(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】注出部材接続構造および包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 51/28 20060101AFI20231025BHJP
B65D 25/42 20060101ALI20231025BHJP
B65D 51/22 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
B65D51/28 100
B65D25/42 B
B65D51/22 110
(21)【出願番号】P 2019173296
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】桑原 弘嗣
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-193894(JP,A)
【文献】特開平09-156120(JP,A)
【文献】特開2018-140556(JP,A)
【文献】特開2018-062351(JP,A)
【文献】特開2008-020115(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0234432(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 51/28
B65D 25/42
B65D 51/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる注出流路を有する挿入部を備えた注出部材と、前記挿入部内に軸線方向に位置変動可能に設けられた弁体と、前記挿入部が挿入される挿入孔を有する受け部と、を備え、
前記弁体は、前記位置変動によって、前記注出流路を開放する開放位置と、前記注出流路を閉止する閉止位置とを切り替え可能であり、
前記受け部は、前記挿入孔を有する被挿入部と、前記注出部材から供給された前記流体を導く内部空間を有する導入筒部と、前記流体を貯留する流体貯留部と、を備え、
前記導入筒部は、前記内部空間の前記流体が流出する先端開口を有し、
前記先端開口は、前記流体貯留部内に位置
し、
前記挿入部の内周面および前記弁体の外周面に、互いに係合しあって前記挿入部および前記弁体の螺旋方向への相対変位を可能にする第1の螺旋係合部がそれぞれ形成され、
前記弁体に、被係合部が形成され、
前記受け部は、前記注出部材を前記挿入孔へ挿入した際に前記被係合部と相対回転不能に係合する係合部を有する、
注出部材接続構造。
【請求項2】
前記導入筒部は、前記被挿入部から前記流体貯留部内に延出し、延出方向の先端に前記先端開口が形成された延出筒部を有する、請求項1記載の注出部材接続構造。
【請求項3】
前記導入筒部に、前記内部空間を複数の流路空間に区画する隔壁が形成され、
前記複数の流路空間は、前記先端開口で開放されている、請求項1または2記載の注出部材接続構造。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の注出部材接続構造の前記注出部材と、前記弁体と、容器とを備える包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出部材接続構造および包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、印刷装置には、インクが充てんされたインク容器が接続される。インク容器は、挿入部を有する注出部材を備える。印刷装置は、挿入孔を有する被挿入部を備える。注出部材の挿入部は、被挿入部の挿入孔に挿入されることによって印刷装置に接続される。これにより、インク容器内のインクを印刷装置のタンクに供給できる。被挿入部と、これに挿入される挿入部とを備えた接続構造としては、特許文献1に記載の連結部材がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記接続構造は、容器内のインク(流体)を印刷装置のタンク(貯留部)に供給する際に、インクがタンクから溢れ出るのを抑制することが求められていた。
【0005】
