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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】殺菌処理用の包装容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/24 20060101AFI20231025BHJP
   B65D 81/28 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
B65D81/24 L
B65D81/28 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021564059
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2020046262
(87)【国際公開番号】W WO2021117865
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2019223878
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(73)【特許権者】
【識別番号】000152480
【氏名又は名称】株式会社日阪製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】野中 康弘
(72)【発明者】
【氏名】星加 里奈
(72)【発明者】
【氏名】尾下 竜也
(72)【発明者】
【氏名】浜田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】今村 恵
(72)【発明者】
【氏名】堤 隆一
(72)【発明者】
【氏名】御船 和徳
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6203340(JP,B1)
【文献】特開2009-120247(JP,A)
【文献】特開2003-261177(JP,A)
【文献】特開昭60-134822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/18-81/30
B65D 67/00-79/02
B65B 55/00-55/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収容された内容物を殺菌用ガスに晒すことで殺菌し、その後該内容物を封止して流通させるための殺菌処理用の包装容器であって、
上方に開口を有し且つ内容物を収容する収容部と、前記収容部の開口縁から外向きに延びるフランジ部と、を含む容器本体を備え、
前記フランジ部は、
前記開口を覆う蓋部材と一次シール工程において一次シールされる一次シール領域と、
前記蓋部材と一次シール工程の後の二次シール工程において二次シールされることで内容物が完全に封止される二次シール領域と、
上面において該フランジ部の上面のうち最も上方に位置するフランジ最上部と、
上面において該フランジ最上部の上面よりも下方に位置するフランジ下部と、
前記一次シール領域よりも内側に位置し前記フランジ部を貫通する貫通孔が設けられる少なくとも1つの貫通領域と、を有し、且つ、
前記蓋部材と前記一次シール領域とがシールされた際に、前記フランジ最上部によって支持された前記蓋部材と前記フランジ下部との間に前記収容部内の空気を外部に脱気可能であり且つ外部から前記収容部内に前記殺菌用ガスが流入可能な流通路が形成され、前記収容部内を脱気する間も、前記収容部内に前記殺菌用ガスを流入させる間も、前記流通路が開放状態で維持され、前記蓋部材と前記二次シール領域とがシールされた際に、前記流通路が閉塞されるように構成されている、ことを特徴とする包装容器。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記貫通領域の一部に裂け目が形成されることにより形成される、請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
前記貫通領域は、上方に向けて膨出した湾曲面を有しており、
前記湾曲面の上端が、前記フランジ最上部を構成している、請求項2に記載の包装容器。
【請求項4】
前記貫通領域は、下方に凹んだ凹部であり、前記裂け目が該凹部内に形成される、請求項2に記載の包装容器。
【請求項5】
前記フランジ部が、前記収容部の開口縁の全周に設けられ、
前記貫通領域は複数設けられるとともに、前記収容部を挟む対向位置に配置されている、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の包装容器。
【請求項6】
内部に収容された内容物を殺菌用ガスに晒すことで殺菌し、その後該内容物を封止して流通させるための包装容器であって、
上方に開口を有し且つ内容物を収容する収容部と、前記収容部の開口縁から外向きに延びるフランジ部と、を含む容器本体を備え、
前記フランジ部は、
前記開口を覆う蓋部材と一次シール工程において一次シールされる一次シール領域と、
前記蓋部材と一次シール工程の後の二次シール工程において二次シールされる二次シール領域とを有し、且つ、
前記蓋部材と前記一次シール領域とがシールされた際に、前記蓋部材との間に前記収容部内の空気を外部に脱気可能であり且つ外部から前記収容部内に前記殺菌用ガスが流入可能な流通路が形成され、前記収容部内を脱気する間も、前記収容部内に前記殺菌用ガスを流入させる間も、前記流通路が開放状態で維持され、前記蓋部材と前記二次シール領域とがシールされた際に、前記流通路が閉塞されるように構成され、
前記フランジ部には、前記一次シール領域よりも内側に前記フランジ部を貫通した少なくとも1つの貫通孔が設けられ、
前記貫通孔が、前記流通路の一部となるように構成されている、ことを特徴とする包装容器。
【請求項7】
前記貫通孔は、前記フランジ部の一部に裂け目が形成されることにより形成されている、請求項6に記載の包装容器。
【請求項8】
前記フランジ部は、前記裂け目を境界として前記フランジ部の一部が上方に向けて変形されることによって形成されるフランジ最上部を有し、
該フランジ最上部により支持される前記蓋部材と前記フランジ部との間に前記流通路が形成される、請求項7に記載の包装容器。
【請求項9】
前記上方に向けて変形される前記フランジ部の一部が、上方に向けて膨出した湾曲面を有する、請求項8に記載の包装容器。
【請求項10】
前記フランジ部は、上面において該フランジ部の上面のうち最も上方に位置するフランジ最上部を有し、
該フランジ最上部により支持される前記蓋部材と前記フランジ部との間に前記流通路が形成される、請求項6又は請求項7に記載の包装容器。
【請求項11】
前記フランジ部が、前記収容部の開口縁の全周に設けられ、
前記貫通孔は複数設けられるとともに、前記収容部を挟む対向位置に配置されている、請求項6~請求項10のいずれか1項に記載の包装容器。
【請求項12】
前記一次シール領域の上面は、前記フランジ部の上面のうち最も上方に位置し、
前記二次シール領域の上面は、前記一次シール領域の上面よりも下方に位置し、
前記フランジ部は、前記蓋部材と前記一次シール領域とがシールされた際に、前記二次シール領域の上面と前記蓋部材の下面との間に隙間が形成されるように構成され、
前記隙間が、前記流通路の一部となるように構成されている、請求項6に記載の包装容器。
【請求項13】
前記収容部は、内容物が載置される底板を含み、
前記底板の上面は、凹凸形状を有する、請求項1~請求項12いずれか1項に記載の包装容器。
【請求項14】
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の包装容器は、さらに蓋部材を備え、
前記容器本体及び前記蓋部材は、少なくとも一層のガスバリア層を含む多層構造体から構成されている、包装容器。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、日本国特願2019-223878号の優先権を主張し、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、殺菌処理用の包装容器に関し、例えば惣菜などの食品を内容物として包装し殺菌処理する際に好適に使用し得る包装容器に関する。
【背景技術】
【0003】
包装食品には、食品工場等で調理・加工された食品が開口を有する容器内に収容され、該容器にトップシートやかぶせ蓋をした状態で流通されるものがある。しかし、トップシートやかぶせ蓋を用いた包装食品は、完全に密封されたものではないため、外気が容器内へ侵入する可能性がある。従って、これらの包装食品の日持ちは概ね1~2日と非常に短く、廃棄ロス率が非常に高い(製品歩留まりが悪い)という問題がある。
【0004】
最近、このような包装食品として、容器と蓋とがヒートシールされるなど容器内が完全に密封されて日持ちを延ばした包装食品が流通するようになっている。中には、冷蔵保存することで日持ちが2週間を超える包装食品もある。
【0005】
しかしながら、ヒートシール等で容器を密封することで外部からの細菌の浸入を防ぐことはできても、成形容器の内部は完全無菌の状態ではない。従って、流通過程において環境が変化することで容器内の細菌が繁殖する可能性は十分に考えられる。そのため、日持ちをさらに長くするためには、食品工場での作業環境をできるだけ無菌状態に近づけるべく、清浄度を厳しく管理することが要求される。従来、食品を容器に収容した状態で加熱殺菌した後、クリーンルーム(無菌室)内で該容器本体を蓋部材で密閉する方法が提案されており(特許文献1)、例えば、調理・加工された食品を取り扱う作業環境の清浄度は、NASA規格クリーンルームの10000あるいは1000レベルといったハイレベルまで管理される場合もある。しかし、このようなクリーンルームを導入する場合、空調設備の設置やその維持管理には多大なコストがかかるという問題がある。
【0006】
また、食品以外にも、製品として市場に流通させる前に殺菌処理すべき対象物が種々存在し、それらの対象物を効率良く殺菌処理することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特開平9-9937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、内容物を殺菌処理する際に好適に使用し得る包装容器を提供することを課題とし、例えば、内容物の一例である食品の殺菌処理に好適に使用され、食品の品質保持期間を長くしうる包装容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る包装容器は、内部に収容された内容物を殺菌用ガスに晒すことで殺菌し、その後該内容物を封止して流通させるための殺菌処理用の包装容器であって、上方に開口を有し且つ内容物を収容する収容部と、前記収容部の開口縁から外向きに延びるフランジ部と、を含む容器本体を備え、前記フランジ部は、前記開口を覆う蓋部材と一次シール工程において一次シールされる一次シール領域と、前記蓋部材と一次シール工程の後の二次シール工程において二次シールされる二次シール領域と、上面において該フランジ部の上面のうち最も上方に位置するフランジ最上部と、上面において該フランジ最上部の上面よりも下方に位置するフランジ下部と、前記一次シール領域よりも内側に位置し前記フランジ部を貫通する貫通孔が設けられる少なくとも1つの貫通領域と、を有し、且つ、前記蓋部材と前記一次シール領域とがシールされた際に、前記フランジ最上部によって支持された前記蓋部材と前記フランジ下部との間に外部と前記収容部内との間で気体が流通可能な流通路が形成され、前記蓋部材と前記二次シール領域とがシールされた際に、前記流通路が閉塞されるように構成されている、ことを特徴とする。
【0010】
また、前記包装容器では、前記貫通孔は、前記貫通領域の一部に裂け目が形成されることにより形成されてもよい。
【0011】
前記貫通領域は、上方に向けて膨出した湾曲面を有しており、前記湾曲面の上端が、前記フランジ最上部を構成してもよい。
【0012】
また、前記包装容器では、前記貫通領域は、下方に凹んだ凹部であり、前記裂け目が該凹部内に形成されてもよい。
【0013】
また、前記包装容器では、前記フランジ部が、前記収容部の開口縁の全周に設けられ、前記貫通領域は複数設けられるとともに、前記収容部を挟む対向位置に配置されてもよい。
【0014】
本発明の別の包装容器は、内部に収容された内容物を殺菌用ガスに晒すことで殺菌し、その後該内容物を封止して流通させるための包装容器であって、上方に開口を有し且つ内容物を収容する収容部と、前記収容部の開口縁から外向きに延びるフランジ部と、を含む容器本体を備え、前記フランジ部は、前記開口を覆う蓋部材と一次シール工程において一次シールされる一次シール領域と、前記蓋部材と一次シール工程の後の二次シール工程において二次シールされる二次シール領域とを有し、且つ、前記蓋部材と前記一次シール領域とがシールされた際に、前記蓋部材との間に外部と前記収容部内との間で気体が流通可能な流通路が形成され、前記蓋部材と前記二次シール領域とがシールされた際に、前記流通路が閉塞されるように構成されている、ことを特徴とする。
【0015】
また、前記包装容器の前記フランジ部には、前記一次シール領域よりも内側に前記フランジ部を貫通した少なくとも一つの貫通孔が設けられ、前記貫通孔が、前記流通路の一部となるように構成されてもよい。
【0016】
さらに、前記包装容器では、前記貫通孔は、前記フランジ部の一部に裂け目が形成されることにより形成されてもよい。
【0017】
また、前記包装容器では、前記フランジ部は、前記裂け目を境界として前記フランジ部の一部が上方に向けて変形されることによって形成されるフランジ最上部を有し、該フランジ最上部により支持される前記蓋部材と前記フランジ部との間に前記流通路が形成されてもよい。
【0018】
さらに、前記包装容器では、前記上方に向けて変形される前記フランジ部の一部が、上方に向けて膨出した湾曲面を有していてもよい。
【0019】
また、前記包装容器では、前記フランジ部は、上面が該フランジ部の上面のうち最も上方に位置するフランジ最上部を有し、該フランジ最上部により支持される前記蓋部材と前記フランジ部との間に前記流通路が形成されるようにしてもよい。
【0020】
