(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】発光装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/60 20100101AFI20231101BHJP
【FI】
H01L33/60
(21)【出願番号】P 2019172587
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】三木 孝仁
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-283016(JP,A)
【文献】特開2019-087703(JP,A)
【文献】特開2012-138454(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0034016(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0303052(US,A1)
【文献】国際公開第2012/049854(WO,A1)
【文献】特開2011-009143(JP,A)
【文献】特開2017-005226(JP,A)
【文献】特開2014-093435(JP,A)
【文献】特開2018-088485(JP,A)
【文献】特開2015-128092(JP,A)
【文献】特開2015-153856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一金属端子と、第二金属端子と、前記第一金属端子と前記第二金属端子の間並びに前記第一金属端子及び前記第二金属端子の周囲の一部に配置される絶縁性の成形樹脂と、を備え、上面と下面と側面とを有する支持体と、
前記支持体の上面に配置される発光素子と、
少なくとも前記支持体の上面及び前記発光素子の側方に配置された光反射部材と、
を備えており、
前記第一金属端子の下面及び前記第二金属端子の下面の少なくとも一部が、前記成形樹脂から表出されており、
前記支持体の側面における前記成形樹脂から露出される前記第一金属端子又は前記第二金属端子よりも、前記光反射部材の側面の方が、側方に突出して
おり、
前記光反射部材が、前記発光素子の側方において、前記成形樹脂と前記第一金属端子との界面、及び前記成形樹脂と前記第二金属端子との界面の上に、それぞれ配置されてなる発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置であって、さらに
前記発光素子の上に配置される波長変換部材を備える発光装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発光装置であって、
前記光反射部材が、前記波長変換部材の側面を被覆するように前記波長変換部材の側面に接している発光装置。
【請求項4】
請求項1
から3のいずれか一項に記載の発光装置であって、さらに
前記光反射部材を覆う透光性部材を備える発光装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の発光装置であって、
前記透光性部材は、半球状のレンズ形状である発光装置。
【請求項6】
請求項
4又は
5に記載の発光装置であって、
前記透光性部材の側面は、前記光反射部材の側面と同一面である発光装置。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか一項に記載の発光装置であって、
前記光反射部材は、シリコーン樹脂と、TiO
2、SiO
2及びAl
2O
3から選択された少なくとも一種の光拡散材を含む発光装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の発光装置であって、
前記光反射部材の硬度が、前記成形樹脂の硬度より小さい発光装置。
【請求項9】
第一金属端子と、第二金属端子と、前記第一金属端子と前記第二金属端子の間並びに前記第一金属端子及び前記第二金属端子の周囲の一部に配置される絶縁性の成形樹脂と、を備え、上面と下面と側面とを有する支持体と、前記支持体の上面に配置される複数の発光素子と、を備える支持体の集合体を準備する工程と、
少なくとも前記支持体の上面及び前記発光素子の側方に光反射部材を配置
し、前記光反射部材が前記発光素子の側方において、前記成形樹脂と前記第一金属端子との界面、及び前記成形樹脂と前記第二金属端子との界面の上に、それぞれ配置されるようにする工程と、
前記光反射部材、及び、前記成形樹脂、前記第一金属端子又は前記第二金属端子、を切断することにより、前記支持体の側面における前記成形樹脂から露出される前記第一金属端子又は前記第二金属端子よりも、前記光反射部材の側面の方が、側方に突出させると共に、前記支持体の集合体から発光装置を個片化する工程と、
