(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】干渉計における周期誤差の測定および校正の手順
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20231030BHJP
G01B 9/02055 20220101ALI20231030BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
G01B9/02055
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022083708
(22)【出願日】2022-05-23
(62)【分割の表示】P 2020187013の分割
【原出願日】2017-06-29
【審査請求日】2022-05-23
(32)【優先日】2016-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン、マールテン、ヨゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル パシュ、エンゲルベルトゥス、アントニウス、フランシスクス
(72)【発明者】
【氏名】コジェンス、スザンヌ、ヨハンナ、アントネッタ、ヘルトルーダ
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-324051(JP,A)
【文献】特表2005-501242(JP,A)
【文献】特開2010-087310(JP,A)
【文献】特表2013-546001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G01B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学測定システムの校正のための方法であって、
- 測定方向に沿ってターゲットの第1位置を測定するステップと、
- 前記ターゲットが前記第1位置にあるときに前記光学測定システムの第1周期誤差を決定するステップと、
- 前記測定方向に沿って前記ターゲットの第2位置を測定するステップと、
を備え、前記第2位置は、少なくともz方向において前記第1位置とは異なり、前記z方向は、前記測定方向以外の方向であり、
- 前記ターゲットが前記第2位置にあるときに前記光学測定システムの第2周期誤差を決定するステップと
、
- 前記第1周期誤差に基づく第1補正値を保存するステップと、
- 前記第2周期誤差に基づく第2補正値を保存するステップと、を備える方法。
【請求項2】
- 前記ターゲットが前記第1位置またはその近傍にあるとき前記第1補正値により前記光学測定システムの測定値を補正し、
- 前記ターゲットが前記第2位置またはその近傍にあるとき前記第2補正値により前記光学測定システムの更なる測定値を補正することを備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
- 前記ターゲットが前記第1位置にありかつ前記ターゲットが第1角度姿勢にあるときに前記光学測定システムの前記第1周期誤差を決定し、
- 前記ターゲットが前記第1位置にありかつ前記ターゲットが前記第1角度姿勢とは異なる第2角度姿勢にあるときに前記光学測定システムの更なる第1周期誤差を決定し、
- 前記更なる第1周期誤差に基づいて更なる第1補正値を保存し、
- 前記ターゲットが前記第1位置またはその近傍にあり前記第1角度姿勢を有するとき前記第1補正値により前記光学測定システムの測定値を補正し、
- 前記ターゲットが前記第1位置またはその近傍にあり前記第2角度姿勢を有するとき前記更なる第1補正値により前記光学測定システムの測定値を補正することを備える請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記光学測定システムは、エンコーダシステムである請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記光学測定システムは、干渉計システムである請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の方法を実行するように構成されている処理システム。
【請求項7】
リソグラフィ装置のための光学測定システムの校正のための方法であって、前記光学測定システムは、物体の位置または角度姿勢を測定し、ターゲットが前記物体に接続されており、前記方法は、
- 測定方向に沿って前記ターゲットの第1位置または第1角度姿勢を測定するステップと、
- 前記ターゲットが測定された前記第1位置にありまたは測定された前記第1角度姿勢にあるときに前記光学測定システムの検出器からの測定信号を使用して前記光学測定システムの第1周期誤差を決定するステップと、
- 前記測定方向に沿って前記ターゲットの第2位置または第2角度姿勢を測定するステップと、
を備え、前記第2位置は、少なくともz方向において前記第1位置とは異なり、前記z方向は、前記測定方向以外の方向であり、
