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特許7375981水性顔料分散体、インクジェット印刷インク及び印刷物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】水性顔料分散体、インクジェット印刷インク及び印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/326 20140101AFI20231031BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
C09D11/326
C09D17/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023501482
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2022013798
(87)【国際公開番号】W WO2022220046
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2021068931
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】市川 亮太
(72)【発明者】
【氏名】重森 実
(72)【発明者】
【氏名】仁尾 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】今村 彰志
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-178895(JP,A)
【文献】特開2009-108116(JP,A)
【文献】特開2019-026846(JP,A)
【文献】特開2019-014883(JP,A)
【文献】特開2019-014879(JP,A)
【文献】特開2011-137102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性顔料分散体と、酸変性ポリプロピレン樹脂とを含むインクジェット印刷インクであって、
前記水性顔料分散体が、顔料(A)、下記一般式(I)で示される構造(X)と、カルボキシル基が水酸化カリウムによって中和されたアニオン性基とを有する顔料分散樹脂(B)及び水性媒体(C)を含有する水性顔料分散体であって、
前記顔料分散樹脂(B)が、前記アニオン性基を前記顔料分散樹脂(B)の全量に対して0.2~1.5mmol/g有するものであり、アニオン性基を有する化合物(B1)と2個以上のエポキシ基を有する化合物(B2)との反応物であって、
前記化合物(B1)のカルボキシル基と前記化合物(B2)のエポキシ基との架橋率が、45%~85%の範囲のものであり、
前記化合物(B1)の酸価が、250mgKOH/g以下であり、
前記化合物(B2)が、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルであるインクジェット印刷インク
【化1】
【請求項2】
前記化合物(B2)は、前記化合物(B1)の全量に対して3.2mmol/g以下の範囲で使用する請求項1に記載のインクジェット印刷インク
【請求項3】
更に、酸化ポリエチレンワックスを含む請求項1又は2に記載のインクジェット印刷インク。
【請求項4】
更に、界面活性剤をインクジェット印刷インクの全量に対して0.1~2質量%含む請求項1又は2に記載のインクジェット印刷インク。
【請求項5】
前記界面活性剤として、シリコーン系界面活性剤、及び/又は、アセチレン系界面活性剤を含む請求項に記載のインクジェット印刷インク。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のインクジェット印刷インクを用いて被記録媒体にインクジェット印刷方式で印刷する印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット印刷インクをはじめとするインクの製造に使用可能な水性顔料分散体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方式は、使用する装置の騒音が小さく、操作性がよいという利点を有するのみならず、印刷物のカラー化が容易である。そのため、インクジェット記録方式は、オフィスや家庭での出力機としてだけでなく、産業用途においても利用されている。
【0003】
前記インクジェット記録方式で用いられるインクとしては、インク吐出ノズルの詰まり等を防止するうえで、経時的に顔料等の沈降を起こしにくく保存安定性に優れたものが求められている。
【0004】
保存安定性に優れたインクジェット印刷インクとしては、例えば顔料を、アニオン性基を有する水溶性ポリマー及びアニオン性基を有する水不溶性ポリマーで分散させた後、特定量の架橋剤で前記ポリマーを架橋処理してなる水系インクが知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
一方、インクジェット印刷インクが前記したような産業用途で利用され始めているなかで、インクジェット印刷インクには、従来にない新たな性能が求められるようになっている。例えば段ボールの表面には、良好な外観を付与することを目的として、白地の印刷がなされ、その表面に様々な印刷が施されることが増えている。前記印刷をインクジェット印刷法で行う場合、インクジェット印刷インクには鮮明な印刷画像を形成できる性質が求められる。しかし、従来のインクジェット印刷インクは、前記白地のような、溶媒を吸収しにくい層の表面で濡れ広がりにくく、はじかれやすい傾向にある。そのため、従来のインクではベタ印字部の濃淡差(モットリング)、ドット結合による粒状のムラ(粒状感)といった印刷不良が発生する場合があった。
【0006】
前記印刷画像の印刷不良は、例えばインクの粘度や表面張力等を調整することによって、ある程度抑制することができる。しかし、印刷不良をある程度抑制できる程度に表面張力等が調整されたインクは、例えば常温または高温環境下に保管された際に、粘度の上昇やインクに含まれる顔料等の粒子径の増大を引き起こす場合があった。
【0007】
以上のように、前記印刷画像の印刷不良の改善と保存安定性とがトレードオフの関係にあるなかで、これらを両立したインクジェット印刷インクの開発が求められていた。
顔料を、アニオン性基を有する水溶性ポリマー(x)及びアニオン性基を有する水不溶性ポリマー(y)で分散させた後、前記アニオン性基と反応しうる官能基を有する架橋剤で、前記ポリマーを架橋処理してなる水系インクであり、ポリマー1g当たりの架橋剤量が0.8~3.0mmol当量/gであり、架橋処理後のポリマー1g当たりのアニオン性基量が1.5~3.0mmol/gである、インクジェット記録用水系インク。顔料を、アニオン性基を有する水溶性ポリマー(x)及びアニオン性基を有する水不溶性ポリマー(y)で分散させた後、前記アニオン性基と反応しうる官能基を有する架橋剤で、前記ポリマーを架橋処理してなる水系インクであり、ポリマー1g当たりの架橋剤量が0.8~3.0mmol当量/gであり、架橋処理後のポリマー1g当たりのアニオン性基量が1.5~3.0mmol/gである、インクジェット記録用水系インク。顔料を、アニオン性基を有する水溶性ポリマー(x)及びアニオン性基を有する水不溶性ポリマー(y)で分散させた後、前記アニオン性基と反応しうる官能基を有する架橋剤で、前記ポリマーを架橋処理してなる水系インクであり、ポリマー1g当たりの架橋剤量が0.8~3.0mmol当量/gであり、架橋処理後のポリマー1g当たりのアニオン性基量が1.5~3.0mmol/gである、インクジェット記録用水系インク。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-137102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、優れた保存安定性を維持し、色むら等が少なく鮮明な印刷画像を形成可能なインクジェット印刷インクの製造に使用できる水性顔料分散体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、顔料(A)、下記一般式(I)で示される構造(X)とアニオン性基とを有する顔料分散樹脂(B)及び水性媒体(C)を含有する水性顔料分散体であって、前記顔料分散樹脂(B)が、前記アニオン性基を前記顔料分散樹脂(B)の全量に対して0.2~1.5mmol/g有するものであることを特徴とする水性顔料分散体及びそれを用いたインクジェット印刷インクによって、上記課題を解決した。
【0011】
【化1】
【発明の効果】
【0012】
本発明の水性顔料分散体によれば、優れた保存安定性を維持し、色むら等が少なく鮮明印刷画像を形成可能なインクジェット印刷インク及び印刷物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の水性顔料分散体は、顔料(A)、下記一般式(I)で示される構造(X)とアニオン性基とを有する顔料分散樹脂(B)及び水性媒体(C)を含有する水性顔料分散体であって、前記顔料分散樹脂(B)が、前記アニオン性基を前記顔料分散樹脂(B)の全量に対して0.25~1.5mmol/g有するものであることを特徴とする。
【0014】
【化2】
【0015】
はじめに、本発明の水性顔料分散体に使用する顔料(A)について説明する。
