)十分に平滑にするためには、追加の加工が必要になる場合がある。表面下レーザ・ダメージ線間の横方向間隔を小さくすることによって破砕の容易さを向上させることもできるが、レーザ・ダメージ線間の間隔が小さくなることによって基板とレーザの間の並進経路の数が増え、このことによりツールのスループットが低下する。
【0154】
図7は、表面下ダメージ40を形成するために結晶材料30の内部にレーザ放射を集束するように構成されている、レーザ・ツール29の一例の概略斜視図である。結晶材料30は上側表面32と反対側の下側表面34とを含み、表面下ダメージ40は、上側表面32と下側表面34の間の結晶材料30の内部に形成される。結晶材料がSiCを含む場合、レーザ放射が通過して導かれる上側表面32は、C終端表面であり得る。レーザ放射36はレンズ組立体35を用いて集束されて集束ビーム38となり、その焦点は結晶材料30の内部にある。そのようなレーザ放射36は、(典型的にはナノ秒、ピコ秒、またはフェムト秒の範囲内の)任意の好適な周波数およびビーム強度でパルス化することができ、レーザ放射36を結晶材料30の表面より下の標的深さで集束させることができるように、結晶材料30のバンドギャップ未満の波長を有する。焦点においては、ビーム・サイズおよび短いパルス幅の結果、表面下ダメージを形成する非常に局所化された吸収をもたらすのに十分な高さのエネルギー密度が得られる。集束ビーム38の焦点を結晶材料30内の所望の深さに調節するために、レンズ組立体35の1つまたは複数の特性を変更することができる。点線44によって概略的に示すように、表面下ダメージ40を所望の方向に伝播するために、レンズ組立体35と結晶材料30の間の横方向の相対的な動き(例えば、横方向の並進)を行わせることができる。そのような横方向の移動を、図8A~8Dに示すような、様々なパターンで繰り返してもよい。
【0155】
図8A~8Dは、結晶材料内に表面下ダメージを形成するための、結晶材料に対する例示のレーザ・ツール移行経路を提供する。特定の実施形態では、(例えば、レンズ組立体を含む)レーザ・ツール部分が移動するように構成することができ、結晶材料は動かないが、他の実施形態では、レーザ・ツール部分を動かないように保持することができ、結晶
材料がツール部分に対して移動される。図8Aは、第1の結晶材料50A内に横方向に離間した平行線のパターンの表面下ダメージを形成するのに適した、y方向の直線的な走査の動き52を示す。図8Bは、第2の結晶材料50B内での、横方向に離間した平行線の第1のグループが横方向に離間した平行線の第2のグループと交差するパターンとなる表面下ダメージの形成に適した、y方向の直線的な走査の動き52およびx方向の直線的な走査の動き54を示す。図8Cは、第3の結晶材料50C内での、同心円のパターンとなる表面下ダメージの形成に適した円形の動き56を示す。図8Dは、結晶材料50Dにわたって分配された平行な表面下レーザ・ダメージ線を形成するのに十分な、結晶材料50Dの表面全体にわたる(およびそれを越える)y方向の直線的な走査の動き56を示し、これらのダメージ線は結晶材料50Dの六方晶構造の[11-20]方向に対して垂直である。所望であれば、他の表面下ダメージ・パターン(例えば、渦巻状、ハチの巣状、矢筈模様、等)を形成してもよい。
【0156】
特定の実施形態では、本明細書で開示する結晶材料加工方法は、以下のアイテムおよび/またはステップのうちのいくつかまたは全てを含み得る。結晶材料基板(例えば、インゴット)の底面には第2の担体ウエハを取り付けることができる。その後、結晶材料基板の頂面を研削または研磨して、例えば、レーザ・エネルギーを伝達するための表面の準備として、約5ナノメートル未満の平均表面粗さRを実現する。次いで、結晶材料基板内の1つまたは複数の所望の深さにレーザ・ダメージを付与することができ、レーザ・ダメージの跡の間隔および方向は、任意選択的に結晶材料基板の結晶方位に依存する。結晶材料基板の頂面に第1の担体を接合する。結晶材料基板から得られることになるウエハに、識別コードまたは第1の担体にリンクされた他の情報と関連付けることができる。別法として、分離前に、製作中および製作後のウエハの追跡を容易にするためのレーザ・マーキングを、(担体ではなく)ウエハに適用することができる。次いで表面下レーザ・ダメージ領域に沿って(本明細書で開示する1つまたは複数の方法を使用して)結晶材料基板を破砕して、第1の担体に固着された結晶材料基板の一部と、第2の担体に固着されている結晶材料基板の残りの部分とを得る。結晶材料基板の除去した部分および結晶材料基板の残りの部分はいずれも、残留表面下レーザ・ダメージを除去する必要に応じて、平滑に研削され洗浄される。結晶材料基板の除去した部分は、担体から分離され得る。その後、結晶材料基板の残りの部分を使用して工程を繰り返すことができる。
【0157】
SiCウエハのワイヤ・ソーイングは通常、ウエハあたり少なくとも約250ミクロンのカーフ・ロスを伴うが、本明細書で開示するSiCに適用されるレーザ・アシストおよび担体アシストの分離方法は、ウエハあたり80から140ミクロンまでの範囲内のカーフ・ロスを達成し得る。
【0158】
図9は、中間に配置されている接着材料の層68によって剛性担体72に結合された表面下レーザ・ダメージ66のある結晶材料基板60を含む、組立体58の側方概略断面図である。組立体58は、本明細書に開示する方法のいずれかまたはより多くを利用して表面下レーザ・ダメージ66に沿って結晶材料基板60を破砕することで、表面下レーザ・ダメージ66に沿った結晶材料基板60の一部の除去を促進するのに適している。結晶材料基板60は、接着材料68に近接した第1の表面62を含み、かつ反対側の第2の表面64を含み、表面下レーザ・ダメージ66は第2の表面64よりも第1の表面62の近くにある。剛性担体72はまた、接着材料68に近接した第1の表面73および第1の表面73の反対側の第2の表面74も含む。接着材料68は、結晶基板60の第1の表面62と剛性担体72の第1の表面73との間に延在する。示されているように、結晶材料基板60の第1の表面62に近接した結晶材料基板60の周縁部の少なくとも一部(または、任意選択的にその全部)の周囲には、露出した接着剤リップ70が設けられている。特定の実施形態では、剛性担体72は、所望の温度範囲にわたって結晶材料基板60のCTEよりも大きいCTEを有する材料を含み、結晶材料60の破砕は、低温の媒体(例えば、
冷却液)または状態に曝すことで少なくとも剛性担体72(または担体および基板60)を冷却することによって、開始され得る。
【0159】
[担体/基板のCTE不整合のある剛性担体の冷却による破砕]
図10A図10Fは、結晶材料に結合されたCTE不整合のある剛性担体を利用する、本開示の一実施形態に係る半導体加工方法のステップを示す。図10Aは、剛性担体72の第1の表面73に結合された接着材料68の層を有する、および第1の表面73の反対側の第2の表面74を有する、剛性担体72の、側方概略断面図である。第1の表面73へのより良好な接着を促進するために、かかる表面を接着材料68の適用前に(例えば、反応性イオンエッチングによって)エッチングしてもよい。接着材料68は、スピン・コーティング、吹き付け、ディッピング、ローリング、または類似のものなど、任意の好適な方法によって適用することができる。
【0160】
図10Bは、表面下レーザ・ダメージ領域66のある結晶材料基板60に結合されている、図10Aの剛性担体72と接着材料68とを含む組立体58’の概略断面図である。示されているように、剛性担体72は、結晶材料基板60よりも大きい直径または横方向の伸びを有する。図10Bの組立体58’は図9に示すものと類似しているが、図9に示す露出した接着剤リップがない。図10Bを引き続き参照すると、結晶材料基板60は接着材料68に近接した第1の表面62を含み、かつ反対側の第2の表面64を含み、表面下レーザ・ダメージ66は基板60の第2の表面64よりも第1の表面62の近くにある。剛性担体72はまた接着材料68に近接した第1の表面73も含み、接着材料68は結晶基板60の第1の表面62と剛性担体72の第1の表面73の間に延在する。選択した接合方法(例えば、高温熱圧縮接着剤接合、圧縮UV接合、化学反応性接合、等)の要件に従って、接着材料68を硬化させることができる。結晶材料基板60の第2の表面はベアの状態で示されているが、特定の実施形態では、基板60の第2の表面64には(一時的にまたは永続的にのいずれかで)第2の担体(図示せず)が接合されてもよく、このとき第2の担体は任意選択的に基板60以下の幅である、および/または、基板60とCTE整合している。
