(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】縮環構造を有するカルボン酸又はカルボン酸エステル化合物及びその製造方法並びに化合物の使用
(51)【国際特許分類】
C07C 57/50 20060101AFI20231026BHJP
C07C 51/09 20060101ALI20231026BHJP
C07C 59/72 20060101ALI20231026BHJP
C07C 67/347 20060101ALI20231026BHJP
C08F 20/30 20060101ALI20231026BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C07C57/50 CSP
C07C51/09
C07C59/72
C07C67/347
C08F20/30
G02B1/04
(21)【出願番号】P 2022543945
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(86)【国際出願番号】 JP2021029983
(87)【国際公開番号】W WO2022039144
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2020140313
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】中山 貴文
(72)【発明者】
【氏名】千葉 幸介
(72)【発明者】
【氏名】師岡 直之
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-105101(JP,A)
【文献】特開2020-105101(JP,A)
【文献】AKBAR, Sikkandarkani et al.,Iron-Catalyzed Tandem Conia-Ene/Friedel-Crafts Reactions of o-Alkynyldihydrochalcones: Access to Ben,Journal of Organic Chemistry,2016年,Vol. 81, No. 3,pp. 1229-1236
【文献】OH, Chang Ho et al.,Scandium-catalyzed intramolecular Friedel-Crafts reactions of 2-[(2-alkyl-1H-indol-3-yl)methylene]ma,Synlett,2014年,vol. 25, No. 4,pp. 579-585
【文献】HAN, Zhaomeng et al.,Direct assembly of 3,4-difunctionalized benzofurans and polycyclic benzofurans by phenol dearomatiza,Angewandte Chemie, International Edition,2014年,Vol. 53, No. 26,pp. 6805-6809
【文献】CHOSSON, Elizabeth et al.,First and mild synthesis of fluorene-9-malonic acid and some substituted derivatives via the intramo,Tetrahedron,2011年,Vol. 67, No. 14,pp. 2548-2554
【文献】BROWN, Roger F. C. et al.,Pyrolysis of quinoline-3,4-dicarboxylic anhydrides bearing 2-phenyl, 2-benzyl, and 2-o-tolyl substit,Tetrahedron,1992年,Vol. 48, No. 36,pp. 7763-7774
【文献】SIEGLITZ, Adolf et al.,3-Hydroxyfluoranthene-1-, -2-, and -10-carboxylic acids,Chemische Berichte,1962年,Vol. 95,pp. 3013-3029
【文献】MCDOWELL, Berma L. et al.,1,2-Dihydrocyclopenta[jk]fluorene,Journal of the American Chemical Society,1962年,Vol. 84,pp. 3531-3538
【文献】FLETCHER, T. Lloyd et al.,Derivatives of fluorene. XII. 2-Amino-9-bromofluorene hydrobromide and related compounds,Journal of the Chemical Society,1961年,pp. 1400-1403
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 57/50
C07C 51/09
C07C 59/72
C07C 67/347
C08F 20/30
G02B 1/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A1-1)で表される化合物。
【化1】
上記式中、R
5及びR
6は、水素原子又はアルキル基を示す。L
1及びL
2は、炭素数1~6のアルキレン基を示
す。Sp
a及びSp
bは、単結合
であるか、又は
、直鎖アルキレン基、シクロアルキレン基、-O-及び>C(=O)から選ばれる基の1つ又は2つ以上が結合して形成される2価の連結基
である。ただし、Sp
a
が2価の連結基である場合におけるL
1
とCOOR
5
とを連結する最短分子鎖を構成する連結原子数、及び、Sp
b
が2価の連結基である場合におけるL
2
とCOOR
6
とを連結する最短分子鎖を構成する連結原子数は、いずれも1~10である。
R
11及びR
21は置換基を示し、v1及びw1は0~4の整数である。
ただし、(R
11)
v1-ベンゼン環/シクロペンタジエン骨格/ナフタレン環-(R
21)
w1で表される構造が線対称であることはない。「/」はその左右に記載する2つの環が縮合していることを示す。
【請求項2】
下記一般式(SA1-1)で表される化合物に対して、塩基の存在下で、(i)エチレン性不飽和カルボン酸化合物、(ii)エチレン性不飽和カルボン酸エステル化合物、(iii)エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物、又は、(iv)ω位に脱離基を有するアルキルカルボン酸エステルを付加反応させて、下記一般式(A1-1)で表される化合物を得ることを含む、下記一般式(A1-1)で表される化合物の製造方法。
【化2】
上記式中、R
5及びR
6は、水素原子又はアルキル基を示す。L
1及びL
2は、炭素数1~6のアルキレン基を示
す。Sp
a及びSp
bは、単結合
であるか、又は
、直鎖アルキレン基、シクロアルキレン基、-O-及び>C(=O)から選ばれる基の1つ又は2つ以上が結合して形成される2価の連結基
である。ただし、Sp
a
が2価の連結基である場合におけるL
1
とCOOR
5
とを連結する最短分子鎖を構成する連結原子数、及び、Sp
b
が2価の連結基である場合におけるL
2
とCOOR
6
とを連結する最短分子鎖を構成する連結原子数は、いずれも1~10である。
R
11及びR
21は置換基を示し、v1及びw1は0~4の整数である。
ただし、一般式(SA1-1)及び(A1-1)において、(R
11)
v1-ベンゼン環/シクロペンタジエン骨格/ナフタレン環-(R
21)
w1で表される構造が線対称であることはない。「/」はその左右に記載する2つの環が縮合していることを示す。
【請求項3】
前記の(ii)~(iv)において、前記付加反応の後に加水分解反応を行う、請求項2に記載の一般式(A1-1)で表される化合物の製造方法。
ただし、前記のR
5
及びR
6
は水素原子である。
【請求項4】
前記付加反応において使用する溶媒が、SP値が21.0MPa
1/2以上の溶媒を含む、請求項2又は3に記載の一般式(A1-1)で表される化合物の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物の、硬化性モノマーの合成中間体としての使用。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物の、光学部材の原料化合物又は該原料化合物の合成中間体としての使用。
【請求項7】
前記光学部材がレンズである、請求項6に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮環構造を有するカルボン酸又はカルボン酸エステル化合物及びその製造方法に関する。また、本発明は、縮環構造を有するカルボン酸又はカルボン酸エステル化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ、ビデオカメラあるいはカメラ付携帯電話、テレビ電話あるいはカメラ付ドアホンなどの撮像モジュールの光学部材にはガラス材料が用いられていた。ガラス材料は撮像モジュールの光学部材に適した光学特性を備え、また所望の光学特性を付与することができ、環境耐性にも優れている。
しかし、ガラス材料は軽量化及び小型化が容易ではなく、また加工性及び生産性にも劣る。これに対し、樹脂硬化物は、大量生産が可能であり、加工性にも優れているため、近年の撮像モジュールの小型化を背景に、ガラス材料に代替する光学部材として樹脂硬化物が用いられるようになっている。
【0003】
撮像モジュールの小型化に伴い、その光学部材にも小型化が求められている。しかし、光学部材を小型化していくと、色収差の問題が生じる。そこで、樹脂硬化物を用いた光学部材においては、硬化性組成物のモノマー又は添加物によりアッベ数が小さくなるよう調整して、色収差の補正を行うことが検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、4環以上が縮環したフルオレン型骨格に対し、フェニレン基を介して(メタ)アクリロイル基が結合した縮合環含有化合物(モノマー)を含有する硬化性樹脂組成物が記載され、この樹脂組成物を用いることにより、低アッベ数(νD)を示す硬化物が得られることが開示されている。
また、特許文献2には、環構成原子として窒素原子を含むフルオレン型骨格に対し、フェニレン基を介して(メタ)アクリロイル基が結合した化合物(モノマー)が記載され、この化合物を含有する硬化性組成物を用いることにより、アッベ数(νD)が低く、かつ、部分分散比(θg,F値)が高い硬化物が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-208804号公報
【文献】国際公開第2017/115649号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光学部材として用いる樹脂硬化物は、その原料化合物の純度が、原料化合物ないし樹脂硬化物の光透過性に影響することがある。したがって、光学部材として用いる樹脂硬化物の調製には、高純度の原料化合物を用いることが望まれる。このような所望の高純度原料化合物を得るには、原料化合物の中間体を合成後、あるいはこの中間体から原料化合物を合成後に、精製工程が必要になるなど、目的の純度の原料化合物の調製には一定の煩雑さが避けられない。
【0007】
本発明は、レンズ等の光学部材の原料化合物ないしその合成中間体として好適な化合物及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、下記の手段によって解決された。
<1>
下記一般式(A)又は(B)で表される化合物。
【化1】
上記式中、R
3及びR
4は、水素原子又は1価の置換基を示す。R
5及びR
6は、水素原子又はアルキル基を示す。L
1及びL
2は、炭素数1~6のアルキレン基を示し、Sp
a~Sp
dは、単結合又は2価の連結基を示す。
環Ar
1は下記式(AR1)で表される芳香環又はこの芳香環を縮合環を構成する環として含む縮合環を示し、環Ar
2は、下記式(AR2)で表される芳香環又はこの芳香環を縮合環を構成する環として含む縮合環を示す。
R
1は環Ar
1の環構成原子が有する置換基を示し、R
2は環Ar
2の環構成原子が有する置換基を示す。
vは0以上の整数であり、vの最大数は、環Ar
1の環構成原子が採り得る置換基の最大数である。
wは0以上の整数であり、wの最大数は、環Ar
2の環構成原子が採り得る置換基の最大数である。
【化2】
上記式中、X
11、Y
11、X
12及びY
