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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/06 20120101AFI20231030BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20231030BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
B24B41/06 L
B24B7/04 A
H01L21/304 622J
H01L21/304 631
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019151169
(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公開番号】P2021030336
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】辻本 浩平
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/021644(WO,A1)
【文献】特開2005-011839(JP,A)
【文献】特開平10-125768(JP,A)
【文献】特開2000-038556(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01022778(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/06
B24B 7/04
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハの裏面を研削するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの表面に粘着テープを貼着する粘着テープ貼着工程と、
ウエーハの表面に貼着された粘着テープに粘着層が形成されていない熱圧着シートを配設する熱圧着シート配設工程と、
熱圧着シートを加熱すると共に平坦部材で押圧して、熱圧着シートを粘着テープに圧着して一体化する一体化工程と、
研削装置のチャックテーブルに熱圧着シート側を保持しウエーハの裏面に研削水を供給しながら所望の厚さに研削する研削工程と、
該研削工程の後、該チャックテーブルから一体化されたウエーハを搬出し、熱圧着シートを粘着テープから剥離する剥離工程と、から少なくとも構成されるウエーハの加工方法。
【請求項2】
該剥離工程において、熱圧着シートを部分的に加熱、又は冷却して温度差を生じさせて粘着テープから該熱圧着シートを剥離する請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該熱圧着シートは、ポリオレフィン系シート、又はポリエステル系シートである請求項1、又は2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項4】
該熱圧着シートが該ポリオレフィン系シートである場合は、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかから選択される請求項3に記載のウエーハの加工方法。
【請求項5】
該一体化工程において熱圧着シートを加熱する際の温度は、該ポリエチレンシートの場合は120℃~140℃であり、該ポリプロピレンシートの場合は160℃~180℃であり、該ポリスチレンシートの場合は220℃~240℃である請求項4に記載のウエーハの加工方法。
【請求項6】
該熱圧着シートがポリエステル系シートである場合は、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシートのいずれかから選択される請求項3に記載のウエーハの加工方法。
【請求項7】
該一体化工程において熱圧着シートを加熱する際の温度は、該ポリエチレンテレフタレートシートの場合は250℃~270℃であり、該ポリエチレンナフタレートシートの場合は160℃~180℃である請求項6に記載のウエーハの加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハの裏面を研削するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、表面に粘着テープが貼着されて保護された後、研削装置のチャックテーブルに粘着テープ側が保持されて裏面が研削されて所望の厚みに形成される(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
