IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/14 20060101AFI20231031BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231031BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231031BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231031BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231031BHJP
   C09J 133/26 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
C09J133/14
B32B27/00 M
B32B27/30 A
C09J7/38
C09J11/06
C09J133/26
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019190208
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021063204
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】綱島 啓次
(72)【発明者】
【氏名】小松崎 優紀
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/027787(WO,A1)
【文献】特開2013-177568(JP,A)
【文献】特開2019-094505(JP,A)
【文献】特開2019-077887(JP,A)
【文献】特開2019-131828(JP,A)
【文献】特開2019-135308(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0015874(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 133/14
B32B 27/00
B32B 27/30
C09J 7/38
C09J 11/06
C09J 133/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル重合体(A)及び架橋剤(B)を含み、
前記アクリル重合体(A)が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)に由来する単位と、窒素含有モノマー(a2)に由来する単位と、オキシアルキレン鎖含有モノマー(a3)に由来する単位とを含み、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)が、ホモポリマーのガラス転移温度が-15℃以上であるモノマーを含み、
前記窒素含有モノマー(a2)が、水酸基を有する窒素含有モノマー(a2-1)と、水酸基を有しない窒素含有モノマー(a2-2)とを含み、
窒素含有モノマー(a2)に由来する単位の含有率が、前記アクリル重合体(A)中、2質量%以上である粘着剤組成物。
【請求項2】
前記窒素含有モノマー(a2)が、(メタ)アクリルアミドモノマーである請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の粘着剤組成物から形成される粘着層。
【請求項4】
請求項記載の粘着層を有する保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、自動車、建築、電子機器など、様々な分野で使用されている。特に近年では、タブレットや、スマートフォンなど、持ち運びする電子機器の表面保護、部材の固定、使用する部材の加工工程時の保護など、多くの場面で活用されている。
【0003】
こうした粘着シートとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートに由来する単位及び飽和の環式基を有するモノマーに由来する単位を含む重合体を用いた透明粘着フィルム(特許文献1)、アルキル(メタ)アクリレートモノマー、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー、水酸基を有しない窒素含有ビニルモノマー、カルボキシル基を有するビニルモノマー等から形成されるアクリル系ポリマーを用いた粘着剤(特許文献2~7)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-48328号公報
【文献】特開2019-70148号公報
【文献】特開2019-70149号公報
【文献】特開2019-70152号公報
【文献】特開2019-77881号公報
【文献】特開2019-77882号公報
【文献】特開2019-90040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子機器に使用される部材は、より高度な加工が施されたものが必要になるため、従来に比べ、より過酷な条件下で加工される。そのため、これらの部材の加工工程に使用される表面保護フィルムは、高温などの過酷な条件下に曝された後でも、加工工程終了後には部材からきれいに剥離できることが必要となる。そのため、こうした保護フィルムにおいては、熱履歴後の接着力の上昇が少ないことや、被着体表面から粘着シートを剥がした際に、糊残りなどで被着体を汚染しないという特性が求められている。しかしながら従来から知られる粘着シートでは、より過酷な加工条件(高温、高湿)に置かれた場合に、上記の特性を達成することが困難な場合があった。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、高温条件に置かれた後も、接着力の上昇が少なく、被着体から剥がした後の被着体表面の汚染が少ない粘着剤及び粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが検討したところ、特定組成のアクリル重合体を用いることで、高温、高湿条件に置かれた後も、接着力の上昇が少なく、被着体から剥がした後の被着体表面の汚染が少ない粘着剤を提供できることを見出した。
【0008】
すなわち本発明の粘着剤組成物は、アクリル重合体(A)及び架橋剤(B)を含み、前記アクリル重合体(A)が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)に由来する単位と、窒素含有モノマー(a2)に由来する単位と、オキシアルキレン鎖含有モノマー(a3)に由来する単位とを含み、窒素含有モノマー(a2)に由来する単位の含有率が、前記アクリル重合体(A)中、2質量%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温、高湿条件に置かれた後も、接着力の上昇が少なく、被着体から剥がした後の被着体表面の汚染が少ない粘着剤及び粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の粘着剤組成物は、アクリル重合体(A)及び架橋剤(B)を含む。
【0011】
