(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】分離膜モジュール
(51)【国際特許分類】
B01D 63/06 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
B01D63/06
(21)【出願番号】P 2019046155
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】野口 直樹
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-246064(JP,A)
【文献】特開2015-016439(JP,A)
【文献】特開昭47-035184(JP,A)
【文献】米国特許第03022858(US,A)
【文献】実開昭55-122802(JP,U)
【文献】特開平05-309240(JP,A)
【文献】特開2016-155093(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0000404(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00 - 71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジングと、
該ハウジング内に該ハウジングの長手方向に配置された複数の管状分離膜とを有し、
該管状分離膜は管状の多孔質支持体と、該多孔質支持体の表面に形成された無機分離膜を有し、
被処理流体が該ハウジングの被処理流体室内を一端側から他端側に流れ、管状分離膜を透過した流体が該管状分離膜を通って取り出される分離膜モジュールであって、
該管状分離膜の一端部は、前記ハウジングを横断するように設置された支持部材に支持されている分離膜モジュールにおいて、
該被処理流体室の内周面に沿って、該被処理流体室内のスペースを減容させる減容部材を設けており、
前記ハウジング内に配置された1対のバッフル同士の間が前記被処理流体室となっており、
該減容部材は、該1対のバッフルによって挟まれている
ことを特徴とする分離膜モジュール。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記被処理流体の流入口を備えており、該被処理流体の流入口は、一方の前記バッフルを挟んで該被処理流体室と反対側に位置する、請求項1に記載の分離膜モジュール。
【請求項3】
前記支持部材が、前記被処理流体室の外側に設けられている、請求項1または2に記載の分離膜モジュール。
【請求項4】
前記支持部材に設けられた、前記管状分離膜内が連通した集合室と、
該集合室内の流体を前記ハウジング外に取り出す取出部材と、
該支持部材とハウジングの端部との間に形成された背圧室とをさらに備え、
前記支持部材の外周面と前記ハウジングの内周面との間の間隙を介して該背圧室内と前記被処理流体室とが連通していることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の分離膜モジュール。
【請求項5】
前記支持部材及びそれに連なる前記管状分離膜を有した管状分離膜ユニットが複数個前記ハウジング内に配置されており、最も前記背圧室側に配置された管状分離膜ユニットの前記集合室と、その他の管状分離膜ユニットの集合室内とが接続部材によって連通されていることを特徴とする請求項4に記載の分離膜モジュール。
【請求項6】
前記接続部材は、前記支持部材から延設されたノズルであることを特徴とする請求項5に記載の分離膜モジュール。
【請求項7】
前記ノズルは、各支持部材からそれぞれ延設され、隣接する管状分離膜ユニットのノズル同士が連結されていることを特徴とする請求項6に記載の分離膜モジュール。
【請求項8】
前記ハウジングは円筒形であり、前記減容部材は、前記被処理流体室の内周面に沿った円筒状であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の分離膜モジュール。
【請求項9】
前記減容部材は、2個の半円筒形減容部材半体を組み合わせて円筒状としたものであることを特徴とする請求項8に記載の分離膜モジュール。
【請求項10】
前記減容部材は、前記被処理流体室の軸心線方向と平行方向に延在する棒状であり、該被処理流体室の内周面に沿って周方向に配列されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の分離膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶液や混合気体等の流体から一部の成分を分離するために用いられる分離膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