【0016】
前記顔料(A)としては、例えば水性グラビアインク又は水性インクジェットインクにおいて通常使用される有機顔料及び無機顔料を使用することができる。
【0017】
前記顔料(A)としては、有機顔料及び無機顔料の一方又は両方を含んでいてよい。また、顔料(A)としては、未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができる。
【0018】
無機顔料としては、例えば、酸化鉄や、コンタクト法、ファーネス法又はサーマル法等の方法で製造されたカーボンブラックなどを使用することができる。
【0019】
有機顔料としては、例えばアゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、レーキ顔料(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。
【0020】
ブラックインクに使用可能な顔料(ブラック顔料)としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、6、7、8、10、26、27、28等が挙げられる。これらの中でも、C.I.ピグメントブラック7が好ましく用いられる。ブラック顔料の具体例としては、三菱化学株式会社製のNo.2300、No.2200B、No.900、No.960、 No.980、No.33、No.40、No,45、No.45L、No.52、HCF88、MA7、MA8、MA100等;コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、Raven700等;キャボット社製のRegal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Mogul 700、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400等;デグサ社製のColor Black FW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、Printex 35、同U、同V、同1400U、Special Black 6、同5、同4、同4A、NIPEX150、NIPEX160、NIPEX170、NIPEX180等が挙げられる。
【0021】
イエローインクに使用可能な顔料(イエロー顔料)の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、174、180、185等が挙げられる。
【0022】
マゼンタインクに使用可能な顔料(マゼンタ顔料)の具体例としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、146、176、184、185、202、209、269、282等;C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0023】
シアンインクに使用可能な顔料(シアン顔料)の具体例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:3、15:4、15:6、16、22、60、63、66等が挙げられる。これらの中でも、C.I.ピグメントブルー15:3が好ましく用いられる。
【0024】
ホワイトインクに使用可能な顔料(ホワイト顔料)の具体例としては、アルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、微粉ケイ酸、合成珪酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等が挙げられる。
【0025】
前記顔料(A)は、前記水性顔料分散体の全量に対して10質量%~25質量%の範囲で使用することが好ましく、15質量%~20質量%の範囲で使用することが、経時的な凝集等を抑制可能で保存安定性に優れた水性顔料分散体を得るうえで好ましい。
【0026】
次に、本発明の水性顔料分散体に使用する顔料分散樹脂(B)について説明する。
本発明で使用する顔料分散樹脂(B)は、下記一般式(I)で示される構造(X)とアニオン性基とを有するもののうち、前記アニオン性基を前記顔料分散樹脂(B)の全量に対して0.25~1.5mmol/gの範囲で有するものである。
【0027】
【化3】
【0028】
前記顔料分散樹脂(B)は、前記構造(X)を有することで、前記顔料(A)の表面でネットワーク構造を形成すると考えられ、その結果、前記顔料分散樹脂(B)を含有する本発明の水性顔料分散体及びそれを用いたインクに優れた保存安定性を付与することができる。
【0029】
前記顔料分散樹脂(B)が有する前記構造(X)は、例えばカルボキシル基とエポキシ基との反応によって形成された構造が挙げられる。
【0030】
前記構造(X)を有する顔料分散樹脂(B)としては、例えばカルボキシル基を含むアニオン性基を有する化合物(B1)と2個以上のエポキシ基を有する化合物(B2)との反応物を使用することができる。
【0031】
前記顔料分散樹脂(B)としては、例えば、予め前記化合物(B1)と前記化合物(B2)とを反応させることによって得られた反応物を使用することができる。前記顔料分散樹脂(B)は、例えば前記顔料(A)と前記化合物(B1)と水性媒体(C)等とを含有する水性顔料分散体を製造した後、前記水性顔料分散体と前記化合物(B2)とを混合し、前記化合物(B1)のカルボキシル基と前記化合物(B2)のエポキシ基とを反応させることによって形成することが好ましい。
【0032】
前記化合物(B1)のカルボキシル基と前記化合物(B2)のエポキシ基との反応の程度は、架橋率で評価することができる。ここで架橋率とは、100×[前記化合物(B2)中のエポキシ基のモル数]/ [前記化合物(B1)中のカルボキシル基のモル数]で算出された値を指す。本発明の水性顔料分散体としては、前記架橋率が20%~90%の範囲の顔料分散樹脂(B)を使用することが好ましく、30%~90%の範囲の顔料分散樹脂(B)を使用することがより好ましく、45%~85%の範囲の顔料分散樹脂(B)を使用することが、中和カルボキシル基による分散性を保持しつつ、保存安定性向上効果を奏するうえで特に好ましい。
【0033】
また、前記顔料分散樹脂(B)としては、アニオン性基を前記顔料分散樹脂(B)の全量に対して0.2~1.5mmol/gの範囲で有するものを使用する。前記範囲のアニオン性基を有する顔料分散樹脂(B)を使用することによって、保存安定性に優れた水性顔料分散体及びそれを含むインクを得ることができる。前記アニオン性基の存在量は、前記顔料分散樹脂(B)の全量に対して0.25~1.2mmol/gの範囲で使用することが、水性顔料分散体及びインクの保存安定性をより一層向上させるうえでより好ましい。
【0034】
前記顔料分散樹脂(B)として前記化合物(B1)及び前記化合物(B2)との反応物を使用する場合、前記化合物(B1)が有するアニオン性基の一部は、前記化合物(B2)が有するエポキシ基と反応し消費される。したがって、前記顔料分散樹脂(B)の全量に対する前記アニオン性基の量は、前記化合物(B1)と前記化合物(B2)との反応物に残存するアニオン性基の量を指す。
【0035】
前記化合物(B1)としては、例えばアクリル酸-アクリル酸エステル共重合体などのアクリル樹脂、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体などのスチレン-アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体の樹脂、及び、前記樹脂の塩を使用することができる。前記化合物(B1)としては、例えばDIC株式会社のアクリディックシリーズ、星光PMC株式会社のハイロスーXシリーズ、また、前記化合物(B1)として、WO2018/190139号パンフレットにおいてポリマー(G)として例示された化合物を用いることもできる。
【0036】
なかでも、前記化合物(B1)としては、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体を使用することが、顔料(A)を水性媒体(C)中に安定して分散させることができるため好ましい。
【0037】
前記化合物(B1)としては、酸価250mgKOH/g以下のものを使用することが好ましい。前記化合物(B1)としては、酸価が70mgKOH/g~190mgKOH/gのものを使用することが好ましく、100mgKOH/g~190mgKOH/gのものを使用することが、経時的な顔料の凝集や沈降を防止し保存安定性に優れた水性顔料分散体及びインクを得るうえでより好ましい。
【0038】
前記化合物(B1)は、前記顔料(A)の全量に対して20質量%~40質量%の範囲で使用することが好ましく、30質量%~40質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0039】
前記化合物(B1)としては、アニオン性基の一部が中和剤によって中和されたものを使用することが好ましい。
【0040】
前記中和剤としては、例えばアルカリ金属水酸化物を使用することが、本発明の水性顔料分散体の製造直後の分散安定性や、保存安定性をより一層高くするうえで好ましい。
【0041】
