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特許7373208導電性樹脂組成物、導電性接着剤、および半導体装置
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  • 特許-導電性樹脂組成物、導電性接着剤、および半導体装置 図1
  • 特許-導電性樹脂組成物、導電性接着剤、および半導体装置 図2
  • 特許-導電性樹脂組成物、導電性接着剤、および半導体装置 図3
  • 特許-導電性樹脂組成物、導電性接着剤、および半導体装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】導電性樹脂組成物、導電性接着剤、および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20231026BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20231026BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20231026BHJP
   C09J 175/14 20060101ALI20231026BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20231026BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C08F290/06
C09J9/02
C09J4/02
C09J175/14
C09J11/04
H01L21/52 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020553905
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2019042214
(87)【国際公開番号】W WO2020090757
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】62/751,997
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カポグリス ジョランダ イルマ
(72)【発明者】
【氏名】大友 政義
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-022312(JP,A)
【文献】特開2007-169453(JP,A)
【文献】特開2007-238819(JP,A)
【文献】特開平07-157523(JP,A)
【文献】特開2012-072238(JP,A)
【文献】特開2016-025305(JP,A)
【文献】特開2017-210457(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003704(WO,A1)
【文献】特開2018-027944(JP,A)
【文献】国際公開第2009/128530(WO,A1)
【文献】特開昭60-252665(JP,A)
【文献】特開2012-057161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 283/01-299/08
C09J 1/00-201/10
H01L 21/52-21/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも2種類のウレタンアクリレートオリゴマー、
(B)少なくとも2種類のラジカル重合性モノマー、
(C)遊離ラジカル発生硬化剤、および
(D)導電性粒子
を含み、
(A)成分が、(A1)重量平均分子量11000~200000の高分子ウレタンアクリレートオリゴマーと、(A2)重量平均分子量500~8500の低分子ウレタンアクリレートオリゴマーと、を含み、
(A1)成分は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、10~40質量部であり、
(B)成分のうち、少なくとも1種類が、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し、隣合う2つの前記(メタ)アクリロイル基の間に、直鎖の炭素数が4~30のアルキレン骨格又は直鎖の炭素数が4~30のオキシアルキレン骨格を有する(B2)多官能ラジカル重合性モノマーであり、
フェノキシ樹脂を含まない、熱硬化型の導電性樹脂組成物。
【請求項2】
(B)成分が、(B1)単官能ラジカル重合性モノマーを含む、請求項1に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項3】
(C)成分が過酸化物である、請求項1又は2に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項4】
(C)成分の前記過酸化物が、165℃以下の10時間半減期温度を有する、請求項3に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項5】
(D)成分が、導電性樹脂組成物100体積%に対して、10~50体積%である、請求項1~4のいずれか1項記載の導電性樹脂組成物。
【請求項6】
(D)成分が銀粒子である、請求項1~5のいずれか1項記載の導電性樹脂組成物。
【請求項7】
(A)成分が、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、20~79.9質量部であり、
(B)成分が、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、20~70質量部であり、
(C)成分が、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、0.1~30質量部である、請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項8】
(A2)成分は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、10~60質量部である、請求項1~7のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項9】
