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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】円偏光板
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231030BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20231030BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20231030BHJP
   C08F 220/30 20060101ALI20231030BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20231030BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231030BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20231030BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20231030BHJP
   H10K 59/80 20230101ALI20231030BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/02
G09F9/00 313
G09F9/00 362
C08F220/30
G02F1/1335 510
H10K50/10
H10K50/86
H10K59/10
H10K59/80
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019223775
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2021092687
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】住吉 鈴鹿
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/139638(WO,A1)
【文献】特開2012-133312(JP,A)
【文献】国際公開第2014/185389(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/131943(WO,A1)
【文献】特開2010-262145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H05B 33/02
H10K 50/00 - 99/00
G09F 9/00
C08F 220/30
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視認側から、第1の光学異方性層、偏光子、第2の光学異方性層をこの順に有する円偏光板であって、
前記第1の光学異方性層及び前記第2の光学異方性層が下記式(I)、(II)及び(III):
Re(450)/Re(550)≦1.00 (I)
1.00≦Re(650)/Re(550) (II)
90nm≦Re(550)≦180nm (III)
〔式中、Re(450)は光学異方性層の波長450nmにおける面内位相差値を表し、
Re(550)は光学異方性層の波長550nmにおける面内位相差値を表し、
Re(650)は光学異方性層の波長650nmにおける面内位相差値を表す〕
で表される光学特性を有し、
前記第1の光学異方性層及び前記第2の光学異方性層が、重合性液晶化合物が配向した状態で重合した重合体を含む層であり、
前記第1の光学異方性層の遅相軸と前記第2の光学異方性層の遅相軸とのなす角が90°±10°である、円偏光板。
【請求項2】
下記式(IV):
200nm≦Re(550)≦320nm (IV)
〔式中、Re(550)は光学異方性層の波長550nmにおける面内位相差値を表す〕で表される光学特性を有する第3の光学異方性層をさらに有する、請求項1に記載の円偏光板。
【請求項3】
前記偏光子が、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させた偏光子である、請求項1又は2に記載の円偏光板。
【請求項4】
前記偏光子が、重合性液晶化合物が重合した硬化膜中に、二色性色素が配向した偏光子である、請求項1~のいずれか一項に記載の円偏光板。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の円偏光板を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項6】
請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置を含む車載用ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏光板に関し、さらには円偏光板を備える有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELともいう)表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL表示装置に代表される画像表示装置が急速に普及している。一般に、有機EL表示装置には、視認側から偏光子とλ/4板とをこの順に有する円偏光板が搭載される。特許文献1には、液晶化合物を含有する組成物から形成されたλ/4板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-187717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
円偏光板を備えた画像表示装置は、車載用ディスプレイとして用いられることがある。そのようなディスプレイを夜間に車内で点灯した際、ディスプレイからの光がフロントガラスで反射したり、反射した光の色変化が見る角度によって大きかったりすることがあり、運転の安全性が損なわれる虞がある。
【0005】
本発明は、車内においてディスプレイ光がフロントガラスで反射した際の反射光を低減するとともに、その反射光の色変化を低減し、かつ、耐光性に優れた、車載用ディスプレイに適した円偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の円偏光板及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供する。
[1] 視認側から、第1の光学異方性層、偏光子、第2の光学異方性層をこの順に有する円偏光板であって、
前記第1の光学異方性層が下記式(I)、(II)及び(III):
Re(450)/Re(550)≦1.00 (I)
1.00≦Re(650)/Re(550) (II)
90nm≦Re(550)≦180nm (III)
〔式中、Re(450)は光学異方性層の波長450nmにおける面内位相差値を表し、
Re(550)は光学異方性層の波長550nmにおける面内位相差値を表し、
Re(650)は光学異方性層の波長650nmにおける面内位相差値を表す〕
で表される光学特性を有し、
前記第1の光学異方性層及び前記第2の光学異方性層が、重合性液晶化合物が配向した状態で重合した重合体を含む層である、円偏光板。
[2] 前記第2の光学異方性層が、前記式(III)で表される光学特性を有する、[1]に記載の円偏光板。
[3] 前記第2の光学異方性層が、前記式(I)及び前記式(II)をさらに有する、[1]又は[2]に記載の円偏光板。
[4] 下記式(IV):
200nm≦Re(550)≦320nm (IV)
〔式中、Re(550)は光学異方性層の波長550nmにおける面内位相差値を表す〕
で表される光学特性を有する第3の光学異方性層をさらに有する、[1]~[3]のいずれかに記載の円偏光板。
[5] 前記第1の光学異方性層の遅相軸と前記第2の光学異方性層の遅相軸とのなす角が90°±10°である、[1]~[4]のいずれかに記載の円偏光板。
[6] 前記偏光子が、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させた偏光子である、[1]~[5]のいずれかに記載の円偏光板。
[7] 前記偏光子が、重合性液晶化合物が重合した硬化膜中に、二色性色素が配向した偏光子である、[1]~[5]のいずれかに記載の円偏光板。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の円偏光板を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
[9] [8]に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置を含む車載用ディスプレイ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車内ディスプレイ光がフロントガラスで反射した際の反射光を低減するとともに、その反射光の色変化を低減し、かつ耐光性に優れた、車載用ディスプレイに適した円偏光板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】円偏光板の層構成を示す概略断面図の一例である。