を含む発光装置の製造方法。
【請求項10】
請求項
9に記載の発光装置の製造方法であって、
前記光反射部材を配置する工程後において、前記光反射部材の硬度は、前記支持体の成形樹脂の硬度よりも小さい発光装置の製造方法。
【請求項11】
請求項
9又は
10に記載の発光装置の製造方法であって、さらに
前記発光素子を前記支持体に配置する工程後に、前記発光素子の上に波長変換部材を配置する工程を含む発光装置の製造方法。
【請求項12】
請求項
9から
11のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法であって、さらに
前記光反射部材を配置する工程後に、前記光反射部材を覆う透光性部材を配置する工程を含む発光装置の製造方法。
【請求項13】
請求項
9から
12のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法であって、
前記光反射部材が、シリコーン樹脂と、TiO
2、SiO
2及びAl
2O
3から選択された少なくとも一種を含む発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード等の発光素子と、蛍光体と組み合わせて、混色光を得ることが可能な発光装置が、照明や液晶のバックライトの用途に用いられている。このような発光装置は、発光素子や蛍光体を配置する支持体を備える。支持体は、発光素子に電力を供給する金属端子を備えており、予め集合体として形成されたものを個々の支持体に分割して、発光装置が形成される。このような場合、個々の支持体の金属端子が互いに接続された状態で集合体として形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、個々の支持体に分割する際に、支持体の集合体の一部とともに、集合体に配置された金属端子の一部を切断するため、切断により形成された金属端子の先端部分に金属バリが発生する虞がある。このような金属バリは、支持体の集合体から複数の発光装置が分割された後、複数の発光装置が接近した際に発光装置の一部に損傷を与える可能性があり、発光装置の信頼性を低下させてしまう虞がある。
【0005】
本発明の一態様の目的の一つは、発光装置の製造工程において、発光装置の一部の損傷を抑えることのできる発光装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る発光装置は、第一金属端子と、第二金属端子と、前記第一金属端子と前記第二金属端子の間、並びに前記第一金属端子及び前記第二金属端子の周囲の一部に配置される絶縁性の成形樹脂とを備え、上面と下面と側面とを有する支持体と、前記支持体の上面に配置される発光素子と、少なくとも前記支持体の上面及び前記発光素子の側方に配置された光反射部材とを備えており、前記第一金属端子の下面及び前記第二金属端子の下面の少なくとも一部が、前記成形樹脂から表出されており、前記支持体の側面における前記成形樹脂から露出される前記第一金属端子又は前記第二金属端子よりも、前記光反射部材の側面の方が、側方に突出している。
【0007】
また本発明の他の態様に係る発光装置の製造方法は、第一金属端子と、第二金属端子と、前記第一金属端子と前記第二金属端子の間、並びに前記第一金属端子及び前記第二金属端子の周囲の一部に配置される絶縁性の成形樹脂とを備え、上面と下面と側面とを有する支持体と、前記支持体の上面に配置される複数の発光素子とを備える支持体の集合体を準備する工程と、少なくとも前記支持体の上面及び前記発光素子の側方に光反射部材を配置する工程と、前記光反射部材、及び、前記成形樹脂、前記第一金属端子又は前記第二金属端子、を切断することにより、前記支持体の側面における前記成形樹脂から露出される前記第一金属端子又は前記第二金属端子よりも、前記光反射部材の側面の方が、側方に突出させると共に、前記支持体の集合体から発光装置を個片化する工程とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一形態に係る発光装置によれば、発光装置の一部の損傷を抑えることのできる発光装置およびその製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】
図2の発光装置のIII-III線における垂直断面図である。
【
図4】
図2のIV-IV線における垂直断面図である。
【
図5】
図3の発光装置のV-V線における水平断面図である。
【
図6】実施形態2に係る発光装置の垂直断面図である。
【
