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特許7372486平行スキャンFIBを使用した隣り合う材料の均一ミリング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】平行スキャンFIBを使用した隣り合う材料の均一ミリング
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20231024BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
G01N1/28 G
G01N1/28 F
H01L21/66 N
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022581452
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 US2021037669
(87)【国際公開番号】W WO2022005753
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】16/919,013
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504144253
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ イスラエル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】ザー イェフダ
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-306411(JP,A)
【文献】特許第6232765(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0118896(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
H01L21/64-21/66
H01J37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の領域を評価する方法であって、前記領域が、第1のミリングレートを有する第1の副領域と、前記第1のミリングレートとは異なる第2のミリングレートを有する、前記第1の副領域と隣り合う第2の副領域とを含み、前記方法が、
望の深さにミリングされるまで、前記領域をエッチングするために、前記領域を、前記領域の上で集束イオンビームを複数の反復でスキャンすることによりミリングすることであり、前記領域の上で前記集束イオンビームがスキャンされるたびごとに、前記集束イオンビームが、第1の副領域の上で第1のスキャンレートでスキャンされ、次いで前記第2の副領域の上で、前記第1のスキャンレートとは異なる第2のスキャンレートでスキャンされる、前記ミリングすること
を含む方法。
【請求項2】
前記ミリングすることが、前記複数の反復にわたって、前記第1の副領域と前記第2の副領域の両方を同じ所望の深さまでエッチングするように、前記第1のスキャンレートおよび第2のスキャンレートが選ばれる、請求項1に記載の領域を評価する方法。
【請求項3】
前記領域が、前記第1または第2の副領域の少なくとも一方と隣り合い、前記第1および第2のミリングレートの各々とは異なる第3のミリングレートを有する第3の副領域をさらに含み、
前記ミリングすることにおいて前記領域の上で前記集束イオンビームがスキャンされるたびごとに、前記集束イオンビームがさらに、前記第3の副領域の上で、前記第1および第2のスキャンレートとは異なる第3のスキャンレートでスキャンされ、
前記ミリングすることが、前記複数の反復にわたって、前記第1、第2および第3の副領域の各々を同じ所望の深さまでエッチングするように、前記第1、第2および第3のスキャンレートが選択される、
請求項1に記載の領域を評価する方法。
【請求項4】
前記ミリングすることの各反復が、前記第1および第2の副領域の各々から、材料のおよそ1原子層またはそれ以下を除去する、請求項1に記載の領域を評価する方法。
【請求項5】
前記領域を前記所望の深さまでミリングするために前記ミリングすることが少なくとも数千回繰り返される、請求項1に記載の領域を評価する方法。
【請求項6】
前記第1の副領域が第1の形状寸法を含み、前記第2の副領域が、前記第1の形状寸法とは異なる第2の形状寸法を含む、請求項1に記載の領域を評価する方法。
【請求項7】
前記第1のミリングレートが前記第2のミリングレートよりも速く、前記第1のスキャンレートが前記第2のスキャンレートよりも速い、請求項1に記載の領域を評価する方法。
【請求項8】
試料の領域を評価するためのシステムであって、前記領域が、第1のミリングレートを有する第1の副領域と、前記第1のミリングレートとは異なる第2のミリングレートを有する、前記第1の副領域と隣り合う第2の副領域とを含み、前記システムが、
真空チャンバと、
試料評価プロセスの間、前記真空チャンバ内で試料を保持するように構成された試料支持体と、
前記真空チャンバ内に荷電粒子ビームを導くように構成された集束イオンビーム(FIB)カラムと、
プロセッサおよび前記プロセッサに結合されたメモリであり、前記メモリが複数のコンピュータ可読命令を含み、前記複数のコンピュータ可読命令が、前記プロセッサによって実行されたときに、望の深さにミリングされるまで、前記領域をエッチングするために、前記領域を、前記領域の上で集束イオンビームを複数の反復でスキャンすることによりミリングすることであり、前記領域の上で前記集束イオンビームがスキャンされるたびごとに、前記集束イオンビームが、第1の副領域の上で第1のスキャンレートでスキャンされ、次いで前記第2の副領域の上で、前記第1のスキャンレートとは異なる第2のスキャンレートでスキャンされる、前記ミリングすることを前記システムに実行させる、前記プロセッサおよびメモリと
を備えるシステム。
【請求項9】
