(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】W1/O/W2型乳化調味料
(51)【国際特許分類】
A23L 27/60 20160101AFI20231030BHJP
【FI】
A23L27/60 A
(21)【出願番号】P 2023100279
(22)【出願日】2023-06-19
【審査請求日】2023-06-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼光 雄介
(72)【発明者】
【氏名】内田 依理加
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-153512(JP,A)
【文献】国際公開第2007/043678(WO,A1)
【文献】特開2020-129994(JP,A)
【文献】特開昭60-184366(JP,A)
【文献】特開2016-086745(JP,A)
【文献】味の素株式会社 NEWS RELEASE,2007年08月08日,インターネットURL<https://www.ajinomoto.com/jp/presscenter/press/detail
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L27/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内水相(W1)、油相(O)、及び外水相(W2)からなるW1/O/W2型乳化調味料であって、
前記油相(O)が、食用油脂を含有し、
前記食用油脂の含有量が、前記乳化調味料の全量に対して1質量%以上35質量%以下であり、
W1/O型乳化物の含有量が、前記乳化調味料の全量に対して
5質量%以上40質量%以下であり、
前記外水相(W2)に含まれるタンパク質の含有量が、前記食用油脂1質量部に対して0.060質量部以下であり、
前記外水相(W2)に含まれるタンパク質の含有量が、前記外水相(W2)の全量に対して3.0質量%以下であり、
粘度が、1.0Pa・s以上10Pa・s以下であることを特徴とする、
W1/O/W2型乳化調味料。
【請求項2】
W1/O型乳化物
の含有量が、前記乳化調味料の全量に対して
10質量%以上であることを特徴とする、
請求項1に記載のW1/O/W2型乳化調味料。
【請求項3】
前記外水相(W2)に含まれるタンパク質の含有量が、前記食用油脂1質量部に対して0.001質量部以上であることを特徴とする、
請求項1または2に記載のW1/O/W2型乳化調味料。
【請求項4】
前記外水相(W2)に含まれるタンパク質の含有量が、前記外水相(W2)の全量に対して0.01質量%以上であることを特徴とする、
請求項1または2に記載のW1/O/W2型乳化調味料。
【請求項5】
前記油相(O)が、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルをさらに含有することを特徴とする、
請求項1または2に記載のW1/O/W2型乳化調味料。
【請求項6】
前記外水相(W2)が、増粘剤をさらに含有することを特徴とする、
請求項1または2に記載のW1/O/W2型乳化調味料。
【請求項7】
前記増粘剤の含有量が、前記乳化調味料の全量体に対して、0.01質量%以上2.0質量%以下であることを特徴とする、
請求項6に記載のW1/O/W2型乳化調味料。
【請求項8】
前記外水相(W2)に含まれるタンパク質が、卵黄タンパク質、乳タンパク質、および大豆タンパク質からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、
請求項1または2に記載のW1/O/W2型乳化調味料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、W1/O/W2型乳化調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マヨネーズ等の乳化調味料において、健康志向の高まりから低カロリー化等の目的で、W1/O/W2型(水中油中水型)の乳化調味料が利用されている。特に、低カロリー化のために油の量を減らした乳化調味料が望まれているが、油の量を減らすと粘度が下がり、油のコクも感じにくくなるという問題があった。
【0003】
