(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】塗布装置、並びにヘッドユニット
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20231031BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20231031BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20231031BHJP
G01B 11/14 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/00
B05C11/10
G01B11/14 Z
(21)【出願番号】P 2021509360
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2020012578
(87)【国際公開番号】W WO2020196355
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2019062184
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】内藤 一夫
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 義昭
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-187554(JP,A)
【文献】特開2006-110486(JP,A)
【文献】特開2004-139814(JP,A)
【文献】特開2003-080152(JP,A)
【文献】特開2007-021395(JP,A)
【文献】特開平11-253869(JP,A)
【文献】特開2006-212586(JP,A)
【文献】特開2006-084323(JP,A)
【文献】特開2006-239664(JP,A)
【文献】2層同時塗工テストコーター,’スリットダイ、2層同時塗工、テストコーター、薄膜塗工、有機EL、’タグのついている投稿,株式会社 ダイ門,2013年05月12日,p.1-2,http://www.die-gate.com/weblog/archives/tag/スリットダイ、2層同時塗工、テストコーター、
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00-21/00
B05D 1/00-7/26
G01B 11/14
21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向にスリット状に延びて形成された開口部から塗布液を吐出して、被処理基板の表面に前記塗布液を塗工する塗布装置のヘッドユニットであって、
前記第1方向と直交する第2方向に所定の間隔で対向して設けられた第1のスロット片部材と第2のスロット片部材とを有し、対向する前記第1のスロット片部材の壁面と前記第2のスロット片部材の壁面とで、前記塗布液を前記開口部に通すスロット部を形成するヘッド機構と、
前記第1方向に沿って前記第1のスロット片部材に複数設けられ、前記間隔、又は前記間隔の変化に対応した計測信号を出力する計測機構と、
複数の前記計測機構に対応するように、前記第1方向に沿って前記第2のスロット片部材に複数設けられ、前記間隔を調整可能な駆動ユニットと、
を備え、
前記第1のスロット片部材の全体、又は一部分が誘電体材料で構成され、
前記計測機構は、前記塗布液が前記スロット部を流れている間に、第1の光を前記第1のスロット片部材の外側から前記誘電体材料と前記塗布液と
の界面に照射し、
前記界面で反射した前記第1の光を第2の光
として前記第1のスロット片部材の外側から前記誘電体材料
と前記塗布液と
を介して前記第2のスロット片部材の壁面に照射し、
前記壁面で反射した前記第2の光を検出して前記間隔、又は前記間隔の変化を計測する、ヘッドユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドユニットであって、
前記誘電体材料は、ガラス材、石英材、樹脂材のいずれかである、ヘッドユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のヘッドユニットであって、
前記誘電体材料は、前記塗布液と接する前記第1のスロット片部材の壁面の一部を成すように前記第1のスロット片部材に埋設された平行平板状の部材であり、前記第1のスロット片部材のその他の部分を金属材とした、ヘッドユニット。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のヘッドユニットであって、
前記誘電体材料の前記界面には、前記光に対して反射性を有する反射層が部分的に形成されている、ヘッドユニット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のヘッドユニットを有する、塗布装置。
【請求項6】
請求項5に記載の塗布装置であって、
前記複数の駆動ユニットの各々を、前記複数の計測機構で計測された前記間隔、又は前記間隔の変化の前記第1方向における分布に基づいて駆動する駆動制御部を備える塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗工体上に所定の厚みで液体材料を塗布する塗布装置、並びにその塗布装置に組み込まれるヘッドユニットに関する。
本願は、2019年3月28日に出願された日本国特願2019-062184号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被塗工体としての薄い基板やフィルムシートの表面に、液体材料(塗布液)を一様な厚さで塗布する為の各種の方法が知られている。半導体素子の製造工程等では、液体のフォトレジスト(感光剤)を高速に回転する半導体ウェハ上に滴下して遠心力で半導体ウェハの表面に均一な厚みでレジストの塗膜を形成するスピンコート方式が使われている。また、液晶や有機ELによる表示パネルの製造工程では、大面積のガラス基板(1m~3m角)上に各種の液体材料による塗膜を形成する必要があるが、スピンコート方式では難しいため、スクリーン塗工法、グラビアロール塗工法、ダイコート塗工法等の印刷方式が使われている。そのうちのダイコート塗工法は、大きな面積に渡って均一な厚みで塗膜を形成できることから、精密な塗布作業が求められる製造工程で多用されている。ダイコート塗工法は、被塗工体(基板)を所定の速度で移動させつつ、その移動方向と直交した方向(基板の幅方向)に直線的に延びた微小幅のスリット(スロット、リップとも呼ぶ)開口から吐出する液体材料を被塗工体の表面に接液させる方法である。そのようなダイコート塗工法による塗布装置(エクストルージョン方式のダイコーター)の一例が、以下の特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、可撓性のウェブの表面に、ダイコータの塗布ヘッドのスリットから吐出される塗布液を過剰な厚みで塗工した後、バー塗布装置のヘッドによって過剰分の塗布液を掻き落として、塗布層を所望の厚さに制御することが開示されている。さらに特許文献1では、ダイコータの塗布ヘッドからの塗布液の吐出量を調整する為に、塗布ヘッドのスリットの開口間隙(ギャップ)をボルトの回転によって調整する間隔調整部材が、塗布ヘッドのスリットが延びる方向(長手方向)の複数個所の各々に設けられている。そして、予め測定されたウェブの幅方向(塗布ヘッドのスリットが延びる方向)の塗布液の厚さ分布(断面が凹状、又は凸状)が補償されるように複数の間隔調整部材を調整して、ウェブの幅方向に関して指定された厚さ分布となるように塗布液を塗工している。しかしながら特許文献1では、複数の間隔調整部材で調整されるスリットの開口間隙の長手方向における分布を直接的に把握していない為、各間隔調整部材のボルトの調整量(回転量)は、ウェブに塗工された後の塗布液の厚さ分布から判断される経験則によって適切な状態に追い込むことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様は、基板支持機構で支持される被処理基板の表面と対向した先端部に、第1方向にスリット状に延びて形成された開口部から塗布液を吐出して、前記被処理基板の表面に前記塗布液を塗工する塗布装置であって、前記塗布液を一時的に貯留する為に前記第1方向に延設された貯留部と、前記貯留部から前記先端部の開口部に向けて前記塗布液を通す流路を形成する為に、所定の間隔で対向して前記第1方向に延設された一対の内壁面を形成するように対向する一組のスロット片部材で構成されるスロット部とを有するヘッド機構と、前記一組のスロット片部材のうちの少なくとも一方側に設けられて、前記一対の内壁面の前記間隔、又は前記間隔の変化に対応した計測信号を出力する計測機構と、を備える。
【0006】
本発明の第2の態様は、基板支持機構で支持される被処理基板の表面と対向した先端部に、第1方向にスリット状に延びて形成された開口部から吐出される塗布液を、前記被処理基板の表面に所定の厚さで塗布する塗布装置であって、前記塗布液を一時的に貯留する為に前記第1方向に延設された貯留部から前記先端部の開口部に向けて前記塗布液を通す流路を形成するように、所定の間隔で対向して前記第1方向に延設された一対の内壁面で構成されるダイヘッド機構と、前記第1方向と直交した第2方向における前記開口部の幅の変化を検出する為に、前記一対の内壁の前記間隔の変化を計測する開口幅計測機構と、を備える。
【0007】
本発明の第3の態様は、基板支持機構で支持される被処理基板の表面と対向した先端部に、第1方向にスリット状に延びて形成された開口部から吐出される塗布液を、前記被処理基板の表面に所定の厚さで塗布する塗布装置であって、前記塗布液を一時的に貯留する為に前記第1方向に延設された貯留部と、前記貯留部から前記先端部の開口部に向けて前記塗布液を通す流路を形成する為に、所定の間隔で対向して前記第1方向に延設された一対の内壁面を形成するスロット片部材で構成されるスロット部とを有するヘッド機構と、前記一対の内壁面のうちの少なくとも一方の内壁面を構成する前記スロット片部材に対して透過性を有するエネルギー線の照射によって、前記流路を通る前記塗布液の状態を観察する観察機構と、を備える。
【0008】
本発明の第4の態様は、第1方向にスリット状に延びた開口部から被処理基板の表面に所定の厚さで塗布液を吐出するダイコート方式の塗布装置のヘッドユニットであって、前記塗布液を一時的に貯留する為に前記第1方向に延設された貯留部から前記開口部に向けて前記塗布液を通す流路を形成する為に、所定の間隔で対向して前記第1方向に延設された一対の内壁面の一方を形成する第1のスロット片部材と、該第1のスロット片部材と対向して配置され、前記一対の内壁面の他方を形成する第2のスロット片部材とを備え、前記第1のスロット片部材と前記第2のスロット片部材のいずれか一方の全体、又は前記内壁面を形成する部分を誘電体材料で構成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態によるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式の塗布装置の全体構成を示す図である。
【
図2】
図1に示した塗布装置のうち、塗工ヘッド部と回転ドラムの部分の構成を拡大して示す斜視図である。
【
図3】
図1に示した塗布装置のうち、塗工ヘッド部を支持して上下方向に移動(微動)させる為の支持機構の概略的な構成を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示した塗布装置内に設けられる計測部からの情報を処理すると共に、各駆動部の制御を行う制御機構(制御装置)の概略的な構成を示すブロック図である。
【
図5】
図1~
図4で示した塗工ヘッド部(ダイコート用のヘッドユニット)を分解して、各部の構造を詳細に示す斜視図である。
【
図6】
図5に示したヘッドユニットDCHをXZ面と平行な面で切断した部分断面と、第1の実施形態におけるセンサーユニットSUとの配置関係を示す図である。
【
図7】
図2、
図6に示したセンサーユニットSUの具体的な光学構成を示す斜視図である。
【
図8】
図7に示したセンサーユニットSUの光学構成における共役関係と各ビームの収斂/発散の様子をXZ面内で誇張して表した光路図である。
【
図9】
図7に示した開口絞り40から面Cpまでの光路部分の光学部材(開口絞り40、レンズ系41、反射ミラー42)の配置を拡大して表した斜視図である。
【
図10】
図9中のレンズ41aを等速度で移動させたときに、
図8のフォトセンサー44から出力される光電信号44Aの強度変化の様子を表したグラフである。
【
図11】ヘッドユニットDCHのスロット部SLTの幅を形成するリップ片部材HAの内側の壁面HA1とリップ片部材HBの内側の壁面HB1とのXY面内における変形の様子を誇張して表した図である。
【
図12】
図4の塗工制御部10A、
図1中の主制御ユニット10に設けられる制御用の表示モニター装置(ディスプレー)DSPの表示画面の一例を表す図である。
【
図13】スロット部SLTの先端の開口部SSの幅を調整する為の駆動ユニットACDをピエゾ素子とした場合のヘッドユニットDCHの構成の部分断面を示す図である。
【
図14】スロット部SLTの先端の開口部SSの幅を調整する為の駆動ユニットACDを粗微動型のマイクロメータヘッドとした場合のヘッドユニットDCHの構成の部分断面を示す図である。
【
図15】第2の実施の形態によるヘッドユニットDCH2の全体構成をリップ片部材HA側から見た斜視図である。
【
図16】第2の実施の形態によるヘッドユニットDCH2の全体構成をリップ片部材HB側から見た斜視図である。
【
図17】第2の実施の形態によるヘッドユニットDCH2の全体構成をY方向(スロット部SLTが延びる方向)から見た端面図である。
【
図18】第2の実施の形態によるヘッドユニットDCH2の全体構成を下側(スロット部SLTの開口部SS側)から見た斜視図である。
【
図19】第3の実施の形態によるヘッドユニットDCH3をY方向(スロット部SLTが延びる方向)から見た側面図である。
【
図20】第3の実施の形態によるヘッドユニットDCH3のY方向の一部分をXZ面と平行な面で破断した断面図である。
【
図21】第3の実施の形態によるヘッドユニットDCH3の-Y方向側の端部付近をリップ片部材HB側の下方から見た斜視図である。
【
図22】第4の実施の形態によるヘッドユニットDCH4の構成をY方向から見た部分断面図である。
【
図23】
図22に示した渦電流センサーSK1によってスロット部SLTの幅(又は幅の変化)を計測する計測回路の一例を示す回路ブロック図である。
【
図24】第5の実施の形態によるヘッドユニットDCH5の構成をY方向から見た部分断面と、スロット部SLTの幅(又は幅の変化)を静電容量の変化によって計測する回路の一例を示す回路ブロック図である。
【
図25】センサーユニットSUとして
図24の静電容量センサーを用いる場合の変形例による概略構成を示す図である。
【
図26】第6の実施の形態によるヘッドユニットDCH6の構成をY方向から見た部分断面と、スロット部SLTを流れる塗布液Lqの状態を監視する撮像部の概略的な配置とを示す図である。
【
図27】第7の実施の形態によるヘッドユニットDCH7の構成をY方向から見た部分断面と、スロット部SLTの幅(又は幅の変化)を分光干渉計で計測する場合の構成を示す図である。
【
図28A】塗布装置の変形例による概略構成を示す図であり、回転ドラム式の塗布装置におけるヘッドユニットDCHの配置の変形例を示す。
【
図28B】塗布装置の変形例による概略構成を示す図であり、平坦搬送式の塗布装置におけるヘッドユニットDCHの配置の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の態様に係る塗布装置、或いは塗布装置のヘッドユニットについて、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下で詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0011】
