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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20231106BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20231106BHJP
   C23C 16/509 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/302 101B
H05H1/46 M
C23C16/509
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019204977
(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2021077808
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】花岡 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】田丸 直樹
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-252261(JP,A)
【文献】特開2007-273824(JP,A)
【文献】特開平11-026563(JP,A)
【文献】特開2011-249470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/205
H01L 21/302
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/461
H01L 21/469
H01L 21/86
H05H 1/00-1/54
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器と、
前記処理容器の上側に配置された上部電極と、を備え、
前記上部電極は、
ディスク形状を有し、前記処理容器内に設けられた電極と、
リング形状を有し、前記電極の半径方向外側に設けられ、前記電極と隙間を介して対向する別の電極と、を有し、
前記電極又は前記別の電極の少なくとも一方は、前記隙間に接続され、前記隙間にガスを流す流路を備え、
前記隙間のサイズは、0.5mm~1mmの間である、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
処理容器内に設けられた第1の部材と、
前記第1の部材の外側に設けられた第2の部材と、を有し、
前記第1の部材と前記第2の部材との少なくともいずれかは、前記第1の部材と前記第2の部材との間の隙間にガスを流す流路を備え、前記隙間にガスを流す流路は、前記隙間に周状に開口する凹部を有する、
プラズマ処理装置。
【請求項3】
前記隙間にガスを流す流路は、等間隔に設けられている、
請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記隙間にガスを流す流路は、前記ガスを供給する流路の最も外側の流路に繋がっている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記ガスを供給する流路は、前記第1の部材と前記第2の部材との少なくともいずれかを貫通する流路を含み、
前記隙間にガスを流す流路は、前記貫通する流路の少なくともいずれかから分岐する、
請求項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第1の部材と前記第2の部材との少なくともいずれかには、直流電圧の印加が可能である、
請求項2又は5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記隙間にガスを流す流路は、前記隙間に周状に開口する凹部を有する、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記ガスを供給する流路は、前記電極と前記別の電極との少なくともいずれかを貫通する流路を含み、
前記隙間にガスを流す流路は、前記貫通する流路の少なくともいずれかから分岐する、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記電極と前記別の電極との少なくともいずれかには、直流電圧の印加が可能である、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、プラズマ処理装置においてプラズマ処理空間に臨む隙間に入り込む反応生成物をイオンスパッタにより除去することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-251633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマ処理装置に設けられた部材間の隙間に反応生成物が付着することを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、処理容器内に設けられた第1の部材と、前記第1の部材の外側に設けられた第2の部材と、を有し、前記第1の部材と前記第2の部材との少なくともいずれかには、前記第1の部材と前記第2の部材との間の隙間にガスを流す流路が形成されている、プラズマ処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、プラズマ処理装置に設けられた部材間の隙間に反応生成物が付着することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係るプラズマ処理装置の一例を示す断面模式図。