前記アクリル重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)に由来する単位と、窒素含有モノマー(a2)に由来する単位と、オキシアルキレン鎖含有モノマー(a3)に由来する単位と含む。
【0012】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)としては、エステル結合にアルキル基が結合した(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。前記アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは12以下、よりいっそう好ましくは10以下、特に好ましくは8以下である。
【0013】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)としては、炭素原子数3以上(好ましくは4以上)のアルキル基がエステル結合に結合している(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1-1)を含むことが好ましい。前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1-1)の含有率は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0014】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)は、さらに、炭素原子数2以下のアルキル基がエステル結合に結合している(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1-2)を含むことが好ましい。前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1-2)を含む場合、その含有率は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0015】
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、ラウリル基、ステアリル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、イソノニル基、イソデシル基、イソステアリル基等の分岐鎖状アルキル基などが挙げられる。
【0016】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)は、アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
【0017】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
前記アクリル重合体(A)中、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)に由来する単位の含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
【0019】
前記窒素含有モノマー(a2)は、分子中に、窒素原子と重合性二重結合とを有する単量体であり、分子中に、アミド結合と重合性二重結合とを有する単量体であることが好ましく、例えば、ビニル基を有するラクタム化合物;(メタ)アクリルアミド単量体;窒素原子を含む官能基(例えば、アミノ基、1置換アミノ基、2置換アミノ基、ニトリル基等)を有する(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0020】
前記ビニル基を有するラクタム化合物としては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0021】
前記(メタ)アクリルアミド単量体は、(メタ)アクリルアミドの窒素原子に、水素原子又は炭化水素基(好ましくは脂肪族炭化水素基。ただし、該炭化水素に含まれる-CH2-は、-CO-に置き換わっていてもよく、該炭化水素基に含まれる水素原子は、水酸基に置換されていてもよい。)が結合した化合物などが挙げられる。また、(メタ)アクリルアミドの窒素原子に、2以上の基(前記炭化水素基)が置換する場合、それらの基は互いに結合して窒素原子を含む環を形成していてもよい。
【0022】
前記アミド結合に含まれる窒素原子に置換する炭化水素基(好ましくは脂肪族炭化水素基)の炭素原子数は、好ましくは1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは6以下である。
【0023】
前記(メタ)アクリルアミド単量体としては、1種又は2種以上を用いることができる。前記(メタ)アクリルアミド単量体は、(メタ)アクリルアミド、N-1置換(メタ)アクリルアミド、N,N-2置換(メタ)アクリルアミドのいずれであってもよい。
【0024】
前記(メタ)アクリルアミド単量体としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、(メタ)アクリルアミド;N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド等のN-1置換(メタ)アクリルアミド化合物;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイル-4-ピペリドン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のN-2置換(メタ)アクリルアミド化合物などが挙げられる。
【0025】
中でも、前記(メタ)アクリルアミド単量体は、式(1)で表される単量体を含むことが好ましい。
【0026】
【化1】
[式(1)中、R1は、水素原子又はメチル基を表す。R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる-CH2-は、-CO-又は-O-に置き換わっていてもよく、該炭化水素基に含まれる水素原子は水酸基に置き換わっていてもよく、R2及びR3は、互いに結合して、窒素原子を含む環を形成していてもよい。]
【0027】
前記R2及びR3で表される炭化水素基としては、1種又は2種以上であってよく、例えば、直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基;直鎖状又は分岐鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基などが挙げられる。
【0028】
前記(メタ)アクリルアミド単量体は、R2及びR3の両方が前記炭化水素基である(メタ)アクリルアミドモノマーを含むことも好ましい。前記R2及びR3の両方が前記炭化水素基である(メタ)アクリルアミドモノマーを含む場合、該単量体に由来する単位の含有率は、前記アクリル重合体(A)中、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0029】
前記窒素含有モノマー(a2)中、前記アクリルアミドモノマーに由来する単位の含有率は、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0030】
