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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】シリカゾルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/141 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
C01B33/141
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022195557
(22)【出願日】2022-12-07
(62)【分割の表示】P 2019064654の分割
【原出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2023016973
(43)【公開日】2023-02-02
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 雄介
(72)【発明者】
【氏名】坪田 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昌明
(72)【発明者】
【氏名】篠田 潤
(72)【発明者】
【氏名】芦▲高▼ 圭史
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/022552(WO,A1)
【文献】特開平06-122516(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159167(WO,A1)
【文献】特開2000-186148(JP,A)
【文献】特開2006-083015(JP,A)
【文献】特開昭63-210016(JP,A)
【文献】特開昭62-072516(JP,A)
【文献】Yandong Han et al.,Langmuir,2017年,Vol.33,PP.5879-5890
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 -33/193
C09K 3/14
B24B 37/00
H01L 21/304
C09C 1/28
C09C 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシシランまたはその縮合物と、水と、アルカリ触媒とを含む反応液中で、前記アルコキシシランまたはその縮合物と、前記水とを、前記アルカリ触媒の存在下で反応させてシリカゾルを合成することを含み、
前記合成開始後から、前記合成終了時まで、前記アルカリ触媒を追加することはなく、
前記反応液の電気伝導度が反応開始から最初に極大値となる時点から5分経過時から、前記合成終了時までの間の90%以上の時間において、前記反応液の電気伝導度の値の割合が、前記極大値となる時点から5分経過時の電気伝導度の値に対して90%を超え、
前記反応液の電気伝導度が最初に極大値となる時点から5分経過時から、前記合成終了時までの間に添加する前記アルコキシシランまたはその縮合物の総量に対する、この間に、前記反応液の電気伝導度の値の割合が、前記反応液の電気伝導度が最初に極大値となる時点から5分経過時の電気伝導度の値に対して90%を超える状態において添加される前記アルコキシシランまたはその縮合物の量の割合(%)は、90質量%以上である、
シリカゾルの製造方法。
【請求項2】
前記合成開始時から、前記合成終了時まで、前記アルコキシシランまたはその縮合物が一定の添加速度で添加される、請求項1に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ触媒、前記水および第1の有機溶媒を含む(A)液に、
前記アルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒を含む(B)液と、
前記水を含むpH5.0以上8.0未満の(C1)液と、
を混合して前記反応液を調製すること含む、請求項1または2に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ触媒、前記水および第1の有機溶媒を含む(A)液に、
前記アルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒を含む(B)液と、
前記水を含み、かつ前記アルカリ触媒を含まない、(C2)液と、
を混合して反応液を調製する工程を含む、請求項1または2に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項5】
前記シリカゾルに含まれるシリカ粒子は、体積平均粒子径が10nm以上200nm以下であり、
粒子径が前記体積平均粒子径の40%以下であって、かつ、30nm以下である微粒子の個数の割合が、前記シリカ粒子の全個数に対して10%以下である、
請求項1~4のいずれか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリカゾルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリカゾルの製造方法としては、水ガラスと呼ばれる珪酸ナトリウム溶液を出発原料とする製造方法が知られている(特許文献1)。この製造方法では、珪酸ナトリウム溶液は、陽イオン交換樹脂で1度処理され、ナトリウムイオンを始めとするイオンを取り除くことにより出発原料としての純度を上昇させた後、シリカゾルの製造に用いられる。
【0003】
しかしながら、特許文献1の製造方法では、イオン交換による出発原料の高純度化に限界がある。
【0004】
そこで高純度シリカゾルを得る方法として、正珪酸エチルなどの高純度アルコキシシランの加水分解による方法が開示されている。かような方法として、特許文献2には、アルカリ触媒、水および第1の有機溶媒を含む(A)液に、アルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒を含む(B)液と、水を含む(C)液とを混合して反応液を作製する工程を含む、シリカゾルの製造方法が開示されている。そして、当該製造方法によれば、シリカ粒子の粒子径の揃ったシリカゾルを安定して生産できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61-158810号公報
【文献】国際公開第2017/022552号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、1バッチに生産できるシリカ量をより多くし、生産性をさらに向上させることへの要求が高まってきた。そこで、本発明者らは、従来のゾルゲル法によるシリカゾルの製造方法において、シリカ量を増加させるために原料をより多く添加したとき、微粒子が発生してシリカゾルの均一性が低下し、十分な品質が得られないとの問題が生じる場合があることを見出した。
【0007】
そこで本発明は、シリカゾルの製造方法において、微粒子の発生を抑制しうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、以下の手段によって解決されうる。
【0009】
アルコキシシランまたはその縮合物と、水と、アルカリ触媒とを含む反応液中で、前記アルコキシシランまたはその縮合物と、前記水とを、前記アルカリ触媒の存在下で反応させてシリカゾルを合成することを含み、
前記合成開始後から、前記合成終了時まで、前記アルカリ触媒を追加することはなく、かつ、
