(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】ガス配管
(51)【国際特許分類】
F16L 11/20 20060101AFI20231025BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
F16L11/20
F16L57/00 A
(21)【出願番号】P 2019209689
(22)【出願日】2019-11-20
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】593027967
【氏名又は名称】大陽日酸エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】出口 翔
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 健一郎
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205299722(CN,U)
【文献】実開昭63-178683(JP,U)
【文献】実開平02-004692(JP,U)
【文献】特開2013-104481(JP,A)
【文献】特開2009-074657(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152247(WO,A1)
【文献】特開2006-078017(JP,A)
【文献】特開2009-068764(JP,A)
【文献】中国実用新案第205536705(CN,U)
【文献】特開2009-068348(JP,A)
【文献】特開2002-204831(JP,A)
【文献】特開2017-165242(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0157815(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の内管と、樹脂製の外管と、を備え、
前記内管の外周と前記外管の内周との間に間隙を有するように、前記外管の内側に前記内管が位置する、
ガス配管であって、
曲げ伸ばし可能とされ、ガス漏洩検査の用途で使用される、ガス配管。
【請求項2】
前記内管の外径が、φ2.0mmである、請求項1に記載のガス配管。
【請求項3】
前記外管の内径が、φ4.0mm以上である、請求項2に記載のガス配管。
【請求項4】
前記内管の外径が、φ3.18mmである、請求項1に記載のガス配管。
【請求項5】
前記外管の内径が、φ5.0mm以上である、請求項4に記載のガス配管。
【請求項6】
前記内管が、ステンレス製又は銅製である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のガス配管。
【請求項7】
前記内管の両方の端部が、前記外管から露出する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のガス配管。
【請求項8】
前記内管の両方の端部に、継手が位置する、請求項7に記載のガス配管。
【請求項9】
前記外管の端部が、前記内管の外周との間で封止される、請求項7又は8に記載のガス配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス配管に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造用の原料ガスを用いる半導体製造装置や、冷媒ガスを用いる空気調和装置では、ガスの漏洩を検知するために検査用ガスを用いた点検を行うことがある。例えば、特許文献1には、あらかじめ検査用ガス配管が設けられた空気調和装置が開示されている。
【0003】
しかしながら、あらかじめ検査用ガス配管が設けられていない装置では、仮設用のガス配管を用いて漏洩等の点検が行われる。また、仮設用のガス配管として、ステンレスや銅等の金属製の、比較的小径の配管が用いられるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、仮設用のガス配管は、検査対象となる装置の設置状況に応じて、曲げ伸ばしされて検査用ガスの流路が構成される。また、点検が完了すると、仮設用のガス配管は、丸められた状態で運搬される。しかしながら、金属製のガス配管は、繰り返し曲げ伸ばしがなされると曲げぐせ(
図4を参照)がつきやすく、次第に固くなって使いづらくなるという課題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、曲げ伸ばしが容易であり、曲げ伸ばしを繰り返しても曲げぐせがつきにくいガス配管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
[1] 金属製の内管と、樹脂製の外管と、を備え、
前記内管の外周と前記外管の内周との間に間隙を有するように、前記外管の内側に前記内管が位置する、ガス配管。
[2] 前記内管の外径が、φ2.0mmである、前記[1]に記載のガス配管。
