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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】セラミック部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/111 20060101AFI20231106BHJP
   B23Q 3/15 20060101ALI20231106BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20231106BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20231106BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
C04B35/111
B23Q3/15 Z
H01L21/68 R
H02N13/00 D
H05K3/18 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019006355
(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公開番号】P2020114789
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】堀内 道夫
(72)【発明者】
【氏名】峯村 知剛
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-278919(JP,A)
【文献】特開平07-245482(JP,A)
【文献】特開2002-322521(JP,A)
【文献】特開2005-223185(JP,A)
【文献】特開2005-012143(JP,A)
【文献】特開2018-142589(JP,A)
【文献】特開2014-011251(JP,A)
【文献】特開平06-115009(JP,A)
【文献】特開2004-238218(JP,A)
【文献】特開平11-135602(JP,A)
【文献】特開昭62-260373(JP,A)
【文献】特開2017-218352(JP,A)
【文献】特開2002-121078(JP,A)
【文献】特開平08-078581(JP,A)
【文献】特開平07-015101(JP,A)
【文献】特開2000-031254(JP,A)
【文献】特表2018-537002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
H01L 21/68-21/683
H05K 3/18
B23Q 3/15
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はアルミニウム合金の金属膜を第1のグリーンシートと第2のグリーンシートとで挟み込む工程と、
前記金属膜の融点以上の温度で前記第1のグリーンシート及び前記第2のグリーンシートの焼成を行ってセラミックの焼結体を得る工程と、
を有し、
前記第1のグリーンシートを構成するセラミックのうち96質量%以上が酸化アルミニウムであり、
前記第2のグリーンシートを構成するセラミックのうち96質量%以上が酸化アルミニウムであり、
前記焼結体を構成するセラミックのうち96質量%以上が酸化アルミニウムであり、
前記焼結体の相対密度が90%以上であり、
前記第1のグリーンシート若しくは前記第2のグリーンシート又はこれらの両方の前記金属膜と接する面の一部に空隙が設けられており、
前記焼結体を得る工程において、溶融した前記金属膜の一部が前記空隙に入り込んで凝固することを特徴とするセラミック部材の製造方法。
【請求項2】
前記焼成を酸化性雰囲気中で行うことを特徴とする請求項に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項3】
前記焼成を大気雰囲気中で行うことを特徴とする請求項に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項4】
前記焼成を700℃以上1600℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項5】
前記焼成を1300℃以上1600℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項6】
前記空隙の直径は3mmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のセラミック部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電チャック、配線基板及び圧電アクチュエータ等に、セラミックと導電材料との複合材料を用いることが提案されている。セラミックと導電材料との複合材料は、次のようにして製造される。先ず、セラミックを焼成する温度より高い融点を有する金属の粉末をペースト化して、セラミックのグリーンシートの表面に塗布する。このようなグリーンシートを複数準備し、これらを互いに積層し、還元雰囲気中で焼成する。このようにして、複合材料を製造することができる。金属としては、主としてタングステン又はモリブデンが用いられる。また、特許文献1には、低抵抗化を目的として、金属として銅を用いるための方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-015101号公報
