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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】履帯式走行装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/10 20060101AFI20231025BHJP
   B62D 11/22 20060101ALI20231025BHJP
   B62D 13/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
B62D55/10 Z
B62D11/22
B62D13/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019198885
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021070414
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】599035627
【氏名又は名称】学校法人加計学園
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 公一
(72)【発明者】
【氏名】衣笠 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大畠 陽二郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大祐
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-000838(JP,A)
【文献】国際公開第2019/119114(WO,A1)
【文献】特開2015-137535(JP,A)
【文献】特許第5259984(JP,B2)
【文献】特開2010-014535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/10
B62D 11/22
B62D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
右走行体と、
左走行体とを備え、
前記右走行体および前記左走行体の各々は、
並んで配置された複数の基体と、
隣り合う前記基体の一方が他方に対して相対移動できるように、隣り合う前記基体を連結する、連結体と、
複数の前記基体および前記連結体に掛け回された履帯とを有し、
前記右走行体と前記左走行体とを左右に間隔を空けて結合する結合部材と、
前記右走行体および前記左走行体の状態を検出する検出装置と、
前記右走行体および前記左走行体の動作を制御するコントローラとをさらに備え、
前記コントローラは、前記右走行体の状態の検出結果に基づいて前記左走行体の動作を制御し、前記左走行体の状態の検出結果に基づいて前記右走行体の動作を制御
前記検出装置は、隣り合う前記基体の一方が他方に対して上下方向に傾く角度を検出する上下角度センサと、隣り合う前記基体の一方が他方に対して左右方向に傾く角度を検出する左右角度センサとを有する、履帯式走行装置。
【請求項2】
前記検出装置は、前記履帯の回転速度を検出する回転速度センサと、前記右走行体および前記左走行体の移動速度を検出する移動速度センサとを有する、請求項1に記載の履帯式走行装置。
【請求項3】
右走行体と、
左走行体とを備え、
前記右走行体および前記左走行体の各々は、
並んで配置された複数の基体と、
隣り合う前記基体の一方が他方に対して相対移動できるように、隣り合う前記基体を連結する、連結体と、
複数の前記基体および前記連結体に掛け回された履帯とを有し、
前記右走行体と前記左走行体とを左右に間隔を空けて結合する結合部材と、
前記右走行体および前記左走行体の状態を検出する検出装置と、
前記右走行体および前記左走行体の動作を制御するコントローラとをさらに備え、
前記コントローラは、前記右走行体の状態の検出結果に基づいて前記左走行体の動作を制御し、前記左走行体の状態の検出結果に基づいて前記右走行体の動作を制御し、
前記右走行体は、前記右走行体を上下方向に湾曲させる右側上下湾曲装置と、前記右走行体を左右方向に湾曲させる右側左右湾曲装置とを有し、
前記左走行体は、前記左走行体を上下方向に湾曲させる左側上下湾曲装置と、前記左走行体を左右方向に湾曲させる左側左右湾曲装置とを有し、
前記コントローラは、前記右側上下湾曲装置と、前記右側左右湾曲装置と、前記左側上下湾曲装置と、前記左側左右湾曲装置とを、独立に制御する、履帯式走行装置。
【請求項4】
前記右走行体は、前記右走行体の前記履帯を回転させる駆動力を発生する右側回転駆動源を有し、
前記左走行体は、前記左走行体の前記履帯を回転させる駆動力を発生する左側回転駆動源を有し、
前記コントローラは、前記右側回転駆動源と前記左側回転駆動源とを独立に制御する、請求項1~のいずれか1項に記載の履帯式走行装置。
【請求項5】
