(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】カウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造
(51)【国際特許分類】
B60J 1/02 20060101AFI20231106BHJP
B60J 10/70 20160101ALI20231106BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20231106BHJP
B62D 31/02 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
B60J1/02 111N
B60J10/70
B62D25/08 H
B62D31/02 B
(21)【出願番号】P 2019514457
(86)(22)【出願日】2018-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2018016273
(87)【国際公開番号】W WO2018198959
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-02-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2017090201
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】大木 英二
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴文
(72)【発明者】
【氏名】川原 孝志
(72)【発明者】
【氏名】島田 孝司
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】八木 誠
【審判官】中村 則夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/181960(WO,A1)
【文献】特表2003-532574(JP,A)
【文献】特開平11-300773(JP,A)
【文献】特開2009-250079(JP,A)
【文献】特開2006-161903(JP,A)
【文献】特開2015-51653(JP,A)
【文献】特開2015-157528(JP,A)
【文献】特開2017-30542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/02, 10/70
B62D25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外側に配置される第1ガラス板と、車内側に配置される第2ガラス板と、前記第1ガラス板および前記第2ガラス板を接合する中間膜と、を有する合わせガラスと、
前記合わせガラスの下縁部に配設されるモールと、を有し、
前記モールは、前記第2ガラス板の車内側面に上面が接着される第1モール部と、前記第1モール部から上方に向けて前記合わせガラスの下縁部の端面に沿うように延設された第2モール部と、前記第2モール部から車体の前方に向けて延設された第3モール部と、を有し、
前記第3モール部の上面は、前記第1ガラス板の車外側面の延長面に対して下方に位置している、モール付きウインドシールドと、
前記第3モール部に嵌合される縦断面がU字形状の後端部を有するカウルルーバと、を有する、カウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造であって、
前記第3モール部は、前記第3モール部の前方の車内面側の端面の断面形状が曲面形状であ
る、カウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造。
【請求項2】
前記第3モール部は、前記合わせガラスの下縁部の端面に沿うように配置され、前記モールよりも軟質な第1スペーサを有し、
前記第1スペーサは、上面が前記第1ガラス板の車外側面と同一面上に形成される、請求項1に記載のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造。
【請求項3】
前記第1モール部は、その下面に、前記車体に当接される第2スペーサであって、前記モールよりも軟質な前記第2スペーサを有する、請求項1又は2に記載のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造。
【請求項4】
前記第2モール部と、前記合わせガラスの下縁部の端面との間には隙間がある、請求項1から3のいずれか1項に記載のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造。
【請求項5】
前記第3モール部は、上面又は下面に被係合部が形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造。
【請求項6】
前記第3モール部は、上面及び下面に被係合部が形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造。
【請求項7】