前記アルカリ金属水酸化物としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムが挙げられるが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0042】
前記中和剤は、下記式で算出される中和率が100%を超える範囲で使用することが、顔料(A)の経時的な沈降や凝集等を防止し保存安定性に優れた水性顔料分散体を得るうえで好ましい。前記中和率は、式[100×(アルカリ金属水酸化物の水酸基のモル当量数/化合物(B1)が有するアニオン性基のモル当量数)]に基づいて算出した値を指す。
【0043】
前記化合物(B2)としては、2個以上のエポキシ基を有する化合物を使用することができる。前記化合物(B2)としては、エポキシ基を2~4個有するものを使用することが、水性顔料分散体及びインクの保存安定性をより一層向上させるうえでより好ましい。
【0044】
前記化合物(B2)としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、等のポリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0045】
なかでも、前記化合物(B2)としては、エポキシ基とオキシエチレン構造とを有するものを使用することが、水性顔料分散体の保存安定性をより一層向上させるうえで好ましい。具体的には、前記化合物(B2)としては、ポリエチレングリコールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルを使用することが好ましい。
【0046】
前記化合物(B2)は、前記化合物(B1)の全量に対して3.2mmol/g以下の範囲で使用することが、より一層優れた保存安定性を備えた水性顔料分散体を得るうえで好ましく、2.7mmol/g以下の範囲で使用することがより好ましく、0.6mmol/g以上2.4mmol/g以下の範囲で使用することがより好ましい。
【0047】
前記化合物(B2)としては、分子量が_100~1000の範囲のものを使用することが好ましく、150~750の範囲のものを使用することが、より一層優れた保存安定性を備えた水性顔料分散体及びインクを得るうえで特に好ましい。
【0048】
次に、本発明の水性媒体(C)について説明する。
前記水性媒体(C)としては、例えば水であり、具体的には、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の、純水又は超純水を使用することができる。
前記水性媒体(C)は、前記水性顔料分散体の全量に対して35質量%~75質量%の範囲で使用することが好ましく、45質量%~65質量%の範囲で使用することが、水性顔料分散体より好ましい。
【0049】
本発明の水性顔料分散体は、必要に応じて防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を含有するものを使用することができる。前記キレート化剤は、水性顔料分散体に含まれる、顔料に由来する金属イオンの含有量を低減することができる。
【0050】
次に、本発明の水性顔料分散体の製造方法を説明する。
本発明の水性顔料分散体は、例えば前記顔料(A)と前記化合物(B1)と前記水性媒体(C)とを混合することで、前記顔料(A)が前記化合物(B1)によって前記水性媒体(C)中に分散された分散体を製造する工程1、及び、前記工程1で得られた分散体と前記化合物(B2)とを混合することによって、前記分散体に含まれる化合物(B1)が有するカルボキシル基等のアニオン性基と、前記化合物(B2)が有するエポキシ基等の官能基とを反応させ顔料分散樹脂(B)を形成する工程2とを経ることによって製造する方法が挙げられる。
【0051】
前記工程1は、例えば顔料(A)と化合物(B2)と水性媒体(C)との混合物を、分散機を用いて処理する工程である。
【0052】
前記分散機としては、例えばインテンシブミキサー(日本アイリッヒ株式会社製)、バタフライミキサー(株式会社井上製作所)等の高速撹拌翼を有する混練分散機、SCミル(日本コークス工業株式会社)、ナノミル(浅田鉄工株式会社)等のメディア型湿式分散機を使用することができる。
【0053】
なかでも、前記分散機としては、前記高速撹拌翼を有する混練分散機を使用することが、メディア型湿式分散機で使用されるビーズ等の影響によりインクのインクジェット吐出性が低下することを防止するうえで好ましい。また、前記高速撹拌翼を有する混練分散機は、メディア型湿式分散機と比較して、分散機の内容物の温度を100℃近くにでき、その結果、顔料(A)に前記化合物(B1)の吸着しやすさを高めることができる。
【0054】
一方、前記メディア型湿式分散機を用いる場合、前記工程1は、前記顔料(A)と化合物(B2)と水性媒体(C)とを混合し、撹拌機等を用いて予備分散することによって、顔料(A)等が水性媒体(C)を含む混合物を製造する工程1-1、及び、前記工程1-1で得られた混合物を、前記したメディア型湿式分散機で処理する工程1-2を含む工程であってもよい。この工程であれば、水性顔料分散体に含まれる顔料(A)等の分散性を、工程の途中で確認することができる。
【0055】
また、前記化合物(B1)の中和は、前記工程1の途中または工程1の終了後に行うことが好ましい。具体的には、前記中和は、前記工程1の途中の前記混合物や、工程1の終了後に得られた分散体に、前記した中和剤を供給し混合することによって行うことができる。
【0056】
また、前記工程1で得られた分散体は、工程2を行う前に、必要に応じて遠心分離処理を行うことが、粗大粒子を除去し、前記工程1で得られた分散体や水性顔料分散体やインクに含まれる沈降物の量を減らすうえで好ましい。
【0057】
次に、工程2について説明する。
工程2は、前記化合物(B1)が有するカルボキシル基等のアニオン性基と、前記化合物(B2)が有するエポキシ基等の官能基とを反応させることによって、顔料(A)の表面に被覆または吸着した顔料分散樹脂(B)を形成する工程である。前記反応は、60~70℃どの範囲で行うことが、より一層保存安定性に優れた水性顔料分散体を得るうえで好ましい。
【0058】
なお、前記化合物(B2)は、上記したように、工程1終了後に得られた分散体に対して供給することことが好適であるものの、前記工程1の途中に、前記顔料(A)と前記化合物(B1)と前記水性媒体(C)との混合物へ供給してもよい。
【0059】
前記工程1及び2を経て得られた水性顔料分散体は、必要に応じて遠心分離処理を行うことが、粗大粒子を除去し、前記工程1で得られた分散体や水性顔料分散体やインクに含まれる沈降物の量を減らすうえで好ましい。
【0060】
前記方法で得られた水性顔料分散体は、後述するとおり、インクジェット印刷インクをはじめとするインクを製造する際に使用することができる、しかし、前記方法で得られる水性顔料分散体はpHがやや高くなる傾向にあるため、インクとして想定するpHとの間に乖離がある場合には、水性顔料分散体のpHをあらかじめ低めに調整することが、インクの設計の自由度を高めるうえで好ましい。前記水性顔料分散体のpHを調整する方法としては、水性顔料分散体をイオン交換樹脂で処理する方法が挙げられる。具体的には、オルガノ株式会社製のアンバーライトIRC76等の弱酸性の陽イオン交換樹脂と水性顔料分散体とを混合した後、前記陽イオン交換樹脂を除去する方法などが挙げられる。
【0061】
上記方法で得られた本発明の水性顔料分散体は、例えばインクの製造に使用することができる。なかでも水性顔料分散体は、インクジェット印刷インクの製造に使用することができる。
前記インクジェット印刷インクは、例えば前記水性顔料分散体に、必要に応じて水性媒体やバインダーや界面活性剤などを供給し混合することによって製造することができる。
前記水性顔料分散体と、必要に応じて水性媒体やバインダーや界面活性剤などとを混合する際には、例えばビーズミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザー等の分散機を使用することができる。
【0062】
前記インクジェット印刷インクは、必要に応じてバインダー、界面活性剤、ワックス、湿潤剤(乾燥抑止剤)、浸透剤、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等のその他の添加剤を含有するものを使用することができる。
【0063】
前記バインダーとしては、例えば酸変性ポリプロピレン樹脂を使用することができる。前記酸変性ポリプロピレン樹脂としては、ポリプロピレンを1種又は2種以上の酸性化合物で変性することにより得られる樹脂を使用することができ、ポリプロピレン由来の骨格(ポリプロピレン骨格)と酸性化合物由来の官能基とを有するものを使用することが好ましい。前記酸変性ポリプロピレン樹脂を含有するインクジェット印刷インクであれば、インク中の溶媒を吸収しないまたは吸収しにくい被記録媒体へ印刷した場合であっても、印刷物にモットリングや白スジが発生することを抑制することができる。
【0064】
前記酸変性ポリプロピレン樹脂としては、市販品を用いることもできる。好ましい市販品としては、日本製紙株式会社製のアウローレン(登録商標)AE-301及びAE-502が挙げられる。また、前記酸化ポリエチレンワックスとしては、例えばポリエチレンワックスを酸化処理したものを使用することができ、具体的にはポリエチレン由来の骨格(ポリエチレン骨格)を有しているものを使用することができる。
【0065】