- 前記ターゲットが測定された前記第2位置にありまたは測定された前記第2角度姿勢にあるときに前記光学測定システムの検出器からの測定信号を使用して前記光学測定システムの第2周期誤差を決定するステップと
、
- 前記第1周期誤差に基づく第1補正値を保存するステップと、
- 前記第2周期誤差に基づく第2補正値を保存するステップと、を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年7月13日に出願された欧州出願第16179189.2号の優先権を主張し、それらの全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、干渉計システム、更なる干渉計システム、光学測定システムの校正のための方法および処理システムに関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、集積回路(IC)の製造に使用可能な装置である。この場合、マスクまたはレチクルとも称されるパターニングデバイスが、ICの個別の層に形成されるべき回路パターンを生成するために使用されうる。このパターンが放射ビームによって投影システムを介してシリコンウェーハなどの基板の目標部分に転写されうる。パターン転写は典型的には基板に設けられた放射感応性材料層への結像による。一般に一枚の基板には網状に隣接する一群の目標部分が含まれ、これらは連続的にパターン形成される。公知のリソグラフィ装置には、目標部分にパターン全体が一度に露光されるようにして各目標部分が照射を受ける、いわゆるステッパが含まれる。また、公知のリソグラフィ装置には、所与の方向に放射ビームによりパターンを走査するとともに基板をこの方向と平行または逆平行に走査するようにして各目標部分が照射を受ける、いわゆるスキャナが含まれる。
【0004】
典型的にリソグラフィ装置には、干渉計システムのような光学位置測定システムが設けられている。干渉計システムは、基板を保持するテーブルや投影システムの光学構成部品などの物体の位置を正確に決定するように構成されている。こうした物体の位置は正確に測定される必要があり、それにより制御システムは、物体を所望の位置へと正確に移動させることができる。干渉計の測定誤差は、制御システムが物体を所望の位置からずれた場所に移動させる原因となる。こうしたオフセットにより、パターンが基板上に適正に投影されないかもしれない。
【発明の概要】
【0005】
公知の干渉計システムの不利な点は、いわゆる周期誤差に悩まされることにある。干渉計システムは、物体の位置に基づき反復する信号を提供する。周期誤差は、この反復的な信号の誤差であり、当該信号の位相に依存するものである。
【0006】
周期誤差を決定するために、次の2つの公知の方法が使用されうる。第1の方法は、物体をある特定の速度である特定の範囲にわたって移動させる必要がある。第2の方法は、物体をある周波数およびある振幅で振動させる必要がある。
【0007】
第1の方法には、比較的広い範囲にわたる滑らかな動きを要するというデメリットがある。この動きは物体に働く振動によって乱されるかもしれないし、また、物体の移動範囲を十分に長くできないかもしれない。第2の方法には、物体の動特性やサンプリング周波数に起因して、選択される周波数が制約されるというデメリットがある。そのため、物体を振動させるために最適な周波数より低いものを選ばなければならないかもしれない。
【0008】
本発明のひとつの目的は、改善された精度をもつ干渉計システムを提供することにある。
【0009】
本発明の第1の態様においては、請求項1に記載の干渉計システムが提供される。
【0010】
本発明の第2の態様においては、請求項6に記載の干渉計システムが提供される。
【0011】
本発明の第3の態様においては、請求項12に記載の光学測定システムの校正のための方法が提供される。
本発明のいくつかの実施の形態が付属の概略的な図面を参照して以下に説明されるがこれらは例示に過ぎない。各図面において対応する参照符号は対応する部分を指し示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】本発明のある実施の形態に係る干渉計システムの処理システムを示す。
【
図4】本発明の更なる実施の形態に係る干渉計システムの一部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、照明システムIL、支持構造MT、基板テーブルWT、および投影システムPSを備えるリソグラフィ装置を概略的に示す。
【0014】
照明システムILは、放射ビームBを調整するよう構成されている。照明システムILは、放射の方向や形状の調整、または放射の制御のために、各種の光学素子、例えば屈折光学素子、反射光学素子、磁気的光学素子、電磁気的光学素子、静電的光学素子、またはその他の形式の光学素子、若しくはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0015】
