(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】水分測定システム
(51)【国際特許分類】
G01N 22/04 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
G01N22/04 Z
(21)【出願番号】P 2020026110
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】窪田 隆博
(72)【発明者】
【氏名】今田 潤司
(72)【発明者】
【氏名】真島 浩
(72)【発明者】
【氏名】堀部 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】昆 盛太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡部 謙一
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-052647(JP,U)
【文献】特開昭51-115896(JP,A)
【文献】特開2019-178844(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0138956(US,A1)
【文献】特開2015-161597(JP,A)
【文献】特開2001-124706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N22/00-G01N22/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種成分を含む可燃物に対して
100MHz~1GHzの周波数を含む電磁波を照射する照射部と、
前記電磁波の反射波を検出する検出部と、
前記反射波に基づいて前記可燃物の水分率を算出する水分率算出部と、
前記可燃物から見て、前記照射部及び前記検出部と反対側に設けられた反射壁と、
を備え、
前記照射部及び前記検出部は、前記可燃物に対して一方側に配置されるとともに、前記可燃物に対向して一体的に構成され、
前記照射部は、前記可燃物が上方から投入される投入部
より上方に、前記投入部の上方に位置する空間に向けて前記電磁波が照射可能に配置され、
前記水分率算出部は、前記可燃物が存在しない条件下で取得された基準データに対する前記反射波の変化量に基づいて、前記水分率を算出する、水分測定システム。
【請求項2】
前記反射壁は、前記電磁波の照射方向に対して略垂直な反射平面を有する、請求項
1に記載の水分測定システム。
【請求項3】
前記反射壁は、前記検出部との距離を半径とする反射曲面を有する、請求項
1に記載の水分測定システム。
【請求項4】
前記水分率算出部は、前記可燃物及び前記反射壁からの前記反射波に基づいて前記水分率を算出する、請求項1から
3のいずれか一項に記載の水分測定システム。
【請求項5】
前記照射部及び前記検出部は、前記可燃物に対向する開口部を有するホーンとして一体的に構成され、前記開口部の寸法、及び、前記電磁波の照射方向における前記ホーンの長さは、前記反射波の前記電磁波に対する利得が基準値以上になるように設定される、請求項1から
4のいずれか一項に記載の水分測定システム。
【請求項6】
前記水分率算出部は、前記反射波の振幅及び位相に基づいて前記水分率を算出する、請求項1から
5のいずれか一項に記載の水分測定システム。
【請求項7】
前記可燃物の重量を検出する重量検出部と、
前記重量と前記水分率とに基づいて前記可燃物に含まれる水分量を算出する水分量算出部と、
を備える、請求項1から
6のいずれか一項に記載の水分測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数種成分を含む可燃物の水分率を測定するための、水分測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な成分が混在した廃棄物、バイオマス、石炭等の可燃物を燃焼するための燃焼炉では、投入される可燃物に含まれる水分量を把握することが重要である。従来、可燃物に含まれる水分量は、熟練作業者の経験や目視による判断に依存していた。そのため、可燃物を実際に燃焼炉に投入した際に予想と異なる燃焼変動が発生した場合には、燃焼変動の確認後、調整作業を実施しなければならないなど、燃焼の安定性に課題があった。
【0003】
燃焼炉における燃焼を安定化するために、燃焼炉に投入される可燃物に含まれる水分量を予め定量的に把握することが望まれている。例えば特許文献1では、マイクロストリップラインのような小型基板を含むセンサを用いた水分量の計測技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、マイクロストリップラインのような小型基板を含むセンサを用いて水分量の計測を行っている。しかしながら、マイクロストリップラインでは、水分量を計測可能な範囲は、基板表面からごく限られた距離に限定される。そのため、例えば燃焼炉に廃棄物を投入するためのホッパ近傍のように、比較的大きな空間を測定対象とする用途には適用が困難である。
