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特許7372545内面形状測定機、及び内面形状測定機のアライメント方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】内面形状測定機、及び内面形状測定機のアライメント方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/20 20060101AFI20231025BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
G01B21/20 D
G01B21/00 L
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020046502
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021148497
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】森井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】森山 克文
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-174779(JP,A)
【文献】特開2010-164335(JP,A)
【文献】特開2003-057026(JP,A)
【文献】特開2012-154637(JP,A)
【文献】特開2001-099639(JP,A)
【文献】特開2018-163093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/20
G01B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに形成された細穴の内面形状を測定する内面形状測定機であって、
前記ワークを回転軸周りに回転させるための回転機構と、
前記ワークを載置する直動傾斜ステージであって、前記回転機構により前記回転軸周りに回転可能であり、かつ前記回転軸に直交する第1方向及び第2方向に直動及び傾斜が可能な直動傾斜ステージと、
前記細穴に挿入可能な細長形状を有し、前記細穴の内面形状を検出するプローブと、
前記プローブの姿勢を調整可能な調整手段と、
前記直動傾斜ステージに連結部材を介して連結され、前記回転軸を中心とする回転軌道上の少なくとも3つの周方向位置からプローブ姿勢情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記プローブ姿勢情報に基づき、前記調整手段により前記プローブの姿勢を調整する制御手段と、
を備える内面形状測定機。
【請求項2】
前記調整手段は、前記プローブを前記第1方向及び前記第2方向に直動及び傾斜が可能なプローブ直動傾斜機構である、
請求項1に記載の内面形状測定機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記プローブと前記回転軸との相対ずれがなくなるように、前記調整手段により前記プローブの姿勢を調整する、
請求項1又は2に記載の内面形状測定機。
【請求項4】
前記取得手段は、前記回転軌道上において互いに90度ずつずれた4つの周方向位置から前記プローブ姿勢情報を取得する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の内面形状測定機。
【請求項5】
前記取得手段は、前記プローブを撮影するカメラを含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の内面形状測定機。
【請求項6】
前記直動傾斜ステージと一体となって回転可能に構成され、前記カメラに対向する位置から前記プローブに向けて面発光可能な面発光照明手段を更に備える、
請求項5に記載の内面形状測定機。
【請求項7】
ワークに形成された細穴の内面形状を測定する内面形状測定機のアライメント方法であって、
前記内面形状測定機は、前記ワークを回転軸周りに回転させるための回転機構と、前記ワークを載置する直動傾斜ステージであって、前記回転機構により前記回転軸周りに回転可能であり、かつ前記回転軸に直交する第1方向及び第2方向に直動及び傾斜が可能な直動傾斜ステージと、前記細穴に挿入可能な細長形状を有し、前記細穴の内面形状を検出するプローブと、前記直動傾斜ステージに連結部材を介して連結された取得手段と、を備えるものであり、
前記直動傾斜ステージと一体となって前記取得手段を前記回転軸周りに回転させつつ、前記回転軸を中心とする回転軌道上の少なくとも3つの周方向位置から前記取得手段がプローブ姿勢情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した前記プローブ姿勢情報に基づき、前記プローブと前記回転軸との相対ずれがなくなるように、前記プローブの姿勢を調整する調整ステップと、
を備える内面形状測定機のアライメント方法。
【請求項8】
前記取得ステップは、前記回転軌道上において互いに90度ずつずれた4つの周方向位置から前記取得手段が前記プローブ姿勢情報を取得する、
請求項7に記載の内面形状測定機のアライメント方法。
【請求項9】
前記取得手段は、前記プローブを撮影するカメラであり、
前記直動傾斜ステージを直動又は傾斜させることにより、前記カメラの焦点を前記回転軸に合わせる焦点合わせステップを更に備える、
請求項7又は8に記載の内面形状測定機のアライメント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに形成された細穴の内面形状を測定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、検出器のプローブとワークとを回転軸を中心に相対的に回転させることにより、円筒状のワークの内面形状(真円度等)を測定する形状測定機が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような形状測定機を用いてワークの内面形状を測定するためには、回転軸とワークの中心軸とを一致させる必要がある。
【0003】
特許文献1には、回転テーブル上に載置された円筒状のワークの内周面に検出器のプローブ(接触子)を当接させてワークの内周面の内面形状を測定する技術が開示されている。特許文献1に記載の技術では、回転軸とワークの中心軸とを一致させるために、事前に検出器のプローブをワークの外周面に当接させ、回転テーブルを回転させながら低倍率でワークの振れを見て、振れが小さくなるようにワークの載置位置を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-145344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような形状測定機を用いてワークの細穴の内面形状を測定する場合、プローブと回転軸との相対的な位置合わせ(プローブアライメント)が重要となる。すなわち、上述した特許文献1のようにして回転軸とワークの中心軸とを一致させたとしても、プローブと回転軸との間に相対的な位置ずれが存在していると、プローブをワークの細穴に挿入する際にプローブがワークの細穴以外の部分に衝突してしまうという問題がある。
【0006】
このような問題は、作業者が観察顕微鏡で確認しながらプローブをワークの細穴に挿入すれば解消できるが、作業者の熟練が必要となる。この場合、自動化が困難であり、操作ミスによってプローブがワークの細穴以外の部分に衝突してしまうおそれがある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、プローブのアライメントを精度よく簡単に行うことができる内面形状測定機、及び内面形状測定機のアライメント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、以下の発明を提供する。
【0009】
本発明の第1態様に係る内面形状測定機は、ワークに形成された細穴の内面形状を測定する内面形状測定機であって、ワークを回転軸周りに回転させるための回転機構と、ワークを載置する直動傾斜ステージであって、回転機構により回転軸周りに回転可能であり、かつ回転軸に直交する第1方向及び第2方向に直動及び傾斜が可能な直動傾斜ステージと、細穴に挿入可能な細長形状を有し、細穴の内面形状を検出するプローブと、プローブの姿勢を調整可能な調整手段と、直動傾斜ステージに連結部材を介して連結され、回転軸を中心とする回転軌道上の少なくとも3つの周方向位置からプローブ姿勢情報を取得する取得手段と、取得手段が取得したプローブ姿勢情報に基づき、調整手段によりプローブの姿勢を調整する制御手段と、を備える。