また、前記包装容器では、前記フランジ部が、前記収容部の開口縁の全周に設けられ、前記貫通孔は複数設けられるとともに、前記収容部を挟む対向位置に配置されてもよい。
【0021】
また、前記包装容器では、前記一次シール領域の上面は、前記フランジ部の上面のうち最も上方に位置し、前記二次シール領域の上面は、前記一次シール領域の上面よりも下方に位置し、前記フランジ部は、前記蓋部材と前記一次シール領域とがシールされた際に、前記二次シール領域の上面と前記蓋部材の下面との間に隙間が形成されるように構成され、前記隙間が、前記流通路の一部となるように構成されてもよい。
【0022】
また、前記包装容器では、前記収容部は、内容物が載置される底板を含み、前記底板の上面は、凹凸形状を有してもよい。
【0023】
本発明の包装容器は、さらに蓋部材を備え、前記容器本体及び前記蓋部材は、少なくとも一層のガスバリア層を含む多層構造体から構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A図1Aは、本発明の包装容器の一実施形態に係る模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図1B図1Bは、前記包装容器の一実施形態に係る模式図であり、前記包装容器の側面図である。
図2図2は、図1AのII-II位置における断面図である。
図3図3は、前記包装容器の製造方法における各工程を示す図である。
図4A図4Aは、前記包装容器の貫通孔形成工程及び食品収容工程後の模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図4B図4Bは、前記包装容器の貫通孔形成工程及び食品収容工程後の模式図であり、前記包装容器の側面図である。
図5図5は、図4AのV-V位置における断面図である。
図6A図6Aは、前記包装容器の一次シール工程後の模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図6B図6Bは、前記包装容器の一次シール工程後の模式図であり、前記包装容器の側面図である。
図7図7は、図6AのVII-VII位置における断面図である。
図8A図8Aは、前記包装容器の二次シール工程後の模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図8B図8Bは、前記包装容器の二次シール工程後の模式図であり、前記包装容器の側面図である。
図9図9は、図8AのIX-IX位置における断面図である。
図10A図10Aは、本発明の包装容器の別実施形態に係る模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図10B図10Bは、本発明の包装容器の別実施形態に係る模式図であり、図10AのX-X位置における断面図である。
図11A図11Aは、前記包装容器の貫通孔形成工程後の模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図11B図11Bは、前記包装容器の貫通孔形成工程後の模式図であり、図11AのXI-XI位置における断面図である。
図12A図12Aは、本発明の包装容器の別実施形態に係る一次シール工程後の模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図12B図12Bは、本発明の包装容器の別実施形態に係る一次シール工程後の模式図であり、図12AのXII-XII位置における断面図である。
図13A図13Aは、前記包装容器の別実施形態に係る二次シール工程後の模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図13B図13Bは、前記包装容器の別実施形態に係る二次シール工程後の模式図であり、図13AのXIII-XIII位置における断面図である。
図14A図14Aは、図12Aに示す包装容器の二次シール工程後の模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図14B図14Bは、図12Aに示す包装容器の二次シール工程後の模式図であり、図14AのXIV-XIV位置における断面図である。
図15A図15Aは、本発明の包装容器の別実施形態に係る一次シール工程後の模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図15B図15Bは、本発明の包装容器の別実施形態に係る一次シール工程後の模式図であり、図15AのXV-XV位置における断面図である。
図16A図16Aは、前記包装容器の別実施形態に係る二次シール工程後の模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図16B図16Bは、前記包装容器の別実施形態に係る二次シール工程後の模式図であり、図16AのXVI-XVI位置における断面図である。
図17A図17Aは、本発明の包装容器の別実施形態に係る模式図であり、貫通孔形成工程前の前記包装容器の平面図である。
図17B図17Bは、本発明の包装容器の別実施形態に係る模式図であり、貫通孔形成工程後の前記包装容器の平面図である。
図18A図18Aは、本発明の包装容器の別実施形態に係る一次シール工程後の模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図18B図18Bは、本発明の包装容器の別実施形態に係る一次シール工程後の模式図であり、図18AのXVIII-XVIII位置における断面図である。
図19A図19Aは、前記包装容器の二次シール工程後の模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図19B図19Bは、前記包装容器の二次シール工程後の模式図であり、図19AのXIX-XIX位置における断面図である。
図20A図20Aは、本発明の包装容器の別実施形態に係る一次シール工程後の模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図20B図20Bは、本発明の包装容器の別実施形態に係る一次シール工程後の模式図であり、図20AのXX-XX位置における断面図である。
図21A図21Aは、本発明の包装容器の別実施形態に係る一次シール工程後の模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図21B図21Bは、本発明の包装容器の別実施形態に係る一次シール工程後の模式図であり、図21AのXXI-XXI位置における断面図である。
図22A図22Aは、本発明の包装容器の別実施形態に係る一次シール工程後の模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図22B図22Bは、本発明の包装容器の別実施形態に係る一次シール工程後の模式図であり、図22AのXXII-XXII位置における断面図である。
図23A図23Aは、前記包装容器の二次シール工程後の模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図23B図23Bは、前記包装容器の二次シール工程後の模式図であり、図23AのXXIII-XXIII位置における断面図である。
図24A図24Aは、本発明の包装容器の別実施形態に係る貫通孔形成工程後の模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図24B図24Bは、本発明の包装容器の別実施形態に係る貫通孔形成工程後の模式図であり、図24AのXXIV-XXIV位置における断面図である。
図25A図25Aは、本発明の包装容器の別実施形態に係る貫通孔形成工程後の模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図25B図25Bは、本発明の包装容器の別実施形態に係る貫通孔形成工程後の模式図であり、図25AのXXV-XXV位置における断面図である。
図26A図26Aは、本発明の包装容器の別実施形態に係る貫通孔形成工程後の模式図であり、図24Aの変形例を示す平面図である。
図26B図26Bは、本発明の包装容器の別実施形態に係る貫通孔形成工程後の模式図であり、図25Aの変形例を示す一部平面図である。
図27A図27Aは、本発明の包装容器の別実施形態に係る貫通孔形成工程後の模式図であり、図24の変形例を示す断面図である。
図27B図27Bは、本発明の包装容器の別実施形態に係る貫通孔形成工程後の模式図であり、図25Aの変形例を示す断面図である。
図28A図28Aは、本発明の包装容器の別実施形態に係る貫通孔形成工程後の模式図であり、前記包装容器の平面図である。
図28B図28Bは、本発明の包装容器の別実施形態に係る貫通孔形成工程後の模式図であり、図28AのXXVIII-XXVIII位置における断面図である。
図29A】前記包装容器における貫通孔形成工程を説明するための断面図であり、貫通孔形成工程前の状態を示す。
図29B】前記包装容器における貫通孔形成工程を説明するための断面図であり、フランジ部に裂け目を形成する工程を示す。
図29C】前記包装容器における貫通孔形成工程を説明するための断面図であり、フランジ最上部を形成する工程を示す。
図29D】前記包装容器における貫通孔形成工程を説明するための断面図であり、フランジ最上部形成後の状態を示す。
図30A図30Aは、本発明の包装容器の別実施形態に係る模式図であり、貫通孔形成工程前の前記包装容器の平面図である。
図30B図30Bは、本発明の包装容器の別実施形態に係る模式図であり、図30Aの断面図である。
図30C図30Cは、本発明の包装容器の別実施形態に係る模式図であり、貫通孔形成工程後の断面図である。
図31A図31Aは、本発明の包装容器の別実施形態に係る模式図であり、貫通孔形成工程前の前記包装容器の平面図である。
図31B図31Bは、本発明の包装容器の別実施形態に係る模式図であり、図31Aの断面図である。
図31C図31Cは、本発明の包装容器の別実施形態に係る模式図であり、貫通孔形成工程後の断面図である。
図32A図32Aは、本発明の包装容器の別実施形態に係る貫通孔形成工程後の模式図であり、第一の変形例を示す模式図である。
図32B図32Bは、本発明の包装容器の別実施形態に係る貫通孔形成工程後の模式図であり、第二の変形例を示す模式図である。
図32C図32Cは、本発明の包装容器の別実施形態に係る貫通孔形成工程後の模式図であり、第三の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について、図1図9を参照しつつ説明する。図1及び図2は、本発明に係る包装容器の一実施形態を示した図である。また、図3は本発明に係る包装食品の製造方法の一実施形態を説明するための図であり、図4図9はこの製造方法の各工程を順に示した図である。
【0026】
まず、本発明の一実施形態に係る包装容器の構造について説明する。本実施形態に係る包装容器は、内部に収容された内容物の一例としての食品を、殺菌用ガスの一例としての加熱蒸気に晒すことで殺菌し、その後該内容物(例えば、食品)を封止して包装食品として流通させるための殺菌処理用の包装容器である。図1及び図2に示すように、包装容器1は、上方に開口20を有する収容部2と、収容部2の開口縁21から外向きに延びるフランジ部3とを含む容器本体4を備える。
【0027】
以下、包装容器1における上下方向は、図1図2図4図9における上下方向と一致している。また、フランジ部3における内側及び外側は、フランジ部3における開口縁21から近い側及び遠い側と一致している。
【0028】
容器本体4は、図1A及び図1Bに示すように、蓋部材により閉塞可能な容器である。本実施形態の容器本体4は、トレー形状であるが、カップ形状、ボトル形状等、任意の形状のものを採用することができる。また、容器本体4の材質は、合成樹脂である。容器本体4の厚みは、部位によって不均一であるが、いずれの部位においても同じであってもよい。本実施形態の容器本体4では、フランジ部3の厚みが、収容部2の厚みよりも大きい。なお、本実施形態の容器本体4では、収容部2及びフランジ部3は、一部材で構成されている。具体的に、容器本体4は、一枚のシートを成形することで構成されている。
【0029】
また、本実施形態の蓋部材は、柔軟性を有する。蓋部材は、例えば、合成樹脂製のフィルム材で構成される。具体的に、蓋部材を構成するフィルム材は、二軸延伸されたプラスチック製のフィルム材である。
【0030】
収容部2は、食品を収容する部位である。本実施形態の収容部2は、下方に位置する底板22を含む。また、収容部2は、底板22の外周縁から上方に延びる側壁23を含む。
【0031】
底板22は、例えば、角が丸められた矩形板状である。また、底板22は、食品と接触する底板上面220と、容器本体4を載置面に載置する際にこの載置面に載置される面である底板下面221とを有する。
【0032】
底板上面220は、凹凸形状を有する。具体的に、底板上面220の四つの角部を除く中央部には、底板上面220から上方に向けて突設された複数の底板突起部222が設けられている。また、底板上面220の四つの角部は、それぞれ角部の頂点に近い部位ほど上方に位置する底板傾斜面223で構成されている。
【0033】
底板突起部222の各々は、略均等または不均等の間隔に配置されている。一対の底板突起部222、222の間には蒸気が流通する蒸気流通部が形成されている。底板突起部222は、容器本体4に収容される内容物を、例えば点接触または線接触の様式で支持している。また、突起物222は、底板突起部222と内容物との間の接触面積が可能な限り低減されるように設計されている。
【0034】
図1Aに示す実施形態では、底板突起部222、222の間に形成された複数の蒸気流通部が略均等の間隔で配置されている。このような構成によれば、容器本体4に収容された内容物(例えば、食品)を蒸気で殺菌する際、底部に形成された蒸気流通路を通って、内容物の上面および側面だけでなく、当該内容物の下面からも蒸気を流入させることができる。これにより、蒸気による内容物のより均等かつ効率的な殺菌が可能となる。
【0035】
底板突起部222の高さは、必ずしも限定されないが、容器底部の内側最下面(すなわち、容器本体4の内表面における最も下方の高さ)を基準にして、例えば2mm以上、3mm以上、または4mm以上である。そして底板突起部222の高さは、必ずしも限定されないが、容器底部の内側最下面を基準にして、例えば、15mm以下、13mm以下、または10mm以下である。底板突起部222の高さがこのような範囲内にあることにより、蒸気流通路に蒸気がより一層流入し易くなり、内容物の下面側の蒸気殺菌をより効果的に行うことができる。