照明システムILは放射源SOから放射ビームを受け取る。放射源SOとリソグラフィ装置とは、例えば放射源SOがエキシマレーザである場合には、別体であってもよい。この場合、放射源SOはリソグラフィ装置の一部を構成しているとはみなされなく、放射ビームBは、適当な方向変更用のミラー及び/またはビームエキスパンダを例えば含むビーム搬送系BDを介して放射源SOから照明システムILへと受け渡される。放射源SOが例えば水銀ランプである等の他の場合には、放射源SOはリソグラフィ装置と一体の部分であってもよい。放射源SOと照明システムILとは、またビーム搬送系BDが必要とされる場合にはこれも合わせて、放射システムと総称されてもよい。
【0016】
照明システムILは放射ビームの角強度分布を調整するよう構成されているアジャスタADを含んでもよい。加えて照明システムILは、インテグレータINおよびコンデンサCO等その他の各種構成要素を含んでもよい。照明システムILはビーム断面における所望の均一性及び強度分布を得るべく放射ビームBを調整するために使用されてもよい。
【0017】
本書に使用される「放射ビーム」という用語は、紫外(UV)放射(例えば約365nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長を有する)及び極紫外(EUV)放射(例えば5から20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆる種類の電磁放射、さらにはイオンビームまたは電子ビーム等の粒子ビームを包含する。
【0018】
支持構造(例えばマスクテーブル)MTは、パターニングデバイス(例えばマスクまたはレチクル)MAを支持するためにある。支持構造MTは、いくつかのパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするよう構成されている第1位置決めシステムPMに接続されている。
【0019】
支持構造MTは、パターニングデバイスMAを支持する(すなわち、パターニングデバイスの重量を支える)。支持構造MTは、パターニングデバイスMAの向き、リソグラフィ装置の設計、および例えばパターニングデバイスMAが真空環境下で保持されるか否か等その他の条件に応じた方式でパターニングデバイスMAを保持する。支持構造MTは、機械的固定、真空固定、静電固定、またはパターニングデバイスMAを保持するその他の固定技術を用いることができる。支持構造MTは、例えばフレームまたはテーブルであってもよく、これは必要に応じて固定されまたは移動可能であってもよい。支持構造MTは、パターニングデバイスMAが例えば投影システムPSに対して所望の位置にあることを保証してもよい。
【0020】
本書で使用される「パターニングデバイス」という用語は、基板Wの目標部分Cにパターンを形成すべく放射ビームBの断面にパターンを付与するために使用可能ないかなるデバイスをも指し示すよう広く解釈されるべきである。例えばパターンが位相シフトフィーチャあるいはいわゆるアシストフィーチャを含む場合のように、放射ビームBに与えられるパターンは、基板Wの目標部分Cに所望されるパターンと厳密に一致していなくてもよい。一般には、放射ビームBに付与されるパターンは、目標部分Cに形成される集積回路などのデバイスにおける特定の機能層に対応する。
【0021】
パターニングデバイスMAは透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスMAの例としては、マスクやプログラマブルミラーアレイ、プログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィの分野では周知であり、バイナリマスクやレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、更に各種のハイブリッド型マスクが含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例としては、小型のミラーがマトリックス状に配列され、各ミラーが入射してくる放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾斜可能であるというものがある。これらの傾斜ミラーにより、マトリックス状ミラーで反射された放射ビームにパターンが付与されることになる。図示されるように、本装置は、透過性のマスクを用いる透過型のものである。
【0022】
基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTは、基板(例えば、レジストで被覆されたウェーハ)Wを保持するためにある。基板テーブルWTは、いくつかのパラメータに従って基板Wを正確に位置決めするよう構成されている第2位置決めシステムPWに接続されている。投影システムPSは、パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの目標部分Cに投影するよう構成されている。
【0023】
本書で使用される「投影システム」という用語は、使用される露光放射に関して又は液浸液の使用または真空の使用等の他の要因に関して適切とされるいかなる投影システムPSをも包含するよう広く解釈されるべきであり、屈折光学系、反射光学系、反射屈折光学系、磁気的光学系、電磁気的光学系、静電的光学系、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0024】