本発明の一態様は、容器内の流体を貯留部に供給する際に、流体が貯留部から溢れ出るのを抑制することができる注出部材接続構造および包装容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、流体が流れる注出流路を有する挿入部を備えた注出部材と、前記挿入部内に軸線方向に位置変動可能に設けられた弁体と、前記挿入部が挿入される挿入孔を有する受け部と、を備え、前記弁体は、前記位置変動によって、前記注出流路を開放する開放位置と、前記注出流路を閉止する閉止位置とを切り替え可能であり、前記受け部は、前記挿入孔を有する被挿入部と、前記注出部材から供給された前記流体を導く内部空間を有する導入筒部と、前記流体を貯留する流体貯留部と、を備え、前記導入筒部は、前記内部空間の前記流体が流出する先端開口を有し、前記先端開口は、前記流体貯留部内に位置する注出部材接続構造を提供する。
【0007】
前記導入筒部は、前記被挿入部から前記流体貯留部内に延出し、延出方向の先端に前記先端開口が形成された延出筒部を有することが好ましい。
【0008】
前記注出部材接続構造は、前記導入筒部に、前記内部空間を複数の流路空間に区画する隔壁が形成され、前記複数の流路空間は、前記先端開口で開放されていることが好ましい。
【0009】
前記注出部材接続構造は、前記挿入部の内周面および前記弁体の外周面に、互いに係合しあって前記挿入部および前記弁体の螺旋方向への相対変位を可能にする第1の螺旋係合部がそれぞれ形成され、前記弁体に、被係合部が形成され、前記受け部は、前記注出部材を前記挿入孔へ挿入した際に前記被係合部と相対回転不能に係合する係合部を有することが好ましい。
【0010】
本発明のさらに他の態様は、前記注出部材接続構造の前記注出部材と、前記弁体と、容器とを備える包装容器を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、容器内の流体を貯留部に供給する際に、流体が貯留部から溢れ出るのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の注出部材接続構造の斜視図である。
【
図2】第1実施形態の注出部材接続構造の注出部材の斜視図である。
【
図3】第1実施形態の注出部材接続構造の注出部材の一部の側面図である。
【
図4】第1実施形態の注出部材接続構造の注出部材の一部を前図とは反対側から見た側面図である。
【
図5】第1実施形態の注出部材接続構造の弁体の斜視図である。
【
図6】第1実施形態の注出部材接続構造の弁体の斜視図である。
【
図7】第1実施形態の注出部材接続構造の断面図である。
【
図8】第1実施形態の注出部材接続構造の動作を説明する断面図である。
【
図9】第1実施形態の注出部材接続構造の動作を説明する断面図である。
【
図10】第1実施形態の注出部材接続構造の動作を説明する断面図である。
【
図11】第1実施形態の注出部材接続構造の動作を説明する断面図である。
【
図12】第2実施形態の注出部材接続構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している場合がある。
【0014】
[注出部材接続構造](第1実施形態)
図1は、第1実施形態の注出部材挿入構造10Aの斜視図である。
図2は、注出部材10の斜視図である。
図3は、注出部材10の一部の側面図である。
図4は、注出部材10の一部を
図3とは反対側から見た側面図である。
図5および
図6は、弁体20の斜視図である。
図7は、注出部材挿入構造10Aの断面図である。
【0015】
以下の説明においては、XYZ直交座標系を採用することがある。
図1に示すように、X方向およびY方向は被挿入部1の上面1cに沿う方向である。Y方向は上面1cに沿う面内においてX方向と直交する。Z方向はX方向およびY方向に直交する。平面視とは、Z方向と平行に見ることをいう。
【0016】
図7に即して上下の位置関係を仮に定める。すなわち、
図7において上に向かう方向を上方といい、下に向かう方向を下方という。ここで定めた位置関係は、注出部材接続構造10Aの使用時の姿勢を限定しない。
【0017】
図7に示すように、注出部材挿入構造10Aは、注出部材10と、弁体20と、受け部30とを備える。
受け部30は、被挿入部1と、底板部2と、導入筒部3と、流体貯留部4(
図10参照)と、を備える。
【0018】
被挿入部1は、上下方向に沿う中心軸を有する筒状(例えば、円筒状)に形成されている。被挿入部1は挿入孔1aを有する。平面視において挿入孔1aは円形状とされている。C2は挿入孔1aの中心軸である。中心軸C2に沿う方向は、被挿入部1の軸線方向である。1cは被挿入部1の上面である。