前記システムが、前記複数の反復にわたって、前記第1の副領域と前記第2の副領域の両方を同じ所望の深さまでミリングするように、前記第1のスキャンレートおよび前記第2のスキャンレートが選ばれる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記領域が、前記第1または第2の副領域の少なくとも一方と隣り合い、前記第1および第2のミリングレートの各々とは異なる第3のミリングレートを有する第3の副領域をさらに含み、
前記ミリングすることにおいて前記領域の上で前記集束イオンビームがスキャンされるたびごとに、前記集束イオンビームがさらに、前記第3の副領域の上で、前記第1および第2のスキャンレートとは異なる第3のスキャンレートでスキャンされ、
前記システムが、前記複数の反復にわたって、前記第1、第2および第3の副領域の各々を同じ所望の深さまでミリングするように、前記第1、第2および第3のスキャンレートが選択される、
請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記ミリングすることの各反復が、前記第1および第2の副領域の各々から、材料のおよそ1原子層またはそれ以下を除去する、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記領域を前記所望の深さまでミリングするために、前記システムが、前記ミリングすることを少なくとも数千回繰り返す、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1の副領域が第1の形状寸法を含み、前記第2の副領域が、前記第1の形状寸法とは異なる第2の形状寸法を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1のミリングレートが前記第2のミリングレートよりも速く、前記第1のスキャンレートが前記第2のスキャンレートよりも速い、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
試料の領域を評価する方法であって、前記領域が、異なるミリングレートを有する互いに隣り合う2つ以上の副領域を含み、前記方法が、
第1のミリングレートを有する前記領域の第1の副領域の上で集束イオンビームをX回スキャンし、前記第1のミリングレートとは異なる第2のミリングレートを有する前記領域の第2のセクションの上で前記集束イオンビームをY回スキャンすることにより前記領域をミリングすることであり、前記領域が実質的に均一な量だけミリングされるように、XおよびYが、前記第1のミリングレートと前記第2のミリングレートとの間の差を補償するように選択される、前記ミリングすること、ならびに
望の深さにミリングされるまで、前記領域をエッチングするために前記ミリングすることを複数回繰り返すること
を含む方法。
【請求項16】
前記ミリングすることの各反復が、前記第1および第2の副領域の各々から、材料の100原子層またはそれ以下を除去する、請求項15に記載の領域を評価する方法。
【請求項17】
前記領域を前記所望の深さまでミリングするために前記ミリングすることが少なくとも数千回繰り返される、請求項15に記載の領域を評価する方法。
【請求項18】
試料の領域を評価するためのシステムであって、前記領域が、第1のミリングレートを有する第1の副領域と、前記第1のミリングレートとは異なる第2のミリングレートを有する、前記第1の副領域と隣り合う第2の副領域とを含み、前記システムが、
真空チャンバと、
試料評価プロセスの間、前記真空チャンバ内で試料を保持するように構成された試料支持体と、
前記真空チャンバ内に荷電粒子ビームを導くように構成された集束イオンビーム(FIB)カラムと、
プロセッサおよび前記プロセッサに結合されたメモリであり、前記メモリが複数のコンピュータ可読命令を含み、前記複数のコンピュータ可読命令が、前記プロセッサによって実行されたときに、
第1のミリングレートを有する前記領域の第1の副領域の上で集束イオンビームをX回スキャンし、前記第1のミリングレートとは異なる第2のミリングレートを有する前記領域の第2のセクションの上で前記集束イオンビームをY回スキャンすることにより前記領域をミリングすることであり、前記領域が実質的に均一な量だけミリングされるように、XおよびYが、前記第1のミリングレートと前記第2のミリングレートとの間の差を補償するように選択される、前記ミリングすること、ならびに
望の深さまで、前記領域をエッチングするために前記ミリングすることを複数回繰り返すること
を前記システムに実行させる、前記プロセッサおよびメモリと
を備えるシステム。
【請求項19】
前記ミリングすることの各反復が、前記第1および第2の副領域の各々から、材料の1000原子層またはそれ以下を除去する、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記領域を前記所望の深さまでミリングするために、前記システムが、前記ミリングすることを少なくとも数千回繰り返す、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年7月1日に出願された米国特許出願第16/919,013号明細書の優先権を主張するものである。この米国特許出願の開示は、あらゆる目的のためにその全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
電子材料および電子材料を電子構造体に加工するためのプロセスの研究では、故障解析およびデバイス妥当性確認のための顕微鏡検査に、電子構造体の試験体を使用することができる。例えば、1つまたは複数の集積回路(IC)または他の電子構造体がその上に形成されたシリコンウエハなどの試験体を集束イオンビーム(FIB)を用いてミリングおよび解析して、ウエハ上に形成されたそれらの回路または他の構造体の特定の特性を研究することができる。
【0003】