前記カウルルーバの前記後端部は、上面が前記合わせガラスの第1ガラス板の車外側面の延長面と同一面上に形成される、請求項1から6のいずれか1項に記載のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造。
【請求項8】
前記カウルルーバの前記後端部は、上面が前記合わせガラスの第1ガラス板の車外側面の延長面と同一面上に形成され、
前記第1スペーサは、前記カウルルーバの後端部と前記合わせガラスとの間に介在する、請求項2に記載のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造。
【請求項9】
前記カウルルーバの前記後端部は、上面が前記合わせガラスの第1ガラス板の車外側面の延長面と同一面上に形成され、
前記カウルルーバの前記後端部には、係合部が形成されており、前記係合部は、前記第3モール部の前記被係合部と係合されている、請求項5又は6に記載のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モール付きウインドシールドおよびカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車のフロントガラス(ウインドシールド)の下縁部を挟持するカウルルーバが開示されている。このカウルルーバは、カウルルーバのフロントガラス側の縁部(後端部)に、挟持縁部と挟持片とからなる断面略コ字状の挟持部が形成されている。また、カウルルーバは、硬質合成樹脂材からなる本体側内層を有している。
【0003】
特許文献1のカウルルーバをフロントガラスに連接する連接作業について説明する。フロントガラスは、カウルルーバの連接作業に先立って車体の窓枠に予め取り付けられており、このフロントガラスの下縁部に、カウルルーバの挟持部を接近させる。次に、カウルルーバの挟持片の上面をフロントガラスの下側縁に当接させ、挟持縁部と挟持片との間でフロントガラスを挟持するようにカウルルーバを上方に移動する。この連接作業により、挟持片が挟持縁部に対し弾性変形されて、挟持縁部と支持部との間にフロントガラスの下縁部が挟持される。これによって、カウルルーバがフロントガラスに連接される。
【0004】
なお、本明細書にて説明する上下とは車体の上下方向を指し、前後とは車体の前後方向を指す。また、ウインドシールドの下縁部にモールが組み付けられたものをモール付きウインドシールドと称し、そのモールを介してカウルルーバがウインドシールドに連接された構造をカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造と称する。ウインドシールドは、少なくとも2枚のガラス板をポリビニルブチラール(PVB(Polyvinyl butyral))又はエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA(Ethylene-Vinyl Acetate))等の中間膜を介して接合された合わせガラスによって構成されている。
【0005】
特許文献2には、ウインドウガラス(ウインドシールド)の下縁部とウォータタンク(カウルルーバ)とが、側方部材(モール)を介して連接されたカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造が開示されている。また、特許文献2のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造は、カウルルーバの上面が、ウインドシールドの車外側面に対して同一面上に配置されている。
【0006】
特許文献2の側方部材は、第1および第2の部分を有している。第1の部分は、ウインドシールドに固定される固定面を備えており、この固定面は、両面テープを介してウインドシールドの車内側面に接着される。第2の部分は、カウルルーバを着脱できる係合凹部を備えている。
【0007】
特許文献2のカウルルーバは、カウルルーバの下面に突起部を備えており、この突起部は、側方部材の係合凹部に係合あるいは嵌合される。更に、側方部材の係合凹部は、ほぼL字状、U字状又はかぎ爪状のバネ状脚部と、第1の部分と第2の部分の間に形成された突起部とによって画成されている。また、バネ状脚部の自由端と突起部とによって、カウルルーバの突起部を嵌合させる係合開口部が形成されている。更に、カウルルーバの突起部の断面は、くさび状および/又はT字状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平5-97061号公報
【文献】特表2011-520694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、2に開示されたモール付きウインドシールドおよびカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造は、以下の問題がある。
【0010】
〔異音、ガラス割れの問題〕
特許文献1の構造は、モールを備えていない。このため、カウルルーバの硬質な挟持部とウインドシールドの下縁部との間に異物(砂等の粒状異物)が侵入した場合、車体の走行中に異音(ウインドシールドと異物との擦れ音)が発生するという問題があった。また、ウインドシールドの下縁部との間に異物が侵入すると、走行中の振動などにより、異物がウインドシールドと擦れてウインドシールドの表面に傷が発生する可能性がある。ウインドシールドの表面に傷が発生すると、傷を起点にガラスが割れる恐れがあるという問題があった。