前記界面活性剤としては、例えばアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を使用することができる。
【0066】
界面活性剤としては、スジ状の印刷不良が発生することを抑制しやすい観点から、アニオン性界面活性剤、及び、ノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上を使用することが好ましい。
【0067】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられ、これらの具体例として、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等を挙げることができる。
【0068】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー等が挙げられ、これらの中では、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、及び、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0069】
前記ノニオン性界面活性剤としては、インクジェット印刷インクは、スジ状の印刷不良が発生することを抑制しやすい観点から、アセチレン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレン系界面活性剤は、分子中にアセチレン構造を有する界面活性剤である。アセチレン系界面活性剤は、スジ状の印刷不良が発生することを抑制しやすい観点から、アセチレングリコール、及び、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物からなる群より選ばれる1種以上が含むことが好ましい。
【0070】
アセチレン系界面活性剤の含有量は、スジ状の印刷不良が発生することを抑制しやすい観点から、界面活性剤の全量に対して、80~100質量%が好ましく、85~99.9質量%がより好ましく、90~99.5質量%が更に好ましく、95~99.3質量%が特に好ましい。
【0071】
その他の界面活性剤としては、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸、ラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタントなども使用することができる。
【0072】
界面活性剤の含有量は、インクジェット印刷インクの全量に対して、0.1~2質量%が好ましく、0.5~2質量%がより好ましく、0.8~1.6質量%が更に好ましい。
これらの含有量で界面活性剤を含有するインクジェット印刷インクは、吐出液滴の被印刷体の表面での濡れ性が良好であり、被印刷体上で充分な濡れ広がりを有しやすく、スジ状の印刷不良の発生を防止する効果を得やすい。
【0073】
界面活性剤を用いることにより、インクジェットヘッドの吐出口から吐出されたインクジェット印刷インクが被印刷体に着弾後、表面で良好に濡れ広がりやすいこと等から、スジ状の印刷不良の発生を防止しやすい。さらに、界面活性剤を用いることにより、インクジェット印刷インクの表面張力を低下させる等することでインクジェット印刷インクのレベリング性を向上させやすい。
【0074】
前記ワックスとしては、例えば酸化ポリエチレンワックス等を使用することができる。
【0075】
前記酸化ポリエチレンワックスを含有するインクジェット印刷インクであれば、画像堅牢性に優れた印刷物を得ることができる。
【0076】
前記酸化ポリエチレンワックスとしては、溶媒中に溶解又は分散した状態の酸化ポリエチレンワックスを用いることが、画像堅牢性に優れた印刷物を得るうえで好ましい。
【0077】
前記酸化ポリエチレンワックスとしては、市販品を用いることもできる。好ましい市販品としては、BYK社製のAQUACER515、AQUACER1547等が挙げられる。
【0078】
前記湿潤剤としては、インクジェットヘッドの吐出ノズルにおけるインクジェット印刷インクの乾燥を防止することを目的として使用することができる。湿潤剤としては、水との混和性があり、インクジェットヘッドの吐出口の閉塞防止効果が得られるものを使用することが好ましく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、グリセリン等が挙げられる。
【0079】
湿潤剤としては固体の湿潤剤を用いることもできる。このような湿潤剤としては、例えば、尿素及び尿素誘導体が挙げられる。尿素誘導体としては、エチレン尿素、プロピレン尿素、ジエチル尿素、チオ尿素、N,N-ジメチル尿素、ヒドロキシエチル尿素、ヒドロキシブチル尿素、エチレンチオ尿素、ジエチルチオ尿素等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。セット性に優れた印刷物を得やすい観点では、尿素、エチレン尿素及び2-ヒドロキシエチル尿素からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0080】
湿潤剤の含有量は、インクジェット印刷インクの全量に対して3~50質量%であることが、被記録媒体上での乾燥しやすさと、インクジェット印刷インクがインクジェットヘッドの内部で固着等の防止とを両立することができる。
【0081】
前記浸透剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールモノエーテル類などが挙げられる。
【0082】
上記方法で得られたインクジェット印刷インクは、インクジェット印刷インクの全量に対して顔料(A)を1質量%~15質量%の範囲で使用することが好ましく、2質量%~10質量%の範囲で使用することが、印刷物の印刷濃度が高く、印刷物にスジが発生しにくく画像堅牢性に優れ、分散安定性に優れた印刷物を得るうえで好ましい。
【0083】
また、前記インクジェット印刷インクのpHは、インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させ、インク難吸収性又はインク非吸収性の被記録媒体に印刷した際の濡れ広がり、印字濃度、耐擦過性を向上させるうえで、好ましくは7.0以上、より好ましくは7.5以上、更に好ましくは8.0以上である。水性インク組成物のpHの上限は、インクの塗布又は吐出装置を構成する部材(例えば、インク吐出口、インク流路等)の劣化を抑制し、かつ、インクが皮膚に付着した場合の影響を小さくするうえで、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.5以下、更に好ましくは10.0以下である。これらの観点から、インクジェット印刷インクのpHは、好ましくは7.0~11.0である。なお、上記pHは25℃におけるpHである。
【0084】
前記インクジェット印刷インクの粘度は、32℃で2mPa・s以上10mPa・s未満であることが好ましい。インクジェット印刷インクの粘度がこの範囲にある場合、インクジェット記録方式で使用した場合に、飛行曲がりによって発生する被記録媒体上の着弾位置のズレを見かけ上軽減し、印刷物のスジ発生を効果的に防止することができる傾向がある。また、この範囲の粘度を有するインクジェット印刷インクは、保存安定性及びインクジェット記録方式での吐出安定性に優れる傾向がある。32℃におけるインクジェット印刷インクの粘度は、好ましくは3mPa・s以上であり、より好ましくは4mPa・s以上である。32℃における水性インク組成物の粘度は、好ましくは8mPa・s以下であり、より好ましくは7mPa・s以下である。上記粘度は、例えば、E型粘度計に相当する円錐平板形(コーン・プレート形)回転粘度計を使用し、下記条件にて測定される値である。
【0085】
測定装置:TVE-25形粘度計(東機産業社製、TVE-25 L)
校正用標準液:JS20
測定温度:32℃
回転速度:10~100rpm
注入量:1200μL
【0086】
インクジェット印刷インクの表面張力は、例えば、25℃で20~40mN/mである。水性インク組成物の表面張力がこの範囲にある場合、インクジェット記録方式で使用した場合に、吐出液滴の被記録媒体表面での濡れ性が良好となる傾向があり、着弾後に充分な濡れ広がりを有する傾向がある。25℃におけるインクジェット印刷インクの表面張力は、好ましくは25mN/m以上であり、より好ましくは27mN/m以上である。25℃における水性インク組成物の表面張力は、好ましくは35mN/m以下であり、より好ましくは32mN/m以下である。
【0087】
本発明のインクジェット印刷インクを用いて得られた印刷物は、例えば被記録媒体と、被記録媒体の表面に印刷されたインクジェット印刷インクの塗膜とを有している。被記録媒体の表面に形成されたインク塗膜は、例えば、上記インクジェット印刷インクの乾燥物であり、上記インクジェット印刷インクにおける固形分(例えば、上記顔料(A)と前記顔料分散剤(B)等)を含有している。
【0088】
上記被記録媒体は、例えばインク難吸収性又はインク非吸収性の被記録媒体である。この印刷物は、被記録媒体が上述したインク難吸収性又はインク非吸収性の被記録媒体であっても、充分な画像堅牢性を有している。
【0089】
