(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】半導体ウエハ用処理液
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20231030BHJP
C23F 1/14 20060101ALI20231030BHJP
C23F 1/26 20060101ALI20231030BHJP
C23F 1/38 20060101ALI20231030BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
H01L21/308 F
C23F1/14
C23F1/26
C23F1/38
H01L21/306 F
(21)【出願番号】P 2021551588
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2021029371
(87)【国際公開番号】W WO2022030627
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2021-08-30
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2020134514
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021054202
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 由樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伴光
(72)【発明者】
【氏名】下田 享史
(72)【発明者】
【氏名】根岸 貴幸
【合議体】
【審判長】恩田 春香
【審判官】棚田 一也
【審判官】中野 浩昌
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/074601(WO,A1)
【文献】特開2019-054121(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181896(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304-21/3063
H01L 21/308
H01L 21/465-21/467
C23F 1/00 - 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記
(A)および(B)を含む
、半導体ウエハ上の第6族金属またはルテニウム
の処理液であって、
(A)次亜ハロゲン酸イオン、
(B)下記式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩
前記次亜ハロゲン酸イオンが次亜臭素酸イオンであり、次亜臭素酸イオンの濃度が0.0096~1.92質量%である
、処理液。
【化1】
(式中、aは、6~20の整数であり、R
1、R
2、R
3は独立して、水素原子、又は炭素数1~20のアルキル基であり、X
-は、臭素含有イオンである。)
【請求項2】
前記(B)式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩の濃度が、0.0001~10質量%である、請求項1に記載
の処理液。
【請求項3】
さらに、(C)テトラメチルアンモニウムイオン、エチルトリメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、およびテトラブチルアンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種のアンモニウムイオンを含む、請求項1または2に記載
の処理液。
【請求項4】
前記半導体ウエハ用処理液の、25℃でのpHが7を超え14.0未満である、請求項
1~3のいずれか一項に記載
の処理液。
【請求項5】
さらに塩化物イオンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載
の処理液。
【請求項6】
さらに塩素酸イオンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載
の処理液。
【請求項7】
半導体ウエハ用処理液に含まれる金属の濃度が質量基準で1ppb以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載
の処理液。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載
の処理液と半導体ウエハとを接触させる工程を含む、エッチング方法。
【請求項9】
下記(
D)、(
E)および(
F)を含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の処理液のための薬液。
(
D)臭化テトラメチルアンモニウム、臭化エチルトリメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、および臭化テトラブチルアンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種のアンモニウム塩、
(
E)下記式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩、
(
F)濃度が質量基準で1ppb以下である金属
【化2】
(式中、aは、6~20の整数であり、R
1、R
2、R
3は独立して、水素原子、又は炭素数1~20のアルキル基であり、X
-は、臭素含有イオンである。)
【請求項10】
請求項
9に記載
の薬液と、次亜塩素酸イオンを含む溶液とを混合する工程を含む、
半導体ウエハ上の第6族金属またはルテニウム
の処理液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の製造工程において使用される、半導体ウエハ上に存在する遷移金属をエッチングするための新規な処理液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子のデザインルールの微細化が進んでおり、配線抵抗が増大する傾向にある。配線抵抗が増大した結果、半導体素子の高速動作が阻害されることが顕著になっており、対策が必要となっている。そこで、配線材料としては、従来の配線材料よりも、エレクトロマイグレーション耐性が向上し、抵抗値が低減された配線材料が所望されている。
【0003】
従来の配線材料であるアルミニウム、銅と比較して、ルテニウムまたはタングステン、モリブデン若しくはクロム(以下、タングステン、モリブデンおよびクロムを総称して第6属金属と記すこともある)は、エレクトロマイグレーション耐性が高く、配線の抵抗値を低減可能という理由で、特に、半導体素子のデザインルールが10nm以下の配線材料として、注目されている。その他、配線材料だけでなく、ルテニウムは、配線材料に銅を使用した場合でも、エレクトロマイグレーションを防止することが可能なため、銅配線用のバリアメタルとして、ルテニウムを使用することも検討されている。
【0004】
ところで、半導体素子の配線形成工程において、ルテニウム、タングステン、モリブデン、またはクロムを配線材料として選択した場合でも、従来の配線材料と同様に、ドライエッチング又はウェットエッチングによって配線が形成される。しかしながら、これらの金属のドライエッチングを行う場合、プラズマの分布に起因する面内不均一性が生じたり、反応種およびイオンのフラックスまたはエネルギーに依存してエッチング速度が増減するため、精密エッチングが難しいという課題があった。そのため、これらの金属をより精密にエッチングできる方法として、ウェットエッチングが注目されている。
【0005】
半導体素子を微細加工するためには、ウェットエッチングにおけるルテニウム、タングステン、モリブデン、またはクロムの微細加工が必要となる。ルテニウム、タングステン、モリブデン、またはクロムの微細加工を実現するためには、これらの金属の正確なエッチング速度の制御が求められる。さらに、多層配線を実現するためには、各金属層の平坦性が必要不可欠であり、エッチング後の金属表面の平坦性も所望されている。
【0006】
特許文献1には、ルテニウム膜のエッチング方法として、pH12以上かつ標準酸化還元電位300mV vs.SHE(標準水素電極)以上の薬液、具体的には、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩または臭素酸塩のようなハロゲンの酸素酸塩を含む溶液を用いてルテニウム膜をエッチングする方法が提案されている。
【0007】
また、特許文献2には、オルト過ヨウ素酸を含むpH11以上の水溶液により、ルテニウムを酸化させ、溶解して除去する方法が提案されている。さらに、特許文献3には、臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物および水を含むpH10以上12未満のルテニウム金属の処理液が提案されている。
【0008】
その他、特許文献4には、硝酸セリウム(IV)アンモニウムに、さらに硝酸などの強酸を添加した除去液を用いて、ルテニウムを酸化して溶解、除去する洗浄方法が提案されている。
【0009】
半導体用ウエハからタングステンをエッチングするために用いられる処理液として、特許文献5には、次亜塩素酸イオン及び溶媒を含み、25℃でpHが7を超え12.0未満であるルテニウムおよびタングステンを有するウエハの処理液が提案されている。該処理液は次亜塩素酸イオンを含み、半導体ウエハの端面部や裏面部に付着したルテニウムおよびタングステンを除去できることが示されている。
【0010】
特許文献6には、オルト過ヨウ素酸および水を含むタングステン金属の除去液が提案されている。該除去液は半導体基板上に成膜または付着した不要なタングステン金属を安定して除去できることが示されている。
【0011】
特許文献7には、酸化剤および酸を含む薬液で銅およびモリブデンを加工し、配線形成を行う方法が開示されている。該酸化剤として、過酸化水素、過硫酸、硝酸、次亜塩素酸、過マンガン酸およびニクロム酸が挙げられている。また、該薬液として過酸化水素およびカルボン酸を含有する水溶液を用いて、モリブデン膜をエッチングした例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2002-161381号公報
【文献】国際公開第2016/068183号
【文献】国際公開第2011/074601号
【文献】特開2001-234373号公報
【文献】国際公開第2019/142788号
【文献】特開2005-166924号公報
【文献】特開2013-254946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、先行技術文献に記載された従来の処理液では、以下の点で改善の余地があることが分かった。
【0014】
例えば、特許文献1や4に記載のルテニウムをエッチングする方法は、半導体基板の裏面やベベルに付着したルテニウム残渣の除去を目的とした方法であり、ルテニウムを溶解、除去することは可能であるが、ルテニウムの精密エッチングについては開示されておらず、困難であった。また、特許文献1や4に記載の処理液では、配線工程で所望されているエッチング処理後のルテニウム表面の平坦性を維持することは難しかった。さらに、該処理液では、ルテニウムのエッチング速度の正確な制御が難しいため、ルテニウムの精密エッチングを行うことは難しかった。そのため、特許文献1や4に記載の方法では、半導体素子の配線を形成する工程でルテニウムの処理液として使用することが困難であった。
【0015】
また、特許文献2に記載の処理液では、特許文献1と同様に、ルテニウムが含まれるエッチング残渣を対象とした処理液であり、エッチング処理後のルテニウム表面の平坦性を維持することは難しく、また、ルテニウムのエッチング速度の正確な制御が難しいため、ルテニウムの精密エッチングを行うことは難しかった。そのため、ルテニウムの精密エッチングが必要とされる配線形成工程で使用することは困難であった。
【0016】
その他、特許文献3に記載の処理液では、半導体ウエハ等の基板に構成される半導体素子、配線、バリアメタルの製造工程で使用されたルテニウムをエッチングすることが記載されている。しかしながら、特許文献1、特許文献4と同様に半導体ウエハ等の基板の洗浄が目的であり、精密エッチングを目的としたものではない。そのため、特許文献3に記載の処理液でルテニウムをエッチングした場合は、エッチング処理後のルテニウム表面の平坦性が維持されず、エッチング速度の正確な制御も難しかった。したがって、ルテニウムの精密エッチングが必要とされる配線形成工程で特許文献3に記載の処理液を使用することは難しく、さらなる改善の余地があった。
【0017】
また、特許文献5に記載のタングステンの処理液は、半導体ウエハの端面部や裏面部に付着したタングステンを除去することを目的としており、精密エッチングを目的としたものではない。同様に、特許文献6に記載の除去液も、半導体基板上に成膜または付着した不要なタングステン金属を安定して除去することを目的としており、精密エッチングを目的としたものではない。そのため、特許文献5または特許文献6に記載の処理液でタングステンをエッチングした場合は、エッチング処理後のタングステン表面の平坦性が維持されず、エッチング速度の正確な制御も難しかった。したがって、タングステンの精密エッチングが必要とされる配線形成工程で特許文献5または特許文献6に記載の処理液を使用することは難しく、さらなる改善の必要があった。
【0018】
特許文献7に記載のモリブデンをエッチングする薬液は、酸化剤および酸を含む薬液である。特許文献7の実施例で開示されている酸化剤は過酸化水素のみであり、自己分解反応により液の寿命が短く、エッチングレートが安定しないという問題があった。また、処理後のモリブデンの平坦性が維持されないという問題があった。したがって、モリブデンの精密エッチングが必要とされる配線形成工程で特許文献7に記載の処理液を使用することは難しく、さらなる改善の必要があった。
【0019】
したがって、本発明の目的は、半導体ウエハ上に存在する遷移金属を正確なエッチング速度でエッチングでき、かつ、エッチング処理後の遷移金属表面の平坦性を維持することができる、遷移金属の精密加工に適した処理液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。単に、次亜ハロゲン酸イオンのみを含む処理液では、エッチング速度の正確な制御が難しく、また、エッチング処理後の遷移金属表面の平坦性を維持することが出来ない。そのため、該処理液に添加する成分について検討を進めた。結果、特定のアルキルアンモニウム塩を添加することにより、エッチング処理後の遷移金属表面の平坦性を維持すると共に、エッチング速度の制御が可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
項1 半導体ウエハ上の遷移金属をエッチングするための処理液であって、
(A)次亜ハロゲン酸イオンまたは過ヨウ素酸イオン、
(B)下記式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩
を含む半導体ウエハ用処理液。
【0022】
【化1】
(式中、aは、6~20の整数であり、R
1、R
2、R
3は独立して、水素原子、又は炭素数1~20のアルキル基であり、X
-は、臭素含有イオンである。)
項2 前記(A)次亜ハロゲン酸イオンまたは過ヨウ素酸イオンが次亜ハロゲン酸イオンである、項1に記載の半導体ウエハ用処理液。
