(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ダイボンディング装置、剥離ユニット、コレットおよび半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
H01L21/52 F
H01L21/52 C
(21)【出願番号】P 2019168865
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】515085901
【氏名又は名称】ファスフォードテクノロジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】牧 浩
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 明
(72)【発明者】
【氏名】横森 剛
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-270417(JP,A)
【文献】特開2005-322815(JP,A)
【文献】特開2010-212509(JP,A)
【文献】特開2019-054209(JP,A)
【文献】特開2010-206036(JP,A)
【文献】特開2015-164231(JP,A)
【文献】特開2015-173250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 21/67
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングテープの上に保持されたダイを吸着するコレットと、
前記ダイシングテープのうち前記ダイの下方に位置する箇所と当接する可動ステージと、前記ダイシングテープのうち前記ダイより外側周辺に位置する箇所を吸着する固定ステージと、を備え、前記ダイを前記ダイシングテープから剥離する剥離ユニットと、
を備え、
前記可動ステージは前記ダイを上が凹に湾曲させるための凹部を有し、
前記コレットの下面は前記湾曲したダイの上面と嵌合する曲面を有
し、
前記可動ステージは、厚みが後端側から先端側に向かうにつれて薄くなる搭載部と、前記搭載部の後端側に設けられる面取り部と、を有し、
前記可動ステージは前記固定ステージに対して水平方向の第一方向にスライド可能であり、
前記第一方向に直交する面における断面視において、前記コレットの下面は下に凸の曲線を有し、前記可動ステージの上面は上に凹の曲線を有し、
前記可動ステージの前記第一方向に水平方向で直交する第二方向の中央部であって前記第一方向に平行であり前記第二方向に直交する面における断面視において、前記コレットの下面は直線状であり、前記可動ステージの上面は直線状であるダイボンディング装置。
【請求項2】
請求項1のダイボンディング装置において、
前記剥離ユニットは、さらに、前記ダイシングテープを吸着することでダイシングテープを介して前記ダイを変形させる機構を有するダイボンディング装置。
【請求項3】
請求項1のダイボンディング装置において、
前記ダイの厚さは30μm以下であり、湾曲した前記ダイの谷の底から前記ダイの端部までの高さは0μm超であり20μm以下であるダイボンディング装置。
【請求項4】
請求項1のダイボンディング装置において、
前記第一方向に直交する面における断面視において
、前記可動ステージの
前記搭載部の上面は上に凹の
R形状面を有するダイボンディング装置。
【請求項5】
請求項4のダイボンディング装置において、
前記搭載部の前記第二方向
の中央部であって前記第一方向に平行であり前記第二方向に直交する面における断面視において
、前記可動ステージの
前記搭載部の上面は直線状であるダイボンディング装置。
【請求項6】
湾曲したダイの上面と嵌合する曲面を下面に有するコレットと共に用いられる剥離ユニットであって、
ダイシングテープのうち
ピックアップ対象ダイの下方に位置する箇所と当接する可動ステージと、
前記ダイシングテープのうち前記
ピックアップ対象ダイより外側周辺に位置する箇所を吸着する固定ステージと、
を備え、
前記可動ステージは前記
ピックアップ対象ダイを上が凹に湾曲させるための凹部を有し、前記固定ステージに対して水平方向の第一方向にスライド可能であり、
前記可動ステージは、厚みが後端側から先端側に向かうにつれて薄くなる搭載部と、前記搭載部の後端側に設けられる面取り部と、を有し、
前記第一方向に直交する面における断面視において、前記可動ステージの上面は上に凹の曲線を
有し、
前記可動ステージの前記第一方向に水平方向で直交する第二方向の中央部であって前記第一方向に平行であり前記第二方向に直交する面における断面視において、前記可動ステージの上面は直線状である剥離ユニット。
【請求項7】
ダイシングテープのうちダイの下方に位置する箇所と当接する可動ステージと、前記ダイシングテープのうち前記ダイより外側周辺に位置する箇所を吸着する固定ステージと、を備え、前記可動ステージは前記ダイを上が凹に湾曲させるための凹部を有
し、前記可動ステージは、厚みが後端側から先端側に向かうにつれて薄くなる搭載部と、前記搭載部の後端側に設けられる面取り部と、を有し、前記可動ステージは前記固定ステージに対して水平方向の第一方向にスライド可能であり、前記第一方向に直交する面における断面視において、前記可動ステージの上面は上に凹の曲線を有し、前記可動ステージの前記第一方向に水平方向で直交する第二方向の中央部であって前記第一方向に平行であり前記第二方向に直交する面における断面視において、前記可動ステージの上面は直線状である剥離ユニットと共に用いられるコレットであって、
前記コレットの下面は前記湾曲したダイの上面と嵌合する曲面を有し、
前記第一方向に直交する面における断面視において、前記コレットの下面は下に凸の曲線を有し、
