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特許7373303光学積層体、偏光板複合体、及び画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】光学積層体、偏光板複合体、及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231026BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20231026BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20231026BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231026BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20231026BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20231026BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20231026BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20231026BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20231026BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J163/00
B32B7/023
B32B27/00 D
B32B27/16 101
B32B27/38
H10K59/10
G02F1/1335 510
G02F1/13363
G09F9/00 313
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019092330
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2020056988
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2018184600
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 政大
(72)【発明者】
【氏名】永安 智
(72)【発明者】
【氏名】李 正銀
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-017996(JP,A)
【文献】特開2015-172132(JP,A)
【文献】特開2018-141061(JP,A)
【文献】特開2018-109143(JP,A)
【文献】国際公開第2012/173055(WO,A1)
【文献】特開2014-037477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H10K 59/10 - 59/19
G02F 1/1335
G02F 1/13363
B32B 7/023
B32B 27/00
B32B 27/16
B32B 27/38
C09J 163/00
C09J 163/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光学層と、活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させてなる第1接着層と、第2光学層とをこの順に備え、
第1光学層は、第1接着層側の表面が液晶化合物からなる液晶層であり、
前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、硬化性成分と、カチオン重合開始剤とを含み、
前記硬化性成分は、全量を100質量部とすると、
温度25℃での粘度が30Pa・s以下である多官能芳香族エポキシ化合物を10~90質量部含み、
脂環式エポキシ化合物又は単官能エポキシ化合物を含んでいてもよく、
前記脂環式エポキシ化合物の含有量が25質量部未満であり、
前記単官能エポキシ化合物の含有量が20質量部未満であり、
前記第1接着層は、波長589nmでの屈折率が1.53以上である、光学積層体。
【請求項2】
前記多官能芳香族エポキシ化合物の含有量が、硬化性成分の全量100質量部に対して、30~75質量部である、請求項に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記多官能芳香族エポキシ化合物は、ナフタレン型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、又はこれらの組み合わせである、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、オキセタン化合物を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、温度25℃での粘度が0.18Pa・s以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、溶剤を含まない、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記第2光学層は、第1接着層側の表面が液晶化合物からなる液晶層である、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記第1接着層は、厚みが5μm以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項9】
前記第1光学層及び前記第2光学層は、位相差層である、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項10】
前記第1光学層は1/2波長層であり、前記第2光学層は1/4波長層である、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項11】
直線偏光板と、前記直線偏光板に積層された請求項1~10のいずれか1項に記載の光学積層体とを含み、
前記光学積層体は、前記第1光学層が前記直線偏光板側に位置する向きで積層されている、偏光板複合体。
【請求項12】
円偏光板である、請求項11に記載の偏光板複合体。
【請求項13】
画像表示パネルと、前記画像表示パネルの視認側に配置された請求項11又は12に記載の偏光板複合体とを含む、画像表示装置。
【請求項14】
前記偏光板複合体は、前記直線偏光板が視認側に位置する向きで配置されている、請求項13に記載の画像表示装置。
【請求項15】
有機エレクトロルミネッセンス表示装置である、請求項13又は14に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体、当該光学積層体と直線偏光板とを有する偏光板複合体、及び当該偏光板複合体を有する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示装置において、画像表示パネルの視認側に反射防止性能を有する光学積層体を配置して、外来光の反射による視認性の低下を抑制する方法が採用されている。
【0003】
反射防止性能を有する光学積層体として、直線偏光板及び位相差層により構成される円偏光板が知られている。円偏光板では、画像表示パネルに向かう外来光を直線偏光板により直線偏光に変換し、続く位相差層により円偏光に変換する。円偏光に変換された外来光は、画像表示パネルの表面で反射されるものの、この反射の際に偏光面の回転方向が逆転し、位相差層により直線偏光に変換された後、続く直線偏光板により遮光される。その結果、外部への出射が著しく抑制される。
【0004】
円偏光板の構成要素として、複数の位相差層を接着層で接着してなる光学積層体が知られている。例えば、特許文献1,2には、1/2波長層と1/4波長層とを接着層で接着してなる光学積層体が記載されている。1/2波長層と1/4波長層は、液晶化合物からなる液晶層を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-21975号公報
【文献】特開2015-21976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光学積層体は、単独で、又は他の光学部材と組み合わされた構成で屈曲されることがある。例えば、搬送、巻き取り等の工程でロール状部材に接触することにより、又は、屈曲部を有する画像表示パネルの表面に配置されることにより、屈曲されることがある。光学積層体は、屈曲されている部分でシワが生じやすいとの問題があった。
【0007】
また、光学積層体において、接着層が液晶層と接する場合には、高い接着性を得にくいとの問題があった。
【0008】
本発明は、良好な接着性を有する接着層を備え、かつ、屈曲された場合であっても屈曲されている部分で生じるシワの発生を抑制し得る光学積層体、当該光学積層体と直線偏光板とを有する偏光板複合体、及び当該偏光板複合体を有する画像表示装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は干渉ムラが抑制された光学積層体、当該光学積層体と直線偏光板とを有する偏光板複合体、及び当該偏光板複合体を有する画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下に示す光学積層体、偏光板複合体、及び画像表示装置を提供する。
〔1〕 第1光学層と、活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させてなる第1接着層と、第2光学層とをこの順に備え、
第1光学層は、第1接着層側の表面が液晶化合物からなる液晶層であり、
前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、硬化性成分と、カチオン重合開始剤とを含み、
前記硬化性成分は、全量を100質量部とすると、
温度25℃での粘度が30Pa・s以下である多官能芳香族エポキシ化合物を10~90質量部含み、
脂環式エポキシ化合物又は単官能エポキシ化合物を含んでいてもよく、
前記脂環式エポキシ化合物の含有量が25質量部未満であり、
前記単官能エポキシ化合物の含有量が20質量部未満であり、
前記第1接着層は、波長589nmでの屈折率が1.53以上である、光学積層体。
〔2〕 第1光学層と、活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させてなる第1接着層と、第2光学層とをこの順に備える光学積層体であって、
前記第1光学層側の最表面から検査光を照射した際に生じる反射光の輝度に基づいて取得される前記最表面上の第1直線に沿った輝度分布において、最大輝度に対する最小輝度の比が40%以上である、光学積層体。
〔3〕 前記第1光学層は、第1接着層側の表面が液晶化合物からなる液晶層であり、
前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、硬化性成分と、カチオン重合開始剤とを含み、
前記硬化性成分は、全量を100質量部とすると、
温度25℃での粘度が30Pa・s以下である多官能芳香族エポキシ化合物を10~90質量部含み、
脂環式エポキシ化合物又は単官能エポキシ化合物を含んでいてもよく、
前記脂環式エポキシ化合物の含有量が25質量部未満であり、
前記単官能エポキシ化合物の含有量が20質量部未満であり、
前記第1接着層は、波長589nmでの屈折率が1.53以上である、請求項2に記載の光学積層体。
〔4〕 前記多官能芳香族エポキシ化合物の含有量が、硬化性成分の全量100質量部に対して、30~75質量部である、〔1〕又は〔3〕に記載の光学積層体。
〔5〕 前記多官能芳香族エポキシ化合物は、ナフタレン型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、又はこれらの組み合わせである、〔1〕、〔3〕及び〔4〕のいずれか1項に記載の光学積層体。
〔6〕 前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、オキセタン化合物を含む、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の光学積層体。
〔7〕 前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、温度25℃での粘度が0.18Pa・s以下である、〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の光学積層体。
〔8〕 前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、溶剤を含まない、〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の光学積層体。
〔9〕 前記第2光学層は、第1接着層側の表面が液晶化合物からなる液晶層である、〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の光学積層体。
〔10〕 前記第1接着層は、厚みが5μm以下である、〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の光学積層体。
〔11〕 前記第1光学層及び前記第2光学層は、位相差層である、〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載の光学積層体。
〔12〕 前記第1光学層は1/2波長層であり、前記第2光学層は1/4波長層である、〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載の光学積層体。
〔13〕 直線偏光板と、前記直線偏光板に積層された〔1〕~〔12〕のいずれか1項に記載の光学積層体とを含み、
前記光学積層体は、前記第1光学層が前記直線偏光板側に位置する向きで積層されている、偏光板複合体。
〔14〕 円偏光板である、〔13〕に記載の偏光板複合体。
