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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】調整方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231027BHJP
   B24D 5/10 20060101ALI20231027BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20231027BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20231027BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20231027BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20231027BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
H01L21/304 631
B24D5/10
B24B41/06 L
B24B7/04 Z
B24B27/06 J
B24B55/02 B
H01L21/78 F
H01L21/78 N
H01L21/304 601Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019145442
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2021027246
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智瑛
(72)【発明者】
【氏名】花島 聡
(72)【発明者】
【氏名】名嘉眞 惇
(72)【発明者】
【氏名】馬路 良吾
(72)【発明者】
【氏名】宅永 和史
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-85054(JP,A)
【文献】特開2006-319110(JP,A)
【文献】特開2009-202323(JP,A)
【文献】特開2019-13988(JP,A)
【文献】特開2015-23222(JP,A)
【文献】特開2017-192998(JP,A)
【文献】特開平11-347912(JP,A)
【文献】特開平7-276243(JP,A)
【文献】特開2014-200868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24D 5/10
B24B 41/06
B24B 7/04
B24B 27/06
B24B 55/02
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削装置の保持テーブルの保持面を平坦化する調整方法であって、
被加工物を保持する保持面を含む保持テーブルと、該保持テーブルで保持された被加工物を切削する切削ブレードと該切削ブレードが固定されるスピンドルとを有した切削手段と、該保持テーブルと該切削手段とを相対移動させる移動手段と、を備えた切削装置を準備する装置準備ステップと、
該スピンドルが貫装される貫装孔が中央に形成され、第1面と、該第1面の背面の第2面と、該第1面から該第2面に至る外周側面と、を含む円形基台と、該円形基台の該外周側面に配設された多孔質の砥石と、を備え、該円形基台には、該外周側面に開口した複数の研削液吐出口と、該第1面に開口した研削液供給口と、一端が該研削液供給口に連通するとともに他端が複数の該研削液吐出口に連通する研削液供給路と、が形成された研削砥石を準備する砥石準備ステップと、
該切削装置の該切削ブレードに代えて、該スピンドルに該研削砥石を装着する砥石装着ステップと、
所定の高さ位置に位置付けた該研削砥石を回転させつつ該移動手段で該切削手段を該保持テーブルに対して相対移動させることで該保持面を研削して平坦化する平坦化ステップと、を備え、
該平坦化ステップでは、該研削液供給口に研削液を供給することで、該研削砥石の回転に伴い該研削液が該研削液吐出口から流出して多孔質の該砥石を介して該砥石と該保持面とが接触する領域に供給される、調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削砥石を用いた切削装置の保持テーブルの保持面を平坦化する調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削装置で被加工物を切削する際に切り込み深さを均一にする手法として、研削砥石を切削ユニットのスピンドルに装着し、保持テーブルと切削ユニットとを相対的に加工送りして、所定の高さに位置し回転する研削砥石で保持テーブルの保持面に研削して、保持面を平坦化する加工方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-202323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された加工方法は、研削砥石で保持テーブルの保持面を平坦に研削する際に加工時間を短縮するためには、研削砥石の幅を広くし一度の加工送りで研削できる領域を広く設定することが好ましい。