【文献】特開2005-223185号公報
【文献】特開昭62-260373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、銅の融点はグリーンシートの脱脂及び焼成に好適な温度よりも著しく低いため、銅を用いる場合には、脱脂及び焼成の長時間化等のコストの増加を招く処理が行われる。
【0005】
本発明は、コストの増加を避けながら導電材料の電気抵抗を低減することができるセラミック部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属膜を第1のグリーンシートと第2のグリーンシートとで挟み込む工程と、前記金属膜の融点以上の温度で前記第1のグリーンシート及び前記第2のグリーンシートの焼成を行ってセラミックの焼結体を得る工程と、を有し、前記第1のグリーンシートを構成するセラミックのうち96質量%以上が酸化アルミニウムであり、前記第2のグリーンシートを構成するセラミックのうち96質量%以上が酸化アルミニウムであり、前記焼結体を構成するセラミックのうち96質量%以上が酸化アルミニウムであり、前記焼結体の相対密度が90%以上であり、前記第1のグリーンシート若しくは前記第2のグリーンシート又はこれらの両方の前記金属膜と接する面の一部に空隙が設けられており、前記焼結体を得る工程において、溶融した前記金属膜の一部が前記空隙に入り込んで凝固するセラミック部材の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、コストの増加を避けながら導電材料の電気抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係るセラミック部材を示す図である。
図2】第1の実施形態に係るセラミック部材の製造方法を示す平面図(その1)である。
図3】第1の実施形態に係るセラミック部材の製造方法を示す平面図(その2)である。
図4】第1の実施形態に係るセラミック部材の製造方法を示す平面図(その3)である。
図5】第1の実施形態に係るセラミック部材の製造方法を示す断面図(その1)である。
図6】第1の実施形態に係るセラミック部材の製造方法を示す断面図(その2)である。
図7】第1の実施形態に関する実験でのセラミック部材の製造方法を示す平面図(その1)である。
図8】第1の実施形態に関する実験でのセラミック部材の製造方法を示す平面図(その2)である。
図9】第1の実施形態に関する実験でのセラミック部材の製造方法を示す断面図(その1)である。
図10】第1の実施形態に関する実験でのセラミック部材の製造方法を示す断面図(その2)である。
図11】第2の実施形態に係る静電チャックを示す断面図である。
図12】第3の実施形態に係るインダクタを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、電気抵抗が低い導電材料としてアルミニウムに着目した。但し、アルミニウムの融点は約660℃と低いため、タングステン又はモリブデンの粉末のペーストを用いる従来の方法において、タングステン又はモリブデンに代えてアルミニウムを用いることはできない。そこで、本発明者らは、バルク状のアルミニウムを用いる方法について鋭意検討を行った。この結果、所定のセラミックのグリーンシートを用いることで、バルク状のアルミニウム又はアルミニウム合金を用いてセラミック部材を適切に製造できることを見出した。
【0010】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0011】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態はセラミック部材に関する。図1は、第1の実施形態に係るセラミック部材を示す図である。図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)中のI-I線に沿った断面図であり、図1(c)は図1(a)中のII-II線に沿った断面図である。
【0012】
図1(a)~図1(c)に示すように、第1の実施形態に係るセラミック部材100は、セラミックの焼結体110と、焼結体110内に設けられたアルミニウム又はアルミニウム合金の導電部材111と、を有する。焼結体110に、導電部材111に到達する孔102Aが形成されていてもよい。
【0013】
このように構成されたセラミック部材100では、導電部材111の電気抵抗率を、タングステン又はモリブデンの粉末のペーストを用いて形成された導電部材の電気抵抗率よりも低くすることができる。また、導電部材111の熱伝導率を、タングステン又はモリブデンの粉末のペーストを用いて形成された導電部材の熱伝導率よりも高くすることができる。例えば、タングステンの電気抵抗率は52.8nΩmであり、熱伝導率は173W/(mK)であるのに対し、アルミニウムの電気抵抗率は28.2nΩmであり、熱伝導率は237W/(mK)である。
【0014】
更に、後述の方法によれば、セラミック部材100は長時間の脱脂及び焼成を行わずに製造することができ、コストの増加を抑制することができる。
【0015】
焼結体110の相対密度は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。焼結体110の相対密度が90%未満では、連続気孔が形成される確率が高くなり、導電部材111の材料であるアルミニウム又はアルミニウム合金のペネトレーションや気化損失が生じやすくなる。
【0016】