【0036】
底板突起部222の高さは、容器本体4の深さ(すなわち、容器本体4の開口20から鉛直方向における内表面の最も下方の部分までの距離)の10%以上40%以下であることが好ましい。当該構成によれば、蒸気流通路の断面積が増加するため、蒸気流通路に蒸気がより一層流入しやすくなり、内容物の下面側の蒸気殺菌をより効果的に行うことができる。
【0037】
底板傾斜面223は、収容部2の角部をなくすために設けられている。例えば、底板傾斜面223は、収容部2内に収容された食品を取り出す際に、この食品が底板22の角部近傍に溜まることを防ぎ、この食品を収容部2から取り出しやすくする。また、底板傾斜面223は、底板突起部222と間隔をあけた状態で配置されている。
【0038】
側壁23は、例えば、上方に位置する部位ほど平面視において広がるように構成されている。側壁23の上端縁は、収容部2の開口縁21を構成している。
【0039】
フランジ部3は、蓋部材とシールされる部位である。フランジ部3は、例えば、開口縁21の周方向の全周に設けられている。本実施形態のフランジ部3は、略板状であり、平面視において収容部2を囲むように環状に配置されている。具体的には、フランジ部3は、平面視において四か所の角部を有する環状である。
【0040】
また、フランジ部3は、図2に示すように、上方を向いたフランジ上面30と、下方を向いたフランジ下面35と、を有する。さらに、フランジ部3は、開口20を覆う蓋部材と一次シール工程においてシールされる一次シール領域31と、蓋部材と二次シール工程においてシールされる二次シール領域32と、を有する。また、フランジ部3は、フランジ最上部33と、フランジ下部34と、を有する。フランジ最上部33は、フランジ上面30のうち最も上方に位置するフランジ最上部上面330を有する。フランジ下部34は、フランジ最上部上面330よりも下方に位置するフランジ下部上面340を有する。
【0041】
本実施形態のフランジ部3は、フランジ部3を貫通する貫通孔が設けられる貫通領域36を有する(図1A参照)。本実施形態では、貫通孔、即ち貫通領域36は、一次シール領域31よりも内側に位置する。貫通領域36に設けられる貫通孔は、フランジ下面35とフランジ上面30との間を貫通する。また、本実施形態のフランジ部3では、貫通領域36が複数設けられている。
【0042】
なお、フランジ部3に設けられる貫通領域36の数は、一つでもよいが、フランジ部3内に気体を流入させる貫通孔、及び、フランジ部3内から気体を流出させる貫通孔の両方をフランジ部3に設けることが好ましいため、複数であることが好ましい。具体的には、このフランジ部3では、貫通領域36がフランジ部3の角部の数と同じ数(例えば本実施形態では四つ)設けられている。
【0043】
一次シール領域31は、フランジ部3の一部であり、蓋部材とフランジ部3とを一次シール工程によって仮シールするための領域である。一次シール工程は、収容部2に食品を収容した後であって収容した食品の殺菌前に行われる。
【0044】
本実施形態の一次シール領域31は、フランジ部3の外周部に位置している。また、一次シール領域31は、開口縁21の周方向において連続している。具体的には、一次シール領域31は、フランジ部3の外周部における外周縁よりも内側で、周方向において連続して延びている。より具体的には、一次シール領域31は、フランジ部3の外周部における外周縁よりも内側で、開口縁21の周方向全周に亘って連続して延びている。
【0045】
二次シール領域32は、密封工程としての二次シール工程において、蓋部材とフランジ部3とがシールされる領域である。二次シール工程は、収容部2に収容した食品を殺菌した後に行われる。二次シール領域32は、フランジ部3の少なくとも一部である。さらに、二次シール領域32は、一次シール領域31と重複する(同じ)領域を含んでいてもよい。本実施形態の二次シール領域32は、フランジ部3の全域である。
【0046】
フランジ部3の上面30の上下方向における位置(高さ)は、フランジ部3がフランジ最上部33やフランジ下部34を含むことにより不均一になっている(図1B参照)。
【0047】
フランジ最上部33は、上面が相対的に上方に位置する部位である。本実施形態のフランジ最上部上面330は、フランジ下部上面340よりも例えば、1mm以上上方に位置している。該フランジ最上部33は、一次シール工程を行った後であって二次シール工程を行う前に、蓋部材をフランジ下部上面340よりも上方に支持しうる。
【0048】
具体的には、フランジ最上部33は、フランジ部3を部分的に下方から上方に向けて押し出すことで形成される凸部である。これにより、フランジ最上部上面330は、上方に向けて突出している。本実施形態のフランジ最上部33は、中空であるが、中実であってもよい。
【0049】
本実施形態のフランジ部3には、異なる形状のフランジ最上部33が設けられている。具体的には、図1Aに示すように、フランジ最上部33は、平面視において楕円形状を有する第一フランジ最上部33Aと、平面視において円形状を有する第二フランジ最上部33Bと、を含む。第一フランジ最上部33Aおよび第二フランジ最上部33Bは、いずれも、フランジ最上部上面330が湾曲面状を有する凸部である。また、第一フランジ最上部33Aおよび第二フランジ最上部33Bは、いずれも、高さ(上下方向における寸法)が、平面視における外径よりも小さい凸部である。
【0050】
また、本実施形態のフランジ最上部33は、貫通領域36の近傍に設けられている。例えば、フランジ最上部33の少なくとも一つは、貫通領域36よりも内側に設けられている。本実施形態のフランジ最上部33は、全て、貫通領域36よりも内側に設けられている。具体的には、フランジ最上部33は、各貫通領域36の内側に複数(例えば、一対ずつ)設けられている。フランジ最上部33は、各貫通領域36に対応するようにその内側に一つずつ設けられていてもよいが、一次シール工程を行った後に、蓋部材を複数のフランジ最上部33で支持することが好ましいため、複数設けられることが好ましい。
【0051】
フランジ下部34は、上面が相対的に下方に位置する部位である。本実施形態のフランジ下部34は、フランジ部3のうち前記フランジ最上部33を除いた部位である。
【0052】
貫通領域36は、例えば、収容部2を挟む対向位置に配置されている。フランジ部3が四か所に角部を有する環状である場合、貫通領域36は、平面視においてフランジ部3の各角部にそれぞれ1か所ずつ、合計4か所に形成することが好ましい。各貫通領域36の形状は、いずれも等しくすることが好ましい。
【0053】
また、本実施形態において、貫通領域36は、下方に凹んだ凹部である。また、貫通領域36は、平面視において円形状である。具体的には、貫通領域36は、下方に向かって略半球状に凹んだ凹部である。
【0054】
本実施形態における貫通領域36の凹部には、さらに溝部360が形成されている。具体的には、貫通領域36の上面361は、下方に向けて凹んでおり該上面361には下方に凹んだ溝部360が設けられている。
【0055】
溝部360の形状は、例えば、貫通領域36のうち最も下に位置する点である最下点において交差する(例えば、この最下点において略直交する)十字状である。換言すると、溝部360は、平面視において、貫通領域36の中心から放射状に広がる形状を有する。溝部360の幅(溝部360の延びる方向と直交する方向における寸法)は、例えば、0.5mmである。
【0056】
次に、本発明に係る包装容器を用いた処理対象物の殺菌処理方法について説明する。一実施形態における殺菌処理方法は、食品を内容物とし、主たる工程として、食品収容工程、貫通孔形成工程、一次シール工程、殺菌工程、及び、二次シール工程を順に行う。より具体的には、図3に示すように、食品収容工程、貫通孔形成工程、一次シール工程、脱気工程、殺菌工程、冷却工程、ガス置換工程、及び、二次シール工程を順に行う。以下、この一実施形態における各工程について説明する。また、本実施形態の方法としては、上記実施形態の包装容器1を用いた場合について説明する。
【0057】
まず、図4A及び図4Bに示すように、包装容器1に食品Fを収容する食品収容工程を行った後に、フランジ部3の一次シール領域31よりも内側に、貫通領域36を貫通する貫通孔38を形成する貫通孔形成工程を行う。食品Fとしては、例えば、日配食品、即ち食品工場等で調理、加工された食品やチルド加工食品等の任意の食品を採用することができる。
【0058】
本実施形態の貫通孔38は、図5に示すように、貫通領域36の一部に、裂け目380が形成されることにより形成される。本実施形態の貫通孔形成工程においては、貫通領域36は、貫通領域36の外周縁363がフランジ部3の貫通領域36の周囲の領域と連続した状態で、この周囲の領域よりも下方に位置した状態となる。換言すると、貫通領域36は、貫通領域36の外周縁363を境界にしてフランジ部3の貫通領域36の周囲の領域よりも下方に位置した状態となる。
【0059】
なお、本実施形態の貫通孔形成工程では、裂け目380は、貫通領域36を上方から裂くことにより形成される。裂け目380を形成する際には、例えば、先端に穿孔針を備えた穿孔用治具(図示せず)を用い、該穿孔針を貫通領域36に突き刺す方法を採用することができる。穿孔針は、貫通領域36に設けられた溝部360により案内されて、貫通領域36の最下点に刺さり、貫通領域36は溝部360に沿って裂ける。その結果、貫通領域36は、十字状の裂け目380を境界に四つの部位に分かれる。
【0060】
続いて、図6A図6B、及び、図7に示すように、収容部2の開口20を覆う蓋部材5と、フランジ部3の一次シール領域31とをシールする一次シール工程を行った後、フランジ部3と蓋部材5との間に形成される流通路Rを介して収容部2内に加熱蒸気Sを流通させて、食品Fを加熱蒸気Sに晒すことで殺菌する殺菌工程を行う(図7参照)。本実施形態の一次シール工程は、フランジ部3の外周部である一次シール領域31と蓋部材5とを、フランジ部3の外周部の周方向において線状にシールする工程である(図6A参照)。また、この一次シール工程において、蓋部材5は、例えばヒートシール機(図示せず)を用いることにより一次シール領域31に熱溶着される。
【0061】
なお、本実施形態では、殺菌工程を株式会社日阪製作所製、短時間調理殺菌装置RIC(以下、単にRICともいう)を用いて行う場合について説明する。ここで、短時間調理殺菌装置RIC(図示せず)とは、処理対象となる容器入りの食品を収容可能な処理槽と、該処理槽へ蒸気を供給する蒸気供給装置と、該処理槽内を脱気して真空状態とする減圧装置と、該処理槽内を加熱する加熱装置とを備えたものである。
【0062】
本実施形態では、殺菌工程の前に収容部2内を脱気する脱気工程を行う。脱気工程を行う際には、トレー上に食品Fを収容し蓋部材5を一次シールした包装容器1を複数個並べ、さらに該トレーを上下方向に複数段積み重ねた状態でRICを構成する処理槽内に収容する。処理槽の蓋を閉じて処理槽を密封した後、該処理槽内を真空状態まで脱気する。処理槽内が真空状態まで脱気されると、流通路Rを介して収容部2内の空気も脱気され、収容部2内も処理槽内と同じ真空状態となる。
【0063】
殺菌工程では、処理槽内に加熱蒸気Sを供給するとともに処理槽内の温度を、例えば、100℃~145℃とする。処理槽内に供給された加熱蒸気Sは、フランジ部3の下方から流通路R(貫通孔38及び隙間C)を介して、収容部2内に流通する。これにより、収容部2内に収容された食品Fは、加熱蒸気Sにより殺菌される。
【0064】
本実施形態では、殺菌工程の後に食品Fを冷却する冷却工程を行う。冷却工程では、前記処理槽内を減圧して加熱蒸気Sを排出し、さらに該処理槽内を真空状態とすることで該水分が蒸発して食品Fから潜熱が奪われ、食品Fが冷却される。
【0065】
さらに、冷却工程の後、前記処理槽の蓋をあけて食品Fが収容された包装容器1をトレーとともに取り出す。
【0066】
その後、好ましくはガス置換工程を実施する。該ガス置換工程では、流通路Rを介して収容部2内に、窒素ガスや炭酸ガスなどの不活性ガスを供給する。
【0067】
なお、本実施形態のガス置換工程及び二次シール工程は、包装容器1がヒートシール機の金型に載置された状態で行われる。該金型には、包装容器1を載置したときに容器本体4に形成された貫通孔38を介して不活性ガスを供給可能な供給路が設けられている。本実施形態のガス置換工程では、4か所の貫通孔38のうちの何れか一つの貫通孔38に金型の供給路を介して不活性ガスが供給される。また、該金型には、残る3つの貫通孔38に対応する位置にも空気排出用の排出路が形成されており、供給された不活性ガスにより押しだされた包装容器1内の空気は、該排出路を介して外部へと放出される。
【0068】
ガス置換工程を行った後、図8A及び図8Bに示すように、蓋部材5と二次シール領域32とをシールする二次シール工程を行う。これにより、包装容器1と蓋部材5と食品Fとで構成される包装食品6が得られる。
【0069】
本実施形態の二次シール工程は、フランジ部3の外周部である二次シール領域32と蓋部材5とを、面状にシールする工程である。二次シール工程において、蓋部材5は、ヒートシール機(図示せず)を用いることにより二次シール領域32に熱溶着される。
【0070】
本実施形態では、ヒートシール機は、容器本体4が載置されガス置換を行った前記金型(受け金型)と、上方から蓋部材5を押さえる金型(ヒートシール用金型)と、を備えており、二次シール工程は、ガス置換後受け金型に包装容器を載置したまま速やかにシールを行うため、包装容器1内の酸素濃度を極めて低い状態に維持することができる。
【0071】
なお、包装容器1の二次シール領域32はフランジ部3の全域であるため、二次シールを行う際に、フランジ部3の全域は上下方向から加圧されて、図9に示すように、貫通孔38が閉塞されるとともに、フランジ最上部33も潰れて隙間Cも閉塞される。本実施形態の包装容器1では、二次シール後の包装容器1において、貫通孔38は蓋部材5のみにより閉塞されているが、二次シールを行う際に、上面が平坦面となっている金型にフランジ部3を載置した状態で、フランジ部3の全域を上下方向から加圧することにより、二次シール後の包装容器1において、貫通孔38が蓋部材5に加えて変形した(潰れた)貫通領域36により閉塞されてもよい。また、二次シールを行う際に、フランジ部3のうちフランジ最上部33を除く全域を上下方向から加圧してもよい。この場合、フランジ最上部33は潰れず残った状態で、隙間Cが閉塞される。