溶液又は混合気体中の成分を分離するための機器として分離膜モジュールが知られている。この分離膜モジュールに用いる管状分離膜は、管状の多孔質支持体と、該支持体の外周面に設けられたゼオライト等からなる多孔質の分離膜とを有する。溶液や混合気体等の流体から特定の成分を分離するためには、溶液の流体を分離膜エレメントの一方(外面)に接触させて、もう一方(内面)を減圧することにより、特定の成分を気化させ分離する方法や、溶液を気化させて気体状態で分離膜に接触させて、非接触面側を減圧して特定成分を分離する方法、加圧状態の混合気体を分離膜に接触させて特定の成分を分離する方法などが知られている。
【0003】
特許文献1(特にその
図6(a))に、上下方向に配置された筒状のハウジングと、該ハウジング内に上下方向に配置された複数の管状分離膜とを有し、該管状分離膜の下端部にエンド管が接続され、該エンド管は、前記ハウジングを横断するように設置された支持板の上面から突出しており、該支持板の上面に差込穴が設けられ、前記エンド管が該差込穴に差し込まれている分離膜モジュールが記載されている。
【0004】
管状分離膜を透過した気体は、支持板の下側の流出室に流れ込み、該流出室から流出口を経て取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、支持板の上側の被処理流体室内のデッドスペースを減容させた分離膜モジュールを提供することを目的とする。
【0007】
管状分離膜の下端に接続されたエンド管を支持板の差込穴に差し込み、エンド管を支持凾に支持させた特許文献1の構造にあっては、支持板の下側の流出室内の圧力が支持板の上側の被処理気体室内の圧力に比べて低いので、支持板に大きな曲げ荷重が加えられる。
【0008】
本発明は、その一態様において、管状分離膜の一端を支持する支持部材に加えられる曲げ荷重が軽減されると共に、支持部材の外周面とハウジング内周面との間のシール部材を省略することができる分離膜モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の分離膜モジュールは、筒状のハウジングと、該ハウジング内に該ハウジングの長手方向に配置された複数の管状分離膜とを有し、被処理流体が該ハウジングの被処理流体室内を一端側から他端側に流れ、管状分離膜を透過した流体が該管状分離膜を通って取り出される分離膜モジュールであって、該管状分離膜の一端部は、前記ハウジングを横断するように設置された支持部材に支持されている分離膜モジュールにおいて、該被処理流体室の内周面に沿って、該被処理流体室内のスペースを減容させる減容部材を設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様では、前記支持部材に設けられた、前記管状分離膜内が連通した集合室と、該集合室内の流体を前記ハウジング外に取り出す取出部材と、該支持部材とハウジングの端部との間に形成された背圧室とをさらに備え、前記支持部材の外周面と前記ハウジングの内周面との間の間隙を介して該背圧室内と前記被処理流体室とが連通している。
【0011】
本発明の一態様では、前記支持部材及びそれに連なる前記管状分離膜を有した管状分離膜ユニットが複数個前記ハウジング内に配置されており、最も前記背圧室側に配置された管状分離膜ユニットの前記集合室と、その他の管状分離膜ユニットの集合室内とが接続部材によって連通されている。
【0012】
本発明の一態様では、前記接続部材は、前記支持部材から延設されたノズルである。
【0013】
本発明の一態様では、前記ノズルは、各支持部材からそれぞれ延設され、隣接する管状分離膜ユニットのノズル同士が連結されている。
【0014】
本発明の一態様では、前記ハウジングは円筒形であり、前記減容部材は、前記被処理流体室の内周面に沿って周回する円筒状である。
【0015】
本発明の一態様では、前記減容部材は、2個の半円筒形減容部材半体を組み合わせて円筒状としたものである。
【0016】
本発明の一態様では、前記減容部材は、前記被処理流体室の軸心線方向と平行方向に延在する棒状であり、該被処理流体室の内周面に沿って周方向に配列されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の分離膜モジュールでは、被処理流体室内に、ハウジング内周面に沿って減容部材を設けているので、該内周面に沿う被処理流体室内のデッドスペースを減容することができる。