焼結体110はアルミニウム又はアルミニウム合金との化学的反応が進みにくい材料から構成されていることが好ましい。例えば、焼結体110は、96質量%以上の酸化アルミニウム(Al)を含んでいることが好ましく、99質量%以上の酸化アルミニウムを含んでいることがより好ましい。酸化シリコン(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)及び酸化カルシウム(CaO)は、酸化アルミニウムよりも、アルミニウム又はアルミニウム合金と化学的反応が生じやすい。従って、酸化シリコン、酸化マグネシウム及び酸化カルシウムの総量は焼結体110の4質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0017】
次に、第1の実施形態に係るセラミック部材100の製造方法について説明する。図2図4は、第1の実施形態に係るセラミック部材の製造方法を示す平面図であり、図5図6は、第1の実施形態に係るセラミック部材の製造方法を示す断面図である。図5図6は、図2図4中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0018】
先ず、図2(a)及び図5(a)に示すように、第1のグリーンシート101を準備する。第1のグリーンシート101としては、例えば、4枚のセラミック部材100が取れる大判のグリーンシートが使用される。つまり、第1のグリーンシート101は、セラミック部材100に対応する構造体が形成される4つの領域を有している。これらの領域は、後に切断線151に沿った切断により分割される。後述の第2のグリーンシート102及び第3のグリーンシート103についても同様である。次いで、第1のグリーンシート101上にアルミニウム又はアルミニウム合金のバルク状の金属膜111Aを設ける。金属膜111Aとして金属箔を用いることができる。
【0019】
その後、図2(b)及び図5(b)に示すように、金属膜111Aに到達する孔102Aが形成された第2のグリーンシート102を第1のグリーンシート101上に設ける。
【0020】
続いて、図3(a)及び図5(c)に示すように、第3のグリーンシート103を第2のグリーンシート102上に設ける。第3のグリーンシート103により孔102Aが塞がれる。本実施形態では、第2のグリーンシート102と第3のグリーンシート103との積層体が、請求項における第2のグリーンシートの一例であり、孔102Aが空隙の一例である。空隙は、第1のグリーンシート、第2のグリーンシートのどちらに形成されていてもよく、両方に形成されていてもよい。いずれの場合も、この空隙が閉塞されるように第1のグリーンシート及び第2のグリーンシートが互いに積層される。
【0021】
次いで、図3(b)及び図6(a)に示すように、加熱及び加圧により第1のグリーンシート101、第2のグリーンシート102及び第3のグリーンシート103を一体化する。その後、焼成を行うことにより、焼結体110を得る。この焼成の際に、金属膜111Aが溶融、凝固して導電部材111が得られる。
【0022】
焼成によって第1のグリーンシート101、第2のグリーンシート102及び第3のグリーンシート103が略等方的に緻密化するため、焼結体110の体積は第1のグリーンシート101、第2のグリーンシート102及び第3のグリーンシート103の総体積よりも小さくなる。その一方で、導電部材111の体積はバルク状の金属膜111Aの体積と同等である。本実施形態では、第2のグリーンシート102に孔102Aが形成されており、金属膜111Aが溶融している間に、焼結体110の収縮が完了する。従って、溶融金属の一部が孔102Aに入り込んで凝固する。この結果、焼結体110の収縮に伴う内部応力の発生を避けることができる。
【0023】
焼成の後、図4(a)及び図6(b)に示すように、焼結体110の研削及び研磨を行うことで、孔102Aを露出させる。
【0024】
次いで、図4(b)及び図6(c)に示すように、切断線151に沿って焼結体110を切断し、個片化する。
【0025】
このようにして、第1の実施形態に係るセラミック部材100を製造することができる。
【0026】
この製造方法によれば、一体化した第1のグリーンシート101、第2のグリーンシート102及び第3のグリーンシート103の焼成の際に、金属膜111Aから導電部材111を得ることができる。つまり、長時間の脱脂及び焼成等の、導電部材111を得るための特別な処理は必要とされない。このため、製造コストの増加を抑制することができる。また、第2のグリーンシート102に孔102Aが形成されているため、焼成に伴うセラミックの体積収縮が生じても内部応力の発生を避けることができる。
【0027】
更に、従来の金属粉末のペーストを用いる方法では、導電部材に介在物が混入するが、この製造方法では、バルク状の金属膜111Aを用いることができるため、介在物の混入に伴う電気抵抗率の上昇及び熱伝導率の低減を避けることができる。
【0028】
第1のグリーンシート101、第2のグリーンシート102及び第3のグリーンシート103のそれぞれについて、グリーンシートを構成するセラミックのうち酸化アルミニウムの割合は、好ましくは96質量%以上であり、より好ましくは99質量%以上である。セラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金との化学的反応を抑制するためである。
【0029】