12は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子又は炭素原子を示す。
Z
11は-X
11-C=C-Y
11-とともに5~7員の芳香環を形成する原子群であって、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及び炭素原子から選択される原子で構成される原子群を示す。
Z
12は-X
12-C=C-Y
12-とともに5~7員の芳香環を形成する原子群であって、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及び炭素原子から選択される原子で構成される原子群を示す。
*は、一般式(A)又は(B)中におけるシクロペンタジエン環の二重結合に相当する。
ただし、一般式(A)及び(B)において、(R
1)
v-Ar
1/シクロペンタジエン骨格/Ar
2-(R
2)
wで表される構造が線対称であることはない。「/」はその左右に記載する2つの環が縮合していることを示す。
また、環Ar
1及び環Ar
2の一方がベンゼン環であって、他方がキノリン環であることはない。
<2>
上記化合物が、上記一般式(A)で表される、<1>に記載の化合物。
<3>
上記化合物が、下記一般式(A1)で表される、<2>に記載の化合物。
【化3】
上記式中、X
a及びX
bは、窒素原子又はCHを示し、#の位置のCHは窒素原子に置き換わっていてもよい。
R
11及びR
21は置換基を示し、v1及びw1は0~4の整数である。
L
1、L
2、Sp
a、Sp
b、R
5及びR
6は、それぞれ上記一般式(A)におけるL
1、L
2、Sp
a、Sp
b、R
5及びR
6と同義である。
ただし、X
a及びX
bの一方が窒素原子であるとき、#の位置のCHの少なくとも1つは窒素原子である。また、X
a及びX
bがいずれもCHであるとき、X
aと同じ炭素原子に結合する#の位置のCH及びX
bと同じ炭素原子に結合する#の位置のCHのうち、一方のみが窒素原子に置き換わっていることはない。
<4>
下記一般式(S)で表される化合物に対して、塩基の存在下で、(i)エチレン性不飽和カルボン酸化合物、(ii)エチレン性不飽和カルボン酸エステル化合物、(iii)エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物、又は、(iv)ω位に脱離基を有するアルキルカルボン酸エステル化合物を付加反応させて、下記一般式(A)で表される化合物を得ることを含む、下記一般式(A)で表される化合物の製造方法。
【化4】
上記式中、R
5及びR
6は、水素原子又はアルキル基を示す。L
1及びL
2は、炭素数1~6のアルキレン基を示し、Sp
a及びSp
bは、単結合又は2価の連結基を示す。
環Ar
1は下記式(AR1)で表される芳香環又はこの芳香環を縮合環を構成する環として含む縮合環を示し、環Ar
2は、下記式(AR2)で表される芳香環又はこの芳香環を縮合環を構成する環として含む縮合環を示す。
R
1は環Ar
1の環構成原子が有する置換基を示し、R
2は環Ar
2の環構成原子が有する置換基を示す。
vは0以上の整数であり、vの最大数は、環Ar
1の環構成原子が採り得る置換基の最大数である。
wは0以上の整数であり、wの最大数は、環Ar
2の環構成原子が採り得る置換基の最大数である。
【化5】
上記式中、X
11、Y
11、X
12及びY
12は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子又は炭素原子を示す。
Z
11は-X
11-C=C-Y
11-とともに5~7員の芳香環を形成する原子群であって、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及び炭素原子から選択される原子で構成される原子群を示す。
Z
12は-X
12-C=C-Y
12-とともに5~7員の芳香環を形成する原子群であって、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及び炭素原子から選択される原子で構成される原子群を示す。
*は、一般式(S)及び(A)中におけるシクロペンタジエン環の二重結合に相当する。
ただし、一般式(S)及び(A)において、(R
1)
v-Ar
1/シクロペンタジエン骨格/Ar
2-(R
2)
wで表される構造が線対称であることはない。「/」はその左右に記載する2つの環が縮合していることを示す。
また、環Ar
1及び環Ar
2の一方がベンゼン環であって、他方がキノリン環であることはない。
<5>
上記の(ii)~(iv)において、上記付加反応の後に加水分解反応を行う、<4>に記載の一般式(A)で表される化合物の製造方法。
<6>
上記付加反応において使用する溶媒が、SP値が21.0MPa
1/2以上の溶媒を含む、<4>又は<5>に記載の一般式(A)で表される化合物の製造方法。
<7>
<1>~<3>のいずれか1つに記載の化合物の、硬化性モノマーの合成中間体としての使用。
<8>
<1>~<3>のいずれか1つに記載の化合物の、光学部材の原料化合物又はこの原料化合物の合成中間体としての使用。
<9>
上記光学部材がレンズである、<8>に記載の使用。
【0009】
本発明において、特定の符号又は式で表示された置換基もしくは連結基等(以下、置換基等という)が複数あるとき、又は、複数の置換基等を同時に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい(「それぞれ独立に」の表現の有無にかかわらず、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい)。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、複数の置換基等が近接するとき(特に、隣接するとき)には、特段の断りがない限り、それらが互いに連結して環を形成していてもよい。また、特段の断りがない限り、環、例えば脂環、芳香族環、ヘテロ環は、さらに縮環して縮合環を形成していてもよい。
本発明において、特段の断りがない限り、二重結合については、分子内にE型及びZ型が存在する場合、そのいずれであっても、またこれらの混合物であってもよい。
また、本発明において、特段の断りがない限り、化合物中に1個又は2個以上の不斉炭素を有する場合、このような不斉炭素の立体化学についてはそれぞれ独立して(R)体又は(S)体のいずれかをとることができる。この結果、化合物は、光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体の混合物であってもよく、ラセミ体であってもよい。
また、本発明において化合物の表示は、本発明の効果を損なわない範囲で、構造の一部を変化させたものを含む意味である。更に、置換又は無置換を明記していない化合物については、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の置換基を有していてもよい意味である。
本発明において置換又は無置換を明記していない置換基(連結基及び環についても同様)については、所望の効果を損なわない範囲で、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。例えば、「アルキル基」という場合、無置換アルキル基と置換アルキル基の両方を含む意味である。
本発明において、ある基の炭素数を規定する場合、この炭素数は、本発明ないし本明細書において特段の断りのない限りは、基全体の炭素数を意味する。つまり、この基がさらに置換基を有する形態である場合、この置換基を含めた全体の炭素数を意味する。例えば、L1及びL2として採り得る「直鎖アルキレン基」における炭素数については、後述する通り、置換基を有しない状態での炭素数を意味する。
【0010】
本発明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明において、各成分は、それぞれ1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0011】
本発明において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートのいずれか一方又は両方を表し、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル及びメタクリロイルのいずれか一方又は両方を表す。本発明においてモノマーは、オリゴマー及びポリマーと区別され、重量平均分子量が1000以下の化合物をいう。
本発明において、「エチレン性不飽和基」は、CH2=CH-で表される基の他に、CH2=CH-における3つの水素原子が置換基に置き換わっている基も含む意味で使用する。CH2=CH-における3つの水素原子に置き換わっていてもよい置換基としては、本発明の効果を損なわない範囲で特に制限されず、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アシルアミノ基、アミノ基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基及びシアノ基が挙げられ、これらの基を2つ以上組み合わせてなる基を用いることもできる。
【0012】
本発明において、脂肪族炭化水素基というときは、直鎖もしくは分岐のアルカン、直鎖もしくは分岐のアルケン、又は直鎖もしくは分岐のアルキンから、任意の水素原子を1つ除いて得られる基を表す。本発明において、脂肪族炭化水素基は好ましくは、直鎖もしくは分岐のアルカンから、任意の水素原子を1つ除いて得られるアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、1-メチルブチル基、3-メチルブチル基、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、1-メチルヘプチル基、ノニル基、1-メチルオクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
また、本発明において、脂肪族炭化水素基(無置換)は、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0013】
本発明において、アルキル基というときは、直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。アルキル基としては、上記の例が挙げられる。アルキル基を含む基(アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、カルバモイル基等)中のアルキル基についても同様である。
また、本発明において直鎖アルキレン基の例としては、上記アルキル基のうち、直鎖アルキル基から末端の炭素原子に結合する水素原子を1つ除いて得られる基が挙げられる。
【0014】
本発明において、脂環式炭化水素環とは飽和炭化水素環(シクロアルカン)を意味する。脂環式炭化水素環の例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン等が挙げられる。
本発明において、不飽和炭化水素環とは、炭素-炭素不飽和二重結合を有する炭化水素環のうち、芳香族環でないものを意味する。不飽和炭化水素環の例としては、インデン、インダン、フルオレン等が挙げられる。
【0015】
本発明において、脂環式炭化水素基というとき、シクロアルカンから、任意の水素原子を1つ除いて得られるシクロアルキル基を意味する。脂環式炭化水素基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられ、炭素数3~12のシクロアルキル基が好ましい。
本発明において、シクロアルキレン基は、シクロアルカンから、任意の水素原子を2つ除いて得られる2価の基を表す。シクロアルキレン基の例としては、シクロヘキシレン基が挙げられる。
【0016】
本発明において、芳香環というとき、芳香族炭化水素環および芳香族複素環のいずれか、又は両方を意味する。
【0017】
本発明において、芳香族炭化水素環は、炭素原子のみにより環を形成している芳香環を意味する。芳香族炭化水素環は、単環であっても縮合環であってもよい。炭素数6~14の芳香族炭化水素環が好ましい。芳香族炭化水素環の例としては、ベンゼン環、ナフチレン環、アントラセン環、フェナントレン環等が挙げられる。本発明において、芳香族炭化水素環が他の環に結合しているというときは、芳香族炭化水素環は1価又は2価の芳香族炭化水素環基として他の環上に置換していればよい。
【0018】