前記結合部材は、長手方向に伸縮可能である、請求項1~のいずれか1項に記載の履帯式走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、履帯式走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無限軌道装置が、たとえば特許第5259984号(特許文献1)に開示されている。この文献では、連結体を介して複数の基体を前後に連結し、連結体を左右方向に曲げるとともに上下方向に曲げることによりクローラを適宜にねじらせて駆動させることができ、1つの無限軌道装置で前進・後進・旋回が可能と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5259984号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献には、1つの無限軌道装置を走行駆動させることが記載されているが、複数の無限軌道装置を結合した場合の走行制御については考慮されていない。
【0005】
本開示では、三次元的に湾曲可能な2つの走行体を結合した履帯式走行装置を適切に走行可能とする技術が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記文献に記載された無限軌道装置を左右に結合した走行装置の走行特性について検証した。その結果本発明者らは、走行装置が直進走行時に、履帯前方を外側に開いたり内側に閉じたりしながら前進する挙動を確認した。本発明者らはさらに検討を進め、三次元的に湾曲可能な2つの走行体を備える走行装置においては、2つの走行体を各々単独で制御するのではなく、2つの走行体を連動させて走行制御することで走行装置全体として適切に走行させることができることを見出し、以下のような履帯式走行装置を案出した。
【0007】
すなわち、本開示に従った履帯式走行装置は、右走行体と、左走行体と、結合部材と、検出装置と、コントローラとを備えている。右走行体および左走行体の各々は、並んで配置された複数の基体と、隣り合う基体の一方が他方に対して相対移動できるように、隣り合う基体を連結する、連結体と、複数の基体および連結体に掛け回された履帯とを有している。結合部材は、右走行体と左走行体とを左右に間隔を空けて結合している。検出装置は、右走行体および左走行体の状態を検出する。コントローラは、右走行体および左走行体の動作を制御する。コントローラは、右走行体の状態の検出結果に基づいて左走行体の動作を制御し、左走行体の状態の検出結果に基づいて右走行体の動作を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に従えば、三次元的に湾曲可能な2つの走行体を結合した履帯式走行装置を、適切に走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】走行体の概略構成を示す斜視図である。
図2】先端基体の内部構成を示す斜視図である。
図3】後端基体の内部構成を示す斜視図である。
図4】第1連結ベルトの構成を示す、走行体を側方視した模式図である。
図5】第2連結ベルトの構成を示す、走行体を平面視した模式図である。
図6】左右方向に湾曲した走行体を平面視した模式図である。
図7】上下方向に湾曲した走行体を側方視した模式図である。
図8】実施形態に係る履帯式走行装置の概略構成を示す斜視図である。
図9】履帯式走行装置における制御ユニットの構成を説明するための機能ブロック図である。
図10】履帯式走行装置が右旋回する動作を示す斜視図である。
図11】右走行体の前端を持ち上げて走行する履帯式走行装置の動作を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0011】
[走行体1]
まず、実施形態の履帯式走行装置を構成する走行体1の構成について説明する。実施形態の履帯式走行装置を構成する右走行体と左走行体とは、基本的に同一の構成を備えており、その動作も同一であるため、以下では一方の走行体1についてのみ説明する。図1は、走行体1の概略構成を示す斜視図である。図1には、走行体1の胴体部10から履帯80が取り外された状態が図示されている。
【0012】
胴体部10は、複数のブロック状の基体と、これらの基体を前後方向に連結する連結体11とを有している、連結体11で連結されて長手状に並んだ基体は、最前端に位置した先端基体12fと、最後端に位置した後端基体12eと、先端基体12fと後端基体12eとの間に設けられた第1中間基体12m1、第2中間基体12m2、第3中間基体12m3および第4中間基体12m4と、を有している。第1中間基体12m1、第2中間基体12m2、第3中間基体12m3および第4中間基体12m4は、それぞれ同一形状とされている。中間基体12m1~4は、4つに限定するものではなく、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよく、必要に応じて適宜の数としてよい。
【0013】
第1~4中間基体12m1~4は、実施形態では、それぞれ矩形板状とした前側板、後側板、左側板および右側板を矩形筒状に組み立てて形成した矩形筒状体21と、矩形筒状体21の上面に取り付けられた上部ガイド体22と、矩形筒状体21の下面に取り付けられた下部ガイド体23とを有している。
【0014】
上部ガイド体22は、矩形筒状体21の上部に装着して矩形筒状体21の上部開口を閉塞する矩形状の天井板22-1と、この天井板22-1の上面の左右側縁に沿って上方に向けて突き出る上部突出片22-2と、この上部突出片22-2の上端において内側方向へ突き出る上部フランジ22-3とを有している。上部フランジ22-3は、天井板22-1から所定間隔だけ離隔して、天井板22-1と略平行とされている。上部ガイド体22は、実施形態ではフッ素樹脂製としている。