放射ビームBは、支持構造MTに保持されるパターニングデバイスMAに入射して、パターニングデバイスMAによりパターン形成される。パターニングデバイスMAを横切った放射ビームBは投影システムPSを通過する。投影システムPSは放射ビームBを基板Wの目標部分Cに合焦する。第2位置決めシステムPWと位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、または静電容量センサ)により、例えば放射ビームBの経路に異なる目標部分Cを位置決めするように、基板テーブルWTを正確に移動させることができる。同様に、第1位置決めシステムPMと他の位置センサ(
図1には図示せず)は、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めするために使用することができる。一般に支持構造MTの移動は、ロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールにより実現されうる。ロングストロークモジュールは、長い範囲にわたる投影システムPSに対するショートストロークモジュールの粗い位置決めを提供する。ショートストロークモジュールは、小さい範囲にわたるロングストロークモジュールに対するパターニングデバイスMAの精確な位置決めを提供する。同様に、基板テーブルWTの移動は、第2位置決めシステムPWの一部を構成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールにより実現されうる。ステッパでは(スキャナとは異なり)、支持構造MTはショートストロークのアクチュエータにのみ接続されているか、あるいは固定されていてもよい。
【0025】
パターニングデバイスMAと基板Wとは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いてアライメントされてもよい。図においては基板アライメントマークP1、P2が専用の目標部分を占拠しているが、アライメントマークは目標部分C間のスペースに配置されてもよい。同様に、パターニングデバイスMAに複数のダイが設けられる場合にはマスクアライメントマークM1、M2がダイ間に配置されてもよい。
【0026】
リソグラフィ装置は、2以上の基板テーブルWT及び/または2以上の支持構造MTを有する形式のものであってもよい。少なくとも1つの基板テーブルWTに加えて、リソグラフィ装置は、測定テーブルを備えてもよく、これは、測定を実行するように構成されるが、基板を保持するようには構成されていない。
【0027】
また、リソグラフィ装置は、基板Wの少なくとも一部分が例えば水などの比較的高い屈折率を有する液体で投影システムPSと基板Wとの間の空間を満たすよう覆われうる形式のものであってもよい。液浸液は、例えばパターニングデバイスMAと投影システムPSとの間などのリソグラフィ装置の他の空間に適用されてもよい。液浸技術は投影システムの開口数を増大させるために周知である。本書で使用される「液浸」との用語は、基板W等の構造体が液体に浸されなければならないことを意味するのではなく、液体が投影システムPSと基板Wとの間に露光中に配置されることを意味するにすぎない。
【0028】
図示のリソグラフィ装置は次のモードのうち少なくとも1つのモードで使用可能でありうる。第1のモードは、ステップモードとも呼ばれ、放射ビームに付与されたパターンの全体が1回で目標部分Cに投影される間、支持構造MT及び基板テーブルWTは実質的に静止状態とされる。そして基板テーブルWTがX方向及び/またはY方向に移動されて、異なる目標部分Cが露光される。第2のモードは、スキャンモードとも呼ばれ、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間、パターニングデバイスMT及び基板テーブルWTは同期して走査される。パターニングデバイスMTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)特性及び像反転特性により定められうる。第3のモードにおいては、パターニングデバイスMAがプログラマブルパターニングデバイスMAを保持して実質的に静止状態とし、放射ビームBに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間、基板テーブルWTが移動または走査される。このモードではパルス放射源が通例用いられ、プログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTの毎回の移動後、または走査中の連続放射パルス間に必要に応じて更新される。この動作モードは、上述の形式のプログラマブルミラーアレイ等のプログラマブルパターニングデバイスMAを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0029】
上記で記載した使用モードを組み合わせて動作させてもよいし、各モードに変更を加えて動作させてもよいし、さらに全く別の使用モードが用いられてもよい。
【0030】
図2は、本発明のある実施の形態に係る干渉計システム200を示す。干渉計システム200は、干渉計205と処理システム210を備える。干渉計205は、レーザ源220、ビームスプリッタ230、ターゲット240、リファレンス250、および検出器ユニット260a、260bを備える。干渉計205は、ヘテロダイン干渉計である。レーザ源220は、ヘテロダインレーザ源であり、結合された2つの波長を有する放射ビームを提供する。それら波長の一方は、周波数f1を有する。他方の波長は、周波数f1+df1を有する。放射ビームの一部は検出器ユニット260bへと向けられる。放射ビームの残りの部分は、ビームスプリッタ230に向かう。放射ビームは、ビームスプリッタ230によって分割される。放射ビームの第1の部分は、ターゲット240へと伝搬し、反射されて、ビームスプリッタ230に戻る。放射ビームの第2の部分は、リファレンス250へと伝搬し、反射されて、ビームスプリッタ230に戻る。放射ビームはさらに、検出器ユニット260aへと伝搬する。検出器ユニット260aに入射する放射ビームは、ターゲット240の位置を示す。検出器ユニット260aは、測定信号を処理システム210に提供するように構成されている測定用検出器である。検出器ユニット260bは、参照信号を処理システム210に提供するように構成されている参照用検出器である。ターゲット240の動きは、検出器ユニット260aに入射する放射ビームに周波数変化を生じさせる。処理システム210は、検出器ユニット260aに入射する放射ビームにおける周波数の変化に基づいてターゲット240の位置を導出するように構成されている。
【0031】
図3は、処理システム210の詳細な概略図を与える。処理システム210は、検出器ユニット260a、260bからそれぞれ測定信号、参照信号を受信する入力部を備える。処理システム210は、参照信号の参照位相φrefを演算する位相演算部310を備える。参照信号は、サイン形状の信号であってもよい。位相演算部310は、位相、またはサイン形状の経時的な位相変化を決定してもよい。
【0032】
ある実施の形態においては、干渉計システム200は、検出器ユニット260bを有しない。それに代えて、処理システム210は、参照位相φrefを決定すべく、放射ビームを生成するAOM(音響光学変調器)の制御信号を使用してもよい。あるいは、レーザ源220を制御するための他の制御信号が、参照位相φrefを決定するために使用される。検出器ユニット260bは、レーザ源220から干渉計205へと放射ビームを伝搬させる光ファイバによって生じる放射ビームの周波数の変化を検出するために使用されてもよい。
【0033】
処理システム210は、測定信号の測定位相φmeaを演算するように構成されている位相演算部330を備える。測定信号は、実質的にサイン形状であってもよい。位相演算部330は、位相、またはサイン形状の経時的な位相変化を決定してもよい。
【0034】
処理システム210は、参照位相φrefおよび測定位相φmeaに基づいて2つのホモダイン信号H1、H2を生成するように構成されている。よって、干渉計システム200はヘテロダイン干渉計205を使用するにもかかわらず、処理システム210は、2つのホモダイン信号H1、H2を出力する。干渉計システム200の周期誤差は、ハイデマン補正のような、ホモダイン干渉計のための公知の補正方法を使用して決定され補正されうる。ホモダイン干渉計のための公知の補正方法には、ターゲット240が小さい動きのみを必要とするかまたは速度要件の無いものがある。
【0035】
処理システム210は、測定信号の測定周波数を決定するように構成されている周波数生成器を備えてもよい。測定周波数は、レーザ源220によって提供される放射ビームの周波数に依存してもよい。ターゲット240が静止しているとき、測定周波数は、典型的に、周波数f1とdf1により決定されるスプリット周波数に等しい。スプリット周波数は、数MHz、例えば1~20MHzの間、例えば、10MHz、12MHz、または15MHzであってもよい。加えて、ターゲット240が移動するときには、ドップラー効果により、いわゆるドップラーシフトだけ測定周波数が変化する。処理システム210は、2つのホモダイン信号H1、H2を生成するために測定周波数を使用してもよい。2つのホモダイン信号H1、H2を生成するために測定周波数を使用することによって、2つのホモダイン信号H1、H2は、ターゲット240の速度から独立させることができる。
【0036】
測定周波数は、周波数生成器によって生成されてもよい。周波数生成器は、検出器ユニット260aからの測定信号を入力として使用する。これに代えてまたはこれとともに、ターゲット240についての速度情報が測定周波数を決定するために使用されてもよい。ある実施の形態においては、周波数生成器は、測定信号を入力として使用しないが、他の情報たとえばターゲット240の速度情報を入力として使用し、または、例えばドップラーシフトについての情報を使用する。
【0037】