【0018】
本発明の一態様の分離膜モジュールでは、支持部材とハウジング端部との間に背圧室が設けられ、この背圧室が被処理流体室に連通しているので、背圧室内と被処理流体室とが略等圧となる。このため、支持部材に対して加えられる被処理流体圧による曲げ荷重がなくなるか、又は著しく小さくなる。また、本発明の一態様では、支持部材の外周面と背圧室の内周面との間にシール部材を設けることが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態に係る分離膜モジュールのハウジング軸心線方向に沿う断面図である。
【
図3】(a)は
図2のIIIa部分の拡大図、(b)は
図2のIIIb部分の拡大図である。
【
図6】別の実施の形態に係る分離膜モジュールの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1~5を参照して、本発明の一実施の形態に係る分離膜モジュールについて説明する。
【0021】
この分離膜モジュール1は、筒軸心方向を上下方向とした円筒状ハウジング2と、ハウジング2内に設けられた複数(この実施の形態では2個)の管状分離膜ユニット30,31と、ハウジング2の下端に取り付けられたボトムカバー6A及び上端に取り付けられたトップカバー6B等を有する。この分離膜モジュール1はハウジング2内に複数の管状分離膜ユニットを有するが、1つの分離膜モジュールに必ずしも複数の管状分離膜ユニットを有する必要はなく、1つの分離膜モジュールに1つの管状分離膜ユニットを有するものであってもよい。
【0022】
この実施の形態では、ハウジング2の下端及び上端側とボトムカバー6A及びトップカバー6Bの外周縁にそれぞれ外向きのフランジ2a,2b,6b,6cが設けられ、ボルト(図示略)によってこれらが固定されている。
【0023】
管状分離膜ユニット30,31は、ハウジング2の軸心線と平行方向に配置された複数の管状分離膜3と、ハウジング2内の下部に設けられた支持部材としての支持凾5と、それぞれ水平に配置された第1のバッフル(整流板)7及び第2のバッフル(整流板)8等を有する。
【0024】
各管状分離膜ユニット30,31において、バッフル7,8間が被処理流体室40となっている。各被処理流体室40において、ハウジング2の内周面に沿って減容部材50が設けられている。各管状分離膜ユニット30,31の第1のバッフル7は支持凾5の上面に対面するように配置されている。
【0025】
支持凾5の外周面とハウジング2の内周面との間には気体流通可能な間隙があいている。下側の管状分離膜ユニット31の支持凾5は、ハウジング2の内周面から突設された複数の突部2t上に載置されている。この支持凾5とボトムカバー6Aとの間は背圧室16となっている。この背圧室16は、支持凾5の外周面とハウジング2の内周面との間の間隙を介して支持凾5の上側の室11に連通している。
【0026】
この実施の形態では、管状分離膜3の下端にエンド管4が連結されている。管状分離膜3の上端にエンドプラグ20が連結されている。
【0027】
図1~5では、管状分離膜3は一本物となっているが、複数本、例えば2本の管状分離膜3がジョイント管を介して連結されてもよい。
【0028】
上側の管状分離膜ユニット30は、支持凾5、エンド管4、管状分離膜3、エンドプラグ20、バッフル7,8及びロッド14よりなるものである。
【0029】
下側の管状分離膜ユニット31は、上側の管状分離膜ユニット30とほぼ同一であるが、支持凾5の天面5tの中央から接続部材としての連通ノズル6iが上方に延設されている点が異なる。該連通ノズル6iの上端は、管状分離膜ユニット31のバッフル8よりも上方に延出しており、その上端が上側の管状分離膜ユニット30のノズル5nの下端にねじ込み式結合やフランジ結合等(この実施の形態ではフランジ結合)より連結されている。
【0030】
管状分離膜ユニット30,31の支持凾5の外周面とハウジング2の内周面との間には、各支持凾5の上側の室と下側の室とを連通する、気体流通可能な間隙があいている。
【0031】
減容部材50は円筒状や略円筒状が好ましく、その外径はハウジング2の内径よりも若干小さくなっている。減容部材30は
図8に示すように、2個の半円筒形減容部材半体を組み合わせて円筒状のものにしたものであってもよいし、2個に限らず複数個を組み合わせてもよい。減容部材50は
図9に示すように棒状のものを円筒状に配列したものであってもよい。
減容部材50は、バッフル7,8によって挟まれている。減容部材50の外周面とハウジング2の内周面との間にリング状のシール部材51が介在されている。シール部材を設置する場所は、1か所でも複数個所でもよい。
