(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】ウェーハ製造システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
(21)【出願番号】P 2021563772
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2020039528
(87)【国際公開番号】W WO2021117351
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2019222402
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】醍醐 重
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-064798(JP,A)
【文献】特開2006-093641(JP,A)
【文献】特開2004-025057(JP,A)
【文献】特開2006-093446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサを備えたウェーハ製造装置と、
データ通信ラインを介して前記ウェーハ製造装置に接続され、前記ウェーハ製造装置を制御するホストPCと、
前記センサのアナログ出力信号をサンプリングして記憶するロジックコントローラと、
前記データ通信ライン上を流れる前記ウェーハ製造装置が処理中のウェーハ又は単結晶のトラッキング情報を抜き出して前記ロジックコントローラに送る中継PCとを備え、
前記センサのアナログ出力信号は2分岐され、一方のアナログ出力信号は前記ウェーハ製造装置の動作を制御するために使用され、他方のアナログ出力信号はデータ収集のために前記ウェーハ製造装置から独立して設けられた前記ロジックコントローラに送られ、
前記ロジックコントローラは、前記センサのアナログ出力信号のデジタル値を前記中継PCから送られてくる前記トラッキング情報に関連付けて記憶することを特徴とするウェーハ製造システム。
【請求項2】
前記ロジックコントローラが記憶している前記センサのアナログ出力信号のデジタル値を周期的に収集するデータ収集装置をさらに備え、
前記データ収集装置は、前記ロジックコントローラが記憶している前記センサのアナログ出力信号のデジタル値及び前記トラッキング情報の組み合わせからなるデータレコードをデータ取得日時と関連付けて記録する、請求項1に記載のウェーハ製造システム。
【請求項3】
前記ロジックコントローラは、前記データ収集装置が前記ロジックコントローラから前記デジタル値を収集する周期よりも短いサンプリング周期で前記センサのアナログ出力信号をサンプリングして記憶する、請求項2に記載のウェーハ製造システム。
【請求項4】
前記データ収集装置が前記ロジックコントローラから前記センサのアナログ出力信号のデジタル値を収集する周期は1秒以下である、請求項3に記載のウェーハ製造システム。
【請求項5】
前記トラッキング情報は、インゴットID、ブロックID、ウェーハID、ロットID及びスロットIDから選ばれた少なくとも一つの識別コードである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のウェーハ製造システム。
【請求項6】
前記ロジックコントローラは、前記ウェーハ製造装置が前記ウェーハ又は単結晶を処理していない期間中も前記センサのアナログ出力信号のデジタル値を記録する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のウェーハ製造システム。
【請求項7】
前記ロジックコントローラは、前記ウェーハ製造装置の動作状態に依存しない任意の頻度で、前記トラッキング情報と前記センサのアナログ出力信号のデジタル値を記録する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のウェーハ製造システム。
【請求項8】
メインセンサ
及び追加センサを備えたウェーハ製造装置と、
データ通信ラインを介して前記ウェーハ製造装置に接続され、前記ウェーハ製造装置を制御するホストPCと、
前記
追加センサのアナログ出力信号をサンプリングして記憶するロジックコントローラと、
前記データ通信ライン上を流れる前記ウェーハ製造装置が処理中のウェーハ又は単結晶のトラッキング情報を抜き出して前記ロジックコントローラに送る中継PCとを備え、
前記メインセンサのアナログ出力信号は前記ウェーハ製造装置の動作を制御するために使用され、前記追加センサのアナログ出力信号はデータ収集のために前記ウェーハ製造装置から独立して設けられた前記ロジックコントローラに送られ、