【0019】
図1および
図7に示すように、挿入孔1aの内周面1bには、第1キー突起41および第2キー突起42が形成されている。第1キー突起41および第2キー突起42は、例えば、半球状の突起である。第1キー突起41および第2キー突起42は、内周面1bから、挿入孔1aの中心軸に近づく方向に突出している。第1キー突起41と第2キー突起42は、例えば、挿入孔1aの中心軸に対して軸周り方向に約180°ずれた位置に形成されている。すなわち、第1キー突起41と第2キー突起42との間の軸周りの角度(突起間角度)は約180°である。この突起間角度は180°に限定されず、任意の角度とすることができる。
第1キー突起41および第2キー突起42は、挿入孔1aの内周面1bに形成された「第2の螺旋係合部」である。
【0020】
被挿入部1の上端には、被挿入部1の外周面から外方に突出する環状凸部16が形成されている。
底板部2(
図7参照)は、被挿入部1の下端開口を塞ぐ。底板部2は円環状とされる。
【0021】
図7に示すように、導入筒部3は、主筒部5と、隔壁6と、係合部7と、を備える。主筒部5は、上下方向に沿う中心軸を有する筒状(例えば、円筒状)に形成されている。主筒部5の外径は、被挿入部1の内径より小さい。主筒部5の中心軸は、被挿入部1の中心軸C2と一致する。導入筒部3の下端3aには、先端開口3bが形成されている。3cは、導入筒部3の内部空間である。
【0022】
隔壁6は、導入筒部3の内部に形成された平板状の壁部である。隔壁6は、導入筒部3の内部空間3cを複数(例えば、2つ)の流路空間3dに区画する。隔壁6の数は、例えば1である。2つの流路空間3dのうち一方を第1流路空間3d1という。2つの流路空間3dのうち他方を第2流路空間3d2という。第1流路空間3d1および第2流路空間3d2は、先端開口3bにおいて開放されている。
【0023】
隔壁6は、主筒部5の全長にわたって中心軸C2に沿って形成されている。隔壁6の上端は主筒部5の上端に達する。隔壁6の下端は主筒部5の下端に達する。2つの流路空間3dは、隔壁6を介して向かい合う半円柱状の空間である。
【0024】
導入筒部3は、底板部2を貫通している。導入筒部3の上端3eは底板部2より高く、かつ上面1cより低い位置にある。導入筒部3の下端3aは底板部2より低い位置にある。
【0025】
導入筒部3のうち、底板部2から上方に突出する部分を規制部8という。
導入筒部3のうち、底板部2から下方に延出する部分を延出筒部9という。先端開口3bは、延出筒部9の延出方向の先端である下端3aに形成されている。
【0026】
図1および
図7に示すように、係合部7は、規制部8の先端8a(上端)に形成されている。係合部7は、先端8aから上方に突出している。係合部7は、平面視において中心軸C2周りの円弧状となる板状である。係合部7の数は、1または複数(例えば2つ)である。2つの係合部7,7は、中心軸C2周りの回転対称位置にある。2つの係合部7,7は、中心軸C2周りに約180°ずれた位置に形成されている。
【0027】
係合部7,7は、弁体20の係合受け部24,24に係合したときに、弁体20の中心軸C1周り方向の変位を規制することができる。すなわち、係合部7は、中心軸C1周り方向の力が伝達されるように係合受け部24に嵌合する。そのため、係合部7は、係合受け部24に相対回転不能に係合する。
【0028】
図7および
図10に示すように、流体貯留部4は、内部に流体を貯留することができる容器である。流体貯留部4は密閉構造とされる。流体貯留部4は、例えば、樹脂、金属などで構成される。流体貯留部4は、十分な剛性を有するため、内圧変化による容積の変動は小さい。
流体貯留部4には、開口部4aが形成されている(
図10参照)。開口部4aの周縁部には、被挿入部1が取り付けられている。導入筒部3の延出筒部9は、被挿入部1から流体貯留部4内に延出する。先端開口3bは、流体貯留部4の内部空間(内容物Fが貯留される貯留空間)に位置する。
【0029】
図7に示すように、注出部材10は、容器34の容器本体35の開口端部35aに装着されている。注出部材10は、基部11と、挿入部12とを有する。
図1および
図7に示すように、基部11は、主板部13と、環板部14とを備える。主板部13は、例えば、円板状である。環板部14は、円筒状に形成されている。環板部14は、主板部13の上面(第2面13b)から、