【0005】
但し、特許文献1に示された加工方法は、研削砥石の幅を広くした場合、研削砥石の外側から研削液を供給しても研削砥石の厚み方向の中央には研削液が到達せず、加工品質が悪化する傾向であった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、研削砥石の厚み方向の中央にも加工中に研削液を供給できる調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の調整方法は、切削装置の保持テーブルの保持面を平坦化する調整方法であって、被加工物を保持する保持面を含む保持テーブルと、該保持テーブルで保持された被加工物を切削する切削ブレードと該切削ブレードが固定されるスピンドルとを有した切削手段と、該保持テーブルと該切削手段とを相対移動させる移動手段と、を備えた切削装置を準備する装置準備ステップと、該スピンドルが貫装される貫装孔が中央に形成され、第1面と、該第1面の背面の第2面と、該第1面から該第2面に至る外周側面と、を含む円形基台と、該円形基台の該外周側面に配設された多孔質の砥石と、を備え、該円形基台には、該外周側面に開口した複数の研削液吐出口と、該第1面に開口した研削液供給口と、一端が該研削液供給口に連通するとともに他端が複数の該研削液吐出口に連通する研削液供給路と、が形成された研削砥石を準備する砥石準備ステップと、該切削装置の該切削ブレードに代えて、該スピンドルに該研削砥石を装着する砥石装着ステップと、所定の高さ位置に位置付けた該研削砥石を回転させつつ該移動手段で該切削手段を該保持テーブルに対して相対移動させることで該保持面を研削して平坦化する平坦化ステップと、を備え、該平坦化ステップでは、該研削液供給口に研削液を供給することで、該研削砥石の回転に伴い該研削液が該研削液吐出口から流出して多孔質の該砥石を介して該砥石と該保持面とが接触する領域に供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、研削砥石の厚み方向の中央にも加工中に研削液を供給できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1に係る研削砥石により保持テーブルの保持面が平坦化される切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係る研削砥石の平面図である。
図3図3は、図2に示された研削砥石を裏側からみた平面図である。
図4図4は、図2中のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図5は、実施形態1に係る研削砥石の円形基台を裏側みた斜視図である。
図6図6は、実施形態1に係る調整方法の流れを示すフローチャートである。
図7図7は、図6に示された調整方法の砥石装着ステップ後の研削砥石を断面で示す切削ユニットの側面図である。
図8図8は、図6に示された平坦化ステップを保持テーブルを断面で示す側面図である。
図9図9は、実施形態1の変形例1に係る研削砥石の円形基台を裏側みた斜視図である。
図10図10は、実施形態1の変形例2に係る研削砥石の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る研削砥石を図面に基いて説明する。図1は、実施形態1に係る研削砥石により保持テーブルの保持面が平坦化される切削装置の構成例を示す斜視図である。図2は、実施形態1に係る研削砥石の平面図である。図3は、図2に示された研削砥石を裏側からみた平面図である。図4は、図2中のIV-IV線に沿う断面図である。図5は、実施形態1に係る研削砥石の円形基台を裏側みた斜視図である。
【0013】
実施形態1に係る図2等に研削砥石101は、図1に示す切削装置1の切削ユニット20のスピンドル22に装着されて保持テーブル10の保持面13を平坦化するものである。図1に示す切削装置1は、被加工物200を切削(加工)する装置である。実施形態1では、被加工物200は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハである。被加工物200は、表面201に格子状に形成された複数の分割予定ライン202によって格子状に区画された領域にデバイス203が形成されている。
【0014】