〔15〕 画像表示パネルと、前記画像表示パネルの視認側に配置された〔13〕又は〔14〕に記載の偏光板複合体とを含む、画像表示装置。
〔16〕 前記偏光板複合体は、前記直線偏光板が視認側に位置する向きで配置されている、〔15〕に記載の画像表示装置。
〔17〕 有機エレクトロルミネッセンス表示装置である、〔15〕又は〔16〕に記載の画像表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学積層体によれば、優れた接着性を有する接着層を備え、かつ、屈曲された場合であっても屈曲されている部分で生じるシワの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の光学積層体を模式的に示す概略断面図である。
図2】液晶層を有する位相差層の一例を模式的に示す概略断面図である。
図3】(A)~(C)は、第1実施形態の光学積層体の製造方法における各製造工程の一例を模式的に示す概略断面図である。
図4】光学積層体の検査方法を説明するための図である。
図5】光学積層体が有するλ/2位相差層及びλ/4位相差層の配置関係を説明する図である。
図6】光学積層体に対する第1偏光フィルター及び第2偏光フィルターの配置関係を説明する図である。
図7】光学積層体が矩形である場合において、MD方向(搬送方向)に対する光学積層体の向きを説明するための図である。
図8】実施例19について第1直線に沿った輝度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の光学積層体及び偏光板複合体について説明する。
【0014】
[光学積層体]
本発明の光学積層体の一例は、第1光学層と、活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させてなる第1接着層と、第2光学層とをこの順で備える。第1光学層は、第1接着剤層側の表面が液晶化合物からなる液晶層である。
【0015】
本発明の光学積層体の他の例は、第1光学層と、活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させてなる第1接着層と、第2光学層とをこの順に備え、第1光学層側の最表面から検査光を照射した際に生じる反射光の輝度に基づいて取得される前記最表面上の第1直線に沿った輝度分布において、最大輝度に対する最小輝度の比が40%以上である。第1光学層は、第1接着剤層側の表面が液晶化合物からなる液晶層であってもよい。
【0016】
光学積層体の厚みは、薄型化の観点から、2μm~100μmであることが好ましく、2μm~50μmであることがさらに好ましい。光学積層体の形態は、ロール・トゥ・ロール方式などにより作製された長尺状のもの、長尺状であってロール状に巻き取られたフィルムロール状のもの、長尺状のものを裁断することによって作製された枚葉状のもの(枚葉体)などが挙げられる。枚葉体の形状は特に制限されないが、長辺と短辺とを有する方形形状を有することが好ましく、典型的には長方形である。長辺及び短辺の長さは特に制限されないが、通常、枚葉体の長辺は50mm以上であり、短辺は30mm以上である。枚葉体の大きさは、例えば、長辺は300~1500mm、短辺は300~1500mmである。
【0017】
<活性エネルギー線硬化型接着剤>
活性エネルギー線硬化型接着剤の一形態は、活性エネルギー線を照射して硬化するものである。活性エネルギー線硬化型接着剤は、硬化性成分と、カチオン重合開始剤(D)とを含む。硬化性成分は、多官能芳香族エポキシ化合物(A)を含み、脂環式エポキシ化合物(B)又は単官能エポキシ化合物(C)を含んでいてもよい。活性エネルギー線硬化型接着剤中の硬化性成分は、硬化性成分の全量を100質量部とすると、
多官能芳香族エポキシ化合物(A)として、温度25℃での粘度が30Pa・s以下である多官能芳香族エポキシ化合物を10~90質量部、好ましくは30~75質量部含み、
脂環式エポキシ化合物(B)を25質量部未満、例えば1~22質量部含み、
単官能エポキシ化合物(C)を20質量部未満、例えば1~18質量部含む。
【0018】
硬化性成分は、多官能芳香族エポキシ化合物(A)、脂環式エポキシ化合物(B)及び単官能エポキシ化合物(C)以外の化合物を含んでいてもよく、多官能脂肪族エポキシ化合物(E)、オキセタン化合物(F)を含んでいてもよい。活性エネルギー線硬化型接着剤中の硬化性成分は、硬化性成分の全量を100質量部とすると、
多官能脂肪族エポキシ化合物(E)を例えば1~50質量部含み、
オキセタン化合物(F)を例えば1~50質量部含む。
活性エネルギー線硬化型接着剤は、溶剤を含まないことが好ましい。以下、各成分について詳細を説明する。
【0019】
(1)硬化性成分
(多官能芳香族エポキシ化合物(A))
多官能芳香族エポキシ化合物(A)は、エポキシ基を2つ以上有し、芳香環を有する化合物である。ただし、本明細書でいう多官能芳香族エポキシ化合物(A)は、脂環式エポキシ化合物(B)に含まれる、分子内に脂環式エポキシ基を有する化合物を除く。脂環式エポキシ基については後述する。
【0020】
多官能芳香族エポキシ化合物(A)の具体例は、ナフタレン、又はナフタレン誘導体のポリグリシジルエーテル化物(「ナフタレン型エポキシ化合物」とも称する。);ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール誘導体のポリグリシジルエーテル化物(「ビスフェノールA型エポキシ化合物」、「ビスフェノールF型エポキシ化合物」とも称する。);エポキシノボラック樹脂;レゾルシノールやハイドロキノン、カテコール等の2個以上のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル化物;ベンゼンジメタノールやベンゼンジエタノール、ベンゼンジブタノール等のアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル化物;フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の2個以上のカルボキシル基を有する多塩基酸芳香族化合物のポリグリシジルエステル;安息香酸のグリシジルエステルやトルイル酸、ナフトエ酸のポリグリシジルエステル等;スチレンオキサイドやアルキル化スチレンオキサイド、ビニルナフタレンのエポキシ化物等のスチレンオキサイド類又はジビニルベンゼンのジエポキシ化物等が挙げられる。
【0021】
本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化性成分は、全量を100質量部とすると、多官能芳香族エポキシ化合物(A)として、温度25℃での粘度が30Pa・s以下である多官能芳香族エポキシ化合物を10~90質量部、好ましくは30~75質量部含む。多官能芳香族エポキシ化合物(A)として、温度25℃での粘度が30Pa・s以下である多官能芳香族エポキシ化合物を用いることにより、活性エネルギー線硬化型接着剤の粘度を低くすることができる。また、接着剤硬化層の屈折率を向上させ、接着性を向上させ、かつ屈曲した際に光学積層体に生じるシワを抑制することができる。
【0022】
温度25℃での粘度が30Pa・s以下である多官能芳香族エポキシ化合物は、市販品を用いることができ、例えば、“デナコールEX-201”、“デナコールEX-711”及び“デナコールEX-721”(以上、いずれもナガセケムテックス(株)製);“オグソールEG-280”及び“オグソールCG-400”(以上、いずれも大阪ガスケミカル(株)製);“EXA-80CRP”及び“HP4032D”(以上、いずれもDIC(株)製);““jER828”及び“jER828EL”(以上、いずれも三菱ケミカル(株)製);“アデカレジンEP-4100”、“アデカレジンEP-4100G”、“アデカレジンEP-4100E”、“アデカレジンEP-4100L”、“アデカレジンEP-4100TX”、“アデカレジンEP-4000”、“アデカレジンEP-4005”、“アデカレジンEP-4901”、“アデカレジンEP-4901E”、(以上、いずれも(株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0023】
温度25℃での粘度が30Pa・s以下である多官能芳香族エポキシ化合物としては、1種の化合物を単独で用いても、異なる複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
(脂環式エポキシ化合物(B))
脂環式エポキシ化合物(B)は、脂環式エポキシ基を1つ以上有する化合物である。脂環式エポキシ化合物(B)は、脂環式エポキシ基を1つ以上有する化合物であれば、脂環式エポキシ基以外のエポキシ基をさらに有していてもよい。本明細書において、脂環式エポキシ基とは、脂環式環に結合したエポキシ基を意味し、下記式(a)で示される構造における橋かけの酸素原子-O-を意味する。
【0025】
【化1】
【0026】
上記式(a)中、mは2~5の整数である。上記式(a)における(CH中の1個または複数個の水素原子を取り除いた形の基が他の化学構造に結合している化合物が、脂環式エポキシ化合物(B)となり得る。(CH中の1個または複数個の水素原子は、メチル基やエチル基のような直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。脂環式エポキシ化合物(B)により、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化速度を調整することができ、また良好な高温耐性を有する接着剤硬化層を得ることができる。
【0027】
脂環式エポキシ化合物(B)の具体例は、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、1,2-エポキシ-1-メチル-4-(1-メチルエポキシエチル)シクロヘキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル メタアクリレート、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの4-(1,2-エポキシエチル)-1,2-エポキシシクロヘキサン付加物、エチレン ビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、オキシジエチレン ビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、1,4-シクロヘキサンジメチル ビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、および3-(3,4-エポキシシクロヘキシルメトキシカルボニル)プロピル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。
【0028】
脂環式エポキシ化合物(B)の中でも、適度な硬化性を有するとともに、比較的廉価に入手できることから、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましく用いられる。脂環式エポキシ化合物(B)としては、1種の脂環式エポキシ化合物を単独で用いても、異なる複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
脂環式エポキシ化合物(B)は、市販品を用いることができ、例えば、それぞれ商品名で、(株)ダイセルから販売されている“セロキサイド(登録商標)”シリーズ及び“サイクロマー(登録商標)”、ダウケミカル社から販売されている“サイラキュア UVR”シリーズ等が挙げられる。
【0030】
(単官能エポキシ化合物(C))
単官能エポキシ化合物(C)は、エポキシ基を1つ有する化合物である。ただし、本明細書でいう単官能エポキシ化合物(C)は、脂環式エポキシ化合物(B)に含まれる、脂環式エポキシ基を分子内に有する化合物を除く。単官能エポキシ化合物(C)は、芳香環を分子内に有していてもよく、有していなくてもよい。単官能エポキシ化合物(C)により、活性エネルギー線硬化型接着剤の粘度を調整することができる。
【0031】
芳香環を有する単官能エポキシ化合物(C)としては、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール等の1価フェノール若しくはビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール誘導体、又はそれらのアルキレンオキサイド付加物のモノグリシジルエーテル化物;エポキシノボラック樹脂;レゾルシノールやハイドロキノン、カテコール等の2個以上のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物のモノグリシジルエーテル化物;ベンゼンジメタノールやベンゼンジエタノール、ベンゼンジブタノール等のアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のモノグリシジルエーテル化物;フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の2個以上のカルボキシル基を有する多塩基酸芳香族化合物のモノグリシジルエステル;安息香酸のグリシジルエステルやトルイル酸、ナフトエ酸のモノグリシジルエステル等が挙げられる。
【0032】
芳香環を有しない単官能エポキシ化合物(C)としては、脂肪族アルコールのグリシジルエーテル化物、アルキルカルボン酸のグリシジルエステル等が挙げられ、その具体例は、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、炭素数12及び13混合アルキルグリシジルエーテル、アルコールのグリシジルエーテル、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル等を含む。単官能エポキシ化合物(C)としては、1種の単官能エポキシ化合物を単独で用いても、異なる複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
単官能エポキシ化合物(C)は市販品を用いることができ、例えば、“EX-142”、“EX-146”、EX-147”、“EX-121”(以上、いずれもナガセケムテックス(株)製)等が挙げられる。
【0034】
(多官能脂肪族エポキシ化合物(E))