前記反応液の電気伝導度が反応開始から最初に極大値となる時点から5分経過時から、前記合成終了時までの間の90%以上の時間において、前記反応液の電気伝導度の値の割合が、前記極大値となる時点から5分経過時の電気伝導度の値に対して90%を超える、シリカゾルの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シリカゾルの製造方法において、微粒子の発生を抑制しうる手段が提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1および比較例1に係る製造方法における、反応液の温度-反応時間グラフである。
図2】実施例1および比較例1に係る製造方法における、電気伝導度-反応時間グラフである。
図3】実施例1および比較例1に係る製造方法により製造されたシリカゾルに含まれるシリカ粒子のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行う。
【0013】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
<シリカゾルの製造方法>
本発明の一形態は、アルコキシシランまたはその縮合物と、水と、アルカリ触媒とを含む反応液中で、前記アルコキシシランまたはその縮合物と、前記水とを、前記アルカリ触媒の存在下で反応させてシリカゾルを合成することを含み、前記合成開始後から、前記合成終了時まで、前記アルカリ触媒を追加することなく、かつ、前記反応液の電気伝導度が反応開始から最初に極大値となる時点(以下、単に「最初の極大値時点」とも称する)から5分経過時(以下、単に「最初の極大値から5分経過時点」とも称する)から、前記合成終了時までの間の90%以上の時間において、前記電気伝導度の値の割合が、前記極大値となる時点から5分経過時の電気伝導度の値に対して90%を超える、シリカゾルの製造方法に関する。
【0015】
本発明者らは、かような構成によって、シリカゾルの製造方法において、微粒子の発生が抑制されうるメカニズムを以下のように推測している。
【0016】
本発明の一形態に係るシリカゾルの製造方法では、例えば、原料のアルコキシシランまたはその縮合物としてテトラメトキシシランを用いた場合、シリカゾルを生成する化学反応(合成反応)は、下記反応式(1)のように表される。
【0017】
【化1】
【0018】
シリカゾルの生成における反応の律速は、出発原料としてのテトラメトキシシラン(Si(OCH)、加水分解のための水(HO)、および触媒としてのアルカリ触媒である。
【0019】
アルカリ触媒は、水中で自ら解離して、または水を解離させて、水酸化物イオンを生じる。例えば、アルカリ触媒としてアンモニア(NH)を用いる場合、アンモニアは、水中で下記式のような平衡状態を示す。
【0020】
【化2】
【0021】
テトラメトキシシランと、水とを、アルカリ触媒であるアンモニアの存在下で反応させるシリカゾルの製造方法では、特許文献2に係る製造方法のように、テトラメトキシシランを含む液を、アンモニアを含む液に加えることで両者を混合することが一般的である。また、特許文献2に係る製造方法をはじめとする従来のシリカゾルの製造では、テトラメトキシシランを含む液の添加量が増加すると、反応液の総質量の増加に伴い、当該総質量に対する相対的なアンモニアの含有量が低下し、反応液中のアンモニアの濃度が低下することとなる。そして、アンモニアの濃度が一定以下となると、微粒子の発生頻度が高まり、シリカゾルの均一性が低下する。この理由は、水酸化物イオンは生成されるシリカ同士を接着させる働きをするため、反応末期にアンモニアの濃度が低下し、水酸化物イオンの濃度も低下すると、シリカ粒子が十分に成長できず、形成される粒子は微粒子となるからであると考えられる。
【0022】
ここで、反応液中のイオン濃度と反応液の電気伝導度とは関連する。よって、反応開始後、反応が安定して進行している状態において、電気伝導度の低下の割合を所定値未満とし、電気伝導度を所定の割合以上で維持することで、水酸化物イオンの濃度の低下も所定値未満となる。これにより、反応末期においても水酸化物イオンによるシリカの接着効果を維持することができ、シリカ粒子が十分に成長できるため、微粒子の発生が抑制されうる。
【0023】
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、本発明は上記メカニズムに何ら限定されるものではない。以下、本発明の一形態に係る表面処理組成物の構成について、詳細に説明する。
【0024】
本発明の一形態に係る製造方法は、アルコキシシランまたはその縮合物と、水と、アルカリ触媒とを含む反応液中で、アルコキシシランまたはその縮合物と、水とを、アルカリ触媒の存在下で反応させてシリカゾルを合成することを含む。
【0025】
上記のようなシリカゾルの合成方法としては、特に制限されず公知の方法を使用することができ、これらの中でも2液反応型と3液反応型とが知られている。2液反応型は、アルコキシシランまたはその縮合物と、有機溶媒とを含む液(添加側)を、アルカリ触媒と、水と、有機溶媒とを含む液(受け手側)に添加する。2液反応型は、受け側のアルカリ触媒と、水と、有機溶媒とを含む液が、反応の律速の1つである水の全てを含む。一方、3液反応型は、アルコキシシランまたはその縮合物と、有機溶媒と、を含む液(添加側)および水を含む液(添加側)を、アルカリ触媒と、水と、有機溶媒とを含む液(受け手側)に添加する。これらの中でも、本発明の一形態に係る製造方法は、3液反応型の合成方法に適用することがより好ましい。3液反応型の合成方法によれば、微粒子の発生抑制効果をより高めることができる。
【0026】
なお、本明細書において、2液反応型と3液反応型のような添加側の液を受け手側の液に添加することを含むシリカゾルの製造方法の場合、「合成開始」とは添加が開始することを表す。また、この場合、「合成開始時」とは、添加を開始した時点を、「合成開始後」とは、添加を開始した直後からの時間を表す。そして、この場合、「合成終了」とは添加が終了することを表し、「合成終了時」とは添加が終了した時点を表す。
【0027】
3液反応型の合成方法としては、特に制限されず公知の方法を使用することができるが、アルカリ触媒、水および第1の有機溶媒を含む(A)液(本明細書中、「(A)液」とも称する)に、アルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒を含む(B)液(本明細書中、「(B)液」とも称する)と、水を含む(C)液(本明細書中、「(C)液」とも称する)とを混合して反応液を調製することを含む合成方法が好ましい。当該反応液中では、アルコキシシランまたはその縮合物が加水分解および重縮合することでシリカゾルが生成される。
【0028】
[アルカリ触媒、水および第1の有機溶媒を含む(A)液]
本発明の一形態に係るシリカゾルの製造方法において、シリカゾルの合成に使用する、アルカリ触媒、水および第1の有機溶媒を含む(A)液は、アルカリ触媒と、水と、第1の有機溶媒とを混合して調製することができる。(A)液は、アルカリ触媒、水および有機溶媒に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を含むことができる。
【0029】
