(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】注射デバイスに取り付けるセンサデバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20231106BHJP
【FI】
A61M5/20
(21)【出願番号】P 2020536175
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2018086100
(87)【国際公開番号】W WO2019129619
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-08
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヘルマー
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/050781(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0213853(US,A1)
【文献】国際公開第2017/089502(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイスの遠位端に解放可能に取り付けられるように構成されている補助デバイスであって:
主電子回路と;
補助デバイスの表面または中に位置する非接触加速度センサであって、薬物送達デバイスの近位端の方に向けられている非接触加速度センサと;
該非接触加速度センサから出力された信号を受信し;
該非接触加速度センサから出力された信号を、低電力プロセッサが読み取り可能なメモリに記憶された1つまたはそれ以上の加速プロファイルと比較し;
該信号
と該1つまたはそれ以上の加速プロファイルとの比較に基づいて、薬物送達デバイスの外側針キャップが取り外されていると判定し;
薬物送達デバイスの外側針キャップが取り外されていると判定したことに応答して、補助デバイスの主電子回路にウェイクアップ信号を送るように構成されている低電力プロセッ
サ、ここで、該プロセッサは、該信号と該1つまたはそれ以上の加速プロファイルとの比較が、外側針キャップを近位方向へ動かす際の加速および続く外側針キャップを近位方向へ動かす際の減速を示すときに外側針キャップが取り外されていると判定するように構成されている、と
を含む、前記補助デバイス。
【請求項2】
メモリは非接触加速度センサから出力された信号を1つまたはそれ以上の加速プロファイルと比較するためのソフトウェアを記憶している、請求項1に記載の補助デバイス。
【請求項3】
1つまたはそれ以上の加速プロファイルが非接触加速度センサから出力された信号に基づいて更新される機械学習モードで動作するように構成されている、請求項1または請求項2に記載の補助デバイス。
【請求項4】
1つまたはそれ以上の加速プロファイルの各々は、異なるタイプの薬物送達デバイスに関連している、請求項1~3のいずれか1項に記載の補助デバイス。
【請求項5】
1つまたはそれ以上の加速プロファイルのうちの第1のものは、近位方向への急激な加速と近位方向への急激な減速の間のほぼ一定の速度を示すデータをさらに含む、請求項1に記載の補助デバイス。
【請求項6】
1つまたはそれ以上の加速プロファイルのうちの第1のものは、速度の総変化が遠位方向への動きを示すまで近位方向への急激な減速が継続することを示すデータをさらに含む、請求項1に記載の補助デバイス。
【請求項7】
1つまたはそれ以上の加速プロファイルのうちの第2のものは、近位方向への急激な加速および続く急な停止を示すデータを含む、請求項1に記載の補助デバイス。
【請求項8】
非接触加速度センサは、使用者の手が外側針キャップを取り外す際のその手の動きを検出するような位置にある、請求項1~7のいずれか1項に記載の補助デバイス。
【請求項9】
補助デバイスの表面または中に位置する位置センサをさらに含み、該位置センサは、薬物送達デバイスの近位端の方に向けられており、使用者の手および/または薬物送達デバイスの位置および/または向きを示す信号を出力するように構成されている、請求項8に記載の補助デバイス。
【請求項10】
非接触加速度センサは電磁反射センサである、請求項1~9のいずれか1項に記載の補助デバイス。
【請求項11】
非接触加速度センサは光学センサまたは赤外センサである、請求項10に記載の補助デバイス。
【請求項12】
位置センサは受動赤外センサまたは加速度計である、請求項8または請求項9に記載の補助デバイス。
【請求項13】
ロックセンサをさらに含み、該ロックセンサは、補助デバイスが薬物送達デバイスに固着されているか否かを示す信号を出力するように構成されている、請求項1~12のいずれか1項に記載の補助デバイス。
【請求項14】
