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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】抗ヒトTLR7抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231101BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231101BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231101BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20231101BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231101BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231101BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231101BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20231101BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231101BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C07K16/28
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K48/00
A61P37/06
A61P37/08
A61P31/00
A61P35/00
A61P21/04
A61P21/00
A61P17/00
A61P19/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P29/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2020182120
(22)【出願日】2020-10-30
(62)【分割の表示】P 2020522582の分割
【原出願日】2019-05-30
(65)【公開番号】P2021035378
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2018104676
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【弁理士】
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】三宅 健介
(72)【発明者】
【氏名】村上 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】本井 祐二
(72)【発明者】
【氏名】菅野 敦夫
(72)【発明者】
【氏名】清水 敏之
(72)【発明者】
【氏名】大戸 梅治
(72)【発明者】
【氏名】下里 隆一
(72)【発明者】
【氏名】萬野 篤
(72)【発明者】
【氏名】明松 隆志
(72)【発明者】
【氏名】石黒 純
(72)【発明者】
【氏名】中村 健介
(72)【発明者】
【氏名】磯部 崇
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特許第6790307(JP,B2)
【文献】国際公開第2014/174704(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/004144(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/210108(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/201300(WO,A1)
【文献】Eur. J. Immunol.,2017年,Vol. 47,pp. 1181-1187
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
A61K 39/00-39/44
C12P 21/08
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の特性を有することを特徴とする抗体又は当該抗体の抗原結合性断片:
(a)ヒトTLR7又はサルTLR7に特異的に結合し、且つマウスTLR7又はラットTLR7に結合しない;
(b)ヒトTLR7又はサルTLR7の機能を阻害する;及び
(c)(1)ヒトTLR7への結合において、配列番号5に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖及び配列番号11に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む抗体と競合阻害活性を有し、かつ、重鎖における相補性決定領域として配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに、軽鎖における相補性決定領域として配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号21に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む、又は
(2)ヒトTLR7への結合において、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖及び配列番号13に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む体と競合阻害活性を有し、かつ、重鎖における相補性決定領域として配列番号23に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号24に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号25に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに軽鎖における相補性決定領域として配列番号26に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号27に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号28に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む
【請求項2】
以下の特性を有することを特徴とする抗体又は当該抗体の抗原結合性断片:
(a)ヒトTLR7に特異的に結合する;
(b)ヒトTLR7の機能を阻害する;及び
(c)(1)重鎖における相補性決定領域として配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに、軽鎖における相補性決定領域として配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号21に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む、又は
(2)重鎖における相補性決定領域として配列番号23に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号24に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号25に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに、軽鎖における相補性決定領域として配列番号26に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号27に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号28に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む。
【請求項3】
ヒトTLR7が配列番号2若しくは配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる分子であるか、サルTLR7が配列番号85に記載のアミノ酸配列からなる分子であるか、マウスTLR7が配列番号83に記載のアミノ酸配列からなる分子であるか、又はラットTLR7が配列番号84に記載のアミノ酸配列からなる分子である請求項1又は2に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
【請求項4】
重鎖における相補性決定領域として配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに軽鎖における相補性決定領域として配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号21に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
【請求項5】
(a)配列番号5に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号11に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、又は
(b)配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号13に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域
含む請求項1乃至のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
【請求項6】
定常領域がヒト由来定常領域である請求項1乃至のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片(但し、配列番号42に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号44に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域を含む抗体又は当該抗体の抗原結合性断片を除く)。
【請求項7】
(a)配列番号35に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号36記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、又は
(b)配列番号37に記載のアミノ酸配列における20番目から471番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号38に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖
含む請求項1乃至6のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
【請求項8】
ヒト化されている請求項1乃至のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片(但し、重鎖における相補性決定領域として配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに軽鎖における相補性決定領域として配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号21に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む抗体又は当該抗体の抗原結合性断片を除く)。
【請求項9】
(I)
(a)配列番号41に記載のアミノ酸配列、
(b)配列番号42に記載のアミノ酸配列、及び
(d)(a)又は(b)の配列において1乃至10個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列
からなる群から選択されたアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域、並びに
(e)配列番号43に記載のアミノ酸配列、
(f)配列番号44に記載のアミノ酸配列、及び
(h)(e)又は(f)の配列において1乃至10個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列
からなる群から選択されたアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、又は
(II)
(a)配列番号50に記載のアミノ酸配列、及び
(c)(a)の配列において1乃至10個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列
からなる群から選択されたアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域、並びに
(d)配列番号51に記載のアミノ酸配列、及び
(f)(d)の配列において1乃至10個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列
からなる群から選択されたアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、
含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片(但し、配列番号42に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号44に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域を含む抗体又は当該抗体の抗原結合性断片を除く)
【請求項10】
(a)配列番号41に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号43に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、
(b)配列番号41に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号44に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、
(c)配列番号42に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号43に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、又
)配列番号50に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号51に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域
含む請求項に記載の抗体又は抗体の抗原結合性断片。
【請求項11】
(a)配列番号45に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号48に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(b)配列番号45に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号49に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(c)配列番号46に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号48に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
)配列番号47に記載のアミノ酸配列における20番目から462番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号48に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
)配列番号47に記載のアミノ酸配列における20番目から462番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号49に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
)配列番号52に記載のアミノ酸配列における20番目から471番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号53に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、又は
)配列番号54に記載のアミノ酸配列における20番目から468番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号53に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖
含む請求項10に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
【請求項12】
配列番号45に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号48に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
【請求項13】
配列番号46に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号48に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
【請求項14】
配列番号45に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号49に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
【請求項15】
配列番号47に記載のアミノ酸配列における20番目から462番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号48に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
【請求項16】
配列番号47に記載のアミノ酸配列における20番目から462番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号49に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
【請求項17】
配列番号52に記載のアミノ酸配列における20番目から471番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号53に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
【請求項18】
配列番号54に記載のアミノ酸配列における20番目から468番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号53に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
【請求項19】
(a)ヒトTLR7に特異的に結合し、及び(b)ヒトTLR7の機能を阻害する特性を有する請求項1及び12乃至18のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
【請求項20】
抗原結合性断片が、Fab、F(ab)2、Fab’及びFvからなる群から選択される請求項1乃至19のいずれか1項に記載の抗体の抗原結合性断片(但し、配列番号42に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号44に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域を含む抗体の抗原結合性断片を除く)。
【請求項21】
請求項1乃至2のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド(但し、(1)配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1をコードするポリヌクレオチド配列、配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3をコードするポリヌクレオチド配列、並びに、配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1をコードするポリヌクレオチド配列、配列番号21に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3をコードするポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、及び、(2)配列番号78に記載の重鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号80に記載の軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを除く)
【請求項22】
列番号23に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1をコードするポリヌクレオチド配列、配列番号24に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号25に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3をコードするポリヌクレオチド配列、並びに
配列番号26に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1をコードするポリヌクレオチド配列、配列番号27に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号28に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3をコードするポリヌクレオチド配列
含む請求項21に記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
(a)配列番号77に記載の重鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号79に記載の軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列、
(b)配列番号77に記載の重鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号80に記載の軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列、
(c)配列番号78に記載の重鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号79に記載の軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列、又は
)配列番号81に記載の重鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号82に記載の軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列
含む請求項21に記載のポリヌクレオチド。
【請求項24】
請求項21乃至23のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含有する発現ベクター。
【請求項25】
請求項24に記載の発現ベクターにより形質転換された宿主細胞。
【請求項26】
宿主細胞が真核細胞である請求項25に記載の宿主細胞。
【請求項27】
請求項25又は26に記載の宿主細胞を培養する工程、及び当該工程で得られた培養物から目的の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片を採取する工程を含むことを特徴とする当該抗体又は当該断片の製造方法。
【請求項28】
N-結合への糖鎖付加、O-結合への糖鎖付加、N末端のプロセッシング、C末端のプロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化、N末端へのメチオニン残基の付加、プロリン残基のアミド化及び重鎖のカルボキシル末端における1つ又は2つのアミノ酸の欠失からなる群より選択される1又は2以上の修飾を含む請求項1乃至2のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項29】
2本の重鎖が、完全長及びカルボキシル末端において1つ又は2つのアミノ酸が欠失している欠失体からなる群から選択される重鎖のいずれか一種又はいずれか二種の組み合わせからなる重鎖である請求項28に記載の抗体。
【請求項30】
2本の重鎖の双方でカルボキシル末端において1つのアミノ酸が欠失している請求項29に記載の抗体。
【請求項31】
重鎖のカルボキシル末端のプロリン残基が更にアミド化されている請求項28乃至30のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項32】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片、請求項28乃至31のいずれか1項に記載の抗体又は請求項24に記載の発現ベクターを有効成分として含有することを特徴とする疾患の治療及び/又は予防のための医薬組成物。
【請求項33】
ヒトTLR7の機能に起因する疾患の治療用である請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
ヒトTLR7の機能に起因する疾患が、免疫炎症関連疾患、アレルギー性疾患、感染症、又はがんである請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
免疫炎症関連疾患が、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、成人スチル病、強直性脊椎炎、全身性強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬性関節炎、骨関節炎、混合性結合組織病又は筋ジストロフィーである請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
免疫炎症関連疾患が、全身性エリテマトーデスである請求項34又は35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
免疫抑制剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、抗感染症剤、又は抗がん剤と併用するための請求項32乃至36のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は障害及び疾患を治療するための、抗ヒトToll様受容体(Toll-like receptor:TLR)7抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
パターン認識分子であるTLRは、ヒトにおいては10種類存在することが知られており一つのファミリーを形成している。そのうち、TLR7(バリアント1)は1049個のアミノ酸からなる一回膜貫通型タンパク質であり、一本鎖RNAを感知しI型インターフェロンやサイトカイン産生等を介して生体防御反応を担う一方で、様々な炎症性疾患や自己免疫疾患の病態形成において重要な役割を果たしている可能性が示唆されている(非特許文献1)。また、TLR7(バリアント2)には1049個のアミノ酸からなる一回膜貫通型タンパク質であるバリアントも知られており、上記TLR7(バリアント1)と同じ機能を有していることが知られている(非特許文献2)。特に乾癬や全身性エリテマトーデスなどの疾患においてはTLR7の関与を示唆する報告が多く、TLR7の機能阻害による疾患治療が期待されている(非特許文献3)。
【0003】
また、TLR7欠損が疾患モデルにおいて症状の軽減に作用する一方で、TLR9欠損が疾患の増悪に関与することを示唆する報告から、TLR7を特異的に阻害できる薬剤が炎症性疾患等の治療において有望であると考えられる(非特許文献4)。
【0004】
これまで、ヒトTLR7阻害を目指した核酸や低分子化合物等の研究開発が試みられてきたものの、核酸や低分子化合物でヒトTLR7特異的阻害を達成するのは困難であり、またTLR7抗体としてはマウス抗マウスTLR7抗体が知られているが(特許文献1)、新たなヒトTLR7特異的阻害剤の研究開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2014/174704
【非特許文献】
【0006】
【文献】Takeuchi O, Akira S. Cell. 2010 Mar 19;140(6):805-2
【文献】Chuang TH, Ulevitch RJ, Eur Cytokine Netw. 2000 Sep;11(3):372-8
【文献】Lyn-Cook BD, Xie C, Oates J, Treadwell E, Word B, Hammons G, Wiley K. Mol Immunol. 2014 Sep;61(1):38-43.
