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特許7376646乳化剤含有油脂組成物及び乳化剤含有油脂組成物中の乳化剤の分離抑制方法
<図面はありません>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】乳化剤含有油脂組成物及び乳化剤含有油脂組成物中の乳化剤の分離抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20231031BHJP
   A23D 9/013 20060101ALI20231031BHJP
   A23L 7/109 20160101ALN20231031BHJP
【FI】
A23D9/00 506
A23D9/00 508
A23D9/013
A23L7/109 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022101052
(22)【出願日】2022-06-23
(62)【分割の表示】P 2017222578の分割
【原出願日】2017-11-20
(65)【公開番号】P2022118215
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】小澤 朋子
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-161266(JP,A)
【文献】特開2017-035023(JP,A)
【文献】特開2011-050301(JP,A)
【文献】特開2003-092987(JP,A)
【文献】特開2003-000169(JP,A)
【文献】特開昭62-181738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A23L
C11B
C11C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化剤含有油脂組成物であって、
前記乳化剤含有油脂組成物が、炒め油、及び/又は、食材間及び/又は食品間の付着防止用スプレー油であり、
ジグリセリン脂肪酸エステルを0.2~12質量%含有し、
レシチンをアセトン不溶分として0.01~7質量%含有し、
有機酸モノグリセリド、重合度4~12でHLB4~9のポリグリセリン脂肪酸エステル、から選ばれる1種以上を、ジグリセリン脂肪酸エステルの0.2質量倍以上、且つ、レシチン中のアセトン不溶分の8.5質量倍以上、含有する、
乳化剤含有油脂組成物。
【請求項2】
乳化剤含有油脂組成物中の乳化剤量が1~20質量%である、請求項1に記載の乳化剤含有油脂組成物。
【請求項3】
前記レシチンが、脱糖レシチンである、請求項1又は2に記載の乳化剤含有油脂組成物。
【請求項4】
前記レシチンが、植物由来である、請求項1~3のいずれか1項に記載の乳化剤含有油脂組成物。
【請求項5】
前記ジグリセリン脂肪酸エステル及び/又は前記重合度4~12のポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸の50質量%以上が不飽和脂肪酸である、請求項1~4のいずれか1項に記載の乳化剤含有油脂組成物。
【請求項6】
前記有機酸モノグリセリドがクエン酸モノグリセリドである、請求項1~5のいずれか1項に記載の乳化剤含有油脂組成物。
【請求項7】
澱粉系食材の調理用に用いる、請求項1~6のいずれか1項に記載の乳化剤含有油脂組成物。
【請求項8】
油脂80~99質量部に、
ジグリセリン脂肪酸エステルを0.2~12質量部、
レシチンをアセトン不溶分として0.01~7質量部、
有機酸モノグリセリド、重合度4~12でHLB4~9のポリグリセリン脂肪酸エステル、から選ばれる1種以上を、ジグリセリン脂肪酸エステルの0.2質量倍以上、且つ、レシチン中のアセトン不溶分の8.5質量倍以上、添加し、
め油、及び/又は、食材間及び/又は食品間の付着防止用スプレー油であ
乳化剤含有油脂組成物中の乳化剤の分離抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化剤含有油脂組成物及び乳化剤含有油脂組成物中の乳化剤の分離抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炒め調理時において、焦げ付きや油の飛び跳ねを防止する目的や、調理品あるいは調理素材の付着を防止する目的で、乳化剤含有油脂が用いられていた。