【0011】
〔連接作業性の問題〕
特許文献2の構造は、カウルルーバをウインドシールドに容易に連接することができないという問題があった。
【0012】
すなわち、カウルルーバをウインドシールドに連接する連接作業は、特許文献1の如く、車体の窓枠にウインドシールドを予め取り付けた状態で行うことが一般的である。特許文献2は、作業者がウインドシールドの下縁部に沿って移動しながら、カウルルーバの突起部を、モールの係合凹部に順次係合させていく作業を行う必要があり、作業者の移動の際に車体が邪魔になるので、連接作業性が悪いという問題があった。
【0013】
〔ワイパー停止位置の問題〕
近年、歩行者等が自動車と衝突し、歩行者の頭部等がウインドシールドの下端縁部近傍に当たった場合でも、ワイパーに歩行者の頭部等が当たり難くなるよう、ワイパーの停止位置をよりウインドシールドの下端縁部側に設定することが望まれている。しかし、特許文献1は、ウインドシールドの下縁部とカウルルーバの後端部との連接部が、ウインドシールドの車外側面から車外方向に隆起しているため、ワイパーの停止位置をよりウインドシールド下端縁部側に設定することができないという問題があった。
【0014】
〔モールとカウルルーバの製造精度の問題〕
特許文献2の構造は、カウルルーバの突起部とモールの係合凹部とが非常に複雑な形状であるが、モールとカウルルーバは寸法精度の出し難い樹脂成型によって製造されるものである。このため特許文献2は、複雑形状のカウルルーバとモールを精度よく製造することが困難なので、カウルルーバをモールに精度よく連接することが難しいという問題があった。
【0015】
このように従来から、異物に起因する異音、ガラス割れの問題と、カウルルーバをウインドシールド側に連接する連接作業性の問題とを同時に解消することができる、新規なモール付きウインドシールドが望まれていた。
【0016】
また、同様に従来から、上記問題の他、ワイパー停止位置の問題と、モールとカウルルーバの製造精度の問題とを同時に解消することができる、新規なカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造が望まれていた。
【0017】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、異物に起因する異音、ガラス割れの問題と、カウルルーバをウインドシールド側に連接する連接作業性の問題とを同時に解消することができる新規なモール付きウインドシールド、およびワイパー停止位置の問題と、モールとカウルルーバの製造精度の問題とを同時に解消することができる新規なカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のモール付きウインドシールドは、車外側に配置される第1ガラス板と、車内側に配置される第2ガラス板と、第1ガラス板および第2ガラス板を接合する中間膜と、を有する合わせガラスと、合わせガラスの下縁部に配設されるモールと、を有するモール付きウインドシールドであって、モールは、第2ガラス板の車内側面に上面が接着される第1モール部と、第1モール部から上方に向けて合わせガラスの下縁部の端面に沿うように延設された第2モール部と、第2モール部から車体の前方に向けて延設された第3モール部と、を有し、第3モール部の上面は、第1ガラス板の車外側面の延長面に対して下方に位置している。
【0019】
本発明の一形態は、第3モール部は、合わせガラスの下縁部の端面に沿うように配置され、かつ車外側へ突出した凸状の第1スペーサであって、モールよりも軟質な第1スペーサを有し、第1スペーサは、上面が第1ガラス板の車外側面と同一面上に形成されることが好ましい。
【0020】
本発明の一形態は、第3モール部は、第3モール部の下部の車内面側の端面の断面形状が曲面形状であることが好ましい。
【0021】
本発明の一形態は、第1モール部は、その下面に車体に当接される第2スペーサであって、モールよりも軟質な第2スペーサを有することが好ましい。
【0022】
本発明の一形態は、第3モール部は、上面又は下面に被係合部が形成されていることが好ましい。
【0023】
本発明のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造は、本発明のモール付きウインドシールドと、モール付きウインドシールドのモールの第3モール部に嵌合される縦断面がU字形状の後端部を有するカウルルーバと、を含み、カウルルーバの後端部は、上面が合わせガラスの第1ガラス板の車外側面の延長面と同一面上に形成される。
【0024】
本発明のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造は、本発明のモール付きウインドシールドと、モール付きウインドシールドのモールの第3モール部に嵌合される縦断面がU字形状の後端部を有するカウルルーバと、を含み、カウルルーバの後端部は、上面が合わせガラスの第1ガラス板の車外側面の延長面と同一面上に形成され、第1スペーサは、カウルルーバの後端部と合わせガラスとの間に介在する。
【0025】