(B)成分100質量部に対して、(B1)成分は30~70質量部であり、(B2)成分が30~70質量部である、請求項2に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項記載の導電性樹脂組成物を含む、導電性接着剤。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項記載の導電性樹脂組成物の硬化物を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性樹脂組成物、この導電性樹脂組成物を含む導電性接着剤、およびこれらの硬化物を含む半導体装置に関する。特に、フレキシブル・ハイブリッド・エレクトロニクス分野で使用可能な導電性樹脂組成物、この導電性樹脂組成物を含む導電性接着剤、およびこれらの硬化物を含む半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル・ハイブリッド・エレクトロニクス(Flexible Hybrid Electronics;以下、FHEという)分野において、フレキシブル配線板上にセンサー、キャパシタ等の部品を実装するためのフレキシブルで低弾性の導電性接着剤が求められている。
【0003】
また、FHE分野において、フレキシブル配線板上に実装するプロセッサーやメモリー等の半導体には、伸縮性を持たせることができないため、これらの半導体をフレキシブル配線基板上に実装するための低弾性な導電性接着剤も求められている。
【0004】
例えば、LEDチップまたはLDチップとリードフレームとを接着するための導電性のエポキシ樹脂系接着剤として、「(a)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するポリイミドシリコーン樹脂、(b)エポキシ樹脂、および(c)導電性金属粉末を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物」が報告されている(特許文献1)。しかしながら、この硬化性樹脂組成物は、低温硬化型導電性接着剤であるものの、低弾性でない、すなわち柔軟性がないため、接着剤に剥離、割れ等が生じる、という問題がある。
【0005】
また、溶剤の留去や光照射を行うことなく、比較的低温度でBステージ化(半硬化)することができ、その後に硬化(Cステージ化)させた際に十分な接着強度が得ることを目的として、「(d)エポキシ樹脂、(e)(メタ)アクリロイル基およびグリシジル基を有する化合物、(f)フェノール樹脂系硬化剤、(g)ラジカル重合開始剤、並びに(h)導電性粒子を含有することを特徴とする導電性樹脂組成物」が、報告されている(特許文献2)。しかし、この導電性樹脂組成物は、150℃程度の低温で硬化するものの、硬化物の弾性率が高いため、FHE分野向けには適していない。
【0006】
一方、良好な柔軟性を有しながら高い導電性を持つ導電性接着剤およびその製造方法、ならびにその導電性接着剤を用いた導電性材料の製造方法を提供することを目的として、「(i)式:-R-O-[式中、Rは炭素数1~10の炭化水素基である。]で示される繰り返し単位を有する主鎖および加水分解性シリル基である末端基を有するポリエーテル重合体、ならびに(j)銀粒子を含む導電性接着剤」が報告されている(特許文献3)。しかしながら、この導電性接着剤は、柔軟性はあるものの、硬化温度が高い(185℃程度)、抵抗値が高い、という問題がある。
【0007】
また、接着力、放熱性、および紫外線抵抗性を向上させ、一方でまた低温で硬化することができる導電性接着剤を提供することを目的として、「導電性粉末、熱硬化性シリコーン樹脂、および溶媒を含む導電性接着剤」が報告されている(特許文献4)。しかしながら、この導電性接着剤は、硬化温度が高い(200℃×60分)、抵抗値が高い、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-113059号公報
【文献】国際公開第2013/035685号
【文献】特開2018-048286号公報
【文献】特表2011-510139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、現在、FHE分野向け部品実装用導電性接着剤として求められている、低温速硬化型の低弾性導電性接着剤は、十分な特性を有していない。本発明は、FHE分野向け部品実装用導電性接着剤として有用な低温速硬化型の低弾性導電性接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の構成を有することによって上記問題を解決した導電性樹脂組成物、導電性接着剤、および半導体装置に関する。
〔1〕(A)少なくとも2種類のウレタンアクリレートオリゴマー、
(B)ラジカル重合性モノマー、
(C)遊離ラジカル発生硬化剤、および
(D)導電性粒子
を含むことを特徴とする、導電性樹脂組成物。
〔2〕(A)成分が、(A1)重量平均分子量10000以上の高分子ウレタンアクリレートオリゴマーと、(A2)重量平均分子量9999以下の低分子ウレタンアクリレートオリゴマーと、を含む、上記〔1〕記載の導電性樹脂組成物。
〔3〕(B)成分が、(B1)単官能ラジカル重合性モノマーと、(B2)多官能ラジカル重合性モノマーと、を含む、上記〔1〕または〔2〕記載の導電性樹脂組成物。
〔4〕(B2)多官能ラジカル重合性モノマーが、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し、隣合う2つの前記(メタ)アクリロイル基の間に、直鎖の炭素数が4~30のアルキレン骨格又は直鎖の炭素数が4~30のオキシアルキレン骨格を有する、請求項3に記載の導電性樹脂組成物。
〔5〕(C)成分が過酸化物である、上記〔1〕~〔4〕のいずれか記載の導電性樹脂組成物。
〔6〕(C)成分の前記過酸化物が、165℃以下の10時間半減期温度を有する、上記〔5〕に記載の導電性樹脂組成物。
〔7〕(D)成分が、導電性樹脂組成物100体積%に対して、10~50体積%である、上記〔1〕~〔6〕のいずれか記載の導電性樹脂組成物。
〔8〕(D)成分が銀粒子である、上記〔1〕~〔7〕のいずれか記載の導電性樹脂組成物。
〔9〕上記〔1〕~〔8〕のいずれか記載の導電性樹脂組成物を含む、導電性接着剤。
〔10〕上記〔1〕~〔8〕のいずれか記載の導電性樹脂組成物の硬化物を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、FHE分野向け部品実装用導電性接着剤として有用な低温速硬化型の低弾性導電性接着剤に適した導電性樹脂組成物を提供することができる。