また、炒飯、中華蒸し麺、ゆでパスタなどの澱粉が多く、表面に水分が多い食品素材あるいは調理品は、ご飯や麺、パスタなどが付着するなどの問題が発生しやすい。従来よりこれらの問題を改善するために、油脂をコーティングし、ご飯、麺、パスタなどの相互の付着を防止し、ほぐれ性を改善することが行われてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、ジグリセリンモノオレイン酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する炒め物用油脂組成物の例があり、特許文献2には、レシチンとポリグリセリン脂肪酸エステル等を含有する離型性および焦付き防止の調理用油脂の例が提案されている。レシチンとジグリセリン脂肪酸エステルを組合せた乳化剤含有油脂組成物は、ほぐれ性等が優れていたものの、含まれる乳化剤の親油性が低く、保存している間に吸湿して分離(沈殿)を生じ、また、調理使用時に水分が高くなると乳化剤成分が分離しやすくなるとの問題が発生した。一度、分離すると再度の均質化が難しく、さらに炒め調理やご飯、蒸し麺、ゆでパスタへのコーティング時に不均一になった。また、スプレーを用いてコーティングする際に目詰まりを起すなどのトラブルがあった。
【文献】特開2007-105035号公報
【文献】特開平8-89186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、食品素材の付着や炒め時の油ハネが抑えられる効果のあるレシチンとジグリセリン脂肪酸エステルを含む、乳化剤含有油脂組成物が水分によって乳化剤が分離することを抑制できる乳化剤含有油脂組成物を提供することである。また、水分によってレシチンとジグリセリン脂肪酸エステルが分離しにくい、乳化剤含有油脂組成物中の乳化剤の分離抑制方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、レシチン、ジグリセリン脂肪酸エステルとともに、有機酸モノグリセリド及び/又は特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有させることで、上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の[1]~[10]を提供する。
[1] 乳化剤含有油脂組成物であって、ジグリセリン脂肪酸エステルを0.2~12質量%含有し、レシチンをアセトン不溶分として0.01~7質量%含有し、有機酸モノグリセリド、重合度4~12でHLB4~9のポリグリセリン脂肪酸エステル、から選ばれる1種以上を、ジグリセリン脂肪酸エステルの0.2質量倍以上、且つ、アセトン不溶分の8.5質量倍以上、になるように含有する、乳化剤含有油脂組成物。
[2] 乳化剤含有油脂組成物中の乳化剤量が1~20質量%である、[1]の乳化剤含有油脂組成物。
[3]
前記レシチンが、脱糖レシチンである、[1]又は[2]のいずれかの乳化剤含有油脂組成物。
[4] 前記レシチンが、植物由来である、[1]~[3]のいずれかの乳化剤含有油脂組成物。
[5] 前記ジグリセリン脂肪酸エステル及び/又は前記重合度4~12のポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸の50質量%以上が不飽和脂肪酸である、[1]~[4]のいずれかの乳化剤含有油脂組成物。
[6] 前記有機酸モノグリセリドがクエン酸モノグリセリドである、[1]~[5]のいずれかの乳化剤含有油脂組成物。
[7] 炒め用及び/又はスプレー用に用いる、[1]~[6]のいずれかの乳化剤含有油脂組成物。
[8] 澱粉系食材の調理用に用いる、[1]~[7]のいずれかの乳化剤含有油脂組成物。
[9] 油脂80~99質量部に、ジグリセリン脂肪酸エステルを0.2~12質量部、レシチンをアセトン不溶分として0.01~7質量部、有機酸モノグリセリド、重合度4~12でHLB4~9のポリグリセリン脂肪酸エステル、から選ばれる1種以上を、ジグリセリン脂肪酸エステルの0.2質量倍以上、且つ、アセトン不溶分の8.5質量倍以上、になるように添加する、乳化剤含有油脂組成物中の乳化剤の分離抑制方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、レシチンとジグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤含有油脂組成物が、水分によって乳化剤が分離しないので、吸湿しても保存安定性のよい乳化剤含有油脂組成物を提供することができる。