焼結体110を得る焼成の温度は金属膜111Aの融点以上であればよく、例えば700℃以上であることが好ましい。第1のグリーンシート101、第2のグリーンシート102及び第3のグリーンシート103の材料にもよるが、焼成温度は1300℃以上であることが好ましい。また、焼成温度が1600℃超では、溶融金属とセラミックとの間で化学的反応が生じやすくなる。このため、焼成温度は1600℃以下であることが好ましい。
【0030】
焼結体110を得る焼成の雰囲気は大気雰囲気等の酸化性雰囲気であることが好ましい。固体のアルミニウム又はアルミニウム合金の表面には不動態膜ともよばれる緻密な酸化膜が形成されている。ところが、アルミニウム又はアルミニウム合金が融点以上に加熱されると、アルミニウム又はアルミニウム合金の溶融に伴って酸化膜が破れ、真空雰囲気中又は還元性雰囲気中では、温度の上昇に伴って溶融金属の蒸発が進む。特に、1200℃以上では蒸気圧上昇が大きく、蒸発損失が大きい。これに対し、大気雰囲気等の酸化性雰囲気中では、酸化膜が破れても、速やかに新たな酸化膜が形成される。このため、アルミニウム又はアルミニウム合金の蒸発損失を抑制することができる。
【0031】
本実施形態では、このような酸化膜の破壊及び再形成は、主として金属膜111Aの孔102Aに露出する部分で生じ得る。酸化膜の破壊及び再形成が生じる範囲が広いほど金属の酸化損失が増加するが、本実施形態では、酸化膜の破壊及び再形成が生じる範囲が限定的であるため、アルミニウム又はアルミニウム合金の酸化損失を抑制することもできる。
【0032】
焼成を大気雰囲気で行うことで、第1のグリーンシート101、第2のグリーンシート102及び第3のグリーンシート103に含まれる有機成分を速やかに除去することができる。有機成分の除去により、残留カーボンのセラミック特性への影響を抑制することができる。また、大気雰囲気での焼成には、水素、窒素、アンモニア分解ガス等の雰囲気制御ガスが不要である。更に、大気雰囲気には、真空雰囲気及び還元性雰囲気よりも管理が容易であり、設備コストが低いという利点もある。
【0033】
第1のグリーンシート101、第2のグリーンシート102及び第3のグリーンシート103の積層体から得られるセラミック部材100の数は4に限定されない。例えば、第1のグリーンシート101、第2のグリーンシート102及び第3のグリーンシート103の積層体を切断せずに、1つのセラミック部材100を製造してもよい。
【0034】
最終製品のセラミック部材100において孔102Aが露出している必要はなく、セラミック部材100のユーザにて導電部材111との導通経路を形成するようにしてもよい。導電部材111との間の静電容量を用いた通信を行ってもよい。また、孔102Aが導電材料又はセラミック材料等により埋められていてもよい。
【0035】
ここで、本発明者らが行った第1の実施形態に関する実験について説明する。図7図8は、第1の実施形態に関する実験でのセラミック部材の製造方法を示す平面図である。図9図10は、第1の実施形態に関する実験でのセラミック部材の製造方法を示す断面図である。図9図10は、図7図8中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0036】
この実験では、先ず、図7(a)及び図9(a)に示すように、ドクターブレード法により第1のグリーンシート1を形成した。第1のグリーンシート1の形成では、平均粒径が1μm以下のアルミナ粉末と、ポリビニルブチラールと、フタル酸ジブチルと、2-プロパノールと、酢酸エチルとをボールミルにて混合したスラリーを用いた。第1のグリーンシート1の厚さは約0.5mmである。後述の第2のグリーンシート2及び第3のグリーンシート3も同様にして作製し、これらの厚さも約0.5mmである。次いで、第1のグリーンシート1上に、厚さが約0.03mmのアルミニウム箔11Aを設けた。アルミニウム箔11Aの平面形状は、30mm×10mmの矩形である。
【0037】
その後、図7(b)及び図9(b)に示すように、アルミニウム箔11Aに到達する孔2Aが2箇所に形成された第2のグリーンシート2を第1のグリーンシート1上に設けた。孔の直径は3mmである。
【0038】
続いて、図8(a)及び図9(c)に示すように、第3のグリーンシート3を第2のグリーンシート2上に設け、第3のグリーンシート3により孔2Aを塞いだ。
【0039】
次いで、図10(a)に示すように、加熱及び加圧により第1のグリーンシート1、第2のグリーンシート2及び第3のグリーンシート3を一体化し、その後、大気雰囲気中で、約1500℃にて焼成を行うことにより、焼結体10を得た。この焼成の際に、アルミニウム箔11Aが溶融、凝固して導電部材11が得られた。
【0040】
続いて、図8(b)及び図10(b)に示すように、焼結体10の研削及び研磨を行うことで、孔2Aを露出させた。
【0041】
そして、接触抵抗を含む二端子式の簡易抵抗テスタを用いて、導電部材11の電気抵抗を測定した。導電部材11の電気抵抗は0.3mΩと十分に低かった。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態はセラミック部材を含む静電チャックに関する。図11は、第2の実施形態に係る静電チャックを示す断面図である。
【0043】
図11に示すように、第2の実施形態に係る静電チャック200は、セラミックの焼結体210と、焼結体210内に設けられたアルミニウム又はアルミニウム合金の静電電極220と、焼結体210内に設けられたアルミニウム又はアルミニウム合金の静電電極230と、を有する。焼結体210の一方の面210Aに、静電電極220に到達する孔202Aと、静電電極230に到達する孔203Aと、が形成されている。孔202A内に静電電極220に接続されたビア導体221が設けられ、孔203A内に静電電極230に接続されたビア導体231が設けられている。