本発明において、1価の基について芳香族炭化水素環基というとき、芳香族炭化水素環から、任意の水素原子を1つ除いて得られる1価の基を表す。1価の芳香族炭化水素環基としては、炭素数6~14の芳香族炭化水素環基が好ましく、例としては、フェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、3-アントラセニル基、4-アントラセニル基、9-アントラセニル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基等が挙げられる。これらのうち、フェニル基が好ましい。
【0019】
本発明において、2価の基について芳香族炭化水素環基というとき、上記1価の芳香族炭化水素環基から任意の水素原子を1つ除いて得られる2価の基を表す。2価の芳香族炭化水素環基の例としては、フェニレン基、ナフチレン基、フェナントリレン基等が挙げられ、フェニレン基が好ましく、1,4-フェニレン基がより好ましい。
【0020】
本発明において、芳香族複素環は、炭素原子及びヘテロ原子により環が形成されている芳香環を意味する。ヘテロ原子としては酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子などが挙げられる。芳香族複素環は、単環であっても縮合環であってもよく、環を構成する原子の数は、5~20が好ましく、5~14がより好ましい。環を構成する原子におけるヘテロ原子の数は特に限定されないが1~3個であることが好ましく、1~2個であることがより好ましい。芳香族複素環の例としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、キノリン環、ベンゾフラン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、および後述の含窒素縮合芳香環の例等が挙げられる。本発明において、芳香族複素環が他の環に結合しているというときは、芳香族複素環は1価又は2価の芳香族複素環基として他の環上に置換していればよい。
【0021】
本発明において、1価の基について芳香族複素環基というとき、芳香族複素環から、任意の水素原子を1つ除いて得られる1価の基を表す。1価の芳香族複素環基の例としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、キノリル基、ベンゾフラニル基(好ましくは、2-ベンゾフラニル基)、ベンゾチアゾリル基(好ましくは2-ベンゾチアゾリル基)、ベンゾオキサゾリル基(好ましくは2-ベンゾオキサゾリル基)等が挙げられる。これらのうち、フリル基、チエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチアゾリル基又はベンゾオキサゾリル基が好ましく、2-フリル基又は2-チエニル基がより好ましい。
【0022】
本発明において、2価の芳香族複素環基というときは、芳香族複素環から、任意の水素原子を2つ除いて得られる2価の基を表し、例としては上記の(1価の)芳香族複素環基から任意の水素原子を1つ除いて得られる2価の基が挙げられる。
本発明において、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の化合物は、これを中間体とすることにより、レンズ等の光学部材の製造に用いることができる硬化性モノマーを高純度で提供することができ、硬化物の光透過率を高めることができる。
本発明の製造方法によれば、本発明の化合物を高純度かつ高収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態又は具体例等に基づいてなされることがあるが、本発明は、本発明で規定すること以外はそれらの実施形態に限定されない。
【0025】
[化合物]
本発明の化合物は、下記一般式(A)又は(B)で表される化合物であり、縮環構造を有するカルボン酸又はカルボン酸エステル化合物である。
【0026】
【0027】
上記式中、R3及びR4は、水素原子又は1価の置換基を示す。R5及びR6は、水素原子又はアルキル基を示す。L1及びL2は、炭素数1~6のアルキレン基を示し、Spa~Spdは、単結合又は2価の連結基を示す。
環Ar1は下記式(AR1)で表される芳香環又はこの芳香環を縮合環を構成する環として含む縮合環を示し、環Ar2は、下記式(AR2)で表される芳香環又はこの芳香環を縮合環を構成する環として含む縮合環を示す。
R1は環Ar1の環構成原子が有する置換基を示し、R2は環Ar2の環構成原子が有する置換基を示す。
vは0以上の整数であり、vの最大数は、環Ar1の環構成原子が採り得る置換基の最大数である。
wは0以上の整数であり、wの最大数は、環Ar2の環構成原子が採り得る置換基の最大数である。
ただし、一般式(A)及び(B)において、(R1)v-Ar1/シクロペンタジエン骨格/Ar2-(R2)wで表される構造が線対称であることはない。「/」はその左右に記載する2つの環が縮合していることを示す。
また、環Ar1及び環Ar2の一方がベンゼン環であって、他方がキノリン環であることはない。
なお、一般式(A)及び(B)のいずれの一般式でも表される化合物については、一般式(A)で表される化合物に分類するものとする。
【0028】
本発明の一般式(A)又は(B)で表される化合物の特徴的構造の1つは、上記の通り、(R1)v-Ar1/シクロペンタジエン骨格/Ar2-(R2)wで表される縮環構造が線対称構造を採らないことにある。ここで、「/」はシクロペンタジエン骨格が環Ar1及び環Ar1とそれぞれ縮合していることを示す。また「シクロペンタジエン骨格」とは、シクロペンタジエンが有する置換基を除いた環構造を意味する。
すなわち、一般式(A)又は(B)で表される化合物における上記規定は、5員環(シクロペンタジエン構造)の両側に位置する、v個の置換基R1を有する環Ar1と、w個の置換基R2を有する環Ar2とが、次の少なくともいずれかの点で異なることを意味する。
(i)環Ar1と環Ar2の母核構造、
(ii)置換基R1と置換基R2の母核に対する置換位置、及び、
(iii)置換基R1と置換基R2の構造。
なかでも、上記(i)の点で少なくとも異なることが好ましい。
本発明の化合物は、例えば、レンズ等の光学部材の原料化合物である硬化性モノマーの合成中間体として好適である。本発明の化合物から硬化性モノマーを調製し、この硬化性モノマーを用いて形成した硬化物においては、(R1)v-Ar1/シクロペンタジエン骨格/Ar2-(R2)wで表される非対称な縮環構造部分が、屈折率の波長分散特性に大きく寄与してくる。
本発明の化合物から得られる硬化性モノマーは上記の非対称な縮環構造部分を有し、このモノマーを用いて形成した硬化物は、十分に低いアッベ数νDを実現でき、また、十分に高いθg、F値を示し、色収差補正機能を有する光学部材に好適に用いられる。
【0029】
以下、一般式(A)又は(B)における置換基、連結基、符号について、それぞれ詳述する。
【0030】
(1)L1及びL2
L1及びL2は、炭素数1~6のアルキレン基を示し、炭素数1~4のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基であることがより好ましい。アルキレン基は直鎖であってもよく分岐状であってもよい。
Spa又はSpaと環Ar1及び環Ar2が縮環する5員環とを連結する最短分子鎖を構成する連結原子数は、1~6が好ましく、1~4がより好ましく、2又は3がさらに好ましい。
なお、L1及びL2は、L1及びL2を構成するアルキレン基の炭素数が最大となるようにして決定する。すなわち、一般式(A)において、下記Spa及びSpbとして採り得る2価の連結基のうち、L1又はL2と結合する部分がアルキレン基であることはない。
【0031】
上記のL1及びL2におけるアルキレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、アミノ基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基及び-Sp-COORで表される基が挙げられる。
Spは単結合又は2価の連結基を示し、後述するSpaの記載を適用することができる。Rは水素原子又はアルキル基を示し、後述するR5の記載を適用することができる。
なかでも、Spは単結合が好ましく、Rは水素原子が好ましい。
-Sp-COORは、-COORが好ましく、-COOHがより好ましい。
上記のL1及びL2におけるアルキレン基が有していてもよい置換基としては、アリール基、アルコキシ基又は-Sp-COORで表される基が好ましく、アリール基又は-Sp-COORで表される基がより好ましく、アリール基又は-COORで表される基がさらに好ましい。
上記のL1及びL2におけるアルキレン基が置換基を有する場合、その置換基の数は特に限定されず、例えば、置換基を1~4個有していてもよく、1又は2個が好ましく、1個がより好ましい。
上記のL1及びL2におけるアルキレン基は、置換基を有していないことが好ましい。
【0032】
(2)Spa及びSpb
Spa及びSpbは、単結合又は2価の連結基を示す。
Spa又はSpbとして採り得る2価の連結基としては、直鎖アルキレン基、シクロアルキレン基、2価の芳香族炭化水素環基、2価の芳香族複素環基、-O-、-S-、>C(=O)及び>NR201から選ばれる基の1つ又は2つ以上が結合して形成される2価の連結基が挙げられる。
上記R201は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示す。
ただし、Spa及びSpbとして採り得る2価の連結基のうち、L1又はL2と結合する部分が直鎖アルキレン基又はシクロアルキレン基であることはない。
【0033】
上記直鎖アルキレン基の炭素数は、1~8が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましく、1又は2が特に好ましい。
上記シクロアルキレン基の炭素数は、3~6が好ましい。
上記「直鎖アルキレン基」における炭素数とは、置換基を有しない状態での炭素数を意味する。「直鎖アルキレン基」が置換基を有する場合には、この置換基としてはアルキル基も採り得る。この場合、全体としてみれば分岐アルキレン基となるが、Spa及びSpbにおける、L1とCOOR5、又は、L2とCOOR6を連結する最短分子鎖に該当する部分の連結原子数が、上記「直鎖アルキレン基」における炭素数に対応することになる。
上記「シクロアルキレン基」における炭素数とは、置換基を有しない状態の炭素数を意味する。
【0034】
上記のSpa及びSpbにおける直鎖アルキレン基、シクロアルキレン基、2価の芳香族炭化水素環基又は2価の芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アシルアミノ基、アミノ基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基及びシアノ基が挙げられ、アルキル基又はアリール基が好ましく、アルキル基がより好ましく、炭素数1~3のアルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
置換基の数は特に限定されず、例えば、置換基を1~4個有していてもよい。
【0035】
2価の連結基であるSpa及びSpbを構成する上記の直鎖アルキレン基、シクロアルキレン基、2価の芳香族炭化水素環基、2価の芳香族複素環基、-O-、-S-、>C(=O)及び>NR201の数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。
2価の連結基であるSpa及びSpb中において、-O-、-S-、>C(=O)及び>NR201の2つ以上が連結して形成される基としては、-C(=O)O-、-NR201C(=O)-、-SC(=O)-、-OC(=O)O-又は-NR201C(=O)O-が挙げられ、-C(=O)O-、-NR201C(=O)-又は-SC(=O)-が好ましく、-C(=O)O-がより好ましい。
上記の-O-、-S-、>C(=O)及び>NR201の2つ以上が連結して形成される基は、単独で、又は、直鎖アルキレン基及びシクロアルキレン基の少なくともいずれかと共に2価の連結基であるSpa及びSpbを構成していればよく、直鎖アルキレン基及びシクロアルキレン基の少なくともいずれかと共に2価の連結基であるSpa及びSpbを構成していることが好ましい。
【0036】
なお、上記の-C(=O)O-、-NR201C(=O)-、-NR201C(=O)O-又は-SC(=O)-は、左右いずれの結合手がL1側又はL2側に位置するように配されてもよい。
【0037】