図2】一実施形態に係る上部電極の周辺構造の一例を示す図。
図3】一実施形態に係る内側電極板を上面から見たときのガスの供給経路の一例を示す図。
図4】一実施形態に係るプラズマ処理方法の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[プラズマ処理装置]
一実施形態に係るプラズマ処理装置1について、図1を参照して説明する。図1は、一実施形態に係るプラズマ処理装置1の一例を示す断面模式図である。一実施形態に係るプラズマ処理装置1は、容量結合型の平行平板処理装置であり、処理容器10を有する。処理容器10は、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる円筒状の容器であり、接地されている。
【0010】
処理容器10の底部には、セラミックス等からなる絶縁板12を介して円柱状の支持台14が配置され、この支持台14の上に例えば載置台16が設けられている。載置台16は、静電チャック20と基台18とを有し、静電チャック20の上面に基板Wを載置する。基板Wの周囲には、例えばシリコンからなる環状のエッジリング24が配置されている。エッジリング24は、フォーカスリングとも呼ぶ。基台18及び支持台14の周囲には、例えば石英からなる環状のインシュレータリング26が設けられている。静電チャック20の内部には、基板Wの下方に導電膜からなる第1の電極20aが絶縁層20bに挟まれて埋設されている。第1の電極20aは電源22と接続され、電源22から第1の電極20aに印加した直流電圧によって静電力を発生させ、静電チャック20の載置面に基板Wを吸着する。なお、静電チャック20はヒータを有し、これにより温度を制御してもよい。
【0011】
基台18の内部では、例えばリング状又は渦巻状の流路28が形成されている。チラーユニット(図示せず)から供給される所定温度の熱媒体、例えば冷媒が、配管30a、流路28、配管30bを通り、チラーユニットに戻される。これにより、基台18において抜熱等が生じ、基板Wの温度を制御できる。さらに、伝熱ガス供給機構から供給される伝熱ガス、例えばHeガスが、ガス供給ライン32を介して静電チャック20の表面と基板Wの裏面との間に供給される。この伝熱ガスにより、静電チャック20の表面と基板Wの裏面との間の熱伝達が良くなり、基板Wの温度制御を効果的に行うことができる。また、静電チャック20にヒータを有する場合、ヒータと流路28に通される熱媒体とによって、応答性良く基板Wの温度を制御できる。
【0012】
上部電極34は、載置台16に対向して処理容器10の天井部に設けられる。上部電極34と載置台16との間はプラズマ処理空間となる。上部電極34は、絶縁性の遮蔽部材42を介して処理容器10の天井部の開口を閉塞する。上部電極34は、電極板36と電極支持体38とを有する。電極板36は、内側電極板36iと、外側電極板36oとを有する。
【0013】
内側電極板36iは、シリコン(Si)やシリコンカーバイト(SiC)等のシリコン含有物から形成され、載置台16との対向面に形成された多数のガス流路(ガス孔)37を有する。ガス流路37には、内側電極板36iの厚さ方向に内側電極板36iを貫通する第1のガス流路37aと、外周側に開口する、断面がL字状に形成された第2のガス流路37bとを有する。
【0014】
外側電極板36oは、シリコンやシリコンカーバイト等のシリコン含有物から形成され、内側電極板36iの外側に配置される。内側電極板36iは、処理容器10内に設けられた第1の部材の一例である。外側電極板36oは、第1の部材の外側に設けられた第2の部材の一例である。
【0015】
内側電極支持体38iは、内側電極板36iを着脱自在に支持し、導電性材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムから形成される。内側電極支持体38iの内部では、多数のガス通流孔41a、41bがガス拡散室40a、40bから下方に延び、ガス流路37に連通している。外側電極支持体38oは、外側電極板36oを着脱自在に支持し、導電性材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムから形成される。内側電極支持体38iと外側電極支持体38oとの間には、絶縁性の遮蔽部材39が配置されている。
【0016】
