(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】コバルト錯体、その製造方法、及びコバルト含有薄膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 15/06 20060101AFI20231106BHJP
C23C 16/18 20060101ALI20231106BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20231106BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20231106BHJP
C07F 7/10 20060101ALN20231106BHJP
【FI】
C07F15/06 CSP
C23C16/18
H01L21/316 X
H01L21/318 B
H01L21/318 C
C07F7/10 T
C07F7/10 F
(21)【出願番号】P 2019196928
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2018212049
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019022221
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019132379
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】尾池 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】早川 哲平
(72)【発明者】
【氏名】山本 有紀
(72)【発明者】
【氏名】古川 泰志
(72)【発明者】
【氏名】多田 賢一
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-081857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
(1)
(式中、L
1及びL
2は相異なって、各々一般式(A)
【化2】
(A)
(式中、R
1及びR
2は各々独立に炭素数1~6のアルキル基又はトリ(炭素数1~6のアルキル)シリル基を表す。波線はコバルト原子との結合手を表す。)で表される単座アミド配位子、一般式(B)
【化3】
(B)
(式中、R
3はトリ(炭素数1~6のアルキル)シリル基を表す。R
4及びR
5は各々独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。Xは炭素数1~6のアルキレン基を表す。)で表される二座アミド配位子、又は一般式(C)
【化4】
(C)
(式中、R
6及びR
8は各々独立に炭素数1~6のアルキル基を表す。R
7は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。Yは酸素原子又はNR
9を表す。Zは酸素原子又はNR
10を表す。R
9及びR
10は各々独立に炭素数1~6のアルキル基を表す。)で表されるヘテロ原子含有配位子を表す。)で示されるコバルト錯体
であって、
前記コバルト錯体が、
一般式(1AB)
【化5】
(1AB)
(式中、R
1
及びR
2
は一般式(A)のR
1
及びR
2
と同義を表す。R
3
、R
4
、R
5
及びXは一般式(B)のR
3
、R
4
、R
5
及びXと同義を表す。)、
一般式(1AC)
【化6】
(1AC)
(式中、R
1
及びR
2
は一般式(A)のR
1
及びR
2
と同義を表し、R
6
、R
7
、R
8
、Y及びZは一般式(C)のR
6
、R
7
、R
8
、Y及びZと同義を表す。)、又は、
一般式(1BC)
【化7】
(1BC)
(式中、R
3
、R
4
、R
5
及びXは一般式(B)のR
3
、R
4
、R
5
及びXと同義を表し、R
6
、R
7
、R
8
、Y及びZは一般式(C)のR
6
、R
7
、R
8
、Y及びZと同義を表す。)で示される、
コバルト錯体。
【請求項2】
一般式(1AB)
【化8】
(1AB)
(式中、R
1及びR
2は一般式(A)のR
1及びR
2と同義を表す。R
3、R
4、R
5及びXは一般式(B)のR
3、R
4、R
5及びXと同義を表す。)で示される請求項1に記載のコバルト錯体。
【請求項3】
R
1、R
2及びR
3がトリ(炭素数1~4のアルキル)シリル基であり、R
4及びR
5がメチル基又はエチル基であり、Xが炭素数1~4のアルキレン基である請求項2に記載のコバルト錯体。
【請求項4】
R
1、R
2及びR
3がトリメチルシリル基であり、R
4及びR
5がメチル基又はエチル基であり、Xが炭素数1~4のアルキレン基である請求項2に記載のコバルト錯体。
【請求項5】
一般式(1AC)
【化9】
(1AC)
(式中、R
1及びR
2は一般式(A)のR
1及びR
2と同義を表し、R
6、R
7、R
8、Y及びZは一般式(C)のR
6、R
7、R
8、Y及びZと同義を表す。)で示される請求項1に記載のコバルト錯体。
【請求項6】
R
1及びR
2がトリ(炭素数1~4のアルキル)シリル基であり、R
6及びR
8がメチル基であり、R
7が水素原子であり、YがNR
9であり、ZがNR
10であり、R
9及びR
10が炭素数1~4のアルキル基である請求項5に記載のコバルト錯体。
【請求項7】
R
1及びR
2がトリメチルシリル基であり、R
6及びR
8がメチル基であり、R
7が水素原子であり、YがNR
9であり、ZがNR
10であり、R
9及びR
10が炭素数1~4のアルキル基である請求項5に記載のコバルト錯体。
【請求項8】
一般式(1BC)
【化10】
(1BC)
(式中、R
3、R
4、R
5及びXは一般式(B)のR
3、R
4、R
5及びXと同義を表し、R
6、R
7、R
8、Y及びZは一般式(C)のR
6、R
7、R
8、Y及びZと同義を表す。)で示される請求項1に記載のコバルト錯体。
【請求項9】
R
3がトリ(炭素数1~4のアルキル)シリル基であり、R
4及びR
5がメチル基又はエ
チル基であり、Xが炭素数1~4のアルキレン基であり、R
6及びR
8が炭素数1~4のアルキル基であり、R
7が水素原子であり、Y及びZが酸素原子である請求項8に記載のコバルト錯体。
【請求項10】
R
3がトリメチルシリル基であり、R
4及びR
5がメチル基又はエチル基であり、Xが炭素数1~4のアルキレン基であり、R
6及びR
8が炭素数1~4のアルキル基であり、R
7が水素原子であり、Y及びZが酸素原子である請求項8に記載のコバルト錯体。
【請求項11】
一般式(2)
【化11】
(2)
(式中、R
1及びR
2は各々独立に炭素数1~6のアルキル基又はトリ(炭素数1~6のアルキル)シリル基を表す。Dは中性配位子を表す。nは0又は1を表す。)で示されるビスアミド錯体と、一般式(3)
【化12】
(3)
(式中、R
3はトリ(炭素数1~6のアルキル)シリル基を表す。R
4及びR
5は各々独立に炭素数1~6のアルキル基を表す。Xは炭素数1~6のアルキレン基を表す。)で表されるアミノアルキルアミンとを反応させる、請求項2に記載のコバルト錯体の製造方法。
【請求項12】
一般式(2)
【化13】
(2)
(式中、R
1及びR
2は各々独立に炭素数1~6のアルキル基又はトリ(炭素数1~6のアルキル)シリル基を表す。Dは中性配位子を表す。nは0又は1を表す。)で示されるビスアミド錯体と、一般式(4)
【化14】
(4)
(式中、R
6及びR
8は各々独立に炭素数1~6のアルキル基を表す。R
7は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示す。Yは酸素原子又はNR
9を表す。Zは酸素原子又はNR
10を表す。R
9及びR
10は各々独立に炭素数1~6のアルキル基を表す。)で表されるヘテロ原子含有化合物とを反応させる、請求項5に記載のコバルト錯体の製造方法。
【請求項13】
一般式(1AB)
【化15】
(1AB)
(式中、R
1及びR
2は各々独立に炭素数1~6のアルキル基又はトリ(炭素数1~6のアルキル)シリル基を表す。R
3はトリ(炭素数1~6のアルキル)シリル基を表す。R
4及びR
5は各々独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。Xは炭素数1~6のアルキレン基を表す。)で示されるコバルト錯体と、一般式(4)
【化16】
(4)
(式中、R
6及びR
8は各々独立に炭素数1~6のアルキル基を表す。R
7は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示す。Yは酸素原子又はNR
9を表す。Zは酸素原子又はNR
10を表す。R
9及びR
10は各々独立に炭素数1~6のアルキル基を表す。)で表されるヘテロ原子含有化合物とを反応させる、請求項8に記載のコバルト錯体の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載のコバルト錯体を化学反応に基づく気相蒸着法に用いることを特徴とする、コバルト含有薄膜の製造方法。
【請求項15】
化学反応に基づく気相蒸着法が化学気相蒸着法である、請求項14に記載のコバルト含有薄膜の製造方法。
【請求項16】
化学反応に基づく気相蒸着法において反応ガスを用いることを特徴とする、請求項14又は15に記載のコバルト含有薄膜の製造方法。
【請求項17】
反応ガスとして還元性ガスを用いる、請求項16に記載のコバルト含有薄膜の製造方法。
【請求項18】
コバルト含有薄膜が金属コバルト薄膜である請求項14~17のいずれかに記載のコバルト含有薄膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の製造用原料として有用なコバルト錯体、その製造方法、及び該コバルト錯体を材料として用いることにより製造するコバルト含有薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コバルトは、高い導電性を示すこと、仕事関数が大きいこと、導電性シリサイドを形成出来ること、銅との格子整合性に優れることなどの特長を持つため、トランジスタなどの半導体素子のゲート電極、ソース・ドレイン部の拡散層上のコンタクト、銅配線シード層/ライナー層などの材料として注目を集めている。次世代の半導体素子では、記憶容量や応答性をさらに向上させる目的のため、高度に細密化及び三次元化されたデザインが採用されている。したがって次世代の半導体素子を構成する材料としてコバルトを使用するためには、三次元化された基板上に数ナノ~数十ナノメートル程度の厚みのコバルト含有薄膜を均一に形成する技術の確立が必要とされている。三次元化された基板上に金属薄膜を製造するための技術としては、原子層堆積法(ALD法)や化学気相蒸着法(CVD法)など、化学反応に基づく気相蒸着法の活用が有力視されている。半導体素子製造において、ALD法又はCVD法により薄膜を形成するための材料には、適度な蒸気圧と熱安定性を持ち、安定した供給量で気化させることが出来る材料が選択される。
【0003】
非特許文献1には、ビス(トリメチルシリル)アミド配位子又はジケトナト配位子を持つ点で本発明のコバルト錯体(1)に類似の構造を持つ化合物として、(1-ジメチルアミノ-2-メチル-2-プロポキシ)[ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(K1)及び(1-ジメチルアミノ-2-メチル-2-プロポキシ)(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)コバルト(K2)が記載されているものの、これらはアルコキシ配位子を持つ点で本発明のコバルト錯体とは異なる。
【0004】
非特許文献2には、ジケトナト配位子を持つ点で本発明のコバルト錯体(1)に類似の構造を持つ化合物として、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)コバルト(K3)が記載されているものの、これらは2つの2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト配位子を持つ点で本発明のコバルト錯体とは異なる。
【0005】
特許文献1には、ビス(トリメチルシリル)アミド配位子を持つ点で本発明のコバルト錯体(1)に類似の構造を持つ化合物として、ビス[ビス(トリメチルシリル)アミド]コバルト(K4)が記載されているものの、これらは2つのビス(トリメチルシリル)アミド配位子を持つ点で本発明のコバルト錯体とは異なる。
【0006】
特許文献2には、アミノアルキルアミド配位子を持つ点で本発明のコバルト錯体(1)に類似の構造を持つ化合物として、ビス{[2-(ジメチルアミノ)エチル](トリメチルシリル)アミノ}コバルト(K5)が記載されているものの、これらは2つのアミノアルキルアミド配位子を持つ点で本発明のコバルト錯体とは異なる。
【0007】
化合物(K1)、(K2)、(K3)、(K4)及び(K5)の融点は、それぞれ90℃、131℃、118℃、64℃及び92~93℃であり高いことが記載されている。これらの化合物をCVD法やALD法の材料として使用する際には、気化速度を十分且つ一定に保つ目的で材料を融点以上の高温に保つ必要がある。しかしながら、これらは長時間の加熱により分解するおそれがある。また、CVD法やALD法の材料として固体材料を固体のままで使用すると、揮発量不足、気化速度の経時変化等の原料ガス供給性に関する問題や、インラインでの固体析出による閉塞など原料の輸送上の問題が発生する懸念があるほか、作製した膜表面へのパーティクル汚染の原因となる問題もある。また、固体プレカーサを有機溶剤に溶解させた溶液を用いる溶液CVD法等のプロセスにおいても、気化装置中での温度変化や溶剤の部分的揮発による濃度変化に基づく固体析出が発生する懸念があり、同様の問題発生を完全に回避することは難しい。
【0008】
次世代半導体素子のゲート電極、ソース・ドレイン部の拡散層上のコンタクトとして、コバルト膜を成膜した後にケイ化して得たCoSi2が検討されている。一方、銅配線シード層/ライナー層としてコバルトが使用される場合、下地にはバリア層として窒化チタンや窒化タンタルなどが採用される見込みである。さらに近年、コバルトを銅配線上にキャップ層として用いることが検討されている。コバルト含有薄膜を製造する際にシリコンやバリア層、銅配線が酸化されると、抵抗値の上昇に起因するトランジスタとの導通不良などの問題が生じる。
【0009】
以上から、室温で液体であり、反応ガスとして酸素やオゾンなどの酸化性ガスを用いない条件下でコバルト含有薄膜の製造を可能とする材料が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開2014/052316号
【文献】特開2017-81857号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】ACS Omega,第2巻,5486ページ(2017年)