図7】実施形態1に係る発光装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図8】実施形態1に係る発光装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図9】実施形態1に係る発光装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図10】実施形態1に係る発光装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図11】実施形態1に係る発光装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図12】実施形態1に係る発光装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図13】実施形態1に係る発光装置の製造工程を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態及び実施例を、図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態及び実施例は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに限定されるものでない。また各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略する。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。さらに、本発明に係る実施形態及び実施例を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。さらに、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及び、それらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。なお、本明細書において「備える」とは、別部材として備えるもの、一体の部材として構成するものの何れをも含む意味で使用する。
[実施形態1]
【0011】
実施形態に係る発光装置は、第一金属端子と、第二金属端子と、前記第一金属端子と前記第二金属端子の間並びに前記第一金属端子及び前記第二金属端子の周囲の一部に配置される絶縁性の成形樹脂と、を備え、上面と下面と側面とを有する支持体と、前記支持体の上面に配置される発光素子と、少なくとも前記支持体の上面及び前記発光素子の側方に配置された光反射部材と、を備えており、前記第一金属端子の下面及び前記第二金属端子の下面の少なくとも一部が、前記成形樹脂から表出されており、前記支持体の側面における前記成形樹脂から露出される前記第一金属端子又は前記第二金属端子よりも、前記光反射部材の側面の方が、側方に突出している。
【0012】
本発明の実施形態1に係る発光装置100を
図1~
図5に示す。これらの図において、
図1は実施形態1に係る発光装置100の斜視図、
図2は
図1の発光装置100の底面図、
図3は
図2の発光装置100のIII-III線における垂直断面図、
図4は
図2のIV-IV線における垂直断面図、
図5は
図3の発光装置100のV-V線における水平断面図を、それぞれ示している。これらの図に示す発光装置100は、支持体1と、この支持体1上に配置される発光素子10と、この発光素子10の上面に配置される波長変換部材20と、波長変換部材20及び発光素子10の周囲に配置された光反射部材40を備える。波長変換部材20および光反射部材40の上には、透光性部材50を備えている。透光性部材50は、平面視が円形状で断面視が半円球状であるレンズ部51と、このレンズ部51の外周側に延出する鍔部52とを有する。レンズ部51は、
図1、
図3、
図5に示すように平面視を円形状とし、断面視を半円球状としている。またレンズ部51の外周側には鍔部52を延出させている。
【0013】
波長変換部材20は、
図5に示すように平面視において発光素子10よりも大きく形成されている。また発光素子10の側面と光反射部材40の間には、第2透光性部材30を設けている。
(支持体1)
【0014】
支持体1は、上面に発光素子10や透光性部材50等を実装するための部材である。支持体1は、
図2~
図5に示すように第一金属端子2と、第二金属端子3と、絶縁性の成形樹脂4で構成される。第一金属端子2と第二金属端子3は、主たる材料としてCu等、導電性および熱伝導性に優れた金属材で構成する。これら第一金属端子2と第二金属端子3は、外部と電気接続するためのリードとして機能する。
【0015】
成形樹脂4は、第一金属端子2と第二金属端子3の間、並びに第一金属端子2及び第二金属端子3の周囲の一部に、それぞれ延在して配置される。この支持体1は、上面と下面と側面とを有する。支持体1の上面には、ほぼ中央に発光素子10を実装すると共に、発光素子10の側方に光反射部材40を配置している。これにより、発光素子10の上面すなわち発光面を光反射部材40で区画して、上面方向への発光強度を向上できる。また光反射部材40は、発光素子10の上面とほぼ同じ高さから、支持体1の側面に向かって下り勾配となる曲面状に傾斜されて形成されている。これにより、光反射部材40で阻害されることなく発光素子10の発光面からの光を出射させることができる。
