(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】修飾金属ナノ粒子及び医薬組成物
(51)【国際特許分類】
B22F 1/102 20220101AFI20231101BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231101BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20231101BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231101BHJP
A61K 33/38 20060101ALI20231101BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20231101BHJP
A61K 41/00 20200101ALI20231101BHJP
A61K 49/12 20060101ALI20231101BHJP
A61K 49/18 20060101ALI20231101BHJP
B82Y 5/00 20110101ALI20231101BHJP
【FI】
B22F1/102
A61K47/10
A61K9/14
A61P35/00
A61K33/38
A61K33/24
A61K41/00
A61K49/12
A61K49/18
B82Y5/00
(21)【出願番号】P 2018213201
(22)【出願日】2018-11-13
【審査請求日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2017218620
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月15日高分子学会予稿集66巻1号、2K09、公益社団法人 高分子学会発行にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月30日幕張メッセにおいて開催された第66回高分子学会年次大会で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年7月4日 SCS Fall Meeting 2017 Oral Presentation Abstracts, Pl-024,Swiss Chemical Society(2017年スイス化学会秋季大会口頭発表予稿集、Pl-024、スイス化学会)にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年8月8日国立大学法人お茶の水女子大学において開催された国際ワークショップ Knots and Polymers:Aspects of topological entanglement in DNA,proteins and graph-shaped polymers(結び目と高分子:DNA、タンパク質およびグラフ型ポリマーにおける位相的絡み合いの様相)で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年8月22日 SCS Fall Meeting 2017(2017年スイス化学会秋季大会)にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】キンサート ホセ エンリコ
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/082561(WO,A1)
【文献】特開2007-051319(JP,A)
【文献】特表2016-527204(JP,A)
【文献】国際公開第2011/071167(WO,A1)
【文献】特開2011-026665(JP,A)
【文献】特表2013-504692(JP,A)
【文献】特開2014-189821(JP,A)
【文献】特表2012-532847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-8/00
B22F 10/00-12/90
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 35/00
A61K 31/33-33/44
A61K 41/00-45/08
A61K 49/00-49/22
B82Y 5/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ナノ粒子と、前記金属ナノ粒子を修飾する環状ポリエーテルと、を含み、