【文献】Christensen SR, Shupe J, Nickerson K, Kashgarian M, Flavell RA, Shlomchik MJ Immunity. 2006 Sep;25(3):417-28.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、免疫炎症関連疾患、アレルギー性疾患、感染症、がんの治療及び/又は予防剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、免疫炎症関連疾患、アレルギー性疾患、感染症、がんの治療及び/又は予防効果を有する物質を探索し、マウス抗ヒトTLR7抗体を取得した。得られたマウス抗ヒトTLR7抗体をヒト化し、さらに当該ヒト化抗体のCDR、フレームワーク及び可変領域を改変して本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)以下の特性を有することを特徴とする抗体又は当該抗体の抗原結合性断片:
(a)ヒトTLR7又はサルTLR7に特異的に結合し、且つマウスTLR7又はラットTLR7に結合しない;及び
(b)ヒトTLR7又はサルTLR7の機能を阻害する。
(2)ヒトTLR7が配列番号2若しくは配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる分子であるか、サルTLR7が配列番号85に記載のアミノ酸配列からなる分子であるか、マウスTLR7が配列番号83に記載のアミノ酸配列からなる分子であるか、又はラットTLR7が配列番号84に記載のアミノ酸配列からなる分子である上記(1)に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(3)ヒトTLR7への結合において、
配列番号5に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を有する重鎖及び配列番号11に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を有する軽鎖を有する抗体、
配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を有する重鎖及び配列番号13に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を有する軽鎖を有する抗体、又は
配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を有する重鎖及び配列番号15に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を有する抗体
と競合阻害活性を有する上記(1)又は(2)に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(4)(a)重鎖における相補性決定領域として配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに
軽鎖における相補性決定領域として配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号21に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、
(b)重鎖における相補性決定領域として配列番号23に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号24に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号25に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに
軽鎖における相補性決定領域として配列番号26に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号27に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号28に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、又は
(c)重鎖における相補性決定領域として配列番号29に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号30に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号31に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに
軽鎖における相補性決定領域として配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号33に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号34に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、
を有する上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(5)重鎖における相補性決定領域として配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに
軽鎖における相補性決定領域として配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号21に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、
を有する上記(4)に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(6)(a)配列番号5に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号11に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、
(b)配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号13に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、又は
(c)配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号15に記載
のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、
を有する上記(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(7)定常領域がヒト由来定常領域である上記(1)乃至(6)のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(8)(a)配列番号35に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号36記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(b)配列番号37に記載のアミノ酸配列における20番目から471番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号38に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、又は
(c)配列番号39に記載のアミノ酸配列における20番目から470番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号40に記載のアミノ酸配列における21番目から234番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
を有する上記(7)に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(9)ヒト化されている上記(1)乃至(8)のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(10)(I)(a)配列番号41に記載のアミノ酸配列、
(b)配列番号42に記載のアミノ酸配列、
(c)(a)又は(b)の配列に対して少なくとも95%以上の相同性を有するアミノ酸配列、及び
(d)(a)又は(b)の配列において1ないし10個のアミノ酸が欠失、置換又は付加
されたアミノ酸配列
からなる群から選択されたアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域、並びに
(e)配列番号43に記載のアミノ酸配列、
(f)配列番号44に記載のアミノ酸配列、
(g)(e)又は(f)の配列に対して少なくとも95%以上の相同性を有するアミノ酸配列、及び
(h)(e)又は(f)の配列において1乃至10個のアミノ酸が欠失、置換又は付加
されたアミノ酸配列
からなる群から選択されたアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、又は
(II)(a)配列番号50に記載のアミノ酸配列、
(b)(a)の配列に対して少なくとも95%以上の相同性を有するアミノ酸配列、及び
(c)(a)の配列において1乃至10個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列
からなる群から選択されたアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域、並びに
(d)配列番号51に記載のアミノ酸配列、
(e)(d)の配列に対して少なくとも95%以上の相同性を有するアミノ酸配列、及び
(f)(d)の配列において1乃至10個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミ
ノ酸配列
からなる群から選択されたアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、
を有する上記(9)に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(11)(a)配列番号41に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号43に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、
(b)配列番号41に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号44に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、
(c)配列番号42に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号43に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、
(d)配列番号42に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号44に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、又は
(e)配列番号50に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号51に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、
を有する上記(10)に記載の抗体又は抗体の抗原結合性断片。
(12)配列番号42に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号44に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域
を有する上記(11)に記載の抗体又は抗体の抗原結合性断片。
(13)(a)配列番号45に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号48に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(b)配列番号45に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号49に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(c)配列番号46に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号48に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(d)配列番号46に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号49に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(e)配列番号47に記載のアミノ酸配列における20番目から462番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号48に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(f)配列番号47に記載のアミノ酸配列における20番目から462番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号49に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(g)配列番号52に記載のアミノ酸配列における20番目から471番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号53に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、又は
(h)配列番号54に記載のアミノ酸配列における20番目から468番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号53に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
を有する上記(11)に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(14)配列番号46に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号49に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖を有する上記(13)に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(15)以下の特性を有することを特徴とする抗体又は当該抗体の抗原結合性断片:
(a)ヒトTLR7に特異的に結合する、
(b)ヒトTLR7の機能を阻害する、及び
(c)(1)重鎖における相補性決定領域として配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに軽鎖における相補性決定領域として配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号21に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、(2)重鎖における相補性決定領域として配列番号23に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号24に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号25に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに軽鎖における相補性決定領域として配列番号26に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号27に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号28に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、又は
(3)重鎖における相補性決定領域として配列番号29に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号30に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号31に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに軽鎖における相補性決定領域として配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号33に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号34に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3
を有する。
(16)重鎖における相補性決定領域として配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに
軽鎖における相補性決定領域として配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号21に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3
を有する上記(15)に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(17)(a)配列番号5に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号11に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、
(b)配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号13に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、又は
(c)配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号15に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域
を有する上記(15)又は(16)に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(18)定常領域がヒト由来定常領域である上記(15)乃至(17)のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(19)(a)配列番号35に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号36記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(b)配列番号37に記載のアミノ酸配列における20番目から471番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号38に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、又は
(c)配列番号39に記載のアミノ酸配列における20番目から470番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号40に記載のアミノ酸配列における21番目から234番目のアミノ酸配列からなる軽鎖
を有する上記(18)に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(20)ヒト化されている上記(15)乃至(19)のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(21)(I)
(a)配列番号41に記載のアミノ酸配列、
(b)配列番号42に記載のアミノ酸配列、
(c)(a)又は(b)の配列に対して少なくとも95%以上の相同性を有するアミノ酸配列、及び
(d)(a)又は(b)の配列において1乃至10個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列
からなる群から選択されたアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域、
並びに
(e)配列番号43に記載のアミノ酸配列、
(f)配列番号44に記載のアミノ酸配列、
(g)(e)又は(f)の配列に対して少なくとも95%以上の相同性を有するアミノ酸配列、及び
(h)(e)又は(f)の配列において1乃至10個のアミノ酸が欠失、置換又は付加さ
れたアミノ酸配列
からなる群から選択されたアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、又は
(II)
(a)配列番号50に記載のアミノ酸配列、
(b)(a)の配列に対して少なくとも95%以上の相同性を有するアミノ酸配列、及び(c)(a)の配列において1乃至10個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列
からなる群から選択されたアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域、
並びに
(d)配列番号51に記載のアミノ酸配列、
(e)(d)の配列に対して少なくとも95%以上の相同性を有するアミノ酸配列、及び(f)(d)の配列において1乃至10個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ
酸配列
からなる群から選択されたアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、
を有する上記(20)に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(22)(a)配列番号41に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号43に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、
(b)配列番号41に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号44に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、
(c)配列番号42に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号43に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、
(d)配列番号42に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号44に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域、又は
(e)配列番号50に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号51に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域
を有する上記(21)に記載の抗体又は抗体の抗原結合性断片。
(23)配列番号42に記載のアミノ酸配列からなる重鎖の可変領域及び配列番号44に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖の可変領域を有する上記(22)に記載の抗体又は抗体の抗原結合性断片。
(24)(a)配列番号45に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号48に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(b)配列番号45に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号49に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(c)配列番号46に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号48に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(d)配列番号46に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号49に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(e)配列番号47に記載のアミノ酸配列における20番目から462番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号48に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(f)配列番号47に記載のアミノ酸配列における20番目から462番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号49に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(g)配列番号52に記載のアミノ酸配列における20番目から471番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号53に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖、又は
(h)配列番号54に記載のアミノ酸配列における20番目から468番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号53に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目
のアミノ酸配列からなる軽鎖
を有する上記(22)に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(25)配列番号46に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号49に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖を有する上記(24)に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(26)配列番号45に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号48に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖を有する抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(27)配列番号46に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号48に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖を有する抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(28)配列番号46に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号49に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖を有する抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(29)配列番号47に記載のアミノ酸配列における20番目から462番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号49に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖を有する抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(30)配列番号52に記載のアミノ酸配列における20番目から471番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号53に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖を有する抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(31)配列番号54に記載のアミノ酸配列における20番目から468番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号53に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖を有する抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(32)(a)ヒトTLR7に特異的に結合し、及び(b)ヒトTLR7の機能を阻害する特性を有する上記(26)乃至(31)のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片。
(33)抗原結合性断片が、Fab、F(ab)2、Fab’及びFvからなる群から選択され上記(1)乃至(32)のいずれか1項に記載の抗体の抗原結合性断片。
(34)上記(1)乃至(33)のいずれか1項に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性