本発明の被加工物200は、中央部が薄化され、外周部に厚肉部が形成された所謂TAIKO(登録商標)ウエーハでもよく、ウエーハの他に、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス板、ガラス板等でも良い。被加工物200は、裏面204に円板状の粘着テープ206に貼着され、粘着テープ206の外周縁に内径が被加工物200の外径よりも大きな環状の環状フレーム205が貼着されて、環状フレーム205の内側の開口に支持されている。
【0015】
図1に示された切削装置1は、分割予定ライン202を備える被加工物200を保持テーブル10で保持し分割予定ライン202に沿って切削ブレード21で切削する装置である。切削装置1は、図1に示すように、被加工物200を吸引保持する保持面13を含む保持テーブル10と、保持テーブル10で保持された被加工物200を切削する切削ブレード21と切削ブレード21が固定されるスピンドル22とを有した切削手段である切削ユニット20と、保持テーブル10に保持された被加工物200を撮影する撮像手段である撮像ユニット30と、制御手段である制御ユニット100とを備える。
【0016】
また、切削装置1は、図1に示すように、保持テーブル10と切削ユニット20とを相対移動させる移動手段である移動ユニット40を備える。移動ユニット40は、保持テーブル10を水平方向及び装置本体2の短手方向と平行なX軸方向に加工送りするX軸移動ユニット41と、切削ユニット20を水平方向及び装置本体2の長手方向と平行でかつX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りするY軸移動ユニット42と、切削ユニット20をX軸方向とY軸方向との双方と直交する鉛直方向に平行なZ軸方向に切り込み送りするZ軸移動ユニット43と、保持テーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転するとともにX軸移動ユニット41により保持テーブル10とともにX軸方向に加工送りされる回転移動ユニット44とを備える。
【0017】
保持テーブル10は、円盤形状でありかつステンレス鋼等の金属で構成されているともに上面111の中央部に凹部が形成された枠体11と、円板形状でかつポーラスセラミック等多孔質材で構成されているとともに枠体11の凹部内に取り付けられたポーラス板12とを備える。枠体11の上面111とポーラス板12の上面121とは、同一平面となるように平坦に形成され、被加工物200を保持する保持面13を構成する。
【0018】
また、保持テーブル10は、X軸移動ユニット41によりX軸方向に沿って移動自在で回転移動ユニット44により軸心回りに回転自在に設けられている。保持テーブル10は、凹部内の空間が図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引されることで、被加工物200を吸引、保持する。また、保持テーブル10の周囲には、環状フレーム211をクランプするクランプ部14が複数設けられている。
【0019】
切削ユニット20は、保持テーブル10に保持された被加工物200を切削する切削ブレード21を装着するスピンドル22を備えるものである。切削ユニット20は、保持テーブル10に保持された被加工物200に対して、Y軸移動ユニット42によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット43によりZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0020】
切削ユニット20は、図1に示すように、Y軸移動ユニット42、Z軸移動ユニット43などを介して、装置本体2から立設した支持フレーム3に設けられている。切削ユニット20は、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43により、保持テーブル10の保持面13の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。
【0021】
切削ユニット20は、切削ブレード21と、切削ブレード21を先端に装着したスピンドル22とに加え、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43によりY軸方向及びZ軸方向に移動されかつスピンドル22を軸心回りに回転自在に収容したスピンドルハウジング23と、スピンドルハウジング23内に収容されかつスピンドル22を軸心回りに回転する図示しないスピンドルモータとを備える。
【0022】
切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。スピンドル22は、切削ブレード21を回転させることで被加工物200を切削する。スピンドル22は、スピンドルハウジング23内に収容され、スピンドルハウジング23は、Z軸移動ユニット43に支持されている。切削ユニット20のスピンドル22及び切削ブレード21の軸心は、Y軸方向と平行に設定されている。
【0023】