前記環状ポリエーテルが、数平均分子量が2000以上の環状ポリアルキレンオキシドである、修飾金属ナノ粒子。
【請求項2】
前記金属ナノ粒子の平均粒径が1~1000nmである、請求項1に記載の修飾金属ナノ粒子。
【請求項3】
前記金属ナノ粒子が、金、銀、金属酸化物又はこれらの複合体から構成されている、請求項1
又は2に記載の修飾金属ナノ粒子。
【請求項4】
前記金属ナノ粒子が、金、銀、酸化鉄、酸化チタン又はこれらの複合体から構成されている、請求項1~
3のいずれか一項に記載の修飾金属ナノ粒子。
【請求項5】
前記金属ナノ粒子が金ナノ粒子又は銀ナノ粒子である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の修飾金属ナノ粒子。
【請求項6】
前記金属ナノ粒子の平均粒径が3~1000nmである、請求項1~
5のいずれか一項に記載の修飾金属ナノ粒子。
【請求項7】
前記環状ポリエーテルが環状ポリエチレンオキシドである、請求項1~
6のいずれか一項に記載の修飾金属ナノ粒子。
【請求項8】
前記環状ポリエーテルの数平均分子量が2000~20000である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の修飾金属ナノ粒子。
【請求項9】
前記金属ナノ粒子が金ナノ粒子であり、
前記金ナノ粒子に対する前記環状ポリエーテルの質量比が、50~1500である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の修飾金属ナノ粒子。
【請求項10】
前記金属ナノ粒子が銀ナノ粒子であり、
前記銀ナノ粒子に対する前記環状ポリエーテルの質量比が、0.1~50である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の修飾金属ナノ粒子。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の修飾金属ナノ粒子を含む、医薬組成物。
【請求項12】
放射線増感剤、フォトサーマル治療剤又はMRI造影剤である、請求項
11に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修飾金属ナノ粒子及びそれを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属ナノ粒子は、バイオセンサー、細胞内プローブ、薬物送達物質、光学造影物質等の用途に応用されている。例えば、特許文献1には、放射線治療に用いる医薬組成物として、金属ナノ粒子を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の金属ナノ粒子は、耐塩性が必ずしも十分ではなく、生体内で変質又は劣化して十分な効果が得られなくなるおそれがあった。
【0005】
本発明は、耐塩性に優れ、医薬組成物として好適に利用可能な修飾金属ナノ粒子を提供することを目的とする。また、本発明は、上記修飾金属ナノ粒子を含む医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、金属ナノ粒子と、上記金属ナノ粒子を修飾する環状ポリエーテルと、を含む、修飾金属ナノ粒子に関する。
【0007】
このような修飾金属ナノ粒子は、耐塩性に優れ、医薬組成物として好適に利用できる。また、上記修飾金属ナノ粒子は、耐熱性にも優れるため、例えばフォトサーマル効果を利用した治療剤等の耐熱性が求められる用途に特に好適に用いることができる。
【0008】
一態様において、上記金属ナノ粒子は金ナノ粒子又は銀ナノ粒子であってよい。
【0009】
一態様において、上記金属ナノ粒子の平均粒径は1~1000nmであってよい。
【0010】
一態様において、上記環状ポリエーテルが環状ポリエチレンオキシドであってよい。
【0011】
一態様において、上記環状ポリエーテルの数平均分子量は500~20000であってよい。
【0012】
一態様において、上記金属ナノ粒子は金ナノ粒子であってよく、上記金ナノ粒子に対する上記環状ポリエーテルの質量比は50~1500であってよい。
【0013】
一態様において、上記金属ナノ粒子が銀ナノ粒子であってよく、上記銀ナノ粒子に対する上記環状ポリエーテルの質量比は0.1~50であってよい。
【0014】
本発明の他の一側面は、上記修飾金属ナノ粒子を含む、医薬組成物に関する。
【0015】