図2】円偏光板の層構成を示す概略断面図の一例である。
図3】円偏光板の層構成を示す概略断面図の一例である。
図4】円偏光板の層構成を示す概略断面図の一例である。
図5】円偏光板の層構成を示す概略断面図の一例である。
図6】円偏光板の製造方法の一例を示す概略断面図の一例である。
図7】有機EL表示装置の層構成を示す概略断面図の一例である。
図8】ディスプレイ光の反射光の評価方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の全ての図面においては、各構成要素を理解し易くするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0010】
<円偏光板>
本発明の円偏光板は、第1の光学異方性層、偏光子、第2の光学異方性層をこの順に有する。第1の光学異方性層及び第2の光学異方性層と、偏光子とは、例えば後述の接着層を介して積層することができる。
【0011】
以下、図1を参照して、本発明の円偏光板の層構成の一例を説明する。図1に示す円偏光板100は、視認側から順に第1の光学異方性層11、偏光子10、および第2の光学異方性層12が積層された層構成を有する。視認側とは、円偏光板100を画像表示装置に適用する場合において、円偏光板100の画像表示素子側とは反対となる側をいう。
【0012】
円偏光板100は、図1に示した層以外の層を有することができる。円偏光板100がさらに有していてもよい層としては、例えば前面板、保護フィルム、遮光パターン及び接着層等が挙げられる。
【0013】
円偏光板100の主面の形状は、実質的に矩形であることができる。主面とは表示面に対応する最も広い面積を有する面を意味する。実質的に矩形であるとは、4つの隅(角部)のうち少なくとも1つの角部が鈍角となるように切除された形状や丸みを設けた形状であったり、主面に垂直な端面の一部が面内方向に窪んだ凹み部(切り欠け)を有したり、主面内の一部が、円形、楕円形、多角形及びそれらの組合せ等の形状にくり抜かれた穴あき部を有したりしてもよいことをいう。
【0014】
円偏光板100の大きさは特に限定されない。円偏光板100が実質的に矩形である場合、長辺の長さは6cm以上35cm以下であることが好ましく、10cm以上30cm以下であることがより好ましく、短辺の長さは5cm以上30cm以下であることが好ましく、6cm以上25cm以下であることがより好ましい。
【0015】
(光学異方性層)
第1の光学異方性層11は、円偏光板100において、第2の光学異方性層12より視認側に配置される。第1の光学異方性層11は、式(I)、(II)及び(III)で表される光学特性を有する。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (I)
1.00≦Re(650)/Re(550) (II)
90nm≦Re(550)≦180nm (III)
〔式中、Re(450)は光学異方性層の波長450nmにおける面内位相差値を表し、
Re(550)は光学異方性層の波長550nmにおける面内位相差値を表し、
Re(650)は光学異方性層の波長650nmにおける面内位相差値を表す〕
面内位相差値は以下の式により定義される。
Re(λ)=(nx(λ)-ny(λ))×d
〔式中、Re(λ)は光学異方性層の波長λnmにおける面内位相差値を表し、dは光学異方性層の厚みを表し、nxは、光学異方性層が形成する屈折率楕円体において、光学異方性層の平面に平行な方向の波長λnmにおける主屈折率を表し、nyは、光学異方性層が形成する屈折率楕円体において、光学異方性層の平面に対して平行であり、且つ、前記nxの方向に対して直交する方向の波長λnmにおける屈折率を表す〕
【0016】
第1の光学異方性層11は、式(I)及び式(II)で表される光学特性を有することにより逆波長分散性を有することができる。第1の光学異方性層11は、好ましくは式(I-1)で表される光学特性を有し、より好ましくは式(I-2)で表される光学特性を有する。
Re(450)/Re(550)≦0.93 (I-1)
0.81≦Re(450)/Re(550) (I-2)
【0017】
第1の光学異方性層11は、好ましくは式(II-1)で表される光学特性を有し、より好ましくは式(II-2)で表される光学特性を有する。
1.00<Re(650)/Re(550) (II-1)
Re(650)/Re(550)≦1.10 (II-2)
【0018】
第1の光学異方性層11は、好ましくは式(III-1)で表される光学特性を有し、より好ましくは式(III-2)で表される光学特性を有する。
100nm≦Re(550)≦160nm (III-1)
110nm≦Re(550)≦150nm (III-2)
第1の光学異方性層11が上記光学特性を有すると、表示装置を斜めから見たときに、色変化や色付きが小さくなりやすい。
【0019】
第2の光学異方性層12は、式(III)で表される光学特性を有することができる。第2の光学異方性層12は、好ましくは式(III-1)で表される光学特性を有し、より好ましくは式(III-2)で表される光学特性を有する。
第2の光学異方性層12は、式(I)及び式(II)で表される光学特性をさらに有することにより逆波長分散性を有することができる。第2の光学異方性層12は、好ましくは式(I-1)で表される光学特性を有し、より好ましくは式(I-2)で表される光学特性を有する。第2の光学異方性層12は、好ましくは式(II-1)で表される光学特性を有し、より好ましくは式(II-2)で表される光学特性を有する。第2の光学異方性層12が上記光学特性を有すると、表示装置を斜めから見たときに、色変化や色付きが小さくなりやすい。
【0020】
円偏光板は、式(IV):
200nm≦Re(550)≦320nm (IV)
〔式中、Re(550)は光学異方性層の波長550nmにおける面内位相差値を表す〕
で表される光学特性を有する第3の光学異方性層をさらに有することができる。
【0021】
第3の光学異方性層は、好ましくは式(IV-1)で表される光学特性を有する光学異方性層であり、より好ましくは式(IV-2)で表される光学特性を有する光学異方性層である。
250nm≦Re(550)≦300nm (IV-1)
265nm≦Re(550)≦285nm (IV-2)
【0022】
第3の光学異方性層は、式(V):
nx≒ny<nz (V)
で表される光学特性を有するものであることもできる。nxは、光学異方性層が形成する屈折率楕円体において、光学異方性層の平面に対して平行な方向の主屈折率を表す。nyは、光学異方性層が形成する屈折率楕円体において、光学異方性層の平面に対して平行であり、且つ、該nxの方向に対して直交する方向の屈折率を表す。nzは、光学異方性層が形成する屈折率楕円体において、光学異方性層の平面に対して垂直な方向の屈折率を表す。
【0023】
円偏光板100が第3の光学異方性層を有する場合、第3の光学異方性は偏光子10と第2の光学異方性層12との間、又は第2の光学異方性層12の偏光子10側とは反対側に配置されることができる。
【0024】
第1の光学異方性層11、第2の光学異方性層12及び第3の光学異方性層は後述の配向膜を含んでいてもよい。
【0025】
第1の光学異方性層11は、好ましくは逆波長分散性を有し、且つλ/4の位相差を与える位相差層である。
第2の光学異方性層12は、例えばλ/4の位相差を与える層(ポジティブA層)、λ/2の位相差を与える層及びポジティブC層等の位相差層であることができる。第2の光学異方性層12は、好ましくはλ/4の位相差を与える層であり、より好ましくは逆波長分散性を有し、且つλ/4の位相差を与える位相差層である。
第3の光学異方性層は、例えばλ/2の位相差を与える層及びポジティブC層等の位相差層であることができる。第3の光学異方性層は、好ましくはλ/2の位相差を与える層である。
【0026】
λ/4の位相差を与える層としては、波長550nmにおける面内位相差値が好ましくは90nm以上180nm以下である層のことを意味し、より好ましくは100nm以上160nm以下である層のことを意味し、さらに好ましくは面内位相差値が110nm以上150nm以下である層のことを意味する。
λ/2の位相差を与える層としては、好ましくは波長550nmにおける面内位相差値が200nm以上320nm以下である層のことを意味し、より好ましくは面内位相差値が250nm以上300nm以下である層のことを意味し、さらに好ましくは面内位相差値が265nm以上285nm以下である層のことを意味する。
ポジティブC層は、屈折率がnx≒ny<nzの関係性を示す層であることができる。ポジティブC層の厚み方向の位相差値は、波長550nmにおいて-150nm以上-30nm以下であることができ、-120nm以上-50nm以下であることができる。
【0027】
なお、厚み方向の位相差値は以下の式により定義される。
Rth(λ)=[{nx(λ)+ny(λ)}/2-nz(λ)]×d