尚、減容部材の素材は金属、セラミックス、合成樹脂が好適である。
【0032】
ハウジング2の下部の外周面に被処理流体の流入口9が設けられ、上部の外周面に被処理流体の流出口10が設けられている。流入口9は、最下位の管状分離膜ユニット31の支持凾5と第1のバッフル7との間の室11に臨むように設けられている。最上位の管状分離膜ユニット30の流出口10は、第2のバッフル8の上側の室12に臨むように設けられている。
【0033】
各支持凾5から複数のロッド14が立設され、該ロッド14にバッフル7,8が支持されている。
図4,5ではロッド14は4本設けられているが、これに限らず、例えば2~3本又は5本以上でもよい。ロッド14の固定の一態様としては、下端には雄ねじが刻設されており、支持凾5の上面の雌ねじ穴に螺着されている。バッフル7,8はロッド14に外嵌された鞘管14A,14B(
図3)によって所定高さに支持されている。鞘管14Aは、支持凾5とバッフル7との間に配置されている。鞘管14Bは、バッフル7,8間に配置されている。バッフル8は、鞘管14Bの上端面に載設され、ロッド14の上端に螺着されたナット14Nによって固定されている。
【0034】
バッフル7,8の外周面とハウジング2の内周面との間には、Oリング、Vパッキン、Cリングなどのシール部材が介在され、ハウジング2の外周部を優先的にガスが流れないようにしてもよい。
【0035】
各バッフル7,8には、管状分離膜3を挿通させるための円形の挿通孔7a,8aが設けられており、管状分離膜3、エンド管4及びエンドプラグ20の連結体が各挿通孔7a,8aに挿通されている。挿通孔7a,8aの口径は、管状分離膜3、エンド管4及びエンドプラグ20の直径(外径)よりも大きく、挿通孔7a,8aの内周面と、エンド管4及びエンドプラグ20の外周面との間に全周にわたって間隙があいている。
【0036】
支持凾5は、
図3に拡大して示す通り、天面5t、底面5s及び側面5uを有した凾体よりなり、内部が気体の集合室5vとなっている。底面5sからは、集合室5v内の気体を流出させるノズル5nが下方に突設されている。最下位の管状分離膜ユニット31のノズル5nにフランジ結合等によって連結された取出部材としての取出ノズル6nがボトムカバー6Aを貫通して設けられている。
【0037】
下側の管状分離膜ユニット31の支持凾5を載置する突部2tを省略し、ボトムカバー6Aから支柱(図示略)を立ち上げ、支持凾5を該支柱で支持するようにしてもよい。
【0038】
支持凾5の天面5tの上面には、管状分離膜3に連結されたエンド管4の下端が差し込まれた差込穴5aが設けられている。差込穴5aは、円柱形であり、支持凾5の上面から厚み方向の途中まで延在している。差込穴5aの穴底は、小孔5bと大孔5c(もしくは大孔5cがなく小孔5bのみでもよい)とを介して集合室5vに臨んでいる。
【0039】
エンド管4の下端面と差込穴5aの底面との間にガスケット(図示略)が介在されている。もしくは、エンド管4側面と差し込み穴5aの側面の間にOリング(図示略)が介在されている。もしくは、エンド管4と支持凾5を溶接してシールしてもよい。
【0040】
図3に示す通り、各エンド管4の管孔4aは、小孔5b及び大孔5cを介して集合室5vに連通している。エンド管4と管状分離膜3の接続部は、ガスケット、Oリング、あるいは熱収縮チューブを用いることでシールされている。
【0041】
管状分離膜3の上端にエンドプラグ20が連結されている。エンドプラグ20は円柱状またはこれの一部を削った形状であり、管状分離膜3の上端を封止している。エンドプラグ20の下端には、管状分離膜3内に差し込まれた小径部が設けられている。エンドプラグ20と管状分離膜3との間はガスケットやOリングによってシールされている。図示は省略するが、エンドプラグ20と管状分離膜3間は、熱収縮チューブを用いることでシールされてもよい。
【0042】
なお、本発明では、エンド管4及び支持凾5を管状分離膜3の上端側に配置し、エンドプラグ20を管状分離膜3の下端側に配置してもよい。
【0043】
この分離膜モジュール1において、被処理流体は流入口9からハウジング2の室11内に導入され、管状分離膜ユニット31のバッフル7の挿通孔7aの内周面とエンド管4の外周面との間の間隙を通って被処理流体室40に流入し、被処理流体室40を通った後、上側の管状分離膜ユニット30の支持凾5の側周面とハウジング2の内周面との間を通り、管状分離膜ユニット30の管状分離膜ユニット31のバッフル7の挿通孔7aの内周面とエンド管4の外周面との間の間隙を通って被処理流体室40に流入し、被処理流体室40を通った後、管状分離膜ユニット30のバッフル8の挿通孔8aとエンドプラグ20との間隙を通って室12に流出する。被処理流体室40を流れる間に被処理流体の特定成分が管状分離膜3を透過して管状分離膜3内から集合室5v及び6vから、それぞれノズル5n,6nを介して透過流体として取り出される。透過しなかった流体は、流出口10から分離膜モジュール1外に流出する。