一態様に係る医薬組成物は、放射線増感剤、フォトサーマル治療剤又はMRI造影剤であってよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐塩性に優れ、医薬組成物として好適に利用可能な修飾金属ナノ粒子が提供される。また、本発明によれば、上記修飾金属ナノ粒子を含む医薬組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】修飾銀ナノ粒子の耐塩性評価試験の結果を示す図である。
【
図2】実施例C-1~C-6の修飾金ナノ粒子の耐塩性評価試験の結果を示す図である。
【
図3】実施例D-1~D-3の修飾金ナノ粒子の耐塩性評価試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態に係る修飾金属ナノ粒子は、金属ナノ粒子と、金属ナノ粒子を修飾する環状ポリエーテルとを含む。本実施形態に係る修飾金属ナノ粒子は、環状ポリエーテルで修飾された金属ナノ粒子ということもできる。
【0020】
本実施形態に係る修飾金属ナノ粒子は、高い耐塩性を有するため、生体内での安定性に優れ、医薬組成物として好適に利用することができる。また、本実施形態に係る修飾金属ナノ粒子は、耐熱性にも優れるため、例えばフォトサーマル効果を利用した治療剤(フォトサーマル治療剤)等の耐熱性が求められる用途に特に好適に用いることができる。
【0021】
ところで、近年、がん細胞が正常細胞に比べて熱に弱く、41℃以上で壊死し始めることが確認されている。本実施形態に係る修飾金属ナノ粒子(特に、修飾金(Au)ナノ粒子)は、41℃以上の温度に対する耐熱性を有するため、がん細胞及びそれに起因する腫瘍の除去を目的としたフォトサーマル治療剤として、好適に用いることができる。
【0022】
金属ナノ粒子は、ナノサイズ(1~1000nm)の金属粒子である。金属ナノ粒子は、一種の金属で構成されていてよく、二種以上の金属を含んでいてもよい。金属ナノ粒子は、例えば、金、銀、酸化鉄、酸化チタン又はこれらの複合体から構成されていてよい。上述の効果が顕著に得られる観点から、金属ナノ粒子は、金ナノ粒子又は銀ナノ粒子であることが好ましく、金ナノ粒子であることがより好ましい。
【0023】
例えば、金ナノ粒子は、金を主成分とするナノ粒子を示し、金で構成されたナノ粒子であってよく、金と他の金属とを含むナノ粒子であってもよい。ここで他の金属は、例えば、銀、酸化鉄、酸化チタン等であってよい。金ナノ粒子における金の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、99質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0024】
また、銀ナノ粒子は、銀を主成分とするナノ粒子を示し、銀で構成されたナノ粒子であってよく、銀と他の金属とを含むナノ粒子であってもよい。ここで他の金属は、例えば、金、酸化鉄、酸化チタン等であってよい。銀ナノ粒子における銀の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、99質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0025】
金属ナノ粒子の平均粒径は、例えば1nm以上であってよく、好ましくは3nm以上、より好ましくは10nm以上であり、14nm以上であってもよい。また、金属ナノ粒子の平均粒径は、例えば1000nm以下であってよく、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは100nm以下であり、52nm以下であってもよい。金属ナノ粒子の平均粒径が上記範囲であると、修飾金属ナノ粒子を医療組成物としてより好適に利用することができる。なお、本明細書中、金属ナノ粒子の平均粒径は、光散乱法で測定される値を示す。
【0026】
環状ポリエーテルとしては、環状ポリアルキレンオキシドが好ましい。環状ポリアルキレンオキシドとしては、例えば、環状ポリエチレンオキシド、環状プロピレンレンオキシド、環状ポリエチレンオキシド-プロピレンレンオキシドブロック共重合体等が挙げられ、こられのうち上述の効果がより顕著に奏される観点から、環状ポリエチレンオキシドが好ましい。
【0027】
環状ポリエーテルは分子量分布を有していてよい。環状ポリエーテルの数平均分子量Mnは、例えば500以上であってよく、好ましくは1000以上、より好ましくは2000以上である。また、環状ポリエーテルの数平均分子量Mnは、例えば20000以下であってよく、好ましくは10000以下、より好ましくは6000以下である。