データを1つまたはそれ以上の外部のデバイスに送信するように構成されているワイヤレスユニットをさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の補助デバイス。
【請求項15】
薬物送達デバイスの遠位端に解放可能に取り付けられるように構成されている補助デバイスを動作させる方法であって:
該補助デバイスの表面または中に位置し信号を出力するため薬物送達デバイスの近位端の方に向けられている非接触加速度センサを提供することと;
使用者が該薬物送達デバイスの外側針キャップを取り外す際の、該非接触加速度センサに対する使用者の手の速度の変化を示す非接触加速度センサからの信号を出力することと;
該非接触加速度センサから出力された信号を低電力プロセッサにおいて受信することと;
該低電力プロセッサ
が:
1つまたはそれ以上の加速プロファイルにアクセスし;
該非接触加速度センサから出力された信号を低電力プロセッサが読み取り可能なメモリに記憶された1つまたはそれ以上の加速プロファイルと比較し;
該信号と該1つまたはそれ以上の加速プロファイルとの比較が、外側針キャップを近位方向へ動かす際の加速および続く外側針キャップを近位方向へ動かす際の減速を示すとき
に外側針キャップが取り外されていると判定し;
該薬物送達デバイスの外側針キャップが取り外されていると判定したことに応答して、補助デバイスの主電子回路にウェイクアップ信号を送ることと
を含む、前記方法。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に記載の補助デバイスと薬物送達デバイスとを含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、注射デバイス、シリンジ、またはカートリッジを含む薬剤送達デバイスを保持し、使用者のジェスチャを検出し、使用者のジェスチャが検出されたときにデバイスを低電力モードから起動するように構成されているデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の注射による定期的な処置を必要とする様々な疾病が存在する。かかる注射は注射デバイスを使用して行うことができ、注射デバイスは医療関係者によってまたは患者自身によってのいずれかで施用される。
【0003】
注射デバイス(すなわち医薬品容器から薬剤を送達することのできるデバイス)は、典型的には2つのカテゴリー-手動デバイスおよび注射デバイス-に入る。手動デバイスでは-流体を駆動して針に通すために、使用者は機械的エネルギーを提供しなければならない。このことは典型的には、注射中使用者が連続的に押圧する必要のある、何らかの形態のボタン/プランジャによって行われる。
【0004】
注射デバイスは、注射による療法を患者自身が実施するのがより容易になることを目指している。自ら実施する注射によって行われる現行の療法には、糖尿病(インスリンおよびより新しいGLP-1クラスの薬物の両方)、片頭痛、アレルギー、ホルモン療法のための薬物、抗凝血剤、等が含まれる。注射デバイスを使用して、特定の救命薬物を単回用量だけ送達することができる。たとえばそれらは多くの場合、アナフィラキシーのリスクのある人に処方される。それらは多くの場合、軍隊において隊員を化学兵器剤から保護するために使用される。代替として、注射デバイスは、多発性硬化症、関節リウマチ、貧血症などを患う人に、処方された治療スケジュールに従って薬剤を投与するために使用される。
【0005】
注射デバイスは、標準的なシリンジからの非経口の薬物送達に関与する行為を、完全にまたは部分的に置き換えるデバイスである。これらの行為には、患者の皮膚への針の挿入、薬剤の注射、針の取り外し、針のシールド、およびデバイスの再利用の防止を含めることができる。これにより手動デバイスの欠点の多くが克服される。使用者に必要な力、手振れ、および不完全な用量を送達する可能性が低減される。多数の手段、たとえばトリガボタンまたは注射深さに達する針の作用によって、トリガを行うことができる。いくつかのデバイスでは、流体を送達するためのエネルギーはばねによって提供される。
【0006】
注射デバイスは、1回の用量の薬剤を送達するためだけに使用でき使用後廃棄しなければならない、使い捨てまたは単回使用のデバイスでありうる。注射デバイスの他のタイプは再利用可能でありうる。通常これらは、使用者が標準的なシリンジを装填および取り外しできるように構成されている。再利用可能な注射デバイスは、非経口の薬物送達を複数回行うように使用することができ、シリンジは消費後廃棄され注射デバイスから取り外される。シリンジは、追加の機能性を提供するための追加の部材と共にパッケージ化してもよい。典型的なシナリオでは、疾病の処置を、注射デバイスを使用して薬剤用量をたとえば毎日、毎週、隔週、または毎月注射することによって、患者自身が行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
