IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ADEKAの特許一覧

特許7374567組成物、硬化物、光学フィルタ及び硬化物の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】組成物、硬化物、光学フィルタ及び硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/68 20060101AFI20231030BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231030BHJP
   C08K 5/34 20060101ALI20231030BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
C08G59/68
C08L63/00 C
C08K5/34
G02B5/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020523099
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2019022022
(87)【国際公開番号】W WO2019235435
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2018107298
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 洋介
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/172145(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/208479(WO,A1)
【文献】特開2018-012839(JP,A)
【文献】特開2011-057838(JP,A)
【文献】特開2011-174036(JP,A)
【文献】国際公開第2019/138953(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59
C08G65
C08L63
C08K
C09B23/01
C09B47/00
G02B5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素と、
カチオン重合性成分と、
酸発生剤と、
を含み、
前記色素が、ピロメテン系色素、シアニン系色素又はテトラアザポルフィリン系色素を含み、
前記色素が、450nm以上550nm未満に最大吸収波長を有するものであり、
前記ピロメテン系色素が、下記一般式(101)で表される化合物であり、
前記シアニン系色素が、下記一般式(102)で表される化合物であり、
前記テトラアザポルフィリン系色素が下記一般式(1)で表される化合物であり、
前記カチオン重合性成分が、エポキシ化合物を含み、
前記エポキシ化合物の含有量は、前記カチオン重合性成分100質量部中に50質量部以上であり、
前記エポキシ化合物が、脂環族エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物を含み、
前記脂環族エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物の合計の含有量が、
前記エポキシ化合物100質量部中に、50質量部以上である、組成物。
【化1】

(式中、R101、R102、R103、R104、R105及びR106は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、スルホ基の塩、炭素原子数1~30の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~30の芳香環含有炭化水素基、炭素原子数3~30の脂肪族複素環基又は炭素原子数3~30の芳香族複素環基を表すか、
101、R102、R103、R104、R105及びR106は、それぞれ独立に、前記脂肪族炭化水素基、前記芳香環含有炭化水素基、前記脂肪族複素環基又は前記芳香族複素環基中の1つ又は2つ以上の水素原子が置換基で置換された基、又は前記脂肪族炭化水素基、前記芳香環含有炭化水素基、前記脂肪族複素環基又は前記芳香族複素環基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NR’’-、>P=O、-S-S-、-SO-又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの組合せた基で置き換わっている基を表し、
R’’は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表し、
前記脂肪族炭化水素基、前記芳香環含有炭化水素基、前記脂肪族複素環基及び前記芳香族複素環基中の水素原子の1つ又は2つ以上を置換する置換基が、エチレン性不飽和基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、置換アミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、ホスホン酸基、リン酸基又はカルボキシル基の塩であり、
101は3価の基を表し、
Mは、ホウ素原子、ベリリウム原子、マグネシウム原子、クロム原子、鉄原子、ニッケル原子、銅原子、亜鉛原子又は白金原子を表し、
MとNとを結ぶ点線は、Nの不対電子がMに配位して形成された配位結合を表すか、又はNとMとの間に結合が存在しないことを表し、
101は、Mと結合する基を表し、
nは1~3の整数を表す。)
【化2】

(式中、Aは下記の群Iの(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)、(k)、(l)及び(m)から選ばれる基を表し、
A’は下記の群IIの(a’)(b’)、(c’)、(d’)、(e’)、(f’)、(g’)、(h’)、(i’)、(j’)、(k’)、(l’)及び(m’)から選ばれる基を表し、
Qはメチン鎖を含む炭素原子数1~9の連結基を表し、該連結基はメチン鎖中に環構造を含んでいてもよく、
Anq-はq価のアニオンを表し、qは1又は2を表し、pは電荷を中性に保つ係数を表す。)
【化3】

(式中、環Cは、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環又はピリジン環を表し、
Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、-CR5152-、炭素原子数3~6のシクロアルカン-1,1-ジイル基、-NH-又は-NY-を表し、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R51及びR52は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メタロセニル基、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ同じであるか又は異なっており、
Y及びYは、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、
rは、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(g)、(h)、(i)、(j)、(l)及び(m)において置換可能な数を表し、
*は、結合手を表す。)
【化4】

(式中、環C’は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環又はピリジン環を表し、
X’は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、-CR5152-、炭素原子数3~6のシクロアルカン-1,1-ジイル基、-NH-又は-NY-を表し、
’、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R51及びR52は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メタロセニル基、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R’及びR’はそれぞれ同じであるか又は異なっており、
Y’及びYは、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、
r’は、(a’)(b’)、(c’)、(d’)、(e’)、(g’)、(h’)、(i’)、(j’)、(l’)及び(m’)において置換可能な数を表し、
*は、結合手を表す。)
【化4A】

(式中、R301、R302、R303、R304、R305、R306、R307及びR308は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数1~30のアルコキシ基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、炭素原子数2~30のヘテロアリール基、又はこれらの基中の水素原子の1つ又は2つ以上が置換基で置換された基を表し、
前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アリール基、前記アリールオキシ基及び前記ヘテロアリール基中の水素原子の1つ又は2つ以上を置換する置換基が、エチレン性不飽和基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、置換アミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、ホスホン酸基、リン酸基又はカルボキシル基の塩であり、
301とR302、R303とR304、R305とR306及びR307とR308は、互いに連結してピロール環の炭素原子を含む脂環構造を形成していてもよく、
301、R302、R303、R304、R305、R306、R307及びR308は同時に水素原子とはならず、
Mは、2個の水素原子、2個の1価の金属原子、2価の金属原子、又は3価若しくは4価の金属化合物を表す。)
【請求項2】
前記色素が、前記組成物の固形分100質量部中に、0.01質量部以上10質量部以下含まれており、
前記カチオン重合性成分が、前記組成物の固形分100質量部中に、50質量部以上含まれており、
前記酸発生剤が、前記組成物の固形分100質量部中に、0.01質量部以上10質量部以下含まれている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記酸発生剤が、下記一般式(2)で表される光酸発生剤を含む請求項1又は2に記載の組成物。
【化5】

(式中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又は炭素原子数2~10のエステル基を表し、
35は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基及び下記式(A)~(C)より選択される何れかの置換基を表し、
An1q1-はq1価の陰イオンを表し、
q1は1又は2の整数を表し、
p1は電荷を中性にする係数を表す。)
【化6】

(式中、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129、R130、R131、R132、R133、R134、R136、R137、R138、R139、R140、R141、R142、R143及びR144、R145、R146、R147、R148及びR149は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又は炭素原子数2~10のエステル基を表し、
*は式(2)中のSとの結合位置を表す。)
【請求項4】
前記組成物が、光学フィルタ用である請求項1~の何れか一項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1~の何れか一項に記載の組成物の硬化物。
【請求項6】
請求項に記載の硬化物を含む光吸収層を有する光学フィルタ。
【請求項7】
請求項1~の何れか一項に記載の組成物を硬化する工程を含む、硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素と、カチオン重合性成分と、酸発生剤とを含む組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特定の光に対して強度の大きい吸収を有する化合物は、CD-R、DVD-R、DVD+R、BD-R等の光学記録媒体の記録層や、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の画像表示装置の光学要素として用いられている。
【0003】
特許文献1には、プラズマディスプレイにおけるリモコン誤動作防止及びプラズマディスプレイで発生するネオンオレンジ光吸収を目的とする光学フィルタ用の組成物として、特定のアクリル系樹脂及び380~780nmに極大吸収を有する色素を含有する樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、短波半導体レーザの発信波長に対して高感度な画像記録材料として、350~850nmに吸収極大を有する増感色素を含有するラジカル重合性の感光性組成物が開示されている。
特許文献3には、固体撮像素子等の光学フィルタの形成に用いられる組成物として、700~1100nmに吸収極大を有するレーキ色素を含有する硬化性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-323819号公報
【文献】特開2006-259558号公報
【文献】特開2007-271745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像表示装置の色再現性を向上させる方法として、各色の発光光の色純度を向上する方法が知られている。
例えば、青色光及び緑色光の重なり領域の波長の光を吸収する光学フィルタを用いることで、画像表示装置は、青色光及び緑色光の色純度向上を図ることができる。
しかしながら、例えば、画像表示装置の青色光及び緑色光の色純度向上を目指して、特許文献1~3に記載の組成物を用いて光学フィルタを形成した場合、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることができない場合がある。
また、そのような低い光吸収性により、青色光及び緑色光の色純度が低下し、画像表示装置の色再現性が低下する不具合等が生じる場合がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を形成可能な組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の色素と、カチオン重合性成分としてエポキシ樹脂等を用いることで、上述の課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本開示は、色素と、カチオン重合性成分と、酸発生剤とを含む組成物を提供する。
【0009】
本発明によれば、上記組成物が、色素、カチオン重合性成分及び酸発生剤を含むことで、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができる。
【0010】
本開示においては、上記色素が、ピロメテン系色素又はシアニン系色素であることが好ましい。上記色素がピロメテン系色素又はシアニン系色素であることで、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるとの効果をより効果的に発揮できるからである。
【0011】
本開示においては、上記ピロメテン系色素が、下記一般式(101)で表される化合物を含み、上記シアニン系色素が、下記一般式(102)で表される化合物であることが好ましい。一般式(101)で表される化合物又は一般式(102)で表される化合物を色素として用いることで、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるからである。
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、R101、R102、R103、R104、R105及びR106は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、スルホ基の塩、炭素原子数1~30の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~30の芳香環含有炭化水素基、炭素原子数3~30の脂肪族複素環基又は炭素原子数3~30の芳香族複素環基を表すか、
101、R102、R103、R104、R105及びR106は、それぞれ独立に、前記脂肪族炭化水素基、前記芳香環含有炭化水素基、前記脂肪族複素環基又は前記芳香族複素環基中の1又は2以上の水素原子が置換基で置換された基、又は前記脂肪族炭化水素基、前記芳香環含有炭化水素基、前記脂肪族複素環基又は前記芳香族複素環基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NR’’-、>P=O、-S-S-、-SO-又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの組合せた基で置き換わっている基を表し、
R’’は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表し、
前記脂肪族炭化水素基、前記芳香環含有炭化水素基、前記脂肪族複素環基及び前記芳香族複素環基中の水素原子の1つ又は2つ以上を置換する置換基が、エチレン性不飽和基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、置換アミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、リン酸基又はカルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、又はリン酸基の塩であり、
101は3価の基を表し、
Mは、ホウ素原子、ベリリウム原子、マグネシウム原子、クロム原子、鉄原子、ニッケル原子、銅原子、亜鉛原子又は白金原子を表し、
MとNとを結ぶ点線は、Nの不対電子がMに配位して形成された配位結合を表すか、又はNとMとの間に結合が存在しないことを表し、
101は、Mと結合する基を表し、
nは1~3の整数を表す。)
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、Aは下記の群Iの(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)、(k)、(l)及び(m)から選ばれる基を表し、
A’は下記の群IIの(a’)(b’)、(c’)、(d’)、(e’)、(f’)、(g’)、(h’)、(i’)、(j’)、(k’)、(l’)及び(m’)から選ばれる基を表し、
Qはメチン鎖を含む炭素原子数1~9の連結基を表し、該連結基はメチン鎖中に環構造を含んでいてもよく、
Anq-はq価のアニオンを表し、qは1又は2を表し、pは電荷を中性に保つ係数を表す。)
【0016】
【化3】
【0017】
(式中、環Cは、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環又はピリジン環を表し、
Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、-CR5152-、炭素原子数3~6のシクロアルカン-1,1-ジイル基、-NH-又は-NY-を表し、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R51及びR52は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メタロセニル基、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ同じであるか又は異なっており、
Y及びYは、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、
rは、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(g)、(h)、(i)、(j)、(l)及び(m)において置換可能な数を表し、
*は、結合手を表す。)
【0018】
【化4】
【0019】
(式中、環C’は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環又はピリジン環を表し、
X’は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、-CR5152-、炭素原子数3~6のシクロアルカン-1,1-ジイル基、-NH-又は-NY-を表し、
’、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R51及びR52は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メタロセニル基、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R’及びR’はそれぞれ同じであるか又は異なっており、
Y’及びYは、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、
r’は、(a’)(b’)、(c’)、(d’)、(e’)、(g’)、(h’)、(i’)、(j’)、(l’)及び(m’)において置換可能な数を表し、
*は、結合手を表す。)
【0020】
本開示においては、上記色素が、450nm以上550nm未満に最大吸収波長を有する色素であることが好ましい。上記色素が上述の色素であることで、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるとの効果をより効果的に発揮できるからである。
【0021】
本開示においては、前記色素がテトラアザポルフィリン系色素を含み、前記テトラアザポルフィリン系色素が下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるとの効果をより効果的に発揮できるからである。
【0022】
【化4A】
【0023】
(式中、R301、R302、R303、R304、R305、R306、R307及びR308は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数1~30のアルコキシ基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、炭素原子数2~30のヘテロアリール基、又はこれらの基中の水素原子の1つ又は2つ以上が置換基で置換された基を表し、
前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アリール基、前記アリールオキシ基及び前記ヘテロアリール基中の水素原子の1つ又は2つ以上を置換する置換基が、エチレン性不飽和基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、置換アミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、リン酸基又はカルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、リン酸基の塩であり、
301とR302、R303とR304、R305とR306及びR307とR308は、互いに連結してピロール環の炭素原子を含む脂環構造を形成していてもよく、
301、R302、R303、R304、R305、R306、R307及びR308は同時に水素原子とはならず、
Mは、2個の水素原子、2個の1価の金属原子、2価の金属原子、又は3価若しくは4価の金属化合物を表す。)
【0024】
本開示においては、前記色素が、前記組成物の固形分100質量部中に、0.01質量部以上10質量部以下含まれており、前記カチオン重合性成分が、前記組成物の固形分100質量部中に、50質量部以上含まれており、前記酸発生剤が、前記組成物の固形分100質量部中に、0.01質量部以上10質量部以下含まれていることが好ましい。
上記含有量が上述の範囲であることで、上記組成物は所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることが容易だからである。
【0025】
本開示においては、上記酸発生剤が、下記一般式(2)で表される光酸発生剤であることが好ましい。上記光酸発生剤を用いることで、上記組成物は、感度に優れたものとなるからである。また、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるからである。
【0026】
【化5】
【0027】
(式中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又は炭素原子数2~10のエステル基を表し、
35は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基及び下記式(A)~(C)より選択される何れかの置換基を表し、
An1q1-はq1価の陰イオンを表し、
q1は1又は2の整数を表し、
p1は電荷を中性にする係数を表す。)
【0028】
【化6】
【0029】
(式中、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129、R130、R131、R132、R133、R134、R136、R137、R138、R139、R140、R141、R142、R143及びR144、R145、R146、R147、R148及びR149は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又は炭素原子数2~10のエステル基を表し、
*は式(2)中のSとの結合位置を表す。)
【0030】
本開示においては、上記カチオン重合性成分が、エポキシ化合物及びオキセタン化合物から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。上記カチオン重合性成分が上述の化合物を含むことで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるからである。
【0031】
本開示においては、前記エポキシ化合物が、脂環族エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物の少なくとも一方を含むことが好ましい。所望の波長領域の光吸収性に優れ、かつ基材との密着性が良好な硬化物を得ることができるからである。
【0032】
本開示においては、前記脂環族エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物の合計の含有量が、前記エポキシ化合物100質量部中に、50質量部以上であることが好ましい。所望の波長領域の光吸収性に優れ、かつ基材との密着性が良好な硬化物を得ることができるからである。また、所望の波長範囲により急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
【0033】
本開示においては、上記組成物が、光学フィルタ用であることが好ましい。上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるとの効果を効果的に発揮することができるからである。
【0034】
本開示は、上記組成物の硬化物を提供する。
【0035】
本開示によれば、上記組成物の硬化物を、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタ等として使用できる。
【0036】
本開示は、上記組成物の硬化物を含む光吸収層を有することを特徴とする光学フィルタを提供する。
【0037】
本開示によれば、光学フィルタが上記光吸収層を有することにより、画像表示装置の色再現性に優れたものとなる。
【0038】
本開示は、上記組成物を硬化する工程を含む硬化物の製造方法を提供する。
【0039】
本開示によれば、上記硬化物の製造方法は、上記組成物を硬化させるものであるため、例えば、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタ等として使用可能な硬化物を得ることができる。
【発明の効果】
【0040】
本開示は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を製造可能な組成物を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本開示は、組成物、その硬化物、光学フィルタ及び硬化物の製造方法に関するものである。
以下、本開示について詳細に説明する。
【0042】
A.組成物
まず、本開示の組成物について説明する。
本開示の組成物は、色素と、カチオン重合性成分と、酸発生剤と、を含むことに特徴の1つを有するものである。
【0043】
本開示によれば、上記組成物が、色素、カチオン重合性成分及び酸発生剤を含むことで、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができる。
【0044】
上記成分を含む組成物を用いることで、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができる理由については、以下のように推察される。