断片をコードするポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド。
(35)(1)配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1をコードするポリヌクレオチド配列、配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3をコードするポリヌクレオチド配列、並びに
配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1をコードするポリヌクレオチド配列、配列番号21に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号22に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3をコードするポリヌクレオチド配列、
(2)配列番号23に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1をコードするポリヌクレオチド配列、配列番号24に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号25に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3をコードするポリヌクレオチド配列、並びに
配列番号26に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1をコードするポリヌクレオチド配列、配列番号27に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号28に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3をコードするポリヌクレオチド配列、又は
(3)配列番号29に記載のアミノ酸配列からなるCDRHを1コードするポリヌクレオチド配列、配列番号30に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号31に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3をコードするポ
リヌクレオチド配列、並びに
配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1をコードするポリヌクレオチド配列、配列番号33に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号34に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3をコードするポリヌクレオチド配列、
を有する上記(34)に記載のポリヌクレオチド。
(36)(I)
(a)配列番号77に記載の重鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列、
(b)配列番号78に記載の重鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列、及び
(c)(a)又は(b)のポリヌクレオチド配列と相補的なポリヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドが有するポリヌクレオチド配列、
からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列、並びに
(d)配列番号79に記載の軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列、
(e)配列番号80に記載の軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列、及び
(f)(d)又は(e)のポリヌクレオチド配列と相補的なポリヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドが有するポリヌクレオチド配列、
からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列、又は
(II)
(a)配列番号81に記載の重鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列、及び
(b)(a)のポリヌクレオチド配列と相補的なポリヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドが有するポリヌクレオチド配列、
からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列、並びに
(c)配列番号82に記載の軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列、及び
(d)(c)のポリヌクレオチド配列と相補的なポリヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドが有するポリヌクレオチド配列、
からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列、
を有する上記(35)に記載のポリヌクレオチド。
(37)(a)配列番号77に記載の重鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号79に記載の軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列、
(b)配列番号77に記載の重鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号80に記載の軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列、
(c)配列番号78に記載の重鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号79に記載の軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列、
(d)配列番号78に記載の重鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号80に記載の軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列、又は
(e)配列番号81に記載の重鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列及び配列番号82に記載の軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列、
を有する上記(36)に記載のポリヌクレオチド。
(38)上記(34)乃至(37)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含有する
発現ベクター。
(39)上記(38)に記載の発現ベクターにより形質転換された宿主細胞。
(40)宿主細胞が真核細胞である上記(39)に記載の宿主細胞。
(41)上記(39)又は(40)に記載の宿主細胞を培養する工程、及び当該工程で得られた培養物から目的の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片を採取する工程を含むことを特徴とする当該抗体又は当該断片の製造方法。
(42)上記(41)の製造方法により得られることを特徴とする抗体又は当該抗体の抗
原結合性断片。
(43)N-結合への糖鎖付加、O-結合への糖鎖付加、N末端のプロセッシング、C末端のプロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化、N末端へのメチオニン残基の付加、プロリン残基のアミド化及び重鎖のカルボキシル末端における1つ又は2つのアミノ酸の欠失からなる群より選択される1又は2以上の修飾を含む上記(1)乃至(32)のいずれか1項に記載の抗体。
(44)2本の重鎖が、完全長及びカルボキシル末端において1つ又は2つのアミノ酸が欠失している欠失体からなる群から選択される重鎖のいずれか一種又はいずれか二種の組み合わせからなる重鎖である上記(43)に記載の抗体。
(45)2本の重鎖の双方でカルボキシル末端において1つのアミノ酸が欠失している上記(44)に記載の抗体。
(46)重鎖のカルボキシル末端のプロリン残基が更にアミド化されている上記(43)乃至(45)のいずれか1項に記載の抗体。
(47)上記(1)乃至(33)及び(42)乃至(46)に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片の少なくとも一つ又は上記(38)に記載の発現ベクターを有効成分として含有することを特徴とする疾患の治療及び/又は予防のための医薬組成物。
(48)ヒトTLR7の機能に起因する疾患の治療用である上記(47)に記載の医薬組成物。
(49)ヒトTLR7の機能に起因する疾患が、免疫炎症関連疾患、アレルギー性疾患、感染症、又はがんである上記(48)に記載の医薬組成物。
(50)免疫炎症関連疾患が、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、成人スチル病、強直性脊椎炎、全身性強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬性関節炎、骨関節炎、混合性結合組織病又は筋ジストロフィーである上記(49)に記載の医薬組成物。
(51)免疫炎症関連疾患が、全身性エリテマトーデスである上記(49)又は(50)に記載の医薬組成物。
(52)免疫抑制剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、抗感染症剤、又は抗がん剤と併用するための上記(47)乃至(51)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(53)上記(1)乃至(33)及び(42)乃至(46)に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片の少なくとも一つを個体に投与することを特徴とするヒトTLR7の機能に起因する疾患の治療方法。
(54)上記(1)乃至(33)及び(42)乃至(46)に記載の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片の少なくとも一つ、及び免疫抑制剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、抗感染症剤、又は抗がん剤を、同時に、別々に又は連続して個体に投与することを特徴とするヒトTLR7の機能に起因する疾患の治療方法。
(55)ヒトTLR7の機能に起因する疾患が、免疫炎症関連疾患、アレルギー性疾患、感染症、又はがんである上記(53)又は(54)に記載の治療方法。
(56)免疫炎症関連疾患が、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、成人スチル病、強直性脊椎炎、全身性強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬性関節炎、骨関節炎、混合性結合組織病又は筋ジストロフィーである上記(55)に記載の治療方法。
(57)免疫炎症関連疾患が、全身性エリテマトーデスである上記(55)又は(56)に記載の治療方法。
(58)ヒトTLR7の機能に起因する疾患の治療又は予防における使用のための、上記(1)乃至(33)及び(42)乃至(46)のいずれか一項に記載の抗体若しくは当該抗体の抗原結合性断片又は上記(38)に記載の発現ベクター。
(59)ヒトTLR7の機能に起因する疾患が、免疫炎症関連疾患、アレルギー性疾患、感染症、又はがんである上記(58)に記載の抗体若しくは当該抗体の抗原結合性断片又は発現ベクター。
(60)免疫炎症関連疾患が、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、若年性特発性関
節炎、成人スチル病、強直性脊椎炎、全身性強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬性関節炎、骨関節炎、混合性結合組織病又は筋ジストロフィーである上記(59)に記載の抗体若しくは当該抗体の抗原結合性断片又は発現ベクター。
(61)免疫炎症関連疾患が、全身性エリテマトーデスである上記(59)又は(60)に記載の抗体若しくは当該抗体の抗原結合性断片又は発現ベクター。
(62)免疫抑制剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、抗感染症剤、又は抗がん剤と併用するための、上記(58)乃至(61)のいずれか1項に記載の抗体若しくは当該抗体の抗原結合性断片又は発現ベクター。
(63)ヒトTLR7の機能に起因する疾患の治療剤又は予防剤の製造のための、上記(1)乃至(33)及び(42)乃至(46)のいずれか一項に記載の抗体若しくは当該抗体の抗原結合性断片又は上記(38)に記載の発現ベクターの使用。
(64)ヒトTLR7の機能に起因する疾患が、免疫炎症関連疾患、アレルギー性疾患、感染症、又はがんである上記(63)に記載の使用。
(65)免疫炎症関連疾患が、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、成人スチル病、強直性脊椎炎、全身性強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬性関節炎、骨関節炎、混合性結合組織病又は筋ジストロフィーである、上記(64)に記載の使用。
(66)免疫炎症関連疾患が、全身性エリテマトーデスである、上記(64)又は(65)に記載の使用。
(67)治療剤又は予防剤が、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、抗感染症剤、又は抗がん剤と併用される、上記(63)乃至(66)のいずれか1項に記載の使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、TLR7の機能阻害を作用機序とする、免疫炎症関連疾患、アレルギー性疾患、感染症、がんの治療及び/又は予防剤を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、ヒトTLR7(バリアント1)のアミノ酸配列(配列番号2)を示す図である。
図2図2は、ヒトTLR7(バリアント2)のアミノ酸配列(配列番号4)を示す図である。
図3図3は、マウスTLR7のアミノ酸配列(配列番号83)を示す図である。
図4図4は、ラットTLR7のアミノ酸配列(配列番号84)を示す図である。
図5図5は、サルTLR7のアミノ酸配列(配列番号85)を示す図である。
図6図6は、AT01抗体、NB7抗体、及びFAN2抗体がCL-264を処理したヒト末梢血単核球(以下、PBMC)からのIL-6の産生を添加濃度依存的に抑制することを示す図である。
図7図7は、cAT01抗体のシグナル配列を含む重鎖のアミノ酸配列(配列番号35)及びシグナル配列を含む軽鎖のアミノ酸配列(配列番号36)を示す図である。重鎖アミノ酸配列において1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、20番目から135番目のアミノ酸配列が重鎖可変領域であり、136番目から465番目のアミノ酸配列が重鎖定常領域である。軽鎖アミノ酸配列において1番目から20番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から126番目のアミノ酸配列が軽鎖可変領域であり、127番目から233番目のアミノ酸配列が軽鎖定常領域である。
図8図8は、cNB7抗体のシグナル配列を含む重鎖のアミノ酸配列(配列番号37)及びシグナル配列を含む軽鎖のアミノ酸配列(配列番号38)を示す図である。重鎖アミノ酸配列において1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、20番目から141番目のアミノ酸配列が重鎖可変領域であり、142番目から471番目のアミノ酸配列が重鎖定常領域である。軽鎖アミノ酸配列において1番目から20番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から126番目のアミノ酸配列が軽鎖可変領域であり、127番目から233番目のアミノ酸配列が軽鎖定常領域である。
図9図9は、cFAN2抗体のシグナル配列を含む重鎖のアミノ酸配列(配列番号39)及びシグナル配列を含む軽鎖のアミノ酸配列(配列番号40)を示す図である。重鎖アミノ酸配列において1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、20番目から140番目のアミノ酸配列が重鎖可変領域であり、141番目から470番目のアミノ酸配列が重鎖定常領域である。軽鎖アミノ酸配列において1番目から20番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から127番目のアミノ酸配列が軽鎖可変領域であり、128番目から234番目のアミノ酸配列が軽鎖定常領域である。
図10図10は、キメラ化抗ヒトTLR7抗体であるcAT01、cNB7、cFAN2がCL-264を処理したヒトPBMCからのIL-6の産生を添加濃度依存的に抑制することを示す図である。
図11図11は、ヒト化した重鎖であるhuAT01_H1_IgG1LALAのシグナル配列を含む重鎖のアミノ酸配列(配列番号45)を示す図である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、20番目から135番目のアミノ酸配列が可変領域であり、136番目から465番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、45番目から54番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、69番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、118番目から124番目のアミノ酸配列がCDRH3である。
図12図12は、ヒト化した重鎖であるhuAT01_H3_IgG1LALAのシグナル配列を含む重鎖のアミノ酸配列(配列番号46)を示す図である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、20番目から135番目のアミノ酸配列が可変領域であり、136番目から465番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、45番目から54番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、69番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、118番目から124番目のアミノ酸配列がCDRH3である。
図13図13は、ヒト化した重鎖であるhuAT01_H3_IgG4Proのシグナル配列を含む重鎖のアミノ酸配列(配列番号47)を示す図である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、20番目から135番目のアミノ酸配列が可変領域であり、136番目から462番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、45番目から54番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、69番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、118番目から124番目のアミノ酸配列がCDRH3である。
図14図14は、キメラ化抗体cAT01の重鎖であるcAT01_Hの可変領域のアミノ酸配列(配列番号5)(以下、cAT01_H)、並びにヒト化抗体重鎖huAT01_H1_IgG1LALAの可変領域のアミノ酸配列(配列番号41)(以下、huAT01_H1)及びhuAT01_H3_IgG1LALAの可変領域のアミノ酸配列(配列番号42)(以下、huAT01_H3)の比較を示す図である。huAT01_H1及びhuAT01_H3の配列における「・」はcAT01_Hと同一のアミノ酸残基を示し、アミノ酸残基が記載されている箇所は置換されたアミノ酸残基を示す。
図15図15は、ヒト化した軽鎖であるhuAT01_L1のシグナル配列を含む軽鎖のアミノ酸配列(配列番号48)を示す図である。当該配列において、1番目から20番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から126番目のアミノ酸配列が可変領域であり、127番目から233番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、アミノ酸番号44番から54番はCDRL1であり、アミノ酸番号70番から76番はCDRL2であり、アミノ酸番号109番から116番はCDRL3である。
図16図16は、ヒト化した軽鎖であるhuAT01_L2のシグナル配列を含む軽鎖のアミノ酸配列(配列番号49)を示す図である。当該配列において、1番目から20番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から126番目のアミノ酸配列が可変領域であり、127番目から233番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、アミノ酸番号44番から54番はCDRL1であり、アミノ酸番号70番から76番はCDRL2であり、アミノ酸番号109番から116番はCDRL3である。
図17図17は、キメラ化抗体cAT01の軽鎖であるcAT01_Lの可変領域のアミノ酸配列(配列番号11)(以下、cAT01_L)、並びにヒト化抗体軽鎖huAT01_L1の可変領域のアミノ酸配列(配列番号43)(以下、huAT01_L1)及びhuAT01_L2の可変領域のアミノ酸配列(配列番号44)(以下、huAT01_L2)の比較を示す図である。huAT01_L1及びhuAT01_L2の配列における「・」はcAT01_Lと同一のアミノ酸残基を示し、アミノ酸残基が記載されている箇所は置換されたアミノ酸残基を示す。
図18図18は、ヒト化した重鎖であるhuNB7_H3_IgG1LALAのシグナル配列を含む重鎖のアミノ酸配列(配列番号52)を示す図である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、20番目から141番目のアミノ酸配列が可変領域であり、142番目から471番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、アミノ酸番号45番から55番はCDRH1であり、アミノ酸番号70番から78番はCDRH2であり、アミノ酸番号118番から130番はCDRH3である。
図19図19は、ヒト化した重鎖であるhuNB7_H3_IgG4Proのシグナル配列を含む重鎖のアミノ酸配列(配列番号54)を示す図である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、20番目から141番目のアミノ酸配列が可変領域であり、142番目から468番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、アミノ酸番号45番から55番はCDRH1であり、アミノ酸番号70番から78番はCDRH2であり、アミノ酸番号118番から130番はCDRH3である。
図20図20は、キメラ化抗体cNB7の重鎖であるcNB7_Hの可変領域のアミノ酸配列(配列番号7)(以下、cNB7_H)及びヒト化抗体重鎖huNB7_H3_IgG1LALAの可変領域のアミノ酸配列(配列番号50)(以下、huNB7_H3)の比較を示す図である。huNB7_H3における「・」はcNB7_Hと同一のアミノ酸残基を示し、アミノ酸残基が記載されている箇所は置換されたアミノ酸残基を示す。
図21図21は、ヒト化した軽鎖であるhuNB7_L3のシグナル配列を含む軽鎖のアミノ酸配列(配列番号53)を示す図である。当該配列において、1番目から20番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から126番目のアミノ酸配列が可変領域であり、127番目から233番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、アミノ酸番号44番から54番はCDRL1であり、アミノ酸番号70番から76番はCDRL2であり、アミノ酸番号109番から116番はCDRL3である。
図22図22は、キメラ化抗体cNB7の軽鎖であるcNB7_Lの可変領域のアミノ酸配列(配列番号13)(以下、cNB7_L)及びヒト化抗体軽鎖huNB7_L3の可変領域のアミノ酸配列(配列番号51)(以下、huNB7_L3)の比較を示す図である。huNB7_L3における「・」はcNB7_Lと同一のアミノ酸残基を示し、アミノ酸残基が記載されている箇所は置換されたアミノ酸残基を示す。
図23図23は、ヒト化抗ヒトTLR7抗体(huAT01_H1L1_IgG1LALA、huAT01_H3L1_IgG1LALA、huAT01_H3L2_IgG1LALA、huAT01_H3L2_IgG4Pro、huNB7_H3L3_IgG1LALA、huNB7_H3L3_IgG4Pro)がCL-264を処理したヒトPBMCからのIL-6の産生を添加濃度依存的に抑制することを示す図である。
図24図24-1は、AT01抗体のCDRH1のアミノ酸配列(配列番号17)、CDRH2のアミノ酸配列(配列番号18)及びCDRH3のアミノ酸配列(配列番号19)、並びにCDRL1のアミノ酸配列(配列番号20)、CDRL2のアミノ酸配列(配列番号21)及びCDRL3のアミノ酸配列(配列番号22)を示し、 図24-2は、NB7抗体のCDRH1のアミノ酸配列(配列番号23)、CDRH2のアミノ酸配列(配列番号24)及びCDRH3のアミノ酸配列(配列番号25)、並びにCDRL1のアミノ酸配列(配列番号26)、CDRL2のアミノ酸配列(配列番号27)及びCDRL3のアミノ酸配列(配列番号28)を示し、 図24-3は、FAN2抗体のCDRH1のアミノ酸配列(配列番号29)、CDRH2のアミノ酸配列(配列番号30)及びCDRH3のアミノ酸配列(配列番号31)、並びにCDRL1のアミノ酸配列(配列番号32)、CDRL2のアミノ酸配列(配列番号33)及びCDRL3のアミノ酸配列(配列番号34)を示す図である。
図25図25は、ヒト化抗ヒトTLR7抗体(huAT01_H3L2_IgG1LALA)の抗原(ヒトTLR7:バリアント1)への結合に係るフローサイトメトリー解析結果であり、当該抗原に特異的に結合することを示す図である。
図26図26は、ヒト化抗ヒトTLR7抗体(huAT01_H3L2_IgG1LALA)の抗原(ヒトTLR7:バリアント2)への結合に係るフローサイトメトリー解析結果であり、当該抗原に特異的に結合することを示す図である。
図27図27は、ヒト化抗ヒトTLR7抗体(huAT01_H3L2_IgG1LALA)の抗原(サルTLR7)への結合に係るフローサイトメトリー解析結果であり、当該抗原に特異的に結合することを示す図である。
図28図28は、ヒト化抗ヒトTLR7抗体(huAT01_H3L2_IgG1LALA)の抗原(マウスTLR7)への結合に係るフローサイトメトリー解析結果であり、当該抗原には結合しないことを示す図である。
図29図29は、ヒト化抗ヒトTLR7抗体(huAT01_H3L2_IgG1LALA)の抗原(ラットTLR7)への結合に係るフローサイトメトリー解析結果であり、当該抗原に結合しないことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書中において、「遺伝子」という語には、DNAのみならずmRNA、cDNA及びcRNAも含まれるものとする。
【0013】
本明細書中において、「ポリヌクレオチド」という語は核酸と同じ意味で用いており、DNA、RNA、プローブ、オリゴヌクレオチド、及びプライマーも含まれている。
【0014】
本明細中においては、「ポリペプチド」と「蛋白質」は区別せずに用いている。
【0015】
本明細書中において、「RNA画分」とは、RNAを含んでいる画分をいう。
【0016】
本明細書中において、「細胞」には、動物個体内の細胞、培養細胞も含んでいる。
【0017】
本明細書中において、「TLR7」は、TLR7蛋白質と同じ意味で用いている。
【0018】
本明細書中における「抗体の抗原結合性断片」とは、抗原との結合活性を有する抗体の部分断片を意味しており、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、diabody、線状抗体、及び抗体断片より形成された多特異性抗体等を含む。また、F(ab’)2を還元条件下で処理した抗体の可変領域の一価の断片であるFab’も抗体の抗原結合性断片に含まれる。但し、抗原との結合能を有している限りこれらの分子に限定されない。また、これらの抗原結合性断片には、抗体蛋白質の全長分子を適当な酵素で処理したもののみならず、遺伝子工学的に改変された抗体遺伝子を用いて適当な宿主細胞において産生された蛋白質も含まれる。
【0019】
