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特許7376889URAT1阻害剤及びURAT1阻害用飲食品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】URAT1阻害剤及びURAT1阻害用飲食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/12 20060101AFI20231101BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20231101BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20231101BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20231101BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
A61K31/12
A61K31/352
A61K31/353
A23L33/105
A61P19/06
A61P43/00 105
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019163907
(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公開番号】P2021008445
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2019121270
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】豊田 優
(72)【発明者】
【氏名】高田 龍平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋史
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】平田 拓
(72)【発明者】
【氏名】紺谷 愛美
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101181287(CN,A)
【文献】国際公開第2009/093584(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/031961(WO,A1)
【文献】特開2018-043985(JP,A)
【文献】Phytomedicine,2018年,Vol.41,pp.54-61
【文献】Chinese Traditional and Herbal Drugs,2019年03月,Vol.50,pp.1157-1163
【文献】Food and Function,2018年,Vol.9,pp.5778-5790
【文献】Journal of Ethnopharmacology,2017年,Vol.203,pp.304-311
【文献】Journal of Traditional Medicines,2011年,Vol.28,pp.10-15
【文献】Biological and Pharmaceutical Bulletin,2007年,Vol.30,pp.1551-1556
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/50
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲニステイン、アピゲニン、ノビレチン、ヘスペレチン及びナリンゲニンカルコン並びにこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、URAT1阻害剤。
【請求項2】
尿酸排泄促進剤である、請求項1に記載のURAT1阻害剤。
【請求項3】
ゲニステイン、アピゲニン、ノビレチン、ヘスペレチン及びナリンゲニンカルコン並びにこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、URAT1阻害用飲食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、URAT1阻害剤及びURAT1阻害用飲食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高尿酸血症は、血中尿酸濃度が高い状態を指し、痛風発症の原因となっている。高尿酸血症の治療・予防を目的として、血中尿酸濃度を低下させる方法としては、尿酸合成を抑制する方法及び尿酸排泄を促進する方法が知られている。例えば、特許文献1には、アンペロプシンを含有する尿酸排泄促進用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-043985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、尿酸排泄を促進させるためには、腎臓に発現する尿酸トランスポーターであるURAT1を阻害することが有効であることが知られている。
【0005】