[式中、Rth(λ)は光学異方性層の波長λnmにおける厚み方向の位相差値を表し、dは光学異方性層の厚みを表し、nx(λ)は、光学異方性層が形成する屈折率楕円体において、光学異方性層の平面に平行な方向の波長λnmにおける主屈折率を表し、ny(λ)は、光学異方性層が形成する屈折率楕円体において、光学異方性層の平面に対して平行であり、且つ、前記nx(λ)の方向に対して直交する方向の波長λnmにおける屈折率を表し、nz(λ)は、光学異方性層が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して垂直な方向の波長λnmにおける屈折率を表す。〕
【0028】
第1の光学異方性層11及び第2の光学異方性層12の遅相軸は、円偏光板としての機能の観点から偏光子10の吸収軸とのなす角が例えば45°±10°であってよく、好ましくは45°±5°であり、より好ましくは45°±2°である。
【0029】
第1の光学異方性層11の遅相軸と第2の光学異方性層12の遅相軸とのなす角は、カール抑制の観点から好ましくは90°±15°であり、より好ましくは90°±10°であり、さらに好ましくは90°±5°であり、特に好ましくは90°である。
【0030】
第2の光学異方性層12が式(III)で表される光学特性を有する場合、好ましくは、第2の光学異方性層12の遅相軸と偏光子10の吸収軸とのなす角が45°であり、かつ第1の光学異方性層11の遅相軸と第2の光学異方性層12の遅相軸とのなす角が90°である。
【0031】
第1の光学異方性層11及び第2の光学異方性層12は、重合性液晶化合物が配向した状態で重合した重合体を含む層(以下、硬化物層ともいう)である。円偏光板が第3の光学異方性層を含む場合、第3の光学異方性層は硬化物層であってもよい。
硬化物層は例えば、基材に設けられた配向膜上に形成される。基材は、配向膜を支持する機能を有し、長尺に形成されている基材であってもよい。この基材は、離型性支持体として機能し、転写用の硬化物層を支持することができる。さらに、その表面が剥離可能な程度の接着力を有するものが好ましい。基材としては、後述する保護フィルムの材料として例示する樹脂フィルムが挙げられる。基材及び配向膜は、円偏光板中に含まれていてよい。配向膜は基材を除去する際に基材とともに除去されてよい。
第1の光学異方性層11が硬化物層を含み、かつ上記式(I)、(II)及び(III)を満たすことにより、車内ディスプレイ光がフロントガラスで反射した際の反射光を低減するとともに反射光の色変化を低減することが可能となり、かつ円偏光板の耐光性が向上し易くなる傾向にある。
【0032】
基材の厚みとしては、特に限定されないが、例えば20μm以上200μm以下の範囲であることができる。基材の厚みが20μm以上である場合、強度が付与され易くなる傾向にある。一方で、厚みが200μm以下である場合、基材を裁断加工して枚葉の基材とするにあたり、加工屑の増加、裁断刃の磨耗を抑制し易くなる傾向にある。
【0033】
基材は、種々のブロッキング防止処理が施されていてもよい。ブロッキング防止処理としては、例えば、易接着処理、フィラー等を練り込ませる処理、エンボス加工(ナーリング処理)等が挙げられる。このようなブロッキング防止処理を基材に対して施すことによって、基材を巻き取る際の基材同士の張り付き、いわゆるブロッキングを効果的に防止することができ、生産性高く光学フィルムを製造することが可能となる。
【0034】
硬化物層は、配向膜を介して基材上に形成される。すなわち、基材、配向膜の順で積層され、重合性液晶化合物が硬化した層は配向膜上に積層される。
【0035】
配向膜は、垂直配向膜に限らず、重合性液晶化合物の分子軸を水平配向させる配向膜であってもよく、重合性液晶化合物の分子軸を傾斜配向させる配向膜であってもよい。配向膜としては、後述する重合性液晶化合物を含む組成物の塗工等により溶解しない溶媒耐性を有し、また、溶媒の除去や重合性液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光配向膜及び表面に凹凸パターンや複数の溝を形成し配向させるグルブ配向膜が挙げられる。配向膜の厚みは、通常10nm以上10000nm以下の範囲であり、好ましくは10nm以上1000nm以下の範囲であり、より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは10nm以上20nm以下の範囲である。
【0036】
配向膜に用いる樹脂としては、公知の配向膜の材料として用いられる樹脂であれば特に限定されるものではなく、従来公知の単官能又は多官能の(メタ)アクリレート系モノマーを重合開始剤下で硬化させた硬化物等を用いることができる。具体的には、(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート、テトラエチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メタクリル酸、ウレタンアクリレート等を例示することがきる。樹脂としては、これらの1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上の混合物を用いることもできる。
【0037】
重合性液晶化合物の種類については、特に限定されないものの、その形状から、棒状タイプ(棒状液晶化合物)と円盤状タイプ(円盤状液晶化合物、ディスコティック液晶化合物)とに分類できる。さらに、それぞれ低分子タイプと高分子タイプとがある。なお、高分子とは、一般に重合度が100以上のものを言う(高分子物理・相転移ダイナミクス、土井 正男著、2頁、岩波書店、1992)。本実施形態において、何れの重合性液晶化合物を用いることができる。さらに、2種以上の棒状液晶化合物や、2種以上の円盤状液晶化合物、又は棒状液晶化合物と円盤状液晶化合物との混合物を用いてもよい。
【0038】
なお、棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報の請求項1、又は特開2005-289980号公報の段落[0026]~[0098]に記載のものを好適に用いることができる。円盤状液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報の段落[0020]~[0067]、又は、特開2010-244038号公報の段落[0013]~[0108]に記載のものを好適に用いることができる。
【0039】
重合性液晶化合物は、重合反応をし得る重合性基を有する。重合性基としては、例えば、重合性エチレン性不飽和基や環重合性基などの付加重合反応が可能な官能基が好ましい。より具体的には、重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基などを挙げることができる。その中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。なお、(メタ)アクリロイル基とは、メタアクリロイル基及びアクリロイル基の両者を包含する概念である。
【0040】
重合性液晶化合物は、2種類以上を併用してもよく、その場合、少なくとも1種類が分子内に2以上の重合性基を有していればよい。重合性液晶化合物が重合体となった後はもはや液晶性を示す必要はない。第1の光学異方性層、第2の光学異方性層、及び第3の光学異方性層を形成するのに用いる重合性液晶化合物は、互いに同じ重合性液晶化合物であってもよいし、互いに異なる重合性液晶化合物であってもよい。
【0041】
硬化物層は、後述するように、重合性液晶化合物を含む組成物(以下、重合性液晶組成物ともいう)を、例えば配向膜上に塗工し、活性エネルギー線を照射して硬化することによって形成することができる。重合性液晶組成物には、上述した重合性液晶化合物以外の成分が含まれていてもよい。例えば、重合性液晶組成物には、重合開始剤が含まれていることが好ましい。使用される重合開始剤は、重合反応の形式に応じて、例えば、熱重合開始剤や光重合開始剤が選択される。例えば、光重合開始剤としては、α-カルボニル化合物、アシロインエーテル、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物、多核キノン化合物、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせなどが挙げられる。重合開始剤の使用量は、重合性液晶組成物中の全固形分に対して、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0042】
また、重合性液晶組成物には、塗工膜の均一性及び膜の強度の点から、重合性モノマーが含まれていてもよい。重合性モノマーとしては、ラジカル重合性又はカチオン重合性の化合物が挙げられる。その中でも、多官能性ラジカル重合性モノマーが好ましい。
【0043】
なお、重合性モノマーとしては、上述した重合性液晶化合物と共重合することができるものが好ましい。重合性モノマーの使用量は、重合性液晶化合物の全質量に対して、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、2質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
【0044】
