(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】フランジ機構と切削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 45/00 20060101AFI20231027BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20231027BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
B24B45/00 Z
B24B27/06 M
H01L21/78 F
(21)【出願番号】P 2019134544
(22)【出願日】2019-07-22
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木田 久志
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-104086(JP,A)
【文献】特開2015-023222(JP,A)
【文献】特開2019-104068(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0311127(US,A1)
【文献】特開2018-094682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 45/00
B24B 27/06
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に装着穴を有する円盤状の基台と、
該基台の外周縁に設けられた切り刃と、を有する切削ブレードをスピンドルの先端に装着するためのフランジ機構であって、
前後方向に伸長し該切削ブレードの該基台の該装着穴に挿通する円柱状のボス部と、
該ボス部の後方側から径方向外向きに突出する鍔状の部材で、該切削ブレードと対面するボス部側の支持面の外周縁に該切削ブレードの該基台を支持する環状の端面を有するフランジ部と、を備え、
該フランジ部は、
該端面と該ボス部の間に、該フランジ部を該支持
面から
該フランジ部の該支持面と反対側の背
面まで貫通する貫通穴を複数備え、
該切削ブレードの基台は、該フランジ部の該支持面の該貫通穴に対面する領域に基台凹部を備え、
該スピンドルを回転可能に支持するスピンドルハウジングに固定されたロータリージョイントの吸引路に接続された吸引源からの負圧を、該貫通穴を介して
該支持面と該基台凹部との間の空間に作用させ、負圧によって該切削ブレードを該フランジ部に固定するフランジ機構。
【請求項2】
該貫通穴は、該フランジ部の外周に沿って周方向に複数形成されている請求項1に記載のフランジ機構。
【請求項3】
該フランジ部の該支持面は該端面と該ボス部との間の環状の領域に凹部を備え、該貫通穴は凹部に開口し、該凹部と該切削ブレードの該基台との間の空間に負圧を作用させる請求項1又は請求項2に記載のフランジ機構。
【請求項4】
該貫通穴は、該スピンドルの軸心と平行に延在している請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のフランジ機構。
【請求項5】
中央に装着穴を有する切り刃からなる切削ブレードをスピンドルの先端に装着するためのフランジ機構であって、
前後方向に伸長する円柱状のボス部と、
該ボス部の後方側から径方向外向きに突出する鍔状の部材で、該切削ブレードと対面する外周縁に該切削ブレードを支持する環状の端面を有するフランジ部と、
中央に該ボス部が挿通する装着穴と、外周縁に該フランジ部との間に該切削ブレードを挟持する環状の挟持面とを有し
、該挟持面に開口して貫通した吸引保持用孔が設けられた押さえフランジと、を備え、
該フランジ部は、
該端面と該ボス部の間に、該押さえフランジと対面する対向
面から
該フランジ部の該対向面と反対側の背
面まで貫通する貫通穴を複数備え、
該スピンドルを回転可能に支持するスピンドルハウジングに固定されたロータリージョイントの吸引路に接続された吸引源からの負圧を、該貫通穴を介して該押さえフランジに作用させ、負圧によって該押さえフランジを該フランジ部に固定して、該切削ブレードを該フランジ部に固定するフランジ機構。
【請求項6】
被加工物を保持するチャックテーブルと、スピンドルに固定されたフランジ機構を介して装着した切削ブレードで該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ユニットと、該チャックテーブルと該切削ユニットとを相対的に加工送りする加工送りユニットとを備える切削装置であって、
該切削ユニットは、
該スピンドルを回転可能に支持するスピンドルハウジングと、
該スピンドルに固定され、かつ切削ブレードをスピンドルの先端に装着するフランジ機構とを備え、
該フランジ機構として、請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載のフランジ機構を備える切削装置。
【請求項7】
該フランジ機構に該切削ブレードを装着及び離脱させるブレード着脱ユニットをさらに備え、該吸引源とロータリージョイントの連通を開閉する開閉弁と連動し該ブレード着脱ユニットによる切削ブレードを装着及び離脱させる請求項6に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ機構と切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウムヒ素、SiC(炭化ケイ素)、サファイアなどからなる半導体基板や樹脂パッケージ基板、セラミックス基板など各種板状の被加工物を切削ブレードで切削する切削装置が知られている。切削ブレードは、スピンドルの先端に固定されたフランジ機構を介して装着される。フランジ機構は、例えば、スピンドルに固定される支持フランジと、支持フランジに螺合する固定ナットで切削ブレードを挟持固定する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