例えば、特許文献1では、食用油脂、増粘剤および食塩を含有するW/O/W型の乳化調味料であって、前記乳化調味料の水分含有量に対し、外水相の水分含有量の質量比が40/100~90/100であり、エステル化度が30%超、60%以下であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有し、粘度が4Pa・s以上、50Pa・s未満であり、前記食塩の含有量が1~6質量%であり、前記乳化調味料を構成するW/O/W型乳化粒子の平均粒子径が4~25μmである乳化調味料が提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、内水相(W1)形成用液及び外水相(W2)形成用液の各浸透圧、並びに、内水相(W1)形成用液及び外水相(W2)形成用液の各水分量等が、所定の関係を充足するよう調整することによって、十分なコクを有し、かつ安定性の高い、W1/O/W2型乳化物を製造することが記載されている。特に、実施例では、内水相(W1)形成用液および油相の合計量が、乳化物全量の48質量%~68質量%と多量であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-187906号公報
【文献】特開2021-153512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び2に記載のW1/O/W2型乳化調味料は、油のコク及びすっきりとした後味の観点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、油のコクを感じられ、かつ、すっきりとした後味を感じられるW1/O/W2型乳化調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、驚くべきことに、内水相(W1)、食用油脂を含有する油相(O)、及び外水相(W2)からなるW1/O/W2型乳化調味料において、食用油脂の含有量、W1/O型乳化物の含有量、外水相(W2)に含まれるタンパク質の含有量、及び粘度を調節することによって、上記課題を解決できることを知見した。本発明者等は、当該知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一態様によれば、以下の発明が提供される。
[1] 内水相(W1)、油相(O)、及び外水相(W2)からなるW1/O/W2型乳化調味料であって、
前記油相(O)が、食用油脂を含有し、
前記食用油脂の含有量が、前記乳化調味料の全量に対して1質量%以上35質量%以下であり、
W1/O型乳化物の含有量が、前記乳化調味料の全量に対して40質量%以下であり、
前記外水相(W2)に含まれるタンパク質の含有量が、前記食用油脂1質量部に対して0.060質量部以下であり、
前記外水相(W2)に含まれるタンパク質の含有量が、前記外水相(W2)の全量に対して3.0質量%以下であり、
粘度が1.0Pa・s以上10Pa・s以下であることを特徴とする、
W1/O/W2型乳化調味料。
[2] W1/O型乳化物が、前記乳化調味料の全量に対して5質量%以上であることを特徴とする、
[1]に記載のW1/O/W2型乳化調味料。
[3] 前記外水相(W2)に含まれるタンパク質の含有量が、前記食用油脂1質量部に対して0.001質量部以上であることを特徴とする、
[1]または[2]に記載のW1/O/W2型乳化調味料。
[4] 前記外水相(W2)に含まれるタンパク質の含有量が、前記外水相(W2)の全量に対して0.01質量%以上であることを特徴とする、
[1]~[3]のいずれかに記載のW1/O/W2型乳化調味料。
[5] 前記油相(O)が、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルをさらに含有することを特徴とする、
[1]~[4]のいずれかに記載のW1/O/W2型乳化調味料。
[6] 前記外水相(W2)が、増粘剤をさらに含有することを特徴とする、
[1]~[5]のいずれかに記載のW1/O/W2型乳化調味料。
[7] 前記増粘剤の含有量が、前記乳化調味料の全量体に対して、0.01質量%以上2.0質量%以下であることを特徴とする、
[6]に記載のW1/O/W2型乳化調味料。
[8] 前記外水相(W2)に含まれるタンパク質が、卵黄タンパク質、乳タンパク質、および大豆タンパク質からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、
[1]~[7]のいずれかに記載のW1/O/W2型乳化調味料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、油のコクを感じられ、かつ、すっきりとした後味を感じられるW1/O/W2型乳化調味料を提供することができる。このようなW1/O/W2型乳化調味料は消費者の食欲を惹起することができ、W1/O/W2型乳化調味料のさらなる市場拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<W1/O/W2型乳化調味料>
本発明のW1/O/W2型乳化調味料は、内水相(W1)、油相(O)、及び外水相(W2)からなる。詳細には、本発明のW1/O/W2型乳化調味料は、内水相(W1)が油相(O)中に分散し、乳化されたW1/O型乳化物を含み、当該W1/O型乳化物が外水相(W2)中に分散され、乳化されたものである。