項3 次亜ハロゲン酸イオンが次亜臭素酸イオンであり、次亜臭素酸イオンの濃度が0.0096~1.92質量%である、項1または2に記載の半導体ウエハ用処理液。
項4 次亜ハロゲン酸イオンが次亜塩素酸イオンおよび次亜臭素酸イオンであり、次亜塩素酸イオンの濃度が0.05~20.0質量%であり、次亜臭素酸イオンの濃度が0.0096~1.92質量%である、項1または2に記載の半導体ウエハ用処理液。
項5 前記(B)式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩の濃度が、0.0001~10質量%である、項1~4のいずれか一項に記載の半導体ウエハ用処理液。
項6 さらに、(C)テトラメチルアンモニウムイオン、エチルトリメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、およびテトラブチルアンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種のアンモニウムイオンを含む、項1~5のいずれか一項に記載の半導体ウエハ用処理液。
項7 前記(A)次亜ハロゲン酸イオンまたは過ヨウ素酸イオンが次亜ハロゲン酸イオンであり、25℃でのpHが7を超え14.0未満である、項1~6のいずれか一項に記載の半導体ウエハ用処理液。
項8 前記半導体ウエハ上の遷移金属が第6族金属またはルテニウムである、項1~7のいずれか一項に記載の半導体ウエハ用処理液。
項9 さらに塩化物イオンを含む、項1~8のいずれか一項に記載の半導体ウエハ用処理液。
項10 さらに塩素酸イオンを含む、項1~9のいずれか一項に記載の半導体ウエハ用処理液。
項11 半導体ウエハ用処理液に含まれる金属の濃度が質量基準で1ppb以下である、項1~10のいずれか一項に記載の半導体ウエハ用処理液。
項12 項1~10のいずれか一項に記載の半導体ウエハ用処理液と半導体ウエハとを接触させる工程を含む、エッチング方法。
項13 下記(A)、(B)および(C)を含む、半導体ウエハ用薬液。
(A)臭化テトラメチルアンモニウム、臭化エチルトリメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、および臭化テトラブチルアンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種のアンモニウム塩、
(B)下記式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩、
(C)濃度が質量基準で1ppb以下である金属
【化2】
(式中、aは、6~20の整数であり、R
1、R
2、R
3は独立して、水素原子、又は炭素数1~20のアルキル基であり、X
-は、臭素含有イオンである。)
項14 (A)臭化テトラメチルアンモニウム、臭化エチルトリメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、および臭化テトラブチルアンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種のアンモニウム塩を含む薬液と、(B)下記式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩を混合する工程を含む、半導体ウエハ用薬液の製造方法。
【化3】
(式中、aは、6~20の整数であり、R
1、R
2、R
3は独立して、水素原子、又は炭素数1~20のアルキル基であり、X
-は、臭素含有イオンである。)
項15 前記半導体ウエハ用薬液が、(C)濃度が質量基準で1ppb以下である金属を含む、項14に記載の半導体ウエハ用薬液の製造方法。
項16 水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化エチルトリメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウムまたは水酸化テトラブチルアンモニウムと、臭化物イオンを含む溶液または水に溶けると臭化物イオンを発生する臭素含有ガスとを混合する工程により、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化エチルトリメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、または臭化テトラブチルアンモニウムを含む溶液を製造する方法。
項16 項13に記載の半導体ウエハ用薬液と、次亜塩素酸イオンを含む溶液とを混合する工程を含む、半導体ウエハ用処理液の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の半導体ウエハ用処理液によれば、半導体素子の形成工程において、遷移金属をウェットでエッチングすることが出来る。さらに、エッチング処理後の遷移金属表面の平坦性が維持される(表面荒れが少ない)とともに、遷移金属のエッチング速度について、酸化剤濃度、pH、アルキルアンモニウム塩の種類および/または濃度により正確な制御が可能となる。よって、本発明の半導体ウエハ用処理液は、各層の平坦性が求められる多層配線構造を有する半導体素子を形成する場合に、好適に使用することが出来る。
【0024】
本発明の半導体ウエハ用処理液は、エッチング処理後の遷移金属の表面が平坦性に優れているため、処理液と接触した遷移金属の表面を、ムラなく均一にエッチングすることが出来る。特に、数nmレベルの精密なルテニウムのエッチングが要求される半導体製造に適しており、例えば、10nm以下の配線構造を有する半導体素子の形成において、好適に使用することが出来る。
【0025】
本発明の処理液がエッチング処理後の遷移金属、特に、ルテニウムまたは第6属金属表面の平坦性を維持するメカニズムは必ずしも明らかではないが、以下のことが考えられる。遷移金属がルテニウムである場合を例に説明するが、他の遷移金属も同様のメカニズムにより表面の平坦性が維持されると推測される。すなわち、処理液に含まれているアルキルアンモニウム塩に含まれるアルキルアンモニウムイオンが、ルテニウム表面のよりエッチングされやすい箇所に優先的に吸着し、保護層を形成する。該保護層は、ルテニウムを酸化、溶解させる次亜ハロゲン酸イオンとの接触を妨げるため、エッチングされやすい箇所のエッチング速度が低下し、結果としてルテニウムの溶解が均一に生じるようになると考えられる。そのため、次亜ハロゲン酸イオンのみの処理液でエッチング処理するよりも、エッチング処理後のルテニウム表面の平坦性を維持することが可能になると考えられる。また、アルキルアンモニウムイオンがルテニウムの表面に吸着することで、ルテニウムのエッチングが一部抑制されるため、アルキルアンモニウムイオンの種類とその濃度を調整することでアルキルアンモニウムイオンの吸着量を制御でき、ルテニウムのエッチング速度の正確な制御が可能になると考えられる。
【0026】
さらに、本発明の半導体ウエハ用処理液は、ルテニウムを10Å/分以上のエッチング速度で、エッチングすることが可能である。さらに、酸化剤濃度、pH、アルキルアンモニウム塩の種類および/または濃度を制御することで、ルテニウムのエッチング速度を任意に調整し、エッチング量を所望の値に制御できる。すなわち、本発明の処理液は、ルテニウムの精密エッチングに好適に用いることができる処理液である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の処理液を好適に使用できる配線形成工程の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の処理液で処理した後の配線形成工程の一例を示す概略断面図である。
【
図3】実施例1に示すエッチング処理後のルテニウム表面を100000倍の電子顕微鏡にて観察した写真である(図面代用写真)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(半導体ウエハ用処理液)
本発明の半導体ウエハ用処理液(以下、「処理液」とも言う)は、エッチング処理後の遷移金属、なかでもルテニウムまたは第6族金属表面の平坦性が維持されるとともに、遷移金属、なかでもルテニウムまたは第6族金属のエッチング速度の正確な制御が可能な処理液である。そのため、半導体製造工程で好適に使用することができ、なかでも配線形成工程でより好適に用いることができる処理液である。
【0029】
本発明の処理液が適用される遷移金属は、いかなる方法により成膜されたものであっても構わないが、例えば、半導体製造工程においては、CVD、ALD、スパッタ法などの公知の方法によって半導体ウエハ上に形成される。形成された遷移金属を処理液でエッチングすることにより、半導体用配線が形成される。
【0030】
本発明の処理液で処理するウエハに含まれる遷移金属は、特に制限されることはないが、該遷移金属を例示すれば、Ru、Rh、Ti、Ta、Co、Cr、Hf、Os、Pt、Ni、Mn、Cu、Zr、La、Mo、Wなどである。なかでも、Ru、W、Mo、またはCrは、本発明の処理液で処理することで、精密なエッチングが達成でき、平坦性に優れた表面にすることができるため、好適に用いることができる。
【0031】
本明細書において、ルテニウム(Ruとも表記)は、ルテニウム金属に限定されず、ルテニウム元素を含んでいればよい。すなわち、ルテニウム金属、ルテニウム合金、ルテニウム酸化物等をルテニウムと表記する。また、タングステン(Wとも表記)は、タングステン金属に限定されず、タングステン元素を含んでいればよい。すなわち、タングステン金属、タングステン合金、タングステン酸化物等をタングステンと表記する。また、モリブデン(Moとも表記)は、モリブデン金属に限定されず、モリブデン元素を含んでいればよい。すなわち、モリブデン金属、モリブデン合金、モリブデン酸化物等をモリブデンと表記する。また、クロム(Crとも表記)は、クロム金属に限定されず、クロム元素を含んでいればよい。すなわち、クロム金属、クロム合金、クロム酸化物等をクロムと表記する。また、本明細書において、第6族金属とは、タングステン、モリブデン、クロムを表す。
【0032】
さらに、本発明の処理液は、エッチング後の遷移金属表面の平坦性を維持できる処理液である。本発明において、エッチング後に遷移金属表面の平坦性が維持されているとは、エッチングされる遷移金属表面の平坦性が、エッチング前後で実質的に変化しないか、若しくは、変化しても実用上問題とならない範囲内であることを意味する。遷移金属表面の平坦性が維持されない場合とは、例えば、エッチングにより、該遷移金属膜に孔食が生じた場合や、不均一なエッチング(場所ムラ)が生じた場合だけでなく、金属表面の表面荒さが増大した場合等も含まれる。遷移金属表面の平坦性は、例えば、遷移金属表面を走査型電子顕微鏡(SEM)による観察や、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた観察・測定により容易に確認することができる。したがって、エッチングに供される遷移金属を含むウエハの表面を、上記評価手法により、エッチング処理前後で観察・測定し、比較することで、エッチング後の金属表面の平坦性が維持されているか否かを容易に判断できる。
【0033】
図1、2に配線形成工程の一例を示す。遷移金属がルテニウムまたは第6属金属である場合を例にして、配線形成工程を説明する。
【0034】
まず、半導体(例えばSi)からなる基体1を用意する。用意した基体に対して、酸化処理を行い、基体上に酸化シリコン膜を形成する。その後、低誘電率(Low-k)膜からなる層間絶縁膜2を成膜し、所定の間隔でビアホールを形成する。形成後、熱CVDによって、遷移金属3をビアホールに埋め込み、さらに遷移金属膜を成膜する(
図1)。これを、処理液によりウェットエッチングすることで遷移金属膜をエッチングし、遷移金属配線が形成される(
図2)。
【0035】
本発明の処理液は、(A)次亜ハロゲン酸イオンまたは過ヨウ素酸イオン、および(B)下記式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩を含むものである。以下、順を追って説明する。
【0036】
【0037】
(式中、aは、6~20の整数であり、R1、R2、R3は独立して、水素原子、又は炭素数1~20のアルキル基であり、X-は、臭素含有イオンである。)
【0038】
(A)次亜ハロゲン酸イオン、過ヨウ素酸イオン
本発明において、次亜ハロゲン酸イオンとは、次亜塩素酸イオン、次亜臭素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオンを指す。これらを単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。次亜ハロゲン酸イオンは酸化剤として、遷移金属をエッチングする。本発明で使用される次亜ハロゲン酸イオンは、どのような方法で処理液に加えられてもよいが、例えば、次亜ハロゲン酸塩を溶媒に溶解させることにより、処理液中に次亜ハロゲン酸イオンを発生させることが可能である。すなわち、次亜塩素酸塩を溶媒に溶解させることにより次亜塩素酸イオンを発生させることができ、次亜臭素酸塩を溶媒に溶解させることにより次亜臭素酸イオンを発生させることができる。また、処理液に塩素ガスまたは臭素ガスを吹き込むことで、それぞれ、次亜塩素酸イオン、次亜臭素酸イオンを発生させることができる。また、溶媒に塩素水または臭素水を添加することによっても、本発明の処理液に次亜塩素酸イオンまたは次亜臭素酸イオンを添加することができる。
【0039】
本発明において、過ヨウ素酸イオンとは、オルト過ヨウ素酸イオン、メタ過ヨウ素酸イオン等を指す。過ヨウ素酸イオンは酸化剤として、遷移金属をエッチングする。本発明で使用される過ヨウ素酸イオンは、どのような方法で処理液に加えられてもよい。これらを単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
上記次亜ハロゲン酸イオンおよび過ヨウ素酸イオンにおける対イオン(カチオン)は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機系カチオンである。アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンは、半導体ウエハ上に残留した場合、半導体ウエハに対して悪影響(半導体ウエハの歩留まり低下等の悪影響)を及ぼすことから、その配合割合は少ない方が好ましく、実際には限りなく含まれない方がよい。したがって、対イオンとしては有機系カチオンが好ましい。有機系カチオンとしては、工業的な製造を考慮すると、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、エチルトリメチルアンモニウムイオンのいずれかより選択される少なくとも1種のアンモニウムイオンであることが好ましく、特に、テトラメチルアンモニウムイオン、またはエチルトリメチルアンモニウムイオンが好ましい。したがって、対イオンとしてテトラメチルアンモニウムイオン、またはエチルトリメチルアンモニウムイオンを選択することによって、処理液中のナトリウムイオンやカルシウムイオンを低減することが出来るため、処理液にテトラメチルアンモニウムイオン、またはエチルトリメチルアンモニウムイオンが含まれることが好ましい。
【0040】