切削ブレードを着脱する際は、固定ナットを所定以上のトルクで螺合し、切削ブレードを離脱する際も、固定ナットを所定の治具で回転させ外すため、所定の治具とトルク測定できる機構を必要とし、オペレータの作業を必要とする。さらに、装着時の固定ナット締め付け時に、切削ブレードが支持フランジに接触しながら連れ回ると、支持フランジの切削ブレードと接触する面が荒れ、切削ブレードの斜め装着や不安定な固定の原因になってしまう恐れがあった。
【0004】
そこで、固定ナットによる螺合固定ではなく、バキューム固定するバキュームフランジが考案された(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5275675号公報
【文献】特許第6069122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に示された切削装置では、バキュームフランジの内部に複雑な吸引路を形成する加工は困難であり、高価格に繋がる恐れがある。さらには、吸引路に異物が吸引されて詰まった場合、清掃が困難である、という課題が有った。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、メンテナンスの容易化を図ることができるフランジ機構と切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のフランジ機構は、中央に装着穴を有する円盤状の基台と、基台の外周縁に設けられた切り刃と、を有する切削ブレードをスピンドルの先端に装着するためのフランジ機構であって、前後方向に伸長し該切削ブレードの該基台の該装着穴に挿通する円柱状のボス部と、該ボス部の後方側から径方向外向きに突出する鍔状の部材で、該切削ブレードと対面するボス部側の支持面の外周縁に該切削ブレードの該基台を支持する環状の端面を有するフランジ部と、を備え、該フランジ部は、該端面と該ボス部の間に、該フランジ部を該支持面から該フランジ部の該支持面と反対側の背面まで貫通する貫通穴を複数備え、該切削ブレードの基台は、該フランジ部の該支持面の該貫通穴に対面する領域に基台凹部を備え、該スピンドルを回転可能に支持するスピンドルハウジングに固定されたロータリージョイントの吸引路に接続された吸引源からの負圧を、該貫通穴を介して該支持面と該基台凹部との間の空間に作用させ、負圧によって該切削ブレードを該フランジ部に固定することを特徴とする。
【0009】
前記フランジ機構では、該貫通穴は、該フランジ部の外周に沿って周方向に複数形成されていても良い。
【0010】
前記フランジ機構では、該フランジ部の該支持面は該端面と該ボス部との間の環状の領域に凹部を備え、該貫通穴は凹部に開口し、該凹部と該切削ブレードの該基台との間の空間に負圧を作用させても良い。
【0011】
前記フランジ機構では、該貫通穴は、該スピンドルの軸心と平行に延在しても良い。
【0012】
本発明のフランジ機構は、中央に装着穴を有する切り刃からなる切削ブレードをスピンドルの先端に装着するためのフランジ機構であって、前後方向に伸長する円柱状のボス部と、該ボス部の後方側から径方向外向きに突出する鍔状の部材で、該切削ブレードと対面する外周縁に該切削ブレードを支持する環状の端面を有するフランジ部と、中央に該ボス部が挿通する装着穴と、外周縁に該フランジ部との間に該切削ブレードを挟持する環状の挟持面とを有し、該挟持面に開口して貫通した吸引保持用孔が設けられた押さえフランジと、を備え、該フランジ部は、該端面と該ボス部の間に、該押さえフランジと対面する対向面から該フランジ部の該対向面と反対側の背面まで貫通する貫通穴を複数備え、該スピンドルを回転可能に支持するスピンドルハウジングに固定されたロータリージョイントの吸引路に接続された吸引源からの負圧を、該貫通穴を介して該押さえフランジに作用させ、負圧によって該押さえフランジを該フランジ部に固定して、該切削ブレードを該フランジ部に固定することを特徴とする。
【0013】
本発明の切削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、スピンドルに固定されたフランジ機構を介して装着した切削ブレードで該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ユニットと、該チャックテーブルと該切削ユニットとを相対的に加工送りする加工送りユニットとを備える切削装置であって、該切削ユニットは、該スピンドルを回転可能に支持するスピンドルハウジングと、該スピンドルに固定され、かつ切削ブレードをスピンドルの先端に装着するフランジ機構とを備え、該フランジ機構として、前記フランジ機構を備えることを特徴とする。
【0014】
前記切削装置では、該フランジ機構に該切削ブレードを装着及び離脱させるブレード着脱ユニットをさらに備え、該吸引源とロータリージョイントの連通を開閉する開閉弁と連動し該ブレード着脱ユニットによる切削ブレードを装着及び離脱させても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、メンテナンスの容易化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された切削装置の切削ユニットを分解して示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示された切削ユニットの要部の断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示された切削装置の切削ブレードの着脱動作中のフランジ機構等の断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1の変形例に係る切削装置の切削ユニットの要部の断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態2に係る切削装置の切削ユニットの要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0018】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るフランジ機構と切削装置を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示された切削装置の切削ユニットを分解して示す斜視図である。