多官能脂肪族エポキシ化合物(E)は、2個以上のエポキシ基を有し、芳香環を有さない化合物である。ただし、本明細書でいう多官能脂肪族エポキシ化合物(E)は、脂環式エポキシ化合物(B)に含まれる、脂環式エポキシ基を有する化合物を除く。多官能脂肪族エポキシ化合物(E)により、接着剤硬化層の接着性を調整することができる。
【0035】
多官能脂肪族エポキシ化合物(E)としては、下記式(I)で表される脂肪族ジエポキシ化合物がより好ましい。下記式(I)で表される脂肪族ジエポキシ化合物を多官能脂肪族エポキシ化合物(E)として含むことにより、粘度が低く、塗布し易い活性エネルギー線硬化型接着剤を得ることができる。
【0036】
【化2】
【0037】
式(I)中、Zは炭素数1~9のアルキレン基、炭素数3もしくは4のアルキリデン基、2価の脂環式炭化水素基、または式-C2m-Z-C2n-で示される2価の基である。また、前記式-C2m-Z-C2n-中、-Z-は、-O-、-CO-O-、-O-CO-、-SO-、-SO-または-CO-であり、mおよびnは各々独立に1以上の整数を表し、mおよびnの合計は9以下である。
【0038】
2価の脂環式炭化水素基は、例えば、炭素数4~8の2価の脂環式炭化水素基であってよく、例えば下記式(I-1)で示される2価の基等が挙げられる。
【0039】
【化3】
【0040】
式(I)で示される化合物の具体例としては、例えばアルカンジオールのジグリシジルエーテル、繰り返し数4程度までのオリゴアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、または脂環式ジオールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0041】
前記式(I)で示される化合物を形成し得るジオール(グリコール)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等のアルカンジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のオリゴアルキレングリコール;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオールが挙げられる。
【0042】
本発明において、多官能脂肪族エポキシ化合物(E)としては、粘度が低く、塗布しやすい活性エネルギー線硬化型接着剤が得られるとの観点から、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルが好ましい。多官能脂肪族エポキシ化合物(E)としては、1種の脂肪族エポキシ化合物を単独で用いても、異なる複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
多官能脂肪族エポキシ化合物(E)は市販品を用いることができ、例えば、“EP-4088S”(以上、(株)ADEKA製)、“EHPE3150”(以上、(株)ダイセル製)、“EX-211L”、“EX-212L”(以上、いずれもナガセケムテックス(株)製)等が挙げられる。
【0044】
(オキセタン化合物(F))
本明細書において、オキセタン化合物(F)は、オキセタニル基を有する化合物であり、脂肪族化合物、脂環式化合物または芳香族化合物であってもよい。本明細書でいうオキセタン化合物(F)は、エポキシ基を有さない化合物とする。オキセタン化合物(F)により、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化速度や粘度を調整することができ、また反応性を向上させることができる。
【0045】
オキセタン化合物(F)は、具体例として、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、3-エチル-3-[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-3-(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(クロロメチル)オキセタン等を含む。オキセタン化合物(F)としては、1種のオキセタン化合物を単独で用いても、異なる複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
オキセタン化合物(F)は、市販品を用いることができ、例えば、それぞれ商品名で、東亞合成(株)から販売されている“アロンオキセタン(登録商標)”シリーズ、宇部興産(株)から販売されている“ETERNACOLL(登録商標)”シリーズなどが挙げられる。
【0047】
上記した硬化性成分(多官能エポキシ化合物(A)、脂環式エポキシ化合物(B)、単官能エポキシ化合物(C)、多官能脂肪族エポキシ化合物(E)、オキセタン化合物(F))は、活性エネルギー線硬化型接着剤を無溶剤とするために、有機溶剤などで希釈されていないものを用いることが好ましい。
【0048】
上記した硬化性成分は、通常室温において液体であり、溶剤を存在させなくても適度な流動性を有し、適切な接着強度を与えるものを選択し、それに適したカチオン重合開始剤を配合した活性エネルギー線硬化型接着剤は、光学積層体の製造設備において、第1光学層と第2光学層とを接着する工程で溶剤を蒸発させるための乾燥設備を省くことができる。また、適切な活性エネルギー線量を照射することで硬化速度を促進させ、生産速度を向上させることができる。
【0049】
(その他の硬化性成分)
活性エネルギー線硬化型接着剤に含まれる硬化性成分は、上記した硬化性成分に限定されることはなく、上記したカチオン重合性の硬化性成分以外のカチオン重合性の硬化性成分、及びラジカル重合性の硬化性成分を含んでいてもよい。ラジカル重合性の硬化性成分としては、アクリル系化合物が例示される。
【0050】
ただし、ラジカル重合は硬化収縮が大きい傾向にあるため、活性エネルギー線硬化型接着剤は、硬化性成分としてカチオン重合性の硬化性成分のみを含むことが好ましい。
【0051】
(2)カチオン重合開始剤(D)
活性エネルギー線硬化型接着剤は、カチオン重合開始剤(D)を含有する。これにより、硬化性成分を活性エネルギー線の照射によるカチオン重合で硬化させて接着剤層を形成することができる。カチオン重合開始剤(D)は、可視光線、紫外線、X線、電子線のような活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、硬化性成分の重合反応を開始させるものである。カチオン重合開始剤(D)は光で触媒的に作用するため、硬化性成分に混合しても保存安定性や作業性に優れる。カチオン重合開始剤(D)として使用し得る、活性エネルギー線の照射によりカチオン種やルイス酸を生じる化合物として、例えば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩;鉄-アレーン錯体等を挙げることができる。
【0052】
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレート、が挙げられる。
【0053】
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、が挙げられる。
【0054】
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4’-ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、4,4’-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4’-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-フェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、4-(p-tert-ブチルフェニルカルボニル)-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、4-(p-tert-ブチルフェニルカルボニル)-4’-ジ(p-トルイル)スルホニオ-ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、が挙げられる。
【0055】
鉄-アレーン錯体としては、例えば、キシレン-シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロアンチモネート、クメン-シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロホスフェート、キシレン-シクロペンタジエニル鉄(II) トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイド、が挙げられる。
【0056】
カチオン重合開始剤(D)は、1種のみを単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。上記の中でも特に芳香族スルホニウム塩は、300nm付近の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する接着剤硬化層を得ることができるため、好ましく用いられる。
【0057】
カチオン重合開始剤(D)の含有量は、硬化性成分の合計量100質量部に対して0.5~10質量部とされ、好ましくは1~4質量部である。カチオン重合開始剤(D)を1質量部以上含有させることにより、硬化性成分を十分に硬化させることができ、十分な接着強度と硬度を有する接着剤硬化層を得ることができる。一方、その量が多くなると、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、光学積層体の耐久性能を低下させる可能性があるため、カチオン重合開始剤(D)の量は、硬化性成分の合計量100質量部に対して10質量部以下とする。
【0058】
硬化性成分としてラジカル重合性の硬化性成分を含む場合は、重合開始剤として、カチオン重合開始剤(D)に加えてラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。
【0059】
(3)光増感剤
活性エネルギー線硬化型接着剤は、光増感剤を含有してもよい。上記のカチオン重合開始剤(D)は、300nm付近又はそれより短い波長域に極大吸収を示し、その付近の波長の光に感応してカチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン重合性の硬化性成分のカチオン重合を開始させるが、それよりも長い波長の光にも感応するように、光増感剤は、380nmより長い波長域に極大吸収を示すものであることが好ましい。かかる光増感剤として、アントラセン系化合物が好適に用いられる。
【0060】
アントラセン系化合物の具体例としては、例えば、
9,10-ジメトキシアントラセン、
9,10-ジエトキシアントラセン、
9,10-ジプロポキシアントラセン、
9,10-ジイソプロポキシアントラセン、
9,10-ジブトキシアントラセン、
9,10-ジペンチルオキシアントラセン、
9,10-ジヘキシルオキシアントラセン、
9,10-ビス(2-メトキシエトキシ)アントラセン、
9,10-ビス(2-エトキシエトキシ)アントラセン、
9,10-ビス(2-ブトキシエトキシ)アントラセン、
9,10-ビス(3-ブトキシプロポキシ)アントラセン、
2-メチル又は2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、
2-メチル又は2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセン、
2-メチル又は2-エチル-9,10-ジプロポキシアントラセン、
2-メチル又は2-エチル-9,10-ジイソプロポキシアントラセン、
2-メチル又は2-エチル-9,10-ジブトキシアントラセン、
2-メチル又は2-エチル-9,10-ジペンチルオキシアントラセン、
2-メチル又は2-エチル-9,10-ジヘキシルオキシアントラセン
が挙げられる。
【0061】
活性エネルギー線硬化型接着剤に光増感剤を含有させることにより、それを含有しない場合に比べ、接着剤の硬化性を向上させることができる。硬化性成分の合計量100質量部に対する光増感剤の含有量を0.1質量部以上とすることにより、このような効果を発現させることができる。一方、光増感剤の含有量が多くなると、低温保管時に析出する等の問題が生じることから、その含有量は、硬化性成分の合計量100質量部に対して2質量部以下とすることが好ましい。
【0062】
(4)光増感助剤
活性エネルギー線硬化型接着は、光増感助剤を含有してもよい。光増感助剤は、好ましくはナフタレン系光増感助剤である。
【0063】
ナフタレン系光増感助剤の具体例としては、例えば、
4-メトキシ-1-ナフトール、
4-エトキシ-1-ナフトール、
4-プロポキシ-1-ナフトール、
4-ブトキシ-1-ナフトール、 4-ヘキシルオキシ-1-ナフトール、
1,4-ジメトキシナフタレン、
1-エトキシ-4-メトキシナフタレン、
1,4-ジエトキシナフタレン、
1,4-ジプロポキシナフタレン、
1,4-ジブトキシナフタレン
が挙げられる。
【0064】
活性エネルギー線硬化型接着剤にナフタレン系光増感助剤を含有させることにより、それを含有しない場合に比べ、接着剤の硬化性を向上させることができる。硬化性成分の合計量100質量部に対するナフタレン系光増感助剤の含有量を0.1質量部以上とすることにより、このような効果を発現させることができる。一方、ナフタレン系光増感助剤の含有量が多くなると、低温保管時に析出する等の問題を生じることから、その含有量は、硬化性成分の合計量100質量部に対して5質量部以下とすることが好ましい。ナフタレン系光増感助剤の含有量は、好ましくは、硬化性成分の合計量100質量部に対して3質量部以下である。
【0065】
(5)添加剤成分
活性エネルギー線硬化型接着剤には、本発明の効果を損なわない限り、任意成分である他の成分として、添加剤成分を含有させることができる。添加剤成分としては、イオントラップ剤、酸化防止剤、光安定剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、色素、有機溶剤等を挙げることができる。
【0066】