X軸移動ユニット41は、保持テーブル10を加工送り方向であるX軸方向に移動させることで、保持テーブル10と切削ユニット20とを相対的にX軸方向に沿って加工送りするものである。Y軸移動ユニット42は、切削ユニット20を割り出し送り方向であるY軸方向に移動させることで、保持テーブル10と切削ユニット20とを相対的にY軸方向に沿って割り出し送りするものである。Z軸移動ユニット43は、切削ユニット20を切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させることで、保持テーブル10と切削ユニット20とを相対的にZ軸方向に沿って切り込み送りするものである。
【0024】
X軸移動ユニット41、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ及び保持テーブル10又は切削ユニット20をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。
【0025】
また、切削装置1は、保持テーブル10のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニットとを備える。X軸方向位置検出ユニット及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成することができる。Z軸方向位置検出ユニットは、パルスモータのパルスで切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出する。X軸方向位置検出ユニット、Y軸方向位置検出ユニット及びZ軸方向位置検出ユニットは、保持テーブル10のX軸方向、切削ユニット20のY軸方向又はZ軸方向の位置を制御ユニット100に出力する。なお、実施形態1では、各位置は、予め定められた基準位置からのX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の距離で定められる。
【0026】
また、切削装置1は、切削前後の被加工物200を収容するカセット51が載置されかつカセット51をZ軸方向に移動させるカセットエレベータ50と、切削後の被加工物200を洗浄する洗浄ユニット60と、カセット51に被加工物200を出し入れするとともに被加工物200を搬送する図示しない搬送ユニットとを備える。
【0027】
撮像ユニット30は、切削ユニット20と一体的に移動するように固定されている。撮像ユニット30は、保持テーブル10に保持された切削前の被加工物200の分割すべき領域を撮影する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット30は、保持テーブル10に保持された被加工物200を撮影して、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の画像を得、得た画像を制御ユニット100に出力する。
【0028】
制御ユニット100は、切削装置1の上述した構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作を切削装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理装置が演算処理を実施して、切削装置1を制御するための制御信号を入出力インターフェース装置を介して切削装置1の上述した構成要素に出力する。
【0029】
また、制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニットとに接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0030】
実施形態1に係る図2等に示す研削砥石101は、切削ブレード21が取り外された切削ユニット20のスピンドル22に装着されスピンドルモータにより回転されて、保持テーブル10の保持面13を平坦化するものである。研削砥石101は、保持テーブル10の保持面13を平坦化する際に、純水等の研削液250(図8に示す)が供給される。なお、本発明でいう保持面13を平坦化するとは、枠体11の上面111とポーラス板12の上面121とを水平方向に沿って平坦化するとともに、上面111,121同士を同一平面上に形成することである。
【0031】
研削砥石101は、図2図3及び図4に示すように、円形基台110と、多孔質の砥石120と、を備える。円形基台110は、円板状に形成され、ステンレス鋼等の金属により構成されている。円形基台110は、図5に示すように、スピンドル22が貫装される貫装孔115が中央に形成されている。円形基台110は、円形の第1面112と、第1面112の背面の円形の第2面113と、第1面112から第2面113に至る外周側面114とを含む。貫装孔115は、円形基台110を貫通し、研削砥石101が装着されるスピンドル22が挿入される孔である。
【0032】