図3は、
図2に示された切削ユニットの要部の断面図である。
【0019】
(切削装置)
実施形態1に係る切削装置1は、
図1に示す被加工物200を切削加工する切削装置である。実施形態1では、被加工物200は、シリコン、ガリウムヒ素、SiC(炭化ケイ素)又はサファイア、などを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハである。被加工物200は、表面201に格子状に形成された複数の分割予定ライン202によって格子状に区画された領域にデバイス203が形成されている。
【0020】
また、本発明の被加工物200は、中央部が薄化され、外周部に厚肉部が形成された所謂TAIKO(登録商標)ウエーハでもよく、ウエーハの他に、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状の樹脂パッケージ基板、セラミックス基板、フェライト基板、又はニッケル及び鉄の少なくとも一方を含む基板、ガラス基板等でも良い。実施形態1において、被加工物200は、裏面204が外周縁に環状フレーム205が装着された粘着テープ206に貼着されて、環状フレーム205に支持されている。
【0021】
図1に示された切削装置1は、被加工物200をチャックテーブル10で保持し分割予定ライン202に沿って切削ブレード21で切削加工(加工に相当)する装置である。切削装置1は、
図1に示すように、被加工物200を保持面11で吸引保持するチャックテーブル10と、切削ブレード21でチャックテーブル10に保持された被加工物200を切削する切削ユニット20と、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮影する撮像ユニット90と、ブレード交換ユニット70と、制御ユニット100とを備える。
【0022】
また、切削装置1は、
図1に示すように、チャックテーブル10を水平方向と平行なX軸方向に加工送りする加工送りユニットであるX軸移動ユニット30と、切削ユニット20を水平方向と平行でかつX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りする割り出し送りユニットであるY軸移動ユニット31と、切削ユニット20をX軸方向とY軸方向との双方と直交する鉛直方向に平行なZ軸方向に切り込み送りする切り込み送りユニットであるZ軸移動ユニット32とを少なくとも備える。
【0023】
チャックテーブル10は、円盤形状であり、被加工物200を保持する保持面11がポーラスセラミック等から形成されている。また、チャックテーブル10は、X軸移動ユニット30により切削ユニット20の下方の加工領域63と、切削ユニット20の下方から離間して被加工物200が搬入出される搬入出領域64とに亘ってX軸方向に移動自在に設けられ、かつ回転駆動源によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。チャックテーブル10は、図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引されることで、保持面11に載置された被加工物200を吸引、保持する。実施形態1では、チャックテーブル10は、粘着テープ206を介して被加工物200の裏面204側を吸引、保持する。また、チャックテーブル10の周囲には、
図1に示すように、環状フレーム205をクランプするクランプ部12が複数設けられている。
【0024】
切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を切削する切削ブレード21を着脱自在に装着した切削手段である。切削ユニット20は、それぞれ、チャックテーブル10に保持された被加工物200に対して、Y軸移動ユニット31によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット32によりZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0025】
切削ユニット20は、
図1に示すように、Y軸移動ユニット31及びZ軸移動ユニット32などを介して、装置本体から立設した支持フレームに設けられている。切削ユニット20は、Y軸移動ユニット31及びZ軸移動ユニット32により、チャックテーブル10の保持面11の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。
【0026】
切削ユニット20は、
図2及び
図3に示すスピンドル23に固定されたフランジ機構40を介して装着した切削ブレード21でチャックテーブル10に保持された被加工物200を切削するものである。切削ユニット20は、
図2及び
図3に示すように、スピンドルハウジング22と、スピンドルハウジング22に軸心回りに回転自在に設けられたスピンドル23と、スピンドル23に固定され、切削ブレード21をスピンドル23の先端に装着するフランジ機構40とを備える。
【0027】
切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。実施形態1において、切削ブレード21は、いわゆるハブブレードであり、導電性の金属で構成されかつ中央に装着穴211を有する円環(円盤)状の基台212と、基台212の外周縁に設けられかつ被加工物200を切削する円環状の切り刃213を備える。切り刃213は、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。また、実施形態1では、基台212は、外周面に全周に亘って環状溝214が形成されている。