すなわち、本開示の組成物において、色素と、上記カチオン重合性成分及び酸発生剤とを併用ことで、該色素が変性、分解等の少ないものとなる。
より具体的には、エポキシ化合物等のカチオン重合性成分は、例えば、メタクリレート、アクリレート等のラジカル重合性化合物等と比較して、硬化反応が穏やかであり、色素に変性等を生じることを抑制できる。その結果、組成物を硬化させた際に、色素、すなわち、所望の波長領域の光を吸収可能な色素の含有量の低下が少ない。
また、本開示の組成物において、上記カチオン重合性成分及び酸発生剤を用いることで、色素を安定的に分散した状況を保持することが可能となる。
より具体的には、エポキシ化合物等のカチオン重合性成分は、例えば、メタクリレート、アクリレート等のラジカル重合性化合物等と比較して、硬化時の硬化収縮が少なく、硬化時に色素が凝集する等の不具合が少ない。その結果、上記組成物の硬化物は、色素が安定的に分散して保持されるものとなる。
その結果、上記硬化物中の色素は、所望の波長範囲の光を効率的に吸収可能となる。
以上のことから、上記組成物が、所定の色素、カチオン重合性成分及び酸発生剤を含むことで、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるのである。
また、上記組成物は、硬化物の光吸収性の予測が容易なものとなる。
【0045】
本開示において、色素として、例えば、450nm以上550nm未満に最大吸収波長を有する色素を用いることで、450nm付近にスペクトルピークを有する青色光及び550nm付近にスペクトルピークを有する緑色光の重なり領域の波長の光を安定的に吸収できる。
これにより、上記組成物を用いることで、青色光及び緑色光の重なり領域の波長の光のみを選択的に吸収可能な光学フィルタを得ることができる。
このように上記組成物によれば、その用途に応じて所定の波長範囲に吸収極大を有する色素を選択することで、その波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが可能となる。
【0046】
また、本開示の組成物によれば、下記の効果が奏される。
エポキシ化合物等のカチオン重合性成分は、上述のように、アクリレート等のラジカル重合性化合物等と比較して、重合時の硬化収縮が少ない。
このため、上記組成物は、基材等の部材に塗布された後、硬化物とされた場合でも、カールの発生、更に剥離の発生が少ないものとなる。
また、上記カチオン重合性成分は、例えば、アクリレート等のラジカル重合性化合物等と比較して、耐水性が高く、例えば高湿環境下における密着力の低下も少ない。
このようなことから、上記組成物は、密着性に優れたものとなる。
以上のことから、所定の色素、カチオン重合性成分及び酸発生剤を同時に含むものとすることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを製造可能な組成物となると共に、カールの発生、剥離の発生が少なく、密着性にも優れた硬化物を得ることができる。
【0047】
また、上記組成物は、カチオン重合により硬化可能であることで、得られた硬化物は、3次元架橋したものとすることができる。その結果、上記硬化物は、例えば、熱可塑性樹脂等に色素を分散させた組成物等と比較して、色素の保持性能等の耐久性、強度等に優れたものとなる。
更に、上記組成物は、エポキシ化合物等のカチオン重合性成分を含むものであるため、得られる硬化物は、例えば、アクリレート等のラジカル重合性化合物等と比較して、柔軟性に優れたものとなる。従って、上記組成物を用いて製造された光学フィルタは、例えば、フレキシブル性が要求される画像表示装置等に特に好ましく用いることができる。
【0048】
本開示の組成物は、色素、カチオン重合性成分及び酸発生剤を含むものである。
以下、本開示の組成物の各成分について、詳細に説明する。
【0049】
1.色素
上記色素としては、所望の波長範囲の光を吸収可能なものであれば問題はなく、上記組成物の種類、用途等に応じて適宜設定することができる。
上記色素の最大吸収波長は、例えば、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得るとの観点、2種類の発色の可視光間の重なりを低減する光学フィルタに用いるという観点等から、2色の発光スペクトルが重なる波長の範囲の光を吸収可能なものを用いることができる。
上記色素の最大吸収波長は、例えば、緑色光及び赤色光の重なりを低減する光学フィルタに用いるという観点からは、550nm以上610nm以下であるものとすることができる。
上記色素は、例えば、380nm以上780nm以下の可視光間の重なりに限らず、380nmより短波長の紫外光間、780nmより長波長の赤外線間等の重なりを低減する光学フィルタに用いるという観点から、これらの光の波長範囲に最大吸収波長を有するものを用いることもできる。
上記色素の最大吸収波長は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができる等の観点から、450nm以上550nm未満であること、すなわち、本開示の組成物は、色素と、カチオン重合性成分と、酸発生剤と、を含み、上記色素が、450nm以上550nm未満に最大吸収波長を有する色素であることが好ましい。
450nm以上550nm未満に最大吸収波長を有する色素は、例えば、600nm付近に最大吸収波長を有する色素と比較して安定性が低く、ラジカル重合性化合物と共に用いて硬化させた際に変性・分解等を生じやすい。このため、上述の色素を用いることで、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるとの効果をより効果的に発揮できるからである。
また、上記色素として、450nm以上550nm未満に最大吸収波長を有する色素を用いることにより、上記組成物は、青色光及び緑色光の重なりを低減し、色純度を向上する光学フィルタに用いることが容易となるからである。
【0050】
本開示において、450nm以上550nm未満に最大吸収波長を有するとは、380nm以上780nm以下の波長範囲における最大吸収波長が、450nm以上550nm未満に含まれることをいうものとすることができる。
本開示においては、上記色素の最大吸収波長は、470nm以上530nm以下であることが好ましく、なかでも、480nm以上510nm以下であることが好ましい。青色光及び緑色光の色純度に優れたものとすることが容易であり、更に、色強度の低下の少ないものとなるからである。
また、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるとの効果をより効果的に得ることができるからである。
【0051】
また、上記色素の半値幅(以下、色素単体半値幅と称する場合がある。)は、色再現性に優れた硬化物を得られるものであれば問題はないが、100nm以下であることが好ましく、なかでも、10nm以上80nm以下であることが好ましく、特に、20nm以上50nm以下であることが好ましい。
色素単体半値幅が上述の範囲であることで、青色光及び緑色光の色純度に優れたものとすることが容易であり、更に、色強度の低下の少ないものとなるからである。
【0052】
上記最大吸収波長及び半値幅の測定方法は、最大吸収波長を精度良く測定できる方法であれば問題はなく、例えば、下記の方法を用いることができる。
(1)溶剤に色素を溶解し、色素溶液を調製する。
(2)色素溶液を、石英セル(光路長10mm、厚み1.25mm)に充填し、分光光度計(例えば、日本分光製可視紫外吸光度計V-670等)を用いて透過率を測定する。
なお、色素溶液の濃度は、最大吸収波長が正確に確認できる濃度であれば問題はなく、例えば、最大吸収波長となる波長における透過率が5%程度(例えば、3%以上7%以下)となるように調整することができる。
上記溶剤としては、色素を溶解可能であり、最大吸収波長のシフトが少ない等、各色素の透過スペクトルを精度よく測定可能ものであれば問題はなく、例えば、クロロホルムを用いることができる。また、クロロホルムに溶解しない色素については、他の溶剤を用いることができる。
色素溶液の透過スペクトルは、予め溶剤単体での透過スペクトルを測定し、色素溶液の透過スペクトルから溶剤の透過スペクトルを差し引いて補正したものを用いる。
また、半値幅は、最大吸収波長を示すピークトップの両側に位置する2点間の距離((100-λmaxでの透過率)/2で表される半値が観察される波長間の距離)をいう。
具体的には、最大吸収波長となる波長λmaxにおける透過率が4%である場合には、透過率が48%となる波長間距離を半値幅とする。
上記色素が2種類以上の色素を含む場合には、それぞれの色素を用いて色素溶液を調製する。
【0053】
上記色素としては、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるものであればよく、例えば、シアニン系色素、メロシアニン系色素、ピロメテン系色素、アゾ系色素、テトラアザポルフィリン系色素、キサンテン系色素、トリアリールメタン系色素等を挙げることができる。
本開示においては、なかでも、上記色素が、ピロメテン系色素及びシアニン系色素の少なくとも一方を含むことが好ましく、特に、ピロメテン系色素及びシアニン系色素の少なくとも一方であること、すなわち、本開示の組成物は、色素と、カチオン重合性成分と、酸発生剤と、を含み、上記色素がピロメテン系色素及びシアニン系色素の少なくとも一方であるものであることが好ましい。
また、本開示においては、なかでも、上記色素が、ピロメテン系色素を含むことが好ましい。
上述の色素、より具体的には、ピロメテン系色素及びシアニン系色素、なかでも、ピロメテン系色素は、ラジカル重合性化合物と共に用いて硬化させた際に変性・分解等を生じやすい。このため、上述の色素を用いることで、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるとの効果をより効果的に発揮できるからである。
本開示においては、急峻な光学特性を得る事、及び耐光性の向上の観点からは、上記色素が、ピロメテン系色素及びシアニン系色素の少なくとも一方と、テトラアザポルフィリン系色素とを含むことが好ましく、特に、ピロメテン系色素と、テトラアザポルフィリン系色素とを含むことが好ましい。
本開示においては、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるとの観点、青色光及び緑色光の重なりを低減し、色純度を向上する光学フィルタに用いることが容易となるとの観点から、上記色素が、450nm以上550nm未満に最大吸収波長を有する色素であり、上記450nm以上550nm未満に最大吸収波長を有する色素が、ピロメテン系色素及びシアニン系色素の少なくとも一方であること、すなわち、上記色素が、上記450nm以上550nm未満に最大吸収波長を有するピロメテン系色素及びシアニン系色素の少なくとも一方であることが好ましい。
また、本開示においては、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるとの観点、青色光及び緑色光の重なりを低減し、更に、緑色光及び赤色光の重なりを低減し、色純度を向上する光学フィルタに用いることが容易となるとの観点から、上記色素が、450nm以上550nm未満に最大吸収波長を有する色素と、550nm以上610nm以下に最大吸収波長を有する色素との両者を含むことが好ましく、なかでも、450nm以上550nm未満に最大吸収波長を有する色素として、ピロメテン系色素及びシアニン系色素の少なくとも一方と、550nm以上610nm以下に最大吸収波長を有する色素として、テトラアザポルフィリン系色素とを含むことが好ましい。これらの色素の組合せは、凝集等を生じることが少なく、450nm以上550nm未満の吸収と、550nm以上610nm以下の吸収とを両立容易だからである。
【0054】
上記ピロメテン系色素は、ピロメテン骨格を有し、所望の波長範囲の光を吸収可能なものであればよいが、なかでも、下記一般式(101)で表される色素であることが好ましい。
上記ピロメテン系色素は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるとの効果をより効果的に発揮できるからである。
【0055】
【化7】
【0056】
(式中、R101、R102、R103、R104、R105及びR106は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、スルホ基の塩、炭素原子数1~30の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~30の芳香環含有炭化水素基、炭素原子数3~30の脂肪族複素環基又は炭素原子数3~30の芳香族複素環基を表すか、
101、R102、R103、R104、R105及びR106は、それぞれ独立に、前記脂肪族炭化水素基、前記芳香環含有炭化水素基、前記脂肪族複素環基又は前記芳香族複素環基中の1又は2以上の水素原子が置換基で置換された基、又は前記脂肪族炭化水素基、前記芳香環含有炭化水素基、前記脂肪族複素環基又は前記芳香族複素環基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NR’’-、>P=O、-S-S-、-SO-又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの組合せた基で置き換わっている基を表し、
R’’は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表し、
前記脂肪族炭化水素基、前記芳香環含有炭化水素基、前記脂肪族複素環基及び前記芳香族複素環基中の水素原子の1つ又は2つ以上を置換する置換基が、エチレン性不飽和基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、置換アミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、リン酸基又はカルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、又はリン酸基の塩であり、
101は3価の基を表し、
Mは、ホウ素原子、ベリリウム原子、マグネシウム原子、クロム原子、鉄原子、ニッケル原子、銅原子、亜鉛原子又は白金原子を表し、
MとNとを結ぶ点線は、Nの不対電子がMに配位して形成された配位結合を表すか、又はNとMとの間に結合が存在しないことを表し、
101は、Mと結合する基を表し、
nは1~3の整数を表す。)
【0057】
上記一般式(101)におけるR101、R102、R103、R104、R105及びR106で表される炭素原子数1~30の脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数2~30のアルキニル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基等が挙げられる。
上記炭素原子数1~30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso-プロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、iso-ブチル基、アミル基、iso-アミル基、tert-アミル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、iso-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、1-オクチル基、iso-オクチル基、tert-オクチル基及びアダマンチル基等を挙げることができる。
上記炭素原子数2~30のアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-オクテニル基、1-デセニル基、1-オクタデセニル基等が挙げられる。
上記炭素原子数2~30のアルキニル基としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-オクチニル基、1-デシニル基、1-オクタデシニル基等が挙げられる。
上記炭素原子数3~30のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクタデシル基、2-ボルニル基、2-イソボルニル基、1-アダマンチル基等が挙げられる。
【0058】
上記一般式(101)におけるR101、R102、R103、R104、R105及びR106で表される炭素原子数6~30の芳香環含有炭化水素基としては、芳香環を含むものであればよく、単環芳香環から水素原子を1つ除いた基又はその基に含まれる芳香環中の水素原子が脂肪族炭化水素基で置換された基である単環芳香族炭化水素基、単環芳香環が縮合した縮合芳香族環から水素原子を1つ除いた基又はその基に含まれる芳香環中の水素原子が脂肪族炭化水素基で置換された基である縮合環芳香族炭化水素基、単環芳香環及び縮合芳香族環が、単結合せ又はカルボニル基等の連結基を介して結合した集合芳香環から水素原子を1つ除いた基又はその基に含まれる芳香環中の水素原子が脂肪族炭化水素基で置換された基である環集合芳香族炭化水素基等のアリール基が挙げられる。
上記芳香環中の水素原子を置換する脂肪族炭化水素基は、R101等に用いられる炭素原子数1~30の脂肪族炭化水素基として挙げた基を用いることができる。
なお、本明細書において、「炭素原子数6~30の芳香環含有炭化水素基」における「6~30」は、「芳香環」ではなく「芳香環含有炭化水素基」の炭素原子数を規定する。
上記芳香環含有炭化水素基としては、より具体的には、炭素原子数6~30の単環芳香族炭化水素基、炭素原子数10~30の縮合環芳香族炭化水素基、炭素原子数12~30の環集合芳香族炭化水素基等のアリール基が挙げられる。
また、芳香環含有炭化水素基としては、上記脂肪族炭化水素基の水素原子をアリール基で置換したアリールアルキル基を用いることができる。
上記炭素原子数6~30の単環芳香族炭化水素基としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2,4-キシリル基、p-クメニル基、メシチル基等が挙げられる。
上記炭素原子数10~30の縮合環芳香族炭化水素基としては、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アンスリル基、2-アンスリル基、5-アンスリル基、1-フェナンスリル基、9-フェナンスリル基、1-アセナフチル基、2-アズレニル基、1-ピレニル基、2-トリフェニレル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、1-ペリレニル基、2-ペリレニル基、3-ペリレニル基、2-トレフェニレニル基、2-インデニル基、1-アセナフチレニル基、2-ナフタセニル基、2-ペンタセニル基等が挙げられる。
上記炭素原子数12~30の環集合芳香族炭化水素基としては、o-ビフェニリル基、m-ビフェニリル基、p-ビフェニリル基、テルフェニリル基、7-(2-ナフチル)-2-ナフチル基等が挙げられる。
上記アリールアルキル基としては、ベンジル、フェネチル、2-フェニルプロパン-2-イル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル、フェロセニルメチル、フェロセニルプロピル等を挙げることができる。
【0059】
上記一般式(101)におけるR101、R102、R103、R104、R105及びR106で表される炭素原子数3~30の脂肪族複素環基としては、3-イソクロマニル基、7-クロマニル基、3-クマリニル等が挙げられる。
なお、本明細書において、「炭素原子数3~30の脂肪族複素環基」における「3~30」は、「脂肪族複素環」ではなく「脂肪族複素環基」の炭素原子数を規定する。
【0060】
上記一般式(101)におけるR101、R102、R103、R104、R105及びR106に用いられる炭素原子数3~30の芳香族複素環基としては、2-フリル基、3-フリル基、2-チエニル基、3-チエニル基、2-ベンゾフリル基、2-ベンゾチエニル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-キノリル基、3-キノリル基、4-キノリル基、5-キノリル基、6-キノリル基、7-キノリル基、8-キノリル基、1-イソキノリル基、3-イソキノリル基、4-イソキノリル基、5-イソキノリル基、6-イソキノリル基、7-イソキノリル基、8-イソキノリル基、2-ピリミジニル基、2-ピラジニル基、2-キナゾリニル基、2-キノキサリニル基、2-オキサゾリル基、2-チアゾリル基等が挙げられる。
なお、本明細書において、「炭素原子数3~30の芳香族複素環基」における「3~30」は、「芳香族複素環」ではなく「芳香族複素環基」の炭素原子数を規定する。
【0061】
上記一般式(101)におけるR101、R102、R103、R104、R105及びR106で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0062】
上記一般式(101)におけるR101、R102、R103、R104、R105及びR106に用いられるスルホ基の塩としては、-SO Na等のアルカリ金属塩、-SO NH 等のアンモニウム塩等が挙げられる。
【0063】
上記一般式(101)におけるR101、R102、R103、R104、R105及びR106で表される脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基、脂肪族複素環基、及び芳香族複素環基中の水素原子の1つ又は2つ以上は、置換基により置換されていてもよい。
上記置換基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基及びメタクリル基等のエチレン性不飽和基;フッ素、塩素、臭素及びヨウ素等のハロゲン原子;アセチル基、2-クロロアセチル基、プロピオニル基、オクタノイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、フェニルカルボニル(ベンゾイル)基、フタロイル基、4-トリフルオロメチルベンゾイル基、ピバロイル基、サリチロイル基、オキザロイル基、ステアロイル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、n-オクタデシルオキシカルボニル基及びカルバモイル基等のアシル基;アセチルオキシ基及びベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、クロロフェニルアミノ基、トルイジノ基、アニシジノ基、N-メチル-アニリノ基、ジフェニルアミノ基,ナフチルアミノ基、2-ピリジルアミノ基、メトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ホルミルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、カルバモイルアミノ基、N,N-ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N-ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t-ブトキシカルボニルアミノ基、n-オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N-メチル-メトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、N,N-ジメチルアミノスルホニルアミノ基、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基及びフェニルスルホニルアミノ基等の置換アミノ基;スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、リン酸基又はカルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、リン酸基の塩等を挙げることができる。
すなわち、本開示においてR101、R102、R103、R104、R105及びR106は、それぞれ独立に、前記脂肪族炭化水素基、前記芳香環含有炭化水素基、前記脂肪族複素環基又は前記芳香族複素環基中の1つ又は2つ以上の水素原子が、エチレン性不飽和基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、置換アミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、リン酸基又はカルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基又はリン酸基の塩等で置換された基を表すことができる。
上記一般式(101)におけるR101、R102、R103、R104、R105及びR106で表される芳香環含有炭化水素基に含まれるアリール基及びアリールアルキル基中の水素原子の1つ又は2つ以上並びに脂肪族複素環基及び芳香族複素環基に含まれる複素環基中の水素原子の1つ又は2つ以上は、上記炭素原子数1~30の脂肪族炭化水素基により置換されていてもよい。
なお、本明細書において、基の炭素原子数は、基中の水素原子が置換基で置換されている場合、その置換後の基の炭素原子数を規定する。従って、上記炭素原子数6~30の芳香環含有炭化水素基の水素原子が置換されている場合の炭素原子数とは、水素原子が置換された後の炭素原子数を指し、水素原子が置換される前の炭素原子数を指すのではない。以下、その他の基中の水素原子が置換されている場合も同じである。
また、本明細書において、所定の炭素原子数の基中のメチレン基が二価の基で置き換えられた基にかかる炭素原子数の規定は、その置換後の基の炭素原子数を規定する。従って、上記炭素原子数6~30の芳香環含有炭化水素基中のメチレン基が置換されている場合の炭素原子とは、メチレン基が置換された後の炭素原子数を指し、メチレン基が置換される前の炭素原子数を指すのではない。以下、その他の基中のメチレン基が置換されている場合も同じである。
【0064】
上記一般式(101)におけるR101、R102、R103、R104、R105及びR106に用いられる脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NR’’-、>P=O、-S-S-、-SO-又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの組合せた基で置き換わっている場合がある。
すなわち、本開示においてR101、R102、R103、R104、R105及びR106は、それぞれ独立に、前記脂肪族炭化水素基、前記芳香環含有炭化水素基、前記脂肪族複素環基又は前記芳香族複素環基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NR’’-、>P=O、-S-S-、-SO-又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの組合せた基で置き換わっている基とすることができる。
R’’は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表すものとすることができる。
R’’で表される炭素原子数1~8のアルキル基は、炭素原子数1~30のアルキル基としてとして例示したものうち、炭素原子数が1~8のものが挙げられる。
上記炭素-炭素二重結合としては、より具体的には、-CH=CH-、-C(CH)=CH-、-C(CH)=C(CH)-等を挙げることができる。
【0065】
上記一般式(101)におけるR102とR103及び/又はR104とR105は、それぞれ互いに結合してピロール環に縮合する芳香環を形成してもよい。この芳香環は置換基を有していても良く、また、これらによって形成される縮合芳香環は、同一であっても異なるものであってもよい。
【0066】
上記一般式(101)で表されるピロメテン系色素の具体例としては、特開2013-109105号公報に記載の式(2)-1~(2)-11等が挙げられる。
【0067】
本開示において、上記R101、R102、R103、R104、R105及びR106は、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基の塩、炭素原子数1~30の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~30の芳香環含有炭化水素基であることが好ましく、なかでも、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基であることが好ましく、特に、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、なかでも特に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましい。
上記R102及びR105は、なかでも特に、水素原子であることが好ましい。また、上記R101、R103、R104及びR106は、炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましく、なかでも特に、炭素原子数1~3のアルキル基であることが好ましい。
上記R101、R102、R103、R104、R105及びR106が上述の官能基であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。また、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。
【0068】
上記Mは、ホウ素原子、ベリリウム原子、マグネシウム原子、クロム原子、鉄原子、ニッケル原子、銅原子、亜鉛原子又は白金原子を表す。
