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特許7374793ドレッシングボード、及びドレッシング方法
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  • 特許-ドレッシングボード、及びドレッシング方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】ドレッシングボード、及びドレッシング方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/00 20060101AFI20231030BHJP
   B24B 53/12 20060101ALI20231030BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
B24B53/00 K
B24B53/12 Z
H01L21/78 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020015396
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021122863
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】大前 巻子
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-203429(JP,A)
【文献】特開2017-213613(JP,A)
【文献】特開平06-055440(JP,A)
【文献】特開2018-117091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/00
B24B 53/12
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削ブレードの切り刃をドレッシングするドレッシングボードであって、
切り刃をドレッシングする平坦部と、該平坦部の外周を囲繞する側壁部とを備え、該平坦部と該側壁部とにより囲まれた貯水域が形成されたドレッシングボード。
【請求項2】
被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、を含み構成された切削装置において、請求項1に記載されたドレッシングボードを使用して実施されるドレッシング方法であって、
該保持手段に該ドレッシングボードを載置するドレッシングボード載置工程と、
該ドレッシングボードの該貯水域に水を供給して貯水する貯水工程と、
該切削手段を該ドレッシングボードに対して垂直方向に移動して、回転させた状態の該切削ブレードの切り刃を水が貯水された該貯水域に進入させると共に、該平坦部に切り込ませてドレッシングを遂行するドレッシング工程と、
から少なくとも構成されるドレッシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削ブレードの切り刃をドレッシングするドレッシングボード、及び該ドレッシングボードを使用して実施されるドレッシング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、切り刃を外周に有する切削ブレードを回転可能に備えた切削装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、切削装置の切削ブレードの切り刃に目詰まりが生じて、ダイアモンド砥粒の突出が不十分となった場合には、ドレッシングボードを切削ブレードで切削して所謂目立てを実施して切り刃の状態を整える作業、所謂ドレッシングを実施する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-049120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、切削装置によってウエーハを切削する場合、切削ブレードによって切削される加工領域に対して切削水を供給しながら湿式の環境下で切削を実施する場合と、Mg-Sn-Si素材のウエーハを切削する場合のように、加工領域に対して切削水を供給せずに冷却エアーを供給して、乾式の環境下で切削する場合とがある。ここで、上記したドレッシングボードによってドレッシングを実施する場合、従来は切削装置の保持手段上にドレッシングボードを載置して、ドレッシングボードに対して水(一般的には切削水)を供給しながら切削ブレードを切り込ませる必要があり、乾式の環境下で切削加工を実施する切削装置内では、乾式の環境を維持したまま湿式のドレッシングを実施することは困難であるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、乾式の環境下で被加工物を切削する切削装置においても、乾式の環境を維持したまま湿式のドレッシングを実施することができるドレッシングボード、及びドレッシング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、切削ブレードの切り刃をドレッシングするドレッシングボードであって、該切り刃をドレッシングする平坦部と、該平坦部の外周を囲繞する側壁部とを備え、該平坦部と該側壁部とにより囲まれた貯水域が形成されたドレッシングボードが提供される。
【0008】