いくつかの場合には、ミリングする対象の試験体が、異なるミリングレートを有する2つ以上の異なるエリアを試験体上に含むことがある。この異なるミリングレートは、堆積もしくは他の手法により異なるエリアに存在する異なる材料、同じ材料から形成された、異なるエリアの異なる形状寸法、同じ材料の異なる結晶配向、または異なる材料、異なる配向および/もしくは異なる形状寸法の組合せなどの異なるさまざまな因子の結果であることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多数の層を有するように形成された試料上の構造体の特性を解析または研究するために、選択した1つまたは複数の層を除去することはデレイヤリング(delayering)として知られており、これはFIBツールを用いて実行することができる。いくつかの場合には、異なるミリングレートを有する2つ以上の副領域を含む試験体の部分または領域を、それらの2つ以上の異なる副領域の各々において共通の深さまでデレイヤリングすることが望ましい。しかしながら、異なる副領域の異なるミリングレートは、このような試験体を均一に遅延させることに対する課題を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態は、異なるミリングレートを示す隣り合う2つ以上の副領域を有する試料の領域を、副領域間の滑らかな境界線遷移を有するミリングされた均一な表面を生み出すやり方でデレイヤリングするための方法およびシステムを提供する。いくつかの実施形態は、集束ビームイオン(FIB)評価システムの平行スキャンモードを使用して、ミリング中の領域を副領域に分割し、異なる副領域間でビームスキャン速度を変化させることによって、デレイヤリングプロセスが異なる副領域間で均一に進むことを可能にする。本開示のいくつかの実施形態は、半導体基板の上に形成された電子デバイスおよび他の構造体をデレイヤリングするのに特によく適しているが、実施形態は、特定のタイプの試料だけに限定されるものではなく、さまざまな異なる試料をデレイヤリングする目的に実施形態を使用することができる。
【0006】
いくつかの実施形態は、試料の領域を評価する方法に関する。この試料は、第1のミリングレートを有する第1の副領域と、第1のミリングレートとは異なる第2のミリングレートを有する、第1の副領域と隣り合う第2の副領域とを含むことができる。この方法は、領域を所望の深さまでエッチングするために、この領域を、領域の上で集束イオンビームを複数の反復でスキャンすることによりミリングすることであり、領域の上で集束イオンビームがスキャンされるたびごとに、ビームが、第1の副領域の上で第1のスキャンレートでスキャンされ、次いで第2の副領域の上で、第1のスキャンレートとは異なる第2のスキャンレートでスキャンされる、ミリングすることを含むことができる。
【0007】
いくつかの実施形態は、試料の領域を評価するためのシステムであって、この領域が、第1のミリングレートを有する第1の副領域と、第1のミリングレートとは異なる第2のミリングレートを有する、第1の副領域と隣り合う第2の副領域とを含むシステムに関する。このシステムは、真空チャンバと、試料評価プロセスの間、真空チャンバ内で試料を保持するように構成された試料支持体と、真空チャンバ内に荷電粒子ビームを導くように構成された集束イオンビーム(FIB)カラムと、プロセッサおよびプロセッサに結合されたメモリとを含むことができる。このメモリは、複数のコンピュータ可読命令を含むことができ、この複数のコンピュータ可読命令は、プロセッサによって実行されたときに、領域を所望の深さまでエッチングするために、この領域を、領域の上で集束イオンビームを複数の反復でスキャンすることによりミリングすることであり、領域の上で集束イオンビームがスキャンされるたびごとに、ビームが、第1の副領域の上で第1のスキャンレートでスキャンされ、次いで第2の副領域の上で、第1のスキャンレートとは異なる第2のスキャンレートでスキャンされる、ミリングすることをシステムに実行させる。
【0008】
本明細書に記載された実施形態のさまざまな実施態様は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。第1のスキャンレートおよび第2のスキャンレートは、ミリングステップが、複数の反復にわたって、第1の副領域と第2の副領域の両方を同じ所望の深さまでエッチングするように選ぶことができる。ミリングステップの各反復は、第1および第2の副領域の各々から、材料のおよそ1原子層またはそれ以下を除去することができる。領域を所望の深さまでミリングするために、ミリングステップを少なくとも数千回繰り返すことができる。第1の副領域は第1の形状寸法を有することができ、第2の副領域は、第1の形状寸法とは異なる第2の形状寸法を有することができる。第1のミリングレートは第2のミリングレートよりも速いものとすることができ、第1のスキャンレートは第2のスキャンレートよりも速いものとすることができる。この領域は、第1または第2の副領域の少なくとも一方と隣り合う第3の副領域をさらに含むことができる。第3の副領域は、第1および第2のミリングレートの各々とは異なる第3のミリングレートを有することができ、ミリングステップにおいて領域の上で集束イオンビームがスキャンされるたびごとに、ビームをさらに、第3の副領域の上で、第1および第2のスキャンレートとは異なる第3のスキャンレートでスキャンすることができ、第1、第2および第3のスキャンレートは、ミリングステップが、複数の反復にわたって、第1、第2および第3の副領域の各々を同じ所望の深さまでエッチングするように選択される。
【0009】
さらに他の実施形態は、試料の領域を評価する方法であって、この領域が、異なるミリングレートを有するそれぞれが互いに隣り合う2つ以上の副領域を含む方法に関し、この方法は、第1のミリングレートを有する領域の第1の副領域の上で集束イオンビームをX回スキャンし、第1のミリングレートとは異なる第2のミリングレートを有する領域の第2のセクションの上で集束イオンビームをY回スキャンすることにより領域をミリングすることであり、領域が実質的に均一な量だけミリングされるように、XおよびYが、第1のミリングレートと第2のミリングレートとの間の差を補償するように選択される、ミリングすること、ならびに領域を所望の深さまでエッチングするためにミリングプロセスを複数回繰り返することを含む。
【0010】