本開示においては、なかでも、上記Mが、ホウ素原子であることが好ましい。上記Mがホウ素原子であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れ、かつ、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。
【0069】
上記一般式(101)におけるX101が表す3価の基としては、-CR17=、又は窒素原子が挙げられる。
ここで、R17は上記R101~R106と同様の置換基を用いることができる。
上記R17は、炭素原子数1~30の脂肪族炭化水素基である場合、R17中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-、-S-で置き換わっているもの又は無置換であるものを好ましく用いることができ、なかでも、-S-で置き換わっているもの又は無置換であるものを好ましく用いることができる。
上記X101は、これらのなかでも-CR17=であることが好ましい。上記X101が上述の基であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れ、かつ、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。
上記R17としては、炭素原子数1~30の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数1~30のアルキル基であることが好ましく、特に、炭素原子数1~10アルキル基であることが好ましく、なかでも特に、炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましく、なかでも特に、炭素原子数1~3のアルキル基であることが好ましい。上記R17が上述の原子であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。また、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。
【0070】
上記一般式(101)におけるY101が表すMと結合する基としては、Mと結合可能であればよく、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~30の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~30の芳香環含有炭化水素基、炭素原子数3~20の脂肪族複素環基、及び、炭素原子数3~30の芳香族複素環基を挙げることができる。
ここで、ハロゲン原子、炭素原子数1~30の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~30の芳香環含有炭化水素基、炭素原子数3~20の脂肪族複素環基、及び、炭素原子数3~30の芳香族複素環基については、上記R101~R106と同様の置換基が挙げられる。
また、上記Y101は、nが2以上の場合、複数含まれるY101は同一であっても異なるものであっても良く、互いに結合して環を形成していてもよい。
本開示においては、なかでも、上記Y101が、ハロゲン原子であることが好ましく、特に、フッ素原子であることが好ましい。上記Y101が上述の原子であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。また、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。
【0071】
上記一般式(101)におけるMとNとを結ぶ点線は、配位結合を表すことが好ましい。
上記一般式(101)におけるnは、Y101の結合数を表すものであり、Mの種類に応じて設定されるものである。例えば、Mがホウ素である場合には、nは2とすることができる。
【0072】
本開示においては、上記一般式(101)で表される化合物が、下記一般式(101a)で表される化合物であることが好ましい。上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。また、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。
【0073】
【化8】
【0074】
(式中、R101a、R102a、R103a、R104a、R105a及びR106aは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、
101aは-CR17a=で表される基を表し、
17aは、炭素原子数1~10アルキル基を表し、
BとNとを結ぶ点線は、Nの不対電子がMに配位して形成された配位結合を表す。)
【0075】
上記一般式(101a)におけるR101a、R102a、R103a、R104a、R105a及びR106a並びにR17aに用いられる炭素原子数1~10のアルキル基としては、上記一般式(101)におけるR101に用いられる炭素原子数1~30のアルキル基のうち、所定の炭素原子数のものを用いることができる。
本開示においては、なかでも、R101a、R103a、R104a及びR106aが、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましく、特に、炭素原子数1~3のアルキル基であることが好ましい。
本開示においては、なかでも、R102a及びR105aが、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましく、特に、水素原子であることが好ましい。
本開示においては、なかでも、R17aが、炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましく、特に、-S-で置き換わっている又は無置換の炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましく、なかでも、無置換の炭素原子数1~3のアルキル基であることが好ましい。
101a、R102a、R103a、R104a、R105a及びR106a並びにR17aが上述の基であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易となる。また、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易となる。
【0076】
上記一般式(101)で表されるピロメテン系色素の製造方法は、特に限定されないが、例えば、Heteroatom Chemistry,Vol.1,5,389(1990)等に記載の方法等を用いることができる。
【0077】
上記ピロメテン系色素の含有量としては、色素100質量部中に20質量部以上であることが好ましく、なかでも、30質量部以上であることが好ましく、30質量部以上70質量部以下であることが好ましく、なかでも、35質量部以上60質量部以下であることが好ましく、35質量部以上55質量部以下であることが好ましい。所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易となるためである。
なお、固形分とは、溶剤以外の全ての成分を含むものである。
また、本明細書において特に断りがない場合には、含有量は質量基準である。
上記溶剤は、有機溶剤(以下、溶媒と称する場合がある。)及び水を挙げることができ、上記カチオン重合開始剤により重合しないものである。
従って、常温(25℃)大気圧下で液状であっても、後述する「2.カチオン重合性成分」の項に記載されるカチオン重合性成分は、上記溶剤には含まれない。
また、上記溶剤は、上記組成物の各成分を分散又は溶解するために用いられるものであるため、後述する「3.酸発生剤」に記載の酸発生剤等も、常温大気圧下で液状であっても、上記溶剤には含まれない。
【0078】
上記ピロメテン系色素の含有量としては、組成物の固形分100質量部中に、0.01質量部以上であることが好ましく、なかでも、0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、特に、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易となるからである。
上記ピロメテン系色素の含有量は、所望の波長領域の光吸収性により優れたものとする観点からは、組成物の固形分100質量部中に、0.1質量部以上2質量部以下であることが好ましい。
【0079】
上記ピロメテン系色素の含有量としては、組成物100質量部中に、0.002質量部以上であることが好ましく、なかでも、0.002質量部以上4質量部以下であることが好ましく、特に、0.02質量部以上4質量部以下であることが好ましい。所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易となるからである。
上記ピロメテン系色素の含有量は、所望の波長領域の光吸収性により優れたものとする観点からは、組成物100質量部中に、0.002質量部以上1.8質量部以下であることが好ましい。
【0080】
上記シアニン系色素は、ポリメチン骨格の両末端に窒素を含む複素環を有するシアニン構造を有し、所望の波長範囲の光を吸収可能なものであればよいが、なかでも、下記一般式(102)で表される色素であることが好ましい。
上記シアニン系色素は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるとの効果をより効果的に発揮できるからである。
【0081】
【化9】
【0082】
(式中、Aは下記の群Iの(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)、(k)、(l)及び(m)から選ばれる基を表し、
A’は下記の群IIの(a’)(b’)、(c’)、(d’)、(e’)、(f’)、(g’)、(h’)、(i’)、(j’)、(k’)、(l’)及び(m’)から選ばれる基を表し、
Qはメチン鎖を含む炭素原子数1~9の連結基を表し、該連結基はメチン鎖中に環構造を含んでいてもよく、
Anq-はq価のアニオンを表し、qは1又は2を表し、pは電荷を中性に保つ係数を表す。)
【0083】
【化10】
【0084】
(式中、環Cは、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環又はピリジン環を表し、
Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、-CR5152-、炭素原子数3~6のシクロアルカン-1,1-ジイル基、-NH-又は-NY-を表し、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R51及びR52は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メタロセニル基、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ同じであるか又は異なっており、
Y及びYは、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、
rは、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(g)、(h)、(i)、(j)、(l)及び(m)において置換可能な数を表し、
*は、結合手を表す。)
【0085】
【化11】
【0086】
(式中、環C’は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環又はピリジン環を表し、
X’は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、-CR5152-、炭素原子数3~6のシクロアルカン-1,1-ジイル基、-NH-又は-NY-を表し、
’、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R51及びR52は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メタロセニル基、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R’及びR’はそれぞれ同じであるか又は異なっており、
Y’及びYは、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、
r’は、(a’)(b’)、(c’)、(d’)、(e’)、(g’)、(h’)、(i’)、(j’)、(l’)及び(m’)において置換可能な数を表し、
*は、結合手を表す。)
【0087】
上記一般式(102)におけるR~R、R’~R’、R51及びR52に用いられるハロゲン原子としては、上記一般式(101)に用いられるR101等と同様のものが挙げられる。
【0088】
上記一般式(102)におけるR~R、R’~R’、R51及びR52で表されるアミノ基としては、アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、2-エチルヘキシルアミノ、ドデシルアミノ、アニリノ、クロロフェニルアミノ、トルイジノ、アニシジノ、N-メチル-アニリノ、ジフェニルアミノ,ナフチルアミノ、2-ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、ホルミルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、カルバモイルアミノ、N,N-ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N-ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t-ブトキシカルボニルアミノ、n-オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N-メチル-メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、スルファモイルアミノ、N,N-ジメチルアミノスルホニルアミノ、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ等が挙げられる。
【0089】
上記一般式(102)におけるR~R、R’~R’、R51及びR52で表されるアミド基としては、ホルムアミド、アセトアミド、エチルアミド、イソプロピルアミド、ブチルアミド、オクチルアミド、ノニルアミド、デシルアミド、ウンデシルアミド、ドデシルアミド、ヘキサデシルアミド、オクタデシルアミド、(2-エチルヘキシル)アミド、ベンズアミド、トリフルオロアセトアミド、ペンタフルオロベンズアミド、ジホルムアミド、ジアセトアミド、ジエチルアミド、ジイソプロピルアミド、ジブチルアミド、ジオクチルアミド、ジノニルアミド、ジデシルアミド、ジウンデシルアミド、ジドデシルアミド、ジ(2-エチルヘキシル)アミド、ジベンズアミド、ジトリフルオロアセトアミド、ジペンタフルオロベンズアミド等が挙げられる。
【0090】
上記一般式(102)におけるR~R、R’~R’、R51及びR52で表されるメタロセニル基としては、フェロセニル、ニッケロセニル、コバルトニル、フェロセンアルキル、フェロセンアルコキシ等が挙げられる。
【0091】
上記一般式(102)におけるR~R、R’~R’、R51、R52、Y、Y’及びYに用いられる炭素原子数6~30のアリール基としては、フェニル、ナフチル、2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、4-メチルフェニル、4-ビニルフェニル、3-iso-プロピルフェニル、4-iso-プロピルフェニル、4-ブチルフェニル、4-iso-ブチルフェニル、4-tert-ブチルフェニル、4-ヘキシルフェニル、4-シクロヘキシルフェニル、4-オクチルフェニル、4-(2-エチルヘキシル)フェニル、4-ステアリルフェニル、2,3-ジメチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2,5-ジメチルフェニル、2,6-ジメチルフェニル、3,4-ジメチルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル、2,5-ジ-tert-ブチルフェニル、2,6-ジ-tert-ブチルフェニル、2,4-ジ-tert-ペンチルフェニル、2,5-ジ-tert-アミルフェニル、2,5-ジ-tert-オクチルフェニル、2,4-ジクミルフェニル、4-シクロヘキシルフェニル、(1,1’-ビフェニル)-4-イル、2,4,5-トリメチルフェニル、フェロセニル等が挙げられる。
【0092】
上記一般式(102)におけるR~R、R’~R’、R51、R52、Y、Y’及びYで表される炭素原子数1~30のアルキル基及び炭素原子数7~30のアリールアルキル基としては、上記一般式(101)に用いられるR101等と同様のものが挙げられる。
【0093】
上記一般式(102)におけるR~R、R’~R’、R51、R52、Y、Y’及びYに用いられるアリール基、アリールアルキル基及びアルキル基等の官能基は、上記官能基中の水素原子の1つ又は2つ以上が、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基又はメタロセニル基で置換されてもよい。
【0094】
上記一般式(102)におけるR~R、R’~R’、R51、R52、Y、Y’及びYで表されるアリール基、アリールアルキル基、アルキル基の水素原子を置換してもよいハロゲン原子、アミノ基、アミド基及びメタロセニル基としては、R等の説明で例示したものが挙げられる。
【0095】
上記一般式(102)におけるR~R、R’~R’、R51、R52、Y、Y’及びYで表されるアリールアルキル基及びアルキル基等の官能基は、上記官能基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO-、-NH-、-CONH-、-NHCO-、-N=CH-又は-CH=CH-の二価の基で置き換えられていてもよい。
なお、上記官能基中のメチレン基は、二価の基で置き換えられる場合、上記官能基中で酸素原子が隣り合わない条件で上記二価の基に置き換えられるものである。
【0096】
上記一般式(102)において、X及びX’で表される炭素原子数3~6のシクロアルカン-1,1-ジイル基としては、シクロプロパン-1,1-ジイル、シクロブタン-1,1-ジイル、2,4-ジメチルシクロブタン-1,1-ジイル、3,3-ジメチルシクロブタン-1,1-ジイル、シクロペンタン-1,1-ジイル、シクロヘキサン-1,1-ジイル等が挙げられる。
【0097】
上記Aは、上記群Iの(a)~(m)から選ばれる基を表すが、(h)、(i)、(j)又は(l)であることが好ましく、なかでも(l)であることが特に好ましい。上記Aが上述の基であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。また、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。
上記A’は、上記群Iの(a’)~(m’)から選ばれる基を表すが、(h’)、(i’)、(j’)又は(l’)であることが好ましく、なかでも(l’)であることが特に好ましい。上記A’が上述の基であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。また、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。
【0098】
上記R~R、R’~R’、R51及びR52は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メタロセニル基、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基若しくは炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表すが、水素原子又は炭素原子数1~30のアルキル基であることが好ましく、なかでも、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、特に、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましく、特に、水素原子であることが好ましい。上記R~R、R’~R’、R51及びR52が上述の基であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。また、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。
【0099】
上記X及びX’は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、-CR5152-、炭素原子数3~6のシクロアルカン-1,1-ジイル基、-NH-又は-NY-を表すが、酸素原子、硫黄原子又は-CR5152-であることが好ましく、-CR5152-であることが好ましい。上記X及びX’が上述の官能基であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。また、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。
【0100】
上記Y、Y’及びYは、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表すが、水素原子又は炭素原子数1~30のアルキル基であることが好ましく、なかでも、水素原子であることが好ましい。上記Y、Y’及びYが上述の基であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。また、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。
【0101】
上記r、r’は、(a)~(e)、(g)~(j)、(l)、(m)、(a’)~(e’)、(g’)~(j’)、(l’)及び(m’)において置換可能な数を表すものである。
より具体的には、上記置換可能な数は、R又はR1’が結合する環を構成する炭素原子に結合する水素原子の数を表すものである。なお、上記環を構成する炭素原子には、(h)、(i)、(l)に含まれるXが-CR5152-である場合にXとして用いられる-CR5152-中の炭素原子を含まないものとする。
例えば、上記Aが(b)、(c)、(h)、(l)である場合には、rは4となり、上記Aが(d)、(i)である場合には、rは2となり、上記Aが(j)である場合には、rは3となる。また、上記Aが(a)であり、環Cがベンゼン環である場合には、rは4となり、環Cがナフタレン環である場合には、rは6となる。
【0102】
上記一般式(102)におけるQで表される連結基に含まれるメチン鎖は、該メチン鎖中の水素原子の1つ又は2つ以上が、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、-NRR’、アリール基、アリールアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよい。
上記一般式(102)におけるQで表される連結基に含まれるメチン鎖は、上記メチン鎖中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO-、-NH-、-CONH-、-NHCO-、-N=CH-又は-CH=CH-の二価の基で置き換えられていてもよい。
なお、上記メチン鎖中のメチレン基は、二価の基で置き換えられる場合、上記メチン鎖中で酸素原子が隣り合わない条件で上記二価の基に置き換えられるものである。
上記メチン鎖中の水素原子を置換するR及びR’は、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基若しくは炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表す。
R及びR’で表される炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基若しくは炭素原子数7~30のアリールアルキル基は、R101等の説明で例示したものが挙げられる。
【0103】
上記一般式(102)におけるQで表される、炭素原子数1~9のメチン鎖を含み、かつ鎖中に環構造を含んでもよい連結基としては、下記(Q-1)~(Q-11)の何れかで表される基が、製造が容易であるため好ましい。
炭素原子数1~9の連結基における炭素原子数とは、メチン鎖及びメチン鎖中に含まれる環構造の炭素原子数を指し、該連結基を置換する基(例えば下記R14~R19及びZ’)の炭素原子を含まない。また、下記の(Q-1)~(Q-11)で表される基の両末端の炭素原子(例えば、(Q-6)で表される連結基の両末端の炭素原子)を含まない。
本開示においては、(Q-1)~(Q-11)で表される基のなかでも、(Q-4)、(Q-5)、(Q-7)、(Q-8)であることが好ましく、(Q-4)、(Q-7)であることが好ましい。上記Qが上述の連結基であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。また、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。
【0104】
【化12】
【0105】
(式中、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びZ’は、各々独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、-NRR’、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、
R及びR’は、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基若しくは炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、
*は、結合手を表す。)
【0106】
上記R14、R15、R16、R17、R18、R19及びZ’に用いられるハロゲン原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基若しくは炭素原子数7~30のアリールアルキル基は、R101等の説明で例示したものが挙げられる。
R及びR’で表される炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基若しくは炭素原子数7~30のアリールアルキル基は、R101等の説明で例示したものが挙げられる。
上記R14、R15、R16、R17、R18、R19及びZ’で表される-NRR’、アリール基、アリールアルキル基及びアルキル基中の水素原子の1つ又は2つ以上は、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基又は-NRR’で置換されていてもよい。
上記R14、R15、R16、R17、R18、R19及びZ’で表される-NRR’、アリール基、アリールアルキル基及びアルキル基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO-、-NH-、-CONH-、-NHCO-、-N=CH-又は-CH=CH-の二価の基で置換されていてもよい。
なお、上記官能基中のメチレン基は、二価の基で置き換えられる場合、上記官能基中で酸素原子が隣り合わない条件で上記二価の基に置き換えられるものである。
【0107】
本開示においては、R14、R15、R16、R17、R18及びR19が、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基であることが好ましく、なかでも、水素原子又は炭素原子数1~30のアルキル基であることが好ましく、特に、炭水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、なかでも特に、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましい。
本開示においては、なかでも、R14及びR15の組合せでは、R14が水素原子であり、R15が炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましい。
本開示においては、Z’が、ハロゲン原子であることが好ましく、なかでも、塩素原子であることが好ましい。上記R14、R15、R16、R17、R18及びR19並びにZ’が上述の好ましい基であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。また、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。
【0108】
本開示においては、上記一般式(102)中のA-Q-A’で表されるカチオンが、下記一般式(102-1a)又は(102-2a)で表されるカチオンであることが好ましい。上記カチオンが、上述のカチオンであることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。また、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。
【0109】
【化13】
【0110】
(式中のR1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6a、R7a及びR8a、R1a’、R2a’、R3a’、R4a’、R5a’、R6a’、R7a’及びR8a’並びにR14a及びR15aは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、
Za及びZa’は、それぞれ独立に、ハロゲン原子を表す。)
【0111】