前記可動ステージの前記第一方向に水平方向で直交する第二方向の中央部であって前記第一方向に平行であり前記第二方向に直交する面における断面視において、前記コレットの下面は直線状であり、
前記ダイシングテープの上に保持された前記湾曲したダイを吸着するコレット。
【請求項8】
ダイシングテープの上に保持されたダイを吸着するコレットと、前記ダイシングテープのうち前記ダイの下方に位置する箇所と当接する可動ステージと前記ダイシングテープのうち前記ダイより外側周辺に位置する箇所を吸着する固定ステージとを有し、前記ダイを前記ダイシングテープから剥離する剥離ユニットと、前記剥離ユニットを制御する制御部と、を備え、前記可動ステージは前記ダイを上が凹に湾曲させるための凹部を有し、前記コレットの下面は前記湾曲したダイの上面と嵌合する曲面を有
し、前記可動ステージは、厚みが後端側から先端側に向かうにつれて薄くなる搭載部と、前記搭載部の後端側に設けられる面取り部と、を有し、前記可動ステージは前記固定ステージに対して水平方向の第一方向にスライド可能であり、前記第一方向に直交する面における断面視において、前記コレットの下面は下に凸の曲線を有し、前記可動ステージの上面は上に凹の曲線を有し、前記可動ステージの前記第一方向に水平方向で直交する第二方向の中央部であって前記第一方向に平行であり前記第二方向に直交する面における断面視において、前記コレットの下面は直線状であり、前記可動ステージの上面は直線状であるダイボンディング装置にダイシングテープを保持するウェハリングを搬入するウェハ搬入工程と、
前記剥離ユニットおよび前記コレットで前記ダイを前記ダイシングテープから剥離してピックアップするピックアップ工程と、
前記ダイシングテープからピックアップしたダイを基板に載置するボンディング工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項
8の半導体装置の製造方法において、
前記ピックアップ工程は、
前記剥離ユニットが前記ダイシングテープを吸着することでダイシングテープを介して前記ダイを変形させるステップと、
前記コレットが前記ダイを吸着するステップと、
前記可動ステージが前記固定ステージに対して水平方向の第一方向にスライドするステップと、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項
8の半導体装置の製造方法において、
前記ダイの厚さは30μm以下であり、湾曲した前記ダイの谷の底から前記ダイの端部までの高さは0μm超であり20μm以下である半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項
8の半導体装置の製造方法において、
前記ダイはさらに前記ダイと前記ダイシングテープとの間にダイアタッチフィルムを備える半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項
8の半導体装置の製造方法において、
前記ボンディング工程は、前記ダイを既にボンディングされているダイの上に載置する工程を有する半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項
12の半導体装置の製造方法において、
前記ピックアップ工程はさらに前記ピックアップしたダイを中間ステージに載置するステップを有し、
前記ボンディング工程はさらに前記中間ステージから前記ダイをピックアップするステップを有する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はダイボンディング装置に関し、例えば薄ダイを扱うダイボンダに適用可能である。
【背景技術】
【0002】
一般に、ダイと呼ばれる半導体チップを、例えば、配線基板やリードフレームなど(以下、総称して基板という。)の表面に搭載するダイボンダにおいては、一般的に、コレット等の吸着ノズルを用いてダイを基板上に搬送し、押付力を付与すると共に、接合材を加熱することによりボンディングを行うという動作(作業)が繰り返して行われる。
【0003】
ダイボンダ等のダイボンディング装置によるダイボンディング工程の中には、半導体ウェハ(以下、ウェハという。)から分割されたダイを剥離する剥離工程がある。剥離工程では、ダイシングテープ裏面から突上げピンやブロックによってダイを突き上げて、ダイ供給部に保持されたダイシングテープから、1個ずつ剥離し、コレット等の吸着ノズルを使って基板上に搬送する。
【0004】
近年、半導体装置の高密度実装を推進する目的で、パッケージの薄型化が進められている。例えば、配線基板上に複数枚のダイを三次元的に実装する積層パッケージが実用化されている。このような積層パッケージを組み立てるに際しては、パッケージ厚の増加を防ぐために、ダイの厚さを30μm以下まで薄くすることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ダイが薄くなると、ダイシングテープの粘着力に比べてダイの剛性が極めて低くなる。
本開示の課題はダイの剛性を向上させることが可能な技術を提供することにある。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、ダイボンディング装置は、ダイシングテープ上のダイを吸着するコレットと、前記ダイシングテープのうち前記ダイの下方に位置する箇所と当接する可動ステージと前記ダイシングテープのうち前記ダイより外側周辺に位置する箇所を吸着する固定ステージと、を備え、前記ダイを前記ダイシングテープから剥離する剥離ユニットと、を備える。前記可動ステージは前記ダイを上が凹に湾曲させるための凹部を有する。前記コレットの下面は前記湾曲したダイの上面と嵌合する曲面を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ダイの剛性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1のピックアップヘッドおよびボンディングヘッドの動作を説明する図