【0028】
スピンドル23は、図示しないスピンドルモータにより回転される回転軸となるとともに、先端がスピンドルハウジング22の先端面221より突出している。スピンドル23の先端は、先端に向かうにしたがって徐々に細く形成されており、先端面に開口したねじ孔231が設けられている。
【0029】
スピンドルハウジング22は、Y軸移動ユニット31及びZ軸移動ユニット32によりY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられている。スピンドルハウジング22は、スピンドル23の先端を除く部分及びスピンドルモータ等を収容し、スピンドル23を軸心232回りに回転可能に支持する。また、実施形態1では、スピンドルハウジング22は、先端面221に排気用隙間222が開口している。排気用隙間222は、スピンドル23の外周面との間にスピンドル23の全周に亘って設けられている。
【0030】
フランジ機構40は、ロータリージョイント41と、支持フランジ42とを備える。ロータリージョイント41は、支持フランジ42に切削ブレード21を固定するための吸引力を伝達するものである。
【0031】
ロータリージョイント41は、スピンドル23が貫通する穴を備える板状のフランジ部411と、フランジ部411と内縁から立設した円筒状ボス部412とを一体に備えている。フランジ部411は、内側にスピンドル23の先端を内側に通した状態でスピンドルハウジング22の先端面221に重ねられる。ロータリージョイント41は、図示しないねじがフランジ部411に設けられた貫通孔413を通り先端面221に設けられたねじ孔223にねじ込まれることで、スピンドルハウジング22に固定される。ロータリージョイント41は、スピンドル23と同軸に配置される。
【0032】
また、ロータリージョイント41の円筒状ボス部412には、開閉弁24を介して真空ポンプ等で構成された吸引源25と接続された吸引パイプ414と、吸引パイプ414に連通した吸引路415とが設けられている。開閉弁24は、吸引源25とロータリージョイント41の連通を開閉するものである。吸引パイプ414は、一端が円筒状ボス部412の外周面に連なっている。
【0033】
吸引路415は、
図3に示すように、円筒状ボス部412の外周面に開口して吸引パイプ414に連通するとともに、円筒状ボス部412の径方向に伸びた径方向延在部416と、径方向延在部416の円筒状ボス部412の内周側の先端に連なりかつ円筒状ボス部412の周方向に延在した周方向延在部417と、複数の吸引力伝達部418とを備えている。
【0034】
径方向延在部416と、周方向延在部417と、吸引力伝達部418とは、円筒状ボス部412の内部に設けられた空間であって、吸引源25からの負圧を伝達する。周方向延在部417は、円筒状ボス部412の全周に設けられ、環状に形成されている。吸引力伝達部418は、周方向延在部417に連なりかつ軸心232と平行に延在して円筒状ボス部412の先端面419に開口している。吸引力伝達部418は、円筒状ボス部412の周方向に等間隔に複数設けられている。
【0035】
支持フランジ42は、固定ねじ26がワッシャ27内及び中央に設けられた貫通孔421を通ってスピンドル23の先端面に設けられたねじ孔231と螺合してスピンドル23の先端に固定される。支持フランジ42は、円筒状のボス部43と、ボス部43のスピンドルハウジング22寄りの一端部に設けられたフランジ部44とを備えている。ボス部43は、支持フランジ42が取り付けられたスピンドル23の軸心232と平行な前後方向に伸張するとともに、外観が円柱状に形成されている。
【0036】
ボス部43は、基台212の装着穴211に挿通されて、外周面上に切削ブレード21が装着される。ボス部43は、外径が全長に亘って切削ブレード21の装着穴211の内径と略等しく形成されている。なお、ボス部43の外径が切削ブレード21の装着穴211の内径と略等しいとは、ボス部43の外周面と装着穴211の内周面とが少なくとも複数個所で互いに接触することが可能な程度に外径と内径とが等しいことを示している。
【0037】
フランジ部44は、ボス部43の後方であるスピンドルハウジング22寄りの一端部から径方向外向きに突出する鍔状の部材である。フランジ部44は、内側にスピンドル23の先端部が通されて、固定ねじ26及びワッシャ27等によりスピンドル23の先端に固定される。フランジ部44の内周面は、スピンドル23の先端と密に接触するように、スピンドルハウジング22に向かうにしたがって徐々に内径が大きく形成されている。
【0038】
フランジ部44は、装着穴211内にボス部43が通された切削ブレード21の基台212と対面するボス部43側の支持面441と、支持面441の外周縁に設けられかつ支持面441よりもボス部43側の突出した支持突起442とを有している。支持突起442は、支持面441の外周縁の全周に設けられて、端面443が環状に形成されている。端面443は、切削ブレード21の基台212と密に接触して、切削ブレード21の基台212を支持する。
【0039】
実施形態1では、支持フランジ42のフランジ部44の支持面441は、端面443とボス部43との間の環状の領域に支持面441から凹の凹部444を備えている。実施形態1では、凹部444は、支持面441の外縁部に設けられている。
【0040】
支持フランジ42は、ボス部43を装着穴211内に通し、フランジ部44の支持突起442の端面443で切削ブレード21の基台212を支持する。このために、支持フランジ42は、切削ブレード21を装着すると、基台212との間にボス部43の外周面と支持面441と凹部444と支持突起442とで囲んだ空間445を形成する。空間445は、フランジ部44の凹部444と切削ブレード21の基台212との間の空間である。
【0041】
