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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】立形多段ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/42 20060101AFI20231027BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
F04D29/42 A
F04D29/66 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019223567
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2021092192
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】川上 祐輝
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0339162(US,A1)
【文献】特開2006-029241(JP,A)
【文献】実開昭62-126591(JP,U)
【文献】特開2010-242730(JP,A)
【文献】実開昭57-186687(JP,U)
【文献】特開昭59-201999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/42
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に固定された複数の羽根車と、
多段に積み重ねられ、前記複数の羽根車を収容する複数の中間ケーシングと、
前記複数の中間ケーシングの外側を取り囲み、前記複数の中間ケーシングの外側に環状流路を形成する外ケーシングと、
前記環状流路を横切って、前記複数の中間ケーシングの少なくとも一つと、前記外ケーシングとを接続する振動伝播機構と、を備え
前記振動伝播機構は、
前記中間ケーシング及び前記外ケーシングのいずれか一方に設けられ、前記中間ケーシング及び前記外ケーシングの他方に向かって延びる突起部と、
前記中間ケーシング及び前記外ケーシングの他方に設けられ、前記突起部の先端部が係合する係合溝部と、を備え、
前記振動伝播機構と同じ高さにセンサ取付部が設けられている、ことを特徴とする立形多段ポンプ。
【請求項2】
前記センサ取付部に取り付けられた振動センサを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の立形多段ポンプ。
【請求項3】
前記センサ取付部は、振動測定をするための目印である、ことを特徴とする請求項1に記載の立形多段ポンプ。
【請求項4】
前記突起部は、板状に形成され、前記環状流路における主流方向と平行に延びている、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の立形多段ポンプ。
【請求項5】
前記複数の中間ケーシングの少なくとも一つに取り付けられ、前記回転軸を軸支する軸受部を備え、
前記振動伝播機構は、前記軸受部を支持する前記中間ケーシングと、前記外ケーシングとを接続している、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の立形多段ポンプ。
【請求項6】
前記複数の中間ケーシングよりも上方に配置され、前記回転軸の周囲を軸封するメカニカルシールを備え、
前記振動伝播機構は、前記メカニカルシールに最も近い最上段の前記中間ケーシングと、前記外ケーシングとを接続している、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の立形多段ポンプ。
【請求項7】
前記複数の中間ケーシングの底部には、それぞれ前記羽根車の吸込口が設けられており、
前記振動伝播機構は、最下段の前記中間ケーシングと、前記外ケーシングとを接続している、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の立形多段ポンプ。
【請求項8】
前記振動伝播機構は、前記回転軸の振動の腹部分に位置する前記中間ケーシングと、前記外ケーシングとを接続している、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の立形多段ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立形多段ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1の図3には、振動センサを含むセンサアセンブリを備えた立形多段ポンプが開示されている。この立形多段ポンプは、回転軸に固定された複数の羽根車と、多段に積み重ねられ、複数の羽根車を収容する複数の中間ケーシングと、複数の中間ケーシングの外側を取り囲み、複数の中間ケーシングの外側に環状流路を形成する外ケーシングと、を備えている。