本発明者らはイソフラボノイド、フラボン、フラバノン及びカルコンが、URAT1阻害作用を有することを新たに見出した。本発明は、この新規な知見に基づくものであり、新規なURAT1阻害剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のURAT1阻害剤は、イソフラボノイド、フラボン、フラバノン及びカルコン並びにこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。本発明は、イソフラボノイド、フラボン、フラバノン及びカルコン並びにこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される少なくとも1種を含むため、URAT1阻害作用を有する。
【0007】
上記URAT1阻害剤は、尿酸排泄促進剤であってよい。
【0008】
本発明はまた、イソフラボノイド、フラボン、フラバノン及びカルコン並びにこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、URAT1阻害用飲食品組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、新規なURAT1阻害剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】
本実施形態のURAT1阻害剤は、イソフラボノイド、フラボン、フラバノン及びカルコン並びにこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。
【0012】
「URAT1」は、腎臓に発現するトランスポーターであり、RST、OAT4L、SLC22A12等の別名がつけられているトランスポーターをも包含する。「URAT1」は、管腔側で尿酸再吸収を担っている。ヒト由来のURAT1の典型的な塩基配列及びアミノ酸配列は、GenBank(AB071863)に開示されている。
【0013】
本実施形態のURAT1阻害剤は、URAT1阻害作用を有する。上述のとおり、URAT1は管腔側で尿酸再吸収を担っているため、URAT1を阻害することにより、尿酸排泄を促進することができる。この場合、本実施形態のURAT1阻害剤は、尿酸排泄促進剤ということもできる。
【0014】
また、URAT1を阻害することにより、血中の尿酸値を低下させることができ、尿酸結晶依存的な腎障害を予防することができ、又は、痛風発症リスクを低下させることもできる。血中尿酸値濃度が高い状態が持続すると痛風の原因となるが、血中尿酸値濃度を低く保つことによって、痛風を予防することができる。したがって本発明のURAT1阻害剤は、痛風発症及び再発の予防のために用いることができる。
【0015】
イソフラボノイド、フラボン、フラバノン及びカルコンは、薬学的に許容可能な塩としてURAT1阻害剤に含まれていてもよい。このような薬学的に許容可能な塩は、イソフラボノイド、フラボン、フラバノン又はカルコンと無毒な塩を形成する塩基とにより形成されるものである。具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0016】
本明細書において、イソフラボノイドは、イソフラボノイド骨格を有する化合物をいう。イソフラボノイドは、イソフラボノイド骨格を有していればよく、イソフラボノイド配糖体として存在するものであってもよい。イソフラボノイド配糖体としては、例えば、プエラリン、ダイジン等が挙げられる。イソフラボノイドは、例えば下記式(1)で表される化合物であってよい。一般式(1)中、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基(-OH)又はメトキシ基(-OCH)を示す。イソフラボノイドとしては、例えば、ゲニステイン(R12、R15及びR17:ヒドロキシル基、R10、R11、R13、R14、R16、R18及びR19:水素原子)、ダイゼイン(R12及びR17:ヒドロキシル基、R10、R11、R13、R14、R15、R16、R18及びR19:水素原子)等が挙げられる。
【0017】
【化1】
【0018】
イソフラボノイドは、天然物(植物、微生物等)に由来するものであっても、人為的に合成したものであってもよい。また、市販のものがあれば、それを使用してもよい。イソフラボノイドは、例えば、マメ科の植物の種子、葉、枝、根、花等から、水、熱水、エタノール、メタノール等で抽出して得られたものであってよい。
【0019】