【0028】
環状ポリエーテルの分子量分布(数平均分子量に対する重量平均分子量の比、Mw/Mn)は、例えば2以下であってよく、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.1以下である。分子量分布の下限は1であり、本実施形態において環状ポリエーテル分子量分布は1であってもよい。
【0029】
本実施形態に係る修飾金属ナノ粒子において、金属ナノ粒子に対する環状ポリエーテルの質量比(環状ポリエーテル/金属ナノ粒子)は特に限定されず、金属ナノ粒子の種類及び要求される特性に応じて適宜変更してよい。
【0030】
好適な一形態において、金属ナノ粒子は金ナノ粒子である。このとき、金ナノ粒子に対する環状ポリエーテルの質量比(環状ポリエーテル/金ナノ粒子)は、例えば50以上であってよく、好ましくは100以上、より好ましくは150以上である。また、上記質量比は、例えば1500以下であってよく、好ましくは1000以下、より好ましくは700以下である。このような質量比であると上述の効果がより顕著に奏される。金属ナノ粒子が金ナノ粒子であるとき、金ナノ粒子の平均粒径は、耐塩性がより顕著に得られる観点から、好ましくは50nm以下であり、より好ましくは40nm以下であり、更に好ましくは30nm以下である。
【0031】
好適な他の一形態において、金属ナノ粒子は銀ナノ粒子である。このとき、銀ナノ粒子に対する環状ポリエーテルの質量比(環状ポリエーテル/銀ナノ粒子)は、例えば0.1以上であってよく、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.9以上である。また、上記質量比は、例えば50以下であってよく、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。このような質量比であると、上述の効果がより顕著に奏される。
【0032】
本実施形態に係る修飾金属ナノ粒子は、分散媒中に分散されて分散液を形成していてよい。分散媒は、修飾金属ナノ粒子を分散可能な分散媒であればよく、例えば、水、生理食塩水、アルコール等であってよい。
【0033】
修飾金属ナノ粒子の製造方法は特に限定されない。修飾金属ナノ粒子の製造方法としては、例えば、以下の製造方法A及びBが挙げられる。
【0034】
(製造方法A)
製造方法Aは、反応液中で金属化合物を還元して、金属ナノ粒子が分散した第一の分散液を得る第一の工程と、前記第一の分散液に環状ポリエーテルを添加して、修飾金属ナノ粒子が分散した第二の分散液を得る第二の工程と、を備える方法である。
【0035】
第一の工程では、金属ナノ粒子を構成する金属の供給源となる金属化合物を、反応液中で還元する。金属化合物は、還元により金属ナノ粒子を形成できる化合物であれば特に限定されない。例えば、金属ナノ粒子として金ナノ粒子を製造する場合、金化合物としては四塩化金酸等を好適に用いることができる。また、金属ナノ粒子として銀ナノ粒子を製造する場合、銀化合物としては硝酸銀、塩化銀等を好適に用いることができる。
【0036】
反応液の溶媒は、金属化合物の還元反応を阻害しない溶媒であれば特に限定されず、例えば、水、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、トルエン等であってよく、水が好ましい。
【0037】
還元剤は、金属化合物を還元できる還元剤であれば特に限定されない。還元剤としては、例えば、マルトース、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、グルコース等が挙げられる。
【0038】
第一の工程では、還元反応により生じた金属がナノ粒子を形成するように、分散剤が反応液に添加されていてよい。分散剤としては、例えば、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、クエン酸ナトリウム、アルカンチオール等が挙げられる。
【0039】
第二の工程では、第一の分散液に環状ポリエーテルを添加することで、金属ナノ粒子を環状ポリエーテルが修飾し、修飾金属ナノ粒子が形成される。添加方法は特に限定されず、所定量を一度に反応液に加えてよく、少量ずつ添加してもよい。
【0040】
(製造方法B)
製造方法Bは、環状ポリエーテルを含む反応液中で金属化合物を還元して、修飾金属ナノ粒子が分散した分散液を得る工程を備える方法である。