【0012】
本発明によれば、FHE分野向け部品実装用導電性接着剤として有用な低温速硬化型の低弾性導電性接着剤を提供することができる。本発明によれば、FHE分野向け部品実装用導電性接着剤として有用な低温速硬化型の低弾性導電性接着剤に適した導電性樹脂組成物の硬化物により、信頼性の高い半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】伸び率による電気抵抗変化の測定方法を説明するための図である。
図2】伸び率の測定方法を説明するための図である。
図3】HTHH(85℃/85%)保持後の弾性率の変化を示す図である。
図4】HTHH(85℃/85%)保持後、20%伸びした実施例1の抵抗値変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の導電性樹脂組成物は、
(A)少なくとも2種類のウレタンアクリレートオリゴマー、
(B)ラジカル重合性モノマー、
(C)遊離ラジカル発生硬化剤、および
(D)導電性粒子
を含むことを特徴とする。
【0015】
(A)成分である少なくとも2種類のウレタンアクリレートオリゴマーは、硬化後の導電性樹脂組成物に適度な弾性率、電気特性、導電性樹脂組成物の取り扱い性が良く、良好な作業性を付与する。(A)成分は、硬化後の導電性樹脂組成物の弾性率、電気特性、導電性樹脂組成物の取り扱い性が良く作業性の観点から、重量平均分子量が異なる少なくとも2種類のウレタンアクリレートオリゴマーを含むことが好ましい。(A)成分は、(A1)重量平均分子量10000以上の高分子ウレタンアクリレートオリゴマーと、(A2)重量平均分子量9999以下の低分子ウレタンアクリレートオリゴマーと、を含むことが、好ましい。ここで、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。(A)成分に、(A1)成分と(A2)成分を併用することで、導電性樹脂組成物の取り扱い性が良く作業性を損なわず、硬化後の導電性樹脂組成物の低弾性と良好な伸張性を得ることができる。
【0016】
(A1)重量平均分子量10000以上の高分子ウレタンアクリレートオリゴマーは、重量平均分子量が、好ましくは10000以上200000以下の範囲内であり、より好ましくは11000以上150000以下の範囲内であり、さらに好ましくは13000以上100000以下の範囲内であり、特に好ましくは14000以上80000以下の範囲内である。(A)成分のうち、1種類が重量平均分子量10000以上の高分子ウレタンアクリレートオリゴマーであると、硬化後の導電性樹脂組成物の低弾性と良好な伸張性を得ることができる。
【0017】
(A2)重量平均分子量9999以下の低分子ウレタンアクリレートオリゴマーは、重量平均分子量が、好ましくは500以上であり、より好ましくは800以上であり、さらに好ましくは1000以上であり、好ましくは8500以下であり、より好ましくは8000以下である。(A)成分のうち、1種類が重量平均分子量9999以下の低分子ウレタンアクリレートオリゴマーであると、導電性樹脂組成物の取り扱い性を損なわず、良好な作業性を維持し、硬化後の導電性樹脂組成物の低弾性と良好な伸張性を得ることができる。
【0018】
(A1)成分の市販品としては、サートマー(Sartomer)製ウレタンアクリレートオリゴマー(品名:CN9071)、サートマー(Sartomer)製ウレタンアクリレートオリゴマー(品名:CNJ966J75)が挙げられる。(A1)成分は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0019】
(A2)成分の市販品としては、根上工業株式会社製ウレタンアクリレートオリゴマー(品名:UN-6200)、荒川化学工業株式会社製ウレタンアクリレートオリゴマー(品名:ビームセット577)が挙げられる。(A2)成分は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0020】
(B)成分のラジカル重合性モノマーは、硬化後の導電性樹脂組成物に適度な弾性率、電気特性、導電性樹脂組成物の取り扱い性が良く、良好な作業性を付与する。また、(B)成分と(A1)成分を併用することで、導電性樹脂組成物の良好な取り扱い性を維持して良好な作業性を維持しつつ、硬化後に弾性率が低く、伸び率が大きく、柔軟性を有する硬化物を得ることができる。(B)成分は、硬化後の導電性樹脂組成物の適度な弾性率、電気特性、導電性樹脂組成物の取り扱い性の観点から、(B1)単官能ラジカル重合性モノマーと、(B2)多官能ラジカル重合性モノマーと、を含むことが、好ましい。
【0021】
導電性樹脂組成物は、(B)成分として(B1)単官能ラジカル重合性モノマーを含むことにより、反応性が良くなり、導電性樹脂組成物の取り扱い性が良く、良好な作業性を維持できる。。
【0022】
導電性樹脂組成物は、(B)成分として(B2)多官能ラジカル重合性モノマーを含むことにより、比較的長鎖な(B2)成分が、硬化後の導電性樹脂組成物の弾性率に大きな変化をさせることなく、導電性樹脂組成物の反応性を向上させることができる。
【0023】
(B2)多官能ラジカル重合性モノマーは、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有し、隣合う前記(メタ)アクリロイル基の間に、直鎖の炭素数が4~30のアルキレン骨格又は直鎖の炭素数が4~30のオキシアルキレン骨格を有するものであることが好ましい。(B2)多官能ラジカル重合性モノマーが、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有し、隣合う(メタ)アクリロイル基の間に、直鎖の炭素数が4~30のアルキレン骨格又は炭素数が4~30のオキシアルキレン骨格を有するものであると、硬化後に低弾性率および大きな伸び率を有し、適度な柔軟性を有する硬化物が得られる。(B2)多官能ラジカル重合性モノマーの隣合う(メタ)アクリロイル基の間のアルキレン骨格又はオキシアルキレン骨格の直鎖の炭素数が4~30であると、比較的長鎖の骨格を有し、硬化後の導電性樹脂組成物の貯蔵弾性率が、具体的には1GPa以下となり、低弾性率および大きな伸び率を有し、柔軟で伸びの良好な硬化物が得られる。(B2)多官能ラジカル重合性モノマーの隣合う(メタ)アクリロイル基の間の骨格を構成する直鎖の炭素数が3以下であると、硬化物の柔軟性に影響があり、硬化後の導電性樹脂組成物の伸び率が小さくなる場合がある。(B2)多官能ラジカル重合性モノマーの隣合う(メタ)アクリロイル基の間の骨格を構成する直鎖の炭素数が30を超えると、立体障害により反応性が低下し、導電性樹脂組成物の取り扱い性が良く、良好な作業性が低下する場合がある。(B2)多官能ラジカル重合モノマーの隣合う(メタ)アクリロイル基の間のアルキレン基又はオキシアルキレン基は、直鎖の炭素数が4~30であれば、分岐鎖を有するものであっても良い。