【文献】Thermochimica Acta,第404巻,187ページ(2003年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、酸化性ガスを用いない条件下でコバルト含有薄膜の製造を可能とする、室温で液体のコバルト錯体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、一般式(1)で示されるコバルト錯体が酸化性ガスを用いない条件下、特に還元性ガスを用いる条件下でコバルト含有薄膜を製造するための、室温で液体の材料として有用なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、一般式(1)
【0015】
【化1】
(1)
(式中、L
1及びL
2は相異なって、各々一般式(A)
【0016】
【化2】
(A)
(式中、R
1及びR
2は各々独立に炭素数1~6のアルキル基又はトリ(炭素数1~6のアルキル)シリル基を表す。波線はコバルト原子との結合手を表す。)で表される単座アミド配位子、一般式(B)
【0017】
【化3】
(B)
(式中、R
3はトリ(炭素数1~6のアルキル)シリル基を表す。R
4及びR
5は各々独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。Xは炭素数1~6のアルキレン基を表す。)で表される二座アミド配位子、又は一般式(C)
【0018】
【化4】
(C)
(式中、R
6及びR
8は各々独立に炭素数1~6のアルキル基を表す。R
7は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。Yは酸素原子又はNR
9を表す。Zは酸素原子又はNR
10を表す。R
9及びR
10は各々独立に炭素数1~6のアルキル基を表す。)で表されるヘテロ原子含有配位子を表す。)で示されるコバルト錯体、より具体的には一般式(1AB)
【0019】
【化5】
(1AB)
(式中、R
1及びR
2は一般式(A)のR
1及びR
2と同義を表し、R
3、R
4、R
5及びXは一般式(B)のR
3、R
4、R
5及びXと同義を表す。)で示されるコバルト錯体、一般式(1AC)
【0020】
【化6】
(1AC)
(式中、R
1及びR
2は一般式(A)のR
1及びR
2と同義を表し、R
6、R
7、R
8、Y及びZは一般式(C)のR
6、R
7、R
8、Y及びZと同義を表す。)で示されるコバルト錯体、及び一般式(1BC)
【0021】
【化7】
(1BC)
(式中、R
3、R
4、R
5及びXは一般式(B)のR
3、R
4、R
5及びXと同義を表し、R
6、R
7、R
8、Y及びZは一般式(C)のR
6、R
7、R
8、Y及びZと同義を表す。)で示されるコバルト錯体に関する。
【0022】
また本発明は、一般式(2)
【0023】
【化8】
(2)
(式中、R
1及びR
2は各々独立に炭素数1~6のアルキル基又はトリ(炭素数1~6のアルキル)シリル基を表す。Dは中性配位子を表す。nは0又は1を表す。)で示されるビスアミド錯体と、一般式(3)
【0024】
【化9】
(3)
(式中、R
3はトリ(炭素数1~6のアルキル)シリル基を表す。R
4及びR
5は各々独立に炭素数1~6のアルキル基を表す。Xは炭素数1~6のアルキレン基を表す。)で表されるアミノアルキルアミンとを反応させる、一般式(1AB)で示されるコバルト錯体の製造方法に関する。
【0025】
また本発明は、ビスアミド錯体(2)と、一般式(4)
【0026】
【化10】
(4)
(式中、R
6及びR
8は各々独立に炭素数1~6のアルキル基を表す。R
7は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示す。Yは酸素原子又はNR
9を表す。Zは酸素原子又はNR
10を表す。R
9及びR
10は各々独立に炭素数1~6のアルキル基を表す。)で表されるヘテロ原子含有化合物とを反応させる、一般式(1AC)で示されるコバルト錯体の製造方法に関する。
【0027】
さらに本発明は、コバルト錯体(1AB)と、ヘテロ原子含有化合物(4)とを反応させる、一般式(1BC)で示されるコバルト錯体の製造方法に関する。
【0028】
また本発明は、一般式(1)で示されるコバルト錯体を化学反応に基づく気相蒸着法に用いることを特徴とする、コバルト含有薄膜の製造方法に関する。
【0029】
以下、本発明を更に詳細に説明する。まず、一般式(1)のL1及びL2の定義について説明する。一般式(1)のL1及びL2は、単座アミド配位子(A)、二座アミド配位子(B)又はヘテロ原子含有配位子(C)のいずれかであり、L1とL2が同一ではない。
【0030】
次に、一般式(A)中のR1及びR2の定義について説明する。R1及びR2で表される炭素数1~6のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1-エチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、1-シクロブチルエチル基、2-シクロブチルエチル基などを例示することが出来る。R1及びR2で表されるトリ(炭素数1~6のアルキル)シリル基における炭素数1~6のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでも良く、具体的なトリ(炭素数1~6のアルキル)シリル基としてはトリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、ジエチル(メチル)シリル基、ジメチル(プロピル)シリル基、イソプロピルジメチルシリル基、トリエチルシリル基、ブチルジメチルシリル基、イソブチルジメチルシリル基、sec-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、シクロブチルジメチルシリル基、ジエチル(プロピル)シリル基、ジエチル(イソプロピル)シリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ペンチルジエチルシリル基、トリペンチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、シクロヘキシルジメチルシリル基、ヘキシルジエチルシリル基、シクロヘキシルジエチルシリル基、トリヘキシルシリル基などを例示することが出来る。本発明のコバルト錯体(1)がCVD材料やALD材料として好適な蒸気圧及び熱安定性を持つ点で、R1及びR2は炭素数1~4のアルキル基又はトリ(炭素数1~6のアルキル)シリル基が好ましく、トリ(炭素数1~4のアルキル)シリル基が更に好ましく、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、ジエチル(メチル)シリル基、トリエチルシリル基又はtert-ブチルジメチルシリル基が更に好ましく、トリメチルシリル基が殊更好ましい。
【0031】
次に、一般式(B)中のR3の定義について説明する。R3で表されるトリ(炭素数1~6のアルキル)シリル基における炭素数1~6のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでも良く、具体的なトリ(炭素数1~6のアルキル)シリル基としてはトリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、ジエチル(メチル)シリル基、プロピルジメチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、トリエチルシリル基、ブチルジメチルシリル基、イソブチルジメチルシリル基、sec-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、シクロブチルジメチルシリル基、ジエチル(プロピル)シリル基、ジエチル(イソプロピル)シリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ペンチルジエチルシリル基、トリペンチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、シクロヘキシルジメチルシリル基、ヘキシルジエチルシリル基、シクロヘキシルジエチルシリル基、トリヘキシルシリル基などを例示することが出来る。本発明のコバルト錯体(1)がCVD材料やALD材料として好適な蒸気圧及び熱安定性を持つ点で、R3で表されるトリ(炭素数1~6のアルキル)シリル基はトリ(炭素数1~4のアルキル)シリル基が好ましく、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、ジエチル(メチル)シリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基が更に好ましく、トリメチルシリル基が殊更好ましい。
【0032】
次に、一般式(B)中のR4及びR5の定義について説明する。R4及びR5で表される炭素数1~4のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基などを例示することが出来る。本発明のコバルト錯体(1)がCVD材料やALD材料として好適な蒸気圧及び熱安定性を持つ点で、R4及びR5はメチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0033】
次に、一般式(B)中のXの定義について説明する。Xで表される炭素数1~6のアルキレン基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでも良く、メチレン基、ジメチルメチレン基、1,2-エチレン基、1-メチル-1,2-エチレン基、1,1-ジメチル-1,2-エチレン基、1,2-ジメチル-1,2-エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などを例示することが出来る。本発明のコバルト錯体(1)がCVD材料やALD材料として好適な蒸気圧及び熱安定性を持つ点で、Xは炭素数1~4のアルキレン基が好ましく、1,2-エチレン基又は1,1-ジメチル-1,2-エチレン基が更に好ましく、1,1-ジメチル-1,2-エチレン基が殊更好ましい。
【0034】
次に、一般式(C)中のR6、R7及びR8の定義について説明する。
【0035】
R6及びR8で表される炭素数1~6のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1-エチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、1-シクロブチルエチル基、2-シクロブチルエチル基などを例示することが出来る。本発明のコバルト錯体(1)がCVD材料やALD材料として好適な蒸気圧及び熱安定性を持つ点で、R6及びR8は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、コバルト錯体(1)の中でもコバルト錯体(1AC)の場合にはメチル基が更に好ましく、コバルト錯体(1)の中でもコバルト錯体(1BC)の場合にはtert-ブチル基が更に好ましい。
【0036】
R7で表される炭素数1~4のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基などを例示することが出来る。本発明のコバルト錯体(1)がCVD材料やALD材料として好適な蒸気圧及び熱安定性を持つ点で、R7は水素原子が好ましい。
【0037】
R9及びR10で表される炭素数1~6のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1-エチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、1-シクロブチルエチル基、2-シクロブチルエチル基などを例示することが出来る。本発明のコバルト錯体(1)がCVD材料やALD材料として好適な蒸気圧及び熱安定性を持つ点で、R9及びR10は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、プロピル基、イソプロピル基又はtert-ブチル基が更に好ましい。
【0038】
本発明のコバルト錯体(1)中でも、一般式(A)で示される単座アミド配位子と一般式(B)で示される二座アミド配位子を有する一般式(1AB)で示されるコバルト錯体、一般式(A)で示される単座アミド配位子と一般式(C)で示されるヘテロ原子含有配位子を有する一般式(1AC)で示されるコバルト錯体、又は一般式(B)で示される二座アミド配位子と一般式(C)で示されるヘテロ原子含有配位子を有する一般式(1AC)で示されるコバルト錯体が好ましい。
【0039】
なお、本発明のコバルト錯体(1AC)と(1BC)における一般式(C)で表されるヘテロ原子含有配位子は、それぞれ以下に示す通り(1AC-R1)と(1AC-R2)、及び(1BC-R1)と(1BC-R2)の共鳴構造をとっているが、本明細書中では簡略のためそれぞれ(1AC)及び(1BC)で示すこととする。
【0040】
【0041】
(式中、R6、R7、R8、Y及びZは前記と同義である。)
本発明のコバルト錯体(1)の内、コバルト錯体(1AB)の具体例としては、
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
などを挙げることが出来る。CVD材料やALD材料として好適な蒸気圧及び熱安定性を持つ点で、(1AB-7)、(1AB-8)、(1AB-9)、(1AB-10)、(1AB-13)、(1AB-14)、(1AB-15)、(1AB-16)、(1AB-50)が好ましく、(1AB-8)、(1AB-13)、(1AB-14)、(1AB-16)、(1AB-50)がさらに好ましく、(1AB-14)が更に好ましい。
【0049】
本発明のコバルト錯体(1)の内、コバルト錯体(1AC)の具体例としては、
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
などを挙げることが出来る。CVD材料やALD材料として好適な蒸気圧及び熱安定性を持つ点で、(1AC-25)~(1AC-29)、(1AC-32)~(1AC-36)が好ましく、(1AC-32)~(1AC-36)が更に好ましく、(1AC-34)が好ましい。
【0054】
本発明のコバルト錯体(1)の内、コバルト錯体(1BC)の具体例としては、
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
などを挙げることが出来る。CVD材料やALD材料として好適な蒸気圧及び熱安定性を持つ点で、(1BC-1)~(1BC-4)、(1BC-19)~(1BC-22)、(1BC-55)~(1BC-58)、(1BC-80)~(1BC-84)、(1BC-92)~(1BC-96)が好ましく、(1BC-55)~(1BC-58)が更に好ましく、(1BC-56)が殊更好ましい。
【0066】
次に、本発明のコバルト錯体(1)の製造方法について説明する。
【0067】
コバルト錯体(1)の内、コバルト錯体(1AB)、(1AC)及び(1BC)は、それぞれ製造方法1、2及び3によって製造することができる。
【0068】
本発明の製造方法1は、ビスアミド錯体(2)と、アミノアルキルアミン(3)とを反応させる、コバルト錯体(1AB)を製造する方法である。