本明細書において、フラボンは、フラボン骨格を有し、2位-3位間が二重結合であり、3位にヒドロキシル基を有さない化合物をいう。フラボン骨格とは、フラボンが有する炭素骨格を示す。フラボンは、例えば下記式(2)で表される化合物であってよい。一般式(2)中、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基(-OH)又はメトキシ基(-OCH)を示す。フラボンとしては、例えば、ルテオリン(R21、R22、R25及びR27:ヒドロキシル基、R20、R23、R24、R26及びR28:水素原子)、アピゲニン(R22、R25及びR27:ヒドロキシル基、R20、R21、R23、R24、R26及びR28:水素原子)、バイカレイン(R25、R26及びR27:ヒドロキシル基、R20、R21、R22、R23、R24及びR28:水素原子)、スクテラレイン(R22、R25、R26及びR27:ヒドロキシル基、R20、R21、R23、R24及びR28:水素原子)、トリセチン(R21、R22、R23、R25及びR27:ヒドロキシル基、R20、R24、R26及びR28:水素原子)、ジオスメチン(R21、R25及びR27:ヒドロキシル基、R22:メトキシ基、R20、R23、R24、R26及びR28:水素原子)、ノビレチン(R22、R23、R25、R26、R27及びR28:メトキシ基、R20、R21及びR24)等が挙げられる。フラボンは、好ましくはルテオリン、アピゲニン及びノビレチンである。
【0020】
【化2】
【0021】
フラボンは、天然物(植物、微生物等)に由来するものであっても、人為的に合成したものであってもよい。また、市販のものがあれば、それを使用してもよい。フラボンは、例えば、セリ科やアブラナ科等の食用植物から、水、熱水、エタノール、メタノール等で抽出して得られたものであってよい。
【0022】
本明細書において、フラバノンは、フラバノン骨格を有し、2位-3位間が単結合である化合物をいう。フラバノンは、3位がヒドロキシル基(-OH)であるフラバノノールであってもよい。また、フラバノンは、フラバノン配糖体として存在するものであってもよい。フラバノン配糖体としては、例えば、ヘスペリジン、ナリンギン、サクラニン、ポンシリン等が挙げられる。
【0023】
フラバノンは、例えば下記式(3)で表される化合物であってよい。一般式(3)中、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38及びR39は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基(-OH)又はメトキシ基(-OCH)を示す。フラバノンとしては、例えば、ブチン(R32、R33及びR38:ヒドロキシル基、R30、R31、R34、R35、R36、R37及びR39:水素原子)、エリオジクチオール(R31、R32、R36及びR38:ヒドロキシル基、R30、R33、R34、R35、R37及びR39:水素原子)、ヘスペレチン(R33、R36及びR38:ヒドロキシル基、R32:メトキシ基、R30、R31、R34、R35、R37及びR39:水素原子)、ホモエリオジクチオール(R32、R36及びR38:ヒドロキシル基、R31:メトキシ基、R30、R33、R34、R35、R37及びR39:水素原子)、イソサクラネチン(R36及びR38:ヒドロキシル基、R32:メトキシ基、R30、R31、R33、R34、R35、R37及びR39:水素原子)、ピノセムブリン(R36及びR38:ヒドロキシル基、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R37及びR39:水素原子)、サクラネチン(R32及びR36:ヒドロキシル基、R38:メトキシ基、R30、R31、R33、R34、R35、R37及びR39:水素原子)、ステルビン(R31、R32及びR36:ヒドロキシル基、R38:メトキシ基、R30、R33、R34、R35、R37及びR39:水素原子)等が挙げられる。フラバノンは、好ましくはナリンゲニン及びヘスペレチンである。
【0024】
【化3】
【0025】
フラバノンは、天然物(植物、微生物等)に由来するものであっても、人為的に合成したものであってもよい。また、市販のものがあれば、それを使用してもよい。フラバノンは、例えば、ミカン、グレープフルーツ、オレンジ、トマト等の植物の果実、葉、枝、根、花等から、水、熱水、エタノール、メタノール等で抽出して得られたものであってよい。
【0026】
本明細書において、カルコンは、カルコン骨格を有する化合物をいう。カルコンは、カルコン骨格を有していればよい。カルコンは、フロレチン等のジヒドロカルコンであってよく、好ましくは下記式(4)で表される化合物である。一般式(4)中、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48及びR49は、それぞれ独立に、水素原子又はヒドロキシル基(-OH)を示す。カルコンとしては、例えば、ナリンゲニンカルコン(R42、R45、R47及びR49:ヒドロキシル基、R40、R41、R43、R44、R46及びR48:水素原子)等が挙げられる。
【0027】
【化4】
【0028】
カルコンは、天然物(植物、微生物等)に由来するものであっても、人為的に合成したものであってもよい。また、市販のものがあれば、それを使用してもよい。カルコンは、例えば、明日葉、リンゴ等の植物の果実、葉、枝、根、花等から、水、熱水、エタノール、メタノール等で抽出して得られたものであってよい。
【0029】
本実施形態のURAT1阻害剤は、固体(例えば、粉末)、液体(水溶性又は脂溶性の溶液又は懸濁液)、ペースト等のいずれの形状でもよく、また、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、軟膏剤、硬膏剤等のいずれの剤形をとってもよい。また、放出制御製剤の形態をとることもできる。また、イソフラボノイド、フラボン、フラバノン若しくはカルコン又はその薬学的に許容可能な塩のみからなっていてもよい。