【0161】
図7Cは、剛性担体72の第2の表面74を、冷却液を受けるように構成されている冷却したチャック76の形態の冷却装置の支持表面78上に位置付けた後の、図10Bの組立体の概略断面図である。剛性担体72と冷却したチャック76の間の接触によって、剛性担体72から冷却したチャック76へと熱が伝達され、これによって剛性担体72が急速に冷却される。そのような冷却工程中、剛性担体72は、結晶材料基板60よりも大きく横方向に収縮することになり、これにより、結晶材料基板60に対してせん断応力を及ぼす。剛性担体72を結晶材料基板60に結合する接着剤層68の近くに表面下レーザ・ダメージ66が存在することに起因して、基板60に対してせん断応力を及ぼすことによって、表面下レーザ・ダメージ領域66に沿ってまたは近接して、結晶材料が破砕されることになる。
【0162】
特定の実施形態では、冷却したチャック76は、剛性担体72の直径よりも小さい直径を有する。図10Cの組立体の冷却は、剛性担体72の第2の表面74からだけしか必要なく、横方向(すなわち、中央から縁部へと)および垂直方向(すなわち、結晶材料基板60から剛性担体72へと)の両方で温度差を作り出すためには、剛性担体72の中央部分に対してのみ必要であり得ることが見出されている。冷却したチャック76には冷却液を供給することができるが、結晶材料基板60の熱誘起の破砕を首尾よく完了するために、剛性担体72が液体窒素温度(-160℃)に達する必要はない。-70℃に維持される冷却したチャックを使用して、結晶サファイア基板によって支持された単一のSiC材料の破砕に関する好ましい分離結果が得られている。そのような温度は、様々な冷却液、例えば二相ポンプ式気化冷却システムから受けられる液体メタノール(その凝固点-97
℃超では流動性が維持される)を使用して維持され得る。担体、接着剤、および基板を-20℃に維持された冷凍庫内で冷却することによっても好ましい分離結果が得られたが、この場合、そのような温度は単相気化冷却システムを使用して維持され得る。液体窒素ではなく単相気化冷却システムまたは二相ポンプ式気化冷却システムを使用できることによって、運用コストが大きく低減される。
【0163】
図10Dは、表面下レーザ・ダメージ領域に沿った結晶材料の破砕後の、剛性担体72と、接着材料68と、基板60Aの残りの部分から除去した結晶材料の部分80とを含む、(水冷チャック76の上にある)接合された組立体から分離された結晶材料基板60Aの残りの部分の概略断面図である。結晶材料基板60Aの残りの部分は、第2の表面64の反対側の、(残留レーザ・ダメージ66Aを有する)新しい第1の表面63を境界としている。これに対応して、結晶材料の除去した部分80は、第1の表面62の反対側の、(残留レーザ・ダメージ66Bを有する)新しい第2の表面82を境界としている。その後、剛性担体72と接着材料68と結晶材料の除去した部分80とを含む接合された組立体85を、冷却したチャック76から回収することができる。
【0164】
図10Eは、水冷チャック76から回収した後の、図10Dの接合された組立体85の概略断面図である。除去した結晶材料の一部80を剛性担体72に取り付けた状態に維持することによって、除去した結晶材料の一部80の機械的支持が実現し、この結果、残留レーザ・ダメージ66Bを除去し、結晶材料80の望ましい厚さを(例えば、研削、ならびにその後の任意選択的な化学機械平坦化(CMP)ステップおよび/または様々な研磨ステップを介して)達成するための、新しい表面82に対する1つまたは複数の表面加工ステップ(例えば、研削、研磨、等)の実行が可能になって、有利である。特定の実施形態では、レーザ・ダメージ除去および薄層化は、2000グリット研磨パットおよび7000グリット研磨パットによる連続的な研削/研磨工程、ならびに、新しい表面82を次の工程(例えば、表面注入、(例えば、ウエハ・フラットに近接した)レーザ・マーキング、エピタキシャル層の形成、金属化、等)に向けて準備するための、任意の好適な研磨および洗浄ステップを含み得る。
【0165】
図10Fは、加熱した真空チャック86の上側表面88によって支持された、結晶材料の除去した部分80の概略断面図であり、剛性担体72および接着材料68は、接着材料68の高温軟化および解放の後で、結晶材料の除去した部分82部分から離れる方に横方向に並進されている。すなわち、加熱した真空チャック86は、剛性担体72の第2の表面74に外部せん断応力を適用したときに、加熱した真空チャック86によって所定位置に一次的に保持されている結晶材料の除去した部分82から離れる方へと横方向に剛性担体72を並進させることができるように、接着材料68を軟化および/または流動させるのに十分な温度まで、加熱することができる。その後、加熱した真空チャック86の動作を停止してもよく、結晶材料の除去した部分82は自立できる材料を具現化したものとなる。所望であれば、剛性担体72の第1の表面73から接着剤68の残渣を全て除去し洗浄することができ、剛性担体72を任意選択的に別の破砕工程のために再利用することができる。次いで除去した結晶材料を、1つまたは複数のエピタキシャル層および導電金属層を成長させてデバイス・ウエハを形成するための成長基板として使用することができ、デバイス・ウエハは個片化されて個別の半導体デバイスを形成する。
【0166】
特定の実施形態では、適切なCTE不整合のある剛性担体が支持する結晶材料基板に熱誘起の破砕を生じさせるために、冷媒槽(例えば、液体窒素、またはポンプ式気化冷却システムから受けられるメタノールなどの他の冷媒液の槽)内に、冷却したチャックを設置することができる。
【0167】
図11は、冷却液(例えば、ポンプ式気化冷却システムから受けられるメタノール、ま
たは液体窒素)の槽79内に配置されている冷却したチャック76Aの形態の冷却装置上にある、図10Cに係る組立体の概略断面図である。接着材料68が、剛性担体72と表面下レーザ・ダメージ領域66のある結晶材料基板60との間に配置されており、表面下レーザ・ダメージ領域66は基板60の反対側の第2の表面64よりも第1の表面62の近くにあり、第1の表面62は接着材料68に接触している。剛性担体72は、接着材料68に接触している第1の表面73と、冷却したチャック76Aの支持表面78Aと接触するように配置されている反対側の第2の表面74と、を含む。冷却したチャック76Aは、剛性担体72の直径よりも小さい直径を有する。冷却したチャック76Aは、冷却したチャック76Aの温度を冷媒温度までまたはその付近まで下げるのに十分な冷媒槽(例えば、液体窒素槽)内に配置されている。特定の実施形態では、冷却したチャック76Aおよび冷媒槽79は閉鎖可能な絶縁容器(図示せず)内に配置されてもよく、単一の結晶材料基板60を表面下レーザ・ダメージ領域66に沿って迅速に破砕するために、この容器を選択的に開いて、取り付けられた接着材料68と表面下レーザ・ダメージ66のある結晶材料基板60とを有する剛性担体72を、冷却したチャック76Aと接触させて設置できるようにしてもよい。
【0168】
図12は、底壁96を境界とする円筒形の側壁94を有する容器92を含む、冷却装置90の斜視図であり、底壁96の上に熱伝導性のスペーサ98(例えば、アルミニウム製レール)によって、チャック100が支持されている。チャック100は工作物に吸引力を十分適用できるタイプのものであるが、(真空源に接続されるように構成されている吸引ポート102、およびチャック上側表面106に沿って配置されている穿孔104によって提供される)真空吸引の機能性を、冷却工程中に提供する必要はない。使用中、容器92にスペーサ98に接触するように冷却液を供給することができるが、必ずしもチャック100自体の全幅には接触しない。チャック100から熱伝導性のスペーサ98を通して冷却液へと、熱を伝達することができる。実験では、示されている設計による真空チャック100を-70℃前後の温度に維持した。図10Bに示すような組立体58’の担体側は、剛性担体が迅速に冷却されるように、チャック上側表面106上に設置され得る。担体とそこに接着された結晶材料基板の間のCTE不整合に起因して、表面下レーザ・ダメージ領域に沿って熱誘起の破砕が誘起されることになる。発明者らは、機械的介入を行うことなく、本明細書で開示する熱可塑性接着剤を使用して、最大約-20℃の温度での4H-SiCの自然発生的な分離を観察した。