【
図6】
図4の剥離ユニットの構成および動作を説明する図
【
図8】
図1のダイボンダによる半導体装置の製造方法を示すフローチャート
【
図9】
図9は第一変形例における剥離ユニットの上面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施例および変形例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【実施例】
【0011】
図1は実施例に係るダイボンダの概略を示す上面図である。
図2は
図1において矢印A方向から見たときに、ピックアップヘッド及びボンディングヘッドの動作を説明する図である。
【0012】
ダイボンディング装置の一例であるダイボンダ10は、大別して、一つ又は複数の最終1パッケージとなる製品エリア(以下、パッケージエリアPという。)をプリントした基板Sに実装するダイDを供給するダイ供給部1と、ピックアップ部2、中間ステージ部3と、ボンディング部4と、搬送部5、基板供給部6と、基板搬出部7と、各部の動作を監視し制御する制御部8と、を有する。Y軸方向がダイボンダ10の前後方向であり、X軸方向が左右方向である。ダイ供給部1がダイボンダ10の手前側に配置され、ボンディング部4が奥側に配置される。
【0013】
まず、ダイ供給部1は基板SのパッケージエリアPに実装するダイDを供給する。ダイ供給部1は、ウェハ11を保持するウェハ保持台12と、ウェハ11からダイDを突き上げる点線で示す剥離ユニット13と、を有する。ダイ供給部1は図示しない駆動手段によってXY軸方向に移動し、ピックアップするダイDを剥離ユニット13の位置に移動させる。
【0014】
ピックアップ部2は、ダイDをピックアップするピックアップヘッド21と、ピックアップヘッド21をY軸方向に移動させるピックアップヘッドのY駆動部23と、コレット22を昇降、回転およびX軸方向移動させる図示しない各駆動部と、を有する。ピックアップヘッド21は、突き上げられたダイDを先端に吸着保持するコレット22(
図2も参照)を有し、ダイ供給部1からダイDをピックアップし、中間ステージ31に載置する。ピックアップヘッド21は、コレット22を昇降、回転およびX軸方向移動させる図示しない各駆動部を有する。
【0015】
中間ステージ部3は、ダイDを一時的に載置する中間ステージ31と、中間ステージ31上のダイDを認識する為のステージ認識カメラ32と、を有する。
【0016】
ボンディング部4は、中間ステージ31からダイDをピックアップし、搬送されてくる基板SのパッケージエリアP上にボンディングし、または既に基板SのパッケージエリアPの上にボンディングされたダイの上に積層する形でボンディングする。ボンディング部4は、ピックアップヘッド21と同様にダイDを先端に吸着保持するコレット42(
図3も参照)を備えるボンディングヘッド41と、ボンディングヘッド41をY軸方向に移動させるY駆動部43と、基板SのパッケージエリアPの位置認識マーク(図示せず)を撮像し、ボンディング位置を認識する基板認識カメラ44とを有する。このような構成によって、ボンディングヘッド41は、ステージ認識カメラ32の撮像データに基づいてピックアップ位置・姿勢を補正し、中間ステージ31からダイDをピックアップし、基板認識カメラ44の撮像データに基づいて基板にダイDをボンディングする。
【0017】
搬送部5は、基板Sを掴み搬送する基板搬送爪51と、基板Sが移動する搬送レーン52と、を有する。基板Sは、搬送レーン52に設けられた基板搬送爪51の図示しないナットを搬送レーン52に沿って設けられた図示しないボールネジで駆動することによって移動する。基板搬送爪51はベルトにより駆動されてもよい。このような構成によって、基板Sは、基板供給部6から搬送レーン52に沿ってボンディング位置まで移動し、ボンディング後、基板搬出部7まで移動して、基板搬出部7に基板Sを渡す。
【0018】
制御部8は、ダイボンダ10の上述した各部の動作を監視し制御するプログラム(ソフトウェア)を格納するメモリと、メモリに格納されたプログラムを実行する中央処理装置(CPU)と、を備える。
【0019】
次に、ダイ供給部1の構成について
図3、4を用いて説明する。
図3は
図1のダイ供給部の外観斜視図を示す図である。
図4は
図1のダイ供給部の主要部を示す概略断面図である。
【0020】
ダイ供給部1は、水平方向(XY軸方向)に移動するウェハ保持台12と、上下方向に移動する剥離ユニット13と、を備える。ウェハ保持台12は、ウェハリング14を保持するエキスパンドリング15と、ウェハリング14に保持され複数のダイDが接着されたダイシングテープ16を水平に位置決めする支持リング17と、を有する。剥離ユニット13は支持リング17の内側に配置される。
【0021】
ダイ供給部1は、ダイDの剥離時に、ウェハリング14を保持しているエキスパンドリング15を下降させる。その結果、ウェハリング14に保持されているダイシングテープ16が引き伸ばされダイDの間隔が広がり、剥離ユニット13がダイD下方よりダイDに作用することにより、ダイDのピックアップ性を向上させている。なお、ダイを基板に接着する接着剤は、液状からフィルム状となり、ウェハ11とダイシングテープ16との間にダイアタッチフィルム(Die Attach Film:DAF)18と呼ばれるフィルム状の接着材料を貼り付けている。ダイアタッチフィルム18を有するウェハ11では、ダイシングは、ウェハ11とダイアタッチフィルム18に対して行なわれる。従って、剥離工程では、ウェハ11とダイアタッチフィルム18をダイシングテープ16から剥離する。なお、ダイアタッチフィルム18はダイDの裏面に貼付されているが、ダイDを省略して剥離工程を説明することがある。
【0022】
次に、剥離ユニット13およびピックアップヘッド21に取り付けられるコレット22について