【0010】
本発明の第2態様に係る内面形状測定機は、第1態様において、調整手段は、プローブを第1方向及び第2方向に直動及び傾斜が可能なプローブ直動傾斜機構である。
【0011】
本発明の第3態様に係る内面形状測定機は、第1態様又は第2態様において、制御手段は、プローブと回転軸との相対ずれがなくなるように、調整手段によりプローブの姿勢を調整する。
【0012】
本発明の第4態様に係る内面形状測定機は、第1態様から第3態様のいずれか1つの態様において、取得手段は、回転軌道上において互いに90度ずつずれた4つの周方向位置からプローブ姿勢情報を取得する。
【0013】
本発明の第5態様に係る内面形状測定機は、第1態様から第4態様のいずれか1つの態様において、取得手段は、プローブを撮影するカメラを含む。
【0014】
本発明の第6態様に係る内面形状測定機は、第5態様において、直動傾斜ステージと一体となって回転可能に構成され、カメラに対向する位置からプローブに向けて面発光可能な面発光照明手段を更に備える。
【0015】
本発明の第7態様に係る内面形状測定機のアライメント方法は、ワークに形成された細穴の内面形状を測定する内面形状測定機のアライメント方法であって、内面形状測定機は、ワークを回転軸周りに回転させるための回転機構と、ワークを載置する直動傾斜ステージであって、回転機構により回転軸周りに回転可能であり、かつ回転軸に直交する第1方向及び第2方向に直動及び傾斜が可能な直動傾斜ステージと、細穴に挿入可能な細長形状を有し、細穴の内面形状を検出するプローブと、直動傾斜ステージに連結部材を介して連結された取得手段と、を備えるものであり、直動傾斜ステージと一体となって取得手段を回転軸周りに回転させつつ、回転軸を中心とする回転軌道上の少なくとも3つの周方向位置から取得手段がプローブ姿勢情報を取得する取得ステップと、取得ステップで取得したプローブ姿勢情報に基づき、プローブと回転軸との相対ずれがなくなるように、プローブの姿勢を調整する調整ステップと、を備える。
【0016】
本発明の第8態様に係る内面形状測定機のアライメント方法は、第7態様において、前取得ステップは、回転軌道上において互いに90度ずつずれた4つの周方向位置から取得手段がプローブ姿勢情報を取得する。
【0017】
本発明の第8態様に係る内面形状測定機のアライメント方法は、第7態様において、取得手段は、プローブを撮影するカメラであり、直動傾斜ステージを直動又は傾斜させることにより、カメラの焦点を回転軸に合わせる焦点合わせステップを更に備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、プローブのアライメントを精度よく簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の内面形状測定機の全体構成を示した概略図である。
図2】制御装置の構成を示したブロック図である。
図3】プローブアライメントの流れの一例を示したフローチャートである。
図4】カメラの焦点合わせを説明するための図である。
図5】カメラによるプローブの撮影位置の一例を示した図である。
図6】各撮影位置におけるカメラの撮影画像の一例を示した説明図である。
図7】第1撮影画像と第3撮影画像との合成画像を示した図である。
図8】第2撮影画像と第4撮影画像との合成画像を示した図である。
図9】ワークアライメントを説明するための図である。
図10】ワークアライメントを説明するための図である。
図11】プローブ直動傾斜機構の直動移動量の校正方法を説明するための図である。
図12】プローブ直動傾斜機構の傾斜移動量の校正方法を説明するための図である。
図13】カメラによるプローブの撮影位置の他の例を示した図である。
図14】カメラによるプローブの撮影位置の更に他の例を示した図である。
図15】第2実施形態の内面形状測定機の全体構成を示した概略図である。
図16】第3実施形態の内面形状測定機の全体構成を示した概略図である。
図17】第4実施形態の内面形状測定機の要部構成を示した概略図である。
図18】第5実施形態の内面形状測定機の要部構成を示した概略図である。
図19】本発明の応用例を説明するための図である。
図20】本発明の応用例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。
【0021】
[第1実施形態]
<内面形状測定機の構成>
図1は、第1実施形態の内面形状測定機10の全体構成を示す概略図である。内面形状測定機10は、ワークWに形成された細穴Hの内面形状(真円度等)を測定する装置である。本例において、細穴Hは、ワークWの中心軸に沿って形成された貫通穴である。細穴Hの内径は極小径(例えば内径が500μm以下)のものである。図1において、X方向、Y方向及びZ方向は互いに直交する方向であり、X方向は水平方向、Y方向はX方向に直交する水平方向、Z方向は鉛直方向である。
【0022】
図1に示すように、内面形状測定機10は、本体ベース12、高精度回転機構14、直動傾斜ステージ18、コラム20、キャリッジ22、アーム24、変位検出器26、プローブ直動傾斜機構28、プローブ観察用カメラ32、ワーク観察用カメラ34、及び制御装置50を備える。
【0023】
高精度回転機構14は、ワークWを回転軸C周りに回転させるための回転機構であり、後述する直動傾斜ステージ18をZ方向に平行な回転軸Cを中心に高精度に回転させるものである。高精度回転機構14は、本体ベース12上に回転可能に設けられた回転体16を備えており、回転体16の上面に直動傾斜ステージ18が支持されている。高精度回転機構14は、回転体16を回転軸Cを中心に高精度に回転させるモータ(不図示)と、回転体16の回転角度を検出するエンコーダ(不図示)とを備える。なお、高精度回転機構14は「回転機構」に相当する。
【0024】
直動傾斜ステージ18は、ワークWを載置するものである。直動傾斜ステージ18は、ワークWを直接支持固定するものであってもよいし、ワーク設置治具(不図示)を介してワークWを支持固定するものであってもよい。
【0025】
直動傾斜ステージ18は、回転体16の支持面(上面)に支持されており、回転体16と一体となって回転軸Cを中心に回転可能に構成される。これにより、直動傾斜ステージ18に支持固定されたワークWは、直動傾斜ステージ18と一体となって回転軸Cを中心に回転可能である。
【0026】
直動傾斜ステージ18は、直動機構(センタリング機構)と、傾斜機構(チルチング機構)とを備えている(いずれも不図示)。直動機構は、不図示のモータの駆動により直動傾斜ステージ18をX方向及びY方向に移動させて、回転軸Cに直交するXY平面(水平面)における直動傾斜ステージ18の位置を調整させる。傾斜機構は、不図示のモータの駆動により直動傾斜ステージ18をX方向及びY方向の周りに回転させて、XY平面に対する直動傾斜ステージ18の傾きを調整する。したがって、直動機構及び傾斜機構によって直動傾斜ステージ18の水平方向(X方向及びY方向)の位置及び傾斜を調整することにより、回転軸Cに対するワークWの中心軸の偏心補正(センタリング調整)及び傾斜補正(チルチング調整)を行うことが可能となる。
【0027】
本体ベース12上には、Z方向に平行に延びるコラム(支柱)20が立設される。コラム20は、下端部が本体ベース12の上面に固定される。
【0028】
キャリッジ22は、Z方向に移動可能にコラム20に支持される。キャリッジ22は、不図示のモータの駆動によりZ方向に移動可能に構成される。
【0029】
アーム24は、X方向に移動可能にキャリッジ22に支持される。アーム24は、不図示のモータの駆動によりX方向に移動可能に構成される。
【0030】
変位検出器26は、プローブ直動傾斜機構28を介してアーム24に支持される。変位検出器26は、ワークWの細穴Hに挿入可能な細長形状のプローブ30を有する。プローブ30は、ワークWの細穴Hに挿入された状態でワークWの細穴Hの内面(被測定面)の形状を検出するものである。プローブ30は、ワークWの細穴Hの内面に接触せずに内面形状を検出する非接触式のプローブが好ましく採用される。
【0031】