前記窒素原子を含む官能基(例えば、アミノ基、1置換アミノ基、2置換アミノ基、ニトリル基等)を有する(メタ)アクリレート化合物としては、(メタ)アクリロニトリル、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記窒素原子を含む官能基を有する(メタ)(メタ)アクリレート化合物としては、前記窒素原子を含む官能基と、(メタ)アクリルオキシ基とが、単結合又は炭素原子数1~10(好ましくは炭素原子数1~5)の炭化水素基(好ましくはアルキル基)を介して結合した化合物などが挙げられる。
【0031】
前記窒素含有モノマー(a2)は、水酸基を有する窒素含有モノマーを含むことが好ましい。前記水酸基を有する窒素含有モノマーとしては、水酸基を有する(メタ)アクリルアミド単量体が好ましく、式(1)において、R2及びR3の少なくとも一方が炭化水素基であり、該炭化水素基に含まれる水素原子が水酸基に置き換わっている単量体がより好ましい。
【0032】
前記水酸基を有する窒素含有モノマーの含有率は、前記窒素含有モノマー(a2)中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
【0033】
前記アクリル重合体中、前記窒素含有モノマー(a2)に由来する単位の含有率は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0034】
前記オキシアルキレン鎖含有モノマー(a3)は、分子中に、オキシアルキレン単位と重合性二重結合とを有する単量体である。前記オキシアルキレン単位の炭素原子数は、好ましくは2以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下、特に好ましくは2である。前記オキシアルキレン鎖含有モノマーとしては、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。前記アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートにおけるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素原子数1~5(好ましくは1~3)のアルコキシ基が挙げられる。
【0035】
前記オキシアルキレン鎖含有モノマー(a3)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、メトキシエチレングリコールメタクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレートが挙げられる。
【0036】
前記オキシアルキレン鎖含有モノマー(a3)におけるアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの含有率は、0質量%以上であり、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、100質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0037】
前記オキシアルキレン鎖含有モノマー(a3)中のオキシアルキレン単位の繰り返し数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上であり、好ましくは100以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下である。
【0038】
前記アクリル重合体(A)中、前記オキシアルキレン鎖含有モノマー(a3)に由来する単位の含有率は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0039】
前記アクリル重合体(A)は、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、前記窒素含有モノマー(a2)、前記オキシアルキレン鎖含有モノマー(a3)以外のその他の単量体(a4)に由来する単位を有していてもよい。
【0040】
前記その他の単量体(a4)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート等の不飽和モノカルボン酸;水酸基を有する(メタ)アクリル単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ環含有(メタ)アクリル単量体;シクロへキシル(メタ)アクリレート等の脂環含有(メタ)アクリル単量体;スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、パラヒドロキシスチレン等の芳香族ビニル単量体;2以上のビニル基を有する単量体などが挙げられる。
【0041】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基に水酸基が結合した化合物;(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル等が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基に水酸基が結合した化合物であり、より好ましくは(メタ)アルキル酸アルキルエステルのアルキル基の末端に水酸基が結合した化合物である。
【0042】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル単量体に含まれる水酸基の数は、好ましくは1個である。
また、前記水酸基を有する(メタ)アクリル単量体としては、水酸基を有するアクリル単量体であることが好ましい。
【0043】
前記アクリル酸アルキルエステルとしては、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)として例示した化合物と同様の化合物が挙げられる。
【0044】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル単量体としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
前記アクリル重合体(A)中、前記水酸基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する単位の含有率は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、さらに好ましくは0.03質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0046】
前記アクリル重合体(A)中、その他の単量体(a4)に由来する単位の含有率は、0質量%以上であり、より好ましくは0質量%超、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0047】
前記アクリル重合体(A)の重量平均分子量は、好ましくは10万以上、より好ましくは20万以上、さらに好ましくは30万以上であり、好ましくは200万以下、より好ましくは180万以下、さらに好ましくは150万以下である。
【0048】
本明細書において、前記アクリル重合体(A)の数平均分子量、重量平均分子量は、ポリスチレンを標準試料としゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ法(GPC)を用いて測定された換算値を表すものとする。
【0049】