【0015】
下部ガイド体23も上部ガイド体22と同様に、矩形筒状体21の下部に装着されて矩形筒状体21の下部開口を閉塞する矩形状の底板23-1と、この底板23-1の下面の左右側縁に沿って下方に向けて突き出る下部突出片23-2と、この下部突出片23-2の下端において内側方向へ突き出る下部フランジ23-3とを有している。下部フランジ23-3は、底板23-1から所定間隔だけ離隔して、底板23-1と略平行とされている。下部ガイド体23も、実施形態ではフッ素樹脂製としている。
【0016】
本実施形態では、第1~4中間基体12m1~4を略矩形体状としているが、第1~4中間基体12m1~4は必ずしも略矩形体状である必要はなく、適宜の形状としてよい。
【0017】
先端基体12fは、対向させて平行に配置した先端左側板12f-1および先端右側板12f-2(図2)と、この先端左右側板12f-1,12f-2の上端間にかけ渡された先端上部ガイド体12f-3と、先端左右側板12f-1,12f-2の下端間にかけ渡された先端下部ガイド体12f-4とで矩形筒状体とし、この矩形筒状体の後端側の開口部に先端後側板12f-5(図5)を装着している。
【0018】
先端上部ガイド体12f-3は、上部ガイド体22と同様に、天井板22-1と、上部突出片22-2と、上部フランジ22-3とを有している。先端下部ガイド体12f-4は、下部ガイド体23と同様に、底板23-1と、下部突出片23-2と、下部フランジ23-3とを有している。先端上部ガイド体12f-3および先端下部ガイド体12f-4は、それぞれフッ素樹脂製としている。
【0019】
先端左側板12f-1および先端右側板12f-2には、それぞれ前方に延びる延伸片31が設けられている。この延伸片31間に枢軸32が回転自在にかけ渡され、この枢軸32に第1スプロケット30が取り付けられている。
【0020】
図2は、先端基体12fの内部構成を示す斜視図である。図2に示すように、先端左側板12f-1と先端右側板12f-2との間の所定位置に、第1回転軸33および第2回転軸34が回転自在にかけ渡されている。第1回転軸33および第2回転軸34は、略水平に延びている。
【0021】
第1回転軸33は、先端右側板12f-2の左側面から突き出ており、図1に示すように、先端左側板12f-1の左側面から突き出る部分に第1歯車35が装着されている。先端左側板12f-1の左側面に、第1駆動モータ36が装着されている。第1駆動モータ36出力軸に、第1ウォーム歯車36wが装着されている。第1歯車35に第1ウォーム歯車36wが噛み合うことで、第1駆動モータ36によって第1歯車35が回転可能とされている。第1歯車35の回転にともなって、第1回転軸33が回転する。
【0022】
図2に示すように、先端左側板12f-1と先端右側板12f-2の間に、第2歯車37が配置されている。第1回転軸33に第2歯車37を装着し、第2回転軸34に装着した第3歯車38が第2歯車37に噛み合うことで、第2歯車37の回転にともなって第3歯車38を介して第2回転軸34が回転可能とされている。
【0023】
第2回転軸34には、後述する第1姿勢制御用歯車39が装着されている。第2回転軸34の回転にともなって、第1姿勢制御用歯車39を回転操作可能とされている。第1駆動モータ36によって、第1姿勢制御用歯車39の駆動制御が行われている。
【0024】
一方、後端基体12eも、図1に示すように、対向させて平行に配置した後端左側板12e-1および後端右側板(図示せず)と、この後端左右側板12e-1の上端間にかけ渡された後端上部ガイド体12e-3と、後端左右側板12e-1の下端間にかけ渡された後端下部ガイド体12e-4とで矩形筒状体とし、この矩形筒状体の前端側の開口部に後端前側板12e-5を装着している。
【0025】
後端上部ガイド体12e-3もまた、上部ガイド体22と同様に、天井板22-1と、上部突出片22-2と、上部フランジ22-3とを有している。後端下部ガイド体12e-4もまた、下部ガイド体23と同様に、底板23-1と、下部突出片23-2と、下部フランジ23-3とを有している。後端上部ガイド体12e-3および後端下部ガイド体12e-4は、それぞれフッ素樹脂製としている。
【0026】
後端左側板12e-1および後端右側板には、それぞれ後方に延びる延伸片41が設けられている。この延伸片41間に駆動用回転軸42が回転自在にかけ渡され、この駆動用回転軸42に第2スプロケット40が取り付けられている。
【0027】
図3は、後端基体12eの内部構成を示す斜視図である。駆動用回転軸42は、後端右側板の左側面から突き出ており、図3に示すように、後端右側板の左側面から突き出る部分に第3スプロケット51が装着されている。
【0028】
後端左側板12e-1と後端右側板との間に、第2駆動モータ52が配設されている。第2駆動モータ52の出力軸に、第4スプロケット53が装着されている。第3スプロケット51は、第4スプロケット53と連結ベルト54を介して連結されている。第2駆動モータ52によって第3スプロケット51を回転させることにより、第2スプロケット40が回転可能とされている。
【0029】
図1に示すように、後端左側板12e-1の左側面に、第3駆動モータ43が装着されている。図3に示すように、この第3駆動モータ43の出力軸に、第2ウォーム歯車43wが装着されている。第2ウォーム歯車43wは、第4歯車45に噛み合っている。後端上部ガイド体12e-3と後端下部ガイド体12e-4との間に第3回転軸44が設けられており、第4歯車45は第3回転軸44に装着されている。図3に示されるカバー体46は、第2ウォーム歯車43wを被覆している。