【0012】
内水相(W1)及び外水相(W2)は、水、酸材、及び調味料等のその他の原料を含むことができる。また、外水相(W2)は、タンパク質を含むものであり、増粘剤をさらに含むことが好ましい。
油相(O)は、食用油脂を含むものであり、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR)をさらに含むことが好ましい。
【0013】
本発明のW1/O/W2型乳化調味料は、特に限定されず、マヨネーズ様調味料、ドレッシング、ソース、タレ、及びこれらに類する他の食品が挙げられる。これらの中でも、ドレッシングが好ましい。また、本発明のW1/O/W2型乳化調味料を、さらに別の調味料(マヨネーズや香味油)と混合してもよい。なお、本発明におけるマヨネーズ様調味料とは、食品表示基準で定めるマヨネーズ(水分含有量:30質量%以下、食用油脂含有量:65質量%以上)と類似の性状(例えば、味、外観、主原料等)を有しながら、成分組成が食品表示基準に合致しない類似商品群が含まれる。
【0014】
(W1/O/W2型乳化調味料の粘度)
W1/O/W2型乳化調味料は、25℃で測定した粘度が、1.0Pa・s以上10Pa・s以下であり、好ましくは1.5Pa・s以上であり、より好ましくは2.0Pa・s以上であり、さらに好ましくは2.5Pa・s以上であり、また、好ましくは9.0Pa・s以下であり、より好ましくは8.0Pa・s以下であり、さらに好ましくは7.0Pa・s以下であり、さらにより好ましくは4Pa・s未満である。
なお、W1/O/W2型乳化調味料の粘度は、BH型粘度計を用いて、品温25℃、回転数10 rpmの条件で、ローターNo.3を使用し、測定開始後ローターが2回転した時の示度により算出した値である。
【0015】
(W1/O/W2型乳化調味料のpH)
W1/O/W2型乳化調味料のpHは、特に限定されないが、下限値は好ましくは2.6以上であり、より好ましくは2.8以上であり、さらに好ましくは3.0以上であり、また、上限値は好ましくは6.0以下であり、より好ましくは5.5以下であり、さらに好ましくは5.0以下であり、さらにより好ましくは4.5以下であり、最も好ましくは4.0以下である。W1/O/W2型乳化調味料のpHが上記数値範囲内であれば、W1/O/W2型乳化調味料の微生物発生を制御して保存性を高めながら、W1/O/W2型乳化調味料の風味のバランスを良好にすることができる。本発明においては、酸材の種類や配合量を調節することで、W1/O/W2型乳化調味料のpHを上記の好適な数値範囲に調整することができる。なお、W1/O/W2型乳化調味料のpHの値は、1気圧、品温20℃とした時に、pH測定器(株式会社堀場製作所製卓上型pHメータF-72)を用いて測定した値である。
【0016】
(W1/O乳化物の含有量)
W1/O型乳化物の含有量は、W1/O/W2型乳化調味料の全量に対して40質量%以下であり、好ましくは39質量%以下であり、より好ましくは38質量%以下であり、また、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは12質量%以上である。W1/O/W2型乳化調味料中のW1/O型乳化物の含有量を上記の通り低くすることで、すっきりとした後味を感じることができる。
【0017】
(タンパク質)
外水相(W2)に用いるタンパク質は、特に限定されないが、例えば、卵黄タンパク質、乳タンパク質、および大豆タンパク質等が挙げられる。乳タンパク質としては、例えば、チーズ、バター、生クリーム、牛乳、乳清(ホエイ)、脱脂粉乳、及び乳脂肪等が挙げられる。これらの中でも、バター、生クリーム、牛乳、乳清(ホエイ)、脱脂粉乳、及び乳脂肪等が好ましい。外水相(W2)に含まれるタンパク質は、例えば卵黄、乳製品、及び大豆製品等の食材由来であってもよいし、タンパク質として別途添加したものであってもよい。これらの中でも卵黄を用いることが好ましい。
【0018】
卵黄は、特に限定されず従来公知の卵黄を用いることができる。卵黄としては、例えば、液卵黄や生卵黄、当該液卵黄や生卵黄に殺菌処理、冷凍処理、スプレードライ又はフリーズドライ等の乾燥処理、ホスホリパーゼA処理卵黄のようなホスホリパーゼA1またはホスホリパーゼA2による酵素処理、酵母又はグルコースオキシダーゼ等による脱糖処理、超臨界二酸化炭素処理等の脱コレステロール処理、食塩又は糖質等の混合処理等の1種又は2種以上の処理を施したもの等が挙げられる。
【0019】
(タンパク質の含有量及びその測定方法)
外水相(W2)に含まれるタンパク質の含有量は、食用油脂1質量部に対して0.060質量部以下であり、好ましくは0.050以下であり、より好ましくは0.040以下であり、さらに好ましくは0.020以下であり、さらにより好ましくは0.010以下であり、また、好ましくは0.001以上であり、より好ましくは0.0015以上であり、さらに好ましくは0.002以上である。