【0044】
このように構成された静電チャック200では、ビア導体221及び231を通じて、静電電極220又は230の一方に正の電圧が印加され、他方に負の電圧が印加される。この結果、孔202A及び203Aが形成された面210Aとは反対側の面210Bが帯電し、この面210B上に半導体ウェハ等の対象物が吸着される。
【0045】
静電チャック200では、静電電極220及び230の電気抵抗率を、タングステン又はモリブデンの粉末のペーストを用いて形成された静電電極の電気抵抗率よりも低くすることができる。また、静電電極220及び230の熱伝導率を、タングステン又はモリブデンの粉末のペーストを用いて形成された導電部材の熱伝導率よりも高くすることができる。
【0046】
更に、セラミック部材100と同様に、静電チャック200は長時間の脱脂及び焼成を行わずに製造することができ、コストの増加を抑制することができる。
【0047】
焼結体210の相対密度は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。焼結体210の相対密度が90%未満では、連続気孔が形成される確率が高くなり、静電電極220及び230の材料であるアルミニウム又はアルミニウム合金のペネトレーションや気化損失が生じやすくなる。
【0048】
焼結体210はアルミニウム又はアルミニウム合金との化学的反応が進みにくい材料から構成されていることが好ましい。例えば、焼結体210は、96質量%以上の酸化アルミニウムを含んでいることが好ましく、99質量%以上の酸化アルミニウムを含んでいることがより好ましい。
【0049】
静電チャック200の製造に当たっては、例えば、セラミック部材100の製造方法に倣う方法により、孔202A及び203Aを露出させる焼結体210の研削及び研磨までの処理を行い、その後に、孔202A内にビア導体221を形成し、孔203A内にビア導体231を形成することができる。
【0050】
孔202A及び203Aのサイズによっては、セラミックの体積収縮で孔202A及び203Aに入り込んで凝固したアルミニウム又はアルミニウム合金をビア導体221及び231として用いることもできる。
【0051】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態はセラミック部材を含むインダクタに関する。図12は、第3の実施形態に係るインダクタを示す平面図である。
【0052】
図12に示すように、第3の実施形態に係るインダクタ300は、セラミックの焼結体310と、焼結体310内に設けられたアルミニウム又はアルミニウム合金の導電部材311と、を有する。導電部材311の平面形状は螺旋状となっている。焼結体310の一方の面に、導電部材311の一端に到達する孔302Aと、導電部材311の他端に到達する孔302Bと、が形成されている。
【0053】
このように構成されたインダクタ300は、孔302A及び302Bを通じて外部の回路に電気的に接続することができる。
【0054】
インダクタ300では、導電部材311の電気抵抗率を、タングステン又はモリブデンの粉末のペーストを用いて形成された静電電極の電気抵抗率よりも低くすることができる。また、導電部材311の熱伝導率を、タングステン又はモリブデンの粉末のペーストを用いて形成された導電部材の熱伝導率よりも高くすることができる。
【0055】
更に、セラミック部材100と同様に、インダクタ300は長時間の脱脂及び焼成を行わずに製造することができ、コストの増加を抑制することができる。
【0056】
焼結体310の相対密度は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。焼結体310の相対密度が90%未満では、連続気孔が形成される確率が高くなり、導電部材311の材料であるアルミニウム又はアルミニウム合金のペネトレーションや気化損失が生じやすくなる。
【0057】
焼結体310はアルミニウム又はアルミニウム合金との化学的反応が進みにくい材料から構成されていることが好ましい。例えば、焼結体210は、96質量%以上の酸化アルミニウムを含んでいることが好ましく、99質量%以上の酸化アルミニウムを含んでいることがより好ましい。
【0058】
インダクタ300の製造に当たっては、例えば、セラミック部材100の製造方法に倣う方法により、孔302A及び302Bを露出させる焼結体310の研削及び研磨までの処理を行うことができる。
【0059】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0060】
例えば、第2の実施形態では、セラミック部材を静電チャックに応用し、第三の実施形態では、セラミック部材をインダクタに応用しているが、セラミック部材の用途は限定されない。例えば、セラミック部材をパワー半導体装置等の実装基板に用いてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1、101 第1のグリーンシート
2、102 第2のグリーンシート
2A、102A 孔
3、103 第3のグリーンシート
10、110 焼結体
11、111 導電部材
11A アルミニウム箔
111A 金属膜
200 静電チャック
300 インダクタ
図1
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