また、本発明によれば、被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、を含み構成された切削装置において、上記した本発明のドレッシングボードを使用して実施されるドレッシング方法であって、該保持手段に該ドレッシングボードを載置するドレッシングボード載置工程と、該ドレッシングボードの該貯水域に水を供給して貯水する貯水工程と、該切削手段を該ドレッシングボードに対して垂直方向に移動して、回転させた状態の該切削ブレードの切り刃を水が貯水された該貯水域に進入させると共に、該平坦部に切り込ませてドレッシングを遂行するドレッシング工程と、から少なくとも構成されるドレッシング方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のドレッシングボードは、切削ブレードの切り刃をドレッシングする平坦部と、該平坦部の外周を囲繞する側壁部とを備え、該平坦部と該側壁部とにより囲まれた貯水域が形成されていることから、乾式の環境下で被加工物を切削する切削装置の切削ブレードのドレッシングに使用される場合であっても、被加工物を切削する環境を必要以上に汚すことなく、乾式の環境を維持したまま、湿式でドレッシングを実施することができ、切り刃の状態を良好に整えることができる。
【0010】
また、本発明のドレッシング方法は、上記した本発明のドレッシングボードを使用し、保持手段に該ドレッシングボードを載置するドレッシングボード載置工程と、該ドレッシングボードの該貯水域に水を供給して貯水する貯水工程と、該切削手段を該ドレッシングボードに対して垂直方向に移動して、回転させた状態の該切削ブレードの切り刃を水が貯水された該貯水域に進入させると共に、該平坦部に切り込ませてドレッシングを遂行するドレッシング工程と、から少なくとも構成されることにより、乾式の環境下で被加工物を切削する切削装置の切削ブレードのドレッシングを実施する場合であっても、被加工物を切削する環境を必要以上に汚すことなく、乾式の環境を維持したまま、湿式でドレッシングを実施することができ、切り刃の状態を良好に整えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】切削装置の全体斜視図である。
図2図1に示す切削装置の切削手段の一部を拡大して示す斜視図である。
図3】(a)本実施形態のドレッシングボードの全体斜視図、(b)(a)に示すドレッシングボードの一部拡大断面図である。
図4】ドレッシングボード載置工程の実施態様を示す斜視図である。
図5】(a)貯水工程においてドレッシングボードに対して水を供給する態様を示す斜視図、(b)ドレッシングボードに水が貯水された状態を示す斜視図である。
図6】(a)ドレッシング工程の実施態様を示す斜視図、(b)(a)に示すドレッシング工程の実施態様を側面から見た状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に基づいて構成されるドレッシングボード、及び該ドレッシングボードを使用したドレッシング方法の実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0013】
図1には、本実施形態のドレッシングボードを使用してドレッシング方法を実施するのに好適な切削装置1が示されている。切削装置1によって加工される被加工物は、例えば、図に示すように、ダイシングテープTを介して環状のフレームFに保持された表面10aに複数のデバイスDが形成されたMg-Sn-Si素材のウエーハ10であり、個々のデバイスチップに分割される際には、加工領域に切削水を供給せず、乾式の環境下で切削加工が施される。切削装置1は、略直方体形状のハウジング1Aを備え、ハウジング1Aのカセット載置領域4に載置されるカセット4Aと、カセット4Aから被加工物であるウエーハ10を仮置きテーブル5に搬出する搬出入手段3と、ウエーハ10を保持する保持手段12と、仮置きテーブル5に搬出されたウエーハ10を保持手段12のチャックテーブル12aに搬送して載置する旋回アームを有する搬送手段6と、チャックテーブル10a上に載置され保持されたウエーハ10を撮像する撮像手段11と、ウエーハ10に切削加工を施す切削手段20と、切削加工が施されたウエーハ10をチャックテーブル12aから洗浄位置に搬送するための搬送手段13と、を備えている。なお、図1に示す切削装置1は、説明の都合上省略されているが、切削手段20によって保持手段12に保持されたウエーハ10を切削加工する加工領域を囲うカバーを備えており、該カバーによって、加工領域を含む内側の空間が密閉される。
【0014】
さらに、切削装置1のハウジング1Aの内部には、保持手段12を図中矢印Xで示す方向で移動させる移動手段、切削手段20を矢印Yで示す方向、及び矢印Zで示す方向で移動させる移動手段(いずれも図示は省略する)が備えられており、制御手段(図示は省略する)によって、搬出入手段3、搬送手段6、保持手段12、切削手段20、及びそれらを移動させる移動手段等が制御される。
【0015】
カセット4Aから搬出入手段3により仮置テーブル5に搬出されたウエーハ10は、搬送手段6により保持手段12のチャックテーブル12a上に搬送されて載置され吸引保持される。チャックテーブル12aに保持されたウエーハ10は、撮像手段11の下方に位置付けられて、撮像手段11によって撮像されて、加工位置(分割予定ライン)が検出され、次いで、切削手段20の下方に位置付けられて、撮像手段11によって検出された分割予定ラインの位置情報に基づき、分割予定ラインに沿って切削加工が施され、個々のチップに分割される。切削加工が施されたウエーハ10は、搬送手段13によって洗浄位置に搬送されて高圧エアー等による洗浄処理が施され、搬送手段6、及び搬出入手段3によってカセット4Aの所定の位置に戻される。
【0016】