図5~7を用いて説明する。
図5は
図4の剥離ユニットを説明する図であり、
図5(a)は上面図であり、
図5(b)は
図5(a)のB-B線における可動ステージの断面図である。
図6は
図4の剥離ユニットの構成および動作を説明する図であり、
図6(a)は
図5(a)のB-B線における主要部、ダイシングテープ、ダイおよびコレットの断面図であり、
図6(b)は
図5(a)のC-C線における主要部、ダイシングテープ、ダイおよびコレットの断面図であり、
図6(c)は
図6(a)から可動ステージが移動した状態の主要部、ダイシングテープ、ダイおよびコレットの断面図である。
図7は
図2のコレットを説明する図であり、
図7(a)はコレットおよびコレットホルダのB方向の側面図であり、
図7(b)はコレットおよびコレットホルダのC方向の側面図である。
【0023】
剥離ユニット13の筐体131は円筒形状であり、上面の中央に位置する開口部としての溝部132aとその周辺の固定ステージ132と溝部132a内の可動ステージ133とを備える。溝部132aの平面視の形状はX軸方向がY軸方向よりも長い矩形状に構成される。可動ステージ133は平面形状が溝部132aよりも小さく、X軸方向がY軸方向よりも長い矩形状に構成されている。可動ステージ133は上下方向(Z軸方向)および水平方向の第一方向としてのX軸方向に移動が可能である。
【0024】
剥離ユニット13の上面の周辺部に設けられる固定ステージ132には、複数の吸引口(不図示)が設けられている。なお、当該複数の吸引口を連結する複数の溝を設けてもよい。当該吸引口および当該溝のそれぞれの内部は、剥離ユニット13を上昇させてその上面をダイシングテープ16の裏面に接触させる際、図示しない吸引機構によって減圧される。このとき、ダイシングテープ16の裏面が下方に吸引され、剥離ユニット13の上面と密着する。固定ステージ132はピックアップ対象のダイDの外側周辺のダイシングテープ16を密着する。なお、可動ステージ133の下方の吸引口141の吸引機構と固定ステージ132の吸引機構は独立し、個別に吸着のON/OFFが可能であってもよい。剥離ユニット13は、制御部8からの指令に基づいて可動ステージ133をスライドさせる図示しないスライダ駆動機構を備える。
【0025】
次に、剥離ユニット13と可動ステージ133の詳細について説明する。剥離ユニット13の筐体131の上面には、固定ステージ132と、固定ステージ132から剥離ユニット13の筐体131の内部に向って窪んだ溝部132aと、溝部132aの剥離ユニット13の外周側に設けられ、溝部132aの底面より突出した凸部132bと、を備えている。溝部132aの側面132fは凸部132bの両側にあるガイド面132gと同一面で、剥離ユニット13の内周側から外周側に向かって直線状に延びている。凸部132bはガイド面132gの間にあり平坦に表面を持つ段差であり、その高さは溝部132aの深さよりも小さくなっている。溝部132aの底面と凸部132bの表面とは凸部132bの底面から凸部132bの表面に向かって延びる傾斜面132cで接続されている。溝部132aの底面には剥離ユニット13の内部に連通する孔としての吸引口141が設けられている。
【0026】
溝部132aには、溝部132aおよび側面132fの面間の幅と略同一幅で、溝部132aから溝部132aの方向に沿ってスライドする可動ステージ133が取り付けられている。可動ステージ133はスライド方向(X軸方向)に沿って溝部132aの端面132eに向かう側が後端133aで、凸部132b側の端が先端133cである。可動ステージ133は凹面状でその上にダイシングテープ16を介してダイDが載せられる搭載部133hと搭載部133hに続いて搭載面から下方向に向って傾斜する傾斜部133gとを備えている。可動ステージ133のスライド方向の長さは溝部132aのスライド方向の長さよりも短く、可動ステージ133の搭載部133hの厚さは溝部132aの深さよりも大きいので、可動ステージ133の後端133aが溝部132aの端面132eと間隙を隔てて可動ステージ133が溝部132aに嵌ると可動ステージ133の表面の搭載部133hは固定ステージ132の上面より高くなる。可動ステージ133の側面133bと溝部132aの側面132fとはスライド面を構成している。また、可動ステージ133の後端133aと溝部132aの端面132eとで形成する隙間は剥離ユニット13の内面に向かって上下方向に延びてダイシングテープ16を吸引する縦溝を構成する。また、可動ステージ133の両側の側面133bと溝部132aの両側の側面132fとで形成する隙間は剥離ユニット13の内面に向かって上下方向に延びてダイシングテープ16を吸引する縦溝を構成する。
【0027】
以上のように構成されているので、剥離ユニット13の上面には、溝部132aの側面132f、端面132eおよびガイド面132gによって囲まれるコの字形の吸引開口140が形成され、吸引口141を介して剥離ユニット13の内部と連通する。
【0028】
図5(b)に示すように、可動ステージ133のダイシングテープ16を介してダイDが載せられる搭載部133hは、厚みが後端133a側の近傍位置から先端133c側に向かうにつれて薄くなり、後端133aには面取り133iが設けられている。また、搭載部133hから先端133cに向うほど表面(上面)側から裏面(下面)側に向って傾斜する傾斜部133gが設けられている。搭載部133hのうち後端133a側から先端133c側に下方に向けて傾斜する部分は、傾斜部133gよりも傾斜が緩やかである傾斜部133gの先端133c側はダイDが上に載らない領域に設けられており、搭載部133hの長さはダイDの長さよりも短くなっている。可動ステージ133の裏面側は平面となっている。