本発明において、次亜ハロゲン酸イオンが次亜塩素酸イオン、または次亜ヨウ素酸イオンの場合の次亜塩素酸イオンの濃度範囲、または過ヨウ素酸イオン濃度の範囲は、処理液全量に対して、0.05~20質量%であることが好ましい。上記範囲内であれば、処理液中の次亜塩素酸イオンまたは過ヨウ素酸イオンの分解による濃度低下を抑制し(以下、処理液中の次亜ハロゲン酸イオンまたは過ヨウ素酸イオンの分解反応を抑制し、該次亜ハロゲン酸イオンまたは過ヨウ素酸イオン濃度の低下を抑制する効果を、「保存安定性」がよいとする場合もある。)、高いエッチング速度で遷移金属をエッチングすることができる。次亜塩素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオンまたは過ヨウ素酸イオン濃度が20質量%より大きい場合は、保存安定性が悪化する場合がある。また、次亜塩素酸イオンまたは過ヨウ素酸イオン濃度が0.05質量%よりも小さい場合は、遷移金属のエッチング速度が遅くなる傾向にあり、生産効率が低下する傾向にある。上記濃度範囲の中でも、遷移金属のエッチング速度、及び処理液の保存安定性の観点から、次亜塩素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオンまたは過ヨウ素酸イオン濃度は、0.05~20質量%であることが好ましく、好ましくは0.1~15質量%であり、より好ましくは0.3~10質量%であり、さらに好ましくは0.5~6質量%であり、特に好ましくは0.5~4質量%である。
次亜ハロゲン酸イオンが次亜臭素酸イオンの場合、その濃度範囲は、処理液全量に対して、0.0096~1.92質量%であることが好ましい。上記範囲内であれば、処理液中の次亜臭素酸イオンの分解による濃度低下を抑制し、高いエッチング速度で遷移金属をエッチングすることができる。次亜臭素酸イオン濃度が1.92質量%より大きい場合は、保存安定性が悪化する場合がある。また、次亜臭素酸イオン濃度が0.0096質量%よりも小さい場合は、遷移金属のエッチング速度が遅くなる傾向にあり、生産効率が低下する傾向にある。上記濃度範囲の中でも、遷移金属のエッチング速度、及び処理液の保存安定性の観点から、次亜臭素酸イオン濃度は、0.0096~1.92質量%であることが好ましく、より好ましくは0.048~1.92質量%であり、さらに好ましくは0.096~0.96質量%である。
【0041】
また、本発明の処理液中に次亜ハロゲン酸イオンまたは過ヨウ素酸イオンの濃度は、処理液の製造時に計算で求めることもできるし、処理液を直接分析することにより確認することもできる。処理液を直接分析する方法としては、例えば、ヨウ素滴定法や、分光光度計で測定した次亜ハロゲン酸イオンまたは過ヨウ素酸イオンの吸収スペクトルから次亜ハロゲン酸イオンまたは過ヨウ素酸イオンの濃度を求める方法を挙げることができる。
【0042】
次亜ハロゲン酸イオンを含む本発明の処理液は、pHが7を越え、14.0未満であることが好ましい。処理液のpHが7未満の場合は、次亜ハロゲン酸イオンの分解反応が生じ易くなり、次亜ハロゲン酸イオン濃度が低下し易い傾向にある。したがって、処理液の保存安定性、および、遷移金属のエッチング速度の安定性および制御性を達成するためには、処理液のpHは、pHが7を越え、14.0未満が好ましく、pHが8以上14.0未満であることがより好ましく、pHが8以上13未満であることがさらに好ましく、pHが9以上12.5以下であることが最も好ましい。上記pH範囲で安定に存在し、遷移金属のエッチング速度が大きく、半導体製造に適した高純度品を容易に製造できるという観点から、次亜ハロゲン酸イオンは、次亜塩素酸イオンまたは次亜臭素酸イオンであることが好ましい。例えば、前記範囲内であれば、保存中に次亜塩素酸イオン濃度が低下し難く、例えば、23℃、不活性ガス雰囲気の暗所で、15日間保存した後でも、遷移金属のエッチング性能が十分に発揮される処理液とすることが出来る。
過ヨウ素酸イオンを含む処理液の場合は、pHが1以上、14.0以下であることが好ましい。過ヨウ素酸イオンを含む処理液の好ましいpH範囲は処理対象となる遷移金属によって異なり、遷移金属がルテニウムの場合は、pHが1以上、9以下であることが好ましく、遷移金属がタングステンの場合は、pHが4以上、14以下であることが好ましく、遷移金属がモリブデンの場合は、pHが6以上、14以下であることが好ましく、遷移金属がクロムの場合は、pHが4以上、14以下であることが好ましい。なお、本明細書において、pHは25℃での値である。
【0043】
(B)アルキルアンモニウム塩
本発明の処理液には、アルキルアンモニウム塩が含まれる。
【0044】
本発明の処理液が、エッチング処理後の遷移金属表面の平坦性を維持することが出来るメカニズムとしては、以下のことが考えられる。つまり、処理液に含まれるアルキルアンモニウム塩のカチオン(アルキルアンモニウムイオン)が遷移金属表面上で、窒素原子を中心とした極性基の部分で吸着すると考えられる。吸着したカチオンの非極性基であるアルキル基は、遷移金属表面から離れる方向に位置することになり、遷移金属表面に疎水性の保護層が形成されることになる。形成された保護層が、処理液に含まれる次亜ハロゲン酸イオンまたは過ヨウ素酸イオンと遷移金属とを接触させることを阻害するため、結果として、ムラなく均一な遷移金属のエッチング処理されることとなり、エッチング処理後の遷移金属表面の平坦性が維持されると考えられる。
【0045】
本発明の処理液に含まれるアルキルアンモニウム塩は、下記式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩である。
【0046】
【化5】
(式中、aは、6~20の整数であり、R
1、R
2、R
3は独立して、水素原子、又は炭素数1~20のアルキル基であり、X
-は、臭素含有イオンである。)
【0047】
上記式(1)における整数aは、メチレン基の数を表しており、整数aが6~20であれば、特に制限されず、使用することが出来るが、整数aが6~15であることがより好ましく、整数aが8~15であることがさらに好ましい。前述した範囲内のメチレン基を有するアルキルアンモニウム塩であれば、遷移金属表面に吸着し、適切な保護層を形成するため、好適に使用することが出来る。また、アルキルアンモニウム塩の整数aが大きいほど、遷移金属表面に対するアルキルアンモニウム塩のアルキルアンモニウムイオンの吸着量が増加するため、遷移金属のエッチング速度が低下する傾向にある。また、アルキルアンモニウム塩の整数aが大きいと、アルキルアンモニウム塩の水溶性が低下し、処理液中で、パーティクルが発生する原因となり、半導体素子の歩留まりを低下させる要因となる。一方、アルキルアンモニウム塩の整数aが小さいほど、遷移金属表面への吸着量が少なくなり、遷移金属表面に適切な保護層が形成されず、エッチング処理後の遷移金属表面の平坦性が維持できない傾向にある。
【0048】
また、上記式(1)におけるR1、R2、R3は、独立して、水素原子、又は炭素数が1~20のアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R1、R2、R3は、炭素数が1~20のアルキル基であることが好ましい。さらに、R1、R2、R3の炭素数は、それぞれ整数aと同じかより小さいことが好ましく、R1、R2、R3のいずれか一つの基が、メチル基であることがより好ましい。R1、R2、R3のいずれかをメチル基とすることで、遷移金属表面により均一で緻密な保護層が形成されることになり、エッチング処理後の遷移金属表面の平坦性を維持することができる。
【0049】
上記式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩は、臭素含有イオンを含む。ここで、臭素含有イオンは、臭素を含有して成るイオンであり、一例として亜臭素酸イオン、臭素酸イオン、過臭素酸イオン、次亜臭素酸イオン、または臭化物イオンなどが挙げられる。臭素含有イオンを含むアルキルアンモニウム塩が処理液に含まれることで、エッチング後の遷移金属表面の平坦性が改善される。この理由は必ずしも明らかではないが、次のように考えられる。処理液中でアルキルアンモニウム塩は一部または全部が解離するため、処理液中に臭素含有イオンが存在するようになる。この臭素含有イオンは、処理液中で遷移金属表面においてもある程度均一に存在しているものと推測されるため、次亜ハロゲン酸イオンまたは過ヨウ素酸イオンによる遷移金属のエッチング速度をある程度制御することが可能であるものと推測される。そして遷移金属のエッチング速度を低減させることにより、エッチングによる表面荒れを抑制できるものと推測される。
【0050】
臭素含有イオンを含むアルキルアンモニウム塩は、塩素含有イオンやフッ素含有イオンを含むアルキルアンモニウム塩よりも安定性が高く、合成しやすいため、高純度品が工業的に安価に入手可能である。また、臭素含有イオンを含むアルキルアンモニウム塩は、ヨウ素含有イオンを含むものに比べて、単位重量当たりのアルキルアンモニウムイオンが多いという利点がある。よって、本発明の処理液に含まれるアルキルアンモニウム塩は、臭素含有イオンを含む。
【0051】
本発明において、好適に使用できる式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩を具体的に挙げると、臭化n-オクチルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化オクタデシルトリメチルアンモニウム、臭化ジデシルジメチルアンモニウム、臭化ジドデシルジメチルアンモニウム、臭化エチルトリメチルアンモニウムイオン等の臭化物、次亜臭素酸n-オクチルトリメチルアンモニウム、次亜臭素酸デシルトリメチルアンモニウム、次亜臭素酸ドデシルトリメチルアンモニウム、次亜臭素酸テトラデシルトリメチルアンモニウム、次亜臭素酸ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、次亜臭素酸オクタデシルトリメチルアンモニウム、次亜臭素酸ジデシルジメチルアンモニウム、次亜臭素酸ジドデシルジメチルアンモニウム等の次亜臭素酸塩、
亜臭素酸n-オクチルトリメチルアンモニウム、亜臭素酸デシルトリメチルアンモニウム、亜臭素酸ドデシルトリメチルアンモニウム、亜臭素酸テトラデシルトリメチルアンモニウム、亜臭素酸ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、亜臭素酸オクタデシルトリメチルアンモニウム、亜臭素酸ジデシルジメチルアンモニウム、亜臭素酸ジドデシルジメチルアンモニウム等の亜臭素酸塩、臭素酸n-オクチルトリメチルアンモニウム、臭素酸デシルトリメチルアンモニウム、臭素酸ドデシルトリメチルアンモニウム、臭素酸テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭素酸ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭素酸オクタデシルトリメチルアンモニウム、臭素酸ジデシルジメチルアンモニウム、臭素酸ジドデシルジメチルアンモニウム等の臭素酸塩、過臭素酸n-オクチルトリメチルアンモニウム、過臭素酸デシルトリメチルアンモニウム、過臭素酸ドデシルルトリメチルアンモニウム、過臭素酸テトラデシルトリメチルアンモニウム、過臭素酸ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、過臭素酸オクタデシルトリメチルアンモニウム、過臭素酸ジデシルジメチルアンモニウム、過臭素酸ジドデシルジメチルアンモニウム等の過臭素酸塩を例示できる。
【0052】
また、アルキルアンモニウム塩の添加量は、処理液全体に対して、0.0001~10質量%の範囲が好ましい。アルキルアンモニウム塩の添加量がこの範囲であれば、アルキルアンモニウムイオンの種類とその濃度を調整することでアルキルアンモニウムイオンの吸着量を制御でき、遷移金属のエッチング速度の正確な制御が可能となる。さらに、アルキルアンモニウムイオンの種類とその濃度を調整することで、遷移金属表面に十分な保護層を形成し、エッチング処理後の遷移金属表面の平坦性を維持出来る。なお、アルキルアンモニウム塩を添加するに場合には、1種のみを添加してもよいし、2種以上を添加してもよい。アルキルアンモニウム塩を複数種添加する場合であっても、アルキルアンモニウム塩の添加量の合計が上記範囲であれば、遷移金属のエッチング速度の正確な制御が可能である。
本発明の処理液には、アルキルアンモニウム塩の添加に由来して、また、処理液の製造上、金属(または金属イオン、以下、金属イオンの場合も含み金属と記載)が含まれている場合がある。含まれる金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、銀、カドミウム、バリウム、亜鉛、及び鉛、並びにそれらのイオンが挙げられる。しかし、これらの金属は、アルキルアンモニウム塩の安定性に影響を及ぼすことから、その存在量は少ないことが好ましい。この原因は定かではないが、アルキル基のアルカリ中での分解に対して、金属が触媒として作用し、分解反応を促進していると考えられる。一方、処理液中の金属の含有量としては少ない方が良いが、若干金属が含まれることにより、エッチング処理後の金属表面の平坦性を維持する(表面荒れを防ぐ)ことが可能となる。そのため、金属の含有量としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、銀、カドミウム、バリウム、亜鉛、及び鉛から選択されるいずれか一つの金属が質量基準で0.01ppt以上1ppb以下であることが好ましく、1ppt以上1ppb以下であることがより好ましく、10ppt以上500ppt以下であることがさらに好ましく、100ppt以上200ppt以下であることが最も好ましい。また、これら金属は、半導体ウエハ上に残留した場合、半導体ウエハに対して悪影響(半導体ウエハの歩留まり低下等の悪影響)を及ぼす。
金属の含有量が1ppbを超える場合には、ろ過や蒸留、イオン交換などによって金属含有量を1ppb以下に抑えることが可能である。
【0053】
本発明の処理液において、(A)次亜ハロゲン酸イオンまたは過ヨウ素酸イオン、(B)式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩、下記に詳述する(C)アンモニウムイオン、及びその他の添加剤以外の残分は、水である。本発明の処理液に含まれる水は、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理などによって、金属イオンや有機不純物、パーティクル粒子などが除去された水が好ましく、さらに純水が好ましく、超純水が最も好ましい。このような水は、半導体製造において広く公知の方法により製造されたものを、好適に使用できる。
【0054】
(C)アンモニウムイオン
本発明の処理液において、次亜ハロゲン酸塩を水に溶解させる等により、次亜ハロゲン酸イオンを処理液に添加した場合は、該次亜ハロゲン酸塩に含まれる次亜ハロゲン酸イオンの対イオンが、処理液に含まれることになる。
【0055】