上記印刷物は、例えば、インクジェット印刷インクをインクジェット記録方式により被記録媒体の表面に印刷することにより得られる。具体的には、インクジェットヘッドのインク吐出口を有する面(x)から、前記面(x)の垂線と被記録媒体とが交わる位置(y)までの距離が1mm以上であるインクジェット記録方式で、上記インクジェット印刷インクを吐出し被記録媒体に印刷することで、上記印刷物を得ることができる。
【実施例
【0090】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0091】
<水性顔料分散体の調製>
(比較例1)
前記ブラック顔料(三菱ケミカル株式会社製のカーボンブラック「#960」(商品名))150g、顔料分散剤Xとしてスチレン-アクリル酸共重合体(重量平均分子量18,000、ガラス転移温度52℃、酸価110mgKOH/g)60g、プロピレングリコール30g、及び、34質量%水酸化カリウム水溶液15.5gを1.0Lのインテンシブミキサー(日本アイリッヒ株式会社製)に仕込み、イオン交換水を徐々に加えながら混練物を形成させたのち、ローター周速2.94m/s、パン周速1m/sで60分間混練した。続いて、前記インテンシブミキサーの容器内の混練物に、撹拌を継続しながら温めたイオン交換水266gを徐々に加えた後、プロピレングリコール30g、ACTICIDE B20 0.75g、及び顔料濃度が20質量%になるようにイオン交換水を最大197g加え混合することによって顔料濃度が20質量%の水性顔料分散体1Kを得た。
【0092】
(実施例1)
比較例1で得た水性顔料分散体1Kを固形分濃度20質量%になるようイオン交換水で希釈して得た水性顔料分散体500g対し、架橋剤(商品名:デナコールEX‐512、エポキシ当量168、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)を4.61g加え、60~70℃下で5時間攪拌を行った。攪拌後に冷却することによって、水性顔料分散体11K(顔料濃度:13.9質量%)を得た。
【0093】
(比較例2)
シアン顔料として、DIC株式会社製の「FASTOGEN BLUE SBG-SD」(商品名)を用意した。前記ブラック顔料に代えて当該シアン顔料を用いたこと、顔料分散剤Xの使用量を45g、34質量%水酸化カリウム水溶液の使用量を11.6g、プロピレングリコールを最初に60g投入して混練物形成後は追加しない、と変更し、工程は比較例1と同様にして、水性顔料分散体2C(顔料濃度:20質量%)を調製した。
【0094】
(実施例2)
比較例2で得た水性顔料分散体2Cを固形分濃度20質量%になるようイオン交換水で希釈して得た水性顔料分散体500g対し、架橋剤(商品名:デナコールEX‐512、エポキシ当量168、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)を3.73g加え、60~70℃下で5時間攪拌を行った。攪拌後に冷却することによって、水性顔料分散体12C(顔料濃度:15質量%)を得た。
【0095】
(比較例3)
マゼンタ顔料として、DIC株式会社製の「FASTOGEN SUPER MAGENTA RY」(商品名)を用意した。前記シアン顔料に代えて当該マゼンタ顔料を用いたこと以外は、比較例2と同様にして、水性顔料分散体3M(顔料濃度:20質量%)を調製した。
【0096】
(実施例3)
比較例3で得た水性顔料分散体3Mを固形分濃度20質量%になるようイオン交換水で希釈して得た水性顔料分散体500g対し、架橋剤(商品名:デナコールEX‐512、エポキシ当量168、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)を6.12g加え、60~70℃下で5時間攪拌を行った。攪拌後に冷却することによって、水性顔料分散体13M(顔料濃度:14.9質量%)を得た。
【0097】
(比較例4)
イエロー顔料として、Clariant社製の「Ink Jet Yellow 4GC」(商品名)を用意し、シアン顔料に代えて当該イエロー顔料を用いたこと以外は、比較例2と同様にして、水性顔料分散体4Y(顔料濃度:20質量%)を調製した。
【0098】
(実施例4)
比較例4で得た水性顔料分散体4Yを固形分濃度20質量%になるようイオン交換水で希釈して得た水性顔料分散体500g対し、架橋剤(商品名:デナコールEX‐512、エポキシ当量168、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)を3.73g加え、60~70℃下で5時間攪拌を行った。攪拌後に冷却することによって、水性顔料分散体14Y(顔料濃度:15質量%)を得た。
【0099】
(調製例1)
攪拌装置、滴下装置、温度センサー、および上部に窒素導入装置を有する還流装置を取り付けた反応容器を有する自動重合反応装置(重合試験機DSL-2AS型、轟産業(株)製)の反応容器にイソプロピルアルコール1200gを仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸2-ヒドロキシエチル75g、メタクリル酸260.8g、スチレン400g、メタクリル酸ベンジル234.2g、メタクリル酸グリシジル30g、および「パーブチル(登録商標)O」(有効成分ペルオキシ2-エチルヘキサン酸t-ブチル、日本油脂(株)製)80gの混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で15時間反応を継続させた後、イソプロピルアルコールの一部を減圧留去し、不揮発分を42.5質量%に調整することによって、酸価165の(メタ)アクリル酸エステル樹脂(重量平均分子量5000、ガラス転移温度66℃、酸価165)溶液である顔料分散剤Yを得た。
【0100】
次に、前記顔料分散剤Yをイソプロピルアルコールの一部を減圧留去し、不揮発分を90質量%に調整することによって、酸価165の(メタ)アクリル酸エステル樹脂(重量平均分子量5000、ガラス転移温度66℃、酸価165)溶液である顔料分散剤Zを得た。
【0101】
(比較例5)
顔料分散剤Xの代わりに上記顔料分散剤Zを使用し、34質量%水酸化カリウム水溶液量を23.6gと変更し、工程は比較例1と同様にして、水性顔料分散体5K(顔料濃度:20質量%)を調製した。
【0102】
(実施例5)
比較例5で得た水性顔料分散体5Kを固形分濃度20質量%になるようイオン交換水で希釈して得た水性顔料分散体500g対し、架橋剤(商品名:デナコールEX‐512、エポキシ当量168、ナガセケムテックス株式会社製)を6.91g加え、60~70℃下で5時間攪拌を行った。攪拌後に冷却することによって、水性顔料分散体15K(顔料濃度:13.6質量%)を得た。
【0103】
(比較例6)
顔料分散剤Xの代わりに上記顔料分散剤Zを使用し、34質量%水酸化カリウム水溶液量を17.7gと変更し、工程は比較例2と同様にして、水性顔料分散体6C(顔料濃度:20質量%)を調製した。
【0104】
(実施例6)
比較例6で得た水性顔料分散体6Cを固形分濃度20質量%になるようイオン交換水で希釈して得た水性顔料分散体500g対し、架橋剤(商品名:デナコールEX‐512、エポキシ当量168、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)を5.61g加え、60~70℃下で5時間攪拌を行った。攪拌後に冷却することによって、水性顔料分散体16C(顔料濃度:14.8質量%)を得た。
【0105】
(比較例7)
顔料分散剤Xの代わりに上記顔料分散剤Zを使用し、34質量%水酸化カリウム水溶液量を17.7gと変更し、工程は比較例3と同様にして、水性顔料分散体7M(顔料濃度:20質量%)を調製した。
【0106】
(実施例7)
比較例7で得た水性顔料分散体7Mを固形分濃度20質量%になるようイオン交換水で希釈して得た水性顔料分散体500g対し、架橋剤(商品名:デナコールEX‐512、エポキシ当量168、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)を9.19g加え、60~70℃下で5時間攪拌を行った。攪拌後に冷却することによって、水性顔料分散体17M(顔料濃度:14.7質量%)を得た。
【0107】
(比較例8)
顔料分散剤Xの代わりに上記顔料分散剤Zを使用し、34質量%水酸化カリウム水溶液量を17.7gと変更し、工程は比較例4と同様にして、水性顔料分散体8Y(顔料濃度:20質量%)を調製した。
【0108】
(実施例8)
比較例8で得た水性顔料分散体8Yを固形分濃度20質量%になるようイオン交換水で希釈して得た水性顔料分散体500g対し、架橋剤(商品名:デナコールEX‐512、エポキシ当量168、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)を5.61g加え、60~70℃下で5時間攪拌を行った。攪拌後に冷却することによって、水性顔料分散体18Y(顔料濃度:14.8質量%)を得た。
【0109】
<ワックスの用意>
ワックスとして、以下に示す酸化ポリエチレンワックスを用意した。
・AQUACER515:BYK社製、商品名、高密度酸化ポリエチレンワックスエマルション、融点(Tm)135℃
・AQUACER1547:BYK社製、商品名、高密度酸化ポリエチレンワックスエマルション、融点(Tm)125℃
【0110】
(実施例9)