【0016】
また支持体1の下面には、第一金属端子2の下面及び第二金属端子3の下面の一部を、成形樹脂4から露出させている。さらに支持体1の側面においては、
図1~
図4に示すように、成形樹脂4よりも、光反射部材40を突出させている。すなわち、平面視において光反射部材40よりも、支持体1は一回り小さい。
【0017】
さらに
図1の斜視図に示すように、支持体1の側面において、第一金属端子2及び第二金属端子3の端面が、成形樹脂4から部分的に露出されている。
図1の例では、正面側で2箇所、側面側で1箇所、それぞれ斜線で示すように金属端子が部分的に表出されている。
【0018】
加えて、
図4の垂直断面図に示すように、支持体1の側面において、成形樹脂4から露出される第一金属端子2又は第二金属端子3よりも、光反射部材40の側面の方を、側方に突出させている。支持体1の側面において、成形樹脂4が第一金属端子2、第二金属端子3の側面を被覆することで、支持体1の側面では成形樹脂4が突出された状態となっている。
(成形樹脂4)
【0019】
成形樹脂4は、絶縁性に優れた材質とする。このような樹脂材料としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、BTレジン、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリフタルアミド樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。また、成形樹脂4には、当該分野で公知の着色剤、充填剤、強化剤等を含有させてもよい。特に、着色剤は、反射率の良好な材料が好ましく、酸化チタン、酸化亜鉛等の白色のものが好ましい。充填剤としては、シリカ、アルミナ等が挙げられる。強化剤としては、ガラス、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム等が挙げられる。特に支持体1に光反射性を持たせることで、発光素子10の光が裏面側に透過して漏れることを阻止できる。
【0020】
また支持体1の上面や下面には、
図1、
図2や
図5に示すように第一金属端子2や第二金属端子3を成形樹脂4から表出させて、電気接続や放熱を図ることができる。
図5の平面図に示す例では、第一金属端子2と第二金属端子3とを成形樹脂4で離間させて配置させつつ、中央では両者間の距離を短くするように第一金属端子2と第二金属端子3を凸状に形成し、この部分に発光素子10を実装する実装領域としている。発光素子10は、支持体1の上面で露出された第一金属端子2と第二金属端子3で形成される導電パターンに実装される。ここでは発光素子10に形成された電極が、フリップチップ接続等により支持体1の上面に表出された第一金属端子2及び第二金属端子3とバンプ等の接続部材を介して接続される。なお
図3等の例では、発光素子10を支持体1上にフリップチップ実装した例を説明したが、この構成に限らず、例えばワイヤボンディングで実装してもよい。
(発光素子10)
【0021】
発光素子10は、電極を形成した実装面である発光素子の第一面11(
図3において下面)と、この発光素子の第一面11と反対側に位置する発光面である発光素子の第二面12(
図3において上面)とを有する。
【0022】
発光素子10として、例えば、窒化物系半導体(InXAlYGa1-X-YN、ここで、X及びYは、0≦X、0≦Y、X+Y≦1を満たす。)を用いた半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置100を得ることができる。
【0023】
なお
図1~
図5等に示す例では、発光素子10を平面視において正方形状とした例を説明した。ただ本発明は発光素子10の外形をこの構成に限らず、例えば長方形状等の矩形状とする他、六角形や八角形等の多角形状、あるいは円形、楕円形等としてもよい。
(波長変換部材20)
【0024】
図3等に示す波長変換部材20は、発光素子10の上面に配置されて、発光素子10の第二面12から発される光の波長を、異なる波長に変換する。例えば発光素子10が青色を発光する場合、この青色を黄色に波長変換して、青色光と黄色光の混色により白色光を得る。この波長変換部材20は、第一面21(
図3において下面)と、この第一面21と反対側の第二面22(
図3において上面)とを有する。そして波長変換部材20の第一面21は、発光素子の第二面12よりも面積を大きくしている。これにより発光素子の第二面12すなわち発光素子10の発光面の全面を波長変換部材20で覆うことができる。いいかえると、発光素子10の発光面の一部が波長変換部材20で覆われないことで、発光素子10の発光(例えば青色光)が混色されずに外部に放出されることによる色度ムラを抑制できる。