【0024】
(B1)成分としては、例えば下記式(1)で表されるアクリル酸イソボルニル(別名:(1R,2R,4R)-rel-1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル=アクリレート)が挙げられる。(B1)成分は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0025】
【化1】
【0026】
(B1)成分の市販品としては、サートマー(Sartomer)製アクリル酸イソボルニル(品名:SR506A)が挙げられる。
【0027】
(B2)成分としては、ジプロピレングリコールジアクリレート、下記式(2)で表され、式(2)中のnが2~15の整数であるポリエチレングリコールジアクリレートが挙げられる。
【0028】
【化2】
式(2)中、nは、2~15の整数である。
【0029】
(B2)成分の市販品としては、サートマー(Sartomer)製ジプロピレングリコールジアクリレート(品名:SR508N)、共栄社化学株式会社製ポリエチレンジアクリレート(品名:ライトアクリレート9EG-A、品名:ライトアクリレート14EG-A)等が挙げられる。(B2)成分は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0030】
(C)成分である遊離ラジカル発生硬化剤は、(A)成分および(B)成分を硬化させる。(C)成分は、(A)成分および(B)成分との反応性の観点から、過酸化物であることが、好ましい。
【0031】
(C)成分が過酸化物である場合、(C)成分の過酸化物は、165℃以下の10時間半減期温度を有することが好ましい。(C)成分が過酸化物であり、165℃以下の10時間半減期温度を有するものであると、比較的低温で導電性樹脂組成物を硬化させることができ、熱によるダメージを電子部品に与えることなく、導電性樹脂組成物を用いて電子部品をフレキシブル配線板上などに実装することができる。10時間半減期温度は、過酸化物が分解して、その量が2分の1(1/2)になるまでの時間が10時間となる時の温度をいう。(C)成分が過酸化物である場合、過酸化物は、30℃以上の10時間半減期温度を有するものであることが好ましい。(C)成分の過酸化物の10時間半減期が30℃未満のものであると、(A)成分と(B)成分の反応性が高くなりすぎ、安定性が低下する場合がある。
【0032】
(C)成分の過酸化物の市販品としては、パーオキシジカーボネート(品名:パーロイルTCP、日油株式会社、10時間半減期温度:40.8℃)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノアート(品名:パーオクタO、日油株式会社、10時間半減期温度:65.3℃)、t-ブチルクミルパーオキサイド(品名:パーブチルC、日油株式会社、10時間半減期温度:119.5℃)、ジクミルパーオキサイド(品名:パークミルD、日油株式会社、10時間半減期温度:116.4℃)、ジラウロイルパーオキサイド(品名:パーロイルL、日油株式会社、10時間半減期温度:61.6℃)、ジベンゾイルパーオキサイド(品名:ナイパーFF、日油株式会社、10時間半減期温度:73.6℃)、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(品名:パーヘキサHC、日油株式会社製、10時間半減期温度:87.1℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(品名:パーヘキサ25B、日油株式会社製、10時間半減期温度:117.9℃)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(品名:パーブチルE、日油株式会社製、10時間半減期温度:99.0℃)、α、α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(品名:パーブチルP、日油株式会社製、10時間半減期温度:119.2℃)、n-ブチル4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレラ―ト(商品名:パーヘキサV、日油株式会社、10時間半減期温度:104.5℃)、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(商品名:パーヘキシルI、日油株式会社、10時間半減期温度:95.0℃)、t-ブチルパーオキシラウレート(商品名:パーブチルL、日油株式会社、10時間半減期温度:98.3℃)、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン(商品名:パーヘキサ22、日油株式会社、10時間半減期温度:103.1℃などが挙げられる。
【0033】
(D)成分である導電性粒子は、導電性樹脂組成物に導電性を付与する。(D)成分としては、金、銀、ニッケル、銅、はんだ等の金属粒子、カーボン粒子、またはプラスチック粒子に金属メッキしたもの等の従来から公知の導電性粒子を使用することができる。
【0034】
(D)成分としては、導電性の観点から、銀粒子が好ましい。導電性粒子の形状としては、特に限定されないが、導電性、酸化還元反応による(C)成分の分解を抑制する観点から、フレーク状が好ましい。ここで、フレーク状とは、「長径/短径」の比(アスペクト比)が2以上の形状をいい、板状、鱗片状等の平板状の形状を含む。導電性粒子を構成する粒子の長径および短径は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)から得られる画像に基づいて求める(n=20)。「長径」とは、SEMにより得られた粒子画像内において、粒子の略重心を通過する線分のうち最も距離の長い径をいい、「短径」とは、SEMにより得られた粒子画像において、粒子の略重心を通過する線分のうち最も距離の短いものをいう。なお、銀粒子の形状は、異なる形状を有する銀粒子の組み合わせであっても良い。
【0035】