抗体分子の重鎖及び軽鎖にはそれぞれ3箇所の相補性決定領域(CDR:Complementarity determining region)があることが知られている。相補性決定領域は、超可変領域(hypervariable region)とも呼ばれ、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域内にあって、一次構造の変異性が特に高い部位であり、重鎖及び軽鎖のポリペプチド鎖の一次構造上において、それぞれ3ヶ所に分離している。本明細書中においては、抗体の相補性決定領域について、重鎖の相補性決定領域を重鎖アミノ酸配列のアミノ末端側からCDRH1、CDRH2、CDRH3と表記し、軽鎖の相補性決定領域を軽鎖アミノ酸配列のアミノ末端側からCDRL1、CDRL2、CDRL3と表記する。これらの部位は立体構造の上で相互に近接し、結合する抗原に対する特異性を決定している。また、各CDRのアミノ鎖配列は、AbMの定義 (Martin, A. C. R., Cheetham, J. C. and Rees, A. R. (1989) Proc. Natl Acad. Sci. USA, 86,9268-9272)に基づき記載されている。
【0020】
本発明において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、市販のハイブリダイゼーション溶液ExpressHyb Hybridization Solution(CLONTECH社)中、68℃でハイブリダイズすること、又は、DNAを固定したフィルターを用いて0.7-1.0MのNaCl存在下68℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1-2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度SSCとは150 mM NaCl、15 mM クエン酸ナトリウムからなる)を用い、68℃で洗浄することにより同定することができる条件又はそれと同等の条件でハイブリダイズすることをいう。
【0021】
1.TLR7
本発明で用いるヒトTLR7は、ヒトのB細胞あるいは樹状細胞から直接精製して使用するか、又は上記の細胞の細胞膜画分を調製して使用することができ、また、ヒトTLR7をin vitroにて合成する、又は遺伝子操作により宿主細胞に産生させることによって得ることができる。遺伝子操作では、具体的には、ヒトTLR7cDNAを発現可能なベクターに組み込んだ後、転写と翻訳に必要な酵素、基質及びエネルギー物質を含む溶液中で合成する、あるいは他の原核生物、又は真核生物の宿主細胞を形質転換させることによってヒトTLR7を発現させることにより、該蛋白質を得ることが出来る。
【0022】
同様に、サルTLR7、マウスTLR7、及びラットTLR7は、それぞれサル、マウス、及びラットのTLR7発現細胞から直接精製して使用するか、又は上記の細胞の細胞膜画分を調製して使用することができ、また、サルTLR7、マウスTLR7、及びラットTLR7をin vitroにて合成する、又は遺伝子操作により宿主細胞に産生させることによって得ることができる。
【0023】
ヒトTLR7(バリアント1)及びヒトTLR7(バリアント2)のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列は各々配列表の配列番号1又は配列番号3に記載されており、ヒトTLR7(バリアント1)及びヒトTLR7(バリアント2)のアミノ酸配列は各々配列表の配列番号2又は配列番号4に記載されている。
【0024】
ヒトTLR7のcDNAは例えば、ヒトTLR7のmRNAを発現している臓器のcDNAライブラリーを鋳型として、ヒトTLR7のcDNAを特異的に増幅するプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(以下「PCR」という)(Saiki,R. K.,et al.,Science,(1988)239,487-49)を行なう、所謂PCR法により取得することができる。
【0025】
なお、ヒトTLR7をコードするヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、ヒトTLR7と同等の生物活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドもヒトTLR7のcDNAに含まれる。更に、ヒトTLR7遺伝子座から転写されるスプライシングバリアント又はこれにストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、かつ、ヒトTLR7と同等の生物活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドもヒトTLR7のcDNAに含まれる。
【0026】
また、ヒトTLR7のアミノ酸配列、又はこれらの配列からシグナル配列が除かれたアミノ酸配列において、1個、2若しくは3個又は4若しくは5個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなり、ヒトTLR7と同等の生物活性を有する蛋白質もヒトTLR7に含まれる。更に、ヒトTLR7遺伝子座から転写されるスプライシングバリアントにコードされるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において、1個、2若しくは3個又は4若しくは5個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒトTLR7と同等の生物活性を有する蛋白質もヒトTLR7に含まれる。
【0027】
サルTLR7のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列は配列表の配列番号58に記載されており、サルTLR7のアミノ酸配列は配列表の配列番号85に記載されている。
【0028】
サルTLR7のcDNAは例えば、サルTLR7のmRNAを発現している臓器のcDNAライブラリーを鋳型として、サルTLR7のcDNAを特異的に増幅するプライマーを用いて行うPCR法により取得することができる。
【0029】
なお、サルTLR7をコードするヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、サルTLR7と同等の生物活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドもサルTLR7のcDNAに含まれる。更に、サルTLR7遺伝子座から転写されるスプライシングバリアント又はこれにストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、かつ、サルTLR7と同等の生物活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドもサルTLR7のcDNAに含まれる。
【0030】
また、サルTLR7のアミノ酸配列、又はこれらの配列からシグナル配列が除かれたアミノ酸配列において、1個、2若しくは3個又は4若しくは5個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなり、サルTLR7と同等の生物活性を有する蛋白質もサルTLR7に含まれる。更に、サルTLR7遺伝子座から転写されるスプライシングバリアントにコードされるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において、1個、2若しくは3個又は4若しくは5個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、サルTLR7と同等の生物活性を有する蛋白質もサルTLR7に含まれる。
【0031】
サルTLR7のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列は配列表の配列番号58に記載されており、サルTLR7のアミノ酸配列は配列表の配列番号85に記載されている。
【0032】
サルTLR7のcDNAは例えば、サルTLR7のmRNAを発現している臓器のcDNAライブラリーを鋳型として、サルTLR7のcDNAを特異的に増幅するプライマーを用いて行うPCR法により取得することができる。
【0033】
マウスTLR7のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列は配列表の配列番号56に記載されており、マウスTLR7のアミノ酸配列は配列表の配列番号83に記載されている。
【0034】
マウスTLR7のcDNAは例えば、マウスTLR7のmRNAを発現している臓器のcDNAライブラリーを鋳型として、マウスTLR7のcDNAを特異的に増幅するプライマーを用いて行うPCR法により取得することができる。
【0035】
ラットTLR7のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列は配列表の配列番号57に記載されており、ラットTLR7のアミノ酸配列は配列表の配列番号84に記載されている。
【0036】
ラットTLR7のcDNAは例えば、ラットTLR7のmRNAを発現している臓器のcDNAライブラリーを鋳型として、ラットTLR7のcDNAを特異的に増幅するプライマーを用いて行うPCR法により取得することができる。
【0037】
2.抗TLR7抗体及びその製造
本発明は、以下の特性を有することを特徴とする抗体又は当該抗体の抗原結合性断片を提供する:
(a)ヒトTLR7又はサルTLR7に特異的に結合し、且つマウスTLR7又はラットTLR7に結合しない;及び
(b)ヒトTLR7又はサルTLR7の機能を阻害する。
【0038】
本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、ヒトTLR7又はサルTLR7に特異的に結合し、その機能を阻害する。
【0039】
抗体又はその抗原結合性断片のTLR7に対する結合活性は、定法に従い、フローサイトメトリーで解析することにより評価される。
【0040】
また本明細書中、TLR7の機能を阻害するとは、TLR7発現細胞によるIL-6及び/又はI型インターフェロンの産生を抑制することをいう。TLR7の機能を阻害する活性は、in vitroにおいてTLR7発現細胞(例えばPBMC)を抗体又はその抗原結合性断片の存在下でインキュベートし、培養上清中のIL-6又はI型インターフェロンの濃度を測定することにより評価される。
【0041】
本発明の一実施形態において、ヒトTLR7は配列番号2又は配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる分子であるか、サルTLR7は配列番号85に記載のアミノ酸配列からなる分子であるか、マウスTLR7は配列番号83に記載のアミノ酸配列からなる分子であるか、又はラットTLR7が配列番号84に記載のアミノ酸配列からなる分子である。例えば、本発明において、ヒトTLR7は配列番号2又は配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる分子であり、サルTLR7は配列番号85に記載のアミノ酸配列からなる分子であり、マウスTLR7は配列番号83に記載のアミノ酸配列からなる分子であり、且つラットTLR7は配列番号84に記載のアミノ酸配列からなる分子であり得る。
【0042】
例えば、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、ヒトTLR7に対する抗体又はその抗原結合性断片であり得、以下の特性:
(a)ヒトTLR7に特異的に結合し、且つマウスTLR7及び/又はラットTLR7に結合しない;及び
(b)ヒトTLR7の機能を阻害する、
を有し、ここでヒトTLR7は配列番号2又は配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる分子であり、マウスTLR7は配列番号83に記載のアミノ酸配列からなる分子であり、且つラットTLR7は配列番号84に記載のアミノ酸配列からなる分子である。
【0043】
例えば、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、サルTLR7に対する抗体又はその抗原結合性断片であり得、以下の特性:
(a)サルTLR7に特異的に結合し、且つマウスTLR7及び/又はラットTLR7に結合しない;及び
(b)サルTLR7の機能を阻害する、
を有し、ここでサルTLR7は配列番号85に記載のアミノ酸配列からなる分子であり、マウスTLR7は配列番号83に記載のアミノ酸配列からなる分子であり、且つラットTLR7は配列番号84に記載のアミノ酸配列からなる分子である。
【0044】
以下、抗ヒトTLR7抗体の場合を例として、本発明の抗TLR7抗体及びその製造方法を説明する。抗サルTLR7抗体についても抗ヒトTLR7抗体と同様に製造することができる。
【0045】
本発明のヒトTLR7に対する抗体は、常法を用いて、ヒトTLR7又はヒトTLR7のアミノ酸配列から選択される任意のポリペプチドを動物に免疫し、生体内に産生される抗体を採取、精製することによって得ることができる。
【0046】
なお、抗原となるヒトTLR7はヒトTLR7遺伝子を遺伝子操作により宿主細胞に産生させることによって得ることができる。具体的には、TLR7遺伝子を発現可能なベクターを作製し、これを宿主細胞に導入して該遺伝子を発現させ、発現したTLR7を精製すればよい。
【0047】
本発明のヒトTLR7に対する抗体は、DNA免疫法を使用して得ることもできる。DNA免疫法とは、抗原発現プラスミドをマウスやラットなどの動物個体に遺伝子導入し、抗原を個体内で発現させることによって、抗原に対する免疫を誘導する手法である。
【0048】
遺伝子導入の手法には、直接プラスミドを筋肉に注射する方法や、プラスミドとリポソームやポリエチレンイミンなどの複合体を静脈注射する方法、ウイルスベクターを用いる手法、プラスミドを付着させた金粒子をGene Gunにより射ち込む手法、急速に大量のプラスミド溶液を静脈注射するHydrodynamic法などが存在する。
【0049】
発現プラスミドの筋注による遺伝子導入法に関して、発現量を向上させる手法として、プラスミドを筋注後、同部位にエレクトロポレーションを加えるin vivo electroporationという技術が知られている(Aihara H, Miyazaki J. Nat Biotechnol. 1998 Sep;16(9):867-70又はMir LM, Bureau MF, Gehl J, Rangara R, Rouy D, Caillaud JM, Delaere P, Branellec D, Schwartz B, Scherman D. Proc Natl Acad Sci U S A. 1999 Apr 13;96(8):4262-7.)。本手法はプラスミドの筋注前にヒアルロニダーゼで筋肉を処理することにより、さらに発現量が向上する(McMahon JM1, Signori E, Wells KE, Fazio VM, Wells DJ. Gene Ther. 2001 Aug;8(16):1264-70)。
【0050】
また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein,Nature (1975)256,p.495-497、Kennet,R.ed.,Monoclonal Antibodies,p.365-367,Plenum Press,N.Y.(1980))に従って、TLR7に対する抗体を産生する抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることによりハイブリドーマを樹立し、モノクローナル抗体を得ることもできる。このような方法の具体的な例は、国際公開第WO09/48072号パンフレット(2009年4月16日公開)及び第WO10/117011号(2010年10月14日公開)パンフレットに記載されている。
【0051】
このようにして樹立されたマウス抗ヒトTLR7抗体の実例としては、AT01抗体、NB7抗体、及びFAN2抗体を挙げることができる。
【0052】
AT01抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列表の配列番号5に、及び当該配列をコードするポリヌクレオチド配列は配列表の配列番号6に、NB7抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列表の配列番号7に、及び当該配列をコードするポリヌクレオチド配列は配列表の配列番号8に、並びにFAN2抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列表の配列番号9に、及び当該配列をコードするポリヌクレオチド配列は配列表の配列番号10に、各々示されている。
【0053】
また、AT01抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列表の配列番号11に、及び当該配列をコードするポリヌクレオチド配列は配列表の配列番号12に、NB7抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列表の配列番号13に、及び当該配列をコードするポリヌクレオチド配列は配列表の配列番号14に、並びにFAN2抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列表の配列番号15に、及び当該配列をコードするポリヌクレオチド配列は配列表の配列番号16に、各々示されている。
【0054】
AT01抗体の重鎖可変領域は、配列番号17に示されるアミノ酸配列(GYTFTNNWLH)からなるCDRH1、配列番号18に示されるアミノ酸配列(DIYPSNGRTN)からなるCDRH2及び配列番号19に示されるアミノ酸配列(ERGYFDY)からなるCDRH3を有している。また、当該抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列(KASQDINKYIA)からなるCDRL1、配列番号21に示されるアミノ酸配列(YTSTLQP)からなるCDRL2及び配列番号22に示されるアミノ酸配列(LQYDYLLT)からなるCDRL3を有している。なお、上記のCDRのアミノ酸配列は、図24-1にも記載されている。
【0055】
NB7抗体の重鎖可変領域は、配列番号23に示されるアミノ酸配列(GYSITSDYAWN)からなるCDRH1、配列番号24に示されるアミノ酸配列(HISYRGNTN)からなるCDRH2及び配列番号25に示されるアミノ酸配列(WNYYGYVDYAMDY)からなるCDRH3を有している。また、当該抗体の軽鎖可変領域は、配列番号26に示されるアミノ酸配列(RASQDISNYLN)からなるCDRL1、配列番号27に示されるアミノ酸配列(YTSRLHS)からなるCDRL2及び配列番号28に示されるアミノ酸配列(QQGDTFPT)からなるCDRL3を有している。なお、上記のCDRのアミノ酸配列は、図24-2にも記載されている。
【0056】
FAN2抗体の重鎖可変領域は、配列番号29に示されるアミノ酸配列(GFSLTGYGVN)からなるCDRH1、配列番号30に示されるアミノ酸配列(MIWGDGSTD)からなるCDRH2及び配列番号31に示されるアミノ酸配列(DKGYDGYYYAMDY)からなるCDRH3を有している。また、当該抗体の軽鎖可変領域は、配列番号32に示されるアミノ酸配列(RASENIYSYLA)からなるCDRL1、配列番号33に示されるアミノ酸配列(DAKTLAE)からなるCDRL2及び配列番号34に示されるアミノ酸配列(QHHYGIPYT)からなるCDRL3を有している。なお、上記のCDRのアミノ酸配列は、図24-3にも記載されている。
【0057】
一実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、ヒトTLR7への結合おいて、AT01抗体、NB7抗体、又はFAN2抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する抗体と競合阻害活性を有し得る。
【0058】
別の実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、重鎖における相補性決定領域としてAT01抗体のCDRH1~3及び軽鎖における相補性決定領域としてAT01抗体のCDRL1~3を有する抗体又はその抗原結合性断片、重鎖における相補性決定領域としてNB7抗体のCDRH1~3及び軽鎖における相補性決定領域としてNB7抗体のCDRL1~3を有する抗体又はその抗原結合性断片、又は重鎖における相補性決定領域としてFAN2抗体のCDRH1~3及び軽鎖における相補性決定領域としてFAN2抗体のCDRL1~3を有する抗体又はその抗原結合性断片であり得る。好ましい態様において、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、重鎖における相補性決定領域としてAT01抗体のCDRH1~3及び軽鎖における相補性決定領域としてAT01抗体のCDRL1~3を有する抗体又はその抗原結合性断片であり得る。
【0059】
また別の実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、AT01抗体、NB7抗体、又はFAN2抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域配列を有する抗体であり得る。
【0060】
本発明の抗体には、ヒトTLR7に対する上記のモノクローナル抗体に加え、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体、ヒト抗体なども含まれる。これらの抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
【0061】
キメラ抗体としては、抗体の可変領域と定常領域が互いに異種である抗体、例えばマウス又はラット由来抗体の可変領域をヒト由来の定常領域に接合したキメラ抗体を挙げることができる(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81,6851-6855,(1984)参照)。マウス抗ヒトTLR7抗体(AT01抗体)由来のキメラ抗体としては、配列番号5のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を有する重鎖及び配列番号11のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を有する軽鎖からなる抗体を挙げることができる。このようなAT01抗体由来のキメラ抗体の一例としては、配列番号35における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号36における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体を挙げることができる。本明細書においては、前記の抗体を「cAT01」あるいは「cAT01抗体」と呼称する。
【0062】
また、マウス抗ヒトTLR7抗体(NB7抗体)由来のキメラ抗体としては、配列番号7のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を有する重鎖及び配列番号13のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を有する軽鎖からなる抗体を挙げることができる。このようなNB7抗体由来のキメラ抗体の一例としては、配列番号37における20番目から471番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号38における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体を挙げることができる。本明細書においては、前記の抗体を「cNB7」あるいは「cNB7抗体」と呼称する。
【0063】
更に、マウス抗ヒトTLR7抗体(FAN2抗体)由来のキメラ抗体としては、配列番号9のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を有する重鎖、及び配列番号15のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を有する軽鎖からなる抗体を挙げることができる。このようなFAN2抗体由来のキメラ抗体の一例としては、配列番号39における20番目から470番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号40における21番目から234番目のアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体を挙げることができる。本明細書においては、前記の抗体を「cFAN2」あるいは「cFAN2抗体」と呼称する。
【0064】
上記のヒトTLR7に対するキメラ抗体の配列を、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変して、遺伝子組換え型抗体であるヒト化(Humanized)抗体を作製することができる。また、本発明の抗体には、前記ヒト化抗体のCDRを改変した抗体が含まれる。これらの抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
【0065】
ヒト化抗体としては、CDRのみをヒト由来の抗体に組み込んだ抗体(Nature(1986)321,p.522-525参照)、CDRの配列に加え一部のフレームワークのアミノ酸残基もヒト抗体に移植した抗体(国際公開第WO90/07861号パンフレット)を挙げることができる。
【0066】
例えば、cAT01抗体及びcNB7抗体由来のヒト化抗体は、cAT01又はcNB7に由来する6種全てのCDR配列を保持し、ヒトTLR7の機能を阻害する活性を有している。
【0067】
上記のヒト化抗体の好適な事例としては、cAT01抗体由来のヒト化抗体(huAT01抗体)として、
配列番号41に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖及び配列番号43に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる抗体、
配列番号41に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖及び配列番号44に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる抗体、
配列番号42に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖及び配列番号43に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる抗体、
配列番号42に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖及び配列番号44に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる抗体、
を挙げることができる。
【0068】
また上記のhuAT01抗体の各重鎖可変領域のアミノ酸配列及び各軽鎖可変領域のアミノ酸配列と高い相同性を示す配列を組み合わせることによって、当該抗体と同等の活性を有する抗体を選択することが可能である。このような相同性は、一般的には80%以上の相同性であり、好ましくは90%以上の相同性であり、より好ましくは95%以上の相同性であり、最も好ましくは99%以上の相同性である(但し、各CDRは上記の各抗体と同一である)。また、上記重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列(但し、各CDRの部位を除く)に1乃至数個(例えば2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個)のアミノ酸残基が置換、欠失又は付加されたアミノ酸配列を組み合わせることによっても、上記の各抗体と同等の活性を有する抗体を選択することが可能である。
【0069】
さらに好適な事例としては、
配列番号45に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号48に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体、
配列番号45に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号49に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体、
配列番号46に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号48に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体、
配列番号46に記載のアミノ酸配列における20番目から465番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号49に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体、
配列番号47に記載のアミノ酸配列における20番目から462番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号48に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体、又は
配列番号47に記載のアミノ酸配列における20番目から462番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号49に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体、
を挙げることができる。
【0070】
また、cNB7抗体由来のヒト化抗体(huNB7抗体)として、配列番号50のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖及び配列番号51のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる抗体を挙げることができる。