本発明のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造は、本発明のモール付きウインドシールドと、モール付きウインドシールドのモールの第3モール部に嵌合される縦断面がU字形状の後端部を有するカウルルーバと、を含み、カウルルーバの後端部は、上面が合わせガラスの第1ガラス板の車外側面の延長面と同一面上に形成され、カウルルーバの後端部には、係合部が形成されており、係合部は、モールの第3モール部の被係合部と係合されている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、異物に起因する異音、ガラス割れの問題と、カウルルーバをウインドシールド側に連接する連接作業性の問題とを同時に解消することができる新規なモール付きウインドシールドを提供することができる。また、本発明のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造によれば、異物に起因する異音、ガラス割れの問題と、カウルルーバをウインドシールド側に連接する連接作業性の問題と、ワイパー停止位置の問題と、カウルルーバとモールの製造精度の問題とを同時に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態のモール付きウインドシールドの説明図
【
図2】第1実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造の説明図
【
図3】
図2のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造の縦断面図
【
図4】第2実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造の説明図
【
図5】第3実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造の要部縦断面図
【
図6】第4実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造の要部縦断面図
【
図7】第5実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造の要部縦断面図
【
図8】第6実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造の要部縦断面図
【
図9】第7実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造の要部縦断面図
【
図10】第8実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造の要部縦断面図
【
図11】第9実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造の要部縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面1~11に従って本発明に係るモール付きウインドシールドおよびカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造の好ましい実施形態について説明する。なお、以下の図面において、同一又は類似する部材については、同一の符号を付して説明し、重複する場合にはその説明を省略する場合もある。
【0029】
図1(A)は、ウインドシールド12にモール14を組み付ける前のウインドシールド12とモール14とを示した斜視図であり、
図1(B)はウインドシールド12にモール14を組み付けた状態のモール付きウインドシールド10の斜視図である。
【0030】
図2(A)は、モール付きウインドシールド10にカウルルーバ18を連接する前のモール付きウインドシールド10とカウルルーバ18とを示した斜視図であり、
図2(B)はモール付きウインドシールド10にカウルルーバ18を連接した状態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造20の斜視図である。
【0031】
図3は、
図2(B)のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造20の3-3線に沿う縦断面図である。
【0032】
なお、図面1~11において、矢印U(up)は車体(
図7以外不図示)の上方を示し、矢印D(down)は車体の下方を示し、矢印F(forward)は車体の前方を示し、矢印B(backward)は車体の後方を示している。また、ウインドシールド12の「面」に関し、「車外側面」と称した場合には車体の外側に面する面を指し、「車内側面」と称した場合には車体の室内側に面する面を指す。また、モール14およびカウルルーバ18の「面」に関しては、「上面」と称した場合には上方に向いた面を指し、「下面」と称した場合には下方に向いた面を指す。
【0033】
図1から
図3に示すように、モール付きウインドシールド10は、ウインドシールド12と、モール14とを備えている。モール14は、ウインドシールド12の下縁部12Aの車内側面に両面接着テープ16を介して組み付けられる。これにより、モール付きウインドシールド10が、
図1(B)の如く構成される。モール14とウインドシールド12とは、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系などの公知の接着剤によって接着されてもよい。