処理システム210は、復調信号D1を生成するために復調部350を備えてもよい。復調信号D1は、参照位相φrefおよび測定位相φmeaに基づく。復調部350は、復調信号D1から位相がずれている更なる復調信号D2を生成するように構成されていてもよい。例えば、更なる復調信号D2は、復調信号D1から-120°、-90°、+90°、または+120°だけ位相がずれている。復調部350は、復調信号D1および更なる復調信号D2から位相がずれている追加の復調信号を生成するように構成されていてもよい。例えば、復調部350は、3つの復調信号を生成してもよく、これらは互いに120°の位相差を有してもよい。復調部350は、復調信号D1を生成するために、ハニング窓などの窓を使用してもよい。
【0038】
処理システム210は、測定信号に復調信号D1を乗じることによってホモダイン信号H1を演算し、測定信号に更なる復調信号D2を乗じることによってホモダイン信号H2を演算する演算部360を備えてもよい。復調信号D1と更なる復調信号D2は互いに位相がずれているので、2つのホモダイン信号H1、H2もまた互いに位相がずれている。たとえば、2つのホモダイン信号H1、H2は、互いに90°位相がずれている。2つのホモダイン信号H1、H2は位相がずれているので、リサジュー曲線を決定することができる。理想的には、リサジュー曲線は完全な円である。しかしながら、周期誤差により、リサジュー曲線は楕円形状を有する。楕円形状は、干渉計システム200の周期誤差の指標となる。
【0039】
ある実施の形態においては、ヘテロダイン干渉計を使用する代わりに、ヘテロダインエンコーダシステムが処理システム210とともに使用されうる。
【0040】
ある実施の形態においては、処理システム210は、参照位相φrefおよび測定周波数に基づいてヘテロダイン干渉計205の周期誤差を決定するように構成されていてもよい。周期誤差を決定するために、処理システム210は、測定信号の振幅についての情報を使用してもよい。
【0041】
ある実施の形態においては、復調部350は、使用されない。こうした実施の形態においては、干渉計システム200は、干渉計205および処理システム210を備える。干渉計205は、ヘテロダイン干渉計であってもよい。干渉計205は、参照信号および測定信号を提供するように構成されている。参照信号は、参照位相φrefを有する。測定信号は、測定位相φmeaおよび振幅ACを有する。処理システム210は、参照位相φref、測定位相φmeaおよび振幅ACに基づいてヘテロダイン干渉計205の周期誤差を決定するように構成されている。
【0042】
こうした実施の形態においては、処理システム210は、測定信号から、AC値としても知られる振幅AC、および測定位相φmeaを決定するように構成されている。
図3においては、位相生成部330は、振幅ACを示す信号を提供するように構成されている。ある実施の形態においては、処理システム210は、振幅ACを示す信号を提供するために位相生成部330とは別のユニットを有する。処理システム210は、どの周波数について振幅ACおよび測定位相φmeaが決定されるべきかを決定するために、例えば測定周波数など、ターゲット240の速度についての情報を使用してもよい。処理システム210は、参照位相φref、測定位相φmeaおよび振幅ACに基づいて、以下の等式を使用して、リサジュー曲線を決定するように構成されていてもよい。
【0043】
S0=AC・cos(φmea-φref)
【0044】
S90=AC・sin(φmea-φref)
【0045】
ここで、ACは振幅であり、φmeaは測定位相であり、φrefは参照位相である。理想的には、S0、S90は、リサジュー曲線において完全な円を記述する。周期誤差はリサジュー曲線を楕円にする原因となる。周期誤差は、振幅ACを補正することによって、または測定位相φmeaを補正することによって、または測定位相φmeaと参照位相φrefの差を補正することによって、補正されうる。たとえば、ハイデマン補正が使用されてもよい。補正後に、リサジュー曲線は、楕円ではなく、円となりうる。
【0046】
処理システム210は、参照位相φref、測定位相φmeaおよび振幅ACに基づいて、2つのホモダイン信号H1、H2を生成するように構成されていてもよい。処理システム210は、2つのホモダイン信号H1、H2に基づいて周期誤差を決定するように構成されていてもよい。
【0047】
干渉計システム200は、第1距離信号および第2距離信号を提供するように構成されていてもよい。第1距離信号および第2距離信号の各々は、ターゲット240の距離を示すものである。第1距離信号は、第1波長をもつ放射ビームに基づく。第2距離信号は、第2波長をもつ放射ビームに基づく。
図2の干渉計205は、第1の波長をもち周波数f1+df1を有する放射ビームのみを示す。第2距離信号を生成するために、干渉計205は、周波数f2+df2を有する更なる放射ビームを使用してもよい。周波数f1、f2は、THzのオーダにあってもよく、数THz離れていてもよい。周波数df1、df2は、MHzのオーダにあってもよく、数MHz離れていてもよい。たとえば、df1、df2はそれぞれ、12MHz、15MHzである。
【0048】
