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特許7378359荷電粒子分析のための生体試料の調製および送達のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】荷電粒子分析のための生体試料の調製および送達のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20231106BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20231106BHJP
   H01J 37/26 20060101ALI20231106BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
G01N23/04
G01N27/62 E
H01J37/26
H01J37/20 F
H01J37/20 C
【請求項の数】 24
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020112089
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2021009145
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】62/868648
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】マルクス,ストロー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー,マカロフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュ,ギルベルト
(72)【発明者】
【氏名】アーロン,トロク
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】アラン,バーム
(72)【発明者】
【氏名】クン,リウ
(72)【発明者】
【氏名】トム,ニコルス
(72)【発明者】
【氏名】ジェフ,コスモスキ
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリー,グリンフェルト
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-504318(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0200457(US,A1)
【文献】特開平11-168126(JP,A)
【文献】特開2016-018621(JP,A)
【文献】特表2019-511726(JP,A)
【文献】特表2009-521788(JP,A)
【文献】特開2003-014642(JP,A)
【文献】特表2016-534508(JP,A)
【文献】特開2001-330571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G01N 27/60 - G01N 27/70
G01N 1/00 - G01N 1/44
H01J 37/00 - H01J 49/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラフィック撮像のためのシステムであって、
イオン化された試料供給から試料イオンを選択するように連結されたイオンフィルタであって、前記試料供給から前記試料イオンを選択するための四極フィルタを含む、イオンフィルタと、
前記選択された試料イオンを受容し、前記試料イオンの運動エネルギーを低減するように連結されたエネルギー低減セルと、
料を受容するように連結された基板であって、電子透過性である、基板と、
前記エネルギー低減セルから前記試料イオンを受容し、前記試料イオンを前記基板へと下流に輸送するように連結されたイオン輸送モジュールと、
前記基板上に位置する前記試料を低エネルギーコヒーレント電子ビームで撮像するように配置された撮像システムであって、前記基板が、分析位置に配置され、前記撮像システムが、
前記低エネルギーコヒーレント電子ビームを前記試料に向かって誘導するように連結されたエミッタと、
前記低エネルギーコヒーレント電子ビームの電子と前記試料との相互作用から形成される干渉縞を検出するように配置された検出器と、を含む、撮像システムと、を含
前記イオン輸送モジュールが、複数の差動ポンプ式ステージを含み、
前記複数の差動ポンプ式ステージのうちの最終差動ポンプ式ステージが、出力上に配置された遅延レンズを含み、前記遅延レンズが、前記試料イオンを前記基板に提供する前に、前記試料イオンの前記運動エネルギーを低減するように連結される、
システム。
【請求項2】
前記基板を保持するように配置された基板ホルダであって、前記基板ホルダを沈着位置から前記分析位置に移動させるためのモータを含む基板ホルダをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記沈着位置から前記分析位置に延在するトラックであって、前記基板ホルダが、前記沈着位置と前記分析位置との間の並進のために前記トラック上に搭載される、トラックをさらに含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記基板ホルダが、前記基板を加熱するための加熱器を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記基板に光学エネルギーを提供するように連結された光学エネルギー源をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
記イオン輸送モジュールが、第1の真空レベルで前記試料イオンを受容し、前記試料イオンを第2の真空レベルで提供し、前記第2の真空レベルが、前記第1の真空レベルよりも高く、前記複数の差動ポンプ式ステージの各差動ポンプ式ステージが、真空レベルを前記第1の真空レベルから前記第2の真空レベルまでそれぞれ増加させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記遅延レンズが、第1および第2のレンズ素子を含み、前記第1のレンズ素子が、前記試料イオンを集束するために前記第2のレンズ素子に対して偏向される、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記基板が、グラフェン、六角形窒化ホウ素、二セレン化モリブデン、および二硫化ハフニウム、または他の2次元材料のうちの1つから形成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記グラフェンが、単層または二層グラフェンシートである、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
試料供給を受容し、前記試料供給をイオン化し、前記イオン化された試料供給を前記イオンフィルタに提供するように連結されたイオナイザをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
少なくとも前記イオンフィルタ、エネルギー低減セル、および検証ユニットが、質量分析器に含まれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記撮像システムを前記イオン輸送モジュールの少なくとも一部から連結および分離するためのゲートバルブをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
振動減衰支持体であって、少なくとも前記撮像システムが、前記振動減衰支持体上に搭載される、振動減衰支持体をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
試料供給をイオン化することと、
前記イオン化された試料供給からの標的試料イオンを四極質量フィルタで濾過することと、
前記標的試料イオンを基板上に沈着することと、
前記基板上の標的試料を荷電粒子で撮像することであって、前記基板が、分析位置に位置し、前記標的試料が、中和された標的試料イオンである、撮像することと、を含
前記標的試料を撮像しながら、後続の試料供給をイオン化し、濾過することをさらに含む、
方法。
【請求項15】
前記標的試料が前記基板上に沈着された後に、前記基板を沈着位置から前記分析位置に並進させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記標的試料イオンを基板上に沈着させることが、前記標的試料を少なくとも前記四極質量フィルタから前記基板に複数の差動ポンプ式ステージを介して輸送することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
試料供給をイオン化することと、
前記イオン化された試料供給からの標的試料イオンを四極質量フィルタで濾過することと、
前記標的試料イオンを基板上に沈着することと、
前記基板上の標的試料を荷電粒子で撮像することであって、前記基板が、分析位置に位置し、前記標的試料が、中和された標的試料イオンである、撮像することと、を含み、
前記標的試料を基板上に沈着させることが、前記基板上に着地する前に前記標的試料イオンの運動エネルギーを低減させるように遅延レンズを偏向させた状態で、前記標的試料イオンを前記基板上にソフトランディングさせることを含む、法。
【請求項18】
前記標的試料イオンを前記基板上に沈着させる前に、前記標的試料イオンを衝突冷却することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
