(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス、これを含むディップ成形用ラテックス組成物およびこれより成形された成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 9/04 20060101AFI20231027BHJP
B29C 41/14 20060101ALI20231027BHJP
B29C 41/36 20060101ALI20231027BHJP
C08F 236/12 20060101ALI20231027BHJP
【FI】
C08L9/04
B29C41/14
B29C41/36
C08F236/12
(21)【出願番号】P 2021562827
(86)(22)【出願日】2021-02-08
(86)【国際出願番号】 KR2021001626
(87)【国際公開番号】W WO2021201416
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0039060
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0039065
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0039067
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0039071
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0039074
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0039076
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0172992
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】オ、スン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ウォン-サン
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】キム、チ-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ヨ、スン-ウク
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ミョン-ス
(72)【発明者】
【氏名】ハ、ト-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、チョン-ス
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-165870(JP,A)
【文献】特開2003-342303(JP,A)
【文献】特開2003-252935(JP,A)
【文献】特開2003-277523(JP,A)
【文献】特開2003-165814(JP,A)
【文献】国際公開第2018/117109(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/170267(WO,A1)
【文献】特開2007-161925(JP,A)
【文献】特開2005-336273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08K
C08L
B29C 41/14
B29C 41/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1および一般式2を満たすカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを含み、
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、共役ジエン系単量体由来の単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の単位およびエチレン性不飽和酸単量体由来の単位を含む、ディップ成形用ラテックス組成物。
[一般式1] 1.0mm
2/s≦CV
0≦3.0mm
2/s
[一般式2] 0.85≦P≦1.0、P=CV
D/CV
0
前記一般式1および一般式2中、CV
0は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスのメチルエチルケトン溶媒に膨潤した状態で測定された毛細管粘度を示し、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを、10%アンモニア水を用いて、pHを8.8~9.1に調節した後、2.55重量%の濃度でメチルエチルケトン(MEK)に溶解し、均一に分散させ、キャノンフェンスケ(Cannon-Fenske routine type、SI Analytics GmbH Type No.520 13)タイプの毛細管粘度計に10mlを入れ、25℃で毛細管を通過するのにかかる時間を測定し、下記数学式2を用いて算出されるものであり、
[数学式2]
CV
0=K×t
(前記数学式2中、Kは、毛細管の定数(mm
2/s
2)であり、tは、毛細管を通過するのにかかった時間(s)である。)
前記CV
Dは、脱膨潤した状態のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの毛細管粘度を示し、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを、10%アンモニア水を用いて、pHを8.8~9.1に調節した後、2.55重量%の濃度でメチルエチルケトン(MEK)に溶解し、均一に分散させた後、ウルトラソニケータを使用して、40分間55kcal~65kcalのエネルギーを加えて脱膨潤させた後、キャノンフェンスケ(Cannon-Fenske routine type、SI Analytics GmbH Type No.520 13)タイプの毛細管粘度計に10mlを入れ、25℃で毛細管を通過するのにかかる時間を測定し、下記数学式8を用いて算出される
[数学式8]
CV
D=K×t
(前記数学式8中、Kは、毛細管の定数(mm
2/s
2)であり、tは、毛細管を通過するのにかかった時間(s)である。)。
【請求項2】
前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよびイソプレンからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和ニトリル系単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリ
ルおよびα-シアノエチルアクリロニトリルからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1または2に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項4】
前記エチレン性不飽和酸単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、スチレンスルホン酸、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチルおよびマレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピルからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項5】
前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエンまたはイソプレンであり、
前記エチレン性不飽和ニトリル系単量体は、アクリロニトリルであり、
前記エチレン性不飽和酸単量体は、メタクリル酸である、請求項1~4のいずれか一項に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項6】
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、エチレン性不飽和単量体由来の単位をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項7】
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の単位15重量%~30重量%、エチレン性不飽和酸単量体由来の単位1.5重量%~5.5重量%および共役ジエン系単量体由来の単位64.5重量%~83.5重量%を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項8】
前記Pは、0.9~1である、請求項1~7のいずれか一項に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項9】
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、下記一般式3および一般式4を満たす、請求項1~8のいずれか一項に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
[一般式3] 5≦M≦20、M=m
1×m
2
[一般式4] 9.2≦pKa≦10.5
前記一般式3中、m
1は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの乾燥フィルムのメチルエチルケトン溶媒に対する不溶解度を示し、m
2は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの乾燥フィルムのメチルエチルケトン溶媒に対する膨潤度を示し、
前記一般式4中、pKaは、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスのエチレン性不飽和酸のイオン化程度を示す。
【請求項10】
前記pKaは、9.5~10.2である、請求項9に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項11】
前記ディップ成形用ラテックス組成物は、架橋剤組成物をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項12】
前記架橋剤組成物は、加硫剤、加硫促進剤、2価陽イオン金属酸化物および多価金属陽イオン化合物からなる群から選択される1種以上を含む、請求項11に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項13】
前記架橋剤組成物は、加硫剤、加硫促進剤および多価金属陽イオン化合物を含む、請求項12に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項14】
前記架橋剤組成物は、多価金属陽イオン化合物を含む、請求項12に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のディップ成形用ラテックス組成物由来の層を含む、成形品。
【請求項16】
前記成形品は、500%モジュラスが4~20.5であり、応力維持率が40%~70%であ
り、
前記500%モジュラスは、ASTM D-412方法に準じて、ダンベル状の試験片を作製し、測定機器U.T.M(Instron社製、3345モデル)を用いて、500mm/minのクロスヘッドスピードで試験片を引っ張った後、伸び率が500%である時の応力であり、
前記応力維持率は、ASTM D-412方法に準じて、ダンベル状の試験片を作製し、測定機器U.T.M(Instron社製、3345モデル)を用いて、試験片を、300mm/minのクロスヘッドスピードで、下記の数学式6により計算された伸び率が100%である時まで引っ張った後、5分間の応力減少を測定し、下記数学式7にしたがって計算される、請求項15に記載の成形品
:
[数学式6]
伸び率(%)=(試験片の伸長後の長さ/試験片の初期の長さ)×100
[数学式7]
応力維持率(%)=(試験片の伸長5分後のロード(load)値)/(試験片の伸長初期のロード(load)値)×100。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年03月31日付けの韓国特許出願第10-2020-0039060号、2020年03月31日付けの韓国特許出願第10-2020-0039067号、2020年03月31日付けの韓国特許出願第10-2020-0039076号、2020年03月31日付けの韓国特許出願第10-2020-0039074号、2020年03月31日付けの韓国特許出願第10-2020-0039065号、2020年03月31日付けの韓国特許出願第10-2020-0039071号および2020年12月11日付けの韓国特許出願第10-2020-0172992号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、高い弾力性と柔らかさ(softness)を有するディップ成形品を製造することができるカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスと、これを含むディップ成形用ラテックス組成物およびこれより成形された成形品に関する。