【0030】
上述の各種製剤は、イソフラボノイド、フラボン、フラバノン若しくはカルコン又はこれらの薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容される添加剤(賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤等)と、を混和することによって調製することができる。
【0031】
例えば、賦形剤としては、ラクトース、スクロース、デンプン、デキストリン等が挙げられる。結合剤としては、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が挙げられる。崩壊剤としては、結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン等が挙げられる。乳化剤又は界面活性剤としては、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。基剤としては、セトステアリルアルコール、ラノリン、ポリエチレングリコール、米糠油、魚油(DHA、EPA等)、オリーブ油等が挙げられる。溶解補助剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、Tween80等が挙げられる。懸濁化剤としては、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0032】
本実施形態のURAT1阻害剤は、医薬品、医薬部外品、飲食品組成物、飼料、飼料添加物等の製品の成分として使用することができる。飲食品組成物には、飲食品(飲料、食品)、飲食品添加物、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品等が含まれる。飲料としては、例えば、水、清涼飲料水、果汁飲料、乳飲料、アルコール飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。食品としては、例えば、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醤油、味噌、菓子類等が挙げられる。
【0033】
本実施形態のURAT1阻害剤からなる、又はURAT1阻害剤を含む上記製品は、血中尿酸値低下用、尿酸排泄促進用、URAT1阻害用であってよい。上記製品には、「血中尿酸値を改善する」、「血中尿酸値を制御する」、「血中尿酸値の上昇を抑制する」、「血中尿酸値を低下させる」、「血中尿酸値を適正化する」、「食事のプリン体が気になる方へ」、「お酒やおいしいものが好きな方へ」等の表示が付されていてもよい。
【0034】
本実施形態のURAT1阻害剤を使用した上記製品(医薬品、医薬部外品、飲食品組成物、飼料、飼料添加物等)の製造方法は特に制限されず、適宜公知の方法に従うことができる。例えば、上記製品の製造工程における中間製品又は最終製品に、本実施形態のURAT1阻害剤を混合等して、URAT1阻害用に用いられる上記製品を得ることができる。
【0035】
上述のとおり、イソフラボノイド、フラボン、フラバノン及びカルコン並びにこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含むURAT1阻害剤は、飲食品、又は飲食品添加物の成分として使用することが可能である。よって、本発明の一実施形態として、イソフラボノイド、フラボン、フラバノン及びカルコン並びにこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含む、URAT1阻害用飲食品組成物が提供される。
【0036】
本実施形態のURAT1阻害剤は、ヒトに摂取されても、非ヒト哺乳動物に摂取されてもよい。本実施形態のURAT1阻害剤の投与量(摂取量)は、有効成分として、成人1日あたり、体重1kgあたり例えば0.1mg~1gであってよく、好ましくは1~500mgであり、より好ましくは、5~200mgである。投与量は、個体の状態、年齢等に応じて適宜決定することができる。
【0037】
本実施形態のURAT1阻害剤は、経口投与(摂取)されてもよく、非経口投与されてもよいが、経口投与されることが好ましい。URAT1阻害剤は、1日あたりの有効成分量が上記範囲内にあれば、1日1回投与されてもよく、1日複数回に分けて投与されてもよい。
【実施例
【0038】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0039】
[試験例1:ヒトURAT1発現細胞を用いた尿酸輸送阻害試験]
(1)試験サンプル溶液の調製