上記一般式(102-1a)及び(102-2a)におけるR1a~R8a及びR1a’~R8a’並びにR14a及びR15aに用いられる炭素原子数1~10のアルキル基としては、上記一般式(101)に用いられるR101等に用いられるものと同様とすることができる。
上記一般式(102-1a)及び(102-2a)におけるZa及びZa’に用いられるハロゲン原子としては、上記一般式(101)に用いられるR101等に用いられるものと同様とすることができる。
本開示においては、なかでも、上記R1a~R8a及びR1a’~R8a’が、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましく、特に、水素原子であることが好ましい。
本開示においては、なかでも、上記R14a及びR15aが、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましく、特に、R14が水素原子であり、R15が炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましい。
本開示においては、Za及びZa’が、塩素原子であることが好ましい。
1a~R8a、R1a’~R8a’、R14a及びR15a並びにZa及びZa’が、上述の基であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。また、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。
【0112】
本発明で用いられるシアニン化合物のシアニンカチオンの具体例としては、特許第6305331号に記載の化合物No.1~102が挙げられる。
【0113】
上記一般式(102)中のpAnq-で表されるq価のアニオンとしては、メタンスルホン酸アニオン、ドデシルスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ナフタレンスルホン酸アニオン、ジフェニルアミン-4-スルホン酸アニオン、2-アミノ-4-メチル-5-クロロベンゼンスルホン酸アニオン、2-アミノ-5-ニトロベンゼンスルホン酸アニオン、特開平10-235999号公報、特開平10-337959号公報、特開平11-102088号公報、特開2000-108510号公報、特開2000-168223号公報、特開2001-209969号公報、特開2001-322354号公報、特開2006-248180号公報、特開2006-297907号公報、特開平8-253705号公報、特表2004-503379号公報、特開2005-336150号公報、国際公開2006/28006号公報等に記載されたスルホン酸アニオン等の有機スルホン酸アニオンの他、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン、塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、オクチルリン酸イオン、ドデシルリン酸イオン、オクタデシルリン酸イオン、フェニルリン酸イオン、ノニルフェニルリン酸イオン、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスホン酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、トリス(ハロゲノアルキルスルホニル)メチドアニオン、ジ(ハロゲノアルキルスルホニル)イミドアニオン、テトラシアノボレートアニオン、励起状態にある活性分子を脱励起させる(クエンチングさせる)機能を有するクエンチャー陰イオンやシクロペンタジエニル環にカルボキシル基やホスホン酸基、スルホン酸基等の陰イオン性基を有するフェロセン、ルテオセン等のメタロセン化合物陰イオン等が挙げられる。
本開示においては、なかでも、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、トリス(ハロゲノアルキルスルホニル)メチドアニオン(例えば、(CFSO)、ジ(ハロゲノアルキルスルホニル)イミドアニオン(例えば(CFSO)等を好ましく用いることができる。
【0114】
上記シアニン色素は、その製造方法は特に限定されず、周知一般の反応を利用した方法で得ることができ、例えば、特開2010-209191号公報に記載されているルートの如く、該当する構造を有する化合物と、イミン誘導体との反応により合成する方法が挙げられる。
【0115】
色素100質量部中の上記シアニン系色素の含有量、組成物100質量部中の上記シアニン系色素の含有量、カチオン重合性成分100質量部に対する上記シアニン系色素の含有量としては、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるとの効果をより効果的に発揮できる観点からは、上記ピロメテン系色素の含有量と同様とすることができる。
【0116】
上記テトラアザポルフィリン系色素は、ポルフィリン構造を有し、かつ所望の波長範囲の光を吸収可能なものであればよい。
このようなテトラアザポルフィリン系色素としては、例えば、特開2018-081218号公報等に記載の金属含有ポルフィリン化合物、国際公開2017/010076号公報に記載のアザポルフィリン系染料等を用いることができる。
本発明においては、なかでも、上記テトラアザポルフィリン系色素が下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
上記テトラアザポルフィリン系色素が、上記一般式(1)で表される化合物であることにより、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるとの効果をより効果的に発揮できるからである。
【0117】
【化13A】
【0118】
(式中、R301、R302、R303、R304、R305、R306、R307及びR308は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数1~30のアルコキシ基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、炭素原子数2~30のヘテロアリール基、又はこれらの基中の水素原子の1つ又は2つ以上が置換基で置換された基を表し、
前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アリール基、前記アリールオキシ基及び前記ヘテロアリール基中の水素原子の1つ又は2つ以上を置換する置換基が、エチレン性不飽和基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、置換アミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、リン酸基又はカルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、リン酸基の塩であり、
301とR302、R303とR304、R305とR306及びR307とR308は、互いに連結してピロール環の炭素原子を含む脂環構造を形成していてもよく、
301、R302、R303、R304、R305、R306、R307及びR308は同時に水素原子とはならず、
Mは、2個の水素原子、2個の1価の金属原子、2価の金属原子、又は3価若しくは4価の金属化合物を表す。)
【0119】
上記R301~R308は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
例えば、R301とR302、R303とR304、R305とR306及びR307とR308は、それぞれ同一の基であってもよく、それぞれ異なる種類の基であってもよい。
【0120】
上記R~Rで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等を挙げることができる。
【0121】
上記R301~R308で表されるアミノ基は、第一級アミノ基、第二級アミノ基及び第三級アミノ基のいずれでもよい。
第二級アミノ基及び第三級アミノ基としては、それぞれアミノ基の水素原子の1つ又は2つが炭素原子数1~30のアルキル基で置換されているものを挙げることができる。該炭素原子数1~30のアルキル基としては、例えば、上記R101等に用いられるアルキル基と同様の基が挙げられる。
【0122】
上記R301~R308で表される第二級アミノ基としては、例えば、N-メチルアミノ基、N-エチルアミノ基及びN-n-ブチルアミノ基等を挙げることができる。
【0123】
上記R301~R308で表される第三級アミノ基としては、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基及びN,N-ジ-n-ブチルアミノ基等を挙げることができる。
【0124】
上記R301~R308で表される炭素原子数1~30のアルキル基は、炭素原子数1~12のアルキル基であることが好ましく、特に、炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、なかでも特に、炭素原子数1~8のアルキル基であることが好ましく、なかでも特に、炭素原子数2~6のアルキル基であることが好ましく、なかでも特に、炭素原子数2~5のアルキル基であることが好ましい。所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
また、上記炭素原子数1~30のアルキル基としては、置換又は無置換の炭素原子数1~30のアルキル基を用いることができる。換言すると、上記R~Rは、炭素原子数1~30のアルキル基中の水素原子が置換基で置換された基、すなわち、置換基を有する炭素原子数1~30のアルキル基であってもよい。
【0125】
上記R301~R308で表される炭素原子数1~30のアルキル基、すなわち、置換基を有しない炭素原子数1~30のアルキル基としては、例えば、上記R101等に用いられるアルキル基と同様の基が挙げられる。
【0126】
上記置換基を有する炭素原子数1~30のアルキル基としては、アルキル基中の水素原子の1つ又は2つ以上が置換基に置換されているものが挙げられる。
上記水素原子を置換する置換基としては、例えば、上記R101に用いられる脂肪族炭化水素基中の水素原子の1つ又は2つ以上を置換する置換基と同様の基が挙げられる。
また、上記R301~R308で表される炭素原子数1~30のアルキル基中の水素原子を置換する置換基は、上述のアルキル基、後述するアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリール基等であってもよい。すなわち、上記R301~R308で表される、置換基を有する炭素原子数1~30のアルキル基としては、例えば、アラルキル基、直鎖、分岐又は環状のハロゲノアルキル基、直鎖、分岐又は環状のアルコキシアルキル基、直鎖、分岐又は環状のアルコキシアルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基、アラルキルオキシアルキル基、直鎖、分岐又は環状のハロゲノアルコキシアルキル基等も挙げることができる。
【0127】
上記のアラルキル基としては、ベンジル基、α-メチルベンジル基、α-エチルベンジル基、α,α-ジメチルベンジル基、α-フェニルベンジル基、α,α-ジフェニルベンジル基、フェネチル基、α-メチルフェネチル基などを挙げることができる。
【0128】
上記の直鎖、分岐又は環状のハロゲノアルキル基としては、フルオロメチル基、3-フルオロプロピル基、6-フルオロヘキシル基などを挙げることができる。
【0129】
上記の直鎖、分岐又は環状のアルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-ブトキシメチル基などを挙げることができる。
【0130】
上記の直鎖、分岐又は環状のアルコキシアルコキシアルキル基としては、(2-メトキシエトキシ)メチル基、(2-エトキシエトキシ)メチル基などを挙げることができる。
【0131】
上記アリールオキシアルキル基としては、フェニルオキシメチル基、4-メチルフェニルオキシメチル基、3-メチルフェニルオキシメチル基などを挙げることができる。
【0132】
上記アラルキルオキシアルキル基としては、ベンジルオキシメチル基、フェネチルオキシメチル基などを挙げることができる。
【0133】
上記の直鎖、分岐又は環状のハロゲノアルコキシアルキル基としては、フルオロメチルオキシメチル基などの直鎖、分岐又は環状のハロゲノアルコキシアルキル基などを挙げることができる。
【0134】
上記R301~R308で表される炭素原子数1~30アルコキシ基は、炭素原子数1~12のアルコキシ基であることが好ましく、特に、炭素原子数1~8のアルコキシ基であることが好ましい。所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
また、上記炭素原子数1~30のアルコキシ基としては、置換若しくは無置換の炭素原子数1~30のアルコキシ基を用いることができる。換言すると、上記R301~R308は、炭素原子数1~30のアルコキシ基中の水素原子が置換基で置換された基、すなわち、置換基を有する炭素原子数1~30のアルコキシ基であってもよい。
【0135】
上記R301~R308で表される炭素原子数1~30のアルコキシ基、すなわち、置換基を有しない炭素原子数1~30のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基等を挙げることができる。
【0136】
上記R301~R308で表される、置換基を有する炭素原子数1~30のアルコキシ基としては、アルコキシ基中の水素原子の1つ又は2つ以上が置換基で置換されているものが挙げられる。
上記水素原子を置換する置換基としては、上記R301~R308で表されるアルキル基中の水素原子を置換する置換基として挙げたもの等を挙げることができる。
置換基を有する炭素原子数1~30のアルコキシ基としては、より具体的には、アラルキルオキシ基、直鎖、分岐又は環状のハロゲノアルコキシ基等を挙げることができる。
【0137】
上記アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、α-メチルベンジルオキシ基、α-エチルベンジルオキシ基等を挙げることができる。
【0138】
上記の直鎖、分岐又は環状のハロゲノアルコキシ基としては、フルオロメチルオキシ基、3-フルオロプロピルオキシ基等を挙げることができる。
【0139】
上記R301~R308で表される炭素原子数6~30のアリール基としては、炭素原子数6~20のアリール基であることが好ましく、特に、炭素原子数6~16のアリール基であることが好ましく、なかでも特に、炭素原子数6~12のアリール基であることが好ましく、なかでも特に、炭素原子数6~10のアリール基であることが好ましい。所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
また、R301~R308で表される炭素原子数6~30のアリール基としては、置換若しくは無置換の炭素原子数6~30のアリール基を用いることができる。換言すると、上記R~Rは、炭素原子数6~30のアリール基中の水素原子が置換基で置換された基、すなわち、置換基を有する炭素原子数6~30のアリール基であってもよい。
上記置換基を有する炭素原子数6~30のアリール基としては、アリール基中の水素原子の1つ又は2つ以上が置換基に置換されているものが挙げられる。
上記水素原子を置換する置換基としては、R301~R308で表されるアルキル基の水素原子を置換する置換基として挙げたもの等を挙げることができる。
【0140】
301~R308で表される置換基を有しない炭素原子数6~30のアリール基としては、上記一般式(101)中のR101等に用いられる炭素原子数6~30の芳香環含有炭化水素基として用いることができるアリール基を挙げることができる。
上記炭素原子数6~30のアリール基、すなわち、置換基を有しない炭素原子数6~30のアリール基、及び上記置換基を有する炭素原子数6~30のアリール基としては、例えば、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、3-エチルフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基等を挙げることができる。
【0141】
上記R301~R308で表される炭素原子数6~30のアリールオキシ基としては、炭素原子数6~20のアリールオキシ基であることが好ましく、炭素原子数6~16のアリールオキシ基であることが好ましい。所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
また、上記R301~R308で表される炭素原子数6~30のアリールオキシ基としては、置換若しくは無置換の炭素原子数1~30のアリールオキシ基を用いることができる。換言すると、上記R~Rは、炭素原子数6~30のアリールオキシ基中の水素原子が置換基で置換された基、すなわち、置換基を有する炭素原子数6~30のアリールオキシ基であってもよい。
上記R301~R308で表される置換基を有する炭素原子数6~30のアリールオキシ基としては、アリールオキシ基中の水素原子の1つ又は2つ以上が置換基に置換されているものが挙げられる。上記水素原子を置換する置換基としては、上記R301~R308で表されるアルキル基の水素原子を置換する置換基として挙げたもの等を挙げることができる。
【0142】
上記R301~R308で表される、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、すなわち、置換基を有しない炭素原子数6~30のアリールオキシ基、及び置換基を有する炭素原子数6~30のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、2-メチルフェニルオキシ基等を挙げることができる。
上記R301~R308で表される置換基を有する炭素原子数6~30のアリールオキシ基としては、2-メトキシフェニルオキシ基、4-イソプロポキシフェニルオキシ基等も挙げることができる。
【0143】
上記R301~R308で表される置換基を有する炭素原子数6~30のアリールオキシ基としては、2-フルオロフェニルオキシ基、3-クロロフェニルオキシ基等も挙げることができる。
【0144】
更に、上記R301~R308で表される置換基を有する炭素原子数6~30のアリールオキシ基としては、3-クロロ-4-メチルフェニルオキシ基、2-フェニルフェニルオキシ基等も挙げることができる。
【0145】
上記R301~R308で表される炭素原子数2~30のヘテロアリール基としては、例えば、ヘテロ原子として、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を少なくとも1つ以上含む芳香族ヘテロ環が挙げられる。
また、上記炭素原子数2~30のヘテロアリール基としては、置換若しくは無置換の炭素原子数2~30のヘテロアリール基を用いることができる。換言すると、上記R301~R308は、炭素原子数2~30のヘテロアリール基中の水素原子が置換基で置換された基、すなわち、置換基を有する炭素原子数2~30のヘテロアリール基であってもよい。
上記R301~R308で表される置換基を有する炭素原子数2~30のヘテロアリール基としては、ヘテロアリール基中の水素原子の1つ又は2つ以上が置換基に置換されているものが挙げられる。上記水素原子を置換する置換基としては、上記R~Rで表されるアルキル基の水素原子を置換する置換基として挙げたもの等を挙げることができる。
【0146】
上記R301~R308で表される炭素原子数2~30のヘテロアリール基、すなわち、置換基を有しない炭素原子数6~30のヘテロアリール基、及び置換基を有する炭素原子数2~30のヘテロアリール基としては、例えば、フラニル基、ピロリル基、3-ピロリノ基、ピラゾリル基、イミダゾリル基等を挙げることができる。
【0147】
上記R301とR302、R303とR304、R305とR306又はR307とR308が互いに連結して形成する脂環構造としては、R等が結合しているピロール環の炭素原子を含んで形成された、炭素原子数3~20の脂環式炭化水素基を挙げることができ、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、t-ブチルシクロヘキサン、シアノシクロヘキサン、ジクロロシクロヘキサン等の脂環構造を挙げることができる。
【0148】
本発明においては、上記R301~R308は、水素原子、置換基を有しない若しくは置換基を有する炭素原子数1~30のアルキル基、置換基を有しない若しくは置換基を有する炭素原子数1~30のアルコキシ基、又は置換基を有しない若しくは置換基を有する炭素原子数6~30のアリール基であることが好ましい。
301とR302、R303とR304、R305とR306及びR307とR308の組合せとしては、所望の波長の光を吸収可能なものであればどのような組合せでもよいが、具体的には、(i)水素原子とアルキル基との組合せ、(ii)アルキル基とアルコキシ基との組合せ、(iii)アルキル基とアリール基との組合せ等であることが好ましい。所望の波長範囲に急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
また、R301、R303、R305及びR307は、同一の基であってもよく、異なる基であってもよいが、同一の基であることが好ましい。所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
更に、R302、R304、R306及びR308は、同一の基であってもよく、異なる基であってもよいが、同一の基であることが好ましい。所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
上記(i)の組合せとしては、水素原子と、置換基を有しない若しくは置換基を有する炭素原子数1~30のアルキル基との組合せが好ましく、水素原子と、置換基を有しない炭素原子数1~10のアルキル基との組合せがより好ましく、特に、水素原子と、置換基を有しない炭素原子数2~5のアルキル基との組合せが好ましい。
本発明においては、R301、R303、R305及びR307が、水素原子であり、かつ、R302、R304、R306及びR308が、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基等の置換基を有しない炭素原子数3~5の分岐のアルキル基であることが最も好ましい。所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
上記(iii)の組合せとしては、置換基を有しない若しくは置換基を有する炭素原子数1~30のアルキル基と、置換基を有しない若しくは置換基を有する炭素原子数6~30のアリール基との組合せが好ましく、置換基を有しない炭素原子数1~10のアルキル基と、置換基を有する炭素原子数6~12のアリール基との組合せがより好ましく、特に、置換基を有しない炭素原子数2~5のアルキル基と、置換基を有する炭素原子数6のアリール基との組合せがより好ましい。
アリール基の水素原子の1つ又は2つ以上を置換する置換基としては、ハロゲン原子であることが好ましく、中でも、フッ素原子であることが好ましい。また、アリール基の水素原子の1つが置換基で置換されていることが好ましい。
本発明においては、R301、R303、R305及びR307が、水素原子の1つ又は2つ以上がハロゲン原子で置換されたフェニル基であり、かつ、R、R、R及びRが、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基等の置換基を有しない炭素原子数3~5の分岐のアルキル基であることが特に好ましく、R301、R303、R305及びR307が、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基等のフッ素原子で水素原子の1つが置換されたフェニル基であり、かつ、R302、R304、R306及びR308が、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基等の置換基を有しない炭素原子数3~5の分岐のアルキル基であることが最も好ましい。所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
上記R301、R303、R305及びR307が上述の官能基であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。また、ピロメテン系色素又はシアニン系色素と組合せた場合には、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れると共に、550nm以上610nm未満の波長領域の光吸収性にも優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。
【0149】
上記Mで表される2価の金属原子としては、例えば、周期律表第3族~第15族に属する金属原子が挙げられる。具体的には、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Pb、Rh、Pd、Pt、Mn、Sn、Pb等を挙げることができる。
Mで表される1価の金属原子としては、例えば、例えば、Na、K、Liなどを挙げることができる。
また、Mで表される3価若しくは4価の金属化合物としては、例えば、周期律表第3族~第15族に属する3価又は4価の金属の、ハロゲン化物、水酸化物及び酸化物等が挙げられる。上記金属化合物としては、具体的には、AlCl、AlOH、InCl、FeCl、MnOH、SiCl、SnCl、GeCl、Si(OH)、Si(OCH、Si(OPh)、Si(OSiCH、Sn(OH)、Ge(OH)、VO、TiO等を挙げることができる。
上記Mは、Cu、Zn、Co、Ni、Pb、Pd、Pt、Mn、VO、TiOであることが好ましく、特に、Cu、Co、Ni、Pd、VOであることが好ましい。所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
上記Mが上述の金属原子又は金属化合物であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。また、ピロメテン系色素又はシアニン系色素と組合せた場合には、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れると共に、550nm以上610nm未満の波長領域の光吸収性にも優れた光学フィルタを得ることが容易だからである。
【0150】
上記一般式(1)で表される、テトラアザポルフィリン系色素化合物としては、より具体的には、特開2017-68221号公報に記載された一般式(1)の具体例と同様のものを挙げることができる。
【0151】
上記テトラアザポルフィリン系色素化合物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、J. Gen. Chem. USSR vol.47, 1954-1958 (1977)、特開2012-121821号公報等に記載されている方法に準じた製造方法を挙げることができる。
【0152】
上記テトラアザポルフィリン系色素化合物の市販品としては、例えば、PD-311S、PD-320、NC-35、SNC-8(以上、山本化成株式会社)、FDG-004、FDG-007(以上、山田化学工業株式会社)等を挙げることができる。
【0153】
本発明で用いるテトラアザポルフィリン系色素は、1種類の化合物のみからなるものでもよいが、構造又はMで表される金属原子若しくは金属化合物(以下、中心金属等と称する場合がある。)の種類が異なる2種類以上の化合物を含むものであってもよい。
本発明においては、湿熱耐久性等の耐久性向上の観点からは、上記テトラアザポルフィリン系色素として、上記一般式(1)で表される化合物を2種類以上含むものを用いることが好ましい。上記テトラアザポルフィリン系色素が2種類以上の化合物を含むことで、より耐久性に優れた硬化物を得ることができるからである。
組合せる化合物の種類は2種類以上であることが好ましいが、2種類以上5種類以下であることがより好ましく、2種類以上3種類以下であることが更に好ましく、特に、2種類であることが好ましい。所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることが容易となるからである。
【0154】
構造の異なる2種類以上の化合物の組合せとしては、例えば、R301~R308が互いに異なる化合物の組合せを挙げることができ、好ましい組合せとして、R301~R308の少なくとも1つが、置換基を有しない若しくは置換基を有する炭素原子数6~30のアリール基である化合物と、R301~R308が、置換基を有しない若しくは置換基を有する炭素原子数6~30のアリール基以外の基である化合物との組合せを挙げることができる。
また、R301~R308の少なくとも1つが、置換基を有しない若しくは置換基を有する炭素原子数6~30のアリール基である化合物と、R301~R308が、置換基を有しない若しくは置換基を有する炭素原子数6~30のアリール基以外の基であり、かつ、R301~R308の少なくとも1つが、置換基を有しない若しくは置換基を有する炭素原子数1~30のアルキル基である化合物との組合せ、並びに、R301~R308の少なくとも1つが、置換基を有しない若しくは置換基を有する炭素原子数6~30のアリール基であり、かつ、R301~R308の少なくとも1つが、置換基を有しない若しくは置換基を有する炭素原子数1~30のアルキル基である化合物と、R301~R308が、置換基を有しない若しくは置換基を有する炭素原子数6~30のアリール基以外の基であり、R301~R308の少なくとも1つが、水素原子であり、かつ、R301~R308の少なくとも1つが、置換基を有しない若しくは置換基を有する炭素原子数1~30のアルキル基である化合物との組合せを挙げることができる。