イオン交換水2.0gと、プロピレングリコール12.0gと、グリセリン12.0gと、トリエタノールアミン0.2gと、TegoWET(エボニック社製、シリコーン系界面活性剤)0.1gと、ACTICIDE B20(ソー・ジャパン株式会社製、防腐剤)0.1gと、エチレン尿素5.6gとを混合し、エチレン尿素が溶解した後にプロピレングリコール1.2gとSURFYNOL 420(エボニック社製、アセチレン系界面活性剤)1.0gを混合した(混合物A)。次にアウローレン(登録商標)AE-301(日本製紙株式会社製、酸変性ポリプロピレン)3.3gとイオン交換水5.0g、AQUACER515(BYK社製、高密度酸化ポリエチレンワックスエマルション)2.9g、イオン交換水5.0gの順で混合した(混合物B)。混合物Bに実施例1で得た水性顔料分散体11Kを40.3gを混合した後に混合物Aを混合し、イオン交換水9.3gで容器を共洗いした後、撹拌することによって、水性顔料インクを得た。
(実施例10)
イオン交換水2.0gと、プロピレングリコール12.0gと、グリセリン12.0gと、トリエタノールアミン0.2gと、TegoWET(エボニック社製、シリコーン系界面活性剤)0.1gと、ACTICIDE B20(ソー・ジャパン株式会社製、防腐剤)0.1gと、エチレン尿素5.6gとを混合し、エチレン尿素が溶解した後にプロピレングリコール9.1gとSURFYNOL 420(エボニック社製、アセチレン系界面活性剤)1.0gを混合した(混合物A)。次にアウローレン(登録商標)AE-301(日本製紙株式会社製、酸変性ポリプロピレン)3.3gとイオン交換水5.0g、AQUACER515(BYK社製、高密度酸化ポリエチレンワックスエマルション)2.9g、イオン交換水5.0gの順で混合した(混合物B)。混合物Bに実施例2で得た水性顔料分散体12Cを28.7gを混合した後に混合物Aを混合し、イオン交換水13.0gで容器を共洗い後撹拌することによって、水性顔料インクを得た。
【0111】
(実施例11)
イオン交換水2.0gと、プロピレングリコール12.0gと、グリセリン12.0gと、トリエタノールアミン0.2gと、TegoWET(エボニック社製、シリコーン系界面活性剤)0.1gと、ACTICIDE B20(ソー・ジャパン株式会社製、防腐剤)0.1gと、エチレン尿素5.6gとを混合し、エチレン尿素が溶解した後にプロピレングリコール2.6gとSURFYNOL 420(エボニック社製、アセチレン系界面活性剤)1.1gを混合した(混合物A)。次にアウローレン(登録商標)AE-301(日本製紙株式会社製、酸変性ポリプロピレン)3.3gとイオン交換水5.0g、AQUACER515(BYK社製、高密度酸化ポリエチレンワックスエマルション)2.9g、イオン交換水5.0gの順で混合した(混合物B)。混合物Bに実施例3で得た水性顔料分散体13Mを40.3gを混合した後に混合物Aを混合し、イオン交換水7.8gで容器を共洗い後、撹拌することによって、水性顔料インクを得た。
【0112】
(実施例12)
イオン交換水2.0gと、プロピレングリコール12.0gと、グリセリン12.0gと、トリエタノールアミン0.2gと、TegoWET280(エボニック社製、シリコーン系界面活性剤)0.1gと、ACTICIDE B20(ソー・ジャパン株式会社製、防腐剤)0.1gと、エチレン尿素5.6gとを混合し、エチレン尿素が溶解した後にプロピレングリコール11.6gとSURFYNOL 420(エボニック社製、アセチレン系界面活性剤)1.0gを混合した(混合物A)。次にアウローレン(登録商標)AE-301(日本製紙株式会社製、酸変性ポリプロピレン)3.3gとイオン交換水5.0g、AQUACER515(BYK社製、高密度酸化ポリエチレンワックスエマルション)2.9g、イオン交換水5.0gの順で混合した(混合物B)。混合物Bに実施例4で得た水性顔料分散体14Yを22gを混合した後に混合物Aを混合し、イオン交換水17.2gで容器を共洗い後、撹拌することによって、水性顔料インクを得た。
【0113】
(実施例13)
イオン交換水2.0gと、プロピレングリコール12.0gと、グリセリン12.0gと、トリエタノールアミン0.2gと、TegoWET(エボニック社製、シリコーン系界面活性剤)0.1gと、ACTICIDE B20(ソー・ジャパン株式会社製、防腐剤)0.1gと、エチレン尿素5.6gとを混合し、エチレン尿素が溶解した後にプロピレングリコール1.2gとSURFYNOL 420(エボニック社製、アセチレン系界面活性剤)1.0gを混合した(混合物A)。次にアウローレン(登録商標)AE-301(日本製紙株式会社製、酸変性ポリプロピレン)3.3gとイオン交換水5.0g、AQUACER515(BYK社製、高密度酸化ポリエチレンワックスエマルション)2.9g、イオン交換水5.0gの順で混合した(混合物B)。混合物Bに実施例5で得た水性顔料分散体15Kを41.1gを混合した後に混合物Aを混合し、イオン交換水8.5gで容器を共洗い後、撹拌することによって、水性顔料インクを得た。
【0114】
(実施例14)
イオン交換水2.0gと、プロピレングリコール12.0gと、グリセリン12.0gと、トリエタノールアミン0.2gと、TegoWET280(エボニック社製、シリコーン系界面活性剤)0.1gと、ACTICIDE B20(ソー・ジャパン株式会社製、防腐剤)0.1gと、エチレン尿素5.6gとを混合し、エチレン尿素が溶解した後にプロピレングリコール9.1gとSURFYNOL 420(エボニック社製、アセチレン系界面活性剤)1.0gを混合した(混合物A)。次にアウローレン(登録商標)AE-301(日本製紙株式会社製、酸変性ポリプロピレン)3.3gとイオン交換水5.0g、AQUACER515(BYK社製、高密度酸化ポリエチレンワックスエマルション)2.9g、イオン交換水5.0gの順で混合した(混合物B)。混合物Bに実施例6で得た水性顔料分散体16Cを29.1gを混合した後に混合物Aを混合し、イオン交換水12.6gで容器を共洗い後撹拌することによって、水性顔料インクを得た。
【0115】
(実施例15)
イオン交換水2.0gと、プロピレングリコール12.0gと、グリセリン12.0gと、トリエタノールアミン0.2gと、TegoWET280(エボニック社製、シリコーン系界面活性剤)0.1gと、ACTICIDE B20(ソー・ジャパン株式会社製、防腐剤)0.1gと、エチレン尿素5.6gとを混合し、エチレン尿素が溶解した後にプロピレングリコール2.6gとSURFYNOL 420(エボニック社製、アセチレン系界面活性剤)1.1gを混合した(混合物A)。次にアウローレン(登録商標)AE-301(日本製紙株式会社製、酸変性ポリプロピレン)3.3gとイオン交換水5.0g、AQUACER515(BYK社製、高密度酸化ポリエチレンワックスエマルション)2.9g、イオン交換水5.0gの順で混合した(混合物B)。混合物Bに実施例7で得た水性顔料分散体17Mを40.9gを混合した後に混合物Aを混合し、イオン交換水7.2gで容器を共洗い後、撹拌することによって、水性顔料インクを得た。
【0116】
(実施例16)
イオン交換水2.0gと、プロピレングリコール12.0gと、グリセリン12.0gと、トリエタノールアミン0.2gと、TegoWET280(エボニック社製、シリコーン系界面活性剤)0.1gと、ACTICIDE B20(ソー・ジャパン株式会社製、防腐剤)0.1gと、エチレン尿素5.6gとを混合し、エチレン尿素が溶解した後にプロピレングリコール11.6gとSURFYNOL 420(エボニック社製、アセチレン系界面活性剤)1.0gを混合した(混合物A)。次にアウローレン(登録商標)AE-301(日本製紙株式会社製、酸変性ポリプロピレン)3.3gとイオン交換水5.0g、AQUACER515(BYK社製、高密度酸化ポリエチレンワックスエマルション)2.9g、イオン交換水5.0gの順で混合した(混合物B)。混合物Bに実施例8で得た水性顔料分散体18Yを22.3gを混合した後に混合物Aを混合し、イオン交換水16.9gで容器を共洗い後、撹拌することによって、水性顔料インクを得た。
【0117】
(比較例9)
イオン交換水2.0gと、プロピレングリコール12.0gと、グリセリン12.0gと、トリエタノールアミン0.2gと、TegoWET280(エボニック社製、シリコーン系界面活性剤)0.1gと、ACTICIDE B20(ソー・ジャパン株式会社製、防腐剤)0.1gと、エチレン尿素5.6gとを混合し、エチレン尿素が溶解した後にプロピレングリコール1.2gとSURFYNOL 420(エボニック社製、アセチレン系界面活性剤)1.0gを混合した(混合物A)。次にアウローレン(登録商標)AE-301(日本製紙株式会社製、酸変性ポリプロピレン)3.3gとイオン交換水5.0g、AQUACER515(BYK社製、高密度酸化ポリエチレンワックスエマルション)2.9g、イオン交換水5.0gの順で混合した(混合物B)。混合物Bに比較例1で得た水性顔料分散体1Kを28.0gを混合した後に混合物Aを混合し、イオン交換水21.6gで容器を共洗い後、撹拌することによって、水性顔料インクを得た。
【0118】
(比較例10)
イオン交換水2.0gと、プロピレングリコール12.0gと、グリセリン12.0gと、トリエタノールアミン0.2gと、TegoWET280(エボニック社製、シリコーン系界面活性剤)0.1gと、ACTICIDE B20(ソー・ジャパン株式会社製、防腐剤)0.1gと、エチレン尿素5.6gとを混合し、エチレン尿素が溶解した後にプロピレングリコール9.1gとSURFYNOL 420(エボニック社製、アセチレン系界面活性剤)1.0gを混合した(混合物A)。次にアウローレン(登録商標)AE-301(日本製紙株式会社製、酸変性ポリプロピレン)3.3gとイオン交換水5.0g、AQUACER515(BYK社製、高密度酸化ポリエチレンワックスエマルション)2.9g、イオン交換水5.0gの順で混合した(混合物B)。混合物Bに比較例2で得た水性顔料分散体2Cを21.5gを混合した後に混合物Aを混合し、イオン交換水20.2gで容器を共洗い後、撹拌することによって、水性顔料インクを得た。