[第1の実施の形態]
図1~
図4は、第1の実施の形態によるダイコート(スリットコート)方式の塗布装置の概略的な全体構成を示す図である。本実施の形態では、
図1に示すように、ロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式でフレキシブルな長尺のシート基板P上に塗布液を塗工して乾燥させるスタンドアロンタイプの塗布装置を例示する。しかしながら、スタンドアロンタイプではなくインラインタイプの塗布装置としても良い。インラインタイプとは、電子デバイス等を製造する為の複数の工程の各々を担う各種の処理装置がシート基板Pの搬送方向に沿って並んだ製造ライン中に組み込まれる形態の塗布装置である。
【0012】
図1に示すように、設置場所(工場等)の床面1に設置される本実施の形態の塗布装置は、塗工処理すべき長尺のシート基板Pが巻かれた供給ロール2、供給ロール2にモータによって回転駆動力(トルク)を付与する駆動部3、供給ロール2から引き出されるシート基板Pをダイコート方式の塗工部5に搬送するローラRa、Rb、Rc、シート基板Pを安定に支持して一定速度で搬送する回転ドラムDR(基板支持機構)、ニップローラNR、シート基板Pの表面に塗布された塗布液を乾燥させる為の乾燥ユニット6A、6B、乾燥ユニット6A、6B内でシート基板Pを支持する複数のローラRe、Rf、乾燥後のシート基板Pを巻き取る回収ロール7、回収ロール7にモータによって回転駆動力(トルク)を付与する駆動部8、そして、塗布装置の全体の動作を制御する主制御ユニット10等を備える。なお、
図1において、直交座標系XYZのZ軸は重力方向とし、Z軸と垂直なXY面は床面1と平行な水平面とし、供給ロール2、回収ロール7、ローラRa~Rc、Re~Rg、ニップローラNR、回転ドラムDRの各々の回転中心線はY軸と平行に設置される。
【0013】
さらに、本実施の形態による塗布装置は、シート基板Pの搬送方向に関して回収ロール7の上流側に配置されるローラRgの位置で、シート基板Pの表面の塗膜の厚みの平均値やシート基板Pの幅方向(
図1中のY方向)の厚み分布等を計測する膜厚計測ユニット12も備えている。また、塗工部5のダイコートのヘッドユニットDCHに対してシート基板Pを安定に支持する回転ドラムDRは、シート基板Pの長尺方向(搬送方向)に関する塗膜の厚みムラの発生を低減する為に、モータを含む回転駆動部4によって所定の回転速度で精密に回転するように主制御ユニット10によって制御される。主制御ユニット10は、供給ロール2から回転ドラムDR(及びニップローラNR)までの間で各ローラRa、Rb、Rcを通るシート基板Pに所定のテンションを与えるように、供給ロール2に回転トルクを付与する駆動部3を制御する。
【0014】
同様に主制御ユニット10は、回転ドラムDRから回収ロール7までの間で各ローラRe、Rf、Rgを通るシート基板Pに所定のテンションを与えるように、回収ロール7に回転トルクを付与する駆動部8を制御する。さらに主制御ユニット10は、塗工部5内に設けられた計測センサーからの計測情報の収集、塗工部5内に設けられた駆動機構(アクチュエータ)への駆動情報(目標値やパラメータ等)の送出、膜厚計測ユニット12からの計測情報の収集、乾燥ユニット6A、6Bへの設定情報(加熱温度や風速等のパラメータ)の送出等を行う。
【0015】
本実施の形態の塗布装置では、
図1に示すように、シート基板Pの搬送方向に沿って2つの乾燥ユニット6A、6Bが配置されているが、これは、シート基板Pに塗布される塗布液の種類や塗布厚によって乾燥条件が異なることに対応する為である。例えば、常温でも揮発性の高い溶剤を含む塗布液を塗工する場合、最初の乾燥ユニット6Aでは溶媒を素早く蒸発させて排気する為に、乾燥ユニット6A内に乾燥用の気体DrAが早い風速で流れるように設定され、後段の乾燥ユニット6Bでは溶剤がほとんど抜けた状態の塗布液を十分に硬化させる為に比較的に高い温度(90℃~200℃)に設定される。乾燥ユニット6A、6Bの各々の内部空間は、電熱ヒータ、赤外線ランプ、セラミックヒータ等によって所定の温度に設定される。なお、シート基板Pの母材は、PET(ポリエチレン・テレフタレート)フィルム、PEN(ポリエチレン・ナフタレート)フィルム、ポリイミドフィルム等の樹脂材とするが、その他に、例えば厚さ100μm以下の極薄のシート状に形成した可撓性を持たせたガラス材、圧延等で薄くシート状に形成したステンレス等の金属材、或いはセルロースナノファイバーを含有する紙材等であっても良い。
【0016】
図2は、
図1に示した塗布装置のうちの塗工部5のヘッドユニット(ヘッド機構)DCHと回転ドラムDRの配置や構成を拡大して示す斜視図である。金属製の回転ドラムDRは、回転の中心線AXoと同軸に取り付けられて回転駆動部4からのトルクが与えられるシャフトSftと、中心線AXoから半径φdの円筒面状の外周面DRaとを有する。シャフトSftは、中心線AXoが床面1(XY面)と平行でY軸と平行になるように塗布装置のボディフレームにベアリングを介して固定され、XZ面内で時計回りに回転される。ゴム製のニップローラNRは、中心線AXoと垂直なXZ面内で見たとき、回転ドラムDRの外周面DRaのうちのシャフトSftよりも下方の位置でシート基板Pをニップするように配置される。シート基板Pは、ニップローラNRに向けて+X方向にほぼ水平に搬送された後、回転ドラムDRの外周面DRaに巻き付いた状態で回転ドラムDRの上方の位置まで搬送され、そこからほぼ水平に+X方向に一定の速度で搬送される。ヘッドユニットDCHは、回転ドラムDRの外周面DRaの最上部の位置でシート基板Pの表面に塗布液Lqを吐出する。
【0017】
本実施の形態におけるヘッドユニット(ヘッド機構)DCHは、Y方向に細長く形成されて、X方向に結合される一対のリップ片部材(スロット片部材とも呼ぶ)HA、HBと、ヘッドユニットDCHのY方向の両端部の各々でリップ片部材HA、HBと結合される端部板HCとで構成される。ヘッドユニットDCHの内部には、塗布液Lqを一時的に貯留する為に、XZ面内でほぼ半円形の断面形状でくり貫かれてY方向に延設されたマニホールドMH(貯留部)と、マニホールドMHの下端部から-Z方向に延設されて、塗布液Lqを通すスロット部SLTとが形成されている。スロット部SLTは一対のリップ片部材HA、HBが結合される部分に形成され、スロット部SLTのX方向の幅は、塗布液Lqの粘性や設定される塗布厚に応じて、数μm~数十μmに設定される。スロット部SLTのY方向の長さは、シート基板PのY方向の幅よりも小さく設定されている。スロット部SLTの最下端部はスリット状の開口となっており、塗布液Lqが一様な流量で吐出する。塗布液Lqは、一対のリップ片部材HA、HBのうち-X方向に位置するリップ片部材HBの側面部に接続される供給チューブSTを介して、ヘッドユニットDCH内のマニホールドMH内に加圧された状態で供給される。これにより、塗布液LqはマニホールドMH内に所定の圧力で満たされ、スロット部SLT内を通ってシート基板Pに向けて吐出される。
【0018】
本実施の形態では、ヘッドユニットDCH内のスロット部SLT(或いはスリット状の開口)のX方向の間隔(リップ間隔、スロット幅)を計測する為に、リップ片部材HAは光学ガラス、石英等の透明な硝材、又はアクリル製やシクロオレフィンポリマー(COP)製等の透明な樹脂材で作られている。これらの硝材や樹脂材は電気的に絶縁性が高い誘電体材料である。リップ片部材HAの外側(+X方向側)には、スロット部SLT(或いはスリット状の開口)のX方向の間隔を計測する為のセンサーユニット(開口幅計測機構)SUがY方向に所定の間隔で複数配置されている。また、リップ片部材HBは、スロット部SLTのX方向の間隔(リップ間隔、スロット幅)を微調整できるようにステンレス(SUS)等の金属材料で作られている。リップ片部材HBの外側(-X方向側)には、スロット部SLT(或いはスリット状の開口)のX方向の間隔を微調整する為の駆動ユニット(アクチュエータ)ACDがY方向に所定の間隔で複数配置されている。本実施の形態では、複数のセンサーユニットSUの各々で計測されるスロット部SLTの間隔に関する計測情報に基づいて、塗工動作中であっても、スロット部SLTの幅のY方向に関する偏差(幅の誤差分布)をリアルタイムに計測することが可能となる。
【0019】
さらに、本実施の形態では、計測されたスロット部SLTの幅の誤差分布に関する計測情報に基づいて、複数の駆動ユニットACDによって、スロット部SLTの幅のY方向の誤差分布を調整することが可能である。駆動ユニットACDは、従来の特開2007-007571号公報に開示されているようなネジによる手動の調整機構であっても良いが、本実施の形態では、推力を発生するアクチュエータを組み込んだ自動の調整機構とする。またセンサーユニットSUは、本実施の形態では、光透過性の硝材によるリップ片部材HAを介してスロット部SLTの幅(X方向の間隔)、すなわちスロット部SLT内に満たされる塗布液LqのX方向の厚みを光学的に計測するように構成される。その為、センサーユニットSUの計測用のエネルギー線としての光(ビーム)は、塗布液Lqに対して透過性を持つ波長帯域に設定される。
【0020】
図3は、
図1に示した塗布装置の塗工部5のヘッドユニットDCHを支持して上下方向(Z方向)に移動させる為の支持機構の概略的な構成を示す斜視図であり、
図2で示したセンサーユニットSUの図示は省略してある。
図3において、ヘッドユニットDCHのY方向の両端部の各々には、固定部材20A、20Bが取り付けられ、固定部材20A、20Bの各々はZ方向に延設されたガイド部材21A、21Bに沿って上下方向に移動可能に支持される。ガイド部材21A、21Bは塗布装置のボディフレームに固定され、ガイド部材21A、21Bの各々の上部には、ヘッドユニットDCHの上端部と結合されたピストン部23A、23BをZ方向に駆動するZ駆動部22A、22Bが設けられている。
【0021】
Z駆動部22A、22Bは、シート基板Pの先端部を回転ドラムDRの外周面DRaに掛け回す際に、ヘッドユニットDCHを外周面DRaから上方に退避させたり、ヘッドユニットDCHの下端部のスリット状の開口部(リップ開口部、スロット開口部)SSとシート基板Pの表面との間のギャップを所定量に設定(微調整)したりする為に、ヘッドユニットDCHを上下動する。さらに、Z駆動部22Aによるピストン部23AのZ方向の駆動量と、Z駆動部22Bによるピストン部23BのZ方向の駆動量とを個別に調整することで、ヘッドユニットDCHの開口部SSのY方向に延びるエッジ端とシート基板Pの表面とのY方向の平行度を微調整することができる。Z駆動部22A、22Bは、送りネジによる粗微動マイクロメータヘッドによる手動の駆動機構であっても良いが、本実施の形態では、推力を発生するアクチュエータを組み込んだ自動の駆動機構とする。
【0022】
図4は、
図1~
図3に示した塗布装置の塗工部5内の各駆動部と、主制御ユニット10内に設けられる塗工制御部10Aとの接続関係を示す制御系のブロック図である。塗工部5内には、
図2、
図3で示したヘッドユニットDCH、複数のセンサーユニットSU、複数の駆動ユニットACD、及びZ駆動部22A、22Bの他に、複数のセンサーユニットSUの各々からの計測信号を入力して、ヘッドユニットDCHのスロット部SLTのX方向の幅、或いは、その幅のY方向における誤差分布に関する計測情報30Aを塗工制御部10Aに出力する計測処理部30と、塗工制御部10Aからの指令情報31Aに基づいて、複数の駆動ユニットACDの各々に駆動信号を出力する駆動制御部31とが設けられる。さらに、塗工部5には、タンク32内の塗布液LqをチューブSTaを介して吸い上げて、ヘッドユニットDCH内のマニホールドMHに接続される供給チューブSTに供給するポンプ33と、供給される塗布液Lqの圧力を計測する圧力計34とが設けられる。圧力計34で計測された計測情報34Aは、塗工制御部10Aに送出され、塗工制御部10AはヘッドユニットDCHに供給される塗布液Lqの圧力が目標値になるようにポンプ33をサーボ制御する。
【0023】
塗工制御部10Aは、
図1に示した膜厚計測ユニット12からの計測情報12Aを入力して、塗工された塗布液Lqの厚みや厚みムラに応じた補正情報を生成して、駆動制御部31に補正の為の指令情報31Aを送出する機能も有する。また塗工制御部10Aは、回転駆動部4をサーボ制御して回転ドラムDRを目標となる回転速度で回転させると共に、Z駆動部22A、22Bをサーボ制御してヘッドユニットDCHのZ方向の高さ位置の調整を行う。さらに塗工制御部10Aには、塗工動作中に生じ得る不具合(エラー)に応じて、塗工動作を緊急に停止させたり、警告メッセージを生成したりする為の発報装置36が接続されている。発報装置36は、塗工制御部10A内に収集される各種の計測情報や生成される駆動制御の情報等に基づいて塗工動作の可否や動作条件(パラメータ)の適否を判定すると共に、緊急停止ボタンからの停止信号も入力する。
【0024】
なお、不図示ではあるが、例えば国際公開第2013/146184号パンフレットに開示されているように、回転ドラムDR(基板支持機構)のシャフトSftと同軸に、回転ドラムDRの半径φdとほぼ同じ半径を有するエンコーダ計測用のスケール円盤を設け、スケール円盤の外周面に周方向に沿って格子状に刻設された目盛(スケール部)をエンコーダヘッドで読み取る構成を設けても良い。そしてエンコーダヘッドから出力される計測信号(90°の位相差を有する2相信号等)に基づいて求められる回転ドラムDRの外周面DRaの周速度を用いて、回転駆動部4をサーボ制御すると良い。その際、回転ドラムDRの中心線AXoから見たとき、エンコーダヘッドの読み取り位置とヘッドユニットDCHの塗布液Lqの吐出位置(塗工位置)とをほぼ同じ方位に配置することにより、回転ドラムDRの外周面DRaの周速度のムラが塗工位置で高精度に計測できるので、サーボ制御によって周速度のムラを十分に小さく抑えることができる。
【0025】
〔ヘッドユニットDCH〕
図5は、本実施の形態における塗工部5のヘッドユニットDCHの構造を分解して示す斜視図である。
図2~
図4で示したように、ヘッドユニットDCHは光透過性の硝材(石英等)によるリップ片部材HAと金属製(SUS等)のリップ片部材HBとを貼り合せた構造となっている。
図5では
図2に示した端部板HCの図示は省略する。リップ片部材HAは、Y方向に細長い板状に形成され、リップ片部材HAのリップ片部材HBと対向する側(内側)の面HA1(内壁面HA1とも呼ぶ)とその反対側(外側)の面HA2(外壁面HA2とも呼ぶ)とはYZ面と平行に設定され、その厚み(面HA1と面HA2のX方向の間隔)は、マニホールドMH内やスロット部SLT内に満たされる塗布液Lqの圧力によって大きく変形しない程度に設定される。本実施の形態では、リップ片部材HAの面HA1は、スロット部SLTの一方の面(内壁面)となる為、全面が光学研磨等によって均一な平面に仕上げられている。
【0026】
リップ片部材HAの外側の面HA2に対して-Z方向(下側)に連なる外側の面HA3は、内側の面HA1との間の厚みが小さくなるように加工されている。外側の面HA3は、内側の面HA1と平行に形成されており、
図2で示した複数のセンサーユニットSUは、外側の面HA3からスロット部SLTのX方向の幅を計測する。リップ片部材HAの外側の面HA3から-Z方向(下側)にテーパー状に連なる面の先端部HA4は、
図3又は
図4に示したスリット状の開口部(リップ開口部、スロット開口部)SSのY方向に延びたエッジとなる部分である。実際の先端部HA4は、X方向の幅が0.5mm~数mm程度でXY面と平行になった面、又はXZ面内で微細な曲率半径で丸められた面となるように研磨されている。さらに、リップ片部材HAのY方向の両端側と+Z方向(上方)の端部には、リップ片部材HBとの貼り合せの為の締結ネジFSを貫通させる複数の孔HA5が形成されている。
【0027】