【0044】
下側の管状分離膜ユニット31の各管状分離膜3を透過した気体は、該管状分離膜ユニット31の支持凾5内の集合室5vに流入し、ノズル5n,6nを介して取り出される。上側の管状分離膜ユニット30の各管状分離膜3を透過した気体は、該管状分離膜ユニット30の支持凾5の集合室6vに流入し、ノズル5n,6iを介して下側の管状分離膜ユニット31の支持凾5内の集合室5vに流入し、ノズル5n,6nを介して取り出される。
【0045】
この実施の形態では、支持凾5の外周面とハウジング2の内周面との間の間隙を介して背圧室16内と室11内とが連通し、両室内の圧力差がないか又は極く小さなものとなっているので、支持凾5に加えられる曲げ荷重が著しく小さい。また、支持凾5の外周面とハウジング2の内周面との間をシールする部材が不要である。
【0046】
この実施の形態では、支持凾5の外周面とハウジング2の内周面との間に間隙を設けており、ハウジング2の内周面近傍では管状分離膜3が存在しない。しかしながら、被処理流体室40内にハウジング2の内周面に沿って減容部材50を設置しているので、ハウジング2の内周面に沿って被処理流体が短絡的に流れることが防止され、被処理流体と管状分離膜3との接触効率が向上し、分離効率が向上する。
【0047】
被処理流体室40内の流れと管状分離膜3内の流れは並流であっても、向流であっても差し支えなく、被処理流体の流入口9と流出口10とは入れ替えても差し支えない。
【0048】
分離膜モジュール1は、
図1のようにトップカバー6B側を上にして使用してもよく、またボトムカバー6A側を上にして使用しても差し支えない。また、ボトムカバー6Aとトップカバー6Bを結ぶ方向が略水平方向となるように、分離膜モジュール1を横置きに設置して使用しても差し支えない。また、管状分離膜3が、運搬時や運転時に振動してダメージを受けにくくするため、エンドプラグ20をバネで抑えるなどの制振装置を付加することが望ましい。
【0049】
この実施の形態では、管状分離膜3を平行に多数本配列設置しており、膜面積が大きいので、効率良く膜分離が行われる。
【0050】
この実施の形態では、管状分離膜3の上下両端に連結されたエンド管4とエンドプラグ20がそれぞれバッフル7,8の挿通孔7a,8aに差し込まれている。そのため、管状分離膜3が振動ないし揺動してエンド管4及びエンドプラグ20が挿通孔7a,8aの内周面に当接してもゼオライト膜が損傷することがなく、長期にわたって安定して運転を行うことができる。
【0051】
この分離膜モジュール1にあっては、ハウジング2の長さを大きくし、複数の管状分離膜ユニットをハウジング2内に配置することができる。
図1~5では、管状分離膜ユニット30,31が1個ずつ図示されているが、複数の管状分離膜ユニット31を上下多段に配置して連結し、最上部に管状分離膜ユニット30を連結する構成としてもよい。または、管状分離膜ユニット31のみを複数上下多段に配置して連結し、最上段の管状分離膜ユニット31のノズル6iをキャップやフランジ等でシールする構造としてもよい。これにより、同一構造のユニットのみで構成することができ、コストの低減を図ることができる。
【0052】
上記実施の形態では、バッフル8は1枚の板状となっているが、
図6,7のように、バッフルロワー8Aとバッフルアッパー8Bとの2枚の板材を重ね合わせた構成としてもよい。バッフルロワー8Aはバッフルアッパー8Bよりも直径が小さい。バッフルアッパー8Bの直径は、ハウジング2の内径よりもごく僅かに小さいものとなっている。バッフルアッパー8Bの外周縁の下面には、環状凸部8eが周回して設けられており、この環状凸部8eの内側の凹所8fにバッフルロワー8Aが内嵌している。
【0053】
バッフルロワー8Aとバッフルアッパー8Bとには、これらを厚み方向に貫通するように前記開口8aと前記ロッド14の挿通孔8dとが設けられている。減容部材50は環状凸部8eの下面に当接している。
【0054】
図6の分離膜モジュール1Aのその他の構成は前記分離膜モジュール1と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0055】
上記実施の形態では、減容部材50は全体として一体の円筒状となっているが、
