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特許7375948不飽和アクリル樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、硬化物及び物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】不飽和アクリル樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、硬化物及び物品
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/00 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
C08F299/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022548467
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2022005229
(87)【国際公開番号】W WO2022190755
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2021039096
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】海野 晃生
(72)【発明者】
【氏名】伊豆原 暢子
(72)【発明者】
【氏名】出口 義信
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-187205(JP,A)
【文献】特開2016-169295(JP,A)
【文献】特開2007-314758(JP,A)
【文献】特開2018-070742(JP,A)
【文献】国際公開第2017/065172(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 299/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に1つの(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサン化合物(A)、1分子中に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサン化合物(B)、及びグリシジル(メタ)アクリレート(C)を含む重合性化合物の共重合体であるグリシジル基含有アクリル樹脂と、(メタ)アクリル酸(D)との反応物であり、重合性不飽和基を有し、酸価3.0以下、エポキシ当量5000以上であり、
前記ポリシロキサン化合物(A)が、下記一般式(1)で表され、
【化1】

[式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数2~10の炭化水素基を表し、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~4のアルキル基を表し、nは4~100の整数を表す。]
前記ポリシロキサン化合物(B)が、下記一般式(2)で表され、
【化2】

[式(2)中、Rはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、Rはそれぞれ独立して炭素数2~10の炭化水素基を表し、Rはそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基を表し、nは4~100の整数を表す。]
前記ポリシロキサン化合物(A)の数平均分子量が、10,000未満であり、
前記ポリシロキサン化合物(B)の数平均分子量が、2,000以上15,000未満の範囲であることを特徴とする不飽和アクリル樹脂。
【請求項2】
請求項1記載の不飽和アクリル樹脂と、
光重合開始剤とを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、前記不飽和アクリル樹脂以外の重合性不飽和基を有する化合物を含有する請求項2記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記重合性不飽和基を有する化合物が、1分子中に平均2~6個の重合性不飽和基を有するものである請求項3記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項2~4の何れか1項記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項6】
請求項5の硬化物の塗膜を有する物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和アクリル樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、硬化物及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車外装部品の自動車ヘッドランプ、安全センサー、ルーフ等は、積雪や降雨によって、一時的にその機能が損なわれてしまうという問題があり、近年、部材表面の雪や雨を自走運転中に自然に滑り落とす方法や、汚れの付着防止及び汚れ除去性を向上させるためにコーティング剤を上塗りする方法などが検討されている。
【0003】
コーティング剤を上塗りする方法としては、コーティング層に撥水性を付与する目的で、フッ素構造やシリコーン構造を導入する方法が知られており、例えば、ポリシロキサン構造含有ウレタン(メタ)アクリレート系化合物に、特定構造の反応性フッ素含有化合物を配合して得られる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照。)が、得られた硬化物の撥水性は今後ますます高まる要求特性を満足するものではなく、昨今の市場要求に対し十分なものではなかった。
【0004】
そこで、より一層優れた撥水性を有する材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-080585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、撥水性に優れた不飽和アクリル樹脂、これを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、硬化物及び物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定の2種のポリシロキサン化合物及びグリシジル(メタ)アクリル酸を含む重合性化合物の共重合体と、(メタ)アクリル酸との反応物である不飽和アクリル樹脂を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、1分子中に1つの(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサン化合物(A)、1分子中に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサン化合物(B)、及びグリシジル(メタ)アクリレート(C)を含む重合性化合物の共重合体と、(メタ)アクリル酸(D)との反応物であり、重合性不飽和基を有することを特徴とする不飽和アクリル樹脂、これを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、硬化物及び物品に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の不飽和アクリル樹脂は、優れた撥水性を有することから、塗料等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の不飽和アクリル樹脂は、1分子中に1つの(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサン化合物(A)、1分子中に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサン化合物(B)、及びグリシジル(メタ)アクリレート(C)を含む重合性化合物の共重合体と、(メタ)アクリル酸(D)との反応物であり、重合性不飽和基を有することを特徴とする。