【0034】
カウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造20は、モール付きウインドシールド10と、カウルルーバ18とを備える。カウルルーバ18は、モール付きウインドシールド10のモール14に連接される。これにより、カウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造20が、
図2(B)の如く構成される。
【0035】
ウインドシールド12は、車体の前方側の窓枠(不図示)に取り付けられるフロントガラスであり、合わせガラスによって構成されている。すなわち、ウインドシールド12は、
図3の如く、2枚のガラス板(第1ガラス板、第2ガラス板)22、24をPVB又はEVA等の中間膜26を介して接合することにより構成されている。
【0036】
図2および
図3の如く、モール14は、ウインドシールド12の下縁部12Aにカウルルーバ18の後端部18Aを連接する連接部材として機能する。モール14は樹脂製であり、ウインドシールド12の下縁部12Aに沿った長手軸を有する。モール14は、モール14の長手軸方向において同一形状のものであれば押し出し成型によって製造されるが、製造方法は押し出し成型に限定されるものではなく、射出成型によって製造してもよい。モール14の材質としては、軽量で耐候性のある熱可塑性エラストマー(TPE)を例示することができる。また、モール14は剛性を有しており、モール14の硬度(JISK6253デュロメータ・タイプA硬度(以下「硬度」という))としては、例えば90度以上100度以下であることが好ましい。モール14の硬度が90度以上であれば、モール14自体に剛性を備えさせることができる。
【0037】
図3の如くモール14は、第1モール部30、第2モール部32および第3モール部34から構成され、縦断面がクランク状の形状をなしている。なお、モール14の縦断面の形状はクランク状に限定されるものではない。また、モール14には、芯金15が埋設されている。この芯金15は、板状体であり縦断面の形状がモール14に合わせてクランク状に構成されている。この芯金15によってモール14は補強され、かつモール14の形状が保持されている。
【0038】
第1モール部30は、第1モール部30の上面30Aが、ウインドシールド12の下縁部12Aにおいて、ガラス板24の車内側面24Aに両面接着テープ16によって接着される。なお、第1モール部30は、縦断面が矩形状であるが矩形状に限定されるものではない。また、第1モール部30の上面30Aは、ガラス板24の車内側面24Aにアクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系などの公知の接着剤によって接着されてもよい。
【0039】
第2モール部32は、第1モール部30から上方に向けてウインドシールドの下縁部12Aの端面12Bに沿うように延設されることにより構成される。なお、端面12Bとは、ガラス板22、24および中間膜26の下端面を指す。第2モール部32は、端面12Bとの間に隙間がある(端面12Bとは接していない)ことが好ましい。第2モール部32と端面12Bとが接している場合、ガラス板22、24の外形寸法がバラつくと、モール14のウインドシールドへの取り付け位置もバラついてしまう。モール14のウインドシールドへの取り付け位置がバラつくと、モール14とカウルルーバ18との連接が所望の位置で出来なくなるという懸念がある。しかし、第2モール部32と端面12Bとの間に隙間があると、ガラス板22、24の外形寸法がバラついたとしても、第2モール部32と端面12Bとの間の隙間があることで、ガラス板22、24の外形寸法のバラつきを吸収することができる。第2モール部32と端面12Bとの間の隙間は、1.0mm以上3.0mm以下であればガラス板22、24の外形寸法のバラつきを吸収することができる。
【0040】
第3モール部34は、その上面34Aが、第2モール部32から、ガラス板22の車外側面22Aの二点鎖線で示す延長面22Bに略平行に沿うように、つまり、車体の前方に向けて延設されることによって構成される。また、第3モール部34は、カウルルーバ18の断面U字形状の後端部18Aに嵌合されるように、縦断面が矩形状に形成されている。更に、第3モール部34の上面34Aは、ガラス板22の車外側面22Aの延長面22Bに対して下方に位置されている。
【0041】
図1から
図3に示すカウルルーバ18は、例えばポリプロピレン製の射出成形品からなる板材部材である。
図3の如く、カウルルーバ18の後端部18Aは、挟持縁部36と挟持片38とによって構成され、縦断面がU字状の形状をなしている。挟持縁部36と挟持片38との間の隙間に第3モール部34を嵌入させることにより、カウルルーバ18の後端部18Aが第3モール部34に連接される。また、カウルルーバ18の後端部18Aが第3モール部34に連接されると、挟持縁部36の上面36Aがガラス板22の車外側面22Aとほぼ同一面上に配置される。
【0042】
次に、上記の如く構成された第1実施形態のモール付きウインドシールド10およびカウルルーバ18とモール付きウインドシールド10との連接構造の利点について説明する。