図8の減容部材60のように半割円筒体61,61を組み合わせて円筒状としたものであってもよい。
【0056】
図9に示すように、ハウジング2の軸心線方向と平行方向に延在する多数の棒状体71を、ハウジング2の内周面に沿って配列した減容部材70としてもよい。棒状体71は中空であってもよく、中空パイプ状であってもよい。パイプ状の場合、少なくとも一端を閉鎖する方が好ましい。棒状体71の外径は、管状分離膜3の外径と同じにする必要はなく、管状分離膜3の最外とハウジング2の隙間に応じて選択すればよい。棒状体71を複数本設置する場合、全て同じ外径にしてもよいし、異なる外径を持つ棒状体を設置してもよい。
尚、管状膜分離ユニット31の組立は、例えば、鉛直に配した支持凾5に、エンド管4/ノズル6i/ロッド14を設置する。続いて、ロッド14下部を装着しバッフル7を設置する。次にロッド14上部を装着後、上端にバッフル8fをセットする。次いで、管状分離膜3をエンド管4に挿入する。管状分離膜3の上端にはバッフル8fの開口部を介してエンド管20を挿入する。その後、減容部材50を装着し、バッフル8eをセットし、ナット14Nを締め付ける。その後、ノズル6iの端部にフランジを設置して管状分離膜ユニット31を組み上げる。複数の管状分離膜ユニットを連結して使用する場合は、組みあがったユニットをハウジング2に従事挿入して使用する。
【0057】
以下、本発明の分離膜モジュールを構成するエンド管4、エンドプラグ20及び管状分離膜3の好適な材料等について説明する。
【0058】
エンド管4及びエンドプラグ20の材料としては金属、セラミックスなど、流体を透過させないものが例示されるが、これに限定されない。バッフル7,8,51及びジョイント管17の材質は、通常、ステンレスなどの金属材料であるが、分離条件における耐熱性と供給、透過成分に対する耐性があれば特に限定されず、用途によっては、樹脂材料など他の材質に変更可能である。
【0059】
管状分離膜3は、好ましくは、管状の多孔質支持体と、該多孔質支持体の外周面に形成された無機分離膜としてのゼオライト膜とを有する。この管状の多孔質支持体の材質としては、シリカ、α-アルミナ、γ-アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などを含むセラミックス焼結体や金属焼結体の無機多孔質支持体が挙げられる。その中でもアルミナ、シリカ、ムライトのうち少なくとも1種を含む無機多孔質支持体が好ましい。多孔質支持体表面が有する平均細孔径は特に制限されるものではないが、細孔径が制御されているものが好ましく、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上であり、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下の範囲が好ましい。
【0060】
多孔質支持体の表面においてゼオライトを結晶化させゼオライト膜を形成させる。
ゼオライト膜を構成する主たるゼオライトは、通常、酸素6-10員環構造を有するゼオライトを含み、好ましくは酸素6-8員環構造を有するゼオライトを含む。
【0061】
ここでいう酸素n員環を有するゼオライトのnの値は、ゼオライト骨格を形成する酸素とT元素で構成される細孔の中で最も酸素の数が大きいものを示す。例えば、MOR型ゼオライトのように酸素12員環と8員環の細孔が存在する場合は、酸素12員環のゼオライトとみなす。
【0062】
酸素6-10員環構造を有するゼオライトの一例を挙げれば、AEI、AEL、AFG、ANA、BRE、CAS、CDO、CHA、DAC、DDR、DOH、EAB、EPI、ESV、EUO、FAR、FRA、FER、GIS、GIU、GOO、HEU、IMF、ITE、ITH、KFI、LEV、LIO、LOS、LTN、MAR、MEP、MER、MEL、MFI、MFS、MON、MSO、MTF、MTN、MTT、MWW、NAT、NES、NON、PAU、PHI、RHO、RRO、RTE、RTH、RUT、SGT、SOD、STF、STI、STT、TER、TOL、TON、TSC、TUN、UFI、VNI、VSV、WEI、YUG等がある。
【0063】
ゼオライト膜は、ゼオライトが単独で膜となったものでも、前記ゼオライトの粉末をポリマーなどのバインダー中に分散させて膜の形状にしたものでも、各種支持体上にゼオライトを膜状に固着させたゼオライト膜複合体でもよい。ゼオライト膜は、一部アモルファス成分などが含有されていてもよい。
【0064】