【0011】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。さらに、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
【0012】
また、本発明の不飽和アクリル樹脂が有する重合性不飽和基としては、活性エネルギー線の照射により硬化性を示す不飽和結合を有する基であれば何れでもよく、例えば、(メタ)アクリロイル基、アリル基、イソプロペニル基、1-プロぺニル基、スチリル基、スチリルメチル基、マレイミド基、ビニルエーテル基等が挙げられる。
【0013】
前記1分子中に1つの(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサン化合物(A)(以下、「ポリシロキサン化合物(A)」と略記する。)としては、例えば、下記一般式(1)で表されるポリシロキサン化合物等が挙げられる。
【0014】
【化1】
[式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数2~10の炭化水素基を表し、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~4のアルキル基を表し、nは4~100の整数を表す。]
【0015】
また、前記ポリシロキサン化合物(A)の市販品としては、例えば、JNC株式会社製「サイラプレーン FM-0711」(数平均分子量Mn:1,000)、「サイラプレーン FM-0721」(数平均分子量Mn:5,000、)「サイラプレーン FM-0725」(数平均分子量Mn: 10,000)、「サイラプレーン TM-0701T」(数平均分子量Mn:423)、信越化学工業株式会社製「X-22-174ASX」(数平均分子量Mn:900)、「X-22-174BX」(数平均分子量Mn:2,300)、「KF-2012」(数平均分子量Mn:4,600)、「X-22-2426」(数平均分子量Mn:12,000)、「X-22-2404」(数平均分子量Mn:420)等が挙げらる。これら中でも、優れた撥水性を有する硬化物を形成可能な不飽和アクリル樹脂が得られることから、「サイラプレーン FM-0711」、「サイラプレーン TM-0701T」、「X-22-174ASX」、「X-22-174BX」が好ましい。また、これらのポリシロキサン化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0016】
前記ポリシロキサン化合物(A)の数平均分子量としては、優れた撥水性を有する硬化物を形成可能な不飽和アクリル樹脂が得られることから、10,000未満が好ましく、300~3,000の範囲がより好ましい。なお、本発明において数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0017】
前記1分子中に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサン化合物(B)(以下、「ポリシロキサン化合物(B)」と略記する。)としては、例えば、下記一般式(2)で表されるポリシロキサン化合物等が挙げられる。
【0018】
【化2】
[式(2)中、Rはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、Rはそれぞれ独立して炭素数2~10の炭化水素基を表し、、Rはそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基を表し、nは4~100の整数を表す。]
【0019】
また、前記ポリシロキサン化合物(A)の市販品としては、例えば、JNC株式会社製「サイラプレーン FM-7711」(数平均分子量Mn:1,000)、「サイラプレーン FM-7721」(数平均分子量Mn:5,000)、「サイラプレーン FM-7725」(数平均分子量Mn:10,000)、信越化学工業株式会社製「X-22-164」(数平均分子量Mn:380)、「X-22-164AS」(数平均分子量Mn:900)、「X-22-164A」(数平均分子量Mn:1,740)、「X-22-164B」(数平均分子量Mn:3,200)、「X-22-164C」(数平均分子量Mn:4,800)、「X-22-164E」(数平均分子量Mn:7,800)、「X-22-2445」(数平均分子量Mn:3,200)等が挙げられる。これら中でも、優れた撥水性を有する硬化物を形成可能な不飽和アクリル樹脂が得られることから、「サイラプレーン FM-7721」、「サイラプレーン FM-7725」、「X-22-164B」、「X-22-164C」、「X-22-164E」、「X-22-2445」が好ましい。また、これらのポリシロキサン化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0020】
前記ポリシロキサン化合物(B)の数平均分子量としては、優れた撥水性を有する硬化物を形成可能な不飽和アクリル樹脂が得られることから、2,000以上15,000未満が好ましく、2,000~12,000の範囲がより好ましい。
【0021】
前記グリシジル(メタ)アクリレート(C)としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチルメタクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。これらのグリシジル(メタ)アクリレート(C)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、優れた撥水性を有する硬化物を形成可能な不飽和アクリル樹脂が得られることから、グリシジルメタクリレートが好ましい。
【0022】
前記(メタ)アクリル酸(D)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、また、これらの中でも、優れた撥水性を有する硬化物を形成可能な不飽和アクリル樹脂が得られることから、アクリル酸が好ましい。
【0023】
前記重合性化合物としては、前記ポリシロキサン化合物(A)、前記ポリシロキサン化合物(B)及び前記グリシジル(メタ)アクリレート(C)以外に、必要に応じて、その他の重合性化合物を含んでいてもよい。
【0024】
前記その他の重合性化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の炭素原子数が1~18のアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート、アクリロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート化合物;アクリル酸4-ヒドロキシフェニル、アクリル酸β-ヒドロキシフェネチル、アクリル酸4-ヒドロキシフェネチル、アクリル酸1-フェニル-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸3-ヒドロキシ-4-アセチルフェニル、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート化合物;前記(メタ)アクリレート化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の種々の環状エーテル化合物との開環重合によって得られるポリエーテル変性(メタ)アクリレート化合物;前記(メタ)アクリレート化合物とε-カプロラクトン等のラクトン化合物との重縮合によって得られるラクトン変性(メタ)アクリレート化合物等のモノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等のポリオールアクリレート化合物などの水酸基及び重合性不飽和基を有する化合物、(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基及び重合性水酸基を有する化合物などが挙げられる。これらのその他の重合性化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0025】