第1面112は、研削砥石101がスピンドル22に装着されると、第2面113よりもスピンドルハウジング23寄りに配置される。外周側面114は、第1面112の外縁と第2面の外縁との双方に連なっており、スピンドル22の軸心を中心とする円弧状に湾曲している。
【0033】
砥石120は、円形基台110の外周側面114に配設されている。実施形態1では、砥石120は、円形基台110の外周側面114に周方向に等間隔に配設された複数の砥石セグメント126で構成されている。砥石セグメント126は、外周側面114に沿って湾曲して形成されかつ外周側面114に取り付けられる内周側湾曲面122と、研削砥石101がスピンドル22に装着されるとスピンドル22の軸心を中心とする円弧状に湾曲した外周側湾曲面123と、内周側湾曲面122と外周側湾曲面123とに連なって平坦な複数(実施形態では、4つ)の平坦面124,125により形成されている。
【0034】
内周側湾曲面122及び外周側湾曲面123は、研削砥石101がスピンドル22に装着されると、Y軸方向と平行な断面において、図4に示すように、Y軸方向と平行に平坦に形成されている。複数の平坦面124の2つは、円形基台110の径方向と平行であり、残りの2つの平坦面125は、研削砥石101がスピンドル22に装着されると、X軸方向と平行である。
【0035】
砥石セグメント126は、金属、セラミックス又は樹脂等により構成される結合材(ボンド材ともいう)に、ダイヤモンド、又はCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒を混合して一つの多孔質な塊に形成されている。実施形態1において、砥石セグメント126は、ボンド材としてビトリファイドボンドに、ダイヤモンドを砥粒として混合したもので構成されているが、本発明では、これらに限定されない。本発明では、砥石セグメント126は、電鋳、メタルボンド又はレジンボンドでCBN等の砥粒を固定したものでも良い。また、実施形態1において、砥石セグメント126の厚みは、円形基台110の厚みと等しく形成され、平坦面125が第1面112及び第2面113と同一平面上に配置される。実施形態1では、砥石セグメント126の厚みは、10mm以上でかつ20mm以下である。
【0036】
また、実施形態1に係る研削砥石101の円形基台110には、図3図4及び図5に示すように、研削液吐出口131と、研削液供給口である研削液供給溝132と、研削液供給路133とが形成されている。
【0037】
研削液吐出口131は、外周側面114に開口し、砥石セグメント126と対応している。実施形態1では、研削液吐出口131は、砥石セグメント126と1対1で対応しているが、本発明では、少なくとも一つの研削液吐出口131が各砥石セグメント126に対応していれば良い。実施形態1では、研削液吐出口131は、円形基台110の厚み方向の中央に開口し、対応する砥石セグメント126の内周側湾曲面122の軸心を中心とした周方向の中央に開口している。
【0038】
研削液供給溝132は、第1面112から凹に形成され、平面形状が円形基台110及び貫装孔115と同軸なリング状に形成されて、第1面112に開口している。
【0039】
研削液供給路133は、研削液吐出口131と1対1で対応している。研削液供給路133は、一端が研削液供給溝132の内面に開口して研削液供給溝132に連通するとともに、他端が研削液吐出口131に連通している。研削液供給路133は、円形基台110の内部に形成された孔である。実施形態1では、研削液供給路133は、円形基台110の径方向に沿って直線状に形成されている。
【0040】
次に、本発明の実施形態1に係る調整方法を図面に基いて説明する。図6は、実施形態1に係る調整方法の流れを示すフローチャートである。実施形態1に係る調整方法は、研削砥石101で切削装置1の保持テーブル10の保持面13を研削して、保持面13を平坦化する方法である。実施形態1に係る調整補法は、図6に示すように、装置準備ステップST1と、砥石準備ステップST2と、砥石装着ステップST3と、平坦化ステップST4とを備える。
【0041】
(装置準備ステップ)
装置準備ステップST1は、前述した切削装置1を準備するステップである。実施形態1では、装置準備ステップST1は、タッチパネル302を操作して、調整内容情報を制御ユニット400に入力する。調整内容情報は、研削砥石101で保持面13を研削する際の研削砥石101の下端の所定の高さ位置であるZ軸方向の高さ、及び研削砥石101で保持面13を研削する際に研削砥石101即ち切削ユニット20をY軸方向にインデックス送りするインデックス送り量を含んでいる。
【0042】
(砥石準備ステップ)
砥石準備ステップST2は、前述した研削砥石101を準備するステップである。実施形態1に係る調整方法は、装置準備ステップST1において、切削装置1を準備し、砥石準備ステップST2において、研削砥石101を準備すると、砥石装着ステップST3に進む。
【0043】
(砥石装着ステップ)
