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特許7375226光学測定システムおよび光学測定システムのキャリブレーションのための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】光学測定システムおよび光学測定システムのキャリブレーションのための方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20231030BHJP
   G01B 9/02055 20220101ALI20231030BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G01B9/02055
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022563437
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2021057292
(87)【国際公開番号】W WO2021213750
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】20171037.3
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン、マールテン、ヨゼフ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ、ピン
【審査官】三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-173218(JP,A)
【文献】特開2011-038882(JP,A)
【文献】特開2007-040994(JP,A)
【文献】特表2003-527577(JP,A)
【文献】特表2002-543373(JP,A)
【文献】特表2002-539443(JP,A)
【文献】特表2019-527357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20- 7/24
9/00- 9/02
G01B 9/00- 9/10
11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる光路長を有する第1光軸および第2光軸を備える光学測定システムのキャリブレーションのための方法であって、
第1光軸は、第1測定ビームを反射する第1反射型測定表面と関連付けられ、
第2光軸は、第2測定ビームを反射する第2反射型参照表面と関連付けられ、
第1反射型測定表面によって反射された第1測定ビームおよび当該第1反射型測定表面によって反射されていない第1参照ビームを再結合して、第1光軸に沿った第1測定位相値を測定することと、
第2反射型参照表面によって反射された第2測定ビームおよび当該第2反射型参照表面によって反射されていない第2参照ビームを再結合して、第2光軸に沿った第2測定位相値を測定することと、
第1測定ビームおよび第2測定ビームの波長を変えることと、
変えられた波長を有する第1測定ビームを使用して、第1光軸に沿った第1測定位相値を更に測定することと、
変えられた波長を有する第2測定ビームを使用して、第2光軸に沿った第2測定位相値を更に測定することと、
第1測定位相値、第2測定位相値、更なる第1測定位相値および更なる第2測定位相値に基づいて、光学測定システムのサイクリックエラーを決定することと、
サイクリックエラーに基づく補正値を保存することと、
を備えるキャリブレーションステップを備える方法。
【請求項2】
光学測定システムのサイクリックエラーを決定するステップにおいて使用される異なる波長について、複数の更なる第1測定位相値および更なる第2測定位相値を取得するために、
第1測定ビームおよび第2測定ビームの波長を変えることと、
変えられた波長を有する第1測定ビームを使用して、第1光軸に沿った第1測定位相値を更に測定することと、
変えられた波長を有する第2測定ビームを使用して、第2光軸に沿った第2測定位相値を更に測定することと、
を備えるステップを繰り返すことを備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1測定ビームの波長を変えることおよび第2測定ビームの波長を変えることは、光学測定システムの光源によって提供される光周波数を調整することを備える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1光軸および第2光軸は固定光路長を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも第1光軸は可変光路長を有し、
光学システムは、固定光周波数を有する第1の更なる測定ビームおよび固定光周波数を有する第2の更なる測定ビームを提供する第2光源を備え、
第1光軸に沿った第1の更なる測定ビームおよび第2光軸に沿った第2の更なる測定ビームを使用する測定に基づいて、可変経路長における変化を測定することと、
キャリブレーションステップ中の可変光路長における変化を補償することと、
をキャリブレーションステップ中に備える請求項3に記載の方法。
【請求項6】
可変光路長における変化を補償することは、第1光路長を安定化するために第1光軸の可変光路長を定める可動反射要素の位置を制御することを備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
可変光路長における変化を補償することは、第1光軸の可変光路長における変動について第1測定位相値および更なる第1測定位相値を補正することを備える、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
第1測定ビームおよび第2測定ビームを提供する光源と、
第1測定ビームを受け取るために、光源と光学的に接続される第1光軸であって、第1測定ビームを反射する第1反射型測定表面および当該第1反射型測定表面によって反射された第1測定ビームと反射されていない第1参照ビームを再結合する干渉計光学素子と関連付けられる第1光軸と、
第1光軸と異なる光路長を有し、第2測定ビームを受け取るために、光源と光学的に接続される第2光軸であって、第2測定ビームを反射する第2反射型参照表面および当該第2反射型参照表面によって反射された第2測定ビームと反射されていない第2参照ビームを再結合する干渉計光学素子と関連付けられる第2光軸と、
第1光軸と関連付けられる第1検出器と、
第2光軸と関連付けられる第2検出器と、
第1検出器および第2検出器と接続される処理ユニットと、
を備え、
第1測定ビームを使用して、第1光軸に沿った第1測定位相値を第1検出器で測定することと、
第2測定ビームを使用して、第2光軸に沿った第2測定位相値を第2検出器で測定することと、
第1測定ビームおよび第2測定ビームの波長を変えることと、
変えられた波長を有する第1測定ビームを使用して、第1光軸に沿った第1測定位相値を第1検出器で更に測定することと、
変えられた波長を有する第2測定ビームを使用して、第2光軸に沿った第2測定位相値を第2検出器で更に測定することと、
処理ユニットにおいて、第1測定位相値、第2測定位相値、第1の更なる測定位相値および第2の更なる測定位相値に基づいて、光学測定システムのサイクリックエラーを決定することと、
サイクリックエラーに基づく補正値を保存することと、