【0169】
[担体の形状および結晶材料に対する位置決め]
既に指摘したように、剛性担体は望ましくは、本明細書に開示するような方法と一緒に使用されるとき、そこに接合された基板の対応する寸法と少なくとも同じ大きさの、またはそれを上回る横方向の寸法(例えば、直径、または長さおよび幅)を有し得る。図13A図13Eは、結晶材料の基板に各々結合された様々な形状の担体を含む、接合された組立体の上面図であり、図13Fおよび図13Gは、それぞれ図13Dおよび図13Eの、接合された組立体の側方断面図を提供する。図13Aは、フラット114とフラット114の反対側の丸味のある部分116とを有する略円形の基板112を含む、第1の接合された組立体110を示し、基板112は、基板112と実質的に同心である正方形形状の担体118に接合されている。図13Bは、フラット124とフラット124の反対側の丸味のある部分126とを有する略円形の基板122を含む、第2の接合された組立体120を示し、基板122は、基板122と実質的に同心である丸形の担体128に接合されている。基板122の直径を局所的に小さくするフラット124の存在に起因して、フラット124に近接して担体128のより大きい境界部分129が提供される。図13Cは、フラット134とフラット134の反対側の丸味のある部分136とを有する略円形の基板132を含む、第3の接合された組立体130を示し、基板132は、基板132と非同心である丸形の担体138に接合されており、基板132の丸味のある部分136は、基板132の残りの部分よりも担体138のエッジに実質的により近くなっている
。フラット134は存在しない場合であっても、丸味のある部分136の反対側には担体138のより大きい境界部分139が存在することになるが、フラット134が存在する場合、担体138の境界部分139は、図13Bに示す境界部分129よりも更に大きくなる。図13Cに示すように、ある領域に局所的に大きくなった境界部が、および反対側のある領域に局所的に小さくなった境界部が存在することは、特定の実施形態において、担体138に接合された基板132の機械的な破砕を可能にするために有利な場合があり、このとき、局所的に大きくなった境界部はこじりツール(図示せず)の存在を受け入れ、局所的に小さくなった境界部は、(分離装置の幾何形状によって決まる)上側基板の傾斜の動きにさもなければ抵抗する可能性のある張り出しを限定する。
【0170】
図13Dおよび図13Fは、フラット144とフラット144の反対側の丸味のある部分146とを有する略円形の基板142を含む、第4の接合された組立体140を示し、基板142は、基板142と実質的に同心である主として丸形の担体148に接合されているが、担体148は、基板142のフラット144に近接して局所的に大きくなった境界部を提供する、単一の横方向に突出するタブ部分149を含む。担体148の横方向に突出するタブ部分149は、フラット144に対して垂直な方向に破砕を開始する傾向を有する曲げモーメントが付与されるような様式で、局所化された機械的な力を適用できるように、フラット144と位置合わせされ得る。図13Fに示すように、基板142の下に同じまたは異なる形状の第2の担体148’を設けることができ、表面下レーザ・ダメージ領域143は上側担体148の方により近い。突出したタブ部分149の存在によって、担体148、148’の間に単一のこじりツール(図示せず)を挿入することが可能になる。
【0171】
図13Eおよび図13Gは、フラット154とフラット154の反対側の丸味のある部分156とを有する略円形の基板152を含む、第4の接合された組立体150を示し、基板152は、基板152と実質的に同心である主として丸形の担体158に接合されているが、担体158は、局所的に大きくなった境界エリアを提供する、両側の第1の横方向に突出するタブ部分159Aおよび第2の横方向に突出するタブ部分159Bを含み、一方の局所的に大きくなった境界エリアは基板152のフラット154に近接している。担体158の横方向に突出するタブ部分159A、159Bは、フラット154に対して垂直な方向に破砕を開始する傾向を有する曲げモーメントが付与されるような様式で、局所化された機械的な力を適用できるように、フラット154と位置合わせされ得る。図13Gに示すように、基板152の下に同じまたは異なる形状の第2の担体158’を設けることができ、表面下レーザ・ダメージ領域153は上側担体158の方により近い。横方向に突出するタブ部分159A、159Bの存在によって、機械的な力を加えるために担体158、158’の間にツール(図示せず)を挿入することが可能になる。表面下レーザ・ダメージ領域に沿った結晶材料の破砕を開始するための機械的な力の適用に関する追加の詳細について、本明細書において以下で図15A図15Dおよび図16A図16Bと関連させて検討する。
【0172】
図13Fおよび図13Gは、基板142、152の横方向寸法を上回る横方向寸法を有する上側担体148、158および下側担体148’158’を示しているが、特定の実施形態では、下側担体148’、158’は対応する基板142、152よりも大きくないことが諒解されるべきである(例えば、基板142、152が真空チャックまたは他の手段で保持される場合、上側担体148、158に適用される機械的な力に抵抗するための基礎を提供するために。
【0173】
[超音波エネルギーが誘起する破砕]
剛性担体に接合された結晶材料のレーザが誘起した表面下ダメージ・ゾーンに沿って破砕を生じさせるための別の方法は、接合された状態にある間に結晶材料に超音波エネルギ
ーを適用することを含む。図14は、介在する接着材料68Aを使用して剛性担体72Aに接合された表面下レーザ・ダメージ66A’のある結晶材料60Aを含む、組立体58Aの概略断面図であり、組立体58Aは超音波発生器装置160の液槽165内に配置されている。装置は、超音波生成要素164と接触させて配置されている容器162を更に含み、容器162は液槽165を収容している。剛性担体72Aの存在によって、特に分離前に残留応力が(例えば、CTE不整合に起因して)剛性担体72Aと結晶材料60Aの間に留まる場合に、超音波エネルギーを受けたときの結晶材料60Aの破損を低減または排除できる。そのような残留応力によって、結晶材料の破砕を開始するために必要な超音波エネルギーの量を低減させることができ、このことにより、材料破損の可能性が低減される。この点に関して、2つ以上の破砕技法を組み合わせること(例えば、CTE不整合および超音波誘起の破砕、またはCTE不整合および機械的作用誘起の破砕、または超音波誘起および機械的作用誘起の破砕)が特に企図されることが留意される。特定の実施形態では、超音波エネルギーの適用前または適用中に、超音波槽の液体を冷却することができる。
【0174】
[機械的な力が誘起する破砕]
特定の実施形態では、剛性担体に接合された結晶材料の破砕は、担体の少なくとも1つのエッジに近接した、(例えば、任意選択的に1つまたは複数の箇所に局所化された)機械的な力の適用、によって促進され得る。そのような力は、担体の少なくともの一部に曲げモーメントを付与することができ、そのような曲げモーメントは破砕を開始するために表面下レーザ・ダメージ領域に伝達される。
【0175】
本明細書で既に指摘したように、複数の破砕技法を同時に、または連続的に使用することができる。特定の実施形態では、CTE不整合が機械的な力と組み合わせて利用され得る。基板と担体の間に大きなCTE不整合が存在し、温度が適切に下げられる場合には、分離を促進するため、必要な機械的な力をより少なく(またはゼロに)することが必要とされ得る。逆に、基板と担体の間に存在するCTE不整合の程度が低い(またはゼロである)場合には、分離を完了するために必要な機械的な力はより大きくなり得る。
【0176】
機械的な力の適用によって剛性担体に接合された表面下ダメージを有する結晶材料の破砕を促進する例示の実施形態が、図15A図15Dおよび図16A図16Bに示されている。