(A)液に含まれるアルカリ触媒としては、従来公知のものを使用することができる。アルカリ触媒は、金属不純物等の混入を極力低減できるという観点から、アンモニア、テトラメチル水酸化アンモニウムその他のアンモニウム塩などの少なくとも1つであることが好ましい。これらの中でも、優れた触媒作用の観点から、アンモニアがより好ましい。アンモニアは揮発性が高いため、前記シリカゾルから容易に除去することができる。なお、アルカリ触媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
(A)液に含まれる水は、金属不純物等の混入を極力低減する観点から、純水または超純水を使用することが好ましい。
【0031】
(A)液に含まれる第1の有機溶媒としては、親水性の有機溶媒が用いられることが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。これらの中でも、第1の有機溶媒としては、アルコール類が好ましい。アルコール類を用いることで、前記シリカゾルを後述する水置換する際に、加熱蒸留によりアルコール類と水とを容易に置換することができるという効果がある。また、有機溶媒の回収や再利用の観点から、アルコキシシランの加水分解により生じるアルコールと同一種類のアルコールを用いることが好ましい。アルコール類の中でもとりわけ、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択される少なくとも一種がより好ましいが、アルコキシシランとしてテトラメトキシシランを用いる場合、第1の有機溶媒は、メタノールであることが好ましい。第1の有機溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
(A)液中のアルカリ触媒、水および第1の有機触媒の組み合わせは、特に制限されないが、所望の種類の粒子、そして所望の特性、粒子径、粒子径分布等を有する粒子が得られるよう、各々の種類を適宜変更でき、これらの含有量も適宜調整できる。
【0033】
本発明の一形態に係る製造方法では、(A)液中のアルカリ触媒の含有量を制御することにより、微粒子の量を制御できる。(A)液中のアルカリ触媒の含有量の下限は、特に制限されないが、加水分解触媒としての作用または粒子成長をより促進する、すなわち微粒子の発生抑制効果をより高めるとの観点から、(A)液の総質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、(A)液中のアルカリ触媒の含有量の上限は、特に制限はされないが、生産性およびコストの観点から、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
【0034】
(A)液中の水の含有量の下限は、反応に用いるアルコキシシランまたはその縮合物の量に合わせて調整され、特に制限されないが、アルコキシシランの加水分解の観点から、(A)液の総質量(100質量%)に対して、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、(A)液中の水の含有量の上限は、特に制限されないが、(B)液に対する相溶性の観点から、(A)液の総質量(100質量%)に対して、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0035】
第1の有機溶媒の含有量の下限は、特に制限されないが、(B)液に対する相溶性の観点から、(A)液の総質量(100質量%)に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。また、第1の有機溶媒の含有量の上限は、特に制限されないが、分散性の観点から、(A)液の総質量(100質量%)に対して、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
[アルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒を含む(B)液]
本発明の一形態に係るシリカゾルの製造方法において、シリカゾルの合成に使用する、アルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒を含む(B)液は、アルコキシシランまたはその縮合物と、第2の有機溶媒とを混合して調製することができる。アルコキシシランまたはその縮合物を有機溶媒に溶解してから(A)液と混合することで、シリカゾルの合成反応をより穏やかに進行させて、ゲル状物の発生をより抑制することができ、また混和性もより向上しうる。(B)液は、アルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を含むことができる。
【0037】
(B)液に含まれるアルコキシシランまたはその縮合物としては、特に制限されず公知のものを使用することができるが、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、およびこれらの縮合物等が挙げられる。これらの中でも、適当な加水分解反応性を有するとの観点から、テトラメトキシシランが好ましい。なお、アルコキシシランまたはその縮合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
(B)液に含まれる第2の有機溶媒としては、親水性の有機溶媒が用いられることが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。これらの中でも、第2の有機溶媒としては、アルコール類が好ましい。アルコール類を用いることで、合成によって得られたシリカゾルを後述する水置換する際に、加熱蒸留によりアルコール類と水とを容易に置換することができる。また、第2の有機溶媒は、有機溶媒の回収や再利用の観点から、アルコキシシランの加水分解により生じるアルコールと同一種類のアルコールを用いることが好ましい。アルコール類の中でもとりわけ、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどがより好ましいが、例えば、アルコキシシランとしてテトラメトキシシランを用いる場合、第2の有機溶媒は、メタノールであることが好ましい。さらに、第2の有機溶媒は、有機溶媒の回収や再利用の観点から、(A)液に含まれる第1の有機溶媒と同じであることが好ましい。なお、第2の有機溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
(B)液中のアルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒の組み合わせは、所望の種類の粒子、そして所望の特性、粒子径、粒子径分布等を有する粒子が得られるよう、各々の種類を適宜変更でき、これらの含有量も適宜調整できる。
【0040】
本発明の一形態に係る製造方法では、(B)液中のアルコキシシランまたはその縮合物の含有量の下限は、特に制限されないが、反応液中のシリカ濃度をより高くし、生産性をより向上させるとの観点から、(B)液の全量(100質量%)に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。また、(B)液中のアルコキシシランまたはその縮合物の上限は、特に制限されないが、シリカゾルの合成反応をより穏やかに進行させてゲル状物の発生をより抑制すると観点、および混和性の観点から、(B)液の総質量(100質量%)に対して、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。
【0041】