【0071】
また上記のhuNB7抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列と高い相同性を示す配列を組み合わせることによって、当該抗体と同等の活性を有する抗体を選択することが可能である。このような相同性は、一般的には80%以上の相同性であり、好ましくは90%以上の相同性であり、より好ましくは95%以上の相同性であり、最も好ましくは99%以上の相同性である(但し、各CDRは上記の各抗体と同一である)。また、上記重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列(但し、各CDRの部位を除く)に1乃至数個(例えば2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個)のアミノ酸残基が置換、欠失又は付加されたアミノ酸配列を組み合わせることによっても、上記の抗体と同等の活性を有する抗体を選択することが可能である。
【0072】
さらに好適な事例としては、
配列番号52に記載のアミノ酸配列における20番目から471番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号53に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体、又は
配列番号54に記載のアミノ酸配列における20番目から468番目のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号53に記載のアミノ酸配列における21番目から233番目のアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体、
を挙げることができる。
【0073】
本発明の抗体は、上記のヒト化抗体にさらに変異を導入して、ヒトTLR7に対する結合能を変更させたものであっても良い。このような手法はアフィニティマチュレーションと呼ばれるが、具体的な方法としてリボゾームディスプレイ法を挙げることができる。リボゾームディスプレイ法は、蛋白質とその遺伝子情報であるmRNAがリボソームを介して結合した三者複合体を用い、標的分子と結合する蛋白質の遺伝子配列を単離する方法である(Stafford RL. et. al. Protein Eng. Des. Sel. 2014(4):97-109.)。
【0074】
正常のヒトTLR7発現細胞への細胞傷害を回避するために、抗体のエフェクター活性は低いことが望ましい。エフェクター活性は抗体のサブクラスによって異なることが知られている。IgG4はADCC、CDC活性が低く、IgG2はCDC活性を有するが、ADCC活性は低い、などの特徴が見られる。この特徴より、IgG1の定常領域をIgG2又はIgG4の定常領域に置換することによってADCC、CDC活性を低減させた抗体を作製することが可能である。また、IgG1の定常領域の一部の配列をIgG2又はIgG4を参考にして置換することにより、ADCC、CDC活性を低減させたIgG1抗体を作製することが可能である。一例として、Marjan Hezareh et. al. Journal of Virology, 75(24):12161-12168(2001)によれば、IgG1の234番目、235番目のロイシン残基(数字はKabatらによるEUインデックス)をそれぞれアラニン残基に置換すると、ADCC、CDC活性が低下することが示されている。
【0075】
本発明には抗体又は当該抗体の抗原結合性断片の修飾体も含まれる。当該修飾体とは、本発明の抗体又は当該抗体の抗原結合性断片に化学的又は生物学的な修飾が施されてなるものを意味する。化学的な修飾体には、アミノ酸骨格への化学部分の結合、N-結合又はO-結合炭水化物鎖の化学修飾体等が含まれる。生物学的な修飾体には、翻訳後修飾(例えば、N-結合又はO-結合への糖鎖付加、N末端又はC末端のプロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化)されたもの、原核生物宿主細胞を用いて発現させることによりN末端にメチオニン残基が付加したもの等が含まれる。また、本発明の抗体又は抗原の検出又は単離を可能にするために標識されたもの、例えば、酵素標識体、蛍光標識体、アフィニティ標識体もかかる修飾物の意味に含まれる。このような本発明の抗体の又は当該抗体の抗原結合性断片の修飾物は、元の本発明の抗体の安定性及び血中滞留性の改善、抗原性の低減、かかる抗体又は抗原の検出又は単離等に有用である。
【0076】
哺乳類培養細胞で生産される抗体の重鎖のカルボキシル末端のリシン残基が欠失することが知られており(Journal of Chromatography A,705:129-134(1995))、また、同じく重鎖カルボキシル末端のグリシン、リシンの2アミノ酸残基が欠失し、新たにカルボキシル末端に位置するプロリン残基がアミド化されることが知られている(Analytical Biochemistry,360:75-83(2007))。
【0077】
しかし、これらの重鎖配列の欠失及び修飾は、抗体の抗原結合能及びエフェクター機能(補体の活性化や抗体依存性細胞傷害作用など)には影響を及ぼさない。
【0078】
従って、本発明の抗体及び当該抗体の抗原結合性断片の修飾体としては、重鎖カルボキシル末端において1又は2つのアミノ酸が欠失した欠失体、及びアミド化された当該欠失体(例えば、カルボキシル末端部位のプロリン残基がアミド化された重鎖)等を挙げることができる。但し、抗原結合能及びエフェクター機能が保たれている限り、本発明に係る抗体の重鎖のカルボキシル末端の欠失体は上記の種類に限定されない。
【0079】
本発明に係る抗体を構成する2本の重鎖は、完全長及び上記の欠失体からなる群から選択される重鎖のいずれか一種の組み合わせからなるものであっても良いし、いずれか二種の組み合わせからなるものであっても良い。各欠失体の量比は本発明に係る抗体を産生する哺乳類培養細胞の種類及び培養条件に影響を受け得るが、本発明に係る抗体の主成分としては2本の重鎖の双方でカルボキシル末端の1つのアミノ酸残基が欠失している場合を挙げることができる。即ち、配列表に記載の配列番号35において20番目から465番目のアミノ酸配列、配列番号37において20番目から471番目のアミノ酸配列、配列番号39において20番目から470番目のアミノ酸配列、配列番号45において20番目から465番目のアミノ酸配列、配列番号46において20番目から465番目のアミノ酸配列、配列番号47において20番目から462番目のアミノ酸配列、配列番号52において20番目から471番目のアミノ酸配列及び配列番号54において20番目から468番目のアミノ酸配列に示される各重鎖配列のカルボキシル末端において1又は2つのアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなる重鎖も本発明の抗体に使用することができる。
【0080】
以上の方法によって得られた抗体は、抗原に対する結合性を評価し、好適な抗体を選抜することができる。抗体の性質を比較する際の別の指標の一例としては、抗体の安定性を挙げることができる。示差走査カロリメトリー(DSC)は、蛋白の相対的構造安定性の良い指標となる熱変性中点(Tm)を素早く、また正確に測定することができる方法である。DSCを用いてTm値を測定し、その値を比較することによって、熱安定性の違いを比較することができる。抗体の保存安定性は、抗体の熱安定性とある程度の相関を示すことが知られており(Lori Burton,et. al.,Pharmaceutical Development and Technology(2007)12,p.265-273)、熱安定性を指標に、好適な抗体を選抜することができる。抗体を選抜するための他の指標としては、適切な宿主細胞における収量が高いこと、及び水溶液中での凝集性が低いことを挙げることができる。例えば収量の最も高い抗体が最も高い熱安定性を示すとは限らないので、以上に述べた指標に基づいて総合的に判断して、ヒトへの投与に最も適した抗体を選抜する必要がある。
【0081】
また、抗体の重鎖及び軽鎖の全長配列を適切なリンカーを用いて連結し、一本鎖イムノグロブリン(single chain immunoglobulin)を取得する方法も知られている(Lee,H-S,et.al.,Molecular Immunology(1999)36,p.61-71;Shirrmann,T.et.al.,mAbs(2010),2,(1)p.1-4)。このような一本鎖イムノグロブリンは二量体化することによって、本来は四量体である抗体と類似した構造と活性を保持することが可能である。また、本発明の抗体は、単一の重鎖可変領域を有し、軽鎖配列を有さない抗体であっても良い。このような抗体は、単一ドメイン抗体(single domain antibody:sdAb)又はナノボディ(nanobody)と呼ばれており、実際にラクダ又はラマで観察され、抗原結合能が保持されていることが報告されている(Muyldemans S.et.al.,Protein Eng.(1994)7(9),1129-35,Hamers-Casterman C.et.al.,Nature(1993)363(6428)446-8)。上記の抗体は、本発明における抗体の抗原結合性断片の一種と解釈することも可能である。
【0082】
また、本発明の抗体に結合している糖鎖修飾を調節することによって、抗体依存性細胞傷害活性を増強することが可能である。抗体の糖鎖修飾の調節技術としては、WO99/54342、WO00/61739、WO02/31140、WO2007/133855、WO2013/120066等が知られているが、これらに限定されるものではない。
【0083】
抗体遺伝子を一旦単離した後、適当な宿主に導入して抗体を作製する場合には、適当な宿主と発現ベクターの組み合わせを使用することができる。
【0084】
抗体遺伝子の具体例としては、本明細書に記載された抗体の重鎖配列をコードする遺伝子及び軽鎖配列をコードする遺伝子を組み合わせたものを挙げることができる。より具体的には、抗体遺伝子としては、例えば、本発明の抗体又はその抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、本発明の抗体又はその抗原結合性断片の重鎖可変領域のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチ及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドの組み合わせなどが挙げられる。抗体遺伝子を構成する重鎖配列遺伝子には、重鎖可変領域をコードする上記ポリヌクレオチド配列と相補的なポリヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドが有するポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドも含まれる。また抗体遺伝子を構成する軽鎖配列遺伝子には、軽鎖可変領域をコードする上記ポリヌクレオチド配列と相補的なポリヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドが有するポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドも含まれる。
【0085】
宿主細胞を形質転換する際には、重鎖配列遺伝子と軽鎖配列遺伝子は、同一の発現ベクターに挿入されていることが可能であり、又別々の発現ベクターに挿入されていることも可能である。真核細胞を宿主として使用する場合、動物細胞、植物細胞、真核微生物を用いることができる。動物細胞としては、(1)哺乳類細胞、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(Gluzman,Y.Cell(1981)23,p.175-182、ATCC CRL-1650)、マウス線維芽細胞NIH3T3(ATCC No.CRL-1658)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC CCL-61)のジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(Urlaub,G.and Chasin,L.A.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1980)77,p.4126-4220)を挙げることができる。また、原核細胞を使用する場合は、例えば、大腸菌、枯草菌を挙げることができる。これらの細胞に目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより抗体が得られる。以上の培養法においては抗体の配列によって収量が異なる場合があり、同等な結合活性を持つ抗体の中から収量を指標に医薬としての生産が容易なものを選別することが可能である。
【0086】
本発明の抗体のアイソタイプとしての制限はなく、例えばIgG(IgG1,IgG2,IgG3,IgG4)、IgM、IgA(IgA1,IgA2)、IgDあるいはIgE等を挙げることができるが、好ましくはIgG又はIgM、さらに好ましくはIgG1又はIgG4を挙げることができる。
【0087】
また本発明の抗体は、抗体の抗原結合部を有する抗体の抗原結合性断片又はその修飾物であってもよい。抗体をパパイン、ペプシン等の蛋白質分解酵素で処理するか、あるいは抗体遺伝子を遺伝子工学的手法によって改変し適当な培養細胞において発現させることによって、該抗体の断片を得ることができる。このような抗体断片のうちで、抗体全長分子の持つ機能の全て又は一部を保持している断片を抗体の抗原結合性断片と呼ぶことができる。
【0088】
抗体の機能としては、一般的には抗原結合活性、抗原の活性を中和する活性、抗原の活性を増強する活性、抗体依存性細胞傷害活性、補体依存性細胞傷害活性及び補体依存性細胞性細胞傷害活性を挙げることができる。本発明における抗体の抗原結合性断片が保持する機能は、ヒトTLR7に対する結合活性であり、好ましくはヒトTLR7の機能を阻害する活性であり、より好ましくはTLR7発現細胞によるIL-6及び/又はI型インターフェロンの産生を抑制する活性である。
【0089】
例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab’)2、Fv、又は重鎖及び軽鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)、diabody(diabodies)、線状抗体、及び抗体断片より形成された多特異性抗体などを挙げることができる。また、F(ab’)2を還元条件下で処理した抗体の可変領域の一価の断片であるFab’も抗体の断片に含まれる。
【0090】
更に、本発明の抗体は少なくとも2種類の異なる抗原に対して特異性を有する多特異性抗体であってもよい。通常このような分子は2種類の抗原に結合するものであるが(即ち、二重特異性抗体(bispecific antibody))、本発明における「多特異性抗体」は、それ以上(例えば、3種類)の抗原に対して特異性を有する抗体を包含するものである。
【0091】
本発明の多特異性抗体は、全長からなる抗体、又はそのような抗体の断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)でもよい。二重特異性抗体は2種類の抗体の重鎖と軽鎖(HL対)を結合させて作製することもできるし、異なるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを融合させて、二重特異性抗体産生融合細胞を作製することによっても、作製することができる(Millstein et al.,Nature(1983)305,p.537-539)。
【0092】
本発明の抗体は一本鎖抗体(scFvとも記載する)でもよい。一本鎖抗体は、抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とをポリペプチドのリンカーで連結することにより得られる(Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,113(Rosenberg及びMoore編、Springer Verlag,New York,p.269-315(1994)、Nature Biotechnology(2005),23,p.1126-1136)。また、2つのscFvをポリペプチドリンカーで結合させて作製されるBiscFv断片を二重特異性抗体として使用することもできる。
【0093】
一本鎖抗体を作製する方法は当技術分野において周知である(例えば、米国特許第4,946,778号、米国特許第5,260,203号、米国特許第5,091,513号、米国特許第5,455,030号等を参照)。このscFvにおいて、重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、コンジュゲートを作らないようなリンカー、好ましくはポリペプチドリンカーを介して連結される(Huston,J.S.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1988),85,p.5879-5883)。scFvにおける重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、同一の抗体に由来してもよく、別々の抗体に由来してもよい。可変領域を連結するポリペプチドリンカーとしては、例えば12~19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
【0094】
scFvをコードするDNAは、前記抗体の重鎖又は重鎖可変領域をコードするDNA、及び軽鎖又は軽鎖可変領域をコードするDNAのうち、それらの配列のうちの全部又は所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を鋳型とし、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにポリペプチドリンカー部分をコードするDNA、及びその両端が各々重鎖、軽鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合わせて増幅することにより得られる。
【0095】
また、一旦scFvをコードするDNAが作製されると、それらを含有する発現ベクター、及び当該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いることにより、常法に従ってscFvを得ることができる。これらの抗体断片は、前記と同様にして遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。
【0096】
本発明の抗体は、多量化して抗原に対する親和性を高めたものであってもよい。多量化する抗体としては、1種類の抗体であっても、同一の抗原の複数のエピトープを認識する複数の抗体であってもよい。抗体を多量化する方法としては、IgG CH3ドメインと2つのscFvとの結合、ストレプトアビジンとの結合、へリックスーターン‐へリックスモチーフの導入等を挙げることができる。
【0097】
本発明の抗体は、アミノ酸配列が異なる複数種類の抗ヒトTLR7抗体の混合物である、ポリクローナル抗体であってもよい。ポリクローナル抗体の一例としては、CDRが異なる複数種類の抗体の混合物を挙げることができる。そのようなポリクローナル抗体としては、異なる抗体を産生する細胞の混合物を培養し、該培養物から精製された抗体を用いることが出来る(WO2004/061104号参照)。
【0098】
抗体の修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。
【0099】
本発明の抗体は、更にこれらの抗体と他の薬剤がコンジュゲートを形成しているもの(Immunoconjugate)でもよい。このような抗体の例としては、該抗体が放射性物質や薬理作用を有する化合物と結合している物を挙げることができる(Nature Biotechnology(2005)23,p.1137-1146)。
【0100】
得られた抗体は、均一にまで精製することができる。抗体の分離、精製は通常の蛋白質で使用されている分離、精製方法を使用すればよい。例えばカラムクロマトグラフィー、フィルター濾過、限外濾過、塩析、透析、調製用ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動等を適宜選択、組み合わせれば、抗体を分離、精製することができる(Strategies for Protein Purification and Characterization:A Laboratory Course Manual,Daniel R.Marshak et al.eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1996);Antibodies:A Laboratory Manual.Ed Harlow and David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory(1988))が、これらに限定されるものではない。
【0101】
クロマトグラフィーとしては、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等を挙げることができる。これらのクロマトグラフィーは、HPLCやFPLC等の液体クロマトグラフィーを用いて行うことができる。アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プロテインGカラムを挙げることができる。例えばプロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D,POROS,Sepharose F.F.(ファルマシア)等を挙げることができる。また、抗原を固定化した担体を用いて、抗原への結合性を利用して抗体を精製することも可能である。
【0102】
3.抗ヒトTLR7抗体を含有する医薬
上述の「2.抗TLR7抗体及びその製造」の項に記載された方法で得られる抗ヒトTLR7抗体の中から、ヒトTLR7の機能を阻害する抗体を得ることができる。これらヒトTLR7の機能を阻害する抗体は、生体内でのヒトTLR7の生物活性、即ち、血球細胞に代表されるヒトTLR7発現細胞のヒトTLR7リガンドによる活性化を阻害できることから、医薬として、これらのヒトTLR7の機能に起因する疾患に対する治療及び/又は予防剤として用いることができる。
【0103】
ヒトTLR7の機能に起因する疾患や状態には、免疫炎症関連疾患、アレルギー性疾患、感染症又はがんなどが含まれる。
【0104】
免疫炎症関連疾患の例としては、結合組織や筋骨格系(全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、成人スチル病、強直性脊椎炎、全身性強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬性関節炎、骨関節炎、混合性結合組織病、筋ジストロフィーなど)、血液系(自己免疫性溶血性貧血、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病など)、消化器管系(クローン病、潰瘍性大腸炎、回腸炎など)、肝胆膵及び内分泌系(自己免疫性肝炎、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪肝炎、原発性硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、シェーグレン症候群、1型糖尿病、自己免疫甲状腺炎、バセドウ病、橋本病など)、呼吸器系(慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、間質性肺炎など)、脳神経系(多発性硬化症、重症筋無力症、髄膜炎、脳脊髄炎、自己免疫性脳炎など)、視覚系(ブドウ膜炎、トラコーマ、眼内炎など)、心血管系(血管炎症候群、多発血管炎性肉芽腫症ヴェゲナー肉芽腫症、心筋炎、虚血性心疾患、アテローム性動脈硬化症など)、皮膚表皮系(乾癬、天疱瘡、白斑、接触性皮膚炎、湿疹など)、腎系(糸球体腎炎、糖尿病性腎症、IgA腎症、紫斑病性腎炎、ネフローゼ、間質性膀胱炎など)、内分泌系(1型糖尿病、自己免疫甲状腺炎、バセドウ病、橋本病など)、全身性炎症(ベーチェット病、抗リン脂質抗体症候群、IgG4関連疾患、敗血症、出血、過敏症、移植拒絶、がん化学療法などに起因するショック症状など)などが挙げられる。
【0105】
アレルギー性疾患の例としては、アトピー性皮膚炎、喘息、アナフィラキシー、アナフィラキシー様反応、食物アレルギー、鼻炎、中耳炎、薬物反応、昆虫刺傷反応、植物反応、ラテックスアレルギー、結膜炎、蕁麻疹などが挙げられる。
【0106】
感染症の例としては、ウイルス(1本鎖RNAウイルス、2本鎖RNAウイルス、1本鎖DNAウイルス、2本鎖DNAウイルス等)、細菌(グラム陰性菌、グラム陽性菌、抗酸菌、放線菌、スピロヘータ、らせん菌、リケッチア、クラミジア、マイコプラズマ等)、真菌(白癬菌、カンジダ、クリプトコッカス、アスペルギルス、ニューモシスチス、マラセチア等)、寄生虫(フィラリア、吸虫、条虫、ジストマ、エキノコックス、赤痢アメーバ、ノミ、シラミ、ダニ、回虫、蟯虫等)等の感染に起因する疾患が挙げられる。
【0107】
がん治療の例としてはリンパ腫、白血病、乳がん、肺がん、皮膚がん、等が挙げられる。
【0108】
上記の医薬としての抗ヒトTLR7抗体の例として、AT01抗体及び/又はNB7抗体から作製されたキメラ抗体、ヒト化抗体及びこれのCDR改変体を挙げることができる。
【0109】
In vitroでの抗ヒトTLR7抗体によるヒトTLR7の機能阻害活性は、例えばヒトTLR7を発現している血球細胞の活性化抑制活性で測定することができる。例えば、ヒトPBMCに種々の濃度で抗ヒトTLR7抗体を添加することで、CL264刺激によるヒトPBMCからのIL-6放出に対する抑制活性を測定することができる。
【0110】
全身性エリテマトーデスをはじめとする各種免疫炎症関連疾患においてヒトTLR7のリガンド濃度が上昇している、ヒトTLR7発現が亢進している、あるいはヒトTLR7刺激が入っていることは、実験的に証明された事実であり、広く認識されている。ヒトTLR7リガンドがヒトTLR7発現細胞に作用し産生されるインターロイキン6(IL-6)等の炎症性サイトカイン類による炎症反応や抗体産生増強、活性化によるI型インターフェロンの放出によって、全身性の免疫炎症反応を生じさせ、全身性エリテマトーデス等の自己免疫が発症・増悪する。従って、これらのヒトTLR7刺激に依存したサイトカイン類の産生を抑制することは、全身性エリテマトーデス等の予防や治療に繋がるとともに、その抑制活性を指標とすることで、ヒトTLR7抗体の治療薬としての有用性を判断することが出来る。
【0111】
本発明における好適な抗体として、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列を有するヒトTLR7に特異的に結合し、CL264処理されたヒトPBMCが放出するIL-6量を添加濃度依存的に抑制することを特徴とする、抗体又は当該抗体の抗原結合性断片を挙げることができる。
【0112】
さらに抗ヒトTLR7抗体の各種疾患に対する治療又は予防効果は、抗ヒトTLR7抗体と交差性を有するサルへの当該抗体投与によるin vivo評価系若しくはex vivo評価系、又はヒトTLR7トランスジェニック且つマウスTLR7ノックアウトマウスへの抗ヒトTLR7抗体投与による、以下のin vivo評価系によっても確認できる。
【0113】
炎症性サイトカイン産生に対する効果は、マウスの腹腔内や静脈内にTLR7リガンドを投与することで惹起した炎症において、末梢血中のサイトカイン産生能を抗TLR7抗体群と非投与群間で比較することで評価する。
【0114】
アトピー性皮膚炎に対する効果は、ダニ抗原クリームを耳介又は背部に3日~2週間ごとに3~6回繰り返し塗布する、あるいはハプテン類を耳介や腹部や背部に連日~週1回塗布する、掻痒誘発物質を耳介皮内や背部皮下やくも膜下腔内に投与する、あるいは自然発症アトピーマウスであるNC/Ngaマウスを用いるなどの方法で惹起ないし自然発症させたアトピー性皮膚炎に起因する行動を、マウスの両足甲に装着したマグネットと掻痒行動測定装置による掻痒回数の測定や、皮膚・末梢血・脊髄組織の病理的特徴を検査することで定量化し、抗ヒトTLR7抗体群と非投与群間で比較することで評価する。
【0115】
乾癬に対する効果は、ImiquimodやR848を耳介及び剃毛済み背部に塗布する、IL-23などのサイトカインをマウス耳介皮内に投与するなどの方法で誘導した乾癬様皮膚炎を、炎症部位の重量、厚み、その部位に浸潤した好中球のミエロペルオキシダーゼ活性、浸潤した細胞のフローサイトメトリー解析、遺伝子解析、サイトカイン濃度などの測定により定量化し、抗ヒトTLR7抗体群と非投与群間で比較することで評価する。
【0116】
関節炎に対する効果は、ウシII型コラーゲン溶液とフロイントの完全アジュバントを混合し乳化したものをマウスの尾根部皮内に投与し、2~3週間後にウシII型コラーゲン溶液とフロイントの不完全アジュバントを混合し乳化したものを投与するか、あるいは抗ウシII型コラーゲン抗体とTLRリガンドを投与するなどの方法で誘導した関節炎を、その後の関節腫脹のスコア化、足蹠の厚み測定、血液や組織中の抗体・サイトカイン・血中バイオマーカー濃度、末梢血・脾臓・リンパ節・骨髄・関節部位から得た細胞の増殖活性・サイトカイン産生能・表面抗原などを、抗ヒトTLR7抗体群と非投与群間で比較することで評価する。
【0117】