ガス導入口50は、ガス供給管52を介して処理ガス供給源54に接続する。ガス供給管52には、処理ガス供給源54が配置された上流側から順にマスフローコントローラ(MFC)56および開閉バルブ58が設けられている。処理ガスは、処理ガス供給源54から供給され、マスフローコントローラ56および開閉バルブ58により流量及び開閉を制御され、ガス供給管52を介してガス拡散室40a、40b、ガス通流孔41a、41bを通りガス流路37からシャワー状に吐出される。なお、図示は省略するが、ガス通流孔41a、41bを通りガス流路37から吐出されるガスの流量(コンダクタンス)を独立して調整することができるように構成されている。かかる構成により、上部電極34は、ガスを供給するシャワーヘッドとしても機能する。
【0017】
プラズマ処理装置1は、第1の高周波電源61及び第2の高周波電源64を有する。第1の高周波電源61は、第1の高周波電力(以下、「HF電力」ともいう。)を発生する電源である。第1の高周波電力の周波数は、プラズマの生成に適した周波数であり、例えば27MHz~100MHzの周波数であってもよい。第1の高周波電源61は、整合器62及び給電ライン63を介して上部電極34に接続されている。整合器62は、第1の高周波電源61の出力インピーダンスと負荷側(上部電極34側)のインピーダンスを整合させるための回路を有する。なお、第1の高周波電源61は、整合器62を介して下部電極として機能する載置台16に接続されてもよい。
【0018】
第2の高周波電源64は、第2の高周波電力(以下、「LF電力」ともいう。)を発生する電源である。第2の高周波電力の周波数は、第1の高周波電力の周波数よりも低い周波数であり、第1の高周波電力と共に第2の高周波電力が用いられる場合には、第2の高周波電力は基板Wにイオンを引き込むためのバイアス用の高周波電力として用いられる。第2の高周波電力の周波数は、例えば400kHz~13.56MHzの周波数であってもよい。第2の高周波電源64は、整合器65及び給電ライン66を介して載置台16に接続されている。整合器65は、第2の高周波電源64の出力インピーダンスと負荷側(基台18側)のインピーダンスを整合させるための回路を有する。
【0019】
なお、第1の高周波電力を用いずに、第2の高周波電力を用いて、即ち、単一の高周波電力のみを用いてプラズマを生成してもよい。この場合、第2の高周波電力の周波数は、13.56MHzよりも大きな周波数、例えば40MHzであってもよく、プラズマ処理装置1は、第1の高周波電源61及び整合器62を備えなくてもよい。
【0020】
第1の可変電源71は内側電極支持体38iと接続し、直流電圧を内側電極板36iに印加する。第2の可変電源72は外側電極支持体38oと接続し、直流電圧を外側電極板36oに印加する。これにより、内側電極板36i及び外側電極板36oには、それぞれ独立して直流電圧が印加できるように構成されている。第3の可変電源73はエッジリング24と接続し、直流電圧をエッジリング24に印加する。なお、例えば、第1の可変電源71と第2の可変電源72との少なくともいずれかから内側電極板36iと外側電極板36oとの少なくともいずれかに直流電圧が印加できるように構成されてもよい。
【0021】
排気装置84は、排気管82と接続する。排気装置84は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有し、処理容器10の底部に形成された排気口80から排気管82を通して排気を行い、処理容器10内を所望の真空度に減圧する。また、排気装置84は、図示しない処理容器10内の圧力を計測する圧力計の値を用いながら、処理容器10内の圧力を一定に制御する。
【0022】
バッフル板83は、インシュレータリング26と処理容器10の側壁の間に環状に設けられる。バッフル板83は、複数の貫通孔を有し、アルミニウムで形成され、その表面はY2O3等のセラミックスで被覆されている。
【0023】
処理容器10の側壁には、基板Wを搬入出するための搬入出口91が設けられている。また、搬入出口91を開閉するゲートバルブ90が設けられている。
【0024】
プラズマ処理装置1には、装置全体の動作を制御する制御部100が設けられている。制御部100に設けられたCPUは、ROM及びRAM等のメモリに格納されたレシピに従って、エッチング等の所望のプラズマ処理を実行する。レシピには、プロセス条件に対する装置の制御情報であるプロセス時間、圧力(ガスの排気)、第1の高周波電力及び第2の高周波電力や電圧、各種ガス流量が設定されてもよい。また、レシピには、処理容器内温度(上部電極温度、処理容器の側壁温度、基板W温度、静電チャック温度等)、チラーから出力される冷媒の温度などが設定されてもよい。なお、これらのプログラムや処理条件を示すレシピは、ハードディスクや半導体メモリに記憶されてもよい。また、レシピは、CD-ROM、DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容された状態で所定位置にセットされ、読み出されるようにしてもよい。
【0025】
かかる構成のプラズマ処理装置1においてプラズマエッチング処理等の所定のプラズマ処理を行う際には、ゲートバルブ90を開き、搬入出口91を介して基板Wを処理容器10内に搬入し、載置台16の上に載置し、ゲートバルブ90を閉じる。処理ガスを処理容器10の内部へ供給し、処理容器10内を排気装置84により排気する。