また、(B)液中の第2の有機溶媒の含有量の下限は、特に制限されないが、シリカゾルの合成反応をより穏やかに進行させてゲル状物の発生をより抑制すると観点、および混和性の観点から、(B)液の総質量(100質量%)に対して、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、(B)液中の第2の有機溶媒の含有量の上限は、特に制限されないが、生反応液中のシリカ濃度をより高くし、生産性をより向上させるとの観点から、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
[水を含む(C)液]
本発明の一形態に係るシリカゾルの製造方法において、シリカゾルの合成に使用する水を含む(C)液における水は、金属不純物等の混入を極力低減する観点から、純水または超純水であることが好ましい。また、(C)液は、水に加え、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を含むことができる。ただし、(C)液は、アルカリ触媒を実質的に含有しないことが好ましく、全く含有しないこと、すなわち、(C)液の総質量に対して0質量%であることが特に好ましい。(C)液がアルカリ触媒を実質的に含まないことで、反応液中のアルカリ触媒の濃度が不均一になることをより抑制し、微粒子の発生抑制効果をより高めることができる。なお、本明細書において、「アルカリ触媒を実質的に含有しない」とは、液の総質量に対して1ppm以下であることを表すものとする。
【0043】
(C)液のpH値の下限は、特に制限されないが、反応液のゲル化をより抑制するとの観点から、5.0以上であることが好ましく、5.5以上であることがより好ましく、6.0以上であることがさらに好ましく、6.5以上であることが特に好ましい。また、(C)液のpH値の上限は、特に制限されないが、8.0未満であることが好ましい。この範囲であると、反応液中の水酸化物イオンの濃度が不均一になることをより抑制し、微粒子の発生抑制効果をより高めることができる。ここで、pHは、例えば、株式会社堀場製作所製の卓上型pHメーター(型番:F-72)で測定することができる。
【0044】
以上より、好ましい(C)液としては、例えば、水を含み、pH5.0以上8.0未満である(C1)液や、水を含み、かつアルカリ触媒を実質的に含有しない(C2)液等が挙げられる。そして、水を含み、かつアルカリ触媒を実質的に含有しない、pH5.0以上8.0未満である(C3)液であることがより好ましい。
【0045】
よって、本発明の一形態に係るシリカゾルの製造方法の一例としては、アルカリ触媒、水および第1の有機溶媒を含む(A)液に、アルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒を含む(B)液と、水を含むpH5.0以上8.0未満の(C1)液と、を混合して反応液を調製すること含むことが好ましい。
【0046】
また、本発明の一形態に係るシリカゾルの製造方法の他の一例としては、アルカリ触媒、水および第1の有機溶媒を含む(A)液に、アルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒を含む(B)液と、水を含み、かつアルカリ触媒を含まない、(C2)液と、を混合して反応液を調製する工程を含むことが好ましい。
【0047】
[反応液の調製およびシリカゲルの合成]
本発明の一形態に係る製造方法は、アルコキシシランまたはその縮合物と、水と、アルカリ触媒とを混合して反応液を調製することを含むことが好ましい。ここで、2液反応型の合成方法を採用する場合、当該反応液の調製方法としては、特に制限されないが、例えば、アルコキシシランまたはその縮合物と、有機溶媒とを含む液と、アルカリ触媒と、水と、有機溶媒とを含む液とを混合する方法等が挙げられる。また、3液反応型の合成方法を採用する場合、当該反応液の調製方法としては、特に制限されないが、例えば、上記の(A)液に、上記の(B)液と、上記の(C)液とを混合して反応液を調製する方法等が挙げられる。
【0048】
本発明の一形態に係る製造方法では、2液反応型における2液や、3液反応型における3液の混合方法は特に制限されないが、シリカゾルの合成開始時から、合成終了時まで、アルコキシシランまたはその縮合物が一定の添加速度で添加されることが好ましい。
【0049】
なお、本明細書において、「一定の添加速度」とは、添加液の添加速度の変化の幅が、添加側の液の総量を、合成開始時から合成終了時までの時間で割る(添加側の液の総質量(g)÷合成開始時から合成終了時までの時間(分))ことで算出される平均添加速度に対して、±30%以下の範囲を表す。例えば、3液反応型の場合では、(A)液に添加する(B)液または(C)液の総質量(g)を、添加を開始した時点から添加を終了した時点までの時間で割る(添加する(B)液または(C)液の総質量(g)÷添加を開始した時点から添加を終了した時点までの時間(分))ことで算出される(B)液または(C)液の平均添加速度に対して、それぞれ±30%以下の範囲を表す。
【0050】
これらの反応液中でアルコキシシランまたはその縮合物が加水分解および重縮合することでシリカゾルが生成される。シリカゾルは、用途に応じてそのままの状態で用いてもよいし、後述する水置換工程や濃縮工程を行った後に得られた液、または有機溶媒に分散させたオルガノゾルとして用いてもよい。
【0051】
本発明の一形態に係る製造方法では、シリカゾル合成開始後、合成終了時まで、アルカリ触媒を追加することがない。よって、3液反応型の合成方法を採用する場合、アルカリ触媒は(A)液中に存在するもののみであって、後にアルカリ触媒が追加して添加されることはない。
【0052】
本発明の一形態に係るシリカゾルの製造方法では、アルカリ触媒を追添せずとも、微粒子の発生が顕著に抑制されうる。この理由は、詳細は不明であるが、前述のように、反応開始後、反応が安定して進行している状態において、電気伝導度の低下の割合を所定値未満とすることで、アンモニアを追添せずとも反応液中の水酸化物イオンの濃度は略一定となる。これにより、反応末期においても水酸化物イオンによるシリカの接着効果を維持することができ、シリカ粒子が十分に成長できるため、微粒子の発生が抑制されるからであると推測している。
【0053】
3液反応型の合成方法を採用する場合、(A)液に、(B)液と(C)液とを混合する際の、(B)液および(C)液の添加方法は特に制限されない。それぞれほぼ一定量を同時に(A)液に添加してもよいし、(B)液と(C)液とを交互に(A)液に添加してもよい。あるいは、(B)液と(C)液とをアトランダムに添加してもよい。これらの中で、反応液中の合成反応に用いる水の量の変化を抑制する観点から、(B)液および(C)液を同時に添加する方法を用いることが好ましく、(B)液および(C)液をそれぞれ一定の添加速度で同時に添加する方法を用いることがより好ましい。
【0054】
(A)液への(B)液および(C)液の添加方法は、反応液中のアルカリ触媒の濃度が不均一になることをより抑制し、微粒子の発生抑制効果をより高めるとの観点から、(A)液に、(B)液および(C)液を、分割添加または連続添加することが好ましい。ここで、分割添加とは、(A)液に(B)液および(C)液を添加するに際し、(B)液および(C)液の全量を一括して添加するのではなく、2回以上に分けて非連続的にまたは連続的に添加することを意味する。分割添加の具体例としては、滴下が挙げられる。また、連続添加とは、(A)液に(B)液および(C)液を添加するに際し、(B)液および(C)液の全量を一括して添加するのではなく、添加を中断せずに連続的に添加することを意味する。
【0055】