前記ロジックコントローラは、前記
追加センサのアナログ出力信号のデジタル値を前記中継PCから送られてくる前記トラッキング情報に関連付けて記憶することを特徴とするウェーハ製造システム。
【請求項9】
前記ロジックコントローラが記憶している前記
追加センサのアナログ出力信号のデジタル値を周期的に収集するデータ収集装置をさらに備え、
前記データ収集装置は、前記ロジックコントローラが記憶している前記
追加センサのアナログ出力信号のデジタル値及び前記トラッキング情報の組み合わせからなるデータレコードをデータ取得日時と関連付けて記録する、
請求項8に記載のウェーハ製造システム。
【請求項10】
前記ロジックコントローラは、前記データ収集装置が前記ロジックコントローラから前記デジタル値を収集する周期よりも短いサンプリング周期で前記
追加センサのアナログ出力信号をサンプリングして記憶する、
請求項9に記載のウェーハ製造システム。
【請求項11】
前記データ収集装置が前記ロジックコントローラから前記
追加センサのアナログ出力信号のデジタル値を収集する周期は1秒以下である、
請求項10に記載のウェーハ製造システム。
【請求項12】
前記トラッキング情報は、インゴットID、ブロックID、ウェーハID、ロットID及びスロットIDから選ばれた少なくとも一つの識別コードである、
請求項8乃至11のいずれか一項に記載のウェーハ製造システム。
【請求項13】
前記ロジックコントローラは、前記ウェーハ製造装置が前記ウェーハ又は単結晶を処理していない期間中も前記
追加センサのアナログ出力信号のデジタル値を記録する、
請求項8乃至12のいずれか一項に記載のウェーハ製造システム。
【請求項14】
前記ロジックコントローラは、前記ウェーハ製造装置の動作状態に依存しない任意の頻度で、前記トラッキング情報と前記
追加センサのアナログ出力信号のデジタル値を記録する、
請求項8乃至13のいずれか一項に記載のウェーハ製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ製造システムに関し、特に、ウェーハ製造装置内の各種センサが計測したデータを収集するウェーハ製造システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの基板材料としてシリコンウェーハが広く用いられている。半導体用シリコンウェーハは、様々な工程を経て製造される。先ず、CZ法等による単結晶製造工程を経てシリコン単結晶インゴットが製造される。その後、シリコン単結晶インゴットを外周研削、スライスしてウェーハ状とした後、ラッピング、エッチング、両面研磨、片面研磨、洗浄等の工程を順次行うことによりシリコンウェーハが完成する。さらに、アニールウェーハを製造するためのアニール処理や、エピタキシャルウェーハを製造するためのエピタキシャル成膜処理、あるいはSOI(Silicon-On-Insulator)ウェーハを製造するための加工処理が行われることもある。こうして製造されたシリコンウェーハは、検査工程を経た後、ウェーハ製品として出荷される。検査は最終検査だけでなく工程内検査もあり、単結晶製造工程から最終製品になるまでの中間段階においても検査が適宜行われる。
【0003】
近年の半導体デバイスの微細化及び高集積化に伴い、半導体デバイス及びその製造プロセスには様々な問題が生じる。そして、そのような客先プロセスで発生した問題がシリコンウェーハに由来するものと予想される場合、シリコンウェーハ上の問題がウェーハ製造過程のどこに由来するのかを解析する必要性が高まっている。このような事情から、ウェーハ製造過程を逐次記録してデータベースに保存し、問題が生じたときにはデータベースの記録を見直して問題の原因を究明することが行われる。
【0004】
シリコンウェーハの工程管理に関し、例えば特許文献1には、素材インゴットから切り出された順番をウェーハの識別番号としてウェーハ一枚ごとに与えて、ウェーハがそれぞれの製造工程の中をどのように搬送されたかという搬送経路をウェーハ一枚ずつ追跡し、ウェーハ情報として記憶する半導体ウェーハの製造方法が記載されている。
【0005】
また特許文献2には、単結晶インゴットに無線ICタグを付けた後、該無線ICタグへの単結晶インゴットのデータの書き込み、及び該無線ICタグからのデータの読み出しを行うことによって、前記単結晶インゴットの工程管理を行う単結晶インゴットの管理方法及び管理システムが記載されている。
【0006】
また特許文献3には、ホストコンピュータの本来の任務である生産管理に支障を生じさせることなく、半導体製造装置に必要なプロセスデータを収集するデータ収集装置が記載されている。特許文献3の技術では、装置からデータが送信されるタイミングが、装置で何らかの事象が発生した時に送信されるイベントメッセ―ジ送信時のみに限られるため、1秒周期や0.5秒周期など任意の頻度で収集することが難しい。