好ましい組合せとして、R~Rの少なくとも1つが、置換基を有しない若しくは置換基を有する炭素原子数6~20のアリール基であり、かつ、R301~R308の少なくとも1つが、置換基を有しない若しくは置換基を有する炭素原子数1~10のアルキル基である化合物と、R301~R308が、置換基を有しない若しくは置換基を有する炭素原子数6~30のアリール基以外の基であり、R301~R308の少なくとも1つが、水素原子であり、かつ、R301~R308の少なくとも1つが、置換基を有しない若しくは置換基を有する炭素原子数1~10のアルキル基である化合物との組合せを挙げることができる。
特に好ましい組合せとして、R301~R308の少なくとも1つが、ハロゲン原子で水素原子の1つ又は2つ以上が置換された炭素原子数6~12のアリール基であり、かつ、R301~R308の少なくとも1つが、置換基を有しない炭素原子数2~5のアルキル基である化合物と、R301~R308が、水素原子及び置換基を有しない炭素原子数2~5のアルキル基である化合物との組合せを挙げることができる。
最も好ましい組合せは、R301、R303、R305及びR307が、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基等のフッ素原子で水素原子の1つが置換されたフェニル基であり、かつ、R302、R304、R306及びR308が、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基等の置換基を有しない炭素原子数3~5の分岐のアルキル基である化合物と、R301、R303、R305及びR307が、水素原子であり、かつ、R302、R304、R306及びR308が、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基等の置換基を有しない炭素原子数3~5の分岐のアルキル基である化合物との組合せである。
このような化合物の組合せであることで、湿熱耐久性等の耐久性に優れた硬化物を得られるからである。
【0155】
中心金属等の異なる2種類の化合物の組合せとしては、例えば、MとしてCuを含む化合物とPdを含む化合物との組合せのように、2価の金属原子である、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Pb、Rh、Pd、Pt、Mn、Sn、Pbから選択される2種類の金属原子をそれぞれ含む化合物の組合せ、及び、MとしてVOを含む化合物とTiOを含む化合物との組合せのように、3価若しくは4価の金属化合物である、AlCl、AlOH、InCl、FeCl、MnOH、SiCl、SnCl、GeCl、Si(OH)、Si(OCH、Si(OPh)、Si(OSiCH、Sn(OH)、Ge(OH)、VO、TiOから選択される2種類の金属化合物をそれぞれ含む化合物の組合せを挙げることができる。
また、MとしてCuを含む化合物とVOを含む化合物との組合せのように、2価の金属原子から選択される金属原子を含む化合物と、3価若しくは4価の金属化合物から選択される金属化合物を含む化合物との組合せを挙げることができる。
好ましい組合せとしては、Mとして2価の金属原子から選択される金属原子を含む化合物と、3価若しくは4価の金属化合物から選択される金属化合物を含む化合物との組合せを挙げることができる。
より好ましい組合せとしては、Mとして、Cu、Zn、Co、Ni、Pb、Pd、Pt、Mnから選択される金属原子を含む化合物と、VO、TiOから選択される金属化合物を含む化合物との組合せを挙げることができ、MとしてCuを含む化合物と、VOを含む化合物を含む化合物との組合せが特に好ましい。
【0156】
上記テトラアザポルフィリン系色素が2種類の化合物を含む場合、それらの含有比率は所望の耐久性が得られるものであればよく、例えば、一方の含有量が、化合物の合計100質量部中に、1質量部以上99質量部以下であることが好ましく、10質量部以上90質量部以下であることがより好ましく、30質量部以上70質量部以下であることが更に好ましく、40質量部以上60質量部以下であることが特に好ましく、45質量部以上55質量部以下であることが最も好ましい。これらの中心金属を含む化合物の組合せであることで、湿熱耐久性等の耐久性に優れた硬化物を得られるからである。
【0157】
上記テトラアザポルフィリン系色素の含有量としては、色素100質量部中に20質量部以上であることが好ましく、なかでも、30質量部以上80質量部以下であることが好ましく、特に、40質量部以上70質量部以下であることが好ましく、なかでも特に45質量部以上65質量部以下であることが好ましい。ピロメテン若しくはシアニンの耐光性を向上させる効果があるからである。
【0158】
上記テトラアザポルフィリン系色素の含有量としては、固形分100質量部中に、0.01質量部以上であることが好ましく、なかでも、0.01質量部以上8質量部以下であることが好ましく、特に、0.1質量部以上5質量部以下なかでも特に、0.1質量部以上3質量部以下であることが好まし
い。特定の波長のみを効率よくカットする必要があるからである。
【0159】
上記テトラアザポルフィリン系色素の含有量としては、組成物100質量部中に、0.002質量部以上であることが好ましく、なかでも、0.02質量部以上6.4質量部以下であることが好ましく、特に、0.02質量部以上4質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、0.02質量部以上2.4質量部以下であることが好ましい。
【0160】
上記テトラアザポルフィリン系色素がピロメテン系色素及びシアニン系色素の少なくとも一方と併用される場合、上記ピロメテン系色素、シアニン系色素及びテトラアザポルフィリン系色素の合計の含有量は、上記色素100質量部中に30質量部以上であることが好ましく、なかでも、50質量部以上であることが好ましく、特に、80質量部以上であることが好ましく、特に、90質量部以上であることが好ましく、なかでも特に、95質量部以上であることが好ましく、なかでも特に、100質量部、すなわち、色素が、ピロメテン系色素、シアニン系色素及びテトラアザポルフィリン系色素ことが好ましい。
なお、上記ピロメテン系色素、シアニン系色素及びテトラアザポルフィリン系色素の合計の含有量は、テトラアザポルフィリン系色素が、ピロメテン系色素及びシアニン系色素のうち、ピロメテン系色素とのみ併用される場合には、上記ピロメテン系色素、シアニン系色素及びテトラアザポルフィリン系色素の合計の含有量は、上記ピロメテン系色素及びテトラアザポルフィリン系色素の合計の含有量を意味するものである。
【0161】
上記色素に含まれる色素の種類としては、1種類であってもよく、或いは2種類以上であってもよいが、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を製造可能な組成物を提供するとの観点からは、1種類であることが好ましい。
なお、種類が異なるとは、最大吸収波長及び半値幅の少なくとも1方が異なることをいうものである。
一方、上記色素の種類は、急峻な光学特性を得る事、及び耐光性の向上の観点からは、2種類以上であることが好ましく、なかでも、ピロメテン系色素及びシアニン系色素の少なくとも一方と、テトラアザポルフィリン系色素とを含むことが好ましく、特に、ピロメテン系色素と、テトラアザポルフィリン系色素とを含むことが好ましい。
【0162】
本開示の組成物における上記色素の含有量は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができる量であれば問題はなく、上記組成物の用途等に応じて適宜設定されるものであるが、組成物の固形分100質量部中に、0.01質量部以上20質量部以下とすることができ、なかでも0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、0.1質量部以上5質量部以下が好ましい。
上記含有量が上述の範囲であることで、上記組成物を用いて得られる硬化物は、所望の波長領域の光吸収性に優れたものとなる。
上記色素の含有量は、所望の波長領域の光吸収性により優れた硬化物を得るとの観点からは、成物の固形分100質量部中に、1.5質量部以上4.5質量部以下であることが好ましく、2質量部以上4質量部以下であることが好ましく、2.5質量部以上4質量部以下であることが好ましい。
なお、固形分とは、溶剤以外の全ての成分を含むものである。
また、色素が2種類以上の色素を含む場合には、上記色素の含有量は、色素の合計含有量をいうものである。
例えば、色素が、ピロメテン系色素及びシアニン系色素を含む場合には、上記色素の含有量は、両色素の合計量を示す。また、色素が、ピロメテン系色素、シアニン系色素及びテトラアザポルフィリン系色素を含む場合には、上記色素の含有量は、全色素の合計量を示す。
また、本明細書において特に断りがない場合には、含有量は質量基準である。
上記溶剤は、有機溶剤(以下、溶媒と称する場合がある。)及び水を挙げることができ、上記カチオン重合開始剤により重合しないものである。
従って、常温(25℃)大気圧下で液状であっても、後述する「2.カチオン重合性成分」の項に記載されるカチオン重合性成分は、上記溶剤には含まれない。
また、上記溶剤は、上記組成物の各成分を分散又は溶解するために用いられるものであるため、後述する「3.酸発生剤」に記載の酸発生剤等も、常温大気圧下で液状であっても、上記溶剤には含まれない。
【0163】
上記色素の含有量は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができる量であれば問題はなく、上記組成物の用途等に応じて適宜設定されるが、カチオン重合性成分100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下とすることができ、なかでも0.02質量部以上5質量部以下であることが好ましく、特に、0.05質量部以上5質量部以下が好ましく、なかでも特に、1質量部以上4.5質量部以下が好ましく、なかでも特に、1.5質量部以上4.5質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以上4.5質量部以下であることが好ましく、2.5質量部以上4.5質量部以下であることが好ましく、3質量部以上4.2質量部以下であることが好ましい。
【0164】
2.カチオン重合性成分
上記カチオン重合性成分は、酸発生剤よって発生した酸により高分子化又は架橋反応を起こす化合物からなるものであればどのような化合物でも問題はなく、特に限定されるものではない。
上記カチオン重合性成分としては、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物、ビニル化合物等が使用でき、これらから選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。
【0165】
上記カチオン重合性成分は、1種類の化合物のみであっても構わないが、2種類以上の化合物を含むものであっても構わない。
上記組成物が、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることが可能となるからである。また、上記組成物が、基材との密着性に優れた硬化物を容易に製造可能となるからである。
【0166】
なお、2種類以上の化合物を含む例としては、構造、分子量等の異なる化合物を2種類以上含むものを挙げることができる。
上記構造の異なる組合せとしては、例えば、エポキシ化合物及びオキセタン化合物の両者を含むもののように、上述のエポキシ化合物、オキセタン化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物、ビニル化合物等の異なる分類から2種類以上を組合せたものを挙げることができる。
上記構造の異なる組合せとしては、例えば、エポキシ化合物として脂肪族エポキシ化合物及び脂環族エポキシ化合物を含むもの、エポキシ化合物として脂肪族エポキシ化合物及び芳香族エポキシ化合物を含むもの、芳香族エポキシ化合物及び脂環族エポキシ化合物を含むもの等のように、芳香族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物から選択される2種類以上を組合せたものを挙げることができる。
上記分子量等が異なる組合せとしては、例えば、エポキシ化合物として、分子量の異なる2種類の脂肪族エポキシ化合物を組合せたもの等を挙げることができる。
【0167】
本開示においては、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるものとなること及び基材との密着性が良好となる観点から、上記カチオン重合性成分が、エポキシ化合物及びオキセタン化合物から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0168】
上記エポキシ化合物は、エポキシ構造を含む化合物の全てが該当するものとすることができる。例えば、エポキシ構造及びオキセタン構造の両者を含む化合物は、エポキシ化合物に該当するものとすることができる。
このようなエポキシ化合物としては、例えば、芳香族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等を挙げることができる。
本開示においては、なかでも、上記エポキシ化合物が、脂環族エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物の少なくとも一方を含むことが好ましく、特に、脂環族エポキシ化合物を少なくとも含むことが好ましく、なかでも特に、脂環族エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物の両者を含むことが好ましい。上記エポキシ化合物を用いることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れると共に、基材との密着性が良好な硬化物を得ることができるからである。
【0169】
上記脂環族エポキシ化合物の具体例としては、脂肪族環を含むものであればよく、少なくとも1個の脂肪族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又はシクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。
上記脂環族エポキシ化合物のなかでも、脂肪族環としてシクロヘキセンオキシド構造を有するエポキシ樹脂が、硬化が速く好ましい。
【0170】
上記脂環族エポキシ化合物としては、下記一般式(5-1)で表される化合物のような、2以上のシクロヘキセンオキシド構造を有する化合物を好ましく用いることができる。このような化合物を含むことで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れると共に、基材との密着性が良好な硬化物を得ることができるからである。また、上記組成物は、所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
【0171】
【化13B】
【0172】
(式中、Xは、直接結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を表す。)
【0173】
で表される連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、及びこれらが複数連結した基等が挙げられる。
【0174】
上記二価の炭化水素基としては、直鎖若しくは分岐の炭素原子数1~30のアルキレン基、又はシクロアルキル環を有する炭素原子数1~30のアルキレン基を挙げることができる。
上記直鎖若しくは分岐の炭素原子数1~30のアルキレン基としては、直鎖若しくは分岐の炭素原子数1~30のアルキル基から水素原子を1つ除いた基を用いることができる。上記シクロアルキル環を有する炭素原子数1~30のアルキレン基としては、シクロアルキル環を有する炭素原子数1~30のアルキル基から水素原子を1つ除いた基を用いることができる。
【0175】
上記直鎖又は分岐のアルキレン基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、アミル基、イソアミル基、t-アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、t-オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基及びイコシル基等の、炭素原子数1~20の直鎖又は分岐のアルキル基から水素原子を1つ除いた基を挙げることができる。
上記二価の炭化水素基としての、炭素原子数1~20の直鎖又は分岐のアルキレン基としては、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等を挙げることができる。
【0176】
上記シクロアルキル環を有するアルキル基としては、シクロアルキル基を用いることができる。上記シクロアルキル基としては、シクロヘキシル環等の単環式炭化水素環、ノルボニル環等の架橋炭化水素環等のシクロアルキル環から水素原子を1つ除いた基又はシクロアルキル環から水素原子を1つ除いた基の環中の水素原子の1つ又は2つ以上を脂肪族炭化水素基で置換した基である、単環式炭化水素基、架橋炭化水素環基等が挙げられる。
【0177】
上記単環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、メチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、トリメチルシクロヘキシル基、テトラメチルシクロヘキシル基、ペンタメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基及びメチルシクロヘプチル基等を挙げることができ、中でも、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基が挙げられる。
上記架橋炭化水素環基としては、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[4.3.1]デシル基、ビシクロ[3.3.1]ノニル基、ボルニル基、ボルネニル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、6,6-ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプチル基、トリシクロブチル基、アダマンチル基が挙げられる。
【0178】
で表されるシクロアルキル環を有するアルキル基としては、上記シクロアルキル基と、上記直鎖又は分岐のアルキル基とを組合せた基も用いることができる。例えば、直鎖又は分岐のアルキル基中の水素原子の1つ又は2つ以上が、上記シクロアルキル基で置換された基、直鎖又は分岐のアルキル基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、上記シクロアルキル基から水素原子を1つ除いた基で置換された基、上記シクロアルキル基の水素原子の1つ又は2つ以上が、上記直鎖又は分岐のアルキル基で置換された基等が挙げられる。
具体的には、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等が挙げられる。
【0179】
上記炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基(以下、「エポキシ化アルケニレン基」と称する場合がある。)におけるアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等の炭素原子数2~8の直鎖又は分岐鎖状のアルケニレン基等が挙げられる。
【0180】
本発明においては、Xが連結基であることが好ましく、二価の炭化水素基、エステル結合、又はこれらが複数連結した基であることが好ましく、特に、二価の炭化水素基とエステル結合とが連結した基であることが好ましい。このような化合物を用いることで、本発明の効果をより効果的に得ることができるからである。
また、本発明においては、Xで表される二価の炭化水素基が、炭素原子数1~18の直鎖又は分岐のアルキル基から水素原子を1つ除いたアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数1~8の直鎖又は分岐のアルキル基から水素原子を1つ除いたアルキレン基であることがより好ましく、炭素原子数1~5の直鎖のアルキル基から水素原子を1つ除いたアルキレン基であることが更に好ましく、特に、炭素原子数1~3の直鎖のアルキル基から水素原子を1つ除いたアルキレン基であることが好ましい。上記炭素原子数が上述の範囲内であることで、本発明の効果をより良好に発揮できるからである。
【0181】
上記2以上のシクロヘキセンオキシド構造を有する化合物の含有量は、エポキシ化合物100質量部中に、40質量部以上90質量部以下であることが好ましく、なかでも、50質量部以上70質量部以下であることが好ましく、特に、55質量部以上70質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れると共に、基材との密着性が良好な硬化物を得ることができるからである。また、上記組成物は、所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
【0182】
上記脂環族エポキシ化合物としては、下記一般式(5-2)で表される化合物も好ましく用いることができる。上記化合物を用いることで、上記組成物は、所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
【0183】
【化13C】
【0184】
(式中、Yは、シクロアルキル環を有する炭素原子数6~30のアルキレン基を表す。)
【0185】
で表されるシクロアルキル環を有する炭素原子数1~30のアルキレン基としては、上記Xで表されるシクロアルキル環を有するアルキレン基と同様の基を用いることができる。
本発明においては、Yが、シクロアルキル環を2つ有する炭素原子数が13~20のアルキレン基であることが好ましく、下記一般式(5-3)で表される基であることがより好ましい。Yが上述の構造を有することで、上記組成物は、所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
【0186】
【化13D】
【0187】
(式中、R5a及びR5bは水素原子又はメチル基を表し、*は結合箇所を表す。)
【0188】
上記脂環族エポキシ化合物としては、例えば、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシレート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-2-エポキシエチルシクロヘキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、等が挙げられる。
なお、脂肪族環及び芳香族環の両者を含むものは、脂環族エポキシ化合物に該当するものとすることができる。
【0189】
脂環族エポキシ化合物としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシレート等が、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることが可能となる観点から好ましい。
【0190】
上記脂環族エポキシ化合物として、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物等のエポキシシクロアルキル環に由来するシクロアルキル環にオキシラニル基が直接単結合で結合した構造を構成単位として有し、エポキシシクロアルキル環のエポキシ基同士が重合した構造を主鎖構造として有する化合物(以下、脂環族エポキシ化合物Aと称する場合がある。)も用いることができる。
【0191】
上記脂環族エポキシ化合物として好適に使用できる市販品としては、例えば、特許第6103653号公報等に記載されるものを挙げることができる。
【0192】
上記脂環族エポキシ化合物は、1種類のみを用いてもよいが、2種類以上を組合せて用いてもよく、例えば、2以上のシクロヘキセンオキシド構造を有する化合物、脂環族エポキシ化合物Aを組合せて用いることも好ましい。所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるからである。
上記脂環族エポキシ化合物が、2以上のシクロヘキセンオキシド構造を有する化合物及び脂環族エポキシ化合物Aを併用する場合、2以上のシクロヘキセンオキシド構造を有する化合物の含有量は、上記脂環族エポキシ化合物100質量部中に、60質量部以上99質量部以下であることが好ましく、なかでも、70質量部以上95質量部以下であることが好ましく、特に、80質量部以上90質量部以下であることが好ましい。所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるからである。
【0193】
上記脂環族エポキシ化合物の含有量は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができる量であればよいが、例えば、上記カチオン重合性成分100質量部中に40質量部以上であることが好ましく、なかでも、50質量部以上であることが好ましく、60質量部以上90質量部以下であることが好ましく、特に、60質量部以上85質量部以下であることが好ましく、60質量部以上80質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、65質量部以上75質量部以下であることが好ましい。
また、エポキシ化合物の含有量がカチオン重合性成分100質量部中に90質量部以下である場合、上記脂環族エポキシ化合物の含有量は、上記カチオン重合性成分100質量部中に40質量部以上80質量部以下であることが好ましく、なかでも、45質量部以上70質量部以下であることが好ましく、45質量部以上65質量部以下であることが好ましい。
上記含有量が上述の範囲であることで、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることが可能となるからである。また、上記組成物は、基材との密着性が良好な硬化物を得ることができるからである。また、上記組成物は、所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
【0194】
上記芳香族エポキシ化合物の具体例としては、少なくとも1個の芳香族環を有する多価フェノール又は、そのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、又はこれらに更にアルキレンオキサイドを付加した化合物のグリシジルエーテル化物やフェノールノボラック型エポキシ化合物;レゾルシノールやハイドロキノン、カテコール等の2個以上のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物のグリシジルエーテル;ベンゼンジメタノールやベンゼンジエタノール、ベンゼンジブタノール等のアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル化物;フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の2個以上のカルボン酸を有する多塩基酸芳香族化合物のポリグリシジルエステル、安息香酸やトルイル酸、ナフトエ酸等の安息香酸類のポリグリシジルエステル、安息香酸のグリシジルエステル、スチレンオキサイド又はジビニルベンゼンのエポキシ化物等が挙げられる。
なかでも、フェノール類のポリグリシジルエーテル、アルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル化物、多価フェノール類のポリグリシジルエーテル化物、安息香酸類のポリグリシジルエステル、多塩基酸類のポリグリシジルエステルの群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、特に、アルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル化物であることが好ましい。所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることが可能となるからである。
【0195】
上記芳香族エポキシ化合物の含有量は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができる量であればよいが、例えば、上記カチオン重合性成分100質量部中に0質量部以上60質量部以下とすることができ、なかでも、0質量部以上50質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲であることで、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることが可能となるからである。
【0196】
また上記脂肪族エポキシ化合物の具体例としては、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル等、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマー等が挙げられる。
【0197】
