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特許7376764六方晶系窒化ホウ素ファイバー及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】六方晶系窒化ホウ素ファイバー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/064 20060101AFI20231101BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20231101BHJP
【FI】
C01B21/064 M
C01B21/064 H
H01L33/60
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019064678
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020164352
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 秀樹
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-053405(JP,A)
【文献】特開2006-206345(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101254904(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103193485(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102936138(CN,A)
【文献】特開2017-095293(JP,A)
【文献】特開2004-244265(JP,A)
【文献】特開2004-255252(JP,A)
【文献】特開2004-182571(JP,A)
【文献】特開2018-052754(JP,A)
【文献】特開2009-167359(JP,A)
【文献】特開2015-023102(JP,A)
【文献】特開平10-072205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/064
H01L 33/60
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質の繊維状窒化ホウ素を準備することと、
前記繊維状窒化ホウ素を、含酸素雰囲気下で500℃以上900℃未満の第一温度で熱処理して第一熱処理物を得ることと、
前記第一熱処理物を、含窒素雰囲気下で1000℃以上1800℃以下の第二温度で熱処理して第二熱処理物を得ることと、を含み、
前記第二熱処理物は、六方晶窒化ホウ素を含む六方晶系窒化ホウ素ファイバーの製造方法。
【請求項2】
前記第一温度が、600℃以上800℃以下である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第二温度が、1400℃以上1700℃以下である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記非晶質の繊維状窒化ホウ素は、繊維状窒化ホウ素を液媒体に接触させることにより得られる請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
X線回折スペクトルにおいて、2θが20°以上30°以下の範囲に検出される回折ピークの半値幅が2.0°以下であり、六方晶窒化ホウ素を含む板状粒子の集合体である六方晶系窒化ホウ素ファイバー。
【請求項6】
前記回折ピークの半値幅が1.0°未満である請求項5に記載の六方晶系窒化ホウ素ファイバー。
【請求項7】
前記回折ピークは、ピーク強度の80%強度におけるピーク幅に対するピーク強度の20%強度におけるピーク幅の比が3.5以下である請求項5又は6に記載の六方晶系窒化ホウ素ファイバー。
【請求項8】
前記六方晶系窒化ホウ素ファイバーは、その平均アスペクト比が1.5以上150以下である請求項5から7のいずれか1項に記載の六方晶系窒化ホウ素ファイバー。
【請求項9】
前記六方晶系窒化ホウ素ファイバーは、その平均繊維長が1μm以上100μm以下である請求項5から8のいずれか1項に記載の六方晶系窒化ホウ素ファイバー。
【請求項10】
前記板状粒子の平均アスペクト比が1.0より大きく200以下である請求項5から9のいずれか1項に記載の六方晶系窒化ホウ素ファイバー。
【請求項11】
前記板状粒子の平均長径が0.1μm以上10μm以下である請求項5から10のいずれか1項に記載の六方晶系窒化ホウ素ファイバー。
【請求項12】
前記板状粒子の平均厚みが0.05μm以上5μm以下である請求項5から11のいずれか1項に記載の六方晶系窒化ホウ素ファイバー。
【請求項13】