【0026】
第1の高周波電力を上部電極34に印加し、第2の高周波電力を載置台16に印加する。電源22から直流電圧を第1の電極20aに印加し、基板Wを載置台16に吸着させる。なお、直流電圧を第1の可変電源71及び第2の可変電源72から内側電極板136i及び外側電極板136oに印加してもよい。また、直流電圧を第3の可変電源73からエッジリング24に印加してもよい。プラズマ処理空間に生成されたプラズマ中のラジカルやイオンによって基板Wにエッチング等のプラズマ処理が施される。
【0027】
基板Wにプラズマ処理を施すと、反応生成物(以下、「デポ」ともいう。)が処理容器10の内壁や隙間に付着する。このため、処理容器10内に付着したデポをプラズマ処理によって除去するドライクリーニング処理を実行することがある。ところが、内側電極板36iと外側電極板36oとの間にデポが付着し、クリーニングによってもそのデポを十分に除去することは困難である。
【0028】
図2(a)には、従来の上部電極の内側電極板136i及び外側電極板136oの構成の一例を比較例として示す。比較例では、内側電極板136iの厚み方向に垂直に多数のガス流路137が形成されている。また、内側電極板136iと外側電極板136oとの間の隙間Dに炭素(C)、フッ素(F)、イットリア(イットリウム(Y)の酸化物)、フッ化イットリウム(イットリウム(Y)のフッ化物)、アルミナ(アルミニウム(Al)の酸化物)、シリコン(Si)等が含まれたデポRが付着している。
【0029】
基板Wをエッチングする際、プラズマを生成するための処理ガスがガス流路137から供給される、処理ガスにはCやFが含まれる。また、処理容器10の内壁は、例えば、イットリアの溶射膜で被覆されている。イットリアは一例であり、アルミナその他の溶射膜で構成されていてもよい。以下、処理容器10の内壁はイットリアで構成されているとして説明する。
【0030】
隙間Dは0.5mm~1mm程度である。よって、プラズマ生成時に処理ガスがプラズマ化して生成されたC、Fの固体化された成分及び処理容器10の内壁であるイットリアの溶射膜がスパッタされた成分が、内側電極板136iと外側電極板136oとの間の0.5mm~1mm程度の隙間Dに入り込み、デポとなる。そうすると、隙間Dに付着したデポを除去することができず、隙間Dにおいてデポが堆積し、ある厚さ以上になったデポが剥がれて基板W上に落ち、パーティクルとなる。基板W上に落ちたパーティクルは、基板Wのエッチングに影響を及ぼし、製品不良が生じて歩留まりの悪化を引き起こす原因となる。
【0031】
また、隙間Dにデポが生じると、隙間Dの空間が更に狭くなり、異常放電が生じ易くなる。そして、異常放電の発生により更にデポが剥がれ易くなりさらに多くのパーティクルを発生させる。内側電極板136i及び外側電極板136oには別々の直流電圧を印加可能であるが、異常放電は、この直流電圧の制御にも異常を生じさせる場合がある。また、隙間Dにおいて異常放電が生じると、内側電極板136i及び外側電極板136o自体にクラック等の損傷を与えることもある。
【0032】
よって、内側電極板136i及び外側電極板136oの隙間Dに付着するデポを除去することが望まれる。これに対して、プラズマ中のイオンを隙間Dに入射し、イオンのスパッタにより隙間Dのデポを除去することが考えられる。このとき、内側電極板136i及び外側電極板136oのそれぞれに印加する直流電圧を変えて内側電極板136i及び外側電極板136oの下面に形成されるシースの厚みを変えることでイオンの照射角度を制御することも可能である。しかし、かかる制御では、例えば、隙間Dの両側に付着したデポRのうち、シースの厚さに応じてイオンが斜めに照射される片側のデポRは除去できてもその反対側にはイオンが照射されないため、反対側のデポRを除去できず、スパッタ効果は十分には得られない。また、イオンのスパッタ効果を得るためには、隙間Dに合った角度にイオンを入射させる特別なステップを追加する必要があるが、そうすると、追加したステップの処理時間だけスループットが悪くなる。また、隙間Dに合った角度にイオンを照射すること自体が困難であり、隙間DのデポRを十分に除去するのは難しい。
【0033】
[上部電極の周辺構造]
そこで、一実施形態に係るプラズマ処理装置1では、ガス流路37から供給される処理ガスの一部を直接隙間Dに流す。このように基板Wの処理に必要な処理ガスの供給経路を工夫することで、隙間D内を、プラズマ中のC、Fや処理容器10の内壁であるイットリアの溶射膜がスパッタされた成分を含む雰囲気から、処理ガスの雰囲気に置換する。これによれば、処理ガスにC、Fが含有されていても、これらの成分がガスの状態で隙間D内を通過するため、処理ガスを隙間Dに通すことで、隙間Dの壁面にはC、Fの固体化された成分は付着しない。また、イットリアの溶射膜のスパッタされた成分が隙間D内に入り込まない。これにより、隙間D内にてC、Fの固体化された成分及びイットリアの溶射膜がスパッタされた成分がデポRとなって堆積することを回避できる。また、隙間Dに流す処理ガスのコンダクタンスを調整することで、処理ガスの流速を制御し、これにより隙間Dに付着したデポRを剥がして除去することができる。