【0006】
本発明の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、複数種成分を含む可燃物の水分測定を広範囲にわたって実施可能な水分測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る水分測定システムは上記課題を解決するために、
複数種成分を含む可燃物に対して電磁波を照射する照射部と、
前記電磁波の反射波を検出する検出部と、
前記反射波に基づいて前記可燃物の水分率を算出する水分率算出部と、
前記可燃物から見て、前記照射部及び前記検出部と反対側に設けられた反射壁と、
を備え、
前記照射部及び前記検出部は、前記可燃物に対して一方側に配置されるとともに、前記可燃物に対向して一体的に構成され、
前記水分率算出部は、前記可燃物が存在しない条件下で取得された基準データに対する前記反射波の変化量に基づいて、前記水分率を算出するよう構成される。
【0008】
上記(1)の構成によれば、照射部及び検出部を可燃物の一方側に配置することで、照射部から照射された電磁波によって生じた反射波が、効率的に検出部で検出可能に構成されるとともに、可燃物が存在しない条件下で、いわゆるバックグランドとして基準データが取得される。そして、測定対象となる可燃物がある状況において、当該基準データからの変化量を測定することで、バックグランドの影響を排除した精度のよい水分率の測定が可能となる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では上記(1)の構成において、
前記照射部及び前記検出部は、前記可燃物の投入部近傍に設置される。
【0010】
上記(2)の構成によれば、水分測定システムの設置の自由度が向上する。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では上記(1)又は(2)の構成において、
前記反射壁が可燃物置場の床である。
【0012】
上記(3)の構成によれば、既存の構造物を反射壁として利用できるので、新たに反射壁を設置する必要がなくなる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では上記(1)から(3)のいずれか一項の構成において、
前記反射壁は、前記電磁波の照射方向に対して略垂直な反射平面を有する。
【0014】
上記(4)の構成によれば、このような反射壁を設けることで、照射部からの電磁波を効果的に反射させられる。この場合、反射壁の構成がシンプルであるため、コスト的にも有利である。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では上記(1)から(3)のいずれか一項の構成において、
前記反射壁は、前記検出部との距離を半径とする反射曲面を有する。
【0016】
上記(5)の構成によれば、反射曲面で反射される反射波を検出部に集約できるため、検出部で反射波をより効率的に検出し、より高精度な水分測定が可能である。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では上記(1)から(5)のいずれか一項の構成において、
前記水分率算出部は、前記可燃物及び前記反射壁からの前記反射波に基づいて前記水分率を算出する。
【0018】
上記(6)の構成によれば、可燃物及び前記反射壁から生じた反射波に基づいて水分率の算出するため、より高精度な水分測定が可能である。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では上記(1)から(6)のいずれか一項の構成において、
前記照射部及び前記検出部は、前記可燃物に対向する開口部を有するホーンとして一体的に構成され、前記開口部の寸法、及び、前記電磁波の照射方向における前記ホーンの長さは、前記反射波の前記電磁波に対する利得が基準値以上になるように設定される。
【0020】
上記(7)の構成によれば、可燃物に対向する開口部を有するホーンとして照射部及び検出部を一体的に構成することで、コンパクトな構成で本システムを実現できる。
又、ホーンの開口面積や長さを設計することで、検出部で十分な強度で反射波が得られ、良好な測定精度を実現できる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では上記(1)から(7)のいずれか一項の構成において、
前記電磁波は、100MHz~1GHzの周波数を含む。
【0022】
上記(8)の構成によれば、電磁波の周波数を当該帯域に設定することで、複数種成分が混在する可燃物における水分率を効果的に測定できる。
【0023】
(9)幾つかの実施形態では上記(1)から(8)のいずれか一項の構成において、
前記水分率算出部は、前記反射波の振幅及び位相に基づいて、前記水分率を算出する。
【0024】
上記(9)の構成によれば、例えばベクトルネットワークアナライザなどを用いて、反射波の振幅及び位相の両方に基づいて水分率を算出することで、良好な測定精度が得られる。
【0025】