【0025】
波長変換部材20には、蛍光体と無機材料を含むセラミック製の板材や蛍光体を含む樹脂製の板材が利用できる。蛍光体は均一に分散していてもよいし、一方に偏在していてもよい。蛍光体は、発光素子10の発する光で励起されて、発光素子10の発する光よりも長波長の蛍光を発する。
【0026】
ただ、波長変換部材20はこの構成に限らず、蛍光体を含む波長変換部を一面に配置した透光性を有するガラス板などを利用することもできる。蛍光体を含む波長変換部はガラス板上に均一の厚みを有することが好ましい。例えばガラス板に、蛍光体を印刷する。これにより、蛍光体の厚みが略均一になり、蛍光体を通過する光の光路長が一定となり、色度ムラやイエローリングの発生を抑制できる。また印刷に限らず、蛍光体をシート状に形成した蛍光体シートを、ガラス板に貼付する形態としてもよい。ガラスとして、例えば、ホウ珪酸ガラスや石英ガラスから選択することができる。
【0027】
波長変換部材20において蛍光体を含む波長変換部の厚みは、20μm以上500μm以下であることが好ましい。波長変換部材20の厚みが500μmより厚いと、放熱性が低下する傾向がある。放熱性の観点からは、波長変換部材20は薄ければ薄い程好ましいが、20μmよりも薄いと得たい発光の色度範囲が小さくなる傾向がある。
【0028】
波長変換部材20において蛍光体を含む波長変換部は単層でも多層でもよい。蛍光体等の波長変換層を多層で構成する場合には、発光素子の第二面12上に赤色蛍光体を含む第一波長変換層が位置し、第一波長変換層上に黄色蛍光体を含む第二波長変換層が位置することが好ましい。これにより、発光装置100の光取り出し効率を向上させることができる。
(蛍光体)
【0029】
蛍光体は、発光素子10からの発光で励起可能なものが使用される。例えば、青色発光素子又は紫外線発光素子で励起可能な蛍光体としては、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体;セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体;ユウロピウムで賦活されたシリケート系蛍光体;βサイアロン蛍光体、窒化物系蛍光体;マンガンで賦活されたフッ化物系蛍光体;硫化物系蛍光体、量子ドット蛍光体などが挙げられる。これらの蛍光体と、青色発光素子又は紫外線発光素子と組み合わせることにより、様々な色の発光装置(例えば白色系の発光装置)を製造することができる。
(第2透光性部材30)
【0030】
発光素子10の側面から波長変換部材20の側面に連なる隙間を形成すると共に、この隙間に第2透光性部材30を配置している。第2透光性部材30は、透光性を有する樹脂材で構成できる。第2透光性部材30は、透光性部材50と同様の材料が使用でき、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂が好適に利用される。
(接合部材32)
【0031】
第2透光性部材30は、発光素子10と波長変換部材20との間に設けられた、透光性の接合部材32を含むことができる。接合部材32は、発光素子10と波長変換部材20とを接合する接着材とすることができる。この接合部材32は、その一部を、発光素子10の側面と波長変換部材20の発光素子10側の主面とで形成される隅部に、延在させてもよい。また
図3に示すように、延在された接合部材32の断面形状は、波長変換部材20の底面周縁の方向に広がる逆三角形とすることもできる。なお接合部材32は、第2透光性部材30と別個に準備してもよい。例えば、第2透光性部材30を別途形成し、発光素子10の側面と光反射部材40の間に接着する。
【0032】
接合部材32には、透光性を有する樹脂が利用できる。特に接合部材32は、光反射部材40よりも発光素子10からの光の透過率を高くする。また接合部材32は、後述する波長変換部材20の第一面21と発光素子の第二面12とを接合できる樹脂、例えば、ジメチル系樹脂、フェニル系樹脂、ジフェニル系樹脂等が利用できる。
(傾斜面31)
【0033】
波長変換部材20の第一面21と発光素子の第二面12とを接合する際に、未硬化の接合部材32の一部は、波長変換部材20の第一面21と発光素子の第二面12との接合界面から溢れて、発光素子10の側面に至る。すなわち、接合部材32は、波長変換部材20の第一面21と発光素子の第二面12との接合界面から発光素子10の側面に連続して形成され、波長変換部材20の第一面21の周縁領域21bから発光素子の第一面11に向かって延長されて、
図3の断面図に示すように波長変換部材20の第一面21から発光素子の第二面12の間にかけて傾斜面31を形成する。