【0007】
特許文献4には、半導体製造装置の運用の負荷を実質的に増加させることなく、リアルタイムで同期化されて信頼性のあるデータを収集するデータ収集サーバが記載されている。特許文献4では非定型データ収集開始と終了のタイミングをあるメッセージ受信時から別のあるメッセージ受信時までとし、その間の非定型データを取得し、最大・最小・平均値を計算し送信している。この場合メッセージの送受信が行われないときや、装置が何も処理していないアイドル状態のときのセンサの出力データの収集が不可能である。また、ある一定区間の最大・最小・平均値を送信しているので、センサのデータ出力値を1秒以下の周期でとらえ、データの推移を波形として捉えることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平5-121521号公報
【文献】特開2005-197387号公報
【文献】特開2009-064798号公報
【文献】特開2006-093641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、客先プロセスで発生したシリコンウェーハ由来の問題の原因を究明するためには、シリコンウェーハがどのような製造工程を経て製品化されたかという履歴情報を逐次記録しておくことが必要である。そのためには、シリコンウェーハの製造工程で計測される温度や圧力などの様々な物理量を逐次記録してデータベース化することが望ましい。
【0010】
しかしながら、従来のウェーハ製造装置の中には、ウェーハ製造装置が有する各種センサの出力信号を短いサンプリング周期で読み出すことができず、そのような仕様変更にも対応できないものがある。そのため、ウェーハ製造過程を逐次記録してデータベースに保存できないという問題がある。また、従来のウェーハ製造装置の多くは、比較的低速なSECS通信ポートを有するだけで高速通信ポートを有していないため、たとえ各種センサの出力信号を短いサンプリング周期で読み出すように改造できたとしても、それを外部に高速転送できない場合もある。
【0011】
半導体製造技術は日々進歩しており、最新技術が次々と導入されている。しかし、ウェーハ製造装置の種類は様々であり、最先端の装置に入れ替えられるものがある一方で、旧世代の装置が長く活躍することもあり、古い装置と最新の装置とが混在する状況が生まれている。ウェーハ製造装置は非常に高価であることから、次世代の製造ラインに対応すべく改造を加えながらできるだけ長く使用されることが望まれている。
【0012】
したがって、本発明の目的は、ウェーハ製造装置によるウェーハの処理中に物理量を計測する各種センサのアナログ出力信号を短いサンプリング周期で収集すると共に、処理中のウェーハのトラッキング情報と関連付けて保存することが可能なウェーハ製造システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明によるウェーハ製造システムは、センサを備えたウェーハ製造装置と、データ通信ラインを介して前記ウェーハ製造装置に接続され、前記ウェーハ製造装置を制御するホストPCと、前記センサのアナログ出力信号をサンプリングして記憶するロジックコントローラと、前記データ通信ライン上を流れる前記ウェーハ製造装置が処理中のウェーハ又は単結晶のトラッキング情報を抜き出して前記ロジックコントローラに送る中継PCとを備え、前記ロジックコントローラは、前記センサのアナログ出力信号のデジタル値を前記中継PCから送られてくる前記トラッキング情報に関連付けて記憶することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、ウェーハ処理中に出力されるウェーハ製造装置内のセンサの計測値を短いサンプリング周期で収集すると共に、センサの計測値を処理中のウェーハのトラッキング情報に関連付けて保存することができる。したがって、ウェーハ製造装置のSECS通信ポートからセンサの計測値を高速で取り出すことができない場合でも、SECS通信速度の制約を受けることなく、センサ出力を高速でサンプリングしてトラッキング情報と共に管理することができる。
【0015】
本発明において、ウェーハ製造装置とは、ウェーハ製造工程において使用される様々な装置のことを言い、例えば、単結晶引き上げ装置、外周研削機、バンドソー、ワイヤーソー、ラッピング装置、エッチング装置、両面研磨機、片面研磨機、洗浄装置、エピタキシャル成膜装置、熱処理炉、イオン注入装置等を挙げることができる。さらに、ウェーハ製造装置には、酸素等の軽元素や金属不純物、ウェーハ平坦度、ウェーハ表面のパーティクル等のウェーハの品質を評価する検査装置等も含まれる。
【0016】
本発明によるウェーハ製造システムは、前記ロジックコントローラが記憶している前記センサのアナログ出力信号のデジタル値を周期的に収集するデータ収集装置をさらに備え、前記データ収集装置は、前記ロジックコントローラが記憶している前記センサのアナログ出力信号のデジタル値及び前記トラッキング情報の組み合わせからなるデータレコードをデータ取得日時と関連付けて記録することが好ましい。これによりセンサの計測値をトラッキング信号に同期させることができ、ウェーハの製造過程を逐次記録してデータベースに保存することができる。
【0017】
前記ロジックコントローラは、前記データ収集装置が前記ロジックコントローラから前記デジタル値を収集する周期よりも短いサンプリング周期で前記センサのアナログ出力信号をサンプリングして記憶することが好ましい。この場合において、前記データ収集装置が前記ロジックコントローラから前記センサのアナログ出力信号のデジタル値を収集する周期は1秒以下であることが好ましい。これにより、センサの計測値を確実に収集することができる。
【0018】
前記トラッキング情報は、インゴットID、ブロックID、ウェーハID、ロットID及びスロットIDから選ばれた少なくとも一つの識別コードであることが好ましい。これらのトラッキング情報とセンサの出力データとを同期することにより、ウェーハを解析するためのデータとして用いることができる。
【0019】
本発明において、前記ロジックコントローラは、前記ウェーハ製造装置が前記ウェーハ又は単結晶を処理していない期間中も前記センサのアナログ出力信号のデジタル値を記録することが好ましい。また前記ロジックコントローラは、前記ウェーハ製造装置の動作状態に依存しない任意の頻度で、前記トラッキング情報と前記センサのアナログ出力信号のデジタル値を記録することが好ましい。これにより、シリコンウェーハの製造工程で計測される物理量をウェーハ製造装置の動作状態によらず確実に更新記録することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ウェーハ製造装置によるウェーハの処理中に物理量を計測する各種センサのアナログ出力信号を短いサンプリング周期で収集すると共に、処理中のウェーハのトラッキング情報と関連付けて保存することが可能なウェーハ製造システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態によるウェーハ製造システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、ウェーハ製造システムの動作を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、PLCに格納されるデータレコードのイメージ図である。
【
図4】
図4(a)~(c)は、ウェーハ製造装置の種類と各種センサの具体例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態によるウェーハ製造システムの構成を示すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、このウェーハ製造システム1は、シリコンウェーハの製造工程で計測される様々な物理量の計測データを収集して管理する機能を備えたシステムであって、センサ11を備えたウェーハ製造装置10
(ウェーハ処理装置)と、SECS(SEMI Equipment Communication Standard)に従ったデータ通信ラインであるSECS通信ライン12を介してウェーハ製造装置10に接続され、ウェーハ製造装置10を制御するホストPC15と、センサ11のアナログ出力信号をサンプリングして記憶するPLC(プログラマブルロジックコントローラ)16と、SECS通信ライン12上に設けられ、SECS通信ライン12上を流れるウェーハ製造装置10が処理中のシリコンウェーハ又は単結晶(シリコンブロック又はシリコンインゴット)のトラッキング情報を抜き出してPLC16に送る中継PC(中継装置)17と、PLC16が記憶しているセンサ11のアナログ出力信号をデジタル値に変換した値をトラッキング情報と共に周期的に収集するデータ収集装置19とを備えている。
【0025】
本実施形態において、ウェーハ製造システム1は4台のウェーハ製造装置10-1~10-4からデータを収集しているが、ウェーハ製造装置10の台数は特に限定されず、またウェーハ製造装置10の種類も特に限定されない。ホストPC15は、ウェーハ製造装置10-1~10-4を統括的に制御する上位装置であり、またデータ収集装置19はこれら4台のウェーハ製造装置10-1~10-4から各種データを収集する装置である。ホストPC15及びデータ収集装置19はこれら4台のウェーハ製造装置10-1~10-4に対して共通に用意されているが、ホストPC15及びデータ収集装置19の台数も特に限定されない。