ここで、上記次亜ハロゲン酸塩が次亜塩酸ナトリウムである場合はナトリウムイオンが、次亜塩素酸カルシウム等である場合はカルシウムイオンが、対イオンとして処理液に含まれることになる。前記のナトリウムイオン、カルシウムイオンなどのアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンは、半導体ウエハ上に残留した場合、半導体ウエハに対して悪影響(半導体ウエハの歩留まり低下等の悪影響)を及ぼすことから、処理液中の存在量は少ない方が好ましく、実際には限りなく含まれない方がよい。したがって、次亜ハロゲン酸イオンの対イオンとしては、有機イオンが好ましく、工業的な製造を考慮すると、本発明の処理液に含まれてもよい(C)アンモニウムイオンは、テトラメチルアンモニウムイオン、エチルトリメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、およびテトラブチルアンモニウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種のアンモニウムイオンであることが好ましい。中でも該アンモニウムイオンは、テトラメチルアンモニウムイオン、およびエチルトリメチルアンモニウムイオンがさらに好ましく、高純度品が工業的に容易に入手可能であることから、テトラメチルアンモニウムイオンが特に好ましい。したがって、対イオンとしてテトラメチルアンモニウムイオンを選択することによって、処理液中のナトリウムイオンやカルシウムイオンを低減することが出来るため、処理液にテトラメチルアンモニウムイオンが含まれることが好ましい。また、別途、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイドとして含んでいてもよい。また、上記の様にアンモニウムイオンは、テトラメチルアンモニウムイオン、およびエチルトリメチルアンモニウムイオンが好ましいが、取り扱い上の安全性の面では、エチルトリメチルアンモニウムイオンが好ましい。
【0056】
また、(C)アンモニウムイオンは、本発明の処理液に加えられる有機アルカリの対イオンであってもよい。例えば、該有機アルカリが、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化エチルトリメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、および水酸化テトラブチルアンモニウムである場合、(C)アンモニウムイオンは、該有機アルカリに含まれるカチオン、すなわち、テトラメチルアンモニウムイオン、エチルトリメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、およびテトラブチルアンモニウムイオンのいずれかとなる。
【0057】
本発明において、該アンモニウムイオンの濃度範囲は、処理液全体に対して、好ましくは0.001~30質量%である。アンモニウムイオンの濃度がこの範囲を満足することにより、長期保存安定に優れた処理液とすることが出来る。より保存安定性を高めるためには、アンモニウムイオンの濃度は、より好ましくは0.005~20質量%であり、さらに好ましくは0.01~15質量%であり、特に好ましくは0.05~8質量%である。
【0058】
本発明において、例えばテトラメチルアンモニウムイオンは、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液をイオン交換樹脂に通液し、テトラメチルアンモニウムイオン型に交換したイオン交換樹脂を準備し、その後、次亜塩素酸イオンを含む溶液を該イオン交換樹脂に接触させ、溶液中に含まれるカチオンをテトラメチルアンモニウムイオンにイオン交換することで、処理液にテトラメチルアンモニウムイオンを含ませることが可能である。
【0059】
(アニオン種)
本発明の処理液は、ハロゲン酸イオン、亜ハロゲン酸イオン、ハロゲン化物イオンから選択される少なくとも1種のアニオン種を含んでいてもよい。上記アニオン種として具体的には、ClO3
-、BrO3
-、IO3
-等のハロゲン酸イオン;ClO2
-、BrO2
-、IO2
-等の亜ハロゲン酸イオン;Cl-、Br-、I-等のハロゲン化物イオンが挙げられる。これらのアニオン種は処理液中に1種含まれていてもよく、2種以上のアニオン種が含まれていてもよい。2種以上のアニオン種を含む場合、例えばハロゲン酸イオンの中の2種が含まれるようなハロゲン原子の酸化数が同じイオン同士が含まれる場合、或いは、亜ハロゲン酸イオンの1種とハロゲン化物イオンの1種が含まれる様にハロゲン原子の酸化数の異なるイオン同士が含まれる場合のいずれも可能である。
処理液中にアニオン種を含有することにより、処理液に含まれる臭化アルキルアンモニウムの安定性を向上させることができる。この理由は定かではないが、臭化アルキルアンモニウムを溶解させた場合、臭化物イオンがアルキルアンモニウムイオンの対イオンとして存在することになる。その溶解性が不十分であるために保管中に臭化アルキルアンモニウムが析出することがある。そのため、アルキルアンモニウムイオンとして処理液中で安定化させるためには臭化物イオンと対イオン交換するアニオン種を加えることが有効であると考えられる。
これらの中でも、処理液への溶解性、入手の容易性、コスト等の点から、上記アニオン種としてハロゲン酸イオン、及び/またはハロゲン化物イオンが含まれることが好ましく、塩素酸イオン、及び/または塩化物イオンが含まれることがより好ましい。
【0060】
上記本発明で使用されるアニオン種は、該アニオン種を含む酸、又は塩等を処理液に溶解することにより、発生させることが可能である。アニオン種を含む酸としては、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸等のハロゲン酸;亜塩素酸、亜臭素酸、亜ヨウ素酸等の亜ハロゲン酸;塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等のハロゲン化水素等が挙げられる。また、アニオン種を含む塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機塩等が挙げられる。具体的には、アルカリ金属塩としては、塩化カリウム、亜塩素酸ナトリウム、臭化カリウム、亜臭素酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、亜ヨウ素酸ナトリウム等が、有機塩としては、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム等の4級アルキルアンモニウム塩等のオニウムイオンを含む有機塩が挙げられる。また、上記ハロゲン化水素は、水に塩素ガス、臭素ガス、ヨウ素ガスなどのハロゲンガスを溶解させることでも発生させることができる。これらの中でも、半導体製造における歩留まり低下の要因となる金属を含まない事から、アニオン種を含む酸、有機塩類を用いる事が好ましく、さらに工業的な入手の容易性、取り扱いの容易性から考えて、第四級アルキルアンモニウム塩等のオニウムイオンを含む有機塩である事がさらに好ましい。有機塩類の中でも、安定性、純度、コストの点から、特に好適に用いる事ができるものとしては、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、塩化エチルトリメチルアンモニウム、臭化エチルトリメチルアンモニウム、ヨウ化エチルトリメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム等が挙げられる。
【0061】
上記アニオン種を処理液中に発生させるために用いるアニオン種を含む酸、又は塩等は、工業的に入手可能な塩を用いてもよいし、公知の方法で準備してもよい。例えば該アニオン種を含む第四級アルキルアンモニウム塩は、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を準備し、塩素や臭素等を吹き込むことによって準備することが出来る。また、水酸化テトラメチルアンモニウム溶液をカチオン交換型イオン交換樹脂と接触させ、該イオン交換樹脂内のカチオンをテトラメチルアンモニウムイオンとした後に、塩酸、臭素酸、ヨウ素酸等のハロゲン酸を流通してイオンを交換する方法でも、該アニオン種の第四級アルキルアンモニウム塩を含む溶液を準備することができる。
【0062】
(アニオン種の含有量)
本発明の処理液において、上記アニオン種の内、少なくとも1種のアニオン種の含有量は、1質量ppm~20質量%である。本発明の処理液に含有する上記アニオン種が1種である場合には、当該アニオン種が処理液中に1質量ppm~20質量%で含まれている必要がある。また、処理液に含有する上記アニオン種が2種以上含まれる場合には、含有されるアニオン種の少なくとも1種が、処理液中に1質量ppm~20質量%で含まれている必要がある。処理液中にアニオン種を上記の範囲で含有することにより、処理液に含まれる臭化アルキルアンモニウムの安定性を向上させることができる。臭化物イオンと対イオン交換し、処理液中でのアルキルアンモニウムイオンを安定化させるのに十分な濃度であればよく、該アニオン種の濃度は、1質量ppm~20質量%である事が好ましく、10質量ppm~10質量%であることがより好ましく、0.1質量%~10質量%であることがさらに好ましく、1質量%~10質量%であることが最も好ましい。
処理液中に前記アニオン種を2種以上含む場合には、十分なエッチング速度と平滑性、処理液中でのアルキルアンモニウムイオンの安定性を両立する観点から、1質量ppm~20質量%の濃度で含有されるアニオン種としては、ハロゲン酸イオン、ハロゲン化物イオンであることが好ましい。また、前記アニオン種を2種以上含む場合において、上記濃度範囲であるアニオン種以外の他のアニオン種の含有量は特に制限されず、エッチングの対象となる金属種の種類、エッチング部位に応じて適宜設定すれば良く、他のアニオン種の含有量も1質量ppm~20質量%であってもよい。上記アニオン種の含有量はあまりに高くなりすぎるとエッチング速度が低下する傾向にあり、安定性の向上効果が低下する傾向にあるため、2種以上のアニオン種を含む場合の当該アニオン種の含有量の合計は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下である事がより好ましく、5質量%以下であることが最も好ましい。
上記処理液中のアニオン種の含有量は、イオンクロマトグラフ法を用いて測定する事ができる。本方法を用いれば、カラムの種類や条件を適切に設定する事により、アニオン種の同定および定量が可能となる。
【0063】
(その他の添加剤)
本発明の処理液には、所望により、本発明の目的を損なわない範囲で従来から半導体用処理液に使用されているその他の添加剤を添加してもよい。例えば、その他の添加剤として、酸、アルカリ、金属防食剤、水溶性有機溶剤、フッ素化合物、酸化剤、還元剤、錯化剤、キレート剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤などを加えることができる。
【0064】
(処理液の製造方法)
次亜ハロゲン酸イオンを含む本発明の処理液は、次亜ハロゲン酸イオンを含む次亜ハロゲン酸溶液または次亜ハロゲン酸塩水溶液にアルキルアンモニウム塩を添加、混合することで製造することができる。次亜ハロゲン酸水溶液は、次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カルシウム、次亜臭素酸ナトリウムなどの市販の次亜塩素酸塩を水に溶解することや、水酸化ナトリウム溶液や水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液などのアルカリ水溶液に塩素または臭素ガスを吹き込むことで、製造出来る。その他、例えば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液や次亜臭素酸ナトリウム水溶液をテトラメチルアンモニウム型としたイオン交換樹脂と接触させることで、次亜ハロゲン酸イオンの対イオンをテトラメチルアンモニウムイオンに交換することが出来る。
【0065】
過ヨウ素酸イオンを含む本発明の処理液は、過ヨウ素酸イオンを含む過ヨウ素酸溶液または過ヨウ素酸塩水溶液にアルキルアンモニウム塩を添加、混合することで製造することができる。過ヨウ素酸塩水溶液は、オルト過ヨウ素酸、オルト過ヨウ素酸ナトリウム、オルト過ヨウ素酸カリウム、メタ過ヨウ素酸ナトリウムなどの市販の過ヨウ素酸塩を水に溶解することで製造することができる。
【0066】
以下、イオン交換樹脂を用いて次亜塩素酸イオンの対イオンを交換した次亜塩素酸塩水溶液を含む処理液を例にして、本発明の処理液の製造方法を詳細に説明する。具体的には、次亜塩素酸ナトリウム水溶液をイオン交換により次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液として本発明の処理液を製造する方法である。
【0067】
まず、テトラメチルアンモニウムイオンを含む水溶液、具体的には、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液をイオン交換樹脂に接触させ、テトラメチルアンモニウム型としたイオン交換樹脂を準備する。
使用するイオン交換樹脂は、公知の陽イオン交換樹脂であれば、特に制限なく使用できる。例えば、水素型イオン交換樹脂、ナトリウム型イオン交換樹脂のいずれでも使用することが出来る。中でも、ナトリウムが混入する可能性の低い水素型イオン交換樹脂が好ましい。また、水素型イオン交換樹脂でも、弱酸性、強酸性のイオン交換樹脂を特に制限なく使用することが出来る。
【0068】
前記テトラメチルアンモニウム型としたイオン交換樹脂を準備した後、該イオン交換樹脂に次亜塩素酸塩水溶液、例えば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を接触させることで、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を製造することが出来る。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、次亜塩素酸ナトリウムを水に溶解させることにより、準備することが出来る。また、ここでは保存安定性、ハンドリングが良好であるという点から、次亜塩素酸ナトリウムを用いたが、市販されており入手が容易であればよく、次亜塩素酸カルシウム等を用いることもできる。さらに、イオン交換後の処理液に混入するナトリウムの量をより低減できることから、塩化ナトリウムの含有量が少ない次亜塩素酸ナトリウムを用いることがより好ましい。このような次亜塩素酸ナトリウムは、一般に、低食塩次亜塩素酸ナトリウムとして市販されている。
【0069】
また、イオン交換する工程を繰り返し行ってもよい。イオン交換する工程を繰り返し行うことで、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液に含まれる次亜塩素酸イオンの対イオンとなるナトリウムやカルシウムといった金属イオンを低減することが出来る。
得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液にアルキルアンモニウム塩及び必要に応じてその他の添加剤を混合、溶解することで、テトラメチルアンモニウムイオンを含む本発明の処理液を製造することができる。
【0070】
本発明の処理液に含まれる次亜臭素酸イオンは、処理液中で発生させてもよい。処理液中で次亜臭素酸イオンを作り出す方法としては、酸化剤により臭素含有化合物を酸化する方法がある。処理液に含まれる臭素含有化合物と酸化剤の量比は、該臭素含有化合物と該酸化剤が反応して次亜臭素酸イオンが生じる際の化学量論比と反応速度、及び、処理液に含まれるBr-と酸化剤が反応して次亜臭素酸イオンが生じる際の化学量論比と反応速度を考慮して決定することが好ましいが、実際には、これらの反応には複数の要因が複雑に影響しあっているため、臭素含有化合物と酸化剤の適切な量比を求めることは困難である。しかしながら、該酸化剤濃度を該酸化剤の化学当量(モル当量)で除した値に対する、該臭素含有化合物濃度を該臭素含有化合物の化学当量(モル当量)で除した値の比が、0.001~100の範囲であれば、該酸化剤により該臭素含有化合物からBrO-を効率よく生成できるだけでなく、BrO-の還元反応または分解反応により生じたBr-を再度BrO-に酸化することができるため、遷移金属のエッチング速度が安定化する。