上記したようにして所望の厚みに形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割されて携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0004】
また、研削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する研削砥石を回転可能に備えた研削手段と、ウエーハと研削砥石とに研削水を供給する研削水供給手段と、研削されたウエーハを洗浄する洗浄手段と、から概ね構成されていて、ウエーハを所望の厚みに研削することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-246491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した研削装置によってウエーハの裏面を研削すると、研削によって発生した研削屑の殆どは、研削水によってチャックテーブルの外部に流されるものの、チャックテーブルの上面(保持面)に負圧を作用させてウエーハを吸引し保持していることから、チャックテーブルとウエーハとの隙間から研削屑の一部が入り込み、チャックテーブルによって保持されているウエーハに貼着された保護テープの下面側に付着する。特に、ウエーハの表面に糊剤等を介して粘着テープを貼着した場合、ウエーハの表面側にウネリが形成され、このウネリがチャックテーブルとウエーハとの密着度を低下させ、チャックテーブルとウエーハとの隙間に研削屑が入り込む要因と成り得る。さらに、このように研削加工が完了したウエーハは、研削手段に配設された洗浄手段によって研削面が洗浄されるものの、チャックテーブルに保持されていたウエーハの粘着テープ側に対する洗浄が十分になされないことから、次工程に搬送された際に、汚染源となってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、研削加工が施される際に、チャックテーブルに保持されるウエーハの保持面側に貼着された粘着テープに研削屑を付着させないウエーハの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハの裏面を研削するウエーハの加工方法であって、ウエーハの表面に粘着テープを貼着する粘着テープ貼着工程と、ウエーハの表面に貼着された粘着テープに粘着層が形成されていない熱圧着シートを配設する熱圧着シート配設工程と、熱圧着シートを加熱すると共に平坦部材で押圧して、熱圧着シートを粘着テープに圧着して一体化する一体化工程と、研削装置のチャックテーブルに熱圧着シート側を保持しウエーハの裏面に研削水を供給しながら所望の厚さに研削する研削工程と、該研削工程の後、該チャックテーブルから一体化されたウエーハを搬出し、熱圧着シートを粘着テープから剥離する剥離工程と、から少なくとも構成されるウエーハの加工方法が提供される。
【0009】
好ましくは、該剥離工程において、熱圧着シートを部分的に加熱、又は冷却して温度差を生じさせて粘着テープから該熱圧着シートを剥離することが含まれる。
【0010】
該熱圧着シートは、ポリオレフィン系シート、又はポリエステル系シートであることが好ましい。該熱圧着シートが該ポリオレフィン系シートである場合は、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかから選択される。該一体化工程において熱圧着シートを加熱する際の温度は、該ポリエチレンシートの場合は120℃~140℃であり、該ポリプロピレンシートの場合は160℃~180℃であり、該ポリスチレンシートの場合は220℃~240℃である。
【0011】
該熱圧着シートがポリエステル系シートである場合は、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシートのいずれかから選択される該一体化工程において熱圧着シートを加熱する際の温度は、該ポリエチレンテレフタレートシートの場合は250℃~270℃であり、該ポリエチレンナフタレートシートの場合は160℃~180℃である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のウエーハの加工方法は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハの裏面を研削するウエーハの加工方法であって、ウエーハの表面に粘着テープを貼着する粘着テープ貼着工程と、ウエーハの表面に貼着された粘着テープに粘着層が形成されていない熱圧着シートを配設する熱圧着シート配設工程と、熱圧着シートを加熱すると共に平坦部材で押圧して、熱圧着シートを粘着テープに圧着して一体化する一体化工程と、研削装置のチャックテーブルに熱圧着シート側を保持しウエーハの裏面に研削水を供給しながら所望の厚さに研削する研削工程と、該研削工程の後、該チャックテーブルから一体化されたウエーハを搬出し、熱圧着シートを粘着テープから剥離する剥離工程と、から少なくとも構成されるので、粘着テープに直接研削屑を付着させることがなく、次工程に搬送された際に、研削屑が次工程における汚染源となるという問題が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】粘着テープ貼着工程の実施態様を示す斜視図である。
図2】熱圧着シート配設工程の実施態様を示す斜視図である。
図3】一体化工程の実施態様を示す斜視図である。
図4】切断工程の実施態様を示す斜視図である。
図5】本実施形態に好適な研削装置の全体斜視図である。
図6図5に示す研削装置のチャックテーブルにウエーハを保持する態様を示す斜視図である。
図7図5に示す研削装置により研削工程を実施する態様を示す斜視図である。
図8】剥離工程を実施する剥離用チャックテーブルにウエーハを載置する態様を示す斜視図である。
図9】剥離工程の実施態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に基づいて構成されるウエーハの加工方法に係る実施形態について添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0015】
本実施形態のウエーハの加工方法は、ウエーハの表面に粘着テープを貼着する粘着テープ貼着工程と、ウエーハの表面に貼着された粘着テープに熱圧着シートを配設する熱圧着シート配設工程と、熱圧着シートを加熱すると共に平坦部材で押圧して、熱圧着シートを粘着テープに圧着して一体化する一体化工程と、研削装置のチャックテーブルに熱圧着シート側を保持しウエーハの裏面に研削水を供給しながら所望の厚さに研削する研削工程と、該チャックテーブルから一体化されたウエーハを搬出し、熱圧着シートを粘着テープから剥離する剥離工程と、から少なくとも構成される。以下に、順を追って、各工程について説明する。
【0016】
(粘着テープ貼着工程)
図1には、粘着テープ貼着工程の実施態様を示す斜視図が示されている。粘着テープ貼着工程を実施するに際し、まず、図1に示す加工対象であるウエーハWと、ウエーハWに貼着する粘着テープTと、粘着テープ貼着工程、及び後述する熱圧着シート配設工程を実施するためのチャックテーブル100を用意する。ウエーハWは、たとえば、シリコン(Si)からなり、複数のデバイスDが分割予定ラインによって区画され表面Waに形成されている。粘着テープTは、例えば、略ウエーハWと同形状に設定された円形のポリ塩化ビニルシートと、該ポリ塩化ビニルシートの表面に塗布された粘着剤(例えばアクリル樹脂)とから構成される。チャックテーブル100は、通気性を有する多孔質のポーラスセラミックからなる円盤形状の吸着チャック100aと、吸着チャック100aの外周を囲繞する円形枠部100bとからなり、図示しない吸引手段を作動することにより吸着チャック100aの上面(保持面)に載置されるウエーハWを吸引保持することができる。
【0017】
上記したように、ウエーハW、粘着テープT、及びチャックテーブル100を用意したならば、ウエーハWのデバイスDが形成された表面Waに対して、粘着テープTの粘着剤が塗付された側を向けて貼着する。ウエーハWの表面Waに粘着テープTを貼着する場合、図1に示すようなチャックテーブル100を利用することもできるが、予め周知のテープ貼り機(図示は省略)等を利用して貼着しておくこともできる。
【0018】
(熱圧着シート配設工程)