【0026】
ウェーハ製造装置10は、シリコンウェーハの製造過程で使用される様々な装置であり、特にホストPC15との間でSECS通信を行う装置が対象となる。具体的には、ウェーハ製造装置10は、単結晶引き上げ装置、外周研削機、バンドソー、ワイヤーソー、ラッピング装置、エッチング装置、両面研磨機、片面研磨機、洗浄装置、エピタキシャル成膜装置、熱処理炉、イオン注入装置等を含む。また、ウェーハ製造装置10は、酸素等の軽元素や金属不純物、ウェーハ平坦度、ウェーハ表面のパーティクル等のウェーハの品質を評価する検査装置等も含む。
【0027】
ウェーハ製造装置10に設けられるセンサ11の種類は特に限定されない。例えば、ウェーハ製造装置10が洗浄装置である場合、洗浄装置が取得するデータは、純水や薬液などの流量や温度、薬液濃度などである。また、熱処理装置で取得するデータは、ガス流量、処理室内温度、処理室内圧力、ヒータ温度、ヒータ電力、冷却水流量、冷却水温度などである。特に、ホストPC15にデータ書き込みができるように制御ソフトウェアを改造することができないウェーハ製造装置10が対象となる。
【0028】
ウェーハ製造装置10に設けられるセンサ11は、ウェーハ製造装置10がその動作の制御のために最初から備えたものであってもよく、あるいはそのようなセンサとは別に用意されたセンサであってもよい。前者の場合、センサ11の出力信号は2分岐され、一方の出力信号はウェーハ製造装置10の動作を制御するために用いられ、他方の出力信号はデータ収集のためにPLC16に送られる。また後者の場合、ウェーハ製造装置10が最初から備えているメインセンサの出力信号はウェーハ製造装置10の動作を制御するために用いられ、追加センサの出力信号はデータ収集のためにPLC16に送られる。
【0029】
通常、ウェーハ製造装置10-1~10-4はSECS通信ポート12aを有しており、SECS通信ライン12を介してホストPC15に接続されている。SECSは半導体製造装置間のデータ通信のために用意された通信規格であり、通信速度は9600bpsであるため、比較的低速な通信である。このような通信インターフェースを用いてウェーハ製造装置10内の各種センサの計測値を短いサンプリング周期で転送することは実際上難しい。しかし、各種センサの出力信号を外部装置であるPLC16が取り込み、SECSインターフェースとは別の系統から取り出すことにより、各種センサの計測データを短いサンプリング周期で転送することが可能となる。
【0030】
中継PC17は、SECS通信を中継するためのソフトウェア(アプリケーションプログラム)を含むコンピュータである。中継PC17は、ホストPC15がウェーハ製造装置10に送信するメッセージを受け取ると共に、そのまま通過させてウェーハ製造装置10に送り出すことができる。また、ホストPC15に代わってウェーハ製造装置10にメッセージを送信することもできる。さらに、ウェーハ製造装置10が出力するメッセージを受け取ると共に、そのまま通過させるか、あるいは必要に応じて改変してホストPC15に送り出すことができる。さらに、中継PC17は、ホストPC15とウェーハ製造装置10との間で送受信されるデータに含まれる処理中のウェーハのトラッキング情報を抽出することができる。こうして抽出された処理中のウェーハのトラッキング情報はPLC16に送られる。
【0031】
トラッキング情報とは、処理中のシリコンウェーハ又は単結晶を特定するために用いられる識別コードのことを言う。トラッキング情報の種類は、処理中のシリコンウェーハ又は単結晶を特定できる限りにおいて特に限定されないが、シリコンインゴットに付与されるインゴットID、シリコンインゴットから切り出されたシリコンブロックに付与されるブロックID、シリコンブロックからさらに切り出されたシリコンウェーハに付与されるウェーハID、同じ加工条件や処理条件などでグループ化された数十~数百枚のシリコンウェーハに対して共有に付与されるロットID、キャリアケース内のスロットに収容されたシリコンウェーハに付与されるスロットIDなどを挙げることができる。
【0032】
