IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ イー アイ カンパニの特許一覧

特許7378366共振RF空洞の誘電体インサートへのコーティング
<>
  • 特許-共振RF空洞の誘電体インサートへのコーティング 図1
  • 特許-共振RF空洞の誘電体インサートへのコーティング 図2A
  • 特許-共振RF空洞の誘電体インサートへのコーティング 図2B
  • 特許-共振RF空洞の誘電体インサートへのコーティング 図2C
  • 特許-共振RF空洞の誘電体インサートへのコーティング 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】共振RF空洞の誘電体インサートへのコーティング
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/09 20060101AFI20231106BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
H01J37/09 Z
H01J37/28 A
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020134660
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2021028910
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】62/884,874
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】エリック キーフト
(72)【発明者】
【氏名】プレウン ドナ
(72)【発明者】
【氏名】ヤスパー フランス マティース ファン レンス
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル ムツァエルス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァウテル フェルフーフェン
(72)【発明者】
【氏名】ヨム ルイテン
(72)【発明者】
【氏名】オンドジェイ バチョ
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0103225(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0035588(US,A1)
【文献】特開平04-324231(JP,A)
【文献】特開2003-187723(JP,A)
【文献】特開昭60-130031(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103840240(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 23/00-27/26,37/00-37/36
H05H 3/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数空洞(RF空洞)であって、
誘電体のインサートであって、前記誘電体のインサートの一方の側から別の側に延在してビアを形成する開口部を有する誘電体のインサートと、
前記誘電体のインサートの内面上に配置されたコーティング層であって、前記内面は前記ビアに面しており、前記コーティング層は、アモルファスシリコンである、RF空洞。
【請求項2】
前記コーティング層の厚さ3GHzのRF動作周波数における表皮深さ未満であ、請求項1に記載のRF空洞。
【請求項3】
前記コーティング層の前記厚さは、0.65μm未満である、請求項2に記載のRF空洞。
【請求項4】
前記コーティング層の厚さは、500nmである、請求項1に記載のRF空洞。
【請求項5】
外殻をさらに含み、前記外殻はビアを含み前記ビアは貫通して延在し、かつ前記インサートのアと整列されている、請求項1に記載のRF空洞。
【請求項6】
装置であって、
内部空洞を有する外殻であって、前記内部空洞の上部および底部に開口部がある、外殻と、
前記外殻の前記内部空洞内に配置されたインサートであって、前記インサートはビアを含み、前記ビアは貫通して延在し、かつ前記外殻の前記上部および底部の前記開口部と整列されている、インサートと、