本発明の粘着剤組成物において、前記アクリル重合体(A)の含有率は、不揮発分中、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0050】
本明細書において、粘着剤組成物の不揮発分とは、粘着剤組成物必要に応じて含まれる溶剤成分を除いた部分を表すものとする。
【0051】
前記アクリル重合体(A)は、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、(メタ)アクリルアミド単量体(a2)、オキシアルキレン鎖含有モノマー(a3)及び必要に応じて用いるその他の単量体(a4)を、重合開始剤の存在下、共重合させることにより製造することができる。
【0052】
前記重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤の1種又は2種以上を用いることができ、過酸化ベンゾイルや過酸化ラウロイル等の過酸化物開始剤、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ開始剤などが挙げられる。
【0053】
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤(B)を含む。架橋剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤、多価金属塩架橋剤、金属キレート架橋剤、ケト・ヒドラジド架橋剤、オキサゾリン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、シラン架橋剤、グリシジル(アルコキシ)エポキシシラン架橋剤等が挙げられる。
【0054】
中でも、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、オキサゾリン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、グリシジル(アルコキシ)エポキシシラン架橋剤が好ましく、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、カルボジイミド架橋剤がより好ましく、イソシアネート架橋剤が特に好ましい。
【0055】
前記イソシアネート架橋剤の含有率は、前記架橋剤(B)中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりいっそう好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0056】
前記架橋剤(B)の含有率は、前記アクリル重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0057】
本発明の粘着剤組成物は、溶剤(D)を含むことが好ましい。前記溶剤(D)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤等が挙げられる。中でも、エステル溶剤を含むことが好ましい。
【0058】
前記エステル溶剤の含有率は、前記溶剤(D)中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0059】
前記溶剤(D)の含有率は、前記粘着剤組成物中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下である。
【0060】
本発明の粘着剤組成物では、低黄変性を維持するために、粘着付与樹脂の含有量が低減されていることが好ましく、前記アクリル重合体100質量部に対して、好ましくは10質量部未満、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、いっそう好ましくは1質量部以下であり、0質量部であることが好ましい。特定組成及び重量平均分子量を有するアクリル重合体(A)を用い、かつ粘着付与樹脂を含まない構成を採用することで、粘着層の低黄変性を維持しつつ、高温/高湿条件下においても、高接着力を保持し、可塑剤の移行を抑制することが可能となる。
【0061】
本発明の粘着剤組成物は、添加剤として、pHを調整するための塩基(アンモニア水など)や酸;発泡剤;軟化剤;酸化防止剤;ガラスやプラスチック製の繊維・バルーン・ビーズ・金属粉末等の充填剤;顔料・染料等の着色剤;pH調整剤;皮膜形成補助剤;レベリング剤;増粘剤;撥水剤;消泡剤;酸触媒;酸発生剤等を含んでいてもよい。
【0062】
前記粘着剤組成物を支持体上に塗布し、乾燥させることによって、粘着層を形成することができる。前記支持体は、剥離シート及び粘着シート等の基材のいずれであってもよい。
【0063】
前記塗工方法としては、ナイフコーター、リバースコーター、ダイコーター、リップダイコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の方法を用いることができる。
【0064】
前記粘着層の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0065】
本発明の粘着シート又は粘着テープは、前記粘着層と前記基材とを有する。前記基材は、フィルム状、シート状、テープ状、板状、立体形状等のいずれであってもよく、前記基材の材質としては、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂等のプラスチック;ゴム;不織布;金属箔;紙などが挙げられ、プラスチックが好ましく、塩化ビニル樹脂がより好ましい。また、前記基材は、表面が平滑なものであってもよく、繊維質基材、フォーム基材等の表面に凹凸を有するものであってもよい。
【0066】
前記基材の厚みは、好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは1,000μm以下である。
【実施例
【0067】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0068】
[合成例1]
<アクリル樹脂(A1)の合成>
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート830質量部、メチルアクリレート50質量部、ヒドロキシエチルアクリルアミド50質量部、アクリルアミド10質量部、NKエステルAM-90G(新中村化学工業(株)製)10質量部、NKエステルM-90G(新中村化学工業(株)製)40質量部、ヒドロキシエチルアクリレート10質量部、酢酸エチル1000重量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら70℃まで昇温した。1時間後に、予め酢酸エチルにて溶解した2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液10質量部(固形分5%)を添加した。その後、攪拌下70℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過し、不揮発分50質量%、粘度100、000mPa・s、重量平均分子量50万のアクリル樹脂(A1)を得た。
【0069】
[合成例2]
<アクリル樹脂(A1)の合成>