【0072】
以上の包装容器1は、例えば、収容部2に食品Fを収容し、フランジ部3の貫通領域36に貫通孔38を設けた後に、蓋部材5とフランジ部3の一次シール領域31をシールし、さらに、収容部2内に流通路Rを介して加熱蒸気Sを流通させて食品Fを殺菌した後、蓋部材5とフランジ部3の二次シール領域32とをシールするような包装食品6の包装容器1として好適に使用できるものである。
【0073】
この包装容器1では、フランジ部3の一次シール領域31よりも内側に貫通孔38が設けられると、この貫通孔38が流通路Rの一部を構成する。また、一次シール領域31と蓋部材5とがシールされると、フランジ下部34と蓋部材5との間に隙間Cが生じて、この隙間Cが流通路Rの一部を構成する。よって、食品Fを殺菌する際に、加熱蒸気Sがフランジ部3の下方から、貫通孔38及び隙間Cにより構成される流通路Rを介して収容部2内に流通することで、収容部2内の食品Fの殺菌が可能である。
【0074】
特に、この包装容器1では、フランジ下部上面340よりもフランジ最上部上面330が上方に位置することから、食品Fを殺菌する際に、フランジ最上部33が流通路Rに含まれる隙間Cを保持する。そのため、フランジ最上部33によりこの隙間Cが閉塞されない状態を確実に維持した状態で、加熱蒸気Sを収容部2内に流通させることができる。
【0075】
さらに、この包装容器1では、流通路Rの上に蓋部材5が位置する、即ち、流通路Rが蓋部材5上に露出しないため、落下菌が流通路Rを介して包装容器1内に混入しにくい。また、二次シール領域32が蓋部材5とシールされることで流通路Rが閉塞されるように構成されているので、蓋部材5と容器本体4との二次シールにより、包装容器1が食品Fを完全に封止できる。
【0076】
本実施形態の包装容器1では、貫通領域36の一部に裂け目380を形成することで貫通孔38を設けると(図5参照)、貫通孔38の形成時にフランジ部3の一部が破断することがなくフランジ部3の破片が生じない。よって、収容部2内にフランジ部3の破片が混入することを防止できる。
【0077】
また、本実施形態の包装容器1では、貫通領域36が下方に凹んだ凹部であるため(図2参照)、貫通孔38を形成する際に、この凹んだ貫通領域36に穿孔針を突き刺すことで、貫通領域36の穿孔された部位が、フランジ部3の他の領域よりも下方に位置したままで保持され(図5参照)、この下方に位置した状態から上方に戻りにくい。これにより貫通孔38が閉塞されることを防ぐことができ、フランジ部3の二次シール領域と蓋部材5とがシールされるまで、貫通孔38の貫通状態を維持することができる。
【0078】
さらに、本実施形態の包装容器1では、収容部2を挟む位置に貫通領域36が配置されているため(図1A参照)、この位置に貫通孔38を設けると、貫通孔38を介して収容部2の両側から気体を流通させることにより(図4A参照)、食品Fの加熱むらを抑制できる。
【0079】
なお、本実施形態で用いられる容器本体4及び蓋部材5は、ガスバリア層を有することが好ましい。即ち、容器本体4及び蓋部材5は、少なくとも一層の酸素バリア層を含む多層構造体から構成されていることが好ましい。容器本体4及び蓋部材5がガスバリア層を備えることで、殺菌処理後の好気性菌の増殖をより効率的に抑えられるため、角実施形態で達成される品質保持期間をより長くすることができる。前記ガスバリア層としては、酸素バリア層が考えられる。
【0080】
酸素バリア層は、気体の透過を防止する機能を有する層であり、例えば、20℃、65%RH条件下にて、JIS-K7126-2(2006年)第2部(等圧法)に準拠して測定した酸素透過度が100cc・20μm/(m2・day・atm)以下の層であり、好ましくは50cc・20μm/(m2・day・atm)以下、より好ましくは10cc・20μm/(m2・day・atm)以下の層である。ここで、「10cc・20μm/(m2・day・atm)」の酸素透過度とは、20μmのバリア材(酸素バリア層単独で構成される場合をいう)において、酸素1気圧下での1日の酸素透過量が10ccであることを言う。
【0081】
上記酸素バリア層は、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」ともいう。)、リンおよび多価金属元素を含む複合構造体、加工デンプン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、無機層状化合物、無機蒸着層、金属箔等のガスバリア材を含む。特に、良好な酸素バリア性および溶融成形性を有するという理由から、上記酸素バリア層は、EVOH、ポリアミド、および加工デンプン、またはそれらの組み合わせを含むことが好ましく、特に優れた溶融成形性を有しているとの理由から、EVOHを含むことがより好ましい。
【0082】
(EVOH)
EVOHは、例えば、エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化することにより得ることができる。エチレン-ビニルエステル共重合体の製造およびケン化は、公知の方法により行うことができる。当該方法に用いることができるビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、およびバーサティック酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルが挙げられる。
【0083】
本発明において、EVOHのエチレン単位含有量は、例えば、20モル%以上、22モル%以上、または24モル%以上であることが好ましい。また、EVOHのエチレン単位含有量は、例えば、60モル%以下、55モル%以下、または50モル%以下であることが好ましい。エチレン単位含有量が20モル%以下であると、その溶融形成性および高温下での酸素バリア性が向上する傾向にある。エチレン単位含有量が60モル%以下であると、酸素バリア性が向上する傾向にある。このようなEVOHにおけるエチレン単位含有量は、例えば、核磁気共鳴(NMR)法によって測定することができる。
【0084】
本発明において、EVOHのビニルエステル成分のケン化度は、例えば、80モル%以上、90モル%以上、または99モル%以上であることが好ましい。ケン化度を80モル%以上とすることによって、例えば、上記酸素バリア層の酸素バリア性を高めることができる。他方、EVOHのビニルエステル成分のケン化度は、例えば、100%以下、99.99%以下であってもよい。EVOHのケン化度は、1H-NMR測定によってビニルエステル構造に含まれる水素原子のピーク面積と、ビニルアルコール構造に含まれる水素原子のピーク面積とを測定して算出され得る。EVOHのケン化度が上記範囲内にあることにより、容器本体4や蓋部材5を構成する酸素バリア層に良好な酸素バリア性を提供することができる。
【0085】
EVOHはまた、本発明の目的が阻害されない範囲において、エチレンならびにビニルエステルおよびそのケン化物以外の他の単量体由来の単位を有していてもよい。EVOHがこのような他の単量体単位を有する場合、EVOHの全構造単位に対する当該他の単量体単位の含有量は、例えば、30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下または5モル%以下である。さらに、EVOHが当該他の単量体由来の単位を有する場合、その含有量は、例えば、0.05モル%以上または0.1モル%以上である。
【0086】
こうしたEVOHが有していてもよい他の単量体としては、例えば、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン等のアルケン;3-アシロキシ-1-プロペン、3-アシロキシ-1-ブテン、4-アシロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-1-ブテン、3-アシロキシ-4-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-1-ブテン、3-アシロキシ-4-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-3-メチル-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-1-ペンテン、5-アシロキシ-1-ペンテン、4,5-ジアシロキシ1-ペンテン、4-アシロキシ-1-ヘキセン、5-アシロキシ-1-ヘキセン、6-アシロキシ-1-ヘキセン、5,6-ジアシロキシ-1-ヘキセン、1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン等のエステル基含有アルケンまたはそのケン化物;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和酸またはその無水物、塩、またはモノもしくはジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸またはその塩;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β-メトキシ-エトキシ)シラン、γ-メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等のビニルシラン化合物;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0087】
EVOHは、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の手法を経て変性されたEVOHであってもよい。このように変性されたEVOHは上記酸素バリア層の溶融成形性を向上させる傾向にある。
【0088】
EVOHとして、エチレン単位含有量、ケン化度、共重合体成分、変性の有無または変性の種類等が異なるEVOHを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0089】
EVOHは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法で得ることができる。1つの実施形態では、無溶媒またはアルコールなどの溶液中で重合が進行可能な塊状重合法または溶液重合法が用いられる。
【0090】
溶液重合法において用いられる溶媒は特に限定されないが、例えばアルコール、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコールである。重合反応液における溶媒の使用量は、目的とするEVOHの粘度平均重合度や溶媒の連鎖移動を考慮して選択すればよく、反応液に含まれる溶媒と全単量体との質量比(溶媒/全単量体)は例えば、0.01~10であり、好ましくは0.05~3である。
【0091】
そして、上記重合に用いられる触媒としては、例えば、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス-(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス-(2-シクロプロピルプロピオニトリル)等のアゾ系開始剤;イソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエイト、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエイト、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤などが挙げられる。
【0092】
重合温度は20℃~90℃が好ましく、40℃~70℃がより好ましい。重合時間は2時間~15時間が好ましく、3時間~11時間がより好ましい。重合率は、仕込みのビニルエステルに対して10%~90%が好ましく、30%~80%がより好ましい。重合後の溶液中の樹脂含有率は5%~85%が好ましく、20%~70%がより好ましい。
【0093】
上記重合では、所定時間の重合後または所定の重合率に達した後、必要に応じて重合禁止剤が添加され、未反応のエチレンガスを蒸発除去して、未反応のビニルエステルが取り除かれ得る。
【0094】
次いで、上記共重合体溶液にアルカリ触媒が添加され、上記共重合体がケン化される。ケン化の方法には、連続式および回分式のいずれも採用されてもよい。添加可能なアルカリ触媒の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属アルコラートなどが挙げられる。
【0095】
ケン化反応後のEVOHは、アルカリ触媒、酢酸ナトリウムや酢酸カリウムなどの副生塩類、その他不純物を含有する。このため、必要に応じて中和や洗浄することにより、これらを除去することが好ましい。ここで、ケン化反応後のEVOHを、所定のイオン(例えば、金属イオン、塩化物イオン)をほとんど含まない水(例えば、イオン交換水)で洗浄する際、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の副生塩類を完全に除去せず、その一部を残存させてもよい。
【0096】
EVOHは他の熱可塑性樹脂、金属塩、酸、ホウ素化合物、可塑剤、フィラー、ブロッキング防止剤、滑剤、安定剤、界面活性剤、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、乾燥剤、架橋剤、各種繊維などの補強材、他の成分を含有していてもよい。上記酸素バリア層の熱安定性や他樹脂との接着性が良好であるという理由から、金属塩および酸を含むことが好ましい。
【0097】
上記金属塩は、層間接着性を向上させるという点でアルカリ金属塩を用いることが好ましく、熱安定性を向上させるという点ではアルカリ土類金属塩を用いることが好ましい。EVOHが金属塩を含有する場合、その含有量は、EVOHに対して当該金属塩の金属原子換算で、例えば、1ppm以上、5ppm以上、10ppm以上、または20ppm以上である。そして、EVOHが金属塩を含有する場合、その含有量は、EVOHに対して当該金属塩の金属原子換算で、例えば、10000ppm以下、5000ppm以下、1000ppm以下、または500ppm以下である。金属塩の含有量が上記下限および上限で構成される範囲内にあることにより、上記酸素バリア層の層間接着性を良好に保持しつつ、容器本体4をリサイクルする際のEVOHの熱安定性を良好に保つ傾向がある。