【0003】
使い捨てゴム手袋は、家事、食品産業、電子産業、医療分野などの様々な分野において使用量が増加している。過去、天然ゴムラテックスをディップ成形して使い捨て手袋を製造していたが、一部のユーザに痛みや発疹などのタンパク質アレルギーの問題が発生した。かかる問題のため、最近、天然ゴムの代わりに、高い引張強度および優れた耐薬品性を有し、且つアレルギーの恐れがないニトリル系ラテックスのディップ成形により製造した使い捨て手袋が脚光を浴びている。
【0004】
しかし、ニトリル系ラテックスを用いたニトリル系ゴム手袋は、天然ゴム手袋に比べて手袋の弾力性と柔らかさ(softness)が劣るため、優れた着用感と長期間着用の際にも密着性の維持が重要な手術用手袋のような用途では依然として天然ゴム手袋の代わりにはなっていない状況である。
【0005】
そのため、手袋の弾力性と柔らかさを同時に改善するための様々な研究がなされてきた。しかし、従来、高い弾力性と優れた着用感を有する手袋の製造に必要なラテックスに関する研究よりも、手袋の製造時にラテックスとともに投入される酸化亜鉛、硫黄および加硫促進剤の割合を変更するか、新たな架橋剤を投入するなどの架橋剤の変化に関する研究が主になされてきた。しかし、かかる架橋剤の変化のみにより弾力性と柔らかさを改善する場合には、手袋の他の物性である引張強度や耐久性などが低下するなどの問題がある。また、過量の硫黄や加硫促進剤を使用する場合、手袋の変色やIV型アレルギーの問題が発生することもある。
【0006】
したがって、ニトリル系手袋の弾力性と柔らかさを同時に改善するためのラテックス自体に関する開発が求められている状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記発明の背景技術で言及した問題を解決するために、ニトリル系ゴム手袋の弾力性と柔らかさを改善するためのカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを含むディップ成形用ラテックス組成物を提供することである。
【0008】
すなわち、本発明は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスのメチルエチルケトン溶媒に膨潤した状態の毛細管粘度(CV0)を1.0mm2/s~3.0mm2/sの範囲に調節し、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスのメチルエチルケトン溶媒に膨潤した状態の毛細管粘度(CV0)と脱膨潤した状態のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの毛細管粘度(CVD)の割合であるPを0.85~1.0の範囲に調節することで、これを含むディップ成形用ラテックス組成物で成形されたニトリル系ゴム手袋の弾力性と柔らかさを改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、下記一般式1および一般式2を満たすカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを含み、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、共役ジエン系単量体由来の単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の単位およびエチレン性不飽和酸単量体由来の単位を含むディップ成形用ラテックス組成物を提供する。
【0010】
【0011】
前記一般式1および一般式2中、CV0は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスのメチルエチルケトン溶媒に膨潤した状態で測定された毛細管粘度を示し、前記CVDは、脱膨潤した状態のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの毛細管粘度を示す。
【0012】
また、本発明は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスおよび架橋剤組成物を含むディップ成形用ラテックス組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記ディップ成形用ラテックス組成物由来の層を含む成形品を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスによると、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスのメチルエチルケトン溶媒に膨潤した状態の毛細管粘度(CV0)を1.0mm2/s~3.0mm2/sの範囲に調節し、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスのメチルエチルケトン溶媒に膨潤した状態の毛細管粘度(CV0)と脱膨潤した状態のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの毛細管粘度(CVD)の割合であるPを0.85~1.0の範囲に調節することで、これより製造された成形品の弾力性と柔らかさを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】KOH投入量によるpH変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の説明および請求の範囲で使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義し得るという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0017】
本発明において、「単量体由来の単位」という用語は、単量体から起因した成分、構造またはその物質自体を指し得、具体的な例として、重合体の重合時に、投入される単量体が重合反応に参加し、重合体内で成す単位を意味し得る。
【0018】
本発明において、「ラテックス」という用語は、重合によって重合された重合体または共重合体が水に分散した形態で存在するものを意味し得、具体的な例として、乳化重合によって重合されたゴム状の重合体またはゴム状の共重合体の微粒子がコロイド状で水に分散した形態で存在するものを意味し得る。
【0019】
本発明において、「由来の層」という用語は、重合体または共重合体から形成された層を指し得、具体的な例として、ディップ成形による成形品の製造時に、重合体または共重合体がディップ成形型上で付着、固定、および/または重合され、重合体または共重合体から形成された層を意味し得る。
【0020】
本発明において、「架橋剤由来の架橋部」という用語は、化合物から起因した成分、構造またはその物質自体を指し得、架橋剤組成物が作用および反応して形成された重合体内、または重合体間の架橋(cross linking)の役割を果たす架橋部(cross linking part)を意味し得る。
【0021】
本発明において、「アルキル」という用語は、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデシルなどのように、炭素原子の直鎖状または分岐状飽和一価炭化水素を意味し得、非置換のものだけでなく、置換基によって置換されたものも含むものを意味し得る。
【0022】
本発明において、「アリール」という用語は、フェニル、ナフタレニル、フルオレニルなどのように、前記定義されたアルキル基の水素原子の1個以上がアリール基で置換されているものを意味し得、非置換のものだけでなく、置換基によって置換されたものも含むものを意味し得る。
【0023】
本発明において、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートとメタクリレートの両方とも可能であることを意味し得る。
【0024】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をより詳細に説明する。
【0025】
本発明によると、成形品の弾力性と柔らかさを改善することができるカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを含むディップ成形用ラテックス組成物が提供される。前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス内のカルボン酸変性ニトリル系共重合体は、共役ジエン系単量体由来の単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の単位およびエチレン性不飽和酸単量体由来の単位を含むことができる。
【0026】
前記共役ジエン系単量体由来の単位を形成する共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよびイソプレンからなる群から選択される1種以上であり得る。具体的な例として、前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエンまたはイソプレンであり得る。
【0027】
前記共役ジエン系単量体由来の単位の含量は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含量に対して、64.5重量%~83.5重量%または67.5重量%~79.5重量%であってもよく、この範囲内で、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品は、弾性が高く、柔らかくて着用感に優れる。
【0028】
前記エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の単位を形成するエチレン性不飽和ニトリル系単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロニトリルおよびα-シアノエチルアクリロニトリルからなる群から選択される1種以上であってもよい。具体的な例として、前記エチレン性不飽和ニトリル系単量体は、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルであり得、より具体的な例として、アクリロニトリルであり得る。
【0029】
前記エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の単位の含量は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含量に対して、15重量%~30重量%または18重量%~28重量%であってもよく、この範囲内で、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品は、弾性が高く、柔らかくて着用感に優れる。
【0030】
前記エチレン性不飽和酸単量体由来の単位を形成するエチレン性不飽和酸単量体は、カルボキシル基、スルホン酸基、酸無水物基といった酸性基を含有するエチレン性不飽和単量体であり得る。具体的な例として、前記エチレン性不飽和酸単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸およびフマル酸などのエチレン性不飽和酸単量体;無水マレイン酸および無水シトラコン酸などのポリカルボン酸無水物;スチレンスルホン酸のようなエチレン性不飽和スルホン酸単量体;フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチルおよびマレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピルなどのエチレン性不飽和ポリカルボン酸部分エステル(partial ester)単量体からなる群から選択される1種以上を含むことができる。より具体的な例として、前記エチレン性不飽和酸単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸およびフマル酸からなる群から選択される1種以上であってもよく、さらに具体的な例として、メタクリル酸であり得る。前記エチレン性不飽和酸単量体は、重合時に、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩などの塩の形態でも使用されることができる。
【0031】
前記エチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位の含量は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含量に対して、1.5重量%~5.5重量%または2.5重量%~4.5重量%であってもよく、この範囲内で、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品は、弾性が高く、柔らかくて着用感に優れる。