リップ片部材HBは、Y方向に細長い板状に形成され、リップ片部材HBのリップ片部材HAの内側の面HA1と接触して締結される内側の面HB2、HB3に対して、XZ面内で半円状に窪ませたマニホールドMHと、スロット部SLTの他方の面(内壁面)となるように、面HB2に対してスロット部SLTのX方向の間隔分だけ研磨によって一様に凹ませた平坦な面HB1(内壁面HB1とも呼ぶ)とを有する。本実施の形態では、面HB1のY方向の長さがシート基板P上に塗工可能なY方向の幅に対応しており、面HB1の-Z方向(下方)の先端部HB4は、
図3又は
図4に示したスリット状の開口部(リップ開口部、スロット開口部)SSのY方向に延びたエッジとなる部分である。リップ片部材HBの内側のマニホールドMHとスロット部SLTを形成する面HB1とを囲むように配置される面HB2、HB3には、締結ネジFSが螺合する複数のネジ孔HB5が形成されている。また、マニホールドMHには、
図4に示したように、供給チューブSTからの塗布液Lqを流入させる為のポート部(開口)ST’が形成されている。なお、不図示ではあるが、複数の締結ネジFSで貼り合わされたリップ片部材HAとリップ片部材HBとが接触する面HA1と面HB2、HB3との界面には、加圧された塗布液Lqの滲み出しを防止する為の極薄のパッキングシート材が挟み込まれる。
【0028】
図5に示したヘッドユニットDCHでは、塗布液Lqの流路となるスロット部SLTの内壁を構成するリップ片部材HAの内側の面HA1と、リップ片部材HBの内側の面HB1との平行性を高精度に保つことによって、シート基板P上に塗工される塗布液Lqの厚みのY方向の均一性が確保できる。しかしながら、
図5の構造から明らかなように、リップ片部材HAの先端部HA4側とリップ片部材HBの先端部HB4側とは、スロット部SLT(開口部SS)を形成する必要が有る為、締結ネジFS等による締結ができない。その為、特に粘性の高い塗布液Lqを高い圧力でスロット部SLT内に通すような場合、開口部SS付近のリップ片部材HA、HBが互いに外側に膨らむように変形し、その結果、開口部SSでのスリット幅がY方向に関して均一でなくなり、塗工された塗布液Lqの厚さにムラが生じることになる。そこで、本実施の形態では、センサーユニットSUを用いて、スロット部SLT(開口部SSのスリット)のX方向の幅の変化を光学的に計測する。
【0029】
〔センサーユニットSU(開口幅計測機構)の構成〕
図6は、
図5に示したヘッドユニットDCHをXZ面と平行な面で切断した部分断面と、本実施の形態におけるセンサーユニットSUとの配置関係を示す図である。
図6に示すように、本実施の形態におけるセンサーユニットSUは、光透過性のリップ片部材HAの外側の面HA3からZ方向に位置ずれした2本の計測用の光ビームBMa、BMbの各々を光軸AXmに沿ってスロット部SLTに向けて投射し、リップ片部材HAの内側の面HA1での光ビームBMaの反射ビームと、リップ片部材HBの内側の面HB1での光ビームBMbの反射ビームとの光学特性の変化を検出して、スロット部SLTのX方向の幅(ギャップ)ΔSgの変化を計測する。
図6において、スロット部SLT内には塗布液Lqが-Z方向(下方)に一定の流量で流され、先端の開口部SS(先端部HA4、HB4)から吐出する塗布液Lqは、シート基板Pの表面と開口部SSとのZ方向のギャップ量ΔZg、塗布液Lqの粘性やシート基板Pの移動速度(周速度)に応じて、X方向に関してメニスカス状の液溜りLqaを形成した後、シート基板Pの移動に伴ってX方向に引っ張られていく。
【0030】
本実施の形態では、光ビームBMaのリップ片部材HAの面HA1での反射率、及び光ビームBMbのリップ片部材HBの面HB1での反射率を高める為に、面HA1及び面HB1の一部分に耐酸性、耐アルカリ性の金(Au)等の貴金属、又は耐酸性、耐アルカリ性の物質による反射膜RFa、RFbが形成される。反射膜RFaと反射膜RFbは、投射される光ビームBMa、BMbの高さ方向(Z方向)の位置ずれ量に対応してZ方向のずれた位置に、真空蒸着等によって1μm以下の厚み、望ましくは0.5μm~0.1μm程度の厚みで形成される。先の
図2で示したように、センサーユニットSUはリップ片部材HAの面HA3と対向してY方向に複数並べられる為、反射膜RFa、RFbは、光軸AXmの高さ位置を挟んでZ方向に位置ずれした状態で、それぞれY方向にベルト状に連続して形成しても良い。
【0031】
また、光ビームBMa、BMbの波長は、塗布液Lqがフォトレジストや紫外線硬化樹脂のように、主に紫外域の波長帯域(波長450nm以下)に感光感度を有する感光性塗布液の場合は、その感光感度の波長帯域よりも長い非感光性の波長帯となるように設定される。また、スロット部SLT内の塗布液Lqの厚み(幅ΔSg)が数十μm程度と薄くても、紫外波長~可視波長での光透過率が低くなる塗布液Lqの場合は、光ビームBMa、BMbの波長を赤外域(波長700nm以上)に設定しても良い。
【0032】
図6に示したセンサーユニットSUは、光ビームBMaを面HA1の反射膜RFa上にスポット光として集光させると共に、光ビームBMbを面HB1の反射膜RFb上にスポット光として集光させるように構成され、光ビームBMaの集光点と光ビームBMbの集光点とのX方向の位置ずれ量(フォーカスオフセット量)に基づいて、スロット部SLTの幅ΔSgを計測する。
図7は、2本の光ビームBMa、BMbを用いたセンサーユニットSUの具体的な光学構成を示す斜視図である。
図7において、計測用の光ビームBMa、BMbの源となるビームBMは、半導体レーザ光源やLED等から射出され、不図示のレンズ系によって一定の直径の平行光束に整形された後、開口絞り(NA絞り)40の円形開口に照射され、ビームBMの裾野の1/e
2以下の強度分布がカットされる。開口絞り40の円形開口を透過したビームBM(平行光束)はレンズ系41によって集光され、反射ミラー42で90度に反射されて光軸AXmと平行に進み、面Cpでビームウェストとなった後に発散して偏光ビームスプリッタPBS1に入射する。偏光ビームスプリッタPBS1に入射するビームBMは、ここではY方向の直線偏光であり、偏光ビームスプリッタPBS1の偏光分離面(XY面に対して45°傾いた面)は、面CpからのビームBMをそのまま透過し、1/4波長板QP1を透過したビームBMは円偏光に変換されて、レンズ系L1に入射する。レンズ系L1の光軸は、
図6に示した光軸AXmに相当し、反射ミラー42で反射されたビームBMの主光線(中心光線)は、光軸AXmと平行な状態で、且つ光軸AXmから-Z方向に一定の量だけ偏心した状態でレンズ系L1に入射する。
【0033】
1/4波長板QP1を透過したビームBMは、光ビームBMaとなって、レンズ系L1とレンズ系L2とで構成されるリレー光学系(結像光学系)を介してリップ片部材HAの面HA1に形成された反射膜RFaにテレセントリックな状態で投射される。レンズ系L1、L2によるリレー光学系は、反射ミラー42の後の面Cpと反射膜RFa(面HA1)とを光学的に共役関係(結像関係)にするように設定される。従って、レンズ系L2から射出する光ビームBMaは、反射膜RFa上でスポット光となるような収斂光束にされる。なお、本実施の形態では、レンズ系L1とレンズ系L2によるリレー光学系はテレセントリックな縮小結像系となっており、瞳面Epはレンズ系L1とレンズ系L2の中間位置よりもレンズ系L2側に寄っている。反射膜RFa上でスポット光となって投射された光ビームBMaの反射ビームは、レンズ系L2、瞳面Ep、レンズ系L1を逆進して、1/4波長板QP1に達する。1/4波長板QP1を逆進して偏光ビームスプリッタPBS1に入射する反射ビームは、1/4波長板QP1の作用でZ方向の直線偏光に変換されている為、偏光ビームスプリッタPBS1の偏光分離面で+Z方向に進むように90°で反射され、偏光ビームスプリッタPBS2に入射する。偏光ビームスプリッタPBS2は、偏光ビームスプリッタPBS1と同じ特性のものであり、光軸AXmを中心に偏光ビームスプリッタPBS1を180°だけ回転させた位置に配置される。
【0034】
偏光ビームスプリッタPBS1から+Z方向に進んで偏光ビームスプリッタPBS2に入射した反射ビームは、偏光ビームスプリッタPBS2の偏光分離面で-X方向に進むように90°で反射され、1/4波長板QP2を透過して主光線(中心光線)が光軸AXmと平行に進む光ビームBMbとなって、リレー光学系のレンズ系L1に入射する。その際、偏光ビームスプリッタPBS1から偏光ビームスプリッタPBS2に向かう反射ビームは、偏光ビームスプリッタPBS1と偏光ビームスプリッタPBS2の間の位置でビームウェストとなるように収斂した後に発散して、偏光ビームスプリッタPBS2に入射する。1/4波長板QP2を透過した光ビームBMbは、光軸AXmに対して+Z方向に偏心した状態でレンズ系L1に入射し、瞳面Ep、レンズ系L2を通って、リップ片部材HBの面HB1に形成された反射膜RFbにテレセントリックな状態で投射される。レンズ系L2から射出する光ビームBMbは、反射膜RFaと反射膜RFbとのX方向の間隔が、設計上で設定されているスロット部SLTの幅ΔSgの値と一致している場合、即ち、幅ΔSgに変動が無い場合、反射膜RFb上でスポット光として集光されるように設定されている。
【0035】
反射膜RFb上でスポット光となって投射された光ビームBMbの反射ビームは、レンズ系L2、瞳面Ep、レンズ系L1を逆進して、1/4波長板QP2に達する。1/4波長板QP2を逆進して偏光ビームスプリッタPBS2に入射する反射ビームは、1/4波長板QP2の作用でY方向の直線偏光に変換される為、偏光ビームスプリッタPBS2の偏光分離面をそのまま透過して、ピンホール板43に達する。ピンホール板43上には、反射膜RFb上に形成されるスポット光の反射像がリレー光学系(レンズ系L1、L2)によって拡大投影される。スロット部SLTの幅ΔSgに変動が無い場合、ピンホール板43上に投影されるスポット光の反射像は直径が最も小さく、シャープな強度分布を持つ。そこで、ピンホール板43には、そのスポット光の反射像が最もシャープな状態のときの直径に対応したピンホールが設けられ、ピンホール板43の裏側には、ピンホールを透過して反射ビームの光量(強度)に応じた光電信号44Aを出力するフォトセンサー44が設けられる。フォトセンサー44は、ビームBMの波長域で感度が高い素子であれば良く、シリコンフォトダイオード(SPD)等で構成される。
【0036】
図7のセンサーユニットSUの構成では、スロット部SLTの幅ΔSgが設計値から変動なく維持されている場合、レンズ系41の後の面Cpと、反射膜RFaと、2つの偏光ビームスプリッタPBS1、PBS2の間でビームウェストとなる面Cp’と、反射膜RFbと、ピンホール板43との各々が互いに共役関係となるように設定されている。即ち、
図7のセンサーユニットSUは共焦点型光学センサーとして構成される。
図8は、そのような共役関係と各ビームの収斂/発散の様子をXZ面内で誇張して表した光路図であり、塗布液Lqで満たされたスロット部SLTの幅ΔSgは設計値と一致していて、幅ΔSgの変動量(誤差量)はゼロとする。
【0037】
図7に示したレンズ系41によって収斂された光源からのビームBMは、
図8に示すように、面Cpでビームウェストとなった後、発散光束となって、偏光ビームスプリッタPBS1、1/4波長板QP1を透過して、光軸AXmから-Z方向に偏心した位置で、リレー光学系の前段のレンズ系L1に光ビームBMaとしてテレセントリックな状態で入射する。レンズ系L1を通った光ビームBMaは、その主光線が瞳面Epの中心(光軸AXmの位置)を斜めに通るように進み、リレー光学系の後段のレンズ系L2に入射する。レンズ系L2から射出する光ビームBMaは収斂光束となり、その主光線(中心光線)が光軸AXmと平行なテレセントリックな状態でリップ片部材HAの面HA3から入射して反射膜RFa上でスポット光(ビームウェスト)となるように集光される。従って、この状態のとき、リレー光学系(レンズ系L1、L2)によって、面Cpと反射膜RFaとは光学的に共役な関係(結像関係)に設定されている。反射膜RFaに投射された光ビームBMaの反射ビームBMa’は、光ビームBMaと同じ光路を逆進し、リレー光学系(L1、L2)に入射する。リレー光学系のレンズ系L2から射出する反射ビームBMa’は、面Cpでビームウェストとなるような収斂光束となるが、1/4波長板QP1と偏光ビームスプリッタPBS1の作用によって、偏光ビームスプリッタPBS2の方向(+Z方向)に反射される為、XY面と平行な面Cp’でビームウェストとなるように集光される。
【0038】
面Cp’は、偏光ビームスプリッタPBS1と偏光ビームスプリッタPBS2の間に生成されるが、反射膜RFaの位置で光ビームBMaがビームウェストとなるベストフォーカス状態のとき、面Cp’の偏光ビームスプリッタPBS1の偏光分離面からの距離は、面Cpから偏光ビームスプリッタPBS1の偏光分離面までの距離と等しくなっている。面Cp’でビームウェストとなるように集光された反射ビームBMa’は、発散光束となって偏光ビームスプリッタPBS2に入射し、そこで90°に反射された後、1/4波長板QP2を透過して、光軸AXmから+Z方向に偏心した位置で、リレー光学系のレンズ系L1に光ビームBMbとしてテレセントリックな状態で入射する。レンズ系L1を通った光ビームBMbは、その主光線が瞳面Epの中心(光軸AXmの位置)を斜めに通るように進み、リレー光学系のレンズ系L2に入射する。レンズ系L2から射出する光ビームBMbは収斂光束となり、その主光線(中心光線)が光軸AXmと平行なテレセントリックな状態でリップ片部材HAの面HA3から入射して、スロット部SLTの塗布液Lqを透過して反射膜RFb上でスポット光(ビームウェスト)となるように集光される。
【0039】
従って、この状態のとき、リレー光学系(L1、L2)によって、面Cp’と反射膜RFbとは光学的に共役な関係(結像関係)に設定されている。反射膜RFbに投射された光ビームBMbの反射ビームBMb’は、光ビームBMbと同じ光路を逆進し、リレー光学系(L1、L2)に入射する。リレー光学系のレンズ系L2から射出する反射ビームBMb’は、面Cp’でビームウェストとなるような収斂光束となるが、1/4波長板QP2と偏光ビームスプリッタPBS2の作用によって、偏光ビームスプリッタPBS2を+X方向に透過し、YZ面と平行に配置されるピンホール板43のピンホールの位置でビームウェストとなるように集光される。反射膜RFbの位置で光ビームBMbがビームウェストとなるベストフォーカス状態のとき、ピンホール板43の偏光ビームスプリッタPBS2の偏光分離面からの距離は、面Cp’から偏光ビームスプリッタPBS2の偏光分離面までの距離と等しくなっている。このように、光ビームBMaが反射膜RFaの位置でビームウェストとなり、且つ光ビームBMbが反射膜RFbの位置でビームウェストとなるベストフォーカス状態のとき、ピンホール板43を透過する反射ビームBMb’の光量は最大となり、フォトセンサー44から出力される光電信号44Aのレベルは最も大きな値となる。
【0040】
次に、スロット部SLTの幅ΔSgが設計値から変化した場合を説明するが、ここでは、説明を簡単にする為、センサーユニットSUの各種の光学部材(レンズ系L1、L2、偏光ビームスプリッタPBS1、PBS2、レンズ系41、ピンホール板43等)を保持する保持筐体(鏡筒等を含む保持金物)が、リップ片部材HA(外側の面HA3)に対して少なくともX方向には微動しないように取り付けられているものとする。すなわち、スロット部SLT内の塗布液Lqの内圧の上昇によって、リップ片部材HAがリップ片部材HBに対して+X方向に膨らむように変形した場合でも、
図8に示したセンサーユニットSUの全体(保持筐体)がリップ片部材HA(若しくはリップ片部材HB)と一緒にX方向に変位し、反射膜RFa(若しくは反射膜RFb)とリレー光学系(レンズ系L2)との間の光路長は変化しないものとする。従って、
図8のセンサーユニットSUのフォトセンサー44からの光電信号44Aの強度変化は、リップ片部材HAの内側の面HA1(反射膜RFa)、若しくはリップ片部材HBの内側の面HB1(反射膜RFb)を基準にしたスロット部SLTの幅ΔSgの変動を表すことになる。
【0041】
さらに、