【0177】
図15A図15Dは、基板142が接合される担体148の一方のエッジに近接して機械的な力を適用することによって、表面下レーザ・ダメージ143のある結晶材料基板142を破砕するためのステップを説明する概略断面図である。これらの図は、図13Dおよび図13Fに示す同じ接合された組立体140を利用する。接合された組立体は、剛性担体148、148’の間に(本明細書で開示する任意の接合方法に従って)接合された、表面下レーザ・ダメージ領域143を有する結晶材料基板142を含む。各剛性担体148、148’は、ツール166を挿入可能な凹部141を画定する局所的に大きくなった境界領域を提供する、基板142のフラット145と位置合わせされた横方向に突出するタブ部分149、149’を含む。図15Aは、ツール166を凹部141に挿入する前の状態を示す。図15Bはツール166を凹部に挿入した後の状態を示し、このときツール166は上向きに傾斜しており、このことにより、剛性担体148、148’の間の分離を促進しようとする方向にこじり力が働き、このことにより、少なくとも1つの担体148に対して曲げモーメントMが作用する。特定の実施形態では、基板142は六方晶構造を有する材料(例えば、4H-SiC)を含み、曲げモーメントMは、六方晶構造の[11-20]方向に対する垂直方向から±5度以内に(または等価なものとして、[1-100]方向との平行方向から±5度以内に)配向される。曲げモーメントMのそのような配向は、基板142がオフアクシス(微斜面)材料を含む場合に特に望ましい。こ
の配向は、基板142がオンアクシス材料を含む場合にはそれほど重要ではなくなる場合がある。図15Cは、表面下レーザ・ダメージ領域143に沿った結晶材料基板142の最初の破砕後の状態を示し、この場合、結晶材料の上側部分142Aは上側担体148に接合されたままであり、結晶材料の下側部分142Bは下側担体148’に接合されたままであり、上側担体148は下側担体148’に対して上向きに傾斜している。図15Dは、破砕が完了しツール166が取り除かれた後の状態を示し、そのような破砕によって、第2の接合された組立体168B(下側担体148’と結晶材料の下側部分142Bとを含む)から分離された、第1の接合された組立体168A(上側担体148と結晶材料の上側部分142Aとを含む)が得られる。
【0178】
特定の実施形態では、担体に接合されている表面下レーザ・ダメージのある結晶材料の破砕を促進するために、基板が接合されている剛性担体の両側のエッジに近接して、機械的な力を適用することができる。図16Aは、(接着材料174で基板172に接合された)剛性担体176の両縁部に沿って機械的な力を適用して担体174の複数の部分に曲げモーメントM、Mを付与することによって、表面下レーザ・ダメージ領域173に沿って結晶材料基板172を破砕するための装置170の、概略断面図である。基板172の下には、制限要素171(例えば、真空チャック、下側基板、または他の支持体)が提供され得る。担体176の横方向の伸び(例えば、直径、または長さおよび幅)は基板172よりも大きく、担体176は、持ち上げ部材175A、175Bによって受けられる両側の横方向に突出したリップ179A、179Aを形成している。担体176の中央部分は、制限部材177によって持ち上がることが制限される(例えば、下向きに押圧される)。横方向に突出したリップ179A、179Bに持ち上げ部材175A、175Bによって垂直方向の持ち上げる力が加えられ、制限部材177によって担体176の中央部分の上向きの移動が防止されると、担体176の両側に曲げモーメントM、Mが及ぼされ、そのような曲げモーメントM、Mが接着材料174によって基板172に伝達されて、表面下レーザ・ダメージ領域173に沿った基板172の破砕が開始される。その後、制限部材177および持ち上げ部材175A、175Bを解放することができ、破砕が完了し得る。図16Bは破砕が完了した状態を示し、剛性担体176と接着材料174と結晶材料172の残りの部分から分離された結晶材料基板部分172Aとを含む、接合された組立体178が作り出されている。結晶材料基板部分172Aの露出した表面173A、173Bおよび結晶材料172の残りの部分は、表面不規則性を呈し得るが、これらは従来の表面加工ステップ(例えば、研削、CMP、および/または研磨)によって低減することができる。特定の実施形態では、結晶材料基板部分172Aに対してそのような表面加工ステップが実行され得るが、このときそのような部分は剛性担体176に接合されたままである。
【0179】
図15A図15Dおよび図16A図16Bは、表面下レーザ・ダメージ領域に沿った基板の機械的な破砕を促進するための具体的な装置の例を提供するが、当業者が認識するであろうように、本明細書に開示する方法を実施するために他の装置を使用できることが諒解されるべきである。
【0180】
[担体接合の前または後の表面下レーザ・ダメージ形成]
剛性担体への接合前に結晶材料基板にレーザ表面下ダメージを形成することは本明細書で既に記載したが、特定の実施形態では、所望の波長のレーザ放射に対して透過性の剛性担体が、表面下レーザ・ダメージ形成前の結晶材料基板に接合される場合がある。そのような実施形態では、レーザ放射は、剛性担体を通して結晶材料基板の内部へと伝達され得る。異なる担体-基板表面下レーザ形成構成を、図17A図17Cに示す。図17Aは、基板182内に表面下レーザ・ダメージ183を形成するべくベア基板182の表面を通って集束されている、レーザ放射181の概略図であり、基板182には表面下レーザ・ダメージの形成後に剛性担体が付着され得る。図17Bは、基板182内に表面下レー
ザ・ダメージ183を形成するべく基板182の表面を通って集束されている、レーザ放射181の概略図であり、基板182は事前に接着材料184を使用して剛性担体186に接合されている。図17Cは、剛性担体186に事前に接合された基板182内に表面下レーザ・ダメージ183を形成するべく剛性担体186および接着剤184を通して集束されている、レーザ放射181の概略図である。特定の実施形態では、担体186から遠位の基板182の表面は、1つまたは複数のエピタキシャル層および/または金属化層を含むことができ、基板182は表面下レーザ・ダメージ183の形成前の動作可能な電気デバイスを具現化している。図17Dは、剛性担体186に(例えば、陽極接合または他の接着剤不使用の手段を介して)事前に接合された基板182内に表面下レーザ・ダメージ183を形成するべく、剛性担体186を通して(介在する接着剤層を有さない)基板182内へと集束されている、レーザ放射181の概略図である。
【0181】
[デバイス・ウエハ分割工程]
特定の実施形態では、結晶材料に動作可能な半導体ベースのデバイスの一部として少なくとも1つのエピタキシャル層(および任意選択的に少なくとも1つの金属層)を形成した後で、その結晶材料にレーザ・アシストおよび担体アシストの分離方法を適用することができる。そのようなデバイス・ウエハ分割工程は、デバイス形成後に基板材料を研削して除去する必要性を大きく低減することによって、結晶材料の歩止まりを高める(および廃棄を減らす)ことができるため、特に有利である。
【0182】
図18A図18Oは、デバイス・ウエハ分割工程のステップを説明する概略断面図であり、これらに従って、結晶材料から厚いウエハを破砕し、厚いウエハ上で少なくとも1つのエピタキシャル層を成長させ、厚いウエハを破砕して担体と厚いウエハから分けられた薄いウエハとを各々含む第1および第2の接合された組立体を形成し、第1の接合された組立体は、動作可能な半導体ベースのデバイスの一部として少なくとも1つのエピタキシャル層を含む。
【0183】