【0034】
ここで波長変換部材20の第一面21の周縁領域21bとは、発光素子の第二面12と対向する波長変換部材20の第一面21の内、周囲の部分を指す。波長変換部材20は発光素子10よりも一回り大きく形成しているため、波長変換部材20の第一面21の周縁には、平面視において発光素子の第二面12と重ならない周縁領域21bが形成される。この結果、例えば発光装置100の製造工程において未硬化の接合部材32で発光素子10と波長変換部材20を接合する際に、波長変換部材20の第一面21と発光素子の第二面12との接合界面から溢れ出た未硬化の接合部材32は、波長変換部材20の第一面21の周縁領域21bに押し出され、さらに発光素子10の側面を伝って下降し、波長変換部材20の第一面21から発光素子の第二面12に向かって傾斜する傾斜面31が形成される。
(光反射部材40)
【0035】
光反射部材40は、第2透光性部材30及び波長変換部材20を被覆するための部材である。光反射部材40を構成する樹脂材料には、シリコーン樹脂、ジメチルシリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの透光性樹脂が好適に利用できる。また光反射部材40は、発光素子10が発する光を効率良く反射させるため、反射率を高めた光反射性樹脂とすることが好ましい。例えば透光性樹脂に、光反射性物質を分散させたものが使用できる。光反射性物質としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、チタン酸カリウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライトなどが好適である。光反射性物質は、粒状、繊維状、薄板片状などが利用できるが、特に、繊維状のものは光反射部材の熱膨張率を低下させる効果も期待できるので好ましい。光反射部材40は、発光素子10からの光に対する反射率を70%以上とする。これにより、光反射部材40に達した光が反射されて、波長変換部材20の第二面22に向かうことにより、発光装置100の光取出し効率を高めることができる。
【0036】
この例では光反射部材40は、シリコーン樹脂と、TiO2、SiO2及びAl2O3から選択された少なくとも一種の光反射性物質を含んでいる。
【0037】
また光反射部材40の硬度は、支持体1の成形樹脂4の硬度よりも小さくすることが好ましい。このようにすることで、発光装置100の製造時において光反射部材40及び成形樹脂4を上方からダイシングソー等で切断して個片化する際に(詳細は
図12を参照して後述する。)、硬度の高い成形樹脂4は破断させつつ、硬度の低い光反射部材40はダイシングソーで切断方向に引き込まれて延伸させて、光反射部材40の端縁を成形樹脂4よりも突出させた形状とできる。光反射部材40の硬度は、例えば、JIS K 6301においてA80以下とし、成形樹脂4の硬度はA80以上とする。
【0038】
また光反射部材40の弾力性は、支持体1の成形樹脂4の弾力性よりも高いことが好ましい。これにより、部材の弾力性を利用して、支持体に配置させた金属端子の端面から光反射部材の一部を一層突出させやすくする効果が得られる。それぞれの部材の弾力性の調節には、予め弾力性が調節された材料を選択したり、樹脂に含まれる酸化物の含有量を調節したりすることを利用することができる。
【0039】
この光反射部材40は、波長変換部材20の側面を被覆するよう、この側面と接していることが好ましい。このようにすることで、発光領域と非発光領域とのコントラストが高い発光装置100とすることができる。また光反射部材40は、発光素子の第一面11と支持部材1との間に位置していることが好ましい。このようにすることで、発光素子10からの光が発光素子の第一面11と支持部材との間に位置する光反射部材40に反射されて支持部材に吸収されることを抑制することができる。
(透光性部材50)
【0040】
透光性部材50は、
図1、
図3~
図5等に示すように、波長変換部材20の上面に配置される。この透光性部材50は、平面視を円形状で断面視を半円球状のレンズ部51と、レンズ部51の外周側に延出する鍔部52とを備えている。また透光性部材50は、透光性を有する部材が利用できる。透光性部材50は、透光性樹脂、ガラス等が使用できる。特に、透光性樹脂が好ましく、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。特に、耐光性、耐熱性に優れるシリコーン樹脂が好適である。また透光性部材50には、粘度を調整する等の目的で、各種のフィラー等を含有させてもよい。
【0041】
また透光性部材50の側面を、
図3の断面図に示すように光反射部材40の側面とほぼ同一面とすることが好ましい。特にレンズ部を形成する構成においては、レンズ部のサイズを支持体1に対して大きくできるので、光の取り出し効率を高めることが可能となる。