を備えるステップを備えるキャリブレーション方法を実行するように設けられる光学測定システム。
【請求項9】
光学測定システムのサイクリックエラーを決定するステップにおいて使用される異なる波長について、複数の更なる第1測定位相値および更なる第2測定位相値を取得するために、
第1測定ビームおよび第2測定ビームの波長を変えることと、
変えられた波長を有する第1測定ビームを使用して、第1光軸に沿った第1測定位相値を更に測定することと、
変えられた波長を有する第2測定ビームを使用して、第2光軸に沿った第2測定位相値を更に測定することと、
を備えるステップを繰り返すように設けられる請求項8に記載の光学測定システム。
【請求項10】
光源は調整可能光源であり、
第1測定ビームの波長を変えることおよび第2測定ビームの波長を変えることは、光学測定システムの光源によって提供される光周波数を調整することを備える、
請求項8または9に記載の光学測定システム。
【請求項11】
第1光軸および第2光軸は固定光路長を有する、請求項10に記載の光学測定システム。
【請求項12】
少なくとも第1光軸は可変光路長を有し、
光学システムは、固定光周波数を有する第1の更なる測定ビームおよび固定光周波数を有する第2の更なる測定ビームを提供する第2光源を備え、
第1光軸に沿った第1の更なる測定ビームおよび第2光軸に沿った第2の更なる測定ビームを使用する測定に基づいて、可変経路長における変化を測定することと、
キャリブレーションステップ中の可変光路長における変化を補償することと、
をキャリブレーションステップ中に実行するように設けられる請求項10に記載の光学測定システム。
【請求項13】
可変光路長における変化を補償することは、第1光路長を安定化するために第1光軸の可変光路長を定める可動反射要素の位置を制御することを備える、請求項12に記載の光学測定システム。
【請求項14】
可変光路長における変化を補償することは、第1光軸の可変光路長における変動について第1測定位相値および更なる第1測定位相値を補正することを備える、請求項12に記載の光学測定システム。
【請求項15】
第1光軸および第2光軸が延びる測定空間を備え、
第1測定ビームの波長を変えることおよび第2測定ビームの波長を変えることは、第1光軸および第2光軸が延びる測定空間における媒体の屈折率を変えることを備える、
請求項8または9に記載の光学測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]
本出願は、2020年4月23日に出願された欧州出願20171037.3の優先権を主張し、その全体が参照によって本書に援用される。
【0002】
[技術分野]
本発明は、光学測定システムおよび光学測定システムのキャリブレーションのための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、基板上に所望のパターンを適用するように構成された装置である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造において使用されうる。リソグラフィ装置は、例えば、基板(例えば、ウェーハ)上に提供される放射感応性材料(レジスト)の層上に、パターニングデバイス(例えば、マスク)のパターン(しばしば「デザインレイアウト」または「デザイン」とも表される)を投影してもよい。
【0004】
半導体製造プロセスが進歩を続けるにつれて、一般的に「ムーアの法則」と表されるトレンドに従って数十年に亘ってデバイス当たりのトランジスタ等の機能要素の量が着実に増加すると共に、回路要素の寸法が継続的に低減されている。ムーアの法則に付いていくために、ますます小さいフィーチャの生成を可能にする技術を半導体業界は追い求めている。基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を使用してもよい。この放射の波長は、基板上にパターン形成されるフィーチャの最小サイズを決定する。現在使用されている典型的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nmおよび13.5nmである。4nmから20nmの範囲内、例えば6.7nmまたは13.5nmの波長を有する極端紫外(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置は、例えば193nmの波長を有する放射を使用するリソグラフィ装置より小さいフィーチャを基板上に形成するために使用されてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リソグラフィ装置は、典型的に、干渉計システム等の光学位置測定システムと共に提供される。干渉計システムは、基板を保持するテーブルまたは投影システムの光学コンポーネント等のオブジェクトの位置を正確に決定するように設けられる。このようなオブジェクトの位置は、制御システムがオブジェクトを所望の位置に正確に駆動できるように、正確に測定される必要がある。干渉計の測定エラーは、制御システムに、所望の位置からオフセットした位置にオブジェクトを駆動させる。オフセットのために、パターンが基板上に適切に投影されない恐れがある。
【0006】
公知の干渉計システムの欠点は、いわゆるサイクリックエラーの影響を受けることである。干渉計システムは、オブジェクトの位置に基づいて反復信号を提供する。サイクリックエラーは、信号の位相に依存する反復信号のエラーである。
【0007】
US2019/265019は、光学測定システムのキャリブレーションのための方法を開示している。
この方法は、
測定方向に沿って、ターゲットの第1位置または第1角度方向を測定することと、
ターゲットが、第1位置または第1角度方向にある時について、光学測定システムの第1サイクリックエラーを決定することと、
測定方向に沿って、ターゲットの第2位置または第2角度方向を測定することと、
ターゲットが、測定方向と異なる方向に第1位置から離れている第2位置または第2角度方向にある時について、光学測定システムの第2サイクリックエラーを決定することと、
第1サイクリックエラーに基づく第1補正値を保存することと、
第2サイクリックエラーに基づく第2補正値を保存することと、
を備えるステップを備える。
【0008】
第1補正値および第2補正値は、ターゲットが第1位置の近傍にある時についての第1補正値で光学測定システムの測定値を補正するために、および、ターゲットが第2位置の近傍にある時についての第2補正値で光学測定システムの更なる測定値を補正するために使用されうる。
【0009】
US2019/265019の方法では、サイクリックエラーについて測定値を補正するための補正値を決定するために移動ターゲットが必要である。
【0010】
この方法の欠点は、移動ターゲットを持たない干渉計システムについてサイクリックエラーを決定するために使用できないことである。
【0011】
本発明の目的は、サイクリックエラーについて光学測定システムの測定値を補正するための補正値を決定するために移動ターゲットを必要としない光学測定システムのキャリブレーションのための方法を提供することである。本発明の他の目的は、サイクリックエラーの補正のために使用される補正値を決定するために移動ターゲットを必要としない、サイクリックエラーについて補正するように設けられる光学測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、異なる光路長を有する第1光軸および第2光軸を備える光学測定システムのキャリブレーションのための方法が提供される。