Spa及びSpbにおける、L1とCOOR5、又は、L2とCOOR6とを連結する最短分子鎖を構成する連結原子数は、Spa又はSpbが2価の連結基である場合、例えば、1~20とすることができ、化合物中におけるシクロペンタジエン骨格とAr1及びAr2とからなる縮合構造部の比率をより大きくする観点から、1~10が好ましく、1~8がより好ましく、1~6がさらに好ましく、1~4が特に好ましい。なお、Spa又はSpbが単結合である場合、L1とCOOR5、又は、L2とCOOR6とを連結する最短分子鎖を構成する連結原子数は0であり、この形態も上記観点から好ましい。例えば、後述の例示化合物(A1-7)においては、L1とCOOR5、又は、L2とCOOR6とを連結する最短分子鎖を構成する連結原子数は、8である。
Spa又はSpbとして採り得る2価の連結基としては、直鎖アルキレン基、シクロアルキレン基、-O-及び>C(=O)から選ばれる基の1つ又は2つ以上が結合して形成される2価の連結基が好ましく、-C(=O)O-アルキレン-、-C(=O)O-シクロアルキレン-、-C(=O)O-直鎖アルキレン-OC(=O)-直鎖アルキレン-、-C(=O)O-直鎖アルキレン-OC(=O)-シクロアルキレン-がより好ましく、-C(=O)O-直鎖アルキレン-がさらに好ましい。
【0038】
Spa及びSpbとしては、単結合、又は、直鎖アルキレン基、シクロアルキレン基、-O-及び>C(=O)から選ばれる基の1つ又は2つ以上が結合して形成される2価の連結基が好ましく、単結合、-C(=O)O-直鎖アルキレン-OC(=O)-直鎖アルキレン-、又は、-C(=O)O-直鎖アルキレン-OC(=O)-シクロアルキレン-がより好ましく、単結合がさらに好ましい。
【0039】
Spa及びSpbは同一でも異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
【0040】
(3)Spc及びSpd
Spc及びSpdは、単結合又は2価の連結基を示す。
Spc又はSpdとして採り得る2価の連結基としては、直鎖アルキレン基、シクロアルキレン基、2価の芳香族炭化水素環基、2価の芳香族複素環基、-O-、-S-、>C(=O)及び>NR201から選ばれる基の1つ又は2つ以上が結合して形成される2価の連結基が挙げられる。
Spc及びSpdの少なくとも一方は、CR3への連結部分がアルキレン基である2価の連結基であることが好ましい。
上記R201は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示す。
【0041】
上記直鎖アルキレン基の炭素数は、1~8が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましく、1又は2が特に好ましい。
上記シクロアルキレン基の炭素数は、3~6が好ましい。
上記「直鎖アルキレン基」における炭素数とは、置換基を有しない状態での炭素数を意味する。「直鎖アルキレン基」が置換基を有する場合には、この置換基としてはアルキル基も採り得る。この場合、全体としてみれば分岐アルキレン基となるが、Spc及びSpdにおける、CR3とCOOR5、又は、CR3とCOOR6を連結する最短分子鎖に該当する部分の連結原子数が、上記「直鎖アルキレン基」における炭素数に対応することになる。
上記「シクロアルキレン基」における炭素数とは、置換基を有しない状態の炭素数を意味する。
【0042】
上記のSpc及びSpdにおける直鎖アルキレン基、シクロアルキレン基、2価の芳香族炭化水素環基又は2価の芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アシルアミノ基、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基及びシアノ基が挙げられ、アルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
置換基の数は特に限定されず、例えば、置換基を1~4個有していてもよい。
【0043】
2価の連結基であるSpc及びSpdを構成する上記の直鎖アルキレン基、シクロアルキレン基、2価の芳香族炭化水素環基、2価の芳香族複素環基、-O-、-S-、>C(=O)及び>NR201の数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。
2価の連結基であるSpc及びSpd中において、-O-、-S-、>C(=O)及び>NR201の2つ以上が連結して形成される基としては、-C(=O)O-、-NR201C(=O)-、-SC(=O)-、-OC(=O)O-又は-NR201C(=O)O-が挙げられ、-C(=O)O-、-NR201C(=O)-又は-SC(=O)-が好ましく、-C(=O)O-がより好ましい。
上記の-O-、-S-、>C(=O)及び>NR201の2つ以上が連結して形成される基は、単独で、又は、直鎖アルキレン基及びシクロアルキレン基の少なくともいずれかと共に2価の連結基であるSpc及びSpdを構成していればよく、直鎖アルキレン基及びシクロアルキレン基の少なくともいずれかと共に2価の連結基であるSpc及びSpdを構成していることが好ましい。
【0044】
なお、上記の-C(=O)O-、-NR201C(=O)-、-NR201C(=O)O-又は-SC(=O)-は、左右いずれの結合手がCR3側に位置するように配されてもよい。
【0045】
Spc及びSpdにおける、CR3とCOOR5、又は、CR3とCOOR6とを連結する最短分子鎖を構成する連結原子数は、Spc又はSpdが2価の連結基である場合、例えば、1~20とすることができ、化合物中におけるシクロペンタジエン骨格とAr1及びAr2とからなる縮合構造部の比率をより大きくする観点から、1~10が好ましく、1~8がより好ましく、1~6がさらに好ましく、1~4が特に好ましい。なお、Spc又はSpdが単結合である場合、CR3とCOOR5、又は、CR3とCOOR6とを連結する最短分子鎖を構成する連結原子数は0であり、この形態も上記観点から好ましい。例えば、後述の例示化合物(A1-5)においては、CR3とCOOR5、又は、CR3とCOOR6とを連結する最短分子鎖を構成する連結原子数は、一方が0であり、他方が1である。
Spc又はSpdとして採り得る2価の連結基としては、直鎖アルキレン基、-O-及び>C(=O)から選ばれる基の1つ又は2つ以上が結合して形成される2価の連結基が好ましく、直鎖アルキレン基がより好ましい。
【0046】
Spc及びSpdとしては、単結合、又は、直鎖アルキレン基、-O-及び>C(=O)から選ばれる基の1つ又は2つ以上が結合して形成される2価の連結基が好ましく、単結合又は直鎖アルキレン基がより好ましい。
【0047】
Spc及びSpdは同一でも異なっていてもよい。
Spc及びSpdとしては、Spc及びSpdの一方が単結合であって、他方が直鎖アルキレン基であることが好ましい。
【0048】
(4)R3及びR4
R3及びR4は、水素原子又は1価の置換基を示す。
R3及びR4として採り得る1価の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アシルアミノ基、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基及びシアノ基が挙げられ、アルキル基が好ましい。
R3及びR4として採り得るアルキル基の炭素数は、1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。
R3及びR4としては、水素原子が好ましい。
【0049】
(5)R5及びR6
R5及びR6は、水素原子又はアルキル基を示す。
R5及びR6として採り得るアルキル基の炭素数は、1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。
R5及びR6は同一であっても異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
【0050】
(6)環Ar1及び環Ar2
環Ar1は下記式(AR1)で表される芳香環又はこの芳香環を縮合環を構成する環として含む縮合環を示し、環Ar2は、下記式(AR2)で表される芳香環又はこの芳香環を縮合環を構成する環として含む縮合環を示す。
【0051】
環Ar1及び環Ar2が縮合環である場合、縮合環を構成する各環の環員数は5~7が好ましく、5又は6がより好ましく、6がさらに好ましい。
また、環Ar1及び環Ar2が縮合環である場合、縮合環を構成する環の数は、2又は3であることが好ましく、2であることがより好ましい。環Ar1及び環Ar2の一方が下記式(AR1)又は(AR2)で表される単環であって、他方が縮合環であることが好ましい。この縮合環を構成する環の数としては、2が好ましい。
縮合環を構成する環構成原子のうち、下記式(AR1)又は(AR2)で表される環以外の環構成原子としては、炭素原子、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子が好ましく、炭素原子又は窒素原子がより好ましく、炭素原子がさらに好ましい。
縮合環を構成する下記式(AR1)又は(AR2)で表される環以外の環としては、例えば、ベンゼン環又はピリジン環が好ましい。
【0052】
【0053】
上記式中、X11、Y11、X12及びY12は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子又は炭素原子を示す。
Z11は-X11-C=C-Y11-とともに5~7員の芳香環を形成する原子群であって、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及び炭素原子から選択される原子で構成される原子群を示す。
Z12は-X12-C=C-Y12-とともに5~7員の芳香環を形成する原子群であって、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及び炭素原子から選択される原子で構成される原子群を示す。
*は、一般式(A)又は(B)中におけるシクロペンタジエン環の二重結合に相当する。すなわち、シクロペンタジエン環は、環Ar1及び環Ar2と、それぞれ*で示される辺を共有して縮合している。
【0054】
(X11、Y11、X12及びY12)
上記X11、Y11、X12及びY12は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子又は炭素原子を示し、窒素原子又は炭素原子が好ましい。
なかでも、後述する環Ar1が単環である場合には、X11及びY11は共に炭素原子であることが好ましく、後述する環Ar1が縮合環である場合には、X11及びY11は、共に窒素原子であるか共に炭素原子であることが好ましい。
同様に、後述する環Ar2が単環である場合には、X12及びY12は共に炭素原子であることが好ましく、後述する環Ar2が縮合環である場合には、X12及びY12は、共に窒素原子であるか共に炭素原子であることが好ましい。
【0055】
(Z11及びZ12)
Z11は-X11-C=C-Y11-とともに5~7員の芳香環を形成する原子群であり、5又は6員の芳香環を形成する原子群であることが好ましく、6員の芳香環を形成する原子群であることがより好ましい。
Z12は-X12-C=C-Y12-とともに5~7員の芳香環を形成する原子群であり、5又は6員の芳香環を形成する原子群であることが好ましく、6員の芳香環を形成する原子群であることがより好ましい。
Z11及びZ12は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及び炭素原子から選択される原子で構成される原子群である。Z11及びZ12は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及び炭素原子から選択される原子で構成される原子群であって、少なくとも炭素原子を含む原子群であることが好ましく、炭素原子からなる原子群であることがより好ましい。
【0056】
(7)R1及びR2
R1は環Ar1の環構成原子が有する置換基を示し、R2は環Ar2の環構成原子が有する置換基を示す。R1及びR2は、それぞれ、環Ar1又は環Ar2における環構成原子のうち、無置換の場合にはNH又はCHで表記される窒素原子又は炭素原子が有していてもよい置換基である。
R1及びR2として採り得る置換基としては、特に制限はないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、芳香族炭化水素環基又はシアノ基が挙げられる。
環Ar1におけるR1の置換位置、及び、環Ar2におけるR2の置換位置は特に制限はない。
【0057】
R1及びR2として採り得るアルキル基の炭素数は1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1が更に好ましい。