記ビアに面する前記インサートの表面上に配置されたコーティング層であって、前記コーティング層は、アモルファスシリコンから形成されており、前記コーティング層は、前記インサート上の電荷の蓄積を防止する、コーティング層と、を備える、装置。
【請求項7】
前記コーティング層の厚さ、前記コーティング層の表皮深さ未満であり、前記表皮深さが、前記コーティング層1つ以上の材料特性、および3GHzである前記装置の動作パラメータに基づく、請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記コーティング層の前記厚さは、0.65μm未満である、請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記コーティング層の厚さは、500nmである、請求項に記載の装置。
【請求項10】
前記コーティング層、100~500nmの厚さであり、1.6×10-3Ω-1-1未満のコンダクタンスを有する、請求項に記載の装置。
【請求項11】
システムであって、
光路に沿って電子ビームを放出するように結合されたエミッタと、
前記光路に沿って配置された1つ以上の光学系セットと、
前記光路の一部を取り囲むRF空洞であって、前記RF空洞が、
誘電体のインサートであって、前記誘電体のインサートの一方の側から別の側に延在してビアを形成する開口部を有する誘電体のインサートと、
前記誘電体のインサートの内面上に配置されたコーティング層であって、前記内面は前記ビアに面しており、前記コーティング層は、アモルファスシリコンから形成されている、RF空洞と、を備えるシステム。
【請求項12】
前記コーティング層の厚さ、前記コーティング層の表皮深さ未満であり、前記表皮深さが、前記コーティング層の材料の抵抗率および作パラメータに基づく、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
外殻をさらに含み、前記外殻はビアを含み前記ビアは貫通して延在し、かつ前記インサートのアと整列されている、請求項11に記載のシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般に、無線周波数空洞を対象とし、より具体的には、無線周波数空洞のコーティング層を対象とする。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子顕微鏡は、通常、エネルギーを付与されたエミッタに連続荷電粒子ビームを提供する。連続ビームはほとんどの用途で正常に動作するが、時間変動ビームは、サンプルがイメージングされている間に励起されている時間依存測定などの他の用途で有益である。しかしながら、時間変動荷電粒子ビームは、生成するのがより難しい。1つの既知の方法は、光エネルギーが光源を放射しているときにのみ荷電粒子を放出する光学的にポンプされたエミッタを使用することである。この技術は通常、パルスモードでのみ使用されるものの、連続荷電粒子ビームが可能であるが、動作に望ましくない欠点が付随する。専用のパルスシステムが一部の用途で有用であるが、パルスおよび連続荷電粒子ビームの両方を提供できる荷電粒子顕微鏡を有することが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本明細書で開示されるのは、無線周波数(RF)空洞およびそのようなRF空洞を含むシステムである。RF空洞は、RF入力電力に影響を与えずに電荷の蓄積を防ぐ材料であって、熱および真空に適合している材料でコーティングされた少なくとも1つの側壁を備えたインサートを有していることを特徴としている。RF空洞の一例は、誘電体インサートであって、誘電体インサートの一方の側から別の側に延在してビアを形成する開口部を有する誘電体インサートと、誘電体インサートの内面に配置されたコーティング層であって、内面はビアに面しており、コーティング層は、厚さ閾値未満の厚さおよび抵抗率閾値を超える抵抗率を有し、厚さ閾値および抵抗率閾値は、RF空洞の動作パラメータに部分的に基づく、コーティング層と、を含む。
【0004】
別の例示的な装置は、内部空洞を有する外殻であって、内部空洞の上部および底部に開口部がある、外殻と、外殻の内部空洞内に配置されたインサートであって、ずっと延在し、外殻の上部および底部の開口部と整列されたビアを有するインサートと、ビアに面するインサートの表面に配置されたコーティング層であって、コーティング層は、厚さ閾値未満の厚さおよびコンダクタンス閾値未満のコンダクタンスを有し、コーティング層は、インサートへの電荷の蓄積を防ぐ、コーティング層と、を含む。
【0005】