本発明の不飽和アクリル樹脂の製造方法としては、特に制限されず、公知の方法で製造することができる。例えば、前記化合物(A)、前記化合物(B)、及び前記グリシジル(メタ)アクリレート(C)を含む重合性化合物を重合開始剤の存在下で共重合させて得られた共重合体、即ち、グリシジル基含有アクリル樹脂に、前記(メタ)アクリル酸(D)を付加反応させて製造する方法等が挙げられる。
【0026】
本発明の不飽和アクリル樹脂の製造における各種条件は、使用する原料やその量に応じて適宜設定することができる。例えば、一部の原料を先に反応容器中に添加し、80℃~160℃に加熱した後、残りの原料を2~8時間かけて滴下しながら重合反応を行い製造する方法、反応容器に有機溶剤を添加し、80℃~160℃に加熱した後、反応に用いる原料の混合物を2~8かけて時間滴下しながら、重合反応を行い製造する方法、反応容器に有機溶剤を添加し、密閉加圧条件下で該有機溶媒の沸点以上に加熱した後、反応に用いる原料の混合物を2~8時間かけて滴下しながら、重合反応を行い製造する方法等が挙げられる。
【0027】
前記有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族溶剤;カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等のグリコールエーテル溶剤;メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0028】
本発明の不飽和アクリル樹脂は、重合性不飽和基を有することから、例えば、光重合開始剤を添加することにより活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として用いることができる。
【0029】
前記光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン等の光ラジカル重合開始剤などが挙げられる。
【0030】
前記光重合開始剤の市販品としては、例えば、「Omnirad 1173」、「Omnirad 184」、「Omnirad 127」、「Omnirad 2959」、「Omnirad 369」、「Omnirad 379」、「Omnirad 907」、「Omnirad 4265」、「Omnirad 1000」、「Omnirad 651」、「Omnirad TPO」、「Omnirad 819」、「Omnirad 2022」、「Omnirad 2100」、「Omnirad 754」、「Omnirad 784」、「Omnirad 500」、「Omnirad 81」(IGM Resins社製);「KAYACURE DETX」、「KAYACURE MBP」、「KAYACURE DMBI」、「KAYACURE EPA」、「KAYACURE OA」(日本化薬株式会社製);「Vicure 10」、「Vicure 55」(Stoffa Chemical社製);「Trigonal P1」(Akzo Nobel社製)、「SANDORAY 1000」(SANDOZ社製);「DEAP」(Upjohn Chemical社製)、「Quantacure PDO」、「Quantacure ITX」、「Quantacure EPD」(Ward Blenkinsop社製);「Runtecure 1104」(Runtec社製)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0031】
前記光重合開始剤の添加量は、例えば、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に、0.5~20質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0032】
また、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の硬化性を向上できることから、必要に応じて、さらに光増感剤を添加して、硬化性を向上することもできる。
【0033】
前記光増感剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、2,3,4-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(1,3-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、〔4-(メチルフェニルチオ)フェニル〕フェニルメタノン、(4-ベンゾイルベンジル)塩化トリメチルアンモニウム、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-スチリルプロパン-1-オン重合物、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテル、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン化合物、o-トリルチオ尿素等の尿素化合物、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s-ベンジルイソチウロニウム-p-トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。これらの光増感剤は単独で用いることも、2種類以上を併用することもできる。
【0034】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、前記不飽和アクリル樹脂以外の重合性不飽和基を有する化合物(以下、「その他の重合性不飽和基を有する化合物」と称することがある。)を含有することもできる。
【0035】
前記その他の重合性不飽和基を有する化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等の脂肪族モノ(メタ)アクリレート化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチルモノ(メタ)アクリレート等の脂環型モノ(メタ)アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等の複素環型モノ(メタ)アクリレート化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族モノ(メタ)アクリレート化合物等のモノ(メタ)アクリレート;
【0036】
1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンのプロピレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンのエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート3-メチル-1,5ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,3-[(メタ)アクリロイルオキシメチル]ノルボルナン、2,5-[(メタ)アクリロイルオキシメチル]ノルボルナン、2,6-[(メタ)アクリロイルオキシメチル]ノルボルナン、1,3-アダマンチルジ(メタ)アクリレート、1,3-ビス[(メタ)アクリロイルオキシメチル]アダマンタン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]-2,4,8,10-テトラオキソスピロ[5.5]ウンデカン、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート;