上記脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルとしては、なかでも、脂肪族ジオール化合物のジグリシジルエーテル化合物を好ましく用いることができ、特に、下記一般式(5-4)で表される化合物を好ましく用いることができる。上記化合物を用いることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れると共に、基材との密着性が良好な硬化物を得ることができるからである。また、上記組成物は、所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
【0198】
【化13E】
【0199】
(式中、Yは、炭素原子数1~30の直鎖又は分岐のアルキレン基を示す。)
【0200】
で表される炭素原子数1~30の直鎖又は分岐のアルキレン基としては、上記Xで表される炭素原子数1~30の直鎖又は分岐のアルキレン基と同様の基を用いることができる。また、炭素原子数1~30のアルキレン基のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-で置き換わっていてもよい。
なお、上記アルキレン基中のメチレン基は、-O-で置き換えられる場合、上記アルキレン基中で酸素原子が隣り合わない条件で-O-に置き換えられるものである。
【0201】
本発明においては、Yが、分岐のアルキレン基であることが好ましい。上記構造を有することで、上記組成物は、所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
本発明においては、Yが、炭素原子数2~30の直鎖又は分岐のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数3~28の直鎖又は分岐のアルキレン基であることがより好ましく、特に、炭素原子数4~26の直鎖又は分岐のアルキレン基であることが好ましい。また、Yが、メチレン基が-O-で置き換わっていないアルキレン基である場合、その炭素原子数は、4~10であることが好ましく、4~8であることが好ましい。上記Yが、メチレン基が-O-で置き換わっているアルキレン基である場合、Yは、炭素原子数が10~26であり、ポリアルキレングリコールから両末端の水酸基を除いた構造を有するアルキレン基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数が10~26であり、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールから両末端の水酸基を除いた構造を有するアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数が15~24であり、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールから両末端の水酸基を除いた構造を有するアルキレン基であることが好ましい。上記組成物は、所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
【0202】
上記一般式(5-4)で表される脂肪族ジオール化合物のジグリシジルエーテル化物としては、具体的には、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル化物、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメチロールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,9-ノナンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0203】
上記脂肪族エポキシ化合物は、代表的な脂肪族エポキシ化合物として、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル、またプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。更に、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、また、これらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
なお、脂肪族エポキシ樹脂は、脂肪族環及び芳香族環を含まないものとすることができる。
【0204】
上記脂肪族エポキシ化合物の含有量は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができる量であればよいが、例えば、上記カチオン重合性成分100質量部中に0質量部以上40質量部以下とすることができ、なかでも、0質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0質量部以上25質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲であることで、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることが可能となるからである。
本開示においては、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることが可能となる観点からは、上記脂肪族エポキシ化合物の含有量は、カチオン重合性成分100質量部中に5質量部以上50質量部以下であることも好ましく、なかでも、10質量部以上40質量部以下であることが好ましく、特に、20質量部以上40質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、25質量部以上35質量部以下であることが好ましい。
【0205】
上記脂肪族ポキシ化合物の含有量は、エポキシ化合物が脂環族エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物の両者を含む場合、脂肪族エポキシ化合物及び脂環族エポキシ化合物の合計100質量部中に、10質量部以上60質量部以下であることが好ましく、なかでも、20質量部以上50質量部以下であることが好ましく、特に、25質量部以上45質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、25質量部以上40質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れると共に、基材との密着性が良好な硬化物を得ることができるからである。また、上記組成物は、所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
上記脂環族エポキシ化合物及び上記脂肪族エポキシ化合物の合計の含有量としては、上記エポキシ化合物100質量部中に、50質量部以上であることが好ましく、なかでも、70質量部以上であることが好ましく、特に、90質量部以上であることが好ましく、特に、95質量部以上であることが好ましく、なかでも特に98質量部以上であることが好ましく、特に、100質量部であること、すなわち、上記カチオン重合性成分がエポキシ化合物として、脂環族エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物のみを含むことが好ましい。上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れると共に、基材との密着性が良好な硬化物を得ることができるからである。また、上記組成物は、所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
【0206】
上記芳香族及び脂肪族エポキシ化合物として好適に使用できる市販品としては、例えば、特許第6103653号公報等に記載されるものを挙げることができる。
【0207】
上記エポキシ化合物の含有量は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができる量であればよいが、例えば、上記カチオン重合性成分100質量部中に50質量部以上とすることができ、なかでも、60質量部以上であることが好ましく、特に、70質量部以上であることが好ましく、なかでも特に、75質量部以上であることが好ましく、なかでも特に、80質量部以上であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲であることで、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることが可能となるからである。
【0208】
上記オキセタン化合物としては、オキセタン構造を有し、かつエポキシ構造を含まないものとすることができる。
このようなオキセタン化合物の具体例としては、例えば、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-(メタ)アリルオキシメチル-3-エチルオキセタン、(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4-フルオロ-[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4-メトキシ-[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-エチルヘキシル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-テトラブロモフェノキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-トリブロモフェノキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシプロピル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、3,3’-(1,3-(2-メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス-(3-エチルオキセタン)、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル等を例示することができる。
【0209】
本開示における上記オキセタン化合物の含有量は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができる量であればよいが、例えば、上記カチオン重合性成分100質量部中に0質量部以上40質量部以下とすることができ、なかでも、5質量部以上35質量部以下であることが好ましく、特に、10質量部以上30質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、15質量部以上25質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲であることで、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることが可能となるからである。
【0210】
上記カチオン重合性成分としては、チイラン化合物、チエタン化合物等のその他の化合物用いることができる。
このようなカチオン重合性成分として用いることができる、その他の化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物、並びに、ビニルエーテル化合物及びエチレン性不飽和化合物等のビニル化合物等については、特許第6103653号公報等に記載の内容と同様とすることができる。
【0211】
上記カチオン重合性成分は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるものであればよく、例えば、低分子量化合物、高分子量化合物の何れも用いることができる。
上記カチオン重合性成分は、組成物の塗工容易性等の観点からは、低分子量化合物を含むことが好ましい。また、低分子量化合物は、組成物中への分散性又は溶解性等に優れるため、透明性に優れた硬化物を得ることができるからである。
上記カチオン重合性成分は、硬化物の密着性等の観点からは、高分子量化合物を含むことが好ましい。
本開示においては、上記カチオン重合性成分が、塗工性等の観点から、少なくとも低分子量化合物を含むことが好ましいが、組成物の塗工容易性、硬化物の密着性等のバランスの観点からは、上記低分子量化合物及び上記高分子量化合物の両者を含むものとしてもよい。
上記低分子量化合物の分子量としては、所望の塗工性等が得られるものであればよく、例えば、1000以下とすることができ、50以上500以下であることが好ましく、なかでも50以上300以下であることが好ましい。
上記高分子量化合物の分子量は、所望の接着容易性等が得られるものであればよく、例えば、1000より大きいものとすることができ、1000以上50000以下であることが好ましく、なかでも、1000以上10000以下であることが好ましい。
なお、以下、分子量は、化合物が重合体である場合には、重量平均分子量(Mw)を示すものである。
また、重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
上記重量平均分子量Mwは、例えば、日本分光(株)製のGPC(LC-2000plusシリーズ)を用い、溶出溶剤をテトラヒドロフランとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw1110000、707000、397000、189000、98900、37200、13700、9490、5430、3120、1010、589(東ソー(株)社製 TSKgel標準ポリスチレン)とし、測定カラムをKF-804、KF-803、KF-802(昭和電工(株)製)として測定して得ることができる。
また、測定温度は40℃とすることができ、流速は1.0mL/分とすることができる。
【0212】
上記低分子量化合物の含有量は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるものであればよく、例えば、カチオン重合性成分100質量部中に、10質量部以上であることが好ましく、なかでも、30質量部以上であることが好ましく、特に、50質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を形成可能となるからである。
【0213】
本開示の組成物における上記カチオン重合性成分の含有量は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物が得られる量であれば問題はなく、例えば、上記組成物の固形分100質量部中に、50質量部以上とすることができ、50質量部以上99質量部以下であることが好ましく、なかでも、70質量部以上96質量部以下であることが好ましく、なかでも、85質量部以上95質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を形成可能となるからである。
【0214】
上記カチオン重合性成分及び上記色素の合計の含有量は、上記組成物の固形分100質量部中に、50.01質量部以上とすることができ、なかでも、70質量部以上99.5質量部以下であることが好ましく、なかでも、80質量部以上98質量部以下であることが好ましく、特に、85質量部以上96質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるからである。また、上記組成物は、色素の保持性能等の耐久性、強度等に優れたものとなるからである。
【0215】
上記カチオン重合性成分の含有量は、上記組成物中の樹脂成分100質量部中に、50質量部以上とすることができ、80質量部以上であることが好ましく、なかでも、90質量部以上であることが好ましく、特に、95質量部以上であることが好ましい。また、100質量部であること、すなわち、樹脂成分として上記カチオン重合性成分のみを含むものであっても構わない。上記含有量が上述の範囲であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができる。また、上記組成物は、色素の保持性能等の耐久性、強度等に優れたものとなるからである。
なお、上記樹脂成分は、上記カチオン重合性成分及び後述するその他の樹脂成分の合計を表すものである。
【0216】
3.酸発生剤
上記酸発生剤としては、所定の条件により酸を発生させることが可能な化合物であればどのようなものでも問題はなく、特に限定されるものではない。
このような酸発生剤としては、例えば、紫外線照射等の光照射により酸を発生させることが可能な光酸発生剤、熱により酸を発生させることが可能な熱酸発生剤を用いることができる。
上記酸発生剤は、上記光酸発生剤及び熱酸発生剤の少なくとも一方を用いることができるが、硬化が容易であるとの観点、組成物の硬化時に、組成物に隣接して用いられる周辺部材への熱によるダメージを低減でき、周辺部材の選択の自由度が高くなるとの観点等からは、光酸発生剤であることが好ましい。また、上記光酸発生剤は硬化速度が速いという利点もある。
また、上記酸発生剤は、光が到達困難な場所でも硬化物の形成が容易となる観点からは、熱酸発生剤であることが好ましい。また、上記熱酸発生剤は、硬化速度が比較的遅いため、これを利用し硬化処理(加熱処理)後に、他の部材との貼り合わせを容易に行うことができる。
【0217】
上記酸発生剤の含有量は、単独又は複数種の合計で、上記組成物の固形分100質量部中に、0.01質量部以上10質量部以下、とすることができ、なかでも、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を容易に得ることが可能となるからである。
【0218】
上記カチオン重合性成分に対する酸発生剤の使用割合は特に限定されず、本開示の目的を阻害しない範囲内で概ね通常の使用割合で使用すれば構わないが、例えば、カチオン重合性成分100質量部に対して、酸発生剤0.05質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上8質量部以下であることが好ましく、1質量部以上7質量部以下であることが好ましく、なかでも、1.5質量部以上5質量部以下であることが好ましい。上記使用割合が上述の範囲であることで、カチオン重合性成分を十分に硬化させると共に、組成物の硬化物の耐熱性が良好な点で好適である。
また、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を容易に得ることが可能となるからである。
【0219】
(1)光酸発生剤
上記光酸発生剤としては、紫外線照射等の光照射により酸を発生させることが可能な化合物であればどのようなものでも問題はないが、好ましくは、紫外線の照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩、又はその誘導体である。かかる化合物の代表的なものとしては、下記一般式(21)で表される陽イオンと陰イオンの塩を挙げることができる。
【0220】
【化14】
【0221】
ここで陽イオン[A]m+はオニウムであることが好ましく、その構造は、例えば、下記一般式(22)で表すことができる。
【0222】
【化15】
【0223】
ここで、R13は炭素原子数が1~60であり、炭素原子以外の原子をいくつ含んでいても構わない有機基である。aは1~5の整数である。a個のRは各々独立で、同一でも異なっていても構わない。また、少なくとも1つは、芳香環を有する上記有機基であることが好ましい。QはS,N,Se,Te,P,As,Sb,Bi,O,I,Br,Cl,F,N=Nからなる群から選ばれる原子或いは原子団である。また、陽イオン[A]m+中のQの原子価をqとしたとき、m=a-qなる関係が成り立つことが必要である(但し、N=Nは原子価0として扱う)。
【0224】
また、陰イオン[B]m-は、ハロゲン化物錯体であることが好ましく、その構造は、例えば、下記一般式(23)で表すことができる。
【0225】
【化16】
【0226】
ここで、Lはハロゲン化物錯体の中心原子である金属又は半金属(Metalloid)であり、B,P,As,Sb,Fe,Sn,Bi,Al,Ca,In,Ti,Zn,Sc,V,Cr,Mn,Co等である。Xはハロゲン原子である。bは3~7の整数である。また、陰イオン[B]m-中のLの原子価をpとしたとき、m=b-pなる関係が成り立つことが必要である。
【0227】
上記一般式の陰イオン[LXm-の具体例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(CB]、テトラフルオロボレート(BF、ヘキサフルオロホスフェート(PF、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF、ヘキサフルオロアルセネート(AsF、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl、トリス(ペンタフルオロメチル)トリフルオロリン酸イオン(FAPアニオン)等を挙げることができる。
【0228】
また、陰イオン[B]m-は、下記一般式(24)で表される構造のものも好ましく用いることができる。
【0229】
【化17】
【0230】
ここで、L,X,bは上記と同様である。また、その他用いることのできる陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CFSO、フルオロスルホン酸イオン(FSO、トルエンスルホン酸陰イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸陰イオン、カンファースルフォネート、ノナフロロブタンスルフォネート、ヘキサデカフロロオクタンスルフォネート、テトラアリールボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を挙げることができる。
【0231】
本開示では、このようなオニウム塩のなかでも、下記の(イ)~(ハ)の芳香族オニウム塩を使用することが特に有効である。これらのなかから、その1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0232】
(イ)フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、4-メトキシフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メチルフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート等のアリールジアゾニウム塩
【0233】
(ロ)ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のジアリールヨードニウム塩
【0234】
(ハ)下記群III又は群IVで表されるスルホニウムカチオンとヘキサフルオロアンチモンイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン等のスルホニウム塩
【0235】
【化18】
【0236】
【化19】
【0237】
また、その他好ましいものとしては、(η-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)〔(1,2,3,4,5,6-η)-(1-メチルエチル)ベンゼン〕-アイアン-ヘキサフルオロホスフェート等の鉄-アレーン錯体や、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(エチルアセトナトアセタト)アルミニウム、トリス(サリチルアルデヒダト)アルミニウム等のアルミニウム錯体とトリフェニルシラノール等のシラノール類との混合物等も挙げることができる。
【0238】
これらのなかでも、実用面と光感度の観点から、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、鉄-アレーン錯体を用いることが好ましく、下記一般式(2)で表される芳香族スルホニウム塩が、感度の点から更に好ましい。また、上記光酸発生剤が上記芳香族スルホニウム塩であることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を形成可能となるからである。
また、上記組成物は、硬化時に基材等の周辺部材への熱によるダメージを低減でき、周辺部材の選択の自由度が高くなるからである。
【0239】
【化20】
【0240】
(式中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又は炭素原子数2~10のエステル基を表し、
35は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基及び下記式(A)~(C)より選択される何れかの置換基を表し、
An1q1-はq1価の陰イオンを表し、
q1は1又は2の整数を表し、
p1は電荷を中性にする係数を表す。)
【0241】
【化21】
【0242】
(式中、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129、R130、R131、R132、R133、R134、R136、R137、R138、R139、R140、R141、R142、R143及びR144、R145、R146、R147、R148及びR149は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又は炭素原子数2~10のエステル基を表し、
*は式(2)中のSとの結合位置を表す。)
【0243】
上記一般式(2)で表される化合物において、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129、R130、R131、R132、R133、R134、R136、R137、R138、R139、R140、R141、R142、R143、R144、R145、R146、R147、R148及びR149で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0244】
上記一般式(2)で表される化合物において、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129、R130、R131、R132、R133、R134、R136、R137、R138、R139、R140、R141、R142、R143、R144、R145、R146、R147、R148及びR149で表される炭素原子数1~10のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s-ブチル、t-ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t-アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、エチルオクチル、2-メトキシエチル、3-メトキシプロピル、4-メトキシブチル、2-ブトキシエチル、メトキシエトキシエチル、メトキシエトキシエトキシエチル、3-メトキシブチル、2-メチルチオエチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ジフルオロエチル、トリクロロエチル、ジクロロジフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、デカフルオロペンチル、トリデカフルオロヘキシル、ペンタデカフルオロヘプチル、ヘプタデカフルオロオクチル、メトキシメチル、1,2-エポキシエチル、メトキシエチル、メトキシエトキシメチル、メチルチオメチル、エトキシエチル、ブトキシメチル、t-ブチルチオメチル、4-ペンテニルオキシメチル、トリクロロエトキシメチル、ビス(2-クロロエトキシ)メチル、メトキシシクロヘキシル、1-(2-クロロエトキシ)エチル、1-メチル-1-メトキシエチル、エチルジチオエチル、トリメチルシリルエチル、t-ブチルジメチルシリルオキシメチル、2-(トリメチルシリル)エトキシメチル、t-ブトキシカルボニルメチル、エチルオキシカルボニルメチル、エチルカルボニルメチル、t-ブトキシカルボニルメチル、アクリロイルオキシエチル、メタクリロイルオキシエチル、2-メチル-2-アダマンチルオキシカルボニルメチル、アセチルエチル、2-メトキシ-1-プロペニル、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシブチル、4-ヒドロキシブチル、1,2-ジヒドロキシエチル等が挙げられる。
【0245】
上記一般式(2)で表される化合物において、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129、R130、R131、R132、R133、R134、R136、R137、R138、R139、R140、R141、R142、R143及びR144、R145、R146、R147、R148及びR149で表される炭素原子数1~10のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、s-ブチルオキシ、t-ブチルオキシ、イソブチルオキシ、ペンチルオキシ、イソアミルオキシ、t-アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘキシルメチルオキシ、テトラヒドロフラニルオキシ、テトラヒドロピラニルオキシ、2-メトキシエチルオキシ、3-メトキシプロピルオキシ、4-メトキシブチルオキシ、2-ブトキシエチルオキシ、メトキシエトキシエチルオキシ、メトキシエトキシエトキシエチルオキシ、3-メトキシブチルオキシ、2-メチルチオエチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ等が挙げられる。
【0246】