また、支持フランジ42のフランジ部44は、凹部444に開口した貫通穴446を複数備えている。貫通穴446は、フランジ部44の径方向において端面443とボス部43との間に設けられ、フランジ部44を支持面441側から支持面441と反対側の背面447側まで貫通した孔である。実施形態1では、貫通穴446は、フランジ部44の外周に沿って周方向に複数等間隔に形成されている。貫通穴446は、軸心232と平行に延在し、ロータリージョイント41の吸引源25に接続した吸引路415の吸引力伝達部418と対向することが可能である。このため、貫通穴446は、吸引路249及び吸引パイプ414を介して吸引源25と連通して、吸引源25により吸引される。
【0042】
このように構成された切削ユニット20は、支持フランジ42がフランジ部44がスピンドル23の先端を内側に通し、固定ねじ26等によりスピンドル23の先端部に固定され、切削ブレード21の基台212の装着穴211が支持フランジ42のボス部43の外周に嵌合される。切削ユニット20は、吸引源25により吸引パイプ414、吸引路249及び貫通穴446とを介して、空間445が吸引される。切削ユニット20は、フランジ部44の背面447側から作用する吸引源25からの負圧を貫通穴446を介して切削ブレード21に作用させ、負圧によって切削ブレード21をフランジ部44に固定する。実施形態1では、切削ユニット20は、吸引源25からの負圧を凹部444と切削ブレード21の基台212との間の空間445に作用させる。
【0043】
なお、切削ユニット20のスピンドル23、支持フランジ42、ロータリージョイント41及び切削ブレード21の軸心は、Y軸方向と平行に設定されている。
【0044】
撮像ユニット90は、切削ユニット20と一体的に移動するように、切削ユニット20に固定されている。撮像ユニット90は、チャックテーブル10に保持された切削前の被加工物200の分割すべき領域を撮影する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット90は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮影して、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の画像を得、得た画像を制御ユニット100に出力する。
【0045】
X軸移動ユニット30は、チャックテーブル10を加工送り方向であるX軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にX軸方向に沿って加工送りするものである。Y軸移動ユニット31は、切削ユニット20を割り出し送り方向であるY軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にY軸方向に沿って割り出し送りするものである。Z軸移動ユニット32は、切削ユニット20を切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にZ軸方向に沿って切り込み送りするものである。
【0046】
X軸移動ユニット30、Y軸移動ユニット31及びZ軸移動ユニット32は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のモータ及びチャックテーブル10又は切削ユニット20をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。
【0047】
また、切削装置1は、チャックテーブル10のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニットとを備える。X軸方向位置検出ユニット及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成することができる。Z軸方向位置検出ユニットは、モータのパルスで切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出する。X軸方向位置検出ユニット、Y軸方向位置検出ユニット及びZ軸方向位置検出ユニットは、チャックテーブル10のX軸方向、切削ユニット20のY軸方向又はZ軸方向の位置を制御ユニット100に出力する。なお、実施形態1では、切削装置1の各構成要素のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置は、予め定められた図示しない基準位置を基準とした位置で定められる。
【0048】
また、切削装置1は、切削前後の被加工物200を収容するカセット51が載置されかつカセット51をZ軸方向に移動させるカセットエレベータ50と、切削後の被加工物200を洗浄する洗浄ユニット60と、カセット51に被加工物200を出し入れするとともに被加工物200を搬送する図示しない搬送ユニットとを備える。
【0049】
制御ユニット100は、切削装置1の各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作を切削装置1に実施させるものでもある。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、切削装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して切削装置1の各構成要素に出力する。
【0050】
制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニットとに接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0051】
(ブレード交換ユニット)
ブレード交換ユニット70は、切削ブレード21を着脱位置に位置付けられた切削ユニット20のスピンドル23の先端に固定された支持フランジ42のボス部43に着脱するものである。なお、着脱位置とは、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置が予め定められた位置であり、切削ユニット20がブレード交換ユニット70により切削ブレード21が着脱される際に位置付けられる位置である。
【0052】
ブレード交換ユニット70は、