上記したように粘着テープTを貼着したならば、図2に示すように、熱圧着シート配設工程を実施する。まず、上記した粘着テープ配設工程により表面Waに粘着テープTが貼着されたウエーハWを用意し、図2に示すように、ウエーハWの粘着テープTが貼着された表面Wa側を上に、裏面Wb側を下にして、チャックテーブル100の吸着チャック100aの中心に載置する。吸着チャック100aにウエーハWを載置したならば、ウエーハWに貼着された粘着テープTの上に、20~100μmの厚みで形成された円形の熱圧着シート110が載置される。熱圧着シート110としては、ポリオレフィン系シート、又はポリエステル系シートが選択可能であり、ポリオレフィン系シートである場合は、例えば、ポリエチレン(PE)シートが選択される。図2から理解されるように、吸着チャック100aの直径は、ウエーハWの直径よりもやや大きく設定されており、ウエーハWが吸着チャック100aの中心に載置されることにより、ウエーハWの外周を囲むように吸着チャック100aが露出した状態となる。熱圧着シート110は、少なくともウエーハWを覆うことが可能な大きさであり、好ましくは、吸着チャック100aの直径よりも大きい直径で形成され、チャックテーブル100の円形枠部100bよりも僅かに小さい直径で形成される。これにより、吸着チャック100aの全面及びウエーハWが熱圧着シート110で覆われる。なお、粘着テープT上に載置される熱圧着シート110には糊剤等の粘着層は形成されていない。
【0019】
上記した熱圧着シート110は、加熱することにより粘着力を発揮するシートであるが、上記したポリエチレンシートに限定されない。熱圧着シート110としてポリオレフィン系シートを採用する場合は、上記したポリエチレンシートの他、例えば、ポリプロピレン(PP)シート、ポリスチレン(PS)シートを採用することができる。また、熱圧着シート110としてポリエステル系シートを採用する場合は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート、ポリエチレンナフタレート(PEN)シートのいずれかを採用することができる。
【0020】
チャックテーブル100に、粘着テープTを貼着したウエーハW、及び熱圧着シート110を載置したならば、吸引ポンプ等を含む図示しない吸引手段を作動させて、吸引力Vmを吸着チャック100aに作用させ、ウエーハW、及び熱圧着シート110を吸引する。上記したように、熱圧着シート110によって、吸着チャック100aの上面(保持面)全域及びウエーハWが覆われているため、吸引力Vmは、ウエーハW及び熱圧着シート110全体に作用し、ウエーハWと熱圧着シート110とを吸着チャック100a上に吸引保持すると共に、ウエーハW上の粘着テープTと熱圧着シート110との間に残存していた空気を吸引して両者を密着させる。粘着テープTの表面には、複数のデバイスD及び粘着テープTの貼着面に付加された粘着剤の影響により生じるウネリを含む微小な凹凸が形成されるが、チャックテーブル100によって吸引保持されることにより、粘着テープT上の微小な凹凸面から残存空気が吸引されて、熱圧着シート110が粘着テープTに密着した状態になる。以上により、熱圧着シート配設工程が完了する。
【0021】
(一体化工程)
上記した熱圧着シート配設工程を実施したならば、次いで、一体化工程を実施する。一体化工程について、図3、及び図4を参照しながら説明する。
【0022】
一体化工程を実施するに際し、図3に示すように、ウエーハW及び熱圧着シート110を吸引保持した状態のチャックテーブル100の上方に、熱圧着シート110を加熱すると共に熱圧着シート110を押圧して熱圧着シート110とウエーハWとを一体化するための一体化手段120(一部のみ示す。)を位置付ける。一体化手段120は、内部に加熱ヒータ及び温度センサ(図示は省略)を内蔵した円盤状の平坦部材122を備えており、下面124はフッ素樹脂がコーティングされた平坦面である。平坦部材122の直径は、少なくともウエーハWと同等か、それ以上の直径で設定される。
【0023】
一体化手段120をチャックテーブル100の上方に位置付けたならば、一体化手段120に内蔵された加熱ヒータを作動して、平坦部材122を下降させ、ウエーハW上に配設された熱圧着シート110を押圧する。平坦部材122の加熱ヒータ及び温度センサの作動によって、平坦部材122の下面124は120℃~140℃になるように制御される。本実施形態の熱圧着シート110は、上記したようにポリエチレンシートであり、120℃~140℃に加熱されることにより、ポリエチレンシートが溶融する温度に近づけられて粘着力が発揮されると共に軟化する。そして、上記したように、ウエーハWの表面Waに貼着された粘着テープT上に形成された微小な凹凸に熱圧着シート110が密着した状態であることから、加熱されることで軟化した熱圧着シート110とウエーハW上の粘着テープTとの密着度が増し、加熱されることにより発揮される熱圧着シート110の粘着力の作用により圧着される。また、平坦部材122の下面124は平坦面であることから、ウエーハW上の粘着テープT上に貼着される熱圧着シート110の表面が平坦化される。以上により、粘着テープT上に熱圧着シート110が圧着されてウエーハWと共に一体化される一体化工程が完了する。なお、上記したように、平坦部材122の下面124にはフッ素樹脂がコーティングされていることから、熱圧着シート110が加熱されて粘着力が発揮されたとしても、熱圧着シート110から平坦部材122を良好に離反させることが可能である。