そのため、食材あるいは食品間の付着抑制効果が、乳化剤含油油脂組成物の水分との接触、あるいは乳化剤含有油脂組成物中の水分量に関わらず維持される。また、炒め調理においては、付着抑制効果による焦げ抑制効果、油ハネ抑制効果が均一に得られる。さらに、食品素材あるいは調理品にスプレーする際に、乳化剤の分離が生じないために、均一なコーティングができ、また、スプレーの目詰まりも生じない効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に例示説明する。なお、本発明の実施の形態において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。
【0009】
[乳化剤含有油脂組成物]
<油脂>
本発明の乳化剤含有油脂組成物は、主成分として通常の食用油脂を用いることができる。例えば、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、コーン油、米油、ゴマ油、オリーブ油、えごま油、亜麻仁油、落花生油、ぶどう種子油、ヤシ油、パーム核油、パーム油等の植物油脂、乳脂、ラード等の動物油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の合成油を単独で、あるいは混合して用いることができる。また、パームオレイン、パームスーパーオレイン、パームミッドフラクション、パームステアリン等の植物油の分別油や、油脂あるいは油脂と脂肪酸低級アルコールエステルを原料にしたエステル交換油等を用いることができる。なお、エステル交換油は、エステル交換後に分別を行ったものも用いることができる。
【0010】
本発明の乳化剤含有油脂組成物は、油脂を80~99質量%含有することが好ましく、85~98質量%含有がより好ましく、88~95質量含有することがさらに好ましい。
【0011】
<ジグリセリン脂肪酸エステル>
本発明の乳化剤含有油脂組成物は、ジグリセリン脂肪酸エステルを0.2~12質量%含有する。なお、ジグリセリン脂肪酸エステルは、乳化剤含有油脂組成物が液状になりやすいことから、構成脂肪酸の50質量%以上が炭素数16~22の不飽和脂肪酸であることが好ましく、不飽和脂肪酸がオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸であることがより好ましい。酸化安定性の点から、オレイン酸、エルカ酸がより好ましい。より好ましくはジグリセリンオレイン酸エステルである。
ジグリセリン脂肪酸エステルは、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステルが存在する。本発明において、モノエステル、ジエステルの純度が高いものが好ましいが、モノエステル~テトラエステルまでの混合物も用いることができる。ジグリセリン脂肪酸エステルの平均エステル化率が25~75%であることが好ましい。平均エステル化率が25~50質量%がより好ましい。ジグリセリン脂肪酸エステルは、分子蒸留等の蒸留を用いて、純度を高めたものを用いることができ、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルが入手が容易でより好ましい。なお、エステル化率は、多価アルコールの水酸基がどれくらいエステル化されているかで示され、(多価アルコールの脂肪酸エステルのエステル結合数)/(多価アルコールの脂肪酸エステルを構成する多価アルコールの水酸基数)を100分率で表したものである。例えば、ジグリセリンモノオレイン酸エステルのエステル化率は25%である。平均エステル化率の算出は、例えば、エステル価(日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.3.3-2013)とヒドロキシル価(日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.3.6.2-2013)から算出することができる。
平均エステル化率=エステル価/(エステル価+ヒドロキシル価) ×100
【0012】
本発明の乳化剤含有油脂組成物は、ジグリセリン脂肪酸エステルを乳化剤含有油脂組成物中に0.2~12質量%含有する。この範囲であれば、食品素材の付着や油ハネが抑えられ、また、良好なほぐれ性を有し、焦げ付きを抑えることができる。ジグリセリン脂肪酸エステルは、乳化剤含有油脂組成物中に、0.5~10質量%含有することが好ましく、1~10質量%含有することがより好ましく、1~8質量%含有することがさらに好ましい。