図7における上方に突出している。なお、主板部は、いわゆる舟形であってもよい。
【0030】
図7に示すように、基部11は、容器本体35の開口端部35aに取り付けられている。基部11と挿入部12とは一体に形成されている。基部11と挿入部12とは一体成型によって作製することができる。
【0031】
挿入部12は、概略、円筒状とされている。挿入部12は、基部11の第1面13a(
図7における下面)から、
図7における下方に突出している。C1は、注出部材10の中心軸である。挿入部12の内部空間は注出流路15となる。注出流路15は、容器本体35の内容物を、挿入部12の先端開口から外部に注出させることができる。
【0032】
図2~
図4に示すように、挿入部12の外周面には、第1キー溝43および第2キー溝44が形成されている。第1キー溝43および第2キー溝44は、例えば、長さ方向に直交する断面が半円状の溝である。
【0033】
図3に示すように、第1キー溝43は、第1主溝45と、第1屈折溝47とを有する。第1キー溝43は、第1キー突起41(
図1および
図7参照)に嵌合する。第1キー溝43(詳しくは第1屈折溝47)と第1キー突起41とは、互いに係合しあって螺旋方向への相対移動を可能とする。
【0034】
図4に示すように、第2キー溝44は、第2主溝46と、第2屈折溝48とを有する。第2キー溝44は、第2キー突起42(
図1および
図7参照)に嵌合する。第2キー溝44(詳しくは第2屈折溝48)と第2キー突起42とは、互いに係合しあって螺旋方向への相対移動を可能とする。
【0035】
キー溝43,44(詳しくは屈折溝47,屈折溝48)の螺旋角は、弁体20のキー溝53,54の螺旋角と等しい。キー溝43,44(詳しくは屈折溝47,屈折溝48)は、挿入部12の外周面に形成された「第2の螺旋係合部」である。
【0036】
図3および
図4に示すように、第1主溝45および第2主溝46は、挿入部12の先端12aから、中心軸C1に沿って基部11に近づく方向に延びる。第1屈折溝47および第2屈折溝48は、第1主溝45および第2主溝46の各末端45a,46aから屈折した方向に延びる。第1屈折溝47および第2屈折溝48は、中心軸C1周りの螺旋状とされている。
【0037】
第1屈折溝47および第2屈折溝48は、第1主溝45および第2主溝46の各末端45a,46aを起点として、基部11に近づく方向に、中心軸C1に対して傾斜して延びる。第1屈折溝47と第2屈折溝48の傾斜方向は互いに同じである。第1屈折溝47および第2屈折溝48は、例えば、中心軸C1周り方向に10°~180°の範囲に形成されている。この角度が120°以下であると、接続時の注出部材10のひねりが少なく、より作業しやすい。
【0038】
図2に示すように、第1キー溝43と第2キー溝44は、中心軸C1周り方向に約180°ずれた位置に形成されている。すなわち、第1キー溝43の最深部と第2キー溝44の最深部との間の中心軸C1周りの角度(溝間角度)は、約180°である。この溝間角度は、第1キー突起41と第2キー突起42との間の突起間角度(
図1参照)と等しい。第1キー溝43と第2キー溝44との間の溝間角度は180°に限定されず、任意の角度とすることができる。
【0039】
図7に示すように、挿入部12の内周面12bには、第1キー突起51および第2キー突起52が形成されている。第1キー突起51および第2キー突起52は、例えば、半球状の突起である。第1キー突起51および第2キー突起52は、挿入部12の内周面12bから、中心軸C1に近づく方向に突出している。第1キー突起51と第2キー突起52は、例えば、中心軸C1に対して軸周り方向に約180°ずれた位置に形成されている。すなわち、第1キー突起51と第2キー突起52との間の突起間角度は約180°である。
【0040】
第1キー突起51および第2キー突起52は、挿入部12の内周面12bに形成された「第1の螺旋係合部」である。第1キー突起51と第2キー突起52との間の突起間角度は180°に限定されず、任意の角度とすることができる。
【0041】
弁体20は、挿入部12の内部に、中心軸C1に沿う方向(軸線方向)に位置変動可能に設けられている。
図5および
図6に示すように、弁体20は、閉止板21(閉止部)と、筒部22と、複数の連結部23とを備える。
【0042】
閉止板21は、円板状に形成されている。閉止板21は、中心軸C1に対して垂直である。