外水相(W2)に含まれるタンパク質の含有量が、外水相(W2)の全量に対して3.0質量%以下であり、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは2.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.5質量%以下であり、さらにより好ましくは1.0質量%以下であり、また、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.10質量%以上である。
また、外水相(W2)に含まれるタンパク質の含有量は、W1/O/W2型乳化調味料の全量に対して、好ましくは0.10質量%以上であり、より好ましくは0.15質量%以上であり、さらに好ましくは0.20質量%以上であり、また、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.8質量%以下であり、さらに好ましくは1.5質量%以下である。
本発明においては、外水相(W2)に含まれるタンパク質の含有量を、食用油脂に対して、かつ、外水相(W2)の全量に対して上記数値範囲内に調節することで、低粘度(25℃で10Pa・s以下)であっても、油のコクを感じられ、かつ、すっきりとした後味を感じられるW1/O/W2型乳化調味料の提供を提供することができる。さらに、外水相(W2)に含まれるタンパク質の含有量を、W1/O/W2型乳化調味料の全量に対して上記数値範囲内に調節することで、油のコクを強く感じられ、かつ、すっきりとした後味をとても感じられるW1/O/W2型乳化調味料の提供を提供することができる。
なお、本発明において、外水相(W2)に含まれるタンパク質の含有量は、日本食品成分表分析マニュアルに記載の方法に準拠して、外水相(W2)中のアミノ酸の総量及び遊離アミノ酸の量の分析を行い、アミノ酸の総量から遊離アミノ酸の量を除いたものをタンパク質の量として換算したものである。
【0020】
(食用油脂)
油相(O)に用いる食用油脂は、特に限定されず、従来公知の食用油脂を用いることができる。食用油脂としては、例えば、菜種油、大豆油、パーム油、綿実油、コーン油、ひまわり油、サフラワー油、胡麻油、オリーブ油、亜麻仁油、米油、椿油、荏胡麻油、グレープシードオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル等の植物油脂、魚油、牛脂、豚脂、鶏脂、又はMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油等のような化学的あるいは酵素的処理等を施して得られる油脂等を挙げることができる。これらの中でも、菜種油、大豆油、コーン油、パーム油、又はこれらの混合油を用いることが好ましい。
【0021】
食用油脂の含有量は、W1/O/W2型乳化調味料の全量に対して、1質量%以上35質量%以下であり、下限値は好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは4質量%以上であり、さらにより好ましくは5質量%以上であり、また、上限値は好ましくは33質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以下であり、さらにより好ましくは20質量%以下である。本発明においては、食用油脂の含有量が上記の通り低くても、油のコクを感じられ、かつ、すっきりとした後味を感じられるW1/O/W2型乳化調味料を提供することができる。
【0022】
(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR))
油相(O)に用いるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR)は、本発明のW1/O/W2型乳化調味料において乳化剤として機能し、食用油脂と共に油相(O)を形成する。PGPRとしては、食用として供されるものであれば、特に限定されず、従来公知のPGPRを用いることができる。
【0023】
PGPRの含有量は、W1/O/W2型乳化調味料の全量に対して、下限値は好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、さらにより好ましくは0.4質量%以上であり、また、上限値は好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは4.0質量%以下であり、さらに好ましくは3.0質量%以下であり、さらにより好ましくは2.0質量%以下である。PGPRの含有量が上記数値範囲内であれば、W1/O/W2型乳化調味料の乳化状態を維持し易くなる。
【0024】
(増粘剤)