R1及びR2として採り得るアルコキシ基の炭素数は1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1が更に好ましい。
R1及びR2として採り得る芳香族炭化水素環基の炭素数は6~14が好ましく、6~10がより好ましい。
R1及びR2として採り得るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
R1及びR2は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素環基又はシアノ基が好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のアルコキシ基がより好ましく、ハロゲン原子、メチル基又はメトキシ基がさらに好ましい。
【0058】
(8)v及びw
vは0以上の整数であり、vの最大数は、環Ar1の環構成原子が採り得る置換基の最大数である。
wは0以上の整数であり、wの最大数は、環Ar2の環構成原子が採り得る置換基の最大数である。
v及びwは、0~4の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましい。
v及びwの合計は、0~4の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましい。
【0059】
本発明の化合物は、上記一般式(A)で表される化合物であることが好ましく、下記一般式(A1)で表される化合物であることがより好ましい。
【0060】
【0061】
上記式中、Xa及びXbは、窒素原子又はCHを示し、#の位置のCHは窒素原子に置き換わっていてもよい。
R11及びR21は置換基を示し、v1及びw1は0~4の整数である。
L1、L2、Spa、Spb、R5及びR6は、それぞれ上記一般式(A)におけるL1、L2、Spa、Spb、R5及びR6と同義である。
ただし、Xa及びXbの一方が窒素原子であるとき、#の位置のCHの少なくとも1つは窒素原子である。また、Xa及びXbがいずれもCHであるとき、Xaと同じ炭素原子に結合する#の位置のCH及びXbと同じ炭素原子に結合する#の位置のCHのうち、一方のみが窒素原子に置き換わっていることはない。これらの♯に係る但し書きは、シクロペンタジエン骨格の右側に位置する、Xa及びXbを環構成原子として有する縮環が、キノリン環であることはないことを意味する。
【0062】
v1及びw1は、0~2の整数であることが好ましい。
R11及びR21として採り得る置換基としては、前述のR1及びR2として採り得る置換基の記載を適用することができる。
なお、R21は、Xa及びXbが採り得るCHにおける炭素原子、並びに、#の位置のCHにおける炭素原子が有していてもよい置換基である。
R11又はR21を有する場合のR11又はR21の置換位置としては、特に制限はないが、下記構造で表される位置に有することが好ましい。
【0063】
【0064】
XaおよびXbは、いずれもCHであるか、又は、いずれも窒素原子であることが好ましい。ただし、Xa及びXbがいずれもCHであるとき、Xaと同じ炭素原子に結合する#の位置のCH及びXbと同じ炭素原子に結合する#の位置のCHのうち、一方のみが窒素原子に置き換わっていることはない。
また、#の位置のCHはいずれも窒素原子に置き換わっていないことが好ましい。
すなわち、上記一般式(A1)で表される化合物は、下記一般式(A1-1)または(A1-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0065】
【0066】
上記式中、R11、R21、R5、R6、L1、L2、Spa、Spb、v1及びw1は、それぞれ上記一般式(A1)におけるR11、R21、R5、R6、L1、L2、Spa、Spb、v1及びw1と同義である。
【0067】
本発明の化合物を光学材料に用いる場合には非液晶性の化合物であることが好ましい。すなわち、上述のSpa~Spdは、レンズ材料として用いる観点からは、いずれも、環構造を有していない連結基であることが好ましい。
【0068】
以下に、一般式(A)又は(B)で表される化合物の好ましい具体例を列挙するが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。なお、以下の構造式におけるMeはメチル基、Etはエチル基を表す。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
本発明の化合物は、その合成における反応率が高く、精製工程を経ずとも高純度品として得ることができる。光学部材の原料化合物ないしその中間体としての使用を考慮すると、本発明の化合物の透過率は97.0%以上が好ましく、98.0%以上がより好ましく、99.0%以上がさらに好ましい。
上記透過率は、後述の実施例に記載の方法により測定される、420nmにおける透過率を意味する。なお、化合物の溶液を調製する場合には、化合物が溶解する溶媒に溶かせばよい。
【0074】
本発明の化合物の純度は、89.0%以上が好ましく、90.0%以上がより好ましく、93.0%以上がさらに好ましく、95.0%以上が特に好ましい。
上記純度は、後述の実施例に記載の方法により測定される、HPLC純度を意味する。
【0075】
[化合物の用途]
本発明の化合物は、それ自体が新規化合物として、各種機能性材料の原料ないしその合成中間体として使用することができる。
また、例えば、カルボキシ基を介して(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基等の重合性基を導入することができ、硬化性モノマーの合成中間体としても適している。
後述の実施例に示すように、本発明の一般式(A)又は(B)で表される化合物から誘導される硬化性モノマーを原料とする硬化物は、低アッベ数かつ高透過率の両立を高度なレベルで実現することができ、また、部分分散比θg,Fも高く、屈折率の波長分散特性に優れている。そのため、光学部材の原料化合物又はその合成中間体として使用することができ、光学部材としては、レンズ又は光学フィルムなどの光学部材に好ましく用いることができる。
【0076】
なお、本発明において、硬化物のアッベ数(νD)及び部分分散比(θg,F)は後述の実施例に記載の方法により測定される値である。
硬化物のアッベ数νDは、22.0以下であることが好ましく、21.0以下であることがより好ましく、20.0以下であることがさらに好ましい。また、硬化物のアッベ数の下限値は、特に限定されるものではないが、1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましく、7以上であることが特に好ましい。
硬化物の部分分散比θg,Fは特に限定されるものではないが、0.65以上であることが好ましく、0.70以上であることがより好ましく、0.75以上であることがさらに好ましく、青色領域の色収差補正力が高いレンズ用樹脂として特に好適に用いられる観点からから、0.80以上であることが特に好ましい。また、硬化物の部分分散比θg,Fの上限値は特に限定されるものではないが、2.0以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましく、1.7以下であることが特に好ましい。
また、本発明において、硬化物の透過率は、後述の実施例に記載の方法により測定される波長420nmにおける透過率であり、表面反射を含む外部透過率の値である。
硬化物の透過率は65.0%以上であることが好ましく、70.0%以上であることがより好ましく、80.0%以上であることがさらに好ましい。また、硬化物の透過率の上限値は、特に限定されるものではないが、89%以下であることが実際的である。
【0077】
本発明の化合物は、例えば後述の製造方法により、簡便に、高純度で透過率の高い化合物として得ることができる。また、反応に用いる溶媒として特定のSP値を示す溶媒を含むものを使用することにより、さらに高収率、高純度に化合物を得ることができる。したがって、本発明の化合物を用いることにより、得られる光学部材の光学特性をより高めることが可能となる。
【0078】
[化合物の製造方法]
本発明の製造方法は、下記一般式(S)で表される化合物に対して、塩基の存在下で、(i)エチレン性不飽和カルボン酸化合物、(ii)エチレン性不飽和カルボン酸エステル化合物、(iii)エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物、又は、(iv)ω位に脱離基を有するアルキルカルボン酸エステル化合物を付加反応させて、上記一般式(A)又は(B)で表される、カルボン酸又はカルボン酸エステル化合物を製造することができる。
なお、(i)エチレン性不飽和カルボン酸化合物、(ii)エチレン性不飽和カルボン酸エステル化合物、(iii)エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物又は(iv)ω位に脱離基を有するアルキルカルボン酸エステル化合物を、一般式(S)で表される化合物に対して1当量導入させた場合には一般式(B)で表される化合物が得られ、一般式(S)で表される化合物に対して2当量導入させた場合には一般式(A)で表される化合物が得られる。
なかでも、本発明の製造方法は、上記一般式(A)で表される化合物の製造に好適に用いられる。
【0079】
【0080】
上記式中における環Ar1、環Ar2、R1、R2、v及びwは、それぞれ上記一般式(A)及び(B)における環Ar1、環Ar2、R1、R2、v及びwと同義である。
【0081】
上記付加反応に用いられる試薬、溶媒および反応条件等について説明する。
【0082】
(一般式(S)で表される化合物)
上記一般式(S)で表される化合物は、下記一般式(SA1)で表される化合物であることが好ましく、下記一般式(SA1-1)又は(SA1-2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0083】
【0084】
上記式中におけるR11、R21、Xa、Xb、v1、w1及び#は、それぞれ上記一般式(A1)におけるR11、R21、Xa、Xb、v1、w1及び#と同義である。
【0085】
【0086】
上記式中におけるR11、R21、v1及びw1は、それぞれ上記一般式(A1)におけるR11、R21、v1及びw1と同義である。
【0087】
上記一般式(S)で表される化合物の入手方法に特に制限はなく、商業的に入手してもよく、合成により得てもよい。合成により得る場合は、一般式(S)で表される化合物の製造方法(合成方法)としては特に制限はなく、常法により、また、実施例に記載の方法等を参照して合成することができる。
例えば、下記一般式(s)で表されるカルボニル化合物を、金属触媒、又は、三フッ化ホウ素-ジエチルエーテル錯体等のLewis酸の存在下、トリエチルシランと反応させることにより、カルボニル基(>C=O)をメチレン(-CH2-)に還元し、上記一般式(S)で表される化合物を得ることができる。なお、下記一般式(s)中におけるAr1、Ar2、R1、R2、v及びwは、それぞれ上記一般式(S)におけるAr1、Ar2、R1、R2、v及びwと同義である。
【0088】
【0089】
(反応剤)
上記一般式(S)で表される化合物と(i)エチレン性不飽和カルボン酸化合物又は(iii)エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物との反応により、一般式(A)又は(B)で表されるカルボン酸化合物(すなわち、一般式(A)又は(B)で表される化合物のうち、R5及びR6が水素原子である化合物)が得られる。ただし、(iii)エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物を用いる場合には、付加反応の後に加水分解反応を行う。
また、上記一般式(S)で表される化合物と(ii)エチレン性不飽和カルボン酸エステル化合物又は(iv)ω位に脱離基を有するアルキルカルボン酸エステル化合物との反応により、一般式(A)又は(B)で表されるカルボン酸エステル化合物(すなわち、一般式(A)又は(B)で表される化合物のうち、R5及びR6がアルキル基である化合物)が得られる。(ii)エチレン性不飽和カルボン酸エステル化合物又は(iv)ω位に脱離基を有するアルキルカルボン酸エステル化合物を用いる場合、付加反応の後に更に加水分解反応を行うことにより、対応するカルボン酸化合物(すなわち、一般式(A)又は(B)で表される化合物のうち、R5及びR6が水素原子である化合物)が得られる。
上記(ii)~(iv)における加水分解反応については、常法に従って、特に制限することなく行うことができる。