発光素子を備え、請求項5から12のいずれか1項に記載の六方晶系窒化ホウ素ファイバーを含む発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、六方晶系窒化ホウ素ファイバー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
六方晶窒化ホウ素は熱伝導性、絶縁性、化学的安定性などの様々な物性に優れる化合物として知られている。六方晶窒化ホウ素の製造方法として、メラミン系化合物とホウ酸又は酸化ホウ素を適当な溶媒中で加温反応させ、冷却時に結晶を成長させた後、非酸化雰囲気中で加熱処理することで、微結晶からなる六方晶窒化ホウ素多結晶体及び繊維形状を有する六方晶窒化ホウ素多結晶体を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-53405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法で得られる窒化ホウ素について、X線回折測定によって結晶性を確認したところ、得られたスペクトルでは六方晶窒化ホウ素の(0002)面に相当するX線回折ピークの強度が弱く、ブロードであった。この結果から、特許文献1に記載の製造方法で得られる窒化ホウ素は結晶性が低いことがわかった。このようなX線回折スペクトルが得られた原因として、非晶質部分を多く含むことが推測される。六方晶窒化ホウ素の機能向上のためには、結晶性の向上が求められている。したがって、本開示に係る一実施形態は、従来の製造方法で得られる繊維状窒化ホウ素と比べて、六方晶窒化ホウ素としての結晶性がより向上した六方晶系窒化ホウ素ファイバー及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一態様は、六方晶系窒化ホウ素ファイバーの製造方法であり、製造方法は、非晶質の繊維状窒化ホウ素を準備することと、前記繊維状窒化ホウ素を、含酸素雰囲気下で500℃以上900℃未満の第一温度で熱処理して第一熱処理物を得ることと、前記第一熱処理物を、含窒素雰囲気下で1000℃以上1800℃以下の第二温度で熱処理して、六方晶窒化ホウ素を含む第二熱処理物を得ることと、を含む。
【0006】
第二態様は、六方晶窒化ホウ素を含む六方晶系窒化ホウ素ファイバーであり、X線回折スペクトルにおいて、2θが20°以上30°以下の範囲に検出される回折ピークの半値幅が2.0°以下である。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る一実施形態によれば、従来の製造方法で得られる繊維状窒化ホウ素と比べて、六方晶窒化ホウ素としての結晶性がより向上した六方晶系窒化ホウ素ファイバー及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】実施例2の六方晶系窒化ホウ素ファイバーのX線回折スペクトルを示す図である。
図1B】六方晶系窒化ホウ素ファイバーのX線回折スペクトルを示す部分拡大図である。
図2】実施例2の六方晶系窒化ホウ素ファイバー、並びに比較例1および比較例2の窒化ホウ素ファイバーのX線回折スペクトルである。
図3A】六方晶系窒化ホウ素ファイバーの走査電子顕微鏡(SEM)像を示す図である。
図3B図3Aの拡大SEM像である。
図3C図3Bの拡大SEM像である。
図4】六方晶系窒化ホウ素ファイバーの反射率を示す図である。
図5A】市販の六方晶窒化ホウ素のSEM像を示す図である。
図5B図5Aの拡大SEM像である。
図6】六方晶系窒化ホウ素ファイバーの熱伝導率を示す図である。
図7】発光装置の構成を示す斜視図である。
図8図7のVIII-VIII線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また、特に断らない限り、組成物中の各成分に該当する物質が複数存在する場合、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、六方晶系窒化ホウ素ファイバー及びその製造方法を例示するものであって、本発明は、以下に示す六方晶系窒化ホウ素ファイバー及びその製造方法に限定されない。なお特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に限定するものでは決してない。
【0010】
(六方晶系窒化ホウ素ファイバーの製造方法)
六方晶系窒化ホウ素ファイバーの製造方法は、非晶質の繊維状窒化ホウ素を準備する準備工程と、繊維状窒化ホウ素を、含酸素雰囲気下で500℃以上900℃未満の第一温度で熱処理して第一熱処理物を得る第一熱処理工程と、第一熱処理物を、含窒素雰囲気下で1000℃以上1800℃以下の第二温度で熱処理して、六方晶窒化ホウ素を含む第二熱処理物を得る第二熱処理工程と、を含み、必要に応じて精製工程、脱水工程等のその他の工程を更に含んでいてもよい。
【0011】
(準備工程)