【0069】
製造方法1
【0070】
【0071】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びXは、前記と同義である。Dは中性配位子を表す。nは0又は1を表す。)
まず、一般式(2)で表されるDの定義について説明する。Dは中性配位子を表し、テトラヒドロフラン(THF)、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミンなどの第一級脂肪族アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミンなどの第二級脂肪族アミン、トリメチルアミン、エチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミンなどの第三級脂肪族アミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジンなどの置換/無置換ピリジンを例示することが出来る。収率が良い点で、THF又は第三級脂肪族アミンが好ましく、THF又はトリエチルアミンが更に好ましく、THFが殊更好ましい。
【0072】
一般式(2)のnは0又は1を表す。
【0073】
本発明の製造方法1で用いることができるビスアミド錯体(2)の例としては、
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
などを挙げることが出来る。収率が良い点で、(2-2)、(2-3)、(2-7)又は(2-8)が好ましく、(2-2)、(2-3)又は(2-8)が更に好ましい。
【0079】
本発明の製造方法1で用いることが出来るビスアミド錯体(2)は、Inorganic Chemistry、第53巻、1962ページ(2014年)などに記載の方法に準じて入手することが出来る。
【0080】
本発明の製造方法1で用いることが出来るアミノアルキルアミン(3)の例としては、[2-(ジメチルアミノ)エチル](トリメチルシリル)アミン、[2-(ジエチルアミノ)エチル](トリメチルシリル)アミン、(トリメチルシリル)[2-(ジプロピルアミノ)エチル]アミン、[2-(ジブチルアミノ)エチル](トリメチルシリル)アミン、(エチルジメチルシリル)[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、[2-(ジエチルアミノ)エチル](エチルジメチルシリル)アミン、(エチルジメチルシリル)[2-(ジプロピルアミノ)エチル]アミン、[2-(ジブチルアミノ)エチル](エチルジメチルシリル)アミン、(ジエチルメチルシリル)[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、[2-(ジエチルアミノ)エチル](ジエチルメチルシリル)アミン、[2-(ジプロピルアミノ)エチル](ジエチルメチルシリル)アミン、[2-(ジブチルアミノ)エチル](ジエチルメチルシリル)アミン、(トリエチルシリル)[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、[2-(ジエチルアミノ)エチル](トリエチルシリル)アミン、[2-(ジプロピルアミノ)エチル](トリエチルシリル)アミン、[2-(ジブチルアミノ)エチル](トリエチルシリル)アミン、(tert-ブチルジメチルシリル)[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、[2-(ジエチルアミノ)エチル](tert-ブチルジメチルシリル)アミン、[2-(ジプロピルアミノ)エチル](tert-ブチルジメチルシリル)アミン、[2-(ジブチルアミノ)エチル](tert-ブチルジメチルシリル)アミン、(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミン、(2-ジエチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミン、(トリメチルシリル)(2-ジプロピルアミノ-1,1-ジメチルエチル)アミン、(2-ジブチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミン、(エチルジメチルシリル)(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)アミン、(エチルジメチルシリル)(2-ジエチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)アミン、(エチルジメチルシリル)(2-ジプロピルアミノ-1,1-ジメチルエチル)アミン、(エチルジメチルシリル)(2-ジブチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)アミン、(ジエチルメチルシリル)(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)アミン、(ジエチルメチルシリル)(2-ジエチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)アミン、(ジエチルメチルシリル)(2-ジプロピルアミノ-1,1-ジメチルエチル)アミン、(ジエチルメチルシリル)(2-ジブチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)アミン、(トリエチルシリル)(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)アミン、(トリエチルシリル)(2-ジエチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)アミン、(トリエチルシリル)(2-ジプロピルアミノ-1,1-ジメチルエチル)アミン、(トリエチルシリル)(2-ジブチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)アミン、(tert-ブチルジメチルシリル)(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)アミン、(tert-ブチルジメチルシリル)(2-ジエチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)アミン、(tert-ブチルジメチルシリル)(2-ジプロピルアミノ-1,1-ジメチルエチル)アミン、(tert-ブチルジメチルシリル)(2-ジブチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)アミン、(2-ジメチルアミノ-1,1-ジエチルエチル)(トリメチルシリル)アミン、(2-ジエチルアミノ-1,1-ジエチルエチル)(トリメチルシリル)アミン、(2-ジプロピルアミノ-1,1-ジエチルエチル)(トリメチルシリル)アミン、(2-ジブチルアミノ-1,1-ジエチルエチル)(トリメチルシリル)アミン、(エチルジメチルシリル)(2-ジメチルアミノ-1,1-ジエチルエチル)アミン、(2-ジエチルアミノ-1,1-ジエチルエチル)(エチルジメチルシリル)アミン、(エチルジメチルシリル)(2-ジプロピルアミノ-1,1-ジエチルエチル)アミン、(2-ジブチルアミノ-1,1-ジエチルエチル)(エチルジメチルシリル)アミン、(ジエチルメチルシリル)(2-ジメチルアミノ-1,1-ジエチルエチル)アミン、(2-ジエチルアミノ-1,1-ジエチルエチル)(ジエチルメチルシリル)アミン、(2-ジプロピルアミノ-1,1-ジエチルエチル)(ジエチルメチルシリル)アミン、(2-ジブチルアミノ-1,1-ジエチルエチル)(ジエチルメチルシリル)アミン、(トリエチルシリル)(2-ジメチルアミノ-1,1-ジエチルエチル)アミン、(2-ジエチルアミノ-1,1-ジエチルエチル)(トリエチルシリル)アミン、(2-ジプロピルアミノ-1,1-ジエチルエチル)(トリエチルシリル)アミン、(2-ジブチルアミノ-1,1-ジエチルエチル)(トリエチルシリル)アミン、(tert-ブチルジメチルシリル)(2-ジメチルアミノ-1,1-ジエチルエチル)アミン、(tert-ブチルジメチルシリル)(2-ジエチルアミノ-1,1-ジエチルエチル)アミン、(tert-ブチルジメチルシリル)(2-ジプロピルアミノ-1,1-ジエチルエチル)アミン、(tert-ブチルジメチルシリル)(2-ジブチルアミノ-1,1-ジエチルエチル)アミン、[3-(ジメチルアミノ)プロピル](トリメチルシリル)アミン、[3-(ジエチルアミノ)プロピル](トリメチルシリル)アミンなどを挙げることが出来る。収率が良い点で、[2-(ジメチルアミノ)エチル](トリメチルシリル)アミン、(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミン又は(2-ジエチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミンが好ましく、(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミンが更に好ましい。
【0081】
本発明の製造方法1で用いることが出来るアミノアルキルアミン(3)の入手方法としては、特開2016-222568号公報などに記載の方法に準じて入手することが出来る。
【0082】
本発明の製造方法1を実施するときのビスアミド錯体(2)及びアミノアルキルアミン(3)のモル比には特に制限は無く、本発明のコバルト錯体(1AB)の収率が良い点で、ビスアミド錯体(2)1モル当量に対してアミノアルキルアミン(3)0.9~1.5モル当量が好ましく、アミノアルキルアミン(3)1.0~1.2モル当量が更に好ましい。
【0083】
本発明の製造方法1は、コバルト錯体(1AB)の収率が良い点で、不活性ガス雰囲気中で実施するのが好ましい。該不活性ガスとして具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素ガスなどを例示することが出来る。安価な点で、窒素ガス又はアルゴンが好ましい。
【0084】
本発明の製造方法1は、コバルト錯体(1AB)の収率が良い点で、有機溶媒中で実施することが好ましい。使用可能な有機溶媒の種類には、反応を阻害しない限り特に制限は無い。使用可能な溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、石油エーテルなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、2-メチルプロピルベンゼン、1-メチルプロピルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)などの芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、シクロペンチルエチルエーテル(CPEE)、tert-ブチルメチルエーテル(MTBE)、THF、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテルを挙げることが出来る。これら有機溶媒のうち一種類を単独で用いることが出来、複数を任意の比率で混合して用いることも出来る。コバルト錯体(1AB)の収率が良い点で、有機溶媒としてはヘキサン、ヘプタン、トルエン又はエーテルが好ましく、ヘキサンが更に好ましい。
【0085】
本発明の製造方法1では、反応温度及び反応時間には特に制限はなく、当業者が有機金属錯体を製造するときの一般的な条件を用いることが出来る。具体例としては、-80℃から120℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、10分間から120時間の範囲から適宜選択した反応時間を選択することによってコバルト錯体(1AB)を収率良く製造することが出来る。
【0086】
本発明の製造方法1によって製造したコバルト錯体(1AB)は、当業者が有機金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することが出来る。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、蒸留、昇華、結晶化などを挙げることが出来る。
【0087】
本発明の製造方法2は、ビスアミド錯体(2)と、ヘテロ原子含有化合物(4)とを反応させる、コバルト錯体(1AC)を製造する方法である。
【0088】
製造方法2
【0089】
【0090】
(式中、R1、R2、R6、R7、R8、Y、Z、D及びnは、前記と同義である。)
本発明の製造方法2で用いることができるビスアミド錯体(2)は、製造方法1の説明で記載したビスアミド錯体(2)を用いることが出来る。
【0091】
ヘテロ原子含有化合物(4)は、一般式(4)で示される構造を持つものだけでなく、一般式(4a)又は(4b)で示される互変異性体も含み、(4)、(4a)及び(4b)のいずれか複数の混合物であってもよい。
【0092】
【0093】
(式中、R6、R7、R8、Y及びZは、前記と同義である。)
なお、本明細書中では簡略のため(4)、(4a)及び(4b)の全てを包括して一般式(4)で示すこととする。
【0094】