添加剤成分を含有させる場合、その含有量は、硬化性成分の合計量100質量部に対して10質量部以下であることが好ましい。含有量が10質量部以下である場合、必須成分である硬化性成分、カチオン重合開始剤(D)の組み合わせによる、第1光学層と第2光学層との間の優れた接着強度、活性エネルギー線硬化性接着剤の低粘度化及びこれに伴う良好な塗工性、並びに硬化後の第1接着層における気泡欠陥の抑制という効果を良好に発揮することができる。
【0067】
上記したカチオン重合開始剤(D)、光増感剤、光増感助剤、及び添加剤成分は、活性エネルギー線硬化型接着剤の調製時に、溶剤を含まない状態で添加してもよいし、溶剤に希釈してから直接添加してもよい。上記した含有量の数値範囲は、いずれも固形分基準での数値範囲である。
【0068】
(6)粘度
活性エネルギー線硬化型接着剤の粘度としては、種々の方法で塗工できる粘度を有するものであればよいが、その温度25℃における粘度は、0.18Pa・s以下であることが好ましく、0.01Pa・s以上であることがより好ましい。その粘度があまり小さいと、所望の厚みでの層形成がしにくくなる傾向にある。一方、その粘度があまり大きいと、流動しにくくなって、ムラのない均質な塗膜が得られにくくなる傾向にある。ここでいう粘度は、E型粘度計を用いてその接着剤を25℃に調温した後、10rpmで測定される値である。
【0069】
(7)硬化方法
活性エネルギー線硬化型接着剤は、電子線硬化型、紫外線硬化型の態様で用いることができる。本明細書において、活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線と定義される。このような活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線及び電子線等が挙げられる。
【0070】
電子線硬化型において、電子線の照射条件は、活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化しうる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5kV~300kVであり、さらに好ましくは10kV~250kVである。加速電圧が5kV未満の場合、電子線が接着剤まで届かず硬化不足となるおそれがあり、加速電圧が300kVを超えると、試料を通る浸透力が強すぎて電子線が跳ね返り、透明保護フィルムや偏光子に損傷を与えるおそれがある。照射線量としては、5~100kGy、さらに好ましくは10~75kGyである。照射線量が5kGy未満の場合は、接着剤が硬化不足となり、100kGyを超えると、光学層に損傷を与え、機械的強度の低下や黄変を生じ、所望の光学特性を得ることができない。
【0071】
電子線照射は、通常、不活性ガス中で照射を行うが、必要であれば大気中や酸素を少し導入した条件で行ってもよい。酸素を適宜導入することによって、最初に電子線があたる光学層にあえて酸素阻害を生じさせ、他の光学層へのダメージを防ぐことができ、接着剤にのみ効率的に電子線を照射させることができる。
【0072】
紫外線硬化型において、活性エネルギー線硬化型接着剤の光照射強度は、接着剤の組成ごとに決定されるものであって特に限定されないが、10~1,000mW/cm2であることが好ましい。樹脂組成物への光照射強度が10mW/cm2未満であると、反応時間
が長くなりすぎ、1,000mW/cm2を超えると、光源から輻射される熱および組成物の重合時の発熱により、接着剤の構成材料の黄変を生じる可能性がある。なお、照射強度は、好ましくはカチオン重合開始剤(D)の活性化に有効な波長領域における強度であり、より好ましくは波長400nm以下の波長領域における強度であり、さらに好ましくは波長280~320nmの波長領域における強度である。このような光照射強度で1回あるいは複数回照射して、その積算光量を、好ましくは10mJ/cm2以上、さらに好ましくは100~1,000mJ/cm2となるように設定する。上記接着剤への積算光量が10mJ/cm2未満であると、重合開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、接着剤の硬化が不十分となる。一方でその積算光量が1,000mJ/cm2を超えると、照射時間が長くなり、生産性向上には不利なものとなる。この際、第1光学層及び第2光学層の種類や接着剤種の組み合わせなどによって、どの波長領域(UVA(320~390nm)やUVB(280~320nm)など)での積算光量が必要かは異なる。
【0073】
本発明における活性エネルギー線の照射により接着剤の重合硬化を行うために用いる光源は、特に限定されないが、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプが挙げられる。エネルギーの安定性や装置の簡便さという観点から、波長400nm以下に発光分布を有する紫外光源であることが好ましい。
【0074】
<第1接着層>
第1接着層は、波長589nmでの屈折率が好ましくは1.53以上であり、より好ましくは1.54以上である。第1接着層の屈折率が上記範囲内であることにより、屈折率が高い層、例えば液晶層の接着に用いられた場合であっても、界面反射光の強度を小さくすることができ、干渉ムラの発生を抑制することができる。第1接着層の厚みは、特に制限はないが、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがより好ましい。第1接着層の厚みは、接着性を確保する観点から、例えば、0.5μm以上である。
【0075】
<輝度分布>
本発明の光学積層体は、第1光学層側の最表面から検査光を照射した際に生じる反射光の輝度に基づいて取得される最表面上の第1直線に沿った輝度分布において、最大輝度に対する最小輝度の比(最小輝度/最大輝度)が40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、55%以上であることがさらに好ましい。かかる比が40%以上であることにより、干渉ムラを抑制することができる。輝度分布の取得方法は、後述の実施例の方法にしたがう。第1直線は、任意の直線であってよく、後述の実施例の方法においては、所定の大きさに切り出したサンプルの最表面を横断する直線であり、搬送方向の直線である。光学積層体において、例えば、第1接着層の組成、厚み等を調整することにより、第1直線に沿った輝度分布における最大輝度に対する最小輝度の比を調整することができる。
【0076】
<第1光学層及び第2光学層>
第1光学層及び第2光学層は、光を透過する層であれば特に限定されないが、例えば、透過する光に所定の位相差を与える位相差層である。第1光学層は、第1接着層側の表面が液晶化合物からなる液晶層であることが好ましい。液晶層は、屈折率が高く、これに接する接着層との間で界面反射が生じやすいものの、第1接着層の屈折率を1.53以上とすることにより、界面反射を抑制することができる。第2光学層は、特に限定されないが、位相差層である場合には、光学積層体の薄型化の観点から、好ましくは液晶化合物からなる液晶層を有する。
【0077】
<第1実施形態>
第1実施形態の光学積層体において、第1光学層と第2光学層は、位相差層である。図1は、第1実施形態の光学積層体を模式的に示す概略断面図である。図1に示すように、光学積層体5は、第1光学層である第1位相差層1と、第2光学層である第2位相差2と、第1位相差層1と第2位相差層2とを接着する第1接着層4とを含む。
【0078】
光学積層体5は、単独で、又は他の光学部材と組み合わされた構成で屈曲されることがある。例えば、搬送、巻き取り等の工程でロール状部材により接触することにより、又は、屈曲部を有する画像表示パネルの表面に配置されることにより、屈曲されることがある。光学積層体5によると、屈曲されている部分でシワが生じることを抑制することができる。
【0079】
(1)第1位相差層及び第2位相差層
第1位相差層1及び第2位相差層2は、光に所定の位相差を与える位相差発現層を少なくとも一つ含む位相差層であれば特に限定されず、例えば、1/2波長層、1/4波長層、ポジティブCプレート等の光学補償層であってもよい。位相差層は、正分散性の位相差層であっても、逆波長分散性の位相差層であってもよい。第1位相差層1及び第2位相差層2は、位相差発現層を少なとも一つ含むものであれば、位相差発現層のみからなるものであってもよいし、位相差発現層とともに他の層を含むものであってもよい。他の層としては、例えば、基材層、配向膜層、保護層等が挙げられる。なお、他の層は位相差の値には影響を及ぼさない。
【0080】
位相差発現層としては、液晶層、又は延伸フィルムが挙げられる。第1位相差層1は、第1接着層4側の表面が、位相差発現層である液晶層である。第2位相差層2は、薄型化の観点から、位相差発現層が液晶層であることが好ましい。第2位相差層2は、例えば、第1接着層4側の表面が、位相差発現層である液晶層である。液晶層である位相差発現層の方が、延伸フィルムである位相差発現層よりも、一般的に薄膜化が容易である。本実施形態では、第1接着層4に接する第1位相差1及び第2位相差層2の表面層がともに液晶層である場合においても、第1接着層4について、波長589nmでの屈折率が1.53以上であることにより界面反射を抑制することができ、接着性を向上させることができる。さらに、屈曲された場合であっても屈曲されている部分で生じるシワの発生を抑制する。
【0081】
第1位相差層1及び第2位相差層2が、それぞれ位相差発現層のみからなる場合は、それぞれの厚さが0.5μm~10μmであることが好ましく、0.5μm~5μmであることがより好ましい。
第1位相差層1及び第2位相差層がそれぞれ位相差発現層以外の他の層(基材層、配向膜層、保護層等)を含む場合、全体の厚みが0.5μm~300μmであることが好ましく、0.5μm~150μmであることがより好ましい。
【0082】
第1位相差層1及び第2位相差層2の厚さが薄いほど、光学積層体が屈曲された場合に、屈曲された部分において、第1位相差層1及び第2位相差層2にシワが発生しやすくなるが、本実施形態の光学積層体によると、第1位相差層1及び第2位相差層2が上記のように5μm以下と薄い場合であっても、屈曲された部分でシワが発生することを抑制することができる。
【0083】
本実施形態の光学積層体における第1位相差層1と第2位相差層2との組み合わせとしては、例えば、
i)1/2波長層と、1/4波長層との組み合わせ、
ii)1/2波長層と、光学補償層との組み合わせ、
iii)1/4波長層と、光学補償層との組み合わせ、
等が挙げられる。
【0084】
1/2波長層は、入射光の電界振動方向(偏光面)にπ(=λ/2)の位相差を与えるものであり、直線偏光の向き(偏光方位)を変える機能を有している。また、円偏光の光を入射させると、円偏光の回転方向を反対回りにすることができる。
【0085】
1/2波長層は、特定の波長λnmにおける面内レターデーション値であるRe(λ)がRe(λ)=λ/2を満足する層である。可視光域の何れの波長においてRe(λ)=λ/2を達成されていればよいが、なかでも波長550nmにおいて達成されることが好ましい。波長550nmにおける面内レターデーション値であるRe(550)は、210nm≦Re(550)≦300nmを満足することが好ましい。また、220nm≦Re(550)≦290nmを満足することがより好ましい。
【0086】
1/4波長層は、入射光の電界振動方向(偏光面)にπ/2(=λ/4)の位相差を与えるものであり、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(又は円偏光を直線偏光に)変換する機能を有している。
【0087】
1/4波長層は、特定の波長λnmにおける面内レターデーション値であるRe(λ)がRe(λ)=λ/4を満足する層であり、可視光域の何れかの波長において達成されていればよいが、なかでも波長550nmで達成されることが好ましい。波長550nmにおける面内レターデーション値であるRe(550)が、100nm≦Re(550)≦160nmを満足することが好ましい。また、110nm≦Re(550)≦150nmを満足することがより好ましい。
【0088】
光学補償層としては、例えば、ポジティブAプレート、ポジティブCプレート等が挙げられる。ポジティブAプレートは、その面内における遅相軸方向の屈折率をNx、その面内における進相軸方向の屈折率をNy、その厚み方向における屈折率をNzとしたときに、Nx>Nyの関係を満足するものである。ポジティブAプレートは、Nx>Ny≧Nzの関係を満足することが好ましい。また、ポジティブAプレートは1/4波長層としても機能することができる。ポジティブCプレートは、Nz>Nx≧Nyの関係を満足するものである。
【0089】
逆波長分散性とは、短波長での面内レタデーション値の方が長波長での面内レタデーション値よりも小さくなる光学特性であり、好ましくは、下記式(b):
Re(450)≦Re(550)≦Re(650) (b)
を満たすことである。なお、Re(λ)は波長λnmの光に対する面内レタデーション値を表す。
【0090】
位相差層の光学特性は、位相差発現層を構成する液晶化合物の配向状態、又は位相差発現層を構成する延伸フィルムの延伸方法により調節することができる。位相差層の光学特性を適宜調節することにより、光学積層体5と直線偏光板とを積層して、反射防止性能を有する偏光板複合体を得ることができる。
【0091】
(2)液晶層から形成される位相差発現層
位相差発現層が液晶層である場合について説明する。図2は、液晶層である位相差発現層と他の層とを含む位相差層の一例を模式的に示す概略断面図である。図2に示すように、位相差層30は、基材層31、配向層32、液晶層である位相差発現層33がこの順に積層されてなる。位相差層は、液晶層の位相差発現層33を含む構成であれば図2に示す位相差層30に限定されることはなく、位相差層30から基材層31が剥離されて配向層32と位相差発現層33のみからなる構成であってもよく、位相差層30から基材層31と配向層32が剥離されて液晶層の位相差発現層33のみからなる構成であってもよい。薄膜化の観点から、位相差層は、基材層31が剥離されている構成であることが好ましく、液晶層の位相差発現層33のみからなる構成がさらに好ましい。基材層31は、基材層31上に形成される配向層32、及び液晶層の位相差発現層33を支持する支持層として機能を有する。基材層31は、樹脂材料で形成されたフィルムであることが好ましい。