【0098】
上記酸としては、例えば、カルボン酸化合物、リン酸化合物などが挙げられる。これらの酸は、EVOHを溶融成形する際の熱安定性を高めることができる点で有用である。EVOHがカルボン酸化合物を含有する場合、カルボン酸の含有量(すなわち、EVOHを含む酸素バリア層の乾燥組成物中のカルボン酸の含有量)は、例えば、1ppm以上、10ppm以上、または50ppm以上である。そして、カルボン酸化合物の含有量は、例えば、10000ppm以下、1000ppm以下、または500ppm以下である。EVOHがリン酸化合物を含有する場合、リン酸の含有量(すなわち、EVOHを含む酸素バリア層のリン酸化合物のリン酸根換算含有量)は、例えば、1ppm以上、10ppm以上、または30ppm以上である。そして、リン酸化合物の含有量は、例えば、10000ppm以下、1000ppm以下、または300ppm以下である。EVOHがカルボン酸化合物またはリン酸化合物を上記範囲内で含有することにより、EVOHの溶融成形時の熱安定性が良好になる傾向がある。
【0099】
EVOHが上記ホウ素化合物を含有する場合、その含有量(すなわち、EVOHを含む酸素バリア層の乾燥組成物中のホウ素化合物のホウ素換算含有量)は、例えば、1ppm以上、10ppm以上、または50ppm以上である。そして、ホウ素化合物の含有量は、例えば、2000ppm以下、1000ppm以下、または500ppm以下である。EVOHがホウ素化合物またはリン酸化合物を上記範囲内で含有することにより、EVOHの溶融成形時の熱安定性が良好になる傾向がある。
【0100】
上記カルボン酸化合物、リン酸化合物、またはホウ素化合物を、EVOHを含む酸素バリア層に含有させるための方法は特に限定されず、例えばEVOHを含む組成物のペレット化の際にこれらを添加して混練してもよい。上記カルボン酸化合物、リン酸化合物、またはホウ素化合物の添加方法は特に限定されず、乾燥粉末として添加する方法、所定の溶媒を含浸させたペーストの状態で添加する方法、所定の液体に懸濁させた状態で添加する方法、所定の溶媒に溶解させて溶液として添加する方法、所定の溶液に浸漬させる方法などが挙げられる。特に、これらの化合物をEVOH中に均質に分散させることができるという理由から、所定の溶媒に溶解させて溶液として添加する方法および所定の溶液に浸漬させる方法を採用することが好ましい。このような方法で使用する溶媒は特に限定されないが、添加剤として添加されるこれら化合物の溶解性、コスト、取り扱いの容易さ、作業環境の安全性等を考慮すると、水であることが好ましい。
【0101】
多層構造体における酸素バリア層がEVOHを主成分として含有する場合、当該酸素バリア層におけるEVOHの割合は、例えば、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、または100質量%である。ここで、本明細書中に用いられる用語「酸素バリア層の主成分」とは、酸素バリア層を構成する成分の中で最も大きな質量%を有する成分を指して言う。
【0102】
多層構造体における酸素バリア層がEVOHを主成分として含有する場合、当該酸素バリア層の平均厚みは、例えば、3μm以上、5μm以上、または10μm以上である、そして、当該酸素バリア層の平均厚みは、例えば、100μm以下、または50μm以下である。ここで、本明細書中に用いられる用語「酸素バリア層の平均厚み」とは、多層構造体に含まれる上記EVOHを主成分として含有する酸素バリア層の全体の厚みの合計を当該酸素バリア層の層数で除した値を指して言う。酸素バリア層の平均厚みが上記範囲内にあることにより、本発明の包装容器を構成する容器本体4や蓋部材5の耐久性や柔軟性、外観特性が良好となる傾向がある。
【0103】
(リンおよび多価金属元素を含む複合構造体)
リンおよび多価金属元素を含む複合構造体は、リン化合物と多価金属の化合物とが反応することにより形成されるバリア層を有する。この構造体は、リン化合物を含む溶液と多価金属の化合物を含む溶液または分散液とを混合してコーティング剤を調製し、当該コーティング剤を基材上に塗布し、多価金属の化合物とリン化合物とを反応させることにより形成され得る。ここで、上記多価金属原子をMで表すと、多価金属原子Mとリン原子との間にはM-O-Pで表される結合が形成される。M-O-P結合は赤外吸収スペクトルにおける特性吸収帯が1080cm-1~1130cm-1の領域に観察することができ、当該複合構造体の赤外吸収スペクトルにおいて、800cm-1~1400cm-1の領域における最大吸収波数は1080cm-1~1130cm-1の範囲にあることが好ましい。複合構造体の最大吸収波数が上記範囲内にあると、当該複合構造体は優れた酸素バリア性を有する傾向にある。
【0104】
コーティング剤を塗布する基材としては特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂;布帛、紙類等の繊維集合体;木材;ガラス等が挙げられる。特に、熱可塑性樹脂および繊維集合体が好ましく、熱可塑性樹脂がより好ましい。基材の形態は特に制限されず、フィルムまたはシート等の層状であってもよい。基材としては、熱可塑性樹脂フィルムおよび紙からなるものがより好ましく、熱可塑性樹脂フィルムがさらに好ましい。熱可塑性樹脂フィルムとしてはポリエステルが好ましく、複合構造体に良好な機械強度を付与することができるという理由からポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0105】
多価金属元素としては、2分子以上のリン化合物が反応可能な多価金属元素であれば特に限定されず、任意の元素が使用され得る。例えば、多価金属元素は、半多価金属元素であってもよい。多価金属元素の例としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、珪素、チタン、ジルコニウムなどの元素が挙げられる。特にアルミニウムが好ましい。
【0106】
多価金属元素の化合物としては、リン化合物と反応して複合構造体を形成することができるものであれば特に限定されず、任意の化合物が使用され得る。また、多価金属化合物は溶剤に溶解した溶液として用いても、多価金属化合物の微粒子を溶剤に分散した分散液として用いてもよく、例えば、硝酸アルミニウムを多価金属化合物として含有する水溶液を用いることができる。
【0107】
さらに、多価金属化合物の微粒子を水または水性溶剤中に分散させて、分散液として用いてもよい。このような分散液としては、酸化アルミニウム微粒子の分散液が好ましい。一般に、多価金属酸化物の微粒子はその表面に水酸基を有しており、水酸基の存在によって上記リン化合物と反応して上記結合を形成することができる。多価金属酸化物の微粒子は、例えば、加水分解可能な特性基が金属原子に結合した化合物を原料として、これを加水分解し、この加水分解生成物を縮合させることで合成することができる。原料の例としては、塩化アルミニウム、アルミニウムトリエトキシド、およびアルミニウムイソプロポキシドが挙げられる。上記加水分解生成物を縮合させる方法としては、例えば、ゾルゲル法などの液相合成法が挙げられる。また、多価金属酸化物の微粒子は、例えば、球状、扁平状、多面体状、繊維状、または針状の形態を有することが好ましく、酸素バリア性を高めることができるという理由から、繊維状または針状の形態を有することが好ましい。さらに、多価金属酸化物微粒子の平均粒径は、酸素バリア性および透明性を高めるために、1nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0108】
リン化合物としては、多価金属の化合物と反応して上記結合を形成し得るものであれば特に限定されず、任意のリン化合物を使用することができる。リン化合物としては、例えば、リン酸系化合物およびその誘導体が挙げられる。具体的な例としては、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸が挙げられる。上記ポリリン酸としては、ピロリン酸、三リン酸、または4つ以上のリン酸が縮合したポリリン酸が挙げられる。また、リン酸系化合物の誘導体としては、リン酸塩、エステル(例えば、リン酸トリメチル)、ハロゲン化物、脱水物(例えば、五酸化リン)が挙げられる。
【0109】
このリン化合物は溶液として用いることができ、例えば、水を溶剤とする水溶液や、低級アルコール溶液のような親水性の有機溶剤を含む溶液として用いることができる。
【0110】
コーティング剤は、多価金属化合物の溶液または分散液と、リン化合物の溶液とを混合することにより得ることができる。上記コーティング剤には、その他の成分が添加されていてもよい。その他の成分の例としては、高分子化合物、金属錯体、粘度化合物、架橋剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤などが挙げられる。高分子化合物の例としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、多糖類(例えば、デンプン)、アクリル系ポリマー(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸-メタクリル酸共重合体)、およびそれらの塩、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸交互共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体のケン化物などが挙げられる。
【0111】
上記コーティング剤を塗布し、溶剤を除去乾燥して得られた塗布膜を、例えば、加熱処理することにより、多価金属化合物とリン化合物とを反応させて上記結合を形成して、リンおよび多価金属元素を含む複合構造体を形成することができる。加熱処理に採用される温度は110℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましく、170℃以上であることが特に好ましい。加熱処理に採用される温度が低い場合、十分な結合を形成するためには、より多くの時間を要することとなり生産性を低下させる場合がある。加熱処理に採用される温度の上限は、基材フィルムの種類によって異なり、例えば、240℃、または220℃である。また、加熱処理に要する時間は、例えば、0.1秒以上、1秒以上、または5秒以上である。また、加熱処理に要する時間は、例えば、1時間以下、15分以下、または5分以下である。なお、こうした加熱処理は、大気雰囲気下、窒素雰囲気下、またはアルゴン雰囲気下のいずれで行われてもよい。
【0112】
リンおよび多価金属元素を含む複合構造体を主成分として含有する酸素バリア層の一層の平均厚みの下限は、例えば、0.05μm以上、または0.1μm以上である。リンおよび多価金属元素を含む複合構造体を主成分として含有する酸素バリア層の一層の平均厚みは、例えば、4μm以下、または2μm以下である。なお、本明細書中に用いられる用語「リンおよび多価金属元素を含む複合構造体を主成分として含有する酸素バリア層の一層の平均厚み」とは、多層構造体に含まれる上記複合構造体を主成分として含有する酸素バリア層全体の厚みの合計を当該酸素バリア層の層数で除した値を指して言う。上記酸素バリア層の一層の平均厚みが上記下限よりも小さいと、均一な厚みの層を成形することが困難となり、得られる多層構造体の耐久性を低下させる場合がある。上記酸素バリア層の一層の平均厚みが上記上限を上回ると、得られる多層構造体の柔軟性、延伸性、熱性形成等が低下する場合がある。
【0113】
(加工デンプン)
加工デンプンの原料となるデンプンとしては特に限定されず、例えば、コムギ、トウモロコシ、タピオカ、ジャガイモ、コメ、エンバク、アロールート、およびエンドウ原料に由来するものが挙げられる。デンプンとしては、ハイアミロースデンプンが好ましく、ハイアミローストウモロコシデンプン、およびハイアミロースタピオカデンプンがより好ましい。
【0114】
加工デンプンは、上記デンプンをエーテル、エステルまたはこれらの組み合わせである官能基でヒドロキシ基が置換されるように化学的に改質したものであることが好ましい。加工デンプンとしては、上記デンプンを炭素数2~6のヒドロキシアルキル基を含むように改質したものであるか、または上記デンプンをカルボン酸無水物と反応させることにより改質したものであることが好ましい。加工デンプンが、上記デンプンを炭素数2~6のヒドロキシアルキル基を含むように改質したものである場合、上記加工デンプンの置換基としては、炭素数2~4の官能基を有していることが好ましく、例えば、ヒドロキシエーテル置換基を生成可能なヒドロキシエチル基またはヒドロキシブチル基を有していることが好ましい、また、加工デンプンが上記デンプンをカルボン酸無水物と反応させることにより改質されたものである場合、官能基としては、ブタン酸エステルまたはより低級の同族体が好ましく、酢酸エステルがさらに好ましい。エステル誘導体を製造するために、マレイン酸、フタル酸またはオクテニルコハク酸無水物などのジカルボン酸無水物を使用することもできる。
【0115】
加工デンプンとしては、ヒドロキシプロピル基を含むヒドロキシプロピル化アミロースデンプンが好ましく、ヒドロキシプロピル化ハイアミロースデンプンがより好ましい。
【0116】
加工デンプンの置換度は、無水グルコース単位あたりの置換基の平均数で表され、通常、最大値は3である、上記加工デンプンの置換度としては、0.05以上1.5未満が好ましい。
【0117】
加工デンプンは、その他のデンプンを含んでいてもよい。その他のデンプンとしては、例えば、ハイアミロースデンプンとローアミロースデンプンとの混合物が挙げられる。
【0118】
加工デンプンは水を含有していてもよい。加工デンプンに対し、水は可塑剤として機能し得る。水の含有率は、例えば、20質量%以下、または12質量%以下である。加工デンプンを主成分とする酸素バリア層の水分含有率は、一般に、使用環境下の相対湿度における平衡水分含有率である。
【0119】