(B)液および(C)液の全量を(A)液に添加する際に要する時間は、(B)液や(C)液の液量によっても異なるため特に制限されないが、10分以上であることが好ましく、15分以上であることがより好ましく、20分以上であることがさらに好ましい。この範囲であると、反応液中のアルカリ触媒の濃度が不均一になることをより抑制し、微粒子の発生抑制効果をより高めることができる。また、(B)液および(C)液の全量を(A)液に添加する際に要する時間の上限は、特に制限されないが、生産性の観点から、300分以下であることが好ましい。
【0056】
このことから、(A)液に、(B)液と(C)液とを混合する際の、(B)液および(C)液の好ましい添加方法は、反応液中のアルカリ触媒の濃度が不均一になることをより抑制し、微粒子の発生抑制効果をより高めるとの観点から、(B)液および(C)液を、それぞれ一定の添加速度で同時に添加し、且つ一定以上の時間で添加を完了させる方法である。
【0057】
(A)液、(B)液および(C)液の温度の下限は、特に制限されないが、それぞれ独立して0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。また、(A)液、(B)液および(C)液の温度の上限は、それぞれ独立して70℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましく、50℃以下がさらに好ましい。つまり、(A)液、(B)液および(C)液の温度は、それぞれ独立して、0℃以上70℃以下であることが好ましい。温度が0℃以上であると、各液((A)液、(B)液、(C)液))の凍結を防ぐことができる。一方で温度が70℃以下であると、有機溶媒の揮発を防ぐことができる。
【0058】
また、(A)液と、(B)液と、(C)液との温度の差が、20℃以内であることが好ましく、10℃以内であることがより好ましく、0℃であることがさらに好ましい(下限0℃)。ここで、温度の差は、これら3液の中で、最も高い温度と、最も低い温度との差を意味する。
【0059】
本明細書中、「反応液」とは、(A)液に(B)液と(C)液とを混合した液であり、アルコキシシランまたはその縮合物の加水分解および重縮合がこれから進行する状態(進行する前)の液を意味する。
【0060】
本発明の一形態に係るシリカゾルの製造方法では、反応液の電気伝導度が反応開始から最初に極大値となる時点(最初の極大値時点)から5分経過時(最初の極大値から5分経過時点)から、シリカゾルの合成終了時までの間の少なくとも90%以上の時間、反応液の電気伝導度の値の割合が、前記極大値となる時点から5分経過時の電気伝導度の値に対して90%を超える。
【0061】
上記期間における反応液の電気伝導度の値の割合が、最初の極大値から5分経過時点の電気伝導度の値に対して90%以下となる場合、微粒子の発生頻度が顕著に増加する。また、微粒子の発生抑制効果をより高めるとの観点から、上記の期間における反応液の電気伝導度の値の割合が、最初の極大値から5分経過時点の電気伝導度の値に対して95%を超えることが好ましく、100%以上となることがより好ましい。また、シリカ粒子が急激に成長することを抑制するとの観点から、上記の期間における反応液の電気伝導度の値の割合が、最初の極大値から5分経過時点の電気伝導度の値に対して200%以下となることが好ましい。
【0062】
シリカゾル合成中の反応液の電気伝導度の低下割合を所定値未満とすることで、微粒子の発生が顕著に抑制される理由は、詳細は不明であるが、以下のように推測している。前述のように、反応液の電気伝導度は、反応液中のイオン濃度と関連し、電気伝導度の低下割合を所定値未満とし、電気伝導度を所定の割合以上で維持することで、水酸化物イオンの濃度の低下割合も所定値未満となる。これにより、反応末期においても、水酸化物イオンによるシリカの接着効果を維持することができ、シリカ粒子が十分に成長できるため、微粒子の発生が抑制されうるからである。
【0063】
また、上記期間における反応液の電気伝導度の値の割合が、最初の極大値から5分経過時点の電気伝導度の値に対して90%以下となる場合、微粒子の発生頻度を少しでも低下させようとすると、テトラメトキシシランを含む液の添加量を少なくすることが必要となる場合があり、この際、一バッチで合成されるシリカ粒子の量も少なくなる。しかしながら、本発明の一形態に係るシリカゾルの製造方法によれば、微粒子の発生が顕著に抑制されることから、テトラメトキシシランを含む液の添加量を増加させ、一バッチで合成されるシリカ粒子の量を増加させることができ、生産性をより向上させることができるとの効果も得ることができる。
【0064】
ここで、反応液の電気伝導度(μS/cm)は、例えば、株式会社ユーテック製のラコムテスタpH&導電率計PCWP300等を用いて測定することができる。なお、測定方法の詳細は実施例に記載する。
【0065】
また、反応液の電気伝導度の値の割合が最初の極大値から5分経過時点の電気伝導度の値に対して90%を超える時間が、最初の極大値から5分経過時点から、シリカゾルの合成終了時までの間の時間に対して90%未満であると、微粒子の発生頻度が顕著に増加する。微粒子の発生抑制効果をより高めるとの観点から、当該時間は、90%以上であり、95%以上であることが好ましく、100%であることがより好ましい(上限100%)。
【0066】
シリカゾルの合成開始時から、合成終了時までに添加するアルコキシシランまたはその縮合物の総量に対する、当該合成開始時から、最初の極大値時点までに添加されるアルコキシシランまたはその縮合物の添加量の割合(%)は、20質量%未満であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい(下限0質量%超)。この範囲であると、微粒の発生抑制効果がより高まる。ここで、シリカゾルの合成開始時から合成終了時まで、アルコキシシランまたはその縮合物が一定の添加速度で添加される場合、以下のことが言える。例えば、3液反応型の合成方法を採用し(A)液に(B)液を一定の添加速度で添加する場合、上記の割合は、シリカゾルの合成開始時(添加の開始時)から、合成終了時(添加の終了時)までの時間に対する、シリカゾルの合成開始時から、最初の極大値時点までの時間の割合と同等となる。
【0067】
また、最初の極大値から5分経過時点から、合成終了時までの間に添加するアルコキシシランまたはその縮合物の総量に対する、この間に、反応液の電気伝導度の値の割合が、最初の極大値から5分経過時点の電気伝導度の値に対して90%を超える状態において添加されるアルコキシシランまたはその縮合物の量の割合(%)は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。(上限100質量%)。この範囲であると、微粒子の発生抑制効果がより高まる。ここで、シリカゾルの合成開始時から、合成終了時まで(または、少なくとも、最初の極大値から5分経過時点から、シリカゾルの合成終了時まで)、アルコキシシランまたはその縮合物が一定の添加速度で添加される場合、以下のことが言える。例えば、3液反応型の合成方法を採用し(A)液に(B)液を一定の添加速度で添加する場合、上記の割合は、最初の極大値から5分経過時点から、シリカゾルの合成終了時までの時間に対する、この時間内に、反応液の電気伝導度の値の割合が、最初の極大値から5分経過時点の値に対して90%を超える状態を示す時間の割合(%)と同等となる。
【0068】