非接触式プローブとしては、ワークWの細穴Hの内面に接触せずに内面形状を検出することができるものであれば特に限定されず、例えば、レーザー干渉計、白色干渉計、SD-OCT(Spectral Domain-Optical Coherence Tomography)、SS-OCT(Swept Source-Optical Coherence Tomography)等の各種手法が適用されたプローブを用いることができる。
【0032】
なお、プローブ30は、非接触式プローブに限らず、接触式プローブでもよい。接触式プローブは、ワークWの細穴Hの内面に接触可能な接触子を有し、ワークWの細穴Hの内面に接触させたときの接触子の変位を検出することにより内面形状を検出するものである。接触式プローブとしては、例えば、LVDT(Linear Variable Differential Transformer)、干渉計、光三角測量方式、薄膜歪み測定等の各種手法が適用されたプローブを用いることができる。また、共振周波数で接触式プローブの接触子を加振しておき、接触によって共振点が変化することを利用する方式を適用してもよい。
【0033】
一般に非接触式プローブは接触式プローブに比べて細径化に適しており、本実施形態のように極小径の細穴Hの内面形状の測定には非接触式プローブが好適である。
【0034】
プローブ直動傾斜機構28は、アーム24と変位検出器26との間に介在して設けられている。プローブ直動傾斜機構28は、直動機構と、傾斜機構とを備えている(いずれも不図示)。直動機構は、不図示のモータの駆動により変位検出器26をX方向及びY方向に移動させて、回転軸Cに直交するXY平面(水平面)におけるプローブ30の位置を調整させる。傾斜機構は、不図示のモータの駆動により変位検出器26をX方向及びY方向の周りに回転させて、XY平面に対するプローブ30の傾きを調整する。したがって、プローブ直動傾斜機構28(直動機構及び傾斜機構)によってプローブ30の水平方向(X方向及びY方向)の位置及び傾斜を調整することにより、プローブ30と回転軸Cとの相対的な位置合わせ(プローブアライメント)を行うことが可能となる。プローブ直動傾斜機構28は「調整手段」の一例である。なお、本発明の特徴であるプローブアライメントについては後述する。
【0035】
プローブ観察用カメラ32は、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラなどのエリアセンサカメラ(2次元センサカメラ)である。プローブ観察用カメラ32は、カメラ用ブラケット36を介して直動傾斜ステージ18に連結(支持)されている。プローブ観察用カメラ32は、その撮影方向が回転軸Cに直交し且つ回転軸C側(回転中心側)を向くように配置されている。また、後述する焦点合わせにより、プローブ観察用カメラ32の焦点が回転軸Cに合うように調整されている。これにより、プローブ観察用カメラ32は、直動傾斜ステージ18と一体となって回転軸C周りに回転可能であると共に、その回転軸Cを中心とした回転軌道K上の任意の撮影位置(周方向位置)においてプローブ観察用カメラ32によるプローブ30の撮影が可能となっている(図5参照)。なお、プローブ観察用カメラ32への給電は、スリップリングや無線給電などの公知の方法を適用可能である。プローブ観察用カメラ32は「取得手段」の一例であり、プローブ観察用カメラ32が撮影した撮影画像は「プローブ姿勢情報」の一例である。また、カメラ用ブラケット36は「連結部材」の一例である。
【0036】
ワーク観察用カメラ34は、上述したプローブ観察用カメラ32と同様に、例えばCCDカメラなどのエリアセンサカメラ(2次元センサカメラ)である。ワーク観察用カメラ34の上端部はアーム24に支持されており、その撮影方向が回転軸Cに平行な鉛直方向下側(Z方向の下側)を向くように配置されている。これにより、ワーク観察用カメラ34は、直動傾斜ステージ18に支持固定されたワークWを一定の位置(固定位置)から撮影することが可能となっている。
【0037】
<制御装置>
制御装置50は、内面形状測定機10の各部の動作(ワークWの内面形状の測定動作や後述するプローブアライメント動作などを含む)を制御する。制御装置50は、例えばパーソナルコンピュータ又はマイクロコンピュータ等の汎用のコンピュータによって実現されるものである。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び入出力インターフェース等を備えている。制御装置50では、ROMに記憶されている制御プログラム等の各種プログラムがRAMに展開され、RAMに展開されたプログラムがCPUによって実行されることにより、内面形状測定機10内の各部の機能が実現され、入出力インターフェースを介して各種の演算処理又は制御処理が実行される。なお、制御装置50は「制御手段」の一例である。
【0038】
図2は、制御装置50の構成を示したブロック図である。なお、図2においては、内面形状測定機10で実行されるプローブアライメントの動作に関する構成のみを図示している。なお、制御装置50は、ワークWの内面形状の測定動作等に関する構成なども備えているが、本発明の要部ではないので説明を省略する。
【0039】
図2に示すように、制御装置50は、プローブアライメント制御部52を備えている。プローブアライメント制御部52は、プローブ30と回転軸Cとの相対位置な位置合わせ(プローブアライメント)を行うための動作を制御する機能部である。
【0040】
ここで、プローブアライメント制御部52の構成について詳しく説明すると、プローブアライメント制御部52は、撮影制御部54と、相対ずれ検出部56と、プローブ姿勢制御部58と、を備えている。
【0041】
撮影制御部54は、高精度回転機構14を制御して、回転体16及び直動傾斜ステージ18と一体となって回転軸C周りにプローブ観察用カメラ32を回転させることにより、プローブ30に対するプローブ観察用カメラ32の撮影位置(周方向位置)を回転軸Cを中心とした周方向に変化させる。これにより、回転軸Cを中心とするプローブ観察用カメラ32の回転軌道K上の少なくとも3つの撮影位置からプローブ観察用カメラ32によるプローブ30の撮影が可能になる。なお、後述するように本実施形態では、プローブ観察用カメラ32の回転軌道K上において互いに90度ずつずれた4つの撮影位置からプローブ30の撮影が好適に行われる(図5参照)。また、撮影制御部54は、上記撮影の動作が行われる前に、直動傾斜ステージ18を制御して、直動傾斜ステージ18の水平方向(X方向及びY方向)の位置及び傾斜を調整することにより、プローブ観察用カメラ32の焦点が回転軸Cに合うように焦点合わせを行う。
【0042】
さらに、撮影制御部54は、各撮影位置に移動したプローブ観察用カメラ32にプローブ30を撮影させる制御を行う。撮影制御部54は、プローブ観察用カメラ32が撮影した撮影画像を相対ずれ検出部56に対して送信させる。
【0043】
相対ずれ検出部56は、各撮影位置でプローブ観察用カメラ32が取得した撮影画像に基づいて、回転軸Cとプローブ30との相対ずれを検出する。具体的な検出方法については、後述するプローブアライメントにおいて説明する。
【0044】
プローブ姿勢制御部58は、相対ずれ検出部56が検出した相対ずれに基づき、プローブ直動傾斜機構28を制御する。具体的には、プローブ姿勢制御部58は、相対ずれ検出部56が検出した相対ずれがなくなるように、プローブ直動傾斜機構28を制御してプローブ30の位置及び傾きを調整して、プローブ30と回転軸Cとの相対的な位置合わせを行う。
【0045】
<プローブアライメント>
次に、本発明の特徴であるプローブアライメントについて説明する。
【0046】
内面形状測定機10を用いてワークWの細穴Hの内面形状(真円度等)を測定する場合には、まず、プローブ30がキャリッジ22により変位検出器26とともにZ方向に移動され、ワークWの細穴Hにプローブ30が挿入される。そして、ワークWの細穴Hにプローブ30が挿入された状態で、ワークWを回転軸C周りに回転させつつ、プローブ30により細穴Hの内面形状が検出される。このようにしてワークWの細穴Hの内面形状の測定が行われる。
【0047】
ここで、上記測定が開始される前にプローブ30を細穴Hに挿入するためには、プローブ30が回転軸Cに対して同軸上に位置するようにプローブ30の姿勢(位置及び傾斜)が調整されていることが必要となる。仮にプローブ30と回転軸Cとの間に相対ずれが存在すると、プローブ30を細穴Hに挿入しようした場合、プローブ30がワークWの細穴H以外の部分と衝突してしまい、細穴Hの内面形状を測定することが困難となる。