【0024】
上記した一体化工程では、熱圧着シート110を加熱してウエーハW上の粘着テープT上に圧着して熱圧着シート110をウエーハWと一体化する手段として、図2に示すような加熱ヒータを内蔵した平坦部材122を使用する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、平坦部材122とは別に加熱手段を備え、この加熱手段により熱圧着シート110を所定の温度に加熱して、上記した形状の平坦部材122で押圧して圧着することができる。また、熱圧着シート110の表面に赤外線を照射して加熱した後に、ローラー状の平坦部材で押圧して圧着したり、或いは、加熱ヒータ及び温度センサを内蔵したローラーで所定の温度に加熱すると共に押圧して、熱圧着シート110を粘着テープT上に圧着したりすることもできる。
【0025】
本実施形態では、上記した一体化工程に続き、後工程で実施される研削工程に配慮して、熱圧着シート110をウエーハWの形状に沿って切断する切断工程を実施する。なお、この切断工程は、必ずしも実施する必要はないが、実施した方が熱圧着シート110と一体化されたウエーハWの取り扱いが容易になり、後述する研削工程にとって好都合である。以下に、図4を参照しながら切断工程について説明する。
【0026】
(切断工程)
図4に示すように、熱圧着シート110が圧着されたウエーハWを吸引保持したチャックテーブル100上に、切断手段70(一部のみ示す。)を位置付ける。より具体的には、切断手段70は、熱圧着シート110を切断するための円盤形状の切削ブレード72と、切削ブレード72を矢印R1で示す方向に回転駆動するためのモータ74とを備え、切削ブレード72の刃先を、ウエーハWの外周位置になるように位置付ける。切削ブレード72がウエーハWの外周位置に位置付けられたならば、切削ブレード72を熱圧着シート110の厚みだけ切込み送りし、チャックテーブル100を矢印R2で示す方向に回転させる。これにより、熱圧着シート110が、ウエーハWの外周に沿って切断され、ウエーハWの外周からはみ出した熱圧着シート110の余剰部分を切断して切り離すことができる。以上により、切断工程が完了する。
【0027】
(研削工程・熱圧着シート洗浄工程)
上記したように、一体化工程によってウエーハW、粘着テープT、及び熱圧着シート110を一体化したならば、ウエーハWの裏面Wbを研削する研削工程を実施する。以下、図5を参照しながら、この研削工程を実施するのに好適な研削装置1について説明する。
【0028】
研削装置1は、略直方体状の装置ハウジング2を備えている。図5において、装置ハウジング2の右側の上端には、静止支持板21が立設されている。この静止支持板21の内側壁面には、上下方向に延びる2対の案内レール22、22及び23、23が設けられている。一方の案内レール22、22には粗研削手段としての粗研削ユニット3が上下方向に移動可能に装着されており、他方の案内レール23、23には仕上げ研削手段としての仕上げ研削ユニット4が上下方向に移動可能に装着されている。
【0029】
粗研削ユニット3は、ユニットハウジング31と、ユニットハウジング31に回転自在に支持された回転軸31aの下端に装着されたホイールマウント32に装着され、下面に環状に複数の研削砥石33aが配置された粗研削ホイール33と、該ユニットハウジング31の上端に装着されホイールマウント32を矢印R3で示す方向に回転させる電動モータ34と、ユニットハウジング31を装着した移動基台35とを備えている。移動基台35は、静止支持板21に設けられた案内レール22、22に支持されており、粗研削ユニット3が上下方向に移動させられる。図示の実施形態における研削装置1は、粗研削ユニット3の移動基台35を上下方向に研削送りする研削送り機構36を備えている。研削送り機構36は、静止支持板21に案内レール22、22と平行に上下方向に配設され回転可能に支持された雄ねじロッド361と、該雄ねじロッド361を回転駆動するためのパルスモータ362と、移動基台35に装着され雄ねじロッド361と螺合する図示しない雌ねじブロックを備えており、パルスモータ362によって雄ねじロッド361を正転及び逆転駆動することにより、粗研削ユニット3を上下方向に移動させる。
【0030】