[3] 前記外管の内径が、φ4.0mm以上である、前記[2]に記載のガス配管。
[4] 前記内管の外径が、φ3.18mmである、前記[1]に記載のガス配管。
[5] 前記外管の内径が、φ5.0mm以上である、前記[4]に記載のガス配管。
[6] 前記内管が、ステンレス製又は銅製である、前記[1]乃至[5]のいずれかに記載のガス配管。
[7] 前記内管の両方の端部が、前記外管から露出する、前記[1]乃至[6]のいずれかに記載のガス配管。
[8] 前記内管の両方の端部に、継手が位置する、前記[7]に記載のガス配管。
[9] 前記外管の端部が、前記内管の外周との間で封止される、前記[7]又は[8]に記載のガス配管。
[10] 仮設用のガス配管である、前記[1]乃至[9]のいずれかに記載のガス配管。
【発明の効果】
【0008】
本発明のガス配管は、曲げ伸ばしが容易であり、曲げ伸ばしを繰り返しても曲げぐせがつきにくい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態であるガス配管の構成の一例を示す模式図である。
【
図3】本実施形態のガス配管を曲げた状態を示す拡大断面図である。
【
図4】従来の仮設用のガス配管の構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した一実施形態であるガス配管の構成について、その使用の態様と併せて、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0011】
先ず、本発明の一実施形態であるガス配管の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるガス配管1の構成の一例を示す断面図である。また、
図2は、本実施形態のガス配管1の拡大断面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態のガス配管1は、金属製の内管2と樹脂製の外管3とを備えるガス配管である。
【0012】
内管2は、内側の空間に気体(ガス)を流通させる、金属製の配管である。
内管2の材質は、曲げ伸ばしが可能な金属であれば、特に限定されない。このような金属としては、例えば、ステンレス、銅等が挙げられる。すなわち、曲げ伸ばしの観点から、内管2は、ステンレス製又は銅製の配管であることが好ましい。
【0013】
内管2の長さは、特に限定されないが、搬送する際の取り扱いの観点から、1~30mが好ましく、3~10mがより好ましい。
【0014】
内管2の内径は、気体(ガス)を流通させることが可能であれば、特に限定されない。内管2の内径としては、1.0~4.35mmの範囲が好ましく、1.0~2.18mmの範囲がより好ましい。
【0015】
内管2の外径(換言すると、内管2の肉厚)は、曲げ伸ばしが可能であれば、特に限定されない。内管2の外径としては、1.59~6.35mmの範囲が好ましく、2.0~3.18mmの範囲がより好ましい。換言すると、内管2の肉厚としては、0.2~1.0mmの範囲が好ましく、0.5~1.0mmの範囲がより好ましい。
【0016】
本実施形態のガス配管1では、内管2の外径がφ3.18mm、又はφ6.35mmのものを用いることが、入手の容易性の観点から好ましい。
【0017】
外管3は、内管2の曲げを許容し、内管2の曲げすぎを規制する、樹脂製の配管である。
外管2の材質は、上述したように内管2の曲げを許容し、内管2の曲げすぎを規制可能な樹脂であれば、特に限定されない。このような樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリ塩化ビニール、フッ素樹脂、フッ素ゴム、ナイロン等が挙げられる。
【0018】
なお、外管3の材質は、本実施形態のガス配管1に付加したい効果に応じて適宜選択してもよい。例えば、帯電防止(静電気対策、防塵対策)の観点では、ポリウレタン等を用いることが好ましい。また、感電防止の観点では、ポリ塩化ビニール等を用いることが好ましい。また、周囲の環境の保護(傷つけ防止)の観点では、フッ素樹脂等を用いることが好ましい。
【0019】
外管3の長さは、内管2の両端が露出するように、内管2よりも短い長さであれば特に限定されない。外管3の長さとしては、0.96~29.96mが好ましく、2.26~9.96mがより好ましい。
【0020】
外管3の内径は、内管2を挿通させることが可能であれば、特に限定されない。外管3の内径としては、3.0~8.0mmの範囲が好ましく、4.0~5.0mmの範囲がより好ましい。
【0021】
外管3の外径(換言すると、外管3の肉厚)は、内管2を挿通した状態で曲げ伸ばしが可能であれば、特に限定されない。外管3の外径としては、4.0~10.0mmの範囲が好ましく、6.0~7.0mmの範囲がより好ましい。換言すると、外管3の肉厚としては、0.5~1.5mmの範囲が好ましく、0.5~1.0mmの範囲がより好ましい。
【0022】