準備工程では、非晶質の繊維状窒化ホウ素を準備する。繊維状窒化ホウ素の平均アスペクト比は、例えば、1.5以上150以下であってよい。繊維状窒化ホウ素の平均アスペクト比はSEM像から平均繊維長および平均太さを見積もることにより算出することができる。繊維状窒化ホウ素の平均繊維長は、例えば、5μm以上100μm以下であってよい。繊維状窒化ホウ素の平均太さは、例えば、0.5μm以上5μm以下であってよい。繊維状窒化ホウ素が非晶質であるとは、例えば、X線回折スペクトルにおいて、回折角2θが20°以上30°以下の領域における最大ピークの半値幅が、例えば、2.0°以上、または2.3°以上であることを意味する。非晶質の繊維状窒化ホウ素は、市販品から選択して準備してよく、公知の製造方法により製造して準備してもよい。
【0012】
非晶質の繊維状窒化ホウ素は、例えば、メラミン系化合物とホウ素化合物とから得られる前駆体である繊維状物質を非酸化性雰囲気中で熱処理することで得られる。非晶質の繊維状窒化ホウ素の製造方法については、例えば、特開平10-53405号公報の記載を参照することができる。
【0013】
メラミン系化合物としては、メラミン、アンメリン、アンメリド、メラム、メロン等のメラミン縮合物等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。また、ホウ素化合物としては、ホウ酸、酸化ホウ素等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。ホウ酸には、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等が含まれる。また酸化ホウ素には、三酸化二ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が含まれる。
【0014】
メラミン系化合物とホウ素化合物とから得られる繊維状物質は、例えば、メラミン系化合物とホウ素化合物とを溶媒中で加熱溶解させて溶液を得た後に、放冷することで析出する結晶として得られる。溶媒としては、例えば、水または酸性水溶液もしくはアンモニア水溶液等を用いることができる。加熱温度としては、例えば、80℃以上であってよく、好ましくは95℃以上である。加熱温度の上限値としては、溶液の沸点であってよい。繊維状物質は、例えば、メラミン系化合物に対するホウ酸のモル比が2である分子性結晶として得られる。
【0015】
溶媒から析出する繊維状物質は、濾別により溶媒から分離されてよく、その後に必要に応じて加熱乾燥、減圧乾燥等の乾燥処理に付されてもよい。窒化ホウ素の前駆体である繊維状物質を非酸化性雰囲気中で熱処理することで、前駆体の熱処理物として非晶質の繊維状窒化ホウ素が得られる。非酸化性雰囲気は、酸素濃度が例えば、1000ppm以下、又は100ppm以下であればよく、希ガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気、アンモニア雰囲気等であってよい。熱処理の温度は、例えば、1300℃以上1800℃以下であり、1300℃以上1500℃以下であってよい。熱処理の時間は、例えば、15分以上24時間以下であり、1時間以上8時間以下、又は2時間以上6時間以下であってよい。
【0016】
準備工程は、前駆体の熱処理物を液媒体に接触させることを更に含んでいてよい。前駆体の熱処理物を液媒体に接触させることで、例えば、熱処理物に含まれる不純物の少なくとも一部が除去されて、より高い結晶性を有する六方晶系窒化ホウ素ファイバーが製造可能になると考えられる。液媒体は、例えば、少なくとも水を含んでいればよく、水に加えて酸性成分(例えば、揮発性酸性化合物)、アンモニア等の揮発性アルカリ成分等を更に含んでいてもよい。前駆体の熱処理物と液媒体との接触は、例えば、前駆体の熱処理物を液媒体に浸漬することで行うことができ、必要に応じて撹拌、液媒体の循環等を行ってもよい。
【0017】
接触に用いる液媒体の液量は、例えば、前駆体の熱処理物の質量に対して10倍以上とすることができ、好ましくは50倍以上とすることができる。液量の上限値は、例えば、前駆体の熱処理物の質量に対して200倍以下であり、好ましくは100倍以下である。接触時の液媒体の温度は、例えば、5℃以上100℃以下、または25℃以上95℃以下である。接触時間は、例えば、1時間以上48時間以下、または15時間以上36時間以下である。液媒体と接触させた前駆体の熱処理物は、濾別により液媒体の少なくとも一部を除去されてよく、その後に必要に応じて加熱乾燥、減圧乾燥等の乾燥処理に付されてもよい。
【0018】
(第一熱処理工程)