また、重合性液晶組成物には、塗工膜の均一性及び膜の強度の点から、界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられる。その中でも特に、フッ素系化合物が好ましい。
【0045】
また、重合性液晶組成物には、溶媒が含まれていてもよく、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒としては、例えば、アミド(例、N,N-ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン)が挙げられる。その中でも、アルキルハライド、ケトンが好ましい。また、2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0046】
また、重合性液晶組成物には、偏光子界面側垂直配向剤、空気界面側垂直配向剤などの垂直配向促進剤、並びに、偏光子界面側水平配向剤、空気界面側水平配向剤などの水平配向促進剤といった各種配向剤が含まれていてもよい。さらに、重合性液晶組成物には、上記成分以外にも、密着改良剤、可塑剤、ポリマーなどが含まれていてもよい。
【0047】
上記活性エネルギー線は、紫外線、可視光、電子線、X線を含み、好ましくは紫外線である。前記活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~44nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0048】
紫外線の照射強度は、通常、100mW/cm以上3,000mW/cm以下である。紫外線照射強度は、好ましくはカチオン重合開始剤又はラジカル重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。紫外線を照射する時間は、通常0.1秒以上10分以下であり、好ましくは0.1秒以上5分以下であり、より好ましくは0.1秒以上3分以下であり、さらに好ましくは0.1秒以上1分以下である。
【0049】
紫外線は、1回又は複数回に分けて照射することができる。紫外線は、複数回照射されることが好ましい。液晶化合物の重合率が高まると、突刺し弾性率が高まりやすい。使用する重合開始剤にもよるが、波長365nmにおける積算光量は、700mJ/cm以上とすることが好ましく、1,100mJ/cm以上とすることがより好ましく、1,300mJ/cm以上とすることがさらに好ましい。上記積算光量とすることは、光学異方性層を構成する重合性液晶化合物の重合率を高めるのに有利である。波長365nmにおける積算光量は、2,000mJ/cm以下とすることが好ましく、1,800mJ/cm以下とすることがより好ましい。上記積算光量とすることは、光学異方性層の着色を招くおそれがある。
【0050】
また紫外線照射直後の熱によって液晶化合物の配向が乱れるのを防止するために、紫外線照射後に冷却工程を設けることが好ましい。紫外線照射後に冷却工程を設けることで、照射直後に発生する熱による液晶化合物の配向の乱れを抑制することができる。その結果、液晶化合物の配向度が上がり、より高い剛性を有する膜を得ることができる。冷却温度は、例えば20℃以下とすることができ、10℃以下とすることができる。冷却時間は、例えば、10秒間以上とすることができ、20秒間以上とすることができる。
【0051】
光学異方性層の厚みは、0.5μm以上であることが好ましい。また、光学異方性層の厚みは、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。光学異方性層の厚みが上記下限値以上であると、十分な耐久性が得られる。光学異方性層の厚みが上記上限値以下であると、円偏光板の薄層化に貢献し得る。光学異方性層の厚みは、λ/4の位相差を与える層、λ/2の位相差を与える層、又はポジティブC層の所望の面内位相差値、及び厚み方向の位相差値が得られるよう調整され得る。
【0052】
円偏光板が第3の光学異方性層を含む場合、第2の光学異方性層と第3の光学異方性層とは硬化物層を配向膜上にそれぞれ作製し、両者を接着層を介して積層することにより製造することができる。両者を積層した後、基材及び配向膜は剥離することができる。第1の光学異方性層11、第2の光学異方性層12及び第3の光学異方性層の厚みは、それぞれ0.1μm以上15μm以下であることが好ましく、0.3μm以上10μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上8μm以下であることがさらに好ましい。第1の光学異方性層11、第2の光学異方性層12及び第3の光学異方性層の厚みは、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0053】
(偏光子)
偏光子は、その吸収軸に平行な振動面をもつ直線偏光を吸収し、吸収軸に直交する(透過軸と平行な)振動面をもつ直線偏光を透過する性質を有する吸収型の偏光子であることができる。偏光子としては、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させた偏光子を好適に用いることができる。偏光子は、例えばポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程;ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程;二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液等の架橋液で処理する工程;及び、架橋液による処理後に水洗する工程を含む方法によって製造できる。
【0054】
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体の例は、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、及びアンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド類等を含む。
【0055】
本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルから選択される少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリレート」等においても同様である。
【0056】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は通常、85mol%以上100mol%以下であり、98mol%以上が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール又はポリビニルアセタール等を用いることもできる。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は通常、1000以上10000以下であり、1500以上5000以下が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726に準拠して求めることができる。
【0057】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光子(偏光子)の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が採用される。ポリビニルアルコール系原反フィルムの厚みは特に制限されないが、偏光子の厚みを15μm以下とするためには、5μm以上35μm以下のものを用いることが好ましい。より好ましくは、20μm以下である。
【0058】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素の染色前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、架橋処理の前又は架橋処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行ってもよい。
【0059】
一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤や水を用いてポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は通常、3倍以上8倍以下である。
【0060】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する方法としては、例えば、該フィルムを二色性色素が含有された水溶液に浸漬する方法が採用される。二色性色素としては、ヨウ素や二色性有機染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0061】
二色性色素による染色後の架橋処理としては通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬する方法が採用される。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸含有水溶液は、ヨウ化カリウムを含有することが好ましい。
【0062】