【0032】
本発明の前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、共役ジエン系単量体由来の単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の単位およびエチレン性不飽和酸単量体由来の単位の他に、エチレン性不飽和単量体由来の単位を選択的にさらに含むことができる。
【0033】
前記エチレン性不飽和単量体由来の単位を形成する前記エチレン性不飽和単量体は、炭素数1~4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート単量体;スチレン、アリールスチレン、およびビニルナフタレンからなる群から選択されるビニル芳香族単量体;フルオロ(fluoro)エチルビニルエーテルなどのフルオロアルキルビニルエーテル単量体;(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、およびN-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミドからなる群から選択されるエチレン性不飽和アミド単量体;ビニルピリジン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエンなどの非共役ジエン単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸2-シアノエチル、(メタ)アクリル酸1-シアノプロピル、(メタ)アクリル酸2-エチル-6-シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸3-シアノプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリシジル(メタ)アクリレート、およびジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートからなる群から選択されるエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0034】
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体において、エチレン性不飽和単量体由来の単位を選択的に含む場合、前記エチレン性不飽和単量体由来の単位の含量は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含量に対して、0.5重量%~5重量%であってもよく、この範囲内で、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品の引張強度などの特性を改善することができる。
【0035】
本発明の前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの単量体組成は、エチレン性不飽和ニトリル系単量体、エチレン性不飽和酸単量体の含量を最適化することにより、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスで製造した成形品の弾性と柔らかさを改善することを特徴とする。
【0036】
本発明において、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、単量体組成だけでなく、以下に述べる製造方法の工程的な要素を制御することで、今までなかったラテックスの特徴を付与することができる。
【0037】
具体的には、先ず、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの製造方法は、共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル系単量体、エチレン性不飽和酸単量体を重合反応器に投入し、重合する重合工程を有する。
【0038】
前記重合工程は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの主鎖を形成するためのものであり、重合は、乳化重合で実施する。この時の単量体は、前記言及した単量体の種類と含量で重合反応の前に重合反応器に先ず投入する。各単量体は、分割投入、一括投入、または連続投入する方法で投入を実施することができる。例えば、一括投入の場合には、共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル系単量体およびエチレン性不飽和酸単量体を重合反応器に同時に投入することができる。また、分割投入の場合には、前記単量体のうち一部を重合反応器に1次投入し、残りの単量体を重合反応器に2次投入するなどの分割投入により行われることができる。具体的な例として、1次投入においてエチレン性不飽和ニトリル系単量体およびエチレン性不飽和酸単量体を投入し、2次投入において共役ジエン系単量体を投入することができる。
【0039】
また、重合反応の前に単量体を投入する場合、乳化剤、連鎖移動剤などの添加剤と媒質は、前記単量体を投入し、撹拌を開始した後、一括投入または分割投入されることができる。例えば、前記重合反応の前に単量体が一括投入される場合、前記添加剤と媒質は、単量体の投入後に投入されることができ、前記重合反応の前に単量体が分割投入される場合、添加剤と媒質は、単量体の1次投入と2次投入との間に投入されることができる。前記添加剤と媒質の投入の前に単量体を先ず投入し撹拌を行う場合、重合反応の初期の水相に溶解している単量体の組成と量が影響を受けるようになり、かかる影響によって、重合されるカルボン酸変性ニトリル系共重合体の分子量やラテックス粒子内の共重合体の酸の分布が影響を受けるようになる。
【0040】
以降、重合工程は、重合開始剤を投入して重合反応が開始し、前記共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル系単量体およびエチレン性不飽和酸単量体は、重合反応中にそれぞれ、1次、2次および3次、すなわち、単量体の種類に応じてn次に分割投入することもできる。
【0041】
このように、重合反応中に前記単量体の投入時点を調節して分割投入する場合、カルボン酸変性ニトリル系共重合体内の各単量体から由来した単量体由来の単位が形成される時に、各単量体別の反応速度の差による各単量体の分布を均一にすることができ、これにより、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を用いて製造された成形品の物性間のバランスを向上させる効果がある。
【0042】
また、重合反応中に前記単量体を分割投入する場合、乳化剤、連鎖移動剤などの添加剤と媒質も、これに合わせて分割投入することができる。この場合、各単量体の反応速度の差による単量体の分布の制御が容易であり、カルボン酸変性ニトリル系共重合体で製造した成形品の物性間のバランスを向上させる効果がある。
【0043】
前記乳化剤は、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤および両性界面活性剤の群から選択される1種以上を使用することができ、具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩およびアルキルエーテル硫酸エステルからなる群から選択される1種以上の陰イオン界面活性剤であり得る。また、前記乳化剤は、重合工程に投入される全単量体含量100重量部に対して、2重量部~4重量部を投入し、一般的に乳化剤の量が多い場合、カルボン酸変性ニトリル系共重合体粒子の粒子径が小さくなり、安定性が改善するが、これに対し、成形品の製造工程で乳化剤を除去し難くなり、気泡の発生量が多くなって製造が難しくなる。
【0044】
前記連鎖移動剤は、α-メチルスチレンダイマー;t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタンおよびオクチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレンおよび臭化メチレンなどのハロゲン化炭化水素;テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィドおよびジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどの硫黄含有化合物からなる群から選択される1種以上を含むことができる。具体的な例としては、メルカプタン類であり得る。前記連鎖移動剤の投入量は、重合工程で投入する全単量体含量100重量部に対して0.2重量部~0.9重量部であり得る。前記範囲内で、成形品の物性に優れるという効果がある。
【0045】
前記媒質としては、水、具体的な例として、脱イオン水を使用することができる。前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体の重合時に媒質として使用される水は、温度45℃~80℃の水を使用することができる。一般的に、乳化重合は、常温の水を重合水として使用するのに対し、前記高温の水を重合水として使用する場合、水相に溶解している単量体の組成と量、および乳化剤と連鎖移動剤の量が影響を受けるようになり、かかる影響によって、重合されるカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス粒子内の共重合体の酸の分布や共重合体の絡み合い程度が影響を受けるようになる。また、前記媒質の投入量は、重合工程で投入する全単量体含量100重量部に対して、105重量部~140重量部で投入されることができる。
【0046】
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体の重合は、必要に応じて、キレート剤、分散剤、pH調節剤、脱酸素調、粒径調節剤、老化防止剤および酸素捕捉剤などの添加剤をさらに含んで実施されることができる。
【0047】
前記重合反応は、重合開始剤を投入して開始することができる。
【0048】
前記重合開始剤としては、ラジカル開始剤を使用することができ、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素などの無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、p-メタンヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、アセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノールペルオキシド、t-ブチルペルオキシイソブチレートなどの有機過酸化物;およびアゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸(ブタン酸)メチルなどの窒素化合物からなる群から選択される1種以上を使用することができる。具体的な例としては、前記重合開始剤は、無機過酸化物であり得、より具体的には、過硫酸塩開始剤であり得る。また、前記重合開始剤は、重合工程に投入される全単量体含量100重量部に対して、0.1重量部~0.5重量部が投入されることができ、この範囲内で、重合速度を適正水準に維持することができる。
【0049】
ここで、重合開始剤として前記有機過酸化物または前記無機過酸化物を使用する場合、活性化剤と組み合わせて使用することができる。前記活性化剤として、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅などの還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸化合物;またはジメチルアニリンなどのアミン化合物を単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。具体的には、前記活性化剤は、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第一鉄、デキストロース、ピロリン酸ナトリウムおよび亜硫酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上を使用することができる。前記活性化剤の投入量は、重合工程で投入する全単量体含量100重量部に対して、0.05重量部~1重量部であり得、この範囲で、重合速度を適正水準に維持することができる。
【0050】
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体の重合は、5℃~60℃の温度で行い、前記温度範囲で、重合速度を適正水準に維持することができる。
【0051】
また、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体の重合は、重合転化率による初期の反応圧力に対する反応圧力の変化が特定の範囲にあるように調節して重合を行うことができる。具体的には、重合開始時の反応圧力の範囲は、2.0kgf/cm2~2.8kgf/cm2であってもよく、重合転化率1%~45%で、反応圧力は、重合開始反応圧力に対する圧力上昇分の15%以下の範囲で制御され、特に、重合転化率が40%である時の反応圧力が、重合開始時の反応圧力に対する圧力上昇分の5%~10%の範囲を有することができる。