質量測定または部分的な配列決定で前記標的試料イオンを検証することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記標的試料の前記撮像に基づいて前記標的試料の画像を再構築することであって、前記撮像が、干渉縞を形成し、前記再構築が、プロファイル画像を提供する、再構築することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記後続の試料供給を衝突冷却することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記後続の試料供給を検証することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記基板を清掃することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記基板を清掃することが、直接加熱、放射線加熱、および誘導加熱のうちの1つを含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、生体試料調製および分析に関し、より具体的には、タンパク質、DNA、および他の高分子アセンブリの構造および電荷ベースの分析に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質、DNA、またはそれらの複合体などの生体高分子の構造画像化は、現在、特定のサイズ、例えば100kDaを超える試料、および特定の立体構造に限定されており、さらに、それらの電荷状態については、ほとんど判定することができない。例えば、タンパク質は、利用可能な画像化技術のために典型的には結晶化される必要があり、これは、利用可能なタンパク質を制限する(すべてのタンパク質が結晶化するわけではない)。さらに、結晶化は、生物学的背景において、タンパク質を強制的に、例えば、関連していない、天然様ではない、または活性ではない場合がある立体構造にし、これは、それらの画像の有用性を制限または否定する。したがって、現在の技術を使用する研究のために利用可能なタンパク質は、必要に応じて調製することができるタンパク質に限定されるだけでなく、有用な情報を提供する立体構造にあり得るタンパク質に限定される。これらの問題を解決するために多くの試みがなされているが、そのような解決策は、所望の試料型およびサイズにおける柔軟性を提供しない。したがって、タンパク質調製および画像化の進化が望まれる。
【発明の概要】
【0003】
荷電粒子分析のための生体試料の調製および送達のためのシステムおよび方法が本明細書に開示される。例としてのシステムは、少なくとも、イオン化された試料供給から試料イオンを選択するように連結されたイオンフィルタであって、試料供給から試料イオンを選択するための四極フィルタを含むイオンフィルタと、選択された試料イオンを受容し、試料イオンの動態エネルギーを低減するように連結されたエネルギー低減セルと、試料イオンを受容し、試料イオンが標的試料イオンであるかどうかを判定するように連結された検証ユニットと、試料を受容するように連結された基板であって、電子透過性である基板と、イオンフィルタから試料イオンを受容し、試料イオンを基板に輸送するように連結されたイオン輸送モジュールと、基板上に位置する試料を低エネルギー荷電粒子ビームで撮像するように配置された撮像システムであって、基板が、分析位置に配置される、撮像システムと、を含む。撮像システムは、試料に向かってコヒーレント荷電粒子を誘導するように連結された荷電粒子エミッタと、コヒーレント荷電粒子と試料との相互作用から形成される干渉縞を検出するように配置された検出器と、を含む。
【0004】
例としての方法は、少なくとも、試料供給をイオン化することと、イオン化された試料供給からの標的試料イオンを四極質量フィルタで濾過することと、標的試料イオンを基板上に沈着させることと、荷電粒子で、分析位置に位置する基板上の標的試料を撮像することと、を含み、標的試料は、イオンされていない標的試料イオンである。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本開示の一実施形態に従う、例としてのモノリシック試料調製および分析システムである。
図2】本開示の一実施形態に従う、例としての電子ホログラフィーシステムである。
図3】本開示の一実施形態に従う、試料沈着および並進配置の例示である。
図4】本開示の一実施形態に従う、例示的な沈着配置である。
図5】本開示の一実施形態に従う、試料を調製および分析するための例としての方法である。
図6】本開示の一実施形態に従う、例としての機能ブロック図である。 同様の参照番号は、図面のいくつかの図を通して対応する部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の実施形態は、試料調製および輸送態様を含む、典型的には低エネルギーで荷電粒子のコヒーレントビームを使用するホログラフィック撮像システムの観点から以下に記載される。試料調製態様は、所望の試料をイオン化し、イオン化された試料を輸送して、撮像のために試料を保持するであろう基板上に沈着させることを含む。しかしながら、本明細書に記載される方法は、一般に、広範囲のホログラフィック構造画像化方法および装置、ならびに試料調製技術に適用可能であることを理解されたい。いくつかの例では、開示される技術は、ホログラフィック技術に限らず、他の荷電粒子が画像化技術を使用する分析用の試料を調製するために使用され得る。
【0007】
本出願および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に別様に示さない限り、複数形を含む。加えて、用語「含む(includes)」は、「含む(comprises)」を意味する。さらに、用語「連結された」は、連結された物品間の中間要素の存在を除外しない。
【0008】
開示される方法のうちのいくつかの動作は、便宜的な提示のために特定の順序で説明されるが、特定の順序が以下に記載される特定の言語によって必要とされない限り、この説明の方法は、再配置を包含することを理解されたい。例えば、連続して記載される動作は、場合によっては、同時に再配置または実行され得る。さらに、簡略化のために、添付の図は、開示されるシステム、方法、および装置が他のシステム、方法、および装置と併せて使用され得る様々な方法を示さない場合がある。加えて、説明は、開示される方法を説明するために、「生産する」および「提供する」などの用語を使用することがある。これらの用語は、実行される実際の動作の高レベルの抽象化である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実施に応じて変化し、当業者によって容易に識別されるであろう。
【0009】
本明細書に記載されるシステム、装置、および方法は、いかなる方法においても限定するものとして解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、単独で、かつ互いに様々な組み合わせおよびサブ組み合わせで、様々な開示された実施形態のすべての新規かつ明らかではない特徴および態様を対象とする。開示されるシステム、方法、および装置は、任意の特定の態様もしくは特徴またはそれらの組み合わせに限定されず、また、開示されるシステム、方法、および装置は、任意の1つ以上の特定の利点が存在すること、または問題が解決されることを必要としない。任意の動作理論は、説明を容易にするためであるが、開示されるシステム、方法、および装置は、そのような動作理論に限定されない。
【0010】
生体内では、タンパク質は、例えば形状、折り畳み、構造などの様々なトポロジカル立体構造をとることによって生物学的機能を促進する。この豊富な構造機能の景観を理解することがプロテオミクスの最終目標である。タンパク質の構造に関する現在入手可能な情報のほとんどは、X線結晶学(XRD)、低温電子顕微鏡(低温EM)、または核磁気共鳴(NMR)イメージングに由来し、これらはすべて、制限を有する。XRDの場合、タンパク質は、まず結晶化を受けなければならない。これにより、この手法は、結晶を形成するタンパク質(すべてが形成するわけではない)、および面倒な部分を削り取ることで結晶化を余儀なくされるタンパク質のみに限定される。さらに、結晶化は、タンパク質を強制的に、生物学的背景において安定していない、または関連していない立体構造にすることができる。一方、低温EMを介した単一粒子分析(SPA)は、数千個の個々の粒子にわたり平均されたデータに依存し、立体構造の差に関連する情報を効果的に遮蔽する。最後に、現在のコントラスト制限により、50~100kDa未満のタンパク質のサイズを撮像することは不可能である。
【0011】
様々な形態の画像化を使用する研究用の生体試料の選択および調製のための事前の解決策が提案されている。一例として、エレクトロスプレーは、タンパク質複合体のイオンの産生のために、試料プレート上での穏やかな沈着のための大気対真空界面およびイオン光学素子を介したタンパク質複合体の輸送と共に提案されている。この例では、特定の質量対電荷比の選択のために、質量選択器を使用することが提案された。しかしながら、この例では、試料プレート上の穏やかな沈着と、電子ホログラフィーシステムなどの撮像システムとの統合については、考察または示唆されなかった。別の例では、選択された複合体の選択後の診断を実行するための質量選択器に加えて、飛行時間検出器の使用が提案される。しかしながら、電子ホログラフィーなどの構造画像化は、基板上に沈着した後に試料をパッケージ化し、撮像システムに手で運ぶことを必要とする完全に別個の器具で実施された。判断することができるように、上記の例は、統合された試料調製および撮像システムの欠如によって制限される。この統合の欠如が本開示の対象である。そのような統合は、圧力レベルの違い、振動カップリング、イオン光学輸送など多くの強力な技術課題により明らかではない。この問題を解決するための長い間の望みは存在してきたが、これまで完全な解決策は知られておらず、本明細書に開示される技術は、開示された問題に対する1つ以上の解決策を提供する。
【0012】
一例では、開示された技術は、個々の天然様のタンパク質またはタンパク質-タンパク質もしくはタンパク質-DNA複合体の選択(質量分析を介して)、および撮像基板、例えば、電子透過性基板上への沈着(ソフトランディングを介して)を伴う。一度沈着すると、タンパク質は、コヒーレントの低エネルギー(例えば、50~250eV)電子で照らされ得る。これらのエネルギーでは、タンパク質および他の生体分子は、長時間の照射でさえ、観察可能な損傷を維持しないことが理解される。電子が試料を通過するにつれて、一部の電子は、散乱されるが、他の電子は、散乱されないままである。次いで、散乱電子および非散乱電子は、供給源から数センチ離れた検出器上で干渉する。次いで、得られた干渉縞、またはホログラムは、1つ以上のコンピュータアルゴリズムの適用を通じて、照射された分子の実画像、例えば、プロファイル、シルエット、背面投影に変換される。いくつかの例では撮像システムがレンズレスであるため、光学収差は、関係なく、達成可能な解像度は、原則として回折制限される。試料サイズ、例えば、タンパク質サイズに関しては、開示される技術では、上記技術で見ることができないより小さな試料を見ることができる。例えば、低温EMと比較して、開示されるホログラフィック手法は、画像が、低温EMのようにノイズまたはコントラストの問題に苦しまないため、小さなタンパク質を撮像することができる。低温EMは、少なくとも一部で、画像化に関与する電子エネルギーに起因するノイズに苦しみ、コントラストの問題は、典型的に必要とされる試料調製に起因する。結晶学に関しては、結晶化しにくいタンパク質は、結晶学によってその構造を判定することが困難であり、該タンパク質は典型的には、より小さいタンパク質または膜/水溶性タンパク質である。したがって、本明細書に開示される解決策は、いくつかは、サイズが50kDa未満であるタンパク質の、それらの天然様の状態での画像を提供することが可能である。