(10)幾つかの実施形態では上記(1)から(9)のいずれか一項の構成において、
前記可燃物の重量を検出する重量検出部と、
前記重量と前記水分率とに基づいて前記可燃物に含まれる水分量を算出する水分量算出部と、
を備える。
【0026】
上記(10)の構成によれば、可燃物の重量を検出することで、上述のように測定された水分率から、可燃物に含まれる水分量を求めることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、複数種成分を含む可燃物の水分測定を広範囲にわたって実施可能な水分測定システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係る水分測定システムを備える燃焼炉の全体構成図である。
【
図3】様々な水分率を有する可燃物に対して電磁波を照射した際に、電磁波の周波数に対する測定装置の検出信号の推移を示す測定例である。
【
図5】ホーンの各設計パラメータと、水分計測システムの計測範囲との関係を示す特性グラフである。
【
図6】ホーン及び反射壁の位置関係を示す模式図である。
【
図8】測定装置の内部構成を示す機能ブロック図である。
【
図9】様々な可燃物を測定対象として、出力部から出力された水分量を、他の手法で取得された水分量真値と比較して示す実験データである。
【
図10】基準データを取得する際の様子を模式的に示す図である。
【
図11】基準データを取得せずに可燃物の測定をした場合の測定データ(実線〇)と、基準データを取得したのち、可燃物の測定をした場合の測定データ(破線〇)とを比較して示す実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0030】
ここでは本発明に係る水分測定システムの適用対象の一例として、複数種成分を含む可燃物を燃焼するための燃焼炉について説明する。この場合、水分測定対象となる可燃物は、例えば、廃棄物等のごみ、バイオマス燃料、石炭などが含まれる。
【0031】
図1は本発明の一実施形態に係る水分測定システム100を備える燃焼炉1の全体構成図であり、
図2は
図1の領域Aの拡大図である。
【0032】
図1に示すように、燃焼炉1は、燃焼対象である可燃物Sを投入するための投入部2と、投入部2に投入された可燃物Sを燃焼炉本体4に導くホッパ6と、可燃物Sを燃焼するための燃焼炉本体4と、を備える。投入部2は、ホッパ6及び燃焼炉本体4に比べて上方側に設けられており、投入部2に上方から投入された可燃物Sが、ホッパ6を介して、下方側にある燃焼炉本体4に導かれるように構成されている。
【0033】
尚、
図1ではホッパ6が略L字形状を有するように構成されているが、燃焼炉1のレイアウトに応じて任意の形状を有してよい。
【0034】
図2に示すように、投入部2の近傍には、投入部2に投入される可燃物Sを、可燃物置場(不図示)から搬送するためのクレーン装置8が設けられる。クレーン装置8は、開閉可能な爪部10を有しており、爪部10でつかんだ可燃物Sを、可燃物置場(不図示)と投入部2との間で搬送可能に構成されている。爪部10でつかまれた可燃物Sは、投入部2の上方で解放されることで、投入部2に落下して投入される。
【0035】
尚、投入部2は、上方側に向けて広がるように(例えば漏斗状に)構成されることで、クレーン装置8から落下した可燃物Sが周囲に飛散することなく、ホッパ6に導かれるように構成されている。ホッパ6は、投入部2と燃焼炉本体4の入口部とを接続するダクト部材として構成されており、本実施形態では、一例として四角形状の断面積を有している。
【0036】
上記構成を有する燃焼炉1には、投入部2に投入される可燃物Sについて、水分測定を実施するための水分測定システム100が設置されている。水分測定システム100は、投入部2に投入される可燃物Sに対して電磁波を照射する照射部102と、電磁波の反射波を検出する検出部104と、照射部102及び検出部104を制御するとともに水分率の測定を行う測定装置106と、を備える。
本実施形態の照射部102及び検出部104は、ホーン110として一体的に構成される。
【0037】
照射部102は可燃物Sに対して電磁波を照射するとともに、検出部104は照射部102から照射された電磁波によって生じる反射波を検出する。照射部102及び検出部104は、可燃物Sに対して一方側に配置されることにより、照射部102から照射された電磁波が可燃物Sによって反射されることで生じた反射波が検出部104で検出可能になっている。このような照射部102による電磁波の照射、及び、検出部104による反射波の検出は、測定装置106によって管理される。測定装置106は、例えばベクトルネットワークアナライザであり、検出部104から取得した反射波の振幅及び位相を含む検出信号に基づいて、可燃物Sの水分率を測定する。
【0038】
このように照射部102から電磁波を空間に向けて照射するとともに、検出部104で空間からの反射波を検出することで水分測定を行うようにしたため、従来のマイクロストリップラインのような小型基板を用いた手法に比べて、大幅に広い計測範囲を実現することができる。
【0039】