本開示においては、上記R35が、上記化学式(A)~(C)より選択されるものであることが好ましく、なかでも、上記式(A)又は(B)より選択されるものであることが好ましい。上記R35が上述の構造を有することにより、組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるものとなるからである。
本発明の組成物においては、R35が、上記式(A)又は(C)より選択されるものも好ましく用いることができる。組成物は、硬化速度及び接着力に優れたものとなるからである。
本発明の組成物においては、酸発生剤の分散安定性の観点からは、R35が化学式(C)であるものであることが好ましい。一方、硬化速度及び接着力により優れたものとする観点からは、R35が式(A)であるものであることが好ましい。
本発明の組成物において、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができると共に、硬化速度及び接着力に優れたものとする観点からは、酸発生剤は、R35が式(A)であるものと、式(C)であるものとの両者を含むことが好ましい。
【0247】
酸発生剤は、R35が式(A)であるものと、式(C)であるものとの両者を含む場合、R35が式(A)であるもの含有量は、式(C)であるもの100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下とすることができ、なかでも、50質量部以上、200質量部以下であることが好ましく、80質量部以上120質量部以下であることが好ましい。かかる範囲の含有量であることで、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができると共に、硬化速度及び接着力に優れたものとなるからである。また、本発明の組成物は、耐透湿性等にも優れたものとなるからである。
【0248】
21、R22、R24、R25、R26、R27、R29、R30、R31、R32、R33及びR34は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、特に、水素原子であることが好ましい。上述の官能基であることで、組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるものとなるからである。
23及びR28は、なかでも、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、特に、水素原子又はハロゲン原子であることが好ましい。上述の官能基であることで、組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるものとなるからである。
【0249】
121、R122、R124、R125、R126、R127、R129、R130、R131、R132、R133、R134、R137、R138、R139、R140、R141、R142、R143、R144、R145、R146、R147、R148及びR149は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、特に、水素原子であることが好ましい。上述の官能基であることで、組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるものとなるからである。
123、R128及びR136は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、なかでも、水素原子又はハロゲン原子であることが好ましい。上述の官能基であることで、組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるものとなるからである。
【0250】
上記一般式(2)で表される化合物において、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129、R130、R131、R132、R133、R134、R136、R137、R138、R139、R140、R141、R142、R143及びR144、R145、R146、R147、R148及びR149で表される炭素原子数2~10のエステル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、フェノキシカルボニル、アセトキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、クロロアセチルオキシ、ジクロロアセチルオキシ、トリクロロアセチルオキシ、トリフルオロアセチルオキシ、t-ブチルカルボニルオキシ、メトキシアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等が挙げられる。
【0251】
上記一般式(2)で表される化合物において、An1q1-で表されるq1価の陰イオンとしては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(CB]、テトラフルオロボレート(BF、ヘキサフルオロホスフェート(PF、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF、ヘキサフルオロアルセネート(AsF、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl、トリス(ペンタフルオロメチル)トリフルオロリン酸イオン(FAPアニオン)、過塩素酸イオン(ClO、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CFSO、フルオロスルホン酸イオン(FSO、トルエンスルホン酸陰イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸陰イオン、カンファースルフォネート、ノナフロロブタンスルフォネート、ヘキサデカフロロオクタンスルフォネート、テトラアリールボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を挙げることができる。
【0252】
(2)熱酸発生剤
上記熱酸発生剤は、熱により酸を発生させることが可能な化合物であればどのようなものでも問題はなく、特に限定されるものではないが、好ましくは、熱によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩、又はその誘導体が、樹脂組成物を硬化した硬化物の耐熱性が良く、好適である。
かかる化合物の代表的なものとしては、上記「(1)光酸発生剤」の項に記載の[A]m+[B]m-で表される陽イオンと陰イオンの塩を用いることができる。
【0253】
上記熱酸発生剤は、なかでも、樹脂の硬化性が良く、硬化物の耐熱性が高いことから、下記一般式(12)で表されるスルホニウム塩、又は一般式(13)で表されるスルホニウム塩であることが好ましい。
【0254】
【化22】
【0255】
(式中、R221及びR222は、各々独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~20の芳香族基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、該アルキル基、芳香族基及びアリールアルキル基の1又は2以上の水素原子は、各々独立に、水酸基、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~20の芳香族基、ニトロ基、スルホン基又はシアノ基で置換される場合があり、R221とR222とは炭素原子数2~7のアルキル鎖で環構造を構成している場合があり、
223及びR224は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~20の芳香族基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、ニトロ基、シアノ基又はスルホン基を表し、該アルキル基、芳香族基及びアリールアルキル基の1又は2以上の水素原子は、各々独立に、水酸基、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~20の芳香族基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、ニトロ基、スルホン基又はシアノ基で置換される場合があり、
Anq’-はq’価のアニオンを表し、
q’は1又は2を表し、
p’は電荷を中性に保つ係数を表す。)
【0256】
【化23】
【0257】
(式中、R225は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~20の芳香族基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、水酸基、ニトロ基、スルホン基及びシアノ基を表し、該アルキル基、芳香族基及びアリールアルキル基の1又は2以上の水素原子は、各々独立に、水酸基、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~20の芳香族基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、ニトロ基、スルホン基又はシアノ基で置換される場合があり、
226は、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~20の芳香族基又は炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、該アルキル基、芳香族基及びアリールアルキル基の1又は2以上の水素原子は、各々独立に、水酸基、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~20の芳香族基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、ニトロ基、スルホン基又はシアノ基で置換される場合があり、
227は、構成するメチレン基が、-O-又はS-で表される基で置換される場合がある炭素原子数1~10のアルキル基を表し、
Anq’’-はq’’価のアニオンを表し、
q’’は1又は2を表し、
p’’は電荷を中性に保つ係数を表す。)
【0258】
上記一般式(12)及び(13)で表される化合物において、R223、R224及びR225で表されるハロゲン原子並びにR221、R222、R223、R224、R225、R226及びR227で表される基の水素原子の1つ又は2つ以上を置換する場合があるハロゲン原子と、R221、R222、R223、R224、R225、R226及びR227で表される炭素原子数1~10のアルキル基及びR221、R222、R223、R224、R225、R226及びR227で表される基の水素原子の1つ又は2つ以上を置換する場合がある炭素原子数1~10のアルキル基としては、上記「(1)光酸発生剤」の項に記載の一般式(2)中のR21等として用いられるハロゲン原子、アルキル基と同様とすることができる。
221、R222、R223、R224、R225、R226で表される炭素原子数6~20の芳香族基並びにR221、R222、R223、R224、R225、R226で表される基の水素原子の1つ又は2つ以上を置換する場合がある炭素原子数6~20の芳香族基としては、フェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。
221、R222、R223、R224、R225、R226で表される炭素原子数7~30のアリールアルキル基並びにR221、R222、R223、R224、R225、R226で表される基の水素原子の1つ又は2つ以上を置換する場合がある炭素原子数7~30のアリールアルキル基としては、上記で説明した炭素原子数1~10のアルキル基と炭素原子数6~20の芳香族基を組合せたものが使用できる。
【0259】
上記一般式(12)及び(13)中のp’Anq’-及びp’’Anq’’-で表されるq’又はq’’価のアニオンとしては、メタンスルホン酸アニオン、ドデシルスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ナフタレンスルホン酸アニオン、ジフェニルアミン-4-スルホン酸アニオン、2-アミノ-4-メチル-5-クロロベンゼンスルホン酸アニオン、2-アミノ-5-ニトロベンゼンスルホン酸アニオン、特開平10-235999号公報、特開平10-337959号公報、特開平11-102088号公報、特開2000-108510号公報、特開2000-168233号公報、特開2001-209969号公報、特開2001-322354号公報、特開2006-248180号公報、特開2006-297907号公報、特開平8-253705号公報、特表2004-503379号公報、特開2005-336150号公報、国際公開2006/28006号公報等に記載されたスルホン酸アニオン等の有機スルホン酸アニオンの他、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン、塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、オクチルリン酸イオン、ドデシルリン酸イオン、オクタデシルリン酸イオン、フェニルリン酸イオン、ノニルフェニルリン酸イオン、トリス(ペンタフルオロメチル)トリフルオロリン酸イオン(FAPアニオン)2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスホン酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、励起状態にある活性分子を脱励起させる(クエンチングさせる)機能を有するクエンチャー陰イオンやシクロペンタジエニル環にカルボキシル基やホスホン酸基、スルホン酸基等の陰イオン性基を有するフェロセン、ルテオセン等のメタロセン化合物陰イオン等が挙げられる。なかでも耐熱性が高い点から、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオンが好ましい。
【0260】
上記熱酸発生剤が熱により酸を発生し、組成物を硬化させることができる温度の範囲は、特に限定されないが、好適な耐熱性を有する硬化物が得られる点や、プロセス中の熱安定性が良好である点で、50℃以上250℃以下が好ましく、100℃以上220℃以下がより好ましく、130℃以上200℃以下がなお好ましく、150℃以上180℃以下が更に好ましい。上記組成物の硬化物の形成が容易だからである。
【0261】
また、本開示の組成物に用いられる熱酸発生剤として好適に使用できる市販品としては、例えば、サンエイドSI-B2A、サンエイドSI-B3A、サンエイドSI-B3、サンエイドSI-B4、サンエイドSI-60、サンエイドSI-80、サンエイドSI-100、サンエイドSI-110、サンエイドSI-150(以上三新化学工業(株)製)、アデカオプトンCP-66、アデカオプトンCP-77(以上(株)ADEKA製)等が挙げられる。これらは1種単独或いは2種以上を組合せて用いることができる。
【0262】
4.その他の成分
上記組成物は、色素、カチオン重合性成分及び酸発生剤を含むものであるが、必要に応じて溶剤及びその他の成分を含むことができる。
上記溶剤としては、有機溶媒(以下、単に溶媒と称する場合がある。)、水等を用いることができる。
上記その他の成分としては、各種添加剤を挙げることができる。
このような溶媒及び各種添加剤としては、国際公開2017/098996号公報等に記載のものと同様とすることができる。
上記溶媒及び水を含む溶剤としては、通常、25℃で液状であり、上記組成物を用いて硬化物を形成する際に乾燥除去できるものが用いられる。
【0263】
上記組成物は、樹脂成分として上記カチオン重合性成分を含むものであるが、必要に応じて、上記カチオン重合性成分以外の樹脂成分(以下、その他の樹脂成分と称する場合がある。)を含むことができる。
上記その他の樹脂成分としては、重縮合可能な化合物及びその重縮合物等を挙げることができる。
上記重縮合可能な化合物としては、ラジカル重合性化合物を挙げることができる。また、後述する重縮合物を構成するモノマー成分も挙げることができる。
【0264】
上記ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を有するものである。
上記ラジカル重合性基としては、ラジカルにより重合可能なものであればよく、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等のエチレン性不飽和基等を挙げることができる。
上記ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を1以上有するものとすることができ、ラジカル重合性基を1つ有する単官能化合物、ラジカル重合性基を2以上有する多官能化合物を用いることができる。
【0265】
上記ラジカル重合性化合物としては、酸価を有する化合物、酸価を有しない化合物等を用いることができる。
上記酸価を有する化合物としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸等のカルボキシル基等を有するアクリレート化合物、メタクリレート化合物等を挙げることができる。
上記酸価を有しない化合物としては、ウレタンアクリレート樹脂、ウレタンメタクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、エポキシメタクリレート樹脂、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル等のカルボキシル基等を有しないアクリレート化合物、メタクリレート化合物を挙げることができる。
上記ラジカル重合性化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。例えば、ラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和基を有し、酸価を有する化合物及びエチレン性不飽和基を有し、酸価を有しない化合物を組合せて使用することができる。
ラジカル重合性化合物は、2種以上を混合して使用する場合には、それらを予め共重合して共重合体として使用してもよい。
このようなラジカル重合性化合物等としては、より具体的には、特開2016-176009号公報に記載されるラジカル重合性化合物等を挙げることができる。
【0266】
本開示においては、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を形成可能となる観点は、上記ラジカル重合性化合物の含有量が少ないことが好ましい。
上記ラジカル重合性化合物の含有量は、上記組成物の固形分100質量部中に、10質量部以下であることが好ましく、なかでも、5質量部以下であることが好ましく、特に、1質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、0.5質量部以下であることが好ましく、なかでも特に0質量部、すなわち、ラジカル重合性化合物を含まないことが好ましい。
【0267】
上記重縮合物としては、2以上の繰り返し単位を含むオリゴマー及びポリマーとすることができる。
上記重縮合物としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、含ハロゲン樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
このような重縮合物としては、例えば、国際公開2017/150662号公報に熱可塑性樹脂として記載されているものと同様とすることができる。
【0268】
上記その他の成分は、増感剤を挙げることができる。
このような増感剤としては、例えば、アントラセン系化合物、ナフタレン系化合物、カルバゾール誘導体、ベンゾカルバゾール誘導体を好ましく用いることができ、なかでも、カルバゾール誘導体、ベンゾカルバゾール誘導体を好ましく用いることができ、特に、ベンゾカルバゾール誘導体を好ましく用いることができる。上記増感剤を用いることで、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得るとの効果を阻害せず、硬化性等を向上できるからである。また、色素のブリードアウトを効果的に抑制でき、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得るとの効果をより効果的に発揮できるからである。また、上記組成物は、耐透湿性等にもより優れたものとなるからである。
【0269】
上記アントラセン系化合物としては、アントラセン構造を有する化合物であればよく、例えば下記式(IIIa)で表されるものが挙げられる。
【0270】
【化23A】
【0271】
(式中、R201及びR202は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基又は炭素原子数2~12のアルコキシアルキル基を表し、R203は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
【0272】
201、R202及びR203で表される炭素原子数1~6のアルキル基としては、上記一般式(1)中のR等に用いられる炭素原子数1~30のアルキル基のうち、所定の炭素原子数を満たすものを用いることができる。
201及びR202で表される炭素原子数2~12のアルコキシアルキル基としては、上記一般式(1)中のR等に用いられる炭素原子数1~30のアルコキシ基のうち所定の炭素原子数のものを用いることができる。
【0273】
本開示においては、R201及びR202が、炭素原子数2~5のアルキル基であることが好ましい。上記基であることで、上記組成物は、硬化性に優れたものとなるからである。また、上記組成物は、耐透湿性等にも優れたものとなるからである。
本発明においては、R203が水素原子であることが好ましい。
【0274】
上記ナフタレン系化合物としては、ナフタレン構造を有する化合物であればよく、例えば、下記式(IIIb)で表されるものが挙げられる。
【0275】
【化23B】
【0276】
(式中、R204及びR205は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
【0277】
204及びR205で表される炭素原子数1~6のアルキル基としては、上記一般式(1)中のR等で表される炭素原子数1~30のアルキル基のうち、所定の炭素原子数を満たすものを用いることができる。
【0278】
本発明においては、なかでも、R204及びR205が、炭素原子数1~3のアルキル基であることが好ましい。上記基であることで、上記組成物は、硬化性に優れたものとなるからである。また、上記組成物は、耐透湿性等にも優れたものとなるからである。
【0279】
上記カルバゾール誘導体としては、カルバゾール構造を有する化合物であればよく、例えば、以下の一般式(VI)で表されるものが挙げられる。
【0280】
【化23C】
【0281】
(式中、R226aは水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、ビニル基又は炭素原子数6~20のアリール基を表し、R227a、R228a、R229a、R230a、R231a、R232a、R233a及びR234aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基を表す。)
【0282】
226a、R227a、R228a、R229a、R230a、R231a、R232a、R233a及びR234aで表される炭素原子数1~10のアルキル基及び炭素原子数6~20のアリール基の例としては、上記一般式(1)中のR等で表される炭素原子数1~30のアルキル基及び炭素原子数6~30のアリール基のうち所定の炭素原子数を満たすものを用いることができる。R227a、R228a、R229a、R230a、R231a、R232a、R233a及びR234aで表されるハロゲン原子としては、上記一般式(1)中のR等で表されるハロゲン原子と同じものが挙げられる。
【0283】
本発明においては、R226aが、炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましい。上記組成物は、硬化性に優れたものとなるからである。
本開示においては、R227a、R228a、R229a、R230a、R231a、R232a、R233a及びR234aが、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、なかでも、水素原子であることが好ましい。上記組成物は、硬化性に優れたものとなるからである。
【0284】
上記ベンゾカルバゾール誘導体としては、ベンゾカルバゾール構造を有するものであればよく、例えば、以下の一般式(VII-1)~(VII-3)で表されるものが挙げられる。
本開示においては、なかでも、上記ベンゾカルバゾール誘導体が、上記一般式(VII-1)で表される化合物であることが好ましい。上記組成物は、硬化性に優れたものとなるからである。
【0285】
【化23D】
【0286】
(式中、R235は水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、ビニル基又は炭素原子数6~20のアリール基を表し、R236、R237、R238、R239、R240、R241、R242、R243、R244及びR245は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基を表す。)
【0287】
【化23E】
【0288】
(式中、R246は水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、ビニル基又は炭素原子数6~20のアリール基を表し、R247、R248、R249、R250、R251、R252、R253、R254、R255及びR256は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、シアノ基、水酸基又はカルボキシル基を表す。)
【0289】
【化23F】
【0290】
(式中、R257は水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、ビニル基又は炭素原子数6~20のアリール基を表し、R258、R259、R260、R261、R262、R263、R264、R265、R266及びR267は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基を表す。)
【0291】
235、R236、R237、R238、R239、R240、R241、R242、R243、R244、R245、R246、R247、R248、R249、R250、R251、R252、R253、R254、R255、R256、R257、R258、R259、R260、R261、R262、R263、R264、R265、R266及びR267で表される、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基としては、上記一般式(1)中のR等で表されるハロゲン原子、炭素原子数1~30のアルキル基及び炭素原子数6~30のアリール基のうち、所定の炭素原子数を満たすものを用いることができる。
【0292】
本開示においては、式(VII-1)~(VII-3)で表されるベンゾカルバゾール誘導体の中でも、ベンゾカルバゾール環の窒素原子に結合する基であるR235、R246及びR257が、炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数3~10の分岐アルキル基であることが好ましい。上記組成物は、硬化性に優れたものとなるからである。
本発明においては、上記R236、R237、R238、R239、R240、R241、R242、R243、R244、R245、R247、R248、R249、R250、R251、R252、R253、R254、R255、R256、R258、R259、R260、R261、R262、R263、R264、R265、R266及びR267が、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、なかでも、水素原子であることが好ましい。上述の基が上述の基又は原子であることで、上記組成物は、硬化性に優れたものとなるからである。
【0293】
上記増感剤の含有量としては、カチオン重合性成分同士の重合を促進可能なものであればよく、例えば、単独又は複数種の合計で、上記組成物の固形分100質量部中に、0.01質量部以上6質量部以下とすることができ、なかでも、0.1質量部以上3質量部以下であることが好ましく、特に、0.5質量部以上2質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性に優れたものとなるからである。
【0294】
上記増感剤のカチオン重合性化合物に対する使用割合は特に限定されず、本発明の目的を阻害しない範囲内で概ね通常の使用割合で使用すればよい。
上記増感剤の含有量は、例えば、酸発生剤100質量部に対して、1質量部以上200質量部以下であることが好ましく、5質量部以上100質量部以下であることが好ましく、10質量部以上50質量部以下であることが好ましく、15質量部以上30質量部以下であることが好ましい。上記使用割合が上述の範囲であることで、硬化性に優れたものとなるからである。
【0295】
5.組成物
上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得るとの観点から、硬化前後の最小透過率の差の絶対値が小さいことが好ましい。上記差の絶対値の小さい硬化物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を形成可能となるからである。