図7で示した開口絞り40の後のレンズ系41のうちの少なくとも1つのレンズは、
図9に示すように、レンズ系41の光軸方向に移動可能に設けられる。
図9は、
図7に示した開口絞り40から面Cpまでの光路部分を拡大して表した斜視図である。本実施の形態では、開口絞り40から平行光束となって射出されるビームBMを入射するレンズ系41は2枚のレンズ41a、41bで構成され、そのうち開口絞り40側のレンズ41aを保持するレンズマウント41cが、リニアアクチュエータ(小型の超音波モータやリニアモータ)50によって光軸方向に所定のストロークで移動可能に設けられる。その移動位置はリニアスケール(エンコーダ)51から出力される位置情報51Aによって計測される。
【0042】
レンズ系41のうちのレンズ41aを光軸方向に移動させることによって、面Cpを通るビームBMのビームウェストの位置(集光位置)を、面Cpを中心とした一定の範囲で、リレー光学系(L1、L2)の光軸AXmに沿った方向(X方向)に移動させることができる。レンズ41aをリニアアクチュエータ50の移動ストロークの中間位置(中立位置)に移動させると、ビームBMのビームウェストは面Cpに位置し、レンズ41aをリニアアクチュエータ50の移動ストロークの最も開口絞り40側に移動させると、ビームBMのビームウェストは集光位置Cpaにシフトし、レンズ41aをリニアアクチュエータ50の移動ストロークの最もレンズ41b側に移動させると、ビームBMのビームウェストは集光位置Cpbにシフトする。
【0043】
本実施の形態では、
図4に示した計測処理部30が、センサーユニットSUの各々のリニアスケール51で計測されるレンズ41aの光軸方向(
図7、
図9中のY方向)の位置情報51Aと、
図7や
図8に示したフォトセンサー44からの光電信号44Aの強度変化とに基づいて、スロット部SLTの幅ΔSgの変動量(誤差量)や、その変動量のY方向の分布等に関する計測情報30Aを生成する。なお、リニアアクチュエータ50の駆動によって、ビームBMのビームウェストの位置が集光位置Cpaと集光位置Cpbとの間で光軸方向にシフトすることから、このようなシフトのことをフォーカスシフトとも呼ぶ。フォーカスシフトは、レンズ系41(2枚のレンズ41a、41b)の全体をリニアアクチュエータ50によって光軸方向に移動させる構成にしても同様に実現できる。
【0044】
図9において、レンズ41aを移動ストロークの中間位置(中立位置)に設定したとき、ビームBMのビームウェスト(集光点)は面Cpに位置し、
図8で説明したように、リレー光学系(L1、L2)から射出する計測用の光ビームBMaは、反射膜RFa上でビームウェストとなるように集光する。反射膜RFaからの反射ビームBMa’は、偏光ビームスプリッタPBS1の偏光分離面で反射されて、面Cp’でビームウェストになるように集光され、さらに偏光ビームスプリッタPBS2で反射されて、計測用の光ビームBMbとなって、反射膜RFbに投射される。X方向に関する反射膜RFaと反射膜RFbの間隔、即ちスロット部SLTの幅ΔSgが設計値(初期値)と一致している場合、フォトセンサー44の光電信号44Aは最も高い強度値となるが、幅ΔSgが設計値(初期値)に対して増加する方向、又は減少する方向に変化した場合、光電信号44Aは最も高い強度値よりも低い値となる。これは、反射膜RFbからの反射ビームBMb’がピンホール板43上でビームウェストにならずにデフォーカスした状態(スポット光の径がボケて広がった状態)で集光される為、ピンホールを透過する反射ビームBMb’の光量が減少するからである。
【0045】
図10は、レンズ41aを等速度で移動させたときにフォトセンサー44から出力される光電信号44Aの強度変化の様子を模式的に表したグラフである。
図10(A)は、横軸を時間とし、縦軸をレンズ41aの移動位置としたレンズ41aの位置変化の一例を表すグラフであり、
図10(B)、
図10(C)、
図10(D)の各々は、横軸を時間とし、縦軸を光電信号44Aの強度値とした信号の強度変化の一例を表すグラフである。
図10(A)において、レンズ41aは時刻T0から時刻T1の間、移動ストロークのプラス側のリミット位置+LMP(例えば、
図9中の最も開口絞り40側の位置)に静止し、時刻T1から等速度で移動ストロークのマイナス側のリミット位置-LMP(例えば、
図9中の最もレンズ41b側の位置)に向けて移動する。その移動の間、レンズ41aは時刻T2で中立位置を横切り、時刻T3でリミット位置-LMPに達して静止する。
【0046】
スロット部SLTの幅ΔSgに変動が無く、設計値(初期値)に維持されている場合、フォトセンサー44からの光電信号44Aの強度は、
図10(B)のように変化する。
図10(A)のようにレンズ41aが時刻T2で中立位置となったときに、光電信号44Aの強度は
図10(B)のように最大値となる。
図4で示した計測処理部30は、時刻T1から時刻T3までの間に、
図9に示したリニアスケール51から出力される位置情報51A(デジタルカウンタでの計測用のアップ/ダウンパルス信号)に対応して、光電信号44Aの強度値をアナログ/デジタルコンバータ(ADC)でデジタル値に変換して、
図10(B)の信号波形をレンズ41aの位置と対応させて波形メモリに記憶する。計測処理部30は、波形メモリに記憶された波形を解析して、波形中の最大値に対応したレンズ41aの位置Pxを特定する。さらに計測処理部30は、その特定された位置Pxが中立位置に対して許容範囲内であれば、スロット部SLTの幅ΔSgが変化していないと判断する。
【0047】
一方、スロット部SLTの幅ΔSgが初期値に対して増加、又は減少していた場合、上記のようにして、レンズ41aを時刻T1から時刻T3の間に等速度でスイープ移動させたときに得られる光電信号44Aの強度は、
図10(C)、又は
図10(D)に示すように、中立位置(初期位置)から許容範囲以上にずれた位置(時刻Ta又は時刻Tb)で最大値(ピーク値)となる。
図10(C)の場合、光電信号44Aの強度が最大値となるレンズ41aの位置Pxaは、中立位置からプラス方向にずれ量ΔEsaだけシフトし、
図10(D)の場合、光電信号44Aの強度が最大値となるレンズ41aの位置Pxbは、中立位置からマイナス方向にずれ量ΔEsbだけシフトしている。そのずれ量ΔEsa、ΔEsbは、スロット部SLTの幅ΔSgの初期値からの変動量に比例している。
【0048】
ここで、スロット部SLTの幅ΔSgの初期値からの変動量をδgとし、光電信号44Aの強度が最大値となるときのレンズ41aの位置Pxの初期位置からのずれ量をΔEsとし、比例定数をkとしたとき、計測処理部30は、δg=k・ΔEsの関係から変動量δgを算出する。比例定数kは、
図7(又は
図8)に示したセンサーユニットSUの主にリレー光学系(レンズ系L1、L2)の倍率や焦点距離等の設計条件から一義的に設定可能である。なお、
図10(A)のようなレンズ41aのスイープ動作は、リミット位置+LMPとリミット位置-LMPとの間で複数回実行し、その間に得られる光電信号44Aのスイープ動作毎の波形を波形メモリに取り込んで、スイープ動作毎に記憶した複数の波形の平均によってピーク位置を特定しても良い。
【0049】
以上のようなセンサーユニットSUは、リップ片部材HAの外側の面HA3と対向して、Y方向に所定の間隔で複数設けられているので、計測処理部30は、センサーユニットSUの各々で計測される光電信号44Aの波形中のピーク位置を求め、それぞれの計測位置(計測用の光ビームBMa、BMbの投射位置)におけるスロット部SLTの幅ΔSgの変動量δgや幅ΔSgの値を計測する。
図11は、スロット部SLTの幅を形成するリップ片部材HAの内側の壁面HA1とリップ片部材HBの内側の壁面HB1とのXY面内での変形の様子を誇張して表した図である。スロット部SLT内に満たされる塗布液Lqの内圧が高くなると、壁面HA1と壁面HB1との間隔である幅ΔSgは、初期の幅ΔSg0に対して大きくなる。特に、スロット部SLTのY方向の中央部分は、その幅ΔSgが最も大きく膨らむように変形する。
図2で示したように、本実施の形態では、スロット部SLTの長手方向(Y方向)に沿って6つのセンサーユニットSU1~SU6が一定間隔で配置される。
【0050】
図4中の計測処理部30は、センサーユニットSU1~SU6の各々からの光電信号44A(
図8)と位置情報51A(
図9)とに基づいて、各々の計測位置で、スロット部SLTの実際の幅ΔSg1~ΔSg6と、初期の幅ΔSg0からの変動量δg1~δg6とを求める。これらの実際の幅ΔSg1~ΔSg6の値と変動量δg1~δg6の値は、計測情報30Aとして
図4の塗工制御部10Aに送られる。センサーユニットSU1~SU6による実際の幅ΔSg1~ΔSg6の値と変動量δg1~δg6の値は、一定のインターバル時間ごと計測(更新)される。そのインターバル時間は、スロット部SLTの幅ΔSgの変動量δgの時間的な変化の頻度や変化の緩慢度に応じた任意の時間に設定することができる。例えば、変動量δgの変化が短時間に発生する場合、インターバル時間は数秒程度に設定され、変動量δgの変化が時間的に緩慢に生じるような場合、インターバル時間は分単位(又は30秒単位)で設定される。
【0051】
〔スロット部SLTの幅のモニター〕
図12は、
図4の塗工制御部10A(又は
図1中の主制御ユニット10)に設けられる制御用のモニター装置(ディスプレー)の表示画面DSPの一例を表す図である。
図12において、表示画面DSPの下段には、計測処理部30から塗工制御部10Aに送られてくる計測情報30Aに基づいて、ヘッドユニットDCHのスロット部SLTの現在の幅ΔSg1~ΔSg6の各々の値に対応した高さを持つバーグラフBg1~Bg6が、センサーユニットSU1~SU6の配置に対応した並びで表示される。バーグラフBg1~Bg6の各々の長さ(高さ)が、計測された実際の幅ΔSg1~ΔSg6の値に対応している。また、各バーグラフBg1~Bg6のうち、幅ΔSgの初期値である幅ΔSg0(初期幅ΔSg0)を中心として設定される許容範囲±ηから外れたバーグラフBg2~Bg5については、初期幅ΔSg0からの変動量δg2~δg5が色分けされて表示される。
【0052】
表示画面DSPの上段には、下段に表示されるスロット部SLTの現在の幅ΔSg1~ΔSg6の分布の下で、塗布液Lqをシート基板P上に塗工した場合に推定される塗布厚のY方向の分布GFが表示される。分布GFは、表示画面DSPの下段に表示されるスロット部SLTの現在の幅ΔSg1~ΔSg6(先端の開口部SSのX方向の幅)の分布の他に、塗布液Lqの粘性、スロット部SLT内の塗布液Lqの圧力、
図6に示したシート基板Pの表面と開口部SSとのZ方向のギャップ量ΔZg、シート基板Pの送り速度等に基づいて、塗工制御部10A(又は
図1中の主制御ユニット10)がシミュレーションを行った結果として表示される。オペレータ(作業者)は、表示画面DSPを見ることによって、分布GFにおける最も薄い部分(Y方向の位置)と、最も厚い部分(Y方向の位置)とを直感的に把握することができる。
【0053】
なお、
図12の表示画面DSPに示したバーグラフBg1~Bg6のうち、バーグラフBg2~Bg5は、許容範囲±ηから大きく外れた状態で表したが、実際の塗工動作の間は、
図2又は
図4で説明した駆動制御部31と複数の駆動ユニットACDによって、計測処理部30で計測された変動量δg1~δg6の各々が、ほぼゼロとなるように、複数の駆動ユニットACDの各々がサーボ制御される為、6つのセンサーユニットSU1~SU6の各々によって計測されるスロット部SLTの幅ΔSg1~ΔSg6の各々は、いずれも初期幅ΔSg0を中心とした許容範囲±η内に収められている。なお、
図12の表示画面DSPの右下に表示される「Adjust」のボタンCBは、センサーユニットSU1~SU6によって計測されるスロット部SLTの幅ΔSg1~ΔSg6の計測値と初期幅ΔSg0との対応関係や、レンズ41aの移動ストローク中の中立位置等を較正するキャリブレーション動作を実行する為のボタンである。
【0054】
〔第1の駆動ユニットACD(電動式)〕
図4で説明したように、複数の駆動ユニットACDが駆動制御部31によって電気的に制御される構成とする場合は、例えば、リップ片部材HBの先端の開口部SSを規定する先端部HB4を、推力が小さい小型のアクチュエータであっても容易に弾性変形するような構造にすることが望ましい。例えば、特開2005-034748号公報に開示されているように、外力により変形して開口部SSに近いスロット部SLTの幅ΔSg(間隔)を容易に変化させることができる薄板を、リップ片部材HBの内壁面HB1に沿って設け、圧電体の歪み(伸縮)を利用したピエゾ素子や、金属の熱膨張を利用したヒートボルト等の電気的なアクチュエータによって薄板を変形させてスロット部SLTの幅ΔSgの長手方向(Y方向)のムラを補正する構成としても良い。
【0055】
図13は、スロット部SLTの内壁面HB1を金属製の薄板TPで形成し、駆動ユニットACDを印加電圧に応じて全長が伸びるピエゾ素子とした場合のヘッドユニットDCHの部分断面を示す図である。駆動ユニットACDは、Y方向に沿った離散的な複数の位置の各々に、伸縮方向がZ軸とX軸の各々に対して約45°になるように設けられる。そしてリップ片部材HBの-Z方向の先端部には、X方向の厚みを小さくしたヒンジ部HgsがY方向に延設される。リップ片部材HBの一部であってヒンジ部Hgsの下側(-Z方向)には、駆動ユニットACDが伸びたときの推力(押圧力)を受ける作用部分HBpが形成されている。
【0056】
また、駆動ユニットACDの作用部分HBpと反対側には、駆動ユニットACDを支持する金属製のバックアップ部材BUが、リップ片部材HBの-X方向の外壁面HB5に固定されている。駆動制御部31からの駆動電圧が駆動ユニットACD(ピエゾ素子)に印加されると、駆動ユニットACDは印加電圧の大きさに応じた量で45°方向に伸びるが、その伸張力を受けて、作用部分HBpと薄板TPの-Z方向の先端部とはヒンジ部Hgsの部分でXZ面内において反時計回りに弾性変形(屈曲)する。これによって、リップ片部材HBの先端部HB4がリップ片部材HAの先端部HA4側に接近するように変位し、スロット部SLTの開口部SSの幅ΔSg(間隔)をミクロンオーダーで減少させることができる。駆動ユニットACDは印加電圧をゼロにすると、駆動ユニットACDは初期の長さに戻り、作用部分HBpと薄板TPの-Z方向の先端部も弾性変形前の状態に戻る。
【0057】
〔第2の駆動ユニットACD(手動式)〕
ところで、複数の駆動ユニットACDが電動式ではなく、マイクロメータヘッド等の手動式による駆動機構(ネジの回転によるスピンドル部の微動)の場合は、
図12に示した表示画面DSPの下段に表示されるバーグラフBg1~Bg6が短時間(例えば、1~5秒間隔)で更新表示されるように設定し、オペレータが表示画面DSPを見ながら、バーグラフBg1~Bg6のうち許容範囲±ηから外れるような変動傾向を示したセンサーユニットSUのY方向の位置に対応した駆動ユニットACD(マイクロメータヘッド)を手動で調整することができる。ヘッドユニットDCHの近傍にモニター装置が無く、オペレータがモニター装置を直視できないときは、表示画面DSPを表示させたタブレット端末をヘッドユニットDCHの近傍に置いて、マイクロメータヘッドの操作(調整作業)を行えば良い。
【0058】
図14は、手動式の駆動ユニットACDとして、マイクロメータヘッドMMHを用いて、ヘッドユニットDCHのスロット部SLTの幅ΔSg(先端の開口部SSのX方向の幅)を調整する為の機構の部分断面を表す図である。ヘッドユニットDCHの断面構造は、先の
図6に示した構造と同じものであり、リップ片部材HAの外壁面HA3側にはセンサーユニットSUが配置され、金属製のリップ片部材HBの-X方向側の外壁面HB5には、金属製の調整用支持部材BUPがネジFscで固着されている。この調整用支持部材BUPは、例えば、従来の技術として挙げた特開2007-007571号公報に開示された構成と同様に、スロット部SLT(開口部SS)が延びるY方向の複数の位置の各々に設けられる。調整用支持部材BUPは、リップ片部材HBよりも高い剛性の金属材料で作られているのが望ましく、調整用支持部材BUPの-Z方向の下半分程度の部分は、リップ片部材HBの外壁面HB5から-X方向に数mm程度の平行な隙間が形成されるように作られている。