外水相(W2)に用いる増粘剤は、特に限定されず従来公知の食品用の増粘剤を用いることができる。増粘剤としては、増粘剤としては、加工澱粉及び/又はガム類を用いることができる。加工澱粉としては、例えば、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉、及びリン酸化澱粉等が挙げられる。これらの加工澱粉の中でも、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉やオクテニルコハク酸澱粉ナトリウムを用いることが好ましい。ガム類としては、例えば、キサンタンガム、コンニャクガム、グアーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、及びアラビアガム等が上げられる。これらのガム類の中でも、キサンタンガムを用いることが好ましい。但し、ウェランガムを用いないことが好ましい。これらの増粘剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
増粘剤の含有量は、W1/O/W2型乳化調味料の全量に対して、下限値は好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、さらにより好ましくは0.2質量%以上であり、また、上限値は好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下であり、さらにより好ましくは0.8質量%以下である。増粘剤の含有量が上記数値範囲内であれば、W1/O/W2型乳化調味料の乳化状態を維持し易くなる。
【0026】
(酸材)
内水相(W1)及び外水相(W2)に用いる酸材は、特に限定されず、従来公知の食品用酸材を用いることができる。酸材としては、例えば、食酢(酢酸)、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ソルビン酸、安息香酸、アジピン酸、フマル酸、コハク酸等の有機酸及びそれらの塩、燐酸、塩酸等の無機酸及びそれらの塩、レモン果汁、リンゴ果汁、オレンジ果汁、乳酸発酵乳等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの酸材を配合することで、W1/O/W2型乳化調味料のpHを所望の数値範囲内に調節したり、W1/O/W2型乳化調味料の風味のバランスを良好にしたりすることができる。
【0027】
W1/O/W2型乳化調味料中の酸材の含有量は、酸材の種類や目的とするpHに応じて適宜調節することができる。例えば、酸材として食酢(酸度11%)を用いる場合、内水相(W1)及び外水相(W2)に含まれる食酢(酸度11%)の合計含有量は、W1/O/W2型乳化調味料の全量に対して、下限値は好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは4質量%以上であり、さらにより好ましくは5質量%以上であり、また、上限値は好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは12質量%以下であり、さらにより好ましくは10質量%以下である。食酢(酸度11%)の含有量が上記数値範囲内であれば、W1/O/W2型乳化調味料の微生物発生を制御して保存性を高めながら、W1/O/W2型乳化調味料本来の風味を維持し易くなる。
【0028】
(糖類)
本発明のW1/O/W2型乳化調味料には、糖類をさらに配合してもよい。糖類としては、例えば、ぶどう糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、オリゴ糖、トレハロース等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
糖類の含有量は、W1/O/W2型乳化調味料の全量に対して、下限値は好ましくは0質量%超であり、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であり、また、上限値は、好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。
さらに、内水相(W1)全体に対する内水相中の糖類の濃度をX(質量%)とし、外水相(W2)全体に対する外水相中の糖類の濃度をY(質量%)とした時の、X/Yの値が0.5以下であると好ましく、0.3であるとより好ましく、さらに0であること(すなわち、内水相が糖類を含まないこと)がより好ましい。
【0030】
(他の原料)
本発明のW1/O/W2型乳化調味料には、上述した原料以外に、本発明の効果を損なわない範囲で乳化調味料に通常用いられている各種原料を適宜選択し含有させることができる。例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤、醤油、みりん、食塩、白胡麻、茶胡麻、胡麻、グルタミン酸ナトリウム、ブイヨン等の調味料、からし粉、胡椒等の香辛料、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、静菌剤等が挙げられる。