【0030】
第3回転軸44にはまた、後述する第2姿勢制御用歯車49が装着されている。第3回転軸44の回転にともなって、第2姿勢制御用歯車49が回転操作可能とされている。第3駆動モータ43によって、第2姿勢制御用歯車49の駆動制御が行われている。
【0031】
連結体11は、前後方向に所定の長さを有しており、前後に隣り合う基体を連結している。連結体11は、隣り合う基体の一方が他方に対して相対移動できるように、2つの基体を連結している。胴体部10は、複数の基体が湾曲または屈曲可能な連結体11によって連結された、多リンク構造を有している。
【0032】
連結体11は弾性体であってもよく、この場合連結体11は、先端基体12fの先端後側板12f-5、後端基体12eの後端前側板12e-5、中間基体12m1~4の各前後側板に、接着剤などで貼り付けられてもよい。連結体は、円柱状のゴムブッシュであってもよい。
【0033】
または連結体11は、継手によって構成されてもよい。連結体11は、ユニバーサルジョイントなどの、隣り合う基体の接合する角度が自由に変化する継手であってもよい。または、前後方向に並ぶ複数の連結体11を、上下方向(ピッチ方向)に屈曲可能な継手と左右方向(ヨー方向)に屈曲可能な継手とを交互に並べたものとしてもよい。
【0034】
連結体11は、中空の筒状の形状を有し、筒の両端が隣り合う2つの基体の各々に向き合うように配置されてもよい。この場合、配線を連結体11の中空部内に配設することができる。このようにすれば、配線の取り回しが容易になり、また配線が外部に露出しなくなるため配線の損傷を抑制できる。
【0035】
各々の連結体11には、隣り合う基体の一方が他方に対して傾く角度を検出する角度センサ(図1には図示せず)が設けられている。前後方向に並ぶ複数の連結体11に、隣り合う基体の一方が他方に対して上下方向に傾く角度を検出する上下角度センサと、隣り合う基体の一方が他方に対して左右方向に傾く角度を検出する左右角度センサとが、交互に取り付けられてもよい。1つの連結体に、上下角度センサと左右角度センサとの両方が取り付けられてもよい。
【0036】
先端基体12fと、中間基体12m1~4と、後端基体12eとを前方から後方へ向かってこの順に並べ、それぞれの基体の間に連結体11を配置し、隣り合う基体を連結体11で連結することにより、一連の胴体部10が形成されている。
【0037】
先端基体12fの先端後側板12f-5、後端基体12eの後端前側板12e-5、中間基体12m1~4の各前後側板には、開口hが形成されている。図1に示すように、連結体11の上側と、下側と、左側と、右側とに、それぞれ矩形状の開口hが形成されている。
【0038】
図4は、第1連結ベルト60の構成を示す、走行体1を側方視した模式図である。第1連結ベルト60の両端は、後端基体12eの後端前側板12e-5に固定されている。第1連結ベルト60の中途部は、先端基体12fに設けられた第1姿勢制御用歯車39に掛け回されている。第1連結ベルト60は、上側牽引体61と下側牽引体62とを有している。上側牽引体61、下側牽引体62、および上側牽引体61と下側牽引体62とをつなぐ中途部は、1本のベルトによって構成されている。
【0039】
上側牽引体61は、連結体11の上方に配置されている。下側牽引体62は、連結体11の下方に配置されている。基体の開口hは、上側牽引体61および下側牽引体62を挿通させる挿通口として設けられている。特に、中間基体12m1~4の各前後側板に挿通口としての開口hを形成することによって、上側牽引体61および下側牽引体62は中間基体12m1~4によってガイドされている。
【0040】
図5は、第2連結ベルト70の構成を示す、走行体1を平面視した模式図である。第2連結ベルト70の両端は、先端基体12fの先端後側板12f-5に固定されている。第2連結ベルト70の中途部は、後端基体12eに設けられた第2姿勢制御用歯車49に掛け回されている。第2連結ベルト70は、左側牽引体71と右側牽引体72とを有している。左側牽引体71、右側牽引体72、および左側牽引体71と右側牽引体72とをつなぐ中途部は、1本のベルトによって構成されている。
【0041】
左側牽引体71は、連結体11の左方に配置されている。右側牽引体72は、連結体11の右方に配置されている。基体の開口hは、左側牽引体71および右側牽引体72を挿通させる挿通口として設けられている。特に、中間基体12m1~4の各前後側板に挿通口としての開口hを形成することによって、左側牽引体71および右側牽引体72は中間基体12m1~4によってガイドされている。
【0042】
履帯80は、先端基体12f、中間基体12m1~4および後端基体12e、ならびに連結体11に掛け回されている。履帯80は、図1に示すように、複数の履板81をループ状に連結して構成されている。履板81は、突出部82と凹状部83とを有している。突出部82は、履板81の前側または後側の側縁のうちの一方の側縁の中央部から、履板81の他方の側縁から離れる方向に突き出て形成されている。凹状部83は、履板81の後側または前側の側縁のうちの他方の側縁の中央部が、履板81の一方の側縁に向かう方向に凹んで形成されている。履帯80の回転方向に隣り合う2つの履板81のうちの一方の履板81の凹状部83に、他方の履板81の突出部82が挿入されている。