【0048】
そこで本実施形態では、ワークWの細穴Hの内面形状の測定が開始される前に、プローブ30と回転軸Cとの相対ずれがなくなるように、プローブ30と回転軸Cとの相対的な位置合わせ(プローブアライメント)が行われる。
【0049】
図3は、プローブアライメントの流れの一例を示したフローチャートである。
【0050】
図3に示すように、プローブアライメントが開始されると、まず、撮影制御部54が、プローブ観察用カメラ32の焦点が回転軸Cに合うように焦点合わせを行う(ステップS10、「焦点合わせステップ」の一例)。ここで、本実施形態では、プローブ観察用カメラ32がカメラ用ブラケット36を介して直動傾斜ステージ18に支持されているので、図4に示すように、撮影制御部54が、直動傾斜ステージ18を制御して、直動傾斜ステージ18の水平方向(X方向及びY方向)の位置及び傾斜を調整することにより、上記のようにプローブ観察用カメラ32の焦点合わせを行うことが可能である。なお、プローブ観察用カメラ32が、被写体(プローブ30)までの距離を測定して焦点合わせを行う自動焦点合わせ機能(オートフォーカス機能)を有するものであってもよい。
【0051】
次に、撮影制御部54が、高精度回転機構14を制御して、直動傾斜ステージ18と一体となってプローブ観察用カメラ32を回転軸C周りに回転移動させる(ステップS12)。そして、回転軸Cを中心とするプローブ観察用カメラ32の回転軌道K上においてプローブ観察用カメラ32が所定の撮影位置に移動したら、その撮影位置でプローブ観察用カメラ32によるプローブ30の撮影が行われる(ステップS14、「取得ステップ」の一例)。
【0052】
次に、全ての撮影位置での撮影が終了したか否かが判断される(ステップS16)。全ての撮影位置での撮影が終了していないと判断された場合(ステップS16においてNo)、全ての撮影位置での撮影が終了したと判断されるまで、プローブ観察用カメラ32の回転移動(ステップS12)と、プローブ観察用カメラ32によるプローブ30の撮影(ステップS14)とが繰り返し行われる。なお、プローブ観察用カメラ32が各撮影位置に移動したか否かの判別は、高精度回転機構14に設けられるエンコーダの出力に基づいて行うことができる。なお、プローブ観察用カメラ32が各撮影位置に移動したか否かを判別できるものであれば、エンコーダに限らず、他の任意の構成のものを適用可能である。
【0053】
図5は、プローブ観察用カメラ32によるプローブ30の撮影位置の一例を示した図である。図5に示すように、本実施形態におけるプローブアライメントでは、直動傾斜ステージ18の回転移動によりプローブ観察用カメラ32を回転軸Cを中心に回転移動させつつ、回転軸Cを中心とするプローブ観察用カメラ32の回転軌道K上における所定の撮影位置(周方向位置)においてプローブ観察用カメラ32によるプローブ30の撮影が行われる。具体的には、回転軸Cを中心とするプローブ観察用カメラ32の回転軌道K上において互いに90度ずつずれた4つの撮影位置P1~P4で、プローブ観察用カメラ32によるプローブ30の撮影が行われる。
【0054】
4つの撮影位置P1~P4の平面的(XY平面)な位置関係としては、互いに直交する2つの方向のうち、第1撮影位置P1と第3撮影位置P3は第1方向(Y方向)において互いに対向する位置同士である。また、第2撮影位置P2と第4撮影位置P4は第2方向(X方向)において互いに対向する位置同士である。
【0055】
本実施形態において、4つの撮影位置P1~P4からプローブ観察用カメラ32によりプローブ30を撮影する方向はX方向またはY方向であり、プローブ直動傾斜機構28においてプローブ30を直動又は傾斜させる制御方向(移動軸方向)と同一方向となっている。
【0056】
なお、本実施形態では、好ましい態様の1つとして、第1撮影位置P1と第3撮影位置P3とが対向する第1方向(Y方向)と、第2撮影位置P2と第4撮影位置P4が対向する第2方向(X方向)が、プローブ直動傾斜機構28の制御方向と一致している態様を示したが、必ずしもこの態様に限定されるものではない。例えば、プローブ直動傾斜機構28の制御方向とは異なる方向であってもよいし、第1方向と第2方向とが互いに直交していなくてもよい。但し、本実施形態によれば、プローブ30と回転軸Cとの相対ずれを各方向独立して簡単かつ容易に検出することができるので好ましい。
【0057】
図3に戻って、全ての撮影位置でプローブ観察用カメラ32によるプローブ30の撮影が終了したと判断されると(ステップS16においてYes)、相対ずれ検出部56は、各撮影位置でプローブ観察用カメラ32が撮影した撮影画像に基づき、プローブ30と回転軸Cとの相対ずれを検出する(ステップS18)。
【0058】
ここで、プローブ30と回転軸Cとの相対ずれの検出について詳しく説明する。
【0059】
図6は、各撮影位置P1~P4においてプローブ観察用カメラ32により撮影された撮影画像の一例を示した図である。なお、図6において、第1撮影画像100Aは第1撮影位置P1で撮影された撮影画像であり、以下同様に、第2撮影画像100Bは第2撮影位置P2、第3撮影画像100Cは第3撮影位置P3、第4撮影画像100Dは第4撮影位置P4でそれぞれ撮影された撮影画像である。
【0060】
プローブ30と回転軸Cとの相対ずれが存在する場合、例えば図6に示すように、各撮影位置P1~P4でプローブ観察用カメラ32により撮影された撮影画像100A~100Dにおいて、撮影位置(すなわち、プローブ観察用カメラ32によるプローブ30の撮影方向)の違いに応じて、プローブ30の姿勢(位置及び傾き)が異なる。
【0061】
例えば、第1方向(Y方向)において互いに対向する2つの撮影位置(第1撮影位置P1及び第3撮影位置P3)のうち、一方の撮影位置(第1撮影位置P1)から撮影した第1撮影画像100Aでは、プローブ30Aは第2方向(X方向)の一方側に傾いているのに対して、他方の撮影位置(第3撮影位置P3)から撮影した第3撮影画像100Cでは、プローブ30Cは第2方向(X方向)の他方側に傾いている。また、第2方向(X方向)の位置についても互いに反対側にむかってずれている。
【0062】
第2方向(X方向)において互いに対向する2つの撮影位置(第2撮影位置P2及び第4撮影位置P4)においてそれぞれ第2撮影画像100Bと第4撮影画像100Dについても同様であり、プローブ30B、30Dの位置及び傾きが互いに反対側にずれている。
【0063】
図7は、第1方向(Y方向)において互いに対向する2つの撮影位置(第1撮影位置P1及び第3撮影位置P3)から撮影した第1撮影画像100Aと第3撮影画像100Cとを合成した第1合成画像102Aを示した図である。
【0064】
図7に示すように、第1撮影画像100Aと第3撮影画像100Cとを合成した第1合成画像102Aにおいて、第1撮影画像100Aにおけるプローブ30Aの中心軸(第1プローブ中心軸)L1と、第3撮影画像100Cにおけるプローブ30Cの中心軸(第3プローブ中心軸)L3との間の第1中線ML1が、XZ平面内における回転軸Cの位置(すなわち、第1方向(Y方向)からプローブ30を見た場合の回転軸Cの位置)を示している。なお、第1中線ML1とは、第1合成画像102Aにおいて、第1プローブ中心軸L1及び第3プローブ中心軸L3の横方向(X方向)の中央を縦方向(Z方向)に通る直線をいう。換言すれば、第1合成画像102Aにおいて、第1プローブ中心軸L1と第3プローブ中心軸L3との間を左右(X方向)に2等分する直線を第1中線ML1という。
【0065】
第1合成画像102Aにおける第1中線ML1は、回転軸Cの位置を示している。すなわち、第1中線ML1は、第1合成画像102A(XZ平面内)においてプローブ30の移動目標となる線を示しており、プローブ30が第1中線ML1に一致するようにプローブ30の姿勢(位置及び傾き)を調整することで、XZ平面内における回転軸Cとプローブ30との相対ずれをなくすことが可能となる。
【0066】
図8は、第2方向(X方向)において互いに対向する2つの撮影位置(第2撮影位置P2及び第4撮影位置P4)から撮影した第2撮影画像100Bと第4撮影画像100Dとを合成した合成画像102Bを示した図である。
【0067】