【0013】
<レシチン>
本発明の乳化剤含有油脂組成物は、レシチンをアセトン不溶分として、0.01~7質量%含有する。この範囲であれば、食品素材の付着や油ハネが抑えられ、また、良好なほぐれ性を有し、焦げ付きを抑えることができる。乳化剤含有油脂組成物は、レシチンをアセトン不溶分として、0.05~3.5質量%含有することが好ましく、0.1~1.5質量%含有することがより好ましい。
なお、レシチンとして販売されているものには、中性油等を含むものもあり、本発明においてレシチン量は、アセトン不溶分(食品添加物公定法分析試験法で求められるアセトン不溶物換算値)として算出されたものである。アセトン不溶分は、例えば以下のように算出する。レシチン約2gの質量aを精密に量り、これを50mL共栓遠心管に入れ、石油エーテル3mLを加えて溶かし、アセトン15mLを加えてよくかき混ぜた後、氷水中に15分間放置する。これに0~5℃のアセトンを加えて50mLとし、よくかき混ぜ、氷水中に15分間放置した後、遠心分離(約3000回転/分、10分間)し、上層液をフラスコに採る。さらに共栓遠心管の沈殿物に0~5℃のアセトンを加えて50mLとし、氷水中で冷却しながらよくかき混ぜた後、同様に遠心分離する。この上層液を先のフラスコに合わせ、水浴上で蒸留し、残留物を105℃で1時間乾燥し、その質量bを精密に量る。

アセトン不溶物(質量%)=(1-b/a)×100
【0014】
本発明で用いるレシチンは、卵黄レシチンあるいは植物由来のレシチンを用いることができるが、焦げ付き等が少ない点から脱糖処理したものを用いることが好ましい。また、植物由来のレシチンを用いることが好ましく、植物由来のレシチンの原料としては、大豆、菜種、コーン、ヒマワリ、サフラワー、ゴマ、アマニなどの油糧種子を圧搾および/または抽出して得られる原油、該原油に水または水蒸気を吹き込んで沈澱物としで得られる油滓、分離した該油滓を乾燥して得られる粗レシチン、該粗レシチンから溶剤分別等の公知の方法で中性油脂分を除去した混合レシチン、さらには該混合レシチンから特定のリン脂質を濃縮・分画した濃縮あるいは高純度レシチン等が利用できる。かかる原料から脱糖レシチンを得るには、例えば、油滓の場合は、水分を含む油滓を必要に応じて濾過し夾雑物を除き、乾燥して粗レシチンとする。この粗レシチンは、通常トリグリセリドを主成分とする中性油脂や、前記した各種リン脂質、各種糖質成分などを含んでいる。次に上記の粗レシチンを例えばアセトンで処理し、アセトン不溶分として油脂(中性油)等を含まない混合レシチンを得る。該混合レシチンを含水(約30%以上が好ましい)エタノールで分別し、含水エタノール可溶区分(リン脂質成分をほとんど含まない糖質成分)を除去することで脱糖レシチンを得る。なお糖質成分はガラクトース、シュクロース、スタキオース、ラフィノース、マンノース、アラビノースなどの各種糖質が遊離および/またはホスファチドやその他の脂質成分と結合した状態あるいはグリコシドやステロールグリコシドとして存在する成分の混合物である。なお、前記のようにして含水アルコールで分別した際の含水アルコール不溶分、即ち大部分の糖質成分を除いたレシチンから、さらに無水アルコールにより分別して糖質成分を除去することもできる。また原油から本発明の成分を得るには、シリカゲルなどの吸着剤を用いてカラム処理などによって糖質成分を吸着除去することもできるが、無水アルコールを用いた脱糖レシチンがより好ましい。
【0015】
<有機酸モノグリセリド、ポリグリセリンの脂肪酸エステル>
本発明の乳化剤含有油脂組成物は、有機酸モノグリセリド、重合度4~12でHLB4~9のポリグリセリンの脂肪酸エステル、から選ばれる1種以上をジグリセリン脂肪酸エステルの0.2質量倍以上、且つ、アセトン不溶分の8.5質量倍以上になるように含有する。重合度4~12のポリグリセリンの脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリドは、単独でも、複数の成分を組み合わせて用いることもできる。これらのポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリドを用いることで、水分によって、レシチンとジグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤が分離するのを防止することができる。有機酸モノグリセリド、重合度4~12でHLB4~9のポリグリセリンの脂肪酸エステル、から選ばれる1種以上の含有量は、ジグリセリン脂肪酸エステルの1質量倍以上が好ましく、3質量倍以上がより好ましい。また、有機酸モノグリセリド、重合度4~12でHLB4~9のポリグリセリンの脂肪酸エステル、から選ばれる1種以上の含有量は、アセトン不溶分の9質量倍以上が好ましく、10質量倍以上がより好ましく、11質量倍以上がさらに好ましく、13質量倍以上が最も好ましい。