【0041】
この製造方法では、金属ナノ粒子を構成する金属の供給源となる金属化合物を、環状ポリエーテルを含む反応液中で還元することで、1段階で修飾金属ナノ粒子が形成される。
【0042】
製造方法Bで用いられる金属化合物、溶媒及び還元剤としては、製造方法Aで用いられる金属化合物、溶媒及び還元剤と同じ化合物が例示できる。
【0043】
製造方法Bでは、製造方法Aで例示した分散剤が、反応液に添加されていてもよい。
【0044】
本実施形態に係る修飾金属ナノ粒子は、医薬組成物として好適に用いることができる。修飾金属ナノ粒子を含む医薬組成物としては、例えば、放射線増感剤、フォトサーマル治療剤、MRI造影剤等が挙げられる。また、修飾金属ナノ粒子は、上記以外に、触媒、センサー、導電材料等の用途にも用いることができる。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0047】
<環状ポリエーテルの合成>
(合成例1)
THF(75mL)及びn-ヘプタン(25mL)の混合溶媒にKOH(3.3g)を分散させた分散液に対し、両末端にヒドロキシ基を有する直鎖状ポリエーテル(数平均分子量Mn:2000Da)(5.0g)及びトシルクロリド(0.64g)の乾燥THF溶液(100mL)をゆっくりと滴下し、40℃で6日間反応することにより、合成例1の環状ポリエーテル(PEO(1))を得た。得られた環状ポリエーテルのサイズ排除クロマトグラフィーより求めたピークトップ分子量Mpは2000Da、Mw/Mnは1.10であった。
【0048】
(合成例2)
THF(75mL)及びn-ヘプタン(25mL)の混合溶媒にKOH(3.3g)を分散させた分散液に対し、両末端にヒドロキシ基を有する直鎖状ポリエーテル(数平均分子量Mn:3000Da)(2.5g)及びトシルクロリド(0.24g)の乾燥THF溶液(50mL)をゆっくりと滴下し、40℃で6日間反応することにより、合成例2の環状ポリエーテル(PEO(2))を得た。得られた環状ポリエーテルのサイズ排除クロマトグラフィーより求めたピークトップ分子量Mpは3200Da、Mw/Mnは1.06であった。
【0049】
(合成例3)
THF(75mL)及びn-ヘプタン(25mL)の混合溶媒にKOH(3.3g)を分散させた分散液に対し、両末端にヒドロキシ基を有する直鎖状ポリエーテル(数平均分子量Mn:10000Da)(5.0g)及びトシルクロリド(0.21g)の乾燥THF溶液(100mL)をゆっくりと滴下し、40℃で6日間反応することにより、合成例3の環状ポリエーテル(PEO(3))を得た。得られた環状ポリエーテルのサイズ排除クロマトグラフィーより求めたピークトップ分子量Mpは10500Da、Mw/Mnは1.03であった。
【0050】
<修飾金属ナノ粒子の調製>
(実施例A-1:修飾銀ナノ粒子(A-1)の調製)
合成例1で合成したPEO(1)を用いて、修飾銀ナノ粒子(A-1)を調製した。
具体的には、PEO(1)(50mg)、硝酸銀(17.4mg)、アンモニア水溶液(34μL)、NaOH(40mg)、及びマルトース一水和物(360mg)を水(100mL)中、25℃で12時間反応させることにより、修飾銀ナノ粒子(A-1)を得た。修飾銀ナノ粒子(A-1)の平均粒径は45nmであった。
【0051】
(実施例A-2:修飾銀ナノ粒子(A-2)の調製)
合成例2で合成したPEO(2)を用いて、修飾銀ナノ粒子(A-2)を調製した。
具体的には、PEO(2)(50mg)、硝酸銀(17.4mg)、アンモニア水溶液(34μL)、NaOH(40mg)、及びマルトース一水和物(360mg)を水(100mL)中、25℃で12時間反応させることにより、修飾銀ナノ粒子(A-2)を得た。修飾銀ナノ粒子(A-2)の平均粒径は31nmであった。
【0052】
(実施例A-3:修飾銀ナノ粒子(A-3)の調製)
合成例3で合成したPEO(3)を用いて、修飾銀ナノ粒子(A-3)を調製した。
具体的には、PEO(3)(50mg)、硝酸銀(17.4mg)、アンモニア水溶液(34μL)、NaOH(40mg)、及びマルトース一水和物(360mg)を水(100mL)中、25℃で12時間反応させることにより、修飾銀ナノ粒子(A-3)を得た。修飾銀ナノ粒子(A-3)の平均粒径は35nmであった。
【0053】
(比較例X-1:修飾銀ナノ粒子(X-1)の調製)
直鎖のポリエチレンオキシドを用いて、修飾銀ナノ粒子(X-1)を調製した。