【0003】
中間ケーシング及び外ケーシングの上部には、モータを支持するブラケット(下記特許文献1ではポンプヘッドと称される)が配置され、そのブラケットにセンサアセンブリを取り付けるためのネジ孔が穿孔されている。センサアセンブリは、ブラケットのネジ孔からケーシングの内部にアクセスし、ポンプハイドロ部(羽根車及び該羽根車を収容する中間ケーシング)の振動などを測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/122016号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記立形多段ポンプでは、センサアセンブリの測定結果に基づき計算を実行し、ポンプハイドロ部における軸受部の故障とキャビテーションの発生などを検知する。しかしながら、センサアセンブリと、測定対象となるポンプハイドロ部との距離が離れており、計算に補正を入れないと、ポンプハイドロ部の異常検知ができない虞があった。この補正計算は、距離補正だけでなく、回転数や流量などのポンプ特性も考慮しなければならず、導き出すことが難しい。
したがって、立形多段ポンプのポンプハイドロ部における振動測定技術は、未だ確立されておらず、ポンプハイドロ部の異常状態での継続運転によって、ポンプの破損を招く可能性があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ポンプハイドロ部の振動を外部から簡単に測定することができる立形多段ポンプの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る立形多段ポンプは、回転軸に固定された複数の羽根車と、多段に積み重ねられ、前記複数の羽根車を収容する複数の中間ケーシングと、前記複数の中間ケーシングの外側を取り囲み、前記複数の中間ケーシングの外側に環状流路を形成する外ケーシングと、前記環状流路を横切って、前記複数の中間ケーシングの少なくとも一つと、前記外ケーシングとを物理的に接続する振動伝播機構と、を備える。
【0008】
上記立形多段ポンプにおいては、前記振動伝播機構は、前記中間ケーシング及び前記外ケーシングのいずれか一方に設けられ、前記中間ケーシング及び前記外ケーシングの他方に向かって延びる突起部と、前記中間ケーシング及び前記外ケーシングの他方に設けられ、前記突起部の先端部が係合する係合溝部と、を備えてもよい。
上記立形多段ポンプにおいては、前記突起部は、板状に形成され、前記環状流路における主流方向と平行に延びていてもよい。
上記立形多段ポンプにおいては、前記複数の中間ケーシングの少なくとも一つに取り付けられ、前記回転軸を軸支する軸受部を備え、前記振動伝播機構は、前記軸受部を支持する前記中間ケーシングと、前記外ケーシングとを物理的に接続していてもよい。
上記立形多段ポンプにおいては、前記複数の中間ケーシングよりも上方に配置され、前記回転軸の周囲を軸封するメカニカルシールを備え、前記振動伝播機構は、前記メカニカルシールに最も近い最上段の前記中間ケーシングと、前記外ケーシングとを物理的に接続していてもよい。
上記立形多段ポンプにおいては、前記複数の中間ケーシングの底部には、それぞれ前記羽根車の吸込口が設けられており、前記振動伝播機構は、最下段の前記中間ケーシングと、前記外ケーシングとを物理的に接続していてもよい。
上記立形多段ポンプにおいては、前記振動伝播機構は、前記回転軸の振動の腹部分に位置する前記中間ケーシングと、前記外ケーシングとを物理的に接続していてもよい。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明の態様によれば、ポンプハイドロ部の振動を外部から簡単に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る立形多段ポンプの全体構成を示す断面図である。
図2】第1実施形態に係る振動伝播機構の構成を示す底面図である。
図3】第1実施形態に係る台座部が設けられた中間ケーシングを示す正面図である。
図4】第1実施形態に係る突起部を示す正面図である。
図5】第1実施形態に係る外ケーシングの外観を示す正面図である。
図6図5に示す矢視A-Aの断面図である。
図7】第2実施形態に係る振動伝播機構の構成を示す底面図である。
図8】第2実施形態に係る突起部が設けられた中間ケーシングを示す正面図である。
図9】第2実施形態に係る突起部を軸方向から見た要部拡大図である。
図10】第2実施形態に係る外ケーシングの外観を示す正面図である。