【0119】
(比較例11)
イオン交換水2.0gと、プロピレングリコール12.0gと、グリセリン12.0gと、トリエタノールアミン0.2gと、TegoWET280(エボニック社製、シリコーン系界面活性剤)0.1gと、ACTICIDE B20(ソー・ジャパン株式会社製、防腐剤)0.1gと、エチレン尿素5.6gとを混合し、エチレン尿素が溶解した後にプロピレングリコール2.6gとSURFYNOL 420(エボニック社製、アセチレン系界面活性剤)1.1gを混合した(混合物A)。次にアウローレン(登録商標)AE-301(日本製紙株式会社製、酸変性ポリプロピレン)3.3gとイオン交換水5.0g、AQUACER515(BYK社製、高密度酸化ポリエチレンワックスエマルション)2.9g、イオン交換水5.0gの順で混合した(混合物B)。混合物Bに比較例3で得た水性顔料分散体3Mを30.0gを混合した後に混合物Aを混合し、イオン交換水18.1gで容器を共洗い後、撹拌することによって、水性顔料インクを得た。
【0120】
(比較例12)
イオン交換水2.0gと、プロピレングリコール12.0gと、グリセリン12.0gと、トリエタノールアミン0.2gと、TegoWET280(エボニック社製、シリコーン系界面活性剤)0.1gと、ACTICIDE B20(ソー・ジャパン株式会社製、防腐剤)0.1gと、エチレン尿素5.6gとを混合し、エチレン尿素が溶解した後にプロピレングリコール11.6gとSURFYNOL 420(エボニック社製、アセチレン系界面活性剤)1.0gを混合した(混合物A)。次にアウローレン(登録商標)AE-301(日本製紙株式会社製、酸変性ポリプロピレン)3.3gとイオン交換水5.0g、AQUACER515(BYK社製、高密度酸化ポリエチレンワックスエマルション)2.9g、イオン交換水5.0gの順で混合した(混合物B)。混合物Bに比較例4で得た水性顔料分散体4Yを16.5gを混合した後に混合物Aを混合し、イオン交換水22.7gで容器を共洗い後、撹拌することによって、水性顔料インクを得た。
【0121】
(比較例13)
イオン交換水2.0gと、プロピレングリコール12.0gと、グリセリン12.0gと、トリエタノールアミン0.2gと、TegoWET280(エボニック社製、シリコーン系界面活性剤)0.1gと、ACTICIDE B20(ソー・ジャパン株式会社製、防腐剤)0.1gと、エチレン尿素5.6gとを混合し、エチレン尿素が溶解した後にプロピレングリコール1.2gとSURFYNOL 420(エボニック社製、アセチレン系界面活性剤)1.0gを混合した(混合物A)。次にアウローレン(登録商標)AE-301(日本製紙株式会社製、酸変性ポリプロピレン)3.3gとイオン交換水5.0g、AQUACER515(BYK社製、高密度酸化ポリエチレンワックスエマルション)2.9g、イオン交換水5.0gの順で混合した(混合物B)。混合物Bに比較例5で得た水性顔料分散体5Kを28.0gを混合した後に混合物Aを混合し、イオン交換水21.6gで容器を共洗い後、撹拌することによって、水性顔料インクを得た。
【0122】
(比較例14)
イオン交換水2.0gと、プロピレングリコール12.0gと、グリセリン12.0gと、トリエタノールアミン0.2gと、TegoWET280(エボニック社製、シリコーン系界面活性剤)0.1gと、ACTICIDE B20(ソー・ジャパン株式会社製、防腐剤)0.1gと、エチレン尿素5.6gとを混合し、エチレン尿素が溶解した後にプロピレングリコール9.1gとSURFYNOL 420(エボニック社製、アセチレン系界面活性剤)1.0gを混合した(混合物A)。次にアウローレン(登録商標)AE-301(日本製紙株式会社製、酸変性ポリプロピレン)3.3gとイオン交換水5.0g、AQUACER515(BYK社製、高密度酸化ポリエチレンワックスエマルション)2.9g、イオン交換水5.0gの順で混合した(混合物B)。混合物Bに比較例6で得た水性顔料分散体6Cを21.5gを混合した後に混合物Aを混合し、イオン交換水20.2gで容器を共洗い後、撹拌することによって、水性顔料インクを得た。
【0123】
(比較例15)
イオン交換水2.0gと、プロピレングリコール12.0gと、グリセリン12.0gと、トリエタノールアミン0.2gと、TegoWET280(エボニック社製、シリコーン系界面活性剤)0.1gと、ACTICIDE B20(ソー・ジャパン株式会社製、防腐剤)0.1gと、エチレン尿素5.6gとを混合し、エチレン尿素が溶解した後にプロピレングリコール2.6gとSURFYNOL 420(エボニック社製、アセチレン系界面活性剤)1.1gを混合した(混合物A)。次にアウローレン(登録商標)AE-301(日本製紙株式会社製、酸変性ポリプロピレン)3.3gとイオン交換水5.0g、AQUACER515(BYK社製、高密度酸化ポリエチレンワックスエマルション)2.9g、イオン交換水5.0gの順で混合した(混合物B)。混合物Bに比較例7で得た水性顔料分散体7Mを30.0gを混合した後に混合物Aを混合し、イオン交換水18.1gで容器を共洗い後、撹拌することによって、水性顔料インクを得た。
【0124】
(比較例16)
イオン交換水2.0gと、プロピレングリコール12.0gと、グリセリン12.0gと、トリエタノールアミン0.2gと、TegoWET280(エボニック社製、シリコーン系界面活性剤)0.1gと、ACTICIDE B20(ソー・ジャパン株式会社製、防腐剤)0.1gと、エチレン尿素5.6gとを混合し、エチレン尿素が溶解した後にプロピレングリコール11.6gとSURFYNOL 420(エボニック社製、アセチレン系界面活性剤)1.0gを混合した(混合物A)。次にアウローレン(登録商標)AE-301(日本製紙株式会社製、酸変性ポリプロピレン)3.3gとイオン交換水5.0g、AQUACER515(BYK社製、高密度酸化ポリエチレンワックスエマルション)2.9g、イオン交換水5.0gの順で混合した(混合物B)。混合物Bに比較例8で得た水性顔料分散体8Yを16.5gを混合した後に混合物Aを混合し、イオン交換水22.7gで容器を共洗い後、撹拌することによって、水性顔料インクを得た。
【0125】
(実施例17)
前記架橋剤(商品名:デナコールEX‐512、エポキシ当量168、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)6.12gの代わりに、架橋剤(商品名:デナコールEX‐521、エポキシ当量183、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)を6.67g使用したこと以外は、実施例3と同様の方法で水性顔料分散体21M(顔料濃度:14.9質量%)を得た。
また、水性顔料分散体13Mの代わりに、水性顔料分散体21Mを40.2g使用したこと以外は、実施例11と同様の方法で不揮発分6質量%の水性顔料インクを得た。
【0126】
(実施例18)
前記架橋剤(商品名:デナコールEX‐512、エポキシ当量168、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)6.12gの代わりに、架橋剤(商品名:デナコールEX‐313、エポキシ当量144、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約90質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)を5.14g使用したこと以外は、実施例3と同様の方法で水性顔料分散体22M(顔料濃度:15.0質量%)を得た。
また、水性顔料分散体13Mの代わりに、水性顔料分散体22Mを40.1g使用したこと以外は、実施例11と同様の方法で不揮発分6.0質量%の水性顔料インクを得た。
【0127】
(実施例19)
前記架橋剤(商品名:デナコールEX‐512、エポキシ当量168、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)6.12gの代わりに、架橋剤(商品名:デナコールEX‐850、エポキシ当量122、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)を4.45g使用したこと以外は、実施例3と同様の方法で水性顔料分散体23M(顔料濃度:15.0質量%)を得た。
また、水性顔料分散体13Mの代わりに、水性顔料分散体23Mを40.1g使用したこと以外は、実施例11と同様の方法で不揮発分6.0質量%の水性顔料インクを得た。
【0128】
(実施例20)
前記架橋剤(商品名:デナコールEX‐512、エポキシ当量168、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)6.12gの代わりに、架橋剤(商品名:デナコールEX‐851、エポキシ当量150、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約99質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)を5.47g使用したこと以外は、実施例3と同様の方法で水性顔料分散体24M(顔料濃度:15.0質量%)を得た。