図18Aは、第1の表面191と第1の表面に対して所定の深さに配置された表面下レーザ・ダメージ193とを有する、結晶材料基板190を示す。図18Bは、第1の表面191を覆うように接着材料194を追加した後の、図18Aの基板190を示す。図18Cは、剛性担体196を接着材料194を使用して基板190に接合した後の、図18Bに描かれているアイテムを示す。図18Dは、基板190を(例えば、本明細書で開示する1つまたは複数の方法を使用して)表面下レーザ・ダメージ193に沿って破砕した後の、図18Dのアイテムを示し、担体196と、接着材料194と、基板190から除去した結晶材料部分(例えば、厚いウエハ)192と、を含む、接合された組立体から分離された基板190の残りの部分が生じている。特定の実施形態では、厚いウエハ192は、おおよそ350から750ミクロンの範囲内の厚さを有し得る。厚いウエハ192の露出した表面193Aおよび基板190の残りの部分の露出した表面193Bは表面不規則性を呈し得るが、これらは研削、CMP、研磨、等などの表面加工ステップによって低減することができる。図18Eは、担体196から接合解除し取り外した後の厚いウエハ192を示し、厚いウエハ192は垂直なエッジ・プロファイルを含む。ウエハの垂直なエッジはウエハの取り回し中に容易に破砕し、許容できないエッジのチップおよび粒子を生じさせる。破損のリスクを低減するために、ウエハ・エッジをエッジ研削して、面取りされたまたは丸められたエッジを有する非垂直なウエハ・エッジを作り出すことができる。図18Fは、厚いウエハ192に丸められたエッジ・プロファイル197を付与するように構成されている(例えば、ダイヤモンド粒子を含浸させた)凹状の切削表面199Aを有する回転式プロファイル研削ツール199に近接した回転台198によって支持されている、厚いウエハ192を示す。図18Gは、エッジ研削(エッジ・プロファイリングとしても知られる)後の厚いウエハ192を示し、この厚いウエハは、第1のウエハ表面201と第2のウエハ表面202の間の境界を提供する、丸められたエッジ197を含む
【0184】
図18Hは、厚いウエハ201の第1の表面201上にまたはこれを覆って1つまたは複数のエピタキシャル層203を成長させた後の、図18Gのアイテムを示す。接着剤とエピタキシに固有の高温との不適合性に起因して、図18Dに示す担体は存在していない。図18Iは、少なくとも1つの動作可能な半導体デバイスを形成するためにエピタキシャル層203の上に導電(例えば、金属)コンタクト204を形成した後の、構造図18Hを示し、厚いウエハ192はまだ丸められたエッジ197を有している。従来、研削は、第2の表面202に対して、厚いウエハ192を結果的なデバイスにとって適切な厚さ(例えば、ショットキー・ダイオードまたはMOSFETでは100から200ミクロン)にまで薄くするために、行われるものである。本明細書で開示する手法は、ウエハ研削の必要性を低減し、代わりに、厚いウエハの一部を除去し、これに表面仕上げを行って別の動作可能な半導体デバイスの製作に使用できるようにするために、レーザ・アシストおよび担体アシストの分離を利用する。
【0185】
発明者らは、厚いウエハ192上の丸められたエッジ197の存在がエッジ197に近接した表面下レーザ・ダメージの形成の制御を阻害しており、その理由が、丸められたプロファイルがレーザ焦点および深さの制御に悪影響を与えるからであることを見出した。この問題に対処するために、厚いウエハ192の丸められたエッジ197を、更なるレーザ加工の前に除去することができる。図18Jは、丸められたエッジ197を研削して除去し、厚いウエハ192の第1の表面201と第2の表面202の間に延在する実質的に垂直なエッジ205を付与するために、エッジ・グラインダ206で研削されている、図18Iの構造を示し、エピタキシャル層203およびコンタクト204が第1の表面201の上に配置されている。
【0186】
図18Kは、第1の担体を受け接着するための準備として、厚いウエハ192の第1の表面201、エピタキシャル層203、およびコンタクト204を覆う一時的接着材料207を追加した後の、図18Jの構造を示す。図18Lは、一時的接着材料207を覆うように第1の担体208を追加した後の、および、厚いウエハ192の第2の表面202を通して集束されたレーザ放射を当てることによって厚いウエハ192内に表面下レーザ・ダメージ209を形成した後の、図18Kの構造を示す。図18Mは、表面下レーザ・ダメージ209に近接させて第2の剛性担体210を厚いウエハ192の第2の表面202に接合した後の、図18Lの構造を示す。分離を目的として、第2の剛性担体210は、厚いウエハ192の一部(すなわち、層)を除去するように意図されている前面担体としての役割を果たす。
【0187】
図18Nは、本明細書で開示する少なくとも1つの破砕工程を適用して、表面下レーザ・ダメージ209に沿って厚いウエハ192を破砕し、第1の接合された二次組立体212Aおよび第2の接合された二次組立体212Bを得た後の、図18Mのアイテムを示す。第1の接合された二次組立体212Aは、(図18Mの厚いウエハ192から分離された)第1の薄いウエハ部分192Aと、エピタキシャル層203と、コンタクト204と、一時的接着材料と、第1の担体208と、を含む。第2の接合された二次組立体212Bは、(図18Mの厚いウエハ192から分離された)第2の薄いウエハ部分192Bと、第2の担体210と、を含む。薄いウエハ部分192Aの露出した表面209Aおよび薄いウエハ部分192Bの露出した表面209Bは、レーザ・ダメージおよび/または破砕に起因する表面不規則性を呈し得るが、これらは従来の表面加工ステップ(例えば、研削、CMP、および/または研磨)によって低減することができる。図18Oは、一時的接着剤207および第1の担体208を除去することによって第1の接合された下位組立体212Aから得られた、動作可能な半導体デバイス214を示す。そのような図はまた、第2の薄いウエハ部分192Bを更なる処理(例えば、エピタキシャル成長)に向けて
準備するべく第2の担体210を除去した後の、第2の薄いウエハ部分192B。
【0188】
[担体ウエハの再利用を含む例示の方法]
図19は、本開示に係る方法のステップを概略的に説明するフローチャートである。左上から始めて、レーザ216は、厚い結晶材料基板220(例えば、SiCインゴット)の第1の表面222よりも下にレーザ放射を集束させて、表面下レーザ・ダメージ領域218を作り出すことができる。基板220がSiC材料である場合には、レーザ放射はSiC基板220のC終端面に当てられる。その後、担体ウエハ224を結晶材料基板220の第1の表面222に接合することができ、担体ウエハ224は、(基板220の第1の表面222から近位の)第1の表面226と、担体ウエハ224の第1の表面226の反対側の第2の表面228と、を含む。担体ウエハ224と結晶材料基板220の間のそのような接合は、接着剤接合または陽極接合などの、本明細書で開示するいずれかの方法によって実行され得る。その後、本明細書で開示する破砕工程(例えば、CTE不整合の担体の冷却、超音波エネルギーの適用、および/または機械的な力の適用)が、表面下レーザ・ダメージ領域218に沿って結晶材料220の破砕に適用されて、担体ウエハ224に固着された結晶材料部分230を結晶材料基板220Aの残りの部分から分離させる。残留レーザ・ダメージを有する結晶材料基板220Aの残りの部分の新たに露出した表面232Aは、平滑に研削され、洗浄され、工程の始め(図19における左上)に戻される。また、除去した結晶材料230の新たに露出した表面234は、担体224に取り付けられたまま平滑に研削される。その後、担体ウエハ224を結晶材料230の除去した部分から分離することができ、結晶材料230に1つまたは複数の層のエピタキシャル成長を行ってエピタキシャル・デバイス230’を形成することができ、一方で担体ウエハ224は洗浄されて、結晶材料基板220の別の比較的薄い切片の除去を行わせるために、(図19の左上の)工程の始めに戻される。
【0189】
図20は、表面下レーザ・ダメージ218を示す図19の結晶材料基板(例えば、SiCインゴット)220の一部の概略断面図であり、重ね合わせた点線によって、予期されるカーフ・ロス材料領域240が識別されている。予期されるカーフ・ロス材料領域240は、レーザ・ダメージ218と、更に、基板220から分離されることになる結晶材料部分230(例えば、SiCウエハ)の下面238(例えば、Si終端面)から機械的に(例えば、研削および研磨によって)除去されることになる材料234と、更に、基板220の残りの部分220Aの上面232A(例えば、C終端)面から機械的に(例えば、研削および研磨によって)除去されることになる材料236と、を含む。結晶材料部分230の下面238は、その上面222の反対側にある。特定の実施形態では、SiCが更なる加工にとって十分な基板上面232Aおよびウエハ下面238を提供するように、カーフ・ロス材料領域全体が、80~120ミクロンの範囲内の厚さを有し得る。