図11図10に示す矢視B-Bの断面図である。
図12】第3実施形態に係る振動伝播機構の構成を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る立形多段ポンプ1の全体構成を示す断面図である。
図1に示すように、立形多段ポンプ1は、モータ部10と、カップリング部20と、ポンプ部30と、を有する。ポンプ部30は、鉛直方向に延びる回転軸2を有する。以下の説明では、回転軸2の中心軸Oが延びる方向(鉛直方向)を軸方向といい、中心軸Oに直交する方向を径方向といい、中心軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0013】
モータ部10は、ポンプ部30の上方に配置され、カップリング3を介して回転軸2と接続されている。モータ部10は、カップリング部20のブラケット21を介してポンプ部30に支持されている。このモータ部10は、指定の回転数で回転する。なお、モータ部10は、指定の回転数によらず、商用電源でもインバータ使用等によって低高速回転(変速)できる構成であっても構わない。
【0014】
カップリング部20は、カップリング3を囲うブラケット21と、ブラケット21に取り付けられ、カップリング3を覆うガード部材22と、を有する。ブラケット21は、モータ部10が取り付けられる台座部21aと、台座部21aを支持する脚部21bと、脚部21bが立設する蓋部21cと、を有する。台座部21aは、中心軸Oを中心とする環状に形成されている。
【0015】
脚部21bは、台座部21aの下面に、周方向に間隔をあけて接続されている。脚部21b間には、カップリング3が配置されている。ガード部材22は、脚部21b間の空間を閉塞するように、脚部21bに取り付けられている。蓋部21cは、脚部21bの下端と接続され、ポンプ部30の上部を覆っている。蓋部21cは、中心軸Oを中心とする略有頂筒状に形成され、その中心に回転軸2が挿通される挿通孔23が形成されている。
【0016】
挿通孔23には、メカニカルシール24が配設されている。メカニカルシール24は、回転軸2と挿通孔23との隙間を軸封し、ポンプ部30から挿通孔23を介して流体が外部に漏れ出すことを防止する。蓋部21cの挿通孔23よりも径方向外側には、空気抜き栓21c1および呼び水栓21c2が配設されている。回転軸2には、ポンプ部30の内部において、軸方向に間隔をあけて複数の羽根車4が固定されている。
【0017】
羽根車4は、主板5と、側板6と、複数のブレード7と、を有する。主板5は、中心軸Oを中心とする円板状に形成され、回転軸2に固定されている。側板6は、主板5と同軸の環状に形成され、主板5と隙間をあけて配置されている。主板5及び側板6は、複数のブレード7を介して接続されている。主板5、側板6、及び複数のブレード7によって囲まれた空間は、流体を径方向に導く流路となっている。側板6は、羽根車4の吸込口8を形成している。
【0018】
ポンプ部30は、複数の羽根車4を収容する筒状のケーシング31を備えている。ケーシング31は、羽根車4によって流体を昇圧する多段ポンプ室30A(ポンプハイドロ部)を内部に形成している。ケーシング31は、多段に積み重ねられた中間ケーシング31aと、中間ケーシング31aの上部に配置された上部ケーシング31bと、中間ケーシング31aの下部に配置された下部ケーシング31cと、中間ケーシング31a及び上部ケーシング31bの外側に配置された外ケーシング31dと、を有する。
【0019】
中間ケーシング31aは、鋼板などをプレス成形して有底筒状に形成され、その底部中央に回転軸2が挿通される開口が形成されている。中間ケーシング31aは、羽根車4の数に応じて多段に積み重ねられている。中間ケーシング31aの底部下面には、リターンプレート33が溶接により取り付けられている。また、リターンプレート33の下面には、戻し羽根34が溶接により取り付けられている。そして、中間ケーシング31aの底部開口の内壁には、羽根車4の吸込口8の周囲からの流体の漏れを防止するライナリング35が取り付けられている。
【0020】
上部ケーシング31bは、中間ケーシング31aと同様の有底筒状に形成され、中間ケーシング31aの最上段に積み重ねられている。上部ケーシング31bの周壁には、複数の連通孔31b1が形成されている。外ケーシング31dは、中間ケーシング31a及び上部ケーシング31bの径方向外側を囲う円筒状に形成されている。外ケーシング31dは、中間ケーシング31a及び上部ケーシング31bの径方向外側に、連通孔31b1と連通する環状流路30Bを形成している。上部ケーシング31b及び外ケーシング31dの上部は、蓋部21cの下面に配設されたケーシングカバー31eによって覆われている。
【0021】