【0013】
開示されるシステムおよび技術は、望ましくはモノリシック(すなわち、すべての機能が連続的な流れを有する単一の器具に含まれる)であるが、考察のために、以下の4つの主要なサブシステムに分割され得る。
【0014】
1.試料調製および検証
【0015】
2.イオン輸送および沈着
【0016】
3.撮像
【0017】
4.再構築
【0018】
以下は、各サブ構成要素について説明する。いくつかの実施形態では、撮像および再構築態様は、試料調製から沈着の態様とモノリシックではない場合があり、それは、様々な画像化技術の使用によって判定され得ることに留意されたい。
【0019】
図1は、本開示の一実施形態に従う、モノリシック試料調製および分析システム100の例である。システム100は、1つ以上の技術を使用して試料を調製、輸送、および分析する。いくつかの実施形態では、試料は、天然様の状態で分析されることが望ましいタンパク質または生体分子である。そのような実施形態では、システム100は、試料をイオン化し、イオン化された試料供給から所望の試料を濾過し、所望の分析技術のために構成された基板上に試料が沈着される分析領域にイオン化された試料を輸送する。本明細書で使用される場合、「試料供給」は、試料混合物を指し、それは、試料混合物を形成するために使用される他の材料と共に所望の試料を含む。いくつかの実施形態では、イオン化された試料は、所望の試料および/または試料の所望の状態が分析のために提供されることを確実にするために、検証技術を受け得る。沈着は、イオン化された試料に対するいかなる損傷も低減または排除するために実行され得る。一般に、システム100は、試料調製および検証に時間がかかる、困難なプロセスである生物材料の研究で使用することを意図し得る。
【0020】
システム100は、試料調製、選択、および検証サブシステム102、試料輸送および沈着サブシステム106、分析サブシステム104、ならびに制御器107を少なくとも含み得る。図示されないが、様々な真空ポンプおよび電源が、サブシステムおよび構成要素のうちの少なくともいくつかに連結され得る。いくつかの実施形態では、3つのサブシステム102、104、および106は、試料導入から撮像/分析までの連続経路を含む試料イオンを撮像するためのモノリシック試料調製および分析システムを形成し得る。しかしながら、他の実施形態では、サブシステム102および106は、後に、任意の所望の手段によって最適な分析ツールに送達され得る、試料イオンを調製し、基板に送達するためのモノリシックシステムを形成し得る。しかしながら、いずれの実施形態でも、試料調製および沈着サブシステムが、任意の最終的な分析結果の品質/妥当性を決定することができる。サブシステムから構成されるシステム100を説明することは、あくまでも考察の目的のためであり、限定することを意図するものではない。また、システム100は、いくつかまたはほとんどの実施形態においてモノリシック構成要素であり、単一の試料調製および分析ツールとして機能することが意図されていることを理解されたい。
【0021】
サブシステム102は、検証され、濾過された試料を提供するために、入力試料供給に様々な機能を実行する。いくつかの実施形態では、試料は、いくつか挙げると、リゾチーム、カルモジュリン、タンパク質A/G、OmpFポリン(大腸菌(1)の外膜タンパク質)、モノクローナル抗体免疫グロブリン(IgG)、C反応性タンパク質(CRP)、ストレプトアビジン、およびヒト血清アルブミンなどのタンパク質である。他の重要な分析対象としては、タンパク質、DNA、RNA、またはそれらの組み合わせ(例えば、天然状態のリボソーム)の非共有複合体、ならびに脂質筏、ミセル、細胞膜の領域などのより複雑な配置が挙げられる。もちろん、試料型の先行リストは、例のために含まれ、本開示に限定するものではない。サブシステム102によって提供される様々な機能は、少なくとも、入力試料供給のイオン化、試料供給からの標的試料型の濾過または選択、および標的試料型が試料供給から選択されたことの検証を含む。例としてのサブシステム102は、Thermo ScientificTM、Q ExactiveTM、またはOrbitrap ExplorisTM質量分析器であってもよい。検証が取得されると、濾過され、イオン化された試料は、試料の全体的な動態エネルギーを低減するために衝突冷却され得、次いで冷却された試料は、サブシステム106に提供される。試料がタンパク質である実施形態では、タンパク質は、サブシステム102によって検証され得る、調製および濾過後に所望の天然様の状態であることが望ましい場合がある。タンパク質またはタンパク質複合体の天然様の状態は、ガス相における立体構造を安定させるために、その周囲の溶媒和層の保存を含み得る。いくつかの実施形態では、沈着したタンパク質またはタンパク質複合体は、溶解またはエネルギー沈着の追加の任意のステップによって検証されたものと異なり得る。もちろん、他の実施形態では、タンパク質は、所望の天然様の状態である必要はなく、試料もタンパク質である必要はない。タンパク質から形成される試料の考察は、システムの例示目的のみのためであり、いかなる方法でも限定することを意図するものではない。
【0022】
サブシステム104は、ユーザによって所望される任意の種類の分析ツールを含み得る。例えば、サブシステム104は、荷電粒子顕微鏡(走査電子、透過電子、走査透過電子、集束イオンビームなど)、撮像システム(ホログラフィック撮像システムなど)、または何らかの種類の力ベースの顕微鏡(例えば、原子力顕微鏡)であってもよい。いくつかの実施形態では、サブシステム104は、天然様の状態で選択されたタンパク質の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を取得するための低温可能電子顕微鏡(低温EM)である。そのような実施形態では、タンパク質は、TEM画像化の前に任意に硝子化を受けてもよい。硝子化は、商業的に使用されるが、天然様の状態の既知のタンパク質の調製および送達は、撮像される試料が所望の種類であることを保証する。溶媒和層、したがってタンパク質の初期溶液中での状態が保存される場合、追加の硝子化は、必要ない場合がある。他の実施形態では、サブシステム104は、選択されたタンパク質の電子干渉画像を提供する直接電子撮像システムである。そのような実施形態では、電子干渉画像、例えばホログラムは、イオン化されたタンパク質の画像および/または再構築を形成するために使用され得る。いくつかの実施形態では、分析サブシステム104は、容積再構築をもたらすスライスアンドビュー分析技術で行われるように、物質を除去し、新たに露出された表面を撮像するために連続的かつ反復的に使用され得る集束イオンビームおよび電子ビームを含む二重ビームシステムであってもよい。また、試料を異なる角度で撮像し、次いで角度特異的データから試料を再構築することによる試料に関するトモグラフィーも可能である。サブシステム104のための他の考えられる分析ツールとしては、フィールド電子顕微鏡およびフィールドイオン顕微鏡が挙げられる。一般に、サブシステム104は、他のサブシステムによって限定されず、サブシステム102および106は、任意の末端分析技術のための試料を選択および沈着するために使用され得る。本開示は、ほとんどの実施例でホログラフィーを使用し得るが、ホログラフィーへのそのような焦点は、限定的であることを意図していない。
【0023】
サブシステム106は、サブシステム102によって提供される濾過され、(任意に)検証された試料のための試料輸送および沈着プロセスを提供する。サブシステム106は、沈着位置で終了する、共に連結される複数の輸送ステージを含み得る。輸送ステージの終端は、試料イオンの速度を低下させるように構成されたイオン光学素子を含んでもよく、それは、試料イオンが損傷なく、または少なくとも最小限の損傷で基板上に沈着されるようにするためである。例えば、いくつかの実施形態では、タンパク質がその後の分析のために天然様の状態のままになるように、タンパク質が変性されることを低減または防止するエネルギーでタンパク質を沈着することが望ましい場合がある。好ましくは、イオンエネルギーは、沈着時に30eV/電荷を超えない、またはより好ましくは10eV/電荷を超えない。
【0024】
複数の輸送ステージの各々は、いくつかの実施形態では、前のステージまたはサブシステムよりも高い異なる真空レベルにあってもよい。しかしながら、真空レベルのこの増加は、最終分析技術によって、さらに、試料型および/または基板/試料の清浄性に対する望みに基づいて決定され得る。基板も、後続の分析技術に基づいた材料から構成され得る。例えば、試料がホログラムの形成のために直接撮像される場合、基板は、それに応じて構成されるであろう。一方で、試料が低温EMで撮像される場合、基板要件は、ホログラフィーに必要とされるものほど厳しくない場合がある。
【0025】
あるいは、またはさらに、基板清掃モジュールは、試料の沈着前または沈着の間などに基板を清掃するためにシステム10に含まれ得る。いくつかの実施形態では、基板清掃モジュールは、サブシステム104に含まれる。他の実施形態では、基板クリーニングモジュールは、例えば、図1の破線領域を参照して、サブシステム104に連結するサブシステム104の部分に含まれる。位置に関係なく、基板清掃モジュールは、いくつか挙げると、直接加熱、放射線加熱、電子系加熱、および誘導加熱など、基板を清掃するために熱を使用する。いくつかの実施形態では、熱は、基板に熱連結された加熱器を使用して提供され得る。他の実施形態では、光源は、赤外線、可視、または紫外線レーザーを使用するなど、基板を加熱するための高強度光学エネルギーを提供する。基板を効果的に清掃するために、基板は、例えば、60~120秒の範囲の期間にわたって発生し得る、先行試料および任意の他の汚染物質を燃焼するのに十分な高温まで少なくとも上昇させる必要がある。温度は、試料型に依存し得るが、50℃~500℃の範囲であり得る。レーザーベースの加熱に関して、約200mWの出力を提供する830nmの波長レーザーを使用して、ほとんどの試料型および汚染物質から基板を清掃することができる。
【0026】
さらに、またはあるいは、システム100のいくつかの実施形態は、サブシステム106を介してサブシステム104に連結されたサブシステム102を有さない場合がある。そのような実施形態では、試料は、例えば、ユーザによってサブシステム106からサブシステム104へ手動で輸送され得る。例えば、イオン化されたタンパク質試料は、基板上に沈着され、次いで、サブシステム106から除去され、サブシステム104に挿入される。いくつかの実施形態では、サブシステム106の基板は、サブシステム104内の分析位置に位置付けられる。そのような実施形態では、試料は、基板上に沈着され、サブシステム104内のその位置で分析する準備が整う。しかしながら、他の実施形態では、基板は、少なくとも部分的にサブシステム106内にある沈着位置からサブシステム104内の分析位置に並進される。例については、図3および4を参照されたい。