【0037】
EO変性グリセロール(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(EO)或いは(PO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能(メタ)アクリレート;
【0038】
ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレート;
【0039】
ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能(メタ)アクリレート;
【0040】
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0041】
また、前記各種の(メタ)アクリレートの分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等のポリオキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性(メタ)アクリレート、前記各種の(メタ)アクリレートの分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0042】
これらの重合性不飽和基を有する化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、優れた撥水性を有する硬化物を形成可能な不飽和アクリル樹脂が得られることから、1分子中に平均2~6個の重合性不飽和基を有するものが好ましい。
【0043】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、重合禁止剤、酸化防止剤、有機溶剤、無機質充填材やポリマー微粒子、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、難燃剤、保存安定化剤等の各種添加剤を含有することもできる。
【0044】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン誘導体、2-(2’-キサンテンカルボキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-o-ニトロベンジロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-キサンテンカルボキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン、2-o-ニトロベンジロキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0045】
前記重合禁止剤としては、例えば、p-メトキシフェノール、p-メトキシクレゾール、4-メトキシ-1-ナフトール、4,4’-ジアルコキシ-2,2’-ビ-1-ナフトール、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、スチレン化フェノール、N-イソプロピル-N’-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等のフェノール化合物、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、p-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニルベンゾキノン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、アントラキノン、ジフェノキノン等のキノン化合物、メラミン、p-フェニレンジアミン、4-アミノジフェニルアミン、N.N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-i-プロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1.3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、4,4’-ジクミル-ジフェニルアミン、4,4’-ジオクチル-ジフェニルアミン、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、スチレン化ジフェニルアミン、スチレン化ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物、ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物等のアミン化合物、フェノチアジン、ジステアリルチオジプロピオネート、2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル=ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオナート]、ジトリデカン-1-イル=3,3’-スルファンジイルジプロパノアート等のチオエーテル化合物、N-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルナフチルアミン、p-ニトロソフェノール、ニトロソベンゼン、p-ニトロソジフェニルアミン、α-ニトロソ-β-ナフトール等、N、N-ジメチルp-ニトロソアニリン、p-ニトロソジフェニルアミン、p-ニトロンジメチルアミン、p-ニトロン-N、N-ジエチルアミン、N-ニトロソエタノールアミン、N-ニトロソジ-n-ブチルアミン、N-ニトロソ-N-n-ブチル-4-ブタノールアミン、N-ニトロソ-ジイソプロパノールアミン、N-ニトロソ-N-エチル-4-ブタノールアミン、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、N-ニトロソモルホリン、N-二トロソーN-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、二トロソベンゼン、N-ニトロソ-N-メチル-p-トルエンスルホンアミド、N-ニトロソ-N-エチルウレタン、N-ニトロソ-N-n-プロピルウレタン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、1-ニトロソ-2-ナフトール-3,6-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩等のニトロソ化合物、リン酸とオクタデカン-1-オールのエステル、トリフェニルホスファイト、3,9-ジオクタデカン-1-イル-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリスノニルフェニルホスフィト、亜リン酸-(1-メチルエチリデン)-ジ-4,1-フェニレンテトラ-C12-15-アルキルエステル、2-エチルヘキシル=ジフェニル=ホスフィット、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリイソデシル=ホスフィット、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト化合物、ビス(ジメチルジチオカルバマト-κ(2)S,S’)亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛等の亜鉛化合物、ビス(N,N-ジブチルカルバモジチオアト-S,S’)ニッケル等のニッケル化合物、1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-チオン、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2-メチル-4,6-ビス[(オクタン-1-イルスルファニル)メチル]フェノール、ジラウリルチオジプロピオン酸エステル、3,3’-チオジプロピオン酸ジステアリル等の硫黄化合物などが挙げられる。これらの重合禁止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0046】