【0031】
(具材)
具材としては、植物性の具材および動物性の具材のいずれでも用いることができる。植物性の具材としては、タマネギ、大根、人参、牛蒡、筍、キャベツ、白菜、セロリ、アスパラガス、ほうれん草、小松菜、青梗菜、トマト等の野菜、ジャガイモ、薩摩芋、里芋等の芋類、大豆、小豆、蚕豆、エンドウ豆等の豆類、米、麦、稗、粟等の穀類、リンゴ、モモ、パイナップル等の果実類、椎茸、シメジ、エノキ、ナメコ、松茸等のきのこ類、若布、昆布、ひじき等の海藻等を挙げることができる。また、動物性の具材としては、牛肉、豚肉、鳥肉、羊肉、馬肉、鹿肉、猪肉、山羊肉、兎肉、鯨肉、それらの内臓等の肉類や、鯵、鮎、鰯、鰹、鮭、鯖、鮪等の魚類、鮑、牡蠣、帆立、蛤等の貝類、エビ、カニ、イカ、タコ、ナマコ等の魚介類を挙げることができる。また、ゆで卵、卵焼き、オムレツ等の卵製品、蒲鉾等の練製品やハム・ソーセージ等の畜肉製品、麺類、漬物等の加工食品であってもよい。食用の食品製造原料または素材であれば、これらに限定されない。これらの具材は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
これらの具材は、生の状態で用いてもよいし、茹でる、煮る、焼く、蒸す、揚げる等の加熱・調理を行ったものを用いてもよい。また、これらの具材は、凍結あるいは凍結・解凍処理をしたものを用いることもできる。さらに、これらの具材の形状は、塊でも一口大でもいずれの形状であってもよく、具材の大きさは適宜選択することができる。
【0033】
<W1/O/W2型乳化調味料の製造方法>
本発明のW1/O/W2型乳化調味料の製造方法の一例について説明する。例えば、第1工程では、まず、清水、酸材、及び調味料等の他の水相原料を混合して、内水相(W1)を調製する。続いて、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等の乳化剤を含有させた食用油脂からなる油相(O)に、撹拌しながら、上記で調製した内水相(W1)を注加し、乳化処理を行って、W1/O型乳化物を調製する。撹拌条件及び乳化条件は特に限定されず、内水相(W1)及び油相(O)の組成等に応じて、適宜設定することができる。
【0034】
第2工程では、清水、タンパク質、酸材、及び調味料等の他の水相原料を混合して、外水相(W2)を調製する。続いて、外水相(W2)に、撹拌しながら、上記で調製したW1/O型乳化物を注加し、乳化処理を行って、W1/O/W2型乳化調味料を調製する。撹拌条件及び乳化条件は特に限定されず、W1/O型乳化物及び内水相(W2)の組成等に応じて、適宜設定することができる。
【0035】
本発明のW1/O/W2型乳化調味料の製造には、通常の乳化調味料の製造に使われる装置を用いることができる。このような装置としては、例えば、一般的な撹拌機、スティックミキサー、スタンドミキサー、ホモミキサー等が挙げられる。撹拌機の撹拌羽形状としては、例えばプロペラ翼、タービン翼、パドル翼、アンカー翼等が挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0037】
<W1/O/W2型乳化調味料の製造例>
[実施例1]
(第1工程)
表1に記載の配合割合に準じ、W1/O/W2型乳化調味料を製造した。
具体的には、まず、撹拌タンクに、醸造酢(酸度11%)、食塩、及び清水を均一になるように混合して、内水相(W1)を調製した。その後、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR)を含有させた食用油脂(菜種油)からなる油相(O)に、(12000rpm)の条件で撹拌しながら内水相(W1)を注加し、乳化処理を行って、W1/O型乳化物を調製した。
【0038】
(第2工程)
撹拌タンクに、卵黄(タンパク質の含有量16.5%)、醸造酢(酸度11%)、食塩、砂糖、増粘剤(キサンタンガム)、及び清水を均一になるように混合して、外水相(W2)を調製した。続いて、外水相(W2)に、(12000rpm)の条件で撹拌しながら上記で調製したW1/O型乳化物を注加し、乳化処理を行って、W1/O/W2型乳化調味料を調製した。
なお、「タンパク質の含有量」は、上記の(タンパク質の含有量及びその測定方法)の欄で詳述した方法により測定した値である。
【0039】
[実施例2]
第1工程において、食用油脂の配合量を15質量%に変更し、清水の配合量を10質量に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O型乳化物を調製した。
第2工程において、増粘剤の配合量を0.4質量%に変更し、清水の配合量を52.6質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O/W2型乳化調味料を調製した。