[実施形態2]
【0042】
ただ、透光性部材50は必須でなく、透光性部材を備えない発光装置とすることもできる。また透光性部材50を設けつつも、レンズ部を有しない発光装置とすることもできる。一例として
図6に示す実施形態2に係る発光装置200は、レンズ部を形成しない透光性部材の例を示している。この透光性部材50Bは、支持体1の上面に実装された発光素子10及びその周囲の光反射部材40の全面を被覆している。また透光性部材50Bの表面は、レンズのような凸面や凹面とせず、平坦状に形成している。このような発光装置は、発光装置の外部に別のレンズを取り付けたり、用途に応じてレンズの有無や種類を選択したりすることで好適に利用できる。
(保護素子)
【0043】
また発光装置100は、発光素子10を過電流による破壊から保護する保護素子を備えてもよい。保護素子は、光反射部材40に埋設することができる。このような保護素子としては、例えばツェナーダイオードやコンデンサなどを用いることができる。片面電極の保護素子であれば、ワイヤレスでフェイスダウン実装できるので好ましい。
【0044】
なお上述した各部材は必ずしも分解可能なパーツの組み合わせとする態様に限られず、製造方法によっては、予め軟化させておいた材料を硬化させて構成する態様も包含する。すなわち、必ずしも図示されたパーツ毎に分解可能であることを要しない。
[実施形態1に係る発光装置100の製造方法]
【0045】
次に、実施形態1に係る発光装置の製造方法は、第一金属端子と、第二金属端子と、前記第一金属端子と前記第二金属端子の間並びに前記第一金属端子及び前記第二金属端子の周囲の一部に配置される絶縁性の成形樹脂と、を備え、上面と下面と側面とを有する支持体と、前記支持体の上面に配置される複数の発光素子と、を備える支持体の集合体を準備する工程と、少なくとも前記支持体の上面及び前記発光素子の側方に光反射部材を配置する工程と、前記光反射部材、及び、前記成形樹脂、前記第一金属端子又は前記第二金属端子、を切断することにより、前記支持体の側面における前記成形樹脂から露出される前記第一金属端子又は前記第二金属端子よりも、前記光反射部材の側面の方が、側方に突出させると共に、前記支持体の集合体から発光装置を個片化する工程と、を含む。
【0046】
実施形態1に係る発光装置100の製造方法を
図7~
図13を参照して説明する。まず、
図7に示すように支持体の集合体ASを準備する。支持体の集合体ASは、複数の第一金属端子2と第二金属端子3を交互に離間させて並べた状態で、これらの間と両端に絶縁性の成形樹脂4を充填して硬化させることで接合した板状の部材である。ここで、第一金属端子2と第二金属端子3を交互に離間させて並べた状態とするため、金属製のフレームが用いられる。所定形状のパターンに打ち抜かれた金属フレーム(この状態では第一金属端子2と第二金属端子3は接続されている)に成形樹脂4を充填し、切断することで、金属フレームが個片化されて第一金属端子2と第二金属端子3が形成される。また成形樹脂4の硬化後において、支持体の集合体ASの上面と下面は、ほぼ平坦状となるように形成されている。
【0047】
次に、
図8に示すように、支持体の集合体ASの上面において、第一金属端子2と第二金属端子3とが対向する成形樹脂4の上面に、これら第一金属端子2と第二金属端子3を跨ぐように発光素子10を、それぞれ実装する。ここでは各発光素子10をフリップチップ実装している。
【0048】
さらに
図9に示すように、各発光素子10の上面に波長変換部材20を固定する。波長変換部材20は発光素子10の上面よりも大きな下面を有する大きさの板状に予め形成されている。
【0049】
そして
図10に示すように、各発光素子10と波長変換部材20との接合部分の周囲、すなわち発光素子10の側面から波長変換部材20の下面側の周囲にかけて、第2透光性部材30を形成する。この第2透光性部材30は、別部材として設けてもよいし、上述の通り発光素子10と波長変換部材20を接合する透光性の接着材の余剰分を、発光素子10と波長変換部材20の接合界面の隅部に集めて硬化させることで、第2透光性部材30を形成してもよい。この場合は
図9の工程と
図10の工程が同時に行われる。例えば透光性の接着材を、発光素子10の上面と波長変換部材20との界面に塗布する。そして発光素子10の上面に波長変換部材20を載せると、はみ出た接着材が発光素子10の側面から波長変換部材20の周辺にかけて延在されて付着し、この状態で硬化させることでフィレット状をなす。
【0050】
その上で各発光素子10の側方に光反射部材40を配置する。ここでは
図11に示すように、光反射部材40としてシリコーン樹脂にフィラー(例えばTiO
2、SiO
2及びAl
2O