第一熱処理工程では、準備した非晶質の繊維状窒化ホウ素を、含酸素雰囲気において、酸化ホウ素の融点以上かつ窒化ホウ素の融点未満で熱処理して第一熱処理物を得る。準備した非晶質の繊維状窒化ホウ素を、含酸素雰囲気下、例えば、500℃以上900℃未満の第一温度で熱処理して第一熱処理物を得る。非晶質の繊維状窒化ホウ素を含酸素雰囲気下、第一温度で熱処理することで、繊維状窒化ホウ素に含まれる酸化ホウ素が溶融し、該繊維状窒化ホウ素の表面に配置されると推測される。該酸化ホウ素は、例えば、準備工程に由来する不純物や、繊維状窒化ホウ素をホウ素源として第一熱処理により得られるものである。また、「配置される」とは、酸化ホウ素が非晶質の繊維状窒化ホウ素の1本の全周を取り囲むように配置されている場合、および酸化ホウ素が複数の非晶質の繊維状窒化ホウ素を取り囲み、見かけ上1本の繊維状窒化ホウ素を形成する場合などを含む。この第一熱処理工程を行うことで、後に説明する第二熱処理工程において従来より高い結晶性を有する六方晶系窒化ホウ素ファイバーを製造することが可能になる。第一熱処理物は、例えば、非晶質の繊維状窒化ホウ素であってよく、酸化ホウ素を含む非晶質の繊維状窒化ホウ素であってよい。
【0019】
第一熱処理工程における含酸素雰囲気は、酸素ガス濃度が、例えば、5体積%以上、または20体積%以上であればよく、また例えば、100体積%以下、または50体積%以下であってよい。含酸素雰囲気は、酸素以外に窒素ガス、アルゴン等の希ガス、二酸化炭素ガス等を更に含んでいてもよく、大気雰囲気であってよい。
【0020】
第一温度は、例えば、500℃以上、550℃以上、600℃以上、または650℃以上、700℃以上であってよく、また例えば、900℃以下、850℃以下、800℃以下、であってよい。好ましくは600℃以上、800℃以下であり、特に好ましくは700℃以上、800℃以下である。これにより、繊維状窒化ホウ素が溶融することを抑制しつつ、酸化ホウ素を繊維状窒化ホウ素の表面に配置することが可能である。
【0021】
第一熱処理工程における熱処理時間は、例えば、3時間以上、5時間以上、または10時間以上であってよく、また例えば、36時間以下、24時間以下、または15時間以下であってよい。
【0022】
(第二熱処理工程)
第二熱処理工程では、第一熱処理物を含窒素雰囲気下で1000℃以上1800℃以下の第二温度で熱処理して第二熱処理物を得る。第一熱処理物を含窒素雰囲気下、第一温度よりも高い第二温度で熱処理することで、従来よりも高い結晶性を有する六方晶系窒化ホウ素ファイバーを得ることができる。これは非晶質の窒化ホウ素および第一熱処理物に含まれる酸化ホウ素が六方晶窒化ホウ素に変化するためと考えられる。第二熱処理物は、例えば、六方晶窒化ホウ素を含み、粒子の集合体として繊維状の構造を有する六方晶系窒化ホウ素ファイバーを含むものである。
【0023】
含窒素雰囲気は、窒素を含んでいればよく、必要に応じて窒素以外の希ガス等の不活性ガスを含んでいてもよい。含窒素雰囲気は、非酸化性であることが好ましく、酸素濃度が例えば、1体積%以下、または0.01体積%以下であり、実質的に酸素を含まないことがより好ましい。実質的に酸素を含まないとは、不可避的に混入する酸素を排除しないことを意味する。含窒素雰囲気における窒素濃度は、例えば、30体積%以上、60体積%以上、90体積%以上または99.99体積%以上であってよく、実質的に窒素雰囲気であってよい。なお、実質的に窒素雰囲気とは、不可避的に混入する窒素以外の気体を排除しないことを意味する。
【0024】
結晶性向上の観点から、第二温度は、例えば、1000℃以上、1200℃以上、1400℃以上、1500℃以上、または1600℃以上であってよく、また例えば1800℃以下、1750℃以下、または1700℃以下であってよい。好ましくは1400℃以上、1700℃以下である。この好ましい範囲内であれば、粒子の集合体として繊維状の構造を維持しつつ、該繊維状構造を構成する六方晶窒化ホウ素の結晶性を向上させることができる。
【0025】
第二熱処理工程における熱処理時間は、例えば、3時間以上、5時間以上、または10時間以上であってよく、また例えば、36時間以下、24時間以下、または15時間以下であってよい。
【0026】
六方晶系窒化ホウ素ファイバー
六方晶系窒化ホウ素ファイバー(以下、単に「窒化ホウ素ファイバー」ともいう)は、六方晶窒化ホウ素を含み、全体として繊維状の形状を有する。また、X線回折(XRD)スペクトルにおいて、回折角2θが20°以上30°以下の範囲に検出される回折ピークの半値幅が2.0°以下である。2θが20°以上30°以下の範囲に検出される回折ピークは、主として六方晶窒化ホウ素の(0002)面に由来するピークであり、その半値幅が狭いことで、窒化ホウ素ファイバーが六方晶の結晶構造を主として構成されることを意味している。これにより、例えば、樹脂中へ六方晶系窒化ホウ素ファイバーを添加したときに、波長450nmにおける反射率が向上し、優れた熱伝導率を達成することができる。
【0027】
2θが20°以上30°以下の範囲に検出される回折ピーク(以下、「特定回折ピーク」ともいう)の半値幅は、例えば、1.8°以下、1.5°以下、1.0°以下、1.0°未満、0.9°以下、または0.8°以下であってよい。半値幅の下限値は、例えば、0.1°以上、または0.2°以上である。回折ピークの半値幅は、線源としてCuKα線を用い、管電流200mA、管電圧45kVの条件で測定されるX線回折スペクトルにおいて、特定回折ピークの最大強度の50%の強度の部分を半値とする場合に、その半値全幅として測定される。