この方法は、
第1測定ビームを使用して、第1光軸に沿った第1測定値を測定することと、
第2測定ビームを使用して、第2光軸に沿った第2測定値を測定することと、
第1測定ビームおよび第2測定ビームの波長を変えることと、
変えられた波長を有する第1測定ビームを使用して、第1光軸に沿った第1測定値を更に測定することと、
変えられた波長を有する第2測定ビームを使用して、第2光軸に沿った第2測定値を更に測定することと、
第1測定値、第2測定値、更なる第1測定値および更なる第2測定値に基づいて、光学測定システムのサイクリックエラーを決定することと、
サイクリックエラーに基づく補正値を保存することと、
を備えるキャリブレーションステップを備える。
【0013】
本発明の他の態様によれば、光学測定システムが提供される。
このシステムは、
第1測定ビームおよび第2測定ビームを提供する光源と、
第1測定ビームを受け取るために、光源と光学的に接続される第1光軸と、
第1光軸と異なる光路長を有し、第2測定ビームを受け取るために、光源と光学的に接続される第2光軸と、
第1光軸と関連付けられる第1検出器と、
第2光軸と関連付けられる第2検出器と、
第1検出器および第2検出器と接続される処理ユニットと、
を備える。
光学測定システムは、
第1測定ビームを使用して、第1光軸に沿った第1測定値を第1検出器で測定することと、
第2測定ビームを使用して、第2光軸に沿った第2測定値を第2検出器で測定することと、
第1測定ビームおよび第2測定ビームの波長を変えることと、
変えられた波長を有する第1測定ビームを使用して、第1光軸に沿った第1測定値を第1検出器で更に測定することと、
変えられた波長を有する第2測定ビームを使用して、第2光軸に沿った第2測定値を第2検出器で更に測定することと、
処理ユニットにおいて、第1測定値、第2測定値、第1の更なる測定値および第2の更なる測定値に基づいて、光学測定システムのサイクリックエラーを決定することと、
サイクリックエラーに基づく補正値を保存することと、
を備えるステップを備えるキャリブレーション方法を実行するように設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の実施形態が、例示のみを目的として、付随する以下の模式図を参照して記述される。
図1】リソグラフィ装置の模式的な概要を示す。
図2図1のリソグラフィ装置の一部の詳細を示す。
図3】位置制御システムを模式的に示す。
図4】本発明の実施形態に係る光学測定システムの第1実施形態を示す。
図5】本発明の実施形態に係る光学測定システムの第2実施形態を示す。
図6】本発明の実施形態に係る光学測定システムの第3実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本文書では、用語「放射」および「ビーム」が、紫外放射(例えば、365、248、193、157または126nmの波長を有するもの)およびEUV(極端紫外放射、例えば、約5-100nmの範囲における波長を有するもの)を含む全てのタイプの電磁放射を包含するために使用される。
【0016】
本テキストにおいて使用される用語「レチクル」、「マスク」または「パターニングデバイス」は、基板のターゲット部分において生成されるパターンに対応する、パターン形成された断面を入射する放射ビームに付与するために使用されうる一般的なパターニングデバイスを表すものと広義に解釈されてもよい。用語「ライトバルブ」は、この文脈においても使用されうる。古典的なマスク(透過型または反射型、バイナリ型、位相シフト型、ハイブリッド型等)の他に、このようなパターニングデバイスの他の例は、プログラマブルミラーアレイおよびプログラマブルLCDアレイを含む。
【0017】
図1は、リソグラフィ装置LAを模式的に示す。リソグラフィ装置LAは、放射ビームB(例えば、UV放射、DUV放射またはEUV放射)を調整するように構成される照明システム(イルミネータとも表される)ILと、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構成され、特定のパラメータに応じてパターニングデバイスMAを正確に配置するように構成される第1ポジショナPMに接続されるマスクサポート(例えば、マスクテーブル)MTと、基板(例えば、レジストがコーティングされたウェーハ)Wを保持するように構成され、特定のパラメータに応じて基板サポートを正確に配置するように構成される第2ポジショナPWに接続される基板サポート(例えば、ウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに形成されたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、一または複数のダイを備える)上に投影するように構成される投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSと、を含む。
【0018】
稼働中、照明システムILは、例えばビームデリバリシステムBDを介して、放射源SOからの放射ビームを受け取る。照明システムILは、放射の方向付け、形成および/または制御のために、屈折型、反射型、磁気型、電磁気型、静電型および/または他のタイプの光学コンポーネント、またはこれらの任意の組合せ等の各種のタイプの光学コンポーネントを含んでもよい。イルミネータILは、パターニングデバイスMAの面での断面において所望の空間および角度強度分布を有するように、放射ビームBを調整するために使用されてもよい。
【0019】
ここで使用される用語「投影システム」PSは、使用中の露光放射、および/または、液浸液または真空の使用等の他のファクタについて適切な、屈折型、反射型、反射屈折型、アナモルフィック型、磁気型、電磁気型および/または静電型の光学システム、またはこれらの任意の組合せを含む各種のタイプの投影システムを包含するものと広義に解釈されるべきである。ここでの用語「投影レンズ」の使用は、より一般的な用語「投影システム」PSと同義と解釈されてもよい。
【0020】
リソグラフィ装置LAは、投影システムPSおよび基板Wの間の空間を満たすために、基板の少なくとも一部が比較的高い屈折率を有する水等の液体によって覆われてもよいタイプでもよい(液浸リソグラフィとも表される)。液浸技術に関するより多くの情報は、参照によって本書に援用されるUS6952253において与えられる。
【0021】
リソグラフィ装置LAは、二つ以上の基板サポートWT(「デュアルステージ」とも呼ばれる)を有するタイプでもよい。このような「複数ステージ」装置では、基板サポートWTが並行的に使用されてもよい、および/または、他方の基板サポートWT上の他の基板Wが、その上へのパターンの露光のために使用されている間に、一方の基板サポートWT上に位置する基板Wに対して、後続の露光の準備ステップが実行されてもよい。
【0022】
基板サポートWTに加えて、リソグラフィ装置LAは、測定ステージを備えてもよい。測定ステージは、センサおよび/またはクリーニングデバイスを保持するように設けられる。センサは、投影システムPSの特性または放射ビームBの特性を測定するように設けられてもよい。測定ステージは、複数のセンサを保持してもよい。クリーニングデバイスは、リソグラフィ装置の部分、例えば投影システムPSの部分または液浸液を提供するシステムの部分をクリーニングするように設けられてもよい。測定ステージは、基板サポートWTが投影システムPSから離れている時に、投影システムPSの下方で移動してもよい。