上記(i)~(iv)の各化合物中におけるエチレン性不飽和基の数は特に制限されないが、1個であることが好ましい。
【0090】
上記(i)エチレン性不飽和カルボン酸化合物とは、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸化合物を意味する。
上記(i)エチレン性不飽和カルボン酸化合物中におけるカルボキシ基の数は特に制限されず、例えば1~4個とすることができ、1又は2個が好ましい。なお、一般式(B)で表される化合物を得る場合、上記(i)の化合物は、エチレン性不飽和基における炭素炭素二重結合を構成する2つの炭素原子上の置換基(合計で4つの置換基)のうち、少なくとも2つの置換基がカルボキシ基を有する化合物である。
上記(i)エチレン性不飽和カルボン酸化合物としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸又はけい皮酸などを挙げることができる。
上記(ii)エチレン性不飽和カルボン酸エステル化合物とは、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸エステル化合物を意味し、具体的には、エチレン性不飽和基とアルコキシカルボニル基とを有する化合物である。
上記(ii)エチレン性不飽和カルボン酸エステル化合物中におけるアルコキシカルボニル基の数は特に制限されず、例えば1~4個とすることができ、1又は2個が好ましい。なお、一般式(B)で表される化合物を得る場合、上記(ii)の化合物は、エチレン性不飽和基における炭素炭素二重結合を構成する2つの炭素原子上の置換基(合計で4つの置換基)のうち、少なくとも2つの置換基がアルコキシカルボニル基を含む置換基である化合物である。
上記(ii)エチレン性不飽和カルボン酸エステル化合物としては、上記に挙げた(i)エチレン性不飽和カルボン酸化合物のアルキルエステル化合物が挙げられる。
上記(iii)エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物とは、エチレン性不飽和基を有するジカルボン酸の酸無水物を意味する。
上記(iii)エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物中におけるジカルボン酸無水物構造の数は特に制限されず、例えば1又は2個とすることができ、1個が好ましい。化合物中におけるエチレン性不飽和基の位置は特に制限されず、酸無水物構造(-OC(=O)O-)を環構成原子群として含む5又は6員環の環構成原子群として有していてもよく、酸無水物構造を環構成原子群として含む5又は6員環上の置換基として有していてもよい。
上記(iii)エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物のうち、エチレン性不飽和基における炭素炭素二重結合を、酸無水物構造を環構成原子群として含む5又は6員環の環構成原子群として有する化合物として、マレイン酸無水物又はシトラコン酸無水物などを挙げることができ、エチレン性不飽和基における炭素炭素二重結合を、酸無水物構造を環構成原子群として含む5又は6員環が置換基として有する化合物として、イタコン酸無水物などを挙げることができる。
上記(iv)ω位に脱離基を有するアルキルカルボン酸エステル化合物とは、ω位にハロゲン原子等の脱離基を有するアルキルカルボン酸エステル化合物を意味する。すなわち、アルコキシカルボニル基を有し、エステル結合におけるカルボニル基側に脱離基を有する。なお、一般式(B)で表される化合物を得る場合、上記(iv)の化合物としては、脱離基を有するω位の炭素原子が、さらにもう1つアルコキシカルボニル基を含む置換基を有する化合物である。
脱離基としては、ハロゲン原子、C1~C6アルキルスルホニルオキシ基又はアリールスルホニルオキシ基などを挙げることができる。C1~C6とは炭素数が1~6であることを示す。
上記(iv)ω位に脱離基を有するアルキルカルボン酸エステル化合物としては、クロロ酢酸エチル、ブロモ酢酸エチル、クロロ酢酸tert-ブチル、ブロモ酢酸tert-ブチル、3-ブロモプロピオン酸エチル、4-ブロモ酪酸エチルなどを挙げることができる。
上記一般式(S)で表される化合物と上記(iv)ω位に脱離基を有するアルキルカルボン酸エステル化合物との反応により、一般式(A)又は(B)で表されるカルボン酸エステル化合物を得る方法の参考例としては、例えば国際公開第2014/050738号(特許第5682094号)の[0078]及び[0162]等に記載の合成方法などが挙げられる。
なお、上記の(i)エチレン性不飽和カルボン酸化合物、(ii)エチレン性不飽和カルボン酸エステル化合物、(iii)エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物、又は、(iv)ω位に脱離基を有するアルキルカルボン酸エステル化合物は、上記付加反応に影響を及ぼさない範囲で、置換基を有していてもよい。
【0091】
上記一般式(A)で表される化合物を製造する場合、上記の(i)エチレン性不飽和カルボン酸化合物、(ii)エチレン性不飽和カルボン酸エステル化合物、(iii)エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物、又は、(iv)ω位に脱離基を有するアルキルカルボン酸エステル化合物の使用量は、上記一般式(S)で表される化合物1モルに対して、2~10モルであればよく、2.2~6モルが好ましい。
上記一般式(B)で表される化合物を製造する場合、上記の(i)エチレン性不飽和カルボン酸化合物、(ii)エチレン性不飽和カルボン酸エステル化合物、(iii)エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物、又は、(iv)ω位に脱離基を有するアルキルカルボン酸エステル化合物の使用量は、上記一般式(S)で表される化合物1モルに対して、1~10モルであればよく、1.1~6モルが好ましい。
【0092】
(塩基)
上記付加反応において使用する塩基としては、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド又はベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシドなどの四級アンモニウム塩、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド又はカリウムtert-ブトキシドなどのアルカリ金属のアルコキシド等が挙げられる。また、これら2種以上を併用して使用することもできる。
上記塩基の使用量は、上記一般式(S)で表される化合物に対して、1~100モル%であればよく、5~50モル%が好ましい。例えば、塩基を100モル%使用するとは、上記一般式(S)で表される化合物1モルに対して塩基1モルを使用することを意味する。
上記四級アンモニウム塩と上記アルカリ金属のアルコキシドとを併用する場合、その比率は、四級アンモニウム塩1モル当たりアルカリ金属のアルコキシド0.1~5モルが好ましい。
【0093】
(溶媒)
上記付加反応において使用する溶媒としては、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、ニトリル系溶媒又はスルホキシド系溶媒などを好適に用いることができる。
特に、SP値が21.0MPa1/2以上の溶媒を少なくとも1種以上用いることが好ましい。SP値が21.0MPa1/2以上の溶媒としては、例えばN,N-ジメチルホルムアミド(SP値24.8)、N,N-ジメチルアセトアミド(SP値22.7)、N-メチルピロドリン(SP値22.9)、アセトニトリル(SP値24.6)、プロピオニトリル(SP値21.7)、ジメチルスルホキシド(SP値26.6)などが挙げられる。なお、括弧内におけるSP値の単位は、いずれもMPa1/2である。
上記溶媒のSP値は、Polymer Handbook 4th editionに記載の値である。
上記付加反応において使用する溶媒として、SP値が21.0MPa1/2以上の溶媒を用いることにより、付加反応の反応率を高めることができ、目的とする一般式(A)又は(B)で表されるカルボン酸又はカルボン酸エステル化合物を高い純度で得ることができる。
上記付加反応において使用する溶媒中における上記SP値が21.0MPa1/2以上の溶媒の割合は、付加反応の反応率を高めることができる限り特に限定されない。例えば、10質量%以上とすることができ、25質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上とすることがより好ましく、75質量%以上とすることがさらに好ましい。
上記溶媒の使用量は、上記一般式(S)で表される化合物に対して、1~20倍量(v/w)であればよく、3~17倍量(v/w)が好ましく、5~15倍量(v/w)がより好ましい。
v/wは、上記一般式(S)で表される化合物の質量グラムに対する溶媒の容量ミリリットルを意味する。
なお、上記付加反応を行う際の反応系中には、上記で挙げた溶媒の他に、アルコール系溶媒等の、試薬の希釈液として使用される溶媒を含有していてもよい。ただし、この溶媒は、上記溶媒の使用量の計算においては溶媒に含めない。
【0094】
(反応条件)
上記付加反応の反応条件は特に限定されないが、例えば、反応温度は0~100℃とすることができ、20~80℃が好ましく、反応時間は0.5~10時間とすることができ、0.5~5時間が好ましい。
【0095】
上記付加反応終了後は、生成物がカルボキシ基を有する場合(すなわち一般式(A)又は(B)におけるR5及びR6が水素原子である場合)と、アルコキシカルボニル基を有する場合(すなわち一般式(A)又は(B)におけるR5及びR6がアルキル基である場合)とで、その処理方法が異なる。
カルボキシ基を有する場合は、反応液に水酸化ナトリウム等の苛性アルカリ水溶液を投入、希釈して、アルカリ水溶液中に生成物を溶解させ、この水溶液を酢酸エチル又はトルエンなどの適当な溶媒で洗浄する。続いて、分離した水相に塩酸を加えて水相を酸性にし、カルボキシ基を有する化合物を遊離させる。遊離したカルボキシ基を有する化合物を濾別し、蒸留水で十分に洗浄後、乾燥して目的とするカルボキシ基を有する化合物を得る。
【0096】
一方、アルコキシカルボニル基を有する化合物の場合は、反応液に塩酸などの鉱酸を加えて中和し、酢酸エチルなどの適当な溶媒で生成物を溶媒中に抽出する。溶媒相を蒸留水で水洗し、溶媒を留去してカルボン酸エステル基を有する生成物を得る。必要に応じて、得られた生成物を、例えば、メタノール又はイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒から再結晶して、さらに純度を高めてもよい。
【実施例】
【0097】
以下に実施例に基づき本発明について更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、使用量とその割合、処理内容及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるものではない。
【0098】
[合成例]
一般式(A)又は(B)で表される化合物について、以下の通り合成した。
なお、以下の合成ルートにおいて、THFはテトラヒドロフランを示し、Etはエチル基を示し、w/v%は質量対容量百分率(weight/volume%)を意味し、室温は25℃を意味する。
【0099】
なお、HPLC測定及び透過率測定は、以下に示す測定方法に従って行った。
(HPLC測定)
島津製作所社製の高速液体クロマトグラフィー(商品名:SPD-10AV VP)を用い、下記条件にて化合物の純度を測定した。なお、化合物が溶媒和している場合は、溶媒由来のピークは差し引いてから、HPLC純度を算出した。
カラム:TSKgel ODS-100Z 5μm(4.6mmφ×150mm)(東ソー社製)
カラム温度:40℃
溶離液:アセトニトリル:純水:リン酸(体積比)=700:300:1
流速:1.0ml/min
検出波長:254nm
注入量:10μL
サンプル:濃度5mg/50mlとなるように化合物を溶離液に溶解させた。
【0100】
(透過率測定)
島津製作所社製の分光光度計(商品名:UV-2550)を用い、下記条件にて波長420nmにおける化合物の透過率を測定した。420nmにおける透過率が高いほど、着色が少ないことを示す。
セル:角型石英セル(光路長:1cm)
サンプル:濃度50mg/5mLとなるように、化合物をTHFに溶解させた。
ブランク:THF(溶媒)
【0101】
〔化合物(SA-1)~(SA-5)の合成〕
<化合物(SA-1)の合成>
【化19】
【0102】