また、(D)成分が銀粒子である場合のタップ密度は、2.0g/cm以上が好ましく、3.0~6.0g/cmが、より好ましい。ここで、タップ密度は、JIS Z 2512 金属粉-タップ密度測定法に準拠して測定する。銀粒子のタップ密度が低過ぎると、導電性樹脂組成物の硬化物中に銀粒子を高密度に分散にさせることが難しくなり易く、硬化物の導電性が低下し易い。一方、銀粒子のタップ密度が高過ぎると、導電性樹脂組成物中で銀粒子の分離、沈降が生じ易くなる。
【0036】
(D)成分が銀粒子である場合の平均粒径(D50)は、導電性と導電性樹脂組成物の流動性の観点から、0.05~50μmであることが好ましく、0.1~20μmであることがより好ましく、0.1~15μmであることが最も好ましい。ここで、平均粒径は、レーザー回折法で測定した体積基準の粒度分布における累積頻度が50%の粒径(メジアン径)をいう。
【0037】
(D)成分が銀粒子である場合は、銀粒子の比表面積は、1.5m/g以下が好ましく、0.1~0.6m/gが、より好ましい。ここで、比表面積は、BET法で測定する。銀粒子の比表面積が大き過ぎると、ペースト化する際に、粘度が高くなり易く、取り扱い性が低下し、作業性が低下し易い。一方、銀粒子の比表面積が小さ過ぎると、銀粒子同士の接触面積が小さくなり、導電性が低下する。
【0038】
(D)成分の市販品としては、メタロー(Metalor)テクノロジーズSA製銀粉(品名:AA-9829N)が、挙げられる。(D)成分は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0039】
(A)成分は、金属ケースへの密着力の向上の観点から、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、20~79.9質量部であると好ましく、40~62質量部であると、より好ましい。(A)成分が少な過ぎると、弾性率が高くなり易く、すなわち柔軟性が小さくなり易く、(A)成分が多過ぎると、粘度が高くなり、取り扱い性が低下し、作業性が低下し易くなる。または(A)成分の立体障害の影響で抵抗値が高くなり易くなる。
【0040】
また、(A1)成分は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、10~40質量部であると好ましく、20~40質量部であると、好ましい。(A2)成分は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、10~60質量部であると好ましく、20~40質量部であると、好ましい。ここで、(A1)高分子ウレタンアクリレートオリゴマーの比率が低過ぎる、すなわち低分子ウレタンアクリレートオリゴマーの比率が高過ぎると、弾性率が高くなり易く、すなわち柔軟性が小さくなり易い。一方、逆の場合、(A1)高分子ウレタンアクリレートオリゴマーの比率が高過ぎる、すなわち低分子ウレタンアクリレートオリゴマーの比率が低過ぎると、導電性樹脂組成物の取り扱い性及び良好な作業性、硬化後の導電性樹脂組成物の電気特性が低下する。
【0041】
(B)成分は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、20~70質量部であると好ましく、35~60質量部であると、より好ましい。(B)成分が少な過ぎると、導電性樹脂組成物の粘度が高く、導電性樹脂組成物の取り扱い性が低下し、作業性が低下し易く、さらに反応性も低下し易くなる。(B)成分が、多過ぎると、導電性樹脂組成物の粘度が低くなり、導電性粒子が導電性樹脂組成物中で沈降して分散性が低下した。また、(B)成分が多過ぎると、弾性率が高くなり易く、柔軟性が失われ易い。
【0042】
また、(B1)成分と(B2)成分を使う場合には、(B)成分100質量部に対して、(B1)成分は、30~70質量部であると好ましく、40~60質量部であるとより好ましく、(B2)成分も、30~70質量部であると好ましく、40~60質量部であるとより好ましい。(B2)多官能アクリルモノマーの比率が低過ぎると、反応性が低下し、酸素阻害の影響が見え易くなり、(B2)多官能アクリルモノマーの比率が高過ぎると、粘度が高くなり、取り扱い性が低下し、作業性が低下し易い。ここでの酸素阻害とは、ラジカル重合系特有の現象であり、ラジカル重合中に、活性点であるフリーラジカルが空気中の酸素ラジカルにトラップされ、フリーラジカルが失活し、フリーラジカルが失活した時点でラジカル重合反応が止まってしまう現象をいう。(B2)多官能アクリルモノマーの比率が低過ぎると、この酸素阻害のため、導電性樹脂組成物の硬化物の表面は酸素阻害の影響で反応が進み難くなり、未硬化の状態のままとなる場合がある。ラジカル重合反応性を高くして、フリーラジカルが酸素ラジカルにトラップされる前に、ラジカル重合を進められるよう、多官能のアクリルモノマーがあると、好ましい。
【0043】
(B)成分は、(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対して、好ましくは20質量部以上80質量部未満であり、より好ましくは25~79質量部であり、さらに好ましくは30~75質量部であり、特に好ましくは35~70質量部である。導電性樹脂組成物中において、(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対して、(B)成分が20質量部以上80質量部未満であると、導電性樹脂組成物の適度な粘度を維持し、(D)導電性粒子の分散性を低下させることなく、導電性樹脂組成物の取り扱い性が良く、良好な作業性を維持しつつ、低弾性率と大きな伸長率を有する優れた柔軟性を有する硬化物が得られる。
【0044】
(C)成分は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、0.1~30質量部であると好ましく、3~10質量部であると、より好ましい。(C)成分が少な過ぎると、硬化反応性が低下し易くなる。(C)成分が多過ぎると、導電性樹脂組成物の硬化後に、未反応の(C)成分が、導電性樹脂組成物の硬化物中に残る可能性がある、または導電性樹脂組成物硬化後に残存発熱が見られる場合がある。
【0045】
(A)成分、(B)成分および(C)成分は、導電性樹脂組成物100質量部に対して、(D)成分として銀粒子を使用する場合には、5~50質量部であると好ましく、12~30質量部であるとより好ましい。
【0046】