第1波長と第2波長は互いに異なっている。第1波長をもつ放射ビームと第2波長をもつ更なる放射ビームは、実質的に同じ光路に沿って進んでもよい。処理システム210は、第1距離信号によって示される距離と第2距離信号によって示される距離の差を決定するように構成されていてもよい。
【0049】
理想的には、第1距離信号と第2距離信号が上記の距離を完全に示す場合には、差は存在しない。しかしながら、干渉計システム200の周期誤差により、典型的には、差が存在する。処理システム210はさらに、差に基づいて、第1距離信号および第2距離信号のうち少なくとも一方を補正するように構成されていてもよい。
【0050】
処理システム210は、ある期間において第1距離信号の1セットの第1サンプルおよび第2距離信号の1セットの第2サンプルを収集するように構成されていてもよい。処理システム210は、当該1セットの第1サンプルおよび当該1セットの第2サンプル信号に基づいて差を決定するように構成されていてもよい。処理システム210は、第1距離信号と第2距離信号の結合に基づいて合成波長を生成するように構成されていてもよい。当該1セットの第1サンプルおよび当該1セットの第2サンプルは、距離変化を示す。距離変化は、少なくとも合成波長の長さを有しうる。周期誤差を決定する精度は、距離変化が合成波長の実質的な一部分(例えば、合成波長の1倍または2倍の0.3倍、または0.5倍、または0.7倍)である場合に、改善される。
【0051】
上記1セットの第1サンプルおよび上記1セットの第2サンプルは、ターゲット240の第1位置から第2位置への動きを示す。第1位置と第2位置の間の距離を少なくとも合成波長の長さに選択する場合、周期誤差をより精確に決定することができる。
【0052】
動きの範囲に基づいて、合成波長が選択されてもよい。例えば、動きの範囲は、合成波長と同じ長さを有し、または合成波長より長い長さを有する。合成波長は、第1波長および第2波長について適切な値を選択することによって、選択されてもよい。合成波長は、第1波長と第2波長の差に依存する。小さい差を選ぶことによって、合成波長は大きくなる。大きい差を選ぶことによって、合成波長は小さくなる。
【0053】
周期誤差は、以下の等式を使用することによって決定されてもよい。
【0054】
(L1-L2)=cyclic_error1(ph1)-cyclic_error2(ph2)...+offset
【0055】
L1は第1距離信号によって示される距離を示す。L2は第2距離信号によって示される距離を示す。L1、L2は、放射ビームのビーム長さを使用することによって、または放射ビームと更なる放射ビームの位相接続された(unwrapped)位相情報を使用することによって、決定されてもよい。cyclic_error1(ph1)はある位相での放射ビームの周期誤差を示す。cyclic_error2(ph2)はある別の位相での更なる放射ビームの周期誤差を示す。L1-L2の等式をターゲット240の複数の位置で解くことによって、周期誤差が決定されてもよい。精度を向上するために、複数の位置は、5またはそれより多数の位置であってもよい。L1-L2の等式は、第1高調波、第2高調波など高調波の振幅および位相を含むように拡張されてもよい。
【0056】
上述の実施の形態においては、干渉計システム200は、ターゲット240の位置を測定方向に沿って決定する光学測定システムとして記述されている。しかしながら、ターゲット240は、1より多い自由度で移動することができる物体に接続されていてもよい。一例を
図4に示す。
【0057】
図4は、干渉計システム200の一部分のみを示す。干渉計205は、放射ビームの一部をターゲット240上へと伝搬させる。ターゲット240は、物体400に接続されている。干渉計205の測定方向は、x軸に沿う。しかしながら、物体400は、x軸とz軸の両方に沿って移動することができる。例えばターゲット240の表面が不完全であることにより、放射ビームは物体400のz位置に依存して異なって干渉計205へと反射して戻りうる。例えば、放射ビームの強度または角度が異なりうる。放射ビームにおける差異は、干渉計システム200の周期誤差を異ならせる原因となる。よって、周期誤差はターゲット240のz位置に依存しうる。
【0058】
z依存の周期誤差を補正するために、干渉計システム200は、以下の方法を実行するように構成されていてもよい。第1に、ターゲット240の第1位置が測定方向に沿って測定される。ターゲット240が第1位置にあるときに、例えば上述の実施の形態により、または周期誤差を決定する既知の方法を使用して、第1周期誤差が決定される。次に、ターゲット240は、第2位置に移動される。第2位置は、測定方向以外の方向において第1位置から距離を有する。
図4の例においては、第2位置は、第1位置とは異なるz位置にある。加えて、第2位置は、第1位置とは異なるx位置にあってもよい。ターゲット240の位置は、第2位置で測定される。ターゲットが第2位置にあるときに、例えば上述の実施の形態により、または周期誤差を決定する既知の方法を使用して、第2周期誤差が決定される。第1周期誤差に基づく第1補正値が保存される。第2周期誤差に基づく第2補正値が保存される。
【0059】