仕上げ研削ユニット4も上記粗研削ユニット3と略同様に構成されており、ユニットハウジング41と、ユニットハウジング41に回転自在に支持された回転軸41aの下端に装着されたホイールマウント42に装着され下面に環状に複数の研削砥石43aが配置された仕上げ研削ホイール43と、ユニットハウジング41の上端に装着されホイールマウント42を矢印R4で示す方向に回転させる電動モータ44と、ユニットハウジング41を装着した移動基台45とを備えている。移動基台45は、静止支持板21に設けられた案内レール23、23に支持されており、仕上げ研削ユニット4が上下方向に移動させられる。なお、仕上げ研削ユニット4の研削砥石43aは、粗研削ユニット3の研削砥石33aよりも細かい砥粒によって構成されている。図示の実施形態における研削装置1は、仕上げ研削ユニット4の移動基台45を案内レール23、23に沿って移動する研削送り機構46を備えている。研削送り機構46は、上記静止支持板21に案内レール23、23と平行に上下方向に配設され回転可能に支持された雄ねじロッド461と、雄ねじロッド461を回転駆動するためのパルスモータ462と、移動基台45に装着され雄ねじロッド461と螺合する図示しない雌ねじブロックを備えており、パルスモータ462によって雄ねじロッド461を正転及び逆転駆動することにより、仕上げ研削ユニット4を上下方向に移動させる。
【0031】
電動モータ34及び電動モータ44によって回転させられる回転軸31a、回転軸41aの回転軸端31b、41bには、図示しない研削水供給手段が接続されている。研削水供給手段は、圧送ポンプが内蔵された研削水タンクを備え、該研削水タンクから圧送される研削水L1を、回転軸31a、及び回転軸41aに導入し、回転軸31a、回転軸41aの内部に形成された貫通孔を介して供給し、粗研削ホイール33、及び仕上げ研削ホイール43の下端面から噴射する。
【0032】
図示の実施形態における研削装置1は、上記静止支持板21の前側において装置ハウジング2の上面と略面一となるように配設されたターンテーブル5を備えている。このターンテーブル5は、比較的大径の円盤状に形成されており、図示しない回転駆動機構によって矢印R5で示す方向に適宜回転させられる。図示の実施形態の場合、ターンテーブル5には3個のチャックテーブル6が均等な間隔で配設されている。このチャックテーブル6は、円盤状の枠体61と、ポーラスセラミック材によって形成された吸着チャック62とからなっており、吸着チャック62に載置される被加工物を図示しない吸引手段を作動することにより吸引保持する。枠体61は、吸着チャック62を支持すると共に吸着チャック62を囲繞する外縁部を構成する。吸着チャック62の上面と枠体61の外縁部は、その高さが面一になるように構成されている。このように構成されたチャックテーブル6は、図示しない回転駆動機構によって矢印R6で示す方向に回転させられる。ターンテーブル5に配設された3個のチャックテーブル6は、ターンテーブル5が矢印R5で示す方向に120度回転させられる毎に、被加工物搬入・搬出域A→粗研削加工域B→仕上げ研削加工域C→被加工物搬入・搬出域Aに順次移動させられる。
【0033】
図示の研削装置1は、被加工物搬入・搬出域Aに対して一方側に配設され研削加工前の被加工物であるウエーハWをストックする第1のカセット7と、被加工物搬入・搬出域Aに対して他方側に配設され研削加工後の被加工物であるウエーハWをストックする第2のカセット8と、第1のカセット7と被加工物搬入・搬出域Aとの間に配設され被加工物の中心合わせを行う仮置き手段9と、洗浄手段11とを備えている。また、第1のカセット7内に収納された被加工物であるウエーハWを仮置き手段9に搬出するとともに洗浄手段11で洗浄されたウエーハWを第2のカセット8に搬送する第1の搬送手段12と、仮置き手段9上に載置され中心合わせされたウエーハWを被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6上に搬送する第2の搬送手段13と、被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6上に載置されている研削加工後のウエーハWを洗浄手段11に搬送する第3の搬送手段14とを備えている。
【0034】
第1の搬送手段12が配置された装置ハウジング2の手前側には、オペレータが研削加工を指示したり、加工条件を指定したりするための操作パネル15、研削加工時の状況を表示すると共にタッチパネル機能を備えた表示モニタ16等が配設されている。なお、本実施形態の研削装置1には、上記した構成の他、各作動部を制御するための制御手段、及び粗研削加工域B及び仕上げ研削加工域Cにそれぞれ隣接して配設されたウエーハの厚みを計測する厚み計測手段(いずれも図示は省略)等が配設されている。