加工デンプンは、1または複数の水溶性ポリマーを含んでいてもよい。水溶性ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、またはこれらの組み合わせが挙げられる。特に、ポリビニルアルコールが好ましい。1または複数の水溶性ポリマーの含有率は、例えば、20質量%以下、または12質量%以下である。また、1または複数の水溶性ポリマーの含有率は、例えば、1質量%以上、または4質量%以上である。
【0120】
加工デンプンは、1または複数の可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤としては、特に限定されないがポリオールが好ましい、ポリオールの例としては、ソルビトール、グリセロール、マルチトール、およびキシリトール、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。加工デンプンにおける1または複数の可塑剤の含有率は、例えば、20質量%以下、または12質量%以下である。
【0121】
加工デンプンは、潤滑剤を含んでいてもよい。潤滑剤の例としては、炭素数12~22の脂肪酸、および炭素数12~22の脂肪酸塩、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。加工デンプンにおける潤滑剤の含有量は、例えば5質量%以下である。
【0122】
加工デンプンを主成分として含有する酸素バリア層の一層の平均厚みは、例えば、10μm以上、または100μm以上である。加工デンプンを主成分として含有する酸素バリア層の一層の平均厚みは、例えば、1000μm以下、または800μm以下である。なお、本明細書中に用いられる用語「加工デンプンを主成分として含有する酸素バリア層の一層の平均厚み」とは、多層構造体に含まれる上記加工デンプンを主成分として含有する酸素バリア層全体の厚みの合計を当該酸素バリア層の層数で除した値を指して言う。上記酸素バリア層の一層の平均厚みが上記下限よりも小さいと、均一な厚みの層を成形することが困難となり、得られる多層構造体の耐久性を低下させる場合がある。上記酸素バリア層の一層の平均厚みが上記上限を上回ると、得られる多層構造体の柔軟性、延伸性、熱性形成等が低下する場合がある。
【0123】
(無機層状化合物)
無機層状化合物を含むバリア層は、例えば熱可塑性樹脂中に無機層状化合物が分散していると無機層状化合物に起因するバリア性を発現する層である。無機層状化合物を含むバリア層に用いられる熱可塑性樹脂は特に限定されず、例えばポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。
【0124】
無機層状化合物としては、膨潤性雲母、クレイ、モンモリロナイト、スメクタイト、ハイドロタルサイトなどの無機層状化合物が挙げられる。また、無機層状化合物は有機処理された有機変性無機層状化合物であってもよい。
【0125】
無機層状化合物は、例えば板状結晶で構成されており、円形、非円形、楕円形、略長円形、略繭形等の任意の外観を有する。無機層状化合物は、電子顕微鏡により測定可能な板状結晶の長辺の平均長さが所定の範囲を満たすものであることが好ましい。
【0126】
無機層状化合物の長辺の平均長さは70nm以上が好ましく、80nm以上がより好ましく、90nm以上がさらに好ましい。無機層状化合物は延伸時に発生した応力によりフィルム面内に配向するが、無機層状化合物の長辺の平均長さが70nm未満であると、配向の程度が不十分であり、十分な酸素透過性能が得られない場合がある。一方、無機層状化合物の長辺の平均長さは2000nm以下であってもよい。
【0127】
無機層状化合物はまた、厚みが2μmを超える粗大物を含んでいないことが好ましい。無機層状化合物が2μmを超える粗大物を含む場合、透明性や延伸性が低下する場合がある。
【0128】
無機層状化合物を含むバリア層における、無機層状化合物の含有量は当該バリア層の質量を基準として0.3~20質量%であることが好ましい。
【0129】
(無機蒸着層)
無機蒸着層は、例えば基材上に無機物を蒸着して得られるバリア層である。無機蒸着層を構成し得る基材としては、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂;布帛、紙類等の繊維集合体;木材;ガラス等が挙げられる。熱可塑性樹脂および繊維集合体が好ましく、熱可塑性樹脂がより好ましい。基材が上記樹脂で構成される場合、その形態は、フィルムまたはシート等の層状を有していることが好ましい。
【0130】
基材に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートまたはこれらの共重合体等のポリエステル系樹脂;ナイロン-6、ナイロン-66、ナイロン-12等のポリアミド系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等の水酸基含有ポリマー;ポリスチレン;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリアクリロニトリル;ポリ酢酸ビニル;ポリカーボネート;ポリアリレート;再生セルロース;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリスルフォン;ポリエーテルスルフォン;ポリエーテルエーテルケトン;アイオノマー樹脂等が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン-6、およびナイロン-66からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂が好ましい。
【0131】
熱可塑性樹脂からなるフィルムを基材として用いる場合、基材は延伸フィルムまたは無延伸フィルムのいずれであってもよい。得られる多層構造体の加工適性(印刷、ラミネート等)が優れることから、延伸フィルムであることが好ましく、二軸延伸フィルムであることがより好ましい。二軸延伸フィルムは、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、およびチューブラ延伸法のいずれかの方法で製造された二軸延伸フィルムであってもよい。
【0132】
基材に用いられ得る紙類としては、例えばクラフト紙、上質紙、模造紙、グラシン紙、パーチメント紙、合成紙、白板紙、マニラボール、ミルクカートン原紙、カップ原紙、アイボリー紙等が挙げられる。
【0133】
基材の形態が層状である場合、その厚さは、得られる多層構造体の機械的強度および加工性が良好になることから、1μm~1,000μmが好ましく、5μm~500μmがより好ましく、9μm~200μmがさらに好ましい。
【0134】
無機物としては、例えばアルミニウム、スズ、インジウム、ニッケル、チタン、クロム等の金属;酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の金属酸化物;窒化ケイ素等の金属窒化物;酸窒化ケイ素等の金属窒化酸化物;炭窒化ケイ素等の金属炭化窒化物等が挙げられる。酸素あるいは水蒸気に対するバリア性が優れることから、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、および窒化ケイ素等のいずれか、またはそれらの組み合わせから形成される無機蒸着層であることが好ましい。
【0135】
無機蒸着層の形成方法は、特に限定されず、例えば真空蒸着法(例えば抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、分子線エピタキシー法等)、イオンプレーティング法、スパッタリング法(デュアルマグネトロンスパッタリング等)等の物理気相成長法;熱化学気相成長法(例えば、触媒化学気相成長法)、光化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法(例えば、容量結合プラズマ法、誘導結合プラズマ法、表面波プラズマ法、電子サイクロトロン共鳴プラズマ法等)、原子層堆積法、有機金属気相成長法等の化学気相成長法が挙げられる。
【0136】
無機蒸着層の厚みは、無機蒸着層を構成する成分の種類によって異なるが、0.002μm~0.5μmが好ましく、0.005μm~0.2μmがより好ましく、0.01μm~0.1μmがさらに好ましい。この範囲で、多層構造体のバリア性および機械的物性が良好になる厚さを選択できる。無機蒸着層の厚さが0.002μm未満であると、酸素および水蒸気に対する無機蒸着層のバリア性発現の再現性が低下する傾向があり、また、無機蒸着層が充分なバリア性を発現しない場合もある。また、無機蒸着層の厚さが0.5μmを超えると、多層構造体を引っ張ったり屈曲させたりした場合に無機蒸着層のバリア性が低下しやすくなる傾向がある。
【0137】
(金属箔)
金属箔は、展延性に優れた金属から構成される単層または複層の構造体である。金属箔に含まれる金属としては、例えばアルミニウムが挙げられる。当該金属箔は、例えばアルミ箔またはアルミテープの形態を有する。
【0138】
上記のようなガスバリア層を有する包装容器によれば、酸素の侵入を防止し、収容された殺菌後の内容物の品質をより一層長期に亘って保持することができる。
【0139】
なお、本発明の包装容器は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0140】
上記実施形態のフランジ最上部33A、33Bは、いずれも、高さ(上下方向における寸法)が、平面視における外径よりも小さい凸部であったが、これに限らない。図10及び図11に示すように、フランジ部3に、高さと平面視における外径が略等しい第三フランジ最上部33Cが設けられることが考えられる。第三フランジ最上部33Cは、平面視において、円形状である。
【0141】
上記実施形態の貫通孔38は、フランジ部3の貫通領域36に穿孔針を突き刺すこと(即ち、貫通領域36を破断すること)により形成されたが、これに限らない。例えば、貫通孔38が、フランジ部3の貫通領域36を打ち抜くことにより形成されることが考えられる。
【0142】
貫通孔形成工程においてフランジ部3の貫通領域36を打ち抜くことにより、貫通孔38が形成されると、図12A及び図12Bに示すように、貫通領域36は、フランジ部3から取り除かれる。この構成では、貫通孔形成工程を行ってから二次シール領域32のシールが行われるまでの間、気体の貫通孔38への流通が貫通領域36により妨げられることが無いため、加熱蒸気Sは貫通孔38をスムーズに流通することができる。
【0143】
上記実施形態の包装容器1では、フランジ最上部33が貫通領域36の内側に位置し、一次シール領域31が貫通領域36の外側に位置する、即ち、フランジ最上部33と一次シール領域31とが離間していたが、フランジ最上部33が、一次シール領域31を兼ねてもよい。一次シール領域31は貫通領域36よりも外側に位置する必要があるため、この構成では、複数のフランジ最上部33の少なくとも一つが、貫通領域36の外側に位置することになる。例えば、フランジ最上部33は、貫通領域36の外側に位置し且つ一次シール領域31を兼ねる第四フランジ最上部33Dを有することが考えられる。
【0144】
フランジ最上部33は、凸条の第四フランジ最上部33Dであってもよい。また、フランジ最上部33では、第四フランジ最上部33Dの上面のように、上面(フランジ最上部上面330)が平坦面であってもよい(図12B参照)。フランジ最上部33が凸条である場合、例えば、開口縁21の周方向に連続して設けられてもよい。具体的に、フランジ最上部33は、開口縁21の周方向において全周に連続して設けられる凸条であることが考えられる。
【0145】
上記実施形態の包装容器1では、二次シール領域32がフランジ部3の全域に設けられていたが、フランジ部3の一部に設けられていてもよい。上述したフランジ最上部33が一次シール領域31を兼ねる構成において(図12A及び図12B参照)二次シール工程を行った後の状態を表す図13A及び図13Bに示すように、フランジ下部34のうち一次シール領域31よりも内側に位置する領域が、二次シール領域32を兼ねることが考えられる。
【0146】
さらに、上記実施形態の包装容器1では、二次シール工程において面シールを行っていたが、開口縁21の周方向において全周に連続する線シールにより行われてもよい。例えば、図14A及び図14Bに示すように、線シールを行ってもよい。この場合、二次シール領域32は、上方に突出する凸条であることが考えられる。
【0147】
また、この場合、二次シール領域32の上面は、フランジ最上部上面330(一次シール領域31を兼ねる第四フランジ最上部33Dの上面)よりも下方に位置する。さらに、フランジ部3は、蓋部材5と一次シール領域31とがシールされた際に、二次シール領域32の上面と蓋部材5の下面との間に隙間Cが形成されるように構成されている。これにより、一次シール工程を行った後であって二次シール工程を行うまでの間、即ち、食品Fを殺菌する際に、フランジ最上部上面330により支持される蓋部材5とフランジ下部上面340との間に隙間Cが生じ、第一フランジ上面230がこの隙間Cを保持して隙間Cが閉塞されない状態を確実に維持することにより、加熱蒸気Sが流通路Rを介して収容部2内に流通する。
【0148】
上記実施形態では、フランジ部3にフランジ最上部33のような凸部が設けられていたが、下方に凹んだ凹部が設けられていてもよく、図15A及び図15Bに示すように、フランジ部3にフランジ下部34として溝部39が設けられていてもよい。例えば、溝部39は、開口縁21に沿って周方向に連続することが考えられる。具体的に、溝部39は、開口縁21の周方向において全周に連続することが考えられる。
【0149】
このようにフランジ部3に凹部が設けられる構成では、この凹部に貫通領域36が設けられてもよい。例えば、フランジ部3の溝部39に貫通領域36が設けられることが考えられる。具体的に、開口縁21の周方向において全周に連続した溝部39のうち、収容部2を挟んで対向する一対の辺に、貫通領域36がそれぞれ設けられることが考えられる。この場合、各辺に設けられる貫通領域36は、例えば、収容部2を挟む対向位置に配置される。この構成では、貫通孔形成工程を行うと、フランジ部3の溝部39に貫通孔38が設けられる。
【0150】
また、この場合、一次シール領域31は、フランジ部3の溝部39の外側(フランジ最上部33)に、開口縁21の周方向において連続して設けられることが考えられる。具体的には、一次シール領域31は、開口縁21の周方向において全周に連続することが考えられる。