大腸炎に対する効果は、トリニトロベンゼンスルホン酸を24時間絶食下のマウス腸管内に投与する、1-10%のデキストラン硫酸ナトリウム水溶液を給水瓶より4日から2週間自由飲水させる、ヒトTLR7トランスジェニックマウスのリンパ節と脾臓から採取し精製したCD4+CD25-CD45RBhi T細胞をRag2欠損マウスの腹腔内に移入するなどの方法で大腸炎を誘導し、観察期間中の体重、試験終了後の剖検による腸管の肥厚度・ポリープの個数と大きさ・病理組織学的特徴、血液や組織中の抗体・サイトカイン・血中バイオマーカー濃度、腸管・末梢血・胸腺・脾臓・リンパ節・骨髄・パイエル板から得た細胞の増殖活性・サイトカイン産生能・表面抗原などを、抗ヒトTLR7抗体群と非投与群間で比較することで評価する。
【0118】
全身性エリテマトーデスに対する効果は、自然発症モデルであるNZB/WF1マウス、MRL/lprマウス、BXSBマウスから経時的に採取した血液や組織中の抗体・サイトカイン・血中バイオマーカー濃度、尿中の抗体価やバイオマーカー濃度、試験終了後に採取した脾臓・リンパ節などの臓器から細胞を調製して無処置のマウスに移入することで惹起させた症状などを、抗ヒトTLR7抗体群と非投与群間で比較することで評価する。
【0119】
肝炎に対する効果は、D‐ガラクトサミンを単独又はリポポリサッカライドとの組み合わせでマウスの腹腔内に投与する、コンカナバリンAを単独で尾静脈内に投与するなどの方法で肝炎を誘導し、起炎物質投与の1時間~1週間後に採取した血液中のAST及びALT濃度、サイトカイン濃度、肝病変の組織病理学的状態を抗ヒトTLR7抗体群と非投与群間で比較することで評価する。
【0120】
このようにして得られたヒトTLR7の生物活性を阻害する抗体は、医薬として、特に全身性エリテマトーデスをはじめとする免疫炎症関連疾患、アレルギー性疾患、感染症、又はがんなどを予防又は治療するための抗体として有用である。
【0121】
抗ヒトTLR7抗体は、一つの例としては、免疫炎症関連疾患、アレルギー性疾患、感染症、又はがんの治療又は予防に対しては該抗体単独で、あるいは少なくとも一つの他の治療剤と併用して投与することができる。抗ヒトTLR7抗体と併用して投与できる他の治療剤としては、副腎皮質ステロイド剤、非ステロイド性抗炎症薬、核酸代謝拮抗剤、核酸合成阻害剤、葉酸代謝拮抗剤、カルシニューリン阻害剤、抗マラリア薬、抗胸腺細胞グロブリン剤、細胞表面抗原を標的とする生物製剤、又はサイトカイン・インターフェロンもしくはサイトカイン・インターフェロン受容体を標的とする生物製剤等を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0122】
上記の治療剤の具体例としては、副腎皮質ステロイド剤としてはMethylprednisolone、非ステロイド性抗炎症薬としてはLoxoprofen Sodium Hydrate、Diclofenac sodium、Indomethacin、Acetyl salicylic acid、核酸代謝拮抗剤としてはMycophenolate mofetil、核酸合成阻害剤としてはCyclophosphamide、カルシニューリン阻害剤としてはCyclosporin、Taclorims、抗マラリア薬としてはHydroxychloroquine、葉酸代謝拮抗剤としてはMethotrexate、抗胸腺細胞グロブリン剤としてはZetbulin、Lymphoglobuline、Thymoglobulin、細胞表面抗原を標的とする生物製剤としてはAlemtuzumab、Rituximab、Abatacept、サイトカイン・インターフェロンあるいはサイトカイン・インターフェロン受容体を標的とする生物製剤としてはInfliximab、Etanercept、Adalimumab、Tocilizumab、Belimumab、Anifrolumabなどを挙げることができる。
【0123】
免疫炎症関連疾患、アレルギー性疾患、感染症、又はがんの状態やどの程度の治療及び/又は予防を目指すかによって、2、3あるいはそれ以上の種類の他の治療剤を投与することもできるし、それらの他の治療剤は同じ製剤の中に封入することによって同時に投与することができる。他の治療剤と抗ヒトTLR7抗体は同じ製剤の中に封入することによって同時に投与することもできる。また、抗ヒトTLR7抗体と他の治療剤を別々の製剤に封入して同時に投与することもできる。さらに、他の治療剤と抗ヒトTLR7抗体を相前後して別々に投与することもできる。すなわち、他の治療剤を投与した後に抗ヒトTLR7抗体又は該抗体の抗原結合性断片を有効成分として含有する治療剤を投与するか、あるいは抗ヒトTLR7抗体又は該抗体の抗原結合性断片を有効成分として含有する治療剤を投与した後に他の治療剤を投与しても良い。遺伝子治療において投与する場合には、蛋白質性の治療剤の遺伝子と抗ヒトTLR7抗体の遺伝子は、別々のあるいは同じプロモーター領域の下流に挿入することができ、別々のあるいは、同じベクターに導入することができる。
【0124】
抗ヒトTLR7抗体、又はそのフラグメントに対し治療剤を結合させることにより、M.C.Garnet「Targeted drug conjugates: principles and progress」,Advanced Drug Delivery Reviews,(2001)53,171-216記載の標的型薬物複合体を製造することができる。この目的には、抗体分子のほか、T細胞の認識性を完全消失していない限り、いずれの抗体フラグメントも適用可能であるが、例えば、Fab、F(ab’)2、Fv等のフラグメントを例として挙げることができ、本発明においても同様に、抗体及び該フラグメントを使用することができる。抗ヒトTLR7抗体又は該抗体のフラグメントと治療剤との結合様式は、M.C.Garnet「Targeted drug conjugates:principles and progress」,Advanced Drug Delivery Reviews, (2001)53,171-216、G.T.Hermanson「Bioconjugate Techniques」Academic Press, California (1996)、Putnam and J.Kopecek「Polymer Conjugates with Anticancer Activity」Advances in Polymer Science(1995)122,55-123等に記載される種々の形態があり得る。すなわち、抗ヒトTLR7抗体と治療剤が化学的に直接あるいはオリゴペプチド等のスペーサーを介在して結合される様式や、適当な薬物担体を介在して結合される様式を挙げることができる。薬物担体の例としては、リポソームや水溶性高分子を挙げることができる。これら薬物担体が介在される様式としては、より具体的には、抗体と治療剤とがリポソームに包含され、該リポソームと抗体とが結合した様式、及び、治療剤が水溶性高分子(分子量1000乃至10万程度の化合物)に化学的に直接あるいはオリゴペプチド等のスペーサーを介在させて結合され、該水溶性高分子に抗体が結合した様式、を例として挙げることができる。抗体(又は該フラグメント)と治療剤、リポソーム及び水溶性高分子等の薬物担体との結合は、G.T.Hermanson「Bioconjugate Techniques」Academic Press, California(1996)、Putnam and J. Kopecek「Polymer Conjugates with Anticancer Activity」Advances in Polymer Science (1995)122, 55-123に記載の方法等の当業者周知の方法により実施することができる。治療剤のリポソームへの包含は、D.D.Lasic「Liposomes:From Physics to Applications」,Elsevier Science Publishers B.V., Amsterdam(1993)等に記載の方法等の当業者周知の方法により実施することができる。治療剤の水溶性高分子への結合は、D.Putnam and J Kopecek「Polymer Conjugates with Anticancer Activity」Advances in Polymer Science(1995)122,55-123記載の方法等の当業者周知の方法により、実施することができる。抗体(又は該フラグメント)と蛋白質性の治療剤(又は該フラグメント)との複合体は、上記の方法のほか、遺伝子工学的に、当業者周知の方法により作製することができる。
【0125】
本発明は、疾患の治療及び/又は予防に有効な量の抗ヒトTLR7抗体若しくは当該抗体の抗原結合性断片の少なくとも一つ又はそれらをコードするポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを有効成分として含有し、並びに薬学上許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存剤及び/又は補助剤を含む医薬組成物も提供する。
【0126】
本発明は、疾患の治療及び/又は予防に有効な量の抗ヒトTLR7抗体若しくは当該抗体の抗原結合性断片の少なくとも一つ又はそれらをコードするポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含有する発現ベクター、疾患の治療及び/又は予防に有効な量の少なくとも一つの治療剤、並びに薬学上許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存剤及び/又は補助剤を含む医薬組成物も提供する。
【0127】
治療剤としては、先に述べた葉酸代謝拮抗剤、カルシニューリン阻害剤、副腎皮質ステロイド剤、抗胸腺細胞グロブリン剤、核酸代謝拮抗剤、核酸合成阻害剤、細胞表面抗原を標的とする生物製剤、又はサイトカインもしくはサイトカイン受容体を標的とする生物製剤等を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0128】
本発明の医薬組成物において許容される製剤に用いる物質としては好ましくは投与量や投与濃度において、医薬組成物を投与される者に対して非毒性のものが好ましい。
【0129】
本発明の医薬組成物は、pH、浸透圧、粘度、透明度、色、等張性、無菌性、安定性、溶解率、徐放率、吸収率、浸透率を変えたり、保持したりするための製剤用の物質を含むことができる。製剤用の物質として以下のものを挙げることができるが、これらに制限されない:グリシン、アラニン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシン等のアミノ酸類、抗菌剤、アスコルビン酸、硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤、リン酸、クエン酸、ホウ酸バッファー、炭酸水素ナトリウム、トリス-塩酸(Tris-Hcl)溶液等の緩衝剤、マンニトールやグリシン等の充填剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤、カフェイン、ポリビニルピロリジン、β-シクロデキストリンやヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン等の錯化剤、グルコース、マンノース又はデキストリン等の増量剤、単糖類、二糖類等の他の炭水化物、着色剤、香味剤、希釈剤、乳化剤ポリビニルピロリジン等の親水ポリマー、低分子量ポリペプチド、塩形成対イオン、塩化ベンズアルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェ
ネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロレキシジン、ソルビン酸又は過酸化水素等の防腐剤、グリセリン、プロピレン・グリコール又はポリエチレングリコール等の溶媒、マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール、懸濁剤、ソルビタンエステル、ポリソルベート20やポリソルベート80等のポリソルベート、トリトン(triton)、トロメタミン(tromethamine)、レシチン又はコレステロール等の界面活性剤、スクロースやソルビトール等の安定化増強剤、塩化ナトリウム、塩化カリウムやマンニトール・ソルビトール等の弾性増強剤、輸送剤、賦形剤、及び/又は薬学上の補助剤。これらの製剤用の物質の添加量は、抗ヒトTLR7抗体の重量に対して0.01~100倍、特に0.1~10倍添加するのが好ましい。製剤中の好適な医薬組成物の組成は当業者によって、適用疾患、適用投与経路などに応じて適宜決定することができる。
【0130】
医薬組成物中の賦形剤や担体は液体でも固体でもよい。適当な賦形剤や担体は注射用の水や生理食塩水、人工脳脊髄液や非経口投与に通常用いられている他の物質でもよい。中性の生理食塩水や血清アルブミンを含む生理食塩水を担体に用いることもできる。医薬組成物にはpH7.0-8.5のTrisバッファー、pH4.0-5.5の酢酸バッファー、pH3.0-6.2のクエン酸バッファーを含むことができる。また、これらのバッファーにソルビトールや他の化合物を含むこともできる。本発明の医薬組成物には抗ヒトTLR7抗体を含む医薬組成物並びに、抗ヒトTLR7抗体及び少なくとも一つの治療剤を含む医薬組成物を挙げることができ、本発明の医薬組成物は選択された組成と必要な純度を持つ薬剤として、凍結乾燥品あるいは液体として準備される。抗ヒトTLR7抗体を含む医薬組成物並びに、抗ヒトTLR7抗体及び少なくとも一つの骨代謝異常治療薬剤を含む医薬組成物はスクロースのような適当な賦形剤を用いた凍結乾燥品として成型されることもできる。
【0131】
本発明の医薬組成物は非経口投与用に調製することもできるし、経口による消化管吸収用に調製することもできる。製剤の組成及び濃度は投与方法によって決定することができるし、本発明の医薬組成物に含まれる、抗ヒトTLR7抗体のヒトTLR7に対する親和性、即ち、ヒトTLR7に対する解離定数(Kd値)に対し、親和性が高い(Kd値が低い)ほど、ヒトへの投与量を少なくしても薬効を発揮することができるので、この結果に基づいて本発明の医薬組成物の人に対する投与量を決定することもできる。本発明における投与量は、抗ヒトTLR7抗体をヒトに対して投与する際には、約0.1~100mg/kgを1~180日間に1回投与すればよい。
【0132】
本発明の医薬組成物の形態としては、点滴を含む注射剤、坐剤、経鼻剤、舌下剤、経皮吸収剤などを挙げることができる。
【0133】
承認されている抗体製剤のほとんどは静脈内投与であるが、多くの医療現場では皮下投与がより好まれる。その場合には容量が1.0~1.5mLに制限されるため、投与量によっては高濃度の抗体溶液が要求される。しかし、高濃度化すると薬液の粘性が増加するために、常用される注射針の太さでは、その高い粘性のために注射できないという事態が生じうる。つまり、医薬組成物の形態としては、注射剤を選ぶ場合、粘度が低いという性質は優先されるべき重要な意味があり、粘度を指標に好適な抗体を選択することができる。
【実施例
【0134】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において遺伝子操作に関する各操作は特に明示がない限り、「モレキュラークローニング(Molecular Cloning)」(Sambrook,J.,Fritsch,E.F.及びManiatis,T.著,Cold Spring Harbor Laboratory Pressより1989年に発刊)に記載の方法により行うか、又は、市販の試薬やキットを用いる場合には市販品の指示書に従って使用した。
【0135】
[実施例1]マウス抗ヒトTLR7抗体の作製
1)-1 免疫
1)-1-1 ヒトTLR7-Flag-His×6/ヒトUnc93B1-HA×2強制発現Ba/F3細胞株の樹立
遺伝子のC末端側にFlag-His×6が付加するレトロウイルスベクターpMXs(Cell Biolabs, Inc.)に、ヒトTLR7(バリアント2)遺伝子(配列番号3)をIn Fusion(登録商標)酵素(Takara社製)を用いて組み込んだ。当該レトロウイルスベクターを、HEK293細胞由来のパッケージング細胞株Plat-E(Cell Biolabs, Inc.)に、トランスフェクション試薬であるFugene(登録商標)6(Roche)を用いて、遺伝子導入した。24時間後、培養上清を回収し、ウイルス懸濁液とした。当該ウイルス懸濁液をトランスフェクション試薬であるDOTAP(Roche)と混和して、Ba/F3細胞株(RIKEN, BRC)に加え、2000rpm、1時間、高速遠心を行い、ヒトTLR7-Flag-His×6発現Ba/F3細胞株を樹立した。
【0136】
ヒトTLR7(バリアント2)遺伝子(配列番号3)がコードするヒトTLR7は配列番号4のアミノ酸配列を有する。当該配列を図2に示す。
【0137】
遺伝子のC末端側にHA×2が付加するレトロウイルスベクターpMXs(Cell Biolabs, Inc.)に、ヒトUnc93B1遺伝子(配列番号55)をIn Fusion(登録商標)酵素(Takara社製)を用いて組み込んだ。当該レトロウイルスベクターを、HEK293細胞由来のパッケージング細胞株Plat-E(Cell Biolabs, Inc.)に、トランスフェクション試薬であるFugene (登録商標)6(Roche)を用いて、遺伝子導入した。24時間後、培養上清を回収し、ウイルス懸濁液とした。当該ウイルス懸濁液をトランスフェクション試薬であるDOTAP(Roche)と混和して、上記で樹立したヒトTLR7-Flag-His×6発現Ba/F3細胞株に加え、2000rpm、1時間、高速遠心を行い、ヒトTLR7-Flag-His×6/ヒトUnc93B1-HA×2強制発現Ba/F3細胞株を樹立した。
【0138】
1)-1-2 マウス免疫
1)-1-1で樹立したヒトTLR7-Flag-His×6/ヒトUnc93B1-HA×2強制発現Ba/F3細胞株をアジュバントであるTiterMAX(登録商標) Gold(TiterMax USA社製)と混合し、東京大学医科学研究所で作製したBALB/c背景のTLR9欠損マウスに、抗原として1週間ごとに合計3回、足底部、尾根部、腹腔内に投与した。
【0139】
4回目に、1×PBSで懸濁したヒトTLR7-Flag-His×6/ヒトUnc93B1-HA×2強制発現Ba/F3細胞株を腹腔内に投与した。
【0140】
最終免疫日から5日目に脾臓を摘出して、ハイブリドーマの作製に用いた。
【0141】
1)-2 ハイブリドーマ作製
免疫後の脾臓細胞とSp2/o細胞株(ATCC)を混合し、HVJ-E細胞融合キット(石原産業)を用いて細胞融合を行った。細胞融合操作の翌日から、ハイブリドーマを選択するために、HAT(Thermo Fisher Scientific)含有培養液(10% FBS、50 μM 2-Mercaptoethanol(Life Technologies)、50 U/mL Penicillin及び50 μg/mL Streptomycin(Life Technologies)を含むRPMI1640(Life Technologies)で培養し、出現したハイブリドーマコロニーを回収することでモノクローンハイブリドーマを作製した。
【0142】
1)-3 フローサイトメトリー解析によるヒトTLR7結合抗体スクリーニング
顕微鏡下でコロニーを形成しているハイブリドーマから培養上清を採取してスクリーニングに用いた。Saponin (Sigma-Aldrich) 0.1%で細胞膜透過処理を行ったhTLR7-Flag-His×6/hUnc93B1-HA×2強制発現Ba/F3細胞株と、何も発現させていないBa/F3細胞を、培養上清でそれぞれ染色し、フローサイトメトリー(LSRFortessaTMX-20,日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)で解析して抗hTLR7抗体を産生するハイブリドーマを選別した。
【0143】
1)-4 フローサイトメトリーによるヒトTLR7機能阻害抗体スクリーニング
Ba/F3細胞株(RIKEN, BRC)に、ヒトTLR7(バリアント2)遺伝子(配列番号3)及びヒトUnc93B1 D34A mutant-HA×2遺伝子(配列番号86)をレトロウイルスを用いて導入した。更に、当該細胞にNF-κB-緑色蛍光蛋白質(GFP)レポータープラスミド(STRATAGENE)をエレクトロポレーション法によって遺伝子導入し、NF-κBの活性化を解析できるhTLR7/hUnc93B1 D34A mutant-HA×2強制発現Ba/F3細胞株を確立し、当該細胞株にハイブリドーマの培養上清を添加した。4時間後、TLR7リガンドであるR848(InvivoGen)25ng/mlで刺激した。24時間後、フローサイトメトリーを用いて、GFPの蛍光度を測定してヒトTLR7応答の阻害効果を解析した結果、3つのマウス抗ヒトTLR7抗体産生ハイブリドーマを選抜し、各々AT01、NB7及びFAN2と命名した。
【0144】
本願明細書において、ハイブリドーマAT01、NB7及びFAN2が産生する抗体を、各々AT01抗体、NB7抗体及びFAN2抗体と称する。
【0145】
1)-5 抗体のアイソタイプ決定
1)-4で取得された各マウス抗ヒトTLR7抗体産生ハイブリドーマ(AT01、NB7及びFAN2)が産生する抗体のアイソタイプを、IsoStrip Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Kit(Merck)を用いて決定した。その結果、AT01抗体、NB7抗体及びFAN2抗体のアイソタイプは、各々IgG1/κ鎖であることが示された。
【0146】
1)-6 マウス抗ヒトTLR7抗体の調製
マウス抗ヒトTLR7モノクローナル抗体は、プリスタン(SIGMA-ALDRICH、現Merck)を前処置したICR-CD1-Foxn1ヌードマウス(ICR-nu、日本チャールズ・リバー)にハイブリドーマを腹腔内投与して、約10日後、回収した腹水から精製した。
【0147】
まず、プリスタンをICR-nuに腹腔内投与をして7日間以上、飼育した。次に、AT01、NB7、FAN2産生ハイブリドーマを10% FBS、50 μM 2-Mercaptoethanol(Life Technologies)、50 U/mL Penicillin及び50 μg/mL Streptomycin(Life Technologies)を含むRPMI1640(Life Technologies)で培養し、十分量まで増殖させた後、1×PBSに懸濁してICR-nuに腹腔内投与した。
【0148】
10日後、腹水を回収して、高速遠心機で血球を沈降させ、上清を回収した。1×PBSで腹水を10倍に希釈した後、0.45μmのフィルター(Millipore)を通した。
【0149】
抗体は、上記の腹水からAKTAprime plus(GEヘルスケアジャパン)を用いて、proteinGカラム(GEヘルスケアジャパン)で精製した。
【0150】
続いて、PD-10(GEヘルスケアジャパン)で、生理食塩水へのバッファー置換を行うとともに濃縮を行い、抗体濃度を1.0 mg/mL以上に調製した。
【0151】
最後にMillex-GV 0.22 μm(Millipore)で滅菌し、精製サンプルとした。
【0152】
[実施例2]マウス抗ヒトTLR7抗体のin vitro評価
2)-1 マウス抗ヒトTLR7抗体の結合選択能評価
2)-1-1 マウスTLR7-Flag-His×6強制発現Ba/F3細胞株の樹立
遺伝子のC末端側にFlag-His×6が付加するレトロウイルスベクターpMXs(Cell Biolabs, Inc.)に、マウスTLR7遺伝子(配列番号56)をIn Fusion(登録商標)酵素(Takara社製)を用いて組み込んだ。当該レトロウイルスベクターを、HEK293細胞由来のパッケージング細胞株Plat-E(Cell Biolabs, Inc.)に、トランスフェクション試薬であるFugene(登録商標)6(Roche)を用いて、遺伝子導入した。24時間後、培養上清を回収し、ウイルス懸濁液とした。当該ウイルス懸濁液をトランスフェクション試薬であるDOTAP(Roche)と混和して、Ba/F3細胞株(RIKEN, BRC)に加え、2000rpm、1時間、高速遠心を行い、マウスTLR7-Flag-His×6強制発現Ba/F3細胞株を樹立した。
【0153】
マウスTLR7遺伝子(配列番号56)がコードするマウスTLR7は配列番号83のアミノ酸配列を有する。当該配列を図3に示す。
【0154】
2)-1-2 ラットTLR7-Flag-His×6強制発現Ba/F3細胞株の樹立
遺伝子のC末端側にFlag-His×6が付加するレトロウイルスベクターpMXs(Cell Biolabs, Inc.)に、ラットTLR7遺伝子(配列番号57)をIn Fusion(登録商標)酵素(Takara社製)を用いて組み込んだ。当該レトロウイルスベクターを、HEK293細胞由来のパッケージング細胞株Plat-E(Cell Biolabs, Inc.)に、トランスフェクション試薬であるFugene(登録商標)6(Roche)を用いて、遺伝子導入した。24時間後、培養上清を回収し、ウイルス懸濁液とした。当該ウイルス懸濁液をトランスフェクション試薬であるDOTAP(Roche)と混和して、Ba/F3細胞株(RIKEN, BRC)に加え、2000rpm、1時間、高速遠心を行い、ラットTLR7-Flag-His×6強制発現Ba/F3細胞株を樹立した。
【0155】
ラットTLR7遺伝子(配列番号57)がコードするラットTLR7は配列番号84のアミノ酸配列を有する。当該配列を図4に示す。
【0156】
2)-1-3 サルTLR7-Flag-His×6強制発現Ba/F3細胞株の樹立
遺伝子のC末端側にFlag-His×6が付加するレトロウイルスベクターpMXs(Cell Biolabs, Inc.)に、サルTLR7遺伝子(配列番号58)をIn Fusion(登録商標)酵素(Takara社製)を用いて組み込んだ。当該レトロウイルスベクターを、HEK293細胞由来のパッケージング細胞株Plat-E(Cell Biolabs, Inc.)に、トランスフェクション試薬であるFugene(登録商標)6(Roche)を用いて、遺伝子導入した。24時間後、培養上清を回収し、ウイルス懸濁液とした。当該ウイルス懸濁液をトランスフェクション試薬であるDOTAP(Roche)と混和して、Ba/F3細胞株(RIKEN, BRC)に加え、2000rpm、1時間、高速遠心を行い、サルTLR7-Flag-His×6強制発現Ba/F3細胞株を構築した。
【0157】
サルTLR7遺伝子(配列番号58)がコードするサルTLR7は配列番号85のアミノ酸配列を有する。当該配列を図5に示す。
【0158】
2)-1-4 フローサイトメトリーによるマウス抗ヒトTLR7抗体の結合選択能評価
1)-1-1で樹立したヒトTLR7-Flag-His×6/ヒトUnc93B1-HA×2強制発現したBa/F3細胞株、2)-1-1で樹立したマウスTLR7-Flag-His×6強制発現Ba/F3細胞株、2)-1-2で樹立したラットTLR7-Flag-His×6×2強制発現Ba/F3細胞株、及び2)-1-3で樹立したサルTLR7-Flag-His×6強制発現Ba/F3細胞株を、0.1% Saponinで細胞膜透過処理を行い、AT01抗体、NB7抗体及びFAN2抗体と二次抗体であるGoat anti-mouse IgG (H+L)-PE (eBioscience)を用いて染色した。各抗体の結合選択能の評価は、フローサイトメトリーで解析して、平均蛍光強度(MFI)を比較した。
【0159】
その結果、AT01抗体、NB7抗体及びFAN2抗体は、ヒトTLR7又はサルTLR7に特異的に結合し、マウスTLR7又はラットTLR7に結合しなかった。
【0160】
2)-2 マウス抗ヒトTLR7抗体の結合能評価
1)-1-1で樹立したヒトTLR7-Flag-His×6/ヒトUnc93B1-HA×2強制発現したBa/F3細胞株を、0.1% Saponinで細胞膜透過処理を行い、AT01抗体、NB7抗体及びFAN2抗体の希釈系列と二次抗体であるGoat anti-mouse IgG (H+L)-PE (eBioscience)を用いて染色した。各抗体の結合活性の評価は、フローサイトメトリーで解析して、平均蛍光強度(MFI)を比較した。
【0161】
その結果、結合活性が強いものから、AT01抗体、NB7抗体、FAN2抗体の順であった。
【0162】
2)-3 マウス抗ヒトTLR7抗体のサイトカイン産生抑制作用
ヒトPBMCはCellular Technology社から凍結品として購入し、指示書に従って解凍して使用した。
【0163】
10% FBS、1 mM Sodium Pyruvate(Life Technologies社)、0.1 mM MEM Non-Essential Amino Acids(Life Technologies社)、50 μM 2-Mercaptoethanol(Life Technologies社)、50 U/mL Penicillin及び50 μg/mL Streptomycin(Life Technologies社)を含むRPMI1640(Life Technologies社)で2.5x106 cells/mLの濃度に調製したPBMCを96-wells細胞培養プレートに100 μLずつ播種し、マウス抗ヒトTLR7抗体であるAT01抗体、NB7抗体、FAN2抗体、又はマウスIgGコントロール抗体(Biolegend社)を80 μL/well添加して37℃インキュベーター内で4時間前処置した。
【0164】
その後、1 mg/mL CL-264(InvivoGen社)を20 μL/well添加し、よく攪拌した後、約20時間37℃、5% CO2下で培養した。プレートをよく攪拌した後、1500rpmにて5分間遠心し、上清に含まれるインターロイキン-6(IL-6)濃度をFRET法(Cisbio社)で測定した 。
【0165】
結果を図6に示す。マウス抗ヒトTLR7抗体がCL-264を処理したヒトPBMCからのIL-6の産生を添加濃度依存的に抑制した。AT01抗体、NB7抗体及びFAN2抗体はヒトPBMCからのIL-6の産生を添加濃度依存的に阻害した。AT01抗体、NB7抗体及びFAN2抗体の半数阻害濃度(IC50)は50%阻害活性を挟んだ二点間の濃度と、その濃度を添加した際の阻害活性から算出し、各々192 ng/mL、771 ng/mL、8389 ng/mLであった。
【0166】