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート735質量部、2-エチルヘキシルアクリレート100質量部、メチルアクリレート50質量部、アクリロイルモルフォリン20質量部、ヒドロキシエチルアクリルアミド50質量部、NKエステルAM-90G 20質量部、NKエステルM-90G 20質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート5質量部、酢酸エチル1000重量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら70℃まで昇温した。1時間後に、予め酢酸エチルにて溶解した2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液10質量部(固形分5%)を添加した。その後、攪拌下70℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過し、不揮発分50質量%、粘度80、000mPa・s、重量平均分子量45万のアクリル樹脂(A2)を得た。
【0070】
[合成例3]
<アクリル樹脂(A3)の合成>
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート400質量部、2-エチルヘキシルアクリレート310質量部、メチルアクリレート100質量部、ヒドロキシエチルアクリルアミド100質量部、ジメチルアクリルアミド20質量部、NKエステルAM-130G(新中村化学工業(株)製)40質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート30質量部、酢酸エチル1000重量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら70℃まで昇温した。1時間後に、予め酢酸エチルにて溶解した2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液10質量部(固形分5%)を添加した。その後、攪拌下70℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過し、不揮発分50質量%、粘度120、000mPa・s、重量平均分子量44万のアクリル樹脂(A3)を得た。
【0071】
[合成例4]
<アクリル樹脂(A4)の合成>
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート825質量部、メチルアクリレート50質量部、アクリロイルモルフォリン20質量部、ジメチルアクリルアミド50質量部、NKエステルM-230G(新中村化学工業(株)製)50質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート5質量部、酢酸エチル1000重量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら70℃まで昇温した。1時間後に、予め酢酸エチルにて溶解した2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液10質量部(固形分5%)を添加した。その後、攪拌下70℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過し、不揮発分50質量%、粘度150、000mPa・s、重量平均分子量65万のアクリル樹脂(A4)を得た。
【0072】
[合成例5]
<アクリル樹脂(A5)の合成>
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、2-エチルヘキシルアクリレート710質量部、メチルアクリレート150質量部、ヒドロキシエチルアクリルアミド50質量部、NKエステルAM-130G 20質量部、NKエステルM-90G 20質量部、ヒドロキシエチルアクリレート50質量部、酢酸エチル1000重量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら70℃まで昇温した。1時間後に、予め酢酸エチルにて溶解した2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液10質量部(固形分5%)を添加した。その後、攪拌下70℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過し、不揮発分50質量%、粘度110、000mPa・s、重量平均分子量55万のアクリル樹脂(A5)を得た。
【0073】
[合成例6]
<アクリル樹脂(A6)の合成>
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、2-エチルヘキシルアクリレート875質量部、アクリロイルモルフォリン20質量部、アクリルアミド40質量部、NKエステルAM-90G 50質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート10質量部、アクリル酸5質量部、酢酸エチル1000重量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら70℃まで昇温した。1時間後に、予め酢酸エチルにて溶解した2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液10質量部(固形分5%)を添加した。その後、攪拌下70℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過し、不揮発分50質量%、粘度90、000mPa・s、重量平均分子量42万のアクリル樹脂(A6)を得た。
【0074】
[合成例7]
<アクリル樹脂(A7)の合成>
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート270質量部、2-エチルヘキシルアクリレート400質量部、ヒドロキシエチルアクリルアミド50質量部、ジメチルアクリルアミド20質量部、NKエステルM-90G 120質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート40質量部、シクロヘキシルアクリレート100質量部、酢酸エチル1000重量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら70℃まで昇温した。1時間後に、予め酢酸エチルにて溶解した2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液10質量部(固形分5%)を添加した。その後、攪拌下70℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過し、不揮発分50質量%、粘度80、000mPa・s、重量平均分子量40万のアクリル樹脂(A7)を得た。
【0075】
[合成例8]
<比較アクリル樹脂(A1’)の合成>