図1に示すように、装置本体から立設した支持フレームの
図1中の背面側でかつ加工領域63よりも搬入出領域64から離れた位置に設置されている。ブレード交換ユニット70は、交換前後の切削ブレード21を保持するブレードストッカ71と、切削ユニット20のスピンドル23に切削ブレード21を着脱するとともにブレードストッカ71と切削ユニット20との間で切削ブレード21を搬送するブレード着脱ユニット72とを備える。
【0053】
ブレードストッカ71は、切削ブレード21を保持するブレード保持部711を複数備え、実施形態1では、ブレード保持部711を2つ備える。なお、ブレードストッカ71のブレード保持部711が保持する切削ブレード21は、未使用のものの他、既使用であるが寿命に達しておらず使用可能なもの、同種類および/または異種類のものを含む。
【0054】
実施形態1では、ブレードストッカ71の2つブレード保持部711の軸心は、Y軸方向と平行に配置されている。2つのブレード保持部711は、X軸方向に間隔をあけて配置されている。ブレード保持部715の軸心のZ軸方向の高さは、着脱位置に位置付けられた切削ユニット20の軸心のZ軸方向の高さと等しい。
【0055】
ブレード着脱ユニット72は、切削ユニット20のフランジ機構40に切削ブレード21を装着及び離脱させるものある。ブレード着脱ユニット72は、
図1に示すように、ユニット本体721と、ユニット本体721をX軸方向に移動させる移動機構722と、一対のブレードチャック73と、Y軸移動機構723を備えている。
【0056】
移動機構722は、X軸方向に延在しかつユニット本体721に設けられたナットと螺合するねじ軸と、ねじ軸を軸心回りに回転することでユニット本体721をX軸方向に移動させる図示しないモータとを備えて、ブレードチャック73をブレード保持部711とY軸方向に沿って対面する位置と、着脱位置の切削ユニット20のフランジ機構40とY軸方向に対面する位置とに亘ってX軸方向に移動させる。
【0057】
一対のブレードチャック73は、支持フランジ42に切削ブレード21を着脱するものである。実施形態1では、一方のブレードチャック73は、ブレードストッカ71に保持された交換用の切削ブレード21をブレードストッカ71から取り外して保持し、他方のブレードチャック73は、切削ユニット20から切削ブレード21を取り外し、切削ユニット20から取り外された交換後の切削ブレード21を保持する。実施形態1では、一対のブレードチャック73の軸心は、Y軸方向と平行に配置され、互いにX軸方向に間隔をあけて配置されている。
【0058】
ブレードチャック73は、切削ブレード21の基台212の外周面の環状溝214を把持する複数(実施形態1では、4個)の把持部材731を備え、Y軸移動機構723によりY軸方向に移動される。
【0059】
把持部材731は、直線状に延在したアーム状に形成され、先端部で切削ブレード21の基台212の外周面に設けられた環状溝214を把持する。把持部材731は、長手方向がY軸方向と平行に配置され、周方向に等間隔に配置され、互いに連動して径方向の内側に移動されるとともに、外側に移動させる。即ち、複数の把持部材731は、同時に径方向の内側に移動する、又は、径方向の外側に移動する。
【0060】
各ブレードチャック73は、複数の把持部材731を径方向の内側に移動させて、把持爪で基台212の外周面の環状溝214を把持して、切削ブレード21を保持する。各ブレードチャック73は、複数の把持部材731を径方向の外側に移動させて、把持爪での基台212の外周面の環状溝214の把持を解除して、切削ブレード21の保持を解除する。Y軸移動機構723は、移動機構722によりX軸方向に移動する。
【0061】
各ブレードチャック73の軸心のZ軸方向の高さは、ブレード保持部715の軸心のZ軸方向の高さ、及び着脱位置に位置付けられた切削ユニット20の軸心のZ軸方向の高さと等しい。
【0062】
(切削装置の加工動作)
切削装置1は、オペレータが、加工内容情報を制御ユニット100に登録し、切削加工前の被加工物200をカセット51に収容して、カセット51をカセットエレベータ50の上面に設置し、ブレード交換ユニット70のブレードストッカ71のブレード保持部74に交換用の切削ブレード21を取り付ける。
【0063】
その後、切削装置1は、オペレータから加工動作の開始指示があった場合に加工動作を開始する。切削装置1は、加工動作を開始すると、搬送ユニットがカセット51内から被加工物200を搬入出領域64のチャックテーブル10に搬送し、粘着テープ206を介して裏面204側をチャックテーブル10の保持面11に吸引保持するとともに、クランプ部12で環状フレーム205をクランプする。
【0064】
加工動作では、切削装置1は、X軸移動ユニット30がチャックテーブル10を加工領域63に向かって移動して、撮像ユニット90が被加工物200を撮影して、撮像ユニット90が撮影して得た画像に基づいて、アライメントを遂行する。切削装置1は、分割予定ライン202に沿って被加工物200と切削ユニット20とを相対的に移動させながら、切削ブレード21を各分割予定ライン202に切り込ませて被加工物200を個々のデバイス203に分割する。切削装置1は、個々のデバイス203に分割された被加工物200を搬送ユニットがチャックテーブル10から洗浄ユニット60に搬送し、洗浄ユニット60が被加工物200を洗浄する。
【0065】
切削装置1は、搬送ユニットが切削加工後で洗浄後の被加工物200を洗浄ユニット60からカセット51まで搬送し、カセット51内に収容する。切削装置1は、切削ユニット20等がカセット51内に収容した被加工物200を順に切削加工すて、カセット51内の全ての被加工物200の切削加工が完了すると加工動作を終了する。
【0066】
(切削ブレードの着脱動作)
図4は、