【0043】
各履板81の内周面には、第1スプロケット30および第2スプロケット40と噛み合う歯合用突片84が、履帯80の内周側に向けて突き出るように設けられている。履板81の内周面には、歯合用突片84の両側に、履帯80の内周側に向けて突き出る突出片86が設けられている。突出片86の先端に、履板81の内周面と略平行に延びる摺動片85が設けられている。
【0044】
摺動片85は、先端基体12f、後端基体12e、中間基体12m1~4の上側にそれぞれ設けた上部ガイド体22の天井板22-1と上部フランジ22-3との間、および、先端基体12f、後端基体12e、中間基体12m1~4の下側にそれぞれ設けた下部ガイド体23の底板23-1と下部フランジ23-3との間に挿入される。これにより履板81は、上部ガイド体22および下部ガイド体23に規制されながら移動可能とされ、履板81で構成された履帯80が胴体部10の周囲に沿って周回可能とされる。
【0045】
各履板81の外周面には、左右方向に延びる棒状接地体87が装着されている。棒状接地体87はゴムなどの弾性体製であってもよい。棒状接地体87をさらに外周側から覆う外装板を複数有する外殻構造が設けられてもよい(図示せず)。この外装板は、履帯80を片方または両方の側方からも覆う湾曲した形状であってもよい。棒状接地体87を介さずに、外装板が履板81の外周面に直接取り付けられる構成としてもよい。外装板は金属板であってもよい。
【0046】
このように構成した走行体1は、第2駆動モータ52で第2スプロケット40を回転させて履帯80を順回転させることにより前進可能、または、履帯80を逆回転させることにより後退可能とされている。
【0047】
また走行体1では、第3駆動モータ43で第2姿勢制御用歯車49を回転させて左側牽引体71と右側牽引体72とのいずれか一方を牽引して緊張させ、各連結体11に圧縮応力を生じさせることにより、この圧縮応力によって各連結体11を圧縮方向に曲げている。
【0048】
図6は、左右方向に湾曲した走行体1を平面視した模式図である。図6に示すように、右側牽引体72を緊張させた場合には、連結体11が右側に曲がることによって、胴体部10が全体として右側に湾曲(左側に凸に湾曲)する。この状態で履帯80を前進方向(順方向)に回転させることにより、走行体1は右旋回する。一方、左側牽引体71を緊張させた場合には、胴体部10が全体として左側に湾曲(右側に凸に湾曲)する。この状態で履帯80を前進方向(順方向)に回転させることにより、走行体1は左旋回する。
【0049】
また走行体1では、第1駆動モータ36で第1姿勢制御用歯車39を回転させて上側牽引体61と下側牽引体62とのいずれか一方を牽引して緊張させ、各連結体11に圧縮応力を生じさせることにより、この圧縮応力によって各連結体11を圧縮方向に曲げている。
【0050】
図7は、上下方向に湾曲した走行体1を側方視した模式図である。図7に示すように、上側牽引体61を緊張させた場合には、連結体11が上側に曲がることによって、胴体部10が全体として上側に湾曲(下側に凸に湾曲)する。一方、下側牽引体62を緊張させた場合には、連結体11が下側に曲がることによって、胴体部10が全体として下側に湾曲(上側に凸に湾曲)する。
【0051】
図6に示される胴体部10の左右方向の湾曲と、図7に示される胴体部10の上下方向の湾曲とを複合させることにより、胴体部10をねじらせることができ、走行体1をねじらせた状態で走行させることができる。
【0052】
したがって、走行体1は、不整地においても安定して走行することができる。走行体1は旋回しながら上昇または下降する走行も可能であり、螺旋階段なども容易に走行することができる。
【0053】
[履帯式走行装置100の構成]
図8は、実施形態に係る履帯式走行装置100の概略構成を示す斜視図である。図8に示すように、履帯式走行装置100は、右走行体1Rと、左走行体1Lと、結合部材2とを備えている。右走行体1Rおよび左走行体1Lは、図1~7を参照して説明した走行体1によって構成されている。なお図8および後続の図10,11においては、右走行体1Rおよび左走行体1Lを構成する走行体1は、その外形の概略形状のみが便宜的に示されている。
【0054】
図8においては、前後方向を図中矢印X、左右方向を図中矢印Y、上下方向を図中矢印Zで示している。
【0055】
結合部材2は、右走行体1Rと左走行体1Lとを左右に間隔を空けて結合している。結合部材2の右端に、右走行体1Rが結合されている。結合部材2の左端に、左走行体1Lが結合されている。結合部材2の右端はたとえば、右走行体1Rを構成する走行体1のいずれかの中間基体の、矩形筒状体21の左側面に結合されている。結合部材2の左端はたとえば、左走行体1Lを構成する走行体1のいずれかの中間基体の、矩形筒状体21の右側面に結合されている。結合部材2は、金属製の管材を有していてもよい。結合部材2は、長手方向に伸縮するように構成されていてもよい。結合部材2が伸縮することで、右走行体1Rと左走行体1Lとの間隔を変化させることができる。
【0056】
[制御ユニット200]
図9は、履帯式走行装置100における制御ユニット200の構成を説明するための機能ブロック図である。図9に示されるように、制御ユニット200は、右走行体1Rおよび左走行体1Lの現在の状態を検出する検出装置210と、操作装置300からの指令に基づいて右走行体1Rおよび左走行体1Lの走行動作を制御するコントローラ240とを備えており、2つの走行体を連動させて制御する協調制御システムとして機能する。