【0035】
本実施形態の研削装置1は、概ね上記したとおりの構成を備えており、図5乃至図7を参照しながら、研削装置1を使用して実施される研削工程について説明する。なお、以下に説明する研削工程は、粗研削ユニット3によって実施される粗研削工程、及び仕上げ研削ユニット4によって実施される仕上げ研削工程からなる例に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されず、1つの研削工程のみによって構成されるものであってもよい。
【0036】
研削工程を実施するに際しては、図6に示すように、粘着テープT上に熱圧着シート110が圧着され一体化されたウエーハWを反転して裏面Wb側を上方に、熱圧着シート110側を下方に向けて、研削装置1の被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6の吸着チャック62上に載置する。チャックテーブル6の吸着チャック62は、図示しない吸引手段に接続されており、該吸引手段を作動することにより吸引力を作用させてウエーハWをチャックテーブル6上に吸引保持する。
【0037】
ウエーハWを、被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6上に吸引保持したならば、研削装置1のターンテーブル5をR5で示す方向に120度回転して、ウエーハWを吸引保持したチャックテーブル6を粗研削ユニット3の直下に位置付ける。次いで、図7に示すように、粗研削ユニット3の回転軸31aを矢印R7で示す方向に例えば6000rpmで回転させつつ、チャックテーブル6を矢印R8で示す方向に例えば300rpmで回転させる。そして、研削砥石33aをウエーハWの裏面Wbに接触させ、研削ホイール32を、例えば1μm/秒の研削送り速度で下方、すなわち、チャックテーブル6に対し垂直な方向に研削送りする。この際、回転軸31aを介して粗研削ホイール32の下面からウエーハWの研削面、すなわち裏面Wbに対して研削水L1が供給される。また、これと同時に、図示しない接触式の測定ゲージによりウエーハWの厚みを測定しながら研削を進めることができ、ウエーハWの裏面Wbが粗研削されてウエーハWを粗研削における所望の厚さとして、粗研削工程が完了する。
【0038】
上記したように、粗研削工程が完了したならば、ターンテーブル5をR5で示す方向にさらに120度回転して、チャックテーブル6を仕上げ研削ユニット4の直下に移動させる。仕上げ研削ユニット4の直下にチャックテーブル6を移動させたならば、仕上げ研削ユニット4の回転スピンドル41aを例えば6000rpmで回転させつつ、チャックテーブル6を例えば300rpmで回転させる。そして、研削砥石43aをウエーハWの裏面Wbに接触させ、研削ホイール42を、例えば0.1μm/秒の研削送り速度で下方、すなわち、チャックテーブル6に対し垂直な方向に研削送りする。この際、回転軸41aを介して仕上げ研削ホイール42の下面からウエーハWの研削面、すなわち裏面Wbに対して研削水L1が供給される。また、これと同時に、図示しない接触式の測定ゲージによりウエーハWの厚みを測定しながら研削を進めることができ、ウエーハWの裏面Wbが研削されてウエーハWを仕上げ研削における所望の厚さとして、仕上げ研削工程が完了し、上記した粗研削工程、及びこの仕上げ研削工程からなる研削工程が完了する。
【0039】
上記したように、研削工程が完了したならば、ターンテーブル5をR5で示す方向にさらに120度回転してチャックテーブル6を被加工物搬入・搬出域Aに位置付ける。被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたウエーハWは、第3の搬送手段14の作動により、裏面Wb側が吸引されて、洗浄手段11に搬送され、洗浄手段11によって、ウエーハWの研削面、すなわちウエーハWの裏面Wbが洗浄される洗浄工程。この洗浄工程によって洗浄され水分が除去されたウエーハWは、第1の搬送手段12によって吸着されて、第2のカセット8の所定の位置に搬送され収容される。
【0040】
(剥離工程)
上記した研削工程、洗浄工程が完了したならば、第2のカセット8に収容されたウエーハWの粘着テープT側から、上記した一体化工程において圧着され一体化された熱圧着シート110を剥離する剥離工程を実施する。剥離工程について、図8図9を参照しながら、以下に説明する。
【0041】