本発明の製造方法2で用いることが出来るヘテロ原子含有化合物(4)の例としては、ペンタン-2,4-ジオン、ヘキサン-2,4-ジオン、ヘプタン-2,4-ジオン、ヘプタン-3,5-ジオン、オクタン-2,4-ジオン、オクタン-3,5-ジオン、ノナン-2,4-ジオン、ノナン-3,5-ジオン、ノナン-4,6-ジオン、デカン-2,4-ジオン、デカン-3,5-ジオン、デカン-4,6-ジオン、5-メチルヘキサン-2,4-ジオン、5-メチルヘプタン-2,4-ジオン、2-メチルヘプタン-3,5-ジオン、2,6-ジメチルヘプタン-3,5-ジオン、2,2,6-トリメチルヘプタン-3,5-ジオン、2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオン(ジピバロイルメタン)、3-メチルペンタン-2,4-ジオン、3-エチルペンタン-2,4-ジオン、3-プロピルペンタン-2,4-ジオン、3-イソプロピルペンタン-2,4-ジオン、3-ブチルペンタン-2,4-ジオン、3-イソブチルペンタン-2,4-ジオン、3-sec-ブチルペンタン-2,4-ジオン、3-tert-ブチルペンタン-2,4-ジオン、4-(メチルアミノ)-3-ペンテン-2-オン、4-(エチルアミノ)-3-ペンテン-2-オン、4-(プロピルアミノ)-3-ペンテン-2-オン、4-(イソプロピルアミノ)-3-ペンテン-2-オン、4-(ブチルアミノ)-3-ペンテン-2-オン、4-(イソブチルアミノ)-3-ペンテン-2-オン、4-(sec-ブチルアミノ)-3-ペンテン-2-オン、4-(tert-ブチルアミノ)-3-ペンテン-2-オン、4-(メチルアミノ)-3-ヘキセン-2-オン、4-(エチルアミノ)-3-ヘキセン-2-オン、4-(プロピルアミノ)-3-ヘキセン-2-オン、4-(イソプロピルアミノ)-3-ヘキセン-2-オン、4-(ブチルアミノ)-3-ヘキセン-2-オン、4-(イソブチルアミノ)-3-ヘキセン-2-オン、4-(sec-ブチルアミノ)-3-ヘキセン-2-オン、4-(tert-ブチルアミノ)-3-ヘキセン-2-オン、5-(メチルアミノ)-4-ヘキセン-3-オン、5-(エチルアミノ)-4-ヘキセン-3-オン、5-(プロピルアミノ)-4-ヘキセン-3-オン、5-(イソプロピルアミノ)-4-ヘキセン-3-オン、5-(ブチルアミノ)-4-ヘキセン-3-オン、5-(イソブチルアミノ)-4-ヘキセン-3-オン、5-(sec-ブチルアミノ)-4-ヘキセン-3-オン、5-(tert-ブチルアミノ)-4-ヘキセン-3-オン、5-(メチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、5-(エチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、5-(プロピルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、5-(イソプロピルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、5-(ブチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、5-(イソブチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、5-(sec-ブチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、5-(tert-ブチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,6-ジメチル-5-(メチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,6-ジメチル-5-(エチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,6-ジメチル-5-(プロピルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,6-ジメチル-5-(イソプロピルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,6-ジメチル-5-(ブチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,6-ジメチル-5-(イソブチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,6-ジメチル-5-(sec-ブチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,6-ジメチル-5-(tert-ブチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,2,6,6-テトラメチル-5-(メチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,2,6,6-テトラメチル-5-(エチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,2,6,6-テトラメチル-5-(プロピルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,2,6,6-テトラメチル-5-(イソプロピルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,2,6,6-テトラメチル-5-(ブチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,2,6,6-テトラメチル-5-(イソブチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,2,6,6-テトラメチル-5-(sec-ブチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,2,6,6-テトラメチル-5-(tert-ブチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,2-ジメチル-5-(メチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,2-ジメチル-5-(エチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,2-ジメチル-5-(プロピルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,2-ジメチル-5-(イソプロピルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,2-ジメチル-5-(ブチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,2-ジメチル-5-(イソブチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,2-ジメチル-5-(sec-ブチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、2,2-ジメチル-5-(tert-ブチルアミノ)-4-ヘプテン-3-オン、N-メチル-4-(メチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-メチル-4-(エチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-メチル-4-(プロピルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-メチル-4-(イソプロピルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-メチル-4-(ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-メチル-4-(イソブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-メチル-4-(sec-ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-メチル-4-(tert-ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-エチル-4-(エチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-エチル-4-(プロピルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-エチル-4-(イソプロピルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-エチル-4-(ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-エチル-4-(イソブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-エチル-4-(sec-ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-エチル-4-(tert-ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-プロピル-4-(プロピルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-プロピル-4-(イソプロピルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-プロピル-4-(ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-プロピル-4-(イソブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-プロピル-4-(sec-ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-プロピル-4-(tert-ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-イソプロピル-4-(イソプロピルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-イソプロピル-4-(ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-イソプロピル-4-(イソブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-イソプロピル-4-(sec-ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-イソプロピル-4-(tert-ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-ブチル-4-(ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-ブチル-4-(イソブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-ブチル-4-(sec-ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-ブチル-4-(tert-ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-イソブチル-4-(イソブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-イソブチル-4-(sec-ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-イソブチル-4-(tert-ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-sec-ブチル-4-(sec-ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-sec-ブチル-4-(tert-ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-tert-ブチル-4-(tert-ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミンなどを挙げることが出来る。収率が良い点で、2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオン、4-(メチルアミノ)-3-ペンテン-2-オン、4-(エチルアミノ)-3-ペンテン-2-オン、4-(プロピルアミノ)-3-ペンテン-2-オン、4-(イソプロピルアミノ)-3-ペンテン-2-オン、4-(ブチルアミノ)-3-ペンテン-2-オン、4-(tert-ブチルアミノ)-3-ペンテン-2-オン、N-メチル-4-(メチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-エチル-4-(エチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-プロピル-4-(プロピルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-イソプロピル-4-(イソプロピルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-ブチル-4-(ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-tert-ブチル-4-(tert-ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミンが好ましく、N-メチル-4-(メチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-エチル-4-(エチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-プロピル-4-(プロピルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-イソプロピル-4-(イソプロピルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-ブチル-4-(ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン、N-tert-ブチル-4-(tert-ブチルイミノ)-2-ペンテン-2-アミンが更に好ましく、N-プロピル-4-(プロピルイミノ)-2-ペンテン-2-アミンが殊更好ましい。
【0095】
本発明の製造方法2で用いることが出来るヘテロ原子含有化合物(4)の入手方法としては、市販品の購入、又はThe Journal of Organic Chemistry,第27巻,1036ページ(1962年)、Tetrahedron Letters,第48巻,8281ページ(2007年)、The Journal of Organic Chemistry,第73巻,8673ページ(2008年)、Dalton Transactions,第42巻,11295ページ(2013年)などに記載の方法に準じて入手することが出来る。
【0096】
本発明の製造方法2を実施するときのビスアミド錯体(2)及びヘテロ原子含有化合物(4)のモル比には特に制限は無く、本発明のコバルト錯体(1AC)の収率が良い点で、ビスアミド錯体(2)1モル当量に対してヘテロ原子含有化合物(4)0.9~1.5モル当量が好ましく、ヘテロ原子含有化合物(4)1.0~1.2モル当量が更に好ましい。
【0097】
本発明の製造方法2は、コバルト錯体(1AC)の収率が良い点で、不活性ガス雰囲気中で実施するのが好ましい。該不活性ガスとして具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素ガスなどを例示することが出来る。安価な点で、窒素ガス又はアルゴンが好ましい。
【0098】
本発明の製造方法2は、コバルト錯体(1AC)の収率が良い点で、有機溶媒中で実施することが好ましい。使用可能な有機溶媒の種類には、反応を阻害しない限り特に制限は無い。使用可能な溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、石油エーテルなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、2-メチルプロピルベンゼン、1-メチルプロピルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)などの芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、CPME、CPEE、MTBE、THF、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテルを挙げることが出来る。これら有機溶媒のうち一種類を単独で用いることが出来、複数を任意の比率で混合して用いることも出来る。コバルト錯体(1AC)の収率が良い点で、有機溶媒としてはヘキサン、ヘプタン、トルエン又はエーテルが好ましく、CPME、MTBE、ジエチルエーテル又はTHFが更に好ましい。