【0023】
稼働中、放射ビームBは、マスクサポートMT上に保持されているマスクMA等のパターニングデバイス上に入射し、パターニングデバイスMA上に存在するパターン(デザインレイアウト)によってパターン形成される。パターニングデバイスMAを経た放射ビームBは、基板Wのターゲット部分C上にビームを集める投影システムPSを通過する。例えば、異なるターゲット部分Cを放射ビームBの経路における集光および整列位置に配置するために、第2ポジショナPWおよび位置測定システムPMSによって基板サポートWTは正確に駆動されうる。同様に、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に配置するために、第1ポジショナPMおよび必要に応じて他の位置センサ(図1では明示されない)が使用されてもよい。パターニングデバイスMAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2および基板アライメントマークP1、P2を使用して整列されてもよい。図示の基板アライメントマークP1、P2は専用のターゲット部分を占めるが、これらはターゲット部分の間の空間に配置されてもよい。ターゲット部分Cの間に配置される場合の基板アライメントマークP1、P2は、スクライブラインアライメントマークとして知られている。
【0024】
発明を明確化するために、デカルト座標系が使用される。デカルト座標系は、三つの軸、すなわちx軸、y軸およびz軸を有する。三つの軸のそれぞれは、他の二つの軸と直交する。x軸の周りの回転はRx回転と表される。y軸の周りの回転はRy回転と表される。z軸の周りの回転はRz回転と表される。x軸およびy軸は水平面を定め、z軸は鉛直方向にある。デカルト座標系は発明を限定せず、明確化のためだけに使用される。代わりに、円筒座標系等の他の座標系が発明を明確化するために使用されてもよい。例えば、z軸が水平面に沿った成分を有するように、デカルト座標系の方向は異なってもよい。
【0025】
図2は、図1のリソグラフィ装置LAの一部の詳細を示す。リソグラフィ装置LAには、ベースフレームBF、バランスマスBM、計測フレームMFおよび防振システムISが提供されてもよい。計測フレームMFは、投影システムPSを支持する。加えて、計測フレームMFは、位置測定システムPMSの一部を支持してもよい。計測フレームMFは、防振システムISを介してベースフレームBFによって支持される。防振システムISは、ベースフレームBFから計測フレームMFに伝わる振動を防止または低減するように設けられる。
【0026】
第2ポジショナPWは、基板サポートWTおよびバランスマスBMの間に駆動力を提供することによって、基板サポートWTを加速するように設けられる。駆動力は、基板サポートWTを所望の方向に加速する。運動量の保存のために、駆動力は、所望の方向と反対の方向に等しい大きさでバランスマスBMにも適用される。典型的に、バランスマスBMの質量は、第2ポジショナPWおよび基板サポートWTの移動部分の質量より有意に大きい。
【0027】
一実施形態では、第2ポジショナPWがバランスマスBMによって支持される。例えば、第2ポジショナPWは、バランスマスBMの上方に基板サポートWTを浮上させるための平面モータを備える。他の実施形態では、第2ポジショナPWがベースフレームBFによって支持される。例えば、第2ポジショナPWはリニアモータを備え、第2ポジショナPWはベースフレームBFの上方に基板サポートWTを浮上させるためのガスベアリングのようなベアリングを備える。
【0028】
位置測定システムPMSは、基板サポートWTの位置を決定するのに適した任意のタイプのセンサを備えてもよい。位置測定システムPMSは、マスクサポートMTの位置を決定するのに適した任意のタイプのセンサを備えてもよい。センサは、干渉計またはエンコーダ等の光学センサでもよい。位置測定システムPMSは、干渉計およびエンコーダが組み合わされたシステムを備えてもよい。センサは、磁気センサ、容量センサまたは誘導センサ等の他のタイプのセンサでもよい。位置測定システムPMSは、計測フレームMFまたは投影システムPS等のリファレンスに対する位置を決定してもよい。位置測定システムPMSは、位置を測定することによって、または、速度または加速度等の位置の時間微分を測定することによって、基板テーブルWTおよび/またはマスクサポートMTの位置を決定してもよい。
【0029】
位置測定システムPMSは、エンコーダシステムを備えてもよい。エンコーダシステムは、例えば、参照によって本書に援用される、2006年9月7日に出願された米国特許出願US2007/0058173A1から公知である。エンコーダシステムは、エンコーダヘッド、格子およびセンサを備える。エンコーダシステムは、主放射ビームおよび副放射ビームを受け取ってもよい。主放射ビームおよび副放射ビームは共に、同じ放射ビーム、すなわち、原放射ビームから生じる。主放射ビームおよび副放射ビームの少なくともいずれかは、原放射ビームを格子で回折させることによって生成される。主放射ビームおよび副放射ビームの両方が原放射ビームを格子で回折させることによって生成される場合、主放射ビームは副放射ビームと異なる回折次数を有する必要がある。異なる回折次数は、例えば、+1次、-1次、+2次および-2次である。エンコーダシステムは、主放射ビームおよび副放射ビームを結合放射ビームに光学的に結合する。エンコーダヘッドにおけるセンサは、結合放射ビームの位相または位相差を決定する。センサは、位相または位相差に基づく信号を生成する。信号は、格子に対するエンコーダヘッドの位置を表す。エンコーダヘッドおよび格子の一方は、基板構造WT上に設けられてもよい。エンコーダヘッドおよび格子の他方は、計測フレームMFまたはベースフレームBF上に設けられてもよい。例えば、複数のエンコーダヘッドは計測フレームMF上に設けられ、格子は基板サポートWTの頂面上に設けられる。他の例では、基板サポートWTの底面上に格子が設けられ、エンコーダヘッドが基板サポートWTの下方に設けられる。
【0030】
位置測定システムPMSは、干渉計システムを備えてもよい。干渉計システムは、例えば、参照によって本書に援用される、1998年7月13日に出願された米国特許US6,020,964から公知である。干渉計システムは、ビームスプリッタ、ミラー、参照ミラーおよびセンサを備えてもよい。放射のビームは、ビームスプリッタによって参照ビームおよび測定ビームに分離される。測定ビームはミラーに伝わり、ミラーによって反射されてビームスプリッタに戻される。参照ビームは参照ミラーに伝わり、参照ミラーによって反射されてビームスプリッタに戻される。ビームスプリッタにおいて、測定ビームおよび参照ビームは結合放射ビームに結合される。結合放射ビームは、センサ上に入射する。センサは、結合放射ビームの位相または周波数を決定する。センサは、位相または周波数に基づく信号を生成する。信号はミラーの変位を表す。一実施形態では、ミラーが基板サポートWTに接続される。参照ミラーは、計測フレームMFに接続されてもよい。一実施形態では、ビームスプリッタの代わりの追加的な光学コンポーネントによって、測定ビームおよび参照ビームが結合放射ビームに結合される。
【0031】