図7に示すように、第2撮影画像100Bと第4撮影画像100Dとを合成した第2合成画像102Bにおいて、第2撮影画像100Bにおけるプローブ30Bの中心軸(第2プローブ中心軸)L2と、第4撮影画像100Dにおけるプローブ30Dの中心軸(第4プローブ中心軸)L4との間の第2中線ML2が、YZ平面内における回転軸Cの位置(すなわち、第2方向(X方向)からプローブ30を見た場合の回転軸Cの位置)を示している。なお、第2中線ML2とは、第2合成画像102Bにおいて、第2プローブ中心軸L2及び第4プローブ中心軸L4の横方向(X方向)の中央を縦方向(Z方向)に通る直線をいう。換言すれば、第2合成画像102Bにおいて、第2プローブ中心軸L2と第4プローブ中心軸L4との間を左右(X方向)に2等分する直線を第2中線ML2という。
【0068】
第2合成画像102Bにおける第2中線ML2は、回転軸Cの位置を示している。すなわち、第2中線ML2は、第2合成画像102B(YZ平面内)においてプローブ30の移動目標となる線を示しており、プローブ30が第2中線ML2に一致するようにプローブ30の姿勢(位置及び傾き)を調整することで、YZ平面内における回転軸Cとプローブ30との相対ずれをなくすことが可能となる。
【0069】
したがって、回転軸Cを中心とするプローブ観察用カメラ32の回転軌道K上において互いに90度ずつずれた4つの撮影位置P1~P4においてプローブ観察用カメラ32が撮影した撮影画像に基づき、上述した2つの中線ML1、ML2を算出することで、プローブ30の移動目標となる回転軸C(回転中心)を検出することができ、回転軸Cとプローブ30との相対ずれを各方向(X方向及びY方向)独立して調整することが可能となる。
【0070】
そこで、本実施形態のプローブアライメントでは、相対ずれ検出部56は、図7に示した第1合成画像102Aにおいて、2つのプローブ30のうちいずれか一方のプローブを基準プローブ(本例では第1撮影画像100Aにおけるプローブ30A)とした場合、第1中線ML1に対して基準プローブのプローブ中心軸を平行とするための傾斜角(Y方向を中心とする回転角)を傾斜移動量θとして検出すると共に、基準プローブのプローブ中心軸を傾斜移動量θだけ傾斜させて第1中線ML1と平行にした場合に、基準プローブのプローブ中心軸を第1中線ML1に一致させるために必要なX方向の移動距離を直動移動量Dxとして検出する。なお、直動移動量Dxは、プローブ直動傾斜機構28におけるX方向の移動軸に沿った方向の距離に相当する(図7参照)。
【0071】
また、相対ずれ検出部56は、図8に示した第2合成画像102Bにおいて、2つのプローブ30のうちいずれか一方のプローブを基準プローブ(本例では第2撮影画像100Bにおけるプローブ30B)とした場合、第2中線ML2に対して基準プローブのプローブ中心軸を平行とするための傾斜角(X方向を中心とする回転角)を傾斜移動量φとして検出すると共に、基準プローブのプローブ中心軸を傾斜移動量φだけ傾斜させて第2中線ML2と平行にした場合に、基準プローブのプローブ中心軸を第2中線ML2に一致させるために必要なY方向の移動距離を直動移動量Dyとして検出する。なお、直動移動量Dyは、プローブ直動傾斜機構28におけるY方向の移動軸に沿った方向の距離に相当する(図8参照)。
【0072】
なお、相対ずれ検出部56は、エッジ抽出等の公知の画像処理により、各合成画像102A、102Bから、プローブ中心軸C1~C4、中線ML1、ML2、直動移動量Dx、Dy、傾斜移動量θ、φを算出することが可能である。
【0073】
このようにして相対ずれ検出部56が、各撮影位置でプローブ観察用カメラ32が撮影した撮影画像に基づき、プローブ30と回転軸Cとの相対ずれを各方向独立して検出すると(ステップS18)、プローブ姿勢制御部58が、相対ずれ検出部56が検出した結果に基づき、プローブ直動傾斜機構28を制御する。具体的には、プローブ姿勢制御部58は、プローブ直動傾斜機構28を制御して、プローブ30を、X方向に直動移動量Dxだけ移動させると共にY方向に直動移動量Dyだけ移動させ、かつ、X方向を中心に傾斜移動量φだけ傾斜させると共にY方向を中心に傾斜移動量θだけ傾斜させる(ステップS20、「調整ステップ」の一例)。なお、プローブ直動傾斜機構28を移動又は傾斜させる方向(向き)は、図7又は図8に示した合成画像102A、102Bにおいて、どのプローブを基準プローブとするかに応じて定められる。
【0074】
以上にようにして、プローブ姿勢制御部58が、相対ずれ検出部56が検出した結果に基づき、プローブ直動傾斜機構28を制御してプローブ30の姿勢を変化させると、三次元空間内においてプローブ30と回転軸Cとの相対ずれがなくなる。以上により、本フローチャートは終了となる。
【0075】
<ワークアライメント>
上述したプローブアライメントでは、プローブ観察用カメラ32の焦点合わせが、直動傾斜ステージ18の水平方向(X方向及びY方向)の位置及び傾斜を調整することにより行われる。そのため、プローブアライメントが行われる前に、回転軸Cに対するワークWの中心軸の位置合わせ(ワークアライメント)が行われていると、プローブ観察用カメラ32の焦点合わせに伴う直動傾斜ステージ18の移動により、回転軸CとワークWの中心との間に相対ずれが生じる場合がある。そこで、本実施形態においては、プローブアライメントが行われた後に、後述するワークアライメントが行われることが好ましい。
【0076】
本実施形態におけるワークアライメントでは、回転体16の回転移動により直動傾斜ステージ18に支持固定されたワークWを回転軸Cを中心に回転移動させつつ、ワーク観察用カメラ34によりワークWの撮影を行う。このとき、ワーク観察用カメラ34は、回転軸Cを中心とする周方向(ワークWの回転方向)において互いに180度ずれた2つの位置(すなわち、回転軸Cを中心に互いに対向する2つの位置)にそれぞれ移動したときのワークWを撮影する。
【0077】
図9及び図10は、ワークアライメントを説明するための図である。なお、図9は、回転軸Cを中心に互いに対向する2つの位置においてワーク観察用カメラ34により撮影された撮影画像の一例を示した図である。図9において、第1撮影画像104Aは第1回転位置(例えば0度位置)で撮影された撮影画像であり、第2撮影画像104Bは第2回転位置(例えば180度位置)で撮影された撮影画像である。また、図10は、回転軸Cを中心に互いに対向する2つの回転位置で撮影した第1撮影画像104Aと第2撮影画像104Bとを合成した合成画像106を示した図である。
【0078】
ワークWの中心と回転軸Cとが一致していない場合(偏心ずれが存在する場合)、回転軸Cに対するワークWの位置が周方向(回転軸Cを中心とするワークWの回転方向)に変化する。このとき、例えば図9に示すように、第1回転位置で撮影した第1撮影画像104Aでは、ワークW1は、回転軸Cに対してX方向及びY方向の一方側にそれぞれ偏心した位置に配置されるのに対して、第1回転位置から180度ずれた位置である第2回転位置で撮影した第2撮影画像104Bでは、ワークW2は、第1撮影画像104AにおけるワークW1とはX方向及びY方向の他方側(上記一方側とは反対側)に偏心した位置に配置される。すなわち、第1撮影画像104AのワークW1と、第2撮影画像104BのワークW2とは、回転軸Cを中心とする点対称の位置関係にある。
【0079】
図10に示すように、第1撮影画像104Aと第2撮影画像104Bとを合成した合成画像106において、第1撮影画像104AにおけるワークW1の中心O1と、第2撮影画像104BにおけるワークW2の中心O2との間を結ぶ線分の中点が、XY平面内における回転軸Cの位置を示している。すなわち、上記中点(回転軸C)は、合成画像106(XY平面内)においてワークWの中心の移動目標となる位置を示しており、ワークWの中心(O1又はO2)が上記中点に一致するように直動傾斜ステージ18を水平方向(X方向及びY方向)に移動させることで、XY平面内における回転軸CとワークWの中心との偏心ずれをなくすことが可能となる。なお、ワークWの中心を回転軸Cに一致させるために必要なX方向及びY方向の移動距離(直動移動量)Ex、Eyは、図10に示すように、ワークWの中心と回転軸Cとの各方向の距離として求めることが可能である。
【0080】
このように本実施形態のワークアライメントでは、ワーク観察用カメラ34が各回転位置でワークWを撮影した撮影画像(ワーク画像)から、ワークWの移動目標となる回転軸C(回転中心)の位置を検出することができる。換言すれば、ワーク観察用カメラ34が撮影した2つの撮影画像に基づき、回転軸Cに対するワークWの中心の偏心ずれを検出することができる。
【0081】