【0099】
本発明の製造方法2では、反応温度及び反応時間には特に制限はなく、当業者が有機金属錯体を製造するときの一般的な条件を用いることが出来る。具体例としては、-80℃から120℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、10分間から120時間の範囲から適宜選択した反応時間を選択することによってコバルト錯体(1AC)を収率良く製造することが出来る。
【0100】
本発明の製造方法2によって製造したコバルト錯体(1AC)は、当業者が有機金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することが出来る。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、蒸留、昇華、結晶化などを挙げることが出来る。
【0101】
本発明の製造方法3は、コバルト錯体(1AB)と、ヘテロ原子含有化合物(4)とを反応させる、コバルト錯体(1BC)を製造する方法である。
【0102】
製造方法3
【0103】
【0104】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、X、Y及びZは、前記と同義である。)
本発明の製造方法3で用いることが出来るコバルト錯体(1AB)は、本発明の製造方法1で製造することによって入手することが出来る。
【0105】
本発明の製造方法3では、コバルト錯体(1AB)を精製することなく原料として用いることが出来、金属錯体の一般的な精製方法により精製したコバルト錯体(1AB)を原料として用いることも出来る。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、昇華、結晶化などを挙げることが出来る。
【0106】
本発明の製造方法3で用いることができるヘテロ原子含有化合物(4)は、製造方法2の説明で記載したヘテロ原子含有化合物(4)を用いることが出来る。収率が良い点で、アセチルアセトン、ヘプタン-3,5-ジオン、2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオンが好ましく、2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオンが更に好ましい。
【0107】
本発明の製造方法3を実施するときのコバルト錯体(1AB)及びヘテロ原子含有化合物(4)のモル比には特に制限は無く、コバルト錯体(1BC)の収率が良い点でコバルト錯体(1AB)1モル当量に対してヘテロ原子含有化合物(4)0.8~1.5モル当量が好ましく、ヘテロ原子含有化合物(4)0.9~1.1モルが更に好ましい。
【0108】
本発明の製造方法3は、コバルト錯体(1BC)の収率が良い点で、不活性ガス雰囲気中で実施するのが好ましい。該不活性ガスとして具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素ガスなどを例示することが出来る。安価な点で、窒素ガス又はアルゴンが好ましい。
【0109】
本発明の製造方法3は、コバルト錯体(1BC)の収率が良い点で、有機溶媒中で実施することが好ましい。使用可能な有機溶媒の種類には、反応を阻害しない限り特に制限は無い。使用可能な溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、石油エーテルなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、2-メチルプロピルベンゼン、1-メチルプロピルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)などの芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、CPME、CPEE、MTBE、THF、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテルを挙げることが出来る。これら有機溶媒のうち一種類を単独で用いることが出来、複数を任意の比率で混合して用いることも出来る。本発明のコバルト錯体(1BC)の収率が良い点で、有機溶媒としてはヘキサン、ヘプタン、トルエン又はエーテルが好ましく、CPME、MTBE、ジエチルエーテル又はTHFが更に好ましい。
【0110】
本発明の製造方法3では、反応温度及び反応時間には特に制限はなく、当業者が有機金属錯体を製造するときの一般的な条件を用いることが出来る。具体例としては、-80℃から120℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、10分間から120時間の範囲から適宜選択した反応時間を選択することによってコバルト錯体(1BC)を収率良く製造することが出来る。
【0111】
本発明の製造方法3によって製造したコバルト錯体(1BC)は、当業者が有機金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することが出来る。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、蒸留、昇華、結晶化などを挙げることが出来る。
【0112】
次に、本発明のコバルト錯体(1)を化学反応に基づく気相蒸着法に用いることを特徴とする、コバルト含有薄膜の製造方法について詳細に説明する。本明細書では、化学反応に基づく気相蒸着法とは、気化させたコバルト錯体(1)を基板上で分解することによりコバルト含有薄膜を製造する方法を意味する。具体的には、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法などのCVD法や、ALD法などを例示することが出来る。CVD法は成膜速度が良好な点でとりわけ好ましく、またALD法は段差被覆性が良好な点でとりわけ好ましい。例えばCVD法又はALD法によりコバルト含有薄膜を製造する場合、コバルト錯体(1)を気化させて反応チャンバーに供給し、反応チャンバー内に備え付けた基板上でコバルト錯体(1)を分解することにより、該基板上にコバルト含有薄膜を製造することが出来る。コバルト錯体(1)を分解する方法としては、当業者が金属含有薄膜を製造するのに用いる通常の技術手段を挙げることが出来る。具体的にはコバルト錯体(1)と反応ガスとを反応させる方法や、コバルト錯体(1)に熱、プラズマ、光などを作用させる方法などを例示することが出来る。
【0113】
反応ガスを用いる場合、用いることが出来る反応ガスとしては、還元性ガスや酸化性ガスを例示することが出来る。該反応ガスとしては、金属や金属窒化物などの酸化されやすい材料からなる基板に成膜する場合に基板の劣化を防止できる点で、還元性ガスが好ましい。還元性ガスの具体例としては、アンモニア、水素、モノシラン、ヒドラジン、ギ酸や、ボラン-ジメチルアミン錯体、ボラン-トリメチルアミン錯体などのボラン-アミン錯体、1-ブテン、2-ブテン、2-メチルプロペン、1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、3-ヘキセン、2-メチル-1-ペンテン、2-メチル-2-ペンテン、4-メチル-2-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-メチル-2-ペンテン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-2-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、ブタ-1,3-ジエン、ペンタ-1,3-ジエン、ペンタ-1,4-ジエン、2-メチルブタ-1,3-ジエン、ヘキサ-1,3-ジエン、ヘキサ-2,4-ジエン、2-メチルペンタ-1,3-ジエン、3-メチルペンタ-1,3-ジエン、4-メチルペンタ-1,3-ジエン、2-エチルブタ-1,3-ジエン、3-メチルペンタ-1,4-ジエン、2,3-ジメチルブタ-1,3-ジエンなどの鎖状不飽和炭化水素、シクロヘキサ-1,3-ジエン、シクロヘキサ-1,4-ジエン、1-メチルシクロヘキサ-1,3-ジエン、2-メチルシクロヘキサ-1,3-ジエン、5-メチルシクロヘキサ-1,3-ジエン、3-メチルシクロヘキサ-1,4-ジエン、α-フェランドレン、β-フェランドレン、α-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネン、リモネンなどの環状不飽和炭化水素などを例示することが出来る。成膜装置の仕様による制約が少なく取扱いが容易である点で、還元性ガスとしてはアンモニア、水素、ギ酸、シクロヘキサ-1,3-ジエン、シクロヘキサ-1,4-ジエン、α-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネン、リモネンが好ましい。酸化性ガスを用いる場合、その具体例としては、酸素、オゾン、水蒸気、過酸化水素、笑気ガス、塩化水素、硝酸ガス、酢酸などを挙げることが出来、酸素、オゾン又は水蒸気が好ましい。反応ガスの流量は材料の反応性と反応チャンバーの容量に応じて適宜調節される。例えば反応チャンバーの容量が1~10Lの場合、反応ガスの流量は特に制限は無く、経済的な理由から1~10000sccmが好ましい。なお、本明細書中においてsccmとは気体の流量を表す単位であり、1sccmは理想気体に換算すると2.68mmol/hの速度で気体が移動していることを表す。
【0114】
CVD法又はALD法によりコバルト含有薄膜を製造する場合、これらの分解方法を適宜選択して用いることにより、コバルト含有薄膜を製造することが出来る。複数の分解方法を組み合わせて用いることも出来る。反応チャンバーへのコバルト錯体(1)の供給方法としては、例えばバブリング、液体気化供給システムなど当業者が通常用いる方法が挙げられ、特に限定されるものではない。
【0115】
CVD法又はALD法によりコバルト含有薄膜を製造する際のキャリアガス及び希釈ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガス又は窒素ガスが好ましく、経済的な理由から窒素ガス又はアルゴンが更に好ましい。キャリアガス及び希釈ガスの流量は反応チャンバーの容量などに応じて適宜調節される。例えば反応チャンバーの容量が1~10Lの場合、キャリアガスの流量は特に制限は無く、経済的な理由から1~10000sccmが好ましい。
【0116】
CVD法又はALD法によりコバルト含有薄膜を製造するときの基板温度は、熱、プラズマ、光などの使用の有無、反応ガスの種類などにより適宜選択される。例えば光やプラズマを併用することなく反応ガスとしてアンモニアを用いる場合には、基板温度に特に制限は無く、経済的な理由から50℃~1000℃が好ましい。成膜速度が良好な点で100℃~300℃が好ましく、150℃~250℃が更に好ましい。また、光やプラズマ、オゾン、過酸化水素などを適宜使用することにより、さらに低温領域でコバルト含有薄膜を製造することが出来る。
【0117】
CVD法又はALD法によりコバルト含有薄膜を製造するときの成膜圧力は、膜厚の均一性やステップ・カバレッジ(被覆性)、膜質が良好な点で、減圧条件が好ましく、1~100Torrが好ましく、1~10Torrが更に好ましい。
【0118】
本発明のコバルト含有薄膜の製造方法により得られるコバルト含有薄膜としては、例えば金属コバルト薄膜、酸化コバルト薄膜、窒化コバルト薄膜、酸窒化コバルト薄膜などが得られる。また金属コバルト薄膜を製造後、任意の温度で基板を加熱処理することによりコバルト含有複合膜を得ることができる。例えば、シリコン基板上に金属コバルト薄膜を製造後、300℃~900℃の加熱処理によりCo2Si、CoSi、CoSi2などのコバルトシリサイド薄膜を得ることができる。また他の金属材料と組み合わせて用いた場合にもコバルト含有複合薄膜を得ることができる。例えば、本発明のコバルト錯体(1)とケイ素材料と組み合わせて用いることによりコバルトシリサイド薄膜が得られる。該ケイ素材料としては、モノシラン、ジシラン、トリシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビス(tert-ブチルアミノ)シラン、ビス(ジエチルアミノ)シラン、トリス(ジメチルアミノ)シランなどを例示することができる。さらにアルミニウムやゲルマニウムなどの典型金属、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、タングステンなどの遷移金属、ランタンやネオジムなどの希土類金属を含有する金属材料と本発明のコバルト錯体(1)を組み合わせて用いることにより、これらの金属元素を含むコバルト含有複合膜を得ることも出来る。また、CVD法又はALD法によりコバルト含有複合薄膜を製造する場合、本発明のコバルト錯体(1)と他の金属材料とを別々に反応チャンバー内に供給しても、混合してから供給しても良い。
【0119】
本発明のコバルト含有薄膜を構成部材として用いることにより、信頼性や応答性を向上させた高性能な半導体デバイスを製造することが出来る。半導体デバイスの例としてはDRAM、FeRAM、PRAM、MRAM、ReRAM、フラッシュメモリーなどの半導体記憶装置や電界効果トランジスタなどを挙げることが出来る。これらの構成部材としてはトランジスタのゲート電極、ソース・ドレイン部の拡散層上のコンタクトや、銅配線シード層/ライナー層/キャップ層などを例示することが出来る。
【発明の効果】
【0120】
本発明のコバルト錯体(I)は室温で液体であり、これを材料として用いることにより、酸化性ガスを用いない条件下でコバルト含有薄膜を製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【
図1】実施例8~11、13~15、19~25並びに比較例3で用いたCVD装置を示す図である。
【
図2】評価例1の[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ][ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(1AB-14)のTG及びDSCのチャートである。
【
図3】評価例2の[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ](2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)コバルト(1BC-56)のTG及びDSCのチャートである。
【
図4】比較例1のビス[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ]コバルトのTG及びDSCのチャートである。