第1ポジショナPMは、長ストロークモジュールおよび短ストロークモジュールを備えてもよい。短ストロークモジュールは、小さい駆動範囲に亘って高い精度で、マスクサポートMTを長ストロークモジュールに対して駆動するように設けられる。長ストロークモジュールは、大きい駆動範囲に亘って比較的低い精度で、短ストロークモジュールを投影システムPSに対して駆動するように設けられる。長ストロークモジュールおよび短ストロークモジュールの組合せによって、第1ポジショナPMは、大きい駆動範囲に亘って高い精度で、マスクサポートMTを投影システムPSに対して駆動できる。同様に、第2ポジショナPWは、長ストロークモジュールおよび短ストロークモジュールを備えてもよい。短ストロークモジュールは、小さい駆動範囲に亘って高い精度で、基板サポートWTを長ストロークモジュールに対して駆動するように設けられる。長ストロークモジュールは、大きい駆動範囲に亘って比較的低い精度で、短ストロークモジュールを投影システムPSに対して駆動するように設けられる。長ストロークモジュールおよび短ストロークモジュールの組合せによって、第2ポジショナPWは、大きい駆動範囲に亘って高い精度で、基板サポートWTを投影システムPSに対して駆動できる。
【0032】
第1ポジショナPMおよび第2ポジショナPWのそれぞれには、マスクサポートMTおよび基板サポートWTをそれぞれ駆動するためのアクチュエータが提供される。アクチュエータは、単一の軸、例えばy軸に沿った駆動力を提供するためのリニアアクチュエータでもよい。複数の軸に沿った駆動力を提供するために、複数のリニアアクチュエータが適用されてもよい。アクチュエータは、複数の軸に沿った駆動力を提供するための平面アクチュエータでもよい。例えば、平面アクチュエータは、6自由度で基板サポートWTを駆動するように設けられてもよい。アクチュエータは、少なくとも一つのコイルおよび少なくとも一つの磁石を備える電磁気型アクチュエータでもよい。アクチュエータは、少なくとも一つのコイルに電流を適用することによって、少なくとも一つのコイルを少なくとも一つの磁石に対して駆動するように設けられる。アクチュエータは、それぞれマスクサポートMTに対する基板サポートWTに結合される少なくとも一つの磁石を有するムービングマグネット型アクチュエータでもよい。アクチュエータは、それぞれマスクサポートMTに対する基板サポートWTに結合される少なくとも一つのコイルを有するムービングコイル型のアクチュエータでもよい。アクチュエータは、ボイスコイルアクチュエータ、磁気抵抗アクチュエータ、ローレンツアクチュエータまたはピエゾアクチュエータ、または任意の他の適切なアクチュエータでもよい。
【0033】
図3に模式的に示されるように、リソグラフィ装置LAは位置制御システムPCSを備える。位置制御システムPCSは、セットポイントジェネレータSP、フィードフォワードコントローラFFおよびフィードバックコントローラFBを備える。位置制御システムPCSは、アクチュエータACTに対して駆動信号を提供する。アクチュエータACTは、第1ポジショナPMまたは第2ポジショナPWのアクチュエータでもよい。アクチュエータACTは、基板サポートWTまたはマスクサポートMTを備えてもよいプラントPを駆動する。プラントPの出力は、位置または速度または加速度等の位置量である。位置量は、位置測定システムPMSで測定される。位置測定システムPMSは、プラントPの位置量を表す位置信号である信号を生成する。セットポイントジェネレータSPは、プラントPの所望の位置量を表す参照信号である信号を生成する。例えば、参照信号は、基板サポートWTの所望の軌道を表す。参照信号および位置信号の間の差は、フィードバックコントローラFBに対する入力を形成する。入力に基づいて、フィードバックコントローラFBは、アクチュエータACTのための駆動信号の少なくとも一部を提供する。参照信号は、フィードフォワードコントローラFFに対する入力を形成してもよい。入力に基づいて、フィードフォワードコントローラFFは、アクチュエータACTのための駆動信号の少なくとも一部を提供する。フィードフォワードFFは、プラントPの質量、剛性、共振モードおよび固有振動数等の動力学的特性に関する情報を利用してもよい。
【0034】
図4は、本発明の実施形態に係る干渉計システム100の実施形態を示す。干渉計システム100は、第1光軸102および第2光軸104を備える。干渉計システム100はヘテロダイン干渉計システムであり、調整可能レーザデバイス107を備える。調整可能レーザデバイス107は、調整可能な光周波数を有する放射ビームを提供するように構成される。
【0035】
干渉計システム100は、調整可能レーザデバイス107と関連付けられる光学システム108を備える。光学システム108は、第1光軸102および第2光軸104における測定ビームとして使用される第1放射ビーム部分と、第1光軸102および第2光軸104における参照ビームとして使用される第2放射ビーム部分に、放射ビームを分離するように構成される。
【0036】
光学システム108では、第1放射ビーム部分の第1周波数および第2放射ビーム部分の第2周波数の間に周波数差を生成するために、第1放射ビーム部分の光路において第1光周波数シフトデバイスが提供され、第2放射ビーム部分の光路において第2光周波数シフトデバイスが提供される。第1および第2光周波数シフトデバイスは、例えば、第1放射ビーム部分の第1周波数および第2放射ビーム部分の第2周波数の間に例えば4MHzの周波数差を効果的に生成する音響光学変調器ユニットである。第1ビームおよび第2ビームの間に周波数差を生成するための他のデバイスが適用されてもよい。第1光路または第2光路のいずれかにおいて、周波数シフトデバイスが第1ビームの第1周波数および第2ビームの第2周波数の間に所望の周波数差を生成するように設けられることも可能である。第1放射ビーム部分および第2放射ビーム部分は、光学システム108において調整可能な光周波数を有する再結合放射ビームに再結合される。
【0037】
調整可能な光周波数を有する再結合放射ビームは、例えば非偏光ビームスプリッタ109によって、第1部分および第2部分に分離される。第1部分は、第1光軸102と関連付けられる干渉計光学素子110に向けられる。干渉計光学素子110は、第1部分を第1測定ビームおよび第1参照ビームに分離するように設けられる。第1測定ビームは、第1光路102に沿って第1反射型測定表面201までガイドされる。第1測定ビームが第1反射型測定表面201によって反射された後、第1測定ビームは干渉計光学素子110において第1参照ビームと再結合される。再結合された第1測定ビームおよび第1参照ビームは、光センサデバイス103に接続される検出器103bに向けられる。
【0038】
放射ビームの第2部分は、第2光軸104と関連付けられる干渉計光学素子111に向けられる。干渉計光学素子111は、第2部分を第2測定ビームおよび第2参照ビームに分離するように設けられる。第2測定ビームは、第2光路104に沿って第2反射型参照表面105までガイドされる。第2測定ビームが第2反射型参照表面105によって反射された後、第2測定ビームは干渉計光学素子111において第2参照ビームと再結合される。再結合された第2測定ビームおよび第2参照ビームは、光センサ103に接続される検出器103cに向けられる。
【0039】