第1補正値および第2補正値を保存した後、干渉計システム200は、物体400の位置を正確に測定するために使用されてもよい。ターゲットが第1位置またはその近傍にあるように物体400が移動されるとき、干渉計システム200の測定値が第1補正値により補正される。ターゲット240が第2位置またはその近傍にあるように物体400が移動されるとき、干渉計システム200の測定値が第2補正値により補正される。
【0060】
第1位置と第2位置の間の位置において、第1補正値の一部と第2補正値の一部が使用されてもよい。例えば内挿により、第1位置および第2位置から離れた補正値を決定するモデルが使用されてもよい。
【0061】
上述の方法は、ターゲット240の2より多いz位置での周期誤差を決定するために多数のz位置について実行されてもよい。これに代えてまたはこれとともに、物体400は、y方向に移動されてもよい。異なるy方向で周期誤差が決定され、対応する補正値が保存されてもよい。
【0062】
それとともにまたはそれに代えて、第1周期誤差が、ターゲット240が第1位置にありかつ第1角度姿勢にあるときに決定される。更なる第1周期誤差が、ターゲット240が第1位置にありかつ第2角度姿勢にあるときに決定される。第2角度姿勢は、第1角度姿勢と異なる。更なる周期誤差に基づく更なる第1補正値が、保存される。
【0063】
第1補正値および更なる第1補正値を保存した後、干渉計システム200は、物体400の角度姿勢を正確に測定するために使用されてもよい。ターゲット240が第1位置またはその近傍にあり第1角度姿勢にあるように物体400が移動されるとき、干渉計システム200の測定値が第1補正値により補正される。ターゲット240が第1位置またはその近傍にあり第2角度姿勢にあるように物体400が移動されるとき、干渉計システム200の測定値が更なる第1補正値により補正される。
【0064】
ターゲット240の角度姿勢の変化は、例えば、放射ビームが反射される角度を変化させうる。角度の変化は周期誤差の原因となりうる。そこで、更なる第1補正値を保存することによって、周期誤差がターゲット240の異なる角度姿勢について補正されてもよい。
【0065】
ある実施の形態においては、物体400は、6自由度で移動可能である。補正値は、x位置、y位置、z位置、Rx回転、Ry回転、Rz回転の組み合わせについて保存されてもよい。補正値を保存するためにルックアップテーブルが使用されてもよい。限られた数の保存された補正値に基づいて、ありうるすべての位置および回転についての補正値を予測するモデルが使用されてもよい。
【0066】
干渉計に代えて、その他の任意の光学測定システムが、上述の方法を実行するように構成されていてもよい。例えば、光学測定システムは、エンコーダシステム、例えばヘテロダインエンコーダまたはホモダインエンコーダである。本方法は、ホモダインエンコーダまたはヘテロダインエンコーダに適用されてもよい。
【0067】
ある実施の形態においては、ターゲット240は、基板テーブルWTまたは支持構造MTの一方に接続されている。ターゲット240は、投影システムPSの光学構成部品に接続されてもよい。光学構成部品は、ミラーまたはレンズを備えてもよい。光学構成部品は、目標部分Cが露光されている間、所望の軌道をたどるように構成されていてもよい。
【0068】
処理システム210は、上述のものとは異なって実装されてもよい。例えば、処理システム210のいくつかの部分が、ひとつのユニットとして実装されてもよく、または、いくつかのユニットに分割されてもよい。処理システム210は、完全にデジタルの処理システム210であってもよく、または、デジタルとアナログの処理システム210の組み合わせであってもよい。検出器ユニット260a、260bは、処理システム210の一部であってもよい。
【0069】
本明細書ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に具体的に言及しているかもしれないが、本書に説明されたリソグラフィ装置は、集積光学システム、磁区メモリ用案内パターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造など他の用途にも適用することが可能であるものと理解されたい。当業者であればこれらの他の適用に際して、本書における「ウェーハ」あるいは「ダイ」という用語がそれぞれ「基板」あるいは「目標部分」という、より一般的な用語と同義であるとみなされると理解することができるであろう。本書に言及される基板は、露光前または露光後において例えばトラック(典型的にはレジスト層を基板Wに塗布し、露光後のレジストを現像する装置)、メトロロジツール、及び/またはインスペクションツールにより処理されてもよい。また、基板Wは例えば多層ICを製造するために複数回処理されてもよく、その場合には本書に使用される基板Wという用語は処理済みの多数の層を既に含む基板Wをも意味しうる。
【0070】
以上では本発明の特定の実施形態を説明したが、本発明は、説明したものとは異なる方式で実施されうることが理解される。
上述の説明は例示であり、限定を意図しない。よって、後述の特許請求の範囲から逸脱することなく既述の本発明に変更を加えることができるということは、関連技術の当業者には明らかなことである。