図2に切削手段20の一部を拡大して示す。図に示すように、切削手段20は、切り刃22aを備えた切削ブレード22が先端部に固定された回転軸23を回転自在に支持するハウジング21と、ハウジング21の先端において切削ブレード22をカバーするブレードカバー24と、切削ブレード22によって切削される加工領域にブレードカバー24のエアー導入口25を介して冷却用エアーを供給するエアー供給手段26と、を備えている。本実施形態の切削ブレード22の切り刃22aは、例えば、ダイアモンドからなる砥粒を電鋳、メタルボンド、レジンボンド等で固めて構成されている。
【0017】
上記した切削装置1において切削加工を繰り返すことにより、切削ブレード22の切り刃22aは、切削屑等による目つぶれを起こし、ダイアモンド砥粒の突出量が不十分となって、切削能力が低下することから、定期的に、或いは、必要に応じて、ドレッシングが実施される。このドレッシングを実施するに際し、図3に示すような本実施形態のドレッシングボード30を用意する。
【0018】
図3(a)に示すように、ドレッシングボード30は、平坦部32と、平坦部32の外周に立設され、平坦部32を囲繞する側壁部34とを備え、平坦部32と側壁部34とによって囲まれた凹状の貯水域36が形成されている。ドレッシングボード30は、例えば、炭化ケイ素(SiC)からなるグリーンカーボランダム(GC)砥粒をフィラー入りのフェノール樹脂からなるレジンボンドに混練して板状に成形される。図3(b)に、ドレッシングボード30の外周部の一部の断面を拡大して示す。図に示すように、ドレッシングボード30は、例えば一辺が8cmの矩形状であって、全体の厚みが1mm、平坦部32の厚みが0.7mm、貯水域36の深さが0.3mmで形成されている。なお、ドレッシングボード30の形状、寸法は特に限定されず、矩形以外の形状、例えば円形であってもよい。ドレッシングボード30の形状が円形である場合は、円形の平坦部の外周にリング状の側壁部が形成されることになる。
【0019】
図4乃至図6を参照しながら、上記したドレッシングボード30を使用して実施されるドレッシング方法について、以下に説明する。
【0020】
本実施形態のドレッシング方法では、まず、図4に示す保持手段12(説明の都合上、クランプ16のみを示している)上に、ドレッシングボード30を載置する。本実施形態においては、表面に粘着力を有するダイシングテープTが貼着されたフレームFを、予め保持手段12に載置し吸引保持してクランプ16によってフレームFを固定しておき、ダイシングテープTの中央領域に、ドレッシングボード30の貯水域36を上方に向けて載置して、ダイシングテープTに貼着させて固定する(ドレッシングボード載置工程)。なお、本発明のドレッシングボード載置工程は、この手順に限定されず、例えば、予め、ドレッシングボード30を、ダイシングテープTを介してフレームFによって支持しておき、フレームFによって支持されたドレッシングボード30をダイシングテープT及びフレームFと共に保持手段12に載置して吸引保持するようにしてもよい。
【0021】
次いで、図5(a)に示すように、ドレッシングボード30の貯水域36に水Wを供給し、図5(b)に示すように、貯水域36に水Wを貯水し満たした状態とする(貯水工程)。水Wを貯水域36に供給する方法は特に限定されないが、例えば、図5(a)に示すようにスポイト40を使用して供給することができる。正確な水の量を計測して貯水域36に供給する場合は、微小な水の量の計測が容易なピペットを使用することもできる。
【0022】
上記した貯水工程を実施したならば、図6(a)に示すように、保持手段12を切削手段20の直下に位置付ける。そして、切削手段20を作動して、切削ブレード22を矢印R1で示す方向に所定の回転数(例えば18,000rpm)で回転させる。そして、切削ブレード22を回転させた状態で、図示しない移動手段を作動して、切削手段20の切削ブレード22をドレッシングボード30に対して垂直方向(矢印R2で示す)に移動して、図6(b)に示すように、切削ブレード22の切り刃22aを水Wが貯水された貯水域36に進入させると共に、平坦部32に切り込ませて切削し、ドレッシングを遂行する(ドレッシング工程)。なお、上記したドレッシング工程を実施する際に、保持手段12を図中矢印Aで示す方向に移動させてもよい。以上により本実施形態のドレッシング方法が完了する。
【0023】
本実施形態の切削装置1の加工領域を含む内部空間は、乾式の環境下にあり、切削水は供給されない。しかし、ドレッシングボード30の上面に形成された貯水域36には、水Wが貯水されており、別途切削水等を供給することなく、湿式のドレッシングを遂行することができる。また、ドレッシングボード30の上面には、深さがドレッシングボード30の厚み1mmよりも浅い(0.3mm)の貯水域36を形成していることから、ドレッシングに供される水Wは僅かであり、切削ブレード22を平坦部32に対して切り込ませても、被加工物を切削する環境を必要以上に汚すことなく、乾式の環境を維持したまま、湿式でドレッシングを実施することができ、切り刃22aの状態を整えることができる。
【符号の説明】
【0024】
1:切削装置
1A:ハウジング
3:搬出入手段
4:カセット載置領域
4A:カセット
5:仮置きテーブル
6:搬送手段
10:ウエーハ
11:撮像手段
12::保持手段
12a:チャックテーブル
13:搬送手段
20:切削手段
21:ハウジング
22:切削ブレード
22a:切り刃
23:回転軸
24:ブレードカバー
25:エアー導入口
26:エアー供給手段
30:ドレッシングボード
32:平坦部
34:側壁部
36:貯水域
40:スポイト
F:フレーム
T:ダイシングテープ
W:水

図1
図2
図3
図4
図5
図6