PLC16は、MPU(Main Processing Unit)、メモリ、信号入力部、信号出力部及び通信部を含み、各ウェーハ製造装置10内のセンサ11のアナログ出力信号を所定のサンプリング周期で取り込んでメモリに記憶する装置である。PLC16は、上位のデータ収集装置19によるデータのサンプリング周期よりも短い周期(例えば100ms)で各種センサの出力信号をサンプリングする。ウェーハ製造装置10内のセンサ11がデジタル出力信号を出力する場合、PLC16は、センサ11からのデジタル出力信号を取り込むことも可能である。PLC16は、ウェーハ製造装置10から独立して設けられており、ウェーハ製造装置10の動作状態に依存しない任意の頻度でセンサ11のアナログ出力信号のデジタル値を記録する。PLC16は、ウェーハ製造装置10の動作状態に制約されることなくセンサ11のアナログ出力信号をサンプリングして更新記録することができる。
【0033】
PLC16の通信ポートはデータ収集装置19に接続されており、PLC16内のデータはデータ収集装置19に提供される。本実施形態において、PLC16は、センサ11のアナログ出力信号をデジタル値に変換し、中継PC17から送られてくるトラッキング情報と関連付けて記憶する。センサ11の計測データはウェーハ製造装置10の動作とは無関係に取り出されるため、センサ11の計測データとシリコンウェーハ又は単結晶との関連性が不明であり、シリコンウェーハを解析するためのデータとして用いることができない。しかし、センサ11の計測データをトラッキング情報と関連付けて保存した場合には、センサ11の計測データがどのシリコンウェーハ又は単結晶の処理中に計測されたものであるかを把握することができ、ウェーハの製造工程中に計測される各種データのデータベース化が容易である。
【0034】
データ収集装置19は、PLC16が記憶している各種センサ11のアナログ出力信号をデジタル値に変換した値及びトラッキング情報の組み合わせからなるデータレコードを周期的に読み出し、データ取得日時と関連付けて記録する。具体的には、データレコードを例えば1秒周期で収集した後、データベース20に格納する。PLC16はデータ収集装置19がデジタル値を収集する周期よりも短いサンプリング周期でセンサ11のアナログ出力信号をサンプリングして記憶することが好ましい。この場合、データ収集装置19がPLC16からデジタル出力信号を収集する周期は1秒以下であることが好ましい。
【0035】
図2は、ウェーハ製造システム1の動作を示すフローチャートである。
【0036】
図2に示すように、ホストPC15からの指示に従ってウェーハ製造装置10
(ウェーハ処理装置)がウェーハ又は単結晶の処理を開始する(ステップS1)。ウェーハ又は単結晶に対する処理は、ブロック加工、スライス加工、研磨、洗浄、熱処理、成膜処理など様々であり、工程ごとに異なる。ウェーハの処理開始から終了するまでの間、ホストPC15とウェーハ製造装置10との間でSECS通信が行われる。
【0037】
ウェーハ又は単結晶の処理中、ウェーハ製造装置10のセンサ11は温度、圧力などの物理量を計測する。ウェーハ製造装置10のセンサ11のアナログ出力信号は、ウェーハ製造装置10の動作のために用いられるものであるため、基本的にはウェーハ製造装置10内で使用すれば足り、外部に出力する必要はない。しかしながら、上記のように、ウェーハの製造上の問題を遡って検証するために、各種センサの計測データのログを収集することが望まれている。本実施形態においては、ウェーハ処理中に計測されたデータのログを収集することができ、ウェーハ製造装置10による制御から切り離して取り出した各種センサの計測値がどのウェーハを処理しているときの計測値かということを特定することができる。
【0038】
中継PC17がウェーハ製造装置10とホストPC15との間のSECS通信を中継し、通信メッセージに含まれるトラッキング情報を抽出し、PLC16のメモリに書き込む(ステップS2A)。
【0039】
一方、PLC16は、ウェーハ製造装置10によるウェーハ又は単結晶の処理中にセンサ11から出力されるアナログ出力信号をサンプリングし、デジタルデータとしてPLC16内のメモリに書き込む(ステップS2B)。このときトラッキング情報とセンサ11のアナログ出力信号のデジタルデータは、PLC16上の同じレジスタに書き込まれ、センサ11の計測データはトラッキング情報に関連付けられる。
【0040】
PLC16は、ウェーハ製造装置10がウェーハ又は単結晶を処理していない期間中もセンサ11のアナログ出力信号のデジタル値を記録することが好ましい。これにより、シリコンウェーハの製造工程で計測される物理量をウェーハ製造装置10の動作状態によらず確実に更新記録することができる。
【0041】
データ収集装置19は、PLC16内のメモリを参照することができ、PLC16内のメモリに格納されているトラッキング情報と関連付けられた各種センサの計測データにアクセスすることができる。データ収集装置19は、例えば1秒周期でPLC16にアクセスして、センサ11のアナログ出力信号のデジタル値及びトラッキング情報の組み合わせからなるデータレコードをデータ取得日時と関連付けて収集する(ステップS4)。こうして、データ収集装置19は、ウェーハ製造装置10内のセンサ11のアナログ出力信号のデジタル値とトラッキング情報の同期データを取得することができる(ステップS5)。