【0028】
特定回折ピークは、最大ピーク強度の80%強度におけるピーク幅に対する最大ピーク強度の20%強度におけるピーク幅の比(以下、「XRD幅比」ともいう)が、例えば、4.5以下、4以下、3.8以下、または3.5以下であってよい。XRD幅比の下限値は、例えば、1.5以上、または2.0以上である。20%強度におけるピーク幅が狭いことは、特定回折ピークがよりシャープな形状を有し、窒化ホウ素ファイバーが六方晶の結晶構造を主に有する窒化ホウ素から構成されることに対応する。
【0029】
一般に六方晶窒化ホウ素は、黒鉛と似た結晶構造を有し、例えば、板状の粒子の形態をとり得る。したがって、窒化ホウ素ファイバーは、例えば、図3A図3B及び図3CにSEM画像を示すように、板状の六方晶窒化ホウ素粒子が集合して、全体として繊維状の構造を形成していてよい。窒化ホウ素ファイバーが板状の六方晶窒化ホウ素粒子を含んで構成されることで、樹脂中において、より高い反射率とより優れた熱伝導性とを達成することができる。
【0030】
六方晶系窒化ホウ素ファイバーの平均アスペクト比は、例えば、1.5以上150以下、または1.5以上100以下であってよい。平均アスペクト比はSEM像から六方晶系窒化ホウ素ファイバーの平均繊維長と平均短径を見積もることで算出可能である。六方晶系窒化ホウ素ファイバーの平均繊維長は、例えば、1μm以上100μm以下、または5μm以上60μm以下であってよい。窒化ホウ素ファイバーの平均短径は、例えば、0.2μm以上20μm以下、または0.5μm以上10μm以下であってよい。また、六方晶系窒化ホウ素ファイバーを構成する板状の六方晶窒化ホウ素粒子の平均アスペクト比(長径/厚み)は例えば、1.0より大きく200以下、または1.5以上67以下であってよい。六方晶系窒化ホウ素ファイバーを構成する板状の六方晶窒化ホウ素粒子の平均長径は、例えば、0.1μm以上10μm以下、または0.5μm以上5μm以下であってよい。板状の六方晶窒化ホウ素粒子の平均厚みは、例えば、0.05μm以上5μm以下、または0.075μm以上1μm以下であってよい。
【0031】
六方晶系窒化ホウ素ファイバーの平均繊維長、平均短径、および平均アスペクト比は、100個のファイバーについて、SEM画像(例えば、1000倍)において測定される繊維長、短径、およびアスペクト比の算術平均値としてそれぞれ算出される。板状の六方晶窒化ホウ素粒子の平均長径、平均厚み、および平均アスペクト比は、100個のファイバーについて、SEM画像(例えば、50000倍)において測定される長径、厚み、およびアスペクト比の算術平均値としてそれぞれ算出される。
【0032】
(発光装置)
発光装置は、発光素子を備え、六方晶系窒化ホウ素ファイバーを含む。発光装置は、例えば、凹部を有するパッケージと、凹部の底面に配置される発光素子と、パッケージの凹部に充填されて発光素子を封止する封止部材とを備えていてよい。該パッケージはリード電極および六方晶系窒化ホウ素ファイバーを含む樹脂組成物を備えている。パッケージが六方晶系窒化ホウ素ファイバーを含んで構成されることで、単位重量あたりの体積が増えるのでパッケージの凹部における光反射率が向上する。これにより、発光素子からの光を効率良く取り出すことができ、発光装置としての光束を向上させることができる。また六方晶窒化ホウ素が高い熱伝導率を有することに起因して、パッケージの熱伝導率が向上するため、より耐久性に優れる発光装置を構成することができる。
【0033】
発光装置の構成について、図7及び図8を参照して説明する。図7は、実施形態に係る発光装置の構成を示す斜視図である。図8は、実施形態に係る発光装置の構成を示す断面図であり、図1のVIII-VIII線における断面を示す。図7及び図8において、説明の便宜上、XYZ座標軸を用いて観察方向を示している。細長い略直方体形状の発光装置1の長手方向をX軸方向とし、短手方向をY軸方向とし、厚さ方向をZ軸方向としている。
【0034】
発光装置1は、凹部2aを有するパッケージ2と、パッケージ2の凹部2aの底面2bに配置される発光素子3と、凹部2a内に設けられて発光素子3を封止する透光性の封止部材4と、を備えている。また、パッケージ2は、給電用のリード電極21と、給電用のリード電極21を保持する樹脂成形体22と、を有している。発光装置1は、外形が細長い略直方体であり、Z軸方向の寸法である厚さが薄く形成されている。発光装置1は、マイナスZ方向に実装面を有する。また、凹部2aは、マイナスY方向側に開口するように設けられている。従って、発光装置1は、実装面に平行な方向に光を出射するサイドビュー型の実装に適している。
【0035】
発光装置1では、パッケージ2の樹脂成形体22が六方晶系窒化ホウ素ファイバーと、樹脂とを含む樹脂組成物から形成される。
【0036】