図1に示された切削装置の切削ブレードの着脱動作中のフランジ機構等の断面図である。実施形態1において、切削装置1は、制御ユニット100が加工動作中に、切削ユニット20の切削ブレード21がブレード交換タイミングであると判定すると切削ブレード21の着脱動作を実施する。ブレード交換タイミングは、切削ユニット20の切削ブレード21を交換するタイミングであることをいう。ブレード交換タイミングは、例えば、予め設定された数の被加工物200を切削する毎や、測定された切削ブレード21の外径が事前に設定した数値を下回ったとき等であり、加工内容情報の一部として制御ユニット100に登録される。また、本発明のブレード交換タイミングは、まさに1枚の被加工物200を加工している途中でも良く、複数の被加工物200を連続して加工する際に、被加工物200を交換するタイミングでも良い。
【0067】
着脱動作は、切削ユニット20の切削ブレード21を取り外し、ブレードストッカ71に保持された交換用の切削ブレード21を切削ユニット20に取り付ける動作である。即ち、切削ブレード21の着脱動作は、ブレードストッカ71に保持された切削ブレード21と、切削ユニット20に装着された切削ブレード21とを交換する動作である。
【0068】
着脱動作では、切削装置1は、切削ユニット20のスピンドル23の回転を停止し、切削ユニット20を着脱位置に位置付ける。このとき、開閉弁24は、開いて、吸引源25の負圧により切削ブレード21が吸引保持されている。着脱動作では、切削装置1は、移動機構722によりブレード着脱ユニット72をX軸方向に移動して、ブレード着脱ユニット72のブレードチャック73をブレードストッカ71のブレード保持部74とY軸方向に対向させる。
【0069】
切削装置1は、Y軸移動機構723により一方のブレードチャック73をY軸方向にブレード保持部711に近付けて、一方のブレードチャック73で交換用の切削ブレード21を保持した後、一方のブレードチャック73をブレード保持部711からY軸方向に遠ざける。切削装置1は、移動機構722によりブレード着脱ユニット72をX軸方向に移動して、他方のブレードチャック73を着脱位置の切削ユニット20とY軸方向に対向させる。
【0070】
切削装置1は、Y軸移動機構723により他方のブレードチャック73をY軸方向に切削ユニット20に近付け、他方のブレードチャック73でフランジ機構40に装着されている切削ブレード21を保持する。切削装置1は、開閉弁24を閉じて、切削ユニット20の切削ブレード21の吸引保持を停止し、他方のブレードチャック73を着脱位置の切削ユニット20からY軸方向に沿って遠ざけて、
図4に例示するように、切削ユニット20から切削ブレード21を取り外す。
【0071】
切削装置1は、移動機構722によりブレード着脱ユニット72をX軸方向に移動して、
図4に例示するように、交換用の切削ブレード21を保持した一方のブレードチャック73を、着脱位置の切削ブレード21が取り外された切削ユニット20とY軸方向に対向させる。切削装置1は、一方のブレードチャック73を着脱位置の切削ユニット20にY軸方向に沿って近付けて、交換用の切削ブレード21の基台212の装着穴211内にスピンドル23の先端部を通して、交換用の切削ブレード21の基台212を支持フランジ42の支持突起442の端面443に密に接触させる。
【0072】
切削装置1は、開閉弁24を開いて、切削ユニット20に交換用の切削ブレード21を吸引保持し、一方のブレードチャック73の交換用の切削ブレード21の保持を解除して、Y軸移動機構723により一方のブレードチャック73を着脱位置の切削ユニット20からY軸方向に沿って遠ざけて、切削ユニット20に交換用の切削ブレード21を取り付ける。こうして、着脱動作では、切削装置1は、開閉弁24の開閉と連動して、ブレード着脱ユニット72による切削ブレード21をフランジ機構40に装着及びフランジ機構40から離脱させる。
【0073】
切削装置1は、移動機構722によりブレード着脱ユニット72をX軸方向に移動して、切削ユニット20から取り外された交換後の切削ブレード21を保持した他方のブレードチャック73をブレードストッカ71のブレード保持部74とY軸方向に対向させる。切削装置1は、Y軸移動機構723により他方のブレードチャック73をブレード保持部74にY軸方向に沿って近付けて、ブレード保持部74に交換後の切削ブレード21を保持した後、他方のブレードチャック73の交換後の切削ブレード21の保持を解除する。切削装置1は、他方のブレードチャック73をブレード保持部74からY軸方向に沿って遠ざけて、着脱動作を完了する。
【0074】
以上説明したように、実施形態1に係るフランジ機構40は、切削ブレード21を支持フランジ42のフランジ部44に負圧により吸引保持するので、切削ブレード21の着脱が容易であり、ナットを螺合して切削ブレードを固定する場合のようにナット回転時に切削ブレード21が連れ回ってフランジ部44の端面443を荒らすことがないという効果を奏する。その結果、フランジ機構40は、切削ブレード21の斜め固定等の不安定な固定を抑制することができる。
【0075】
また、フランジ機構40は、支持フランジ42のフランジ部44の貫通穴446から切削ブレード21の基台212を吸引するため、単純な機構の支持フランジ42になり、製造が容易でメンテナンスも容易になるという効果を奏する。また、フランジ機構40は、貫通穴446が軸心232と平行であるので、支持フランジ42の構成の単純化を図ることができる。その結果、フランジ機構40は、貫通穴446内の異物を簡単の除去でき、メンテナンスの容易化を図ることができるという効果を奏する。
【0076】
また、フランジ機構40は、貫通穴446を周方向に等間隔に複数配置することで、切削ブレード21の基台212が撓んだり斜めになる恐れがない。また、フランジ機構40は、支持面441の端面443とボス部43との間の環状の領域に凹部444を設けることで吸引源25で吸引する空間445を広げることができ、基台212を面で吸引でき、強力な切削ブレード21の吸引保持も可能にした。
【0077】
また、フランジ機構40は、切削ブレード21を固定する際にナットが不要になったことで、切削ブレード21の着脱な容易になり、ブレード着脱ユニット72を備える切削装置1のナットの着脱機構が不要になるため、シンプルな構造のブレード着脱ユニット72にすることを可能とした。