【0059】
調整用支持部材BUPの-Z方向の先端付近には開口Uoが形成され、X方向に可動のスピンドル部SPRが開口Uoを通るように調整用支持部材BUPに固定されたマイクロメータヘッドMMHが設けられる。マイクロメータヘッドMMHは、スピンドル部SPRのX方向の粗動の為の粗動用ダイヤルCDgと、スピンドル部SPRのX方向の微動の為の微動用ダイヤルFDgとを備え、スピンドル部SPRは、例えば粗動用ダイヤルCDgの1回転でX方向に250μm移動し、微動用ダイヤルFDgの1回転でX方向に5μm移動する。粗動用ダイヤルCDgや微動用ダイヤルFDgの回転によってスピンドル部SPRを+X方向に移動させることにより、リップ片部材HBの下方部分が調整用支持部材BUPに対して+X方向に押圧される。これにより、リップ片部材HBのマニホールドMHよりも下の部分が、スロット部SLTの幅ΔSg(開口部SSの幅)を狭める方向に僅かに湾曲(弾性変形)する。セットビスLscは調整用支持部材BUPに螺合されて、リップ片部材HBのマニホールドMHのZ方向の高さ位置よりも下方の位置で外壁面HB5に当接する。マイクロメータヘッドMMHによる調整後に、セットビスLscを締め付けることにより、リップ片部材HBのマニホールドMHよりも下の部分の湾曲(弾性変形)の状態がマイクロメータヘッドMMHで調整された状態に維持される。
【0060】
このようなマイクロメータヘッドMMHが取り付けられた調整用支持部材BUPは、リップ片部材HBの面HB5のY方向に沿った複数の位置に設けられており、各々の位置でマイクロメータヘッドMMHを調整することにより、
図11に例示したリップ片部材HBの内壁面HB1のXY面内での湾曲を補正して、スロット部SLT(開口部SS)の実際の幅ΔSg1~ΔSg6の各々を許容範囲内に揃えることが可能となる。なお、マイクロメータヘッドMMHとしては、例えば、シグマ光機株式会社より販売されているウォーム式粗微動マイクロメータヘッドWGP-13R、或いは株式会社ミツトヨより販売されているマイクロメータヘッドMHT-5FP,MHT-LC等が利用できる。
【0061】
〔第2の実施の形態〕
図15~18は、第2の実施の形態による第2のヘッドユニットDCH2の構造を示す図であり、先の
図5、
図6、
図13、
図14に示したヘッドユニットDCHと類似した機能の部材や部分には同じ符号を付してある。また
図15~18の直交座標系XYZは、
図5、
図6に示した直交座標系XYZと合わせてある。
図15はヘッドユニットDCH2をリップ片部材HA側から見た斜視図であり、
図16はヘッドユニットDCH2をリップ片部材HB側から見た斜視図であり、
図17はヘッドユニットDCH2をY方向(スロット部SLTが延びる方向)から見た端面図であり、
図18はヘッドユニットDCH2を下側(スロット部SLTの開口部SS側)から見た斜視図である。
【0062】
本実施の形態では、先の
図5に示したように、複数の締結ネジFSによって互いにX方向に締結されるリップ片部材HAとリップ片部材HBは、共に金属製(例えばステンレス)とする。そして、ヘッドユニットDCH2の内部に形成されるマニホールドMHの下端部から-Z方向に延設されるスロット部SLTは、リップ片部材HAの-X方向側(内側)の平坦な壁面HA1(
図17参照)とリップ片部材HBの+X方向側(内側)の平坦な壁面HB1(
図17参照)とで構成される。スロット部SLTのX方向の幅ΔSgは、壁面HA1と壁面HB1の間に挟み込まれる極薄の金属製のシート部材(シム部材)SMpの厚みで規定される。シート部材SMpのYZ面内で見た外形はリップ片部材HA、HBの外形と同じに形成され、YZ面内で見た内側の形状はスロット部SLTとマニホールドMHとを避けるように矩形に切り取られた形状となっている。また、シート部材SMpには、リップ片部材HAの外側の壁面HA2の周辺部に形成されて締結ネジFSを通す複数の孔HA5(
図15、
図18参照)の各々に対応した位置に、締結ネジFSを通す孔が形成されている。
【0063】
リップ片部材HAの下側(-Z方向側)には、
図15に示すように、Y方向に沿って7つの円形の開口部HL1~HL7(n=1~7としてHLnと呼称することもある)がほぼ一定の間隔で形成されている。7つの開口部HLnの各々は、
図17に示すように、先の第1の実施形態の
図6~
図9で説明した光学的なセンサーユニットSUからの光ビームBMa、BMb、及び反射ビームBMa’、BMb’を通すような大きさ(直径)に設定されている。そして、リップ片部材HAの内壁面HA1のうちの開口部HLnに対応した部分には、開口部HLnをふさぐようなZ方向の寸法を持った光透過性の透明板部材(石英板、光学ガラス板、アクリル板等の誘電体材料)GHpが埋め込まれている。透明板部材GHpのX方向の厚みは、リップ片部材HAのX方向の厚みよりも薄く、1mm~数mm程度に設定され、透明板部材GHpの-X方向側の面は、リップ片部材HAの内側の壁面HA1と同一面となるように、リップ片部材HAの壁面HA1に形成された凹部内に接着剤等で固定されている。透明板部材GHpは、開口部HL1~HL7の各々をふさぐように個別に設けても良いし、開口部HL1~HL7の全体をY方向にまとめてふさぐようにY方向に延設された1枚としても良い。
【0064】
また、本実施の形態のヘッドユニットDCH2には、先の
図13、14で示したように、リップ片部材HBの-X方向側の外壁面HB5に固定された調整用支持部材BUPが設けられる。そしてリップ片部材HBの下側(-Z方向)でX方向の厚みが小さくなった先端の作用部分HBpと調整用支持部材BUPの下側部分(-Z方向)との間には、作用部分HBpをX方向に微動させる為の駆動ユニットACDの複数がY方向に並べて設けられる。本実施の形態の駆動ユニットACDは、
図16~18に示すように、Y方向の6ヶ所に一定間隔で設けられ、パイプPk1~Pk6を介して供給される空圧(加圧、又は減圧)によってX方向の寸法が伸縮することで推力を発生する小型の空圧ポンプで構成される。本実施の形態では、
図18のように、6ヶ所の駆動ユニットACDの各々のY方向の位置が、リップ片部材HAの下側部の7ヶ所の開口部HL1~HL7の各々のY方向の位置の中間付近に設定される。なお、先の
図4に示した塗工部5のポンプ33から供給される塗布液Lqは、
図16、17のように、供給チューブSTとポート部ST’を介して、XZ面内での断面形状が円形のマニホールドMHに供給され、スロット部SLTを通ってヘッドユニットDCH2の先端の開口部SSに供給される。
【0065】
以上、本実施の形態によれば、リップ片部材HAは加工が容易な金属材料で作られ、光学的なセンサーユニットSUからの計測用の光ビームBMa、BMbや反射ビームBMa’BMb’を通す部分だけに開口部HLnが形成される構造となるので、剛性が高いヘッドユニットDCH2にすることができる。さらに、スロット部SLT側の開口部HLnを塞ぐ透明板部材GHpは、第1の実施の形態のリップ片部材HAの下方部の厚さに比べて薄くできるため、センサーユニットSUからの計測用の光ビームBMa、BMbや反射ビームBMa’、BMb’の収斂度や発散度に対応する開口数(NA)を大きくしてスポット光(ビームウェスト)を小さくした場合でも、透明板部材GHpの介在により生じるスポット光のフォーカス方向の集光位置の変化を小さくできる。
【0066】
本実施の形態では、スロット部SLT内で塗布液Lqと接触するリップ片部材HAの内壁面HA1の表面と透明板部材GHpの表面とが同一面となるように設定される。しかしながら、透明板部材GHp(厚みが一定)を開口部SSのY方向の長さに亘って延設した1枚の部材とした場合は、必ずしも同一面にする必要はなく、±数μm程度、或いはスロット部SLTの設定される幅ΔSgに対して±数十%程度までの段差が生じても良い。また、リップ片部材HAの内壁面HA1と透明板部材GHpとは材質が異なる為、塗布液Lqによっては摩擦係数(親撥液特性)が異なる場合があるので、内壁面HA1の表面と透明板部材GHpの表面との両方に、耐酸性、耐アルカリ性、耐腐食性の透明薄膜(親液性、又は撥液性)を蒸着形成しても良い。なお、透明板部材GHpを樹脂材とする場合は、吸水性が低く光透過性が良好な材質(アクリル、シクロオレフィンポリマー等)とするのが良い。
【0067】
〔第3の実施の形態〕
図19~21は、第3の実施の形態による第3のヘッドユニットDCH3の構造を示す図であり、先の
図5、
図6、
図13、
図14に示したヘッドユニットDCH、或いは
図15~18に示したヘッドユニットDCH2と類似した機能の部材や部分には同じ符号を付してある。また
図19~21の直交座標系XYZは、
図5、
図6、或いは
図15~18に示した直交座標系XYZと同じに設定されている。
図19はヘッドユニットDCH3をY方向(スロット部SLTが延びる方向)から見た側面図であり、
図20はヘッドユニットDCH3のY方向の一部分をXZ面と平行な面で破断した断面図であり、
図21はヘッドユニットDCH3の-Y方向側の端部付近をリップ片部材HB側の下方から見た斜視図である。
【0068】
本実施の形態によるヘッドユニットDCH3は、
図19、
図20に示したように、複数の締結ネジFSが貫通する複数の孔HA5が形成された金属製(例えばステンレス)の板状のリップ片部材HAと、リップ片部材HAの平坦な壁面HA1と対向する平坦な壁面HB1を備えた金属製(例えばステンレス)のリップ片部材HBと、壁面HA1と壁面HB1の間にスロット部SLTを形成する為の極薄の金属製のシート部材(シム部材)SMpとで構成される。シート部材SMpは、
図15~18で示したヘッドユニットDCH2のものとほぼ同じ形状に作られ、シート部材SMpの厚みによってスロット部SLTの幅ΔSgが規定される。リップ片部材HAの下方(-Z方向)には、複数の光学的なセンサーユニットSUの各々からの計測用の光ビームBMa、BMbや反射ビームBMa’、BMb’を通すように、Y方向に帯状に延設された開口部HL0が形成され、リップ片部材HAの内壁面HA1側には、開口部HL0を塞ぐように埋設される透明板部材(石英、ガラス、アクリル等)GHpが設けられる。透明板部材GHpのリップ片部材HB側の表面と、リップ片部材HAの内壁面HA1の表面とは同一面となるように設定される。
【0069】
塗布液Lqは、供給チューブSTとポート部(開口)ST’を介して、リップ片部材HAとリップ片部材HBとが接合されたときに内部に形成されるマニホールドMH内に供給され、スロット部SLTを通って先端のスリット状の開口部SS(先端部HA4、HB4)から吐出する。なお、第2の実施の形態と同様に、透明板部材GHpの表面と内壁面HA1の表面との両方に、耐酸性、又は耐アルカリ性、又は耐腐食性の透明薄膜(親液性、又は撥液性)を蒸着形成しても良い。
【0070】
本実施の形態のリップ片部材HBは、XZ面内で見ると、
図19、20に示すように、Z方向に推力(伸縮力)を発生する駆動ユニットACD(複数)の上下を支持する為の-X方向に延設された支持部HB6、HB6’と、リップ片部材HBの支持部HB6’の下方の作用部分HBp(先端部HB4を含む)をXZ面内で微少傾斜させるように、支持部HB6’の根本部分に形成されたヒンジ部Hgsとを有する。リップ片部材HBの上方の支持部HB6は、ヘッドユニットDCH3のY方向の長さに渡ってY方向に連続して延設され、リップ片部材HBのZ方向の中間付近の支持部HB6’は、
図21に示すように、複数の駆動ユニットACDの数に対応してY方向に分離されている。作用部分HBpは、分離された支持部HB6’の各々に対応して、Z方向に延びたすり割り部HB7(
図20、21参照)を挟んでY方向に分離されている。但し、すり割り部HB7はリップ片部材HBの内壁面HB1まで達しないように形成され、すり割り部HB7でのリップ片部材HBのX方向の厚みは作用部分HBpのX方向の厚みよりも小さく設定される。なお、
図20は、すり割り部HB7の位置でリップ片部材HBを破断した状態を示す。また、すり割り部HB7やヒンジ部Hgsはワイヤー放電加工機、レーザ加工機等で容易に形成することができる。
【0071】
以上の構成により、駆動ユニットACDが伸張方向に推力を発生すると、支持部HB6’の作用点PPoがZ方向に微動される。それによって、XZ面内でL字状に一体化している支持部HB6’と作用部分HBpとが、ヒンジ部Hgsを中心にXZ面内で反時計方向に弾性変形により微小回転(傾斜)する。これによって、リップ片部材HBの内壁面HB1の先端部HB4のうち、作用部分HBpに対応した部分がX方向に微小変位し、その部分におけるスロット部SLTの開口部SSの幅ΔSgが狭められる。支持部HB6’の作用点PPoでのZ方向の変位量は、
図19に示すように、ヒンジ部Hgsから作用点PPoまでの長さDxとヒンジ部Hgsから先端部HB4までの長さDz(Dz≦Dx)との比Dz/Dxで決まる比率で、先端部HB4のX方向の変位量に変換される。本実施の形態によるヘッドユニットDCH3も、先の第1の実施の形態の
図2~4に示したヘッドユニットDCHに置き換えることができ、Y方向に延設された開口部HL0に沿って複数の光学的なセンサーユニットSUを配置することによって、透明板部材GHpを通してスロット部SLT(開口部SS)の幅ΔSgのY方向の複数位置での誤差を計測することができる。また、第1の実施の形態の
図4に示した駆動制御部31によって、
図19に示した駆動ユニットACD(複数)を駆動することにより、スロット部SLT(開口部SS)の幅ΔSgを部分的に調整することができる。
【0072】
本実施の形態では、
図20に示したように、リップ片部材HAの下方にY方向に延設された開口部HL0が形成されるので、リップ片部材HBの下方部分(先端部HA4)の剛性が低下する可能性もある。その為、本実施の形態の透明板部材GHpは、第2の実施の形態の透明板部材GHp(
図17)に比べてX方向の厚みが大きく設定され、リップ片部材HAの内壁面HA1に形成された開口部HL0のYZ面内の寸法よりも少し大きな寸法で形成された窪み部内に埋設されて硬化型の接着剤等で固定される。本実施の形態によるヘッドユニットDCH3によれば、スロット部SLTの幅ΔSgを計測する為の構成(開口部HL0、透明板部材GHp)と、スロット部SLTの幅ΔSgを調整する為の微動機構(支持部HB6’、作用部分HBp、ヒンジ部Hgs)とを、少ない部品点数で剛性高く構成することができる。また、L字状に一体化された支持部HB6’と作用部分HBpとのヒンジ部Hgsからの長さの比率Dz/Dx(
図19)を小さくすることで、駆動ユニットACDとして小さな推力のもの、すなわち小型の駆動ユニットACDを使用することができる。
【0073】
〔第4の実施の形態〕
図22は、第4の実施の形態によるヘッドユニットDCH4の構成をY方向から見た部分断面図である。
図22の直交座標系XYZは、
図5、
図6、
図15~18、
図19~21の各々に示した直交座標系XYZと同じに設定されている。また、先の各実施の形態で説明したヘッドユニットDCH、DCH2、DCH3と類似した機能の部材や部分には同じ符号を付してある。本実施の形態では、リップ片部材HA、HBの各々はステンレス等の金属で作られ、リップ片部材HA、HBの各々の内壁面HA1、HB1で規定されるスロット部SLTのX方向の幅(ギャップ)ΔSgを計測する7つのセンサーユニットSU(開口幅計測機構)として、渦電流センサーSK1~SK7(総称する場合はSKnとする)を用いる。
【0074】
渦電流センサーSK1~SK7は、
図15の構成と同様に、Y方向に沿って所定の間隔でリップ片部材HAに形成された円形の開口部HL1~HL7(総称する場合はHLnとする)の各々に、リップ片部材HBの内壁面HB1と対向するように埋め込まれる。渦電流センサーSKnは、交流信号(高周波)の印加によって交流磁束を発生するセンサコイルを含み、センサコイルと対向した金属片(リップ片部材HBの内壁面HB1)に交流磁束が印加されると、金属片の表面に交流磁束の強度に応じた渦電流が発生し、金属片とセンサコイルの間隔変化に応じてセンサコイルの電気的なインピーダンスが変化することを利用したギャップセンサーである。本実施の形態では、そのインピーダンスの変化による電圧変化を計測して、スロット部SLTの幅ΔSgを計測する。