【0092】
樹脂材料としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、延伸性等に優れる樹脂材料が用いられる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ノルボルネン系ポリマー等の環状ポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル系樹脂;ポリビニルアルコール及びポリ酢酸ビニル等のビニルアルコール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルケトン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド系樹脂;ポリフェニレンオキシド系樹脂、及びこれらの混合物、共重合物等を挙げることができる。これらの樹脂のうち、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロースエステル系樹脂及び(メタ)アクリル酸系樹脂のいずれか又はこれらの混合物を用いることが好ましい。なお、上記「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。
【0093】
基材層31は、上記の樹脂1種類又は2種以上を混合した単層であってもよく、2層以上の多層構造を有していてもよい。多層構造を有する場合、各層をなす樹脂は同じであってもよく異なっていてもよい。
【0094】
樹脂フィルムをなす樹脂材料には、任意の添加剤が添加されていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、及び着色剤等が挙げられる。
【0095】
基材層31の厚さは、特に限定されないが、一般には強度や取扱い性等の作業性の点から5~200μmであることが好ましく、10~200μmであることがより好ましく、10~150μmであることがさらに好ましい。
【0096】
基材層31と配向層32との密着性を向上させるために、少なくとも基材層31の配向層32が形成される側の表面にコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等を行ってもよく、プライマー層等を形成してもよい。なお、基材層31、又は基材層31及び配向層32を剥離して位相差層とする場合には、剥離界面での密着力を調整することによって剥離を容易とすることができる。
【0097】
配向層32は、これらの配向層32上に形成される液晶層の位相差発現層33に含まれる液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有する。配向層32としては、配向性ポリマーで形成された配向性ポリマー層、光配向ポリマーで形成された光配向ポリマー層、層表面に凹凸パターンや複数のグルブ(溝)を有するグルブ配向層を挙げることができる。配向層32の厚みは、通常0.01~10μmであり、0.01~5μmであることが好ましい。
【0098】
配向性ポリマー層は、配向性ポリマーを溶剤に溶解した組成物を基材層31に塗布して溶剤を除去し、必要に応じてラビング処理をして形成することができる。この場合、配向規制力は、配向性ポリマーで形成された配向性ポリマー層では、配向性ポリマーの表面状態やラビング条件によって任意に調整することが可能である。
【0099】
光配向ポリマー層は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーと溶剤とを含む組成物を基材層31に塗布し、偏光を照射することによって形成することができる。この場合、配向規制力は、光配向ポリマー層では、光配向ポリマーに対する偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。
【0100】
グルブ配向層は、例えば感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光、現像等を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に、活性エネルギー線硬化性樹脂の未硬化の層を形成し、この層を基材層31に転写して硬化する方法、基材層31に活性エネルギー線硬化性樹脂の未硬化の層を形成し、この層に、凹凸を有するロール状の原盤を押し当てる等により凹凸を形成して硬化させる方法等によって形成することができる。
【0101】
液晶層である位相差発現層33は、光に所定の位相差を与えるものであれば特に限定されず、例えば、1/2波長層用の位相差発現層、1/4波長層用の位相差発現層、ポジティブCプレートなどの光学補償層用の位相差発現層、逆波長分散性1/4波長層用の位相差発現層として機能するものを挙げることができる。
【0102】
液晶層である位相差発現層33は、公知の液晶化合物を用いて形成することができる。液晶化合物の種類は特に限定されず、棒状液晶化合物、円盤状液晶化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。また、液晶化合物は、高分子液晶化合物であってもよく、重合性液晶化合物であってもよく、これらの混合物であってもよい。液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報、特開2005-289980号公報、特開2007-108732号公報、特開2010-244038号公報、特開2010-31223号公報、特開2010-270108号公報、特開2011-6360号公報、特開2011-207765号公報、特開2016-81035号公報、国際公開第2017/043438号及び特表2011-207765号公報に記載の液晶化合物が挙げられる。
【0103】
例えば、重合性液晶化合物を用いる場合には、重合性液晶化合物を含む組成物を、配向層32上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を硬化させることによって、位相差発現層33を形成することができる。位相差発現層33の厚みは、0.5μm~10μmであることが好ましく、0.5~5μmであることがさらに好ましい。
重合性液晶化合物を含む組成物は、液晶化合物以外に、重合開始剤、重合性モノマー、界面活性剤、溶剤、密着改良剤、可塑剤、配向剤等が含まれていてもよい。重合性液晶化合物を含む組成物の塗布方法としては、ダイコーティング法等の公知の方法が挙げられる。重合性液晶化合物を含む組成物の硬化方法としては、活性エネルギー線(例えば紫外線)を照射する等の公知の方法が挙げられる。
【0104】
(3)延伸フィルムを位相差発現層として備える位相差層
位相差発現層が延伸フィルムである場合について説明する。延伸フィルムは通常、基材を延伸することで得られる。基材を延伸する方法としては、例えば、基材がロールに巻き取られているロール(巻き取り体)を準備し、かかる巻き取り体から、基材を連続的に巻き出し、巻き出された基材を加熱炉へと搬送する。加熱炉の設定温度は、基材のガラス転移温度近傍(℃)~[ガラス転移温度+100](℃)の範囲、好ましくは、ガラス転移温度近傍(℃)~[ガラス転移温度+50](℃)の範囲とする。当該加熱炉においては、基材の進行方向へ、又は進行方向と直交する方向へ延伸する際に、搬送方向や張力を調整し任意の角度に傾斜をつけて一軸又は二軸の熱延伸処理を行う。延伸の倍率は、通常1.1~6倍であり、好ましくは1.1~3.5倍である。
【0105】
また、斜め方向に延伸する方法としては、連続的に配向軸を所望の角度に傾斜させることができるものであれば、特に限定されず、公知の延伸方法が採用できる。このような延伸方法は例えば、特開昭50-83482号公報や特開平2-113920号公報に記載された方法を挙げることができる。延伸することでフィルムに位相差性を付与する場合、延伸後の厚みは、延伸前の厚みや延伸倍率によって決定される。
【0106】
前記基材は通常透明基材である。透明基材とは、光、特に可視光を透過し得る透明性を有する基材を意味し、透明性とは、波長380~780nmにわたる光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。具体的な透明基材としては、透光性樹脂基材が挙げられる。透光性樹脂基材を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ノルボルネン系ポリマーなどの環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシドが挙げられる。入手のしやすさや透明性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸エステル、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネートが好ましい。
【0107】
セルロースエステルは、セルロースに含まれる水酸基の一部または全部が、エステル化されたものであり、市場から容易に入手することができる。また、セルロースエステル基材も市場から容易に入手することができる。市販のセルロースエステル基材としては、例えば、“フジタック(登録商標)フィルム”(富士フイルム(株));“KC8UX2M”、“KC8UY”及び“KC4UY”(コニカミノルタオプト(株))などが挙げられる。
【0108】
ポリメタクリル酸エステル及びポリアクリル酸エステル(以下、ポリメタクリル酸エステル及びポリアクリル酸エステルをまとめて(メタ)アクリル系樹脂ということがある。)は、市場から容易に入手できる。
【0109】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、メタクリル酸アルキルエステル又はアクリル酸アルキルエステルの単独重合体や、メタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体などが挙げられる。メタクリル酸アルキルエステルとして具体的には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレートなどが、またアクリル酸アルキルエステルとして具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレートなどがそれぞれ挙げられる。かかる(メタ)アクリル系樹脂には、汎用の(メタ)アクリル系樹脂として市販されているものが使用できる。(メタ)アクリル系樹脂として、耐衝撃(メタ)アクリル樹脂と呼ばれるものを使用してもよい。
【0110】
さらなる機械的強度向上のために、(メタ)アクリル系樹脂にゴム粒子を含有させることも好ましい。ゴム粒子は、アクリル系のものが好ましい。ここで、アクリル系ゴム粒子とは、ブチルアクリレートや2-エチルヘキシルアクリレートのようなアクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル系モノマーを、多官能モノマーの存在下に重合させて得られるゴム弾性を有する粒子である。アクリル系ゴム粒子は、このようなゴム弾性を有する粒子が単層で形成されたものであってもよいし、ゴム弾性層を少なくとも一層有する多層構造体であってもよい。多層構造のアクリル系ゴム粒子としては、上記のようなゴム弾性を有する粒子を核とし、その周りを硬質のメタクリル酸アルキルエステル系重合体で覆ったもの、硬質のメタクリル酸アルキルエステル系重合体を核とし、その周りを上記のようなゴム弾性を有するアクリル系重合体で覆ったもの、また硬質の核の周りをゴム弾性のアクリル系重合体で覆い、さらにその周りを硬質のメタクリル酸アルキルエステル系重合体で覆ったものなどが挙げられる。弾性層で形成されるゴム粒子は、その平均直径が通常50~400nm程度の範囲にある。
【0111】
(メタ)アクリル系樹脂におけるゴム粒子の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部あたり、通常5~50質量部程度である。(メタ)アクリル系樹脂及びアクリル系ゴム粒子は、それらを混合した状態で市販されているので、その市販品を用いることができる。アクリル系ゴム粒子が配合された(メタ)アクリル系樹脂の市販品の例として、住友化学(株)から販売されている“HT55X”や“テクノロイ S001”などが挙げ
られる。“テクノロイ S001”は、フィルムの形で販売されている。
【0112】
環状オレフィン系樹脂は、市場から容易に入手できる。市販の環状オレフィン系樹脂としては、“Topas”(登録商標)[Ticona社(独)]、“アートン”(登録商標)[JSR(株)]、“ゼオノア(ZEONOR)”(登録商標)[日本ゼオン(株)]、“ゼオネックス(ZEONEX)”(登録商標)[日本ゼオン(株)]および“アペル”(登録商標)[三井化学(株)]が挙げられる。このような環状オレフィン系樹脂を、例えば、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の手段により製膜して、基材とすることができる。また、市販されている環状オレフィン系樹脂基材を用いることもできる。市販の環状オレフィン系樹脂基材としては、“エスシーナ”(登録商標)[積水化学工業(株)]、“SCA40”(登録商標)[積水化学工業(株)]、“ゼオノアフィルム”(登録商標)[オプテス(株)]および“アートンフィルム”(登録商標)[JSR(株)]が挙げられる。
【0113】
環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物との共重合体である場合、環状オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、共重合体の全構造単位に対して、通常50モル%以下、好ましくは15~50モル%の範囲である。鎖状オレフィンとしては、エチレンおよびプロピレンが挙げられ、ビニル基を有する芳香族化合物としては、スチレン、α-メチルスチレンおよびアルキル置換スチレンが挙げられる。環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンと、ビニル基を有する芳香族化合物との三元共重合体である場合、鎖状オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、共重合体の全構造単位に対して、通常5~80モル%であり、ビニル基を有する芳香族化合物に由来する構造単位の含有割合は、共重合体の全構造単位に対して、通常5~80モル%である。このような三元共重合体は、その製造において、高価な環状オレフィンの使用量を比較的少なくすることができるという利点がある。