ゼオライト膜の厚さとしては、特に制限されるものではないが、通常、0.1μm以上であり、好ましくは0.6μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上である。また通常100μm以下であり、好ましくは60μm以下、さらに好ましくは20μm以下、より好ましくは12μm以下、特に好ましくは10μm以下の範囲である。
【0065】
ただし、本発明はゼオライト膜以外の分離膜を有した管状分離膜を用いてもよい。
【0066】
管状分離膜3の外径は、好ましくは3mm以上、より好ましくは6mm以上、さらに好ましくは10mm以上、好ましくは20mm以下、より好ましくは18mm以下、さらに好ましくは16mm以下、特に好ましくは14mm以下である。外径が小さすぎると管状分離膜の強度が十分でなく壊れやすくなることがあり、大きすぎるとモジュール当りの膜面積が低下する。
【0067】
管状分離膜3のうちゼオライト膜で覆われた部分の長さは好ましくは20cm以上、好ましくは200cm以下である。
【0068】
本発明の分離膜モジュールにおいて、管状分離膜は、単管式でも多管式でもよく、通常1~3000本、特に6~2000本配置され、管状分離膜同士の最短距離は、1mm~10mmとなるように配置されることが好ましい。ハウジングの大きさ、管状分離膜の本数は処理する流体量によって適宜変更されるものである。なお、管状分離膜はジョイント管17によって連結されなくてもよい。また、図による説明では分離膜モジュール1は縦向きに設置するようになっているが、横向きや傾けて使用してもよい。
【0069】
本発明の分離膜モジュールにおいて、分離または濃縮の対象となる被処理流体としては、分離膜によって分離または濃縮が可能な複数の成分からなる気体または液体の混合物であれば特に制限はなく、如何なる混合物であってもよいが、気体の混合物に使用することが好ましい。
【0070】
液体の分離または濃縮にはパーベーパレーション法(浸透気化法)、ベーパーパーミエーション法(蒸気透過法)と呼ばれる分離または濃縮方法を用いることができる。パーベーパレーション法は、液体の混合物をそのまま分離膜に導入する分離または濃縮方法であるため、分離または濃縮を含むプロセスを簡便なものにすることができる。
【0071】
本発明において、分離または濃縮の対象となる混合物が、複数の成分からなる気体の混合物である場合、気体の混合物としては、例えば、二酸化炭素、酸素、窒素、水素、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ノルマルブタン、イソブタン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、トルエンなどの芳香族系化合物、六フッ化硫黄、ヘリウム、一酸化炭素、一酸化窒素、水などから選ばれる少なくとも1種の成分を含むものが挙げられる。これらの気体成分からなる混合物のうち、パーミエンスの高い気体成分は、分離膜を透過し分離され、パーミエンスの低い気体成分は供給ガス側に濃縮される。
【0072】
本発明の分離膜モジュールは、流体量、あるいは目的の分離度、濃縮度によって連結して使用することができる。流体量が多い場合または目的の分離度・濃縮度が高く1つのモジュールでは処理が十分できない場合には出口から出た流体をさらにもう一つのモジュールの入口に入るように配管を接続して使用することが好ましい。また分離度、濃縮度に応じてさらに連結して目的の分離度・濃縮度とすることができる。
【0073】
本発明の分離膜モジュールを並列に設置して流体を分岐してガスを供給してもよい。この時さらに並列したそれぞれのモジュールに直列でモジュールを設置することもできる。並列としたモジュールを直列とする場合、供給ガス量が直列方向に低下し線速が低下するので、適宜線速を保つように並列の設置数を減少させることが好ましい。
【0074】
モジュールを直列に配置する場合の透過した成分はモジュール毎に排出しても良く、モジュール間を連結して集合させて排出してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1,1A 分離膜モジュール
2 ハウジング
2a,2b フランジ
2t 突部
3 管状分離膜
4 エンド管
4a 管孔
5 支持凾
5a 差込穴
5b 小孔
5c 大孔
5n ノズル
5s 底面
5t 天面
5u 側面
5v 集合室
6A ボトムカバー
6B トップカバー
6b,6c フランジ
6i,6n ノズル
6v 集合室
7,8 バッフル
7a,8a 挿通孔
9 流入口
10 流出口
11,12 室
14 ロッド
14A、14B 鞘管
16 背圧室
20 エンドプラグ
30,31 管状分離膜ユニット
40 被処理流体室
50,60,70 減容部材