【0052】
重合転化率46%~75%で、反応圧力は、重合開始反応圧力に対する圧力上昇分の5%~70%の範囲で制御され、特に、重合転化率が60%である時の反応圧力が、重合開始時の反応圧力に対する圧力上昇分の30%~65%の範囲を有することができる。
【0053】
重合転化率が76%から重合完了の間で、反応圧力は、重合開始反応圧力に対する圧力上昇分の0%~5%または重合開始反応圧力に対する圧力減少分の0~100%の範囲で制御され、特に、重合転化率が90%である時の反応圧力が、重合開始時の反応圧力に対する圧力減少分の10%以上の範囲に反応圧力を調節することができる。
【0054】
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体の重合反応において、重合転化率は、当業界において通常公知の方法により測定することができる。例えば、一定の時間間隔で反応組成物から所定量の試料を採取し、固形分含量を測定した後、下記の数学式1で重合転化率を計算した。
【0055】
【0056】
前記数学式1中、重量部は、投入する全単量体含量100重量部を基準にしている。区間重合転化率の場合、当該区間まで投入された単量体の重量部および添加剤の重量部を反映して計算することができる。
【0057】
重合転化率による初期の反応圧力に対する反応圧力の変化が前記範囲にあるように調節すると、反応圧力によって、重合反応の進行過程で水相に溶解している単量体の組成と量が影響を受けるようになり、かかる影響によって、重合されるカルボン酸変性ニトリル系共重合体の絡み合い(entanglement)程度やブランチ度が影響を受けるようになる。
【0058】
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの製造方法は、重合反応を終了し、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを取得する工程を含む。重合反応の終了は、重合転化率が85%以上の時点で重合係を冷却するか、重合停止剤、pH調節剤または酸化防止剤を添加することで実施する。
【0059】
また、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの製造方法は、前記反応終了後、脱臭工程による未反応の単量体の除去工程を含むことができる。
【0060】
本発明は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを含むディップ成形用ラテックス組成物を用いて、ディップ成形工程により製造した成形品の物性を柔らかくし、弾性に優れるようにするために、ラテックス自体の物性を改善することができる。具体的には、前記ラテックス内の単量体の組成において、エチレン性ニトリル系単量体とエチレン性不飽和酸単量体の量を最適化し、重合工程において、カルボン酸変性ニトリル系共重合体の絡み合い程度やブランチ度、分子量およびラテックス粒子内の共重合体の酸の分布などを調節してラテックス粒子の構造を最適化した。
【0061】
かかるカルボン酸変性ニトリル系共重合体は、上述の共重合体の組成および重合方法により製造されることができる。本発明において、以下に示す各種のパラメータを使用して、カルボン酸変性ニトリル系共重合体の物性を調節しながら発明者が求める物性を満たすパラメータの数値範囲を定めた。
【0062】
本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは下記一般式1および一般式2を満たすことができる。
【0063】
【0064】
前記一般式1および一般式2中、CV0は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスのメチルエチルケトン溶媒に膨潤した状態で測定された毛細管粘度を示し、前記CVDは、脱膨潤した状態のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの毛細管粘度を示す。
【0065】
前記一般式1中、CV0は、キャノンフェンスケ(Cannon-Fenske routine type、SI Analytics GmbH Type No.520 13)タイプの毛細管粘度計でメチルエチルケトン(methyl ethyl ketone、MEK)溶媒を用いて、pH8.2~9.2の条件で測定したものである。したがって、前記CV0は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスをメチルエチルケトン溶媒に膨潤した状態で測定した毛細管粘度(capillary viscosity)を示す。一般的に、毛細管粘度は、非架橋のポリマーの分子量を測定する手段として使用する。しかし、本発明において、CV0は、かかる一般的な毛細管粘度とは異なり、ラテックス内の共重合体粒子がメチルエチルケトン溶媒に膨潤した状態、すなわち、膨潤状態で測定した毛細管粘度を意味する。したがって、かかるCV0により、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス内の共重合体の分子量だけでなく、メチルエチルケトン溶媒による膨潤に影響を与える要素に関する情報を得ることができ、かかる情報のうち、特に、ラテックス粒子内の共重合体の酸の分布に関する情報を効果的に得ることができる。前記CV0は、0.5~4または1~3であり得る。
【0066】
本発明で求めるディップ成形用ラテックス組成物から製造された成形品が優れた柔らかさを有するようにするためには、カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、できるだけ柔らかく伸びやすい必要があるが、このためには、共重合体の分子量を最適化しなければならない。共重合体の分子量が最適化していないと、共重合体は硬くて堅くなるか、伸び難くなる。また、ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス内のエチレン性不飽和酸単量体由来の単位は、メタルオキシド形態で投入される金属イオンとイオン結合することができるが、かかる金属イオンとの結合程度もディップ成形用ラテックス組成物から製造された成形品の柔らかさに大きな影響を及ぼし得る。金属イオンとの結合程度は、ラテックス粒子内の共重合体の酸の分布のようなラテックス粒子の構造が重要な影響を及ぼし、したがって、最適のラテックス粒子内の共重合体の酸の分布を有するカルボン酸変性ニトリル系共重合体を用いて成形品を製造すると、成形品の柔らかさを向上させることができる。
【0067】
これに対して、本発明のCV0の範囲を満たすカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、適切な水準の共重合体分子量および最適のラテックス粒子内の共重合体の酸の分布を有しており、これをディップ成形用ラテックス組成物として用いる場合に、成形品の物性、特に、柔らかさに優れた成形品を具現することができる。
【0068】
前記一般式2中、CV0は、前記一般式1で説明したとおりに、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスのメチルエチルケトン溶媒に膨潤した状態で測定された毛細管粘度を示し、前記CVDは、脱膨潤(Deswelling)した状態のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの毛細管粘度を示す。
【0069】
具体的には、ラテックス内の共重合体粒子がメチルエチルケトン溶媒に膨潤した状態を膨潤した状態として定義することができ、脱膨潤した状態とは、ラテックス内の共重合体粒子のメチルエチルケトン溶媒に膨潤した部分を除去した状態を意味し、例えば、膨潤した状態のラテックス内の共重合体粒子に所定のエネルギーを加えてメチルエチルケトン溶媒に溶解する部分を除去した状態の場合、脱膨潤した状態であると言える。前記CVDは、pH8.2~9.2の条件で、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスをメチルエチルケトン溶媒に溶解した後、ウルトラソニケータ(Bransonic○R M Mechanical Bath 5800)を使用して、40分間55kcal~65kcalのエネルギーを加えてカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを脱膨潤してから測定した毛細管粘度であり得る。この際、前記毛細管粘度は、キャノンフェンスケ(Cannon-Fenske routine type、SI Analytics GmbH Type No.520 13)タイプの毛細管粘度計を用いて、CV0の測定と同じ方法で測定することができる。
【0070】
また、前記Pは、CV0とCVDの割合を意味し得る。具体的には、Pは、CV0に対するCVDの割合を意味し得、より具体的には、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスのメチルエチルケトン溶媒に膨潤した状態で測定された毛細管粘度に対する脱膨潤した状態のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの毛細管粘度の割合であり得る。前記Pは、0.85~1または0.9~1であり得る。前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスのPの値が前記範囲内の場合、別のエネルギーを加えてカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを脱膨潤させても毛細管粘度の変化が少ないことを意味し得る。これは、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、メチルエチルケトン溶媒に対して溶解される部分が比較的少なく、脱膨潤のときに溶解される部分が離脱し難い構造を有していることを意味し得る。すなわち、ラテックス内の共重合体粒子の絡み合い程度が比較的大きいことと絡み合っている共重合体が解かれ難いラテックス粒子構造を有していることを意味し得る。したがって、かかるPにより、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス内の共重合体の絡み合い(entanglement)程度やブランチ度などのラテックス粒子構造に関する情報を得ることができる。
【0071】
本発明で求めるディップ成形用ラテックス組成物から製造された成形品の弾性、すなわち、応力維持率に優れるためには、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス内の共重合体の絡み合い(entanglement)程度やブランチ度を高めた構造を有するカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスが必要である。これは、ラテックスにゴム本来の弾性を有するようにするための目的として、既存の直鎖(linear chain)のラテックスは、例えば、応力維持率を著しく高める架橋剤で架橋をさせても本来の弾性を有していないため、応力維持率が向上しない。これに対し、高い絡み合い(entanglement)程度やブランチ度を高めた構造を有する本発明のラテックスは、ゴムの弾性を有するようにしたことから、これをディップ成形用ラテックス組成物として用いる場合に、成形品の弾性、すなわち、応力維持率を向上させることができる。
【0072】
したがって、本発明のPの範囲を満たすカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、適切な水準の共重合体の絡み合い(entanglement)程度や絡み合っている共重合体が解かれ難いラテックス粒子構造を有し、これをディップ成形用ラテックス組成物として用いる場合に、成形品の弾性、すなわち、応力維持率を向上させることができる。
【0073】
本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、下記一般式3および一般式4を満たすことができる。
【0074】
【0075】
前記一般式3中、m1は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの乾燥フィルムのメチルエチルケトン溶媒に対する不溶解度を示し、m2は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの乾燥フィルムのメチルエチルケトン溶媒に対する膨潤度を示す。
【0076】