【0114】
[光学積層体の製造方法]
第1実施形態の光学積層体は、図3(A)に示すような第1位相差発現層13、第1配向層12及び第1基材層11を含む第1位相差層10と、図3(B)に示すような第2位相差発現層23、第2配向層22及び第1基材層21を含む第2位相差層20とを第1接着層40を介して積層させることで製造できる。光学積層体は、例えば、図3(C)に示すように、第1基材層11、第1配向層12、第1位相差発現層13、第1接着層40、第2位相差発現層23、第2配向層22、第2基材層21の順に積層された積層体である。また、光学積層体50は、第1位相差発現層13、第1配向層12、第1基材層11、第1接着層40、第2基材層21、第2配向層22、第2位相差発現層23の順に積層された積層体であってもよい。図3(A)~(C)において、Wは光学積層体の幅方向を表す。
【0115】
第1位相差層10と第2位相差層20とを接着させる方法としては、第1位相差層10の貼合面又は第2位相差層20の貼合面のいずれか又はその両方に活性エネルギー線硬化型接着剤を塗工し、これにもう一方の貼合面を積層し、第1接着層40を構成する活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させる方法が挙げられる。活性エネルギー線硬化型接着剤の塗工には、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が利用できる。
【0116】
第1接着層40を構成する活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化する方法としては、上述のように、活性エネルギー線で硬化する方法が好ましい。第1位相差層10の貼合面又は第2位相差層20の貼合面のいずれか又はその両方に、コロナ処理、プラズマ処理等を行ってもよいし、プライマー層を形成してもよい。
【0117】
本発明の光学積層体は、図3(C)に示すような積層体であってもよいし、第1基材層11及び第2基材層21の少なくとも一方の層を剥離した積層体であってもよい。また、図3(C)に示す積層体から第1基材層11及び第1配向層12が剥離された積層体であってもよいし、図3(C)に示す積層体から第2基材層21及び第2配向層22が剥離された積層体であってもよい。
【0118】
[偏光板複合体]
本発明の偏光板複合体は、直線偏光板と上記した光学積層体とが積層されてなるものである。光学積層体は、第1光学層側が直線偏光板側に配置されるものとする。偏光板複合体は、直線偏光板と光学積層体とを接着する第2接着層を含んでいてもよい。直線偏光板に積層する光学積層体の層構成を調整することにより、反射防止性能を有する光学積層体とすることができる。反射防止性能を有する光学積層体は、例えば円偏光板である。画像表示装置において、画像表示パネルの視認側に反射防止性能を有する光学積層体を設けることにより、外来光の反射による視認性の低下を抑制することができる。
【0119】
外来光の反射による視認性の低下を抑制することができる、直線偏光板と、光学積層体とからなる偏光板複合体の層構成としては、
iv)視認側から直線偏光板、1/2波長層(第1光学層)、第1接着層、1/4波長層(第2光学層)がこの順で積層されてなる層構成の偏光板複合体、
v)視認側から直線偏光板、1/4波長層(第1光学層)、第1接着層、ポジティブCプレート等の光学補償層層(第2光学層)がこの順で積層されてなる層構成の偏光板複合体、
vi)視認側から直線偏光板、ポジティブCプレート等の光学補償層(第1光学層)、第1接着層、1/4波長層(第2光学層)がこの順で積層されてなる層構成の偏光板複合体、
が具体的に例示される。
【0120】
また、前記層構成のうち、前記(iv)の層構成を有する偏光板複合体は、直線偏光板に含まれる偏光子の透過軸と1/2波長層の遅相軸とがなす角度が10~20°であることが好ましく、偏光子の透過軸と1/2波長層の遅相軸とがなす角度が15°であることがより好ましい。また、1/2波長層の遅相軸と1/4波長層の遅相軸とがなす角度が55~65°であることが好ましく、1/2波長層の遅相軸と1/4波長層の遅相軸とがなす角度が60°であることがより好ましい。
上記(v)及び(vi)の層構成を有する偏光板複合体は、直線偏光板に含まれる偏光子の透過軸と1/4波長層の遅相軸とがなす角度が40°~50°であることが好ましく、偏光子の透過軸と1/4波長層の遅相軸とがなす角度が45°であることがより好ましい。
【0121】
偏光板複合体の厚みは、薄型化の観点から、通常30~500μmであり、30~200μmであることが好ましく、30~150μmであることがさらに好ましい。
【0122】
また、本発明における偏光板複合体は、偏光板の最表面から検査光を照射した際に生じる反射光の輝度に基づいて収得される最表面畝の第1直線に沿った輝度分布において、最大輝度に対する最小輝度の比(最小輝度/最大輝度)が、75%以上であることが好ましい。かかる比が75%以上であることにより、干渉ムラを抑制することができる。輝度分布の収得方法は、後述の実施例の方法にしたがう。偏光板複合体において、例えば、第1接着剤層の組成、厚み等を調整することにより、最大輝度に対する最小輝度の比を調整することができる。
【0123】
<直線偏光板>
直線偏光板は、透過光より直線偏光を得る偏光機能を有するフィルムであればよい。当該フィルムとしては、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルム、又は吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムを偏光子として含むフィルム等が挙げられる。吸収異方性を有する色素としては、例えば、二色性色素が挙げられる。偏光子として用いられる、吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルム、あるいは、液晶性を有する二色性色素を含む組成物又は二色性色素と重合性液晶とを含む組成物を塗布して得られる液相層を有するフィルム等が挙げられる。
【0124】
(1)延伸フィルムを偏光子として備える直線偏光板
吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムを偏光子として備える直線偏光板について説明する。偏光子である、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムは、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、及び二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程を有する、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造される。かかる偏光子をそのまま直線偏光板として用いてもよく、またはかかる偏光子の少なくとも一方の面に透明保護フィルムを貼合したものを直線偏光板として用いてもよい。
【0125】
上記のようにしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、ホウ酸処理、水洗及び乾燥をして得られる偏光子の厚みは好ましくは5~40μmである。
【0126】
偏光子の片面又は両面に貼合される保護フィルムの材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのような樹脂からなる酢酸セルロース系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのような樹脂からなるポリエステル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、(メタ)アクリル系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルムなど、当分野において公知のフィルムを挙げることができる。保護フィルムの厚みは、薄型化の観点から、通常300μm以下であり、200μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、また、通常5μm以上であり、20μm以上であることが好ましい。また、視認側の保護フィルムは位相差を有していてもよいし、位相差を有していなくてもよい。一方、第1位相差層に積層される側の保護フィルムは、その位相差が10nm以下であることが好ましい。
【0127】
(2)液晶層を有するフィルムを偏光子として備える直線偏光板液晶層を有するフィルムを偏光子として備える直線偏光板について説明する。偏光子として用いられる、吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、液晶性を有する二色性色素を含む組成物、又は二色性色素と液晶化合物とを含む組成物を塗布して得られるフィルム等が挙げられる。当該フィルムは、単独で直線偏光板として用いてもよく、その片面又は両面に保護フィルムを有する構成で直線偏光板として用いてもよい。当該保護フィルムとしては、上記した延伸フィルムを偏光子として備える直線偏光板と同一のものが挙げられる。
【0128】
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムは薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。当該フィルムの厚さは、通常20μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上3μm以下である。
【0129】
前記吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、具体的には、特開2012-33249号公報等に記載のフィルムが挙げられる。
【0130】
前記吸収異方性を有する色素を、前記光学積層体の第1位相差層側に直接塗布することにより、光学積層体と直線偏光板とを積層してなる偏光板複合体を得てもよい。この場合、第2接着層を有することなく、光学積層体と直線偏光板とを積層することができる。
【0131】
(3)第2接着層
第2接着層は、例えば、粘着剤、水系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤及びこれらの組み合わせから構成することができる。この中でも、第2接着層は、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物層であることにより、本発明の光学積層体を含む偏光板複合体が折れ曲がった場合であっても、屈曲部におけるシワの発生をより抑制することができるので好ましい。本明細書において、「第2接着層」との用語は、接着剤から構成される接着層のみでなく、粘着剤から構成される粘着層をも含むものとする。
【0132】
第2接着層をなす活性エネルギー線硬化型接着剤については、上記第1接着層での説明が適用される。第1接着層及び第2接着層が活性エネルギー線硬化型接着剤から形成される場合、第1接着層と第2接着層とは同じ活性エネルギー線硬化型接着剤から形成されてもよいし、異なる活性エネルギー線硬化型接着剤から形成されてもよい。
【0133】
[偏光板複合体の用途]
円偏光板である偏光板複合体は、画像表示パネルの視認側に配置されて反射防止性能を付与する偏光板複合体として、さまざまな画像表示装置に用いることができる。画像表示装置とは、画像表示パネルを有する装置であり、発光源として発光素子または発光装置を含む。画像表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、タッチパネル表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)および圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置および投写型液晶表示装置などのいずれをも含む。これらの画像表示装置は、2次元画像を表示する画像表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体画像表示装置であってもよい。特に円偏光板である偏光板複合体は、屈曲部を有する画像表示パネルを備え得る有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置に有効に用いることができる。
【0134】
本発明によると、第1接着層の屈折率が1.53以上であることにより、第1光学層と第2光学層との接着性に優れ、屈曲部を有する画像表示パネルの表面にこれに沿わせるように偏光板複合体を屈曲させて配置しても、シワの発生が抑制された偏光板複合体を得ることができる。
【0135】
また、本発明によると、第1直線に沿った輝度分布における最大輝度に対する最小輝度の比が40%以上であることにより、干渉ムラが抑制された偏光板複合体を得ることができる。
【実施例
【0136】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。以下、使用量、含有量を表す部及び%は、特に断りのない限り質量基準であり、また固形分基準である。
【0137】
[実施例1~16、比較例1~7]
<活性エネルギー線硬化型接着剤の調製>
以下に示すカチオン各成分を準備した。
(多官能芳香族エポキシ樹脂(A))
A-1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:jER828、三菱ケミカル(株)製、粘度13Pa・s(温度25℃)、屈折率1.57(波長589nm))
A-2:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名:EXA-830CRP、DIC(株)製、粘度1.3Pa・s(温度25℃)、屈折率1.57(波長589nm))
A-3:ナフタレン型エポキシ樹脂(商品名:HP-4032D、DIC株式会社製、粘度23Pa・s(温度25℃)、屈折率1.60(波長589nm))