本開示の性質および利点をより十分に理解するため、以下の説明および添付図を参照すべきである。しかしながら、それぞれの図は説明のためだけに示したものであり、本開示の範囲の境界を定めることを意図したものではないことを理解すべきである。さらに、概して、この説明に反することが明白である場合を除き、異なる図の要素が同一の参照符号を使用している場合、それらの要素は一般に、同一の機能または目的を有するか、または少なくとも同様の機能または目的を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示のいくつかの実施形態による見本集束イオンビーム(FIB)評価システムの簡略図である。
図2A】異なるミリングレートを有する第1および第2の副領域を含む領域がその中に形成された試料の簡略図である。
図2B図2Aに示された試料の部分をデレイヤリングするために使用される、以前から知られている方法によるイオンビームスキャンパターンの簡略図である。
図2C図2Bに示された以前から知られているスキャンパターンを使用して試料の部分をデレイヤリングした後の、図1Aに示された試料の簡略断面図である。
図3A】異なるミリングレートを有する隣り合う2つのセクションを有する試料の部分をデレイヤリングするために使用される、以前から知られている別の方法によるイオンビームスキャンパターンの簡略図である。
図3B図3Aに示された以前から知られているスキャンパターンを使用して試料の第1の副領域をデレイヤリングした後の、図3Aに示された試料の簡略断面図である。
図3C図3Aに示された以前から知られているスキャンパターンを使用して試料の第2の副領域をデレイヤリングした後の、図2Aに示された試料の簡略断面図である。
図4】本開示のいくつかの実施形態によるデレイヤリングプロセスに関連したステップを示す流れ図である。
図5A】異なるミリングレートを有する隣り合う2つのセクションを有する試料の部分をデレイヤリングするために使用される、本開示のいくつかの実施形態によるイオンビームスキャンパターンの簡略図である。
図5B】本開示のいくつかの実施形態による図4に示された方法に従って試料の部分をデレイヤリングした後の、図5Aに示された試料の簡略断面図である。
図6】異なるミリングレートを有する互いに隣り合う3つのセクションを有する試料の部分をデレイヤリングするために使用される、本開示のいくつかの実施形態によるイオンビームスキャンパターンの簡略図である。
図7】本開示のいくつかの実施形態によるデレイヤリングプロセスに関連したステップを示す流れ図である。
図8】いくつかの実施形態に従ってデレイヤリングすることができる半導体ウエハ上のエリアの簡略図である。
図9】いくつかの実施形態に従ってデレイヤリングすることができる半導体ウエハ上のエリアの簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態は、試料の部分をデレイヤリングすることができる。
【0013】
例示的な集束イオンビーム(FIB)評価ツール
本開示をより十分に理解および認識するために最初に図1を参照する。図1は、本開示のいくつかの実施形態による集束イオンビーム(FIB)評価システム100の簡略概略図である。図1に示されているように、システム100は、とりわけ、集束イオンビーム(FIB)カラム110、試料支持要素140、および2次電子検出器150(または、いくつかの実施形態では、2次イオン検出器もしくは並列に動作するこれらの2つの検出器の組合せ)を含むことができる。FIBカラム110は、荷電粒子ビーム120を発生させ、その粒子ビームを試料130(本明細書では時に「対象物」または「試験体」とも呼ぶ)に向かって導いて、試料をミリングまたは他の手法で加工するように動作可能である。試料、例えば半導体ウエハは、真空チャンバ105内の支持要素140上に支持することができる。
【0014】
FIBカラム110は、試料に荷電粒子ビーム120を照射することによって試料130をミリングして(例えば試料130に凹みをつくって)断面を形成することができ、希望する場合にはさらにその断面を滑らかにすることができる。FIBミリングプロセスは典型的には、真空環境内に試験体を置き、試験体に向かってイオンの集束ビームを発射して、試験体上の材料をエッチングまたはミリングによって除去することによって機能する。いくつかの場合には、エッチングの速度および質を制御するのを助ける働きまたは物質の堆積を制御するのを助ける働きをする制御された濃度のバックグラウンドガスによって真空環境をパージすることができる。キセノン、ガリウムまたは他の適切な元素から、加速されたイオンを発生させることができ、典型的には、この加速されたイオンを、500ボルト~100,000ボルトの範囲の電圧によって、より典型的には3,000ボルト~30,000ボルトの範囲の電圧によって試験体に向かって加速させる。ビーム電流は典型的には、FIB機器の構成および用途に応じて、数ピコアンペアから数マイクロアンペアの範囲にあり、圧力は典型的に、システムの異なる部分および異なる動作モードにおいて10-10~10-5ミリバールの間に制御される。
【0015】
デレイヤリングプロセスは、(i)ある厚さの材料を試料から除去するためにミリングすべき関心の位置を特定し、(ii)FIBユニットの視野の下に位置するように試料を(例えば機械的支持要素によって)移動させ、(iii)試料をミリングして関心の位置において所望の量の材料を除去することにより、実行することができる。デレイヤリングプロセスは、試料に凹みを形成することを含むことができる(凹みのサイズは普通、横方向寸法で数μm~数百μmである)。
【0016】
ミリングプロセスは典型的には、画像化中またはミリング中の試料の特定のエリアを横切って荷電粒子ビームを(例えばラスタスキャンパターンまたは他のスキャンパターンで)往復でスキャンすることを含む。当業者に知られているように、荷電粒子カラムに結合された1枚または数枚のレンズ(図示せず)がこのスキャンパターンを実現することができる。スキャンされるエリアは典型的には、試料の全エリアのうちの非常に小さな部分である。例えば、試料は、200または300mmのいずれかの直径を有する半導体ウエハであることがあり、一方、ウエハ上のスキャンされるそれぞれのエリアは、数μmまたは数十μmの幅および/または長さを有する長方形のエリアであることがある。ミリング中に領域を横切ってイオンビームをスキャンするそれぞれの反復(またはフレーム)は典型的には、数マイクロ秒であり、それぞれの反復は、所望の深さの穴をエッチングするのにスキャンパターンが数千回または数百万回繰り返されるような態様で非常に少量の材料(例えば、低iプローブ(例えば10pA)を使用して0.01原子層程度、または高iプローブ(1000nA)を使用して1000原子層程度)を除去する。