【0190】
[複数の研削ステーション/ステップを用いる材料加工]
特定の実施形態では、レーザ加工および破砕を受ける結晶材料を、表面下ダメージを除去するための複数の表面研削ステップ、および、面取りされたまたは丸められたエッジ・プロファイルを付与するためのエッジ研削で、更に加工することができ、この場合、追加の表面ダメージを付与する可能性を低くするように、および、結晶材料ウエハを化学機械平坦化に向けて準備するように、研削ステップの順序が選択される、および/または、保護表面コーティングが採用される。そのようなステップは、例えば、本明細書で開示する実施形態に係る材料加工装置を使用して実行することができ、この場合、例示の装置は、レーザ加工ステーションと、破砕ステーションと、破砕ステーションの下流に並列に配置された複数の粗研削ステーションと、粗研削ステーションの下流に配置された少なくとも1つの精密研削ステーションと、を含む。ワイヤ・ソーイングで切断したウエハを加工するときは、ワイヤ・ソーイングの表面ダメージを除去するために、表面の研削または研磨の前にエッジ研削を実行するのが一般的である。しかしながら、レーザ・ダメージを有す
る基板部分(例えば、ウエハ)のエッジ研削を破砕ダメージと組み合わせると、基板部分にクラックが発生する可能性が高まることが、発明者らによって見出されている。この現象の理由に関する何らかの特定の理論に縛られることを望むものではないが、少なくとも何らかの表面加工(研削および/または研磨)の前にエッジ研削が行われる場合、表面破砕の結果生じる露出した劈開面によって、表面はクラックを生じ易くなると考えられている。この理由により、エッジ研削の前に少なくともある程度の表面加工(例えば、研削および/または研磨)を実行するのが有益であることが見出されている。
【0191】
粗研削ステップ(すなわち、基板部分およびバルク基板の破砕した表面に沿ったレーザ・ダメージおよび破砕ダメージを除去するための)は、先行するレーザ加工および破砕のステップよりも完了するのに顕著に長い時間を、および次の精密研削のステップよりも顕著に長い時間を要する傾向にあることが見出されている。この理由のため、バルク結晶材料(例えば、インゴット)からの複数のウエハの製作におけるボトルネックを解消するために、複数の粗研削ステーションが並列に設けられる。特定の実施形態では、複数の粗研削ステーションの上流および下流に、基板部分の装填および取り出しを制御するためのロボット・ハンドラが配置され得る。特定の実施形態では、レーザ加工ステーションと破砕ステーションの間に担体接合ステーションを設けることができ、エッジ研削ステーションの(直接または間接のいずれかの)上流に担体除去ステーションを設けることができる。担体は望ましくは、特に薄い基板部分(例えば、ウエハ)について破損の可能性を低減するために、少なくともいくつかの表面研削ステップの間、基板部分に接合されたままとすることができるが、担体は、エッジ研削の前に(またはエッジ研削の前にウエハを保護コーティングでコーティングする前に)取り外されるのが好ましい。
【0192】
特定の実施形態では、担体接合ステーションは、一時的接合媒体で事前コーティングされた担体を使用し、担体を基板表面とアライメントしてそれに押し付け、その接合媒体を担体と基板の間の接合を行わせるための必要条件(例えば、熱および圧力)に曝すことができる。別法として、担体接合ステーションは、担体または基板を要求に応じてコーティングするために使用できる、コーティング・ステーションを含み得る。
【0193】
図21は、レーザ加工ステーション302と、担体接合ステーション303と、材料破砕ステーション304と、並列に配置された複数の粗研削ステーション308A、308Bと、精密研削ステーション312と、担体除去ステーション313と、CMPステーション314と、を含む、一実施形態に係る材料加工装置300の概略図である。レーザ加工ステーション302は、少なくとも1つのレーザと、結晶材料(例えば、インゴット)に表面下レーザ・ダメージを形成するための少なくとも1つのレーザ・ビームを受けるように配置された少なくとも1つの基板のための、ホルダと、を含む。担体接合ステーション303は、(表面下レーザ・ダメージを有する)結晶材料を少なくとも1つの剛性担体に接合するように構成されている。破砕ステーション304は、担体接合ステーション303から(剛性担体に接合された基板を各々含む)1つまたは複数の組立体を受けるように、および、(担体に接合されたウエハと類似している場合のある)基板部分を除去するために、表面下レーザ・ダメージ領域に沿って少なくとも1つの基板を破砕するように、配置されている。破砕ステーション304の下流には、第1の粗研削ステーション308Aおよび第2の粗研削ステーション308Bが並列に配置されており、破砕ステーション304から受け取った(接合された組立体の一部としての)基板部分を第1の粗研削ステーション308Aまたは第2の粗研削ステーション3048Bのいずれかに交互に送るための、第1のロボット・ハンドラ306が設けられている。第1の粗研削ステーション308Aおよび第2の粗研削ステーション308Bの下流には、(接合された組立体の一部としての)粗研削された基板部分を精密研削ステーション312に送るための、第2のロボット・ハンドラ310が設けられている。精密研削ステーション312の下流には担体除去ステーション313が設けられており、これは担体から研削された基板部分を分離す
る役割を果たす。担体除去ステーション313の下流には、基板部分を洗浄およびエピタキシャル成長などの更なる処理に向けて準備するための、化学機械平坦化(CMP)ステーション314が配置されている。CMPステーション314は精密研削後に残るダメージを除去するように機能するが、精密研削自体は粗研削後に残るダメージを除去するものである。特定の実施形態では、各粗研削ステーション308A、308Bは、5000グリット未満の研削表面を有する少なくとも1つの研削ホイールを備え、精密研削ステーション312は、少なくとも5000グリットの研削表面を有する少なくとも1つの研削ホイールを備える。特定の実施形態では、各粗研削ステーション308A、308Bは、結晶材料部分(例えば、ウエハ)から20ミクロンから100ミクロンの厚さの結晶材料を除去するように構成されており、精密研削ステーション312は、3から15ミクロンの厚さの結晶材料を除去するように構成されている。特定の実施形態では、各粗研削ステーション308A、308Bおよび/または精密研削ステーション312は複数の研削サブステーションを含むことができ、異なるサブステーションは異なるグリットの研削ホイールを備える。
【0194】
図21の実施形態に係る装置を、ウエハなどの結晶基板部分の丸められたまたは面取りされたエッジ・プロファイルを付与するための、エッジ研削に対応するように修正することができる。そのようなエッジ・プロファイルによって、ウエハ・エッジの破損のリスクが低減されることになる。基板部分が担体に接合されている場合はエッジ研削は行われなくてもよく、したがって、担体除去ステーションは、エッジ研削ステーションの(直接または間接のいずれかの)上流に配置され得る。
【0195】
図22は、図21の実施形態と類似しているがエッジ研削ステーション332が組み込まれている一実施形態に係る、材料加工装置320を示す。材料加工装置320は、レーザ加工ステーション322と、担体接合ステーション323と、材料破砕ステーション324と、第1のロボット・ハンドラ326と、並列に配置された複数の粗研削ステーション328A、328Bと、第2のロボット・ハンドラ328と、担体除去ステーション331と、エッジ研削ステーション332と、精密研削ステーション334と、CMPステーション336と、を含む。例示のエッジ研削ステーション332を、(例えば、図18Fに示すような)凹状のデューリング表面を有する回転式研削ツールに近接して配置されている回転台の、上側および下側把持部分の間でウエハを把持するように、配置してもよい。このようにウエハを把持することによって、ウエハ表面(例えば、SiCウエハのSi終端表面)に望ましくないダメージが付与される場合がある。この理由により、図22に示すエッジ研削ステーション332は、エッジ研削ステーション332によって付与されるあらゆる表面ダメージを精密研削ステーション334において除去できるように、精密研削ステーション334の上流に配置されている。精密研削ステーション334はウエハを小さい厚さだけ除去し、このことによりエッジ研削ステーション332が作り出した丸められたまたは面取りエッジ・プロファイルが変更される場合があるが、ウエハ・エッジの破砕を阻止するのに十分な程度の丸められたまたは面取りされたエッジ・プロファイルは残ることになる。