A-4:フルオレン型エポキシ樹脂(商品名:OGSOL EG-200、大阪ガスケミカル(株)製、粘度30Pa・s(温度25℃)を超える、屈折率1.62(波長589nm))
【0138】
(脂環式エポキシ樹脂(B))
B-1:3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:CEL2021P、(株)ダイセル製、粘度0.25Pa・s(温度25℃)、屈折率1.50(波長589nm))
【0139】
(単官能エポキシ樹脂(C))
C-1:ビフェニル型エポキシ樹脂(商品名:EX-142、ナガセケムテックス(株)製、粘度0.23Pa・s(温度25℃)、屈折率1.60(波長589nm))
C-2:p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル(商品名:EX-146、ナガセケムテックス(株)製、粘度0.02Pa・s(温度25℃)、屈折率1.51(波長589nm))
C-3:2-エチルヘキシルグリシジルエーテル(商品名:EX-121、ナガセケムテックス(株)製、粘度0.004Pa・s(温度25℃)、屈折率1.43(波長589nm))
【0140】
(多官能脂肪族エポキシ樹脂(E))
E-1:DCPDM型エポキシ樹脂(商品名:EP-4088S、(株)ADEKA製、粘度0.23Pa・s(温度25℃)、屈折率1.50(波長589nm))
E-2:2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(商品名:EHPE3150、(株)ダイセル製、粘度30Pa・s(温度25℃)を超える、屈折率1.54(波長589nm))
E-3:ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(商品名:EX-211L、ナガセケムテックス(株)製、粘度0.02Pa・s(温度25℃)、屈折率1.45(波長589nm))
E-4:1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名:EX-212L、ナガセケムテックス(株)製、粘度0.015Pa・s(温度25℃)、屈折率1.46(波長589nm))
【0141】
(オキセタン樹脂(F))
F-1:3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン(商品名:OXT-221、東亞合成(株)製、粘度0.012Pa・s(温度25℃)、屈折率1.45(波長589nm))
F-2:キシリレンビスオキセタン(商品名:OXT-121、東亞合成(株)製、粘度0.17Pa・s(温度25℃)、屈折率1.51(波長589nm))
F-3:3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン(商品名:OXT-211、東亞合成(株)製、粘度0.014Pa・s(温度25℃)、屈折率1.51(波長589nm))
【0142】
(カチオン重合開始剤(D))
D-1:カチオン重合開始剤(商品名:CPI-100P、サンアプロ(株)製、50質量%溶液)
【0143】
(光増感助剤)
G-1:1,4-ジエトキシナフタレン
【0144】
上記の各成分を、表1に示す配合割合(単位は質量部)で混合した後、脱泡して、実施例1~16、比較例1~7の活性エネルギー線硬化型接着剤を調製した。なお、カチオン重合開始剤(D-1)は、50%プロピレンカーボネート溶液として配合し、表1はその固形分量で示した。
【0145】
<光学積層体及び複合偏光板の製造>
(直線偏光板の製造)
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の質量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬してヨウ素染色を行った(ヨウ素染色工程)。ヨウ素染色工程を経たポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の質量比が12/5/100の水溶液に、56.5℃で浸漬してホウ酸処理を行った(ホウ酸処理工程)。
【0146】
ホウ酸処理工程を経たポリビニルアルコールフィルムを8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している偏光子を得た。この際、ヨウ素染色工程とホウ酸処理工程において延伸を行った。かかる延伸におけるトータル延伸倍率は5.3倍で、得られた偏光子の厚みは27μmであった。
【0147】
得られた偏光子に両面に、ケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルム(商品名:KC4UYTAC、コニカミノルタ製、厚さ40μm)を水系接着剤を介してニップロールで貼り合せた。得られた貼合物の張力を430N/mに保ちながら、60℃で2分間乾燥して、両面に保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを有する直線偏光板を得た。なお、上述の水系接着剤は、水100部に、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(クラレポバールKL318、クラレ製)3部と、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(スミレーズレジン650、住化ケムテックス製、固形分濃度30%の水溶液)1.5部を添加して調製した。
【0148】
(λ/2位相差層の製造)
透明樹脂基材に配向膜塗布液を塗布し乾燥することにより、λ/2配向処理をした。次いで、配向面に、ディスコチック液晶性化合物を含む塗布液を塗布し、加熱およびUV照射をして液晶化合物の配向を固定化することにより、透明樹脂基材上に厚み2μmの位相差発現層を作製した。
【0149】
(λ/4位相差層の製造)
配向膜をラビング処理したλ/4配向用透明樹脂基材に、棒状で重合性のネマチック液晶モノマーを含む塗布液を塗布し、屈折率異方性を保持した状態で固化することにより、透明樹脂基材上に厚み1μmの位相差発現層を得た。
【0150】
(光学積層体の製造)
上記λ/2位相差層及びλ/4位相差層の液晶層側にコロナ処理を施した。λ/2位相差層の遅相軸と、λ/4位相差層の遅相軸とがなす角度が60°となるよう配置し、表1に示す組成の活性エネルギー線硬化型接着剤を用いて、接着剤厚みが3μmとなるよう液晶層同士をラミネーターで貼合し、積層体を得た。
得られた積層体のλ/4位相差層側から、紫外線照射装置〔フュージョンUVシステムズ(株)製〕を用い、積算光量400mJ/cm2 (UV-B)で紫外線照射を行い、接着剤を硬化させて第1接着層とし、「λ/2位相差層」/第1接着層/「λ/4位相差層」の積層構造を有する光学積層体を得た。
【0151】
(偏光板複合体の製造)
得られた複合位相差板のλ/2位相差層側の配向膜及び透明樹脂基材を剥離し、上記直線偏光板とλ/2位相差層の液晶層とをアクリル系粘着剤を用いて貼合した。なお、アクリル系粘着剤からなる接着層(第2接着層)の膜厚は5μmであり、偏光子の透過軸とλ/2位相差層の遅相軸とがなす角度が15°であった。
次いで、λ/4位相差層側の配向膜及び透明樹脂基材を剥離し、直線偏光板/第2接着層/「λ/2位相差層」/第1接着層/「λ/4位相差層」の積層構造を有する偏光板複合体(円偏光板)を得た。
【0152】
[評価方法]
<粘度測定方法>
上記で調製した各活性エネルギー線硬化型接着剤を、E型粘度計〔東機産業(株)製“TVE-25”〕を用いて、温度25℃及び10rpmにおける粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0153】
<屈折率測定方法>
上記で調製した各活性エネルギー線硬化型接着剤を、延伸ノルボルネン系樹脂フィルム〔日本ゼオン(株)製 “ゼオノアフィルム”〕の片面に、バーコーター〔第一理化(株
)製〕を用いて塗工し、紫外線照射装置〔フュージョンUVシステムズ(株)製〕で積算光量600mJ/cm2 (UV-B)で紫外線を照射し硬化物を得た。得られた硬化物の膜厚は約30μmであった。
得られた硬化物からノルボルネン系樹脂フィルムを剥離し、硬化物層の屈折率(波長589nm)を25℃環境下で多波長アッベ屈折計〔(株)アタゴ製“DR-M2”〕を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0154】
<屈曲部のシワ評価方法>
上記で作製した偏光板複合体のλ/4位相差層側にアクリル系粘着剤(膜厚25μm)を用いて屈曲部(2R)を有するアルミ板に貼合し、屈曲部でのシワ発生有無を目視で観察し、以下の基準に基づいて評価した。結果を表1に示す。
A:シワ発生なし
C:シワ発生あり
【0155】
<180°剥離力測定方法>
上記で作製した偏光板複合体のλ/4位相差層側にアクリル系粘着剤(膜厚25μm)を貼合し、長さ200mm×幅25mmの大きさに裁断後、その粘着剤層面をソーダガラス基板に貼合した。
次いで、λ/2位相差層とλ/4位相差層の間にカッターの刃を入れ、長さ方向に端から30mm剥離し、その剥離部分を万能引張試験機〔(株)島津製作所製“AG-1”〕のつかみ部でつかんだ。この状態の試験片を、温度23℃相対湿度55%の雰囲気中にて、JIS K 6854-2:1999「接着剤-はく離接着強さ試験方法-第2部:180度はく離」に準じて、つかみ移動速度300mm/分で180度はく離試験を行い、つかみ部の30mmを除く170mmの長さにわたる平均剥離力を求め、以下の基準に基づいて評価した。結果を表1に示す。
A:カッター刃がλ/2位相差層とλ/4位相差層の間に入らない
B:180°剥離力が0.5N以上
C:180°剥離力が0.5N未満
【0156】
【表1】
【0157】
[実施例17~19、比較例8]
<活性エネルギー線硬化型接着剤A,Bの調製>
表1に示す各成分の内、表2に示す成分を準備した。準備した各成分を、表2に示す配合割合(単位は質量部)で混合した後、脱泡して、活性エネルギー線硬化型接着剤A,Bを調製した。なお、カチオン重合開始剤(D-1)は、50%プロピレンカーボネート溶液として配合し、表2はその固形分量で示した。
【0158】
【表2】
【0159】
<光学積層体の製造>
(λ/2位相差層の製造)
透明樹脂基材(トリアセチルセルロース)に配向膜塗布液を塗布し乾燥することにより、λ/2配向処理をした。次いで、配向面に、ディスコチック液晶性化合物を含む塗布液を塗布し、加熱およびUV照射をして液晶化合物の配向を固定化することにより、透明樹脂基材上に厚み2μmの位相差発現層を作製した。
【0160】
(λ/4位相差層の製造)
配向膜をラビング処理したλ/4配向用透明樹脂基材(トリアセチルセルロース)に、棒状で重合性のネマチック液晶モノマーを含む塗布液を塗布し、屈折率異方性を保持した状態で固化することにより、透明樹脂基材上に厚み1μmの位相差発現層を得た。
【0161】
(光学積層体の製造)
上記λ/2位相差層及びλ/4位相差層の液晶層側にコロナ処理を施した。λ/2位相差層の遅相軸と、λ/4位相差層の遅相軸とがなす角度が60°となるよう配置し、表3に示す活性エネルギー線硬化型接着剤を用いて、第1接着層の厚みが表3に示すものとなるように液晶層同士をラミネーターで貼合し、積層体を得た。
得られた積層体のλ/4位相差層側から、紫外線照射装置〔フュージョンUVシステムズ(株)製〕を用い、積算光量400mJ/cm2(UV-B)で紫外線照射を行い、接着剤を硬化させて第1接着層とし、「λ/2位相差層」/第1接着層/「λ/4位相差層」の積層構造を有する、実施例17~19,比較例8の光学積層体を得た。
【0162】
<光学積層体の輝度分布の測定方法>
図4は、本明細書で採用する、光学積層体100の輝度分布の測定方法(検査工程)を説明するための図面である。ここで用いられる検査工程では、「λ/2位相差層」側の面を検査面100aとし、光源部121及び検出部122を有する検査光学系120を利用して光学積層体100を検査する。検査光学系120は、光源部121及び検出部122が、光学積層体100に対して同じ側に位置する反射光学系である。
【0163】
検査工程は、光学積層体100を図4の白抜き矢印方向に搬送しながら、検査面100aに、光源部121から検査光L1を照射するとともに、光源部121から照射され光学積層体100で反射した光(以下、「反射光L2」と称す)を、検出部122によって検出する。光学積層体100は、光学積層体100が枚葉状である場合、光学積層体100は、例えばベルトコンベアで搬送され得る。光学積層体100が長尺である場合、光学積層体100は、例えば搬送ロールなどで搬送され得る。以下、光学積層体100の搬送方向をMD方向と称す。搬送速度の例は、1m/min~100m/minである。
【0164】
検査光学系120が有する光源部121及び検出部122を説明する。
【0165】
光源部121は、検査光L1を出力する。検査光L1のピーク波長は、例えば500nm~700nmであり、好ましくは550nm~680nmであり、更に好ましくは600nm~650nmである。光源部121は、例えば、複数のLEDがライン状に配置されたラインLED光源である。この場合、光源部121の延在方向は、光学積層体100の法線n及びMD方向に直交する方向である。
【0166】
光源部121は、検査面100a側に配置されている。光源部121と検査面100aとの間の距離d1は、通常、100mm~2000mmである。距離d1は、例えば光源部121の光出射面と検査面100aとの間の距離である。光源部121の光軸と、検査面100aの法線n(光学積層体100の厚さ方向)との角度α1[°]は、通常、1°~60°であり、好ましくは5°~50°であり、更に好ましくは10°~45°である。
【0167】
検出部122は、検査面100aからの反射光L2を受光する。検出部122は2次元輝度計である。検出部122の例は、エリアセンサカメラ(2次元センサカメラ)であり、エリアセンサカメラの例は、CCDカメラである。検出部122は、ライン状の輝度計(例えば、ラインセンサカメラ)でもよい。
【0168】