【0017】
ミリング操作中に、FIBカラム110によって生成された荷電粒子ビーム120は、真空チャンバ105内に形成された真空化された環境を通って伝搬し、その後、試料130に衝突する。イオンと試料との衝突で2次電子およびイオン125が発生し、それらは検出器150によって検出される。検出された2次電子またはイオンを使用して、ミリングされた層および構造体の特性を解析することができる。
【0018】
図1には示されていないが、FIB評価システム100はいくつかの追加の構成要素を含むことができ、それらの構成要素には、限定はされないが、特に、チャンバ105にプロセスガスを供給するための1つまたは複数のガスノズル、チャンバ105内の圧力を制御するための真空バルブおよび他のバルブ、ならびに他の構成要素中の荷電粒子ビームを導くための1枚または数枚のレンズが含まれる。システム100はさらに、当業者には知られているとおり、1つまたは複数のコンピュータ可読メモリに記憶されたコンピュータ命令を実行することによってシステム100の動作を制御する1つまたは複数のコントローラ、プロセッサまたは他のハードウェアユニットを含むことができる。例えば、このコンピュータ可読メモリは、固体メモリ(例えばランダムアクセスメモリ(RAM)および/もしくリードオンリーメモリ(ROM)。RAMおよびROMは、プログラム可能なもの、更新可能なフラッシュメモリ、および/または他の同種のものとすることができる)、ディスクドライブ、光学式記憶装置または同様の非一過性コンピュータ可読記憶媒体を含むことができる。
【0019】
以前から知られている遅延技法
異なるミリングレートを示す2つ以上の異なるセクションを有する試料の領域をデレイヤリングする一般的に使用されているいくつかの方法は、異なるセクション間に望ましくない境界(すなわち不均一領域)を生み出すやり方で試料の領域をデレイヤリングする。説明のため図2Aを参照する。図2Aは試料200の簡略上面図である。図2Aに示されているように、試料200は、ミリングする対象である領域210(時に「フレーム」と呼ぶ)を含む。一例として試料200は半導体ウエハとすることができる。領域210は、異なるミリングレートを有する2つの副領域210aおよび210bを含む。例えば、領域210aのミリングレートは210bのミリングレートよりも速いものとすることができる。いくつかの場合には、これらの異なるミリングレートが、例えば、副領域210aが主として副領域210bの材料とは異なる材料からなることに起因しうる。他の場合には、これらの異なるミリングレートが、例えば、副領域210aが副領域210bとは異なる形状寸法を有することに起因し、または、これらの2つの領域で材料が異なることと形状寸法が異なることの両方の組合せに起因しうる。
【0020】
ミリングレートが異なる理由の如何にかかわらず、以前から知られているいくつかのミリング技法は、領域を横切って特定の(そして一定の)ビーム速度またはスキャンレートで集束イオンビームをスキャンすることによって領域210をミリングする。例えば、図2Bは、図2Aに示された試料200をデレイヤリングするために知られているいくつかの方法に従って使用される例示的なスキャンパターン220を示している。スキャンパターン220は、連続的にスキャンされる一定の速度または一定のスキャンレートの単一のビームで、ミリングプロセスの他のパラメータ(例えばビーム幅、ビーム強度など)は一定に維持して、副領域210aと副領域210bの両方を含む領域210の全体を横断する。その結果、所定量のミリングの後(例えば、領域210を横切ってイオンビームが数千回または数百万回スキャンされた後)、領域210は、より速いミリングレートを有する副領域210aまたは210bが、より遅いミリングレートを有するもう一方の副領域よりも深くミリングされた不均一な輪郭を示す。ミリングされた2つの領域間のこのミリングされた深さの差によって、2つの副領域間の境界に縁(edge)ができる。
【0021】
一例として、図2Cを参照する。図2Cは、図2Bに示し図2Bに関して論じたスキャンパターンを使用して試料の部分をデレイヤリングした後の、図2Aに示された試料200の簡略断面図である。副領域210aは副領域210bよりも速いミリングレートを有するため、領域210が多数回(例えば数千回または数百万回)にわたってミリングされた後、このデレイヤリングプロセスは、副領域210bの深さよりも大きな深さを有する副領域210aを生み出し、したがって2つの副領域間に縁215を形成する。
【0022】
縁215の存在はいくつかの場合に望ましくないことがあり、縁215を排除するために使用されている1つの技法は、副領域210a、210bの各々を別々にミリングする技法である。図3Aは、試料300の領域310をデレイヤリングするために使用されるイオンビームスキャンパターンの簡略図である。試料300は、試料200と同様とすることができ、領域310は、上で説明した副領域210a、210bと同様の隣り合う2つの副領域310a、310bを含むことができる。セクション310aと310bの異なるミリングレートを補償するため、以前から使用されているいくつかの技法は、第1のスキャンパターン320を使用してエリア310aを所望の深さまでミリングし、次いで、その後に、第2のスキャンパターン322を使用してエリア310bをミリングする。
【0023】
2つの副領域310a、310bをこのように別々にスキャンすると、一方の副領域をもう一方の副領域よりも長時間ミリングすることによって、これらの領域を実質的に同様の深さまでミリングすることができる。例えば、副領域310aが副領域310bの2倍のミリングレートを有する場合には、副領域301bを2倍の時間をかけてミリングすると(すなわち、副領域310aを横切ってイオンビームをスキャンする回数の2倍の回数をかけて、副領域310bを横切ってイオンビームをスキャンすると)、副領域310aと310bは、実質的に同じ深さまでミリングされる。
【0024】