【0027】
図示されていないが、サブシステム102~106は、音響、電磁、および/または振動ノイズ源を制限するように、配置される必要がある場合がある。さらに、沈着および分析サブシステムは、ノイズをさらに制限するために検証および輸送態様から隔離される必要がある場合がある。例えば、様々なサブシステムは、減衰構造によって支持され、1つ以上のバッフルを通じて互いに連結されてもよく、これらのすべては、振動ノイズおよび環境ノイズの導入および伝播を制限する。そのようなノイズは、サブシステム102および106にとって問題ではないかもしれないが、サブシステム104は、すべてのサブシステム102~106の振動分離および減衰が所望されるように、ノイズの影響をより受けやすい場合がある。
【0028】
動作中、試料供給がサブシステム102に提供される。固体または液体形態であり得る試料供給は、例えば、他の担体物質および/または不純物と共に標的タンパク質を含み得る。いくつかの実施形態では、試料供給は、既に他の手段により精製されているであろうが、依然として望ましくない不純物を含有し得る。もちろん、事前精製は不要であってもよいが、それは、サブシステム102内での処理時間を短縮し得る。サブシステム102は、いくつかの例を挙げると、電気スプレーイオン化、レーザーイオン化、光子イオン化、または電界イオン化よってなど、濾過の準備のために、最初に試料供給をイオン化し得る。次いで、標的タンパク質を試料供給から抽出するために、濾過が実行され得る。例えば、標的タンパク質は、質量分析器などによって質量対電荷比技術を使用して濾過され得る。いくつかの実施形態では、濾過され、イオン化されたタンパク質を次いで検証して、標的タンパク質が所望のタンパク質であることを確実にすることができる。例えば、イオン化されたタンパク質は、イオン化されたタンパク質の構成を決定するために、断片化を介して簡単、正確で、損傷のない質量測定または配列決定を受け得る。試料の検証は、分析のために残りを保存するために、イオン化されたタンパク質の一部のみを使用してもよい。あるいは、検証は、追加の試料供給が調製される前に実行され得る。別の代替案には、沈着と平行する検証が含まれる。イオン化されたタンパク質が検証されると、イオン化されたタンパク質は、衝突冷却され、次いで、例えば、RF専用マルチポールを使用して基板に輸送される。イオン化されたタンパク質がその天然様の状態、例えば、変性しない状態に保たれることを保証するために、ソフトランディング技術を用いてイオン化されたタンパク質を基板上に沈着させる。基板の種類、例えば、構成および材料の構成は、所望の分析技術に応じて異なり得ることに留意されたい。上述したように、沈着中の基板の位置は、サブシステム106の種類に応じて異なる位置にあってもよい。例えば、基板の位置は、分析位置、沈着位置、またはサブシステム104への送達のための可動容器内にあってもよい。沈着後、所望の分析が、それぞれのサブシステム104内で実行され得る。
【0029】
図2は、本開示の一実施形態に従う、例となる電子ホログラフィーシステム200である。システム200は、調製され、撮像された試料のホログラムが実現されるシステム100の一例である。システム200は、入力試料供給を受容し、標的試料の干渉画像および/または標的試料のホログラフィーに基づく再構築のいずれかを提供するモノリシックツールである。いくつかの実施形態では、標的試料は、タンパク質であり、システム200は、タンパク質を天然様の状態でタンパク質の画像および/または再構築を提供し、これは、タンパク質を撮像基板上に沈着させる間に使用されるソフトランディング技術によって実現される。もちろん、他の試料型も企図され、本開示の輪郭内にある。
【0030】
システム200は、試料調製、濾過、および検証サブシステム202、輸送および沈着サブシステム206、ならびに撮像サブシステム204を含み、これらはすべて、制御器207に結合され、制御される。上述のように、サブシステム202~206は、試料供給からの標的試料を濾過/調製し、標的試料の画像および/または再構築を提供するように協調して動作する。例えば、固体または液体であり得る試料供給は、試料供給からの標的試料を少なくともイオン化し、濾過するサブシステム202に提供される。次いで、標的試料は、基板上への輸送および沈着のためにサブシステム206に提供される。沈着すると、サブシステム204は、標的試料の干渉画像または回折パターンを取得し、それらは、次いで、標的タンパク質の画像を再構築するために使用される。再構築された画像は、制御部207によって生成され得るか、または干渉画像は、再構築のために制御部207を介してクラウドベースのコンピューティングシステムに提供され得る。
【0031】
サブシステム202は、少なくともイオン化モジュール208、フィルタ210、衝突冷却モジュール212、および任意の検証モジュール214を含む。加えて、サブシステム202は、少なくとも衝突冷却モジュール212に低圧環境を提供するためのポンプ228に結合される。ポンプ228は、当該技術分野で既知のような単一または複数のポート真空ポンプのいずれかであり得る。衝突冷却モジュール212は、例えば10-5トールなどの低圧であってもよいが、サブシステム202の他の構成要素は、より高圧であってもよく、および/または大気圧であってもよい。例えば、イオン化モジュール208は、大気圧であり、試料供給がサブシステム202を通して伝播するにつれて、経験される局所圧力は、各処理構成要素と共に減少し得る。一般に、サブシステム202は、提供される試料供給から所望の試料をイオン化し、濾過/選択する。いくつかの実施形態では、検証モジュール214は、標的試料が試料供給から正常に選択されたことを検証するために含まれる。他の実施形態では、検証は、初期試料が分析された後に分析モジュール204を介して生じ得る。実施形態にかかわらず、サブシステム202は、選択された/濾過された、イオン化された試料を減少した動態エネルギーで輸送サブシステム206に提供する。いくつかの実施形態では、サブシステム202は、Q ExactiveTMまたはOrbitrap ExplorisTM(シリーズ)質量分析器であってもよい。もちろん、別個の構成要素または他の質量分析器も同様に使用されてもよく、本明細書において企図される。
【0032】
イオン化モジュール208は、試料供給を受容し、イオン化された試料供給をフィルタ210に提供する。イオン化モジュール208は、既知の任意の種類のイオン化技術を統合し得、任意の特定の技術に限定されない。加えて、用いられるイオン化技術は、試料供給の状態、例えば、それが液体、固体、または気体形態であるかどうかに依存する場合がある。イオン化モジュール208によって実施される例としてのイオン化技術には、ナノまたはマイクロエレクトロスプレーイオン化、脱吸着エレクトロスプレー、電子またはイオンビームイオン化、マトリックス補助レーザー脱吸着イオン化、大気圧化学イオン化、大気圧光イオン化、入口イオン化、レーザー焼灼/エレクトロスプレー、レーザー誘導液体ビーズイオン脱吸着などが含まれる。試料供給のイオン化は、大気圧下または中間または高真空下での連続またはパルスプロセスであってもよい。イオン化プロセスは、局所的に、またはイオン化することができなくても、供給中のすべての物質がイオン化条件の対象となるように、試料供給全体に適用され得る。
【0033】
フィルタ210は、イオン化モジュール208からイオン化された試料供給を受容し、試料供給から標的試料型を濾過、例えば選択する。その後、濾過された試料型は、検証モジュール214(任意に)および/または衝突冷却モジュール212のいずれかに提供され得る。いくつかの実施形態では、濾過された試料は、検証モジュール214に提供される前に衝突冷却モジュール212に提供され得る。フィルタ210は、当該技術分野で既知の任意のイオンフィルタであってもよい。いくつかの実施形態では、フィルタ210は、質量対電荷比濾過を実施し得る。例えば、フィルタ210は、DCとRFとを組み合わせたモードで動作される四極ベースのイオンフィルタであってもよい。そのような実施形態では、フィルタ210は、複数の四極質量フィルタを含み得る。他の実施形態では、飛行時間濾過またはイオン移動性分離技術が実施され得る。
【0034】
衝突冷却モジュール212は、濾過され、イオン化された試料型を受容し、濾過された試料の動態エネルギーを低減するように作用し得る。動態エネルギーの低減は、試料が、後続のサブシステムにおいて制御しやすくなり、試料への損傷の可能性を低減するように含まれ得る。衝突冷却モジュール212は、濾過されたイオン試料の衝突冷却/熱化を補助するための連続またはパルスガス供給を含み得る、当該技術分野において既知のようなより高い衝突エネルギー解離(HCD)セルであってもよい。衝突冷却モジュール212は、実行されるプロセスに応じて、試料を検証モジュール214またはサブシステム206のいずれかに提供することができる。例えば、新しい試料型が分析のために所望される場合、試料は、後続のサブシステムに提供される前に検証され得る。一方、検証が以前に生じていた場合、試料は、サブシステム206に提供される。いくつかの実施形態では、検証モジュール214に供給される試料は、サブシステム206に供給される試料とは異なる状態(例えば、分解、電荷状態、断片化など)を有してもよい。
【0035】
検証モジュール214は、衝突冷却モジュール212から(またはイオン化モジュール208から直接)濾過された試料のうちのいくつかまたはすべてを受容し、正しい試料型が濾過されたことを検証することができる。例えば、試料がタンパク質である場合、検証モジュール214は、タンパク質の所望のタンパク質形態、複合体形態、またはオリゴマー状態が、フィルタ210によって調製され、選択されたことを確実にする。いくつかの実施形態では、検証モジュール214は、OrbitrapTM分析器を使用して、部分的な配列決定または正確な質量決定を通じて試料を分析する。
【0036】