図7に示すように、閉止板21の外径は、注出流路15の内径にほぼ等しいか、注出流路15の内径より小さい。閉止板21は、注出流路15を閉止可能である。閉止板21は、筒部22に対して上方に離間した位置にある。
【0043】
筒部22は、閉止板21と同心の円筒形状とされている。筒部22の外周面には、第1キー溝53および第2キー溝54が形成されている。第1キー溝53および第2キー溝54は、中心軸C1周りの螺旋状とされている。第1キー溝53および第2キー溝54は、中心軸C1に対して傾斜して延びる。
【0044】
第1キー溝53は、第1キー突起51に嵌合する。第1キー溝53と第1キー突起51とは、互いに係合しあって螺旋方向への相対移動を可能とする。第2キー溝54は、第2キー突起52に嵌合する。第2キー溝54と第2キー突起52とは、互いに係合しあって螺旋方向への相対移動を可能とする。
第1キー溝53および第2キー溝54は、弁体20の外周面に形成された「第1の螺旋係合部」である。
【0045】
図6および
図7に示すように、筒部22の下部の外周面には、被挿入部1の係合部7,7と係合する凹状の係合受け部24,24が形成されている。係合受け部24は、筒部22の先端22aから上方に向かう凹状に形成されている。係合受け部24に係合部7の先端部が嵌合したときには、弁体20の中心軸C1周り方向の変位が規制される。2つの係合受け部24,24は、中心軸C2周りの回転対称位置にある一対の係合受け部24,24は、中心軸C1周りに約180°ずれた位置に形成されている。係合受け部24は、係合部7に対応する形状とされている。
【0046】
連結部23は、軸線方向に沿う柱状とされ、閉止板21と筒部22とを連結している。複数の連結部23は、中心軸C1周り方向に間隔をおいて形成されている。そのため、閉止板21が挿入部12から離れると(
図9参照)、容器34の内容物Fは閉止板21と筒部22との隙間を経て挿入部12内に流入することができる(
図10参照)。
【0047】
図7では、弁体20は、閉止板21が注出流路15を閉止する閉止位置P1にある。弁体20は、注出流路15を開放する開放位置P2(
図9参照)をとることもできる。すなわち、弁体20は、軸線方向に位置変動可能であるため、閉止位置P1と開放位置P2とを切り替え可能である。
【0048】
[包装容器]
図1に示す注出部材10と、弁体20(
図7参照)と、注出部材10が装着される容器本体35(
図7参照)とは、包装容器を構成する。
【0049】
[注出部材装置]
図1に示す注出部材10と、弁体20(
図7参照)と、注出部材10が装着される容器本体35(
図7参照)と、受け部30とは、注出部材装置100を構成する。
【0050】
[注出部材接続構造の使用方法]
次に、注出部材接続構造10Aの使用方法について説明する。まず、注出部材10の挿入部12を挿入孔1aに挿入する操作について説明する。
図7に示すように、弁体20の閉止板21は注出流路15を閉止している。そのため、容器34の内容物は挿入部12に流入しない。
【0051】
図8に示すように、注出部材10の挿入部12を被挿入部1の挿入孔1aに合わせる。その際、第1キー溝43および第2キー溝44(
図2参照)の位置を、それぞれ第1キー突起41および第2キー突起42の位置に合わせる。注出部材10の中心軸C1は挿入孔1aの中心軸C2に一致する。
【0052】
挿入部12が挿入孔1aに挿入されると、第1キー突起41および第2キー突起42は、それぞれ第1キー溝43および第2キー溝44の第1主溝45および第2主溝46に嵌合する(
図3および
図4参照)。
【0053】
挿入部12を被挿入部1に対して挿入方向に移動させると、第1キー突起41および第2キー突起42は、それぞれ第1主溝45および第2主溝46内を進み、末端45a,46a(
図3および
図4参照)に達する。
挿入部12を中心軸C1周りの螺旋方向に変位させると、第1キー突起41および第2キー突起42は、それぞれ第1屈折溝47および第2屈折溝48に進入する。これにより、挿入部12は、回転しつつ挿入方向(
図8の下方)に変位する。
【0054】
係合部7は係合受け部24に挿入し、係合受け部24に嵌合する。係合部7が係合受け部24に嵌合すると、弁体20の中心軸C1周り方向の変位は規制される。そのため、弁体20の螺旋方向の変位は停止する。
【0055】