例示的なシステムは、光路に沿って電子ビームを放出するように結合されたエミッタと、光路に沿って配置された1つ以上の光学系セットと、光路の一部を取り囲むRF空洞であって、誘電体インサートの一方の側から別の側に延在してビアを形成する開口部を有する誘電体インサートと、誘電体インサートの内面に配置されたコーティング層であって、内面はビアに面しており、コーティング層は、厚さ閾値未満の厚さおよび抵抗率閾値を超える抵抗率を有し、厚さ閾値および抵抗率閾値は、RF空洞の動作パラメータに部分的に基づく、コーティング層と、を少なくとも含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示のある実施形態による、荷電粒子顕微鏡の例である。
図2A】本開示のある実施形態による、RF空洞の例示図である。
図2B】本開示のある実施形態による、RF空洞の例示図である。
図2C】本開示のある実施形態による、RF空洞の例示図である。
図3】は、本開示のある実施形態による、RF空洞の側壁の例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
同様の参照番号は、図面のいくつかの図を通して対応する部分を指す。
本発明の実施形態は、無線周波数空洞が荷電粒子ビームを閃光することが可能である荷電粒子顕微鏡の文脈で以下に説明される。たとえば、無線周波数空洞は、電子ビームが閃光され得るように透過型電子顕微鏡に含まれるため、サンプルは、連続電子ビームの代わりに一連の電子ビームパルスで照射される。しかしながら、本明細書で説明される方法は、一般に、広範囲の異なる荷電粒子顕微鏡に適用可能であることを理解されたい。
【0008】
本出願および特許請求の範囲において使用される、「a」、「an」、および「the」という単数形は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数形も含む。加えて、「含む」という用語は、「備える」を意味する。さらに、「結合された」という用語は、結合されたアイテム間の中間要素の存在を排除するものではない。
【0009】
本明細書に記載のシステム、装置、および方法は、多少なりとも制限的なものとして解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、単独で、ならびに相互の様々な組み合わせおよび部分的な組み合わせにおいて、様々な開示された実施形態の全ての新規性および非自明性を有する特徴および態様を対象とする。開示されたシステム、方法、および装置は、任意の特定の態様もしくは特徴またはそれらの組み合わせに限定されず、開示されたシステム、方法および装置は、任意の1つ以上の特定の利点が存在することも、または問題が解決されることも必要としない。いずれの動作理論も説明を容易にするためであるが、開示されたシステム、方法、および装置は、そのような動作理論に限定されない。
【0010】
開示された方法のいくつかの動作は、便宜的な提示のため、特定の順番で記載されているが、以下に記載される具体的な用語によって特定の順序が要求されない限り、この説明方法が並び替えを包含することを理解されるものとする。例えば、順に記載される動作は、いくつかの場合では、並び替えまたは同時に実施されてもよい。さらに、単純化のために、添付の図面は、開示されたシステム、方法、および装置が、他のシステム、方法、および装置とともに使用され得る様々な方法を示さないことがある。加えて、説明は、開示された方法を説明するために、「製造する」および「提供する」のような用語を使用することがある。これらの用語は、実施される実際の動作の高レベルの抽象化である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実施に応じて、様々であり、当業者には容易に認識できる。
【0011】
いくつかの例では、値、手順、または装置は、「最低(lowest)」、「最良(best)」、「最小(minimum)」などと称される。そのような記載は、多くの使用された機能的選択肢からの選択が可能であることを示すことを意図しており、そのような選択は、他の選択よりも優れている(better)、小さい(smaller)、または他の点で望ましい(otherwise preferable)必要はないことが理解されよう。
【0012】