偏光子の厚みは、通常30μm以下であり、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは13μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下であり、特に好ましくは8μm以下である。偏光子の厚みは、通常2μm以上であり、3μm以上であることが好ましい。
【0063】
偏光子としては、例えば特開2016-170368号公報に記載されるように、液晶化合物が重合した硬化膜中に、二色性色素が配向したものを使用してもよい。二色性色素としては、波長380nm以上800nm以下の範囲内に吸収を有するものを用いることができ、有機染料を用いることが好ましい。二色性色素として、例えば、アゾ化合物が挙げられる。液晶化合物は、配向したまま重合することができる液晶化合物であり、分子内に重合性基を有することができる。また、WO2011/024891に記載されるように、液晶性を有する二色性色素から偏光子を形成してもよい。
【0064】
(保護フィルム)
円偏光板は、1以上の保護フィルムを有することができる。保護フィルムは、光学異方性や偏光子等を保護する機能を有することができる。保護フィルムは、例えば光学異方性層および偏光子の少なくともいずれか一方の片側または両側に配置されてよく、好ましくは光学異方性層の偏光子側とは反対側および偏光子の視認側の少なくともいずれか一方に配置され、より好ましくは第1光学異方性層の偏光子側とは反対側および偏光子の視認側の少なくともいずれか一方に配置される。光学異方性層または偏光子と保護フィルムとは、例えば後述の接着層を介して貼合することができる。以下、偏光子と保護フィルムとからなる積層体のことを直線偏光板ともいう。
【0065】
円偏光板が実質的に矩形であり、保護フィルムが延伸フィルムである場合、保護フィルムの延伸方向と、円偏光板の短辺方向とが実質的に平行であることが好ましい。延伸方向と短辺方向とが、このような関係にあると、位相差フィルムの遅相軸の方向によらず、高温環境下で円偏光板の色相変化が小さくなる傾向にある。保護フィルムの延伸方向が短辺に平行である場合、高温環境下での偏光子及び保護フィルムの延伸緩和による保護フィルムの延伸方向への収縮力が長辺に平行な場合と比較して小さくなり、色相変化が小さくなると考えられる。
【0066】
保護フィルムの延伸方向と、円偏光板の短辺方向とが実質的に平行であるとは、厳密に両者が平行である場合のみならず、両者のなす角度が0±10°である場合も含む。保護フィルムの延伸方向と、円偏光板の短辺方向とのなす角度は、好ましくは0±5°である。
【0067】
保護フィルムは、透光性を有する(好ましくは光学的に透明な)熱可塑性樹脂、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;メタクリル酸メチル系樹脂のような(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂;アクリロニトリル・スチレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリイミド系樹脂等からなるフィルムであることができる。
【0068】
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂(エチレンの単独重合体であるポリエチレン樹脂や、エチレンを主体とする共重合体)、ポリプロピレン樹脂(プロピレンの単独重合体であるポリプロピレン樹脂や、プロピレンを主体とする共重合体)のような鎖状オレフィンの単独重合体の他、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げることができる。
【0069】
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1-240517号公報、特開平3-14882号公報、特開平3-122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及びこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのようなノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
【0070】
ポリエステル系樹脂は、下記セルロースエステル系樹脂を除く、エステル結合を有する樹脂であり、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体からなるものが一般的である。多価カルボン酸又はその誘導体としては2価のジカルボン酸又はその誘導体を用いることができ、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチルが挙げられる。多価アルコールとしては2価のジオールを用いることができ、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。ポリエステル系樹脂の代表例として、テレフタル酸とエチレングリコールの重縮合体であるポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0071】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を主な構成モノマーとする樹脂である。(メタ)アクリル系樹脂の具体例は、例えば、ポリメタクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸エステル;メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸共重合体;メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体;メタクリル酸メチル-アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体;(メタ)アクリル酸メチル-スチレン共重合体(MS樹脂等);メタクリル酸メチルと脂環族炭化水素基を有する化合物との共重合体(例えば、メタクリル酸メチル-メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体等)を含む。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸C1-6アルキルエステルを主成分とする重合体が用いられ、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50質量%以上100質量%以下、好ましくは70質量%以上100質量%以下)とするメタクリル酸メチル系樹脂が用いられる。
【0072】
セルロースエステル系樹脂は、セルロースと脂肪酸とのエステルである。セルロースエステル系樹脂の具体例は、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートを含む。また、これらの共重合物や、水酸基の一部が他の置換基で修飾されたものも挙げられる。これらの中でも、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース)が特に好ましい。
【0073】
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合された重合体からなるエンジニアリングプラスチックである。
【0074】
保護フィルムの厚みは通常、1μm以上100μm以下であるが、強度や取扱性等の観点から5μm以上60μm以下であることが好ましく、10μm以上55μm以下であることがより好ましく、15μm以上40μm以下であることがさらに好ましい。
【0075】
円偏光板が2以上の保護フィルムを有する場合、保護フィルムは、同種の熱可塑性樹脂で構成されていてもよいし、異種の熱可塑性樹脂で構成されていてもよい。また、厚みが同じであってもよいし、異なっていてもよい。さらに、同じ位相差特性を有していてもよいし、異なる位相差特性を有していてもよい。
【0076】
上述のように、保護フィルムの少なくともいずれか一方は、その外面(偏光子とは反対側の面)に、ハードコート層、防眩層、光拡散層、反射防止層、低屈折率層、帯電防止層、防汚層のような表面処理層(コーティング層)を備えるものであってもよい。なお、保護フィルムの厚みは、表面処理層の厚みを含んだものである。
【0077】
保護フィルムは、後述の接着層を介して光学異方性層や偏光子等の他の層に貼合することができる。
【0078】
(接着層)
接着層は、第1の光学異方性層11と偏光子10との間、及び偏光子10と第2の光学異方性層12又は第3の光学異方性層との間に配置される。接着層は、接着剤層または粘着剤層であることができる。接着層は、単層であってもよいし多層であってもよい。
【0079】
接着剤層を形成する接着剤としては、水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤又は熱硬化性接着剤を用いることができ、好ましくは水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤である。粘着剤層としては後述のものが使用できる。