【
図5】比較例2のビス[(tert-ブチル)(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(2-2)のTG及びDSCのチャートである。
【
図6】実施例11で得られた膜のAFM像を示す図である。
【
図7】実施例17及び18で用いたALD装置を示す図である。
【実施例】
【0122】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。参考例1~7及び実施例1~7、12、16に記載の化合物の製造は全てアルゴン雰囲気下で実施した。用いたTHF、ジエチルエーテル及びヘキサンは関東化学社製の脱水品である。2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチルアミン及び2-ジエチルアミノ-1,1-ジメチルエチルアミンは、特表2018-507255号公報に記載の方法に準じて合成した。
【0123】
参考例1
【0124】
【0125】
(tert-ブチル)(トリメチルシリル)アミン7.62g(52.4mmol)のジエチルエーテル(60mL)溶液に、0℃下でブチルリチウムのヘキサン溶液36.0mL(1.6mol/L,57.6mmol)を加えた。この混合物を25℃で2時間撹拌した後、-78℃下で塩化コバルト3.40g(26.2mmol)のジエチルエーテル(30mL)懸濁液に加えた。この混合物を25℃で18時間撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。残渣にヘキサン60mLを加えて室温で激しく撹拌した。生成した懸濁液をろ過した後、ろ液から溶媒を減圧留去した。残った液体を蒸留(加熱温度90℃/背圧39Pa)することにより、ビス[(tert-ブチル)(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(2-2)を暗赤色液体として2.93g得た。収率32%。
1H-NMR(400MHz,C6D6,δ):54.3(br,18H),33.0(br,18H)。
【0126】
参考例2
【0127】
【0128】
塩化コバルト13.0g(100mmol)のTHF(50mL)溶液に、-78℃下でリチウムビス(トリメチルシリル)アミドのTHF溶液154mL(1.3mol/L,200mmol)を加えた。この混合物を25℃で17時間撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。残渣にヘキサン90mLを加えて室温で激しく撹拌した。生成した懸濁液をろ過した後、ろ液から溶媒を減圧留去した。残った固体を昇華(加熱温度120℃/背圧51Pa)することにより、ビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(2-8)を暗緑色固体として40.1g得た。収率89%。
1H-NMR(400MHz,C6D6,δ):168.2(br,4H),100.2(br,4H),-15.9(br,36H)。
【0129】
参考例3
【0130】
【0131】
THF20mLに2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチルアミン4.95g(42.6mmol)を溶かして-78℃に冷却し、ブチルリチウムのヘキサン溶液16mL(2.65mol/L,42.4mmol)を加えた。室温で15時間撹拌した後0℃に冷却し、クロロトリメチルシラン4.61gを30分間かけて滴下した。室温で4時間撹拌した後、溶媒を常圧下で留去した。得られたスラリーからヘキサンに可溶な成分を抽出した。抽出液を濃縮した後、減圧蒸留(留出温度80-82℃、背圧40Torr)により(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミンを無色液体として7.05g得た。収率87%。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,δ)2.32(s,6H),2.11(s,2H),1.09(s,6H),1.05(br、1H),0.06(s,9H)。
【0132】
参考例4
【0133】
【0134】
THF50mLに2-ジエチルアミノ-1,1-ジメチルエチルアミン17.0g(118mmol)を溶かして-78℃に冷却し、ブチルリチウムのヘキサン溶液45mL(2.65M,119mmol)を加えた。室温で15時間撹拌した後0℃に冷却し、クロロトリメチルシラン13.0gを30分間かけて滴下した。室温で6時間撹拌した後、溶媒を常圧下で留去した。得られたスラリーからヘキサンに可溶な成分を抽出した。抽出液を濃縮した後、減圧蒸留(留出温度105℃、背圧38Torr)により(2-ジエチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミンを無色液体として24.6g得た。収率96%。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,δ)2.57(q,J=7.1Hz,4H),2.50(br,1H),2.27(s,2H),1.07(s,6H),0.98(t,J=7.1Hz,6H),0.05(s,9H)。
【0135】
参考例5
【0136】
【0137】
THF30mLに2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチルアミン6.80g(58.5mmol)を溶かして-78℃に冷却し、ブチルリチウムのヘキサン溶液21.4mL(2.76M,59.1mmol)を加えた。室温で16時間撹拌した後0℃に冷却し、tert-ブチルクロロジメチルシラン10.8gのTHF(20mL)溶液を30分間かけて滴下した。室温で16時間撹拌した後、溶媒を常圧下で留去した。得られたスラリーからヘキサンに可溶な成分を抽出した。抽出液を濃縮した後、減圧蒸留(留出温度77℃、背圧6Torr)により(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(tert-ブチルジメチルシリル)アミンを無色液体として11.0g得た。収率81%。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,δ)2.31(s,6H),2.10(s,2H),1.07(s,6H),1.01(br,1H),0.86(s,9H),0.03(s,6H)。
【0138】
参考例6
【0139】
【0140】
THF100mLに2-ジメチルアミノエチルアミン19.7g(223.8mmol)を溶かして-78℃に冷却し、ブチルリチウムのヘキサン溶液82mL(2.76M,226.3mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後-78℃に冷却し、クロロトリメチルシラン24.6gのヘキサン(50mL)溶液を30分間かけて滴下した。室温で16時間撹拌した後、溶媒を常圧下で留去した。得られたスラリーからヘキサンに可溶な成分を抽出した。抽出液を濃縮した後、減圧蒸留(留出温度72℃、背圧56Torr)により[2-(ジメチルアミノ)エチル](トリメチルシリル)アミンを無色液体として28.8g得た。収率80%。
1H-NMR(400MHz,C6D6,δ)2.75(dt,J=7.0,6.1Hz,2H),2.19(t,J=6.1Hz,2H),2.07(s,6H),0.97(br、1H),0.10(s,9H)。
【0141】
参考例7
【0142】
【0143】
参考例3で合成した(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミン4.56g(24.2mmol)のジエチルエーテル(40mL)溶液に、0℃下でブチルリチウムのヘキサン溶液16.0mL(1.6mol/L,25.6mmol)を加えた。この混合物を25℃で1時間撹拌した後、-78℃下で塩化コバルト1.50g(11.6mmol)のジエチルエーテル(20mL)懸濁液に加えた。この混合物を25℃で18時間撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。残渣にヘキサン80mLを加えて室温で激しく撹拌した。生成した懸濁液をろ過した後、ろ液から溶媒を減圧留去した。残った固体を昇華(加熱温度160℃/背圧39Pa)することにより、ビス[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ]コバルトを紫色液体として1.75g得た。収率35%。
1H-NMR(400MHz,C6D6,δ):134.0(brs,12H),102.9(brs,4H),39.4(brs,12H),-27.8(brs,18H)。
【0144】
実施例1
【0145】
【0146】
参考例1で合成したビス[(tert-ブチル)(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(2-2)1.52g(4.37mmol)のヘキサン(15mL)溶液に、0℃下で参考例3で合成した{1,1-ジメチル-2-(ジメチルアミノ)エチル}(トリメチルシリル)アミン695mg(3.69mmol)を加えた。この混合物を25℃で2時間撹拌した後、17時間加熱還流を行った。得られた溶液から、溶媒を減圧下で留去した後、残った液体を蒸留(加熱温度130℃/背圧47Pa)することにより、[(tert-ブチル)(トリメチルシリル)アミノ][(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(1AB-8)を暗緑色液体として700mg得た。収率49%。
1H-NMR(400MHz,C6D6,δ):189.0(br,2H),122.0(br,3H)、111.1(br,3H)、84.6(br,3H)、58.7(br,3H)、36.0(brs,9H)、0.83(brs,9H)、-6.21(brs,9H)。
【0147】
実施例2
【0148】
【0149】
参考例2で合成したビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(2-8)1.98g(4.38mmol)のTHF(20mL)溶液に、-78℃下で参考例6で合成した[2-(ジメチルアミノ)エチル](トリメチルシリル)アミン711mg(4.43mmol)を加えた。この混合物を25℃で17時間撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。残った液体を蒸留(加熱温度100℃/背圧50Pa)することにより、{[2-(ジメチルアミノ)エチル](トリメチルシリル)アミノ}[ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(1AB-13)を暗緑色液体として900mg得た。収率54%。
1H-NMR(400MHz,C6D6,δ):124.6(brs,6H),107.5(br,2H),68.4(br,2H),12.7(brs,9H),-9.32(brs,18H)。
【0150】
実施例3
【0151】
【0152】
参考例2で合成したビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(2-8)24.5g(54.3mmol)のヘキサン(50mL)溶液に、25℃下で参考例3で合成した(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミン10.2g(54.3mmol)を加えた。この混合物を25℃で1時間撹拌した後、18時間加熱還流した。得られた溶液から、溶媒を減圧下で留去した後、残った液体を蒸留(加熱温度120℃/留出温度103℃/背圧56Pa)することにより、[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ][ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(1AB-14)を暗緑色液体として19.7g得た。収率89%。
1H-NMR(400MHz,C6D6,δ):149.5(brs,6H),118.7(brs,2H),62.0(brs,6H),32.7(brs,9H),-12.7(brs,18H)。
【0153】
実施例4
【0154】
【0155】
参考例2で合成したビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(2-8)1.22g(2.70mmol)のヘキサン(10mL)溶液に、0℃下で参考例4で合成した(2-ジエチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミン587mg(2.71mmol)を加えた。この混合物を25℃で1時間撹拌した後、18時間加熱還流した。得られた溶液から、溶媒を減圧下で留去した後、残った液体を蒸留(加熱温度135℃/背圧50Pa)することにより、[(2-ジエチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ][ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(1AB-16)を暗緑色液体として440mg得た。収率38%。
1H-NMR(400MHz,C6D6,δ):117.8(br,2H),59.7(brs,6H),27.6(br,4H),20.5(brs,9H),17.3(brs,6H),-12.8(brs,18H)。
【0156】
実施例5
【0157】
【0158】
参考例2で合成したビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(2-8)3.39g(7.50mmol)のヘキサン(10mL)溶液に、0℃下で参考例5で合成した(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(tert-ブチルジメチルシリル)アミン1.72g(7.46mmol)を加えた。この混合物を25℃で1時間撹拌した後、30時間加熱還流した。得られた溶液から、溶媒を減圧下で留去した後、残った液体を蒸留(加熱温度135℃/背圧43Pa)することにより、[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(tert-ブチルジメチルシリル)アミノ][ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(1AB-50)を暗緑色液体として220mg得た。収率7%。
1H-NMR(400MHz,C6D6,δ):160.4(br,6H),116.0(br,2H),62.5(brs,6H),44.6(brs,6H),-6.60(brs,9H),-14.5(brs,18H)。
【0159】
実施例6
【0160】
【0161】