サブシステム206は、試料をサブシステム202から位置226に位置付けられる基板に輸送する複数の差動ポンプ式ステージ216、218、および220を含む。3つの差動ポンプ式ステージが示されるが、任意の数のステージが実装され得る。各差動ポンプ式ステージの間には、DPA222およびDPA224などの差動ポンピング開口部(DPA)がある。いくつかの実施形態では、DPA224は、さらに、ステージ218および220などの2つの隣接する差動ポンプ式ステージを連結/分離することを可能にすることができるゲートバルブであってもよい。ゲートバルブの位置は、ステージ218と220との接合部と一致するように示されるが、他の実施形態では、ゲートバルブは、ステージ216と218との接合部に位置付けられてもよい。ゲートバルブを使用してシステムを分離することは、システム200の残りの部分からサブシステム204を振動および真空単離することを可能にし、これは、システム200の様々な領域の画像取得および/または維持中に有用であり得る。差動ポンプ式ステージ216、218、および220の各々は、それぞれの真空ポンプ230、232、および234に連結され得る。ポンプのいくつかは、連続的に動作することができ、他のポンプ(例えば、234)は、撮像中にオフにされ得る。一般に、各ステージ216~220の真空レベルは、サブシステム204の真空レベル要件を満たすために、それらがサブシステム204に近づくにつれて増加する。例えば、サブシステム204が少なくとも10-9~10-10トールである必要があり、サブシステム202の少なくとも一部分が約10-5トールである場合、ステージ216~220は各々、サブシステム204を所望の圧力で維持するために真空レベルを増加させる。
【0037】
差動ポンプ式ステージ216~220の各々は、濾過された試料をサブシステム202~204に輸送するためのイオン光学素子を含み得る。例えば、各ステージ216~220は、試料ビーム238を成形し、サブシステム206に沿って試料ビーム238を導くために、少なくとも1つのRf駆動四極ガイドを含み得る。いくつかの実施形態では、差動ポンプ式ステージ216~220はまた、静電レンズおよび開口部を含んでもよく、開口部は、ステージ間の界面に位置付けられる。開口部の追加は、イオンビームがステージを横断する際にそれを導くのに役立ち、静電気レンズは、ビームをさらに画定および/または集束するのに役立つ。図2には示されないが、差動ポンプ式ステージ216~220の各々はまた、システム200内へ入り込む環境振動およびノイズを低減するための振動支持体254などの振動マウントまたはアイソレータを含み得る。振動支持体254は、ガス補助支持体、油圧ベース、ばねベース、または既知の任意の振動支持体であってもよい。いくつかの実施形態では、サブシステム204は、1つ以上の振動減衰支持体254、ならびにサブシステム206によって支持される。
【0038】
サブシステム206は、基板が、サブシステム202によって選択された試料を沈着させるために位置付けられ、または保存される沈着位置226で終了する。最終差動ポンプ式ステージ220は、沈着位置226で終了し、遅延レンズを含み得る。以下でさらに詳細に考察される遅延レンズまたは減速レンズは、試料がソフトランディング技術を使用して沈着されるように、沈着前の試料の動態エネルギーを低減し得る。ソフトランディング技術(複数可)は、沈着プロセス中に生じ得る試料への損傷を防止または低減するように実施される。例えば、遅延レンズは、基板に着地する前の試料の速度を低減するように偏向され得る。いくつかの実施形態では、遅延レンズは、少なくとも1つの素子が高負電位であり、他が接地している、例えば2つまたは3つの複数のレンズ素子を含み得る。基板は、接地電位にあるが、他の実施形態では、基板は、試料の基板上への集束を最適化するために、低電位から接地まで変化し得る。しかしながら、ソフトランディングのための基板の偏向は、遅延レンズの偏向方式に依存し得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、沈着位置226は、サブシステム204によって指示される分析位置と一致する。しかしながら、他の実施形態では、沈着位置226は、サブシステム206から試料を受容するための位置に配置された基板を含む。次いで、基板は、沈着位置から分析位置に基板移動構成要素で並進される。例えば、図3および4を参照されたい。基板は、上述したように、実施される後続の分析技術に応じて構成され得る。ホログラフィーのための低エネルギー直接電子画像化を実施するシステム200の場合、基板は、特に約200eVの電子エネルギーで電子透過性、平面、平坦、伝導性、および試料材料に対して非反応性であることが望ましい。しかしながら、他の分析技術の場合、基板に対する要件は、それほど多くない場合がある。
【0040】
サブシステム204は、試料の干渉画像を取得するように構成される直接電子撮像システムであってもよい。直接電子画像化は、例えば、検出器上に干渉縞を形成する散乱電子および非散乱電子により、試料の干渉画像をもたらし得る。サブシステム206は、エミッタおよび検出器を含んでもよく、試料は、それらの間に配置される。エミッタは、低エネルギーのコヒーレント電子源であってもよく、検出器は、当該技術分野で既知のような直接電子検出器またはマイクロチャネルプレート型検出器のいずれかであってもよい。いくつかの実施形態では、電子は、画像化の供給源であってもよく、他の実施形態では、陽子などの他の荷電粒子種が使用され得る。サブシステム204によって実施される撮像システムは、レンズレスであり、それは、収差をもたらさず、単に回折限定であり得ることに留意されたい。そのようなシステムの解像度は、電子波長およびシステムの数値開口部(NA)に依存する場合があり、NAは、供給源のコヒーレント発光角度に依存する。そのような配置の場合、発光角度が大きいほど、NAが大きくなり、より良い解像度をもたらす。サブシステム204の倍率は、試料と検出器との間の距離と、試料と供給源との間の距離との比率によって決定され得、それは、試料、供給源、検出器、またはそれらの組み合わせを移動させることによって変更され得る。もちろん、撮像システムはレンズレスである必要はなく、1つ以上のレンズを含む他の構成が、本開示によって企図される。システムの較正は、試料を既知の量移動させ、画像シフトを測定することによって、および/または画像取得中に捕捉される、既知のサイズの基準を基板上に含むことによって実行され得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、サブシステム204は、試料の沈着前に基板を清掃するための基板清掃モジュールを含み得る。そのような清掃モジュールは、基板に送達される熱を使用して基板を清掃することができる。上述のように、熱は、誘導的に、放射線的に、光学的に、または直接的に提供され得る。光学加熱技術では、レーザーを使用して、任意の汚染物質および基板上に沈着された前の試料を焼却するのに十分であるように基板の温度を上昇させるための強烈な光学エネルギーを提供することができる。光学エネルギーは、赤外線、紫外線、または可視波長であり得る。
【0042】
制御器207は、システム200を操作するためのコードを含む1つ以上の処理コアおよびメモリを含み得る。いくつかの実施形態では、制御器207は、サブシステム204によって取得された画像を使用して試料再構築アルゴリズムを実行することができる。しかしながら、他の実施形態では、再構築は、制御器207から画像を受容するように連結された1つ以上のリモートサーバによって実行され得る。
【0043】
動作中、タンパク質を含有するサンプル試料供給は、サブシステム202に供給するために最初に調製され得る。タンパク質試料については、調製は、粉末の溶解に続く緩衝液交換、タンパク質発現に続く濃縮/精製プロトコル、サイズ排除クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動、固相抽出、液体クロマトグラフィー、親和性分離、または他の液体相分離などのステップを含み得る。一般に、最初の調製プロセスが試料供給を溶液中に提供し、タンパク質が天然様の状態にあるように、試料供給が凝集および/または変性を受けていないことが望ましい。他の実施形態では、試料供給はまた無傷の細胞または細胞膜から直接調製され得、膜タンパク質および複合体は、膜、ナノディスク、ナノフト、ナノコンテナ、および当該技術分野で既知の他の方法によって安定化され得る。次いで、調製された試料供給は、イオン化モジュール208によるイオン化が生じるサブシステム202に提供され得る。イオン化ステップは、典型的には、すべての電荷が、溶解した試料イオン上に存在するまで、試料滴の反復乾燥およびクーロン爆発を含み得る。次いで、イオン化された試料供給は、試料供給からのタンパク質の選択のためにフィルタ210に提供される。標的イオン化タンパク質が濾過されると、それらは、モジュール212による衝突冷却/熱化を受ける。次いで、OrbitrapTM分析器による部分的な配列決定または正確な質量測定を介したモジュール214による検証は、所望のタンパク質プロテオフォームがフィルタ210によって選択されていることを確実にするために起こり得るが、任意である。検証されると、試料供給からの追加のタンパク質がイオン化され、濾過され、次いで衝突冷却され、サブシステム206に提供され得る。
【0044】
現段階では、イオン化され、濾過された試料タンパク質は、沈着位置226への輸送のためにサブシステム206に提供される。試料タンパク質は、介在するDPA222および224を介して複数のステージ216~220の各々によって沈着位置226に誘導されるイオンビーム238を形成し得る。沈着位置226では、ステージ220の遅延レンズは、試料イオンビームのエネルギーを低減して、それらの天然様の状態が基板上へのソフトランディング中に保存されることを確実にし得る。この時点では、実施形態に応じて、試料は、分析位置に位置する基板に起因して撮像の準備が整っているか、または基板は、撮像のために、沈着位置226から分析位置への並進の準備が整っている。解析位置では、エミッタが、後に検出器によって検出される電子ビームを試料に向ける。検出器は、次いで、画像再構築のために制御器207に提供される画像を取得する。画像再構築は、反復プロセス、非反復プロセス、および/またはニューラルネットワークベースの手法であり得る。
【0045】
図3は、本開示の一実施形態に従う、試料沈着および並進配置301の例示である。配置301は、位置326などの沈着位置における試料の沈着、および分析位置350などの分析位置への試料の並進を示す。サブシステム104および/または204などの分析ツールまたはサブシステムに関連付けられた分析位置350。いくつかの実施形態では、例えば、限られた空間または望ましくない幾何学形状などの様々な理由で、沈着位置および分析位置を共同設置させることは実用的ではない場合がある。しかしながら、他の実施形態では、沈着および分析場所は、共同設置され得、例えば、図4を参照されたい。サブシステム304は、沈着位置326とは別に区切られるが、他の実施形態では、サブシステム304および沈着位置326は、単一のサブシステムに組み合わされる。
【0046】