図6(b)に示すように、X軸方向からの断面視(X軸方向に直交するYZ面)においてY軸方向がZ軸方向よりも長い矩形状の上辺が下に凹の曲線で形成されている。すなわち、搭載部133hの表面は円管の内側表面(R形状面)のような上に凹の曲面を形成している。これにより、ダイDを湾曲させる。なお、この湾曲によるダイDによる曲げは、剥離ユニット13と接触前の状態においてダイシングテープ16上で反っているダイと同程度とする。例えば、湾曲したダイDの谷の底からダイDの端部までの高さは0μm超であり20μm以下である。
【0029】
また、溝部132aの幅、すなわち吸引開口140の幅は可動ステージ133の幅より若干大きく、可動ステージ133の幅とダイDの幅はそれぞれ略同一で、溝部132aの各側面132fと可動ステージ133の各側面133bはスライドするように隙間を介して対向している。
【0030】
図7に示すように、コレット22はピックアップヘッド21に設けられているコレットホルダ25に取り付けられる。
図6(a)および
図7(a)に示すように、コレット22は、第二方向としてのY軸方向からの側面視および断面視はX軸方向(スライド方向)がZ軸方向(上下方向)よりも長い矩形状であり、
図6(b)および
図7(b)に示すように、X軸方向からの側面視および断面視(X軸方向に直交するYZ面における断面視)においてY軸方向がZ軸方向よりも長い矩形状の下辺が下に凸の曲線で形成されている。すなわち、コレット22のダイDを吸着する吸着面22aは、円柱の外側表面(R形状面)のような凸の曲面を形成している。すなわち、コレット22の吸着面22aは、ダイDおよびダイシングテープ16を挟んで可動ステージ133の搭載部133hの凹の曲面と嵌合するように凸の曲面で形成されている。これにより、ダイDの湾曲が維持される。
【0031】
次に、上述した構成よる剥離ユニット13によるピックアップ動作について
図3、4、6を用いて説明する。
【0032】
まず、
図3および
図4に示したウェハ保持台12に位置決めされているダイシングテープ16に紫外線を照射する。これにより、ダイシングテープ16に塗布された粘着剤が硬化してその粘着性が低下するので、ダイシングテープ16とダイアタッチフィルム18との界面が剥離し易くなる。
【0033】
次に、制御部8はウェハ保持台12のエキスパンドリング15を下降させることによって、ダイシングテープ16の周辺部に接着されたウェハリング14を下方に押し下げる。このようにすると、ダイシングテープ16が、その中心部から周辺部に向かう強い張力を受けて水平方向に弛みなく引き伸ばされる。
【0034】
次に、
図4に示すように、制御部8はピックアップ対象のダイDが剥離ユニット13の真上に位置するようにウェハ保持台12を水平移動(ピッチ移動)し、ダイシングテープ16の裏面に剥離ユニット13の上面が接触するように剥離ユニット13を上に移動する。このとき、
図6(a)に示すように、可動ステージ133の後端133aは溝部132aの端面132eに隙間を介して対向する位置となっており、可動ステージ133の先端133c側の下面は溝部132aの表面に載って、溝部132aによって支持されている。また、
図6(a)(b)に示すように、可動ステージ133の表面の搭載部133hは固定ステージ132の上面より高くなっている。
【0035】
剥離ユニット13の固定ステージ132と可動ステージ133の搭載部133hの上面がダイシングテープ16の下面に密着したら、制御部8は剥離ユニット13の上昇を停止する。このとき、制御部8は、固定ステージ132の吸引口および溝と、固定ステージ132と可動ステージ133との間の隙間とによってダイシングテープ16を吸着する。このとき、
図6(b)に示すように、ダイDおよびダイシングテープ16は可動ステージ133の搭載部133hの上面の凹の曲面に倣った形状に湾曲する。
【0036】
制御部8は、ピックアップヘッド21(コレット22)を下降させ、ピックアップするダイDの上に位置決めし、コレット22を着地してコレット22の吸引孔(不図示)によってダイDを吸着する。このとき、コレット22の下面の凸の曲面はダイDおよびダイシングテープ16を介して可動ステージ133の搭載部133hの上面の凹の曲面と勘合し、ダイDの湾曲は維持される。
【0037】
制御部8は、固定ステージ132および吸引口141によるダイシングテープ16の吸着を停止し(吸着OFF)、可動ステージ133をスライドさせる。なお、吸着OFFとしては大気圧に近い圧力で弱く吸着してもよい。
【0038】
可動ステージ133が剥離ユニット13の外周側に向かってスライドを始めると、可動ステージ133の裏面が凸部132bと溝部132aの底面とを接続する傾斜面132cに接する。そして、さらに可動ステージ133がスライドすると、可動ステージ133の裏面は傾斜面132cに沿って上昇する。そして、さらに可動ステージ133がスライドすると、可動ステージ133の先端133cは傾斜面132cを越え、可動ステージ133の裏面が凸部132bの表面に接する。この後、制御部8は、固定ステージ132および吸引口141により真空に近い圧力で吸着を開始する(吸着ON)。可動ステージ133の下面は
図6(c)に示す凸部131bの表面で支持されているので可動ステージ133の下面は溝部132aの底面から離れている。これより先では、可動ステージ133は、可動ステージ133の裏面が溝部132aの表面と略平行となった状態でスライドしていく。これにより、
図6(c)に示すように、吸引口141の上方に位置するダイDの一部がダイシングテープ16の表面16aから剥離する。
【0039】
可動ステージ133をスライドさせたら、ダイDはほとんどダイシングテープ16から剥離しているので、制御部8は、コレット22を上昇させてダイDをピックピックアップする。ダイDをピックアップしたら、制御部8は、可動ステージ133を初期位置に戻し、吸引口141の圧力、固定ステージ132の吸着圧力を大気圧に戻してピックアップ動作を終了する。
【0040】