下部ケーシング31cは、多段ポンプ室30Aの下端の吸込口8に連通する連通空間S1を形成すると共に、外ケーシング31dの内側の上述した環状流路30Bに連通する連通空間S2(第2の連通空間)を形成している。下部ケーシング31cは、連通空間S1を内側に形成する第1フレーム31c1と、第1フレーム31c1の外側を囲い、第1フレーム31c1との間に連通空間S2を形成する第2フレーム31c2と、を有する。
【0022】
第1フレーム31c1は、連通孔31c3が形成された鍔部31c4を備える有底筒状(略皿型)に形成されている。連通孔31c3は、鍔部31c4を軸方向に貫通し、環状流路30Bと連通空間S2とを連通させている。第2フレーム31c2は、第1フレーム31c1を入れ子状に収容する有底筒状に形成されている。第2フレーム31c2の内周面に、第1フレーム31c1の鍔部31c4の外端縁が接することで、第1フレーム31c1の外周面と第2フレーム31c2の内周面との間に隙間(連通空間S2)が形成される。
【0023】
下部ケーシング31cは、水平方向に延びる吸込ノズル36と、同じく水平方向に延びる吐出ノズル37と、を有する。吸込ノズル36は、第2フレーム31c2の周壁を貫通して接合されると共に、第1フレーム31c1の周壁を貫通し、連通空間S1まで延びている。吐出ノズル37は、吸込ノズル36と背中合わせで同一直線上に配置され、第2フレーム31c2の周壁を貫通して接合されると共に、第1フレーム31c1の周壁は貫通せずに、連通空間S2と連通している。
【0024】
下部ケーシング31cの下部には、ポンプ台32が設けられている。ポンプ台32は、カップリング部20のブラケット21と、ケーシングボルト32a及びナット32bによって軸方向に連結されている。ケーシングボルト32a及びナット32bは、周方向に間隔をあけて複数設けられている。複数のケーシングボルト32a及びナット32bの締め付けにより、多段の中間ケーシング31a、上部ケーシング31b、下部ケーシング31c、及びケーシングカバー31eが、軸方向において挟持されている。
【0025】
上記構成のポンプ部30によれば、羽根車4が回転すると、吸込ノズル36から流体が下部ケーシング31cの連通空間S1に吸い込まれる。下部ケーシング31cの連通空間S1に吸い込まれた流体は、多段ポンプ室30Aの下端の吸込口8から1段目の羽根車4に吸い込まれて昇圧される。1段目の羽根車4から吐き出された流体は、戻し羽根34及びリターンプレート33により形成される流路を通って次段の羽根車4の吸込側に導かれる。
【0026】
流体は、複数の羽根車4により多段昇圧された後、上部ケーシング31b内に流入する。上部ケーシング31b内に流入した流体は、連通孔31b1から上部ケーシング31bの外側に形成された環状流路30Bを通って下降し、連通孔31c3を介して連通空間S2に流入する。連通空間S2に流入した流体は、下部ケーシング31cに接続された吐出ノズル37を介して吐出される。
【0027】
このような立形多段ポンプ1には、環状流路30Bを横切って、複数の中間ケーシング31aの少なくとも一つと、外ケーシング31dとを物理的に接続する振動伝播機構40(後述)が設けられている。外ケーシング31dの外周には、振動伝播機構40と同じ高さにセンサ取付部50が設けられている。センサ取付部50は、外ケーシング31dに取り付けられた振動センサであってもよいし、点検作業者などが手持ちの振動センサで振動測定をするための目印(マーキングやシールなど)であってもよい。
【0028】
図2は、第1実施形態に係る振動伝播機構40の構成を示す底面図である。なお、図2においては、中間ケーシング31aの底面側(戻し羽根34側)を軸方向から見ている。
図2に示すように、振動伝播機構40は、中間ケーシング31aに設けられ、外ケーシング31dに向かって延びる突起部41と、外ケーシング31dに設けられ、突起部41の先端部が係合する係合溝部42と、を備えている。
【0029】
突起部41は、軸方向から見てT字状に形成された金属片であり、中間ケーシング31aの外周から径方向外側に延びる板部41aと、中間ケーシング31aの外周に取り付けられる取付部41bと、を備えている。中間ケーシング31aの外周には、突起部41が取り付けられる台座部44が形成されている。突起部41及び台座部44は、周方向に間隔をあけて、中間ケーシング31aの外周に複数(本実施形態では4つ)設けられている。
【0030】
図3は、第1実施形態に係る台座部44が設けられた中間ケーシング31aを示す正面図である。図4は、第1実施形態に係る突起部41を示す正面図である。
図3に示すように、台座部44は、径方向から見た正面視で矩形状に形成されており、複数のネジ孔45が形成されている。また、図4に示すように、突起部41の取付部41bも、径方向から見た正面視で矩形状に形成されており、上述したネジ孔45と同じ配置で、複数の挿通孔41cが形成されている。