一方、マウスIgGコントロール抗体では10 μg/mLの濃度においても阻害は観察されなかった。
【0167】
[実施例3]マウス抗ヒトTLR7抗体の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の決定
3)-1 cDNA合成
AT01、NB7、FAN2のハイブリドーマよりTRIzol Reagent(Ambion)を用いて、Total RNAを回収した。続いて、PrimeScript 1st Strand cDNA Synthesis Kit(TAKARA)を用いてcDNAを合成した。
【0168】
3)-2 マウス免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の可変領域遺伝子断片の増幅及び配列決定
合成したcDNAに含まれる抗体の可変領域をコードするヌクレオチド配列は、GENESCRIPT社にて解読された。
【0169】
3)-2-1 マウス抗ヒトTLR7抗体(AT01)
決定されたAT01抗体の重鎖可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列を配列表の配列番号5に示した。
【0170】
決定されたAT01抗体の軽鎖可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列を配列表の配列番号11に示した。
【0171】
3)-2-2 マウス抗ヒトTLR7抗体(NB7)
決定されたNB7抗体の重鎖可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列を配列表の配列番号7に示した。
【0172】
決定されたNB7抗体の軽鎖可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列を配列表の配列番号13に示した。
【0173】
3)-2-3 マウス抗ヒトTLR7抗体(FAN2)
決定されたFAN2抗体の重鎖可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列を配列表の配列番号9に示した。
【0174】
決定されたFAN2抗体の軽鎖可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列を配列表の配列番号15に示した。
【0175】
[実施例4]キメラ化抗ヒトTLR7抗体の作製
4)-1 キメラ化抗TLR7抗体の発現ベクターの構築
4)-1-1 キメラ化軽鎖発現ベクターpCMA-LKの構築
プラスミドpcDNA3.3-TOPO/LacZ(Invitrogen社)を制限酵素XbaI及びPmeIで消化して得られる約5.4kbのフラグメントと、ヒト軽鎖シグナル配列及びヒトカッパ鎖定常領域をコードするDNA配列を含むDNA断片(配列番号59)をIn‐Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて結合して、pcDNA3.3/LKを作製した。pcDNA3.3/LKからネオマイシン発現ユニットを除去することによりpCMA-LKを構築した。
【0176】
4)-1-2 キメラ化IgG1タイプ重鎖発現ベクターpCMA-G1の構築
pCMA-LKをXbaI及びPmeIで消化して軽鎖シグナル配列及びヒトカッパ鎖定常領域を取り除いたDNA断片と、ヒト重鎖シグナル配列及びヒトIgG1定常領域をコードするDNA配列を含むDNA断片(配列番号60)をIn‐Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて結合して、pCMA-G1を構築した。
【0177】
4)-1-3 AT01キメラ化抗ヒトTLR7抗体発現ベクターの構築
配列番号61に示すヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至422に示されるcAT01抗体重鎖の可変領域をコードするヌクレオチド配列を含有するDNA断片を合成した(GENEART社)。In-Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて、pCMA-G1を制限酵素BlpIで切断した箇所に合成したDNA断片を挿入することによりcAT01抗体重鎖発現ベクターを構築した。cAT01抗体の重鎖はシグナル配列を含め配列番号35のアミノ酸配列を有する。当該配列を図7に示す。
【0178】
cAT01抗体軽鎖をコードするDNA配列を含むDNA断片(配列番号62)を合成した(GENEART社)。実施例4)-1-1で作製したpCMA-LKを用いて、上記と同様の方法でcAT01抗体軽鎖発現ベクターを構築した。cAT01抗体の軽鎖はシグナル配列を含め配列番号36のアミノ酸配列を有する 当該配列を図7に示す。
4)-1-4 NB7キメラ化抗ヒトTLR7抗体発現ベクターの構築
配列番号63に示すヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至440に示されるcNB7抗体重鎖の可変領域をコードするヌクレオチド配列を含有するDNA断片を合成した(GENEART社)。実施例4)-1-3と同様の方法でcNB7重鎖発現ベクターを構築した。cNB7抗体の重鎖はシグナル配列を含め配列番号37のアミノ酸配列を有する。当該配列を図8に示す。
【0179】
cNB7軽鎖をコードするDNA配列を含むDNA断片(配列番号64)を合成した(GENEART社)。実施例4)-1-1で作製したpCMA-LKを用いて、実施例4)-1-3と同様の方法でcNB7軽鎖発現ベクターを構築した。cNB7抗体の軽鎖はシグナル配列を含め配列番号38のアミノ酸配列を有する。当該配列を図8に示す。
【0180】
4)-1-5 FAN2キメラ化抗ヒトTLR7抗体発現ベクターの構築
配列番号65に示すヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至437 に示されるcFAN2抗体重鎖の可変領域をコードするヌクレオチド配列を含有するDNA断片を合成した(GENEART社)。実施例4)-1-3と同様の方法でcFAN2重鎖発現ベクターを構築した。cFAN2抗体の重鎖はシグナル配列を含め配列番号39のアミノ酸配列を有する。当該配列を図9に示す。
【0181】
cFAN2軽鎖をコードするDNA配列を含むDNA断片(配列番号66)を合成した(GENEART社)。実施例4)-1-1で作製したpCMA-LKを用いて、実施例4)-1-3と同様の方法でcFAN2軽鎖発現ベクターを構築した。cFAN2抗体の軽鎖はシグナル配列を含め配列番号40のアミノ酸配列を有する。当該配列を図9に示す。
【0182】
4)-2 キメラ化抗ヒトTLR7抗体の製造
4)-2-1 キメラ化AT01抗体の製造
FreeStyle 293F細胞(Invitrogen社)はマニュアルに従い、継代、培養をおこなった。対数増殖期の1.2×109個のFreeStyle 293F細胞(Invitrogen社)を3L Fernbach Erlenmeyer Flask(CORNING社)に播種し、FreeStyle293 expression medium(Invitrogen社)で希釈して2.0×106細胞/mLに調製した。40mLのOpti-Pro SFM培地(Invitrogen社)に0.24mgの上記4)-1-3で構築した重鎖発現ベクターと0.36mgの上記4)-1-3で構築した軽鎖発現ベクターと1.8mgのPolyethyleneimine(Polyscience #24765)を加えて穏やかに攪拌し、さらに5分間放置した後にFreeStyle 293F細胞に添加した。37℃、8%CO2インキュベーターで4時間、90rpmで振とう培養後に600mlのEX-CELL VPRO培地(SAFC Biosciences社)、18mlのGlutaMAX I(GIBCO社)、及び30mLのYeastolate Ultrafiltrate(GIBCO社)を添加し、37℃、8%CO2インキュベーターで7日間、90rpmで振とう培養して得られた培養上清をDisposable Capsule Filter (Advantec #CCS-045-E1H)でろ過して、キメラ化AT01抗体を製造した。
【0183】
4)-2-2 キメラ化NB7抗体の製造
上記4)-1-4で構築した重鎖発現ベクター及び軽鎖発現ベクターを用いて、上記4)-2-1の方法によりキメラ化NB7抗体を製造した。
【0184】
4)-2-3 キメラ化FAN2抗体の製造
上記4)-1-5で構築した重鎖発現ベクター及び軽鎖発現ベクターを用いて、上記4)-2-1の方法によりキメラ化FAN2抗体を製造した。
【0185】
4)-3 キメラ化抗ヒトTLR7抗体の精製
実施例4)-2で得られた各培養上清から目的の抗体をrProtein Aアフィニティークロマトグラフィーの1段階工程で精製した。培養上清をPBSで平衡化したMabSelectSuReが充填されたカラム(GE Healthcare Bioscience社製)にアプライしたのちに、カラム容量の2倍以上のPBSでカラムを洗浄した。次に2M アルギニン塩酸塩溶液(pH4.0)で溶出し、抗体の含まれる画分を集めた。その画分を透析(Thermo Scientific社、Slide-A-Lyzer Dialysis Cassette)によりPBS(-)へのバッファー置換を行った。Centrifugal UF Filter Device VIVASPIN20(分画分子量UF10K,Sartorius社)で抗体を濃縮し、IgG濃度を10mg/mL以上に調製した。最後にMinisart-Plus filter(Sartorius社)でろ過し、精製サンプルとした。
【0186】
[実施例5]キメラ化抗ヒトTLR7抗体のin vitro活性
5)-1 フローサイトメトリーによるキメラ化抗ヒトTLR7抗体の抗原結合活性
ヒトTLR7-Flag-His×6/hUnc93B1-HA×2強制発現したBa/F3細胞株を、0.1% Saponinで細胞膜透過処理を行い、実施例4で得られたキメラ化したAT01抗体、NB7抗体、及びFAN2抗体の抗体濃度の希釈系列と二次抗体であるGoat anti-human IgG Fc-PE (eBioscience)を用いて染色した。抗体の結合活性の評価は、フローサイトメトリーで解析して、MFIを比較した。その結果、結合活性が強いものから、キメラ化AT01抗体(cAT01)、キメラ化NB7抗体(cNB7)、キメラ化FAN2抗体(cFAN2)の順であった。
【0187】
5)-2 キメラ化抗ヒトTLR7抗体のサイトカイン産生抑制作用
ヒトPBMCはCellular Technology社から凍結品として購入し、指示書に従って解凍して使用した。10% FBS、1 mM Sodium Pyruvate(Life Technologies社)、0.1 mM MEM Non-Essential Amino Acids(Life Technologies社)、50 μM 2-Mercaptoethanol(Life Technologies社)、50 U/mL Penicillin及び50 μg/mL Streptomycin(Life Technologies社)を含むRPMI1640(Life Technologies社)で2.5x106 cells/mLの濃度に調製したPBMCを96-wells細胞培養プレートに100 μLずつ播種し、キメラ化抗ヒトTLR7抗体であるcAT01、cNB7、cFAN2、又はヒトIgGコントロール抗体(EUREKA Therapeutics社)を80 μL/well添加して37℃インキュベーター内で4時間前処置した。その後、1 mg/mL CL-264(InvivoGen社)を20 μL/well添加し、よく攪拌した後、約20時間37℃、5% CO2下で培養した。プレートをよく攪拌した後、1500rpmにて5分間遠心し、上清に含まれるIL-6濃度をFRET法(Cisbio社)で測定した。
【0188】
図10はキメラ化抗ヒトTLR7抗体がCL-264を処理したヒトPBMCからのIL-6の産生を添加濃度依存的に抑制することを示す。cAT01、cNB7、cFAN2はヒトPBMCからのIL-6の産生を添加濃度依存的に阻害した。cAT01、cNB7、cFAN2の半数阻害濃度(IC50)は50%阻害活性を挟んだ二点間の濃度と、その濃度を添加した際の阻害活性から算出し、各々35 ng/mL、196 ng/mL、10000 ng/mL以上であった。
【0189】
一方、ヒトIgGコントロール抗体では10 μg/mLの濃度においても阻害は観察されなかった。
【0190】
[実施例6]ヒト化抗ヒトTLR7抗体の製造
6)-1 抗ヒトTLR7抗体のヒト化体デザイン
6)-1-1 抗体可変領域の分子モデリング
可変領域の分子モデリングは、ホモロジーモデリングとして公知の方法(Methods in Enzymology,203,121-153,(1991))を利用し、市販のタンパク質立体構造解析プログラムBioLuminate(Schrodinger社製)を用いて行った。鋳型は、重鎖と軽鎖の可変領域に対して高い配列同一性を有するProtein Data Bank(Nuc. Acid Res.35,D301-D303(2007))に登録されている構造を用いた。
【0191】
6)-1-2 ヒト化アミノ酸配列の設計
ヒト化はCDRグラフティング(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 10029-10033(1989)) として知られる手法を利用した。Kabat et al. (Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))において既定されるコンセンサス配列やIMGT(THE INTERNATIONAL IMMUNOGENETICS INFORMATION SYSTEM(登録商標), http://www.imgt.org)に登録されているヒトgermline配列から同一性の高いアクセプターを選択し、アクセプター上に移入すべきドナー残基は、Queen et al.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 10029-10033(1989)) によって与えられる基準などを参考に三次元モデルを分析することで選択された。
【0192】
6)-1-3 AT01抗体のヒト化アミノ酸配列の設計
ヒトのガンマ鎖サブグループ1及びカッパ鎖サブグループ1のコンセンサス配列がcAT01のフレームワーク領域に対して高い同一性を有することから、cAT01のアクセプターとして選択された。可変領域の分子モデリングでは、既知構造(PDB ID:1E4W)を鋳型とした。
【0193】
6)-1-3-1 AT01抗体重鎖のヒト化
(1)設計された重鎖をhuAT01_H1_IgG1LALAと命名した。huAT01_H1_IgG1LALAは重鎖全長アミノ酸配列としてシグナル配列を含め配列番号45に記載するアミノ酸配列を有する。当該配列を図11に示す。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、20番目から135番目のアミノ酸配列が可変領域であり、136番目から465番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、45番目から54番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、69番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、118番目から124番目のアミノ酸配列がCDRH3である。
【0194】
配列番号45のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は配列番号67に記載する配列を有する。また、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列は配列番号77に記載する配列を有する。
【0195】
(2)設計された重鎖をhuAT01_H3_IgG1LALAと命名した。huAT01_H3_IgG1LALAは重鎖全長アミノ酸配列としてシグナル配列を含め配列番号46に記載するアミノ酸配列を有する。当該配列を図12に示す。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、20番目から135番目のアミノ酸配列が可変領域であり、136番目から465番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、45番目から54番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、69番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、118番目から124番目のアミノ酸配列がCDRH3である。
【0196】
配列番号46のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は配列番号68に記載する配列を有する。また、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列は配列番号78に記載する配列を有する。
【0197】
(3)設計された重鎖をhuAT01_H3_IgG4Proと命名した。huAT01_H3_IgG4Proは重鎖全長アミノ酸配列としてシグナル配列を含め配列番号47に記載するアミノ酸配列を有する。当該配列を図13に示す。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、20番目から135番目のアミノ酸配列が可変領域であり、136番目から462番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、45番目から54番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、69番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、118番目から124番目のアミノ酸配列がCDRH3である。
【0198】
配列番号47のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は配列番号69に記載する配列を有する。また、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列は配列番号78に記載する配列を有する。
【0199】
キメラ化抗体cAT01の重鎖であるcAT01_Hの可変領域のアミノ酸配列(配列番号5)(以下、cAT01_H)、並びにヒト化抗体重鎖huAT01_H1_IgG1LALAの可変領域のアミノ酸配列(配列番号41)(以下、huAT01_H1)及びhuAT01_H3_IgG1LALAの可変領域のアミノ酸配列(配列番号42)(以下、huAT01_H3)の比較を図14に示す。huAT01_H1及びhuAT01_H3の配列における「・」はcAT01_Hと同一のアミノ酸残基を示し、アミノ酸残基が記載されている箇所は置換されたアミノ酸残基を示す。
【0200】
6)-1-3-2 AT01抗体軽鎖のヒト化
設計された軽鎖をhuAT01_L1と命名した。huAT01_L1は軽鎖全長アミノ酸配列としてシグナル配列を含む配列番号48に記載するアミノ酸配列を有する。当該配列を図15に示す。当該配列において、1番目から20番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から126番目のアミノ酸配列が可変領域であり、127番目から233番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、アミノ酸番号44番から54番はCDRL1であり、アミノ酸番号70番から76番はCDRL2であり、アミノ酸番号109番から116番はCDRL3である。
【0201】
配列番号48のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は配列番号70に記載する配列を有する。また、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列は配列番号79に記載する配列を有する。
【0202】
設計された軽鎖をhuAT01_L2と命名した。huAT01_L2は軽鎖全長アミノ酸配列としてシグナル配列を含む配列番号49に記載するアミノ酸配列を有する。当該配列を図16に示す。当該配列において、1番目から20番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から126番目のアミノ酸配列が可変領域であり、127番目から233番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、アミノ酸番号44番から54番はCDRL1であり、アミノ酸番号70番から76番はCDRL2であり、アミノ酸番号109番から116番はCDRL3である。
【0203】
配列番号49のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を配列番号71に記載する。また、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列は配列番号80に記載する配列を有する。
【0204】
キメラ化抗体cAT01の軽鎖であるcAT01_Lの可変領域のアミノ酸配列(配列番号11)(以下、cAT01_L)、並びにヒト化抗体軽鎖huAT01_L1の可変領域のアミノ酸配列(配列番号43)(以下、huAT01_L1)及びhuAT01_L2の可変領域のアミノ酸配列(配列番号44)(以下、huAT01_L2)の比較を図17に示す。huAT01_L1及びhuAT01_L2の配列における「・」はcAT01_Lと同一のアミノ酸残基を示し、アミノ酸残基が記載されている箇所は置換されたアミノ酸残基を示す。
【0205】
6)-1-4 NB7のヒト化アミノ酸配列の設計
ヒトgermline配列のIGHV4-30-4*02とIGHJ6*01がcNB7のフレームワーク領域に対して高い同一性を有することから、cNB7のアクセプターとして選択された。可変領域の分子モデリングでは、既知構造(PDB ID:3CDF)を鋳型とした。
【0206】
6)-1-4-1 NB7抗体重鎖のヒト化
(1)設計された重鎖をhuNB7_H3_IgG1LALAと命名した。huNB7_H3_IgG1LALAは重鎖全長アミノ酸配列としてシグナル配列を含む配列番号52に記載するアミノ酸配列を有する。当該配列を図18に示す。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、20番目から141番目のアミノ酸配列が可変領域であり、142番目から471番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、アミノ酸番号45番から55番はCDRH1であり、アミノ酸番号70番から78番はCDRH2であり、アミノ酸番号118番から130番はCDRH3である。
【0207】
配列番号52のアミの酸配列をコードするヌクレオチド配列を配列番号72に記載する。また、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列は配列番号81に記載する配列を有する。
【0208】
(2)設計された重鎖をhuNB7_H3_IgG4Proと命名した。huNB7_H3_IgG4Proは重鎖全長アミノ酸配列としてシグナル配列含む配列番号54に記載するアミノ酸配列を有する。当該配列を図19に示す。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、20番目から141番目のアミノ酸配列が可変領域であり、142番目から468番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、アミノ酸番号45番から55番はCDRH1であり、アミノ酸番号70番から78番はCDRH2であり、アミノ酸番号118番から130番はCDRH3である。
【0209】
配列番号54のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を配列番号73に記載する。また、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列は配列番号81に記載する配列を有する。
【0210】
キメラ化抗体cNB7の重鎖であるcNB7_Hの可変領域のアミノ酸配列(配列番号7)(以下、cNB7_H)及びヒト化抗体重鎖huNB7_H3_IgG1LALAの可変領域のアミノ酸配列(配列番号50)(以下、huNB7_H3)の比較を図20に示す。huNB7_H3における「・」はcNB7_Hと同一のアミノ酸残基を示し、アミノ酸残基が記載されている箇所は置換されたアミノ酸残基を示す。
【0211】
6)-1-4-2 NB7抗体軽鎖のヒト化
設計された軽鎖をhuNB7_L3と命名した。huNB7_L3は軽鎖全長アミノ酸配列としてシグナル配列を含む配列番号53に記載するアミノ酸配列を有する。当該配列を図21に示す。当該配列において、1番目から20番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から126番目のアミノ酸配列が可変領域であり、127番目から233番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、アミノ酸番号44番から54番はCDRL1であり、アミノ酸番号70番から76番はCDRL2であり、アミノ酸番号109番から116番はCDRL3である。
【0212】
配列番号53のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を配列番号74に記載する。また、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列は配列番号82に記載する配列を有する。
【0213】
キメラ化抗体cNB7の軽鎖であるcNB7_Lの可変領域のアミノ酸配列(配列番号13)(以下、cNB7_L)及びヒト化抗体軽鎖huNB7_L3の可変領域のアミノ酸配列(配列番号51)(以下、huNB7_L3)の比較を図22に示す。huNB7_L3における「・」はcNB7_Lと同一のアミノ酸残基を示し、アミノ酸残基が記載されている箇所は置換されたアミノ酸残基を示す。
【0214】
6)-2 重鎖及び軽鎖の組み合わせによるヒト化抗体の設計
6)-2-1 ヒト化AT01抗TLR7抗体の設計
(1)重鎖として配列番号45における20番目から465番目のアミノ酸配列からなるhuAT01_H1_IgG1LALA及び軽鎖として配列番号48における21番目から233番目のアミノ酸配列からなるhuAT01_L1を有する抗体を「huAT01_H1L1_IgG1LALA抗体」又は「huAT01_H1L1_IgG1LALA」と命名した。
【0215】
(2)重鎖として配列番号46における20番目から465番目のアミノ酸配列からなるhuAT01_H3_IgG1LALA及び軽鎖として配列番号48における21番目から233番目のアミノ酸配列からなるhuAT01_L1を有する抗体を「huAT01_H3L1_IgG1LALA抗体」又は「huAT01_H3L1_IgG1LALA」と命名した。
【0216】
(3)重鎖として配列番号46における20番目から465番目のアミノ酸配列からなるhuAT01_H3_IgG1LALA及び軽鎖として配列番号49における21番目から233番目のアミノ酸配列からなるhuAT01_L2を有する抗体を「huAT01_H3L2_IgG1LALA抗体」又は「huAT01_H3L2_IgG1LALA」と命名した。
【0217】
(4)重鎖として配列番号47における20番目から462番目のアミノ酸配列からなるhuAT01_H3_IgG4Pro及び軽鎖として配列番号49における21番目から233番目のアミノ酸配列からなるhuAT01_L2を有する抗体を「huAT01_H3L2_IgG4Pro抗体」又は「huAT01_H3L2_IgG4Pro」と命名した。
【0218】
6)-2-2 ヒト化NB7抗TLR7抗体の設計
(1)重鎖として配列番号52における20番目から471番目のアミノ酸配列からなるhuNB7_H3_IgG1LALA及び軽鎖として配列番号53における21番目から233番目のアミノ酸配列からなるhuNB7_L3からなる抗体を「huNB7_H3L3_IgG1LALA抗体」又は「huNB7_H3L3_IgG1LALA」と命名した。
【0219】
(2)重鎖として配列番号54 における20番目から468番目のアミノ酸配列からなるhuNB7_H3_IgG4Pro及び軽鎖として配列番号53における21番目から233番目のアミノ酸配列からなるhuNB7_L3からなる抗体を「huNB7_H3L3_IgG4Pro抗体」又は「huNB7_H3L3_IgG4Pro」と命名した。
【0220】
6)-3 ヒト化抗ヒトTLR7抗体の作製
6)-3-1 ヒト化IgG1LALAタイプ重鎖発現ベクターpCMA-G1LALAの構築
ヒト重鎖シグナル配列及びヒトIgG1LALA定常領域のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むDNA断片(配列番号75)を用いて、実施例4)-1-2と同様の方法でpCMA-G1LALAを構築した。
【0221】
6)-3-2 ヒト化IgG4Proタイプ重鎖発現ベクターpCMA-G4Proの構築
ヒト重鎖シグナル配列及びヒトIgG4Pro定常領域のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むDNA断片(配列番号76)を用いて、実施例4)-1-2と同様の方法でpCMA-G4Proを構築した。
【0222】
6)-3-3 AT01ヒト化重鎖発現ベクターの構築
6)-3-3-1 huAT01_H1_IgG1LALA発現ベクターの構築