【0040】
[実施例3]
第1工程において、食用油脂の配合量を20質量%に変更し、清水の配合量を10質量に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O型乳化物を調製した。
第2工程において、卵黄の配合量を1質量%に変更し、増粘剤の配合量を0.33質量%に変更し、清水の配合量を47.17質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O/W2型乳化調味料を調製した。
【0041】
[実施例4]
第1工程において、食用油脂の配合量を25質量%に変更し、清水の配合量を10質量に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O型乳化物を調製した。
第2工程において、増粘剤の配合量を0.24質量%に変更し、清水の配合量を42.76質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O/W2型乳化調味料を調製した。
【0042】
[実施例5]
第1工程において、食用油脂の配合量を20質量%に変更し、清水の配合量を15質量に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O型乳化物を調製した。
第2工程において、卵黄の配合量を0.18質量%に変更し、食塩の配合量を2.52質量%に変更し、増粘剤の配合量を0.3質量%に変更し、清水の配合量を43質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O/W2型乳化調味料を調製した。
【0043】
[実施例6]
第1工程において、食用油脂の配合量を20質量%に変更し、清水の配合量を10質量に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O型乳化物を調製した。
第2工程において、卵黄を配合せずに、乳タンパク質(乳清等、タンパク質の含有量86.4%)を0.5質量%配合し、増粘剤の配合量を0.3質量%に変更し、清水の配合量を47.7質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O/W2型乳化調味料を調製した。
【0044】
[実施例7]
第1工程において、食用油脂の配合量を30質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O型乳化物を調製した。
第2工程において、卵黄を配合せずに、乳タンパク質(タンパク質の含有量86.4%)を2質量%配合し、増粘剤の配合量を0.2質量%に変更し、清水の配合量を41.3質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O/W2型乳化調味料を調製した。
【0045】
[実施例8]
第1工程において、食用油脂の配合量を20質量%に変更し、清水の配合量を10質量に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O型乳化物を調製した。
第2工程において、卵黄を配合せずに、大豆タンパク質(タンパク質の含有量86.3%)を0.1質量%配合し、増粘剤の配合量を0.3質量%に変更し、清水の配合量を48.1質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O/W2型乳化調味料を調製した。
【0046】
[実施例9]
第1工程において、食用油脂の配合量を20質量%に変更し、清水の配合量を10質量に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O型乳化物を調製した。
第2工程において、卵黄を配合せずに、大豆タンパク質(タンパク質の含有量86.3%)を0.3質量%配合し、増粘剤の配合量を0.3質量%に変更し、清水の配合量を47.9質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O/W2型乳化調味料を調製した。
【0047】
[実施例10]
第1工程において、食用油脂の配合量を30質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O型乳化物を調製した。
第2工程において、卵黄の配合量を0.25質量%に変更し、さらに乳タンパク質(タンパク質の含有量86.4%)を0.25質量%配合し、増粘剤の配合量を0.2質量%に変更し、清水の配合量を42.8質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O/W2型乳化調味料を調製した。
【0048】
[実施例11]
第1工程において、食用油脂の配合量を30質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O型乳化物を調製した。