具体的には、数平均分子量Mnが約4000Daの直鎖ポリエチレンオキシド(50mg)、硝酸銀(17.4mg)、アンモニア水溶液(34μL)、NaOH(40mg)、及びマルトース一水和物(360mg)を、水(100mL)中、25℃で12時間反応させることにより、修飾銀ナノ粒子(X-1)を得た。修飾銀ナノ粒子(X-1)の平均粒径は36nmであった。
【0054】
(比較例X-3:修飾銀ナノ粒子(X-2)の調製)
直鎖のポリエチレンオキシドジメチルエーテルを用いて、修飾銀ナノ粒子(X-2)を調製した。
具体的には、数平均分子量Mnは約4000Daの直鎖ポリエチレンオキシドジメチルエーテル(50mg)、硝酸銀(17.4mg)、アンモニア水溶液(34μL)、NaOH(40mg)、マルトース一水和物(360mg)を、水(100mL)中、25℃で12時間反応させることにより、修飾銀ナノ粒子(X-2)を得た。修飾銀ナノ粒子(X-2)の平均粒径は44nmであった。
【0055】
実施例A-2、比較例X-1及び比較例X-2で得られた修飾銀ナノ粒子について、以下の方法で耐塩性を評価した。
【0056】
(耐塩性評価試験)
修飾銀ナノ粒子を、種々の濃度のNaCl溶液(25mM、37.5mM、44mM、50mM、及び75mM)中に加えて試験サンプルを作成した。3時間経過後及び1週間経過後の試験サンプルについて、紫外可視分光法によって最大吸収波長を測定した。最大吸収波長における吸収の減少率(初期の吸収を100%としたときの吸収)を算出し、グラフ化した。結果を
図1に示す。
【0057】
(実施例B-1:修飾金ナノ粒子(B-1)の調製)
合成例1で合成したPEO(1)を用いて、修飾金ナノ粒子(B-1)を調製した。
具体的には、HAuCl4水溶液(1.0mM、40mL)とクエン酸ナトリウム水溶液(4.0mM、39mL)とを混合し、10分間還流させて、金ナノ粒子を合成した。次いで、金ナノ粒子溶液(400μL)に対し、水(100μL)、PEO(1)(12.5mg)を添加し、25℃で10分反応させることにより、修飾金ナノ粒子(B-1)を得た。修飾金ナノ粒子(B-1)の平均粒径は14nmであった。
【0058】
(実施例B-2:修飾金ナノ粒子(B-2)の調製)
合成例2で合成したPEO(2)を用いて、修飾金ナノ粒子(B-2)を調製した。
具体的には、HAuCl4水溶液(1.0mM、40mL)とクエン酸ナトリウム水溶液(4.0mM,39mL)とを混合し、10分間還流させて、金ナノ粒子を合成した。次いで、金ナノ粒子溶液(400μL)に対し、水(100μL)、PEO(2)(12.5mg)を添加し、25℃で10分反応させることにより、修飾金ナノ粒子(B-2)を得た。修飾金ナノ粒子(B-3)の平均粒径は14nmであった。
【0059】
(実施例B-3:修飾金ナノ粒子(B-3)の調製)
合成例3で合成したPEO(3)を用いて、修飾金ナノ粒子(B-3)を調製した。
具体的には、HAuCl4水溶液(1.0mM、40mL)とクエン酸ナトリウム水溶液(4.0mM,39mL)とを混合し、10分間還流させて、金ナノ粒子を合成した。次いで、金ナノ粒子溶液(400μL)に対し、水(100μL)、PEO(3)(12.5mg)を添加し、25℃で10分反応させることにより、修飾金ナノ粒子(B-3)を得た。修飾金ナノ粒子(B-4)の平均粒径は14nmであった。
【0060】
(比較例Y-1:修飾金ナノ粒子(Y-1)の調製)
直鎖のポリエチレンオキシドを用いて、修飾金ナノ粒子(Y-1)を調製した。
具体的には、HAuCl4水溶液(1.0mM、40mL)とクエン酸ナトリウム水溶液(4.0mM,39mL)とを混合し、10分間還流させて、金ナノ粒子を合成した。次いで、金ナノ粒子溶液(400μL)に対し、水(100μL)、数平均分子量Mnが2000Daの直鎖ポリエチレンオキシド(12.5mg)を添加し、25℃で10分反応させることにより、修飾金ナノ粒子(Y-1)を得た。修飾金ナノ粒子(Y-1)の平均粒径は14nmであった。
【0061】
(比較例Y-2:修飾金ナノ粒子(Y-2)の調製)
直鎖のポリエチレンオキシドを用いて、修飾金ナノ粒子(Y-2)を調製した。
具体的には、HAuCl4水溶液(1.0mM、40mL)とクエン酸ナトリウム水溶液(4.0mM,39mL)とを混合し、10分間還流させて、金ナノ粒子を合成した。次いで、金ナノ粒子溶液(400μL)に対し、水(100μL)、数平均分子量Mnが4000Daの直鎖ポリエチレンオキシド(12.5mg)を添加し、25℃で10分反応させることにより、修飾金ナノ粒子(Y-2)を得た。修飾金ナノ粒子(Y-2)の平均粒径は14nmであった。