【0031】
挿通孔41cには、図2に示すボルト43が挿通され、ボルト43がネジ孔45に螺合することで、突起部41が台座部44に取り付けられる。図2及び図4に示すように、突起部41の板部41aは、環状流路30Bにおける主流方向と平行に延びている。環状流路30Bにおける主流方向とは、上述したように、多段ポンプ室30Aで昇圧された流体が環状流路30Bを下降し、図1に示す連通空間S2に向かう鉛直下方の流れを言う。つまり、板部41aは、軸方向に延び、環状流路30Bにおける鉛直下方の流体の流れを阻害しない姿勢とされている。
【0032】
図5は、第1実施形態に係る外ケーシング31dの外観を示す正面図である。図6は、図5に示す矢視A-Aの断面図である。
外ケーシング31dの外周には、図6に示すように、軸方向から見てコの字(あるいはUの字)状に曲げられ、同図及び図5に示すように、径方向外側に突出した突出部31d1が形成されている。突出部31d1の内側には、上述した突起部41が係合する係合溝部42が形成されている。係合溝部42は、突起部41の板部41aの両面を挟み込む。
【0033】
係合溝部42(突出部31d1)は、上述した突起部41と同数(本実施形態では4つ)、且つ、周方向において同じ配置で形成されている。また、係合溝部42は、図5に示すように、円筒状の外ケーシング31dの軸方向の一端(上端)から他端(下端)まで直線状に延びている。このような係合溝部42を有する外ケーシング31dは、金属板を曲げて、予め突出部31d1を形成した後、その金属板を円筒状に曲げることで形成することができる。
【0034】
上記構成の振動伝播機構40によれば、図1に示すように、中間ケーシング31aと外ケーシング31dとを物理的に接続することができる。つまり、中間ケーシング31aと外ケーシング31dとがメタルタッチ状態となる。また、振動伝播機構40は、中間ケーシング31aの外側に形成された環状流路30Bを横断し、中間ケーシング31aと外ケーシング31dとを短距離で接続している。このため、多段ポンプ室30A(ポンプハイドロ部)で発生した振動が、中間ケーシング31aから突起部41に伝わり、環状流路30Bを流れる流体によってほとんど減衰することなく、突起部41から係合溝部42を介して外ケーシング31dにダイレクトに伝わる。
【0035】
したがって、中間ケーシング31aの振動を、外ケーシング31dの外周に設置したセンサ取付部50から直接測定することができる。また、中間ケーシング31aとセンサ取付部50との距離が近く、振動減衰も殆ど無くなるため、補正計算などを用いることなく、軸受部38の故障やキャビテーションの発生などのポンプハイドロ部の異常検知ができるようになる。
【0036】
このように、上述した本実施形態の立形多段ポンプ1によれば、回転軸2に固定された複数の羽根車4と、多段に積み重ねられ、複数の羽根車4を収容する複数の中間ケーシング31aと、複数の中間ケーシング31aの外側を取り囲み、複数の中間ケーシング31aの外側に環状流路30Bを形成する外ケーシング31dと、環状流路30Bを横切って、複数の中間ケーシング31aの少なくとも一つと、外ケーシング31dとを物理的に接続する振動伝播機構40と、を備える、という構成を採用することによって、多段ポンプ室30A(ポンプハイドロ部)の振動を外部から簡単に測定することができる。
【0037】
また、本実施形態では、図2に示すように、振動伝播機構40は、中間ケーシング31aに設けられ、外ケーシング31dに向かって延びる突起部41と、外ケーシング31dに設けられ、突起部41の先端部が係合する係合溝部42と、を備えている。この構成によれば、突起部41と係合溝部42との接触面積を広く確保でき、中間ケーシング31aの振動を外ケーシング31dに伝播し易くなる。また、係合溝部42が、図5に示すように、レール状に延びることにより、係合溝部42が案内溝となり、外ケーシング31dの内側に、上述した突起部41を備える中間ケーシング31aを組み込み易くなる。また、外ケーシング31dに突出部31d1を設けることにより、吸込ノズル36や吐出ノズル37に接続される配管にかかる荷重や流体の圧力に対する外ケーシング31dの強度が増す。
【0038】
また、本実施形態では、図2及び図4に示すように、突起部41は、板状に形成された板部41aを備え、板部41aが環状流路30Bにおける主流方向と平行に延びている。この構成によれば、突起部41が環状流路30Bにおける鉛直下方の主流方向の流れを阻害しないようにしつつ、当該流れに含まれる旋回流を整流する効果が得られる。このため、中間ケーシング31aや外ケーシング31dなどの摩擦損失を低減することができる。
【0039】