例えば、上記臭素含有化合物が臭化テトラメチルアンモニウムであり、上記酸化剤が次亜塩素酸テトラメチルアンモニウムである場合、臭素含有化合物の反応当量(モル当量)と酸化剤の化学当量(モル当量)は等しいため、該酸化剤の濃度に対する該臭素含有化合物のモル濃度の比が0.001~100の範囲であればよい。
【0071】
処理液に含まれる次亜臭素酸イオンと次亜塩素酸イオンの量比は、次亜臭素酸イオンの減少速度、より正確には次亜臭素酸イオンの還元反応及び/または分解反応によりBr-が生成される速度と、次亜塩素酸イオンによるBr-からBrO-への酸化反応の速度とを考慮して決めるのが好ましいが、実際には、これらの反応には複数の要因が複雑に影響しあっているため、次亜臭素酸イオンと次亜塩素酸イオンの適切な量比を求めることは困難である。しかしながら、次亜塩素酸イオンのモル濃度に対する次亜臭素酸イオンのモル濃度の比(次亜臭素酸イオンのモル濃度/次亜塩素酸イオンのモル濃度)が、0.001~100の範囲であれば、BrO-の還元反応または分解反応により生じたBr-を次亜塩素酸イオンにより再度BrO-に酸化することができ、遷移金属のエッチング速度が安定化する。
【0072】
(臭素含有化合物)
本発明の処理液に用いられる臭素含有化合物は、臭素原子を含み、後述する酸化剤により酸化されて臭素、次亜臭素酸、次亜臭素酸イオン、亜臭素酸、亜臭素酸イオン、臭素酸、臭素酸イオン、過臭素酸、過臭素酸イオン、臭化物イオンを生じるものであればどのような化合物であってもよい。一例を挙げれば、臭素塩、臭化水素、からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。ここでいう臭化水素とは、臭化水素ガスでもよいし、臭化水素の水溶液である臭化水素酸でもよい。臭素塩としては、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化ルビジウム、臭化セシウム、臭化アンモニウム、臭化オニウムを挙げることができる。ここでいう臭化オニウムとは、オニウムイオンと臭化物イオンから形成される化合物である。オニウムイオンは、単原子陰イオンに過剰のプロトン(水素陽イオン)が付加してできた多原子陽イオンの化合物である。具体的には、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、フルオロニウムイオン、クロロニウムイオン、ブロモニウムイオン、ヨードニウムイオン、オキソニウムイオン、スルホニウムイオン、セレノニウムイオン、テルロニウムイオン、アルソニウムイオン、スチボニウムイオン、ビスムトニウムイオン等の陽イオンである。また、処理液中で次亜臭素酸または次亜臭素酸イオンを生成する化合物も、臭素含有化合物として好適に用いることができる。このような化合物の例として、ブロモヒダントイン類、ブロモイソシアヌル酸類、ブロムスルファミン酸類、ブロムクロラミン類等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。より具体的に化合物を例示すれば、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、トリブロモイソシアヌル酸などである。
【0073】
上記臭素含有化合物は、臭化水素、または臭素塩として処理液に加えられてもよいし、臭素塩を含む溶液として処理液に加えられてもよいし、臭素ガスとして処理液に加えられてもよい。半導体製造工程におけるハンドリングが容易であることから、該臭素含有化合物は、臭素塩または臭素塩を含む溶液もしくは臭化水素として、他の処理液と混合することが好ましい。処理液に含まれる臭素含有化合物は1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
半導体製造においては、金属または金属イオンの混入が歩留まり低下を引き起こすことから、該臭素含有化合物は金属を含まないことが望ましい。臭素ガス、臭化水素、臭素塩のうち臭化オニウムは金属を実質的に含まないことから、本発明の臭素含有化合物として好適に用いることができる。なかでも、臭化オニウムのうち、臭化第四級オニウム、臭化第三級オニウム、及び臭化水素は工業的に入手しやすく、取り扱いが容易であることから、本発明の臭素含有化合物としてさらに好適である。
【0074】
臭化第四級オニウムは、処理液内で安定に存在し得るアンモニウムイオン又はホスホニウムイオンからなる臭素塩である。臭化第四級オニウムの一例を挙げれば、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化エチルトリメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラペンチルアンモニウム、臭化テトラヘキシルアンモニウム、臭化メチルトリエチルアンモニウム、臭化ジエチルジメチルアンモニウム、臭化トリメチルプロピルアンモニウム、臭化ブチルトリメチルアンモニウム、臭化トリメチルノニルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化トリメチルステアリルアンモニウム、臭化デカメソニウム、臭化フェニルトリメチルアンモニウム、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、臭化ジメチルピロリジニウム、臭化ジメチルピペリジウム、臭化-1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、臭化-1-ブチル-3-メチルピリジニウムなどである。また、第三級アミン、第二級アミン、第一級アミンにプロトンが付加した化合物も用いることができる。一例を挙げれば、メチルアミン臭化水素酸塩、ジメチルアミン臭化水素酸塩、エチルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン臭化水素酸塩、トリエチルアミン臭化水素酸塩、2-ブロモエチルアミン臭化水素酸塩、2-ブロモエチルジエチルアミン臭化水素酸、エチレンジアミン二臭化水素酸塩、プロピルアミン臭化水素酸塩、ブチルアミン臭化水素酸塩、tert-ブチルアミン臭化水素酸塩、ネオペンチルアミン臭化水素酸塩、3-ブロモ-1-プロピルアミン臭化水素酸塩、ドデシルアミン臭化水素酸塩、シクロヘキサンアミン臭化水素酸塩、ベンジルアミン臭化水素酸塩である。臭化第四級ホスホニウムの一例を挙げれば、臭化テトラメチルホスホニウム、臭化テトラエチルホスホニウム、臭化テトラプロピルホスホニウム、臭化テトラブチルホスホニウム、臭化テトラフェニルホスホニウム、臭化メチルトリフェニルホスホニウム、臭化フェニルトリメチルホスホニウム、臭化メトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウムである。臭化第三級オニウムは、処理液内で安定に存在し得るスルホニウムイオンからなる臭素塩である。臭化第三級スルホニウムの一例を挙げれば、臭化トリメチルスルホニウム、臭化トリエチルスルホニウム、臭化トリプロピルスルホニウム、臭化トリブチルスルホニウム、臭化トリフェニルスルホニウム、臭化-(2カルボキシエチル)ジメチルスルホニウムなどである。中でも、安定性が高く、高純度品が工業的に入手しやすく、安価であるといった理由から、アンモニウムイオンからなる臭素塩である臭化第四級オニウムが好ましい。
【0075】
上記臭化第四級オニウムは、安定性に特に優れ、容易に合成可能な臭化テトラアルキルアンモニウムであることが好ましい。
該臭化テトラアルキルアンモニウムにおいて、アルキル基の炭素数は特に限定されず、四つのアルキル基の炭素数は同じであってもよく、異なっていてもよい。このような臭化アルキルアンモニウムとして、アルキル基一つ当たりの炭素数が1~20の臭化テトラアルキルアンモニウムが好適に使用できる。なかでも、重量当たりの臭素原子数が多いことから、アルキル基の炭素数が少ない臭化テトラアルキルアンモニウムがさらに好適に使用できる。一例を挙げれば、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラペンチルアンモニウム、臭化テトラヘキシルアンモニウムであり、なかでも臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウムが好適であり、臭化テトラメチルアンモニウムが最も好適である。処理液に含まれる臭素含有化合物は1つであっても、複数であってもよい。
【0076】
本発明に使用する臭化テトラアルキルアンモニウムは、市販されている臭化テトラアルキルアンモニウムを使用しても構わないし、テトラアルキルアンモニウムと臭化物イオンから臭化テトラアルキルアンモニウムを製造したものを使用しても構わない。臭化テトラアルキルアンモニウムの製造方法としては、水酸化テトラアルキルアンモニウムを含む水溶液と臭化物イオンを含む水溶液または水に溶けると臭化物イオンを発生する臭素含有ガスを混合することにより製造することができる。
臭化テトラアルキルアンモニウムを製造するために使用する水酸化テトラアルキルアンモニウムとしては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。なかでも、単位重量当たりの水酸化物イオン数が多く、高純度品が容易に入手可能であることから、水酸化テトラメチルアンモニウムであることがより好ましい。
臭化テトラアルキルアンモニウムを製造するために使用する臭化物イオンを発生させる臭素イオン源としては、臭化水素、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化ルビジウム、臭化セシウム、臭化アンモニウム等があげられる。なかでも、金属を実質的に含まないこと、工業的に入手しやすく、高純度品が容易に入手可能であることから、臭化水素が好適である。水に溶けると臭化物イオンを発生する臭素含有ガスとしては、臭化水素ガスを挙げることができる。
【0077】
該臭素含有化合物の添加量は特に限定されることはなく、遷移金属のエッチング速度、処理液の安定性、該臭素含有化合物の溶解性、コストなどを考慮して決定すればよい。処理液に添加された該臭素含有化合物は、後述する酸化剤により酸化され、遷移金属のエッチングに有効な化学種、具体的には、臭素、次亜臭素酸(HBrO)、次亜臭素酸イオン(BrO-)、亜臭素酸(HBrO2)、亜臭素酸イオン(BrO2
-)、臭素酸(HBrO3)、臭素酸イオン(BrO3
-)、過臭素酸(HBrO4)、過臭素酸イオン(BrO4
-)、臭化物イオン(Br-)となる。
上記遷移金属のエッチングに有効な化学種のうち、HBrO、BrO-、HBrO2、BrO2
-、HBrO3、BrO3
-を含む処理液は遷移金属のエッチング速度が大きいため、処理液はこれらの化学種を含むことが好ましい。なかでも、HBrO及びBrO-(以下、BrO-等と表記することもある)を多く含む処理液は遷移金属のエッチング速度が特に大きいため、処理時間を短くできるという点でさらに好ましい。
したがって、該臭素含有化合物を酸化剤により酸化する場合は、該臭素含有化合物に含まれる臭素原子を、HBrO、BrO-、HBrO2、BrO2
-、HBrO3、BrO3
-へと酸化させることが好ましく、なかでも、BrO-等へと酸化させることが好ましい。
【0078】
本発明の処理液が、臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物および水を含む場合、該処理液は一液であってもよく、二液またはそれ以上の処理液または薬液を混合して処理液としてもよい。処理液が一液である場合、臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物および上記式(1)で示すアルキルアンモニウム塩をすべて含む溶液となる。二液またはそれ以上の処理液または薬液を混合することにより、処理液を製造してもよい。また、処理液または薬液が二液またはそれ以上である場合、処理液または薬液は臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物、水の少なくとも一つ以上を含む。さらに後述するその他の成分を含んでもよい。処理液が一液、または二液以上の処理液若しくは薬液を混合して製造する場合のいずれであっても、臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物が処理液内に同時に存在することで、臭素含有化合物が酸化剤により酸化され、遷移金属をエッチングする化学種が生じる。
二液またはそれ以上の処理液または薬液を混合することにより、処理液を製造する場合、臭素含有化合物およびアルキルアンモニウム塩を含む薬液と、酸化剤を含む処理液とに分けることが好ましい。臭素含有化合物およびアルキルアンモニウム塩と、酸化剤を分けることで、酸化剤による臭素含有化合物およびアルキルアンモニウム塩の酸化を防ぎ、本発明の処理液を安定に保存することが可能になる。
【0079】
前記薬液と処理液の混合方法は、半導体薬液の混合方法として広く公知の方法を用いることができる。例えば、混合タンクを用いる方法、半導体製造装置の配管内で混合する方法(インラインミキシング)、ウエハ上に複数の液を同時にかけることで混合する方法等を好適に用いることができる。
薬液と処理液を混合して処理液を製造する場合、該薬液と処理液の混合はいつ行ってもよい。臭素含有化合物の酸化に時間を要する場合は、遷移金属をエッチングする前に薬液と処理液を混合することで、遷移金属をエッチングする化学種を発生する時間を設けることができる。この場合、臭素含有化合物の酸化に時間を要すると、製造ラインにおけるボトルネックとなるため、スループットの低下を招く事がある。このような理由から酸化に要する時間は短い方が良く、1時間以下である事が好ましい。臭素含有化合物の酸化に要する時間は、酸化剤濃度、臭素含有化合物濃度、処理液のpH、処理液の温度、処理液の撹拌方法などを適切に選択することで制御できる。また、遷移金属をエッチングする化学種の濃度が低い場合、処理液のライフタイムが短く、製造プロセスの制御が難しくなることが考えられる。このような場合には、遷移金属エッチングを実施する直前に混合を行うのが好ましい。
したがって、薬液と処理液を混合する場合は、酸化剤及び塩基化合物を含む溶液(処理液)と、臭素含有化合物とアルキルアンモニウム塩を含む薬液を混合することが好ましく、次亜塩素酸イオンと塩基化合物を含む溶液(処理液)と、臭素含有化合物とアルキルアンモニウム塩を含む薬液を混合することがさらに好ましい。上記次亜塩素酸イオンと塩基化合物を含む溶液(処理液)はアルカリ性であることが好ましい。
本発明の薬液と処理液の混合においては、混合後の処理液のpHがアルカリ性であることが好ましい。具体的には、該処理液のpHが7を超え14未満であることが好ましい。混合前の薬液または処理液がpH7より低い場合は、混合後の処理液(臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物および水を含む)がpH7を超え14未満となるよう、塩基化合物及び/又は水の濃度を調整する。このように、混合後の処理液のpHが7を超え14未満に保つことで、臭素含有化合物が酸化剤により速やかに遷移金属をエッチングする化学種へと変化し、遷移金属膜のエッチングを安定した十分な速度で行うことが可能となる。
【0080】
薬液と処理液を混合して遷移金属をエッチングする化学種を生成する場合、混合される該薬液と処理液のpHは同じであっても、異なっていてもよい。該薬液と処理液のpHが同じである場合、混合後の処理液のpHが大きく変化することはなく、遷移金属のエッチング液として好適に用いることができる。