【0016】
本発明で用いる有機酸モノグリセリドは、クエン酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、酢酸モノグリセリドが挙げられる。好ましくは、クエン酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリドである。なお、有機酸モノグリセリドを構成する脂肪酸の50質量%以上が炭素数16~22の不飽和脂肪酸であることで融点が低くなるため、油脂への溶解の点で好ましい。不飽和脂肪酸がオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸であることがより好ましい。酸化安定性の点から、オレイン酸、エルカ酸がより好ましい。
【0017】
本発明で用いるポリグリセリン脂肪酸エステルは、重合度4~12である。ポリグリセリン脂肪酸エステルのより好ましい重合度は8~11であり、さらに好ましい重合度は9~11である。ポリグリセリンは、グリセリンが重合してできたものであり、様々な重合度を有する混合物として得られる。一般的に、重合度4以上のものは、単離することが困難なため、本願でも、ポリグリセリン構造は、様々な重合度の混合物であることを許容する。そのため、本発明において、重合度は、ポリグリセリン構造における、平均重合度である。重合度は、例えば、水酸基価(OHV)と重合度(n)、分子量(MW)の次の関係式から算出することができる。
MW=74n+18
OHV=56110(n+2)/MW
【0018】
本発明で用いるポリグリセリン脂肪酸エステルは、HLB4~9である。ポリグリセリン脂肪酸エステルのより好ましいHLBは5~8であり、さらに好ましいHLBは6~8である。
なお、HLBとは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)の略であって、乳化剤が親水性か親油性かを知る指標となるもので、0~20の値をとる。HLB値が小さい程、親油性が強いことを示す。本発明において、HLB値の算出はアトラス法の算出法を用いる。アトラス法の算出法は、
HLB=20×(1-S/A)
S:ケン化価
A:エステル中の脂肪酸の中和価
からHLB値を算出する方法を言う。
【0019】
なお、ポリグリセリンの脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の50質量%以上が炭素数16~22の不飽和脂肪酸であると、融点が低くなるため、油脂への溶解の点で好ましい。不飽和脂肪酸がオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸であることがより好ましい。酸化安定性の点から、オレイン酸、エルカ酸がより好ましい。
【0020】
<その他成分>
本発明の乳化剤含有油脂組成物は、上記成分以外にも、炒め調理用油脂組成物に一般的に配合される原材料を使用することができる。具体的には、例えば、pH調整剤、調味剤、着色料、香料、酸化防止剤、糖類、糖アルコール類、安定剤、乳化剤等を使用することができる。これらの成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、乳化剤含有油脂組成物中に10質量%以下含有させることができ、好ましくは0~3質量%、より好ましくは0~1質量%含有させることができる。
<用途>
本発明の乳化剤含有油脂組成物は、炒め油として炒め調理に用いることができる。また、生めん等の調理前の食材や調理品にスプレーしてコーティングすることで、食材あるいは食品間の付着を防止することができる。また、炒め調理においては、付着を防止できるため焦げ付きを防止することができる。特に、水分が多い食材・食品の場合、水分と接触しても乳化剤含有油脂組成物が分離せずに均一に保てるために、付着防止効果を均一に発揮できる。また、澱粉系食材は、澱粉が水分で付着しやすいために、本発明の乳化剤含有油脂組成物を用いることが好ましい。