そして、このようにして検出した偏心ずれに基づき、直動傾斜ステージ18を水平方向(X方向及びY方向)に移動させることで、ワークWの中心を回転軸Cに一致させることができる。なお、ワークアライメントに関する各部の制御は、制御装置50のワークアライメント制御部(不図示)により行われる。また、ワーク観察用カメラ34は、各回転位置で複数の静止画を撮影するものでもよいし、ワークWの回転移動中の動画を撮影するものであってもよい。
【0082】
なお、本実施形態のワークアライメントでは、回転軸Cを中心とする周方向において互いに対向する2つの回転位置でそれぞれ撮影した撮影画像を用いているが、ワークWの移動目標となる回転軸C(回転中心)の位置を検出することができるものであれば、これに限らず、回転軸Cを中心とする周方向において少なくとも3つの回転位置でそれぞれ撮影した撮影画像を用いるものであってもよい。この場合、ワーク観察用カメラ34が回転移動する範囲を一部範囲に限定することが可能となるため、より短時間で効率的にワークアライメントを実行することが可能となる。
【0083】
以上のようにして、プローブアライメントとワークアライメントが行われることにより、回転軸Cと、プローブ30と、ワークWの中心との間の相対ずれをなくすことができる。これにより、ワークWの細穴Hの内面形状を測定する際に、プローブ30がワークWの細穴H以外の部分と衝突することなく、細穴Hの内面形状を安定かつ確実に測定することが可能となる。
【0084】
<プローブ直動傾斜機構の校正>
次に、プローブ直動傾斜機構28における直動移動量及び傾斜移動量の校正について説明する。
【0085】
本実施形態の内面形状測定機10において、ワークWの中心と回転軸Cとの相対位置や測定動作毎にワークWの回転位置が変わると、測定精度に影響を与える。そのため、直動傾斜ステージ18や高精度回転機構14には精度の高いものが要求される。
【0086】
また、上述したプローブアライメントを精度よく行うためには、プローブ直動傾斜機構28にも精度の高いものが用いられることが望ましい。しかしながら、プローブ直動傾斜機構28に高精度なスケールや高分解能なエンコーダを搭載した場合、プローブ直動傾斜機構28内の運動部分への配線追加によるコストアップや、配線による駆動部精度に悪影響を与える可能性がある。また、プローブ直動傾斜機構28内の測定部(スケール)付近に発熱体が追加されるため、温度変化による精度悪化を引き起こす要因となる。
【0087】
そこで、本実施形態においては、プローブ直動傾斜機構28の精度に左右されることなく、プローブアライメントを精度よく行えるようにするために、以下のようにしてプローブ直動傾斜機構28の校正が行われることが好ましい。
【0088】
図11は、プローブ直動傾斜機構28の直動移動量の校正方法を説明するための図である。なお、図11は、内面形状測定機10をX方向から見た場合の要部構成を示した側面図である。図11において、204Aは、直動傾斜ステージ18が初期位置にあるときの状態を示した図であり、204Bは、直動傾斜ステージ18を初期位置からY方向に規定量移動させたシフト位置にあるときの状態を示した図である。符号Sは、プローブ観察用カメラ32の視野範囲を示している(図12も同様)。
【0089】
プローブ直動傾斜機構28の直動移動量の校正を行うにあたって、まず、高精度回転機構14を動作させることにより、直動傾斜ステージ18を回転軸C周りに回転させて、直動傾斜ステージ18の移動軸方向をプローブ直動傾斜機構28の移動軸方向(X方向及びY方向)に合わせておく。
【0090】
次に、図11の204Aに示すように、直動傾斜ステージ18が初期位置にある状態において、プローブ観察用カメラ32でプローブ30を撮影する。
【0091】
その後、図11の204Bに示すように、直動傾斜ステージ18を初期位置からY方向に規定量離れたシフト位置へ移動させる。このとき、プローブ観察用カメラ32はカメラ用ブラケット36を介して直動傾斜ステージ18に支持されているので、直動傾斜ステージ18と一体となってプローブ観察用カメラ32もY方向に規定量移動する。これにより、プローブ観察用カメラ32の視野範囲Sは、二点鎖線で示した位置から実線で示した位置に移動する。
【0092】
次に、直動傾斜ステージ18がシフト位置にある状態において、プローブ観察用カメラ32でプローブ30を撮影する。このとき、プローブ観察用カメラ32でプローブ30を撮影した撮影画像(シフト画像)が、直動傾斜ステージ18が初期位置にある場合にプローブ観察用カメラ32が撮影した撮影画像(基準画像)とプローブ30の位置が同じ位置となるように、プローブ直動傾斜機構28によりプローブ30をY方向に移動させる。
【0093】
基準画像とシフト画像とにおいてプローブ30の位置が同じ位置となる場合、直動傾斜ステージ18が初期位置からシフト位置に移動した直動移動量分だけプローブ直動傾斜機構28が移動したことになる。なお、X方向の直動移動量についても同様である。
【0094】
したがって、直動傾斜ステージ18の直動移動量とプローブ直動傾斜機構28の直動移動量との対応関係を各方向(X方向及びY方向)についてそれぞれ求めておくことで、その対応関係に基づき、プローブ直動傾斜機構28の直動移動量を校正することが可能となる。これにより、プローブ直動傾斜機構28においても、直動傾斜ステージ18と同等の精度を確保することが可能となる。
【0095】
図12は、プローブ直動傾斜機構28の傾斜移動量の校正方法を説明するための図である。なお、図12は、内面形状測定機10をX方向から見た場合の要部構成を示した側面図である。図12において、206Aは、直動傾斜ステージ18が初期位置にあるときの状態を示した図であり、206Bは、直動傾斜ステージ18を初期位置からX方向周りに規定量傾斜させたときの状態を示した図であり、206Cは、さらにプローブ直動傾斜機構28によりプローブ30をX方向周りに傾斜させたときの状態を示した図である。
【0096】
プローブ直動傾斜機構28の傾斜移動量の校正を行うにあたって、図12の206Aに示すように、直動傾斜ステージ18の回転中心とプローブ直動傾斜機構28の回転中心とを一致させておく。なお、図12においては、符号Mで示した位置が直動傾斜ステージ18及びプローブ直動傾斜機構28の回転中心となっている。
【0097】
次に、図12の206Aに示すように、直動傾斜ステージ18が初期位置にある状態において、プローブ観察用カメラ32でプローブ30を撮影する。
【0098】
その後、図12の206Bに示すように、直動傾斜ステージ18をX方向周りに規定量傾斜したシフト位置へ移動させる。このとき、プローブ観察用カメラ32はカメラ用ブラケット36を介して直動傾斜ステージ18に支持されているので、直動傾斜ステージ18と一体となってプローブ観察用カメラ32もX方向周りに規定量傾斜する。これにより、プローブ観察用カメラ32の視野範囲Sは、二点鎖線で示した位置から実線で示した位置に移動する。
【0099】
次に、直動傾斜ステージ18がシフト位置にある状態において、プローブ観察用カメラ32でプローブ30を撮影する。このとき、プローブ観察用カメラ32でプローブ30を撮影した撮影画像(シフト画像)が、直動傾斜ステージ18が初期位置にある場合にプローブ観察用カメラ32が撮影した撮影画像(基準画像)とプローブ30の位置が同じ位置となるように、プローブ直動傾斜機構28によりプローブ30をX方向周りに傾斜させる。
【0100】
基準画像とシフト画像とにおいてプローブ30の位置が同じ位置となる場合、直動傾斜ステージ18が初期位置からシフト位置に傾斜した傾斜移動量分だけプローブ直動傾斜機構28が傾斜したことになる。なお、Y方向周りの傾斜移動量についても同様である。
【0101】
したがって、直動傾斜ステージ18の傾斜移動量とプローブ直動傾斜機構28の傾斜移動量との対応関係を各方向(X方向及びY方向)についてそれぞれ求めておくことで、その対応関係に基づき、プローブ直動傾斜機構28の傾斜移動量を校正することが可能となる。これにより、プローブ直動傾斜機構28においても、直動傾斜ステージ18と同等の精度を確保することが可能となる。
【0102】
このように本実施形態によれば、プローブ直動傾斜機構28の精度に左右されることなく、直動傾斜ステージ18と同等の精度を確保することができるので、スケールやエンコーダ等の高精度位置検出器が不要となり、プローブ直動傾斜機構28の低コスト化及び省スペース化を図ることができる。また、プローブ直動傾斜機構28から発生する熱に起因するアライメントの精度低下を防止することが可能となる。
【0103】
<効果>