【0078】
また、フランジ機構40及び切削装置1は、切削ブレード21を支持フランジ42のフランジ部44に負圧により吸引保持するので、切削ブレード21を着脱する際に固定ナットを所定以上のトルクで螺合し、切削ブレード21を離脱する際も固定ナットを所定の治具で回転させて外す必要がなく、所定の治具とトルク測定できる機構を不要とし、オペレータの作業を不要とする。さらに、フランジ機構40及び切削装置1は、切削ブレード21を支持フランジ42のフランジ部44に負圧により吸引保持するので、装着時の固定ナット締め付け時に、切削ブレード21が支持フランジ42に接触しながら連れ回るおそれがなく、支持フランジ42の切削ブレード21と接触する面が荒れることもなく、切削ブレード21の斜め装着や不安定な固定を抑制することができる。
【0079】
実施形態1に係る切削装置1は、前述したフランジ機構40を備えるので、貫通穴446内の異物を簡単の除去でき、メンテナンスの容易化を図ることができるという効果を奏する。
【0080】
〔変形例〕
本発明の実施形態1の変形例に係るフランジ機構を図面に基づいて説明する。
図5は、実施形態1の変形例に係る切削装置の切削ユニットの要部の断面図である。なお、
図5は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0081】
変形例に係る切削装置1のフランジ機構40は、
図5に示すように、切削ブレード21の基台212が、支持フランジ42のフランジ部44の支持面441の貫通穴446の対面する領域に基台凹部215を備え、支持面441と凹部444と基台凹部215等との間の空間445に吸引源25からの負圧が作用すること以外、実施形態1と同じである。
【0082】
変形例に係るフランジ機構40は、貫通穴446が軸心232と平行であるので、支持フランジ42の構成の単純化を図ることができ、実施形態1と同様に、貫通穴446内の異物を簡単の除去でき、メンテナンスの容易化を図ることができるという効果を奏する。
【0083】
また、変形例に係るフランジ機構40は、切削ブレード21の基台212に基台凹部215を設けることで吸引源25で吸引する空間445を広げることができ、基台212を面で吸引でき、強力な切削ブレード21の吸引保持を可能にすることができる。
【0084】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る切削装置を図面に基づいて説明する。
図6は、実施形態2に係る切削装置の切削ユニットの要部の断面図である。なお、
図6は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0085】
実施形態2に係る切削装置1は、
図6に示すように、切削ブレード21-2が切り刃213のみからなるワッシャーブレードであり、切削ブレード21-2をスピンドル23に装着するためのフランジ機構40-2が、切削ブレード21-2を支持フランジ42の支持突起442の端面443との間に挟持する押さえフランジ45を備え、各ブレードチャックが切削ブレード21-2を吸引源からの負圧により吸引保持すること以外、実施形態1と同じである。
【0086】
切削ブレード21-2は、中央に装着穴216を有する。支持フランジ42は、ボス部43の一端部側に切削ブレード21の装着穴216が挿通される環状支持部448を備える。支持フランジ42の端面443は、切削ブレード21-2を支持する。
【0087】
押さえフランジ45は、
図6に示すように、中央に内側に支持フランジ42のボス部43が通されてボス部43が挿通される装着穴451と、外周縁にフランジ部44の端面443との間に切削ブレード21を挟持する環状の挟持面452とを有している。
【0088】
また、実施形態2では、貫通穴446-2は、端面443とボス部43との間に設けられ、フランジ部44の押さえフランジ45の挟持面452よりも内周側と対面する対向面449から対向面449と反対側の背面447側までフランジ部44を貫通している。なお、対向面449は、環状支持部448よりも内周側に配置されている。
【0089】
実施形態2に係る切削装置1の切削ユニット20は、吸引源25により吸引パイプ414、吸引路249及び貫通穴446-2とを介して、フランジ部44の対向面449と押さえフランジ45との間の空間450を吸引して、押さえフランジ45に作用させ、負圧によって押さえフランジ45をフランジ部44に吸引固定することで、切削ブレード21をフランジ部44に固定する。
【0090】
また、押さえフランジ45は、挟持面452に開口して貫通しブレードチャック73により切削ブレード21とともに吸引保持される吸引保持用孔453が複数設けられている。
【0091】
実施形態2に係るフランジ機構40-2は、貫通穴446-2が軸心232と平行であるので、支持フランジ42の構成の単純化を図ることができ、実施形態1と同様に、貫通穴446-2内の異物を簡単の除去でき、メンテナンスの容易化を図ることができるという効果を奏する。
【0092】
実施形態2に係る切削装置1は、ブレードチャック73が切削ブレード21-2とともに押さえフランジ45を吸引保持するので、基台を備えないワッシャーブレードである切削ブレード21-2も交換することができる。
【0093】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 切削装置
10 チャックテーブル
20 切削ユニット
21,21-2 切削ブレード
23 スピンドル
24 開閉弁
25 吸引源
30 X軸移動ユニット(加工送りユニット)
40,40-2 フランジ機構
43 ボス部
44 フランジ部
45 押さえフランジ
72 ブレード着脱ユニット
211 装着穴
212 基台
213 切り刃
215 基台凹部
216 装着穴
441 支持面
443 端面
444 凹部
445 空間
446,446-2 貫通穴
447 背面
449 対向面
451 装着穴
452 挟持面