【0151】
上述したフランジ部3の溝部39に貫通領域36が設けられる構成において(図15A及び図15B参照)、図16A及び図16Bに示すように、二次シール領域32は、フランジ部3の溝部39の内側に、開口縁21に沿って周方向において連続して設けられることが考えられる。具体的には、二次シール領域32は、開口縁21の周方向において全周に連続することが考えられる。以上の構成のフランジ部3では、一次シール領域31の内側に貫通領域36が設けられた溝部39が配置され、さらに、溝部39の内側に二次シール領域32が配置される。
【0152】
また、貫通領域36は、フランジ部3の複数の角のうち一部の角のみに設けられてもよい。例えば、図17Aに示すように、貫通領域36が、フランジ部3の角のうち収容部2を挟む位置に一対のみ設けられてもよい。この場合、貫通孔38は、図17Bに示すように、フランジ部3の角のうち収容部2を挟む位置の一対の角のみに設けられる。
【0153】
さらに、フランジ最上部33は、半球形状のようなマウンド形状の凸部の第五フランジ最上部33Eであってもよい。なお、フランジ最上部33は、円錐状、円錐台状、円柱状、多角柱状、多角錘状等その他の形状であってもよい。
【0154】
上記実施形態の収容部2の底板22は、略矩形板状であったが、略正方形板状であることが考えられる。なお、底板22は、四角形板状以外にも、その他の多角形板状や円板状等であってもよい。
【0155】
上記実施形態の包装容器1では、フランジ部3に貫通領域36が設けられ、貫通孔形成工程を行うことでフランジ部3に貫通孔38が設けられていたが、フランジ部3に貫通領域36が設けられなくてもよい。このような構成として、図18図21の構成等が考えられる。
【0156】
例えば、図18A及び図18Bに示すように、フランジ部3は、蓋部材5と一次シール工程においてシールされる一次シール領域31を有し、且つ、蓋部材5と一次シール領域31とがシールされた際に、蓋部材5との間に外部と収容部2内との間で気体が流通可能な流通路Rが形成されるように構成されていることが考えられる。この構成では、フランジ最上部33が、フランジ部3の四つの角部に隙間をあけた状態で、開口縁21の周方向に長尺状に延びる凸条である。また、フランジ最上部33が、一次シール領域31を兼ねる。さらに、図19A及び図19Bにも示すように、フランジ下部34のうち開口縁21の周方向において全周に連続して設けられた部位が、二次シール領域32を兼ねる。
【0157】
この場合、一次シール領域31の上面(例えば、フランジ最上部上面330)は、フランジ上面30のうち最も上方に位置し、二次シール領域32の上面(例えば、フランジ下部上面340のうち開口縁21の周方向において全周に連続して設けられた部位)は、一次シール領域31の上面(例えば、フランジ最上部上面330)よりも下方に位置する。また、フランジ部3は、蓋部材5と一次シール領域31とがシールされた際に、二次シール領域32の上面(例えば、フランジ下部上面340)と蓋部材5の下面との間に隙間Cが形成されるように構成され、隙間Cが、流通路Rの一部となるように構成されている。
【0158】
上記実施形態の包装容器1では、一次シール工程が線シールにより行われていたが、少なくとも一点をシールするスポットシールにより行われてもよい。例えば、図20A及び図20Bに示すように、フランジ部3には、第六フランジ最上部33Fとして凸部が複数設けられ、第六フランジ最上部33Fが一次シール領域31を兼ねることが考えられる。フランジ最上部33Fの形状は、例えば、円錐台状である。また、フランジ最上部33Fは、フランジ部3の四つの角部と、フランジ部3の各辺の中央とに設けられることが考えられる。このように、複数の一次シール領域31が開口縁21の周方向において隙間を空けて設けられる場合、一次シール工程を行った後に加熱蒸気Sがこの周方向における一次シール領域31同士の隙間を介して、収容部2内に流通するため、十分な量の加熱蒸気Sを収容部2内に流通させることができる。
【0159】
例えば、図21A及び図21Bに示すように、フランジ部3にフランジ下部34として凹部が複数設けられてもよい。フランジ下部34は、開口縁21の周方向において隙間をあけて配置され、例えば、フランジ部3の四つの角部に位置することが考えられる。この場合、フランジ最上部33は、フランジ部3の各辺に位置する。この構成において、フランジ最上部33は、一次シール領域31を兼ねている。また、この構成では、一次シール工程を行った後、蓋部材5の下面とフランジ下部上面340の間に隙間Cが生じ、この隙間Cがフランジ部3の四つの角部に位置しているため、加熱蒸気Sがフランジ部3の四つの角部から収容部2内に流通する。
【0160】
上記実施形態の包装容器1では、フランジ部3に形成される各貫通孔38の形状や大きさは同じであったが、異なっていてもよい。例えば、図22A及び図22Bに示すように、フランジ部3の四つの角部のうち隣り合う一対の角部に貫通孔38Aが設けられ、フランジ部3の四つの角部のうち前記隣り合う一対の角部以外の一対の角部に貫通孔38Aと異なる大きさの貫通孔38Bが設けられることが考えられる。貫通孔38Aの直径は、貫通孔38Bの直径よりも大きい。
【0161】
また、フランジ最上部33は、平面視においてU字状や円弧状の凸条であってもよい。例えば、貫通孔38Aの外側に位置する第七フランジ最上部33Gは、平面視においてU字状の凸条であることが考えられる。第七フランジ最上部33Gは、貫通孔38Aの外周のうち外側に位置する部位に沿って設けられている。なお、貫通孔38Aの内側には、複数(例えば、三つ)の第五フランジ最上部33Eが、開口縁21に沿って設けられている。なお、この包装容器1では、一次シール領域31は、フランジ部3の外周縁である。
【0162】
このように、一次シール領域31の内側において、貫通孔38Aの外側及び内側の両方の位置に、フランジ最上部33が設けられているため、貫通孔38Aの外側及び内側において、フランジ最上部上面330が蓋部材5を支持するため、貫通孔38Aと蓋部材5との間に隙間Cが生じたまま保持され、よって、貫通孔38Aが閉塞されることを防ぐことができる。
【0163】
上記実施形態では、フランジ部3に凹部として溝部39が設けられていたが、スポット状の凹部39が設けられてもよい。例えば、凹部39は、フランジ部3の四つの角部に設けられることが考えられる。また、凹部39の底に貫通孔38Bが設けられてもよい。
【0164】
さらに、二次シール工程を行った後に、フランジ部3のうち貫通孔38を含む一部を取り除いてもよい。例えば、上述したフランジ部3の四つの角部に貫通孔38が設けられる構成において(図22A及び図22B参照)、図23A及び図23Bに示すように、フランジ最上部33Eと貫通孔38との間に二次シール領域32を設けて、二次シール工程を行った後に、貫通孔38と二次シール領域32との間の切断線Lで、フランジ部3を切断することが考えられる。一次シール領域31と二次シール領域32との間に、貫通孔38が位置する構成では、フランジ部3のうち貫通孔38の周囲に水滴が溜まりやすいが、フランジ部3のうち貫通孔38を含む一部を取り除くことで、このような水滴が包装容器1に影響することを防ぐことができる。
【0165】
なお、図23では、切断線Lがフランジ部3の四つの角部を切り取るように設けられていたが、貫通孔38と二次シール領域32との間において延び、且つ、開口縁21の周方向において全周に連続して切り取るように設けられてもよい。即ち、切断線Lが、フランジ部3の貫通孔38を含む外周部を切り取るように設けられてもよい。
【0166】
上記実施形態の貫通領域36は、平面視において円形状であったが、楕円形状等の長尺状等であってもよく、この場合、貫通孔38はスリット状等であることが考えられる。また、上記実施形態の貫通孔38は、十字状の溝部360を設けた貫通領域36に裂け目380を形成したり、貫通領域を打ち抜いたりすることにより形成されていたが、他の方法により形成されてもよい。
【0167】
また、図24A及び図24Bに示すように、フランジ部3に、平面視においてU字状の裂け目380を形成することで、各貫通孔38が形成されることが考えられる。この構成では、フランジ部3は、裂け目380を境界としてフランジ部3の一部(例えば、貫通領域36)が上方に向けて変形されることによって形成される第八フランジ最上部33Hであって、上面が該フランジ部3の上面30のうち最も上方に位置する第八フランジ最上部33Hを有する。また、第八フランジ最上部33Hにより蓋部材5とフランジ部3との間に流通路Rが形成される、具体的には、貫通領域36に、U字状の裂け目380を形成し、裂け目380の基端部同士を結ぶ直線381を境界にして、U字状の裂け目380の内側部分がフランジ部3の他の領域よりも上方に折り曲げられることで、貫通孔38が形成されるとともに、第八フランジ最上部33Hが形成される。また、貫通孔38の近傍に、第二フランジ最上部33Bが設けられてもよい。
【0168】
また、図25A及び図25Bに示すように、フランジ部3に、一本の線状の裂け目380を形成することで、各貫通孔38が形成されることが考えられる。この構成では、貫通領域36が、裂け目380の両端から延びる一対の直線381を境界にして、フランジ部3の貫通領域36以外の領域よりも上方に持ち上げられることで、貫通孔38が形成されるとともに、第八フランジ最上部33Hが形成される。
【0169】
このように、貫通領域36が、フランジ部3の貫通領域36以外の領域よりも上方に変形されることで、貫通孔38が形成される構成では、フランジ部3の下方から加熱蒸気Sが収容部2に流通する際に、加熱蒸気Sにより貫通領域36が持ち上がったままで保持されやすいため、貫通孔38を開放した状態で維持しやすい。
【0170】
また、図26A及び図26Bに示すように、貫通領域36が、フランジ部3の貫通領域36以外の領域よりも上方に位置することで、貫通孔38が形成されるとともに、第八フランジ最上部33Hが形成される構成において、貫通孔38の近傍に第三フランジ最上部33Cが設けられてもよい。
【0171】
さらに、図27A及び図27Bに示すように、貫通領域36を上方へ変形させる際には、フランジ部3と貫通領域36との境界382に上部から治具を用いて窪みを形成し、該窪みを起点として貫通領域36を上方へと変形させることが好ましい。この場合、フランジ部3の境界382が折れ曲がりやすくなり、貫通領域36が持ち上がった状態で保持されやすい。
【0172】
かかる構成によれば、フランジ部3の一部が裂け目380を境界として変形されることによって第八フランジ最上部33Hが形成され、第八フランジ最上部33Hにより流通路Rが形成されるため、加熱蒸気Sがこの流通路Rを介して収容部2内に流通可能である。
【0173】
さらに、図28A及び図28Bに示すように、貫通孔38が形成された際に第八フランジ最上部33Hとなるように構成されている場合には、フランジ部3にフランジ最上部33として第八フランジ最上部33Hのみが設けられていてもよい。かかる構成によれば、フランジ部3に第八フランジ最上部33Hの他に、別途フランジ最上部33が形成されていなくても、フランジ部3に裂け目380を形成して貫通孔38を形成するだけで、加熱蒸気Sが流通する流通路Rを形成することができる。
【0174】
なお、貫通孔38が形成された際に貫通領域36が第八フランジ最上部33Hとなる構成では、例えば、以下のような工程により貫通孔38を形成すればよい。まず、図29Aに示すように、フランジ部3に裂け目380を形成するための位置決めを行い、図29Bに示すように、剪断用の治具により裂け目380を形成する。さらに、図29Cに示すように、貫通領域36の境界382に窪みを形成する治具を打ち込み、その衝撃で図29Dに示すように貫通領域36を上方へ変形させて貫通孔38を形成することができる。
【0175】
図30A及び図30Bに示すように、貫通領域36は、上方に向けて突出する凸部であり、凸部の上端が、第八フランジ最上部33Hを構成してもよい。また、貫通領域36は、例えば、上方に向けて膨出した湾曲面を有することが考えられる。この貫通領域36では、湾曲面の上端が第八フランジ最上部33Hを構成している。本実施形態の貫通領域36は、椀状である。この貫通領域36の上面の全域は、湾曲面である。また、貫通領域36の外周縁は、円弧状の部位と、直線状の部位と、を有する。本実施形態の貫通領域36の外周縁では、円弧状の部位は、直線状の部位よりも内側に配置されている。また、この構成では貫通領域36の外周縁の一部(例えば、円弧状の部位)に裂け目380を形成して、貫通領域36を上方に向けて変形することで、図30Cに示すように、貫通領域36が上方に向けて凸状の湾曲面となる。
【0176】
なお、貫通領域36が上方に突出する凸部である場合、凸部の上面の全域が湾曲していない傾斜面であってもよく、凸部の上面の一部のみが湾曲面であってもよい。例えば、図31A及び図31Bに示すように、貫通領域36は、上面の上部が上方に向けて膨出した湾曲面である凸部であり、湾曲面の上端が、第八フランジ最上部33Hを構成してもよい。なお、貫通領域36の上面の下部は傾斜面である。貫通領域36の外周縁は、角が丸まった矩形状である。また、この構成では貫通領域36の外周縁の一部(例えば、外周縁のうち外側に位置する一辺を除く部位、即ち、矩形状の外周縁のうち三辺及び一対の角部)に裂け目380を形成して、貫通領域36を上方に向けて変形することで、図31Cに示すように、貫通領域36が上方に向けて膨出した湾曲面となる。
【0177】
このように、上方に向けて変形されるフランジ部3の一部(例えば、貫通領域36)が、上方に向けて膨出した湾曲面である構成では、一次シール領域31と蓋部材5とがシールされると、フランジ部3に裂け目380を形成することで上方に向けて折り曲げられた凸状の湾曲面が蓋部材5を損傷することなく安定的に支持可能である。
【0178】
上記実施形態では、図24図31の包装容器1において、貫通領域36は裂け目380を境界にしてフランジ部3の他の領域よりも上方に位置していたが、下方に位置することで貫通孔38が形成されてもよい。この場合、フランジ部3のうち貫通領域36以外の部位は、フランジ最上部33を構成してもよい。
【0179】