本実施形態におけるプローブアライメントによれば、回転軸Cを中心とするプローブ観察用カメラ32の回転軌道K上において互いに90度ずつずれた4つの撮影位置P1~P4においてプローブ観察用カメラ32がプローブ30を撮影した4つの撮影画像100A~100Dに基づき、プローブ30と回転軸Cとの相対ずれを各方向(X方向及びY方向)独立して検出することができる。これにより、プローブ直動傾斜機構28によりプローブ30の姿勢(位置及び傾き)を各方向においてそれぞれ独立して制御することが可能となり、より高精度にプローブ30と回転軸Cとの相対ずれをなくすことが可能となる。そのため、例えばワークWの細穴Hが内径140μm程度の極小径穴であり、プローブ30が外径80μm程度の極小径プローブである場合でも、プローブアライメントを精度よく簡単に行うことが可能となる。したがって、プローブ30がワークWの細穴H以外の部分と衝突することなく、細穴Hの内面形状を安定かつ確実に測定することが可能となる。
【0104】
特に本実施形態においては、プローブ観察用カメラ32がカメラ用ブラケット36を介して直動傾斜ステージ18に連結されているので、上述したプローブ観察用カメラ32の焦点合わせにおいて、直動傾斜ステージ18を利用してプローブ観察用カメラ32の焦点を回転軸Cに一致させることが可能である。そのため、プローブ観察用カメラ32の焦点合わせのための焦点調整機構を別途設ける必要がないので、低コスト化及び省スペース化を両立できると共に、荷重低減による回転精度の向上を実現可能である。
【0105】
また、本実施形態のプローブアライメントによれば、直動傾斜ステージ18と一体となって回転移動するプローブ観察用カメラ32を利用して、互いに異なる複数の方向から撮影した撮影画像を相対的に比較することによって、プローブ30の移動目標となる回転軸C(回転中心)の位置を検出している。そのため、例えば、プローブ観察用カメラ32がカメラ用ブラケット36に対して所定の方向に位置ずれした状態で取り付けられ、プローブ観察用カメラ32と回転軸Cとの間の相対的な位置関係にずれが生じているような場合であっても、プローブ30と回転軸Cとの相対的な位置合わせを精度よく行うことが可能であり、プローブ観察用カメラ32の取付精度が不要となる。
【0106】
また、本実施形態のプローブアライメントでは、プローブ観察用カメラ32とプローブ30との相対位置を回転軸Cを中心とする周方向に変化させて撮影を行っているので、回転軸Cの位置が不明確な場合や回転軸Cに傾きが生じている場合でも、各撮影位置P1~P4におけるプローブ観察用カメラ32による撮影画像から、プローブ30と回転軸Cとの相対的な位置合わせを精度よく行うことが可能である。
【0107】
また、本実施形態におけるプローブ直動傾斜機構28の校正方法によれば、直動傾斜ステージ18の移動量(直動移動量及び傾斜移動量)に基づき、プローブ直動傾斜機構28の(直動移動量及び傾斜移動量)を校正することができるので、プローブ直動傾斜機構28の精度に左右されることなく、直動傾斜ステージ18と同等の精度を確保することができる。そのため、プローブ直動傾斜機構28においてスケールやエンコーダ等の高精度位置検出器が不要となり、プローブ直動傾斜機構28の低コスト化及び省スペース化を図ることができる。また、プローブ直動傾斜機構28から発生する熱に起因するアライメントの精度低下を防止することが可能となる。
【0108】
<変形例>
本実施形態のプローブアライメントでは、回転軸Cを中心とするプローブ観察用カメラ32の回転軌道K上において互いに90度ずつずれた4つの撮影位置P1~P4においてプローブ観察用カメラ32がプローブ30を撮影した4つの撮影画像100A~100Dに基づき、プローブ30と回転軸Cとの相対ずれを各方向独立して検出しているが、これに限らず、例えば図13に示すように、回転軸Cを中心とするプローブ観察用カメラ32の回転軌道K上の少なくとも3つの撮影位置からプローブ観察用カメラ32によりプローブ30を撮影するものであってもよい。
【0109】
すなわち、プローブ30と回転軸Cとの相対ずれを各方向独立して検出可能であれば、回転軸Cを中心として少なくとも3方向からプローブ観察用カメラ32でプローブ30を撮像するものであればよい。この場合、各撮影位置に関する位置情報(回転角度や回転半径等)との関係から、各撮影位置でプローブ観察用カメラ32が撮影した撮影画像を相対的に比較することにより、プローブ30と回転軸Cとの相対ずれを各方向独立して検出することが可能である。そして、検出した相対ずれに基づき、プローブ直動傾斜機構28によりプローブ30の姿勢を各方向においてそれぞれ独立して制御することが可能となる。これにより、プローブ30と回転軸Cとの相対ずれをなくすことができる。
【0110】
また、図14に示すように、直動傾斜ステージ18の回転移動によりプローブ観察用カメラ32を回転させながら、一定の撮影間隔でプローブ観察用カメラ32がプローブ30を連続的に撮影してもよい。この場合、多数の撮影画像を利用することが可能になるため、高精度にプローブアライメントを行うことができる。また、プローブ観察用カメラ32が回転移動しながらプローブ30を連続的に撮影することにより、プローブ観察用カメラ32が回転移動する範囲を一部範囲に限定することが可能となるため、より短時間で効率的にプローブアライメントを実行することも可能となる。
【0111】
[第2実施形態]
図15は、第2実施形態の内面形状測定機10Bの構成を示した概略図である。図13に示すように、第2実施形態の内面形状測定機10Bは、第1実施形態の内面形状測定機10の構成に加え、さらに、回転軸Cを挟んでプローブ観察用カメラ32に対向する位置に照明装置38を備えたものである。
【0112】
照明装置38は、照明装置用ブラケット40を介して直動傾斜ステージ18に取り付けられており、直動傾斜ステージ18と一体となって回転軸C周りに回転可能である。この照明装置38は、面発光可能な面発光照明装置である。なお、照明装置38は「面発光照明手段」の一例である。
【0113】
第2実施形態によれば、直動傾斜ステージ18と一体となってプローブ観察用カメラ32を回転軸C周りに回転させながらプローブ観察用カメラ32でプローブ30を撮影する際、照明装置38がプローブ観察用カメラ32に対向する位置で直動傾斜ステージ18と一体となって回転軸C周りに回転する。したがって、プローブ観察用カメラ32と照明装置38との相対位置関係が保たれた状態でプローブ観察用カメラ32によるプローブ30の撮影が行われるため、プローブ観察用カメラ32の撮影位置によらず同一の照明条件でプローブ30を撮影することが可能になる。これにより、照明状態の違いによる検出精度の低下を防ぐことができ、より高精度にプローブアライメントを行うことが可能となる。なお、照明装置38は、面発光照明が好ましいが、必ずしも面発光に限定されるものではない。
【0114】
[第3実施形態]
図16は、第3実施形態の内面形状測定機の要部構成を示した概略図である。なお、図16において、200A、200B、200Cは、それぞれプローブ30と2つのラインセンサカメラ70、72とをY方向から見た正面図、X方向から見た側面図、Z方向から見た下面図である。
【0115】
上述した各実施形態では、プローブ観察用カメラ32としてエリアセンサカメラを用いていたが、第3実施形態では、2つのラインセンサカメラ(一次元センサカメラ)70、72を用いている点が異なっている。
【0116】
図16に示すように、2つのラインセンサカメラ70、72は、それぞれ、Z方向に垂直な水平方向(図16においてY方向)に延びた直線状(ライン状)の領域を撮影するカメラである。2つのラインセンサカメラ70、72は、互いに平行であり、かつ、Z方向に所定の間隔を空けて配置されている。また、2つのラインセンサカメラ70、72は、第1実施形態のプローブ観察用カメラ32と同様に、ラインセンサカメラ用ブラケット(不図示)を介して直動傾斜ステージ18(図1参照)に取り付けられている。
【0117】
また、2つのラインセンサカメラ70、72に対向する位置には、照明装置74が設けられている。プローブ30は、2つのラインセンサカメラ70、72と照明装置74との間に配置される。照明装置74は、第2実施形態と同様に、照明装置用ブラケット(不図示)を介して直動傾斜ステージ18(図1参照)に取り付けられている。また、照明装置74としては、面発光可能な照明装置が好ましく用いられるが、必ずしも面発光に限定されるものではない。
【0118】