しかしながら、このようなプロセスの結果、ミリングされた表面が必ず均一になるとは限らない。その代わりに、このようなプロセスは、2つの副領域間にトレンチまたは他の不均一な境界を生み出しうる。説明のため、図3Bおよび3Cを参照する。図3Bは、副領域310aをミリングした後、エリア310bをミリングする前の試料300を示す簡略断面図であり、図3Cは、副領域310bをミリングした後の試料300を示す簡略断面図である。図3Bに示されているとおり、所望の深さまで副領域310aをミリングした後、副領域310aと310bの間の境界には縁312が存在する。続いて副領域310bをミリングすると、縁領域312は、副領域310bのバルク部分よりも速いレートでミリングされる。
【0025】
したがって、続いて副領域310aと同じ深さまで副領域310bをミリングすると、縁領域312の周囲のより速いミリングレートの結果、図3Cに示されているように、副領域310aと310bの間の境界に望ましくないトレンチ315が形成される。したがって、見て分かるとおり、ミリング中の領域が、異なるミリングレートを示す2つ以上の副領域を含むとき、図2A~2Cまたは図3A~3Cに関して説明した技法はいずれも、ミリング中の領域の全体を横切って均一にミリングされた表面を生み出さない。
【0026】
変化するスキャンレートを用いたミリング
本開示の実施形態は、異なるミリングレートを有する2つ以上の副領域を有する試料の領域を、副領域の境界にバリアがないミリングされた均一な表面を生み出すやり方でミリングするためのシステムおよび方法を提供する。いくつかの実施形態によれば、異なるミリングレートを有する副領域がミリングされているときにスキャンレートが異なるような態様で領域がミリングされている間に集束イオンビームの速度(すなわちスキャンレート)が連続的に変化するような態様で、異なるミリングレートの副領域を含む領域をミリングする。
【0027】
説明のため、図4ならびに図5Aおよび5Bを参照する。図4は、本開示のいくつかの実施形態によるデレイヤリングプロセス400に関連したステップを示す流れ図である。図5Aは、異なるミリングレートを有する隣り合う2つのセクションを有する試料の部分をデレイヤリングするために使用される、プロセス400に従って使用することができる、いくつかの実施形態によるイオンビームスキャンパターンの簡略図であり、図5Bは、いくつかの実施形態によるプロセス400に従って試料の部分をデレイヤリングした後の、図5Aに示された試料の簡略断面図である。
【0028】
プロセス400は、試料のミリングする対象の領域(フレーム)および領域内の2つ以上の副領域(サブフレーム)を識別することから始まる(図4、ブロック410)。例えば、図5に示されているように、試料500は、副領域210aおよび210bに関する上の説明と同様に、異なるミリングレートを有する第1および第2の副領域510aおよび510bを含むミリングする対象の領域510を含むことができる。ユーザは、図1に示されたシステム100などの集束イオンビーム(FIB)評価ツールに関連したソフトウェアを使用して、領域510の境界およびそれぞれの副領域510a、510bの境界を定めることができる。このソフトウェアはさらに、ユーザがそれぞれの副領域510a、510bに特定のミリングレートを割り当てることを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、試験ウエハ上の副領域510a、510bと同様の領域をミリングすることによって、それぞれの副領域に対するミリングレートを前もって経験的に決定することができる。
【0029】
領域およびそれぞれの副領域の境界を定め、それぞれの副領域にミリングレートを割り当てた後、次いで、領域510が所望のミリング深さまでミリングされ(ブロック430、ミリングは完了した=はい)、プロセスが完了する(ブロック440)まで、領域510を横切ってイオンビームを数千回または数百万回、繰り返しスキャンする(ブロック430、ミリングは完了した=いいえ)ことによって、領域510をミリングすることができる(図4、ブロック420)。
【0030】
領域510をミリングするそれぞれの反復(図4、ブロック420)では、副領域510a(ブロック422)と副領域510b(ブロック424)の両方を横切ってイオンビームをスキャンする。しかしながら、領域510の全体を同じ一定のスキャンレートでスキャンする代わりに、イオンビームの速度を、副領域510aが副領域510bとは異なるレートでスキャンされるような態様で連続的に変化させることができる。例えば、副領域510aが、副領域510bの2倍のミリングレートを有する場合には、異なるミリングレートに対する調整のために、それぞれのフルフレームスキャン中の副領域510aにおけるビーム速度を、副領域510bのビーム速度に比べて2倍にすることができる。
【0031】
さらに説明するため、図5Aを参照すると、領域510のフルフレームスキャンのそれぞれの反復では、副領域510aをスキャンパターン520に従ってスキャンすることができ、次いで、スキャンパターン524の始点にイオンビームを導くことができ(点線522)、エリア520bをより速いレート(スキャンパターン520とは対照的により高密度のスキャンパターン524によって表されている)でスキャンすることができる。
【0032】
フルフレームスキャンの途中でのビーム速度のこのような微調整は、副領域510a、510b間に望ましくない境界を形成することなく、ミリングプロセスの全体を通じてミリング深さを副領域510aと510bの間で一定に維持することを可能にする。このような均一なミリングプロセスの最終結果が図5Bに示されており、この図では、ミリングされた領域510の底を横切って副領域510aと510bの間に均一に平らな表面が存在していることが分かる。さらに、副領域510a、510bは、逐次的にミリングされるのではなく一度にミリングされるため、(図2Bに示された縁212などの)縁の生成が回避される。縁の生成は、後に、縁の付近のミリングレートを局所的に変化させ、2つの副領域間にトレンチまたは同様の構造体を形成させる不都合な縁効果(edge-effect)を生じさせうる。
【0033】