上記の問題に対する1つの解決策は、荷電粒子顕微鏡内に無線周波数(RF)空洞を含めることである。RF空洞を使用して、1つ以上のRF定在波と通過する荷電粒子ビームとの相互作用を通じてパルス荷電粒子ビームを生成することができる。いくつかの実施形態では、RF空洞は、荷電粒子ビームが内部でRF空洞と交差することで、荷電粒子ビームが空洞内で確立されたRF波と相互作用することを可能にする入力および出力アパーチャを含み得る。他の実施形態では、RF定在波とアパーチャにおける荷電粒子ビームとの相互作用によりパルスが生成される「チョッピングアパーチャ」は、実際のRF空洞から離れて配置されている。しかしながら、いずれの実施形態においても、アパーチャ、RF定在波(複数可)および荷電粒子ビームの空間および時間相互作用により、荷電粒子ビームパルスが形成される。そのような技術では、RF波は、荷電粒子ビームを出力アパーチャを横切って効果的に移動させることにより、荷電粒子のパルス列が生成され、次に、それがサンプルに向けられる。
【0013】
以前より、荷電粒子顕微鏡におけるビームチョッパーとしてのデュアルモードRF空洞が、米国特許第9,048,060号などに説明されており、この米国特許は、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。その参考文献で論じられているように、RF空洞は誘電体インサートを含むことができ、インサートは、誘電体インサート上の電荷蓄積の防止または低減のために導電性材料のフィルムでコーティングすることができる。そのような観察は表面上は単純なように見えるが、そのようなアイデアの実装には予想よりも多くの努力が必要であった。
【0014】
追加の努力は、コーティング材料が非常に特定の要件を満たす必要があるという認識から生じた。一般に、コーティング材料は、電荷の蓄積を防ぐために十分に導電性である必要があるが、RF空洞の共振に影響を与えたり、大幅な電力損失を発生させたりしてはならない。RF空洞の共振への影響を防ぐために、コーティング層の厚さは、RF電力が多くの反射および/または吸収を起こさずに透過できるように十分に薄く、また、RF空洞の共振に悪影響を及ぼさないように十分に薄い必要がある。このような要件を満たすためには、コーティング層の厚さが表皮深さ未満であることが望ましく、ここでは、材料の抵抗とともにRF空洞の動作パラメータが、表皮深さを決定する。厚さは表皮深さよりはるかに薄いことが望ましいが、材料のコンダクタンス/抵抗率も許容厚さに影響する。
【0015】
電力損失要件に関しては、コーティング材料が入力RF電力に対して無視できる電力損失を生じることが望ましい。たとえば、入力電力の10%に等しい最大電力損失が望まれるが、より少ない電力損失が望ましいであろう。電力損失は、RF空洞のコーティング材料の特性、厚さ、および動作パラメータによっても決定される。要件が満たされている場合、RF空洞の品質係数を維持する必要がある。
【0016】
材料を決めるのは些細なことのようであるが、そうではないことが判明した。たとえば、導電性および半導電性材料は電荷の蓄積を止めるが、それらの高い導電性により、粗い表面に必要な程度に製造できない非常に薄い層が結果的に生じる。たとえば、銅層は、厚さの要件を満たすために、1.2μm(3GHz周波数での表皮深さ)よりはるかに小さい必要がある。しかしながら、10nmの銅層が製造可能であったとしても、関連する電力損失、たとえば、50kWは、電力損失要件を満たさない。そのような例では、銅層の電力損失は、入力電力のすべてまたは大部分である可能性があり、これは非常に望ましくない。半導体材料は、銅よりも低い電力損失でより厚い層を可能にするけれども、いずれの要件も満たさない。
【0017】
一般に、コーティング層は、RF空洞動作パラメータでの電力損失を最小限に抑えながら製造可能な厚さの層を可能にする高抵抗/低コンダクタンスを有する必要があると判断されている。さらに、材料が高温環境(たとえば、1000°Cまで)に耐え、製造において均一/連続的であり、高真空環境と適合する(たとえば、ガス放出がない)ことが望ましい。1つの解決策はアモルファスシリコン(a-Si)である。これは60GΩを超える抵抗を持ち、最大500nm(場合によってはそれ以上)の厚さを可能にしつつ、無視できるほどの電力損失、たとえばマイクロワットの電力損失をもたらす。たとえば炭化ケイ素および酸化亜鉛などの他の材料も要件を満たすことができるが、本開示は、例示の目的でa-Siに焦点を合わせる。
【0018】