第1光軸102は、第1測定ビームおよび第1参照ビームの間の第1光路長L1を備え、第2光軸104は、第2測定ビームおよび第2参照ビームの間の第2光路長L2を備える。第1光軸102の光路長L1は、干渉計光学素子110に対する固定位置に取り付けられた第1反射型測定表面201によって定められ、第2光軸104の光路長L2は、干渉計光学素子111に対する固定位置に取り付けられた第2反射型測定表面105によって定められる。第1光路長L1および第2光路長L2は異なる。第1反射型測定表面201および第2反射型測定表面105が固定位置に設けられるため、第1光路長L1および第2光路長L2は一定である。結果として、第1光路長L1および第2光路長L2の間には一定の差がある。
【0040】
再結合放射ビームが第1部分および第2部分に分離される前に、調整可能な光周波数を有する再結合放射ビームの更なる部分が光センサデバイス103に接続される参照検出器103aに向けられる。調整可能な光周波数を有する再結合放射ビームのこの部分は、第1反射型測定表面201または第2反射型参照表面105と相互作用しておらず、ヘテロダイン干渉計システム100の測定の処理のための参照信号として使用される。
【0041】
参照検出器103aは、レーザビームの部分を光センサデバイス103の光ダイオード上に伝える。検出器103bは、再結合された第1測定ビームおよび第1参照ビームを光センサデバイス103の他の光ダイオード上に伝える。検出器103cは、再結合された第2測定ビームおよび第2参照ビームを光センサデバイス103の更に他の光ダイオード上に伝える。光ダイオードの測定結果は、光センサデバイス103を介して処理ユニット106中に提供される。処理ユニット106は、検出器103bによる入力に基づいて、第1測定値すなわち第1測定位相値を生成する。あるいは、調整可能レーザ源107および干渉計光学素子110の間のレーザビームの撹乱を補償するために、検出器103bによる入力および参照検出器103aによる入力に基づいて、処理ユニット106は第1測定位相値を生成してもよい。処理ユニット106は、検出器103cによる入力に基づいて、第2測定値すなわち第2測定位相値を生成する。あるいは、調整可能レーザ源107および干渉計光学素子111の間のレーザビームの撹乱を補償するために、検出器103cによる入力および参照検出器103aによる入力に基づいて、処理ユニット106は第2測定値を生成してもよい。
【0042】
図4に示される干渉計システム100は、いわゆるサイクリックエラーの影響を受ける可能性がある。干渉計システム100は、第1反射型測定表面201および第2反射型参照表面105の位置に基づく反復信号を提供する。サイクリックエラーは、信号の位相に依存する反復信号のエラーである。本実施形態では、これらのサイクリックエラーを補償するために使用されうる補正値を決定するためのキャリブレーション方法が提案される。処理ユニット106は、このようなキャリブレーション方法を実行するように設けられる。
【0043】
キャリブレーション方法は、次のステップを備える:
第1測定ビームを使用して第1光軸102に沿った第1測定値を測定するステップおよび第2測定ビームを使用して第2光軸104に沿った第2測定値を測定するステップと、
調整可能レーザ源107によって提供される放射ビームの周波数を調整することによって、第1測定ビームおよび第2測定ビームの波長を変えるステップと、
変えられた波長を有する第1測定ビームを使用して第1光軸102に沿った第1測定値を更に測定するステップおよび変えられた波長を有する第2測定ビームを使用して第2光軸104に沿った第2測定値を更に測定するステップと、
第1測定値、第2測定値、更なる第1測定値および更なる第2測定値に基づいて、光学測定システムのサイクリックエラーが決定されうるステップ。
このサイクリックエラーは、干渉計システムの動作測定中にサイクリックエラーを補償するための公式またはルックアップテーブル等として処理ユニット106に保存されうる補正値を決定するために使用されうる。
【0044】
サイクリックエラーの演算は、第1測定ビームの周波数を第1測定値および更なる第1測定値の測定の間で変えることが第1測定値および更なる第1測定値の間の位相シフトをもたらし、第2測定ビームの周波数を第2測定値および更なる第2測定値の測定の間で変えることが第2測定値および更なる第2測定値の間の位相シフトをもたらすという効果に基づく。第1光軸102および第2光軸104の間の位相シフト比率は、第1光路長L1および第2光路長L2の間の光路長差に比例する。
【0045】
位相シフト比率における差は、時間の関数としてのサイクリックエラー周期に影響するため、第1測定値、第2測定値、更なる第1測定値および更なる第2測定値から、光軸102、104のそれぞれについてのサイクリックエラーを一意的に特定および決定するために使用されうる。
【0046】
前述された方法では、二つの周波数レベルでの二つの測定のみが実行される。実際には、例えば、調整可能レーザ源107が適切な周波数範囲における周波数スイープを伴う放射ビームを提供しながら複数の測定を行うことによって、複数の更なる測定が異なる周波数で実行されてもよい。数百または数千の測定が行われてもよい。測定の冗長性は、よく調整された線型方程式の組を担保しうる。
【0047】
より詳細な例として、サイクリックエラーは以下のように決定されてもよい。
【0048】
第1ステップでは、前述されたような波長変化中の第1光軸102の測定値および第2光軸104の測定値における変化が測定される。この測定は、第1光軸102からの測定データ「φOPD1(t)」および第2光軸104からの測定データ「φOPD2(t)」を含む(列)ベクトルをもたらす。異なる光路長の差(OPD)を有する干渉計軸の測定データにおける変化は、極めて似た形状を有するが異なる大きさを有する。相対ゲインは、測定されるキャビティの長さの比率に等しい。第2ステップでは、両方の干渉計によって測定された測定値の軌道が互いにフィットされ、第1光軸102の第1光路長L1および第2光軸104の第2光路長の間のOPD比率「OPD1/OPD2」に対応するゲインをもたらす。
【0049】
このように、第1および第2ステップは、OPD比率を推定するために使用される。第1光軸102および第2光軸104の間のOPD比率が測定前に既知の場合、第1ステップおよび第2ステップは信号処理においてスキップされてもよい。
【0050】
OPD比率が分かった後の第3ステップでは、両方の干渉計軸のサイクリックエラーが混ざったものを含むフィット残余(fit residual)が次のように決定されうる。
fit residual = φOPD1 - (OPD1/OPD2)・φOPD2
残余は、両方の干渉計軸のサイクリックエラーの間の差を主に含む。
【0051】
第4ステップでは、サイクリックエラーがフィットされうる。サイクリックエラーをフィットするための目標関数として、各光軸の測定された位相値の余弦および正弦が次のように使用されうる。
residual = (a1,1・cos(φOPD1) + b1,1・sin(φOPD1) + a2,1・cos(2φOPD1) + b2,1・sin(2φOPD1)) - (OPD1/OPD2)・(a1,2・cos(φOPD2) + b1,2・sin(φOPD2) + a2,2・cos(2φOPD2) + b2,2・sin(2φOPD2)) + offset
ここで、フィットされうるパラメータは次の通りである。
1,1、b1,1:第1光軸についての1次調和サイクリックエラーパラメータ