500mLの三口フラスコに、11H-ベンゾ[b]フルオレン-11-オン(SM-1) 15.0g及び塩化メチレン60mLを加え、氷浴で冷却しながらトリフルオロ酢酸60mL及びトリエチルシラン22.8gを添加した。続いて、三フッ化ホウ素-ジエチルエーテル錯体18.6gを30分かけて滴下し、その後40℃で3時間反応させた。室温まで冷却したのち、シクロペンチルメチルエーテル180mLを加え、さらに2時間攪拌した。析出した固体をろ過により回収し、減圧オーブンで真空乾燥することで、化合物(SA-1)を10.3g得た(収率73.1%)。
【0103】
<化合物(SA-2)の合成>
化合物(SM-1)を化合物(SM-2)に変えた以外は、上記化合物(SA-1)の合成と同様にして、化合物(SA-2)を7.2g得た(収率82.0%)。
【化20】
【0104】
<化合物(SA-3)の合成>
化合物(SM-1)を化合物(SM-3)に変えた以外は、上記化合物(SA-1)の合成と同様にして、化合物(SA-3)を6.0g得た(収率63.8%)。
【化21】
【0105】
<化合物(SA-4)の合成>
化合物(SM-1)を化合物(SM-4)に変えた以外は、上記化合物(SA-1)の合成と同様にして、化合物(SA-4)を6.2g得た(収率66.0%)。
【化22】
【0106】
<化合物(SA-5)の合成>
化合物(SM-1)を化合物(SM-5)に変えた以外は、上記化合物(SA-1)の合成と同様にして、化合物(SA-5)を8.2g得た(収率86.5%)。
【化23】
【0107】
〔合成例1:化合物(A1-1)の合成〕
【化24】
【0108】
200mLの三口フラスコに、化合物(SA-1)を5.0g(23mmol)、アクリル酸エチル6.9g(69mmol)及びN,N-ジメチルアセトアミド50mLを加え、室温で10分撹拌した。ここにベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドの40質量%メタノール溶液2.9g(ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド0.69mmol)を加えたのち、80℃で1時間反応させた。TLC(Thin-Layer Chromatography)により原料である化合物(SA-1)の消失を確認したのち、水7.5mLおよび50w/v%水酸化ナトリウム水溶液7.5mLを添加し、80℃で1時間攪拌することで、エチルエステルの加水分解を行った。室温まで冷却後、6規定塩酸で中和し、酢酸エチルを加えて分液操作を行った。有機層を1規定塩酸、飽和食塩水で洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過により硫酸マグネシウムを除いた後、溶剤を濃縮し、析出した固体を酢酸エチルとヘキサンの混合溶媒で分散洗浄することで、化合物(A1-1)を4.8g得た(収率58%)。HPLC測定より求めた化合物(A1-1)の面積%は96.6%であり、原料である化合物(SA-1)の面積は0.1%以下であった。また、化合物(A1-1)の420nmにおける透過率は99.3%であった。
化合物(A1-1)の1H-NMRデータ(400MHz,DMSO-d6):δ1.35-1.45ppm(m,4H)、2.35-2.45ppm(m,4H)、7.35-7.60ppm(m,5H)、7.90-8.10ppm(m,4H)、8.35ppm(s,1H)、11.9ppm(s、2H)
【0109】
〔合成例2:化合物(A2-1)の合成〕
【化25】
【0110】
化合物(SA-1)を化合物(SA-2)に変えた以外は、合成例1と同様にして、化合物(A2-1)を4.5g得た(収率59%)。HPLC測定より求めた化合物(A2-1)の面積%は96.2%であり、原料である化合物(SA-2)は0.1%以下であった。また、化合物(A2-1)の420nmにおける透過率は99.0%であった。
化合物(A2-1)の1H-NMRデータ(400MHz,DMSO-d6):δ1.35-1.45ppm(m,4H)、2.35-2.45ppm(m,4H)、3.80ppm(s,3H)、3.90ppm(s,3H)、7.15ppm(s,1H)、7.35-7.50ppm(m,2H)、7.60ppm(s,1H)、7.85-7.90ppm(m,3H)、8.20ppm(s,1H)、11.9ppm(s、2H)
【0111】
〔合成例3:化合物(A3-1)の合成〕
【化26】
【0112】
化合物(SA-1)を化合物(SA-3)に変えた以外は、合成例1と同様にして、化合物(A3-1)を5.5g得た(収率70%)。HPLC測定より求めた化合物(A3-1)の面積%は97.1%であり、原料である化合物(SA-3)は0.1%以下であった。また、化合物(A3-1)の420nmにおける透過率は99.1%であった。
化合物(A3-1)の1H-NMRデータ(400MHz,DMSO-d6):δ1.50-1.75ppm(m,4H)、2.35-2.55ppm(m,4H)、7.62ppm(t,1H)、7.70ppm(t,1H)、7.75-7.90ppm(m,3H)、8.15-8.25ppm(m,3H)、12.0ppm(s、2H)
【0113】
〔合成例4:化合物(A4-1)の合成〕
【化27】
【0114】
化合物(SA-1)を化合物(SA-4)に変えた以外は、合成例1と同様にして、化合物(A4-1)を6.2g得た(収率78%)。HPLC測定より求めた化合物(A4-1)の面積%は97.6%であり、原料である化合物(SA-4)は0.1%以下であった。また、化合物(A4-1)の420nmにおける透過率は98.9%であった。
化合物(A4-1)の1H-NMRデータ(400MHz,DMSO-d6):δ1.50-1.75ppm(m,4H)、2.35-2.55ppm(m,10H)、7.55ppm(t,1H)、7.62ppm(t,1H)、7.76ppm(d,1H)、7.90-7.95ppm(m,2H)、8.10ppm(d,1H)、12.0ppm(s、2H)
【0115】
〔合成例5:化合物(A5-1)の合成〕
【化28】
【0116】
化合物(SA-1)を化合物(SA-5)に変えた以外は、合成例1と同様にして、化合物(A5-1)を6.7g得た(収率89%)。HPLC測定より求めた化合物(A5-1)の面積%は95.9%であり、原料である化合物(SA-5)は0.1%以下であった。また、化合物(A5-1)の420nmにおける透過率は98.7%であった。
化合物(A5-1)の1H-NMRデータ(400MHz,DMSO-d6):δ1.55-1.80ppm(m,4H)、2.35-2.55ppm(m,4H)、7.60ppm(t,1H)、7.75ppm(t,1H)、7.80ppm(d,1H)、8.12ppm(d,1H)、8.40-8.50ppm(m,2H)、12.0ppm(s、2H)
【0117】
〔合成例6:化合物(A1-1)の合成〕
反応に用いる溶剤をN,N-ジメチルアセトアミド(SP値24.8MPa1/2)からアセトニトリル(SP値24.6MPa1/2)に変えた以外は合成例1と同様にして、化合物(A1-1)を5.2g得た(収率62%)。HPLC測定より求めた化合物(A1-1)の面積%は96.1%であり、原料である化合物(SA-1)は0.1%以下であった。また、化合物(A1-1)の420nmにおける透過率は99.0%であった。
【0118】
〔参考例1:化合物(A1-1)の合成〕
反応に用いる溶剤をN,N-ジメチルアセトアミド(SP値24.8MPa1/2)から1,4-ジオキサン(SP値20.5MPa1/2)に変えた以外は合成例1と同様にして、化合物(A1-1)を4.1g得た(収率49%)。HPLC測定より求めた化合物(A1-1)の面積%は89.7%であり、原料である化合物(SA-1)は5.5%残存していた。また、化合物(A1-1)の420nmにおける透過率は97.9%であった。
なお、付加反応を行う温度を上げた場合にも、原料化合物の残存率はほとんど変化しなかった。
【0119】
以上の通り、本発明の化合物は、420nmにおける透過率が97.9%以上と高く、着色が少なかった。
また、化合物(SA-1)から化合物(A1-1)を合成する例において比較すると、付加反応においてSP値が21.0MPa1/2以上の溶媒を使用することにより、99.0%以上の透過率を示し、より着色が抑制された化合物を得ることができた(参考例1に対する合成例1及び6)。
【0120】
[参考例2:本発明の化合物を合成中間体とする硬化性モノマーの硬化物]
〔化合物(MA1-1)~(MA5-1)の合成〕
上記の合成例1~5で合成した化合物(A1-1)~(A5-1)を用いて、それぞれ下記化合物(MA1-1)~(MA5-1)を、以下の通り合成した。
【0121】
〔参考例2-1:化合物(MA1-1)の合成〕
【化29】
【0122】
化合物(A1-1)を4.0g、ジクロロメタン20mL、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル3.3g、N,N-ジメチルアミノピリジン0.1g、および、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩4.9gを混合した。40℃で2時間撹拌したのち、1N塩酸を加えて洗浄、分液したのち、5%炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、洗浄、分液した。硫酸マグネシウムによる脱水とろ過、濃縮を行ったのち、カラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルムとメタノールの混合液)で精製し、化合物(MA1-1)5.4gを得た(収率83%)。
化合物(MA1-1)の1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ=1.65-1.85ppm(m,4H)、1.89ppm(s,6H)、2.45-2.55ppm(m,4H)、4.15-4.25ppm(m,8H)、5.55ppm(s,2H)、6.05ppm(s,2H)、7.35-7.55ppm(m,6H)、7.78ppm(s,1H)、7.82-7.95ppm(m,2H)、8.15ppm(s,1H)
【0123】
化合物(MA1-1)について、吸収スペクトル(吸光度)の測定を以下の手順で行った。
化合物50mgを精秤し、5mLメスフラスコを用いてテトラヒドロフラン(THF)で希釈したのち、さらに、溶液濃度が1/500倍となるようTHFで希釈し、測定溶液を調製した。測定は島津製作所(株)製のUV-2550(商品名)を用いて行った。
初めに、試料光路及び対照光路の両方に対照試料(THF)を入れた角型石英セル(セル長10mm)を置き、250~800nmの波長域における吸光度をゼロに合わせた。次に、試料光路側セル内の試料を、上記で調製した化合物の測定溶液に入れ替えて、250~800nmの吸収スペクトルを測定した。
測定結果から得た、300~400nmの範囲で最も長波長側にある極大ピークの波長λmaxは343nmであった。
【0124】
〔参考例2-2:化合物(MA2-1)の合成〕
【化30】
【0125】
化合物(A1-1)を化合物(A2-1)に変えた以外は、参考例2-1と同様にして、化合物(MA2-1)を4.9g得た(収率80%)。
化合物(MA2-1)の1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ=1.65-1.85ppm(m,4H)、1.89ppm(s,6H)、2.45-2.55ppm(m,4H)、3.96ppm(s、3H)、4.02ppm(s、3H)、4.15-4.25ppm(m,8H)、5.55ppm(s,2H)、6.05ppm(s,2H)、6.85ppm(s,1H)、7.35ppm(s,1H)、7.40-7.55ppm(m,2H)、7.71ppm(s,1H)、7.80-7.93ppm(m,2H)、8.00ppm(s,1H)
化合物(MA1-1)と同様に測定した、化合物(MA2-1)の300~400nmの範囲で最も長波長側にある極大ピークの波長λmaxは354nmであった。
【0126】
〔参考例2-3:化合物(MA3-1)の合成〕
【化31】
【0127】
化合物(A1-1)を化合物(A3-1)に変えた以外は、参考例2-1と同様にして、化合物(MA3-1)を5.2g得た(収率80%)。
化合物(MA3-1)の1H-NMRデータ(400MHz,CDCl3):δ=1.65-1.85ppm(m,4H)、1.89ppm(s,6H)、2.38-2.48ppm(m,2H)、2.68-2.78ppm(m,2H)、4.15-4.25ppm(m,8H)、5.55ppm(s,2H)、6.05ppm(s,2H)、7.55-7.65ppm(m,3H)、7.80-7.95ppm(m,2H)、8.10-8.25ppm(m,3H)