【0080】
水系接着剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液からなる接着剤、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤等が挙げられる。中でもポリビニルアルコール系樹脂水溶液からなる水系接着剤が好適に用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるポリビニルアルコール系共重合体、又はそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体等を用いることができる。水系接着剤は、アルデヒド化合物(グリオキザール等)、エポキシ化合物、メラミン系化合物、メチロール化合物、イソシアネート化合物、アミン化合物、多価金属塩等の架橋剤を含むことができる。
【0081】
水系接着剤を使用する場合は、層同士を貼合した後、水系接着剤中に含まれる水を除去するための乾燥工程を実施することが好ましい。乾燥工程後、例えば20℃以上45℃以下の温度で養生する養生工程を設けてもよい。
【0082】
上記活性エネルギー線硬化性接着剤とは、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化性化合物を含有する接着剤であり、好ましくは紫外線硬化性接着剤である。
【0083】
上記硬化性化合物は、カチオン重合性の硬化性化合物やラジカル重合性の硬化性化合物であることができる。カチオン重合性の硬化性化合物としては、例えば、エポキシ系化合物(分子内に1個又は2個以上のエポキシ基を有する化合物)や、オキセタン系化合物(分子内に1個又は2個以上のオキセタン環を有する化合物)、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。ラジカル重合性の硬化性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル系化合物(分子内に1個又は2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物)や、ラジカル重合性の二重結合を有するその他のビニル系化合物、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。カチオン重合性の硬化性化合物とラジカル重合性の硬化性化合物とを併用してもよい。活性エネルギー線硬化性接着剤は通常、上記硬化性化合物の硬化反応を開始させるためのカチオン重合開始剤及びラジカル重合開始剤の少なくとも一方をさらに含む。
【0084】
粘着剤層は、(メタ)アクリル系、ゴム系、ウレタン系、エステル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系のような樹脂を主成分とする粘着剤組成物で構成することができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型、熱硬化型であってもよい。粘着剤層の厚みは、通常3μm以上30μm以下であり、好ましくは3μm以上25μm以下である。
【0085】
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(ベースポリマー)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上をモノマーとする重合体又は共重合体が好適に用いられる。ベースポリマーには、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーを挙げることができる。
【0086】
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含有する。架橋剤としては、2価以上の金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成するもの;ポリアミン化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するもの;ポリエポキシ化合物やポリオールであって、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するもの;ポリイソシアネート化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するものが例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0087】
接着性を高めるために、接着層および接着層に貼合する層の少なくともいずれか一方の貼合面に表面活性化処理を施してもよい。表面活性化処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、放電処理(グロー放電処理等)、火炎処理、オゾン処理、UVオゾン処理、電離活性線処理(紫外線処理、電子線処理等)のような乾式処理;水やアセトン等の溶媒を用いた超音波処理、ケン化処理、アンカーコート処理のような湿式処理を挙げることができる。これらの表面活性化処理は、単独で行ってもよいし、2つ以上を組み合わせてもよい。
【0088】
2以上の接着剤層が設けられる場合、接着剤層に用いられる接着剤は同種であってもよいし異種であってもよい。2以上の粘着剤層が設けられる場合、粘着剤層に用いられる粘着剤は、同種であってもよいし異種であってもよい。
【0089】
(前面板)
前面板は、円偏光板100が画像表示素子に貼合されたときに視認側となるように配置される。前面板は、好ましくは円偏光板100の視認側の最外面となるように配置される。前面板を視認側の最外面に備える円偏光板を画像表示装置に用いる場合、円偏光板は前面板が画像表示装置の視認側の最外面となるように配置される。前面板は、接着層を介して貼合される。
【0090】
前面板としては、ガラス、樹脂フィルムの少なくとも一面にハードコート層を含んでなるものなどが挙げられる。ガラスとしては、例えば、高透過ガラスや、強化ガラスを用いることができる。特に薄い透明面材を使用する場合には、化学強化を施したガラスが好ましい。ガラスの厚みは、例えば20μm以上5mm以下とすることができる。
【0091】
樹脂フィルムの少なくとも一面にハードコート層を含んでなる前面板は、既存のガラスのように硬直ではなく、フレキシブルな特性を有することができる。ハードコート層の厚みは特に限定されず、例えば、5μm以上20μm以下であってもよい。
【0092】
樹脂フィルムとしては、ノルボルネン又は多環ノルボルネン系単量体のようなシクロオレフィンを含む単量体の単位を有するシクロオレフィン系誘導体、セルロース(ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、イソブチルエステルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース)エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリシクロオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアクリル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、エポキシなどの高分子で形成されたフィルムであってもよい。樹脂フィルムは、未延伸、1軸又は2軸延伸フィルムを使用することができる。これらの高分子はそれぞれ単独又は2種以上混合して使用することができる。樹脂フィルムとしては、透明性及び耐熱性に優れたポリアミドイミドフィルム又はポリイミドフィルム、1軸又は2軸延伸ポリエステルフィルム、透明性及び耐熱性に優れるとともに、フィルムの大型化に対応できるシクロオレフィン系誘導体フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム及び透明性と光学的に異方性のないトリアセチルセルロース及びイソブチルエステルセルロースフィルムが好ましい。樹脂フィルムの厚みは5μm以上200μm以下、好ましくは、20μm以上100μm以下であってもよい。
【0093】
ハードコート層は、光或いは熱エネルギーを照射して架橋構造を形成する反応性材料を含むハードコート組成物の硬化により形成することができる。ハードコート組成物は、光硬化型(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーと、光硬化型エポキシモノマー又はオリゴマーとを同時に含むことができる。光硬化型(メタ)アクリレートモノマーは、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートで構成された群から選択された1種以上を含むことができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ化合物に対して(メタ)アクリロイル基を有するカルボン酸を反応させて得ることができる。
【0094】