2,1、b2,1:第1光軸についての2次調和サイクリックエラーパラメータ
1,2、b1,2:第2光軸についての1次調和サイクリックエラーパラメータ
2,2、b2,2:第2光軸についての2次調和サイクリックエラーパラメータ
offset:フィットされうる追加的なパラメータ
この線型方程式の組は、例えば、次のように行列形式で記述される場合に解かれうる。
H = [cos(φOPD1), sin(φOPD1), cos(2φOPD1), sin(2φOPD1),…
- OPD1/OPD2・[cos(φOPD2), sin(φOPD2), cos(2φOPD2), sin(2φOPD2)],…
ones(size(φOPD1))]
解決行列Hの列は、測定残余にフィットされる目標関数を含む。基本的に任意の数のオフセットまたはトレンド等の調和または余分目標関数が行列Hに加えられてもよいが、単なる一例として両方の干渉計軸の1次および2次調和サイクリックエラーに対して目標関数がフィットされる。線型方程式の組の最小二乗フィットが、次の式によって取得できる。
par = (HT・H)-1・HT・residual
この「par」は、フィットされるサイクリックエラーパラメータを含む次のベクトルを表す。
[a1,1 b1,1 a2,1 b2,1 a1,2 b1,2 a2,2 b2,2 offset]T
【0052】
干渉計システムの稼働中、得られたサイクリックエラーパラメータ、すなわち補正値は、干渉計システム100の補正された測定値をサイクリックエラーなしで再構成するために使用されうる。補正された位相信号は、例えば、以下の方程式に基づいて再構成されうる。
φOPD1,corrected = φOPD1 - (a1,1・cos(φOPD1) + b1,1・sin(φOPD1) + a2,1・cos(2φOPD1) + b2,1・sin(2φOPD1))
φOPD2,corrected = φOPD2 - (a1,2・cos(φOPD2) + b1,2・sin(φOPD2) + a2,2・cos(2φOPD2) + b2,2・sin(2φOPD2)
【0053】
このように、決定されたサイクリックエラーは、干渉計システム100の稼働中に干渉計システムのサイクリックエラーについての測定を補正するために使用されうる補正値を演算するために使用されうる。
【0054】
サイクリックエラーパラメータ、すなわち補正値は、典型的に、測定中のインラインサイクリックエラー補償のために使用されるサイクリックエラー補正ルックアップテーブルまたはサイクリックエラー補正公式として処理ユニット106に保存される。
【0055】
前述されたような方法は、第1光軸102および第2光軸104の両方の固定光路長を有する干渉計システムの測定結果を補正する可能性を提供する。
【0056】
方法の利点は、比率または円滑度を調整することなく、サイクリックエラーを見付けるための分析的に正確なソリューションが決定されて、任意の周波数調整軌道についてサイクリックエラー測定が可能になることである。
【0057】
図5は、干渉計システム100のサイクリックエラーについてのキャリブレーション方法を実行するように構成される干渉計システム100の第2実施形態を示す。第2実施形態の干渉計システム100は、図4に示される実施形態と実質的に同じである。干渉計システム100は、第1光軸102および第2光軸104を有するヘテロダイン干渉計システムである。第1光軸102は第1一定光学長L1を有し、第2光軸104は第2一定光学長104を有する。第1光学長102および第2光学長104は異なる。
【0058】
図4の実施形態および図5の実施形態の違いは、図4の調整可能レーザ源107の代わりに、図5の実施形態のレーザ源101が安定化されたHeNeレーザ等の固定周波数のレーザ源であることである。
【0059】
図4の実施形態に関して説明されたように、干渉計システム100の第1および第2測定ビームに周波数変化を導入することによって、第1光軸102および第2光軸104のサイクリックエラーが決定されうる。しかし、レーザ源101が固定周波数を有するレーザ源であるため、波長変化を取得するために第1および第2測定ビームに周波数変化を導入するためにこのレーザ源101は使用できない。
【0060】
周波数および波長の間の関係は次の通りである。
f = λ/(c・n)
ここで、fは放射ビームの周波数であり、λは波長であり、cは真空中の光速であり、nは各測定結果が伝わる媒体の屈折率である。この関係から、周波数fが変化すると波長λも変化することが分かる。
【0061】
第1および第2測定ビームに波長変化を導入するための代わりの方法は、第1および第2測定ビームが伝わる空間内の圧力を変えることである。図5の干渉計システム100の第1光軸102および第2光軸104は、圧力が圧力デバイス151によって制御されうる閉空間150内に設けられる。圧力デバイス151は、空気または他の媒体を閉空間150との間で流入または流出させることによって、閉空間150における圧力を制御してもよい。
【0062】
閉空間150における圧力を変えることは、閉空間150内の媒体の屈折率の変動をもたらす。「f = λ/(c・n)」の関係から、屈折率nの変化も、閉空間を通過する光の波長λの変化をもたらすことが分かる。
【0063】
図5の干渉計システムでは、キャリブレーション方法が次のステップを備える:
第1測定ビームを使用して第1光軸102に沿った第1測定値を測定するステップおよび第2測定ビームを使用して第2光軸104に沿った第2測定値を測定するステップと、
閉空間150における圧力を第1圧力レベルから第2圧力レベルに変えることによって、第1測定ビームおよび第2測定ビームの波長を変えるステップと、
変えられた波長を有する第1測定ビームを使用して第1光軸102に沿った第1測定値を更に測定するステップおよび変えられた波長を有する第2測定ビームを使用して第2光軸104に沿った第2測定値を更に測定するステップ。
一旦これらの測定が実行されると、図4の実施形態に関して説明されたように、第1測定値、第2測定値、更なる第1測定値および更なる第2測定値に基づいて、光学測定システムのサイクリックエラーが決定されうる。
【0064】
この方法の利点は、固定光路長および固定周波数のレーザ源を有する干渉計システムについてのサイクリックエラーが決定されうることである。更に、閉空間150における任意の円滑でない圧力変動について、干渉計システム100のサイクリックエラーを測定できる。
【0065】
記述された方法では、閉空間150における二つの圧力レベルでの測定が実行される。実際には、例えば、圧力デバイス151が適切な圧力範囲における圧力変化(増減)を生成しながら複数の測定を行うことによって、複数の更なる測定、例えば数百または数千の測定が異なる圧力レベルで適用されてもよい。
【0066】
図6は、本発明の実施形態に係る干渉計システム100の第3実施形態を示す。干渉計システム100は、リソグラフィ装置の投影システムPSの可動部等の可動体200の絶対位置を決定するように設けられる。可動体200は、リソグラフィ装置のマスクサポートまたは基板サポートでもよい。
【0067】
干渉計システム100は、固定周波数レーザ源101を備えるヘテロダイン干渉計システムである。固定周波数レーザ源101は、固定周波数を有する放射ビームを提供するように構成され、例えば安定化されたHeNeレーザ源である。
【0068】