パッケージ2は、給電用のリード電極21と、給電用のリード電極21を互いに離間するように保持する樹脂成形体22と、を有している。パッケージ2は、実装面であるZ軸のマイナス方向の端面に対して横向きに開口する凹部2aを有している。従って、凹部2aの底面2bは、実装面に対して略垂直に設けられている。凹部2aは、底面2bが給電用のリード電極21と樹脂成形体22とで構成され、側面が樹脂成形体22の側壁22aで構成されている。X方向の側壁22aの厚みと比べて、Z方向の側壁22aの厚みは薄く形成されている。
【0037】
凹部2a内には発光素子3が配置されており、側壁22aは、発光素子3を囲むように設けられている。側壁22aの内側面は、凹部2aの底面2b側から開口側に向かって広がるように、底面2bに対して所定角度で傾斜して形成されている。これによって、発光素子3から側壁22aへ出射する光は、側壁22aによって開口側へ反射されてパッケージ2から外部に取り出される。また、樹脂成形体22は、発光素子3からの光を反射して凹部2aの開口から効率よく取り出すことができるように、光反射性の良好な六方晶系窒化ホウ素ファイバーを含有する樹脂組成物を用いて形成されている。
【0038】
サイドビューパッケージにおいては、近年、発光装置の小型化の要望の高まりに伴い、パッケージの薄型化が進んでいる。そのため、具体的には、発光素子3の周囲を囲む樹脂成形体22の一部の厚さが、例えば、100μm以下、更には50μm以下とすることが望まれている。パッケージ2は、凹部2aの開口が長円形であり、凹部2aの開口の長手方向に沿った側壁22aを薄く形成することで、凹部2aの寸法を変えずにパッケージ2の厚さ方向の外形寸法を小さくできる。これによって、薄型の発光装置1を提供することができる。
【0039】
ここで、側壁22aは、六方晶系窒化ホウ素ファイバーを含有する樹脂組成物を用いて形成されることで、良好な光反射性を有することができる。また、ファイバーであることで薄型に形成しても必要な機械強度が得られる。なお、本実施形態におけるパッケージ2は、凹部2aの開口が長円形であるが、円形、楕円形、矩形、その他の多角形などであってもよい。
【0040】
発光素子3としては、サファイアなどの基板上に半導体積層体を設けることができる。半導体積層体はn型半導体層と発光層とp型半導体層を積層したものを用いることができる。発光層としてはGaAlN、ZnS、ZnSe、SiC、GaP、GaAlAs、AlN、InN、AlInGaP、InGaN、GaN、AlInGaNなどの半導体を用ることができる。この内、紫外領域から可視光の短波長領域(360nm以上700nm以下)に発光ピーク波長を有する窒化物系化合物半導体素子を用いることができる。
【0041】
封止部材4は、パッケージ2の凹部2a内に設けられ、凹部2a内に配置されている発光素子3、リード電極21、及び発光素子3とリード電極21とを電気的に接続するためのワイヤなどを封止する部材である。封止部材4は設けなくともよいが、設けることで封止した部材を水分やガスによる劣化や機械的な接触による損傷から保護することができる。封止部材として用いることができる材料は、特に限定されないが、良好な透光性を有することが好ましい。このような材料としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂材料、ガラスなどの無機材料を挙げることができる。
【0042】
封止部材4には、発光素子3からの光を波長変換させる蛍光物質や、発光素子からの光を散乱させる光反射性物質を含有してもよい。光反射性物質としては、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)などの粒子を用いることができる。また、蛍光物質としては、発光素子からの光を吸収して異なる波長の光に波長変換するものであればよい。例えば、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えばY(Al,Ga)12:Ce)、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えばLu(Al,Ga)12:Ce)、テルビウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えばTb(Al,Ga)12:Ce)、シリケート系蛍光体(例えば(Ba,Sr)SiO:Eu)、クロロシリケート系蛍光体(例えばCaMg(SiOCl:Eu)、βサイアロン系蛍光体(例えばSi6-zAl8-z:Eu(0<z<4.2))、SGS系蛍光体(例えばSrGa:Eu)、アルカリ土類アルミネート系蛍光体(例えば(Ba,Sr,Ca)MgAl1017-x:Eu,Mn)、αサイアロン系蛍光体(例えばMz(Si,Al)12(O,N)16(但し、0<z≦2であり、MはLi、Mg、Ca、Y、及びLaとCeを除くランタニド元素)、窒素含有アルミノ珪酸カルシウム系蛍光体(例えば(Sr,Ca)AlSiN:Eu)、マンガン賦活フッ化物系蛍光体(一般式(I)A[M1-aMn]で表される蛍光体(但し、上記一般式(I)中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNHからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、aは0<a<0.2を満たす))が挙げられる。イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、Yの一部をGdで置換することで発光ピーク波長を長波長側にシフトさせることができる。また、マンガン賦活フッ化物系蛍光体の代表例としては、マンガン賦活フッ化珪酸カリウムの蛍光体(例えばKSiF:Mn)が挙げられる。
【0043】
なお、一実施形態にかかる六方晶系窒化ホウ素ファイバーは、発光装置のパッケージ材料以外としても用いることができる。例えば、封止樹脂内に光反射性物質として用いることもできる。
【実施例
【0044】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
準備工程
ガラス製のビーカに純水5000mlを入れ、それにメラミン136.1gとオルトホウ酸133.6gを加え、混ぜながら95℃まで加温し、溶液色が白濁色から透明色に変化するまで、完全に溶解させた。その後、室温まで冷却し、析出物を濾別して繊維状物質を237g得た。得られた繊維状物質を窒素雰囲気下で1400℃の温度のもとで5時間加熱処理することにより、非晶質の繊維状窒化ホウ素を44g得た。
【0046】
第一熱処理工程
得られた繊維状窒化ホウ素を大気雰囲気下で700℃の温度のもとで5時間熱処理を行い、第一熱処理物を得た。
【0047】
第二熱処理工程
得られた第一熱処理物を窒素雰囲気(窒素濃度:99.99体積%)下で1700℃の温度のもとで5時間熱処理を行い、第二熱処理物として実施例1の六方晶系窒化ホウ素ファイバーを得た。
【0048】
得られた実施例1の六方晶系窒化ホウ素ファイバーについて、後述のようにして回折ピークの半値幅を測定したところ、1.79°であった。またXRD幅比は4.18であった。
【0049】
(実施例2)
準備工程において、析出物40gを純水3000mlに20時間浸漬させ、ろ過分離後、大気雰囲気下、80℃の条件下で20時間乾燥させて、繊維状物質を得て、窒素雰囲気下で1400℃の温度のもとで5時間加熱処理することにより、非晶質の繊維状窒化ホウ素を得たこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の六方晶系窒化ホウ素ファイバーを得た。
【0050】
得られた実施例2の六方晶系窒化ホウ素ファイバーにおける回折ピークの半値幅は、0.62°であり、XRD幅比は3.39であった。
【0051】
(実施例3)
第一熱処理工程における熱処理温度を800℃に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、実施例3の六方晶系窒化ホウ素ファイバーを得た。
【0052】
得られた実施例3の六方晶系窒化ホウ素ファイバーにおける回折ピークの半値幅は、0.86°であり、XRD幅比は2.17であった。
【0053】
(実施例4)
第一熱処理工程における熱処理温度を500℃に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、実施例4の六方晶系窒化ホウ素ファイバーを得た。
【0054】
得られた実施例4の六方晶系窒化ホウ素ファイバーにおける回折ピークの半値幅は、0.96°であり、XRD幅比は3.56であった。
【0055】
(実施例5)
第二熱処理工程における熱処理温度を1400℃に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、実施例5の六方晶系窒化ホウ素ファイバーを得た。
【0056】
得られた実施例5の六方晶系窒化ホウ素ファイバーにおける回折ピークの半値幅は、0.73°であり、XRD幅比は3.61であった。
【0057】
(比較例1)
実施例1の準備工程で得られた繊維状窒化ホウ素を比較例1の窒化ホウ素ファイバーC1とした。
【0058】
窒化ホウ素ファイバーC1における回折ピークの半値幅は、6.34°であった。
【0059】
(比較例2)
第一熱処理工程を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の窒化ホウ素ファイバーC2を得た。
【0060】
窒化ホウ素ファイバーC2における回折ピークの半値幅は、2.33°であり、XRD幅比は4.70であった。
【0061】
(XRD評価)