また、前記一般式3中、Mの値は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの乾燥フィルムのメチルエチルケトン溶媒に対する不溶解度と、乾燥フィルムのメチルエチルケトン溶媒に対する膨潤度(swelling index)の乗算で表される値であり、この値は、5.0~20または7~15の範囲を満たし得る。前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの乾燥フィルムのメチルエチルケトン溶媒に対する不溶解度は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスに含まれるカルボン酸変性ニトリル系共重合体の架橋程度を示す指標であり、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの乾燥フィルムのメチルエチルケトン溶媒に対する膨潤度は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスに含まれるカルボン酸変性ニトリル系共重合体のメチルエチルケトン溶媒に対する膨潤性を示す指標である。したがって、この二つの指標の乗算である前記Mにより、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの絡み合い程度やラテックス粒子内の共重合体の酸の分布に関する情報を得ることができる。
【0077】
前記一般式4中、pKaの値は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスのエチレン性不飽和酸のイオン化程度を示す指標であり、これにより、ラテックス粒子内の共重合体の酸の分布に関する情報を得ることができる。かかるpKaの値は、9.2~10.5または9.5~10.2の範囲であり得る。
【0078】
前記MとpKaの範囲を満たすカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、適切な水準の共重合体の絡み合い程度を有し、最適のラテックス粒子内の共重合体の酸の分布を有する。したがって、これをディップ成形用ラテックス組成物として用いる場合、成形品の作製過程で、フローマーク(flow mark)の発生を防止して作業性を向上させることができ、また、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの重合時に、重合安定性を向上させることができる。
【0079】
このように、CV0とP、MとpKaの数値範囲を確認しながらラテックスを製造することで、本発明のラテックスを完成した。
【0080】
本発明の一実施形態によると、前記ディップ成形用ラテックス組成物は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスおよび架橋剤組成物を含むことができる。前記架橋剤組成物は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体に対して、架橋反応により架橋剤由来の架橋部を形成するためのものであり得る。
【0081】
前記架橋剤組成物は、加硫剤、加硫促進剤、2価陽イオン金属酸化物および多価金属陽イオン化合物からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0082】
前記加硫剤は、前記ディップ成形用ラテックス組成物を加硫させるためのものであり、硫黄であり得、具体的な例として、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理された硫黄および不溶性硫黄などの硫黄であり得る。前記加硫剤の含量は、ディップ成形用ラテックス組成物内のカルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含量100重量部に対して、0.3重量部~3重量部であり得、この範囲内で、加硫による架橋能に優れるという効果がある。
【0083】
また、前記加硫促進剤は、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT、2-mercaptobenzothiazole)、2,2-ジチオビスベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド(MBTS、2,2-dithiobisbenzothiazole-2-sulfenamide)、N-シクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド(CBS、N-cyclohexylbenzothiasole-2-sulfenamide)、2-モルホリノチオベンゾチアゾール(MBS、2-morpholinothiobenzothiazole)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM、tetramethylthiuram monosulfide)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD、tetramethylthiuram disulfide)、ジエチルジチオカルバメート亜鉛(ZDEC、zinc diethyldithiocarbamate)、ジ-n-ブチルジチオカルバメート亜鉛(ZDBC、zinc di-n-butyldithiocarbamate)、ジフェニルグアニジン(DPG、diphenylguanidine)およびジ-o-トリルグアニジン(di-o-tolylguanidine)からなる群から選択される1種以上であり得る。前記加硫促進剤の含量は、ディップ成形用ラテックス組成物内のカルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含量100重量部に対して、0.3重量部~3重量部であり得、この範囲内で、加硫による架橋能に優れるという効果がある。
【0084】
また、前記2価陽イオン金属酸化物は、2価陽イオン金属、例えば、Mg、Ca、Zn、SrおよびBaの酸化物からなる群から選択される1種以上を含むことができる。好ましい例として、前記2価陽イオン金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0085】
前記2価陽イオン金属酸化物は、ディップ成形用ラテックス組成物内のカルボン酸変性ニトリル系共重合体のエチレン性不飽和酸単量体の官能基とイオン結合を行い、カルボン酸変性ニトリル系共重合体内、またはカルボン酸変性ニトリル系共重合体間のイオン結合による架橋部を形成するための架橋剤であり得る。前記2価陽イオン金属酸化物の含量は、ディップ成形用ラテックス組成物内のカルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含量100重量部に対して、0.1重量部~3重量部であり得、この範囲内で、イオン結合能に優れ、製造されたディップ成形品の引張強度に優れるという効果がある。
【0086】
また、前記多価金属陽イオン化合物は、+2以上の電荷を有する多価金属陽イオンおよびリガンドからなる群から選択される1種以上含むことができる。
【0087】
前記多価金属陽イオンは、例えば、アルカリ土類金属の多価陽イオンおよび遷移金属の多価陽イオンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0088】
前記リガンドは、前記多価金属陽イオンが徐々に溶出されるようにするためのものであり、アセチルアセトネート、アセチルアセテート、グリコレート、シトレート、タータレート、グルコネートおよびニトリロアセテートからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0089】
具体的な例として、前記多価金属陽イオン化合物は、アセチルアセトネート、アセチルアセテート、グリコレート、シトレート、タータレート、グルコネートおよびニトリロアセテートのような複合陰イオンを含有するアルミニウム化合物であり得る。
【0090】
前記リガンドの使用量は、前記多価金属陽イオン使用量の1当量~3当量であり得る。例えば、前記多価金属陽イオン化合物として、複合陰イオンを含むアルミニウム化合物を使用する場合、前記アルミニウムイオンを徐々に溶出させるリガンドは、アルミニウム使用量の1当量~3当量であり得る。前記のように、多価金属陽イオン化合物をイオン結合または共有結合の架橋剤として用いる場合、酸性溶液での結合弱化を防止することができ、これにより、ディップ成形品の強度低下を防止できる効果がある。また、かかる多価金属陽イオン化合物を含む架橋剤組成物を使用することで、ラテックス粒子内に分布された酸とのイオン結合による架橋をなすことができ、硫黄と加硫促進剤の不在で発生する成形品物性の低下を防止することができる。また、この場合、加硫促進剤の投入なしにディップ成形品の製造が可能であり、加硫促進剤によるユーザの副作用を防止する効果がある。
【0091】
前記多価金属陽イオン化合物の含量は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物100重量部(固形分基準)に対して、0.1重量部~3重量部であり得、この範囲内で、ディップ成形品の強度低下を防止できる効果がある。
【0092】
また、本発明の一実施形態によると、前記ディップ成形用ラテックス組成物は、必要に応じて、分散剤、酸化防止剤、顔料、充填剤、増粘剤、pH調節剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0093】
本発明の一実施形態によると、前記ディップ成形用ラテックス組成物は、一例として、固形分含量(濃度)が5重量%~43重量%であってもよく、この範囲内で、ラテックス運送の効率に優れ、ラテックス粘度の上昇を防止して貯蔵安定性に優れるという効果がある。
【0094】
他の例として、前記ディップ成形用ラテックス組成物は、pHが9~11であってもよく、この範囲内で、ディップ成形品の製造時に、加工性および生産性に優れるという効果がある。前記ディップ成形用ラテックス組成物のpHは、上述のpH調節剤の投入により調節することができる。前記pH調節剤は、一例として、濃度1重量%~10重量%の水酸化カリウム水溶液、または濃度1重量%~50重量%のアンモニア水であり得る。
【0095】
本発明によると、前記ディップ成形用ラテックス組成物由来の層を含む成形品が提供される。前記成形品は、前記ディップ成形用ラテックス組成物をディップ成形して製造されたディップ成形品であり得る。
【0096】
前記成形品を成形するための成形品の製造方法は、前記ディップ成形用ラテックス組成物を、直接浸漬法、アノード(anode)凝着浸漬法、ティーグ(Teague)凝着浸漬法などにより浸漬させるステップを含むことができ、具体的な例として、アノード凝着浸漬法により実施され得、この場合、均一な厚さのディップ成形品を取得できるという利点がある。
【0097】
具体的な例として、前記成形品の製造方法は、ディップ成形型に凝固剤を付着させるステップ(S100)と、前記凝固剤が付着されたディップ成形型にディップ成形用ラテックス組成物を浸漬して、ディップ成形用ラテックス組成物由来の層、すなわち、ディップ成形層を形成させるステップ(S200)と、前記ディップ成形層を加熱して前記ディップ成形用ラテックス組成物を架橋させるステップ(S300)とを含むことができる。
【0098】
前記(S100)ステップは、ディップ成形型に凝固剤を形成させるために、ディップ成形型を凝固剤溶液に浸漬してディップ成形型の表面に凝固剤を付着させるステップであり、前記凝固剤溶液は、凝固剤を水またはアルコールまたはこれらの混合物に溶解させた溶液であり、凝固剤溶液内の凝固剤の含量は、凝固剤溶液の全含量に対して5重量%~45重量%であり得る。
【0099】
前記凝固剤は、一例として、バリウムクロライド、カルシウムクロライド、マグネシウムクロライド、亜鉛クロライドおよびアルミニウムクロライドなどの金属ハライド;バリウムナイトレート、カルシウムナイトレートおよび亜鉛ナイトレートなどの硝酸塩;バリウムアセテート、カルシウムアセテートおよび亜鉛アセテートなどの酢酸塩;およびカルシウムサルフェート、マグネシウムサルフェートおよびアルミニウムサルフェートなどの硫酸塩からなる群から選択される1種以上であってもよく、具体的な例として、カルシウムクロライドまたはカルシウムナイトレートであってもよい。
【0100】
また、前記(S200)ステップは、ディップ成形層を形成させるために、凝固剤を付着させたディップ成形型を、本発明によるディップ成形用ラテックス組成物に浸漬し、取り出して、ディップ成形型にディップ成形層を形成させるステップであり得る。
【0101】
また、前記(S300)ステップは、ディップ成形品を取得するために、ディップ成形型に形成されたディップ成形層を加熱して前記ディップ成形用ラテックス組成物を架橋させ、硬化を行うステップであり得る。
【0102】
以降、加熱処理により、架橋されたディップ成形層をディップ成形型から取り出して、ディップ成形品を取得することができる。
【0103】
前記成形品は、500%モジュラスが4~20.5または5~18.5であり得る。前記500%モジュラスは、成形品を本来の長さの500%まで伸ばすためにどれ位の力が必要であるかを示す値であり、前記範囲内の500%モジュラス値を有する場合、成形品は、優れた柔らかさを有することができる。