(D)成分は、導電性樹脂組成物100体積%に対して、10~50体積%であると好ましく、20~44体積%であると、より好ましい。(D)成分が少な過ぎると、硬化後の導電性樹脂組成物の導電性が低下し易くなる、場合によっては導通が取れなくなる。(D)成分が多過ぎると、導電性樹脂組成物中の樹脂成分が少なくなり、弾性率(すなわち柔軟性)、接着強度等に影響を与える場合がある。(D)成分の体積は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分のそれぞれの含有量(質量基準)と比重から算出することができる。
樹脂組成物が前記(A)成分~(D)成分のみからなる場合には、熱重量分析(TGA:Thermogravimetric analysis)により、(D)成分の含有量(体積部)を算出することもできる。導電性樹脂組成物を600~900℃まで昇温して樹脂分を分解・揮発させると、(D)成分のみが残り、導電性樹脂組成物が含有する(D)成分の質量を測定することができる。導電性樹脂組成物の質量からフィラーの質量を減ずることにより、(D)成分以外の成分((A)成分~(C)成分)の質量を算出することができる。その後、(D)成分および(D)成分以外の成分の比重をアルキメデス法により測定し、先に求めた質量を比重で除することにより、それぞれの成分の体積を算出することができる。
【0047】
(D)成分に銀粒子を使用する場合には、(D)成分は、導電性樹脂組成物100質量部に対して、50~95質量部であると好ましく、70~88質量部であると、より好ましい。
【0048】
導電性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに必要に応じ、作業性向上のための揺変剤、カップリング剤、カーボンブラックなどの顔料、イオントラップ剤、染料、消泡剤、破泡剤、酸化防止剤、重合禁止剤、その他の添加剤等、更に反応性希釈剤、有機溶剤等を配合することができる。
【0049】
本発明の導電性樹脂組成物は、例えば、(A)成分~(D)成分および必要に応じてその他の添加剤等を同時にまたは別々に、必要により加熱処理を加えながら、撹拌、溶融、混合、分散させることにより得ることができる。これらの混合、撹拌、分散等の装置としては、特に限定されるものではないが、撹拌、加熱装置を備えたライカイ機、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル等を使用することができる。また、これら装置を適宜組み合わせて使用しても良い。
【0050】
本発明の導電性接着剤の硬化は、好ましくは60~180℃、より好ましくは70~175℃、さらに好ましくは75~170℃で行う。導電性接着剤の硬化は、好ましくは1~150分間、より好ましくは5~120分間、さらに好ましくは10~90分間行う。
【0051】
硬化後の導電性樹脂組成物の貯蔵弾性率は、0.01~2.5GPaであると、応力の集中が避けられるため、好ましい。
【0052】
〔導電性接着剤〕
本発明の導電性接着剤は、上述の導電性樹脂組成物を含む。この導電性接着剤は、FHE分野用や電子テキスタイル(e-textile)の導電性接着剤の用途に、非常に適している。
【0053】
〔半導体装置〕
本発明の半導体装置は、上述の導電性樹脂組成物の硬化物を含む。半導体装置としては、HE分野用や電子テキスタイル(e-textile)が、挙げられる。
【実施例
【0054】
本発明について、実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、部、%はことわりのない限り、質量部、質量%を示す。
【0055】
以下の原料を使用した。
(A)ウレタンアクリレートオリゴマー
(A1)成分:重量平均分子量10000以上の高分子ウレタンアクリレートオリゴマー
(A1-1):サートマー(Sartomer)製ウレタンアクリレートオリゴマー(品名:CN9071)、重量平均分子量Mw:24000。
(A1-2):サートマー(Sartomer)製ウレタンアクリレートオリゴマー(品名:CN9071)、重量平均分子量Mw:14000。
【0056】
(A2)成分:重量平均分子量9999以下の低分子ウレタンアクリレートオリゴマー
(A2-1):根上工業株式会社製ウレタンアクリレートオリゴマー(品名:UN-6200)、重量平均分子量Mw:6500。
(A2-2):荒川化学工業株式会社製ウレタンアクリレートオリゴマー(品名:ビームセット577)、重量平均分子量Mw:約1000。
(A)ウレタンアクリレートオリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、いずれもゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算の重量平均分子量を測定した。
【0057】
(B)ラジカル重合性モノマー(B1)成分:単官能ラジカル重合性モノマー
(B1-1):サートマー(Sartomer)製アクリル酸イソボルニル(品名:SR506A)
【0058】
(B2)成分:多官能ラジカル重合性モノマー
(B2-1):サートマー(Sartomer)製ジプロピレングリコールジアクリレート(品名:SR508)、下記式(2)で表され、下記式(2)中、nが2であり、隣合う2つの(メタ)アクリロイル基の間の直鎖の炭素数が4である。
【0059】
【化3】
【0060】
(B2-2)共栄社化学株式会社製ポリエチレングルコールジアクリレート(品名:ライトアクリレート9EG-A(2官能)、上記式(2)で表され、上記式(2)中、nが9であり、隣合う2つの(メタ)アクリロイル基の間の直鎖の炭素数が18である。
【0061】
(B2-3)共栄社化学株式会社製ポリエチレングルコールジアクリレート(品名:ライトアクリレート14EG-A(2官能)、上記式(2)で表され、上記式(2)中、nが14であり、隣合う2つの(メタ)アクリロイル基の間の直鎖の炭素数が28である。
【0062】
(B2’-4)共栄社化学株式会社製ネオペンチルグリコールジアクリレート(品名:ライトアクリレートNP-A(2官能)、下記式(3)で表され、隣合う2つの(メタ)アクリロイル基の間の直鎖の炭素数が3である。
【0063】
【化4】
【0064】
(B2’-5)サートマー(Sartomar)社製トリメチロールプロパントリアクリレート(品名:SR305(3官能)、下記式(4)で表され、隣合う2つの(メタ)アクリロイル基の間の直鎖の炭素数が3である。
【0065】
【化5】
【0066】
(C)遊離ラジカル発生硬化剤:過酸化物