第3実施形態においては、直動傾斜ステージ18と一体となってプローブ観察用カメラ32を回転軸C周りに回転させつつ、少なくとも3つの撮影位置(好ましくは回転方向に90度ずつずれた4つの撮影位置)において2つのラインセンサカメラ70、72でプローブ30を撮影する。そして、各撮影位置において2つのラインセンサカメラ70、72が撮影した撮影画像を解析することで、各ラインセンサカメラ70、72の撮影領域におけるプローブ30の位置を算出することが可能である。したがって、各撮影位置において2つのラインセンサカメラ70、72が撮影した撮影画像を組み合わせることにより、第1実施形態のプローブ観察用カメラ32が撮影した画像と同等の情報(プローブ姿勢情報)が得られ、プローブ30と回転軸Cとの相対ずれを検出することが可能である。よって、第1実施形態と同様に、精度よくプローブアライメントを行うことが可能となる。
【0119】
また、第3実施形態においては、第2実施形態と同様に、2つのラインセンサカメラ70、72に対向する位置には照明装置74が設けられており、2つのラインセンサカメラ70、72と照明装置74との間にプローブ30が配置された状態で、直動傾斜ステージ18と一体となって2つのラインセンサカメラ70、72と照明装置74とが回転軸C周りに回転可能に構成される。したがって、2つのラインセンサカメラ70、72と照明装置74との相対位置関係が保たれた状態で2つのラインセンサカメラ70、72によるプローブ30の撮影が行われるため、2つのラインセンサカメラ70、72の撮影位置によらず同一の照明条件でプローブ30を撮影することが可能になる。これにより、照明状態の違いによる検出精度の低下を防ぐことができ、プローブアライメントを精度よく簡単に行うことが可能となる。
【0120】
[第4実施形態]
図17は、第4実施形態の内面形状測定機の要部構成を示した概略図である。なお、図17において、300A、300B、300Cは、それぞれプローブ30と2つのラインセンサカメラ70、72とをY方向から見た正面図、X方向から見た側面図、Z方向から見た下面図である。
【0121】
上記第3実施形態では、2つのラインセンサカメラ70、72に対向する位置に照明装置74(図16参照)が設けられていたの対し、第4実施形態では、ラインレーザ光源76、78が、それぞれ、ラインセンサカメラ70、72の上方位置に設けられている点が異なっている。
【0122】
ラインレーザ光源76、78は、それぞれ対応する各ラインセンサカメラ70、72のライン状の撮像領域に対し、ラインレーザ(ライン状のレーザ光線)R1、R2を照射する。ラインレーザ光源76、78は、ラインセンサカメラ70、72と共にラインセンサカメラ用ブラケット(不図示)を介して直動傾斜ステージ18(図1参照)に取り付けられており、直動傾斜ステージ18と一体となって回転軸C周りに回転可能である。
【0123】
第4実施形態では、第3実施形態と同様に、各撮影位置において2つのラインセンサカメラ70、72が撮影した撮影画像を組み合わせることにより、第1実施形態のプローブ観察用カメラ32が撮影した画像と同等の情報(プローブ姿勢情報)が得られ、プローブ30と回転軸Cとの相対ずれを検出することが可能である。よって、第1実施形態と同様に、プローブアライメントを精度よく簡単に行うことが可能となる。
【0124】
また、第4実施形態では、2つのラインセンサカメラ70、72と2つのラインレーザ光源76、78との相対位置関係が保たれた状態で2つのラインセンサカメラ70、72によるプローブ30の撮影が行われるため、2つのラインセンサカメラ70、72の撮影位置によらず同一の照明条件でプローブ30を撮影することが可能になる。
【0125】
なお、図17では、2つのラインレーザ光源76、78をそれぞれ各ラインセンサカメラ70、72の上方に配置した構成を一例として示したが、各ラインセンサカメラ70、72の撮影領域にそれぞれラインレーザを照射することができるものであれば、2つのラインレーザ光源76、78が配置される位置は特に限定されるものではない。
【0126】
[第5実施形態]
図18は、第5実施形態の内面形状測定機の要部構成を示した概略図である。なお、図18は、プローブ30と2つの光測距センサ80、82とをY方向から見た正面図である。
【0127】
上記各実施形態では、プローブ30と回転軸Cとの相対ずれを検出するためのプローブ姿勢情報を取得するための取得手段として、各撮影位置からプローブ30を撮影する撮影装置(エリアセンサカメラ又はラインセンサカメラ)を用いているのに対し、第5実施形態では、光を用いて距離を測定する2つの光測距センサ80、82を用いている。
【0128】
図18に示すように、2つの光測距センサ80、82は、Z方向に所定の間隔を空けて配置されており、図示しないブラケットを介して直動傾斜ステージ18に取り付けられている。2つの光測距センサ80、82は、光を射出し、その反射光を検知することで距離を測定する。2つの光測距センサ80、82は、三角測距を検出原理としたセンサであり、例えばPSD(Position Sensitive Detector)方式やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)方式、CCD(Charge Coupled Device)方式のものを適用可能である。なお、三角測距方式の検出原理については公知であるので、ここでは説明を省略する。
【0129】
第5実施形態によれば、直動傾斜ステージ18と一体となって2つの光測距センサ80、82を回転軸C周りに回転させつつ、少なくとも3つの測定位置(好ましくは回転方向に90度ずつずれた4つの測定位置)において2つの光測距センサ80、82でプローブ30までの距離を測定する。そして、各測定位置において2つの光測距センサ80、82が測定した距離と各測定位置との関係を解析することで、第1実施形態のプローブ観察用カメラ32が撮影した画像と同等の情報(プローブ姿勢情報)が得られ、プローブ30と回転軸Cとの相対ずれを検出することが可能である。よって、第1実施形態と同様に、プローブアライメントを精度よく簡単に行うことが可能となる。
【0130】
なお、第5実施形態では、プローブ30と回転軸Cとの相対ずれを検出するためのプローブ姿勢情報を取得するための取得手段について、撮影装置(エリアセンサカメラ又はラインセンサカメラ)以外の例として、2つの光測距センサ80、82を用いた場合を一例として示したが、プローブ30と回転軸Cとの相対ずれを検出するためのプローブ姿勢情報を取得することができるものであればよく、例えば、レーザー式、LED(Light Emitting Diode)式、超音波式又は渦電流式の測長センサ等を適用してもよい。
【0131】
[応用例]
上記各実施形態によれば、プローブ30の回転軸Cに対する姿勢(位置及び傾き)を検知することができる。そのため、プローブ30を回転軸Cに一致させるだけでなく、必要角度分だけプローブ30を傾けた位置への調整も可能となる。例えば図19に示すように、細穴Hの内面が回転軸Cに対して傾斜したテーパ面を測定する際に、テーパ面の傾斜角(テーパ角)に倣ったプローブ角(プローブ30の傾斜角)への設定が可能となる。これにより、例えば非接触プローブが用いられる場合には、プローブ30から出射される測定光がテーパ面(被測定面)に直交する法線方向から照射されるので、より高感度かつ高精度な測定が可能となる。また、図20に示すように、プローブ30の姿勢による測定対象位置の差異を正確に計算することも可能となる。
【0132】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0133】
10…内面形状測定機、12…本体ベース、14…高精度回転機構、16…回転体、18…直動傾斜ステージ、20…コラム、22…キャリッジ、24…アーム、26…変位検出器、28…プローブ直動傾斜機構、30…プローブ、32…プローブ観察用カメラ、34…ワーク観察用カメラ、36…カメラ用ブラケット、38…照明装置、40…照明装置用ブラケット、50…制御装置、52…プローブアライメント制御部、54…撮影制御部、56…相対ずれ検出部、58…プローブ姿勢制御部、70、72…ラインセンサカメラ、74…照明装置、76、78…ラインレーザ光源、80、82…光測距センサ、100A…第1撮影画像、100B…第2撮影画像、100C…第3撮影画像、100D…第4撮影画像、102A…第1合成画像、102B…第2合成画像、W…ワーク、P1…第1撮影位置、P2…第2撮影位置、P3…第3撮影位置、P4…第4撮影位置、C…回転軸、K…回転軌道
図1
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