配置301は、輸送サブシステムの最終輸送ステージ320、沈着位置326、および分析サブシステム304を含む。サブシステム106および/または206のステージ220の例である最終搬送ステージ320は、すべて遮蔽シャードで囲まれた、四極試料ガイド320Aおよび遅延レンズ320Bを含む。いくつかの実施形態では、RF専用四極であり得る四極320Aは、試料を以前のステージおよびサブシステムから基板340などの沈着基板に輸送するためのイオン光学素子を形成する。遅延レンズ320Bは、不要な試料損傷を制限または防止するために、基板340上に沈着する前に試料のエネルギーを低減し得る。エネルギーの低減は、特に基板340に対する試料イオンの移動を遅らせるために遅延レンズを偏向させることによって実現される。加えて、遅延レンズ320Bは、所望の試料密度が基板340上で確実に得られるように、試料イオンを小さなスポット、例えば、直径80μmのスポットに集束し得る。場合によっては、スポットの直径は、80μm未満であり得、他の場合には、スポットサイズの直径は、80μm超であり得る。所望の試料密度は、試料イオンが十分に互いに近づいて試料沈着スポットの位置付けを許容可能にすることを保証するために、ある程度の集束のバランスを必要とし得るが、密度は、個々の試料イオンがそれら自体で撮像可能であるように十分にまばらであるべきであり、例えば、混雑およびクランプを制限する。遅延レンズ320Bおよび/または基板340に提供される偏向を制御することは、本明細書に開示されるシステムによって実施されるソフトランディング方策の一部である。遅延レンズ320Bおよび基板340に提供される偏向は、静的であっても動的であってもよく、それらが、試料イオンが基板340上に沈着される際に、試料イオンの移動を協調して制御するように動作することに留意されたい。
【0047】
いくつかの実施形態では、遅延レンズ320Bは、2つ以上のレンズ素子から形成され得、各レンズ素子は、潜在的に別々に偏向される。例えば、遅延レンズ320Bが2つのレンズ素子から形成される実施形態では、第1のレンズ素子は、約-350eVの高負電位で偏向され、第2のレンズ素子は、接地しており、ここで、第2のレンズ素子は、基板により近く、遅延レンズ320Bの構成例については、図4を参照されたい。そのようなレンズおよび偏向配置は、試料イオンビームを沈着基板上の所望のサイズに集束してもよい。いくつかの実施形態では、試料イオンビームは、約80μmの直径に集束される。80μmが一例として与えられるが、基板上の試料スポットサイズは、試料の位置付けが困難になるほどまばらではないが、完全な試料の撮像を可能にする所望の試料密度を得るために任意の直径であり得る。試料の50%は、ほとんどの実施形態では、集束径内に沈着されることに留意されたい。もちろん、イオンビームを違うように集束する、および/または様々なソフトランディング方策を実施するために、他の偏向方式が実施され得る。
【0048】
沈着位置326は、基板340、電流モニタ354、および並進トラック342の一部分を含む。いくつかの実施形態では、基板340は、並進トラック342に移動可能に連結されたホルダ341に搭載される。圧電モータ、サーボモータ、またはステッピングモータなどの1つ以上の駆動機構(図示せず)を使用して、例えばX方向に矢印によって示されるように、沈着位置326と分析位置350との間で基板340およびホルダ341を移動させる。加えて、ホルダ341は、少なくとも1つのモータが連結されることにより、R軸などの軸上で回転することが可能であり得る。並進能力および回転能力は、基板340を沈着位置326と分析位置350との間でそれぞれ前後に移動させることを可能にし、さらに様々な度の回転を可能にする。分析位置での基板回転は、試料の画像が異なる角度で取得されることを可能にし得、これは、例えば、試料のトモグラフィー分析を可能にし得る。さらに、ホルダ341は、基板の位置を変更することができるように、ホルダ341上で基板340を移動させるためのモータおよび駆動装置を含み得る。基板340の移動は、回転および/または並進であり得る。ホルダ341上の基板の移動は、基板340上の既知の位置に試料を沈着させることを可能にし得る。
【0049】
加えて、ホルダ341は、いくつかの実施形態では、1つ以上の加熱器を含み得る。1つ以上の加熱器(図示せず)は、ホルダ341が基板340の温度を上昇させることを可能にする。基板340の温度を上昇させることは、所望のときに汚染を除去し、および/または沈着した試料を除去することなど、その場での清掃を可能にし得る。他の実施形態では、ホルダ341は、加熱器を含まないが、基板340は、サブシステム304の内側または外側に位置付けられるか、または沈着位置326内に、またはそれに隣接して配置されるレーザーなどの光源(配置301のための光源構成の例については、図4を参照されたい)からの高強度光出力で加熱され得る。レーザーは、赤外線、可視、または紫外線エネルギーを提供し得る。ホルダ341は、荷電粒子、例えば電子が分析目的で通過することを可能にするために開口部でパターン化されてもよく、および/または縁部の周りに基板340を係合してもよい。
【0050】
電流モニタ354は、変化および/またはイオン試料沈着が電流を発生させる場所を測定することによって、試料イオンが基板340上に沈着される場所を検出する。いくつかの実施形態では、ホルダ341は、遅延レンズ320Bと基板340との間に配置することができる開口プレートを含み得る。開口プレート(図示せず)の開口部は、基板340の位置または複数の位置に対して既知の位置を有し、電流モニタ354は、開口部の外側で開口プレートに作用する電流を測定する。いくつかの実施形態では、電流モニタ354は、開口プレートまたは基板340と一体化することができる。試料ビーム338が基板340に沈着されているときに、試料ビーム338にわたって開口部を走査することによって、電流モニタ354は、開口部が試料ビーム338を基板340に通過させるときに電流を測定する。例えば、試料ビーム338が開口部を通過するにつれて、電流モニタ354上の電流が最大化され、同時に、開口プレート、例えばホルダ341上の電流が最小化され、それによって開口部の既知の位置に起因して基板位置に対するビームの位置を決定する。さらに、試料ビーム338の位置が決定されると、試料ビーム338を妨害するために、基板340は、移動させられてもよい。ビームを位置付ける他の技術は、ビームをファラデーカップ上で静的に走査すること、またはビームを通してファラデーカップまたはエレクトロメータを走査することを含み得る。あるいは、ビームを位置付けることではなく、代わりに、基板または複数の基板の既知の範囲およびビームの特性を仮定して、適切な空間密度で基板上にタンパク質を着地させることを統計的に確信することができる、十分に大きな走査範囲にわたって、十分な走査時間でビームを単に走査することを選択することができる。さらに、試料が沈着位置326の基板上のどこに位置するかを決定する代わりに、基板は、分析位置350に移動させられ、次いで、試料の位置を決定するために分析ツールで走査され得る。
【0051】
基板340は、所望の品質を満たすいくつかの材料から形成され得る。一般に、基板は、電子透過性、超清浄、非反応性、および導電性でなければならない。いくつかの実施形態では、基板340に使用される材料は、2次元(2D)材料である。基板340の例としての(2D)材料としては、単層または二層グラフェン、六角窒化ホウ素(hBN)、二硫化モリブデン、二セレン化タングステン、および二硫化ハフニウムが挙げられる。グラフェンの例では、例えば、孔が数百ナノメートル~ミクロン程度の直径を有する薄い窒化ケイ素膜内に形成される孔の上にグラフェンを懸濁することが望ましい。使用される材料にかかわらず、それは、200eV未満のエネルギーで電子透過性でなければならない。一般に、基板340は、試料を損傷または破壊しない撮像ビームの動態エネルギーで許容されるシグナル対ノイズ比を有するホログラムの形成を可能にする程度まで電子透過性であるべきである。いくつかの実施形態では、計器スループットを増加させるために含まれる複数の標的基板が存在するであろう。
【0052】
この実施形態では、サブシステム304は、エミッタ344、検出器346、および並進トラック342の残りの部分を含む。エミッタ344は、ほとんどの実施形態では、コヒーレントの低エネルギー電子源であるが、陽子などの他の荷電粒子の種類が他の実施形態で使用され得る。いくつかの実施形態では、エミッタ344は、タンパク質試料への損傷を防ぐために300eV以下で動作され得るが、試料型に応じて他の動作電圧が可能である。いくつかの実施形態では、エミッタ344は、250eVで動作され、nA~pAの範囲の電流で電子ビームを提供するように動作され得る。エミッタ344は、コヒーレントの低いエネルギー電子ビームを提供するために、様々な材料から形成され得る。例としての材料には、シャープタングステン、シャープナノ延伸エミッタ、単一原子エミッタ、六硼化ランタン(LaB6)ナノロッド、炭素系源(ナノチューブ、エレクトロスパン、グラフェンなど)、巨大分子系エミッタ、および窒素エッチングタングステン源が含まれる。加えて、エミッタ344は、いくつかの例を挙げると、低温場放出電子源、ショットキー電子源、光陰極系源、熱イオン源、またはプラズマ源であってもよい。一般に、述べたように、エミッタ344がコヒーレント電子を提供することが望ましい。例えば、サブシステム304がホログラフィックシステムである場合、エミッタ344によって提供される電子ビームのコヒーレンスは、得られたホログラムの質に影響するであろう。
【0053】
検出器346は、試料を通過した後の、および/または試料の周囲の電子を検出する。検出器346は、電子検出に使用され、検出された電子の空間分布を分解することができる任意の検出器であり得る。例えば、検出器346は、マイクロチャネルプレート型検出器または直接電子検出器であり得る。いずれの実施形態でも、検出器346は、電子ビーム352が試料位置350内にあるときに試料によって回折されることにより形成される干渉画像または回折パターンを取得する。干渉画像または回折パターンは、記述されるように、試料のホログラムである。
【0054】
動作中、試料イオン(試料イオンビーム338の形態)は、遅延レンズ320Bへ輸送ステージ320A(これは、以前にイオン化され、試料供給から濾過された)によって誘導される。遅延レンズ320Bは、試料イオンが基板340に着地する前に試料イオンビーム338を減速させる偏向電圧にある。加えて、遅延レンズ320Bの複数のレンズ素子の電極形状、適用される偏向、および/または配置は、試料イオンビーム338を所望のサイズ、例えば直径80μmのスポットに集束させ得る。いくつかの実施形態では、試料イオンの基板340上のソフトランディングを強化するために、偏向が基板340に適用され得る。沈着中に、試料の沈着位置を決定するために、上記検出技術のうちの1つ、例えば、開口部を移動させながらの電流測定が適用される。試料イオンは、典型的には、基板340上に沈着すると、中和、例えば、脱イオン化されることに留意されたい。試料が沈着されると、その位置が沈着中に決定されるか、またはサブシステム304によって決定されるかにかかわらず、ホルダ341は、沈着位置326から分析位置350に移動される。