反応液の温度は、上記の電気伝導度の関係を満たす限り特に制限されない。反応液の温度の上限および下限の好ましい値は、それぞれ上記の(A)液、(B)液および(C)液の温度の上限および下限の好ましい値と同じである。
【0069】
本発明の一形態に係るシリカゾルの製造方法においては、シリカゾルの合成開始時から合成終了時までの間の少なくとも一部の時間で、反応液の温度を段階的にまたは連続的に低下させることを含むことが好ましく、反応液の温度を連続的に低下させることを含むことがより好ましい。なお、本明細書において、「反応液の温度を連続的に低下させる」とは、5分おきに温度を測定した際に、ひとつ前の測定時間における温度よりも少なくとも0.2℃以上低い温度が確認されることを表す。
【0070】
また、当該製造方法においては、最初の極大値から5分経過時点から、合成終了時までの間において、反応液の温度を連続的に低下させる時間は、当該時間の50%以上の時間であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。そして、最初の極大値から5分経過時点から、合成終了時までの間における全ての時間で、反応液の温度を連続的に低下させることを含むことがさらに好ましい。反応液の温度を低下させることにより、微粒子の発生抑制効果をより高めることができる。
【0071】
反応液の温度を低下させると、反応液の電気伝導度が上昇することから、反応液の温度は、最初の極大値から5分経過時点から、シリカゾルの合成終了時まで、反応液の電気伝導度が、最初の極大値から5分経過時点の電気伝導度の値に対して90%を超えるように調整することが好ましい。
【0072】
反応液の温度を低下させることで、微粒子の発生が顕著に抑制される理由は、詳細は不明であるが、以下のように推測している。反応液の温度を低下させると上記の反応式(2)の平衡が右に傾き、水酸化物イオンの濃度が高くなり、反応液の電気伝導度が上昇する。そして、水酸化物イオン濃度の上昇により、反応末期においても水酸化物イオンによるシリカの接着効果を維持することができ、シリカ粒子が十分に成長できるため、微粒子の発生抑制効果がより高まる。
【0073】
反応液の温度は、例えば、株式会社ユーテック製のラコムテスタpH&導電率計PCWP300等を用いて測定することができる。
【0074】
本発明の一形態に係るシリカゾルの製造方法において、加水分解および重縮合反応は、減圧下、常圧下、加圧下のいずれの圧力条件下で行なうことも可能である。ただし、生産コストの観点から、常圧下で実施することが好ましい。
【0075】
反応液中のアルコキシシランまたはその縮合物、水、アルカリ触媒ならびに第1および第2の有機溶媒のモル比は、特に制限されず、(A)液に含まれるアルカリ触媒や(B)液に含まれるアルコキシシランまたはその縮合物の含有量により、適宜調整することができる。
【0076】
上述したように、本明細書中において「反応液」とは、(A)液に(B)液と(C)液とを混合した液であり、アルコキシシランまたはその縮合物の加水分解および重縮合がこれから進行する状態(進行する前)の液を意味する。一方で、「シリカゾル」とは、前記加水分解および重縮合が終了した液を意味する。
【0077】
つまり、水、アルカリ触媒、および有機溶媒(第1および第2の有機溶媒の合計量)のモル比は、反応に用いられる(A)液、(B)液および(C)液のすべて、すなわち(A)液、(B)液および(C)液の全量を混合したときの反応液全量に含まれるアルコキシシランまたはその縮合物、水、アルカリ触媒および有機溶媒(第1および第2の有機溶媒の合計量)のモル比である。平たく言えば、(A)液に、(B)液と(C)液を添加した後の反応液全量((A)液+(B)液+(C)液)中のモル比ということである。
【0078】
反応液に含まれる水のモル比は、アルコキシシランのモル数を1.0とした場合、好ましくは2.0~12.0モルであり、より好ましくは3.0~6.0モルである。当該水のモル比が2.0モル以上であると、未反応物の量を少なくすることができる。また、当該水のモル比が12.0モル以下であると、得られるシリカゾルのシリカ粒子の濃度を高くすることができる。なお、N量体(Nは2以上の整数を表す)のアルコキシシランの縮合物を用いる場合、反応液中の水のモル比は、アルコキシシランを用いる場合と比べて、N倍となる。つまり、2量体のアルコキシシランの縮合物を用いる場合、反応液中の水のモル比は、アルコキシシランを用いる場合と比べて、2倍となる。
【0079】
反応液に含まれるアルカリ触媒のモル比は、アルコキシシランまたはその縮合物のモル数を1.0とした場合、0.1~1.0モルであることが好ましく、0.13~0.33であることがより好ましい。
【0080】
すなわち、一定量のアルカリ触媒中のアルコキシシランまたはその縮合物の量、すなわちアルカリ触媒に対するアルコキシシランまたはその縮合物のモル比(アルコキシシランまたはその縮合物のモル数(mol)/アルカリ触媒のモル数(mol))は、1~10が好ましく、3~8がより好ましい。当該モル比の上限が上記範囲であると、未反応物の量を少なくすることができ、また微粒子の発生抑制効果をより高めることができる。また、当該モル比の下限が上記範囲であると、反応安定性をよくすることができ、また、一バッチで合成されるシリカ量がより多くなり、生産性をより高めることができる。本発明の一形態に係る製造方法は、原料となるアルコキシシランまたはその縮合物の使用量を増加させても微粒子の発生が抑制されるため、本発明の有用性がより高まる適用条件として、アルカリ触媒のモル数に対するアルコキシシランまたはその縮合物のモル数の比を上記範囲へと調整することが特に好ましい。
【0081】
反応液に含まれる第1および第2の有機溶媒の合計量のモル比は、アルコキシシランまたはその縮合物のモル数を1.0とした場合、好ましくは2.0~20.0モルであり、より好ましくは4.0~17.0モルである。当該有機溶媒のモル比が2.0モル以上であると、未反応物の量を少なくすることができる。また、当該有機溶媒のモル比が20.0モル以下であると、得られるシリカゾルのシリカ粒子の濃度を高くすることができる。
【0082】
つまり、反応液中のアルコキシシラン、水、アルカリ触媒ならびに第1および第2の有機溶媒のモル比が、(アルコキシシラン):(水):(アルカリ触媒):(有機溶媒)=(1.0):(2.0~12.0):(0.1~1.0):(2.0~20.0)であることが好ましい。また、反応液中のアルコキシシランの縮合物、水、アルカリ触媒ならびに第1および第2の有機溶媒のモル比が、アルコキシシランの縮合物をN量体とする場合(Nは2以上の整数を表す)、(アルコキシシランの縮合物):(水):(アルカリ触媒):(有機溶媒)=(1.0):(2.0×N~12.0×N):(0.1~1.0):(2.0~20.0)であることが好ましい。
【0083】
[後処理]
本発明の一形態に係るシリカゾルの製造方法では、上記の反応液を調製することに加えて、以下に説明する後処理を施してもよい。
【0084】
具体的には、反応液の調製および合成反応の後、シリカゾル中に存在する有機溶媒を水で置換することおよびシリカゾルを濃縮することの少なくとも一方をさらに有していてもよい。より詳しくは、シリカゾルを濃縮することのみを行ってもよいし、シリカゾル中の有機溶媒を水で置換することのみを行ってもよい。また、濃縮後、濃縮した液中の有機溶媒を水で置換することを行ってもよいし、水置換の後に、水で置換した液を濃縮することを行ってもよい。濃縮は複数回行ってもよく、その際、濃縮と濃縮の間で水置換を行ってもよく、例えば、濃縮後、濃縮した液中の有機溶媒を水で置換することを行い、さらにその水で置換した液を濃縮することを行ってもよい。