ハードコート組成物は溶剤、光開始剤及び添加剤からなる群から選択される一つ以上をさらに含むことができる。添加剤は、無機ナノ粒子、レベリング剤及び安定剤からなる群から選択される一つ以上を含むことができ、それ以外にも当該技術分野で一般的に使用される各成分として、例えば、抗酸化剤、UV吸収剤、界面活性剤、潤滑剤、防汚剤などをさらに含むことができる。
【0095】
(遮光パターン)
遮光パターンは、前面板における偏光子側の面上に形成することができる。遮光パターンは、画像表示装置の額縁(非表示領域)に形成され、画像表示装置の配線が使用者に視認されないようにすることができる。遮光パターンは、前面板又は前面板が適用される表示装置のベゼル又はハウジングの少なくとも一部として提供することができる。遮光パターンの色及び材質は特に制限されることはなく、黒色、白色、金色などの多様な色を有する樹脂物質で形成することができる。一実施形態において、遮光パターンの厚さは2μm以上50μm以下であってもよく、好ましくは4μm以上30μm以下であってもよく、より好ましくは6μm以上15μm以下の範囲であってもよい。また、遮光パターンと表示領域との間の段差による気泡混入及び境界部の視認を抑制するために、遮光パターンに形状を付与することができる。
【0096】
図2に示す円偏光板200は、保護フィルム14、接着層13、第1の光学異方性層11、接着層15、偏光子10、接着層18、第2の光学異方性層12をこの順に有する。
【0097】
図3に示す円偏光板300は、第1の光学異方性層11、接着層13、保護フィルム14と偏光子10とが積層された直線偏光板16、接着層15、第2の光学異方性層12をこの順に有する。保護フィルム14と偏光子10と接着する接着層は図示されていない。
【0098】
図4に示す円偏光板400は、保護フィルム14、接着層13、第1の光学異方性層11、接着層15、偏光子10、接着層18、第3の光学異方性層17、第2の光学異方性層12をこの順に有する。第3の光学異方性層17と第2の光学異方性層12とを接着する接着剤層は図示されていない。
【0099】
図5に示す円偏光板500は、第1の光学異方性層11、接着層13、保護フィルム14と偏光子10とが積層された直線偏光板16、接着層15、第3の光学異方性層17、第2の光学異方性層12をこの順に有する。保護フィルム14と偏光子10とを接着する接着層、第3の光学異方性層17と第2の光学異方性層12とを接着する接着層は図示されていない。
【0100】
(円偏光板の製造方法)
図6を参照しながら、円偏光板300の製造方法の一例について説明する。まず、直線偏光板16の偏光子10側に第2の光学異方性層12を接着層15を介して積層する[図6(a)]。次いで、直線偏光板16の保護フィルム14側に第1の光学異方性層11を接着層13を介して積層することにより円偏光板300が得られる[図6(b)]。
第2の光学異方性層12が、式(III)で表される光学特性を有する光学異方性層を含む場合、偏光子10の吸収軸と第2の光学異方性層12の遅相軸のなす角とが45°となるように積層し、かつ第1の光学異方性層11の遅相軸と第2の光学異方性層12の遅相軸のなす角が90°となるように積層することが好ましい。
【0101】
直線偏光板16は、偏光子10と保護フィルム14とを接着剤層を介して積層することにより製造することができる。直線偏光板16は、長尺の部材を準備し、ロール・トゥ・ロールでそれぞれの部材を貼り合わせた後、所定形状に裁断して製造してもよいし、それぞれの部材を所定の形状に裁断した後、貼り合わせてもよい。偏光子に保護フィルムを貼り合わせた後、加熱工程や調湿工程を設けてもよい。
【0102】
第1の光学異方性層11及び第2の光学異方性層12は、例えば次のように製造することができる。基材上に配向膜を形成し、配向膜上に重合性液晶化合物を含む塗工液を塗工する。重合性液晶化合物を配向させた状態で、活性エネルギー線を照射し、重合性液晶化合物を硬化させる。重合性液晶化合物が硬化した層上に、剥離フィルム上に形成された粘着剤層15を積層させ、基材及び/又は配向膜を剥離する。
光学異方性層は、長尺の部材を準備し、ロール・トゥ・ロールでそれぞれの部材を貼り合わせた後、所定形状に裁断して製造してもよいし、それぞれの部材を所定の形状に裁断した後、貼り合わせてもよい。
剥離フィルムは、光学異方性層と偏光子又は直線偏光板とを貼合する際に剥離し、粘着剤層を露出させる。
【0103】
<用途>
円偏光板は、さまざまな表示装置に用いることができる。表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子又は発光装置を含む。表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(以下、無機ELともいう)表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FEDともいう)、表面電界放出表示装置(SEDともいう))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLVともいう)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMDともいう)を有する表示装置)及び圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置などのいずれをも含む。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。円偏光板は、特に有機EL表示装置又は無機EL表示装置に特に有効に用いることができる。
円偏光板は、第1の光学異方性層が表示装置の視認側となるように粘着剤層を用いて表示素子に貼合することができる。
本発明の円偏光板は、車内ディスプレイ光がフロントガラスで反射した際の反射光を低減するとともに、その反射光の色変化を低減することができ、かつ耐光性に優れるため、車載用画像表示装置に好適である。
【0104】
図7において、有機EL表示装置600は、円偏光板101の第2の光学異方性層12側に積層された粘着剤層19を介して、有機EL表示素子20に積層された層構成を有する。円偏光板101は、第1の光学異方性層11上に積層された接着層21を介して、前面板22が貼合されている。
【実施例
【0105】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記のない限り、質量%及び質量部である。
【0106】
[ディスプレイ光の反射光の評価]
図8に示すように、ディスプレイ23、黒アクリル板25等を配置した。白表示のディスプレイ23の視認側(黒アクリル板25側)に、得られた円偏光板24を貼合した。白色ディスプレイ23から出射した光を、ディスプレイ23に対する角度が45°となるように設置した黒アクリル板25に反射させた。ディスプレイ23の表示面に対し垂直な軸26を回転軸としてディスプレイ23を水平方向に回転させ、観察方向27から黒アクリル板25を目視により観察した。このとき反射光の色味の変化が小さいものをA、大きいものをBと評価した。
【0107】
[円偏光板カールの評価]
実施例で得られた円偏光板の第2の光学異方性層に対し、アクリル系粘着剤層Bとセパレートフィルムを貼合した。得られた粘着剤付き円偏光板を200mm×100mmの大きさに切り出した。カットした粘着剤付き円偏光板のカールを評価した。カールが見られたものをB、カールが見られなかったものをAとした。
【0108】
[円偏光板の耐光性評価]
実施例で得られた円偏光板の第2の光学異方性層に対し、アクリル系粘着剤層Bとセパレートフィルムを貼合した。得られた粘着剤付き円偏光板を40mm×40mmの大きさに切り出した。セパレートフィルムを剥離して露出した粘着剤を無アルカリガラスに貼合し円偏光板付きガラスを得た。得られたサンプルを卓上キセノンアークランプ式促進耐光性試験機(ATLAS製、SUNTEST XLS+)にてUV露光量95400kJ/mで照射した。なお、照射は円偏光板の第1の光学異方性層側から行った。照射後の円偏光板の波長450nm、波長550nm、並びに波長650nmの光に対する面内位相差値を、王子計測機器株式会社製のKOBRA-WRを用いて測定した。得られたデータから第2の光学異方性層のΔRe(550)を算出した。
ΔRe(550)=試験後のRe(550)-初期のRe(550)
評価基準:
A:ΔRe(550)が比較例1より小さいものを耐光性が良好であるとした。
B:ΔRe(550)が比較例1と同等もしくは大きいものを耐光性が低いとした。
【0109】
[光学異方性層A]
下記構造の光配向性材料5部(重量平均分子量:30,000)とシクロペンタノン(溶媒)95部とを混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、配向膜形成用組成物を得た。
【0110】
以下に示す重合性液晶化合物a、及び重合性液晶化合物bを90:10の質量比で混合した混合物100部に対して、レベリング剤(F-556;DIC社製)を1.0部、及び重合開始剤である2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(「イルガキュア369(Irg369)」、BASFジャパン株式会社製)を6部添加した。
【0111】
さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加し、80℃で1時間攪拌することにより、液晶硬化膜形成用組成物を得た。
【0112】
重合性液晶化合物aは、特開2010-31223号公報に記載された方法で製造した。また、重合性液晶化合物bは、特開2009-173893号公報に記載された方法に準じて製造した。以下にそれぞれの分子構造を示す。
【0113】
(重合性液晶化合物a)
【化1】
【0114】
(重合性液晶化合物b)
【化2】
【0115】
(基材、配向膜及び重合性液晶化合物が硬化した層からなる積層体の製造)
基材として50μm厚のシクロオレフィン系フィルム〔日本ゼオン株式会社製の商品名「ZF-14-50」〕上にコロナ処理を実施した。コロナ処理が施された面に、配向膜形成用組成物をバーコーターで塗布した。塗布膜を80℃で1分間乾燥した。乾燥した塗布膜に、偏光UV照射装置〔ウシオ電機株式会社の商品名「SPOT CURE SP-9」〕を用いて、軸角度45°にて偏光UVを照射し、配向膜を得た。偏光UVの照射は、波長313nmにおける積算光量が100mJ/cmとなるように行った。
【0116】
続いて、配向膜上に、液晶硬化膜形成用組成物を、バーコーターを用いて塗布した。塗布膜を120℃で1分間乾燥した。乾燥した塗布膜に、高圧水銀ランプ〔ウシオ電機株式会社の商品名:「ユニキュアVB-15201BY-A」〕を用いて、紫外線を照射した。紫外線の照射工程は、波長365nmにおける積算光量が250mJ/cmとなるように、窒素雰囲気下で行った。照射直後に冷却工程として、硬化膜を5℃に設定したオーブンに20秒間投入した。オーブン取り出し後、すぐに再度前記紫外線照射工程及び冷却工程を実施し、基材、配向膜、及び重合性液晶化合物が硬化した層からなる積層体を得た。
【0117】
(位相差値の測定)
積層体の重合性液晶化合物が硬化した層上に、粘着剤層を積層させた。当該粘着剤層を介して、積層体を、ガラスに貼合した。その後、積層体が備える基材を剥離して、位相差値を評価するためのサンプルを得た。その結果、重合性液晶化合物が硬化した層は、各波長における位相差値Re(λ)として、Re(450)=121nm、Re(550)=142nm、Re(650)=146nmを有していた。その結果、Re(450)/Re(550)=0.85、Re(650)/Re(550)=1.03と算出された。重合性液晶化合物が硬化した層は、λ/4の位相差を与える層であった。
【0118】
[光学異方性層B]
特開2015-187717号公報の段落0026から段落0051に記載のとおりに、第1光学異方性層(H)[Re(550)=250nm]を作製した。
【0119】
[光学異方性層C]
特開2015-187717号公報の段落0053から段落0062に記載のとおりに、第2光学異方性層(Q)[Re(550)=120nm]を作製した。
【0120】
[光学異方性層D]
厚み25μmのノルボルネン系樹脂からなる延伸フィルムを準備した。位相差値を測定したところ、Re(450)=99.0nm、Re(550)=98.6nm、Re(650)=98.5nmであり、Re(450)/Re(550)=1.004、Re(650)/Re(550)=0.999と算出された。
【0121】
[光学異方性層E]
基板(TACフィルム、厚み40μm)の表面にポリビニルアルコール膜(厚み0.1μm)を形成した。ラビング布を用いて、基板の長手方向に対して45°の方向にポリビニルアルコール膜表面をラビング処理して、配向基板を作製した。
【0122】
ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製、商品名PaliocolorLC242)10gと、当該重合性液晶化合物に対する光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名イルガキュア907、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤1%含有)0.5gとを、トルエン40gに溶解して、塗工液を調製した。
【0123】
上記で得られた配向基板の表面に、当該塗工液をバーコーターにより塗工した後、100℃で1分間乾燥した。高圧水銀ランプを用いて、塗膜に紫外線を照射することにより光学異方性層Eを得た。紫外線の照射は、窒素雰囲気下で行い、波長365nmにおける積算光量は1200mJ/cmであった。得られた光学異方性層Eの膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ、その膜厚は973nmであった。配向角は前記基板の長手方向に対して45°であった。光学異方性層Eの位相差値を測定したところ、Re(450)=145nm、Re(550)=135nm、Re(650)=132nmであった。各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=1.07
Re(650)/Re(550)=0.98
【0124】
[直線偏光板A]
PVA系樹脂にヨウ素が吸着配向した偏光子を準備した。この偏光子の厚みは7μmであった。偏光子の一方の面に、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(ZF-14、日本ゼオン株式会社製)を貼合した。COPフィルムの厚みは13μmであった。このようにして、偏光子の一方の面に保護フィルムを備える直線偏光板Aを作製した。
【0125】
[直線偏光板B]
以下の式(1-6)で表される重合性液晶化合物と式(1-7)で表される重合性液晶化合物及び下記式(2-1a)、(2-1b)、(2-3a)で示される特開2013-101328号公報の実施例に記載のアゾ色素を含む偏光子形成用組成物を準備した。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】
【0126】
基材上に配向膜を形成した。配向膜上に、偏光層形成用組成物をバーコート法により塗布した。塗膜に紫外線を照射して重合性液晶化合物を硬化させた。このようにして、直線偏光板Bを作製した。
【0127】
[アクリル系粘着剤層A]
厚み5μmのシート状粘着剤(リンテック株式会社製)を準備した。
【0128】
[アクリル系粘着剤層B]
厚み25μmのシート状粘着剤(リンテック株式会社製)を準備した。
【0129】
<実施例1>
直線偏光板Aの偏光子側の面にアクリル系粘着剤層Aを貼合した。この粘着剤層を介して、偏光子の吸収軸と光学異方性層A(第2の光学異方性層)の遅相軸とのなす角が45°となるように光学異方性層Aの重合性液晶化合物が硬化した層側の面を貼合した。
直線偏光板AのCOP側の面にアクリル系粘着剤層Aを貼合した。この粘着剤層を介して、第2の光学異方性層の遅相軸と光学異方性層A(第1の光学異方性層)の遅相軸とのなす角が90°となるように光学異方性層Aの重合性液晶化合物が硬化した層側の面を貼合した。
このようにして、光学異方性層A(第1の光学異方性層)、偏光板A及び光学異方性層A(第2の光学異方性層)をこの順に備える円偏光板を作製した。
【0130】
<実施例2>
光学異方性層B(第3の光学異方性層)と光学異方性層C(第2の光学異方性層)とをアクリル系粘着剤層Aで互いに貼合し、光学異方性層積層体を作製した。
実施例1において、偏光子の吸収軸と光学異方性層Aの遅相軸とのなす角が45°となるように光学異方性層A(第2の光学異方性層)を貼合したことに代えて、偏光子の吸収軸と光学異方性層積層体の光学異方性層C(第2の光学異方性層)の遅相軸とのなす角が45°となるように、光学異方性層積層体の光学異方性層B(第3の光学異方性層)側の面と直線偏光板Aの偏光子側の面とをアクリル系粘着剤層Aを介して貼合したこと以外は、実施例1と同様にして円偏光板を作製した。
【0131】
<実施例3>
直線偏光板Aの代わりに偏光板Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして円偏光板を作製した。
【0132】
<実施例4>
光学異方性層A(第2の光学異方性層)の遅相軸と光学異方性層A(第1の光学異方性層)の遅相軸のなす角が0°となるように光学異方性層A(第1の光学異方性層)を貼合したこと以外は実施例1と同様に円偏光板を作製した。
【0133】
<比較例1>
光学異方性層A(第1の光学異方性層)に代えて光学異方性層Dを用いたこと以外は、実施例1と同様に円偏光板を作製した。
【0134】
<比較例2>
光学異方性層A(第1の光学異方性層)の代わりに光学異方性層Eを用いたこと以外は、実施例1と同様に円偏光板を作製した。
【0135】
【表1】
【符号の説明】
【0136】
10 偏光子、11 第1の光学異方性層、12 第2の光学異方性層、13,15,18,21 接着層、19 粘着剤層、14 保護フィルム、16 直線偏光板、17 第3の光学異方性層、20 有機EL表示素子、22 前面版、23 ディスプレイ、24 円偏光板、25 黒アクリル板、26 軸、27 観察方向、100,101,200,300,400,500 円偏光板、600 有機EL表示装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8