前記酸化防止剤としては、前記重合禁止剤で例示した化合物と同様のものを用いることができ、前記酸化防止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0047】
また、前記重合禁止剤、及び前記酸化防止剤の市販品としては、例えば、和光純薬工業株式会社製「Q-1300」、「Q-1301」、住友化学株式会社製「スミライザーBBM-S」、「スミライザーGA-80が」等が挙げられる。
【0048】
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤として例示したものと同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0049】
前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。これらの無機質充填材は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0050】
前記顔料としては、公知慣用の無機顔料や有機顔料を使用することができる。
【0051】
前記無機顔料としては、例えば、白色顔料、アンチモンレッド、ベンガラ、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等が挙げられる。これらの無機顔料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0052】
前記白色顔料としては、例えば、酸化チタン,酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、中空樹脂粒子、硫化亜鉛等が挙げられる。これらの白色顔料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0053】
前記有機顔料としては、例えば、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、フタロシアニン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンツイミダゾロン顔料、アゾ顔料等が挙げられる。これらの有機顔料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0054】
前記消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤等が挙げられる。これらの消泡剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0055】
前記粘度調整剤としては、例えば、アルカリ性に調整することによって増粘可能なアクリル重合体や合成ゴムラテックス、分子が会合することによって増粘可能なウレタン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、水添加ヒマシ油、アマイドワックス、酸化ポリエチレン、金属石鹸、ジベンジリデンソルビトール等が挙げられる。これらの粘度調整剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0056】
前記レベリング剤としては、例えば、シリコーン系化合物、アセチレンジオール系化合物、フッ素系化合物等が挙げられる。これらのレベリング剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0057】
前記難燃剤としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5―ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機難燃剤などが挙げられる。これらの難燃剤は、単独でも用いることも2種以上を併用することもできる。
【0058】
本発明の硬化物は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に、活性エネルギー線を照射することで得ることができる。前記活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。また、前記活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合、紫外線による硬化反応を効率よく行う上で、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよく、空気雰囲気下で照射してもよい。
【0059】
紫外線発生源としては、実用性、経済性の面から紫外線ランプが一般的に用いられている。具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光、LED等が挙げられる。
【0060】
前記活性エネルギー線の積算光量は、特に制限されないが、0.1~50kJ/mであることが好ましく、0.5~10kJ/mであることがより好ましい。積算光量が上記範囲であると、未硬化部分の発生の防止又は抑制ができることから好ましい。
【0061】
なお、前記活性エネルギー線の照射は、一段階で行ってもよいし、二段階以上に分けて行ってもよい。
【0062】
本発明の物品は、前記硬化物の塗膜を有するものである。前記物品としては、例えば、携帯電話、家電製品、自動車内外装材、OA機器等のプラスチック成形品や、半導体デバイス、表示デバイス、撮像デバイスなどが挙げられる。
【実施例
【0063】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下に挙げた実施例に限定されるものではない。
【0064】
なお、本実施例において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミッションクロマトグラフ(GPC)を用い、下記の条件により測定した値である。
【0065】
測定装置 ; 東ソー株式会社製 HLC-8220
カラム ; 東ソー株式会社製ガードカラムHXL-H
+東ソー株式会社製 TSKgel G5000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G4000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G3000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G2000HXL
検出器 ; RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製 SC-8010
測定条件: カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 ;ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0066】
(実施例1:不飽和アクリル樹脂(1)の調製)