実施例3で合成した[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ][ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(1AB-14)15.5g(38.1mmol)のTHF(80mL)溶液に、0℃下でジピバロイルメタン6.93g(37.6mmol)を加えた。この混合物を25℃で16時間撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。残った液体を蒸留(加熱温度130℃/背圧38Pa)することにより、[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ](2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)コバルト(1BC-56)を暗緑色液体として7.3g得た。収率45%。
1H-NMR(400MHz,C6D6,δ):65.6(br,6H),53.8(br,1H),46.1(br,1H),40.3(br,6H),14.2(brs,18H),3.99(br,9H),-30.3(br,1H)。
【0162】
実施例7
【0163】
【0164】
参考例2で合成したビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(2-8)3.38g(7.48mmol)のヘキサン(10mL)溶液に、0℃下でThe Journal of Organic Chemistry,第73巻,8673ページ(2008年)に記載の方法に従って合成したN-プロピル-4-(プロピルイミノ)-2-ペンテン-2-アミン724mg(3.97mmol)を加えた。この混合物を25℃で19時間撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。残った液体を蒸留(加熱温度125℃/背圧56Pa)することにより、[N-プロピル-4-(プロピルイミノ)ペンタ-2-エン-2-アミノ][ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(1AC-34)を暗赤色液体として280mg得た。収率17%。
1H-NMR(400MHz,C6D6,δ):7.40(brs,6H),3.05(br,4H),-2.33(br,4H),-5.90(brs,18H),-29.7(brs,6H),-88.0(br,1H)。
【0165】
評価例1
[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ][ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(1AB-14)の熱分析
サンプルとして、実施例3で合成した(1AB-14)を、熱重量測定(TG)の場合18.9mg、示差走査熱量測定(DSC)の場合7.5mg用いた。
【0166】
アルゴンを400mL/minにて流通させている雰囲気下、昇温速度10℃/minの条件で測定したTGの結果及び密閉容器中で昇温速度10℃/minで測定したDSCの結果を
図2に示した。TGから熱分解による残渣が10%、DSCから熱分解開始温度が182℃であることが分かる。また、DSCで融点が観測されないことから、(1AB-14)は室温で液体であることが分かる。
【0167】
評価例2
[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ](2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)コバルト(1BC-56)の熱分析
サンプルとして、実施例6で合成した(1BC-56)を、TGの場合18.8mg、DSCの場合6.8mg用いた。
【0168】
アルゴンを400mL/minにて流通させている雰囲気下、昇温速度10℃/minの条件で測定したTGの結果及び密閉容器中で昇温速度10℃/minで測定したDSCの結果を
図3に示した。TGから熱分解による残渣が1%、DSCから熱分解開始温度が214℃であることが分かる。また、DSCで融点が観測されないことから、(1BC-56)は室温で液体であることが分かる。
【0169】
比較例1
ビス[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ]コバルトの熱分析
サンプルとして、参考例7で合成したビス[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ]コバルトを、TGの場合19.0mg、DSCの場合7.0mg用いた。
【0170】
アルゴンを400mL/minにて流通させている雰囲気下、昇温速度10℃/minの条件で測定したTGの結果及び密閉容器中で昇温速度10℃/minで測定したDSCの結果を
図4に示した。TGから熱分解による残渣が10%、DSCから熱分解開始温度が221℃、融点が135℃であることが分かる。
【0171】
評価例1、2と比較例1の結果から本発明のコバルト錯体(1)は、ビス[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ]コバルトよりも融点が極めて低いことが分かる。
【0172】
比較例2
ビス[(tert-ブチル)(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(2-2)の熱分析
サンプルとして、参考例1で合成した(2-2)を、TGの場合19.2mg、DSCの場合3.6mg用いた。
【0173】
アルゴンを400mL/minにて流通させている雰囲気下、昇温速度10℃/minの条件で測定したTGの結果及び密閉容器中で昇温速度10℃/minで測定したDSCの結果を
図5に示した。TGから熱分解による残渣が20%、DSCから熱分解開始温度が150℃であることが分かる。また、DSCで融点が観測されないことから、(2-2)は室温で液体であることが分かる。
【0174】
評価例1、2と比較例2の結果から、(2-2)は室温で液体であるものの、(1AB-14)及び(1BC-56)と比較すると、TGで観測される残渣が多く、DSCで観測される熱分解開始温度が低いことが分かる。本発明のコバルト錯体(1)は、(2-2)よりも供給安定性及び熱安定性に優れた材料であることが分かる。
【0175】
実施例8
実施例3で合成した[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ][ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(1AB-14)を材料に用いてコバルト含有薄膜を熱CVD法により製造した。薄膜製造のために使用した装置の概略を
図1に示した。薄膜製造条件は以下の通りである。
キャリアガス流量:45sccm、アンモニア流量:40sccm、希釈ガス流量:115sccm、基板材料:SiO
2、成膜時間:60分、反応チャンバー全圧:1.3kPa、材料容器温度:70℃、材料の蒸気圧:4.4Pa、材料容器内全圧:3.7kPa、材料供給速度:0.05sccm、基板温度:200℃。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。製造した薄膜を蛍光X線分析で確認したところコバルトに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、24nmであった。作製したコバルト含有薄膜の電気特性を四探針法で測定したところ、159μΩ・cmであった。
【0176】
実施例9
実施例6で合成した[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ](2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)コバルト(1BC-56)を材料に用いてコバルト含有薄膜を熱CVD法により製造した。薄膜製造のために使用した装置の概略を
図1に示した。薄膜製造条件は以下の通りである。
キャリアガス流量:30sccm、アンモニア流量:100sccm、希釈ガス流量:70sccm、基板材料:SiO
2、成膜時間:120分、反応チャンバー全圧:1.3kPa、材料容器温度:85℃、材料の蒸気圧:13.3Pa、材料容器内全圧:6.7kPa、材料供給速度:0.06sccm、基板温度:200℃。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。製造した薄膜を蛍光X線分析で確認したところコバルトに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、54nmであった。作製したコバルト含有薄膜の電気特性を四探針法で測定したところ、185μΩ・cmであった。
【0177】
実施例10
実施例6で合成した[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ](2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)コバルト(1BC-56)を材料に用いてコバルト含有薄膜を熱CVD法により製造した。薄膜製造のために使用した装置の概略を
図1に示した。薄膜製造条件は以下の通りである。
キャリアガス流量:30sccm、アンモニア流量:100sccm、水素流量:3sccm、希釈ガス流量:67sccm、基板材料:SiO
2、成膜時間:120分、反応チャンバー全圧:1.3kPa、材料容器温度:85℃、材料の蒸気圧:13.3Pa、材料容器内全圧:6.7kPa、材料供給速度:0.06sccm、基板温度:200℃。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。製造した薄膜を蛍光X線分析で確認したところコバルトに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、98nmであった。作製したコバルト含有薄膜の電気特性を四探針法で測定したところ、105μΩ・cmであった。
【0178】
実施例11
実施例6で合成した[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ](2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)コバルト(1BC-56)を材料に用いてコバルト含有薄膜を熱CVD法により製造した。薄膜製造のために使用した装置の概略を
図1に示した。薄膜製造条件は以下の通りである。
キャリアガス流量:30sccm、アンモニア流量:100sccm、希釈ガス流量:70sccm、基板材料:Ru、成膜時間:15分、反応チャンバー全圧:1.3kPa、材料容器温度:85℃、材料の蒸気圧:13.3Pa、材料容器内全圧:6.7kPa、材料供給速度:0.06sccm、基板温度:200℃。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。製造した薄膜を蛍光X線分析で確認したところコバルトに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、9nmであった。得られた膜の表面平滑性をAFMにより評価したところ、膜のRaは1.0nm、Rmsは1.4nmであった(
図6)。
【0179】
比較例3
ビス(N,N’-ジイソプロピルアセトアミジナト)コバルト(Co(
iPrNC(Me)N
iPr)
2)を材料に用いてコバルト含有薄膜を熱CVD法により製造した。薄膜製造のために使用した装置の概略を
図1に示した。薄膜製造条件は以下の通りである。
【0180】
キャリアガス流量:40sccm、アンモニア流量:96sccm、基板材料:SiO2、成膜時間:60分、反応チャンバー全圧:1.3kPa、材料容器温度:91℃、材料の蒸気圧:40Pa、材料容器内全圧:16kPa、材料供給速度:0.1sccm、基板温度:200℃。キャリアガスとしてアルゴンを用い、希釈ガスは用いなかった。製造した薄膜を蛍光X線分析で確認したところコバルトに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、6nmであった。作製したコバルト含有薄膜の電気特性を四探針法で測定したところ、106μΩ・cm以上であった。
【0181】
実施例8~11及び比較例3の結果から本発明のコバルト錯体(1)は、酸化性ガスを用いなくても、光やプラズマを併用することなく、200℃以下の低温で、表面平滑性に優れた、低抵抗率なコバルト含有膜を製造可能な材料であることが分かる。
【0182】
実施例12
【0183】
【0184】
実施例3で合成した[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ][ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(1AB-14)2.47g(6.07mmol)のTHF(10mL)溶液に、0℃下でアセチルアセトン0.61g(6.07mmol)を加えた。この混合物を25℃で17時間撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。残った液体を蒸留(加熱温度110℃/背圧54Pa)することにより、[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ](2,4-ペンタンジオナト)コバルト(1BC-2)を暗緑色液体として0.40g得た。収率19%。
1H-NMR(400MHz,C6D6,δ):66.2(br,6H),54.9(br,2H),42.7(br,6H),4.55(br,9H),2.26(br,6H),-0.01(br,1H)。
【0185】
実施例13
実施例6で合成した[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ](2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)コバルト(1BC-56)を材料に用いてコバルト含有薄膜を熱CVD法により製造した。薄膜製造のために使用した装置の概略を
図1に示した。薄膜製造条件は以下の通りである。
キャリアガス流量:30sccm、ギ酸流量:0.2sccm、希釈ガス流量:166sccm、基板材料:Ru、成膜時間:120分、反応チャンバー全圧:1.3kPa、材料容器温度:85℃、材料の蒸気圧:13.3Pa、材料容器内全圧:6.7kPa、材料供給速度:0.06sccm、基板温度:200℃。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。製造した薄膜を蛍光X線分析で確認したところコバルトに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、膜厚は49nmであった。作製した膜の元素組成を、X線光電子分光法(ESCA)により定量した。
C:6atm%,N:0atm%,O:1atm%,Si:0atm%,Co:93atm%。
【0186】
実施例14
実施例6で合成した[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ](2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)コバルト(1BC-56)を材料に用いてコバルト含有薄膜を熱CVD法により製造した。薄膜製造のために使用した装置の概略を