(C-1)日油株式会社製パーオキシジカーボネート(品名:パーロイルTCP、10時間半減期温度:40.8℃)。
(C-2)日油株式会社製1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノアート(品名:パーオクタO、10時間半減期温度:65.3℃)。
(C-3)日油株式会社製ジクミルパーオキサイド(品名:パークミルD、10時間半減期温度:116.4℃)。(C-4)日油株式会社製t-ブチルハイドロパーオキサイド(品名:パーブチルH、日油株式会社製、10時間半減期温度:166.5℃)。
【0067】
(D)導電性粒子
(D)成分:メタロー(Metalor)テクノロジーズSA製銀粉(品名:AA-9829N、フレーク状、平均粒子径:10.1μm、タップ密度:5.0g/cm、比表面積:0.2m/g)。
【0068】
〔実施例1〕
(A1)成分を7.7質量部、(A2)成分を4.2質量部、(B1)成分を3.7質量部、(B2)成分を3.7質量部、(C)成分を0.80質量部、(D)成分を80.00質量部の配合で、3本ロールミルを用いて混合し、導電性樹脂組成物を作製した。
【0069】
〔実施例2~14〕
(A1)成分、(A2)成分、(B1)成分、(B2)成分、(C)成分および(D)成分を、表1に示す配合で、3本ロールミルを用いて混合し、導電性樹脂組成物を作製した。
【0070】
〔比較例1〕
(A1)成分を6.72質量部、(B1)成分を6.72質量部、(C)成分を0.56質量部、(D)成分を86.00質量部の配合で、3本ロールミルを用いて混合し、導電性樹脂組成物を作製した。
【0071】
実施例および比較例の各導電性樹脂組成物、ならびに硬化後の各導電性樹脂組成物について、以下の評価を行った。結果を表1および2に示す。
【0072】
〔評価〕
〔粘度の測定〕
実施例および比較例の各導電性樹脂組成物を、ブルックフィールドB型粘度計(型番:DV3T、コーンスピンドル:CPA-52Z、コーンプレート温度:25℃)を使用し、10rpmで粘度を測定した。
【0073】
〔ダイ剪断強度の測定〕
基板にはFR4を、ダイには3mm□のSiダイを、準備した。φ2mmの孔があいたポリイミドフィルム孔版(厚さ:120μm)を使用し、導電性樹脂組成物をFR4(ガラス・エポキシ)基板上に印刷した。その後、3mm□のSiダイをマウントし、Airコンベンションオーブン中で、80℃で30分間硬化させ、ダイ剪断強度測定用試料を作製した。ノードソンDAGE製卓上強度試験器(型番:4000PLUS-CART-S200KG)を使用して、室温で、ダイ剪断強度を測定した(n=10)。各実施例および比較例について、10個のダイ剪断強度測定試料を測定し、その算術平均値をダイ剪断強度とした。
【0074】
〔比抵抗の測定〕
ガラス基板上に、2枚の約85~95μm厚のテープを、3mm間隔で平行に貼り、この2枚のテープ間に、幅:3mm×長さ:50mm×厚さ:約90μmの導電性樹脂組成物膜を印刷した後、Airコンベンションオーブン中で、80℃で30分間硬化させた。硬化後の導電性樹脂組成物膜の膜厚を測定した後、4端子法で、抵抗値を測定し、比抵抗を求めた。
【0075】
〔貯蔵弾性率の測定〕
テフロンテープを張り付けたスライドガラス上に、硬化した時の膜厚が200±50μmとなるように、導電性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、Airコンベンションオーブン中で、80℃で30分間放置して、硬化させた。この塗膜を、ステンレス板から剥がした後、カッターで所定寸法(20mm×5mm)に切り取った。なお、切り口はサンドペーパーで滑らかに仕上げた。この塗膜を、JIS C6481に従い、日立ハイテクサイエンス製粘弾性測定装置(DMA)(型番:DMS7100)を用い、変形モード:引っ張り(Tension)、測定モード:ランプ(Ramp)、周波数:10Hz、歪振り幅:5μm、最小張力/圧縮力:50mN、張力/圧縮力ゲイン:1.2、力振幅初期値:50mN、移動待ち時間:8秒、クリープ待ち時間係数:0、25℃の条件で測定した。
【0076】
〔伸び率による電気抵抗変化測定〕
図1に、伸び率による電気抵抗変化の測定方法を説明するための図を示す。ビーマス(BEMIS)社製熱可塑性ポリウレタンシート(品名:ST-604)(TPU)上に、ナミックス製回路用ストレッチャブル導電性銀ペーストを、乾燥後膜厚が15~25μmになるようにスクリーン印刷し、その後、120℃で30分間乾燥させ、導電性インク層(Conductive Ink)を形成した。導電性インク層上に、作製した導電性樹脂組成物を、1mm□の孔があいた孔版(ポリイミド孔版、膜厚:120μm)を用い、パターンを形成(Conductive Adhesive)した後、3216サイズの積層セラミックコンデンサ(MLCC:Multi Layer Ceramic Capacitor)(3216サイズのMLCC)を搭載し、Airコンベンションオーブン中で80℃で30分間硬化させ、試料を作製した。その後、図1に示すように、3216サイズのMLCCの一方の電極と、導電性インク層との間の電気抵抗値を、デジタルマルチメーターを使用して4端子法で測定した。
【0077】
図2に、伸び率の測定方法を説明するための図を示す。図2の一番左に示すように、ストレッチングツールを用い、サンプルを固定し、MLCCの一方の電極と導電性インク層との間の電気抵抗を4端子法で測定した。その後、ストレッチングツールで試料を10%ずつ伸ばして固定し、都度、MLCCの一方の電極と導電性インク層との間の電気抵抗値をデジタルマルチメーターを使用して測定した。表1に、TPUからMLCCが外れるまでの伸び率を示す。
【0078】
〔信頼性評価〕
〔HTHH(高温高湿)後貯蔵弾性率〕
弾性率の測定方法と同様に作製した試料の信頼性評価を行った。試料を、85℃/85%の高温高湿(HTHH)下で、24、48、96、250時間保持した後、25℃で抵抗値を測定した。次に、25℃で弾性率を測定した。図3に、実施例1および比較例1のHTHH保持時間と弾性変化の関係を示す。
【0079】
〔抗値変化(倍率)〕
次に、貯蔵弾性率の測定方法と同様に作製した試料を、85℃/85%の高温高湿(HTHH)下で、24、48、96、250時間保持し、20%伸長させた後、25℃で抵抗値を測定した。次に、HTHH前の抵抗値を1としたときの抵抗値変化(倍率)を求めた。図4に、実施例1のHTHH保持時間と抵抗値変化の関係を示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1からわかるように、実施例1は、低粘度で、80℃で30分の低温短時間で硬化し、硬化雰囲気が大気中のダイ剪断強度が高く、比抵抗は低く、貯蔵弾性率が低く、伸び率20%の伸長後も抵抗値変化が小さかった。これに対して、比較例1は、貯蔵弾性率が高かった。また、比較例1は、伸び率20%の伸長後では、TPUからMLCCが外れた。