【0055】
解析位置350になると、エミッタ344は、電子などの荷電粒子352のビームを試料に向かって放出し、検出器346は、荷電粒子ビーム352の荷電粒子と試料との相互作用に起因して、その上に形成される画像を検出する。試料ステージは、異なる照明および対象とする分子に関する情報を提供するために(わずかに)移動され得る。次いで、例えば干渉縞であり得る検出された画像は、制御器107および/または207などの制御器、または画像再構築のための1つ以上のネットワークコンピューティングコアに提供され得る。例えば、電子干渉縞のプロファイル、シルエット、または背面投影であり得る画像再構築は、取得された画像に基づく。別の言い方をすれば、画像再構築は、試料から出るときの電子出口波の再構築である。
【0056】
図4は、本開示の一実施形態に従う、例示的な沈着配置401である。配置401は、沈着位置から分析位置に必要とされる並進の欠如を除いて、配置301と同様である。代わりに、図示されるように、試料イオンは、基板が分析位置にある間、基板上に沈着される。配置401は、最終輸送ステージ420、ホルダ441上に搭載された基板440、エミッタ444、および検出器446を含む。列挙された構成要素のいくつかは、図3に関し考察されたものと同様であり、簡潔にするために再考察されることはない。配置401は、システム100および/または200などのシステムの実施形態を示し、ここで、試料の沈着が、基板が分析位置に位置付けられる間に生じる。例えば、試料イオンビーム438は、ステージ420Aを下方に遅延レンズ420Bに伝播し、ここで、試料イオンが基板440上にソフトランドされる。沈着すると、電子ビーム452は、試料に向けられ、検出器446は、電子と試料イオンとの相互作用の画像を取得する。
【0057】
最終輸送ステージ420は、最終レンズアセンブリ420B、例えば遅延レンズ420Bに連結された差動ポンプ式ステージ420Aを含む。ステージ420Aは、イオンビーム430を最終レンズアセンブリ420Bに提供するように連結されたRF専用四極423から形成される。最終レンズアセンブリ420Bは、イオンビームを所望の直径のスポットに集束するように偏向された少なくとも2つのレンズ素子から形成される。いくつかの実施例では、スポットサイズは、直径80μmである。いくつかの実施形態では、第1のレンズ素子421Bは、マイナス電位、例えば約350eVにあり、第1のレンズ素子より基板に近くに配置される第2のレンズ素子421Aは、接地電位にある。
【0058】
配置401は、並進トラックを含まないが、ホルダ441は、ホルダ上で基板を移動させるため、および/または基板を軸周囲に回転させるためのモータ(図示せず)をさらに含み得る。加えて、ホルダ441はまた、上で考察されたように加熱器を含み得るか、または例えば、基板440に向かって光出力455を放出するレーザー453など、光学エネルギー源を介して加熱する標的となり得る。レーザー453は、サブシステム104および/または204などの配置401を含むサブシステムの内部に含まれ得るが、それは、代替的に、例えば、光出力455が光学ポートを介してサブシステム内に連結された状態で、サブシステムの外部に位置付けられ得る。試料イオンビーム448の最適化された分析位置との整列に対する制約を低減するために、ホルダ441は、試料イオンの沈着位置を決定するために電子452が放出される間、基板440を移動させ得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、ステージ420は、基板440に対して鋭い入射角であり得る。例えば、入射角は、基板に対して45°であり得る。少なくともエミッタ444および基板440の物理的配置およびサイズのために、鋭い入射角が必要とされ得る。いくつかの実施形態では、遅延レンズ420Bの端部と基板440との間の距離はまた、この距離が、ソフトランディングパラメータおよび沈着試料のスポットサイズに影響を及ぼし得るため、配置に関する要因であり得る。
【0060】
図5は、本開示の一実施形態に従う、試料を調製および分析するための例となる方法501である。方法501は、システム100および/または200などのシステム上で実行され得る。方法501は、試料を調製し、調製した試料を分析ツール/サブシステムに送達するためにとられるステップおよびプロセスを含む。一実施形態では、試料は、画像、例えば干渉縞がタンパク質の実際の画像に再構築される、天然様の状態で撮像されるタンパク質である。別の実施形態では、試料は、同様に調製されるが、低温電子顕微鏡で分析される。他の分析技術には、原子力顕微鏡(AFM)、トモグラフィー、単一粒子分析、および同様物を含み得る。一般に、開示されるシステムおよび技術の調製および沈着の様相は、任意の所望の技術による分析のために所望の状態でタンパク質などの試料を提供するために使用され得、本明細書に列挙される分析技術に限定されない。
【0061】
方法501は、試料供給調製を含むプロセスブロック503で開始し得る。この文脈における試料供給調製は、所望の試料材料を適切な緩衝液(複数可)と組み合わせること、または液体クロマトグラフィー技術を用いることを含んでもよい試料精製を含み得る。いずれにせよ、試料供給が溶液中にあり、凝集および/または変性を受けていないことが望ましい。本明細書で使用される場合、試料供給は、他の物質と共に所望の試料型を含む混合物であり、そのうちのいくつかは、不純物であり得、他は、試料型が内部にある液体溶液を形成し得る。
【0062】
プロセスブロック503の後に、試料供給のイオン化を含むプロセスブロック505が続いてもよい。いくつかの実施形態では、試料供給は、例えば、サブシステム202として使用される質量分析システムへのエレクトロスプレーイオン化を受ける。イオン化の他の例としては、入口イオン化、電子、イオン、または光子ビームなどを介した衝撃イオン化が挙げられる。他の例では、組織の特定の位置が、脱吸着エレクトロスプレー、レーザー、または対象となるイオンを抽出するための任意の局所抽出ツールによって対処される。
【0063】
プロセスブロック505の後に、所望の試料イオンを選択するために試料供給を濾過することを含むプロセスブロック507が続いてもよい。上述の質量分析器は、例えば、1つ以上の四極質量フィルタを使用して、質量/電荷分離を介して試料供給から所望の試料型を選択/濾過する例としての手段を提供する。他の実施形態では、飛行時間質量分析が選択技術として使用され得る。
【0064】
プロセスブロック507に続いて、濾過された試料イオンの衝突冷却または熱化を含むプロセスブロック509が続いてもよい。試料イオンをより低い動態エネルギーに還元することによって、試料イオンを損傷するリスクを低減するか、またはそのリスクを排除すると同時に、それらは、例えば検証モジュールなどの質量分析器の分析成分、またはサブシステム106および/または206などの輸送および沈着サブシステムのいずれかに送達することができる。
【0065】
プロセスブロック509の後に、濾過された試料イオンを検証することを含むプロセスブロック511が続いてもよい。いくつかの実施形態では、これは、例えば、OrbitrapTM分析器を使用した部分的な配列決定または正確な質量測定を含む。しかしながら、他の種類または検証試験は、プロセスブロック511でも使用され得る。プロセスブロック511は、任意であり、かつ/または試料同一性を検証するために実験の開始時に使用され、次いで追加の実験実行中に省略され得ることに留意されたい。
【0066】
プロセスブロック511の後に、濾過された試料イオンの輸送を含むプロセスブロック513が続いてもよい。輸送は、ステージ216~220などの複数の差動ポンプ式ステージによって提供され得、各ステージは、それぞれの真空ポンプに連結される。いくつかの実施形態では、各ステージは、少なくとも1つのRF専用イオンガイドを含有する。他の実施形態では、単一のイオンガイドはまた、2つ以上の差動ポンプ式ステージにまたがり得る。もちろん、ステージ配置の様々な順列も実装され得る。ステージを差動ポンプすることによって、より高い真空要件を有する分析ツールは、サブシステム106/206などの輸送サブシステムに直接連結され得る。いくつかの実施形態では、試料調製構成要素が分析サブシステムから分離され得るように、ゲートバルブが輸送サブシステムに含まれ得る。
【0067】
プロセスブロック513の後に、濾過された試料イオンの沈着を含むプロセスブロック515が続いてもよい。濾過された試料イオンは、その後の分析技術に基づいて構成された撮像基板上に沈着され得る。例えば、ホログラフィー用の撮像基板は、導電性、非反応性(試料型に対して)、平面、薄型、および超清浄であるべきである。いくつかの実施形態では、撮像基板は、単層または二重層グラフェンスクリーンである。もちろん、他の基板の種類も使用可能である。加えて、沈着は、望ましくない損傷を防止または制限するために、濾過された試料イオンを撮像基板上にソフトランディングさせることを含み得る。いくつかの実施形態では、沈着は、沈着位置で実行され得、次いで、基板を撮像のための分析位置に移動させる。しかしながら、他の実施形態では、沈着位置および分析位置は、同じであり、基板の並進は、必要ない。
【0068】
プロセスブロック515の後に、濾過された試料を撮像することを含むプロセスブロック517が続いてもよい。いくつかの実施形態では、撮像は、荷電粒子ビーム、例えば電子ビームを基板上の濾過された試料イオンに向け、電子と試料との相互作用を検出することを含む。例えば、電子/試料相互作用によって生成される干渉縞が取得され得る。電子/試料相互作用は、いくつかの電子を散乱させ、散乱していない他の電子に、検出器表面上に干渉縞を形成させ得る。他の実施例では、二次または逆散乱電子が、濾過された試料イオンから、例えば低温EM分析ツール内で検出され得る。
【0069】
方法501のいくつかの実施形態では、少なくともプロセスブロック517が実行されている間、方法501は、これまでと同じまたは異なるかのいずれかの後続の試料供給が、撮像、すなわち、プロセスブロック517のために調製され得るように、少なくともプロセスブロック505から再開してもよい。そのような実施形態では、方法501およびシステム200などの関連する装置は両方共、連続的に動作して、試料のシーケンスのほぼリアルタイムの画像および再構築を提供し得る。他の実施形態では、後続の試料は、以前に調製された試料の輸送中、すなわち、プロセスブロック513中に調製プロセスを開始し得る。連続的に実行される方法501に対するこれらの列挙された変形例は、決定的ではなく、試料の共混合を回避しながら、システムが物理的にプロセスブロックを実行することができる限り、他の変形例も可能である。