また、水性顔料分散体13Mの代わりに、水性顔料分散体24Mを40.1g使用したこと以外は、実施例11と同様の方法で不揮発分6.0質量%の水性顔料インクを得た。
【0129】
(実施例21)
前記架橋剤(商品名:デナコールEX‐512、エポキシ当量168、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)6.12gの代わりに、架橋剤(商品名:デナコールEX‐821、エポキシ当量185、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)を6.74g使用したこと以外は、実施例3と同様の方法で水性顔料分散体25M(顔料濃度:14.9質量%)を得た。
また、水性顔料分散体13Mの代わりに、水性顔料分散体25Mを40.2g使用したこと以外は、実施例11と同様の方法で不揮発分6.0質量%の水性顔料インクを得た。
【0130】
(実施例22)
前記架橋剤(商品名:デナコールEX‐512、エポキシ当量168、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)6.12gの代わりに、架橋剤(商品名:デナコールEX‐830、エポキシ当量268、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)を9.77g使用したこと以外は、実施例3と同様の方法で水性顔料分散体26M(顔料濃度:14.8質量%)を得た。
また、水性顔料分散体13Mの代わりに、水性顔料分散体26Mを40.5g使用したこと以外は、実施例11と同様の方法で不揮発分6.0質量%の水性顔料インクを得た。
【0131】
(実施例23)
前記架橋剤(商品名:デナコールEX‐512、エポキシ当量168、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)6.12gの代わりに、架橋剤(商品名:デナコールEX‐832、エポキシ当量284、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)を10.35g使用したこと以外は、実施例3と同様の方法で水性顔料分散体27M(顔料濃度:14.8質量%)を得た。
また、水性顔料分散体13Mの代わりに、水性顔料分散体27Mを40.5g使用したこと以外は、実施例11と同様の方法で不揮発分6.0質量%の水性顔料インクを得た。
【0132】
(実施例24)
前記架橋剤(商品名:デナコールEX‐512、エポキシ当量168、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)6.12gの代わりに、架橋剤(商品名:デナコールEX‐841、エポキシ当量372、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)を13.56g使用したこと以外は、実施例3と同様の方法で水性顔料分散体28M(顔料濃度:14.7質量%)を得た。
また、水性顔料分散体13Mの代わりに、水性顔料分散体28Mを40.8g使用したこと以外は、実施例11と同様の方法で不揮発分6.0質量%の水性顔料インクを得た。
【0133】
(実施例25)
前記架橋剤(商品名:デナコールEX‐512、エポキシ当量168、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)6.12gの代わりに、架橋剤(商品名:デナコールEX‐920、エポキシ当量178、イオン交換水90gへの架橋剤10gの溶解率が約100質量%(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)を6.49g使用したこと以外は、実施例3と同様の方法で水性顔料分散体29M(顔料濃度:14.9質量%)を得た。
また、水性顔料分散体13Mの代わりに、水性顔料分散体29Mを40.2g使用したこと以外は、実施例11と同様の方法で不揮発分6.0質量%の水性顔料インクを得た。
【0134】
<特性評価>
下記に示す方法で、実施例及び比較例で得た水性顔料分散体及び水性顔料インクの特性を評価した。
【0135】
[保存安定性の評価]
実施例及び比較例で得た製造直後の水性顔料分散体(25℃)及び水性顔料インク(32℃)の各温度における粘度V0をそれぞれ下記の方法で測定した。
【0136】
次に、水性顔料分散体及び水性顔料インクをそれぞれプラスチックボトルに充填し、60℃の恒温槽内に保管した。前記保管開始から1週間後に、水性顔料分散体(25℃)及び水性顔料インク(32℃)の各温度における粘度V1をそれぞれ下記の方法で測定した。次に、前記保管開始から2週間後に、水性顔料分散体(25℃)及び水性顔料インク(32℃)の各温度における粘度V1をそれぞれ下記の方法で測定した。
【0137】
前記粘度V0及び粘度V1と、下記式に基づいて、前記保管開始から1週間後及び2週間後の水性顔料分散体及び水性顔料インクの粘度の変化率と粘度変化幅とをそれぞれ算出し、前記変化率に基づいて水性顔料分散体及び水性顔料インクの保存安定性を評価した。
粘度変化率=[(粘度V1-粘度V0)/(粘度V0)]×100
粘度変化幅=粘度V1-粘度V0
【0138】
水性顔料分散体の保存安定性の評価基準
3:1週間保管後及び2週間保管後の水性顔料分散体の粘度変化率が10%未満、かつ粘度変化幅が±0.5mPa・s未満であった。
2:1週間保管後の水性顔料分散体の粘度変化率が10%未満かつ粘度変化幅が±0.5mPa・s未満であったが、2週間保管後の水性顔料分散体の粘度変化率が10%未満または粘度変化幅が±0.5mPa・s未満であった。
1:1週間保管後の水性顔料分散体の粘度変化率が10%以上または粘度変化幅が±0.5mPa・s以上であった。
【0139】
水性顔料インクの保存安定性の評価基準
3:製造直後の水性顔料インクの粘度が10MPa・s未満であり、かつ、1週間保管後の水性顔料インクの粘度変化率が10%未満であり、かつ、2週間保管後の水性顔料インクの粘度変化率が10%未満であった。
2:製造直後の水性顔料インクの粘度が10MPa・s未満であり、かつ、1週間保管後の水性顔料インクの粘度変化率が10%未満、かつ2週間保管後の水性顔料インクの粘度変化率が10%以上であった。
1:製造直後の水性顔料インクの粘度が10MPa・s未満であり、かつ、1週間保管後の水性顔料インクの粘度変化率が10%以上であった。
0:製造直後の水性顔料インクの粘度が10MPa・s以上であった。
【0140】
前記水性顔料分散体及び水性顔料インクの粘度は、E型粘度計である円錐平板形(コーン・プレート形)回転粘度計を使用し、下記条件にて測定した。
測定装置:TVE-25形粘度計(東機産業社製、TVE-25 L)
校正用標準液:JS20
測定温度:32℃
回転速度:10~100rpm
注入量:1200μL
【0141】
[印刷物のモットリングの評価]
実施例及び比較例で得た水性顔料インクをそれぞれ京セラ株式会社製インクジェットヘッドKJ4B-YHに充填し、インク難吸収性の被記録媒体であるOKトップコート+(王子製紙社製、坪量104.7g/m2)に対して、50%ベタ印刷を実施した。次に前記印刷面の上部約8cmの位置から9kWの近赤外線ヒーターで1秒間加熱し乾燥させることによって印刷物を得た。
【0142】
前記印刷物の印刷面を、クオリティ・エンジニアリング・アソシエイツ社製画質評価装置「PIAS-II」を用いて数値解析を行った。具体的には、印刷物の印刷面のMottle値(斑)を各色ごとに測定した。K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)及びY(イエロー)の各色の印刷面のMottle値と表1に記載の評価基準とに基づいてモットリングの抑制性を評価した。具体的には、評価基準で3と評価されたインクは、モットリンクが十分に抑制された印刷物を得ることができるものと評価することができる。一方、評価基準で0と評価されたインクは、インクジェットヘッドから吐出できなかったため印刷物を得ることができなかったと評価した。
【0143】
【表1】
【0144】
[印刷物の粒状感の評価]
実施例及び比較例で得た水性顔料インクをそれぞれ京セラ株式会社製インクジェットヘッドKJ4B-YHに充填し、インク難吸収性の被記録媒体であるOKトップコート+(王子製紙社製、坪量104.7g/m2)に対して、50%ベタ印刷を実施した。次に前記印刷面の上部約8cmの位置から9kWの近赤外線ヒーターで1秒間加熱し乾燥させることによって印刷物を得た。
【0145】
前記印刷物の印刷面を、クオリティ・エンジニアリング・アソシエイツ社製画質評価装置「PIAS-II」を用いて数値解析を行った。具体的には、印刷物の印刷面のGraininess値(粒状度)を測定し、下記の基準に基づき粒状感の抑制性を評価した。
評価基準
5:Graininess値が2未満
4:Graininess値が2以上3未満
3:Graininess値が3以上4未満
2:Graininess値が4以上5未満
1:Graininess値が5以上
0:印刷不可能
【0146】
【表2】
【0147】
【表3】
【0148】
【表4】
【0149】
【表5】
【0150】
【表6】
【0151】
【表7】