注射器によって送達される用量をモニタする(および他の情報を使用者に提供する)、注射器と共に使用するのに適した再利用可能な付加的デバイスが知られている。そのよう
な付加的デバイスの電力消費を最小限にするための方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様によれば、薬物送達デバイスの遠位端に解放可能に取り付けられるように構成されている補助デバイスであって:主電子回路と;補助デバイスの表面または中に位置する非接触加速度センサであって、薬物送達デバイスの近位端の方に向けられている非接触加速度センサと;非接触加速度センサから出力された信号を受信し;信号に基づいて、薬物送達デバイスの外側針キャップが取り外されていると判定し;薬物送達デバイスの外側針キャップが取り外されていると判定したことに応答して、補助デバイスの主電子回路に起動信号を送るように構成されている低電力プロセッサとを含む、補助デバイス、が提供される。
【0009】
いくつかの実施形態では、補助デバイスは、低電力プロセッサが読み取り可能なメモリをさらに含み、メモリは、1つまたはそれ以上の加速プロファイルを記憶している。
【0010】
いくつかの実施形態では、非接触加速度センサから出力された信号を1つまたはそれ以上の加速プロファイルと比較するためのソフトウェアを記憶しているメモリを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、補助デバイスは、1つまたはそれ以上の加速プロファイルが非接触加速度センサから出力された信号に基づいて更新される機械学習モードで動作するように構成されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の加速プロファイルの各々は、異なるタイプの薬物送達デバイスに関連している。
【0013】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の加速プロファイルのうちの第1のものは、近位方向への急激な加速および続く近位方向への急激な減速を示すデータを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の加速プロファイルのうちの第1のものは、近位方向への急激な加速と近位方向への急激な減速の間のほぼ一定の速度を示すデータをさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の加速プロファイルのうちの第1のものは、速度の総変化が遠位方向への動きを示すまで近位方向への急激な減速が継続することを示すデータをさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の加速プロファイルのうちの第2のものは、近位方向への急激な加速および続く急な停止を示すデータを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、非接触加速度センサは、使用者の手が外側針キャップを取り外す際のその手の動きを検出するような位置にある。
【0018】
いくつかの実施形態では、補助デバイスは、補助デバイスの表面または中に位置する位置センサをさらに含み、位置センサは、薬物送達デバイスの近位端の方に向けられており、使用者の手および/または薬物送達デバイスの位置および/または向きを示す信号を出力するように構成されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、非接触加速度センサは電磁反射センサである。
【0020】
いくつかの実施形態では、非接触加速度センサは光学センサまたは赤外センサである。
【0021】
いくつかの実施形態では、位置センサは受動赤外センサまたは加速度計である。
【0022】
いくつかの実施形態では、補助デバイスは、ロックセンサをさらに含み、ロックセンサは、補助デバイスが薬物送達デバイスに固着されているか否かを示す信号を出力するように構成されている。
【0023】
いくつかの実施形態では、補助デバイスは、データを1つまたはそれ以上の外部のデバイスに送信するように構成されているワイヤレスユニットをさらに含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、補助デバイスは、位置および/または向きセンサが出力した信号に応じてその情報の表示を変化させるように構成されている電子ディスプレイをさらに含む。
【0025】
本開示の第2の態様によれば、薬物送達デバイスの遠位端に解放可能に取り付けられるように構成されている補助デバイスを動作させる方法であって:補助デバイスの表面または中に位置し信号を出力するため薬物送達デバイスの近位端の方に向けられている非接触加速度センサを提供することと;非接触加速度センサから出力された信号を低電力プロセッサにおいて受信することと;低電力プロセッサが、信号に基づいて、薬物送達デバイスの外側針キャップが取り外されていると判定することと;薬物送達デバイスの外側針キャップが取り外されていると判定したことに応答して、補助デバイスの主電子回路に起動信号を送ることとを含む、方法が提供される。