【0057】
検出装置210は、右走行体1Rの状況を検出する右検出装置220と、左走行体1Lの状況を検出する左検出装置230とを有している。
【0058】
右検出装置220は、右側上下角度センサ222と、右側左右角度センサ224とを有している。右側上下角度センサ222は、右走行体1Rの胴体部10を構成する複数の基体のうち隣り合う2つの基体の一方が他方に対して上下方向に傾く角度を検出する。右側左右角度センサ224は、右走行体1Rの胴体部10を構成する複数の基体のうち隣り合う2つの基体の一方が他方に対して左右方向に傾く角度を検出する。右側上下角度センサ222および右側左右角度センサ224は、右走行体1Rの胴体部10を構成する連結体11のいずれかに取り付けられている。
【0059】
右検出装置220は、右側回転角度センサ226と、右側移動速度センサ228とを有している。右側回転角度センサ226は、右走行体1Rの履帯80の回転角度を検出する。右側移動速度センサ228は、右側回転角度センサ226とは異なり、右走行体1Rが実際に移動する速度を検出する。
【0060】
左検出装置230は、左側上下角度センサ232と、左側左右角度センサ234とを有している。左側上下角度センサ232は、左走行体1Lの胴体部10を構成する複数の基体のうち隣り合う2つの基体の一方が他方に対して上下方向に傾く角度を検出する。左側左右角度センサ234は、左走行体1Lの胴体部10を構成する複数の基体のうち隣り合う2つの基体の一方が他方に対して左右方向に傾く角度を検出する。左側上下角度センサ232および左側左右角度センサ234は、左走行体1Lの胴体部10を構成する連結体11のいずれかに取り付けられている。
【0061】
左検出装置230は、左側回転角度センサ236と、左側移動速度センサ238とを有している。左側回転角度センサ236は、左走行体1Lの履帯80の回転角度を検出する。左側移動速度センサ238は、左側回転角度センサ236とは異なり、左走行体1Lが実際に移動する速度を検出する。
【0062】
右側上下角度センサ222、右側左右角度センサ224、左側上下角度センサ232および左側左右角度センサ234は、たとえば、ポテンショメータ、または隣り合う2つの基体間の距離を計測可能な柔軟素材を用いた3つ以上の可変抵抗を用いて構成されていてもよい。
【0063】
右側回転角度センサ226および左側回転角度センサ236は、たとえば、第2駆動モータ52の出力軸または駆動用回転軸42の回転の変位を検出するセンサであってもよく、ロータリーエンコーダ、レゾルバ等を用いて構成されていてもよい。
【0064】
右側移動速度センサ228および左側移動速度センサ238は、たとえば、履帯式走行装置100が走行する路面に対する履帯式走行装置100の相対速度を検出してもよく、またはGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用して履帯式走行装置100の移動速度を検出してもよい。右走行体1Rと左走行体1Lとのいずれか一方または両方が、カメラに代表される撮像装置を有してもよく、この撮像装置の撮像画像から走行体の移動速度を検出してもよい。
【0065】
右検出装置220によって検出された右走行体1Rの現在の状態を示す検出信号は、コントローラ240に入力される。左検出装置230によって検出された左走行体1Lの現在の状態を示す検出信号は、コントローラ240に入力される。
【0066】
コントローラ240は、検出装置210および操作装置300から伝送される電気的信号を受信する受信装置、受信した電気的信号に基づき各種の処理を行なうコンピュータ、および、当該コンピュータによる処理に基づき右走行体1Rおよび左走行体1Lを走行駆動させるための電気的信号を生成するドライバなどによって構成されている。
【0067】
コントローラ240は、右制御部242と、左制御部243とを有している。右制御部242は、右走行体1Rの走行動作を制御する。右制御部242は、右走行体1Rを動作制御するための指令信号を生成し、その指令信号を右走行体1Rに出力する。指令信号に基づいて、右走行体1Rの第1駆動モータ36、第3駆動モータ43および第2駆動モータ52が動作する。
【0068】
右走行体1Rの第1駆動モータ36は、右走行体1Rを上下方向に湾曲させる右側上下湾曲装置36Rとしての機能を有している。右走行体1Rの第3駆動モータ43は、右走行体1Rを左右方向に湾曲させる右側左右湾曲装置43Rとしての機能を有している。右走行体1Rの第2駆動モータ52は、右走行体1Rの履帯80を回転させる駆動力を発生する右側回転駆動源52Rとしての機能を有している。
【0069】
左制御部243は、左走行体1Lの走行動作を制御する。左制御部243は、左走行体1Lを動作制御するための指令信号を生成し、その指令信号を左走行体1Lに出力する。指令信号に基づいて、左走行体1Lの第1駆動モータ36、第3駆動モータ43および第2駆動モータ52が動作する。
【0070】
左走行体1Lの第1駆動モータ36は、左走行体1Lを上下方向に湾曲させる左側上下湾曲装置36Lとしての機能を有している。左走行体1Lの第3駆動モータ43は、左走行体1Lを左右方向に湾曲させる左側左右湾曲装置43Lとしての機能を有している。左走行体1Lの第2駆動モータ52は、左走行体1Lの履帯80を回転させる駆動力を発生する左側回転駆動源52Lとしての機能を有している。