図1は、本開示のある実施形態による、荷電粒子顕微鏡100の例である。荷電粒子顕微鏡(CPM)100は、荷電粒子ビームを動的に閃光してサンプルを照射するための荷電粒子ビームパルスのストリームを生成するという意図された目的のために荷電粒子ビームが通過する無線周波数(RF)空洞を含む。荷電粒子ビームを閃光することが開示されているが、代わりに連続荷電粒子ビームがサンプルに提供されるように、必要に応じてRF空洞を無効にしてもよい。いくつかの実施形態では、CPM100は透過型電子顕微鏡(TEM)であるが、CPMの種類は限定されない。他の実施形態では、CPM100は、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)、SEMおよび集束イオンビーム(FIB)の両方を含むデュアルビーム顕微鏡などであってもよい。
【0019】
図1に例示される簡略化されたCPM100は、エミッタ102、1つ以上のコリメータレンズ104Aおよび104B、ビーム規定アパーチャ(BDA)106、RF空洞108、対物レンズ110Aおよび110B、サンプルホルダ112、1つ以上の投影レンズ114Aおよび114B、ならびに検出器116を含む。当業者は、追加のまたはより少ない構成要素がCPM100に実装されてもよいことと、例示された構成要素は、典型的にはTEMに実装され得るものの単なる例であることとを理解する。
【0020】
エミッタ102は、他の構成要素を横断する光路上でCPM100へ下に向けられ、検出器116で終わる荷電粒子ビーム118を提供する。コリメータレンズ104A、Bは、荷電粒子ビーム118を調整し、サンプルホルダ112が配置される平面などの所望の位置/平面に集束させる。対物レンズ110A、Bはさらに、荷電粒子ビーム118をサンプルホルダ位置に集束させ、荷電粒子ビーム118がサンプルから出現するときにさらに調整する。荷電粒子ビーム118がサンプルから出現した後、たとえば、サンプルを横断した後、投影レンズ114A、Bは、検出器116による検出のために、出現した荷電粒子ビーム118を調整する。検出器116は、荷電粒子ビーム118の荷電粒子とサンプルとの相互作用に基づいて、サンプルの画像を検出する。
【0021】
一般に、様々なレンズ104、110、および114は、静電、電磁気、またはそれらの組み合わせであり得る。さらに、エミッタ102は、熱電子、冷電界放出などの任意のタイプのエミッタとすることができる。ほとんどの実施形態では、エミッタ102は電子を提供するが、イオンエミッタも可能であり、本開示の範囲内である。検出器116は、当技術分野で知られているように、直接電子検出器またはマイクロチャネルプレートベースの検出器であってよい。
【0022】
RF空洞108は、荷電粒子ビーム118が通過し、光路に沿ってCPM100を横断し続けることができるように、空洞を通ってずっと延在するビアを含む。RF空洞108は、1つ以上の定在波、たとえば、モードが確立されることを可能にする、円形、楕円形、正方形、長方形などのような所望の任意の形状であり得る。一般に、RF空洞108の寸法は、共振空洞が1つ以上の所望の動作周波数で確立されるように、1つ以上の所望の動作周波数に基づくことが望ましい。RF空洞108内で確立されることが望まれるモードの数に応じて、関連する数のエミッタ-アンテナ対が含まれる。RF空洞108は、所望のモードを確立するように設計された外側チャンバ、および誘電体インサートを含む。誘電体インサート(以下でさらに詳細に論じられる)はまた、荷電粒子ビーム118の通過のためにそれを通って延在するビアを含む。したがって、誘電体インサートは、荷電粒子ビームの光軸を取り囲むようにRF空洞108の内側に配置される。
【0023】
前述のように、RF空洞108は、荷電粒子ビームパルス列がRF空洞から放出されるように荷電粒子ビーム118を閃光することが可能であり得、パルス分離は、RF空洞108の動作周波数によって決定され、パルス幅/持続時間は、RF空洞108の入力電力、品質係数、および周波数の組み合わせによって決定される。そのようなRF空洞は、米国特許第9,048,060B2号にさらに説明されており、この特許は、本出願人が所有し、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。閃光された荷電粒子ビームを単に形成する以外に、RF空洞108は、時間分解荷電粒子顕微鏡法を可能にするストリークカメラを含むシステムで使用されてもよい。一般に、通過する荷電粒子ビーム118により、RF空洞108が誘電体インサート上に電荷を蓄積しないことが望ましい。電荷の蓄積により、通過する荷電粒子ビーム118がずれてドリフトし、これにより、荷電粒子ビーム118が光路に沿って継続したり、またはRF空洞108から出たりするのを低減または停止し得る。