【0085】
(水置換)
本発明の一形態に係るシリカゾルの製造方法は、反応液の調製および合成反応の後、シリカゾルに含まれる有機溶媒を水で置換することをさらに有してもよい。水置換は、濃縮を経たシリカゾル(濃縮されたシリカゾル)に対して行うことが好ましい。
【0086】
シリカゾル中の有機溶媒を水で置換することによって、アンモニアをアルカリ触媒として選択した場合、シリカゾルのpHを中性域に調整することができるとともに、シリカゾル中に含まれていた未反応物を除去することにより、長期間安定な水置換したシリカゾルを得ることができる。
【0087】
シリカゾル中の有機溶媒を水で置換する方法は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、シリカゾルの液量を一定量以上に保ちながら、水を添加して加熱蒸留によって置換する方法が挙げられる。この際、置換操作は、液温および塔頂温が置換する水の沸点に達するまで行なうことが好ましい。
【0088】
水置換で用いる水は、金属不純物等の混入を極力低減する観点から、純水または超純水を用いることが好ましい。
【0089】
また、シリカゾル中の有機溶媒を水で置換する方法としては、シリカゾルを遠心分離によりシリカ粒子を分離後、水に再分散させる方法も挙げられる。
【0090】
(濃縮工程)
本発明の一形態に係るシリカゾルの製造方法は、反応液の調製および合成反応の後、シリカゾルをさらに濃縮することをさらに有してもよい。なお、本形態のシリカゾルには、水置換を経たシリカゾル(水置換されたシリカゾル)である形態も含まれる。
【0091】
シリカゾルを濃縮する方法は、特に制限されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、加熱濃縮法、膜濃縮法などが挙げられる。
【0092】
加熱濃縮法では、シリカゾルを常圧下または減圧下で加熱濃縮することで、濃縮されたシリカゾルを得ることができる。
【0093】
膜濃縮法では、例えば、シリカ粒子を濾過することができる限外濾過法による膜分離により、シリカゾルを濃縮することができる。限外濾過膜の分画分子量は、特に制限されないが、生成する粒径に合わせて分画分子量を選別することができる。限外濾過膜を構成する材質は、特に制限されないが、例えばポリスルホン、ポリアクリルニトリル、焼結金属、セラミック、カーボンなどが挙げられる。限外濾過膜の形態は、特に制限されないが、スパイラル型、チューブラー型、中空糸型などが挙げられる。限外濾過法では、操作圧力は、特に制限されないが、使用する限外濾過膜の使用圧力以下に設定することができる。
【0094】
<シリカゾル>
上記の製造方法により製造されたシリカゾル中のシリカ粒子の体積平均粒子径は、特に制限されないが、3~500nmであることが好ましく、5~300nmであることがより好ましく、10~200nmであることがさらに好ましく、30nm超200nm以下であることが特に好ましい。
【0095】
なお、本明細書において、「微粒子」とは、粒子径がSEM画像解析にて求められる体積平均粒子径の40%以下であって、かつ、30nm以下である粒子を表す。
【0096】
微粒子の個数の割合は、特に制限されないが、シリカ粒子の全個数に対して10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、0%、すなわち確認されないことがさらに好ましい(下限0%)。
【0097】
上記の製造方法により製造されたシリカゾルに含まれるシリカ粒子の好ましい一例としては、体積平均粒子径が10~200nm(より好ましくは、30nm超200nm以下)であり、粒子径が前記体積平均粒子径の40%以下であって、かつ、30nm以下である微粒子の個数の割合が、シリカ粒子の全個数に対して10%以下であるもの等が挙げられる。
【0098】
ここで、シリカゾル中のシリカ粒子の体積平均粒子径、およびシリカ粒子の全個数に対する微粒子の個数の割合は、例えば、以下の方法により算出することができる。まず、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡(SEM)SU8000を用いて撮影したSEM画像を、画像解析式粒子径分布ソフトウェアMac-View Ver.4(株式会社マウンテック製)を用いて、シリカ粒子数400個をカウントし、Heywood径(円相当径)に基づき各々の粒子径およびこれらの体積平均粒子径を算出する。続いて、シリカ粒子数400個のうち、粒子径がSEM画像解析にて求められる体積平均粒子径の40%以下であって、かつ、30nm以下である粒子である、微粒子の個数を確認する。そして、シリカ個数400個に対する微粒子の個数の割合を、シリカ粒子の全個数に対する微粒子の個数の割合(%)として算出する。なお、測定方法の詳細は実施例に記載する。
【0099】
シリカゾル中のシリカ粒子の形状は、特に制限されず、球状であってもよく、非球状であってもよい。
【0100】
上記の製造方法で製造されたシリカゾル中のシリカ粒子の濃度(反応液中のシリカ濃度)は、得られるシリカ粒子の粒子径により異なり特に制限されないが、5質量%以上25質量%以下であることが好ましく、7質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、9質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0101】
本発明の一形態に係る製造方法で製造されたシリカゾルのpHは、特に制限されないが、7.0~13.0であることが好ましく、8.0~12.0であることがより好ましい。
【0102】
本発明の一形態に係る製造方法によれば、シリカゾルに含まれる金属不純物、例えば、Al、Ca、B、Ba、Co、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Na、Ni、Pb、Sr、Ti、Zn、Zr、U、Thなどの金属不純物の合計の含有量は、特に制限されないが、1ppm以下であることが好ましい。
【実施例
【0103】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。また、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)/相対湿度40~50%RHの条件下で行われた。
【0104】
<シリカゾルの調製>
(実施例1)
(シリカゾルの調製)
メタノール976gに、水97gおよび29質量%アンモニア水58gを混合した(A)液に対して、メタノール190g、テトラメトキシシラン(TMOS)506gを溶解した(B)液および純水119gである(C)液(pH=7.85)の添加を開始して反応液を調製し、合成反応を進行させた後、添加を終了して合成反応を完了させて、シリカゾルを得た。
【0105】
ここで、前記反応液の調製において、混合前の各液の温度を35℃に保ち、反応液の温度を、前記(A)液に対する前記(B)液の添加開始時(合成開始時)の初期反応温度35℃から、添加終了時(合成終了時)の終了反応温度24.5℃まで低下するよう温度を調節しながら、前記(A)液に対して、前記(B)液および前記(C)液の全量をそれぞれ一定の添加速度で同時に75分かけて添加した。ここで、75分の添加時間のうち、添加開始時から6.5分経過時までは反応熱により温度が上昇することが確認され、その後、添加開始時から6.5分経過時から合成終了までの68.5分間、温度が連続的に低下することが確認された。
【0106】