【0034】
処理ガスの供給経路について、図2を参照しながら具体的に説明する。図2(b)は、図1のA領域の拡大図であり、一実施形態に係る上部電極34におけるガスの供給経路の一例を示す図である。
【0035】
内側電極板36iと外側電極板36oとは、隙間Dを介して互いに対向する面36i1と面36o1とを有する。内側電極板36iには、ガス流路37が形成されている。内側電極板36iに形成されるガス流路37は、第1のガス流路37aと第2のガス流路37bとを有する。
【0036】
第1のガス流路37aは、内側電極板36iの厚さ方向に内側電極板36iを貫通する。第2のガス流路37bは、内側電極板36iの厚さ方向に向かうガス流路37b1と隙間Dへ向かうガス流路37b2とを含み、ガス流路37b1→ガス流路37b2の順にガスを通す。第2のガス流路37bは、隙間Dにガスを流す経路43に繋がり、隙間Dにガスを流す。
【0037】
一実施形態では、第1のガス流路37aと第2のガス流路37bとには、基板Wの処理に使用する処理ガスを供給するが、これに限られず、処理ガス以外のガス、例えばNガス等のパージガスを供給してもよい。つまり、隙間Dには、反応性ガス又は不活性ガスのいずれのガスを供給してもよい。また、第1のガス流路37aと第2のガス流路37bとに流すガスの種類は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0038】
また、ガス流路37が形成される電極板は、内側電極板36iに限られない。例えば、内側電極板36iと外側電極板36oとの少なくともいずれかにガス流路が形成されてもよい。つまり、外側電極板36o側からガスを隙間Dに供給してもよいし、内側電極板36iと外側電極板36oとの両側からガスを隙間Dに供給してもよい。これによれば、内側電極板36iと外側電極板136oとの少なくともいずれかから隙間Dにガスを供給することで、隙間D内を、供給されたガスの雰囲気に置換できる。また、隙間Dに流すガスのコンダクタンスを調整することで、ガスの流速を制御し、これにより、隙間Dに付着するデポRを除去し、デポRの付着を抑制できる。
【0039】
(変形例)
第2のガス流路37bの変形例について、図2(c)を参照して説明する。変形例に係る第2のガス流路37bは、内側電極板36iの厚さ方向に向かうガス流路37b1と隙間Dへ向かうガス流路37b2とを含む。更に、第2のガス流路37bは、内側電極板36iの厚さ方向と垂直な方向に向かうガス流路37b3を含み、ガス流路37b3→ガス流路37b1→ガス流路37b2の順にガスを通す。かかる構成により、内側電極板36iからガスを隙間Dに直接供給することができる。ただし、第2のガス流路37bの構成は、これに限られず、処理ガスを直接隙間Dに供給することができれば、どのような構成であってもよい。
【0040】
例えば、ガス流路37b1から分岐し、隙間Dへ向かうガス流路37b2が2本以上形成されてもよい。また、ガス流路37b1は、内側電極板36iを貫通する流路であって、その途中でガス流路37b2に分岐してもよい。更に、隙間Dにガスを流す流路は、内側電極板36iを貫通する第1のガス流路37aの少なくともいずれかから分岐してもよい。つまり、隙間Dにガスを供給する流路は、内側電極板36iに形成された最外周の第2のガス流路37bだけでなく、その内側の第1のガス流路37aから形成されてもよい。また、外側電極板36oにガス流路が形成されている場合、隙間Dにガスを供給する流路は、外側電極板36oに形成された最外周のガス流路であってもよいし、その内側のガス流路であってもよいし、両方のガス流路であってもよい。
【0041】
図3を参照して、一実施形態に係る内側電極板36iを上面から見たときのガスの供給経路を説明する。図3(a)~(c)は、一実施形態に係る内側電極板36iを上面から見たときのガスの供給経路の一例を示す図である。
【0042】
図3(a)では、内側電極板36iに円周状に形成された第1のガス流路37a及び第2のガス流路37bに対して隙間Dにガスを流すガス流路37b2及びガス流路37a1を形成する。図3(b)では、内側電極板36iに格子状に形成された第1のガス流路37a及び第2のガス流路37bに対して隙間Dにガスを流すガス流路37b2を形成する。図3(d)は、図3(a)のB-B断面である。隙間Dにガスを流す流路の一例を、図3(d)のガス流路37b2(図3(d)では横穴)に示す。隙間Dにガスを流すガス流路37b2は、最外周の第2のガス流路37bのガス流路37b1に繋がっている。ただし、最外周の第2のガス流路37bの内側の第1のガス流路37aから隙間にガスを流す流路を設置してもよい。この場合の隙間にガスを流す流路の一例を、図3(a)及び(d)のガス流路37a1に示す。ただし、第1のガス流路37aから設けられたガス流路37a1は設けなくてもよい。
【0043】