図9に示すように、挿入部12の螺旋方向の変位は妨げられないため、挿入部12は、螺旋方向に変位し続ける。この際、挿入部12のキー突起51,52はキー溝53,54(
図5および
図6参照)内を進行する。
【0056】
弁体20が高さ位置を維持したまま、挿入部12は挿入方向(
図9の下方)に変位するため、閉止板21は注出流路15から離れる。これにより、注出流路15の上端開口は開放される。
第1キー突起41および第2キー突起42が、それぞれ第1屈折溝47および第2屈折溝48の終端に達した段階で、挿入部12の、挿入孔1aへの挿入は完了する。
【0057】
図10に示すように、容器34の内容物F(流体)は、閉止板21と筒部22との隙間を経て注出流路15に流れる。内容物Fは、導入筒部3の内部空間3cを通して流体貯留部4に流入する。例えば、内容物Fは、複数の流路空間3dのうち1つ(第1流路空間3d1)を流下し、先端開口3bから流体貯留部4に流れ込む。この際、例えば、第2流路空間3d2は、流体貯留部4内の気体が排出される排気路として機能する。
【0058】
図11に示すように、流体貯留部4内の内容物F(流体)の表面(液面)は上昇し、第2流路空間3d2の先端開口に達する。これにより、第2流路空間3d2の先端開口は塞がれ、第2流路空間3d2による気体の排出は停止する。そのため、流体貯留部4の内圧上昇により、第1流路空間3d1を通した内容物Fの流入は停止する。
【0059】
次に、注出部材10の挿入部12を挿入孔1aから引き抜く操作について説明する。
図9に示すように、挿入部12を、挿入時とは逆の方向に回転させつつ、引き抜き方向(
図9の上方)に変位させる。この過程で、キー突起41,42は屈折溝47,48内を進行する。キー突起51,52はキー溝53,54内を進行する。
図8に示すように、挿入部12の上昇によって挿入部12は閉止板21に達し、注出流路15は閉止される。
【0060】
係合部7が係合受け部24から外れると、弁体20の回転規制は解除されるため、弁体20は挿入部12と一体的に移動する。
キー突起41,42が末端45a,46a(
図3および
図4参照)に達した後、挿入部12を引き抜き方向(
図9の上方)に変位させる。これにより、
図7に示すように、挿入部12は、挿入孔1aから引き抜かれる。
【0061】
[注出部材接続構造が奏する効果]
注出部材挿入構造10Aによれば、延出筒部9が流体貯留部4内に延出し、延出筒部9の先端に先端開口3bが形成されている。そのため、流体貯留部4内の内容物Fの液面が先端開口3bに達した時点で、流体貯留部4への内容物Fの流入を停止させることができる。よって、容器34内の内容物Fを流体貯留部4に供給する際に、内容物Fが流体貯留部4から溢れ出るのを抑制できる。
【0062】
注出部材挿入構造10Aは、延出筒部9の内部空間3cを隔壁6によって複数の流路空間3dに区画するため、流路空間3dのうち1つ(第2流路空間3d2)を排気路とすることができる。そのため、内容物Fを第1流路空間3d1から流体貯留部4に導入しやすくなる。
【0063】
注出部材挿入構造10Aでは、挿入部12内に弁体20が設けられ、受け部30に、弁体20の係合受け部24と係合する係合部7が設けられている。そのため、挿入部12の挿入過程で、挿入部12が十分に深く挿入孔1aに挿入されて流路が確保されてから、弁体20の回転変位が規制されて注出流路15が開放される。よって、注出部材10を被挿入部1に接続する作業において内容物の漏出を抑制することができる。
【0064】
[注出部材接続構造](第2実施形態)
図12は、第2実施形態の注出部材挿入構造10Bの断面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0065】
図12に示すように、注出部材挿入構造10Bは、注出部材10と、弁体20と、受け部130とを備える。
受け部130は、被挿入部1と、底板部2と、導入筒部103と、流体貯留部4と、を備える。
【0066】
導入筒部103は、底板部2から下方に延出する部分(
図7に示す延出筒部9)がない点で、
図7に示す導入筒部3と異なる。導入筒部103は、規制部8のみで構成される。導入筒部103の下端103aには先端開口103bが形成されている。流体貯留部4の内部空間(内容物Fが貯留される貯留空間)に位置する。
【0067】
導入筒部103は、主筒部105と、隔壁106と、係合部7(