図7は、図6に示された調整方法の砥石装着ステップ後の研削砥石を断面で示す切削ユニットの側面図である。砥石装着ステップST3は、切削装置1の切削ブレード21に代えて、スピンドル22に研削砥石101を装着するステップである。
【0044】
実施形態1において、砥石装着ステップST3では、切削ユニット20のスピンドル22の回転を停止し、切削ブレード21をスピンドル22から取り外す。砥石装着ステップST3では、貫装孔115内にスピンドル22の先端を通し、スピンドル22の先端にナット25を螺合して、図7に示すように、スピンドル22の先端に装着されたマウント24とナット25との間に円形基台110を挟んで、研削砥石101を切削ユニット20のスピンドル22の先端に装着する。また、実施形態1では、研削液250を供給する研削液供給ノズル26のノズル孔が設けられた先端を研削液供給溝132に対向させて、研削液供給ノズル26を取り付ける。実施形態において、砥石装着ステップST3では、制御ユニット100がオペレータの調整開始指示を受け付けると、スピンドルモータによるスピンドル22の回転を開始して、平坦化ステップST4に進む。
【0045】
(平坦化ステップ)
図8は、図6に示された平坦化ステップを保持テーブルを断面で示す側面図である。平坦化ステップST4は、調整内容情報に含まれるZ軸方向の位置に研削砥石101の下端を位置付けた研削砥石101を回転させつつ移動ユニット40で切削ユニット20を保持テーブル10に対して相対移動させるもことで、保持面13を研削して平坦化するステップである。
【0046】
平坦化ステップST4では、研削液供給ノズル26から研削液供給溝132に研削液250を供給しながらスピンドルモータにより回転する研削砥石101の下端を調整内容情報に含まれるZ軸方向の位置に位置付ける。平坦化ステップST4では、保持テーブル10の保持面13のY軸方向の一方の端を研削砥石101とX軸方向に並ぶ位置に位置付けた後、X軸移動ユニット41で保持テーブル10をX軸方向に移動させて、研削砥石101で保持面13をX軸方向の全長に亘って研削する。
【0047】
平坦化ステップST4では、切削装置1は、切削ユニット20を調整内容情報に含まれるインデックス送り量、保持テーブル10のY軸方向の他方の端に向かって移動させるなどした後、X軸移動ユニット41で保持テーブル10をX軸方向に移動させて、研削砥石101で保持面13をX軸方向の全長に亘って研削する。こうして、実施形態1において、平坦化ステップST4保持テーブル10のX軸方向の移動と、切削ユニット20のY軸方向の移動等とを交互に繰り返して、保持面13全体即ち枠体11の上面111及びポーラス板12の上面121を研削して、保持面13を平坦化する。
【0048】
また、平坦化ステップST4では、切削装置1は、研削液供給ノズル26から研削液供給溝132に研削液250を供給するので、研削砥石101の回転時の遠心力に伴い、研削液250が研削液吐出口131から砥石セグメント126内に流出する。平坦化ステップST4では、砥石セグメント126内に流出した研削液250は、研削砥石101の回転時の遠心力により砥石セグメント126内の微細な孔を通って砥石セグメント126の保持面13と接触する外周側湾曲面123から流出する。こうして、平坦化ステップST4では、砥石セグメント126内に流出した研削液250は、砥石セグメント126を介して砥石セグメント126と保持面13とが接触する領域に供給される。保持面13全体を研削砥石101で研削して平坦化すると、調整方法は、終了する。
【0049】
以上のように、実施形態1に係る研削砥石101及び調整方法は、研削砥石101が円形基台110と多孔質の砥石120を有し、円形基台110には、外周側面114に開口した複数の研削液吐出口131と、第1面112に開口した研削液供給溝132と、一端が研削液供給溝132に連通するとともに他端が研削液吐出口131に連通する研削液供給路133とが形成されている。このために、研削砥石101及び調整方法は、回転時の遠心力に伴い、研削液250が研削液吐出口131から砥石120の砥石セグメント126内に流出し、砥石セグメント126内の微細な孔を通って砥石セグメント126の保持面13と接触する外周側湾曲面123から流出する。その結果、研削砥石101及び調整方法は、研削液250と砥石セグメント126を介して砥石セグメント126と保持面13とが接触する領域に供給することができ、砥石120の砥石セグメント126の厚み方向の中央にも加工中に研削液250を供給でき、加工品質の悪化を抑制することができるという効果を奏する。
【0050】
〔変形例1〕
本発明の実施形態1の変形例1に係る研削砥石を図面に基いて説明する。図9は、実施形態1の変形例1に係る研削砥石の円形基台を裏側みた斜視図である。なお、図9は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