薬液と処理液を混合して遷移金属をエッチングする化学種を生成する場合、混合後の組成(臭素含有化合物濃度、酸化剤濃度、塩基性化合物濃度、pH)が前述の範囲内であればよく、混合される該薬液と処理液の混合比および混合順序などの混合方法は特に制限されない。ただし、例えば、次亜塩素酸化合物を含むアルカリ溶液と、臭素含有化合物およびアルキルアンモニウム塩を含む酸性溶液を混合する場合、局所的に次亜塩素酸化合物の分解が進行する恐れがあるため、この場合は、次亜塩素酸化合物を含むアルカリ溶液へ臭素含有化合物およびアルキルアンモニウム塩を含む酸性溶液を混合する事が好ましい。
臭素含有化合物が酸化剤により酸化されることで生じる、遷移金属をエッチングする化学種は、処理液のpH、酸化還元電位(ORP)などによって異なるが、主に、臭素、または臭化物イオン、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸およびこれらのイオンである。
【0081】
(酸化剤)
本発明の処理液に用いられる酸化剤は、臭素含有化合物を酸化し、遷移金属のエッチングに有効な化学種を生成しうる機能を有する。具体的には、硝酸、硫酸、過硫酸、ペルオキソ二硫酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、これらの塩、およびこれらの塩が解離して生ずるイオン、さらに、過酸化水素、オゾン、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、過マンガン酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、セリウム塩などが挙げられる。これらの酸化剤は単独で用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。本発明の処理液にこれらの酸化剤を添加する際は、用いる酸化剤の性状に応じて、固体、液体、気体のいずれか適当なものを選べばよい。
上記酸化剤のうち、アルカリ性でも安定に存在できることから、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、およびこれらの塩、およびこれらの塩が解離して生ずるイオン、オゾンまたは過酸化水素が好ましく、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸、およびこれらの塩、およびこれらの塩が解離して生ずるイオン、オゾンまたは過酸化水素がより好ましく、次亜塩素酸イオンまたはオゾンがさらに好ましく、次亜塩素酸イオンが最も好ましい。
該酸化剤として次亜塩素酸、その塩である次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウム、またはオゾンを用いると、実質的に金属の混入を防ぐことができるため、半導体製造用の処理液として好適である。なかでも、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムは、アルカリ中でも安定に存在し、上記臭素含有化合物を効率よく酸化できることから特に好適である。
【0082】
該酸化剤の濃度は特に制限されることはなく、該臭素含有化合物を遷移金属のエッチングに有効な化学種へと酸化できる量を添加すればよい。
上記酸化剤の添加量は0.1質量ppm以上10質量%以下が好ましい。該酸化剤の添加量が0.1質量ppmより小さいと臭素含有化合物を効率よく酸化することができず、遷移金属のエッチングレートが低下する。すなわち該酸化剤を混合しない組成では、エッチングレートが低い。一方、該酸化剤の添加量が10質量%より大きいと、該酸化剤の安定性が低下するので適当でない。遷移金属がルテニウムである場合、RuO4ガスの発生の抑制と、ルテニウムのエッチング速度を両立させる観点から、酸化剤の濃度は、1質量ppm以上5質量%以下であることがより好ましく、0.5量%以上4質量%以下であることが最も好ましい。
酸化剤を含む溶液のpHは特に限定されないが、pHが7を超え14未満であることが好ましく、10以上13以下であることが、より好ましい。このpH範囲の溶液であれば、上記臭素含有化合物を含む溶液と該酸化剤を含む溶液を混合した際に生じるpH低下を小さくすることができ、本発明の処理液を安定に製造し、保存し、使用することが可能となる。該酸化剤を含む溶液のpHを8未満にする場合には、上記臭素含有化合物を含む溶液と該酸化剤を含む溶液を混合した際に、混合後の処理液のpHがアルカリ性となるよう、該酸化剤を含む溶液のpHと液量を調整すればよい。
【0083】
(薬液の製造方法)
上記臭素含有化合物およびアルキルアンモニウム塩を含む薬液は、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化エチルトリメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、または臭化テトラブチルアンモニウムを含む水溶液にアルキルアンモニウム塩を添加、混合することで製造することができる。臭化テトラメチルアンモニウム、臭化エチルトリメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、または臭化テトラブチルアンモニウムを含む水溶液は、市販の臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、または臭化テトラブチルアンモニウムを水に溶解することや、臭化水素酸に水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化エチルトリメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液または、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液を加えることで、製造出来る。なかでも、高純度品が容易に入手可能であることから、臭化水素酸に水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を加えて、臭化テトラメチルアンモニウムを製造することがより好ましい。
【0084】
(遷移金属のエッチング方法)
本発明の処理液を使用する条件は、使用するエッチング装置等のエッチング条件にあわせて適宜決定すればよい。例えば、処理温度は10~80℃とすることができ、より好ましくは20~70℃の範囲である。
【0085】
また、遷移金属のエッチング速度は温度によって変化する。そのため、遷移金属のエッチング速度を向上させる場合には、上記温度範囲の中でも40~70℃を選択すればよい。40~70℃の温度範囲であれば、エッチング速度を速めることができ、かつ簡易的な装置でも操作性よく処理することができる。
【0086】
本発明の処理液を使用する時間は0.1~120分、好ましくは0.5~60分の範囲であり、エッチングの条件や使用される半導体素子により適宜選択すればよい。本発明の処理液を使用した後のリンス液としては、アルコールのような有機溶剤を使用することもできるが、脱イオン水でリンスするだけでも十分である。上記リンス後のウエハ表面にアルキルアンモニウム塩が残存する場合には、塩酸、ギ酸、酢酸、硫酸、硝酸、フッ酸、クエン酸、シュウ酸などの酸やアンモニア水-過酸化水素水の混合液、塩酸―過酸化水素水の混合液、オゾン水、硫酸―過酸化水素水混合液、フッ酸―フッ化アンモニウムの混合液などで洗浄することが好ましい。また、これらの洗浄を組み合わせ使用してもよい。その他、ウエハをアルキルアンモニウム塩が蒸発する温度まで加熱することで除去することもできる。
【0087】
以上のように、本発明の処理液は、遷移金属のエッチング速度を10Å/分以上、好ましくは30Å/分以上とすることができ、かつエッチング後の遷移金属表面の平坦性に優れる。本発明の処理液は、半導体素子形成工程において遷移金属、特に、ルテニウム、タングステン、モリブデン、またはクロムを使用する場合に、好適に使用することが出来る。
【実施例】
【0088】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0089】
(pH測定方法)
実施例及び比較例で調製した処理液30mLを、卓上型pHメーター(LAQUA F―73、堀場製作所社製)を用いてpH測定した。pH測定は、処理液を調製、25℃で安定した後に、実施した。
【0090】
(次亜ハロゲン酸イオン濃度、過ヨウ素酸イオン濃度の算出方法)
次亜ハロゲン酸イオン濃度または過ヨウ素酸イオン濃度の測定は、紫外可視分光光度計(UV-2600、島津製作所社製)を用いて測定した。濃度既知の次亜ハロゲン酸イオン水溶液または過ヨウ素酸イオン水溶液を用いて検量線を作成し、製造した処理液中の次亜ハロゲン酸イオンまたは過ヨウ素酸イオン濃度を決定した。
【0091】
(テトラメチルアンモニウムイオン濃度の算出方法)
実施例及び比較例の処理液中のテトラメチルアンモニウムイオン濃度はpH、次亜塩素酸イオン濃度、ナトリウムイオン濃度から計算によって求めた。なお、ナトリウムイオン濃度は、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)によって測定した。
【0092】
(遷移金属のエッチング速度の算出方法)
シリコンウエハ上にバッチ式熱酸化炉を用いて酸化膜を形成し、その上にスパッタ法を用いて遷移金属を成膜した。遷移金属がルテニウムである場合、ルテニウムを1200Å(±10%)成膜した。遷移金属が二酸化ルテニウムの場合、二酸化ルテニウムを1000Å(±10%)成膜した。遷移金属がタングステンである場合、タングステンを8000Å(±10%)成膜した。遷移金属がモリブデンである場合、モリブデンを1000Å(±10%)成膜した。遷移金属がクロムである場合、クロムを1000Å(±10%)成膜した。四探針抵抗測定器(ロレスタ‐GP、三菱ケミカルアナリテック社製)によりシート抵抗を測定して膜厚に換算した。エッチング処理後も同様に四探針抵抗測定器によりシート抵抗を測定して膜厚に換算し、エッチング処理後の遷移金属の膜厚とした。エッチング処理後の遷移金属の膜厚とエッチング処理前の遷移金属の膜厚の差を、エッチング処理前後の膜厚変化量とした。
【0093】
実施例及び比較例の処理液30mLを蓋付きフッ素樹脂製容器(AsOne製、PFA容器94.0mL)に準備し、処理液中に10×20mmとした各サンプル片を、23℃で1分間浸漬し、処理前後の膜厚変化量を浸漬した時間で除した値をエッチング速度として算出した。
【0094】
また、算出したエッチング速度から遷移金属を50ű10Åエッチングする時間を算出し、遷移金属膜を50ű10Åエッチングする時間で処理した後に、遷移金属表面を100000倍の電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM;Field Emission Scanning Electron Microscope)にて観察した。この際に表面荒れが観察された場合を不良(C)、少し表面荒れが観察された場合を良(B)、何ら表面荒れが観察されなかった場合は、優(A)とした。
【0095】
<実施例1>
(処理液の製造)
<イオン交換樹脂の前処理 水素型イオン交換樹脂の調製>
内径約45mmのガラスカラム(AsOne社製、バイオカラムCF-50TK)に、ナトリウム型の強酸性イオン交換樹脂(オルガノ社製、アンバーライトIR-120BNa)を200mL投入した。その後、水素型に交換するため1規定の塩酸(和光純薬工業社製、容量分析用)を1L、イオン交換樹脂カラムに通液し、イオン交換樹脂を水洗するため、超純水1Lを通液した。
【0096】
<(a)工程>
さらに、水素型に交換されたイオン交換樹脂209mLに、10質量%水酸化テトラメチルアンモニウム溶液を1L通液し、水素型からテトラメチルアンモニウム型にイオン交換した。イオン交換後、イオン交換樹脂を水洗するため、超純水1Lを通液した。
【0097】
<(b)工程>
次亜塩素酸ナトリウム五水和物(和光純薬工業社製、試薬特級)69gを2Lのフッ素樹脂容器に入れた後、超純水931gを添加して、3.11質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製した。調製した次亜塩素酸ナトリウム水溶液をテトラメチルアンモニウム型に交換したイオン交換樹脂に通液し、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液1000gを得た。得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液999.9gに臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム(東京化成工業社製、純度>98%)100mgを添加し、表1に記載された組成の処理液を得た。
【0098】
<評価>
製造した直後の処理液のpH、ルテニウムのエッチング速度、次亜塩素酸イオン濃度を評価した。ルテニウムのエッチング速度の評価は、上記「遷移金属のエッチング速度の算出方法」により行った。算出したエッチング速度からルテニウムを50ű10Åエッチングする時間を算出し、50ű10Åエッチングする時間で処理したルテニウム膜を準備し、表面観察用のルテニウム膜とした。表面観察用のルテニウム膜の表面を、100000倍の電子顕微鏡にて観察した。観察した結果は
図3に示す。
【0099】
<実施例2>
実施例1において、(a)工程のイオン交換樹脂量を564mLとし、10質量%水酸化テトラメチルアンモニウム溶液の通液量を2Lとし、(b)工程の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度を8.39質量%として、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を得た。さらにpH調整工程(c)として、該次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液に、pHが11になるまで25質量%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)溶液を添加した。得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液999gに臭化デシルトリメチルアンモニウム(東京化成工業社製、純度>99%)1gを添加し、表1に記載にされた組成の処理液を得た。評価結果を表2に示す。
【0100】
<実施例3>
実施例3は、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩として臭化ドデシルトリメチルアンモニウム(東京化成工業社製、純度>98%)を用いた以外は、表1の組成になるように、実施例2と同様の方法で処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0101】
<実施例4>
実施例4は、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩として臭化オクタデシルトリメチルアンモニウム(東京化成工業社製、純度>98%)を用いた以外は、表1の組成になるように、実施例2と同様の方法で処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0102】
<実施例5>
実施例5は、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩として臭化n-オクチルトリメチルアンモニウム(東京化成工業社製、純度>98%)を用いた以外は、表1の組成になるように、実施例1と同様の方法で処理液を調製し、実施例2と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0103】