【0075】
渦電流センサーSKnは磁束(磁場)を利用するので、センサコイルの周囲に、ターゲットとしての金属片(リップ片部材HBの内壁面HB1)以外の金属体が存在すると、計測誤差(オフセット)を発生することがある。その為、本実施の形態では、
図22に示すように、渦電流センサーSKnの各々を筒状の非磁性体(非金属、不導体)による絶縁管BF1~BF7(総称する場合はBFnとする)に貫入し、その絶縁管BFnの各々を開口部HL1~HL7に埋め込む構成とする。絶縁管BFnは、剛性が高いガラス、セラミックス、テフロン(登録商標)、ポリカーボネート等の材料で構成され、その肉厚はリップ片部材HAに印加されるセンサコイルからの磁束が低減されるように設定される。また、渦電流センサーSKnの各々は、互いの磁束による相互干渉を受けないようにY方向の間隔が設定される。渦電流センサーSKnは液体中でも使用可能であるので、渦電流センサーSKnの先端部(先端面)をリップ片部材HAの内壁面HA1と同一面とするように配置することも可能である。
【0076】
しかしながら、塗布液Lqに溶剤が含まれている場合、その溶剤によって渦電流センサーSKnの先端部が変質したり腐食したりする可能性があるので、本実施の形態では、先の
図17で説明した透明板部材(石英板、ガラス板等)GHpと同様の板部材(石英板、ガラス板等)GHp’が、リップ片部材HAの内壁面HA1側の開口部HLnの各々をふさぐように設けられている。本実施の形態では、板部材GHp’は渦電流センサーSKnの磁束を良好に透過し、渦電流を発生しない透磁性の材料であって、塗布液Lqによって変質したり腐食したりしない材料であれば良く、必ずしも光透過性を有する必要はない。板部材GHp’のリップ片部材HBの内壁面HB1と対向する側の面は、リップ片部材HAの内壁面HA1と同一の面となるように設定されている。なお、本実施の形態によるヘッドユニットDCH4では、リップ片部材HAの先端部HA4(シート基板Pの搬送方向の下流側で塗布液Lqが流れ出す側)のXZ面内の断面形状は、塗布液Lqを均一な厚みで塗工する為に、角ばった頂角部を面取りして滑らかな微小曲面に形成されている。
【0077】
図23は、
図22に示した渦電流センサーSKnのうち、代表して渦電流センサーSK1によってスロット部SLTの幅ΔSgを計測する計測回路ユニットの一例を示す回路ブロック図である。計測回路ユニットには、一定の周波数(数十KHz~数MHz)の高周波信号を発生する発振回路100、渦電流センサーSK1のセンサコイルに高周波信号を印加すると共に、インピーダンス変化に応じてセンサコイルの両端に印加される高周波信号のレベルが変化する共振回路101、レベル変化する共振回路101からの高周波信号を検波して、高周波信号の振幅に応じた電圧のアナログ信号を出力する検波回路102、検波されたアナログ信号の電圧の変化特性をスロット部SLTの幅ΔSgの変化量と線形に対応付けた計測信号SV1を出力する線形化回路103とを備えている。この計測回路ユニットのうち、共振回路101、検波回路102、線形化回路103は、7つの渦電流センサーSK1~SK7の各々に対して個別に設けられ、発振回路100は共通に設けられる。7つの渦電流センサーSKnの各々に対応した線形化回路103から出力される計測信号SV1~SV7は、先の
図4に示した塗工部5の一部として設けられる計測処理部30に送出される。
【0078】
本実施の形態では、計測処理部30内に、アナログ信号である計測信号SV1~SV7のいずれか1つを任意のタイミング、又は一定時間ごとのタイミングで選択出力するアナログマルチプレクサ回路104と、選択された計測信号SV1~SV7の1つをデジタル値に変換するアナログ-デジタル変換器(ADC)105とが設けられる。計測処理部30は、ADC105から出力される計測信号SV1~SV7のデジタル値に基づいて、先の
図11、
図12で説明したように、スロット部SLTのY方向の7ヶ所の各々の実際の幅ΔSg1~ΔSg7の値と変動量δg1~δg7の値とを計測情報30Aとして生成する。計測信号SV1~SV7から生成された計測情報30Aに基づいて、
図4に示した制御システムによって、スロット部SLTの幅ΔSg1~ΔSg7の各々が目標とする幅の許容範囲内に入るように、
図13、
図14、
図17、又は
図19に示した駆動ユニットACD(マイクロメータヘッドMMH)が駆動(調整)される。また、
図12のように、表示画面DSP上に計測された幅ΔSg1~ΔSg7の値と変動量δg1~δg7の値とを表示しても良い。
【0079】
以上、本実施の形態によるヘッドユニットDCH4では、センサーユニットSUとして小型の渦電流センサーSKnを用いる為、リップ片部材HAに形成する開口部HLnの寸法(直径)を小さくでき、リップ片部材HAの剛性低下を抑えることができる。また、渦電流センサーSKnは、
図23の共振回路101からの高周波信号用のシールド線を接続するだけで良い為、ヘッドユニットDCH4の周囲空間にセンサーユニットSUの一部分となる付加的な構造物が不要となり、コンパクトなヘッドユニットが得られる。なお、スロット部SLTを通る塗布液Lqに金属製(導電性)のナノ粒子が含有されている場合は、金属製のナノ粒子を含有しない塗布液Lqの場合に計測されるスロット部SLTの幅ΔSgの実際の計測値に対して誤差(オフセット)を持って計測されることもある。その為、実際の幅ΔSgと計測信号SVnの値との対応関係を予めキャリブレーションしておくのが良い。
【0080】
〔第5の実施の形態〕
図24は、第5の実施の形態によるヘッドユニットDCH5の構成をY方向から見た部分断面図である。
図24の直交座標系XYZは、
図5、
図6、
図15~18、
図19~21、
図22の各々で規定した直交座標系XYZと同じに設定されている。また、先の各実施の形態で説明したヘッドユニットDCH、DCH2~DCH4と類似した機能の部材や部分には同じ符号を付してある。本実施の形態では、リップ片部材HA、HBの各々はステンレス等の金属で作られ、リップ片部材HA、HBの各々の内壁面HA1、HB1で規定されるスロット部SLTのX方向の幅(ギャップ)ΔSgを計測するセンサーユニットSU(開口幅計測機構)として、静電容量センサーが用いられる。静電容量センサーは、リップ片部材HAの内壁面HA1側に埋め込まれた絶縁体ISPのスロット部SLT(塗布液Lq)に対抗する面側に形成された導電層CDPを一方の電極とし、リップ片部材HBの内壁面HB1を他方の電極として構成され、導電層CDPと内壁面HB1と間に満たされる塗布液LqのX方向の厚み(幅ΔSg)により変化する静電容量を計測する。従って、本実施の形態では、塗布液Lqとして、例えば、金、銅、アルミ、カーボンナノチューブ(金属性)等の金属ナノ粒子等を高い濃度で含んで導電性が高い液体の場合、スロット部SLTのギャップΔSg内の液体の静電容量が相当に小さくなるため、計測精度が得られなかったり、計測自体が困難になったりすることがある。
【0081】
図24において、絶縁体ISPは剛性が高いガラス材やセラミック材等で構成され、導電層CDPは塗布液Lqによる影響を受け難い金等の貴金属やステンレス等で構成される。導電層CDPは、リップ片部材HAの内部をX方向に貫通する孔HA8内に通された配線によって、リップ片部材HAの+X方向の外壁面に固定された絶縁ブッシュ部材を介して金属端子TMHに接続される。この金属端子TMHの近くには、金属端子TMLがリップ片部材HAの+X方向の外壁面に直接植設される。本実施の形態では、リップ片部材HA、HBが共に金属であり、金属製のシート部材(シム部材)SMpを挟んで締結ネジFS(
図5参照)によってX方向に締結されている為、リップ片部材HA、HBは電気的に抵抗が無い導通状態になっている。
【0082】
従って、金属端子TMHと金属端子TMLとの間には、導電層CDPとリップ片部材HBの内壁面HB1との間に満たされる塗布液Lqの厚みに対応した静電容量(所謂、電解コンデンサ)が生じる。本実施の形態でも、絶縁体ISPのリップ片部材HBの内壁面HB1と対向する面は、リップ片部材HAの内壁面HA1と同一面となるように形成され、導電層CDPもなるべく薄くなるように、例えば、1μm~十数μm程度の厚みで形成される。導電層CDPを薄くできないときは、絶縁体ISPの塗布液Lqと接する側の面を導電層CDPの厚み分だけへこませた窪みを形成し、その窪みに導電層CDPを埋め込んでも良い。また、絶縁体ISPと導電層CDPと金属端子TMHは、リップ片部材HAのY方向に分割された複数の領域の各々に設けられる。なお、
図24の構成では、導電層CDPのYZ面内での面積を可能な範囲で大きくしておくのが好ましい。具体的には、導電層CDPのZ方向の最大寸法は、リップ片部材HAの内壁面HA1に沿ったマニホールドMHの直下部から先端部HA4までの間に設定することができる。また、導電層CDPをY方向の複数の領域の各々に設ける場合、個々の導電層CDPのY方向の最大寸法は、リップ片部材HAの内壁面HA1のY方向の寸法を、分割すべき領域の数で除した寸法よりも僅かに短い寸法に設定することができる。
【0083】
図24に示すように、金属端子TMHには、発振器OSCから出力される周波数が数KHz~数MHz程度の範囲の所定周波数の正弦波状の高周波信号(発振信号)が印加される。金属端子TMLは、差動増幅器(オペアンプ)OPAの反転入力に接続される。オペアンプOPAの非反転入力は接地電位(ゼロ電位)に接続され、反転入力と出力の間には抵抗値Rfの帰還抵抗器RRが接続されている。
図24のオペアンプOPAで構成される計測回路接続は、自動平衡ブリッジ回路と呼ばれ、金属端子TMHに接続される計測器VM1で測られる高周波信号の振幅強度E1と、オペアンプOPAの出力に接続される計測器VM2で測られる高周波信号の振幅強度E2との比率を求めることで、塗布液Lqの厚み変化(静電容量の変化)を計測することができる。金属端子TMH、TML間に現れる静電容量によるインピーダンス値Zxは、Zx=Rf・(E1/E2)で求められる。なお、
図24に示した計測器VM1、VM2は、実際は整流回路(検波回路)とアナログ・デジタル変換器等によって振幅強度E1、E2の各々に対応したデジタル値を生成する電子回路等で構成される。
【0084】
2つの平行な電極間に誘電率εの媒体(塗布液Lq)が充填されているとき、電極間の幅(ギャップ)をΔSg、電極の面積(即ち導電層CDPのYZ面内での面積)をASとしたとき、静電容量Cxは一般的に、Cx=ε・AS/ΔSgで求められる。従って、発振器OSCから出力される高周波信号の周波数fの角周波数をω(ω=2πf)とすると、Zx=1/(ω・Cx)の関係から計測されたインピーダンス値Zxに基づいて、静電容量Cxが分かり、さらに塗布液Lqの誘電率εと電極(導電層CDP)の面積ASとが既知であれば、幅ΔSgを求めることができる。その為、本実施の形態では、予め塗布液Lqの誘電率εを正確に計測しておく必要がある。塗布液Lqの誘電率εは、塗布液Lqの温度によっても変化し得るので、スロット部SLTを通るときの塗布液Lqの温度の下で誘電率εを予め計測しておくのが良い。
【0085】
また、
図24では、静電容量センサーの電極としての導電層CDPと絶縁体ISPをリップ片部材HA側にのみ設けたが、同様の構成(導電層CDP、絶縁体ISP、金属端子TMH)をリップ片部材HB側に対向配置しても良い。さらに、リップ片部材HAとリップ片部材HBの両方を絶縁性の材料(石英、ガラス、セラミックス等)で構成する場合は、絶縁体ISPが不要になるが、リップ片部材HAの内壁面HA1とリップ片部材HBの内壁面HB1との各々に導電層CDPと同等の電極面をY方向の分割された領域の各々、或いはY方向の離散的な位置の各々に形成する必要がある。
【0086】
以上、本実施の形態では、センサーユニットSUとして静電容量センサーを用いるので、塗布液Lqの誘電率εが既知の場合は、幅ΔSgn(nは、例えば1~7)の設定値が数μm~数十μmの微小なギャップであったとしても、比較的に高い分解能で実際の幅ΔSgnの各々の値や各変動量δgnを計測することができる。また、スロット部SLTに充填されながら-Z方向に流れる塗布液Lq中に比較的に大きな気泡(径が数ミリ程度)が混じったり、スロット部SLT内で部分的に塗布液Lqが瞬間的に途切れたりした場合、静電容量センサーの導電層CDPとリップ片部材HBの内壁面HB1との間の静電容量が瞬間的に変化する。
【0087】
そこで、
図24の自動平衡ブリッジ回路で計測されるインピーダンス値Zxを短いインターバル時間(例えば、1ミリ秒)で更新計測する計測タイミング制御回路(又は、プロッセサによるソフトウェア計測機能)を設け、インピーダンス値Zxに急峻な変動が生じたか否かを逐次モニターする。そのような急峻な変動が生じたときは、シート基板P上に塗布される塗布液Lqの膜厚に大きなムラが生じた可能性があり、
図4中の発報装置36を作動させたり、シート基板P上のムラが生じた可能性のある部分(領域)をマークしたりすることができる。更新計測のインターバル時間をTicとしたとき、時間Ticは、スロット部SLT内を-Z方向に流れる塗布液Lqの流速Vq(mm/s)と、導電層CDPのZ方向の寸法Lzc(mm)とにより、Tic≦Lzc/Vqの関係に設定されるが、さらには、2・Tic<Lzc/Vqの関係に設定するのが好ましい。
【0088】
〔静電容量センサーの変形例〕
図25は、センサーユニットSUとして
図24の静電容量センサーを用いる場合の変形例による概略構成を示す図であり、直交座標系XYZは、
図24で規定した直交座標系XYZと同じに設定されている。また、
図24で説明したヘッドユニットDCH5や回路構成と類似した機能の部材や部分には同じ符号を付してある。本変形例では、リップ片部材HAの内壁面HA1のY方向に沿って分割された複数の領域の各々に、導電層CDPa、CDPb、CDPc、CDPd、・・・が設けられる。導電層CDPa、CDPb、CDPc、CDPd、・・・の各々は、内壁面HA1のY方向の寸法に亘って延びるように内壁面HA1に埋設された絶縁体ISPの表面に、向かい側のリップ片部材HBの内壁面HB1と対向するように形成される。本変形例の場合、導電層CDPa、CDPb、CDPc、CDPd、・・・の各々のY方向の寸法は、Y方向に隣り合った導電層同士が接触することなく、一定の隙間を空けるように配置される。
【0089】
本変形例では、
図24に示した自動平衡ブリッジ回路と、複数の導電層CDPa、CDPb、CDPc、CDPd、・・・の各々の間に第1のスイッチ回路SW1を設け、複数の導電層CDPa、CDPb、CDPc、CDPd、・・・のいずれか1つが金属端子TMHを介して順番に自動平衡ブリッジ回路と短時間だけ接続されるように切り替える構成とした。
図24では、第1のスイッチ回路SW1を機械的なロータリースイッチで表したが、実際は高周波帯域(数MHz)までの発振器OSCからの高周波信号を電子的に切り替えられるアナログマルチプレクサ回路で構成される。さらに本変形例では、発振器OSCの高周波信号の振幅強度E1とオペアンプOPAの出力信号の振幅強度E2とを、1つの計測器VM3で計測するように、第2のスイッチ回路SW2を設けた。第2のスイッチ回路SW2は、発振器OSCの高周波信号とオペアンプOPAの出力信号とのいずれか一方を計測器VW3に接続するように切り替えるもので、先の第1のスイッチ回路SW1と同様のアナログマルチプレクサ回路で構成される。
【0090】
図25の構成において、第1のスイッチ回路SW1が、例えば、導電層(電極)CDPaの金属端子TMHに発振器OSCからの発振信号を印加するように選択されている状態で、第2のスイッチ回路SW2は、発振器OSCの発振信号を計測器VW3に接続して発振信号の振幅強度E1を計測した後、オペアンプOPAの出力信号を計測器VW3に接続して出力信号の振幅強度E2を計測するように切り替えられる。この切り替え動作は1回でも良いが、高速に複数回行って、計測された複数回の振幅強度E1の平均値と、計測された複数回の振幅強度E2の平均値とを用いて、スロット部SLTの導電層CDPaが設けられた領域での幅ΔSga(又は規定の幅からの変化量)を求めても良い。第1のスイッチ回路SW1が、他の導電層CDPb、CDPc、CDPd、・・・の各々に発振器OSCからの発振信号を印加するように切り替えられた場合も、同様にして、第2のスイッチ回路SW2の切り替えによって、スロット部SLTの導電層CDPb、CDPc、CDPd、・・・の各々が設けられた領域での幅ΔSgb,ΔSgc,ΔSgd,・・・、(又は規定の幅からの変化量)を求めることができる。