【0104】
前記成形品は、応力維持率が40%~70%または40%~65%であり得る。前記応力維持率は、成形品を伸び率100%まで伸ばした時の応力に対して、これを5分間維持した時の応力の値を百分率で示したものであり、前記範囲内の応力維持率を有する場合、成形品は、優れた弾力性を有することができる。
【0105】
本発明の一実施形態によると、前記成形品は、手術用手袋、検査用手袋、産業用手袋および家庭用手袋などの手袋、コンドーム、カテーテル、または健康管理用品であり得る。
【0106】
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明らかであり、これらにのみ本発明の範囲が限定されるものではない。
【0107】
実施例
[実施例1]
<カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの製造>
以下、重量%は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体の主鎖を形成するために投入される全単量体含量に対して記載したものであり、重量部は、投入される単量体の全体100重量部に対して記載したものである。
【0108】
撹拌機が取り付けられた重合反応器にアクリロニトリル23重量%およびメタクリル酸3.5重量%を投入した後、撹拌を開始して混合し、t-ドデシルメルカプタン0.6重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート4.0重量部、70℃の水120重量部を投入した後、1,3-ブタジエン73.5重量%を投入し、2.5kgf/cm2の圧力および40℃の温度で重合開始剤である過硫酸カリウム0.3重量部を投入し、乳化重合を開始した。
【0109】
重合転化率が40%である時点では反応圧力を2.68kgf/cm2に制御し、重合転化率が60%である時点では反応圧力を3.55kgf/cm2に制御し、重合転化率が90%である時点では反応圧力を1.25kgf/cm2に制御した。
【0110】
重合転化率が94%に達すると、重合を停止した。その後、脱臭工程により未反応物を除去し、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加して、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを取得した。
【0111】
<ディップ成形用ラテックス組成物の製造>
前記取得したカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス100重量部(固形分基準)に、硫黄1重量部、ジ-n-ブチルジチオカルバメート亜鉛(ZDBC、zinc di-n-butyldithiocarbamate)1.0重量部、酸化亜鉛1.3重量部および酸化チタン1重量部と水酸化カリウム溶液および2次蒸留水を加えて、固形分濃度30重量%およびpH10.2のディップ成形用ラテックス組成物を取得した。
【0112】
<成形品の製造>
18重量%のカルシウムナイトレート、81.5重量%の水、0.5重量%の湿潤剤(Huntsman Corporation、Teric 320)を混合して凝固剤溶液を製造し、この溶液に手形状のセラミックモールドを13秒間浸漬し、取り出した後、120℃で3分間乾燥し、凝固剤を手形状のモールドに塗布した。
【0113】
次いで、凝固剤が塗布された手形状のモールドを前記取得したディップ成形用ラテックス組成物に13秒間浸漬し取り出した後、80℃で1分間乾燥した後、水または温水に60秒間浸漬した。その後、120℃で20分間架橋させた。架橋されたディップ成形層を手形状のモールドから取り出し、手袋状の成形品を得た。
【0114】
[実施例2]
撹拌機が取り付けられた重合反応器にアクリロニトリル18重量%およびメタクリル酸4.5重量%を投入した後、撹拌を開始して混合し、t-ドデシルメルカプタン0.3重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート3.0重量部、70℃の水130重量部を投入した後、1,3-ブタジエン77.5重量%を投入し、2.7kgf/cm2の圧力および40℃の温度で重合開始剤である過硫酸カリウム0.25重量部を投入し、乳化重合を開始した。
【0115】
重合転化率が40%である時点では反応圧力を2.92kgf/cm2に制御し、重合転化率が60%である時点では反応圧力を4.27kgf/cm2に制御し、重合転化率が90%である時点では反応圧力を1.76kgf/cm2に制御した。
【0116】
重合転化率が96%に達すると、重合を停止した。その後、脱臭工程により未反応物を除去し、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加して、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを取得した。
【0117】
このように得られたカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを用いて、実施例1と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0118】
[実施例3]
撹拌機が取り付けられた重合反応器にアクリロニトリル28重量%およびメタクリル酸2.5重量%を投入した後、撹拌を開始して混合し、t-ドデシルメルカプタン0.8重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート3.0重量部、50℃の水110重量部を投入した後、1,3-ブタジエン69.5重量%を投入し、2.2kgf/cm2の圧力および37℃の温度で重合開始剤である過硫酸カリウム0.35重量部を投入し、乳化重合を開始した。
【0119】
重合転化率が40%である時点では反応圧力を2.38kgf/cm2に制御し、重合転化率が60%である時点では反応圧力を3.17kgf/cm2に制御し、重合転化率が90%である時点では反応圧力を1.76kgf/cm2に制御した。
【0120】
重合転化率が94%に達すると、重合を停止した。その後、脱臭工程により未反応物を除去し、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加して、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを取得した。
【0121】
このように得られたカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを用いて、実施例1と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0122】
[実施例4]
撹拌機が取り付けられた重合反応器にアクリロニトリル25重量%およびメタクリル酸4.1重量%を投入した後、撹拌を開始して混合し、t-ドデシルメルカプタン0.3重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート2.5重量部、55℃の水140重量部を投入した後、1,3-ブタジエン70.9重量%を投入し、2.4kgf/cm2の圧力および40℃の温度で重合開始剤である過硫酸カリウム0.2重量部を投入し、乳化重合を開始した。
【0123】
重合転化率が40%である時点では反応圧力を2.52kgf/cm2に制御し、重合転化率が60%である時点では反応圧力を3.12kgf/cm2に制御し、重合転化率が90%である時点では反応圧力を0.24kgf/cm2に制御した。
【0124】
重合転化率が96%に達すると、重合を停止した。その後、脱臭工程により未反応物を除去し、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加して、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを取得した。
【0125】
このように得られたカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを用いて、実施例1と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0126】
[実施例5]
撹拌機が取り付けられた重合反応器にアクリロニトリル21重量%およびメタクリル酸2.9重量%を投入した後、撹拌を開始して混合し、t-ドデシルメルカプタン0.6重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート3.5重量部、75℃の水110重量部を投入した後、1,3-ブタジエン76.1重量%を投入し、2.6kgf/cm2の圧力および39℃の温度で重合開始剤である過硫酸カリウム0.3重量部を投入し、乳化重合を開始した。
【0127】
重合転化率が40%である時点では反応圧力を2.86kgf/cm2に制御し、重合転化率が60%である時点では反応圧力を4.29kgf/cm2に制御し、重合転化率が90%である時点では反応圧力を2.34kgf/cm2に制御した。
【0128】
重合転化率が95%に達すると、重合を停止した。その後、脱臭工程により未反応物を除去し、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加して、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを取得した。
【0129】
このように得られたカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを用いて、実施例1と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0130】
[実施例6]
撹拌機が取り付けられた重合反応器にアクリロニトリル28重量%およびメタクリル酸4.5重量%を投入した後、撹拌を開始して混合し、t-ドデシルメルカプタン0.25重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート3.0重量部、60℃の水110重量部を投入した後、1,3-ブタジエン67.5重量%を投入し、2.0kgf/cm2の圧力および36℃の温度で重合開始剤である過硫酸カリウム0.45重量部を投入し、乳化重合を開始した。
【0131】
重合転化率が40%である時点では反応圧力を2.2kgf/cm2に制御し、重合転化率が60%である時点では反応圧力を2.6kgf/cm2に制御し、重合転化率が90%である時点では反応圧力を1.8kgf/cm2に制御した。
【0132】
重合転化率が97%に達すると、重合を停止した。その後、脱臭工程により未反応物を除去し、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加して、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを取得した。
【0133】
このように得られたカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを用いて、実施例1と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0134】
[実施例7]
撹拌機が取り付けられた重合反応器にアクリロニトリル18重量%およびメタクリル酸2.5重量%を投入した後、撹拌を開始して混合し、t-ドデシルメルカプタン0.5重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート3.5重量部、65℃の水120重量部を投入した後、1,3-ブタジエン79.5重量%を投入し、2.8kgf/cm2の圧力および41℃の温度で重合開始剤である過硫酸カリウム0.15重量部を投入し、乳化重合を開始した。
【0135】
重合転化率が40%である時点では反応圧力を2.94kgf/cm2に制御し、重合転化率が60%である時点では反応圧力を4.62kgf/cm2に制御し、重合転化率が90%である時点では反応圧力を0.14kgf/cm2に制御した。
【0136】
重合転化率が94%に達すると、重合を停止した。その後、脱臭工程により未反応物を除去し、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加して、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを取得した。
【0137】
このように得られたカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを用いて、実施例1と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0138】
[実施例8]
撹拌機が取り付けられた重合反応器にアクリロニトリル26重量%およびメタクリル酸4重量%を投入した後、撹拌を開始して混合し、t-ドデシルメルカプタン0.6重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート3.5重量部、60℃の水120重量部を投入した後、イソプレン70重量%を投入し、2.4kgf/cm2の圧力および41℃の温度で重合開始剤である過硫酸カリウム0.3重量部を投入し、乳化重合を開始した。