イソフラボノイドとしてゲニステイン、フラボンとしてルテオリン、アピゲニン及びノビレチン、フラバノンとしてナリンゲニン及びヘスペレチン、カルコンとしてナリンゲニンカルコン並びに陽性対照としてURAT1阻害薬として既知であるベンズブロマロン(benzbromarone)(Wako社製)をDMSOに溶解し、目的濃度の100~1000倍となるようにDMSOを用いて希釈した。14Cで標識された尿酸([8-14C]―Uric Acid:ARC0513、American Radiolabeled Chemicals,Inc製)は、125mMグルコン酸ナトリウム、4.8mMグルコン酸カリウム、1.2mM硫酸マグネシウム、1.3mMグルコン酸カルシウム、1.2mMリン酸2水素カリウム、25mMヘペス及び5mMグルコース(pH7.4)をそれぞれ最終濃度として含有し、Clを含まないHanks平衡塩溶液(以下、HBSS Cl(-)とする)を用いて希釈し、最終濃度5μMとなるように調製した。この14C標識尿酸溶液を用いて試験サンプルを100~1000倍希釈し、目的濃度となるように調製したものをサンプル溶液とした。なお、試験サンプルを含まない0.1~1%DMSO溶液をコントロールとした。
【0040】
(2)ヒトURAT1一過性発現細胞の調製
ヒト胎児腎細胞由来293A細胞(Invitrogen社製)3.5×10cells/mLを10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地(ナカライテスク社製)に懸濁し、12ウェルプレートに1mL/well播種したのち、37℃の5%COインキュベータ内で1日間培養した。滅菌MilliQにより1mg/mLに調製したポリエチレンイミン“MAX”(Polysciences社製)を1ウェルあたり3.75μLとり、50μLのOptiMEM(Invitrogen社製)で希釈したのち室温で5分間静置した(以下、「PEI-OptiMEM」とする。)。1ウェルあたり0.75μg(例えば0.2μg/μLに調製したプラスミド溶液を3.75μL)のヒトURAT1発現ベクター及びヒトURAT1の導入されていないコントロールベクターを50μLのOptiMEMで希釈し、室温で5分間静置した(以下、「Plasmid-OptiMEM」とする。)。Plasmid-OptiMEM及びPEI-OptiMEMを混合し、室温にて20分以上放置したのち、1ウェルあたり107.5μLずつ293A細胞に添加した。293A細胞は37℃の5%COインキュベータ内で2日間培養し、尿酸取り込み阻害活性試験に供した。
【0041】
(3)尿酸取り込み阻害活性試験
以下の試験は37℃に加温したホットプレート上にて行った。(2)で用意した細胞を含む各ウェルから培地を吸引除去した後、HBSS Cl(-)を用いて各ウェルを洗ったのち、500μLのHBSS Cl(-)で置換し、37℃の5%COインキュベータ内で約10分間プレインキュベーションした。HBSS Cl(-)を吸引除去した後、予め37℃に加温した(1)のサンプル溶液を500μL添加し、20秒間取り込み反応を行った。反応終了後、サンプル溶液を直ちに吸引除去し、氷冷したHBSS Cl(-)で洗浄した。細胞を1ウェルあたり500μLの0.2N水酸化ナトリウム水溶液を用いて氷上にて溶解し、100μLの1N塩酸で中和した後、液体シンチレーション計測用バイアル(東京硝子社製)に400μL移した。5mLのクリアゾルII(nacalai社製)と混合したのち、液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer社製)にて放射活性(壊変数)を測定した。また、細胞溶解液20μLを用いて、PIERCE BCA Protein assay kit(サーモフィッシャー社製)によりタンパク質濃度を定量した。試験化合物存在下におけるURAT1特異的尿酸輸送活性率は、測定された放射活性(壊変数)の値を用いて、下記のように算出した。
URAT1特異的尿酸輸送活性率(%)=[(A-C)/(B-C)]×100
A:ヒトURAT1一過性発現細胞にサンプル溶液を添加した場合の輸送活性
B:ヒトURAT1一過性発現細胞に0.1~1%DMSO溶液を添加した場合の輸送活性
C:コントロールベクターを導入した細胞に0.1~1%DMSO溶液を添加した場合の輸送活性
ここで、A、B及びCの各輸送活性は、下記のように算出した。
A、B及びCの各輸送活性[μL/mg/min]=X/(Y×Z)
X:600μL細胞溶解中和液における細胞に取り込まれた14Cで標識された尿酸の壊変数[DPM/600μL/min]
Y:細胞中のタンパク量[mg/600μL]
Z:取り込み実験に使用した反応混液の単位量当たりにおける、14Cで標識された尿酸の壊変数[DPM/1μL]
【0042】
上述の検討を通じて得られたゲニステイン、ルテオリン、アピゲニン、ノビレチン、ナリンゲニン、ヘスペレチン及びナリンゲニンカルコンの存在下におけるURAT1特異的尿酸輸送活性率及び、URAT1による尿酸輸送活性に対する各試験化合物のIC50値を表1に示す。なお、IC50値は、URAT1活性を50%阻害するときの各試験化合物の反応混液中濃度を示す。IC50値は各試験化合物を各濃度で添加した際のURAT1特異的尿酸輸送活性率をプロットし、最小二乗法により阻害曲線を描くことによって算出した。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示すとおり、イソフラボノイド、フラボン、フラバノン及びカルコンはURAT1阻害作用を有していた。