【0091】
本変形例では、Y方向に分割された領域の各々でのスロット部SLTの幅ΔSga,ΔSgb,ΔSgc,ΔSgd・・・を求めるために、計測回路として、1つの自動平衡ブリッジ回路を用いて、順次に導電層CDPa、CDPb、CDPc、CDPd、・・・を切り替えるようにした。その為、各導電層CDPa、CDPb、CDPc、CDPd、・・・ごとに計測回路(自動平衡ブリッジ回路)を設けた場合に生じ得る計測回路間の誤差が無くなり、計測されたスロット部SLTの幅ΔSga,ΔSgb,ΔSgc,ΔSgd、・・・の各々の変動状態を正確に比較することが可能となる。
【0092】
〔第6の実施の形態〕
次に、
図26を参照して、スロット部SLTを光学的に観察する為のモニター系が設けられたヘッドユニットDCH6の構成を第6の実施の形態として説明する。
図26の直交座標系XYZは、
図5、
図6、
図15~18、
図19~22、
図24の各々で規定した直交座標系XYZと同じに設定されている。また、先の各実施の形態で説明したヘッドユニットDCH、DCH2~DCH5と類似した機能の部材や部分には同じ符号を付してある。
図26は、ヘッドユニットDCH6をY方向から見た断面図であり、本実施の形態では、先の
図5の構成と同様に、リップ片部材HAがX方向に所定の厚みを有する平行平板状の光透過性材料(例えば、石英)で構成される。一方、リップ片部材HBは、金属材料(例えば、ステンレス)で構成され、スロット部SLTの幅ΔSgを規定する金属製の極薄のシート部材(シム部材)SMpを挟んで、リップ片部材HAと結合される。
【0093】
リップ片部材HBは、先の
図19~21の構成と同様に、スロット部SLTの先端部HB4のX方向の位置を、Y方向に分割した複数の領域の各々で微調整する為に、Z方向に推力を発生する駆動ユニットACDと、リップ片部材HBの内壁面HB1の先端部HB4に近い部分に形成されたヒンジ部Hgsと、ヒンジ部Hgsから先端部HB4までの作用部分HBpと、駆動ユニットACDのZ方向の推力を、ヒンジ部Hgsを中心とした作用部分HBpの微小回転力に変換する支持部HB6’とを備える。また、リップ片部材HBの内壁面HB1に窪みとして形成されるマニホールドMH内には、供給チューブSTとポート部ST’とを介して塗布液Lqが供給される。なお、ポート部ST’の流路の一部と接続されて外気に連通するアウトレット部STpには、マニホールドMH内に供給される塗布液Lqの圧力をモニターする圧力センサー34Bが接続される。その圧力センサー34Bは、先の
図4に示した圧力計34の代わり、又は付加的に設けられ、マニホールドMH内に供給される塗布液Lqの圧力の僅かな揺らぎ、即ち、
図4に示したポンプ33によって不可避的に発生し得る脈動が計測できるような感度を有するのが望ましい。
【0094】
本実施の形態では、リップ片部材HAの全体が平行平板状の光透過性材料で構成されているので、リップ片部材HAの外壁面HA2側からは、スロット部SLT内を流れる塗布液Lqの状態(泡や微小異物の混入、塗布液LqのX方向の厚みムラ等)を、光学的に観察(監視)することが可能である。そこで本実施の形態では、スロット部SLT内の塗布液Lqを観察する為の照明部60と撮像部62とを、リップ片部材HAの外壁面HA2と対向するように配置する。撮像部62は、スロット部SLTを規定する内壁面HA1、HB1と垂直な光軸AXsに沿って配置される撮像レンズ系62Aと、CCDやCMOSによるカラー撮像素子62Bとを有する。撮像部62は、スロット部SLTのY方向(長手方向)に所定間隔で複数設けられ、スロット部SLTのY方向の全体寸法に亘って、各撮像部62のカラー撮像素子62Bの撮像範囲がY方向に継がれるように配置される。カラー撮像素子62Bは、2Kサイズ、又は4Kサイズのフルハイビジョンモード対応の撮像素子が良い。また、撮像部62は、携帯電話、スマートフォン、タブレット等に搭載されているモジュール化された小型撮像ユニット(撮像レンズと撮像素子を含む)にしても良い。
【0095】
照明部60内には、Y方向に一定間隔で一列に並べられた複数のLED光源60Aと、複数のLED光源60Aの各々からの照明光(波長400nmよりも長い波長帯域)を共に入射するように、スロット部SLTのY方向の寸法と同程度の長さを有し、その長手方向にはパワー(屈折力)を有さず、短手方向には一定のパワー(屈折力)を有する細長いシリンドリカルレンズ60Bとが、光軸AXiに沿って配置される。照明部60の光軸AXiは内壁面HA1、HB1に対して傾けて配置され、複数のLED光源60Aからの照明光は、撮像部62の(フォーカスが合されたスロット部SLT)を斜め上方から傾斜照明(暗視野照明とも言う)する。なお、照明部60からの照明光がリップ片部材HAの外壁面HA2に入射する際、外壁面HA2で弱い強度で正反射光が発生すると、その正反射光が撮像部62の撮像レンズ系62Aに直接入射して、撮像した映像にフレアーが生じることもある。その為、
図26のように、照明部60と撮像部62との間の空間に、撮像部62の撮像範囲を遮蔽せずに、外壁面HA2からの正反射光を遮蔽する遮光板60Cが設けられる。遮光板60Cは、シリンドリカルレンズ60BのY方向の寸法と同程度の寸法を有して、Y方向に延設されている。
【0096】
照明部60の複数のLED光源60Aの各々は、照明光として白色のみを発光するもの、白色、赤色→黄色→緑色→青色と連続的又は段階的に発光色が変えられるもの、或いは赤外波長域(700nm以上)の光を発光するものであっても良い。そのように照明光の波長帯域を変えられるようにおくと、スロット部SLT内の塗布液Lqの種類に応じて変化し得る光学的な特性(波長吸収特性)に応じて発光色を調整することができ、撮像された画像の明暗状態やコントラストを良好にすることができる。塗布液Lqがフォトレジストの場合、照明光の波長帯域はフォトレジストの感光波長帯域を外した範囲に設定される。複数のLED光源60Aの各々の発光色の調整や全体的な照明強度の調整は点灯制御回路61によって行われる。点灯制御回路61は、複数のLED光源60Aの各々を連続点灯させるだけでなく、一定の周期で一定時間だけ点灯するパルス点灯させるモードを備えている。パルス点灯モードでは、撮像部62のカラー撮像素子62Bの撮像フレームレート(28fps,30fps,60fps等)に対応した周期で、LED光源60Aの各々をパルス発光させる。
【0097】
撮像部62の複数のカラー撮像素子62Bの各々からの映像信号は画像処理装置63に送られ、画像処理装置63はスロット部SLT内の塗布液Lqの状態を画像解析する。画像処理装置63は、撮像される映像信号を一定の時間ごとにサンプリングして静止画を一時的に記憶する画像メモリ部、記憶した静止画中に現れる可能性のある泡や微小異物等の不純物の像を特定する不純物分析部、スロット部SLT内の塗布液Lqの静止画中のY方向に関する濃淡ムラや色ムラを分析して、塗布液Lqの層厚(正常であれば幅ΔSgと等しい)がY方向に関して減少した部分が生じたか否かを特定する層厚分析部等を備えている。また、画像処理装置63には、撮像されたスロット部SLT内の塗布液Lqの映像をリアルタイムに表示する表示モニターも接続されている。なお、映像信号をサンプリングする時間間隔(インターバル時間)Tisは、撮像部62による撮像範囲(スロット部SLT)のZ方向の寸法をIFz(mm)、スロット部SLT内を-Z方向に流れる塗布液Lqの流速をVq(mm/s)としたとき、Tis≦IFz/Vqに設定され、画像処理装置63はインターバル時間Tis毎にサンプリングする静止画を高速に画像処理する。
【0098】
以上、本実施の形態では、ヘッドユニットDCH6のスロット部SLT内を通る塗布液Lqの状態(気泡や異物等の不純物の混入、層厚のムラ)をリアルタイムに監視(異常検知)することができ、シート基板P上に塗工された塗布液Lqの塗布ムラ発生の可能性を早期に知ることができる。画像処理装置63の不純物分析部や層厚分析部によって異常が検知された場合は、その時点でのシート基板P上のX方向の位置(部分)に塗布ムラが生じている可能性があるので、画像処理装置63の分析結果に応答して、シート基板PのY方向の端部付近、又はシート基板Pの裏面に、塗布ムラ発生を表すマークやパターン等のスタンプを打込んだり印刷したりする刻印部を更に設けておくと良い。
【0099】
〔第7の実施の形態〕
以上の各実施の形態において、センサーユニットSUとして、光学式、磁気式、静電式の各センサー構成を説明したが、光学式のセンサーユニットSUとしては、
図7~
図9に示したような共焦点型光学式センサーの他に、三角測量式変位センサー、分光干渉計センサー等が利用できる。さらに、光学式のセンサーユニットSUとして、被計測面(リップ片部材HAの内壁面HA1、又はリップ片部材HBの内壁面HB1)に面精度の高い反射面(例えば、
図6、
図8中の反射膜RFa、RFb)が形成できる場合は、マイケルソン型、フィゾー型、マッハ・ツェンダー型等のレーザ干渉計システムを利用することもできる。
【0100】
高い計測分解能が得られると共に、小型のヘッド部を有するファイバー伝送式の分光干渉計センサーを用いることができる。
図27は、第7の実施の形態によるヘッドユニットDCH7の構成をY方向から見た部分断面と、スロット部SLTの幅(又は幅の変化)を分光干渉計センサーで計測する場合の構成を示す図である。
図27の直交座標系XYZは、
図5、
図6、
図15~18、
図19~22、
図24、
図26の各々で規定した直交座標系XYZと同じに設定されている。また、先の各実施の形態で説明したヘッドユニットDCH、DCH2~DCH6と類似した機能の部材や部分には同じ符号を付してある。また、分光干渉計センサーとしては、株式会社キーエンスより販売されている「マイクロヘッド型分光干渉レーザ変位計SI-Fシリーズ」等を利用することができる。
【0101】
本実施の形態では、ヘッドユニットDCH7を構成するリップ片部材HA、HBが、金属製とガラス(石英)製のいずれであっても良い。
図27に示すように、リップ片部材HAのZ方向の下方部分(開口部SSに近い位置が望ましい)には、分光干渉計センサーのヘッド部70Aが配置される孔HA8(YZ面内で円形)が形成され、リップ片部材HBのZ方向の下方部分には、分光干渉計センサーのヘッド部70Bが配置される孔HB8(YZ面内で円形)が形成されている。孔HA8、HB8はスロット部SLTを挟んで互いに対向するように配置されるが、スロット部SLTを形成する内壁面HA1、HB1まで貫通しないような深さで形成されている。孔HA8の内壁面HA1側の底部(-X方向)には、YZ面と平行な反射面を有する反射板71Aが設けられ、孔HB8の内壁面HB1側の底部(+X方向)には、YZ面と平行な反射面を有する反射板71Bが設けられる。2枚の反射板71A、71Bの各々の反射面は、スロット部SLTを挟んでX方向に一定の間隔となるように配置されるが、スロット部SLTの幅ΔSgの変化に応じて、2枚の反射板71A、71BのX方向の間隔も変化する。
【0102】
分光干渉計センサーのヘッド部70A、70Bの各々は、ヘッドユニットDCH7のリップ片部材HA、HBとは別に装置内に固定されている固定部材72A、72Bに取り付けられている。固定部材72A、72Bは、低熱膨張係数の金属材(例えば、インバー)やセラミックス等で構成され、スロット部SLTの幅ΔSgの変化、即ち、リップ片部材HA、HBの
図11に示したような変形に影響されることなく、直交座標系XYZ内で安定した状態で保持されている。その為、分光干渉計センサーのヘッド部70Aは、固定部材72Aを基準とした反射板71Aの反射面のX方向の位置変化を計測し、分光干渉計センサーのヘッド部70Bは、固定部材72Bを基準とした反射板71Bの反射面のX方向の位置変化を計測する。従って、スロット部SLTの幅ΔSgが初期の状態のときに、分光干渉計センサーのヘッド部70A、70Bの各々によって反射板71A、71Bの各反射面のX方向の位置を初期位置として予め計測しておき、その初期位置からの変化を逐次計測することで、幅ΔSgの変動を求めることができる。なお、固定部材72A、72Bは、
図3中に示したガイド部材21A、21Bと同様に、塗布装置のボディフレームに固定される。
【0103】
なお、
図27に示した孔HA8、HB8、反射板71A、71B、ヘッド部70A、70Bのセットは、リップ片部材HA、HBのY方向の適当な間隔毎に設けられる。また、リップ片部材HA、HBの各々に孔HA8、HB8が形成し難い場合は、反射板71Aをリップ片部材HAの外壁面HA2の一部に固定し、反射板71Bをリップ片部材HBの外壁面HB2の一部に固定して、その反射板71A、71BのX方向の位置をそれぞれ分光干渉計センサーのヘッド部70A、70Bで計測しても良い。
【0104】
〔その他の変形例1〕
図28A、
図28Bは、ヘッドユニットDCHによる塗工形態が異なる塗布装置の変形例を示し、
図28Aは回転ドラム式の塗布装置におけるヘッドユニットDCHの配置の変形例を示す。
図28Aの直交座標系XYZは、
図5、
図6、
図15~18、
図19~22、
図24、
図26、
図27の各々で規定した直交座標系XYZと同じに設定されている。また、先の各実施の形態で説明したヘッドユニットDCH、DCH2~DCH7と類似した機能の部材や部分には同じ符号を付してある。
【0105】
図28Aは、
図1に示した塗布装置におけるヘッドユニットDCHを縦置きから横置きに変更した構成の塗布装置の概略構成であり、長尺のシート基板Pは、ローラRhに巻き付けられて折り返された後、回転ドラムDR(基板支持機構)の進入位置Pinで接触し始め、上方の離脱位置Poutで回転ドラムDRの外周面から離れるように搬送される。進入位置Pinは、回転ドラムDRの中心線AXoから見たときに-X方向(時計の9時方向)と-Z方向(時計の6時方向)の間の角度方位に設定される。ヘッドユニットDCHのスロット部SLTの先端の開口部SSは、回転ドラムDRの中心線AXoから見たときに-X方向(時計の9時方向)の塗布位置Pcdでシート基板Pと対向するように配置される。また、ヘッドユニットDCHには、先の各実施の形態や変形例のいずれかと同様に、光学式、静電容量式、電磁気式(渦電流式)のいずれかによる複数のセンサーユニットSUnと、複数の駆動ユニット(アクチュエータ)ACDがY方向に並べて設けられる。
【0106】
さらに、
図28Aの回転ドラムDRには、シート基板Pを40℃~80℃の範囲の所定温度に温める為に、外周面の全体を加熱する温調ヒータHTFが設けられている。これは、塗布液Lqが接着剤のように常温(室温)では粘性が高く、温めることで粘性を低減させて塗布膜の厚みを一様化する為である。シート基板Pは、回転ドラムDRの進入位置Pinから離脱位置Poutの間の約150°~120°に亘って回転ドラムDRの外周面に密着して、外周面の温度に馴染む。なお、塗布液Lqの温度と回転ドラムDRの外周面の温度とを±5%以下の温度差に設定する為、ヘッドユニットDCHを構成するリップ片部材(スロット片部材)HA、HBの温度と、ヘッドユニットDCHに供給される塗布液Lqの温度とを調整する温調ヒータ部材が設けられている。
【0107】
ここで、回転ドラムDRの外周面の半径をφd(mm)、シート基板Pの搬送速度をVcp(mm/秒)、進入位置Pinから塗布位置Pcdまでの回転角度をθk、常温のシート基板Pを所定温度(目標温度)の物体に接触させた瞬間からシート基板Pがその目標温度に馴染むまでの時間(温度遷移時間)をTz(秒)としたとき、
〔2・π・φd・(θk/360)〕/Vcp≧Tz