図7参照)と、を備える。隔壁106は、導入筒部103の内部空間103cを複数(例えば、2つ)の流路空間103dに区画する。2つの流路空間103dのうち一方を第1流路空間103d1という。2つの流路空間103dのうち他方を第2流路空間103d2という。
【0068】
注出部材10の挿入部12を被挿入部1の挿入孔1a(
図7参照)に挿入する。容器34の内容物F(流体)は、閉止板21と筒部22との隙間を経て注出流路15に流れる。内容物Fは、導入筒部103の内部空間を通して流体貯留部4に流入する。例えば、内容物Fは、複数の流路空間103dのうち1つ(第1流路空間103d1)を流下し、先端開口103bから流体貯留部4に流れ込む。
【0069】
注出部材挿入構造10Bでは、流体貯留部4内の内容物Fの液面が先端開口103bに達した時点で、流体貯留部4への内容物Fの流入を停止させることができる。よって、容器34内の内容物Fを流体貯留部4に供給する際に、内容物Fが流体貯留部4から溢れ出るのを抑制できる。
【0070】
本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、
図1および
図7に示すように、実施形態では、導入筒部3の内部空間3cは1つの隔壁6によって2つの流路空間3dに区画されているが、延出筒部の構造は、
図1および
図7に示す構造に限定されない。例えば、隔壁の数は、2以上の任意の数であってもよい。隔壁の数が2以上である場合には、流路空間の数は3以上の任意の数であってもよい。
【0071】
図1および
図7に示すように、実施形態では、係合部が凸部であって、係合受け部(被係合部)が凹部であるが、逆に、係合部が凹部であって、係合受け部(被係合部)が凸部であってもよい。
【0072】
実施形態では、被挿入部1にキー突起41,42が形成され、注出部材10にキー溝43,44が形成されているが、注出部材10および被挿入部1の構造はこれに限定されない。注出部材接続構造は、挿入部の外周面と挿入孔の内周面のいずれか一方にキー突起が形成され、他方に、キー突起が嵌合するキー溝が形成されていればよい。そのため、
図1に示す注出部材接続構造10Aとは逆に、被挿入部にキー溝が形成され、注出部材にキー突起が形成されていてもよい。
【0073】
実施形態では、被挿入部1に2つのキー突起41,42が形成され、挿入部12に2つのキー突起51,52が形成されている。被挿入部および挿入部に形成されるキー突起の数は、それぞれ2つに限らず、1でもよいし、3以上の任意の数でもよい。注出部材接続構造10Aでは、挿入部12に2つのキー溝43,44が形成され、弁体20に2つのキー溝53,54が形成されている。挿入部および弁体に形成されるキー溝の数は、それぞれ2つに限らず、1でもよいし、3以上の任意の数でもよい。
【0074】
注出部材を構成する基部と挿入部とは、一体であってもよいし、別体であってもよい。基部と挿入部とが別体である場合には、例えば、次の構造を採用できる。基部は、挿入部の一部が挿入される貫通孔(図示略)を有する。挿入部の一部は、前記貫通孔に挿入された状態で、凹凸嵌合、ネジ嵌合などにより基部と結合される。基部と挿入部とは着脱自在であってよい。
【0075】
図7等に示す注出部材接続構造10Aでは、弁体20は、容器34側に移動したときに注出部材10の注出流路15が開き、被挿入部1側に移動したときに注出流路15が閉じる。注出部材接続構造は、弁体が容器側に移動したときに注出部材の流路が閉じ、弁体が被挿入部側に移動したときに注出部材の流路が開く構造を採用してもよい。
【0076】
本発明の注出部材接続構造は、容器の内容物の詰替えや補充に好適に適用できる。特に、詰替えや補充時の液漏れが問題となる内容物を用いる場合、例えば、印刷用インキ、トイレタリー用品、調味料、医薬品、燃料などを対象とする場合に好適である。
【符号の説明】
【0077】
1…被挿入部、1a…挿入孔、3,103…導入筒部、3b,103b…先端開口、3c,103c…内部空間、3d,103d…流路空間、3d1,103d1…第1流路空間、3d2,103d2…第2流路空間、4…流体貯留部、6,106…隔壁、7…係合部、9…延出筒部、10…注出部材、10A,10B…注出部材接続構造、12…挿入部、15…注出流路、20…弁体、24…係合受け部(被係合部)、30,130…受け部、34…容器、51…第1キー突起(第1の螺旋係合部)、52…第2キー突起(第1の螺旋係合部)、F…内容物(流体)、P1…閉止位置、P2…開放位置。