次に、実施例におけるダイボンダを用いた半導体装置の製造方法について
図8を用いて説明する。
図8は
図1のダイボンダによる半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0041】
(ステップS11:ウェハ・基板搬入工程)
ウェハ11から分割されたダイDが貼付されたダイシングテープ16を保持したウェハリング14をウェハカセット(不図示)に格納し、ダイボンダ10に搬入する。制御部8はウェハリング14が充填されたウェハカセットからウェハリング14をダイ供給部1に供給する。また、基板Sを準備し、ダイボンダ10に搬入する。制御部8は基板供給部6で基板Sを基板搬送爪51に取り付ける。
【0042】
(ステップS12:ピックアップ工程)
制御部8は上述したようにダイDを剥離し、剥離したダイDをウェハ11からピックアップする。このようにして、ダイアタッチフィルム18と共にダイシングテープ16から剥離されたダイDは、コレット22に吸着、保持されて次工程(ステップS13)に搬送される。そして、ダイDを次工程に搬送したコレット22がダイ供給部1に戻ってくると、上記した手順に従って、次のダイDがダイシングテープ16から剥離され、以後同様の手順に従ってダイシングテープ16から1個ずつダイDが剥離される。
【0043】
(ステップS13:ボンディング工程)
制御部8はピックアップしたダイを基板S上に搭載又は既にボンディングしたダイの上に積層する。制御部8はウェハ11からピックアップしたダイDを中間ステージ31に載置し、ボンディングヘッド41で中間ステージ31から再度ダイDをピックアップし、搬送されてきた基板Sにボンディングする。
【0044】
(ステップS14:基板搬出工程)
制御部8は基板搬出部7で基板搬送爪51からダイDがボンディングされた基板Sを取り出す。ダイボンダ10から基板Sを搬出する。
【0045】
上述したように、ダイDは、ダイアタッチフィルム18を介して基板S上に実装され、ダイボンダから搬出される。その後、ワイヤボンディング工程でAuワイヤを介して基板Sの電極と電気的に接続される。続いて、ダイDが実装された基板Sがダイボンダに搬入されて基板S上に実装されたダイDの上にダイアタッチフィルム18を介して第2のダイDが積層され、ダイボンダから搬出された後、ワイヤボンディング工程でAuワイヤを介して基板Sの電極と電気的に接続される。第2のダイDは、前述した方法でダイシングテープ16から剥離された後、ダイボンド工程に搬送されてダイDの上に積層される。上記工程が所定回数繰り返された後、基板Sをモールド工程に搬送し、複数個のダイDとAuワイヤとをモールド樹脂(図示せず)で封止することによって、積層パッケージが完成する。
【0046】
実施例によれば、スライドする可動ステージにR(凹)形状を設けてダイを湾曲させるので、ダイの断面2次モーメントを上げることができ、剛性が向上し剥離に伴う応力に対応することが可能になる。分かり易い喩えでは、薄い紙、例えばA4サイズのコピー用紙を水平にして、薄い紙の端を指で摘まむと、薄い紙の自重により、摘まんだ端と反対側の端が下方に垂れる。他方、薄い紙を上が凹になるように湾曲(変形)させて、端を指で摘まむと、摘まんだ端と反対側の端が下方に垂れず、薄い紙は形状を維持する。
【0047】
上述したように、基板上に複数個のダイを三次元的に実装する積層パッケージを組み立てに際しては、パッケージ厚の増加を防ぐために、ダイの厚さを30μm以下まで薄くすることが要求される。なお、ダイの厚さはダイアタッチフィルムの厚さよりも厚い。一方、ダイシングテープの厚さは100μm程度であるから、ダイシングテープの厚みは、ダイの厚みの3~5倍にもなっている。
【0048】
このような薄いダイをダイシングテープから剥離させようとすると、ダイシングテープの変形に追従したダイの変形がより顕著に発生しやすくなるが、本実施例のダイボンダではダイシングテープからダイをピックアップする際のダイの変形を低減することができる。これにより、厚さが30μm以下のダイ(薄ダイという。)でのダイシングテープからの剥離を安定化することが可能になる。これにより、3D NAND(三次元構造のNAND型フラッショメモリ)含む薄ダイの品質および生産性を改善することが可能になる。
【0049】
<変形例>
以下、実施例の代表的な変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施例にて説明されているものと同様の構成および機能を有する部分に対しては、上述の実施例と同様の符号が用いられ得るものとする。そして、かかる部分の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施例における説明が適宜援用され得るものとする。また、上述の実施例の一部、および、複数の変形例の全部または一部が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0050】
(第一変形例)
次に、第一変形例の剥離ユニットの構成について
図9~11を用いて説明する。
図9は第一変形例における剥離ユニットの上面図である。
図10は
図9の剥離ユニットの構成と動作を説明する図であり、
図10(a)は
図9のE-E線における剥離ユニットの断面図であり、
図10(b)は
図9のF-F線における剥離ユニットの断面図である。
図11は
図9の剥離ユニットの構成と動作を説明する図であり、
図11(a)は
図9のE-E線における剥離ユニットとコレットの断面図であり、
図11(b)は
図9のF-F線における剥離ユニットとコレットの断面図である。
【0051】