【0024】
誘電体インサート上の電荷の蓄積を低減または排除するために、少なくともビアに面する側壁上に、導電性であるが高抵抗性の材料でインサートをコーティングすることが望ましい。この材料は、空洞の共振に影響を及ぼさず、さらに大幅なRF電力を損失しない厚さのものであることが望ましい。たとえば、厚さは、RF動作パラメータでの表皮深さよりも小さく、電力損失は最小限、たとえば、RF入力電力の10%以下であってよい。さらに、コーティング材料が高真空環境と適合し(たとえば、ガス放出がほとんどないか全くない)、高温に耐性があることも望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、所望の厚さは、計算された表皮深さよりもはるかに小さい場合があり、これは、連続的な層が望まれる場合、製造上の懸念となる可能性がある。そのような要件を考えると、高抵抗/低コンダクタンスと真空適合性のある材料が望ましい。導電性材料と半導体は、決定された厚さと電力損失がそれぞれ製造不可能であるおよび/または高すぎるため、望ましい結果が得られない。
【0025】
ただし、1つの解決策は、アモルファスシリコン(a-Si)である。アモルファスシリコンは高抵抗/低コンダクタンスを備えているため、電力損失が無視できるほど厚く、より製造可能な層を可能にする。表皮深さは抵抗率(ρ)と平方根の関係にあり、電力損失はコンダクタンス(σ)と線形関係(σ=1/ρ)にある。さらに、a-Siは、高温適合、高真空適合などの他の要件を満たし、薄くて連続的で均質な層は、たとえば化学蒸着を使用して簡単に製造できる。このように、a-Siから形成されたコーティング層は、インサートの側壁に電荷が蓄積するのを防ぎ、最小の電力損失を生じる比較的厚い層を可能にする抵抗/コンダクタンス特性を備えている。
【0026】
図2Aから2Cは、本開示のある実施形態による、RF空洞206の例示的な図である。RF空洞206は、RF空洞206内で生成された1つ以上のRF定在波を使用して荷電粒子ビームを偏向させるために、CPM100などのCPMシステムに実装されてもよい。荷電粒子ビームを偏向させると、パルス化荷電粒子ビームが、RF空洞206を通って延在するアパーチャの出力として生じる。パルス化荷電粒子ビームは、たとえば、サンプルの時間分解プロービングを可能にし得る。
【0027】
RF空洞206は、外殻220、インサート222、1つ以上の導体224A、224B、およびコーティング層228を含む。外殻220は、円形、楕円形、正方形などの任意の所望の形状とすることができ、同様の形状の空洞234を形成する。さらに、外殻220は、外殻220の高さ全体および空洞234を通って延在する上面232(および底面、図示せず)に開口部230を含む。図2Aに示される実施形態では、外殻220は、高さhおよび内径d1を有し、開口部/ビアは、直径rを有する。いくつかの実施形態では、RF空洞206では、少なくとも部分的に、内径d2によって決定される共振がある。
【0028】
インサート222は、外殻220の中心に配置されてもよく、空洞234内に適合する高さを有してもよく、外殻220のd1よりも小さい直径d2を有する。さらに、インサート222はまた、インサート222の高さを通って延在する開口部/ビアを有する。一般に、インサート222のビアは、外殻220の上部および底部の開口部と整列し、その結果、荷電粒子ビームは、RF空洞206を通過することができる。インサート222は、たとえば、ZrTiO4などの誘電体から形成されてもよいが、他の誘電体材料も実施可能である。
【0029】
代わりにアンテナと呼ばれることもある1つ以上の導体224A、Bは、RF空洞206の内側にRF定在波の形成を可能にすることができる。2つ以上の導体224A、Bは、銅、銀、金、白金などの任意の導体から形成することができ、所望の定在波を生成するために1つ以上のRF電源(図示せず)に結合される。RF空洞206は1対のアンテナのみを示すが、他の実施形態では、2つの定在波の形成のために4つの導体が含まれてもよい。そのような実施形態では、追加の定在波が第1の定在波に対して直角になるように、アンテナの第2のペアを含めることができる。
【0030】