照射部102から照射される電磁波は、100MHz~1GHzの周波数帯域を含むように設定される。可燃物Sは、上述したように、廃棄物等のごみ、バイオマス燃料又は石炭のような複数種成分を含んでいるが、電磁波の周波数を当該帯域に設定することで、複数種成分が混在する可燃物Sに対して、成分判別のような煩雑な作業を行うことなく、水分率を精度よく計測可能である知見が得られた。
【0040】
ここで
図3は様々な水分率を有する可燃物Sに対して電磁波を照射した際に、電磁波の周波数に対する測定装置106の検出信号の推移を示す測定例である。
図3に示すように、100MHz未満の周波数帯域では、水分に対する感度下限を超えてしまい、水分率変化による信号変化を捉えることが難しくなっている。また1GHzより高い周波数帯域では、水分に対する感度が過大となって検出信号が飽和してしまうとともに、外乱ノイズが印加しやすくなることで十分なS/N比の確保が難しくなっている。このような測定結果から、測定装置106で取り扱う電磁波の周波数を100MHz~1GHzの周波数帯域に設定することで、複数種成分を含む可燃物Sについて、精度のよい水分測定が可能となる。
【0041】
ここで
図4は
図1及び
図2のホーン110の外観斜視図である。ホーン110は、可燃物Sに対向する開口部112を有しており、開口部112と反対側では、連結部114を介して、電磁波及び反射波を搬送するための導波管116に連結される。ホーン110は、連結部114から開口部112に向けて次第に開口面積が広がるように形成される。
【0042】
このようなホーン110の形状は、開口部112の寸法(幅a及び高さb)、並びに、長さL(導波管116との連結部114から開口部112までの距離)、連結部114と開口部112との間における開き角θによって特定される。ホーン110の形状を特定するこれらの設計パラメータは、計測範囲(すなわち、開口部112から、どの程度の範囲に分布する可燃物Sを測定対象とするか)に応じて設定される。
【0043】
図5は、ホーン110の各設計パラメータ(a、b、L)と、水分測定システム100の計測範囲との関係を示す特性グラフである。ここで計測範囲は、水分率の算出に必要な利得下限値である基準値10dBを確保可能な領域として定義され、
図5では、長さLの大きさに対応する三種類の異なるシンボルが示されている。
図5に示すように、開口部112の開口面積(幅a×高さb)が大きくなるに従って、ホーン110の計測範囲が大きくなる。また、ホーン110の長さLが開口部112の開口面積が一定であるとすると、ホーン110の長さLが大きくなるに従って開き角θが小さくなるため、指向性が強くなり、計測範囲が狭くなる。一方、ホーン110の長さLが小さくなるに従って開き角θが大きくなるため、指向性が弱くなり、計測範囲が広くなる。
【0044】
図1及び
図2に戻って、投入部2に投入される可燃物Sから見て、ホーン110(照射部102及び検出部104)と反対側には、反射壁120が設置される。ここで
図6はホーン110及び反射壁120の位置関係を示す模式図である。
図6に示すように、投入部2に対する可燃物Sの投入タイミングに応じて、ホーン110(照射部102)からは電磁波が照射される。電磁波は、可燃物Sが存在する大気中を伝播し、可燃物Sによって反射されることによって反射波を生じ、ホーン110(検出部104)で検出される。また可燃物Sを透過した電磁波もまた、反射壁120によって反射されることで、同様に、ホーン110(検出部104)で検出される。このようにホーン110と反対側に反射壁120を設けることで、水分率の算出に必要な反射波を効果的に生じさせることができ、精度の高い水分測定が可能となる。
【0045】
尚、反射壁120は電磁波を反射しやすい材料、例えば、鉄、銅、アルミニウムなどの金属材料から形成される。
【0046】
図7A及び
図7Bは反射壁120の構成例を示す模式図である。
図7Aでは、反射壁120は、ホーン110から照射される電磁波の照射方向に対して略垂直な反射平面120aを有する。この場合、簡易な構成を有する反射壁120により、水分測定に必要な反射波を効果的に生じさせることができる。
【0047】
また
図7Bでは、反射壁120は、ホーン110との距離を半径とする反射曲面120bを有する。この場合、反射曲面120bで反射される反射波がホーン110(検出部104)に集められるため、反射波をより効果的に検出可能となる。
【0048】
図8は、測定装置106の内部構成を示す機能ブロック図である。測定装置106は、検出部104で検出された反射波に基づいて水分率を算出する水分率算出部130と、水分率の算出に必要な各種データを記憶する記憶部132と、測定対象となる可燃物Sの重量を検出する重量検出部134と、水分率及び重量に基づいて可燃物Sの水分量を算出する水分量算出部136と、測定装置106の測定結果を出力する出力部138と、を備える。
【0049】