また、本実施形態では、図1に示すように、回転軸2を軸支する軸受部38が取り付けられた中間ケーシング31a1を備え、振動伝播機構40が、軸受部38を支持する中間ケーシング31a1と、外ケーシング31dとを物理的に接続している。この構成によれば、中間ケーシング31a1の振動測定によって、軸受部38の故障などを精度よく検知することができる。
【0040】
また、本実施形態では、図1に示すように、回転軸2の周囲を軸封するメカニカルシール24を備え、振動伝播機構40が、メカニカルシール24に最も近い最上段の中間ケーシング31a2と、外ケーシング31dとを物理的に接続している。この構成によれば、中間ケーシング31a2の振動測定によって、メカニカルシール24の故障などを精度よく検知することができる。
【0041】
また、本実施形態では、図1に示すように、振動伝播機構40が、最下段の中間ケーシング31a3と、外ケーシング31dとを物理的に接続している。最下段の中間ケーシング31a3は、多段ポンプ室30Aの入口を形成し、外部の異物を吸い込み易いため、中間ケーシング31a3の振動測定によって、異物の吸い込みを精度よく検知することができる。
【0042】
また、本実施形態では、図1に示すように、振動伝播機構40が、回転軸2の振動の腹部分に位置する中間ケーシング31a4と、外ケーシング31dとを物理的に接続している。回転軸2の振動の腹部分に位置する中間ケーシング31a4とは、例えば、図1の例では、回転軸2を拘束する軸受部38(振動の節となる)を備える中間ケーシング31a1(例えば2段目)と、回転軸2を拘束するメカニカルシール24(振動の節となる)に最も近い最上段の中間ケーシング31a2(例えば8段目)との中間位置である5段目の中間ケーシング31aを意味する。
【0043】
また、軸受部38を備える中間ケーシング31a1が複数段(例えば1~10段の内、1段目と5段目と9段目に)ある場合には、隣り合う中間ケーシング31a1の中間に位置する中間ケーシング31a(例えば3段目と7段目)が、回転軸2の振動の腹部分に位置する中間ケーシング31a4である。このように、回転軸2の振動の腹部分に位置する中間ケーシング31a4と、外ケーシング31dとを物理的に接続することにより、外ケーシング31dに伝わる振幅を大きくし、ポンプハイドロ部の異常検知が容易に行えるようになる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0045】
図7は、第2実施形態に係る振動伝播機構40の構成を示す底面図である。図8は、第2実施形態に係る突起部41が設けられた中間ケーシング31aを示す正面図である。図9は、第2実施形態に係る突起部41を軸方向から見た要部拡大図である。
これらの図に示すように、第2実施形態に係る振動伝播機構40は、中間ケーシング31aに一体で設けられた突起部41を備えている。
【0046】
第2実施形態の突起部41は、軸方向から見てI字状に形成された金属平板であり、中間ケーシング31aの外周に接合されている。つまり、図9に示すように、突起部41の根本には、中間ケーシング31aとの接合部46(溶接ビード)が形成されている。なお、第2実施形態の中間ケーシング31aには、第1実施形態で説明した台座部44は無い。その他、突起部41の数、及び、周方向における配置などは、第1実施形態と同様である。
【0047】
図10は、第2実施形態に係る外ケーシング31dの外観を示す正面図である。図11は、図10に示す矢視B-Bの断面図である。
これらの図に示すように、第2実施形態に係る係合溝部42は、外ケーシング31dの内周に一体で設けられたレール部材47に形成されている。
【0048】
レール部材47は、軸方向から見てコの字(あるいはUの字)に形成された金属片であり、外ケーシング31dの内周に接合されている。つまり、図11に示すように、レール部材47の根本には、外ケーシング31dとの接合部46(溶接ビード)が形成されている。なお、第2実施形態の外ケーシング31dには、第1実施形態で説明した突出部31d1は無い。その他、係合溝部42(レール部材47)の数、及び、周方向における配置などは、第1実施形態と同様である。
【0049】
上記構成の第2実施形態によれば、第1実施形態と異なり、突起部41の取り付けにボルト43を使用しないので、台座部44の形成が不要になる。このため、中間ケーシング31aを低コストで製作でき、また、ボルト43で突起部41を取り付ける手間がなくなるため、立形多段ポンプ1の組み立て性がよくなる。また、台座部44の形成が不要になることで、環状流路30Bの流路面積が狭くなることもなく、圧力損失も低減できる。また、第2実施形態によれば、外ケーシング31dへのレール部材47の接合により、第1実施形態と異なり、突出部31d1の形成が不要になる。このため、外ケーシング31dを曲げ加工し、係合溝部42を形成する手間がなくなり、また、係合溝部42の寸法精度も容易に高めることができる。さらに、外ケーシング31の内周にレール部材47を接合することにより、吸込ノズル36や吐出ノズル37に接続される配管にかかる荷重や流体の圧力に対する外ケーシング31dの強度を増すこともできる。