図3(a)及び(b)に示すように、隙間Dにガスを流すガス流路37b2は、等間隔に設けられている。図3(a)では、隙間Dにガスを流す複数のガス流路37b2は、最外周の複数のガス流路37b1のそれぞれから等間隔に設けられている。図3(b)では、隙間Dにガスを流すガス流路37b2は、最外周の複数のガス流路37b1のうち等間隔に配置された8つのガス流路37b1に連通する穴として設けられている。
【0044】
図3(c)では、内側電極板36iに円周状に形成された第1のガス流路37a及び第2のガス流路37bに対して隙間Dにガスを流すガス流路37b2及び溝37b4を形成する。図3(e)は、図3(c)のC-C断面である。隙間にガスを流す流路の一例を、図3(e)のガス流路37b2及び溝37b4に示す。本例では、隙間Dにガスを流す流路は、溝37b4を有する。溝37b4は、隙間Dに周状に開口する凹部の一例である。つまり、本例では、内側電極板36iの外周の面36i1に周状に溝37b4を設けて、1本のガス流路37b2から溝37b4に円周にガスを広げて、隙間Dにガスを供給する構成となっている。ただし、溝37b4は周状でなくてもよい。例えば、複数の扇形の溝37b4を周状で等間隔に設け、各溝37b4にそれぞれガス流路37b2を連通させて、各ガス流路37b2から各溝37b4にガスを広げて、隙間Dにガスを供給する構成としてもよい。
【0045】
図3に示すいずれの構成においても、基板Wの処理中に隙間Dにガスを流すことで隙間DにデポRが付着することを抑制でき、且つ隙間Dに付着したデポRを除去できる。これにより、クリーニング工程等の特別なステップを必要とせずに隙間DのデポRを除去することができ、この結果、クリーニング工程等の特別なステップを実行する場合よりもスループットを向上させることができる。
【0046】
[プラズマ処理方法]
次に、一実施形態に係るプラズマ処理方法の一例について、図4を参照しながら説明する。図4は、一実施形態に係るプラズマ処理方法の一例を示すフローチャートである。図4のプラズマ処理方法は、制御部100により制御される。
【0047】
図4のプラズマ処理方法では、まず、制御部100は、基板Wを処理容器10内に搬入し、載置台16に載置して基板Wを準備する(ステップS1)。次に、制御部100は、第1のガス流路37a及び第2のガス流路37bからガスを供給する(ステップS3)。次に、制御部100は、高周波電力を印加する(ステップS5)。そして、制御部100は、その印加時間の累積値を算出する(ステップS5)。次に、制御部100は、第1の可変電源71から内側電極板36iに直流電圧を印加し、第2の可変電源72から外側電極板36oに直流電圧を印加する(ステップS7)。
【0048】
次に、制御部100は、高周波電力によりガスから生成したプラズマにより基板Wをエッチングする(ステップS9)。次に、制御部100は、処理済の基板Wを搬出する(ステップS11)。
【0049】
次に、制御部100は、次の基板があるかを判定する(ステップS13)。制御部100は、次の基板があると判定すると、ステップS1に戻り、次の未処理の基板Wを準備し、次の基板Wにプラズマ処理を実行し、搬出する(ステップS1~S11)。ステップS13において、制御部100は、次の基板がないと判定すると、本処理を終了する。なお、本処理の終了時には、高周波電力の印加とガスの供給とを停止する。
【0050】
以上に説明したように、一実施形態のプラズマ処理装置1及びプラズマ処理方法によれば、プラズマ処理装置に設けられた部材間の隙間に反応生成物が付着することを抑制することができる。
【0051】
今回開示された一実施形態に係るプラズマ処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0052】
例えば、上記実施形態及び変形例では、内側電極板36i及び外側電極板36oの隙間Dにデポが付着することを抑制する例を挙げたが、本発明を適用できる隙間Dはこれに限られない。本発明は、例えば内側電極板36iと遮蔽部材39との間の隙間、外側電極板36oと遮蔽部材39との間の隙間、外側電極板36oと遮蔽部材42との間の隙間等、プラズマ処理装置1の処理容器内部の部材間の隙間に適用できる。
【0053】
本開示のプラズマ処理装置は、Atomic Layer Deposition(ALD)装置、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のいずれのタイプの装置でも適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 プラズマ処理装置
10 処理容器
16 載置台
34 上部電極
36 電極板
36i 内側電極板
36o 外側電極板
37、37a1、37b1、37b2、37b3 ガス流路
37a 第1のガス流路
37b 第2のガス流路
37b4 溝
38 電極支持体
38i 内側電極支持体
38o 外側電極支持体
39、42 遮蔽部材
40a、40b ガス拡散室
41a、41b ガス通流孔
54 処理ガス供給源
61 第1の高周波電源
64 第2の高周波電源
71 第1の可変電源
72 第2の可変電源
73 第3の可変電源
100 制御部
D 隙間
W 基板
図1
図2
図3
図4