【0021】
[乳化剤含有油脂組成物中の乳化剤の分離抑制方法]
本発明の乳化剤含有油脂組成物中の乳化剤の分離抑制方法は、油脂80~99質量部に、ジグリセリン脂肪酸エステルを0.2~12質量部、レシチンをアセトン不溶分として0.01~7質量部、有機酸モノグリセリド、重合度4~12でHLB4~9のポリグリセリン脂肪酸エステル、から選ばれる1種以上をジグリセリン脂肪酸エステルの0.2質量倍以上、且つ、アセトン不溶分の8.5質量倍以上になるように添加することを特徴とする。
【0022】
油脂は、前述の<油脂>で記載したものを用いることができる。油脂は、80~99質量部がより好ましく、85~98質量部がさらに好ましく、88~95質量部が最も好ましい。
【0023】
ジグリセリン脂肪酸エステルは、前述の<ジグリセリン脂肪酸エステル>で記載したものを用いることができる。ジグリセリン脂肪酸エステルは、0.5~10質量部添加することが好ましく、1~10質量部添加することがより好ましく、1~8質量部添加することがさらに好ましい。
【0024】
レシチンは、前述の<レシチン>で記載したものを用いることができる。レシチンは、アセトン不溶分として、0.05~3.5質量部添加することが好ましく、0.1~1.5質量%部添加することがより好ましい。
【0025】
有機酸モノグリセリド、ポリグリセリンの脂肪酸エステルは、<有機酸モノグリセリド、ポリグリセリンの脂肪酸エステル>で記載したものを用いることができる。有機酸モノグリセリド、重合度4~12でHLB4~9のポリグリセリンの脂肪酸エステル、から選ばれる1種以上の添加量は、ジグリセリン脂肪酸エステルの1質量倍以上が好ましく、3質量倍以上がより好ましい。また、有機酸モノグリセリド、重合度4~12でHLB4~9のポリグリセリンの脂肪酸エステル、から選ばれる1種以上の添加量は、アセトン不溶分の9質量倍以上が好ましく、13質量倍以上がより好ましい。
【実施例
【0026】
次に、実施例、比較例及び参考例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。また。以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
【0027】
[乳化剤含有油脂組成物]
菜種サラダ油(日清オイリオグループ株式会社製)ポエムDO-100V(理研ビタミン株式会社製:蒸留ジグリセリンモノオレイン酸エステル、平均エステル化率:約25%)、、混合レシチン(日清オイリオグループ株式会社製:アセトン不溶分:59%)、脱糖レシチン(日清オイリオグループ株式会社製、アセトン不溶分:39%)、サンソフトQ-175S(太陽化学株式会社、ペンタオレイン酸デカグリセリン、HPB4.5)、サンソフトA-173E(太陽化学株式会社:トリオレイン酸ペンタグリセリン、HLB7)、リョートーポリグリエステルO-50D(三菱ケミカルフーズ株式会社製:デカグリセリンオレイン酸エステル、HLB7)、サンソフトNo.81S(太陽化学株式会社:モノオレイン酸ソルビタン)、サンソフトNo.623M(太陽化学株式会社:クエン酸モノオレイン酸グリセリン)、を表1~4の配合にてブレンドし、乳化剤含有油脂組成物(配合1~18)を得た。
【0028】
[乳化剤の分離性]
乳化剤含有油脂組成物1000gを撹拌しながら、イオン交換水を添加し1000ppmとした。10分間放置し、状態を観察した。さらに、撹拌しながらイオン交換水を500ppm毎添加し、添加後10分間放置して1500ppm、2000ppm、2500ppmの状態を観察した。さらに、2500ppmで1日放置し、状態を観察した。結果を表1~4に示した。なお、表中の記号は下記を意味する。
○:清澄
△:白濁している。
×:乳化剤の沈殿がある。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
表1~4の結果から明らかであるように、配合2、3、5、8、11、13~18の乳化剤含有油脂組成物は、水分が増加しても沈殿が抑えられ、水分2500ppm1日後の状態で沈殿がみられなかった。
【0034】
[焼きそば]
フライパン(24cm ステンレス製)に配合2、3、5、8、11、13~18の乳化剤含有油脂3gを入れ、150℃まで加熱した。150℃で、そば麺135gを入れ、炒めた(加熱しながら混ぜた)。油ハネも少なく、また、焼きそばが適度にほぐれ、炒めることができた。また、配合13~18の乳化剤含有油脂の焼きそばは、他より焦げが少なかった。