【0071】
コントローラ240は、右走行体1Rと左走行体1Lとを結合する結合部材2に搭載されていてもよい。またはコントローラ240は、走行体を構成する基体のいずれか1つに搭載されてもよい。走行体を構成する複数の基体に、コントローラ240の各機能を分散させて搭載してもよい。右走行体1Rと左走行体1Lとの両方に、コントローラ240の各機能が分散されて搭載されてもよい。
【0072】
右走行体1Rおよび左走行体1Lの各駆動モータに供給される電力を蓄える蓄電装置、典型的にはバッテリ、もまた、結合部材2に搭載されていてもよい。
【0073】
図9に示されるように、右検出装置220による検出結果を示す検出信号は、右制御部242と、左制御部243との両方に出力される。左検出装置230による検出結果を示す検出信号は、右制御部242と、左制御部243との両方に入力される。
【0074】
右走行体1Rを制御する右制御部242は、右検出装置220から右走行体1Rの状態の検出結果を受け、かつ、左検出装置230から左走行体1Lの状態の検出結果を受ける。右制御部242は、操作装置300から入力された操作指令に基づき、右走行体1Rの状態の検出結果と左走行体1Lの状態の検出結果との両方を考慮して、右走行体1Rの動作を制御する。
【0075】
左走行体1Lを制御する左制御部243は、左検出装置230から左走行体1Lの状態の検出結果を受け、かつ、右検出装置220から右走行体1Rの状態の検出結果を受ける。左制御部243は、操作装置300から入力された操作指令に基づき、左走行体1Lの状態の検出結果と右走行体1Rの状態の検出結果との両方を考慮して、左走行体1Lの動作を制御する。
【0076】
[履帯式走行装置100の走行動作]
以上の構成を備えている履帯式走行装置100を走行動作させる際には、操作装置300からコントローラ240に、履帯式走行装置100をどのように走行させるかを指令する操作指令が入力される。たとえば、履帯式走行装置100を前方または後方へ直進させる指令、右方または左方へ旋回させる指令、段差を乗り越える指令、溝を跨ぎ越える指令、登坂または降坂する指令、不整地における右走行体1Rまたは左走行体1Lのいずれか一方のみが凹凸地形を乗り越えるように走行する指令、などが入力される。
【0077】
オペレータが、履帯式走行装置100を目視しながら、操作装置300を操作する構成であってもよい。または、履帯式走行装置100から離れた遠隔地で、オペレータが操作装置300を操作する構成であってもよい。コントローラ240は、操作装置300から入力された指令信号に基づいて、右走行体1Rおよび左走行体1Lの動作制御を実行する。
【0078】
図10は、履帯式走行装置100が右旋回する動作を示す斜視図である。履帯式走行装置100を旋回させる場合、図10に示されるように、右走行体1Rの曲率と左走行体1Lの曲率とを同一ではなく異なる曲率にすることができる。加えて、右走行体1Rの走行速度を、左走行体1Lの走行速度よりも小さく設定することができる。このように制御することで、履帯式走行装置100は滑らかな曲線を描きながら右旋回することが可能である。
【0079】
図11は、右走行体1Rの前端を持ち上げて走行する履帯式走行装置100の動作を示す斜視図である。履帯式走行装置100が前進する場合において、左走行体1Lの前方の地形は平坦であるが右走行体1Rの前方に隆起した地形がある場合、図11に示されるように、左走行体1Lは上下方向に湾曲させず、右走行体1Rのみを上側に湾曲させて、右走行体1Rの前端を持ち上げて走行することができる。このように制御することで、右走行体1Rが隆起した地形を容易に乗り越えることができ、履帯式走行装置100の前進走行が隆起した地形によって妨げられることがなく、履帯式走行装置100は前進走行を継続することが可能である。
【0080】
各々が三次元的に湾曲可能な右走行体1Rおよび左走行体1Lのそれぞれを単独で制御するのではなく、右走行体1Rの状態の検出結果に基づいて左走行体1Lを制御し、左走行体1Lの状態の検出結果に基づいて右走行体1Rを制御し、右走行体1Rと左走行体1Lとを連動させて走行制御する。これにより、履帯式走行装置100を全体として適切に走行させることが可能である。
【0081】
たとえば、直進走行する履帯式走行装置100の一方の走行体の前方が外側に開いたり内側に閉じたりするように左右に湾曲した場合に、その湾曲した走行体の動作を制御するとともに、湾曲した走行体の姿勢に基づいて他方の走行体の動作を制御することができる。これにより、2つの走行体の両方が前後方向に平行に延びる直進走行に適した姿勢に早期に戻すことができるので、履帯式走行装置100を適切に直進走行させることができ、履帯式走行装置100の走行抵抗の増大を抑制することができる。
【0082】
右検出装置220が右側上下角度センサ222と右側左右角度センサ224とを有し、左検出装置230が左側上下角度センサ232と左側左右角度センサ234とを有していることで、右走行体1Rと左走行体1Lとの上下方向および左右方向への湾曲を精度よく検出することができる。この検出結果を用いて、右走行体1Rと左走行体1Lとの両方を協調させて適切に走行制御することができる。
【0083】