検出部122は、検査面100a側において、光学積層体100によって検査光L1が反射した反射光L2を受光可能に配置されている。検出部122の光軸と検査面100aの法線nとのなす角度α2の大きさは、角度α1の大きさと実質的に同じである。検出部122と検査面100aとの間の距離d2の例は、100mm~2000mmである。検出部122と検査面100aとの間の距離d2は、検出部122の受光面と検査面100aとの距離であり得る。
【0169】
検出工程では、第1偏光フィルター123及び第2偏光フィルター124を使用する。第1偏光フィルター123及び第2偏光フィルター124は検査光学系120の一部でもよい。
【0170】
第1偏光フィルター123及び第2偏光フィルター124は、直線偏光特性を有するフィルターである。第1偏光フィルター123は、光源部121と光学積層体100の間に配置されている。第2偏光フィルター124は、光学フィルム100と検出部122との間に配置されている。したがって、光源部121から出力された検査光L1は、第1偏光フィルター123を通過して直線偏光光として光学積層体100に照射される。光学積層体100で反射された検査光L1である反射光L2は、第2偏光フィルター124を介して検出部122に入射する。第1偏光フィルター123は検査光L1の光路上に配置されており、第2偏光フィルター124は反射光L2の光路上に配置されていれば、第1偏光フィルター123及び第2偏光フィルター124の配置位置は限定されない。ただし、第1偏光フィルター123は、光源部121から発せられる熱の影響を加味し、光源部121から距離を置いた方がより好ましい。光源部121から第1偏光フィルター123までの距離は、50mm以上が好ましい。
【0171】
図5及び図6を利用して、検査工程での光学積層体100、第1偏光フィルター123及び第2偏光フィルター124の配置関係を説明する。配置関係の説明において、「λ/2位相差層」の面内位相差は、236nm±4nm又は234nm±5nmであり、「λ/4位相差層」の面内位相差は、116nm±4nmである。或いは、「λ/2位相差層」の面内位相差が240nm±5nmであり、「λ/4位相差層」の面内位相差は120nm±4nmである。
【0172】
図5は、光学積層体100が有するλ/2位相差層及びλ/4位相差層の配置関係を説明する図面である。図5では、λ/2位相差層が有する第1遅相軸112aと、λ/4位相差層が有する第2遅相軸113aとの関係で、λ/2位相差層とλ/4位相差層の配置関係を示している。
【0173】
図5中のx軸及びy軸は、検査面100aに設定した仮想的な軸である。x軸及びy軸は互いに直交していれば任意に設定され得る。一例として、x軸方向はMD方向である。以下の説明では、MD方向がx軸の方向である。第1遅相軸112a及び第2遅相軸113aの角度を規定するために、y軸を基準軸RAとする。基準軸RAに対する角度を規定する場合、光学積層体100を検査面100a側からみた場合に基準軸RAに対して反時計回り(左回り)を正の角度方向とし、時計回り(右回り)を負の角度方向とする。
【0174】
図5に示したように、第1遅相軸112aと基準軸RAとの間の角度をθ1とし、第2遅相軸113aと基準軸RAとの間の角度をθ2とし、第1遅相軸112aと第2遅相軸113aとの間の角度をθ3としたとき、λ/2位相差層及びλ/4位相差層は、角度θ1、角度θ2及び角度θ3が下記の条件(1)~条件(3)を満たすように、配置されている。
(1)-40°<θ1<―10°
(2)+15°<θ2<+50°
(3)+55°<θ3<+65°
図5では、θ1及びθ2の許容範囲をハッチングで示している。条件(3)を満たすことで、光学積層体10が円偏光板として機能する。
【0175】
図6は、光学積層体100に対する第1偏光フィルター123及び第2偏光フィルター124の配置関係を説明する図面である。図6では、第1偏光フィルター123が有する第1吸収軸123aと、第2偏光フィルター124が有する第2吸収軸124aとの関係で、第1偏光フィルター123と第2偏光フィルター124の配置関係を示している。図6中のx軸及びy軸は、図5中のx軸及びy軸と同じである。換言すれば、図6中の第1吸収軸123aは、図4において、第1偏光フィルター123を、法線nと直交する位置まで移動(角度α1が0°になるように回転)させた状態で、第1偏光フィルター123の第1吸収軸123aを検査面100aに投影した軸に相当する。図6中の第2吸収軸124aについても同様である。
【0176】
図6に示したように、第1吸収軸123aと基準軸RAとの間の角度をθ4とし、第2吸収軸124aと基準軸RAとの間の角度をθ5とし、第1吸収軸123aと第2吸収軸124aとの間の角度をθ6としたとき、第1偏光フィルター123及び第2偏光フィルター124は、角度θ4、角度θ5及び角度θ6が下記の条件(4)~条件(6)を満たすように、配置されている。
(4)-20°<θ4<+20°
(5)+70°<θ5<+110°
(6)+70°<θ6<+110°
図6では、θ4及びθ5の許容範囲をハッチングで示している。条件(6)は、第1偏光フィルター123及び第2偏光フィルター124がクロスニコル状態にある点を、第1吸収軸123a及び第2吸収軸124aが理想的に直交している状態に対して一定の許容範囲を考慮して表した式である。以下、説明の便宜のため、条件(6)を満たす第1偏光フィルター123及び第2偏光フィルター124の配置関係を、クロスニコル状態と称す。
【0177】
条件(1)~条件(6)の角度θ1~角度θ6は、共通の基準軸RAに対して規定されているため、条件(1)~条件(6)は、検出工程におけるλ/2位相差層112、λ/4位相差層113、第1偏光フィルター123及び第2偏光フィルター124の配置関係を規定している。図5及び図6を利用した条件(1)~条件(6)の関係の説明では、y軸を基準軸RAとした。しかしながら、基準軸RAはx軸でもよい。換言すれば、光学フィルム10を±90°又は180°回転させてもよいし、第1偏光フィルター123及び第2偏光フィルター124の配置関係を反転させてもよい。
【0178】
図7に示したように、光学積層体100の平面視形状(厚さ方向からみた形状)が矩形である場合、例えば、MD方向(図7の白抜き矢印方向)に対する光学フィルム100の角度β、角度θ4、角度θ5のうち少なくとも一つを調整することによって、条件(1)~条件(6)を満たすように、光学積層体100、第1偏光フィルター123及び第2偏光フィルター124の配置関係を調整すればよい。光学積層体100の平面視形状が矩形以外の四角形(例えば正方形)の場合も同様である。図7では、前述したx軸とMD方向との関係を示すために、x軸及びy軸を破線で示している。図7では、x軸を示す破線に沿って光学積層体100を横断する直線が第1直線であり、第1直線に沿った輝度分布が取得される。角度βは、光学積層体100のMD方向に対する向きを規定する。よって、図7では、角度βは、光学積層体100の長辺とMD方向との為す角度であるが、角度βは、光学積層体100の短辺とMD方向とのなす角度であってもよい。よって、光学積層体100が長尺である場合、条件(1)~条件(6)を満たすように、角度θ4及び角度θ5のうち少なくとも一方を調整すればよい。
【0179】
図4に示したように、光学積層体100は、背面板(支持板)125上に配置されていてもよい。背面板125の主面125a(光学積層体100側の面)の正反射率は、例えば45%以下である。背面板125は、上記例示した範囲の正反射率を有する材料で形成された板を使用してもよいし、板部材の表面に上記例示した範囲の正反射率を有する材料の例えばシートを貼合した構成を有してもよい。
【0180】
<実施例17~19,比較例8の光学積層体の輝度分布の測定>
実施例17~19,比較例8の光学積層体において、λ/2位相差層の面内位相差は236nm、λ/4位相差層の面内位相差は116nm、図5に示す角度θ3は60°であった。
【0181】
実施例17~19、比較例8の各光学積層体について、TDの方向が長手方向となるようにして、長手方向200mm、幅方向150mmの矩形のサンプルを切り出して、図4を用いて説明した検出工程を実施した。
【0182】
光源部121として、複数の赤色LEDが配置されたライン光源を用いた。検査光L1のピーク波長は、600nm~650nmであった。光源部121の光軸と検査面100aとの法線nとの間の角度α1は20°であった。同様に、検査面100aとの法線nと検出部122の法線nとの間の角度α2は、20°であった。光源部121と検査面100aとの間の距離は135mmであった。検査面100aと検出部122との間の距離d2は760mmであった。
【0183】
検出工程では、第1偏光フィルター123及び第2偏光フィルター124を使用した。光学積層体100のサンプル、第1偏光フィルター123及び第2偏光フィルター124の配置関係が、条件(1)~条件(6)を満たすように、サンプル、第1偏光フィルター123及び第2偏光フィルター124を配置した。図7に示した角度βは44°であった。サンプルを搬送速度500mm/sで搬送しながら、検出工程を実施した。
【0184】
上記のように配置したサンプルについて、第1直線に沿って反射光L2の強度を検出して輝度分布を取得した。図8は、実施例19の光学積層体について得られた第1直線に沿った輝度分布を示す。図中の輝度分布は、横軸が第1直線の位置(単位:mm)を示し、縦軸は輝度を示している。各サンプルの輝度分布に基づいて、最大輝度に対する最小輝度の比([最小輝度Imin/最大輝度Imax]×100(%))を算出した。表3に算出結果を示す。
【0185】
<偏光板複合体の製造>
(直線偏光板の製造)
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の質量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬してヨウ素染色を行った(ヨウ素染色工程)。ヨウ素染色工程を経たポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の質量比が12/5/100の水溶液に、56.5℃で浸漬してホウ酸処理を行った(ホウ酸処理工程)。
得られた偏光子に両面に、ケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルム(商品名:KC4UYTAC、コニカミノルタ製、厚さ40μm)を水系接着剤を介してニップロールで貼り合せた。得られた貼合物の張力を430N/mに保ちながら、60℃で2分間乾燥して、両面に保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを有する直線偏光板を得た。なお、上述の水系接着剤は、水100部に、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(クラレポバールKL318、クラレ製)3部と、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(スミレーズレジン650、住化ケムテックス製、固形分濃度30%の水溶液)1.5部を添加して調製した。
【0186】
得られた複合位相差板のλ/2位相差層側の配向膜及び透明樹脂基材を剥離し、上記直線偏光板とλ/2位相差層の液晶層とをアクリル系粘着剤を用いて貼合した。なお、アクリル系粘着剤からなる接着層(第2接着層)の膜厚は5μmであり、偏光子の透過軸とλ/2位相差層の遅相軸とがなす角度が15°であった。
次いで、λ/4位相差層側の配向膜及び透明樹脂基材を剥離し、直線偏光板/第2接着層/「λ/2位相差層」/第1接着層/「λ/4位相差層」の積層構造を有する偏光板複合体(円偏光板)を得た。
【0187】
(干渉ムラ評価方法)
実施例および比較例の偏光板複合体を、アクリル系粘着剤(膜厚25μm)を介してアルミ反射板に貼りつけ、3波長形蛍光灯下で目視観察し、以下の基準に基づいて評価した。評価結果を表3に示す。
A:干渉ムラが視認されない
B:干渉ムラが視認される
【0188】
【表3】
【0189】
<実施例20~22>
実施例17~19で得られた光学積層体において、「λ/2位相差層」から透明樹脂基材及びλ/2位相差層側の配向膜を剥離し、光学積層体(1)を得た。
得られた光学積層体(1)を実施例17~19と同様にして、輝度を求めた。結果を表4に示す。
得られた光学積層体(1)のλ/2位相差層の液晶層と上記直線偏光板とをアクリル系粘着剤を用いて貼合した。なお、アクリル系粘着剤からなる接着層(第2接着層)の膜厚は5μmであり、偏光子の透過軸とλ/2位相差層の遅相軸とがなす角度が15°であった。次いで、λ/4位相差層側の配向膜及び透明樹脂基材を剥離し、直線偏光板/第2接着層/「λ/2位相差層」/第1接着層/「λ/4位相差層」の積層構造を有する偏光板複合体(円偏光板)を得た。
得られた偏光板複合体を用いて、実施例17~19と同様にして干渉ムラを測定した。結果を表4に示す。
【0190】
【表4】
【0191】
<実施例23~25>
実施例17~19で得られた光学積層体において、「λ/2位相差層」から透明樹脂基材及びλ/2位相差層側の配向膜を剥離し、光学積層体を得た。得られた光学積層体のλ/2位相差層にアクリル系粘着剤(膜厚5μm)を介して実施例17~19で得た直線偏光板を積層させた。さらに、λ/4位相差層側の配向膜及び透明樹脂基材を剥離し、アクリル系粘着剤層(25μm)を介して透明樹脂を積層させ、偏光板複合体を得た。得られた複合偏光板から透明樹脂を剥離し、実施例17~19と同様にして、輝度を求めた。結果を表5に示す。
得られた複合偏光板のアクリル系粘着剤を介してアルミ反射板に貼りつけ、実施例17~19と同様に干渉ムラを測定した。結果を表5に示す。
【0192】
【表5】
【符号の説明】
【0193】
1 第1位相差層、2 第2位相差層、4 第1接着層、5,50 光学積層体、10 第1位相差層、11 第1基材層、12 第1配向層、13 第1位相差発現層、20 第2位相差層、21 第2基材層、22 第2配向層、23 第2位相差発現層、40 第1接着層、W 幅方向、100 光学積層体、100a 検査面、112a 第1遅相軸、113a 第2遅相軸、120 検査光学系、121 光源部、122 検出部、123 第1偏光フィルター、123a 第1吸収軸、124 第2偏光フィルター、124a 第2吸収軸、125 背面板、125a 背面板の主面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8