図9に示すように、剥離ユニット13の筐体131は円筒形状であり、上面の中央に位置する開口部132oとその周辺の固定ステージ132と開口部132o内の可動ステージ133とを備える。開口部132oには上下動する可動ステージ133が設けられ、固定ステージ132には、複数の吸引口(不図示)および複数の溝(不図示)が設けられている。吸引口および溝のそれぞれの内部は、剥離ユニット13を上昇させてその上面をダイシングテープ16の裏面に接触させた際、図示しない吸引機構によって減圧され、ダイシングテープ16の裏面が固定ステージ132の上面に密着するようになっている。
【0052】
可動ステージ133は、ダイシングテープ16を上方に突き上げる四個のブロック102a~102dで構成されている。四個のブロック102a~102dは、最も外側の環状のブロック102aの内側に環状のブロック102bが配置され、さらにその内側に環状のブロック102cが配置され、さらにその内側に柱状のブロック102dが配置されている。
【0053】
固定ステージ132と外側のブロック102aとの間、および四個のブロック102a~102dの間には、隙間Gが設けられている。これらの隙間Gの内部は、図示しない吸引機構によって減圧されるようになっており、剥離ユニット13の上面にダイシングテープ16の裏面が接触すると、ダイシングテープ16が下方に吸引され、ブロック102a~102dの上面に密着する。
【0054】
ブロック102aの平面視の形状は、剥離の対象となるダイDと同じく長方形であり、そのサイズは、ダイDのサイズよりも僅かに小さい。ブロック102aの内側に配置された平面視で枠状のブロック102bのサイズは、ブロック102aのサイズよりも1mm~3mm程度小さい。また、ブロック102bの内側に配置されたブロック102cのサイズは、ブロック102bよりもさらに1mm~3mm程度小さい。また、ブロック102cの内側に配置されたブロック102dのサイズは、ブロック102cよりもさらに1mm~3mm程度小さい。なお、ブロック102dの幅はブロック102a~102cのいずれの幅(外側の辺と内側の辺との間の長さ)よりも大きい。本実施例では、加工の容易さなどを考慮して、ブロック102a~102dの形状を長方形にしたが、これに限定されるものではなく、例えば楕円形にしてもよい。
【0055】
図10に示すように、上記した四個のブロック102a~102dのそれぞれの上面の高さは、初期状態においては互いに異なり、ブロック102aの突上げ量はブロック102bの突上げ量より大きく、ブロック102bの突上げ量はブロック102cの突上げ量よりも大きく、ブロック102cの突上げ量はブロック102dの突上げ量よりも大きく、内側のブロックは外側より0~20μm程度低くなっている。すなわち、可動ステージ133の表面に吸着されたダイDおよびダイシングテープが球状面(SR形状面)のような上に凹の曲面を形成するようにブロック102a~102dの高さが設定される。これにより、ダイDが湾曲する。なお、この湾曲によるダイDによる曲げは、剥離ユニット13と接触前の状態においてダイシングテープ16上で反っているダイと同程度とする。また、ブロック102aは、剥離ユニット13の上面周辺部(固定ステージ132)の高さよりも僅かに低くなっている。
【0056】
ブロック102a~102dの各々は独立して上下移動が可能であり、移動量も制御部8によって変更が可能である。
【0057】
図12は
図11のコレットを説明する図であり、
図12(a)はコレットおよびコレットホルダのE方向の側面図であり、
図12(b)はコレットおよびコレットホルダのF方向の側面図である。
【0058】
図12に示すように、コレット22はピックアップヘッド21に設けられているコレットホルダ25に取り付けられる。
図12(a)に示すように、コレット22は、Y軸方向からの側面視および断面視(XZ面における断面視)においてX軸方向がZ軸方向(上下方向)よりも長い矩形状の下辺が下に凸の曲線で形成され、
図12(b)に示すように、X軸方向からの側面視および断面視(X軸方向に交わる面、例えば直交するYZ面における断面視)においてY軸方向がZ軸方向よりも長い矩形状の下辺が下に凸の曲線で形成されている。すなわち、コレット22のダイDを吸着する吸着面22aは、球状面(SR形状面)を形成している。すなわち、コレット22の吸着面22aは、可動ステージ133のブロック102a~102dに形成されるダイDおよびダイシングテープ16の凹の曲面と嵌合するように凸の曲面で形成されている。これにより、ダイDの湾曲が維持される。
【0059】
次に、上述した構成よる剥離ユニット13によるピックアップ動作について
図3、4、10を用いて説明する。
【0060】
まず、実施例と同様に、
図3および
図4に示したウェハ保持台12に位置決めされているダイシングテープ16に紫外線を照射する。これにより、ダイシングテープ16に塗布された粘着剤が硬化してその粘着性が低下するので、ダイシングテープ16とダイアタッチフィルム18との界面が剥離し易くなる。
【0061】
次に、実施例と同様に、ウェハ保持台12のエキスパンドリング15を下降させることによって、ダイシングテープ16の周辺部に接着されたウェハリング14を下方に押し下げる。このようにすると、ダイシングテープ16が、その中心部から周辺部に向かう強い張力を受けて水平方向に弛みなく引き伸ばされる。
【0062】
次に、
図4に示すように、剥離の対象となる一個のダイD(同図の中央部に位置するダイD)の真下に剥離ユニット13の中心部(ブロック102a~102d)が位置するようにウェハ保持台12を移動させると共に、このダイDの上方にコレット22を移動させる。ピックアップヘッド21に支持されたコレット22の底面には、内部が減圧される吸着口(不図示)が設けられており、剥離の対象となる一個のダイDのみを選択的に吸着、保持できるようになっている。
【0063】
次に、