【0043】
〔異音、ガラス割れについて〕
第1実施形態の連接構造では、ウインドシールド12の下縁部12Aにカウルルーバ18の後端部18Aがモール14を介して連接される。すなわち、ウインドシールド12の下縁部12Aにカウルルーバ18の後端部18Aが直接連接されておらず、軟質の第3モール部34にカウルルーバ18の後端部18Aが連接されている。
【0044】
これにより、第3モール部34とカウルルーバ18の後端部18Aとの間に異物が侵入した場合でも、第3モール部34が異物を包み込むように弾性変形することで第3モール部34が緩衝材として機能する。よって、第1実施形態の連接構造によれば、異物侵入に起因する車両走行時の異音を低減することができるので、特許文献1が有する異音の問題を解消することができる。さらに、異物が侵入した場合でも、異物がカウルルーバ18の後端部18Aとガラスとの間に介在することはないため、異物に起因するガラス表面への傷が発生せず、ガラスが割れるという問題を解消することができる。
【0045】
〔連接作業性について〕
モール付きウインドシールド10にカウルルーバ18を連接する作業は、
図2(A)の如く、カウルルーバ18の後端部18Aを、モール14の第3モール部34に接近させた後、カウルルーバ18の挟持縁部36と挟持片38との間で第3モール部34を挟持するようにカウルルーバ18を上方向(U方向)に押し上げる。これにより、
図3の如く、挟持縁部36と挟持片38との間の隙間に第3モール部34が嵌入されて、カウルルーバ18がモール付きウインドシールド10に連接される。
【0046】
すなわち、第1実施形態の連接構造によれば、モール付きウインドシールド10に対し、カウルルーバ18を上方向に押し上げるだけでカウルルーバ18をモール付きウインドシールド10に連接することができるので、特許文献2が有する連接作業性の問題を解消することができる。
【0047】
〔ワイパー停止位置の問題〕
カウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造20は、カウルルーバ18の上面である挟持縁部36の上面36Aが、ウインドシールド12のガラス板22の車外側面22Aと同一面上に配置されている。これにより、ワイパーの停止位置をよりウインドシールド12の下端縁部側に設定することができる。よって、第1実施形態の連接構造20によれば、特許文献1が有するワイパー停止位置の問題を解消することができる。
【0048】
〔モールとカウルルーバの製造精度の問題〕
カウルルーバ18の後端部18Aが嵌合する第3モール部34は、縦断面が矩形状であり、また、カウルルーバ18の後端部18Aの縦断面はU字形状である。すなわち、第3モール部34および後端部18Aの形状は、特許文献2と比較して単純な形状である。
【0049】
特許文献2は、カウルルーバの突起部とモールの係合凹部が非常に複雑な形状であるが故に、突起部と係合凹部を精度よく製造することが困難である。これにより、特許文献2は、突起部と係合凹部の製造精度に影響されてカウルルーバをモールに精度よく連接することが困難な場合が多い。
【0050】
これに対して、第1実施形態の連接構造では、縦断面が矩形状の第3モール部34に、縦断面がU字状の後端部18Aを嵌合させるだけでよいので、モール14に対するカウルルーバ18の連接位置を容易に微調整することができる。これにより、第3モール部34および後端部18Aの製造精度に影響されることなく、カウルルーバ18をモール14に精度よく連接することができる。よって、第1実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造20によれば、特許文献2の有するモールとカウルルーバの製造精度の問題を解消することができる。
【0051】
以上の如く、第1実施形態のモール付きウインドシールド10によれば、異物に起因する異音、ガラス割れの問題と、カウルルーバ18をウインドシールド12側に連接する連接作業性の問題とを同時に解消することができる。
【0052】
また、第1実施形態の連接構造によれば、上記問題の他、ワイパー停止位置の問題と、モール14とカウルルーバ18の製造精度の問題とを同時に解消することができる。
【0053】
図4に示す第2実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造40を説明するに当たり、
図2~
図3におけるものと同一若しくは類似の部材については同一の符号を付して説明は省略する。
【0054】
図4の連接構造40と
図2および
図3の連接構造20とは、カウルルーバ18の後端部18Aの構成が相違し、他の構成は同一である。
【0055】
図4のカウルルーバ18の後端部18Aは、挟持縁部36と、カウルルーバ18の下面18Bに形成された複数のL字状の挟持片42とから構成されている。挟持片42は、カウルルーバ18の後端部18Aに沿って一定間隔で形成されている。これにより、各挟持片42が存在する後端部18Aは、各挟持片42と挟持縁部36とによって縦断面がU字状の形状をなしている。
【0056】
このような挟持片42を有するカウルルーバ18であっても、
図2~