【0082】
図3からわかるように、実施例1は、HTHH保持後も貯蔵弾性率の変化が少なかった。これに対して、比較例1は、HTHH保持後に貯蔵弾性率の変化が大きくなった。また、図4からわかるように、実施例1は、HTHH保持後、20%の伸長後であっても抵抗値変化があまり大きくならず、信頼性を保持していた。なお、図4に記載していないが、比較例1の20%の伸長後の抵抗値変化は、HTHH前で3.58であり、HTHH保持後には、20%伸張後にTPUからMLCCが外れ、抵抗値を測定することはできなかった。
【0083】
実施例1、3および4は、(A1)重量平均分子量が10000以上の高分子ウレタンアクリレートオリゴマーと(A2)重量平均分子量が9999以下の低分子ウレタンアクリレートオリゴマーの両方を含むので、ダイ剪断強度が高く、比抵抗は低く、貯蔵弾性率が低く、伸び率も高く、導電性樹脂組成物の取り扱い性を損なわず、低弾性と良好な伸張性を有する硬化物を得ることができた。実施例2は、2種の(A1)平均分子量が10000以上の高分子ウレタンアクリレートオリゴマーを含むため、導電性樹脂組成物の粘度が100Pa・s以上と高くなり、取り扱い性が低下し、作業性に影響があった。実施例5は、2種の(A2)平均分子量9999以下の低分子ウレタンアクリレートオリゴマーを含むので、架橋点が多くなることで架橋密度が大きくなり、硬化後の導電性樹脂組成物の弾性率が2.5GPaを超えて高くなった。
【0084】
実施例1から4の硬化後の導電性樹脂組成物は、HTHHで250時間保持した後も、貯蔵弾性率が2.0G・Pa以下となった。実施例5の硬化後の導電性樹脂組成物は、HTHHで250時間保持した後も貯蔵弾性率に大きな変化はなかった。一方、比較例1の硬化後の導電性樹脂組成物は、HTHHで250時間保持した後は、貯蔵弾性率が2.5GPaを超えていた。
また、実施例1から4の硬化後の導電性樹脂組成物は、HTHHで保持する時間が長くなるほど、HTHH保持前に伸長させない状態と比べて、20%伸長後の抵抗値の変化は大きくなった。
【0085】
【表2】
【0086】
実施例7および8は、(B1)単官能ラジカル重合性モノマーと(B2)多官能ラジカル重合性モノマーを含み、(B2)多官能ラジカル重合性モノマーが、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し、隣合う2つの(メタ)アクリロイル基の間の直鎖の炭素数が4~30のオキシアルキレン骨格を有するため、硬化後の導電性樹脂組成物は、低弾性率および大きな伸び率を有し、適度な柔軟性を有していた。実施例7および8の硬化後の導電性樹脂組成物は、HTHH(高温高湿)で250時間保持した後も、貯蔵弾性率が2.0G・Pa以下となった。また、実施例7および8の硬化後の導電性樹脂組成物は、HTHHで保持する時間が250時間と長くなっても、HTHH保持前に伸長させない状態と比べて、20%伸長後の抵抗値の変化は小さかった。
実施例6および9は、(B1)単官能ラジカル重合性モノマーと、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し、隣合う2つの(メタ)アクリロイル基の間の直鎖の炭素数が3のオキシアルキレン骨格を有する(B2’)多官能ラジカル重合性モノマーを含むため、硬化後の導電性樹脂組成物の弾性率が実施例6および9よりも高くなり、伸び率が10%となった。
【0087】
実施例10および11は、(C)遊離ラジカル発生硬化剤が過酸化物であり、165℃以下の10時間半減期温度を有するものを含むため、80℃で30分間の低温短時間で硬化し、硬化後の導電性樹脂組成物のダイ剪断強度が高く、比抵抗は低く、弾性率が低く、伸び率も高く、導電性樹脂組成物の取り扱い性を損なわず、低弾性と良好な伸張性を有する硬化物を得ることができた。実施例10および11の硬化後の導電性樹脂組成物は、HTHHで250時間保持した後も、貯蔵弾性率が2.0G・Pa以下となった。また、実施例10および11の硬化後の導電性樹脂組成物は、HTHHで保持する時間が250時間と長くなるほど、HTHH保持前に伸長させない状態と比べて、20%伸長後の抵抗値の変化が大きくなった。
実施例12は、(C)遊離ラジカル発生硬化剤が過酸化物であり、165℃を超える10時間半減期温度を有するものを含むため、80℃で30分間の低温短時間では硬化しなかった。
【0088】
実施例13は、導電性樹脂組成物中の(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して(B)成分が20質量部であるので、導電性樹脂組成物中の(D)導電性粒子の分散性を低下させることなく、導電性樹脂組成物は、取り扱い性の良好な粘度を維持し、硬化後の導電性樹脂組成物のダイ剪断強度が高く、比抵抗は低く、弾性率が低く、伸び率も高く、導電性樹脂組成物の取り扱い性を損なわず、作業性が良く、低弾性と良好な伸張性を有する硬化物を得ることができた。実施例13の硬化後の導電性樹脂組成物は、HTHHで250時間保持した後も、貯蔵弾性率が2.0G・Pa以下となった。また、実施例13の硬化後の導電性樹脂組成物は、HTHHで保持する時間が250時間と長くなるほど、HTHH保持前に伸長させない状態と比べて、20%伸長後の抵抗値の変化が大きくなった。
実施例14は、導電性樹脂組成物中の(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して(B)成分が80質量部であり、導電性樹脂組成物の粘度が低下し、(D)導電性粒子が導電性樹脂組成物中で沈降し、(D)導電性粒子の分散性を維持しにくく硬化後の導電性樹脂組成物の貯蔵弾性率が高くなり、伸び率も10%となった。実施例14の硬化後の導電性樹脂組成物は、HTHHで250時間保持した後は、貯蔵弾性率が3.4G・Paと大きくなった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
上記のように、本発明の導電性樹脂組成物は、低温速硬化型の低弾性導電性接着剤に適しており、FHE分野向け部品実装用導電性接着剤として非常に適している。
図1
図2
図3
図4