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート50質量部、2-エチルヘキシルアクリレート670質量部、メチルアクリレート210質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート60質量部、アクリル酸10質量部、酢酸エチル1000重量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら70℃まで昇温した。1時間後に、予め酢酸エチルにて溶解した2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液10質量部(固形分5%)を添加した。その後、攪拌下70℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過し、不揮発分50質量%、粘度130、000mPa・s、重量平均分子量65万の比較アクリル樹脂(A1’)を得た。
【0076】
[合成例9]
<比較アクリル樹脂(A2’)の合成>
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート300質量部、2-エチルヘキシルアクリレート350質量部、メチルアクリレート150質量部、ジメチルアクリルアミド100質量部、ヒドロキシエチルアクリレート100質量部、酢酸エチル1000重量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら70℃まで昇温した。1時間後に、予め酢酸エチルにて溶解した2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液10質量部(固形分5%)を添加した。その後、攪拌下70℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過し、不揮発分50質量%、粘度110、000mPa・s、重量平均分子量55万の比較アクリル樹脂(A2’)を得た。
【0077】
[合成例10]
<比較アクリル樹脂(A3’)の合成>
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、2-エチルヘキシルアクリレート790質量部、NKエステルAM-90G 150質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート50質量部、アクリル酸10質量部、酢酸エチル1000重量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら70℃まで昇温した。1時間後に、予め酢酸エチルにて溶解した2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液10質量部(固形分5%)を添加した。その後、攪拌下70℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過し、不揮発分50質量%、粘度110、000mPa・s、重量平均分子量52万の比較アクリル樹脂(A3’)を得た。
【0078】
[合成例11]
<比較アクリル樹脂(A4’)の合成>
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート700質量部、2-エチルヘキシルアクリレート100質量部、アクリロイルモルフォリン15質量部、NKエステルAM-130G 50質量部、NKエステルM-90G 50質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート80質量部、アクリル酸5質量部、酢酸エチル1000重量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら70℃まで昇温した。1時間後に、予め酢酸エチルにて溶解した2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液10質量部(固形分5%)を添加した。その後、攪拌下70℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過し、不揮発分50質量%、粘度100、000mPa・s、重量平均分子量49万の比較アクリル樹脂(A4’)を得た。
【0079】
[実施例1]
合成例1で得られたアクリル樹脂(A1)100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤(ファインタック硬化剤D-40;DIC(株)製)4質量部を均一になるように攪拌混合することによってアクリル粘着組成物(1)を得た。
【0080】
[実施例2~7、比較例1~4]
アクリル樹脂(A1)100質量部の代わりにアクリル樹脂(A2)~(A7)又は比較アクリル樹脂(A1’)~(A4’)を用いること以外は、実施例1と同様にして、アクリル粘着剤組成物(2)~(7)、比較アクリル粘着剤組成物(1’)~(4’)を得た。
【0081】
[粘着フィルムの加工方法]
表面に離型処理された厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(離型PET50)の表面に、溶剤乾燥後における膜厚が12μmとなるように実施例1~7、比較例1~4で得られたアクリル粘着剤組成物、比較アクリル粘着剤組成物を塗布し、80℃乾燥機中で3分間溶剤を揮発した後、PET38μmフィルムを貼り合せた。
【0082】
[接着力の測定方法]
前述の方法で作成した粘着フィルムを25mm幅に切ったものを試験片とした。被着体をガラス板とし、2kgロール×2往復で被着体に貼り付けた。貼り付け1時間後に23℃、50%RHの雰囲気下で300mm/minの剥離速度で180度剥離強度を測定し、接着力とした。
【0083】
[耐熱後の接着力の測定方法]
前述の接着力の測定方法と同様に、被着体に試験片を貼り付けた。その後、140℃雰囲気下に1時間放置し、取り出した。23℃、50%RHの雰囲気下に30分放置後、300mm/minの剥離速度で180度剥離強度を測定し、耐熱後の接着力とした。
【0084】
[被着体の汚染性の評価方法]
前述の接着力の測定方法と同様に、被着体に試験片を貼り付けた。その後、60℃、90%RH雰囲気下に3日間放置し、取り出した。23℃、50%RHの雰囲気下に30分放置後、試験片を剥離し、剥離した被着体表面(貼り付けてあった部分)にLEDライトを照射し、被着体表面の汚染の有無を確認し、耐汚染性の評価とした。
〇:汚染無し
△:被着体表面に粘着剤の残存はないが、白い跡がある
×:被着体表面に粘着剤の残存がある
【0085】
結果を表1、表2に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
実施例1~7は、本発明の実施例であり、高温条件に置かれた後も、接着力の上昇が少なく、被着体から剥がした後の被着体表面の汚染が少なかった。比較例1は、窒素含有モノマー及びオキシアルキレン鎖含有モノマーを含まない例であり、高温条件に置かれた後、接着力が上昇しており、高温、高湿条件に置かれた後、被着体表面に粘着剤の残存が確認された。比較例2は、オキシアルキレン鎖含有モノマーを含まない例であり、高温条件に置かれた後、接着力が上昇しており、高温、高湿条件に置かれた後は、被着体表面に粘着剤の残存が確認された。比較例3は、窒素含有モノマーを含まない例であり、高温条件に置かれた後、接着力が上昇しており、高温、高湿条件に置かれた後は、被着体表面に粘着剤の残存が確認された。比較例4は、窒素含有モノマー(a2)に由来する単位の含有率が、2質量%未満の例であり、高温条件に置かれた後の接着力が上昇しており、高温、高湿条件に置かれた後は、被着体表面に粘着剤の残存が確認された。