【0062】
(比較例Y-3:修飾金ナノ粒子(Y-3)の調製)
直鎖のポリエチレンオキシドを用いて、修飾金ナノ粒子(Y-3)を調製した。
具体的には、HAuCl4水溶液(1.0mM、40mL)とクエン酸ナトリウム水溶液(4.0mM,39mL)とを混合し、10分間還流させて、金ナノ粒子を合成した。次いで、金ナノ粒子溶液(400μL)に対し、水(100μL)、数平均分子量Mnが6000Daの直鎖ポリエチレンオキシド(12.5mg)を添加し、25℃で10分反応させることにより、修飾金ナノ粒子(Y-3)を得た。修飾金ナノ粒子(Y-3)の平均粒径は14nmであった。
【0063】
実施例及び比較例で得られた修飾金ナノ粒子について、以下の方法で耐塩性を評価した。
【0064】
(耐塩性評価試験)
修飾金ナノ粒子を、種々の濃度のNaCl溶液(45mM、90mM、120mM、及び180mM)中に加えて試験サンプルを作製した。3時間経過後の試験サンプルについて、紫外可視分光法によって最大吸収波長を測定した。測定された最大吸収波長が初期の最大吸収波長からほとんど変化しなかった(5nm未満)場合をA、15nm未満の変化であった場合をB、15nm以上変化した場合をC、ピークが幅広となり最大吸収波長の測定が困難となった場合をDとして評価した。結果を表1に示す。なお、評価結果がB及びCの場合は、表1中の括弧内に変化量を示した。
【0065】
【0066】
(実施例C-1:修飾金ナノ粒子(C-1)の調製)
平均粒径10nmの金ナノ粒子と合成例2で合成したPEO(2)とを用いて、修飾金ナノ粒子(C-1)を調製した。
具体的には、金ナノ粒子の水分散液(金ナノ粒子の含有量0.05mg/mL、金ナノ粒子の平均粒径10nm、nanoComposix社製)を0.54mL準備し、この水分散液に、1.5mgのPEO(2)を溶解させ、25℃で10分反応させることにより、修飾金ナノ粒子(C-1)を含む水分散液を得た。
【0067】
(実施例C-2~C-6:修飾金ナノ粒子(C-2)~(C-6)の調製)
金ナノ粒子の平均粒径を15nm(実施例C-2)、20nm(実施例C-3)、30nm(実施例C-4)、40nm(実施例C-5)又は50nm(実施例C-6)に変更したこと以外は、実施例C-1と同様にして修飾金ナノ粒子を調製した。
【0068】
実施例C-1~C-6の修飾金ナノ粒子(C-1)~(C-6)について、以下の方法で耐塩性を評価した。
【0069】
(耐塩性評価試験)
修飾金ナノ粒子を含む水分散液に対して、0.06mLのリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4、NaCl濃度:1500mM)を加えて試験サンプルを作製した。試験サンプルについて、日本分光株式会社製紫外可視近赤外分光光度計を用い、37℃の条件で、時間経過による吸光度の変化を測定した。測定開始時の吸光度に対する相対吸光度を縦軸、経過時間を横軸に取ったグラフは、
図2に示すとおりとなった。
【0070】
(実施例D-1:修飾金ナノ粒子(D-1)の調製)
平均粒径10nmの金ナノ粒子と合成例1で合成したPEO(1)とを用いて、修飾金ナノ粒子(D-1)を調製した。
具体的には、金ナノ粒子の水分散液(金ナノ粒子の含有量0.05mg/mL、金ナノ粒子の平均粒径10nm、nanoComposix社製)を0.54mL準備し、この水分散液に、1.5mgのPEO(1)を溶解させ、25℃で10分反応させることにより、修飾金ナノ粒子(D-1)を含む水分散液を得た。
【0071】
(実施例D-2及びD-3:修飾金ナノ粒子(D-2)及び(D-3)の調製)
金ナノ粒子の平均粒径を30nm(実施例D-2)又は50nm(実施例D-3)に変更したこと以外は、実施例D-1と同様にして修飾金ナノ粒子を調製した。
【0072】
実施例D-1~D-3の修飾ナノ粒子(D-1)~(D-3)について、以下の方法で耐塩性を評価した。
【0073】
(耐塩性評価試験)
修飾金ナノ粒子を含む水分散液に対して、0.06mLのリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4、NaCl濃度:1500mM)を加えて試験サンプルを作製した。試験サンプルについて、日本分光株式会社製紫外可視近赤外分光光度計を用い、45℃の条件で、時間経過による吸光度の変化を測定した。測定開始時の吸光度に対する相対吸光度を縦軸、経過時間を横軸に取ったグラフは、
図3に示すとおりとなった。