第2工程において、卵黄の配合量を2.5質量%に変更し、さらに大豆タンパク質(タンパク質の含有量86.3%)を0.1質量%配合し、増粘剤の配合量を0.2質量%に変更し、清水の配合量を40.7質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O/W2型乳化調味料を調製した。
【0049】
[実施例12]
第1工程において、食用油脂の配合量を30質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O型乳化物を調製した。
第2工程において、卵黄の配合量を2.5質量%に変更し、さらに大豆タンパク質(タンパク質の含有量86.3%)を0.3質量%配合し、増粘剤の配合量を0.2質量%に変更し、清水の配合量を40.5質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O/W2型乳化調味料を調製した。
【0050】
[比較例1]
第1工程において、食用油脂の配合量を20質量%に変更し、PGPRの配合量を2質量%に変更し、清水の配合量を17質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O型乳化物を調製した。
第2工程において、卵黄の配合量を15質量%に変更し、増粘剤を配合せずし、清水の配合量を25.0質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O/W2型乳化調味料を調製した。
【0051】
[比較例2]
第1工程において、食用油脂の配合量を20質量%に変更し、清水の配合量を10質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O型乳化物を調製した。
第2工程において、卵黄を配合せず、大豆タンパク質(タンパク質の含有量86.3%)を2.2質量%配合し、増粘剤の配合量を0.3質量%に変更し、清水の配合量を46質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、W1/O/W2型乳化調味料を調製した。
【0052】
(粘度の測定)
上記で調製した各W1/O/W2型乳化調味料について、BH形粘度計を使用し、品温25℃、回転数10rpmの条件で、ローターNo.3を使用し、測定開始後ローターが2回転した時の示度により算出した。測定結果を表1に示した。
【0053】
(pHの測定)
上記で調製した各W1/O/W2型乳化調味料について、1気圧、品温20℃とした時に、pH測定器(株式会社堀場製作所製卓上型pHメータF-72)を用いてpHを測定した。各水中油型乳化食品のpHは2.85~3.86の範囲内であった。
【0054】
(官能評価)
上記で調製した各W1/O/W2型乳化調味料について、複数の訓練されたパネルより、下記の4段階の評価基準で、「油のコク」及び「すっきりとした後味」の各項目を評価した。各パネルの点数の平均値を評価点として表1に示した。「油のコク」及び「すっきりとした後味」の評価点がともに2.0点以上であれば、良好な結果であると言える。
[評価基準]
(油のコク)
4点:油のコクを強く感じた。
3点:油のコクを感じた。
2点:油のコクを少し感じた。
1点:油のコクをほとんど感じなかった。
(すっきりとした後味)
4点:すっきりとした後味をとても感じた。
3点:すっきりとした後味を感じた。
2点:すっきりとした後味をやや感じた。
1点:すっきりとした後味を感じなかった。
【0055】
実施例1~12のW1/O/W2型乳化調味料はいずれも、油のコクを感じられ、かつ、すっきりとした後味を感じられた。
比較例1のW1/O/W2型乳化調味料は、W1/O型乳化物の含有量が多かったため、すっきりとした後味を感じなかった。
比較例2のW1/O/W2型乳化調味料は、外水相(W2)に含まれるタンパク質の含有量が食用油脂に対して多かったため、すっきりとした後味を感じなかった。
【0056】
【要約】
【課題】油のコクを感じられ、かつ、すっきりとした後味を感じられるW1/O/W2型乳化調味料の提供。
【解決手段】本発明は、内水相(W1)、油相(O)、及び外水相(W2)からなるW1/O/W2型乳化調味料であって、前記油相(O)が、食用油脂を含有し、前記食用油脂の含有量が、前記乳化調味料の全量に対して1質量%以上35質量%以下であり、W1/O型乳化物の含有量が、前記乳化調味料の全量に対して40質量%以下であり、前記外水相(W2)に含まれるタンパク質の含有量が、前記食用油脂1質量部に対して0.060質量部以下であり、前記外水相(W2)に含まれるタンパク質の含有量が、前記外水相(W2)の全量に対して3.0質量%以下であり、粘度が1.0Pa・s以上10Pa・s以下であることを特徴とする。
【選択図】なし