【0196】
図22に係る装置320を使用して、表面ダメージを有する第1の表面を備える結晶材料ウエハを加工するための方法を実行することができ、このとき第1の表面はエッジを境界としている。方法は、表面ダメージの第1の部分を除去するために、第1の表面を少なくとも1つの第1の研削装置を用いて研削することと、少なくとも1つの第1の研削装置を用いた第1の表面の研削の後で、面取りされたまたは丸められたエッジ・プロファイルを形成するためにエッジをエッジ研削することと、エッジ研削後に、表面ダメージの第2の部分を第1の表面を化学機械平坦化による更なる加工に適したものにするのに十分な程度に除去するために、少なくとも1つの第2の研削装置を用いて第1の表面を研削することと、を含む。特定の実施形態では、第1の研削装置は粗研削ステーション328A、3
28Bにおいて具現化することができ、エッジ研削はエッジ研削ステーション332によって実行することができ、第2の研削装置は精密研削ステーション312において具現化され得る。特定の実施形態では、少なくとも1つの第1の研削装置を用いた第1の表面の研削の後で、および、面取りされたまたは丸められたエッジ・プロファイルを形成するためにエッジをエッジ研削する前に、担体除去ステップを実行することができる。
【0197】
特定の実施形態では、エッジ研削中に追加の表面ダメージを付与する可能性を低くするように、および、結晶材料ウエハを化学機械平坦化に向けて準備するように、保護表面コーティングが採用され得る。そのような表面コーティングは、フォトレジストまたは任意の他の好適なコーティング材料を含むことができ、エッジ研削の前に適用することができ、エッジ研削後に除去することができる。
【0198】
図23は、図21の実施形態と類似しているが精密研削ステーション352とエッジ研削ステーション356の間に表面コーティング・ステーション354が組み込まれており、かつエッジ研削ステーション356とCMPステーション360の間にコーティング除去ステーション358が組み込まれている、一実施形態に係る材料加工装置340の概略図である。材料加工装置340は、レーザ加工ステーション342と、材料破砕ステーション344と、第1のロボット・ハンドラ346と、並列に配置された複数の粗研削ステーション348A、348Bと、精密研削ステーション352の上流にある第2のロボット・ハンドラ348と、を更に含む。コーティング・ステーション354は、スピン・コーティング、ディップ・コーティング、スプレー・コーティング、または類似のものなどの方法によって、保護コーティング(例えば、フォトレジスト)を適用するように構成され得る。保護コーティングは、エッジ研削ステーション365によって付与され得るあらゆるダメージを吸収するのに十分な、厚さおよび堅牢性を有するものであるべきである。SiCウエハの場合、Si終端表面を保護コーティングでコーティングしてもよいが、その理由は、Si終端表面が通常、エピタキシャル成長が行われる表面であるからである。コーティング除去ステーション358は、化学的、熱的、および/または機械的手段によって、コーティングを剥離するように構成され得る。
【0199】
図23に係る装置340を使用して、表面ダメージを有する第1の表面を備える結晶材料ウエハを加工するための方法を実行することができ、このとき第1の表面はエッジを境界としている。方法は、表面ダメージの第1の部分を除去するために、第1の表面を少なくとも1つの第1の研削装置(例えば、粗研削ステーション348A、348B)を用いて研削することと、その後で、表面ダメージの第2の部分を第1の表面を化学機械平坦化による更なる加工に適したものにするのに十分な程度に除去するために、少なくとも1つの第2の研削装置(例えば、精密研削ステーション352)を用いて第1の表面を研削することと、その後で、第1の表面上に(例えば、表面コーティング・ステーション354を使用して)保護コーティングを形成することと、その後で、面取りされたまたは丸められたエッジ・プロファイルを形成するために、エッジを(例えば、エッジ研削ステーション356を使用して)エッジ研削することと、その後で、第1の表面から(例えば、コーティング除去ステーションを使用して)保護コーティングを除去することと、を含む。第1の表面はその後(例えば、CMPステーション360による)化学機械平坦化によって加工することができ、このことにより、第1の表面(例えば、ウエハのSi終端表面)の表面洗浄およびエピタキシャル成長などの次の処理に向けた準備が整う。
【0200】
特定の実施形態では、把持装置は、表面下ダメージを形成するためのレーザによる端面の加工を可能にするために、側壁に対して非垂直な端面を有するインゴットを保持するように構成され得る。特定の実施形態では、把持エフェクタは、上から見たとき円形の断面を有する傾斜した側壁に沿うように構成され得る。特定の実施形態では、把持エフェクタは、把持エフェクタが傾斜した側壁に沿うのを可能にするためのジョイントを含み得る。
【0201】
図24Aは、一実施形態に係る、側壁370に対して非垂直な端面366、368を有するインゴット364を保持するための第1の把持装置362の概略側方断面図である。上側端面366はレーザ・ビーム376を受けるように水平に配置されている。下側端面368には担体372が取り付けられ、チャック374(例えば、真空チャック)が担体372を保持していてもよい。インゴット364の側壁370を把持するために、非垂直面を有する把持エフェクタ378が設けられ、把持エフェクタ378は水平な作動ロッド380に対して非垂直な角度A1、A2で配置される。把持装置362を使用してインゴット364を示されているように(例えば、その底部の近くで)保持すると、上側端面366および側壁370の上側部分が本明細書で開示する方法を使用する加工に利用できるようになる。
【0202】
図24Bは、一実施形態に係る、側壁370’に対して非垂直な端面366’、368’を有するインゴット364’を保持するための第2の把持装置362’の概略側方断面図である。上側端面366’はレーザ・ビーム376を受けるように水平に配置されており、一方、下側端面368’には担体372’が取り付けられ、担体372’がチャック374’によって保持されていてもよい。インゴット364’の側壁370’を把持するために、非垂直面を有する把持エフェクタ378’が設けられ、把持エフェクタ378’は水平な作動ロッド380’に対して非垂直な角度A1、A2で配置される。作動ロッド380’と把持エフェクタ378’の間には枢動ジョイント382’が設けられており、このことによって把持エフェクタ378’とインゴット364’の側壁370’の間の自動アライメントが容易になる。
【0203】
図25は、線形熱膨張係数を温度の関数としてプロットしたサファイアについての折れ線グラフであり、サファイアのC軸と平行なCTEのプロットおよびサファイアのC軸に対して垂直なCTEのプロットが重ね合わされている。図26は、線形熱膨張係数を温度の関数としてプロットしたSiCについての折れ線グラフであり、SiCのc軸およびSiCのa軸に沿ったCTEのプロットが重ね合わされている。図25図26を比較すると、(図25で)サファイアが呈する軸間でのCTEのばらつきは、SiCよりも大きい。サファイアは広い温度範囲にわたってSiCよりも大きいCTEを有することが見て取れる。
【0204】
図27は、25℃で確認されたと考えられる、様々な結晶材料および金属の線形熱膨張係数の比較を提供する棒グラフである。SiCのCTEは約3であり、一方でサファイアのCTEは約7である(約2.3倍大きい)ことが見て取れる。図27には示されていないが、PDMSポリマーのCTEは-55から150℃までの温度範囲にわたって3.0x10-4/Cであることが、別途確認されている。そのような値は、図27に示すサファイアのおおよそ7.0x10-6/CのCTE値よりも2桁大きい。