水分率算出部130は、検出部104で検出された検出信号(反射波の振幅及び位相)に基づいて、可燃物Sの水分率を算出する。検出信号と水分率との関係は、予め記憶部132に検量線データとして記憶されており、水分率算出部130は記憶部132から当該検量線データを読み出すとともに検出部104で得られた検出信号を当該検量線データに適用することで、水分率を算出する。このように水分測定システム100は、複数種成分を含む可燃物Sについて、非接触で単一の検量線データにもとづいて水分測定を実施することができる。
【0050】
尚、記憶部132に用意される検量線データは、例えば、水分量が既知の複数種成分を含む可燃物Sに対して同等の測定を実施し、検出信号と水分率との相関をグラフ化することで作成される。
【0051】
重量検出部134は、可燃物Sの重量を検出する。本実施形態では、投入部2に可燃物Sを投下する際に使用されるクレーン装置8に重量センサ(不図示)が内蔵されており、重量検出部134は当該重量センサの検知結果に基づいて、可燃物Sの重量を特定する。
尚、重量センサは、例えばロードセルなどを用いることができる。
【0052】
水分量算出部136は、水分率算出部130で算出された水分率と、重量検出部134によって検出された重量とに基づいて、可燃物Sに含まれる水分量を算出する。具体的には、水分率に対して重量を乗算することで、可燃物Sに含まれる水分量が求められる。
【0053】
出力部138は、測定装置106の測定結果を出力するデバイスであり、例えばディスプレイである。出力部138に出力される測定結果は、例えば、水分率算出部130で算出された水分率、重量検出部134で検出された可燃物Sの重量、水分量算出部136で算出された水分量である。また出力部138には、このような測定結果に加えて、照射部102から照射される電磁波や検出部104で検出される反射波に関する情報、温度や圧力などの測定環境に関する情報、並びに、他のオペレータにとって有用な各種情報が出力されるようにしてもよい。
【0054】
ここで
図9は、様々な可燃物S1~S9を測定対象として、出力部138から出力された水分量を、他の手法で取得された水分量真値と比較して示す実験データである(ここで水分量真値は、赤外加熱式水分計による測定結果を用いている)。
図9に示すように、出力部138から出力された測定結果である水分量は、水分量真値に対する誤差が±10%以内であり、高い整合性を示している。これにより、本システムによる測定精度が良好であることが示された。
【0055】
また水分率算出部130は、反射波に基づいて水分率を算出する際に、可燃物Sが存在しない条件下で取得された基準データに対する反射波の変化量に基づいて水分率を算出してもよい。
図10は基準データを取得する際の様子を模式的に示す図である。前述の
図2では、クレーン装置8によって可燃物Sを投入部2に投入する際に、投入された可燃物Sに対して電磁波を照射するともに反射波を検出していた。これに対して
図10では、クレーン装置8で可燃物Sを投入することなく、クレーン装置8の動作のみを
図2と同様に実施している状況下で、照射部102から電磁波を照射し、検出部104で反射波を検出することで基準データ(検出信号)を取得している。
【0056】
ここで
図11は、上述の基準データ(検出信号)を取得せずに、可燃物Sに対して電磁波を照射して取得した測定データ(実線〇シンボル)と、上述の基準データ(検出信号)を取得したのち、可燃物Sに対して電磁波を照射して取得した測定データ(破線〇シンボル)とを比較して示す実験結果である。クレーン装置8の爪部10のような金属物が計測範囲の周辺に存在している場合、
図11の測定データ(実線シンボル)に示すように、当該金属物に起因する信号変化のみが捉えられてしまい、可燃物Sによる信号変化を検出することが難しくなる。そのため、水分率算出部130は、可燃物Sが存在しない条件下で基準データを取得し、その後、可燃物Sが投入部2に投入された際に可燃物Sに対して電磁波を照射して測定データを取得することで、基準データからの信号変化を捉える(破線シンボル)。そして水分率算出部130は当該信号変化に基づいて水分率を算出することで、金属物の影響をバックグランドとして排除した精度のよい測定結果を求めることができる。
【0057】
上述の各実施形態は互いに組み合わせることも可能である。
【0058】
以上説明したように上述の実施形態によれば、可燃物Sが存在する空間に対して電磁波を照射することで生じた反射波に基づいて、可燃物Sの水分率が算出される。このように空間に対する電磁波照射を利用することで、広範囲にわたって可燃物Sの水分測定が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の少なくとも一実施形態は、複数種成分を含む可燃物の水分率を測定するための、水分測定システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 燃焼炉
2 投入部
4 燃焼炉本体
6 ホッパ
8 クレーン装置
10 爪部
100 水分測定システム
102 照射部
104 検出部
106 測定装置
110 ホーン
112 開口部
114 連結部
116 導波管
120 反射壁
120a 反射平面
120b 反射曲面
130 水分率算出部
132 記憶部
134 重量検出部
136 水分量算出部
138 出力部