図1に示した。薄膜製造条件は以下の通りである。
キャリアガス流量:30sccm、ギ酸流量:0.2sccm、希釈ガス流量:166sccm、基板材料:Cu、成膜時間:120分、反応チャンバー全圧:1.3kPa、材料容器温度:85℃、材料の蒸気圧:13.3Pa、材料容器内全圧:6.7kPa、材料供給速度:0.06sccm、基板温度:200℃。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。製造した薄膜を蛍光X線分析で確認したところコバルトに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、膜厚は49nmであった。
【0187】
実施例15
実施例6で合成した[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ](2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)コバルト(1BC-56)を材料に用いてコバルト含有薄膜を熱CVD法により製造した。薄膜製造のために使用した装置の概略を
図1に示した。薄膜製造条件は以下の通りである。
キャリアガス流量:30sccm、ギ酸流量:0.2sccm、希釈ガス流量:166sccm、基板材料:Ta、成膜時間:120分、反応チャンバー全圧:1.3kPa、材料容器温度:85℃、材料の蒸気圧:13.3Pa、材料容器内全圧:6.7kPa、材料供給速度:0.06sccm、基板温度:200℃。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。製造した薄膜を蛍光X線分析で確認したところコバルトに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、膜厚は44nmであった。
【0188】
実施例16
【0189】
【0190】
実施例3で合成した[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ][ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(1AB-14)1.36g(3.34mmol)のTHF(20mL)溶液に、0℃下でヘプタン-3,5-ジオン0.43g(3.34mmol)を加えた。この混合物を25℃で16時間撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。残った液体を蒸留(加熱温度130℃/背圧56Pa)することにより、[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ](3,5-ヘプタンジオナト)コバルト(1BC-20)を暗緑色液体として0.10g得た。収率8%。
1H-NMR(400MHz,C6D6,δ):66.1(br,6H),54.5(br,2H),41.8-47.5(br,7H),11.5(brs,6H),9.71(br,4H),4.46(br,9H)。
【0191】
実施例17
実施例6で合成した[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ](2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)コバルト(1BC-56)を材料に用い、SiO
2基板上にALD法でコバルト含有薄膜を製造した。薄膜製造のために使用した装置の概略を
図7に示す。薄膜製造条件は以下の通りである。
キャリアガス:アルゴン30sccm、反応ガス:アンモニア100sccmとアルゴン70sccmの混合ガス、パージガス:アルゴン70sccm、材料容器温度:85℃、材料の蒸気圧:13.3Pa、材料容器内全圧:6.7kPa、材料供給速度:0.06sccm、基板温度:300℃、反応チャンバー全圧:~1.4Paの条件において、以下の(1)~(4)からなる工程を1サイクルとして、240回、計120分繰り返した。
【0192】
(1)バブリングによって気化させた材料を反応チャンバー内に導入し、5秒間基板表面に吸着させる。
【0193】
(2)5秒間のアルゴンパージにより、未反応材料を除去する。
【0194】
(3)上記反応ガスを反応チャンバー内に10秒間導入し、基板表面に吸着した材料と反応させる。
【0195】
(4)10秒間のアルゴンパージにより、未反応反応ガス及び副生成物を除去する。
【0196】
製造した薄膜を蛍光X線分析で確認したところコバルトに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、膜厚は6nmであった。
【0197】
実施例18
実施例6で合成した[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ](2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)コバルト(1BC-56)を材料に用い、ALD法でコバルト含有薄膜を製造した。基板には表面がRuで被覆された、ホール径150nm、ホール深さ1000nm、アスペクト比1:6.7のホール基板を用いた。
【0198】
薄膜製造のために使用した装置の概略を
図7に示す。薄膜製造条件は以下の通りである。
キャリアガス:アルゴン30sccm、反応ガス:アンモニア100sccmとアルゴン70sccmの混合ガス、パージガス:アルゴン70sccm、材料容器温度:85℃、材料の蒸気圧:13.3Pa、材料容器内全圧:6.7kPa、材料供給速度:0.06sccm、基板温度:225℃、反応チャンバー全圧:~1.4Paの条件において、以下の(1)~(4)からなる工程を1サイクルとして、240回、計120分繰り返した。
【0199】
(1)バブリングによって気化させた材料を反応チャンバー内に導入し、5秒間基板表面に吸着させる。
【0200】
(2)5秒間のアルゴンパージにより、未反応材料を除去する。
【0201】
(3)上記反応ガスを反応チャンバー内に10秒間導入し、基板表面に吸着した材料と反応させる。
【0202】
(4)10秒間のアルゴンパージにより、未反応反応ガス及び副生成物を除去する。
【0203】
製造した薄膜を蛍光X線分析で確認したところコバルトに基づく特性X線が検出された。製造した薄膜の断面TEM観察を行ったところ、10nmのコバルト膜がホール基板表面を被覆しており、段差被覆率は89%であった。
【0204】
実施例19
実施例3で合成した[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ][ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(1AB-14)を材料に用いてコバルト含有薄膜を熱CVD法により製造した。薄膜製造のために使用した装置の概略を
図1に示した。薄膜製造条件は以下の通りである。
【0205】
キャリアガス流量:30sccm、アンモニア流量:100sccm、希釈ガス流量:70sccm、基板材料:Ru、成膜時間:60分、反応チャンバー全圧:1.3kPa、材料容器温度:70℃、材料の蒸気圧:6.7Pa、材料容器内全圧:3.3kPa、材料供給速度:0.06sccm、基板温度:200℃。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。製造した薄膜を蛍光X線分析で確認したところコバルトに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、膜厚は27nmであった。
【0206】
実施例20
実施例3で合成した[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ][ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(1AB-14)を材料に用いてコバルト含有薄膜を熱CVD法により製造した。薄膜製造のために使用した装置の概略を
図1に示した。薄膜製造条件は以下の通りである。
【0207】
キャリアガス流量:30sccm、アンモニア流量:100sccm、希釈ガス流量:70sccm、基板材料:SiO2、成膜時間:60分、反応チャンバー全圧:1.3kPa、材料容器温度:70℃、材料の蒸気圧:6.7Pa、材料容器内全圧:3.3kPa、材料供給速度:0.06sccm、基板温度:150℃。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。製造した薄膜を蛍光X線分析で確認したところコバルトに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、膜厚は14nmであった。作製したコバルト含有薄膜の電気特性を四探針法で測定したところ、247μΩ・cmであった。
【0208】
実施例21
実施例3で合成した[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ][ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(1AB-14)を材料に用いてコバルト含有薄膜を熱CVD法により製造した。薄膜製造のために使用した装置の概略を
図1に示した。薄膜製造条件は以下の通りである。
【0209】
キャリアガス流量:30sccm、アンモニア流量:100sccm、希釈ガス流量:70sccm、基板材料:Ru、成膜時間:60分、反応チャンバー全圧:1.3kPa、材料容器温度:70℃、材料の蒸気圧:6.7Pa、材料容器内全圧:3.3kPa、材料供給速度:0.06sccm、基板温度:150℃。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。製造した薄膜を蛍光X線分析で確認したところコバルトに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、膜厚は20nmであった。
【0210】
実施例22
実施例3で合成した[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ][ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(1AB-14)を材料に用いてコバルト含有薄膜を熱CVD法により製造した。薄膜製造のために使用した装置の概略を
図1に示した。薄膜製造条件は以下の通りである。
【0211】
キャリアガス流量:30sccm、ギ酸流量:0.4sccm、希釈ガス流量:166sccm、基板材料:SiO2、成膜時間:60分、反応チャンバー全圧:1.3kPa、材料容器温度:70℃、材料の蒸気圧:1.0Pa、材料容器内全圧:6.7kPa、材料供給速度:0.02sccm、基板温度:100℃。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。製造した薄膜を蛍光X線分析で確認したところコバルトに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、膜厚は5nmであった。
【0212】
実施例23
実施例3で合成した[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ][ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(1AB-14)を材料に用いてコバルト含有薄膜を熱CVD法により製造した。薄膜製造のために使用した装置の概略を
図1に示した。薄膜製造条件は以下の通りである。
【0213】
キャリアガス流量:30sccm、ギ酸流量:0.4sccm、希釈ガス流量:166sccm、基板材料:Cu、成膜時間:60分、反応チャンバー全圧:1.3kPa、材料容器温度:70℃、材料の蒸気圧:1.0Pa、材料容器内全圧:6.7kPa、材料供給速度:0.02sccm、基板温度:100℃。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。製造した薄膜を蛍光X線分析で確認したところコバルトに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、膜厚は5nmであった。
【0214】
実施例24
実施例3で合成した[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ][ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(1AB-14)を材料に用いてコバルト含有薄膜を熱CVD法により製造した。薄膜製造のために使用した装置の概略を
図1に示した。薄膜製造条件は以下の通りである。
【0215】
キャリアガス流量:30sccm、アンモニア流量:100sccm、水素流量3sccm、ジピバロイルメタン流量0.06sccm、基板材料:Ru、成膜時間:60分、反応チャンバー全圧:0.7kPa、材料容器温度:70℃、材料の蒸気圧:6.7Pa、材料容器内全圧:3.3kPa、材料供給速度:0.06sccm、基板温度:225℃。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。製造した薄膜を蛍光X線分析で確認したところコバルトに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、膜厚は35nmであった。
【0216】
実施例25
実施例3で合成した[(2-ジメチルアミノ-1,1-ジメチルエチル)(トリメチルシリル)アミノ][ビス(トリメチルシリル)アミノ]コバルト(1AB-14)を材料に用いてコバルト含有薄膜を熱CVD法により製造した。薄膜製造のために使用した装置の概略を
図1に示した。薄膜製造条件は以下の通りである。
【0217】
キャリアガス流量:30sccm、アンモニア流量:100sccm、水素流量3sccm、ジピバロイルメタン流量0.06sccm、基板材料:W、成膜時間:60分、反応チャンバー全圧:0.7kPa、材料容器温度:70℃、材料の蒸気圧:6.7Pa、材料容器内全圧:3.3kPa、材料供給速度:0.06sccm、基板温度:225℃。キャリアガス及び希釈ガスとしてアルゴンを用いた。製造した薄膜を蛍光X線分析で確認したところコバルトに基づく特性X線が検出された。検出されたX線の強度から算出したところ、膜厚は39nmであった。
【符号の説明】
【0218】
1 材料容器
2 恒温槽
3 反応チャンバー
4 基板
5 反応ガス導入口
6 希釈ガス導入口
7 キャリアガス導入口
8 マスフローコントローラー
9 マスフローコントローラー
10 マスフローコントローラー
11 油回転式ポンプ
12 排気
13 材料容器
14 恒温槽
15 反応チャンバー
16 基板
17 反応ガス導入口
18 希釈ガス導入口
19 キャリアガス導入口
20 マスフローコントローラー
21 マスフローコントローラー
22 マスフローコントローラー
23 油回転式ポンプ
24 排気