【0070】
プロセスブロック517の後に、取得された画像に基づいて試料の再構築を含むプロセスブロック519が続いてもよい。ホログラフィーの実施形態では、再構築は、取得されたホログラムに基づいて試料の画像を提供する。低温EMの実施形態では、二次電子および/または逆散乱電子画像は、スライスアンドビューまたはトモグラフィー技術に基づいて体積に再構築され得る。
【0071】
方法501は、さらに、基板清掃を含むプロセスブロック521を含み得る。基板清掃は、汚染物質および/または事前に沈着した試料の基板を清掃するために所望される任意の技術を含み得るが、いくつかの実施形態では、基板に熱的に連結された加熱器によって、または基板に向けられた光出力を使用して実行され得る。プロセスブロック521のタイミングは、プロセスブロック503~511のいずれかと同時に生じ得る、新たに調製された試料の沈着の前にいつでも生じ得る。ほとんどの実施形態では、プロセスブロックは、プロセスブロック513の前に実行されるべきであるが、プロセスブロック515で沈着する前に清掃のタイミングに対処するために特別に配慮しながら実行されてもよい。
【0072】
図6は、本開示の一実施形態に従う、例としての機能ブロック図600である。図6は、本発明の実施形態が含み得るコンピュータシステム600を例示するブロック図である。コンピューティングシステム600は、システム100および/または200、そのような制御装置107/207、サブシステム102、104、106、202、204、206、および/または連結されたサーバ(図示せず)に含まれるコンピューティングハードウェアの例であり得る。コンピュータシステム600は、少なくとも、情報を通信するためのバス640または他の通信機構、および情報を処理するための、バス640と連結されたハードウェアプロセッサ642を含む。ハードウェアプロセッサ642は、例えば、汎用マイクロプロセッサであり得る。コンピューティングシステム600は、方法301および401などの本明細書に開示される方法および技術を実施するために使用され得、また、画像を取得し、該画像を1つ以上のクラスでセグメント化するために使用され得る。
【0073】
コンピュータシステム600はまた、プロセッサ642によって実行される情報および命令を記憶するためにバス640に連結されたランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶装置などのメインメモリ644を含む。メインメモリ644はまた、プロセッサ642によって実行される命令の実行中に一時変数または他の中間情報を記憶するために使用され得る。そのような命令は、プロセッサ642にアクセス可能な非一時的記憶媒体に記憶されるとき、コンピュータシステム600を、命令で指定された動作を実行するようにカスタマイズされた特殊用途機械にレンダリングする。
【0074】
コンピュータシステム600は、プロセッサ642のための静的情報および命令を記憶するためにバス640に連結された読み取り専用メモリ(ROM)646または他の静的記憶装置をさらに含む。磁気ディスクまたは光ディスクなどの記憶装置648が提供され、情報および命令を記憶するためにバス640に連結される。
【0075】
コンピュータシステム600は、コンピュータユーザに情報を表示するために、バス640を介してディスプレイ650に連結され得る。英数字および他のキーを含む入力装置652は、情報およびコマンド選択をプロセッサ642に通信するためにバス640に連結される。別の種類のユーザ入力装置は、方向情報およびコマンド選択をプロセッサ642に通信し、ディスプレイ650上のカーソル移動を制御するためのマウス、トラックボール、またはカーソル方向キーなどのカーソル制御654である。この入力装置は、典型的には、装置が平面内の位置を指定することを可能にする第1の軸(例えば、x)および第2の軸(例えば、y)の2つの軸において2つの自由度を有する。
【0076】
コンピュータシステム600は、コンピュータシステムと組み合わせて、コンピュータシステム600が特殊用途機械になるようにする、またはプログラムする、カスタマイズされたハードワイヤロジック、1つ以上のASICもしくはFPGA、ファームウェア、および/またはプログラムロジックを使用して、本明細書に記載される技術を実施し得る。一実施形態によれば、本明細書の技術は、プロセッサ642が、メインメモリ644に含有される1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを実行することに応答して、コンピュータシステム600によって実行される。そのような命令は、記憶装置648などの別の記憶媒体からメインメモリ644に読み込まれ得る。メインメモリ644に含有される命令のシーケンスの実行は、プロセッサ642に本明細書に記載されるプロセスステップを実行させる。代替の実施形態では、ハードワイヤ回路が、ソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせて使用され得る。
【0077】
本明細書で使用される場合、用語「記憶媒体」は、機械に特定の様式で動作させるデータおよび/または命令を記憶する任意の非一時的な媒体を指す。該記憶媒体には、不揮発性媒体および/または揮発性媒体が含まれ得る。不揮発性媒体nは、例えば、記憶装置648などの光ディスクまたは磁気ディスクが含まれる。揮発性媒体には、メインメモリ644などの動的メモリを含まれる。一般的な形態の記憶媒体としては、例えば、クラウド記憶装置、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、ソリッドステートドライブ、磁気テープ、または任意の他の磁気データ記憶媒体、CD-ROM、任意の他の光学データ記憶媒体、穴のパターンを有する任意の物理媒体、RAM、PROM、およびEPROM、FLASH(登録商標)-EPROM、NVRAM、任意の他のメモリチップもしくはカートリッジ、連想メモリ(CAM)、ならびに三値連想メモリ(TCAM)が挙げられる。
【0078】
記憶媒体は、伝送媒体とは異なるが、伝送媒体と併せて使用され得る。伝送媒体は、記憶媒体間の情報転送に参加する。例えば、伝送媒体は、バス640を含むワイヤを含む、同軸ケーブル、銅ワイヤ、および光ファイバーを含む。伝送媒体はまた、電波および赤外線データ通信中に生成されるものなどの音波または光波の形態をとることができる。
【0079】
様々な形態の媒体は、実行のためにプロセッサ642に1つ以上の命令のうちの1つ以上のシーケンスを運ぶことに関与し得る。例えば、命令は、最初に、リモートコンピュータの磁気ディスクまたはソリッドステートドライブ上に運ばれ得る。リモートコンピュータは、命令をそのダイナミックメモリに読み込み、モデムを使用して電話回線を介して命令を送信することができる。コンピュータシステム600にローカルなモデムは、電話回線上のデータを受信し、赤外線送信機を使用して、データを赤外線信号に変換することができる。赤外線検出器は、赤外線信号で運ばれるデータを受信することができ、適切な回路は、バス640上にデータを置くことができる。バス640は、メインメモリ644にデータを運び、そこからプロセッサ642は、命令を取り出し、実行する。メインメモリ644によって受信される命令は、プロセッサ642によって実行される前または後のいずれかで、任意に記憶装置648に記憶され得る。
【0080】
コンピュータシステム600は、バス640に連想された通信インターフェース656も含む。通信インターフェース656は、ローカルネットワーク660に接続されたネットワークリンク658に連結する双方向データ通信を提供する。例えば、通信インターフェース656は、対応する種類の電話回線にデータ通信接続を提供するための統合サービスデジタルネットワーク(ISDN)カード、ケーブルモデム、衛星モデム、またはモデムであり得る。別の例として、通信インターフェース656は、互換性のあるLANにデータ通信接続を提供するためのローカルエリアネットワーク(LAN)カードであってもよい。ワイヤレスリンクも実装され得る。任意のそのような実施では、通信インターフェース656は、様々な種類の情報を表すデジタルデータストリームを運ぶ電気信号、電磁信号、または光学信号を送信および受信する。
【0081】
ネットワークリンク658は、典型的には、1つ以上のネットワークを通じて他のデータ装置にデータ通信を提供する。例えば、ネットワークリンク658は、ローカルネットワーク660を介して、ホストコンピュータ662またはインターネットサービスプロバイダ(Isp)664によって操作されるデータ機器に接続を提供し得る。ISP664は、次いで、現在一般に「インターネット」666と呼ばれるワールドワイドなパケットデータ通信ネットワークを通じてデータ通信サービスを提供する。ローカルネットワーク660およびインターネット666は、いずれも、デジタルデータストリームを運ぶ電気信号、電磁信号、または光学信号を使用する。デジタルデータをコンピュータシステム600へ送信し、そこから受信する、様々なネットワークを通じる信号、ならびにネットワークリンク658上の、通信インターフェース656を通じる信号は、送信媒体の例となる形態である。
【0082】
コンピュータシステム600は、ネットワーク(複数可)、ネットワークリンク658、および通信インターフェース656を通じて、プログラムコードを含むメッセージを送信し、データを受信することができる。インターネットの例では、サーバ668は、インターネット666、ISP664、ローカルネットワーク660、および通信インターフェース656を通じて、アプリケーションプログラムのための要求されたコードを発信し得る。
【0083】
受信されたコードは、受信時にプロセッサ642によって実行され、および/または記憶装置648もしくは後の実行のために他の不揮発性記憶装置に記憶され得る。
【0084】
前述の開示は、(モノリシック)試料調製および分析システムの様々な実施形態を例示することを意図するが、網羅することを意図するものではない。当業者は、本開示の輪郭に依然として適合しながら他の構成要素と置き換えられ得る本開示の態様を理解し、認識するであろう。これらの特定された態様および構成要素は、依然として本開示の一部であり、それらの明示的な不在は、それらの包含を妨げることを意図するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6