【0139】
重合転化率が40%である時点では反応圧力を2.57kgf/cm2に制御し、重合転化率が60%である時点では反応圧力を3.43kgf/cm2に制御し、重合転化率が90%である時点では反応圧力を1.32kgf/cm2に制御した。
【0140】
重合転化率が94%に達すると、重合を停止した。その後、脱臭工程により未反応物を除去し、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加して、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを取得した。
【0141】
このように得られたカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを用いて、実施例1と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0142】
[実施例9]
前記実施例1で、前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、酸化亜鉛1.3重量部の代わりに、アルミニウムシトレート1重量部を投入した以外は、実施例1と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0143】
[実施例10]
前記実施例4で、前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、酸化亜鉛1.3重量部の代わりに、アルミニウムシトレート1重量部を投入した以外は、実施例4と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0144】
[実施例11]
前記実施例5で、前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、酸化亜鉛1.3重量部の代わりに、アルミニウムシトレート1重量部を投入した以外は、実施例5と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0145】
[実施例12]
前記実施例6で、前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、酸化亜鉛1.3重量部の代わりに、アルミニウムシトレート1重量部を投入した以外は、実施例6と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0146】
[実施例13]
前記実施例7で、前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、酸化亜鉛1.3重量部の代わりに、アルミニウムシトレート1重量部を投入した以外は、実施例7と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0147】
[実施例14]
前記実施例1で、前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、硫黄1重量部、ジ-n-ブチルジチオカルバメート亜鉛1.0重量部および酸化亜鉛1.3重量部の代わりに、アルミニウムシトレート2重量部を投入した以外は、実施例1と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0148】
[実施例15]
前記実施例4で、硫黄1重量部、ジ-n-ブチルジチオカルバメート亜鉛1.0重量部および酸化亜鉛1.3重量部の代わりに、アルミニウムシトレート2重量部を投入した以外は、実施例4と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0149】
[実施例16]
前記実施例5で、前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、硫黄1重量部、ジ-n-ブチルジチオカルバメート亜鉛1.0重量部および酸化亜鉛1.3重量部の代わりに、アルミニウムシトレート2重量部を投入した以外は、実施例5と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0150】
[実施例17]
前記実施例6で、前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、硫黄1重量部、ジ-n-ブチルジチオカルバメート亜鉛1.0重量部および酸化亜鉛1.3重量部の代わりに、アルミニウムシトレート2重量部を投入した以外は、実施例6と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0151】
[実施例18]
前記実施例7で、前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、硫黄1重量部、ジ-n-ブチルジチオカルバメート亜鉛1.0重量部および酸化亜鉛1.3重量部の代わりに、アルミニウムシトレート2重量部を投入した以外は、実施例7と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0152】
比較例
[比較例1]
撹拌機が取り付けられた重合反応器にt-ドデシルメルカプタン0.25重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート4.0重量部、60℃の水140重量部を投入した後、撹拌を開始して混合し、アクリロニトリル14重量%、メタクリル酸6重量%および1,3-ブタジエン80重量%を投入し、3.5kgf/cm2の圧力および41℃の温度で重合開始剤である過硫酸カリウム0.45重量部を投入して乳化重合を開始した。
【0153】
重合転化率が40%である時点では反応圧力を4.06kgf/cm2に制御し、重合転化率が60%である時点では反応圧力を4.13kgf/cm2に制御し、重合転化率が90%である時点では反応圧力を3.71kgf/cm2に制御した。
【0154】
重合転化率が97%に達すると、重合を停止した。その後、脱臭工程により未反応物を除去し、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加して、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを取得した。
【0155】
このように得られたカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを用いて、実施例1と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0156】
[比較例2]
撹拌機が取り付けられた重合反応器にアクリロニトリル25重量%およびメタクリル酸4.1重量%を投入し、t-ドデシルメルカプタン0.3重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート2.5重量部、55℃の水140重量部を投入した後、1,3-ブタジエン70.9重量%を投入し、2.9kgf/cm2の圧力および40℃の温度で重合開始剤である過硫酸カリウム0.2重量部を投入し、撹拌を開始しながら乳化重合を開始した。
【0157】
重合転化率が40%である時点では反応圧力を3.34kgf/cm2に制御し、重合転化率が60%である時点では反応圧力を3.68kgf/cm2に制御し、重合転化率が90%である時点では反応圧力を2.81kgf/cm2に制御した。
【0158】
重合転化率が96%に達すると、重合を停止した。その後、脱臭工程により未反応物を除去し、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加して、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを取得した。
【0159】
このように得られたカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを用いて、実施例1と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0160】
[比較例3]
撹拌機が取り付けられた重合反応器にアクリロニトリル28重量%およびメタクリル酸2.5重量%を投入し、t-ドデシルメルカプタン0.5重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート3.5重量部、65℃の水120重量部を投入した後、1,3-ブタジエン69.5重量%を投入し、1.9kgf/cm2の圧力および36℃の温度で重合開始剤である過硫酸カリウム0.15重量部を投入し、撹拌を開始しながら乳化重合を開始した。
【0161】
重合転化率が40%である時点では反応圧力を2.2kgf/cm2に制御し、重合転化率が60%である時点では反応圧力を2.7kgf/cm2に制御し、重合転化率が90%である時点では反応圧力を0.95kgf/cm2に制御した。
【0162】
重合転化率が94%に達すると、重合を停止した。その後、脱臭工程により未反応物を除去し、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加して、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを取得した。
【0163】
このように得られたカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを用いて、実施例1と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0164】
[比較例4]
撹拌機が取り付けられた重合反応器にアクリロニトリル21重量%およびメタクリル酸2.9重量%を投入し、t-ドデシルメルカプタン0.25重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート3.0重量部、60℃の水110重量部を投入した後、1,3-ブタジエン76.1重量%を投入し、3.0kgf/cm2の圧力および41℃の温度で重合開始剤である過硫酸カリウム0.45重量部を投入し、撹拌を開始しながら乳化重合を開始した。
【0165】
重合転化率が40%である時点では反応圧力を3.15kgf/cm2に制御し、重合転化率が60%である時点では反応圧力を3.3kgf/cm2に制御し、重合転化率が90%である時点では反応圧力を0.9kgf/cm2に制御した。
【0166】
重合転化率が97%に達すると、重合を停止した。その後、脱臭工程により未反応物を除去し、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加して、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを取得した。
【0167】
このように得られたカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを用いて、実施例1と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0168】
[比較例5]
撹拌機が取り付けられた重合反応器にアクリロニトリル18重量%およびメタクリル酸4.5重量%を投入し、t-ドデシルメルカプタン0.6重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート3.5重量部、75℃の水110重量部を投入した後、1,3-ブタジエン77.5重量%を投入し、3.3kgf/cm2の圧力および41℃の温度で重合開始剤である過硫酸カリウム0.3重量部を投入し、撹拌を開始しながら乳化重合を開始した。
【0169】
重合転化率が40%である時点では反応圧力を3.53kgf/cm2に制御し、重合転化率が60%である時点では反応圧力を4.69kgf/cm2に制御し、重合転化率が90%である時点では反応圧力を3.5kgf/cm2に制御した。
【0170】
重合転化率が95%に達すると、重合を停止した。その後、脱臭工程により未反応物を除去し、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加して、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを取得した。
【0171】
このように得られたカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを用いて、実施例1と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0172】
[比較例6]