図4および5A、5Bで説明した例は、異なるミリングレートを有する2つの異なる副領域を含むミリング中の領域510に対するものであったが、本開示の実施形態を、異なるミリングレートを有する3つ、4つまたは5つ以上のエリアを有するミリングされた領域を横切って均一で平らな表面を生み出す目的に使用することもできる。例えば、図6は、それぞれが異なるミリングレートを有する3つの異なる副領域610a、610bおよび610cを有するミリングする対象の領域610を含む試料600の簡略上面図である。図4に関する上の説明と同様に、ユーザは、システム100などのFIB評価ツールに関連したソフトウェアを使用して、領域610の境界、ならびにそれぞれの副領域610a、610b、および610cの境界ならびにそれぞれの副領域のミリングレートを定めることができる。
【0034】
次いで、フルフレームスキャンのそれぞれの反復中に(ブロック420)、それぞれ異なる密度のスキャン線620、624および628によって表されているように、副領域610a、10bおよび610cの各々を異なるビーム速度でスキャンすることができる。このようにして領域610の全体をミリングして、副領域610a、610bまたは610cのいずれの間にもいかなる縁効果を生じることなく、ミリングされた領域610の底を横切って均一に平らな表面を生み出すことができる。
【0035】
フルフレームスキャン当たりの可変の回数を用いたそれぞれの副領域のミリング
いくつかの実施形態では、ミリングフレーム内の副領域の異なるミリングレートに対する調整のためにビーム速度を変化させるのではなしに、本開示の実施形態が、ミリングフレームのそれぞれの副領域を横切ってビームをスキャンする回数を調整する。説明のため、図7および8を参照する。図7は、本開示のいくつかの実施形態によるミリング方法700に関連したステップを示す流れ図であり、図8は、異なるミリングレートを有する副領域810a、810bを含むミリングする対象の領域800を有する試料800の簡略上面図である。
【0036】
方法400と同様に、方法700は、試料のミリングする対象の領域(フレーム)および領域内の2つ以上の副領域(サブフレーム)を識別することを含む(図7、ブロック710)。例えば、図7に示されているように、試料700は、副領域710aおよび710bに関する上の説明と同様に、異なるミリングレートを有する第1ならびに第2の副領域710aおよび710bを含むミリングする対象の領域710を含むことができる。ユーザは、図1に示されたシステム100などの集束イオンビーム(FIB)評価ツールに関連したソフトウェアを使用して、領域710の境界およびそれぞれの副領域710a、710bの境界を定めることができる。このソフトウェアはさらに、ユーザがそれぞれの副領域710a、710bに特定のミリングレートを割り当てることを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、試験ウエハ上の副領域710a、710bと同様の領域をミリングすることによって、それぞれの副領域に対するミリングレートを前もって経験的に決定することができる。
【0037】
領域およびそれぞれの副領域の境界を定め、それぞれの副領域にミリングレートを割り当てた後、次いで、領域710が所望のミリング深さまでミリングされ(ブロック730、ミリングは完了した=はい)、プロセスが完了する(ブロック740)まで、それぞれの副領域710a、710bを横切ってイオンビームを数千回または数百万回、繰り返しスキャンする(ブロック730、ミリングは完了した=いいえ)ことによって、領域710をミリングすることができる(図7、ブロック720)。
【0038】
副領域710a、710bの異なるミリングレートを補償するため、方法700は、ステップ720で、それぞれの副領域におけるイオンビームのビーム速度を調整する代わりに(またはそれぞれの副領域におけるイオンビームのビーム速度を調整するのに加えて)、それぞれの副領域を横切って集束イオンビームをスキャンする回数を、他方の副領域での回数に対して調整することができる。例えば、副領域710aが、副領域710bの2倍のミリングレートを有する場合には、スキャンレートの差を補うために、ブロック720の1回の反復中に、副領域710aを横切ってイオンビームを1回スキャンし、その一方で副領域710bを横切ってイオンビームを2回スキャンすることができる。
【0039】
この着想が図8に示されている。具体的には、図8は、副領域810aを横切ってスキャンされているイオンビームを表すスキャンパターン820を示している。このビームは次いで、経路822を通って領域810bに導かれ、領域810bで、スキャンパターン824を、スキャンパターン820と同じビーム速度で実施することができる。スキャンパターン824が完了した後、新たなフルフレームスキャンを始める代わりにイオンビームを経路826を通して導き、2つの副領域間の異なるスキャンレートに対する調整のために、副領域810bで2回目のスキャンパターン824を実施することができる。領域810bの2回目のスキャンの後、領域810がまだ所望の深さまでミリングされていないと仮定すると(ブロック730、完了した=いいえ)、エリア810aを1回、エリア810bを2回スキャンすることによってブロック720を繰り返すことができ、このプロセスを、所望のミリング深さに達する(ブロック730、完了した=はい)まで、数千回または数百万回繰り返すことができる。
【0040】