上記で得られた窒化ホウ素ファイバーについて、X線回折(XRD)測定を以下のようにして行った。測定は、リガク社製の粉末X線回折装置(製品名SmartLab)を用いて、光源をCuKα線、管電流200mA、管電圧45kVの条件のもとに観測した。得られたX線回折スペクトルの最大強度に対して半分の値をとる部分を半値と定め、半値全幅(以下、半値幅とよぶ)を見積もった。また、得られたX線回折スペクトルの回折ピークの最大強度に対して強度が20%の部分の幅を、強度が80%の部分の幅で除することで、XRD幅比を算出した。結果を表1に示す。また、図1Aに実施例2で得られた六方晶系窒化ホウ素ファイバーのX線回折スペクトルを、図2に実施例2の六方晶系窒化ホウ素ファイバーと比較例1および比較例2の窒化ホウ素ファイバーのX線回折スペクトルを示す。
【0062】
実施例2で得られた六方晶系窒化ホウ素ファイバーは、図1Aに示すように、2θが26°付近に、六方晶窒化ホウ素の(0002)面に由来すると考えられる半値幅が0.62°の回折ピークが検出された。また図1Bに示すように50°付近に六方晶窒化ホウ素に由来すると考えられる構造が検出された。図2に示すように、比較例1および比較例2の窒化ホウ素ファイバーは、実施例2の六方晶系窒化ホウ素ファイバーと比較して幅が広い回折ピークを示した。
【0063】
特定回折ピークの半値幅から、実施例1から5のいずれも比較例1および2と比べて結晶性が向上していることがわかる。また、XRD幅比から実施例2および実施例3で得られた六方晶系窒化ホウ素ファイバーの特定回折ピークがよりシャープな形状を有することがわかる。
【0064】
【表1】
【0065】
(SEM評価)
実施例2の六方晶系窒化ホウ素ファイバーに対して走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った。観察は日立ハイテクノロジーズ社製のSEM-EDX装置(型番SU8230)を用いて、加速電圧1.5kV、の測定条件で行った。図3Aは倍率1,000倍で観察したSEM像であり、図3Bは倍率15,000倍で観察したSEM像であり、図3Cは倍率50,000倍で観察したSEM像である。
【0066】
得られたSEM像から、六方晶窒化ホウ素を含む板状の粒子が集合することで六方晶系窒化ホウ素ファイバーが形成されていることが確認された。この板状の粒子が集合した六方晶系窒化ホウ素ファイバーの繊維長は8μm以上58μm以下であり、短径の長さは0.6μm以上4μm以下であった。そのアスペクト比は2以上97以下であった。また、このファイバーを形成する板状粒子の長径は1μm以上3μm以下であり、厚みは0.1μm以上0.5μm以下であった。板状の粒子のアスペクト比(長径/厚み)は2以上30以下であった。
【0067】
(反射率評価)
実施例2の六方晶系窒化ホウ素ファイバー、非晶質の繊維状窒化ホウ素(比較例1)、および市販品である粒度5μmの六方晶窒化ホウ素(デンカ社製型番HGP)について、波長が450nmにおける反射率の絶対値を測定した。測定には日本電色工業製のハンディ型分光色差計(製品NF555)を用いた。標準材には日本電色工業製の型番S-00017を用いた。なお、反射率の測定は、所定量の窒化ホウ素をフィラーとして熱硬化性のエポキシ樹脂に混ぜ、120℃で熱処理することで硬化させた混合物に対して行った。結果を図4および表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
図4は450nmにおける反射率のフィラーの添加量依存性の測定結果である。実施例2で得られた窒化ホウ素ファイバーの反射率は、市販の窒化ホウ素および比較例1の繊維状窒化ホウ素の反射率のどちらよりも高かった。
【0070】
参考のため、図5A及び図5Bに市販品である窒化ホウ素(デンカ社製型番HGP)の1000倍および4000倍のSEM像を示す。図5A及び図5Bより、市販の窒化ホウ素はファイバー形状を成していなかった。
【0071】
(熱伝導率)
実施例2の六方晶系窒化ホウ素ファイバー、非晶質の繊維状窒化ホウ素(比較例1)、および市販品である粒径5.0μmの六方晶窒化ホウ素(デンカ社製型番HGP)について、熱伝導率を測定した。熱伝導率の測定は、所定量の窒化ホウ素をフィラーとして熱硬化性のエポキシ樹脂に混ぜ、120℃で熱処理することで硬化させた混合物に対して行った。熱伝導率は熱拡散率と比熱容量と密度の積により算出した。熱拡散率はNETZSCH社製のLEA447を用いてフラッシュ法により測定した。密度は測定値である。比熱容量は六方晶窒化ホウ素の比熱容量とエポキシ樹脂の比熱容量とをそれぞれの添加重量で重みづけして算出した値である。結果を図6および表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
実施例2で得られた窒化ホウ素ファイバーの熱伝導率は、比較例1の維状窒化ホウ素および市販されている粒径5μmの六方晶窒化ホウ素(デンカ社製型番HGP)の熱伝導率よりも高かった。
【符号の説明】
【0074】
1 発光装置
2 パッケージ
2a 凹部
2b 底面
21 リード電極
22 樹脂形成体
22a 側壁
3 発光素子
4 封止部材
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8