右検出装置220が右側回転角度センサ226と右側移動速度センサ228とを有し、左検出装置230が左側回転角度センサ236と左側移動速度センサ238とを有していることで、右走行体1Rと左走行体1Lとの路面に対するすべり量を検出することができる。この検出結果を用いて、右走行体1Rと左走行体1Lとの両方を協調させて適切に走行制御することができる。たとえば、右走行体1Rと左走行体1Lとのすべり量差を算出し、すべり量が相対的に大きい走行体を、すべり量が相対的に小さい走行体の姿勢に基づいて制御することができる。
【0084】
右検出装置220は、路面に接している右走行体1Rの履帯80の圧力を検出するセンサを有していてもよく、左検出装置230は、路面に接している左走行体1Lの履帯80の圧力を検出するセンサを有していてもよい。この検出結果を用いて、右走行体1Rと左走行体1Lとの走行制御を行なうことができる。
【0085】
コントローラ240は、右側上下湾曲装置36Rと、右側左右湾曲装置43Rと、左側上下湾曲装置36Lと、左側左右湾曲装置43Lとを、それぞれ独立に制御することができる。右走行体1Rと左走行体1Lとの各々の上下方向および左右方向の湾曲を別個独立に制御可能である。そのため、履帯式走行装置100の走行に合わせた最適な形状に、右走行体1Rおよび左走行体1Lを湾曲させることが可能である。
【0086】
履帯式走行装置100が停止するときに、右走行体1Rを右側に湾曲(左側に凸に湾曲)させ、左走行体1Lを左側に湾曲(右側に凸に湾曲)させるようにすれば、停止中の履帯式走行装置100の姿勢をより安定させることができる。
【0087】
障害物の乗り越え、溝の跨ぎ越え、階段の昇降などの場合には、右走行体1Rと左走行体1Lとを能動的に上下方向に湾曲させる制御をすることにより、履帯式走行装置100は適切に走行を継続できる。凹凸の小さい路面を履帯式走行装置100が走行する場合など、右走行体1Rと左走行体1Lとを能動的に上下方向に湾曲させる制御が必要でない場合には、右走行体1Rと左走行体1Lとを左右方向に湾曲させる制御のみを実行し、上下方向には各走行体が柔軟に湾曲できるようにしてもよい。各走行体が走行する路面の形状に追随して、走行体が受動的に上下方向に変形できるようにすることで、上下方向の湾曲を能動的に制御しなくても、履帯式走行装置100は適切に走行を継続できる。
【0088】
コントローラ240は、右側回転駆動源52Rと、左側回転駆動源52Lとを、それぞれ独立に制御することができる。右走行体1Rと左走行体1Lとの回転駆動を別個独立に制御可能である。履帯式走行装置100が旋回走行するとき、または超信地旋回するときなどに、右走行体1Rと左走行体1Lとの走行速度および/または走行方向を、同一ではなく異ならせるように制御することができる。これにより、履帯式走行装置100を適切に走行させることが可能である。
【0089】
コントローラ240は、右側回転駆動源52Rおよび左側回転駆動源52Lとは独立して、右側上下湾曲装置36R、右側左右湾曲装置43R、左側上下湾曲装置36Lおよび左側左右湾曲装置43Lを制御することができる。履帯式走行装置100の走行中、または停止中の両方において、右走行体1Rと左走行体1Lとのいずれか一方または両方を、上下方向に湾曲させたり、左右方向に湾曲させたり、上下方向の湾曲と左右方向の湾曲とを複合させたねじり動作をさせたりすることができる。
【0090】
結合部材2を長手方向に伸縮可能とすることで、結合部材2を伸ばして右走行体1Rと左走行体1Lとの間隔を広げたり、結合部材2を縮めて右走行体1Rと左走行体1Lとの間隔を小さくすることができる。履帯式走行装置100が超信地旋回するときに、結合部材2を伸ばすことで、右走行体1Rと左走行体1Lとを同心かつ同一曲率の円弧状に湾曲させることができる。路面に対する履帯80のすべり量が小さくなることで、路面への負荷を低減することができる。履帯式走行装置100が前後進走行するときに、結合部材2を縮めることで、車幅を低減できるので、履帯式走行装置100は狭隘空間に容易に侵入することができる。
【0091】
以上のように実施形態の説明を行なったが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
1 走行体、1L 左走行体、1R 右走行体、2 結合部材、10 胴体部、11 連結体、12f 先端基体、12e 後端基体、12m1 第1中間基体、12m2 第2中間基体、12m3 第3中間基体、12m4 第4中間基体、30 第1スプロケット、32 枢軸、36 第1駆動モータ、36L 左側上下湾曲装置、36R 右側上下湾曲装置、39 第1姿勢制御用歯車、40 第2スプロケット、42 駆動用回転軸、43 第3駆動モータ、43L 左側左右湾曲装置、43R 右側左右湾曲装置、49 第2姿勢制御用歯車、52 第2駆動モータ、52L 左側回転駆動源、52R 右側回転駆動源、60 第1連結ベルト、61 上側牽引体、62 下側牽引体、70 第2連結ベルト、71 左側牽引体、72 右側牽引体、80 履帯、81 履板、100 履帯式走行装置、200 制御ユニット、210 検出装置、220 右検出装置、222 右側上下角度センサ、224 右側左右角度センサ、226 右側回転角度センサ、228 右側移動速度センサ、230 左検出装置、232 左側上下角度センサ、234 左側左右角度センサ、236 左側回転角度センサ、238 左側移動速度センサ、240 コントローラ、242 右制御部、243 左制御部、300 操作装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11