撹拌機が取り付けられた重合反応器にt-ドデシルメルカプタン0.25重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート3.0重量部、60℃の水110重量部を投入した後、撹拌を開始して混合し、アクリロニトリル31重量%およびメタクリル酸6重量%を投入した後、1,3-ブタジエン63重量%を投入し、2.0kgf/cm2の圧力および36℃の温度で重合開始剤である過硫酸カリウム0.45重量部を投入し、撹拌を開始しながら乳化重合を開始した。
【0173】
重合転化率が40%である時点では反応圧力を2.2kgf/cm22に制御し、重合転化率が60%である時点では反応圧力を2.6kgf/cm2に制御し、重合転化率が90%である時点では反応圧力を1.8kgf/cm2に制御した。
【0174】
重合転化率が97%に達すると、重合を停止した。その後、脱臭工程により未反応物を除去し、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加して、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを取得した。
【0175】
このように得られたカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを用いて、実施例1と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0176】
[比較例7]
前記比較例1で、前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、酸化亜鉛1.3重量部の代わりに、アルミニウムシトレート1重量部を投入した以外は、比較例1と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0177】
[比較例8]
前記比較例2で、前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、酸化亜鉛1.3重量部の代わりに、アルミニウムシトレート1重量部を投入した以外は、比較例2と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0178】
[比較例9]
前記比較例6で、前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、酸化亜鉛1.3重量部の代わりに、アルミニウムシトレート1重量部を投入した以外は、比較例6と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0179】
[比較例10]
前記比較例1で、前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、硫黄1重量部、ジ-n-ブチルジチオカルバメート亜鉛1.0重量部および酸化亜鉛1.3重量部の代わりに、アルミニウムシトレート2重量部を投入した以外は、比較例1と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0180】
[比較例11]
前記比較例2で、前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、硫黄1重量部、ジ-n-ブチルジチオカルバメート亜鉛1.0重量部および酸化亜鉛1.3重量部の代わりに、アルミニウムシトレート2重量部を投入した以外は、比較例2と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0181】
[比較例12]
前記比較例6で、前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、硫黄1重量部、ジ-n-ブチルジチオカルバメート亜鉛1.0重量部および酸化亜鉛1.3重量部の代わりに、アルミニウムシトレート2重量部を投入した以外は、比較例6と同じ方法でディップ成形用ラテックス組成物および成形品を製造した。
【0182】
実験例
[実験例1]
前記実施例1~8および比較例1~6で製造されたカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの物性を下記のような方法で測定し、下記表1に示した。
【0183】
(1)CV0(mm2/s):固形分44%~47%の各カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを、10%アンモニア水を用いて、pHを8.8~9.1に調節した後、2.55重量%の濃度でメチルエチルケトン(MEK)に溶解し、均一に分散させた。その後、キャノンフェンスケ(Cannon-Fenske routine type、SI Analytics GmbH Type No.520 13)タイプの毛細管粘度計に10mlを入れ、25℃で毛細管を通過するのにかかる時間を測定し、下記数学式2を用いて粘度を計算した。
【0184】
[数学式2]
CV0=K×t
【0185】
前記数学式2中、Kは、毛細管の定数(mm2/s2)であり、tは、毛細管を通過するのにかかった時間(s)である。
【0186】
(2)CVD(mm2/s)、P:固形分44%~47%の各カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを、10%アンモニア水を用いて、pHを8.8~9.1に調節した後、2.55重量%の濃度でメチルエチルケトン(MEK)に溶解し、均一に分散させた。その後、ウルトラソニケータ(Bransonic○R M Mechanical Bath 5800)を使用して、40分間55kcal~65kcalのエネルギーを加えて脱膨潤させた後、キャノンフェンスケ(Cannon-Fenske routine type、SI Analytics GmbH Type No.520 13)タイプの毛細管粘度計に10mlを入れ、25℃で毛細管を通過するのにかかる時間を測定し、前記数学式2を用いて粘度(CVD)を計算した。このように求めた前記CVDをCV0で除してPを測定した。(P=CVD/CV0)
【0187】
(3)M:固形分44%~47%の各カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを、10%アンモニア水を用いて、pHを8.8~9.1に調節した後、キャスト法などで基材上に塗布し、これを130℃~140℃で40分間乾燥させて乾燥フィルムを得て、乾燥フィルムの重量(f1)を測定した。次いで、前記乾燥フィルムをメチルエチルケトンの中に25℃で48時間浸漬した後、浸漬後のフィルムに対して重量(f2)を測定した後、170℃で30分間乾燥し、メチルエチルケトンを除去する。その後、メチルエチルケトン除去後のフィルムに対する重量(f3)を測定し、これらの重量の測定結果から、下記数学式3および一般式4にしたがってメチルエチルケトン溶媒に対する不溶解度(m1)と膨潤度(m2)を測定し、数学式5にしたがってMを測定した。
【0188】
[数学式3]
メチルエチルケトン溶媒に対する不溶解度(m1)=f3/f1
【0189】
[数学式4]
メチルエチルケトン溶媒に対する膨潤度(m2)=(f2-f3)/f3
【0190】
[数学式5]
M=m1×m2
【0191】
(4)pKa:前記実施例1によるカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを脱イオン水を用いて固形分10%に希釈した後、1.25%水酸化カリウム水溶液を用いてpHを12まで増加させた後、50℃で2時間撹拌し、水溶液の中のアンモニアを除去した。得られた希釈液を常温まで冷却した後、1%に希釈した塩酸水溶液を用いてpHを2以下に下げた後、50℃の温度で2時間撹拌した。その後、水溶液の中の二酸化炭素を除去し、得られた希釈液を常温まで冷却した後、濃度が正確な3%水酸化カリウム水溶液を用いて、酸塩基滴定グラフを得た。その結果は、下記
図1および
図2に示した。
図1はKOH投入量によるpH変化を示すグラフであり、
図1の1次変曲点と2次変曲点との間のKOH投入量で計算したカルボン酸の量が表面に存在する酸の量である。
図2はpHによるKOHの投入量の微分曲線であり、この二次関数の頂点に相当するものが、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスのpKaである。また、残りの実施例2~8および比較例1~6によるカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスに対しても、同じ方法でPKaを確認した。
【0192】
【0193】
前記表1を参照すると、実施例1~実施例8の場合、本発明によるカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、工程的な要素を制御することで、重合工程において、カルボン酸変性ニトリル系共重合体の絡み合い程度やブランチ度、分子量およびラテックス粒子内の共重合体の酸の分布などを調節してラテックス粒子の構造を最適化することでラテックス自体の物性を改善し、これにより、CV0が1.0~3.0の範囲であり、Pの値が0.85~1の範囲を満たすことを確認することができた。
【0194】
これに対し、比較例1~比較例6の場合、本発明のようにラテックス粒子の構造を最適化することができなかったため、ラテックスの物性の改善が困難であった。
【0195】
[実験例2]
前記実施例1~8および比較例1~6で製造された成形品の物性を下記のような方法で測定し、下記表2に示した。
【0196】
(1)500%モジュラス(MPa):成形品からASTM D-412方法に準じて、ダンベル状の試験片を作製し、測定機器U.T.M(Instron社製、3345モデル)を用いて、500mm/minのクロスヘッドスピードで試験片を引っ張った後、伸び率が500%である時の応力を測定した。
【0197】
(2)応力維持率(%):成形品からASTM D-412方法に準じて、ダンベル状の試験片を作製し、測定機器U.T.M(Instron社製、3345モデル)を用いて、試験片を、300mm/minのクロスヘッドスピードで、下記の数学式6により計算された伸び率が100%である時まで引っ張った後、5分間の応力減少を測定し、下記数学式7にしたがって計算した。
【0198】
[数学式6]
伸び率(%)=(試験片の伸長後の長さ/試験片の初期の長さ)×100
【0199】
[数学式7]
応力維持率(%)=(試験片の伸長5分後のロード(load)値)/(試験片の伸長初期のロード(load)値)×100
【0200】
【0201】
前記表2において、Sは、硫黄、ZDBCは、ジ-n-ブチルジチオカルバメート亜鉛、ZnOは、酸化亜鉛、Alは、アルミニウムシトレート、TiO2は、酸化チタンを意味する。
【0202】
前記表2を参照すると、実施例1~実施例8の場合、本発明によるカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを含むディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品は応力維持率が高く、500% モジュラス値が低く、弾性と柔らかさがいずれも改善したことを確認することができた。
【0203】
一方、比較例1~比較例6の場合、本発明のように改善することができなかったカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを含むディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品として、応力維持率と500%モジュラス値が実施例に比べて著しく低下したことを確認することができた。
【0204】
また、比較例6の場合、本発明のように改善することができなかったカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを含むディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品として、伸び率が500%未満に測定され、500%モジュラス値を測定することができなかった。
【0205】
[実験例3]
架橋剤の変化による成形品の物性変化を示すための前記実施例9~18および比較例7~12で製造された成形品の物性を、前記実験例2と同じ方法で測定し、下記表3に示した。
【0206】
【0207】
前記表3を参照すると、実施例9~18の場合、架橋剤の組成を異ならせた場合にも、本発明によるカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを含むディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品の500%モジュラスと応力維持率がいずれも改善したことを確認することができた。
【0208】
一方、比較例7~比較例12の場合、本発明のように改善することができなかったカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを含むディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品であり、架橋剤の組成を異ならせても、応力維持率と500%モジュラス値が、実施例に比べて著しく低下したことを確認することができた。