化合物(MA1-1)と同様に測定した、化合物(MA3-1)の300~400nmの範囲で最も長波長側にある極大ピークの波長λmaxは360nmであった。
【0128】
〔参考例2-4:化合物(MA4-1)の合成〕
【化32】
【0129】
化合物(A1-1)を化合物(A4-1)に変えた以外は、参考例2-1と同様にして、化合物(MA4-1)を4.4g得た(収率70%)。
化合物(MA4-1)の1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ=1.65-1.85ppm(m,4H)、1.89ppm(s,6H)、2.35-2.45ppm(m,2H)、2.50ppm(s、3H)、2.52ppm(s、3H)、2.65-2.75ppm(m,2H)、4.15-4.25ppm(m,8H)、5.55ppm(s,2H)、6.05ppm(s,2H)、7.55-7.65ppm(m,3H)、7.88ppm(s,1H)、7.92ppm(s,1H)、8.20ppm(d,2H)
化合物(MA1-1)と同様に測定した、化合物(MA4-1)の300~400nmの範囲で最も長波長側にある極大ピークの波長λmaxは369nmであった。
【0130】
〔参考例2-5:化合物(MA5-1)の合成〕
【化33】
【0131】
化合物(A1-1)を化合物(A5-1)に変えた以外は、参考例2-1と同様にして、化合物(MA5-1)を5.1g得た(収率84%)。
化合物(MA5-1)の1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ=1.65-1.85ppm(m,4H)、1.89ppm(s,6H)、2.35-2.45ppm(m,2H)、2.65-2.75ppm(m,2H)、4.15-4.25ppm(m,8H)、5.55ppm(s,2H)、6.05ppm(s,2H)、7.55-7.65ppm(m,3H)、8.16ppm(d,1H)、8.24ppm(s,1H)、8.28ppm(s,1H)
化合物(MA1-1)と同様に測定した、化合物(MA5-1)の300~400nmの範囲で最も長波長側にある極大ピークの波長λmaxは372nmであった。
【0132】
〔比較化合物(CA-3)の合成〕
[中間体4の合成]
WO2017/115649の段落0133の記載に従い、中間体4を合成した。
【0133】
【0134】
200mLの三口フラスコに、中間体4を4.8g、こはく酸モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)6.5g、N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)140mgおよびジクロロメタン50mLを加え、氷浴中で10分撹拌した。ここに1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDAC・HCl)5.8g加え、室温で4時間反応させた。反応液を酢酸エチルで希釈し、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過により硫酸マグネシウムを除いた後、ヘキサン/酢酸エチルを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、比較化合物(CA-3)を7.5g得た。
化合物(MA1-1)と同様に測定した、比較化合物(CA-3)の300~400nmの範囲で最も長波長側にある極大ピークの波長λmaxは367nmであった。
【0135】
【0136】
[中間体1の合成]
4,5-ジメチル-1,2-フェニレンジアミン25.6g及びニンヒドリン35.6gに対して、エタノール50mL、酢酸10mLを加えて70℃で3時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却したのち、析出した結晶を濾取し、エタノールで洗浄、乾燥することで、中間体1を41.1g得た。
[中間体2の合成]
中間体1を22gと、フェノール32gをメタンスルホン酸20mLおよびアセトニトリル20mLに溶解させた。反応溶液を加温し、90℃に保ちつつ、3-メルカプトプロピオン酸0.3mLを滴下した。3時間攪拌後、アセトニリル200mLと水100mLを添加し、反応溶液を氷浴中で2時間撹拌した。析出した結晶を濾取し、メタノールで洗浄、乾燥することで、中間体2を26g得た。
【0137】
〔比較化合物(CA-4)の合成〕
中間体4を中間体2に変更した以外は、上記比較化合物(CA-3)の合成と同様にして、比較化合物(CA-4)を得た。
化合物(MA1-1)と同様に測定した、比較化合物(CA-4)の300~400nmの範囲で最も長波長側にある極大ピークの波長λmaxは374nmであった。
【0138】
【0139】
[中間体5の合成]
4,5-ジメチル-1,2-フェニレンジアミンを4,5-ジクロロ-1,2-フェニレンジアミンに変更した以外は上記中間体1の合成と同様にして、中間体5を得た。
[中間体6の合成]
中間体1を中間体5に変更した以外は、上記中間体2の合成と同様にして、中間体6を得た。
【0140】
[比較化合物(CA-5)の合成]
中間体4を中間体6に変更した以外は、上記比較化合物(CA-3)の合成と同様にして、比較化合物(CA-5)を得た。
化合物(MA1-1)と同様に測定した、比較化合物(CA-5)の300~400nmの範囲で最も長波長側にある極大ピークの波長λmaxは377nmであった。
【0141】
〔ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体の合成〕
ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体(G-1)を以下の方法で合成した。
ベンジルメタクリレート12.0gと、アリルメタクリレート18.0gを、メチルエチルケトン172.3gに溶解させ、これを70℃に加熱した。この溶液に、重合開始剤V-65(商品名、富士フイルム和光純薬社製、油溶性アゾ重合開始剤)1.05gをメチルエチルケトン12.0gに溶解させた溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに70℃で4.5時間反応させた。反応液を放冷後、全量が107.7gになるまで濃縮し、その後メタノール42.0gを添加し、均一になるまで攪拌した。反応溶液を、5℃以下に冷却したメタノール858.0gに滴下し、析出した粉体をろ取し、乾燥させた。このようにして重合体(G-1)を20.5g得た。得られたポリマーの重量平均分子量は35700で、分散度(Mw/Mn)は、3.3であった。
【化37】
【0142】
なお、上記で作製したポリマーの重量平均分子量及び分散度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量及び分散度であり、下記条件で測定した値である。
測定器:HLC-8320GPC(商品名、東ソー社製)
カラム:TOSOH TSKgel HZM-H(商品名、東ソー社製)、TOSOH TSKgel HZ4000(商品名、東ソー社製)、TOSOH TSKgel HZ2000(商品名、東ソー社製)をつなげた。
キャリア:THF
測定温度:40℃
キャリア流量:0.35ml/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
【0143】
[参考例3:硬化性樹脂組成物の調製]
下記表1に記載の組成となるように、一般式(A)もしくは(B)で表される化合物から得た硬化性モノマー又は比較の硬化性モノマー(比較化合物とも称す。)、その他のモノマー、光重合開始剤、熱重合開始剤及びその他の添加剤を混合し、撹拌して均一にすることにより、硬化性樹脂組成物を調製した。
【0144】
[評価1]硬化性樹脂組成物の粘度測定
作製した硬化性樹脂組成物の粘度を、HAAKE社製のレオメータ(商品名:RS600)を用い、25℃、せん断速度10s-1の条件で測定した。結果を表1にまとめて示す。
【0145】
[参考例4:硬化物の作製]
得られた硬化性樹脂組成物を、硬化物の厚みが1mmとなるように直径20mmの円形の透明ガラス型に注入した。このガラス型は、表面をジクロロジメチルシランで疎水処理したホウケイ酸ガラス製である。
光源としてExecure3000(商品名、HOYA社製)を用い、酸素濃度1%以下となるよう窒素置換した雰囲気下、透明ガラス型の上方から1000mJ/cm2の紫外線を照射し、光硬化サンプルを作製した。続いて、得られた光硬化サンプルを、酸素濃度1%以下の雰囲気下、200℃で30分加熱し、硬化反応が完全に進行した硬化物を作製した。
【0146】
[評価2]硬化物の屈折率評価
得られた硬化物の波長589nmにおける屈折率nDを、25℃の条件下、アッベ屈折計(アタゴ社製、商品名:DR-M4)を用いて測定した。また、nF、nC、ngについても測定を行い、屈折率の波長分散特性として、以下の式からアッベ数νDおよび部分分散比θg,Fを求めた。結果を表1にまとめて示す。
νD=(nD-1)/(nF-nC)
θg,F=(ng-nF)/(nF-nC)
ここで、nFは波長486nmにおける屈折率、nCは波長656nmにおける屈折率、ngは波長436nmにおける屈折率を表す
【0147】
[評価3]硬化物の透過率評価
得られた硬化物について、紫外可視分光光度計 UV-2600(商品名、島津製作所社製)を用い、中心部(直径5mm)の紫外-可視透過率測定を行い、波長420nmにおける透過率を測定した。結果を表1にまとめて示す。
【0148】
[評価4]複屈折率Δn
複屈折評価装置(WPA-100(商品名)、株式会社フォトニックラティス社製)を用いて、上記で作製した硬化物(光学測定用硬化物サンプル)の中心を含む直径10mm円内の波長543nmにおける複屈折を測定し、その平均値を複屈折率Δnとした。
硬化性樹脂組成物No.101~115から得られた硬化物は、いずれも、複屈折Δnは0.0003~0.0009と小さく、結像位置がずれにくく鮮明な像を得ることができるため、撮像モジュールの光学部材への使用に適していた。
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
<表の注>
表中における各成分は、下記の通りである。なお、各成分の欄に記載の各成分の配合量比は質量基準であり、「-」はその成分を含有していないことを示す。
【0153】
(一般式(A)又は(B)で表される化合物から得た硬化性モノマー)
【化38】
【0154】
【0155】
比較化合物(CA-1)は、特開2014-80572号公報の実施例1に記載の合成法に従って合成した。
比較化合物(CA-2)は、国際公開第2016/140245号の<化合物2-1の合成>に従って合成した。
比較化合物(CA-6)は、国際公開第2017/115649号(特許第6606195号)の化合物(51)の合成に従って合成した。
なお、化合物(MA1-1)と同様にして、比較化合物(CA-1)、比較化合物(CA-2)及び比較化合物(CA-6)の300~400nmの範囲で最も長波長側にある極大ピークの波長λmaxを測定したところ、それぞれ、比較化合物(CA-1)は347nm、比較化合物(CA-2)は359nm、比較化合物(CA-6)は368nmであった。
【0156】
(その他のモノマー)
それぞれ、下記で表される化合物を示す。
【化40】
【0157】
(光重合開始剤)
Irg819:Irgacure 819(商品名、BASFジャパン社製)
IrgTPO:Irgacure TPO(商品名、BASFジャパン社製)
(熱重合開始剤)
パーヘキシルD:商品名、日本油脂社製、ジ-tert-ヘキシルパーオキシド
【0158】
(その他の添加剤)
G-1:上記で作製した重合体(G-1)
【化41】
【0159】
表1に示すように、本発明の化合物から得られた硬化性モノマーを用いることにより、縮合環構造にフェニレン基又はジメチルフェニレン基が結合した従来の硬化性モノマーに対して、低アッベ数かつ高透過率の両立を高度なレベルで実現した硬化物が得られることがわかった。
また、本発明の化合物から得られた硬化性モノマーを用いて形成した硬化物は、上記の低アッベ数νDと高い透過率に加えて、部分分散比θg,Fも0.67以上と十分に高く、色収差補正レンズとして用いるうえでの屈折率の波長分散特性にも優れていた。
【0160】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0161】
本願は、2020年8月21日に日本国で特許出願された特願2020-140313に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。