図3に示したカウルルーバ18と同様に、モール付きウインドシールド10に対し、カウルルーバ18を上方向に押し上げるだけでカウルルーバ18をモール付きウインドシールド10に連接することができる。よって、第2実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造40の連接構造によれば、特許文献2が有する連接作業性の問題を解消することができる。
【0057】
図5に示す第3実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造50を説明するに当たり、
図2から
図4におけるものと同一若しくは類似の部材については同一の符号を付して説明は省略する。
【0058】
図5の連接構造50と
図2から
図4連接構造20、40とは、モール14の第3モール部34の構成が相違し、他の構成は同一である。
【0059】
連接構造50の第3モール部34は、第1スペーサ52を備えている。第1スペーサ52は、第3モール部34の上面34Aから、ウインドシールド12の下縁部12Aの端面12Bに沿うように配置され、かつ車外側へ突出した凸状のスペーサである。この第1スペーサ52は、カウルルーバ18の後端部18Aの端面18Cとウインドシールド12の下縁部12Aの端面12Bとの間に介在される。第1スペーサ52は、モール14よりも軟質な材質であり、上面52Aがガラス板22の車外側面22Aと同一面上に形成されている。また、第1スペーサ52は二色成型により第3モール部34と一体に形成されてもよいが、公知のその他の方法で形成されてもよい。また、第1スペーサ52を第3モール部34の上面34Aに接着剤等で接着させてもよい。第1スペーサ52の材質として、例えば硬度が60度以上70度以下の軟質のTPEが挙げられる。
【0060】
軟質の第1スペーサ52を第3モール部34に備えることにより、ウインドシールド12の端面12Bとカウルルーバ18の端面18Cとの間の隙間を第1スペーサ52によって封止することができる。これにより、雨水等の液体がウインドシールド12の端面12Bに付着することを防止することができるので、液体から中間膜26を保護することができる。
【0061】
図6に示す第4実施形態は、モール14にカウルルーバ18を連接する直前状態が示されている。
図6のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造60を説明するに当たり、
図5で示した連接構造50と同一若しくは類似の部材については同一の符号を付して説明は省略する。
【0062】
図6の連接構造50と
図5の連接構造50とは、第3モール部34の下部の端面の形状が相違し、他の構成は同一である。すなわち、第3モール部34は、下部の車内側面の端面34Bの形状が、
図6の縦断面において曲面形状に形成されている。
【0063】
カウルルーバ18を第3モール部34に連接する際に、挟持片38、42の上面38A、42Aを第3モール部34の端面34Bに当接させ、カウルルーバ18を上方向に押し上げると、カウルルーバ18は、曲面形状の端面34Bにガイドされて円滑に上方向に押し上げられる。これにより、第4実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造60の連接構造によれば、カウルルーバ18をモール14に円滑に連接することができる。なお、
図6では、第3モール部34の下部の車内側面の端面34Bを曲面形状としたが、これに限定されるものではなく、第3モール部34の下部の端面全体を曲面形状としてもよい。
【0064】
図7に示す第5実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造70を説明するに当たり、
図6で示した連接構造60と同一若しくは類似の部材については同一の符号を付して説明は省略する。
【0065】
図7の連接構造70と
図6の連接構造60とは、モール14の第1モール部30の構成が相違し、他の構成は同一である。
【0066】
カウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造70の第1モール部30は、第2スペーサ72を備えている。第2スペーサ72は、第1モール部30の下面30Bから下方に向けて備えられ、車体74に当接されることにより、車体74とカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造70との間隔を保持する機能を有する。
【0067】
また、第2スペーサ72は、モール14よりも軟質な材質であり、二色成型により第1モール部30と一体に形成されてもよいが、公知のその他の方法で形成されてもよい。また、第2スペーサ72を第1モール部30の下面30Bに接着剤等で接着させてもよい。第2スペーサ72の材質として、例えば硬度が60度以上70度以下の軟質のTPEが挙げられる。これにより、第4実施形態の連接構造70によれば、適度な柔軟性を有する第2スペーサ72を介して車体74に支持され、車体74からカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造70に伝達する振動を第2スペーサ72によって適度に吸収することができる。
【0068】
図8に示す第6実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造80を説明するに当たり、