【0042】
図3は、PLC16に格納されるデータレコードのイメージ図である。
【0043】
図3に示すように、PLC16内のメモリには、SECS通信メッセージから抽出した処理中のウェーハ又は単結晶のトラッキング情報と、ウェーハ製造装置10内のセンサ11の出力値が、データ取得日時データと共に記憶される。この例では、ウェーハ製造装置10内の温度センサ及び圧力センサの計測値が100msごとに記録されている。またトラッキング情報として処理中ウェーハのロットIDとスロットIDが記録されている。複数枚のシリコンウェーハがキャリアケース内に収容される場合、各ウェーハのウェーハIDはキャリアケースのスロットIDと関連付けされてデータベース上で管理されるので、ホストPC15が管理するデータベースを参照することでスロットIDからウェーハIDを特定することができる。
【0044】
図4(a)~(c)は、ウェーハ製造装置10の種類と各種センサの具体例を示すブロック図である。
【0045】
図4(a)に示すように、ウェーハ製造装置10が例えばハードレーザーマーク印字装置10Aの場合には、レーザー出力ユニットの温度を検知する温度センサの出力、レーザー出力値などがデータ収集対象となる。ハードレーザーマーク印字装置10Aは、製品ウェーハに対してレーザーでIDを印字する装置であり、印字が不明瞭で文字を読み取ることができないなどの不良が発生する場合がある。
【0046】
また
図4(b)に示すように、ウェーハ製造装置10が例えばバッチ式ウェーハ洗浄装置10Bの場合には、流量センサの出力、温度センサの出力、濃度センサの出力などがデータ収集対象となる。
【0047】
また
図4(c)に示すように、ウェーハ製造装置10が例えば枚葉式熱処理装置10Cの場合には、処理室内に供給される不活性ガス、ドーパントガスなどのガス流量
センサ、処理室内の温度を検出する処理室内温度センサ、処理室内圧力センサ、ウェーハを加熱するヒータの温度を検知する
ヒータ温度センサ、ヒータの電力を検出するヒータ
電力検出センサ(検出回路)、冷却水の流量を検出する冷却水流量センサ、冷却水の温度を検出する冷却水温度センサなどがデータ収集対象となる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によるウェーハ製造システム1は、ウェーハ製造装置10に設けられたセンサ11のアナログ出力信号をPLC16に取り込んで記録するので、センサ11のサンプリングデータを短い周期で取得することができ、特にSECS通信では対応できない非常に短い周期でのデータサンプリングが可能となる。また、ウェーハ製造装置10とホストPC15との間のSECS通信(HSMSを含む)を中継する中継PC17が通信データに含まれるトラッキング情報を抽出するので、現在処理中のウェーハに関するトラッキング情報を容易に取得することができる。さらに、またセンサ11の出力データを現在処理中のウェーハのトラッキング情報に関連付けて保存するので、SECS通信上のデータとアナログ出力信号のサンプリング値という互いに異なる2つのインターフェースから出力されるデータを互いに関連付けされた状態で取得することができ、特定のウェーハを解析するためのデータとして利用することが可能となる。本発明は、センサ11の計測値を取り出して保存できるように既存のウェーハ製造装置10内のソフトウェアを改造できない場合に有効である。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【0050】
例えば、上記実施形態においては、シリコンウェーハを製造する場合を例に挙げたが、本発明はシリコンウェーハに限定されるものではなく、ウェーハの処理中にセンサ11が計測したデータの収集が求められる種々の素材ウェーハを対象とすることができる。ただし、半導体用シリコンウェーハの製造システムにおいては装置の種類及び台数が多いことに加えて装置間の世代格差が大きいことから、本発明の効果が顕著である。
【符号の説明】
【0051】
1 ウェーハ製造システム
10、10-1~10-4 ウェーハ製造装置(ウェーハ処理装置)
10A ハードレーザーマーク印字装置
10B ウェーハ洗浄装置
10C 枚葉式熱処理装置
11 センサ
12 SECS通信ライン
12a SECS通信ポート
15 ホストPC
16 PLC(プログラマブルロジックコントローラ)
17 中継PC
19 データ収集装置
20 データベース