【0205】
図28は、3つのグループに分類した様々な材料の弾性率(ヤング率)値をプロットした図である:(1)金属および合金、(2)グラファイト、セラミック、および半導体、ならびに(3)ポリマー。弾性率は、一軸変形の線形弾性率レジームにおいて、固体材料の剛直性の尺度となる機械的特性であり、材料の応力と歪みの間の関係を定める。図28に見ることができるように、金属および半導体は、ポリマーの弾性率値よりも少なくとも1桁大きい弾性率値を呈する。図28には正確な値は表示されていないが、サファイアの弾性率は345GPaであり、一方、ニッケルは190GPaの弾性率を有することが、別途確認されている。対照的に、ポリマーPDMSは0.57MPaから3.7MPaの間の弾性率範囲を有し、かかるばらつきは、ポリマー中に存在する架橋剤の量に線形依存する。
【0206】
以下の実施例では、本開示の更なる非限定的な実施形態を開示する。
【0207】
[実施例1]
開始材料として厚さ640μm、直径150mmの単結晶SiC基板を使用した。厚さ10μmのSiCエピタキシャル層をSiC基板の第1の面上で成長させて、650μmのSiC構造を得た。レーザ放射をSiC表面から240μmの深さに集束させて、その深さに複数の実質的に平行な表面下レーザ・ダメージ線を作り出した。WaferBOND(登録商標)HT-10.10熱可塑性接着剤(Brewer Science, Inc.、 Rolla、ミズーリ州、USA)を使用して、SiC基板の反対側の第2の面に単結晶サファイア担体を接着し、熱圧縮工程(1800Nの力の適用および180℃の維持を含む)を適用して、接着剤硬化を完了させた。液体窒素で冷却して-70℃に維持した真空チャックにサファイア担体を接触させて、熱誘起の破砕を行った。破砕によって、SiCの厚さ410μmの部分から分離した、サファイア担体に固着されたSiCの厚さ240μmの部分(接合された組立体を形成する)を得た。ラッピングおよびCMPによって、SiCの厚さ410μmの部分上の残留レーザ・ダメージを除去して、エピタキシの準備のできた厚さ350μmのSiCウエハを得た。これとは別に、厚さ240μmのSiCを含む接合された組立体にもラッピングおよびCMPを行い、このSiCを180μmの厚さまで小さくした。その後接合された組立体に担体除去を行ったが、これには、熱的スライド・オフの工程に従い、担体を加熱した真空チャックに接触させて接着剤を軟化させ、その間にSiCに横方向の力を加えることが含まれている。得られた厚さ180μmのSiCウエハはこの時点でSiCエピタキシャル層を有しており、MOSFETの製作に好適である。この工程の結果、開始材料として使用される640ミクロン厚さのSiC基板から、エピタキシの準備のできた厚さ350μmのSiCウエハと、この時点で表面にSiCエピタキシャル層を有している厚さ180μmのSiCウエハと、が形成される。
【0208】
[実施例2]
開始材料として厚さ570μm、直径150mmの単結晶SiC基板を使用した。厚さ2μmのSiCエピタキシャル層をSiC基板の第1の面上で成長させて、572μmのSiC構造を得た。レーザ放射をSiC表面から160μmの深さに集束させて、その深さに複数の実質的に平行な表面下レーザ・ダメージ線を作り出した。実施例1と同じ接着工程を使用して、単結晶サファイア担体をSiC基板の反対側の第2の面に接着した。液体窒素で冷却して-70℃に維持した真空チャックにサファイア担体を接触させて、熱誘起の破砕を行った。破砕によって、SiCの厚さ412μmの部分から分離した、サファイア担体に固着されたSiCの厚さ160μmの部分(接合された組立体を形成する)を得た。ラッピングおよびCMPによって、SiCの厚さ412μmの部分上の残留レーザ・ダメージを除去して、エピタキシの準備のできた厚さ350μmのSiCウエハを得た。これとは別に、厚さ160μmのSiCを含む接合された組立体にもラッピングおよびCMPを行い、このSiCを100μmの厚さまで小さくした。その後接合された組立体に担体除去を行ったが、これには、熱的スライド・オフの工程に従い、担体を加熱した真空チャックに接触させて接着剤を軟化させ、その間にSiCに横方向の力を加えることが含まれている。得られた厚さ100μmのSiCウエハはこの時点でSiCエピタキシャル層を有しており、RFデバイスの製作に好適である。この工程の結果、開始材料として使用される570ミクロン厚さのSiC基板から、エピタキシの準備のできた厚さ350μmのSiCウエハと、この時点で表面にSiCエピタキシャル層を有している厚さ100μmのSiCウエハと、が形成される。
【0209】
[実施例3]
355ミクロンの厚さを有するSiCウエハを生産するための開始材料として、10mm超の厚さを有する直径150mmの単結晶SiC基板(インゴット)が使用される。表
面下レーザ・ダメージを形成するために、SiC基板のC終端上面を通してレーザ放射が当てられる。本明細書で開示する熱可塑性接着材料を使用してSiC基板の上面にサファイア担体が接合され、インゴットの残りの部分からSiCの上側(ウエハ)部分を分離するために、熱誘起の破砕が実行される。分離されたウエハ部分のSi終端面およびインゴットの残りの部分のC終端面はいずれも、目に見える全てのレーザおよび破砕のダメージを除去するために、2000グリット研削ホイール(例えば、金属、ガラス質、または樹脂結合型研削ホイール)を使用して粗研削される。その後、分離されたウエハ部分のSi終端面およびインゴットの残りの部分のC終端面はいずれも、好ましくは4nm未満の平均粗さ(Ra)、より好ましくは1~2nmRaの範囲内のより平滑な表面が得られるように、(例えば、ガラス質研削表面を使用して)7000以上のグリット(例えば、30,000グリット以上まで)で精密研削される。インゴット残りの部分には、次のレーザ加工へのどのような影響も回避するために、平滑な表面が要求される。ウエハはCMPの準備ができているものとし、必要なCMP除去量を最小限にするのに十分な平滑さのものとするが、その理由は、CMPが一般によりコストの高い工程だからである。粗研削による全ての残留表面下ダメージおよびあらゆる残りのレーザ・ダメージ(裸眼で可視のものおよび不可視のものの両方)を除去するための、精密研削加工中の典型的な材料除去は、5から10ミクロンの厚さ範囲内であり得る。その後、インゴットの残りの部分は更なる処理のためにレーザに戻され、ウエハはエッジ研削され、エピタキシャル成長に向けた準備を行うために化学機械平坦化(CMP)を施される。精密研削されたSi面に掻き傷を付けるリスクを全て回避するために、粗表面研削と精密表面研削の間でエッジ研削を行うことができる。CMP中の材料除去は約2ミクロンの厚さ範囲内であり得る。基板(インゴット)から消費される全材料は475ミクロン未満であり得る。最終ウエハ厚さが355ミクロンである場合、カーフ・ロスは120ミクロン未満である。
【0210】
本開示の1つまたは複数の実施形態によって得られる可能性のある技術的利益としては、以下を挙げることができる: ワイヤ・ソーイングと比較した場合の、結晶材料カーフ・ロスの減少、ワイヤ・ソーイングと比較した場合の、加工時間の短縮ならびに結晶材料ウエハおよび得られるデバイスのスループットの増大、従来のレーザ後の破砕方法と比較した場合の、得られる半導体ウエハのボウイングの低減、従来のレーザ後の破砕方法と比較した場合の、消費される液体窒素の必要性の低減、およびアブレージョンによる材料除去(例えば、研削)による薄化の必要性の低減を伴う結晶性の薄層を得る能力の向上。
【0211】
本明細書にそうではないと示されていない限りは、本明細書で開示する様々な特徴および要素の任意のものを、1つまたは複数の開示された他の特徴および要素と組み合わせてもよい。
【0212】
当業者は本開示の好ましい実施形態への改善および修正を認識するであろう。そのような改善および修正は全て、本明細書および以下の特許請求の範囲で開示する概念の範囲内にあるものと見なされる。
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図4B
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