図7で示した連接構造70と同一若しくは類似の部材については同一の符号を付して説明は省略する。
【0069】
図8の連接構造80と
図7の連接構造70とは、モール14の第3モール部34の構成とカウルルーバ18の後端部18Aの構成が相違し、他の構成は同一である。
【0070】
連接構造80の第3モール部34は、上面34Aおよび下面34Cに被係合部である凹部82、84が形成されている。また、カウルルーバ18の後端部18Aには、凹部82に係合される係合部である凸部86が挟持縁部36に形成され、凹部84に係合される係合部である凸部88が挟持片38、426に形成されている。これにより、モール14に対するカウルルーバ18の係合力を高めることができる。
【0071】
なお、
図8の例では、第3モール部34に二つの凹部82、84を形成したが、凹部82又は凹部84の一方を備えていればよい。同様に後端部18Aに備えられる凸部86、88も凸部86又は凸部88の一方を備えていればよい。
【0072】
本実施形態の連接構造において、第3モール部34に対するカウルルーバ18の後端部18Aの差し込み量にウインドシールド12の左右で差が生じないよう、第3モール部34とカウルルーバ18の後端部18Aとの位置関係を一定とする構造を備えることが好ましい。
【0073】
図9に示す第7実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造90は、
図5に示した連接構造50に対し、第3モール部34に、カウルルーバ18の挟持片38の前端面38Bに係合する爪34Dを延設している。この爪34Dは第3モール部34の長手方向の全域に形成してよく、間欠的に形成してもよい。爪34Dを挟持片38の前端面38Bに係合させることにより、第3モール部34とカウルルーバ18の後端部18Aとの位置関係をより一定にすることができる。
【0074】
また、このような位置関係を一定する連接構造として、
図10に示す第8実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造100の如く、第3モール部34に、挟持片38の下面38Cを包囲する延設部34Eを形成し、かつ、延設部34Eに貫通孔34Fを形成し、そして、挟持片38の下面38Cに、貫通孔34Fに係合する凸部38Dを形成してもよい。貫通孔34Fに凸部38Dを係合させることにより、第3モール部34とカウルルーバ18の後端部18Aとの位置関係をより一定にすることができる。
【0075】
また、
図11に示す第9実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造110の如く、第3モール部34に爪34Gを形成し、そして、挟持片38の基部38Eに、爪34Gが貫通する貫通孔38Fを形成してもよい。貫通孔38Fに爪34Gを貫通させて、爪34Gを挟持片38の前端面38Bに係合させることにより、第3モール部34とカウルルーバ18の後端部18Aとの位置関係をより一定にすることができる。爪部34Gは、第3モール部34の長手方向のうち少なくとも両側に形成され、貫通孔38Fも同様に、カウルルーバ18の長手方向のうち少なくとも両側に形成されている。
なお、2017年4月28日に出願された日本特許出願2017-90201号の明細書、特許請求の範囲、要約書および図面の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0076】
10…モール付きウインドシールド、12…ウインドシールド、12A…下縁部、14…モール、15…芯金、16…両面接着テープ、18…カウルルーバ、18A…後端部、20…第1実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造、22…ガラス板、24…ガラス板、26…中間膜、30…第1モール部、32…第2モール部、34…第3モール部、34A…上面、34B…下縁部、34C…下面、34D…爪、34E…延設部、34F…貫通孔、34G…爪、36…挟持縁部、38…挟持片、38A…上面、38B…前端面、38C…下面、38E…基部、38F…貫通孔、40…第2実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造、42…挟持片、上面…42A、50…第3実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造、52…第1スペーサ、60…第4実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造、70…第5実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造、72…第2スペーサ、74…車体、80…第6実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造、82…凹部、84…凹部、86…凸部、88…凸部、90…第7実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造、100…第8実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造、110…第9実施形態のカウルルーバとモール付きウインドシールドとの連接構造