変形例1に係る研削砥石101-1は、円形基台110-1の研削液供給路133-1の向きが実施形態1と異なること以外、実施形態1の研削砥石101と同じである。変形例1に係る研削砥石101-1の円形基台110-1の研削液供給路133-1は、円形基台110-1の径方向に対して交差している。変形例1では、研削液供給路133-1は、研削液供給溝132に連通する一端が、研削液吐出口131に連通する他端よりも研削砥石101-1の研削時の回転方向300の前側に配置されている。
【0052】
変形例1に係る研削砥石101-1及び調整方法は、円形基台110に一端が研削液供給溝132に連通するとともに他端が研削液吐出口131に連通する研削液供給路133-1が形成されているので、実施形態1と同様に、研削液250を外周側湾曲面123から流出させることができる。その結果、変形例1に係る研削砥石101-1及び調整方法は、砥石120の砥石セグメント126の厚み方向の中央にも加工中に研削液250を供給でき、加工品質の悪化を抑制することができるという効果を奏する。
【0053】
また、変形例1に係る研削砥石101-1は、研削液供給路133-1の研削液供給溝132に連通する一端が研削液吐出口131に連通する他端よりも研削砥石101-1の研削時の回転方向300の前側に配置されているので、研削時の遠心力により研削液250を外周側湾曲面123から流出させることができる。
【0054】
〔変形例2〕
本発明の実施形態1の変形例2に係る研削砥石を図面に基いて説明する。図10は、実施形態1の変形例2に係る研削砥石の平面図である。なお、図10は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
変形例2に係る研削砥石101-2は、砥石120-2がリング状の一つの砥石セグメント126-2で構成されていること以外、実施形態1と同じである。なお、変形例2に係る研削砥石101-2は、変形例2と同様に、研削液供給路133-1が円形基台110の径方向に対して交差しても良い。
【0056】
変形例2に係る研削砥石101-2及び調整方法は、円形基台110に一端が研削液供給溝132に連通するとともに他端が研削液吐出口131に連通する研削液供給路133が形成されているので、実施形態1と同様に、研削液250を外周側湾曲面123から流出させることができる。その結果、変形例2に係る研削砥石101-2及び調整方法は、砥石120-2の砥石セグメント126-2の厚み方向の中央にも加工中に研削液250を供給でき、加工品質の悪化を抑制することができるという効果を奏する。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。なお、実施形態1等では、研削砥石101,101-1,101-2は、保持テーブル10の保持面13を平坦化するのに用いられたが、本発明では、これに限定されずに、例えば、半導体ウエーハや光デバイスウエーハのウエーハ外縁部を表面側から少なくとも一部を除去するエッジトリミングに用いられても良い。また、本発明の調整方法では、研削砥石101,101-1,101-2として、粗研削用の研削砥石と、仕上げ研削用の研削砥石とを設け、粗研削用の研削砥石で粗研削加工を実施した後、仕上げ研削用の研削砥石で仕上げ研削加工を実施しても良い。
【0058】
また、本発明の調整方法は、平坦化ステップST4では、砥石120の砥石セグメント126の内部からの研削液250に加えて、砥石120の外部から砥石セグメント126の保持面13に接触する加工点に研削液を供給しても良い。また、本発明の調整方法は、平坦化ステップST4では、切削ユニット20に装着された砥石120の往復加工で保持面13を平坦化しても良い。具体的には、切削装置1は、往路では保持テーブル10をX軸方向と平行な一方向に移動しつつ砥石120で保持面13を研削加工し、復路では保持テーブル10をX軸方向と平行でかつ一方向の逆向きの他方向に移動すると同時にスピンドル22をY軸方向にインデックス送りして砥石120で保持面13を研削加工しても良い。この場合、研削痕間に砥石120のR形状により生じる凸部を削り、保持面13を平坦化することができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0059】
1 切削装置
10 保持テーブル
13 保持面
20 切削ユニット(切削手段)
21 切削ブレード
22 スピンドル
40 移動ユニット(移動手段)
101,101-1,101-2 研削砥石
110,110-1 円形基台
112 第1面
113 第2面
114 外周側面
115 貫装孔
120,120-2 砥石
131 研削液吐出口
132 研削液供給溝(研削液供給口)
133,133-1 研削液供給路
ST1 装置準備ステップ
ST2 砥石準備ステップ
ST3 砥石装着ステップ
ST4 平坦化ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10