<実施例6>
実施例1と同様の操作を行い、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を得た後、さらにpH調整工程(c)として、水素型に交換したナトリウム型の強酸性イオン交換樹脂(オルガノ社製、アンバーライトIR-120BNa)50mLを充填したガラスカラムに該次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を通液した。得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液999.9gに臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム100mgを添加し、表1に記載にされた組成の処理液を得た。評価結果を表2に示す。
【0104】
<実施例7>
実施例7は、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩として臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(東京化成工業社製、純度>98%)を用いた以外は、表1の組成になるように、実施例2と同様の方法で処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0105】
<実施例8>
実施例8は、次亜塩素酸イオンが2.15質量%となるように、次亜塩素酸ナトリウム五水和物(和光純薬工業社製、試薬特級)に水と25質量%水酸化テトラメチルアンモニウムを加えた。得られた次亜塩素酸ナトリウム水溶液999gに臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム1gを添加し、表1に記載にされた組成の処理液を得た。評価結果を表2に示す。
【0106】
<実施例9>
実施例9は、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩として臭化ジデシルジメチルアンモニウム(東京化成工業社製、純度>98%)を用いた以外は、表1の組成になるように、実施例1と同様の方法で処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0107】
<実施例10>
実施例10は、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩として臭化ジドデシルジメチルアンモニウム(東京化成工業社製、純度>98%)を用いた以外は、表1の組成になるように、実施例1と同様の方法で処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0108】
<実施例11>
臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム水溶液と、臭素酸ナトリウム水溶液を混合して臭素酸ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを沈殿させた。混合液をろ過し、沈殿した臭素酸ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを分取した後、超純水で3回洗浄した。
臭化テトラデシルトリメチルアンモニウムを臭素酸ヘキサデシルトリメチルアンモニウムとした他は実施例1と同様にして、表1に記載にされた組成の処理液を得た。実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0109】
<実施例12>
実施例12は、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩として臭化デシルトリメチルアンモニウムを用いた以外は、表1の組成になるように、実施例6と同様の方法で処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
<比較例1>
式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩を添加しなかった以外は、実施例1と同様に処理液を調製し、実施例1と同様の評価を行った。
<比較例2>
比較例2は、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩として臭化テトラプロピルアンモニウム(東京化成工業社製、純度>98%)を用いた以外は、表1の組成になるように、実施例1と同様の方法で処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0110】
<実施例13>
オルト過ヨウ素酸(富士フイルム和光純薬工業社製、含有量>98.5%)に25質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液および超純水、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウムを加えて、表1に記載された組成の処理液を得た。実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0111】
<実施例14>
実施例14では、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩として臭化n-オクチルトリメチルアンモニウムを用いた以外は、表1の組成になるように、実施例6と同様の方法で処理液を調製した。酸化ルテニウムを成膜したウエハを用い、上述の「遷移金属のエッチング速度の算出方法」によりエッチング速度を評価した。算出したエッチング速度から酸化ルテニウムを50ű10Åエッチングする時間を算出し、50ű10Åエッチングする時間で処理した酸化ルテニウム膜を準備し、表面観察用の酸化ルテニウム膜とした。表面観察用の酸化ルテニウム膜の表面を、100000倍の電子顕微鏡にて観察した。
【0112】
<比較例3>
比較例3では、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩を添加しなかった以外は、実施例14と同様に処理液を調製し、実施例14と同様の評価を行った。
【0113】
<実施例15>
実施例15では、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩として臭化デシルトリメチルアンモニウムを用いた以外は、表1の組成になるように、実施例6と同様の方法で処理液を調製した。タングステンを成膜したウエハを用い、上述の「遷移金属のエッチング速度の算出方法」によりエッチング速度を評価した。算出したエッチング速度からタングステンを50ű10Åエッチングする時間を算出し、50ű10Åエッチングする時間で処理したタングステン膜を準備し、表面観察用のタングステン膜とした。表面観察用のタングステン膜の表面を、100000倍の電子顕微鏡にて観察した。
【0114】
<比較例4>
比較例4では、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩を添加しなかった以外は、実施例15と同様に処理液を調製し、実施例15と同様の評価を行った。
【0115】
<実施例16>
実施例16では、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩として臭化ドデシルトリメチルアンモニウムを用いた以外は、表1の組成になるように、実施例2と同様の方法で処理液を調製した。モリブデンを成膜したウエハを用い、上述の「遷移金属のエッチング速度の算出方法」によりエッチング速度を評価した。算出したエッチング速度からモリブデンを50ű10Åエッチングする時間を算出し、50ű10Åエッチングする時間で処理したモリブデン膜を準備し、表面観察用のモリブデン膜とした。表面観察用のモリブデン膜の表面を、100000倍の電子顕微鏡にて観察した。
【0116】
<比較例5>
比較例5では、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩を添加しなかった以外は、実施例16と同様に処理液を調製し、実施例16と同様の評価を行った。
【0117】
<実施例17>
実施例17では、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩として臭化デシルトリメチルアンモニウムを用いた以外は、表1の組成になるように、実施例1と同様の方法で処理液を調製した。クロムを成膜したウエハを用い、上述の「遷移金属のエッチング速度の算出方法」によりエッチング速度を評価した。算出したエッチング速度からクロムを50ű10Åエッチングする時間を算出し、50ű10Åエッチングする時間で処理したクロム膜を準備し、表面観察用のクロム膜とした。表面観察用のクロム膜の表面を、100000倍の電子顕微鏡にて観察した。
【0118】
<比較例6>
比較例6では、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩を添加しなかった以外は、実施例17と同様に処理液を調製し、実施例17と同様の評価を行った。
以上、実施例、比較例で調製した処理液の組成を表1に、得られた結果を表2に示した。
【表1】
【表2】
【0119】
<実施例18>
実施例2と同様の方法で、pH12.0、0.1mоl/Lの次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を調製した。臭化テトラメチルアンモニウム(東京化成工業社製、純度>97%)に25質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液および超純水を加えて、pH12.0、0.1mоl/Lの臭化テトラメチルアンモニウム水溶液を調製した。得られた臭化テトラメチルアンモニウム水溶液998gに臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム2gを添加し、臭素含有化合物を含む薬液を調製した。上記0.1mоl/L次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液500gと臭素含有化合物を含む薬液500gを混合し、表4に記載された組成の処理液を得た。実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0120】
<実施例19>
実施例2と同様の方法で、pH13.0、0.2mоl/Lの次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を調製した。また、実施例18と同様の方法で、pH13.0、0.2mоl/Lの臭化テトラメチルアンモニウム水溶液を調製した。得られた臭化テトラメチルアンモニウム水溶液999.8gに臭化ジメチルジオクチルアンモニウム(東京化成工業社製、純度>97%)200mgを添加し、臭素含有化合物を含む薬液を調製した。上記0.2mоl/Lの次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液500gと臭素含有化合物を含む薬液500gを混合し、表4に記載された組成の処理液を得た。実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0121】
<実施例20>
実施例2と同様の方法で、pH12.0、0.1mоl/Lの次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を調製した。臭化テトラプロピルアンモニウム(東京化成工業社製、純度>97%)に25質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液および超純水を加えて、pH12.0、0.1mоl/Lの臭化テトラプロピルアンモニウム水溶液を調製した。得られた臭化テトラプロピルアンモニウム水溶液999.8gに臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム200mgを添加し、表3に記載された組成の臭素含有化合物を含む薬液を調製した。上記0.1mоl/Lの次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液500gと臭素含有化合物を含む薬液500gを混合し、表4に記載された組成の処理液を得た。実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0122】
<実施例21>
実施例2と同様の方法で、pH13.5、0.4mоl/Lの次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を調製した。また、実施例18と同様の方法で、pH13.5、0.4mоl/Lの臭化テトラメチルアンモニウム水溶液を調製した。得られた臭化テトラメチルアンモニウム水溶液999.998gに臭化テトラヘプチルアンモニウム(東京化成工業社製、純度>98%)2mgを添加し、表3に記載された組成の臭素含有化合物を含む薬液を調製した。上記0.4mоl/Lの次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液500gと臭素含有化合物を含む薬液500gを混合し、表4に記載された組成の処理液を得た。実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0123】
<実施例22>
実施例2と同様の方法で、pH11.0、0.002mоl/Lの次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を調製した。また、実施例18と同様の方法で、pH11.0、0.002mоl/Lの臭化テトラメチルアンモニウム水溶液を調製した。得られた臭化テトラメチルアンモニウム水溶液999.8gに臭化ヘキシルジメチルオクチル(東京化成工業社製、純度>97%)200mgを添加し、表3に記載された組成の臭素含有化合物を含む薬液を調製した。上記0.002mоl/Lの次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液500gと臭素含有化合物を含む薬液500gを混合し、表4に記載された組成の処理液を得た。実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0124】
<実施例23>
実施例2と同様の方法で、pH12.0、0.19mоl/Lの次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を調製した。また、実施例18と同様の方法で、pH12.0、0.1mоl/Lの臭化テトラメチルアンモニウム水溶液を調製した。得られた臭化テトラメチルアンモニウム水溶液998gに臭化ドデシルトリメチルアンモニウム2gを添加し、表3に記載された組成の臭素含有化合物を含有する薬液を調製した。上記0.19mоl/Lの次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液500gと臭素含有化合物を含有する薬液500gを混合し、表4に記載された組成の処理液を得た。実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0125】
<実施例24>