撹拌棒、温度センサー、水冷コンデンサーが備え付けられたフラスコに酢酸ブチル65質量部を仕込み、乾燥窒素をフローし、撹拌しながら110℃に昇温した。メタクリル酸メチル47質量部、グリシジルメタクリル酸33質量部、ポリシロキサン化合物(A1)(JNC株式会社製「サイラプレーンFM-0701T」、数平均分子量423)2質量部、ポリシロキサン化合物(B1)(JNC株式会社製「サイラプレーンFM-7721」、数平均分子量5,000)1質量部、(2-エチルヘキサノイル)(tert-ブチル)ペルオキシド(日本油脂株式会社製「パーブチルO」)を5質量部、酢酸ブチル17質量部の混合溶液を滴下ロートから、4時間かけて滴下してアクリル重合を行った。粘度と不揮発分が一定になったことを確認してからフラスコを冷却し、80℃に到達したことを確認して、メチルハイドロキノン0.01質量部、トリフェニルホスフィン0.5質量部、アクリル酸17質量部を仕込んだ。105℃に昇温して、酸価3.0以下、エポキシ等量5,000以上であることを確認して、不飽和アクリル樹脂(1)を得た。このアクリル樹脂(1)の不揮発分は55質量%であり、数平均分子量(Mn)は4,600であり、重量平均分子量(Mw)は13,700であった。
【0067】
(比較例1:ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(R1)の調製)
撹拌棒、温度センサー、水冷コンデンサーが備え付けられたフラスコに、酢酸ブチル165質量部、イソホロンジイソシアネート(イソシアネート基含有量37.8質量%)111.0質量部、メチルハイドロキノン0.01質量部、ジブチルスズジラウレート0.1質量部を仕込み、60℃に昇温した。次いで、水酸基含有ポリシロキサン化合物(JNC株式会社製「サイラプレーンFM-DA11」、数平均分子量1,000、水酸基価94.7)296.2質量部を仕込んで、80℃で反応させた。残存イソシアネート基が3.1質量%となった時点で、更に、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)アクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM-305」、水酸基価126mgKOH/g)120質量部を仕込み、そのまま反応を継続し、イソシアネート基が消失した時点で反応を終了して、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(R1)を得た。このウレタン(メタ)アクリレート樹脂(R1)の不揮発分は80質量%であった。
【0068】
(実施例2:活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(1)の調製)
実施例1で得られたアクリル樹脂(1)に、光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤を固形分換算で表1に示す割合となるように配合し、酢酸ブチルで調整して不揮発分50質量%の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(1)を得た。
【0069】
(比較例2:活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(R1)の調製)
比較例1で得られたウレタン(メタ)アクリレート樹脂(R1)に、エチレン性不飽和化合物(東亞合成株式会社製「DPA-600T」、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤を固形分換算で表1に示す割合となるように配合し、酢酸ブチルで調整して不揮発分50質量%の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(R1)を得た。
【0070】
上記の実施例及び比較例で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(1)及び(R1)を用いて、下記の評価を行った。
【0071】
[塗膜外観の評価方法]
実施例及び比較例で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、ポリカーボネート基材上に、バーコーターを用いて、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗工し、70℃で5分間乾燥した後、高圧水銀灯ランプ(ランプ出力160W/cm)を用いて、積算照射量30kJ/mとなるように紫外線照射を行ない、硬化塗膜を形成した。得られた硬化塗膜の外観を目視にて観察し、以下の基準に従い評価した。
【0072】
○:塗膜が透明で異常がなかった。
×:塗膜が白濁または塗膜表面にクレーターがあった。
【0073】
[密着性の評価方法]
前記硬化塗膜を用いて、塗膜表面に1mm間隔で10×10の碁盤目状にカッターナイフで切れ目を入れ、1mmの碁盤目を100個作成した。次いで、碁盤目上にセロハンテープを貼りつけた後、急速に剥がし碁盤目試験を実施して、100個の碁盤目のうち残存した数を下記の基準に従い評価した。
【0074】
○:残存数が、100個であった。
△:残存数が、90個以上100個未満であった。
×:残存数が、90個未満であった。
【0075】
[撥水性の評価方法]
撥水性の評価は、水接触角及び水滑落角の測定により行った。
【0076】
[水接触角の測定方法]
前記ポリカーボネート基材上に形成した硬化塗膜について、協和界面科学社製「DMo-501」を用いて、精製水の接触角を測定した。数値が高い程、撥水性に優れている。
【0077】
[水滑落角の測定方法]
前記ポリカーボネート基材上に形成した硬化塗膜について、協和界面科学社製「DMo-501」を用いて、精製水の滑落角を測定した。滑落角は、水滴20μLを塗膜表面に乗せて、測定台を1°ずつ傾けた時に、水滴が2cm移動したときの角度を測定した。数値が低い程、滑落性に優れ、撥水性に優れている。なお、90°以上傾けても水滴が滑落しない場合、「×」と示した。
【0078】
実施例2で作製した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(1)、及び比較例2で作製した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(R1)の組成及び評価結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
なお、表1における不飽和アクリル樹脂(1)及びウレタンアクリレート樹脂(R1)の質量部の記載は、固形分値である。
【0081】
表1中の「光重合開始剤(A)」は、IGM Resins社製「Omnirad 184」を示す。
【0082】
表1中の「光重合開始剤(B)」は、IGM Resins社製「Omnirad TPO」を示す。
【0083】
表1中の「紫外線吸収剤」は、BASFジャパン株式会社製「Tinuvin 400」を示す。
【0084】
表1中の「光安定剤」は、BASFジャパン株式会社製「Tinuvin 123」を示す。
【0085】
表1に示した実施例2は、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の例である。この活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、優れた撥水性を有することが確認できた。
【0086】
一方、比較例2は、不飽和アクリル樹脂を用いない活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の例である。この活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、水滑落角が90度以上であり、撥水性が不十分であることが確認できた。