干渉計システム100は、調整可能レーザデバイス107を更に備える。調整可能レーザデバイス107は、調整可能な光周波数を有する放射ビームを提供するように構成される。
【0069】
調整可能レーザ源107の放射ビームは、第1光軸102に沿って伝わる第1測定ビームおよび第2光軸104に沿って伝わる第2測定ビームを使用して、測定値を測定するために使用されうる。ここで、第1および第2測定ビームは、調整可能レーザ源107の放射ビームから生じたものである。同時に、固定周波数レーザ源101の放射ビームが、第1光軸102に沿って伝わる第1の更なる測定ビームおよび第2光軸104に沿って伝わる第2の更なる測定ビームを使用して、測定値を測定するために使用されうる。ここで、第1および第2の更なる測定ビームは、固定周波数レーザ源101の放射ビームから生じたものである。
【0070】
固定周波数レーザ源101および調整可能レーザ源107の組合せは、固定周波数レーザ源101および調整可能レーザ源107から生じた測定ビームを用いた同時測定による可動体200の絶対位置の決定、および、固定周波数レーザ源101から生じた測定ビームを用いた測定による可動体200の位置における後続の変化の決定を可能にする。しかし、これらの測定は、各光軸102、104のサイクリックエラーの影響を受ける可能性がある。従って、サイクリックエラーについての第1光軸102および第2光軸104のキャリブレーションおよびこれらのサイクリックエラーについての動作測定値の補償が望ましい。
【0071】
図4の実施形態に関して記述された方法に対応して、可動体200が安定位置に保持されている場合、干渉計システム100のサイクルエラーを決定するために、調整可能レーザ107の周波数変化が使用されうる。しかし、キャリブレーション測定中に可動体200の位置が変化する場合、これは第1光軸102の光路長L1を変化させる。サイクリックエラーについてのキャリブレーション測定は、このような光路長L1における変化によって影響され、これは干渉計システム100のサイクリックエラーの誤った演算をもたらす可能性がある。
【0072】
可動体200の移動による影響を補償するために、キャリブレーション測定と同時に、可動体レーザ源の位置における変化を測定するために、固定周波数レーザ源101が使用されうる。固定周波数レーザ源101の放射ビームから生じた更なる測定ビームを使用して測定される位置における変化は、例えば、干渉計システム100のサイクリックエラーを決定するために使用されるキャリブレーション測定中に可動体を安定位置に維持するように設けられる可動体200の位置コントロールに対する入力として使用されてもよい。
【0073】
代替的な実施形態では、補正されたキャリブレーション測定値を取得するために、処理ユニット106が、キャリブレーション測定中の可動体200の移動についてキャリブレーション測定値を補正するように構成されうる。これらの補正された測定値は、続いて干渉計システムのサイクリックエラーを決定するために使用されうる。
【0074】
このように、干渉計システム100のサイクリックエラーを演算するためのキャリブレーション測定中の可動体200の移動が防止または補償されうる。
【0075】
以上のように、干渉計システムのサイクリックエラーを決定するためのキャリブレーション方法が記述された。方法は、異なるが安定した光学長を有する二つの光軸に沿った測定に基づく。この際、測定ビームの波長における変化がこれらの測定について使用される。
【0076】
測定ビームを提供する調整可能レーザ源の周波数を調整することによって、または、測定ビームが伝わる空間内の圧力を変えることによって、測定ビームの波長が変えられてもよい。光軸の一方が可変光路長を有する場合、キャリブレーション測定中の光路長における変化は、固定周波数を有する第2レーザ源を用いた追加的な測定によって測定されうる。これらの追加的な測定は、光路長を安定化させるための各光軸における可動体の位置コントロールのために使用されうる、または、キャリブレーション測定が追加的な測定に基づいて補正されうる。このキャリブレーション方法の利点の一つは、各キャリブレーション測定間の波長の円滑度または最小変化率に関する要求によってキャリブレーション方法が制限されないことである。このため、方法が干渉計システムにおいてより容易に適用可能になる。
【0077】
本テキストにおいて、ICの製造におけるリソグラフィ装置の使用への具体的な参照がなされたかもしれないが、ここで記述されるリソグラフィ装置は他の用途を有してもよいと理解されるべきである。可能な他の用途は、集積光学システム、磁気ドメインメモリのためのガイダンスおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造を含む。
【0078】
本テキストにおいて、リソグラフィ装置の文脈における発明の実施形態への具体的な参照がなされたかもしれないが、発明の実施形態は他の装置において使用されてもよい。発明の実施形態は、マスク検査装置、計測装置、またはウェーハ(または他の基板)またはマスク(または他のパターニングデバイス)等のオブジェクトを測定または処理する任意の装置の一部を形成してもよい。これらの装置は、一般的にリソグラフィツールと表されてもよい。このようなリソグラフィツールは、真空条件または大気(非真空)条件を使用してもよい。
【0079】
光学リソグラフィの文脈における発明の実施形態の使用への具体的な参照がなされたかもしれないが、文脈が許す限り、発明は光学リソグラフィに限定されず、例えばインプリントリソグラフィ等の他の用途において使用されてもよいと理解される。
【0080】
文脈が許容する場合、発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはこれらの任意の組合せにおいて実施されてもよい。発明の実施形態は、一または複数のプロセッサによって読み出されて実行されてもよい、機械読取可能媒体に保存された命令として実施されてもよい。機械読取可能媒体は、装置(例えば、演算デバイス)によって読取可能な形態で情報を保存または送信するための任意のメカニズムを含んでもよい。例えば、機械読取可能媒体は、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ストレージメディア、光学ストレージメディア、フラッシュメモリデバイス、電気式、光学式、音響式または他の形態の伝送信号(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号等)等を含んでもよい。更に、ファームウェア、ソフトウェア、ルーティン、命令は、特定のアクションを実行するものとして記述されてもよい。但し、このような記述は単に便宜的なものであり、このようなアクションは実際には、ファームウェア、ソフトウェア、ルーティン、命令等を実行する演算デバイス、プロセッサ、コントローラ、または他のデバイスに起因すると理解されるべきである。そして、このことは、アクチュエータまたは他のデバイスに現実世界と相互作用させてもよい。
【0081】
具体的な発明の実施形態が前述されたが、発明は記述されたものと異なる態様で実施されてもよいと理解される。以上の記述は、例示を目的としており、限定する趣旨ではない。従って、以下の請求項の範囲から逸脱することなく、記述された発明に変更が加えられてもよいことは、当業者にとって明らかである。
図1
図2
図3
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図5
図6