コーティング層228は、少なくともインサート222の内面226上に形成されてもよい。一般に、コーティング層228は、通過する荷電粒子ビームによるインサート222上の電荷の蓄積を低減または防止するために含まれる。しかしながら、上記のように、コーティング層228を含めることは、RF空洞206の共振に影響を及ぼさないこと、およびコーティング層228に起因するいかなるRF電力損失も最小限であることが望ましい。共振の変化を防止するために、コーティング層228は、望ましくは表皮深さより小さくてもよい。表皮深さは、たとえば3GHzの動作周波数など、RF空洞の動作パラメータに基づいて決定された。電力損失に関して、コーティング層228の電力損失は、望ましくは、入力電力の10%以下であり得る。コーティング層228の材料の様々な特性は、表皮深さと電力損失に影響を与えるが、少なくとも1つの特性は、選択された材料のコンダクタンス/抵抗率の両方に影響を与える可能性がある。
【0031】
コンダクタンス/抵抗率に関して、表皮深さは抵抗率の平方根に依存するが、電力損失はコンダクタンスと線形の関係がある。コンダクタンスが抵抗率の単純な逆数である場合、コンダクタンスが減少し、抵抗率が増加すると、表皮深さが増加し、電力損失が減少する。次に、この関係を使用して、コーティング層228に使用する材料を決定する。いくつかの実施形態では、厚さは厚さ閾値よりも小さく、抵抗率は抵抗率閾値よりも大きくなければならない(コンダクタンスはコンダクタンス閾値よりも小さい)。これらの閾値は、それらが満たされる限り、コーティング層228の要件、すなわち厚さおよび電力損失の要件が満たされることを確実にする。
【0032】
上記のように、コーティング層228に望まれる2つの主要な特徴は、製造可能な表皮深さと無視できる/最小の電力損失である。製造可能とは、連続した均一で再現性のある層が、1から2ミクロン程度の二乗平均平方根(rms)粗さを持つ表面上に堆積する可能性があることを意味する。さらに、コーティング層228の所望の厚さは、RF動作パラメータでの表皮深さよりもはるかに小さく、ここで、はるかに小さいとは、計算された表皮深さの10%以下を指す。電力損失は、入力RF電力に関して無視できることが望ましく、入力電力の10%以下を指す。閾値に関しては、厚さ閾値は最大で表皮深さであるが、表皮深さよりも小さくなる可能性があり、抵抗率/コンダクタンス閾値は、コンダクタンスの乗数と厚さ閾値のいずれかに基づき得るか、または入力RF電力の10%に基づいて決定されてもよい。たとえば、製造上の理由のために最小の実行可能なコーティング厚さとして10nmを選ぶ場合には、コーティング層228の材料は、5×10-2Ωcmを超える(ただし、好ましくは、はるかに高い)抵抗率ρを有することが必要であろう。一般的に、コンダクタンス/抵抗率閾値は、所与の形状の厚さの逆計算と入力電力の10%に基づいて決定できるが、厚さ閾値は表皮深さに基づく。
【0033】
さらに、コーティング層228の材料は、高温への耐性などの他の要件を満たし、真空適合であることが望ましい。耐熱要件を満たすために、材料は高温、たとえば600~1000°Cで変化、溶融、または昇華しないようにする必要がある。また、真空適合要件を満たすために、材料は、高真空下でガス放出すべきではない。
【0034】
上記要件のすべてを満たす1つの材料は、アモルファスシリコンである。アモルファスシリコンは、60GΩ(ρ>5×10Ω・m)より大きい、高抵抗であることが見出されている。この抵抗/導電率では、表皮深さは0.65μmであり、これにより最大500nmの層厚が可能になる。500nmの層では、9μWの電力損失が発生し、これは、1W以上の入力電力では明らかに無視できる。アモルファスシリコンは、高温および高真空適合により、温度および真空適合要件もまた容易に満たす。
【0035】
図3は、本開示のある実施形態による、側壁326の例示的な図である。例示された側壁326は、RF空洞206の側壁226の一例である。側壁226は、インサート322およびコーティング層328を含む。コーティング層328は、RF空洞の動作パラメータに基づいて、材料の表皮深さに依存する厚さを有することができる。たとえば、その厚さは100~500nmであってもよいが、インサート322の側壁326上に連続層を提供するのに十分な厚さでなければならない。
【0036】
開示された技術を例示するために本明細書で説明された実施形態は、限定するものと見なされるべきではなく、実施の例を提供するだけのものである。当業者は、本明細書で意図され、本開示の範囲内にある、開示された技術を実施し得る他の無数の方法を理解するであろう。
図1
図2A
図2B
図2C
図3