【0296】
上記色素、カチオン重合性成分及び酸発生剤の含有量は、それぞれ、上記「1.色素」、「2.カチオン重合性成分」及び「3.酸発生剤」の項に記載の含有量を組合せることができる。
上記組成物は、例えば、上記色素の含有量が、上記組成物の固形分100質量部中に、0.01質量部以上10質量部以下であり、上記カチオン重合性成分の含有量が、上記組成物の固形分100質量部中に、50質量部以上であり、上記酸発生剤の含有量が、上記組成物の固形分100質量部中に、0.01質量部以上10質量部以下であるものとすることができる。上記各成分の含有量が上述の組合せであることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を容易に得ることができる。
【0297】
上記組成物の製造方法としては、上記各成分を所望量含む組成物を形成可能な方法であれば問題はなく、公知の混合手段を用いる方法を挙げることができる。
【0298】
上記組成物の硬化方法としては、酸発生剤の種類に応じて適宜設定されるものである。
上記硬化方法としては、酸発生剤が光酸発生剤である場合には、組成物に対して、紫外線等のエネルギー線を照射するエネルギー線照射処理を行う方法を用いることができる。
上記組成物は、酸発生剤が光酸発生剤である場合には、エネルギー線照射により通常は0.1秒~数分後に指触乾燥状態或いは溶媒不溶性の状態に硬化することができる。
上記エネルギー線及びエネルギー線への暴露時間としては、国際公開2013/172145号公報等に記載の内容と同様とすることができる。
【0299】
上記硬化方法は、酸発生剤が熱酸発生剤である場合には、組成物に対して、加熱処理を行う方法を用いることができる。
上記組成物への加熱方法、加熱条件、硬化時間等については、国際公開2015/240123号公報等に記載の内容と同様とすることができる。
【0300】
本開示の組成物の具体的な用途としては、光学フィルタ、塗料、コーティング剤、ライニング剤、接着剤、印刷版、絶縁ワニス、絶縁シート、積層板、プリント基板、半導体装置用・LEDパッケージ用・液晶注入口用・有機エレクトロルミネッセンス(EL)用・光素子用・電気絶縁用・電子部品用・分離膜用等の封止剤、成形材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め剤、半導体用・太陽電池用等のパッシベーション膜、層間絶縁膜、保護膜、プリント基板、或いはカラーテレビ、PCモニタ、携帯情報端末、CCDイメージセンサのカラーフィルタ、プラズマ表示パネル用の電極材料、印刷インク、歯科用組成物、光造形用樹脂、液状及び乾燥膜の双方、微小機械部品、ガラス繊維ケーブルコーティング、ホログラフィ記録用材料の各種の用途を挙げることができる。
【0301】
上記光学フィルタとしては、光学フィルタを透過する光のスペクトル形状の変化が要求されるものとすることができ、例えば、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、CCDイメージセンサ、CMOSセンサ、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の画像表示装置用、分析装置用、半導体装置製造用、天文観測用、光通信用、眼鏡レンズ、窓等の用途に用いることができる。
【0302】
本開示においては、上記組成物が、光学フィルタ用であることが好ましく、なかでも、画像表示装置用であることが好ましく、特に、画像表示装置の色調整フィルタ用であることが好ましく、なかでも特に、2種類の発色の可視光間の重なりを低減する画像表示装置の色調整フィルタ用であることが好ましく、なかでも特に、平面視上2種類の発色の発光光の両者が透過するように配置される画像表示装置の色調整フィルタ用であることが好ましい。
上記用途であることで、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタを製造可能であるとの効果をより効果的に発揮できるからである。
上記用途は、なかでも、上記色素が、450nm以上550nm未満に最大吸収波長を有する色素である場合には、青色光及び緑色光の発光光を有する画像表示装置の色調整フィルタ用であることが好ましく、なかでも特に、平面視上青色の画素及び緑色の画素と重なり、青色光及び緑色光の発光光の両者が透過するように配置される画像表示装置の色調整フィルタ用であることが好ましい。
上記用途は、青色の画素又は緑色の画素と重なるように配置される画像表示装置の色調製用フィルタ用であることも好ましい。
上記用途であることで、所望の波長範囲の光吸収性に優れた光学フィルタを製造可能であるとの効果をより効果的に発揮できるからである。
また、上記組成物の用途としては、フレキシブル性が要求される用途も挙げることができる。
具体的には、上記組成物は、フレキシブル性を有する画像表示装置用の光学フィルタ等に好ましく用いることができる。
【0303】
B.硬化物
次に、本開示の硬化物について説明する。
本開示の硬化物は、上述の組成物の硬化物であることを特徴とするものである。
【0304】
本開示によれば、上記硬化物は、上述の組成物を硬化させたものであることで、例えば、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタ等として使用できる。
【0305】
本開示の硬化物は、上述の組成物を用いるものである。
以下、本開示の硬化物について詳細に説明する。
なお、上記組成物については、上記「A.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0306】
上記硬化物は、通常、カチオン重合性成分の重合物を含むものである。
上記カチオン重合性成分の重合物の含有量は、上記「A.組成物」の項に記載のカチオン重合性成分の含有量と同様とすることができる。
上記硬化物に含まれるカチオン重合性成分の残存量としては、硬化物の用途等に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、硬化物に含まれるカチオン重合性成分の重合物との合計100質量部中に、10質量部以下とすることができ、なかでも、1質量部以下であることが好ましい。上記硬化物は密着性等に優れ、更に、強度等にも優れたものとなるからである。
【0307】
上記硬化物の平面視形状、厚み等については、上記硬化物の用途等に応じて適宜設定することができる。
上記厚みとしては、例えば、0.05μm以上300μm以下等とすることができる。
【0308】
上記硬化物の製造方法としては、上記組成物の硬化物を所望の形状となるように形成できる方法であれば特に限定されるものではない。
このような製造方法としては、例えば、後述する「F.硬化物の製造方法」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0309】
上記硬化物の用途等については、上記「A.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0310】
C.光学フィルタ
次に、本開示の光学フィルタについて説明する。
本開示の光学フィルタは、上述の硬化物を含む光吸収層を有することを特徴とするものである。
【0311】
本開示によれば、上記光吸収層が上述の硬化物を含むことにより、画像表示装置の色再現性に優れたものとなる。
【0312】
本開示の光学フィルタは、上記光吸収層を有するものである。
以下、本開示の光学フィルタに含まれる光吸収層について詳細に説明する。
【0313】
1.光吸収層
上記光吸収層は、上述の硬化物を含むものである。
上記光吸収層に含まれる上記硬化物の含有量は、通常、光吸収層100質量部中に、100質量部である。すなわち、上記光吸収層は、上記硬化物からなるものとすることができる。
上記硬化物については、上記「B.硬化物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0314】
上記光吸収層の平面視形状、面積及び厚み等の形状については、光学フィルタの用途等に応じて適宜設定することができる。
上記光吸収層の形成方法としては、所望の形状、厚みの光吸収層を形成可能なものであればよく、公知の塗膜の形成方法を用いることができる。上記形成方法としては、例えば、後述する「D.硬化物の製造方法」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0315】
2.光学フィルタ
上記光学フィルタは、上記光吸収層のみを含むものであってもよく、上記光吸収層以外のその他の層を含むものであってもよい。
上記その他の層としては、透明支持体、下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層、粘着剤層等を挙げることができる。
このような各層の内容及びその形成方法等については、光学フィルタに一般的に用いられるものとすることができ、例えば、特開2011-144280号公報、国際公開第2016/158639号等に記載の内容と同様とすることができる。
上記光吸収層は、例えば、上記透明支持体及び任意の各層の間を接着する接着層等として用いられるものであっても構わない。
また、その際には、上記光学フィルタは、接着層としての光吸収層の表面に、易密着したポリエチレンテレフタレートフィルム等の公知のセパレータフィルムを設けることもできる。
【0316】
上記光学フィルタは、画像表示装置用として用いる場合、通常ディスプレイの前面に配置することができる。例えば、光学フィルタをディスプレイの表面に直接貼り付けても問題はなく、ディスプレイの前に前面板や電磁波シールドが設けられている場合は、前面板又は電磁波シールドの表側(外側)又は裏側(ディスプレイ側)に光学フィルタを貼り付けても構わない。
上記光学フィルタは、例えば、画像表示装置に含まれる各部材、例えば、カラーフィルタ、偏光板等の光学部材として用いられるものであっても構わない。
また、上記光学フィルタは、上記画像表示装置に含まれる各部材に直接積層されるものであっても構わない。
【0317】
D.硬化物の製造方法
次に、本開示の硬化物の製造方法について説明する。
本開示の硬化物の製造方法は、上述の組成物を硬化する工程を含むことを特徴とするものである。
【0318】
本開示によれば、上記硬化物の製造方法は、上記組成物を硬化させるものであるため、例えば、所望の波長領域の光吸収性に優れた光学フィルタ等として使用可能な硬化物を得ることができる。
【0319】
本開示の硬化物の製造方法は、上記硬化する工程を含むものである。
以下、本開示の硬化物の製造方法の各工程について詳細に説明する。
なお、上記組成物は、上記「A.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0320】
1.硬化する工程
上記硬化する工程は、上述の組成物を硬化する工程である。
上記組成物の硬化方法としては、組成物に含まれる酸発生剤等の開始剤の種類等に応じて適宜設定することができる。
このような硬化方法としては、例えば、組成物が開始剤として、光酸発生剤、光ラジカル開始剤等のように、光照射により重合性化合物の重合物を得ることができるものである場合には、上記組成物に対して、紫外線等のエネルギー線を照射するエネルギー線照射処理を行う方法を用いることができる。
また、上記硬化方法は、組成物が開始剤として、熱酸発生剤、熱ラジカル開始剤等のように、加熱処理により重合性化合物の重合物を得ることができるものである場合には、組成物に対して、加熱処理を行う方法を用いることができる。
なお、このようなエネルギー線照射、加熱処理等については、上記「A.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0321】
2.その他の工程
上記製造方法は、必要に応じてその他の工程を有するものであっても構わない。
このような工程としては、組成物を硬化する工程の前に、上記組成物を塗布する工程等を挙げることができる。
組成物を塗布する方法としては、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の方法を用いることができる。
上記基材としては、硬化物の用途等に応じて適宜設定することができ、ソーダガラス、石英ガラス、半導体基板、金属、紙、プラスチック等を含むものを挙げることができる。
また、上記硬化物は、基材上で形成された後、基材から剥離して用いても、基材から他の被着体に転写して用いても構わない。
【0322】
3.硬化物
本開示の製造方法により製造される硬化物及び用途等については、上記「C.硬化物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0323】
E.その他
1.色素と、カチオン重合性成分と、酸発生剤と、を含む組成物。
2.上記色素が、ピロメテン系色素又はシアニン系色素である1に記載の組成物。
3.上記ピロメテン系色素が、上記一般式(101)で表される化合物であり、上記シアニン系色素が、上記一般式(102)で表される化合物である2に記載の組成物。
4.上記色素が、450nm以上550nm未満に最大吸収波長を有するものである1~3の何れか一項に記載の組成物。
5.上記色素が、上記組成物の固形分100質量部中に、0.01質量部以上10質量部以下含まれており、上記カチオン重合性成分が、上記組成物の固形分100質量部中に、50質量部以上含まれており、上記酸発生剤が、上記組成物の固形分100質量部中に、0.01質量部以上10質量部以下含まれている、1~4の何れか一項に記載の組成物。
6.上記酸発生剤が、上記一般式(2)で表される光酸発生剤を含む1~5の何れか一項に記載の組成物。
7.上記カチオン重合性成分が、エポキシ化合物及びオキセタン化合物から選択される少なくとも1種を含む、1~6の何れか一項に記載の組成物。
8.上記組成物が、光学フィルタ用である1~7の何れか一項に記載の組成物。
9.1~8の何れか一項に記載の組成物の硬化物。
10.9に記載の硬化物を含む光吸収層を有する光学フィルタ。
11.1~8の何れか一項に記載の組成物を硬化する工程を含む、硬化物の製造方法。
【0324】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例
【0325】
以下、実施例等を挙げて本開示を更に詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0326】
[製造例1~2]
特開2006-189751号公報に記載のジピロメテン系化合物の製造方法により、下記式(C―1)及び(C-2)で表される化合物を得た。
質量分析にて目的物の分子量であることを確認した。
【0327】
[製造例3~4]
特許第6305331号公報に記載のシアニン化合物の製造方法により、下記式(C-3)及び(C-4)で表される化合物を得た。
【0328】
[製造例5~6]
特開2006-189751号公報に記載のアザポルフィリン系化合物の製造方法により、下記式(C-5)及び(C-6)で表される化合物を得た。
【0329】
【化24】
【0330】
【化24A】
【0331】
[実施例1~13及び比較例1~4]
下記表1~表2に記載の配合に従って、カチオン重合性成分、酸発生剤、色素、ラジカル重合性化合物、光ラジカル開始剤、溶剤及び添加剤を配合した後、配合物を5μmのメンブレンフィルタを通し、不溶解分を除去して組成物を得た。
また、各成分は以下の材料を用いた。
なお、表中の配合量は、各成分の質量部を表すものである。
【0332】
[実施例14~18]
下記表3に記載の配合に従って、カチオン重合性成分、酸発生剤、色素、ラジカル重合性化合物、光ラジカル開始剤、溶剤及び添加剤を配合した後、配合物を5μmのメンブレンフィルタを通し、不溶解分を除去して組成物を得た。
また、各成分は以下の材料を用いた。
なお、表中の配合量は、各成分の質量部を表すものである。
【0333】
(カチオン重合性成分)
A1-1:脂肪族エポキシ化合物、グリシジルエーテル型化合物、低分子量化合物(ADEKA社製ED-523T、一般式(5-4)で表され、Yが分岐のアルキレン基である化合物)
A1-2:脂肪族エポキシ化合物、グリシジルエーテル型化合物、低分子量化合物(ADEKA社製ED-506、一般式(5-4)で表され、Yが分岐のアルキレン基である化合物)
A1-3:芳香族エポキシ化合物、グリシジルエーテル型化合物、低分子量化合物(ADEKA社製EP-4100E、ビスフェノールA型エポキシ化合物)
A1-4:芳香族エポキシ化合物、グリシジルエーテル型化合物、低分子量化合物(ADEKA社製EP-4901)
A1-5:芳香族エポキシ化合物、グリシジルエーテル型化合物、低分子量化合物(ADEKA社製EP-4000)
A1-6:脂環族エポキシ化合物、グリシジルエーテル型化合物、低分子量化合物(ADEKA社製EP-4080E、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物)
A1-7:シクロヘキセンオキシド構造を有する脂環族エポキシ化合物、低分子量化合物(ダイセル社製セロキサイド2021P、一般式(5-1)で表され、Xがアルキレン基及びエステル結合とが連結した基である化合物)
A1-8:脂環族エポキシ化合物、高分子量化合物(ダイセル社製EHPE-3150、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物、脂環族エポキシ化合物A)
A1-9:オキセタン化合物、低分子量化合物(東亜合成社製OXT-211)
【0334】
(ラジカル重合性化合物)
A2-1:ラジカル重合性化合物(日本化薬社製カヤラッドDPHA(ジペンタエリスリトール ペンタ及びヘキサアクリレートの混合物))
(熱可塑性樹脂)
A3-1:熱可塑性樹脂(メタクリル樹脂、住友化学社製スミペックスLG)
【0335】
(酸発生剤)
B1-1:光酸発生剤、芳香族スルホニウム塩(下記式(B1-1)で表される化合物)
B1-2:光酸発生剤、芳香族スルホニウム塩(下記式(B1-2)で表される化合物)
B1-3:光酸発生剤、芳香族スルホニウム塩(下記式(B1-3)で表される化合物)
B1-4:光酸発生剤、芳香族スルホニウム塩(下記式(B1-4)で表される化合物)
B1-5:光酸発生剤、芳香族スルホニウム塩(サンアプロ社製CPI-100P)
B1-6:熱酸発生剤、芳香族スルホニウム塩(三新化学工業株式会社製SI-110)
B1-7:光酸発生剤、芳香族スルホニウム塩(下記式(B1-7)で表される化合物)
【0336】
【化25】
【0337】
【化25A】
【0338】
(ラジカル開始剤)
B2-1:光ラジカル開始剤(1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(IRGACURE 184))
【0339】
(色素)
C-1:ピロメテン系色素、一般式(101)で表される化合物(製造例1で製造された上記式(C-1)で表される化合物、最大吸収波長496nm(クロロホルム中))
C-2:ピロメテン系色素、一般式(101)で表される化合物(製造例2で製造された上記式(C-2)で表される化合物、最大吸収波長486nm~490nm(エタノール中))
C-3:シアニン系色素、一般式(102)で表される化合物(製造例3で製造された上記式(C-3)で表される化合物、最大吸収波長493nm(クロロホルム中))
C-4:シアニン系色素、一般式(102)で表される化合物(製造例3で製造された上記式(C-4)で表される化合物、最大吸収波長478nm(クロロホルム中))
C-5:テトラアザポルフィリン系色素、一般式(1)で表される化合物(製造例5で製造された上記式(C-5)で表される化合物、最大吸収波長591nm(クロロホルム中))
C-6:テトラアザポルフィリン系色素、一般式(1)で表される化合物(製造例6で製造された上記式(C-6)で表される化合物、最大吸収波長594nm(クロロホルム中))
【0340】
(添加剤)
D-1:レベリング剤(東レダウコーニング社製SH-29PPaint aditive)
D-2:界面活性剤(ビックケミー社製BYK-333)
D-3:酸化防止剤(ADEKA社製AO-60)
D-4:酸化防止剤(ADEKA社製AO-20)
D-5:増感剤(下記式(D-5)で表される化合物)
D-6:増感剤(下記式(D-6)で表される化合物)
D-7:増感剤(下記式(D-7)で表される化合物)
【0341】
【化25B】
【0342】
(溶剤)
E-1:メチルエチルケトン(MEK)
E-2:ジアセトンアルコール
E-3:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)
【0343】
[評価]
各種の測定については、以下の方法に従って行った。
【0344】
評価1.組成物及びその硬化物の最小透過率及び最大吸収波長
実施例及び比較例の組成物を用いて、以下の方法により硬化前の評価用サンプルと硬化後の評価用サンプルを準備し、日本分光製可視紫外吸光度計V-670を用いて、透過スペクトルを測定し、380nm以上780nm以下の範囲における最小透過率とその時の波長(最大吸収波長)を得た。結果を下記表1~3に示す。
なお、比較例3~4については、硬化性組成物ではないため、硬化前の評価用サンプルの測定結果のみ示す。
また、色素として2種類以上の色素を含む場合には、波長が最も短い最大吸収波長を示す色素についての最大吸収波長を示した。例えば、色素C-1及び色素C-5の2種類の色素を含む実施例14では、最大吸収波長が短い色素C-1に基づいて得られる最大吸収波長を表に示した。
【0345】
(硬化前の評価用サンプルの作製方法)
(1)上記組成物を、基材(東洋紡製PETフィルムA9300、100μm)に、バーコート法で塗布した。
塗膜の厚みは、以下の硬化前の評価用サンプルの最大吸収波長での透過率が6%以下となるように調整した。
(2)次いで、オーブンにて塗膜を、80℃、5分間の条件で乾燥処理して溶剤を除去し、硬化前の評価用サンプルを得た。
【0346】
(硬化後の評価用サンプルの作製方法)
(1)硬化前の評価用サンプルに対して、各実施例及び比較例毎に以下の硬化処理を行い、硬化後の評価用サンプルを得た。
(3-1)実施例1~12、実施例14~18及び比較例1~2では、乾燥処理後の塗膜に対して高圧水銀ランプを用いて紫外線を700mJ/cm照射して硬化処理を行い、評価用サンプルを得た。
(3-2)実施例13では、オーブンにて乾燥処理後の塗膜に対して、100℃、20分の加熱処理を行って硬化処理を行い、評価用サンプルを得た。
【0347】
評価2.硬化物の最小透過率と組成物の最小透過率との差の絶対値
実施例1~12、実施例14~18及び比較例1~2の組成物を用いて、以下の方法により、硬化前の評価用サンプルと硬化後の評価用サンプルの最小透過率を測定し、その差の絶対値を測定した。
また、最小透過率の差の絶対値は、上記「評価1.組成物及びその硬化物の最小透過率及び最大吸収波長」に記載と同様に、色素として2種類以上の色素を含む場合には、波長が最も短い最大吸収波長を示す色素についての最大吸収波長における透過率の差を測定した。例えば、色素C-1及び色素C-5の2種類の色素を含む実施例14では、最大吸収波長が短い色素C-1に基づいて得られる最大吸収波長である497nmでの透過率の差を測定し、表に示した。
また、硬化のための露光量として、700mJ/cm及び3000mJ/cmの2水準で行った。結果を下記表1~3に示す。
なお、硬化前の評価用サンプルは、上記「評価1.組成物及びその硬化物の最小透過率及び最大吸収波長」で用いたものを用いた。
硬化後の評価用サンプルのうち、露光量が700mJ/cmであるものは、上記「評価1.組成物及びその硬化物の最小透過率及び最大吸収波長」で作製した硬化後の評価用サンプルを用いた。
硬化後の評価用サンプルのうち、露光量が3000mJ/cmであるものは、上記「評価1.組成物及びその硬化物の最小透過率及び最大吸収波長」で作製した硬化後の評価用サンプルの作製方法として紫外線の露光量を3000mJ/cm照射した以外は、同様の方法により得た。
【0348】
評価3.カール性
上記「評価1.硬化物の最大吸収波長」と同様の方法で作製した評価用サンプルを10cm角に切り取り、まず左側半分(5cm分)をガラス板で押さえ、そり上がった右側の2角のそれぞれの高さを測定し、次に右側半分(5cm分)をガラス板で押さえ、そり上がった左側の2角のそれぞれの高さを測定し、4つの測定値の平均(単位:mm)をカール性とした。
目視で反り返りがあるかを評価し、以下の基準で評価した。結果を下記表1~3に示す。
○:4隅の平均が10mm未満
×:4隅の平均が10mm以上
なお、カール性評価が「〇」であると、硬化物は、カールが少なく、カール性に優れることを示す。
【0349】
評価4.可撓性
上記「評価1.硬化物の最大吸収波長」と同様の方法で作製した評価用サンプルを10cm角に切り取り、直径10mmの金属棒に巻き付けてクラックが入らないかどうかを目視にて以下の基準で評価した。結果を下記表1~3に示す。
○:クラック無し
×:クラック有り
なお、可撓性評価が「〇」であると、硬化物は、可撓性に優れることを示す。
【0350】
評価5.耐溶剤性
上記「評価1.硬化物の最大吸収波長」と同様の方法で作製した評価用サンプルの、上記組成物の硬化膜に、アセトンを染み込ませた綿棒を擦り付け、10往復後の染料の色移りを目視で観察し、以下の基準で評価した。結果を下記表1~3に示す。
○:色移り無し
×:色移り有り
なお、耐溶剤性が「〇」であると、硬化物は、経時的な色変化が少ない点で優れることを示す。
【0351】
評価6.色素単体の最大吸収波長
上記色素(C-1~C-6)の欄に記載の最大吸収波長は、以下の方法を用いて測定した。
まず、溶解後の最大吸収波長での透過率が5%程度(3%以上7%以下)となるように、クロロホルム(C-2についてはエタノール)に溶解して、色素溶液を調製した。
次いで、色素溶液を、石英セル(光路長10mm、厚み1.25mm)に充填し、分光光度計(例えば、日本分光製可視紫外吸光度計V-670)を用いて透過率を測定し、380nm以上780nm以下の波長範囲における透過率が最小値となる波長(最大吸収波長)を得た。
【0352】
【表1】
【0353】
【表2】
【0354】
【表3】
【0355】
表1~2より、実施例1~13の組成物は、450nm以上550nm未満に最大吸収波長を有することが確認できた。
また、実施例1~13の組成物は、比較例1~2の組成物と比較して、硬化前後で透過率変化が少なく、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れた硬化物が得られることが確認できた
また、実施例1~12の組成物は、比較例1~2と比較して、3000mJ/cmの露光処理を行った場合でも、硬化前後の最小透過率の差の絶対値が小さいことが確認できた。
また、表には記載しないが、実施例1の色素の含有量を0.05質量部、0.1質量部、0.2質量部とした実施例(実施例1-1、実施例1-2、実施例1-3)と、比較例1の色素の含有量を0.05質量部、0.1質量部、0.2質量部とした比較例(比較例1-1、比較例1-2、比較例1-3)について、上記「評価2.硬化物の最小透過率と組成物の最小透過率との差の絶対値」に記載の評価を行った。
その結果、700mJ/cm及び3000mJ/cmの何れの評価において、実施例1-1~1-3は、それぞれ色素の含有量が同量の比較例1-1~1-3よりも、透過率差の絶対値が1.0%以上小さい結果となることが確認できた。
このような結果より、上記組成物は、特定波長の光を吸収して、色純度を高めること、例えば、青色発光及び緑色発光の色純度を高めることが可能であり、画像表示装置の色再現性に優れた光学フィルタに特に有用であることが確認できた。
【0356】
実施例1~13及び比較例1~2のカール性評価から、実施例1~13の組成物は、硬化収縮が少なく、密着性等に優れたものとなることが確認できた。
実施例1~13と比較例1~2の可撓性評価から、実施例1~13の組成物は、可撓性が良好であり、例えば、フレキシブル性を有する画像表示装置に用いられる光学フィルタ等に特に有用であることが確認できた。
実施例1~13比較例3~4の耐溶剤性の評価より、上記組成物は、カチオン重合性成分を含むことで、三次元架橋された塗膜を形成でき、色素の保持性能等の耐久性に優れた硬化物を得られることが確認できた。
【0357】
表3より、実施例14~18の組成物は、450nm以上550nm未満に最大吸収波長を有することが確認できた。実施例15~18のように、最大吸収波長の異なる色素を複数混合した場合でも、例えば、両者が凝集等することなく、それぞれの色素に基づいた最大吸収波長を示す硬化物が得られることが確認できた。
また、実施例14~18の組成物は、比較例1~2の組成物と比較して、硬化前後で透過率変化が少なく、450nm以上550nm未満の波長領域の光吸収性に優れた硬化物が得られることが確認できた
また、実施例14~18の組成物は、比較例1~2と比較して、3000mJ/cmの露光処理を行った場合でも、硬化前後の最小透過率の差の絶対値が小さいことが確認できた。
このような結果より、実施例14~18の組成物は、特定波長の光を吸収して、色純度を高めること、例えば、青色発光及び緑色発光の色純度を高めることが可能であり、画像表示装置の色再現性に優れた光学フィルタに特に有用であることが確認できた。
【0358】
実施例14~18及び比較例1~2のカール性評価から、実施例14~18の組成物は、硬化収縮が少なく、密着性等に優れたものとなることが確認できた。
実施例14~18と比較例1~2の可撓性評価から、実施例14~18の組成物は、可撓性が良好であり、例えば、フレキシブル性を有する画像表示装置に用いられる光学フィルタ等に特に有用であることが確認できた。
実施例14~18比較例3~4の耐溶剤性の評価より、上記組成物は、カチオン重合性成分を含むことで、三次元架橋された塗膜を形成でき、色素の保持性能等の耐久性に優れた硬化物を得られることが確認できた。