の関係となるように設定される。この条件を満たすようにすると、シート基板Pが進入位置Pinから塗布位置Pcdに移動するまでに、シート基板Pの温度を目標温度に設定することができる。また、この条件を満たす為に、回転角度θkを調整するように進入位置Pin又は塗布位置Pcdを外周面に沿った周方向に変更しても良い。進入位置Pinの調整はローラRhの配置を変更することで可能である。
【0108】
図28Aのように、塗布液Lqの温度が常温に対して数十度以上(例えば、50~80℃程度)に加熱された状態で、ヘッドユニットDCH内のマニホールドMH、スロット部SLTに供給される塗布装置では、リップ片部材HA、HBも塗布液Lqの温度と同じ温度になることから、常温時に、スロット部SLTの幅ΔSgを塗布液Lqの圧力に応じて最適に調整したとしても、実際の塗工処理中には、リップ片部材HA、HBの温度上昇による熱膨張を原因として、Y方向に関するスロット部SLTの幅ΔSgの分布が大きく変動する場合もある。先に説明した各実施の形態によれば、塗布液Lqが加熱されてリップ片部材HA、HBが熱膨張したとしても、スロット部SLTの幅ΔSgの変化を複数のセンサーユニットSUによってほぼ直接的にリアルタイムに計測することが可能なので、
図4(並びに、
図13、
図17、
図19、
図26)に示した駆動ユニット(アクチュエータ)ACDによって、スロット部SLTの幅ΔSgがY方向に一様(均一)になるように塗工動作中であっても迅速に補正することができる。
【0109】
〔その他の変形例2〕
図28Bはシート基板を平坦搬送する塗布装置の概略構成を示し、
図28Bの直交座標系XYZは、
図5、
図6、
図15~18、
図19~22、
図24、
図26、
図27の各々で規定した直交座標系XYZと同じに設定されている。また、先の各実施の形態で説明したヘッドユニットDCH、DCH2~DCH7と類似した機能の部材や部分には同じ符号を付してある。
図28Bにおいて、シート基板Pは、シート基板Pの両面を挟み込むニップローラNRa、NRbによって一定のテンションが付与された状態で、下流側のローラRjに向けて所定速度で平坦状に搬送される。
図28Aと同様のヘッドユニットDCHは、ニップローラNRa、NRbとローラRjの間で、スロット部SLTの先端の開口部SSが+Z方向(上向き)になるように配置される。
【0110】
本変形例では、シート基板Pの裏面側(-Z側)が被塗工面となっており、シート基板Pの搬送方向に関して下流側に位置するヘッドユニットDCHのリップ片部材(スロット片部材とも呼ぶ)HAの先端部HA4は、上流側に位置するリップ片部材(スロット片部材とも呼ぶ)HBの先端部HB4よりも+Z方向に僅か(数μm~数十μm)に突出するように構成されている。シート基板Pは、リップ片部材HAの先端部HA4に所定の摩擦力で接触するように搬送され、スロット部SLTの先端の開口部SSから吐出される塗布液Lqは、リップ片部材HBの先端部HB4とシート基板Pの裏面との間の隙間を満たされた状態でシート基板Pに塗布される。塗布液Lqが塗工されたシート基板Pは、ローラRjで+Z方向に折り曲げられ、
図1に示された乾燥ユニット6Aに搬入される。
【0111】
本変形例のように、ヘッドユニットDCHによる塗布位置において、シート基板Pを保持する基板支持機構が設けられていない場合であって、シート基板Pが光透過性(透明)の場合、
図28B中でシート基板Pの+Z方向側に計測機構や観察(撮像)機構を設ければ、ヘッドユニットDCHのスリット状の開口部SSから吐出される塗布液Lqの状態を、シート基板Pを介して計測または観察することができる。例えば観察(撮像)機構を用いる場合は、開口部SSから吐出されて、ヘッドユニットDCHの先端部HA4の上面とシート基板Pとの間を通る塗布液Lq、或いは先端部HA4を通過した直後にシート基板Pに付着した塗布液LqのY方向の厚みムラを、色ムラ又は濃度ムラとして観察又は計測可能であり、その計測結果に基づいてスロット部SLTの幅ΔSg(開口部SSの幅)の変化を検知することもできる。なお、
図28Bでは、ヘッドユニットDCHをシート基板Pの下方側(-Z方向側)に配置したが、シート基板Pの上方側(+Z方向側)に配置して、開口部SSを規定するリップ片部材HBの先端部HB4がシート基板Pの上面側と接触するように配置しても良い。
【0112】
〔その他の変形例3〕
以上の各実施の形態や変形例では、ロール・ツー・ロール方式で可撓性の長尺なシート基板Pに対して塗布液Lqを塗工する塗布装置を例示したが、被塗工体としては、縦寸法と横寸法とが規定された枚葉の基板(ガラス基板、金属板、樹脂基板、用紙)であっても良い。その場合、枚葉の基板は平坦な支持面を有する基板ホルダ(基板支持機構)上の当該支持面に吸着保持され、基板ホルダは駆動機構によって基板の表面に沿って一次元に移動される。その移動の間、先に説明したヘッドユニットDCH(或いはDCH2~DCH7のいずれか)の先端部HA4、HB4の開口部SSを基板の表面から所定のギャップ量ΔZg(
図6参照)に設定することにより、枚葉の基板上に塗布液Lqが所定の厚みで塗工される。
【0113】
枚葉の基板の場合は、特に基板上の塗工開始位置と塗工終了位置とを正確に設定する必要がある。そこで、基板上の四隅、或いは基板上の塗工領域の端部付近に、開始位置を表すアライメントマークと終了位置を表すアライメントマークを予め形成しておき、そのアライメントマークを検出するアライメントセンサーを、塗工時の基板の移動方向に関してヘッドユニットDCHの塗布位置から上流側に一定間隔だけ離して設ける。アライメントセンサーは、移動する基板上の開始位置を表すアライメントマークを検出したことを、
図4に示した塗工制御部10Aに通知し、塗工制御部10Aはポンプ33を起動して、ヘッドユニットDCHに塗布液Lqを供給する。なお、ポンプ33の起動直前において、塗布液LqはマニホールドMH内とスロット部SLT内とに充填されているが、ポンプ33による塗布液Lqの加圧供給が無い為、開口部SSからは吐出されない。そして、アライメントセンサーが基板上の終了位置を表すアライメントマークを検出したことを塗工制御部10Aに通知すると、塗工制御部10Aは直ちにポンプ33を停止する。
【0114】
このように、基板上の塗工領域の位置を表すようにアライメントマークが形成されていて、塗布装置側にアライメントマークを検出するアライメントセンサーが設けられている場合は、基板上に設定された塗工領域のみに正確に塗布液Lqを成膜することができる。このことは、枚葉の基板に限らず、先の各実施の形態や変形例で説明したような回転ドラムDRで支持されて搬送される長尺なシート基板Pに対しても同様に適用できる。その場合、アライメントマークは、シート基板Pの幅方向(Y方向)の両端付近に、例えば塗工領域の長尺方向の長さに亘って一定間隔で設けられる。その塗工領域の長尺方向の長さが200cmで、次の塗工領域までの長尺方向の間隔(余白)が15cmである場合、アライメントマークは塗工領域に付随して長尺方向に例えば10cm間隔で形成される。従って、アライメントセンサーがシート基板Pの移動中に塗工領域に付随した最初のアライメントマークを検出した時点でヘッドユニットDCHからの塗布液Lqの吐出を開始し、その後、アライメントセンサーがアライメントマークを20(200cm/10cm)回検出した時点で、ヘッドユニットDCHからの塗布液Lqの吐出を停止させればよい。
【0115】
このように、枚葉の基板上、又はシート基板P上に設定された塗工領域に正確に塗布液Lqを成膜する際、
図4に示したポンプ33の起動/停止の応答時間が短いことが好ましい。ポンプ33の起動/停止の応答特性が急峻ではなく比較的に緩慢な場合は、
図4中の供給チューブST、又はチューブSTaの流路中に液体用の電磁弁を設けたり、チューブST、STa自体を機械的にクランプするクランパーを設けたりすれば良い。
【0116】
〔その他の変形例4〕
先の
図5、
図14に示したヘッドユニットDCH、又は
図26に示したヘッドユニットDCH6の場合、センサーユニットSU(SU1~SU6)や撮像部62が配置される側のリップ片部材HAは、全体が光透過性の誘電体材料(ガラスや石英等の硝材、アクリル等の樹脂材)で構成される。その為、リップ片部材HAの外壁面HA3側からは、スロット部SLTの他に、その上のポート部(開口)ST’を通してマニホールドMH(貯留部)内に一時的に貯留される塗布液Lqの状態も観察することができる。そこで、先の
図26に示したような撮像部62(及び照明部60)と同様の撮像部を、マニホールドMH内の塗布液Lqを観察するようにY方向に複数並べて配置しても良い。これによって、塗布液Lq内に混入した異物(ゴミ)や気泡の有無を画像解析によって調べることができる。
【0117】
更に、リップ片部材HAの全体が光透過性の誘電体材料で構成されるので、マニホールドMH内、又はスロット部SLT内に混入した異物や気泡を、超音波照射器やレーザー光照射器によって、塗工性能上で問題無い程度の粒径(塗布液Lqの基板上での設定厚みよりも小さいサイズ)に粉砕することもできる。超音波照射器は、例えば誘電体材料によるリップ片部材HAに超音波振動子を取り付けて、常時、振動を与え続けても良い。レーザー光照射器を用いる場合は、塗布液Lqの光学特性(感光性、吸収性)を考慮して、塗布液Lqを変質させないような波長帯域であって、繰り返し発振周波数が高く、ピーク強度が大きい高輝度なパルスレーザー光を発生する光源を用いることができる。なお、塗布液Lqが紫外線硬化性の樹脂液の場合、スロット部SLT内を流れる塗布液Lqに、調整された強度で紫外線(波長436nm以下)を照射すると、スロット部SLTの開口部SSから吐出される塗布液Lq(紫外線硬化性の樹脂液)の粘性が高まり、基板(シート基板P)上に塗工される塗布液Lqを厚くすることができる。
【0118】
〔その他の変形例5〕
先の各実施の形態や変形では、例えば
図11、
図25に示したように、ヘッドユニットDCH(又はDCH2~DCH7)のスロット部SLT(又は開口部SS)のX方向(第2方向)に関する幅ΔSgを計測するセンサーユニットSUを、スロット部SLTの長手方向(Y方向)の複数個所の各々に設けた。しかしながら、Y方向に関する幅ΔSgの変化量の分布が、スロット部SLTのY方向の中心位置での幅ΔSgの計測のみで予測可能な場合は、その中心位置の1ヶ所だけにセンサーユニットSUを設けても良い。その場合、中心位置の1ヶ所だけのセンサーユニットSUによる幅ΔSgの計測値と、スロット部SLTの全体のY方向における幅変化の分布特性との相関を事前に求めて、データベース化しておく必要がある。
【0119】
〔その他の変形例6〕
先の各実施の形態や変形例において、シート基板Pの移動方向に関して下流側に位置するリップ片部材HAの全体、又は一部分を誘電体材料(硝材や樹脂材)としたが、シート基板Pの移動方向に関して下流側に位置するリップ片部材HBの全体、又は一部分を誘電体材料(硝材や樹脂材)としても良い。先の
図6、
図22に示したように、シート基板Pの移動方向に関して上流側に位置するリップ片部材HBの先端部HB4とシート基板Pとの間には、塗布液Lqが-X方向に膨らんだメニスカス状の液溜りLqaが形成される。その液溜りLqaのメニスカス状態がY方向に関して崩れることなく安定していると、シート基板P上に成膜される塗布液Lqもムラなく一様な厚みで塗工される。
【0120】
そこで、リップ片部材HBの全体を光透過性の誘電体材料(硝材や樹脂材)とすると、リップ片部材HBの外壁面HB3等を介して、先端部HB4とシート基板Pとの間に形成される塗布液Lqの液溜りLqaを撮像装置によって光学的に観察可能となる。撮像装置からの映像信号に基づいて、液溜りLqaのメニスカス状態の変化を画像解析することによって、Y方向に関する塗布ムラ(膜厚の変化)の発生をリアルタイムに検知することもできる。更に、画像解析で得られた液溜りLqaのメニスカス状態の変化に基づいて、スロット部SLT(開口部SS)のY方向における幅ΔSgの分布を調整するように、
図4中の駆動制御部31を介して複数の駆動ユニット(アクチュエータ)ACDの各々を駆動しても良い。
【0121】
以上の各実施の形態や各変形において、センサーユニットSUは、ヘッドユニットDCHの幅ΔSgのスロット部SLT内に満たされる塗布液Lqの液厚の変化を計測するものであり、撮像部62は、スロット部SLT内(又はマニホールドMH内)の塗布液Lqの状態を観察するものである。計測や観察の為のエネルギーは、光、電場(静電容量計測)、磁場(渦電流計測)の他に、X線やγ線も利用できる。その場合、リップ片部材HA、HBの全体、又は一部分は、X線やγ線に対して透過性を有する材料で構成される。
【0122】
また、以上の各実施の形態や各変形例に示したヘッドユニットDCHやセンサーユニットSUは、基板上に塗布すべき塗工液を途中で切り替える場合、或いは2種以上の塗工液を順に重ね塗りする場合を考慮して、回転ドラムDRの外周面の周方向(或いは基板を平坦に支持する場合は基板の移動方向)に沿った複数ヶ所の各々に、それぞれの塗工液の特質(粘性、透明度、導電度、温度等)に応じて予めスロット部SLT(開口部SS)の幅ΔSgやギャップ量ΔZg等が調整されたヘッドユニットDCH(及びセンサーユニットSU)を配置しても良い。
【0123】
さらに、以上の各実施の形態や各変形例では、基板Pと対向する先端部に形成されるスリット状の開口部SS(スロット部SLTの先端)が1本の場合のヘッドユニットDCHとしたが、例えば、特開2002-136909号公報に開示されているように、スリット状の開口部の複数を近接させて平行に並べて、各開口部から異なる塗布液を同時に吐出させて複数層の塗膜を重層塗工する構成のヘッドユニットであっても良い。その場合、複数のスリット状の開口部SSの各々の幅ΔSgは、ヘッドユニットDCHを構成する透明なリップ片部材HAや透明板部材GHp(
図17参照)を介してスロット部SLTの幅を計測する光学式のギャップセンサー(
図8参照)と、リップ片部材(スロット片部材)HA、HB内に埋め込み可能な渦電流センサーSK(
図22参照)や静電容量センサー(
図24参照)とを併用する(基板の移動方向に関する開口部SSの配置に応じて使い分ける)ことにより、独立に計測可能である。
【0124】
上記の各実施の形態や各変形例で示したリップ片部材(スロット片部材)HAの内壁面HA1、リップ片部材(スロット片部材)HBの内壁面HB1や
図5で示した面HB2、HB3は、機械加工やラッピング(研磨)処理によって、その平坦性がサブミクロン以下になるように仕上げられている。特に、
図15~
図21に示したように、極薄の金属製のシート部材(シム部材)SMpの厚みによって、スロット部SLTの幅ΔSgを規定する構造のヘッドユニットDCHの場合、シム部材SMpと密着するリップ片部材(スロット片部材)HA、HBの内壁面側の各面の平坦度が悪いと、その密着部から塗布液が染み出す場合もある。その為、ラッピング処理によって平坦化された面の上に、表面をナノメートルオーダーで高精度に平坦化研磨した石英板(光学原器)を載せて、その接触界面での光(単色光)の干渉により生じるニュートン縞の状態を観察することで、ラッピング処理の適否が判断できる。
【符号の説明】
【0125】
2…供給ロール
4…回転駆動部
5…塗工部
6A、6B…乾燥ユニット
7…回収ロール
10A…塗工制御部
12…膜厚計測ユニット
30…計測処理部
31…駆動制御部
44…フォトセンサー
44A…光電信号
60…照明部
62…撮像部
63…画像処理装置
70A、70B…分光干渉計センサーのヘッド部
ACD…駆動ユニット(アクチュエータ)
AXo…中心線
BMa、BMb…光ビーム
CDP、CDPa、CDPb、CDPc、CDPd…導電層
DCH、DCH2~DCH7…ヘッドユニット
DR…回転ドラム(基板支持機構)
GHp…透明板部材
GHp’…板部材
HA、HB…リップ片部材(スロット片部材)
HA1、HB1…内壁面
HA4、HB4…先端部
HTF…温調ヒータ
Lq…塗布液
MH…マニホールド(貯留部)
MMH…マイクロメータヘッド
OSC…発振器
P…シート基板
RFa、RFb…反射膜
SK1~SK7…渦電流センサー
SLT…スロット部
ΔSg、ΔSg1~ΔSg6…幅
SMp…シート部材(シム部材)
SS…開口部
SU、SU1~SU6…センサーユニット
δg1~δg6…変動量
SV1~SV7…計測信号