方法700は、副領域間のミリングレートの差を考慮するために、ブロック720を通して、副領域810aのスキャン回数を副領域810bのスキャン回数に対して微調整することができる。例えば、副領域810aのミリングレートが副領域810bのミリングレートよりも50%速い場合には、副領域810aを横切ってイオンビームを2回スキャンするごとに、副領域810bを横切ってイオンビームを3回スキャンすることができる。いくつかの実施形態では、この比を維持しながらそれぞれの副領域のスキャンをできるだけ頻繁に交互に行うことによって、ブロック720を実施することができる。したがって、副領域810aを2回スキャンするごとに副領域810bを3回スキャンするこの例では、いくつかの実施形態において、ブロック720のイオンビームを、パターン820、パターン824、パターン820、パターン824、パターン824の順で繰り返しスキャンすることができる。それぞれの副領域を横切るイオンビームのスキャンは、スパッタリングによって非常に薄い材料層(いくつかの場合には例えばおよそ1原子層)を除去するだけであるため、ブロック720のそれぞれの反復でスキャンパターンをそれぞれの副領域で異なる回数繰り返しても、望ましくない縁効果は生じない。非限定的な他の例として、ミリングレートが互いに比較的に近いが、依然として異なるときに、副領域810bを10回スキャンする間に副領域810aを7回スキャンすること、または副領域810bを100回スキャンする間に副領域810aを93回スキャンすることもできる。したがって、副領域の異なるミリングレートを補償するのに適切な異なる実施形態で、副領域810aをスキャンする回数と副領域810bをスキャンする回数との適切な任意の比を使用することができることを認識することができる。同様に、ブロック720で異なる副領域の各々をスキャンする回数の適切な比を設定することによって、方法700を使用して、異なるミリングレートを有する3つ、4つまたは5つ以上の副領域を有する領域を均一にミリングすることができる。
【0041】
ミリングする対象試料の例
上述のとおり、本開示の実施形態を使用して、半導体構造体上に形成された電子回路、多結晶基板または他の基板上に形成された太陽電池、さまざまな基板上に形成されたナノ構造体などを含む多くの異なるタイプの試料をデレイヤリングすることができる。非限定的な1つの例として、図8は、いくつかの実施形態に従ってデレイヤリングすることができる半導体ウエハ上のエリアの簡略図である。具体的には、図8は、ウエハ800の上面図およびウエハ800の特定の部分の2つの拡大図を含む。ウエハ800は、例えば200mmまたは300mm半導体ウエハとすることができ、その上に多数の(図示の例では52個の)集積回路805を含むことができる。集積回路805は中間製造段階にあるものとすることができ、本明細書に記載されたデレイヤリング技法を使用して、異なるミリングレートを示す互いに隣り合う2つ以上のセクションを含む集積回路の1つまたは複数の領域810を評価および解析することができる。例えば、図8の拡大図Aは、本明細書に記載された技法に従って評価および解析することができる、集積回路805のうちの1つの集積回路の多数の領域810を示している。拡大図Bは、それらの領域810のうちの1つの領域であって、その中に穴のアレイが形成された第1のセクション810aと、隣り合う穴のアレイを分離する全体に中実の部分である第2のセクション810bとを含む領域を示している。セクション810aおよび810bの異なる形状寸法のため、これらの2つのセクションも異なるミリングレートを示す。
【0042】
本開示の実施形態は、ミリングによって領域の一番上の層を順番に除去することにより、領域810を解析および評価することができる。このミリングプロセスは、方法400または方法700に関して上で論じものなどのラスタパターンに従ってFIBビームを領域内で往復でスキャンすることにより、領域810をミリングすることができる。例えば、2つの副領域の異なるミリングレートを補償するために、領域を第1のビーム速度(スキャンパターン810a)で連続的にミリングし、次いで、領域810bを、第1のビーム速度よりも大きな第2のビーム速度(スキャンパターン810b)でミリングすることにより、ブロック420に従って領域810をミリングすることができる。
【0043】
除去された部分は、Z方向の特定の深さを有することができ、X方向とY方向の両方向において領域810からその全体を除去することができる。例えば、領域810が、Xμmの長さおよび幅を有する正方形である場合には、ミリングプロセス中に、X×Xμmの別個の非常に薄いスライス(1原子層以下の厚さの)を領域570から順番に除去することができ、それぞれの層で、除去された正方形は、副領域810aからの材料および副領域810bからの材料を含む。
【0044】
以上の説明では、説明の目的上、記載された実施形態の徹底的な理解を提供するために特定の用語を使用した。しかしながら、記載された実施形態を実行するのにそれらの特定の詳細は必要ないことは当業者には明らかであろう。したがって、本明細書に記載された特定の実施形態の上記の説明は、例示および説明のために示されたものである。それらの説明が網羅的であること、またはそれらの説明が、開示された正確な形態に実施形態を限定することは意図されていない。さらに、本開示の異なる実施形態を上で開示したが、本開示の実施形態の趣旨および範囲を逸脱することなく、特定の実施形態の特定の詳細を適宜に組み合わせることができる。さらに、以上の教示を考慮すれば、多くの修正および変更が可能であることは当業者には明白であろう。
【0045】
さらに、本明細書における方法への上記の言及は、必要な変更を加えて、その方法を実行することができるシステムに適用されるべきであり、必要な変更を加えて、実行されたときにその方法が実行される命令を記憶したコンピュータプログラム製品に適用されるべきである。同様に、本明細書におけるシステムへの上記の言及は、必要な変更を加えて、そのシステムによって実行することができる方法に適用されるべきであり、必要な変更を加えて、そのシステムによって実行することができる命令を記憶したコンピュータプログラム製品に適用されるべきであり、本明細書におけるコンピュータプログラム製品への言及は、必要な変更を加えて、そのコンピュータプログラム製品に記憶された命令を実行したときに実行することができる方法に適用されるべきであり、必要な変更を加えて、そのコンピュータプログラム製品に記憶された命令を実行するように構成されたシステムに適用されるべきである。
【0046】
本開示の示された実施形態の大部分は、当業者に知られている電子部品および装置を使用して実施することができるため、本開示の教示を不明瞭にしたり、または本開示の教示から逸脱したりしないように、そのような電子部品および装置の詳細は、上で説明したとおり、本開示の基礎をなす発想の理解および認識のために必要と考えられる程度を超えて説明されない。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9