上記実施形態の包装容器1では、フランジ部3の角部に貫通孔38が配置されていたが、図32Aに示すように、フランジ部3の角部以外の領域に貫通孔38が配置されていてもよい。また、上記実施形態の包装容器1は、一つの収容部2を備えていたが、図32B図32Cに示すように、複数の収容部2を備えていてもよい。この場合、貫通孔38は、隣り合う収容部2の間(収容部2に挟まれる領域)に配置されることが考えられる。
【0180】
上記実施形態の包装容器1では、フランジ部3に貫通領域36が設けられていたが、貫通領域36の代わりに、フランジ部3に予め貫通孔38が設けられていてもよい。この場合、包装食品6の製造方法は、貫通孔形成工程を含まず、食品収容工程、一次シール工程、殺菌工程、及び、二次シール工程を含むことになる。
【0181】
上記実施形態の包装食品の製造方法では、食品収容工程、貫通孔形成工程、一次シール工程、殺菌工程、及び、二次シール工程が順に行われていたが、貫通孔形成工程を行った後に食品収容工程を行ってもよい。また、包装容器1は、フランジ部3の貫通領域36に貫通孔38を設けて収容部2に食品Fを収容した後に、蓋部材5とフランジ部3の一次シール領域31とをシールし、さらに、収容部2内に流通路Rを介して加熱蒸気Sを流通させて食品Fを殺菌した後、蓋部材5とフランジ部3の二次シール領域32とをシールするような包装食品6の包装容器1としても好適に使用できるものである。
【0182】
上記実施形態のフランジ部3は、開口縁21の周方向の全周に設けられていたが、この周方向において途切れた状態で(間隔をあけて)設けられてもよい。
【0183】
上記実施形態の包装容器1では、収容部2とフランジ部3とは一部材で構成されていたが別部材で構成されてもよい。例えば、容器本体4は、別部材として収容部2及びフランジ部3を形成し、収容部2やフランジ部3を接着剤で接着することにより、収容部2とフランジ部3とが接続されて構成されることが考えられる。
【0184】
また、本発明においては、殺菌対象物として種々の内容物を収容することができる。内容物は、例えば、保存または輸送にあたり、細菌、塵埃等の汚染物や酸素との接触を所望しない物品であり、食品、化粧品、医薬品、医薬部外品、医療用機器、衛生用品、理化学用品、バイオ関連用品などが包含される。中でも、食品が好ましく、特に高温高圧下での蒸気殺菌において外観および品質を保持し得る食品(例えば、収容の際に固形である食品)が好ましい。
【0185】
また、本発明において使用する殺菌用ガスとして、上記実施形態では加熱蒸気を用いたが、内容物に応じてオゾンガス、酸化エチレン、ホルムアルデヒド、酢酸、酸化エチレン、二酸化塩素等の他の殺菌作用のあるガスを使用してもよい。
【0186】
以上より、本発明によれば、内容物を殺菌処理する際に好適に使用でき、殺菌された内容物を長期にわたって品質保持可能な包装容器を提供することができる。
【0187】
本発明に係る包装容器は、内部に収容された内容物を殺菌用ガスに晒すことで殺菌し、その後該内容物を封止して流通させるための殺菌処理用の包装容器であって、上方に開口を有し且つ内容物を収容する収容部と、前記収容部の開口縁から外向きに延びるフランジ部と、を含む容器本体を備え、前記フランジ部は、前記開口を覆う蓋部材と一次シール工程において一次シールされる一次シール領域と、前記蓋部材と一次シールの後の二次シール工程において二次シールされる二次シール領域と、上面において該フランジ部の上面のうち最も上方に位置するフランジ最上部と、上面において該フランジ最上部の上面よりも下方に位置するフランジ下部と、前記一次シール領域よりも内側に位置し前記フランジ部を貫通する貫通孔が設けられる少なくとも1つの貫通領域と、を有し、且つ、前記蓋部材と前記一次シール領域とがシールされた際に、前記フランジ最上部によって支持された前記蓋部材と前記フランジ下部との間に外部と前記収容部内との間で気体が流通可能な流通路が形成され、前記蓋部材と前記二次シール領域とがシールされた際に、前記流通路が閉塞されるように構成されている、ことを特徴とする。
【0188】
かかる構成の包装容器は、例えば、収容部に内容物を収容しフランジ部の貫通領域に貫通孔を設けた後、或いは、フランジ部の貫通領域に貫通孔を設けて収容部に食品を収容した後に、蓋部材とフランジ部の一次シール領域とをシールし、さらに、収容部内に流通路を介して殺菌用ガスを流通させて内容物を殺菌した後、蓋部材とフランジ部の二次シール領域とをシールする際に用いる容器として好適である。
【0189】
この包装容器では、フランジ部の一次シール領域よりも内側に貫通孔が設けられると、この貫通孔が流通路の一部を構成する。また、一次シール領域と蓋部材とがシールされると、フランジ部のフランジ下部と蓋部材との間に隙間が生じて、この隙間が流通路の一部を構成する。よって、内容物を殺菌する際に、殺菌用ガスがフランジ部の下方から貫通孔及び隙間により構成される流通路を介して収容部内に流通することで、収容部内の内容物の殺菌が可能となる。
【0190】
特に、この包装容器では、フランジ下部の上面よりもフランジ最上部の上面が上方に位置することから、内容物を殺菌する際に、フランジ最上部が蓋部材を支持するため、フランジ最上部によって流通路を構成する隙間が閉塞されない状態を確実に維持した状態で、殺菌用ガスを収容部内に流通させることができる。
【0191】
さらに、この包装容器では、流通路の上に蓋部材が位置する、即ち、流通路が蓋部材上に露出しないため、殺菌用ガスによる殺菌後においても落下菌が流通路を介して容器内に混入しにくい。また、二次シール領域と蓋部材とがシールされることで流通路が閉塞されるように構成されているので、蓋部材とのシールにより、該包装容器が内容物を完全に封止できる。
【0192】
また、前記包装容器では、前記貫通孔は、前記貫通領域の一部に裂け目が形成されることにより形成されてもよい。
【0193】
かかる構成によれば、貫通領域に貫通孔を形成した際にフランジ部の一部が破断してフランジ部の破片が生じることがない。よって、収容部内にフランジ部の破片が混入することを防止できる。
【0194】
前記貫通領域は、上方に向けて膨出した湾曲面を有しており、前記湾曲面の上端が、前記フランジ最上部を構成してもよい。
【0195】
かかる構成によれば、一次シール領域と蓋部材とがシールされると、前記湾曲面が蓋部材を傷つけることなく支持可能である。
【0196】
また、前記包装容器では、前記貫通領域は、下方に凹んだ凹部であり、前記裂け目が該凹部内に形成されてもよい。
【0197】
かかる構成によれば、貫通孔を形成する際に、下方に凹んだ貫通領域を上方から穿孔することで、貫通領域の穿孔された部位が、フランジ部の他の領域よりも下方に向いたまま保持されやすく、よって、この部位により貫通孔が閉塞されることを防ぐことができる。
【0198】
また、前記包装容器では、前記フランジ部が、前記収容部の開口縁の全周に設けられ、前記貫通領域は複数設けられるとともに、前記収容部を挟む対向位置に配置されてもよい。
【0199】
かかる構成によれば、収容部を挟む対向位置に貫通領域が配置されているため、この位置に貫通孔を設けると、貫通孔を介して収容部の両側から気体を流通させることにより、食品の加熱むらを抑制できる。
【0200】
本発明の別の包装容器は、内部に収容された内容物を殺菌用ガスに晒すことで殺菌し、その後該内容物を封止して流通させるための包装容器であって、上方に開口を有し且つ内容物を収容する収容部と、前記収容部の開口縁から外向きに延びるフランジ部と、を含む容器本体を備え、前記フランジ部は、前記開口を覆う蓋部材と一次シール工程において一次シールされる一次シール領域と、前記蓋部材と一次シールの後の二次シール工程においてシールされる二次シール領域とを有し、且つ、前記蓋部材と前記一次シール領域とがシールされた際に、前記蓋部材との間に外部と前記収容部内との間で気体が流通可能な流通路が形成され、前記蓋部材と前記二次シール領域とがシールされた際に、前記流通路が閉塞されるように構成されている、ことを特徴とする。
【0201】
かかる構成の包装容器は、収容部に内容物を収容し、蓋部材とフランジ部の一次シール領域とをシールし、さらに、収容部内に流通路を介して殺菌用ガスを流通させて内容物を殺菌した後、蓋部材とフランジ部の二次シール領域とをシールするような容器として好適に使用できる。
【0202】
この包装容器では、一次シール領域と蓋部材とがシールされると、内容物を殺菌する際に、殺菌用ガスがフランジ部の下方から流通路を介して収容部内に流通することで、収容部内の内容物の殺菌が可能である。
【0203】
さらに、この包装容器では、流通路の上に蓋部材が位置する、即ち、流通路が蓋部材上に露出しないため、殺菌用ガスによる殺菌後においても落下菌が流通路を介して容器内に混入しにくい。また、二次シール領域と蓋部材とがシールされることで流通路が閉塞されるように構成されているので、蓋部材とのシールにより、該包装容器が内容物を完全に封止できる。
【0204】
また、前記包装容器の前記フランジ部には、前記一次シール領域よりも内側に前記フランジ部を貫通した少なくとも1つの貫通孔が設けられ、前記貫通孔が、前記流通路の一部となるように構成されてもよい。
【0205】
かかる構成によれば、一次シール工程後の状態において、殺菌用ガスがフランジ部の下方から流通路の一部となる前記貫通孔を介して収容部内まで流通することで、収容部内の食品の殺菌が可能である。
【0206】
さらに、前記包装容器では、前記貫通孔は、前記フランジ部の一部に裂け目が形成されることにより形成されてもよい。
【0207】
かかる構成によれば、貫通孔を設ける際にフランジ部の一部が破断することがなくフランジ部の破片が生じることがない。よって、収容部内にフランジ部の破片が混入することを防止できる。
【0208】
また、前記包装容器では、前記フランジ部は、前記裂け目を境界として前記フランジ部の一部が上方に向けて変形されることによって形成されるフランジ最上部を有し、該フランジ最上部により支持される前記蓋部材と前記フランジ部との間に前記流通路が形成されてもよい。
【0209】
かかる構成によれば、フランジ部に裂け目を形成することにより貫通孔とフランジ最上部とを同時に形成できる。
【0210】
さらに、前記包装容器では、前記上方に向けて変形される前記フランジ部の一部が、上方に向けて膨出した湾曲面を有していてもよい。
【0211】
かかる構成によれば、一次シール領域と蓋部材とがシールされると、前記湾曲面が蓋部材を傷つけることなく支持可能である。
【0212】
また、前記包装容器では、前記フランジ部は、上面が該フランジ部の上面のうち最も上方に位置するフランジ最上部を有し、該フランジ最上部により支持される前記蓋部材と前記フランジ部との間に前記流通路が形成されるようにしてもよい。
【0213】
かかる構成によれば、一次シール工程を行ってから二次シール工程が行われるまでの間、即ち、内容物を殺菌する際に、前記フランジ最上部により蓋部材が支持されるため、形成された流通路を介して収容部内により確実に殺菌用ガスを流通させることができる。
【0214】
また、前記包装容器では、前記フランジ部が、前記収容部の開口縁の全周に設けられ、前記貫通孔は複数設けられるとともに、前記収容部を挟む対向位置に配置されてもよい。
【0215】
かかる構成によれば、収容部を挟んで配置された貫通孔を介して、収容部の両側から気体を流通させることにより、食品の加熱むらを抑制できる。
【0216】
また、前記包装容器では、前記一次シール領域の上面は、前記フランジ部の上面のうち最も上方に位置し、前記二次シール領域の上面は、前記一次シール領域の上面よりも下方に位置し、前記フランジ部は、前記蓋部材と前記一次シール領域とがシールされた際に、前記二次シール領域の上面と前記蓋部材の下面との間に隙間が形成されるように構成され、前記隙間が、前記流通路の一部となるように構成されてもよい。
【0217】
かかる構成によれば、一次シール工程を行ってから二次シール工程が行われるまでの間、即ち、食品を殺菌する際に、二次シール領域の上面よりも一次シール領域の上面が上方に位置することから、一次シール領域が流通路の一部となる前記隙間を保持するため、一次シール領域は隙間が閉塞されない状態を確実に維持して、貫通孔を介して収容部内に気体を流通させることができる。
【0218】
また、前記包装容器では、前記収容部は、内容物が載置される底板を含み、前記底板の上面は、凹凸形状を有してもよい。
【0219】
かかる構成によれば、収容部に内容物を配置すると、該内容物の下方に隙間が生じるため、収容部内に殺菌用ガスを流通させると、内容物の上方に加えて下方にも殺菌用ガスが流通することになる。そのため、殺菌用ガスにより内容物を上方及び下方の両方から殺菌することができる。
【0220】
本発明の包装容器は、さらに蓋部材を備え、前記容器本体及び前記蓋部材は、少なくとも一層のガスバリア層を含む多層構造体から構成されてもよい。
【0221】
かかる構成によれば、容器本体や蓋部材がガスバリア層を備えることにより、包装容器内の滅菌状態をより長く維持することができる。
【0222】
以上より、本発明によれば、内容物を殺菌処理する際に好適に使用でき、殺菌された内容物を長期にわたって品質保持可能な包装容器を提供することができる。
【符号の説明】
【0223】
1…包装容器、2…収容部、3…フランジ部、4…容器本体、5…蓋部材、6…包装食品、20…開口、21…開口縁、22…底板、23…側壁、30…フランジ上面、31…一次シール領域、32…二次シール領域、33…フランジ最上部、33A…第一フランジ最上部、33B…第二フランジ最上部、33C…第三フランジ最上部、33D…第四フランジ最上部、33E…第五フランジ最上部、33F…第六フランジ最上部、33G…第七フランジ最上部、33H…第八フランジ最上部、34…フランジ下部、35…フランジ下面、36…貫通領域、38、38A、38B…貫通孔、39…溝部(凹部)、220…底板上面、221…底板下面、222…底板突起部、223…底板傾斜面、230…第一フランジ上面、330…フランジ最上部上面、340…フランジ下部上面、360…溝部、361…上面、362…下面、363…外周縁、380…裂け目、381…直線、382…境界、C…隙間、F…食品、L…切断線、R…流通路、S…加熱蒸気
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B
図23A
図23B
図24A
図24B
図25A
図25B
図26A
図26B
図27A
図27B
図28A
図28B
図29A
図29B
図29C
図29D
図30A
図30B
図30C
図31A
図31B
図31C
図32A
図32B
図32C