配列番号46に示すhuAT01_H1_IgG1LALAのヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36番目乃至422番目に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。In-Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて、pCMA-G1LALAを制限酵素BlpIで切断した箇所に合成したDNA断片を挿入することによりhuAT01_H1_IgG1LALA発現ベクターを構築した。
【0223】
6)-3-3-2 huAT01_H3_IgG1LALA発現ベクターの構築
配列番号68に示すhuAT01_H3_IgG1LALAのヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36番目乃至422番目に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。実施例6)-3-3-1と同様の方法でhuAT01_H3_IgG1LALA発現ベクターを構築した。
【0224】
6)-3-3-3 huAT01_H3_IgG4Pro発現ベクターの構築
配列番号69に示すhuAT01_H3_IgG4Proのヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36番目乃至422番目に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。In-Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて、pCMA-G4Proを制限酵素BlpIで切断した箇所に合成したDNA断片を挿入することによりhuAT01_H3_IgG4Pro発現ベクターを構築した。
【0225】
6)-3-4 AT01ヒト化軽鎖発現ベクターの構築
6)-3-4-1 huAT01_L1発現ベクターの構築
配列番号70に示すhuAT01_L1のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号37番目乃至399番目に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。In-Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて、pCMA-LKを制限酵素BsiWIで切断した箇所に合成したDNA断片を挿入することによりhuAT01_L1発現ベクターを構築した。
【0226】
6)-3-4-2 huAT01_L2発現ベクターの構築
配列番号71に示すhuAT01_L2のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号37番目乃至399番目に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。In-Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて、実施例6)-3-4-1と同様の方法でhuAT01_L1発現ベクターを構築した。
【0227】
6)-3-5 NB7ヒト化重鎖発現ベクターの構築
6)-3-5-1 huNB7_H3_IgG1LALA発現ベクターの構築
配列番号72に示すhuNB7_H3_IgG1LALAのヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36番目乃至440番目に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。実施例6)-3-3-1と同様の方法でhuNB7_H3_IgG1LALA発現ベクターを構築した。
【0228】
6)-3-5-2 huNB7_H3_IgG4Pro発現ベクターの構築
配列番号73に示すhuNB7_H3_IgG4Proのヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36番目乃至440番目に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。実施例6)-3-3-3と同様の方法でhuNB7_H3_IgG4Pro発現ベクターを構築した。
【0229】
6)-3-6 NB7ヒト化軽鎖発現ベクターの構築
6)-3-6-1 huNB7_L3発現ベクターの構築
配列番号74に示すhuNB7_L3のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号37番目乃至399番目に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。In-Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて、実施例6)-3-4-1と同様の方法でhuNB7_L3発現ベクターを構築した。
【0230】
6)-3-7 ヒト化抗体の調製
6)-3-7-1 ヒト化抗体の製造
実施例6)-2で設計した重鎖と軽鎖の組み合わせにより、huAT01_H1L1_IgG1LALA、huAT01_H3L1_IgG1LALA、huAT01_H3L2_IgG1LALA、huAT01_H3L2_IgG4Pro、huNB7_H3L3_IgG1LALA、及びhuNB7_H3L3_IgG4Proについて、実施例6)-3-1から6)-3-6で構築した各発現ベクターを用いて、実施例4)-2と同様の方法で各ヒト化抗体を製造した。
【0231】
6)-3-7-2 ヒト化抗体の精製
実施例6)-3-7-1で得られた培養上清をrProtein Aアフィニティークロマトグラフィーとセラミックハイドロキシアパタイトの2段階工程で精製した。
【0232】
培養上清をPBSで平衡化したMabSelectSuReが充填されたカラム(GE Healthcare Bioscience社製)にアプライした後に、カラム容量の2倍以上のPBSでカラムを洗浄した。次に2M アルギニン塩酸塩溶液(pH4.0)で抗体を溶出した。
【0233】
抗体の含まれる画分を透析(Thermo Scientific社、Slide-A-Lyzer Dialysis Cassette)によりPBSへのバッファー置換を行い、5mMリン酸ナトリウム/50mM MES/pH7.0のバッファーで5倍希釈した後に、5mM NaPi/50mM MES/30mM NaCl/pH7.0のバッファーで平衡化したセラミックハイドロキシアパタイトカラム(日本バイオラッド、Bio-Scale CHT Type―1 Hydroxyapatite Column)にアプライした。
【0234】
塩化ナトリウムによる直線的濃度勾配溶出を実施し、抗体の含まれる画分を集めた。その画分を透析(Thermo Scientific社、Slide-A-Lyzer Dialysis Cassette)によりHBSor(25mM ヒスチジン/5% ソルビトール、pH6.0)へのバッファー置換を行った。Centrifugal UF Filter Device VIVASPIN20(分画分子量UF10K,Sartorius社)にて抗体を濃縮し、IgG濃度を50mg/mLに調製した。最後にMinisart-Plus filter(Sartorius社)でろ過し、精製サンプルとした。
【0235】
[実施例7]ヒト化抗ヒトTLR7抗体のin vitro活性
7)-1 ヒト化抗ヒトTLR7抗体のサイトカイン産生抑制作用
ヒトPBMCはCellular Technology社から凍結品として購入し、指示書に従って解凍して使用した。
【0236】
10% FBS、1 mM Sodium Pyruvate(Life Technologies社)、0.1 mM MEM Non-Essential Amino Acids(Life Technologies社)、50 μM 2-Mercaptoethanol(Life Technologies社)、50 U/mL Penicillin及び50 μg/mL Streptomycin(Life Technologies社)を含むRPMI1640(Life Technologies社)で2.5x106 cells/mLの濃度に調製したPBMCを96-wells細胞培養プレートに100 μLずつ播種し、ヒト化抗ヒトTLR7抗体であるhuAT01_H1L1_IgG1LALA、huAT01_H3L1_IgG1LALA、huAT01_H3L2_IgG1LALA、huAT01_H3L2_IgG4Pro、huNB7_H3L3_IgG1LALA、huNB7_H3L3_IgG4Pro又はヒトIgGコントロール抗体(EUREKA Therapeutics社)を80μL/well添加して37℃インキュベーター内で4時間前処置した。
【0237】
その後、1 mg/mL CL-264(InvivoGen社)を20 μL/well添加し、よく攪拌した後、約20時間37℃、5% CO2下で培養した。
【0238】
プレートをよく攪拌した後、1500rpmにて5分間遠心し、上清に含まれるIL-6濃度をFRET法(Cisbio社)で測定した 。
【0239】
図23はヒト化抗ヒトTLR7抗体がCL-264を処理したヒトPBMCからのIL-6の産生を添加濃度依存的に抑制することを示す。
【0240】
huAT01_H1L1_IgG1LALA、huAT01_H3L1_IgG1LALA、huAT01_H3L2_IgG1LALA、huAT01_H3L2_IgG4Pro、huNB7_H3L3_IgG1LALA、huNB7_H3L3_IgG4ProはヒトPBMCからのIL-6の産生を添加濃度依存的に阻害した。
【0241】
huAT01_H1L1_IgG1LALA、huAT01_H3L1_IgG1LALA、huAT01_H3L2_IgG1LALA、huAT01_H3L2_IgG4Pro、huNB7_H3L3_IgG1LALA、huNB7_H3L3_IgG4Proの半数阻害濃度(IC50)は50%阻害活性を挟んだ二点間の濃度と、その濃度を添加した際の阻害活性から算出し、各々74 ng/mL、138 ng/mL、38 ng/mL、24 ng/mL、307 ng/mL、31 ng/mLであった。
【0242】
[実施例8]ヒト化抗ヒトTLR7抗体の抗原結合確認
8)-1 ヒトTLR7(バリアント1)-Flag強制発現HEK293細胞の調製
LentiX(登録商標) HEK293T細胞(Clontech社)を4.5×10 cells/flaskの濃度で75cmflask(住友ベークライト社製)に播種し、10%FBS及び50 U/mL Penicillin及び50 μg/mL Streptomycin(Life Technologies社製)を含むDMEM培地(富士フィルム和光純薬社製)中で37℃、5%CO2の条件下で一晩培養した。
【0243】
翌日、Genscript社で作製したpcDNA3.1ヒトTLR7(バリアント1)-Flag発現プラスミドをLentiX(登録商標) HEK293T細胞(Clontech社)に、トランスフェクション試薬であるLipofectamine(登
録商標) 2000(Life Technologies社製)を用いて、遺伝子導入
し、37℃、5%CO2の条件下でさらに一晩培養した。
【0244】
翌日、発現プラスミド導入細胞をTrypLE Express(Life Technologies社製)で処理し、処理後の細胞をFlow Cytometry Staining Buffer(Life Technologies社製)で洗浄した後、Flow Cytometry Staining Buffer(Life Technologies社製)に懸濁した。得られた細胞懸濁液をフローサイトメトリー解析に使用した。
【0245】
pcDNA3.1ヒトTLR7(バリアント1)-Flag発現プラスミド導入細胞
にヒトTLR7が発現していることを抗Flag-PE抗体(Biolegend社)又はネガティブコントロールとして、アイソタイプコントロール抗体(Biolegend社)を用いてフローサイトメトリー(ミルテニーバイオテク社)で検出することにより確認した。
【0246】
ヒトTLR7(バリアント1)のアミノ酸配列及びそれをコードするポリヌクレオチド配列は、それぞれ配列表の配列番号2および1に記載されている。
【0247】
8)-2 ヒトTLR7(バリアント2)-Flag強制発現HEK293細胞の調製
LentiX(登録商標) HEK293T細胞(Clontech社)を4.5×10 cells/flaskの濃度で75cmflask(住友ベークライト社製)に播種し、10%FBS及び50 U/mL Penicillin及び50 μg/mL Streptomycin(Life Technologies社製)を含むDMEM培地(富士フィルム和光純薬社製)中で37℃、5%CO2の条件下で一晩培養した。
【0248】
翌日、Genscript社で作製したpcDNA3.1ヒトTLR7(バリアント2)-Flag発現プラスミドをLentiX(登録商標) HEK293T細胞(Clontech社)に、トランスフェクション試薬であるLipofectamine(登
録商標) 2000(Life Technologies社製)を用いて、遺伝子導入
し、37℃、5%CO2の条件下でさらに一晩培養した。
【0249】
翌日、発現ベクター導入細胞をTrypLE Express(Life Technologies社製)で処理し、処理後の細胞をFlow Cytometry Staining Buffer(Life Technologies社製)で洗浄した後、Flow Cytometry Staining Buffer(Life Technologies社製)に懸濁した。得られた細胞懸濁液をフローサイトメトリー解析に使用した。
【0250】
pcDNA3.1ヒトTLR7(バリアント2)-Flag発現プラスミド導入細胞にヒトTLR7が発現していることを抗Flag-PE抗体(Biolegend社)又はネガティブコントロールとして、アイソタイプコントロール抗体(Biolegend社)を用いてフローサイトメトリー(ミルテニーバイオテク社)で検出することにより確認した。
【0251】
8)-3 サルTLR7-Flag強制発現HEK293細胞の調製
LentiX(登録商標) HEK293T細胞(Clontech社)を4.5×10 cells/flaskの濃度で75cmflask(住友ベークライト社製)に播種し、10%FBS及び50 U/mL Penicillin及び50 μg/mL Streptomycin(Life Technologies社製)を含むDMEM培地(富士フィルム和光純薬社製)中で37℃、5%CO2の条件下で一晩培養した。
【0252】
翌日、Genscript社で作製したpcDNA3.1サルTLR7-Flag発現プラスミドをLentiX(登録商標) HEK293T細胞(Clontech社)に、トランスフェクション試薬であるLipofectamine(登録商標) 2000(Life Technologies社製)を用いて、遺伝子導入し、37℃、5%CO2の条件下でさらに一晩培養した。
【0253】
翌日、発現ベクター導入細胞をTrypLE Express(Life Technologies社製)で処理し、処理後の細胞をFlow Cytometry Staining Buffer(Life Technologies社製)で洗浄した後、Flow Cytometry Staining Buffer(Life Technologies社製)に懸濁した。得られた細胞懸濁液をフローサイトメトリー解析に使用した。
【0254】
pcDNA3.1サルTLR7-Flag発現プラスミド導入細胞にサルTLR7が発現していることを抗Flag-PE抗体(Biolegend社)又はネガティブコントロールとして、アイソタイプコントロール抗体(Biolegend社)を用いてフローサイトメトリー(ミルテニーバイオテク社)で検出することにより確認した。
【0255】
8)-4 マウスTLR7-Flag強制発現HEK293細胞の調製
LentiX(登録商標) HEK293T細胞(Clontech社)を4.5×10 cells/flaskの濃度で75cmflask(住友ベークライト社製)に播種し、10%FBS及び50 U/mL Penicillin及び50 μg/mL Streptomycin(Life Technologies社製)を含むDMEM培地(富士フィルム和光純薬社製)中で37℃、5%CO2の条件下で一晩培養した。
【0256】
翌日、Genscript社で作製したpcDNA3.1マウスTLR7-Flag発現プラスミドをLentiX(登録商標) HEK293T細胞(Clontech社)に、トランスフェクション試薬であるLipofectamine(登録商標) 2000(Life Technologies社製)を用いて、遺伝子導入し、37℃、5%CO2の条件下でさらに一晩培養した。
【0257】
翌日、発現ベクター導入細胞をTrypLE Express(Life Technologies社製)で処理し、処理後の細胞をFlow Cytometry Staining Buffer(Life Technologies社製)で洗浄した後、Flow Cytometry Staining Buffer(Life Technologies社製)に懸濁した。得られた細胞懸濁液をフローサイトメトリー解析に使用した。
【0258】
pcDNA3.1マウスTLR7-Flag発現プラスミド導入細胞にマウスTLR7が発現していることを抗Flag-PE抗体(Biolegend社)又はネガティブコントロールとして、アイソタイプコントロール抗体(Biolegend社)を用いてフローサイトメトリー(ミルテニーバイオテク社)で検出することにより確認した。
【0259】
8)-5 ラットTLR7-Flag強制発現HEK293細胞の調製
LentiX(登録商標) HEK293T細胞(Clontech社)を4.5×10 cells/flaskの濃度で75cmflask(住友ベークライト社製)に播種し、10%FBS及び50 U/mL Penicillin及び50 μg/mL Streptomycin(Life Technologies社製)を含むDMEM培地(富士フィルム和光純薬社製)中で37℃、5%CO2の条件下で一晩培養した。
【0260】
翌日、Genscript社で作製したpcDNA3.1ラットTLR7-Flag発現プラスミドをLentiX(登録商標) HEK293T細胞(Clontech社)に、トランスフェクション試薬であるLipofectamine(登録商標) 2000(Life Technologies社製)を用いて、遺伝子導入し、37℃、5%CO2の条件下でさらに一晩培養した。
【0261】
翌日、発現ベクター導入細胞をTrypLE Express(Life Technologies社製)で処理し、処理後の細胞をFlow Cytometry Staining Buffer(Life Technologies社製)で洗浄した後、Flow Cytometry Staining Buffer(Life Technologies社製)に懸濁した。得られた細胞懸濁液をフローサイトメトリー解析に使用した。
【0262】
pcDNA3.1ラットTLR7-Flag発現プラスミド導入細胞にラットTLR
7が発現していることを抗Flag-PE抗体(Biolegend社)又はネガティブコントロールとして、アイソタイプコントロール抗体(Biolegend社)を用いてフローサイトメトリー(ミルテニーバイオテク社)で検出することにより確認した。
【0263】
8)-6 フローサイトメトリーによるヒト化抗ヒトTLR7抗体の結合選択能評価
8)-1で調製したヒトTLR7(バリアント1)-Flag強制発現HEK293細胞、8)-2で調製したヒトTLR7(バリアント2)-Flag強制発現HEK293細胞、8)-3で調製したサルTLR7-Flag強制発現HEK293細胞、8)-4で調製したマウスTLR7-Flag強制発現HEK293細胞、及び8)-5で調製したラットTLR7-Flag強制発現HEK293細胞を、Fixation and Permeabilization Solution(ベクトン・ディッキンソン社製)で固定/細胞膜透過処理を行った後、ヒト化抗ヒトTLR7抗体の一つであるhuAT01_H3L2_IgG1LALA及び二次抗体であるAlexa Fluor(登録商標) 647 AffiniPure Goat anti-human IgG + IgM(H+L)(Jackson ImmunoResearch Inc.社製)を用いて染色した。
【0264】
ヒト化抗ヒトTLR7抗体のヒトTLR7に対する結合は、フローサイトメトリー(ミルテニーバイオテク社)で検出し、フローサイトメトリーのデータを解析するソフトウェアであるFlowjoを用いてデータを解析した。
【0265】
その結果、ヒト化抗ヒトTLR7抗体の一つであるhuAT01_H3L2_IgG1LALAは、ヒトTLR7(バリアント1)、ヒトTLR7(バリアント2)、又はサルTLR7に特異的に結合し、マウスTLR7又はラットTLR7に結合しなかった。結果を図25~29に示す。
【産業上の利用可能性】
【0266】
本発明のヒト化抗TLR7抗体は、ヒトTLR7機能阻害活性抑制作用を有しており、免疫炎症関連疾患等の治療又は予防剤となり得る。
【配列表フリーテキスト】
【0267】
配列番号1:ヒトTLR7(バリアント1)をコードするヌクレオチド配列
配列番号2:ヒトTLR7(バリアント1)のアミノ酸配列
配列番号3:ヒトTLR7(バリアント2)をコードするヌクレオチド配列
配列番号4:ヒトTLR7(バリアント2)のアミノ酸配列
配列番号5:AT01抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号6:cAT01抗体の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号7:NB7抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号8:cNB7抗体の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号9:FAN2抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号10:cFAN2抗体の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号11:AT01抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号12:cAT01抗体の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号13:NB7抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号14:cNB7抗体の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号15:FAN2抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号16:cFAN2抗体の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号17:AT01抗体のCDRH1のアミノ酸配列
配列番号18:AT01抗体のCDRH2のアミノ酸配列
配列番号19:AT01抗体のCDRH3のアミノ酸配列
配列番号20:AT01抗体のCDRL1のアミノ酸配列
配列番号21:AT01抗体のCDRL2のアミノ酸配列
配列番号22:AT01抗体のCDRL3のアミノ酸配列
配列番号23:NB7抗体のCDRH1のアミノ酸配列
配列番号24:NB7抗体のCDRH2のアミノ酸配列
配列番号25:NB7抗体のCDRH3のアミノ酸配列
配列番号26:NB7抗体のCDRL1のアミノ酸配列
配列番号27:NB7抗体のCDRL2のアミノ酸配列
配列番号28:NB7抗体のCDRL3のアミノ酸配列
配列番号29:FAN2抗体のCDRH1のアミノ酸配列
配列番号30:FAN2抗体のCDRH2のアミノ酸配列
配列番号31:FAN2抗体のCDRH3のアミノ酸配列
配列番号32:FAN2抗体のCDRL1のアミノ酸配列
配列番号33:FAN2抗体のCDRL2のアミノ酸配列
配列番号34:FAN2抗体のCDRL3のアミノ酸配列
配列番号35:AT01キメラ化抗ヒトTLR7抗体(cAT01)の重鎖のアミノ酸配列
配列番号36:AT01キメラ化抗ヒトTLR7抗体(cAT01)の軽鎖のアミノ酸配列
配列番号37:NB7キメラ化抗ヒトTLR7抗体(cNB7)の重鎖のアミノ酸配列
配列番号38:NB7キメラ化抗ヒトTLR7抗体(cNB7)の軽鎖のアミノ酸配列
配列番号39:FAN2キメラ化抗ヒトTLR7抗体(cFAN2)の重鎖のアミノ酸配列
配列番号40:FAN2キメラ化抗ヒトTLR7抗体(cFAN2)の軽鎖のアミノ酸配列
配列番号41:huAT01_H1_IgG1LALAの重鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号42:huAT01_H3_IgG1LALAの重鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号43:huAT01_L1の軽鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号44:huAT01_L2の軽鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号45:huAT01_H1_IgG1LALAのアミノ酸配列
配列番号46:huAT01_H3_IgG1LALAのアミノ酸配列
配列番号47:huAT01_H3_IgG4Proのアミノ酸配列
配列番号48:huAT01_L1のアミノ酸配列
配列番号49:huAT01_L2のアミノ酸配列
配列番号50:huNB7_H3_IgG1LALAの重鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号51:huNB7_L3の軽鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号52:huNB7_H3_IgG1LALAのアミノ酸配列
配列番号53:huNB7_L3のアミノ酸配列
配列番号54:huNB7_H3_IgG4Proのアミノ酸配列
配列番号55:ヒトUnc93B1遺伝子のヌクレオチド配列
配列番号56:マウスTLR7遺伝子のヌクレオチド配列
配列番号57:ラットTLR7遺伝子のヌクレオチド配列
配列番号58:サルTLR7遺伝子のヌクレオチド配列
配列番号59:ヒト軽鎖シグナル配列及びヒトカッパ鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列を含むDNA断片のヌクレオチド配列
配列番号60:ヒト重鎖シグナル配列及びヒトIgG1定常領域をコードするヌクレオチド配列を含むDNA断片のヌクレオチド配列
配列番号61:cAT01抗体の重鎖をコードするヌクレオチド配列
配列番号62:cAT01抗体の軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含むDNA断片のヌクレオチド配列
配列番号63:cNB7抗体の重鎖をコードするヌクレオチド配列
配列番号64:cNB7抗体の軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含むDNA断片のヌクレオチド配列
配列番号65:cFAN2抗体の重鎖をコードするヌクレオチド配列
配列番号66:cFAN2抗体軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含むDNA断片のヌクレオチド配列
配列番号67:huAT01_H1_IgG1LALAをコードするヌクレオチド配列
配列番号68:huAT01_H3_IgG1LALAをコードするヌクレオチド配列
配列番号69:huAT01_H3_IgG4Proをコードするヌクレオチド配列
配列番号70:huAT01_L1をコードするヌクレオチド配列
配列番号71:huAT01_L2をコードするヌクレオチド配列
配列番号72:huNB7_H3_IgG1LALAをコードするヌクレオチド配列
配列番号73:huNB7_H3_IgG4Proをコードするヌクレオチド配列
配列番号74:huNB7_L3をコードするヌクレオチド配列
配列番号75:ヒト重鎖シグナル配列及びヒトIgG1LALA定常領域をコードするヌクレオチド配列を含むDNA断片のヌクレオチド配列
配列番号76:ヒト重鎖シグナル配列及びヒトIgG4Pro定常領域をコードするヌクレオチド配列を含むDNA断片のヌクレオチド配列
配列番号77:huAT01_H1の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号78:huAT01_H3の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号79:huAT01_L1の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号80:huAT01_L2の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号81:huNB7_H3の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号82:huNB7_L3の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号83:マウスTLR7のアミノ酸配列
配列番号84:ラットTLR7のアミノ酸配列
配列番号85:サルTLR7のアミノ酸配列
配列番号86:ヒトUnc93B1 D34A mutant-HA×2遺伝子のヌクレオチド配列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
【配列表】
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