【0050】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0051】
図12は、第3実施形態に係る振動伝播機構40の構成を示す底面図である。
図12に示すように、第3実施形態に係る振動伝播機構40は、外ケーシング31dに設けられ、中間ケーシング31aに向かって延びる突起部41と、中間ケーシング31aに設けられ、突起部41の先端部が係合する係合溝部42と、を備えている。つまり、突起部41と係合溝部42の配置が、上述した実施形態と逆になっている。
【0052】
突起部41は、外ケーシング31dの内周から径方向内側に向かって延びている。このような突起部41を有する外ケーシング31dは、金属板を折り曲げて、予め突起部41を形成した後、その突起部41が内側になるように、金属板を円筒状に曲げることで形成することができる。係合溝部42は、レール部材47に形成されている。レール部材47は、軸方向から見てコの字(あるいはUの字)に形成された金属片であり、中間ケーシング31aの外周に接合されている。
【0053】
上記構成の第3実施形態のように、振動伝播機構40の突起部41は、外ケーシング31d側に設けても構わない。また、振動伝播機構40の係合溝部42は、中間ケーシング31a側に設けても構わない。つまり、振動伝播機構40は、中間ケーシング31a及び外ケーシング31dのいずれか一方に設けられ、中間ケーシング31a及び外ケーシング31dの他方に向かって延びる突起部41と、中間ケーシング31a及び外ケーシング31dの他方に設けられ、突起部41の先端部が係合する係合溝部42と、を備えていればよい。なお、突起部41を外ケーシング31dに設けることにより、吸込ノズル36や吐出ノズル37に接続される配管にかかる荷重や流体の圧力に対する外ケーシング31dの強度を増すこともできる。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0055】
例えば、上記実施形態では、振動伝播機構40の突起部41及び係合溝部42を、周方向において間隔をあけて複数設ける形態について説明したが、振動伝播機構40の突起部41及び係合溝部42は、周方向において少なくとも1つあればよい。
【0056】
また、例えば、上記第1実施形態に係る外ケーシング31dは、図5に示すように、径方向外側に突出する突出部31d1を有するため、その外ケーシング31dの上端(ケーシングカバー31e)と下端(下部ケーシング31c)のシールには、突出部31d1の形状に対応した凹凸を有する専用のシールリングを使用するとよい。
なお、ポンプ部30は、下部ケーシング31cに外ケーシング31dを接続し、その後、順次中間ケーシング31aと羽根車4を積み重ねて製造する。このため、突出部31d1(係合溝部42)は、必ずしも外ケーシング31dの下端まで延びていなくてもよく、この場合、外ケーシング31dの下端のシールには、一般的なOリングを使用してもよい。
ちなみに、図10に示す第2実施形態に係る外ケーシング31dの上端、下端には、一般的なOリングを使用することができる。
【0057】
また、例えば、上記実施形態では、振動伝播機構40を、図1に示す中間ケーシング31a1,31a2,31a3,31a4に設ける形態について説明したが、振動伝播機構40は中間ケーシング31aの少なくとも1つに設けられていればよく、また、中間ケーシング31aの全段のそれぞれに設けても構わない。
但し、中間ケーシング31aの全段に振動伝播機構40を設けると、部品点数が増え、また、外ケーシング31dに伝わる振動も複合的になって異常の特定が困難になるため、上述した要所(中間ケーシング31a1,31a2,31a3,31a4)のうちの少なくとも1つに設け、上述した要所以外の中間ケーシング31aには振動伝播機構40を設けないようにすることが好ましい。
【符号の説明】
【0058】
1 立形多段ポンプ
2 回転軸
4 羽根車
8 吸込口
24 メカニカルシール
30A 多段ポンプ室
30B 環状流路
31 ケーシング
31a 中間ケーシング
31a1 中間ケーシング
31a2 中間ケーシング
31a3 中間ケーシング
31a4 中間ケーシング
31d 外ケーシング
38 軸受部
40 振動伝播機構
41 突起部
42 係合溝部
50 センサ取付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12