3から選択された少なくとも一種)を分散させた白色の樹脂材を、発光素子10同士の間に充填して硬化させる。これにより、発光素子10同士の間に光反射部材40を形成される。ここでは、樹脂の粘性と表面張力を利用して、各発光素子10の側面のほぼ全面が光反射部材40で覆われるように、各発光素子10の上面近傍まで樹脂を這い上がらせると共に、樹脂の中央は凹状に窪ませることで、樹脂量のばらつきを吸収している。いいかえると、樹脂の充填量が多すぎて発光素子10の発光面となる上面が光反射部材40で覆われることのないように、樹脂の中央部分の高さを発光素子10の上面よりも意図的に低くすることで調整している。また、樹脂の粘性と表面張力を利用して、波長変換部材20の上面近傍まで、這い上がらせている。
【0051】
そして、光反射部材40を覆う透光性部材50を配置する。ここでは
図12に示すように、各発光素子10の上面に、光反射性部材を構成する透光性の樹脂材を半球状に供給して硬化させる。これにより、発光装置100毎にレンズ部51が形成される。
【0052】
レンズ部51の成型には、圧縮成型が好ましい。ただ、この場合は支持体の裏面側に、レンズ部を構成する透光性の樹脂材料がしみ出すことが懸念された。従来の、支持体にセラミック基板を用いる場合には、一体物であるからこのような問題がなく、圧縮成型が問題なく利用できたところ、成形樹脂4と金属フレームで構成した支持体の場合は、成形樹脂4と金属フレームとの界面の隙間から、透光性部材の樹脂材料がしみ出すという新たな課題が生じた。そこで本実施形態においては、成形樹脂4に反射材を含めている。これにより、透光性部材50を成型する際の透光性樹脂材料が、支持体1の第一金属端子2や第二金属端子3と成形樹脂4との界面から支持体1の外部接続面側に漏れ出して、これらの第一金属端子2と第二金属端子3と外部との電気接続に干渉する事態を阻止して、信頼性を高めることができる。
【0053】
反射材の平均粒径は、0.01μm~10.0μm、好ましくは0.01μm~5.0μm、より好ましくは0.1μm~1.0μmとする。また反射材は、コート剤を含むことが好ましい。また第一金属端子2と第二金属端子3の表面にそれぞれ、金属製の反射膜を形成することも好ましい。金属製の反射膜は、例えばAg等が好適に利用できる。
【0054】
最後に、得られた支持体の集合体ASを、発光装置100毎に切断して個片化する。ここでは、
図13に示すように、レンズ部51が形成された透光性部材50の、凹部53をダイシングソーDSなどを用いて切断する。この例では、ダイシングソーDSで上方から発光装置同士の間を切断する。上述の通り、光反射部材40の硬度を、支持体1の成形樹脂4の硬度よりも小さくすることで、切断時に硬度の高い成形樹脂4を破断させつつも、硬度の低い光反射部材40はダイシングソーDSを降下させる進行方向に引き込まれるように下方に若干引き伸ばされる。この結果、個片化された発光装置100においては、下方に引き伸ばされた光反射部材40の端面が弾性力によって復元されて横方向に伸び、結果として光反射部材40の端縁が成形樹脂4よりも若干突出された状態となる。
【0055】
切り出して個片化した発光装置100は、矩形状や多角形状等、任意の形状とできる。ここでは
図3の斜視図に示すように、正方形状の個片ブロックとしている。また各個片ブロックは、それぞれ一の発光素子10を含むように切り出しているが、一の個片ブロックが複数の発光素子を含むように個片ブロックを切り出してもよい。
【0056】
ここで切断の際に、
図4の断面図に示すように、個片化される各発光装置100の、支持体1の側面における成形樹脂4から露出される第一金属端子2や第二金属端子3よりも、光反射部材40の側面の方を、側方に突出させている。これにより、切断時に形成される金属フレームのバリが個片化された発光装置100の側面から突出することを避け、レンズ部51が意図せず傷付く事態を回避できる。なお、このような成形樹脂4の形状は、ダイシングソーの厚さにより調整できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の実施形態に係る発光装置及びその製造方法は、例えば、LEDディスプレイ、液晶表示装置などのバックライト光源、照明用光源、ヘッドライト、信号機、照明式スイッチ、各種センサ及び各種インジケータ等に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
100、200…発光装置
1…支持体
2…第一金属端子
3…第二金属端子
4…成形樹脂
10…発光素子
11…発光素子の第一面
12…発光素子の第二面
20…波長変換部材
21…波長変換部材の第一面
21b…波長変換部材の第一面の周縁領域
22…波長変換部材の第二面
30…第2透光性部材
31…傾斜面
32…接合部材
40…光反射部材
50、50B…透光性部材
51…レンズ部
52…鍔部
53…凹部
AS…支持体の集合体
DS…ダイシングソー