実施例24では、実施例2と同様の方法で、pH12.0、0.1mоl/Lの次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を調製した。また、表3に記載された組成になるように水酸化エチルトリメチルアンモニウム水溶液と臭化水素酸水溶液を混合した水溶液に、臭化n-オクチルトリメチルアンモニウムを混合し、臭素含有化合物を含む薬液を調製した。上記0.1mоl/Lの次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液500gと臭素含有化合物を含む薬液500gを混合し、表4に記載された組成の処理液を得た。実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0126】
<実施例25>
実施例25では、実施例2と同様の方法で、pH11.0、0.1mоl/Lの次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を調製した。また、実施例18と同様の方法で、pH11.0、0.1mоl/Lの臭化テトラメチルアンモニウム水溶液を調製した。得られた臭化テトラメチルアンモニウム水溶液999.98gに臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム20mgを添加し、表3に記載された組成の臭素含有化合物を含有する薬液を調製した。上記0.1mоl/Lの次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液500gと臭素含有化合物を含む薬液500gを混合し、表4に記載された組成の処理液を得た。実施例14と同様に準備した酸化ルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
<実施例26>
実施例26では、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩として臭化テトラデシルトリメチルアンモニウムを用いた以外は、表3の組成になるように実施例18と同様の方法で処理液を調製した。実施例14と同様に準備したタングステン膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0127】
<実施例27>
実施例27では、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩として臭化ドデシルトリメチルアンモニウムを用いた以外は、表3および表4の組成になるように実施例18と同様の方法で処理液を調製した。実施例15と同様に準備したモリブデン膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0128】
<実施例28>
実施例28では、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩として臭化デシルトリメチルアンモニウムを用いた以外は、表3および表4の組成になるように、実施例18と同様の方法で処理液を調製した。実施例16と同様に準備したクロム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
【0129】
<比較例7~11>
比較例7~11では、式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩を添加しなかった以外は、実施例18と同様の方法で処理液を調製した。比較例7は実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。比較例8は実施例14と同様に準備した二酸化ルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。比較例9は実施例15と同様に準備したタングステン膜(サンプル片)を用いて評価を行った。比較例10は実施例16と同様に準備したモリブデン膜(サンプル片)を用いて評価を行った。比較例11は実施例17と同様に準備したクロム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。
以上、実施例、比較例で調製した処理液の組成を表3および表4に、得られた結果を表4に示した。
【0130】
【0131】
<実施例29>
(塩素酸テトラメチルアンモニウム((CH3)4NClO3)の調製)
塩素酸ナトリウム(富士フィルム和光純薬製)をイオン交換水に加える事で得た飽和溶液を、冷蔵庫内で24時間保存し、析出した塩素酸ナトリウムをろ過により回収した。回収した塩素酸ナトリウムを超純水で希釈し、イオンクロマトグラフィー分析装置を用いて分析した。希釈液中のCO3
-、SO4
-、Cl-を分析することで、不純物として含まれるNa2CO3、Na2SO4、NaClが減少していることを確認した。上記の精製作業を繰り返すことで、CO3
-、SO4
-、Cl-がそれぞれ500ppb以下であることを確認し、精製した塩素酸ナトリウムを得た。
次に、内径約45mmのガラスカラム(AsOne社製、バイオカラムCF-50TK)に、強酸性イオン交換樹脂(オルガノ社製、アンバーライトIR-120BNa)を200mL投入した。その後、水素型に交換するため1規定の塩酸(富士フイルム和光純薬社製、容量分析用)を1L、イオン交換樹脂カラムに通液し、イオン交換樹脂を水洗するため、超純水1Lを通液した。さらに、水素型に交換されたイオン交換樹脂に、2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム溶液を2L通液し、水素型からテトラメチルアンモニウム型にイオン交換した。イオン交換後、イオン交換樹脂を水洗するため、超純水1Lを通液した。
精製した塩素酸ナトリウム6.4gをフッ素樹脂容器に入れた後、超純水93.6gを添加して、6.4質量%の塩素酸ナトリウム水溶液を調製した。調製した塩素酸ナトリウム水溶液をテトラメチルアンモニウム型に交換したイオン交換樹脂に通液した。回収した塩素酸テトラメチルアンモニウムは、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(iCAP6500DuO、Thermo SCIENTIFIC社製)を用いてNa濃度を分析し、イオン交換が十分行われていることを確認した。不十分な場合は、上記操作を繰り返すことで、Na濃度が500ppb以下の10質量%塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液を得た。得られた溶液を熱処理し、塩素酸テトラメチルアンモニウム粉末を得た。
実施例4と同様の方法を用いて調製した処理液に、表5の組成になるように塩素酸テトラメチルアンモニウムを加えた。
【0132】
<安定性の評価>
得られた処理液を30mLフッ素樹脂容器に保管し、25℃で30日間暗所に保管した。アルキルアンモニウム塩の析出の有無を目視で確認した。析出ありの場合をCとした。析出なしの場合はさらに15日間暗所に保管し、析出の有無を目視で確認した。析出なしの場合をAとし、析出ありの場合をBとした。
【0133】
<実施例30>
実施例18と同様の方法を用いて調製した処理液に、表5の組成になるように塩化テトラメチルアンモニウム(東京化成工業社製、純度>98%)を加えた。実施例29と同様の方法で得られた処理液の安定性を評価した。
【0134】
<実施例31>
実施例18と同様の方法を用いて調製した処理液に、表5の組成になるように塩化テトラメチルアンモニウムを加えた。実施例29と同様の方法で得られた処理液の安定性を評価した。
【0135】
以上、実施例で調製した処理液の組成および得られた結果を表5に示した。
【0136】
【0137】
<実施例32>
47%臭化水素酸(超高純度臭化水素酸、多摩化学工業社製)にSD-25(超高純度水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、トクヤマ社製)と超純水を混合し、pH12.0、0.1mоl/Lの臭化テトラメチルアンモニウム水溶液を調製した。得られた臭化テトラメチルアンモニウム水溶液999gに臭化デシルトリメチルアンモニウム1gを添加し、表6に記載された組成の薬液を得た。
得られた薬液の金属不純物濃度が1ppb以下になるまで、ろ過フィルター(日本インテグリス社製、ポリテトラフルオロエチレン製、孔径20nm)を用いて薬液を循環ろ過した。
【0138】
(薬液中の金属不純物濃度の測定方法)
25mlのポリフルオロアルキルエーテル(PFA)製メスフラスコ(AsOne社製、PFAメスフラスコ)に、超純水と1.25mlの高純度硝酸(関東化学社製、Ultrapure-100硝酸)を加えた。次いで、ピペット(AsOne社製、ピペットマンP1000)とフッ素樹脂製ピペットチップ(AsOne社製、フッ素樹脂ピペットチップ)を用いて、薬液0.25mlを採取し、PFAメスフラスコに加えて撹拌した。次いで、超純水でメスアップし、100倍希釈した測定試料を準備した。さらに高分解能誘導結合プラズマ質量分析装置(ThermoFisher Scientific社製、Element2)を使用し、検量線法で金属原子を定量した。
【0139】
(臭化アルキルアンモニウムの安定性評価)
得られた薬液を30mLフッ素樹脂容器に保管し、80℃で15日間保管した。15日間保管後の薬液中のアルキルアンモニウム塩濃度を測定し、保管前のアルキルアンモニウム塩濃度に対する15日間保管後のアルキルアンモニウム塩の濃度の比が0.5以上をAとし、0.5未満をBとした。アルキルアンモニウム塩の濃度の測定は、液体クロマトグラフ質量分析計(Xevo QT of MS、ウォーターズ社製)を用いて分析した。
【0140】
<実施例33>
表6の組成になるように、47%臭化水素酸(超高純度臭化水素酸、多摩化学工業社製)にSD-25(超高純度水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、トクヤマ社製)、硝酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬工業社製、純度99.9%)、硝酸カリウム(富士フイルム和光純薬工業社製、純度99.9%)と超純水を混合した。実施例32と同様の方法で得られた処理液の安定性を評価した。
【0141】
<実施例34>
表6の組成になるように、47%臭化水素酸(超高純度臭化水素酸、多摩化学工業社製)にSD-25(超高純度水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、トクヤマ社製)、硝酸マグネシウム六水和物(富士フイルム和光純薬工業社製、純度99.999%)、硝酸カルシウム四水和物(富士フイルム和光純薬工業社製、純度99.98%)と超純水を混合した。実施例32と同様の方法で得られた処理液の安定性を評価した。
【0142】
<実施例35>
表6の組成になるように、47%臭化水素酸(超高純度臭化水素酸、多摩化学工業社製)にSD-25(超高純度水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、トクヤマ社製)、硝酸アルミニウム九水和物(富士フイルム和光純薬工業社製、純度99.999%)と超純水を混合した。実施例32と同様の方法で得られた処理液の安定性を評価した。
【0143】
<実施例36>
表6の組成になるように、47%臭化水素酸(超高純度臭化水素酸、多摩化学工業社製)にSD-25(超高純度水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、トクヤマ社製)、硝酸鉄九水和物(富士フイルム和光純薬工業社製、純度99.999%)と超純水を混合した。実施例32と同様の方法で得られた処理液の安定性を評価した。
【0144】
<実施例37>
表6の組成になるように、47%臭化水素酸(超高純度臭化水素酸、多摩化学工業社製)にSD-25(超高純度水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、トクヤマ社製)、硝酸ニッケル六水和物(富士フイルム和光純薬工業社製、純度99.9985%)、硝酸コバルト六水和物(富士フイルム和光純薬工業社製、純度99.999%)と超純水を混合した。実施例32と同様の方法で得られた処理液の安定性を評価した。
【0145】
<実施例38>
表6の組成になるように、47%臭化水素酸(超高純度臭化水素酸、多摩化学工業社製)にSD-25(超高純度水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、トクヤマ社製)、硝酸銅(II)三水和物(富士フイルム和光純薬工業社製、純度99.999%)と超純水を混合した。実施例32と同様の方法で得られた処理液の安定性を評価した。
【0146】
<実施例39>
表6の組成になるように、47%臭化水素酸(超高純度臭化水素酸、多摩化学工業社製)にSD-25(超高純度水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、トクヤマ社製)、硝酸銀(富士フイルム和光純薬工業社製、純度99.9995%)と超純水を混合した。実施例32と同様の方法で得られた処理液の安定性を評価した。
【0147】
<実施例40>
表6の組成になるように、47%臭化水素酸(超高純度臭化水素酸、多摩化学工業社製)にSD-25(超高純度水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、トクヤマ社製)、硝酸カドミウム四水和物(富士フイルム和光純薬工業社製、純度99.9%)と超純水を混合した。実施例32と同様の方法で得られた処理液の安定性を評価した。
【0148】
<実施例41>
表6の組成になるように、47%臭化水素酸(超高純度臭化水素酸、多摩化学工業社製)にSD-25(超高純度水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、トクヤマ社製)、硝酸バリウム(富士フイルム和光純薬工業社製、純度99.999%)と超純水を混合した。実施例32と同様の方法で得られた処理液の安定性を評価した。
【0149】
<実施例42>
表6の組成になるように、47%臭化水素酸(超高純度臭化水素酸、多摩化学工業社製)にSD-25(超高純度水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、トクヤマ社製)、硝酸鉛(富士フイルム和光純薬工業社製、純度99.999%)と超純水を混合した。実施例32と同様の方法で得られた処理液の安定性を評価した。
【表6】
【0150】
表2および表4に示したように、本発明の処理液を適用した実施例1~28は、エッチング処理後の遷移金属表面の平坦性が維持されていた。また、実施例1~28から明らかなように、酸化剤濃度、pH、アルキルアンモニウム塩の種類および/または濃度を調整することで、遷移金属のエッチング速度を所望の値に制御できることが示された。このように、本発明の処理液は、半導体製造用処理液として、好適に使用することが出来る。
【0151】
比較例1、3~11ではアルキルアンモニウム塩が添加されていないため、実施例1~28と比較して、エッチング後に表面荒れが観察され、平坦性が低下していた。また、アルキルアンモニウム塩が添加された比較例2では、アルキル基の炭素数が少ない影響で、実施例と比較して、エッチング後に表面荒れが観察され、平坦性が低下していた。
表5に示したように、本発明の処理液にさらに塩化物イオンまたは塩素酸イオンを添加することで臭化アルキルアンモニウムの析出を抑制させることが出来る。
表6に示したように、本発明の薬液中の金属不純物量を1ppb以下にすることで臭化アルキルアンモニウムの安定性を向上させることが出来る。
【符号の説明】
【0152】
1 基体
2 層間絶縁膜
3 ルテニウム