また、(C)液のpHは、株式会社堀場製作所製の卓上型pHメーター(型番:F-72)で測定した。
【0107】
(シリカゾルの濃縮)
上記得られたシリカゾルを、常圧下、シリカゾルが沸騰状態となる温度で、シリカ濃度が20質量%になるまで加熱することで加熱濃縮されたシリカゾルを得た。
【0108】
(シリカゾルの水置換)
上記得られた加熱濃縮されたシリカゾルの液量を一定以上に保ちながら、純水を添加して加熱蒸留することで加熱濃縮されたシリカゾル中の有機溶媒を純水で置換して、水置換されたシリカゾルを得た。ここで、加熱蒸留は、常圧下、沸騰状態で液温が上がらなくなるまで加熱を行い、反応液全量に対して純水1780gを添加して蒸留することで行った。
【0109】
(比較例1)
実施例1のシリカゾルの調製において、反応液の温度を、添加開始時(合成開始時)を35℃とし、添加開始時から添加終了時(合成終了時)までの間での温度の低下を抑制し、なるべく一定温度となるよう調節しながら、前記(A)液に対して前記(B)液および前記(C)液を添加したこと以外は、実施例1と同様にして、シリカゾルの調製、シリカゾルの加熱濃縮、およびシリカゾルの水置換を行い、シリカゾルを得た。
【0110】
(反応液の温度および反応液の電気伝導度の測定)
上記シリカゾルの調製において、ラコムテスタpH&導電率計PCWP300(株式会社ユーテック製)を用いて、この装置の電極を反応液中に浸し、添加開始時(合成開始時)からの反応液の温度および反応液の電気伝導度(μS/cm)を0.25分毎に測定し、下記式に基づき電気伝導度の変化の割合を算出した。
【0111】
【数1】
【0112】
なお、実施例1および比較例1において、最初の極大値時点は、共に合成開始から1.5分経過時であり、最初の極大値から5分経過時点は、共に合成開始から6.5分経過時であった。
【0113】
実施例1および比較例1に係るシリカゾルの製造方法について、原料使用量、反応条件を下記表1にまとめる。なお、下記表1において、最初の極大値から5分経過時点から、合成終了時までの間における、上記電気伝導度の変化の割合の最低値を「電気伝導度の維持範囲(%)」として示す。
【0114】
実施例1および比較例1に係る製造方法における、反応液の温度-反応時間グラフを図1に、実施例1および比較例1に係る製造方法における、電気伝導度-反応時間グラフを図2にそれぞれ示す。ここで、図1(a)は、実施例1における反応液の温度-反応時間を表し、図1(b)は、比較例1における反応液の温度-反応時間を表す。また、図2(a)は、実施例1における電気伝導度-反応時間を表し、図2(b)は、比較例1における電気伝導度-反応時間を表す。
【0115】
また、実施例1および比較例1では、(A)液に、(B)液を一定の添加速度で添加している。
【0116】
ここで、最初の極大値から5分経過時点から、シリカゾルの合成終了時までの時間に対する、反応液の電気伝導度の値の割合が、最初の極大値から5分経過時点の電気伝導度の値に対して90%を超える状態を示す時間の割合(%)を、「電気伝導度が低下しない時間の割合」として、下記表1に示す。
【0117】
また、最初の極大値から5分経過時点から、シリカゾルの合成終了時までの時間に対する、反応液の電気伝導度の値の割合が、最初の極大値から5分経過時点の電気伝導度の値に対して90%を超える状態を示す時間の割合(%)は、以下の割合と同等となる。すなわち、最初の極大値から5分経過時点から、シリカゾルの合成終了時までの間に添加するアルコキシシランまたはその縮合物の総量に対する、その間に、反応液の電気伝導度の値の割合が、最初の極大値から5分経過時点の電気伝導度の値に対して90%を超える状態において添加されるアルコキシシランまたはその縮合物の量の割合(%)と同等となる。当該アルコキシシランまたはその縮合物の量の割合を、「電気伝導度が低下しない状態でのTMOSの添加割合」として、下記表1に示す。
【0118】
また、実施例1および比較例1に係る製造方法におけるA液中のアンモニアのmol数に対するB液中のTMOSのモル数の比を、「アンモニアに対するTMOSのモル比」として表2に示す。この算出に際して、アンモニアのモル質量を17g/molとし、TMOSのモル質量を152.25g/molとした。
【0119】
さらに、下記式により算出される、全てのTMOSがシリカの合成に用いられたとした場合における、反応液中のシリカ濃度(質量%)を表2に示す。この算出に際して、アンモニアのモル質量を17g/molとし、TMOSのモル質量を152.25g/molとし、シリカのモル質量を60.1g/molとして計算を行った。
【0120】
【数2】
【0121】
<シリカゾルの評価>
(シリカ粒子の体積平均粒子径の算出)
上記得られたシリカゾルをアルコール中に分散させた後、乾燥させたものを走査型電子顕微鏡(SEM)SU8000(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)に設置し、5.0kVで電子線照射を行った。倍率5万倍にて、シリカ粒子数が合計400個以上となるように数点の視野のSEM画像を撮影した。
【0122】
次いで、画像解析式粒子径分布ソフトウェアMac-View Ver.4(株式会社マウンテック製)を用いて、上記撮影したSEM画像について、シリカ粒子数400個をカウントした。続いて、Heywood径(円相当径)に基づき各々のシリカ粒子の粒子径およびこれらの体積平均粒子径を算出した。
【0123】
(シリカ粒子中の微粒子の個数の割合の算出)
上記シリカ粒子の体積平均粒子径の算出において、シリカ粒子数400個のうち、粒子径がSEM画像解析にて求められる体積平均粒子径の40%以下であって、30nm以下の粒子である微粒子の個数を確認した。そして、シリカ個数400個に対する微粒子の個数の割合を、シリカ粒子の全個数に対する微粒子の個数の割合(%)として算出した。
【0124】
実施例1および比較例1に係る製造方法により製造されたシリカゾルに含まれるシリカ粒子のSEM画像を図3に示す。ここで、図3(a)は、実施例1におけるシリカ粒子のSEM画像を表し、図3(b)は比較例1におけるシリカ粒子のSEM画像を表す。なお、図3(a)、(b)中、1はシリカ微粒子を表し、2は微粒子ではないシリカ粒子(メイン粒子)を表す。
【0125】
実施例1および比較例1に係るシリカゾルの製造方法によって製造されたシリカゾルの評価結果を下記表3に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
【0129】
上記表1および表3の結果より、電気伝導度の維持範囲が96%である実施例1に係る製造方法では、目視で確認される明らかな微粒子が形成されず、均一性の高いシリカゾルを製造できることが確認された。一方、電気伝導度の維持範囲が73%である比較例1に係る製造方法では、目視で確認される明らかな微粒子が形成され、微粒子の形成量も多く、製造されるシリカゾルの均一性に劣ることが確認された。
【0130】
また、表1および表3の結果より、実施例1に係る製造方法と、比較例1に係る製造方法とでは、反応液中のシリカ濃度は同一であるものの、実施例1に係る製造方法では微粒子が形成されなかった。このことから、実施例1に係る製造方法では、使用するアルコキシシランの量を増やしても微粒子が形成されず、均一なシリカゾルを製造でき、1バッチに生産されるシリカ量を向上させることが可能となり、より生産性に優れることが確認された。
【符号の説明】
【0131】
1 シリカ微粒子、
2 微粒子ではないシリカ粒子(メイン粒子)。
図1
図2
図3