剥離工程を実施するに際し、図8に示すような剥離用チャックテーブル90を用意する。剥離用チャックテーブル90は、中央に通気性を有する多孔質のポーラスセラミックからなる円盤形状の吸着チャック92を備えている。吸着チャック92は、図示しない吸引手段に接続されている。研削加工が施されたウエーハWは、第2のカセット8から搬出されて、熱圧着シート110が貼着された側を上方に向け、裏面Wb側を吸着チャック92に載置し吸引保持される。次いで、吸着チャック92に吸引保持されたウエーハWの熱圧着シート110の外周部分に対し、図示しない冷却手段、又は加熱手段を作動して、部分的に冷却処理、又は加熱処理を施し、外周部分とそれ以外の部分とにおいて温度差を生じさせて、熱圧着シート110をその外周部分から剥離しやすい状態とする。その後、図9に示すように、ウエーハWを吸着チャック92に吸引保持した状態で、熱圧着シート110を上記した冷却処理、又は加熱処理を施した外周部分を起点として粘着テープTから剥離する。以上により剥離工程が完了する。
【0042】
上記した本実施形態によれば、ウエーハWの表面Waに貼着された粘着テープTに圧着された熱圧着シート110が平坦化されていることから、研削装置1のチャックテーブル6に保持されて研削工程が実施されても、熱圧着シート110とチャックテーブル6の保持面との隙間から研削屑が入り込みづらい。また、仮に熱圧着シート110に研削屑が付着しても、熱圧着シートが平坦化されていることから研削屑の付着力が弱く、熱圧着シート110に研削屑が付着することが抑制される。さらに、仮に熱圧着シート110に微小な研削屑が付着することがあったとしても、次工程に搬送される前に、上記した剥離工程を実施することによって粘着テープTから熱圧着シート110が剥離されるので、そもそも粘着テープTに研削屑が付着することが回避され、熱圧着シート110に付着した研削屑が次工程において汚染源となるという問題が完全に解消される。よって、次工程において、粘着テープTを、そのまま保護部材として機能させることができる。
【0043】
なお、上記した実施形態では、熱圧着シート110としてポリエチレンシートを採用したが、本発明はこれに限定されず、ポリオレフィン系のシート、又はポリエステル系のシートから適宜選択することができる。
【0044】
熱圧着シート110を、ポリオレフィン系のシートから選択する場合、ポリエチレンシートの他に、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかから選択することができる。熱圧着シート110として、ポリプロピレンシートを選択した場合は、一体化工程において加熱する際の温度を160℃~180℃とすることが好ましい。また、熱圧着シート110として、ポリスチレンシートを選択した場合は、一体化工程において加熱する際の温度を220℃~240℃とすることが好ましい。
【0045】
さらに、熱圧着シート110を、ポリエステル系のシートとする場合、ポリエチレンテレフタレートシート、又はポリエチレンナフタレートシートから選択することができる。熱圧着シート110として、ポリエチレンテレフタレートシートを選択した場合は、一体化工程において加熱する際の温度を250℃~270℃とすることが好ましい。また、熱圧着シート110として、ポリエチレンナフタレートシートを選択した場合は、一体化工程において加熱する際の温度を160℃~180℃とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0046】
1:研削装置
2:装置ハウジング
3:粗研削ユニット
4:仕上げ研削ユニット
5:ターンテーブル
6:チャックテーブル
7:第1のカセット
8:第2のカセット
9:仮置き手段
11:洗浄手段
12:第1の搬送手段
13:第2の搬送手段
14:第3の搬送手段
21:静止支持基板
22、23:案内レール
31:ユニットハウジング
31a:回転軸
33:粗研削ホイール
33a:研削砥石
34:電動モータ
35:移動基台
36:研削送り機構
41:ユニットハウジング
41a:回転軸
43:研削ホイール
43a:研削砥石
44:電動モータ
45:移動基台
46:研削送り機構
100:チャックテーブル
110:熱圧着シート
120:一体化手段
122:押圧部材
124:下面
A:被加工物搬入・搬出域
B:粗研削加工域
C:仕上げ研削加工域
D:デバイス
L1:研削水
L2:洗浄水
T:粘着テープ
W:ウエーハ
Wa:表面
Wb:裏面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9