図10に示すように、ブロック102a、ブロック102b、ブロック102cおよびブロック102dの上面を異なる高さにし、固定ステージ132の上面よりも僅かに下げた状態(上述した初期状態)にして、剥離ユニット13を上昇させてその上面をダイシングテープ16の裏面に接触させると共に、前述した固定ステージ132の吸引口、溝および隙間Gの内部を減圧する。これにより、剥離の対象となるダイDに隣接する他のダイDの下方のダイシングテープ16が固定ステージ132に密着すると共に、剥離の対象となるダイDの下方のダイシングテープ16がブロック102a~102dの上面に密着し、ダイDおよびダイシングテープ16に凹の曲面を形成する。一方、剥離ユニット13の上昇とほぼ同時にコレット22を下降させ、その底面を剥離の対象となるダイDの上面に接触させることによって、ダイDを吸着すると共に下方に軽く押さえ付ける。
【0064】
次に、
図11に示すように、四個のブロック102a、ブロック102b、ブロック102cおよびブロック102dの互いの位置関係を維持したまま同時に上方に突き上げてダイシングテープ16の裏面に荷重を加え、ダイDをダイシングテープ16と共に押し上げて周辺を剥離する。
【0065】
次に、最も外側に配置されたブロック102aを下方に引き下げると、ダイアタッチフィルム18とダイシングテープ16との剥離が始まる。このとき、剥離の対象となるダイDに隣接する他のダイDの下方のダイシングテープ16を下方に吸引し、固定ステージ132に密着させておくことにより、他のダイDの剥離を防ぐことができる。ブロック102aを下方に引き下げる際には、ダイDの剥離を促進させるために、ブロック102a、ブロック102b、ブロック102cおよびブロック102dの隙間Gの内部を減圧することによって、ダイDの下方のダイシングテープ16を下方に吸引しておく。また、固定ステージ132の溝の内部を減圧し、固定ステージ132に接するダイシングテープ16を固定ステージ132の上面に密着させておく。
【0066】
次に、最も外側から二番目に配置されたブロック102bを下方に引き下げると、ダイアタッチフィルム18とダイシングテープ16との剥離がダイDの中心方向へ進行する。このとき、ブロック102aの上面は固定ステージ132の上面よりも低く位置するが、ブロック102bの上面は固定ステージ132の上面よりも高く位置する。
【0067】
次に、最も外側から三番目に配置されたブロック102cを下方に引き下げると、ダイアタッチフィルム18とダイシングテープ16との剥離がさらにダイDの中心方向へ進行する。このとき、ブロック102a、ブロック102bおよびブロック102cの上面は固定ステージ132の上面よりも低く位置する。
【0068】
そして、ブロック102dを下方に引き下げると共に、コレット22を上方に引き上げることにより、ダイアタッチフィルム18がダイシングテープ16から完全に剥離する。
【0069】
第一変形例によれば、可動ステージを構成する複数のブロックにより凹部形状を設けてダイを湾曲させるので、実施例と同様にダイの断面2次モーメントを上げることができ、剛性が向上し剥離に伴う応力に対応することが可能になる。
【0070】
(第二変形例)
第一変形例では、
図10(b)に示す状態から外側のブロックから順次引き下げていったが、内側のブロックから順に突上げてダイDをダイシングテープ16から剥離してもよい。すなわち、まず、ブロック102dをブロック102aよりも高く突き上げる。次に、ブロック102cをブロック102aよりも高いがブロック102dよりも低く突き上げる。次に、ブロック102bをブロック102aよりも高いがブロック102cよりも低く突き上げる。次に、ブロック102aをブロック102bよりも低く突き上げる。
【0071】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施例および変形例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施例および変形例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0072】
例えば、実施例では可動ステージの前方に剥離するための凸部(段差)を設ける例を説明したが、凸部(段差)を設けず可動ステージを水平移動するようしてもよいし、可動ステージは水平移動と共に、上下移動するようにしてもよい。
【0073】
また、変形例では、可動ステージは四つのブロックで構成されている例を説明したが、四つ未満でも五つ以上のブロックで構成してもよい。
【0074】
また、七つの長方形のブロックを平行に並べてブロック102a~102dを構成し、中央の1つのブロックが内側のブロック102dを構成し、その両側の3つのブロックが中間のブロック102a~102cを構成し、最も外側の2つのブロックが外側のブロック102aを構成するようにしてもよい。この場合、コレット22は、実施例と同様に矩形状であり、長い矩形状の下辺が下に凸の曲線で形成され、コレット22のダイDを吸着する吸着面22aは、円柱の外側表面(R形状面)のような凸の曲面を形成するようにしてもよい。
【0075】
また、実施例では、ダイアタッチフィルムを用いる例を説明したが、基板に接着剤を塗布するプリフォーム部を設けてダイアタッチフィルムを用いなくてもよい。
【0076】
また、実施例では、ダイ供給部からダイをピックアップヘッドでピックアップして中間ステージに載置し、中間ステージに載置されたダイをボンディングヘッドで基板にボンディングするダイボンダについて説明したが、これに限定されるものではなく、ダイ供給部からダイをピックアップする半導体製造装置に適用可能である。例えば、中間ステージとピックアップヘッドがなく、ダイ供給部のダイをボンディングヘッドで基板にボンディングするダイボンダにも適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
8:制御部
10:ダイボンダ(ダイボンディング装置)
13:剥離ユニット
132:固定ステージ
133:可動ステージ
16:ダイシングテープ
22:コレット
D:ダイ