図2に示すように、本実施形態のガス配管1は、内管2の外周と外管3の内周との間に間隙4を有するように、外管3の内側に内管2が位置する。換言すると、本実施形態のガス配管1は、外管3と内管2とが互いに固定されない状態で、外管3の内側に内管2が挿通されている。本実施形態のガス配管1では、内管2の外周の一部と外管3の内周の一部とが接触していてもよいし、非接触であってもよい。なお、内管2の外周と外管3の内周とが間隙4を有することなく密着あるいは接着されているものは、本実施形態のガス配管1とは異なる。
【0023】
間隙4は、内管2の外径と外管3の内径との差として表すことができる。間隙4としては、0.41~2.0mmの範囲が好ましく、1.0~2.0mmの範囲がより好ましい。間隙4が2.0mm以上であると、外管3の内側に内管2を挿通しやすい。間隙4が1.0mm以下であると、外管3と内管2との間にゴミ等が入りにくい。間隙4が上述の好ましい範囲内であると、外管3とともに内管2の曲げを許容し、内管2の曲げすぎを規制することができる。
【0024】
内管2と外管3との組合せは、間隙4が上述した好ましい範囲となるものであれば、特に限定されない。
例えば、外径がφ3.18mmの内管2を用いる場合、内径がφ5.0mm、外径がφ7.0mm(すなわち、肉厚が1.0mm)の外管3と組み合わせて用いることが好ましい。この場合、間隙4は、1.82mmとなる。
また、外径がφ6.35mmの内管2を用いる場合、内径がφ8.0mm、外径がφ10.0mm(すなわち、肉厚が1.0mm)の外管3と組み合わせて用いることが好ましい。この場合、間隙4は、1.65mmとなる。
【0025】
図1に示すように、ガス配管1の端部では、内管2の両方の端部が外管3から露出する。また、内管3の両方の端部には、それぞれ継手5が位置する。このように、ガス配管1の両端に継手5がそれぞれ設けられているため、既設のガス配管や、装置のガス導入口及び排気口等に接続できる。
【0026】
本実施形態のガス配管1の用途は、特に限定されない。本実施形態のガス配管1は、例えば、仮設用のガス配管、分析用の配管等の用途に適用できる。
【0027】
ところで、半導体の製造現場等のクリーンな環境では、微小なゴミ(パーティクル)の持ち込みも許されない。このような環境において、本実施形態のガス配管1を仮設用のガス配管として用いる場合、パーティクルの持ち込みを防止する観点から、外管3の両方の端部が、内管2の外周との間で封止(シール)されることが好ましい。
【0028】
外管3の端部における、外管3と内管2の外周との間を封止する方法は、特に限定されない。例えば、樹脂等の封止剤を用いて、外管3の端部と内管2の外周とを封止してもよい。また、外管3の材質によっては、外管3の端部を溶融して内管2の外周と融着させて封止してもよい。
【0029】
次に、本実施形態のガス配管1の曲げ伸ばしについて、説明する。
先ず、
図1に示すように、本実施形態のガス配管1は、通常、両方の端部間の配管部分が丸められた状態で保管、運搬される。そして、既設のガス配管以外にガス配管が必要な場所において、本実施形態のガス配管1の両方の端部に設けた継手5をそれぞれ接続する。その際、両端の継手5の間の配管部分は、経路に沿って曲げ伸ばされる。
【0030】
ここで、
図3は、本実施形態のガス配管を曲げた状態を示す拡大断面図である。
図3に示すように、本実施形態のガス配管1を所要の位置で曲げると、曲げた箇所では間隙4がなくなり、曲げに対して内側及び外側において、内管2の外周面と外管3の内周面とが接触する。この際、曲げに対して内側では、外管3を圧縮する方向に応力がかかる。一方、曲げに対して外側では、外管3を引っ張る方向に応力がかかる。ここで、樹脂によって構成された外管3が、内管2にかかる圧縮応力及び引張応力を緩和し、内管2が過剰に小さな曲げ半径Rとなることを規制する。すなわち、本実施形態のガス配管1は、内管2に曲げぐせがつきほどの曲げ半径Rとなりにくい(鋭角に曲がらない)。
【0031】
以上説明したように、本実施形態のガス配管1によれば、曲げ伸ばしが容易であり、曲げ伸ばしを繰り返しても曲げぐせがつきにくい。特に、内管2の外径が小さい場合に、本実施形態のガス配管1の効果が得られやすい。
【0032】
なお、本実施形態のガス配管1であっても、繰り返して曲げ伸ばしを行うことにより、曲げぐせがついて配管が固くなる場合がある。その場合、両端の継手5を取り外し、新しい内管2を外管3の内側に挿通した後、再び両端に継手5を取り付けることが好ましい。すなわち、本実施形態のガス配管1は、内管2の交換頻度を少なくできる。
【0033】
本実施形態のガス配管1は、使用する環境に応じて外管3を付け替えて用いてもよい。また、本実施形態のガス配管1は、外管3が汚れた場合は新しいものに交換して用いてもよい。これにより、本実施形態のガス配管1は、繰り返し使用することができる。
【0034】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のガス配管は、検査用ガスを用いて点検を行う際の、仮設用のガス配管等として利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0036】
1・・・ガス配管
2・・・内管
3・・・外管
4・・・間隙
5・・・継手