【0026】
いくつかの実施形態では、方法は、低電力プロセッサが:1つまたはそれ以上の加速プロファイルにアクセスし;非接触加速度センサから出力された信号を1つまたはそれ以上の加速プロファイルと比較し;比較に基づいて、薬物送達デバイスの外側針キャップが取り外されているかどうかを判定することをさらに含む。
【0027】
第3の態様によれば、請求項1~16のいずれか1項に記載の補助デバイスと薬物送達デバイスとを含むシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1B】キャップを取り外した状態の
図1Aの注射デバイスの側面図である。
【
図2A】
図1Aおよび
図1Bの注射デバイスに解放可能に取り付けられている補助デバイスの斜視図である。
【
図2B】
図1Aおよび
図1Bの注射デバイスに解放可能に取り付けられている補助デバイスの斜視図である。
【
図3】
図2Aおよび
図2Bの補助デバイスならびに取り付けられる注射デバイスの側面図であり、補助デバイスの主要な内部および外部構成要素のいくつかが図示されている。
【
図4】さらなる実施形態に係る
図2Aおよび
図2Bの補助デバイスならびに取り付けられる注射デバイスの側面図である。
【
図6】使用時の補助デバイスのディスプレイを描いた図であり、デバイスの様々な状態が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、本開示の実施形態について、ペン型注射器を参照して記載する。ただし本開示はそのような用途に限定されず、シリンジ、充填済みシリンジ、無針注射器、および吸
入器などの他のタイプの薬物送達デバイスとも、等しく良好に展開できる。
【0030】
実施形態に係る注射デバイス10(本明細書では薬物送達デバイス10とも呼ばれる)について、ここで
図1Aおよび
図1Bを参照して記載する。いくつかの実施形態では、注射デバイス10は単回使用の注射デバイス10であり、自動注射器としても知られている。いくつかの他の実施形態では、注射デバイス10は、再利用可能な注射デバイス、または、廃棄されるまでに何回かの用量を注射するように使用できる注射デバイスである。注射デバイス10は近位端Pおよび遠位端Dを有する。近位端Pは注射中患者の注射部位に向けられており、遠位端Dは注射部位から離れるように向けられている。
【0031】
注射デバイス10は、本体9と、キャップ12(本明細書では外側針キャップ12またはONC12とも呼ばれる)と、を含む。本体9は外側ハウジング11を含む。外側ハウジング11は細長い管体である。外側ハウジング11は、液体薬剤16を含むカートリッジまたはシリンジ18を支持する、カートリッジホルダまたはシリンジホルダ(図示せず)を含む。以降の説明では、カートリッジホルダ(図示せず)によって支持されるカートリッジ18に言及する。カートリッジ18は
図1Bにおいて破線で示されている。
【0032】
外側ハウジング11にはまた、注射中に薬剤16の投薬を引き起こすための投薬機構(図示せず)も収容されている。
【0033】
中空の針17はカートリッジまたはシリンジ18の内部容積と連通しており、注射中に液体薬剤16用の導管の役割を果たす。針17およびカートリッジ18は、互いに対しておよび本体9に対して、固定された位置にある。ストッパ、プランジャ、ピストン、または栓14は、投薬機構の作用下で、カートリッジ18内に含まれている薬剤を針17を通して放出するように、カートリッジ18内で可動である。
【0034】
投薬機構は、カートリッジ18のピストン14に機械的に連結されている。投薬機構は、薬剤16を針17を通して投薬するために、ピストンをカートリッジ18に沿って軸方向の近位方向へと移動させるように構成されている。投薬機構は、使用者が提供する起動入力に応答してピストン14に力を加えるように協働する構成要素を含む。この場合、ピストン14への力の適用をトリガする起動入力は、注射デバイス10の遠位端に位置する用量投薬ボタン13を介して受けられる。投薬機構は投薬ボタン13に機械的に連結されている。
【0035】
本体9はまた、外側ハウジング11の近位端にキャップ支持部19も含む。キャップ支持部は外側ハウジング11と同心であり、それよりも小さい直径を有しうる。キャップ支持部19はハウジング11の近位端から延びている。ONC12はキャップ支持部19を覆うように受けられて、本体9の近位端を閉じ、針17を覆う。ONC12は、円筒形の壁21と端部の壁22とを含む。ONC12が
図1Aに示すように本体9上に位置するとき、円筒形の壁21の内面はキャップ支持部19の外面に密に当接する関係で当接して、取り付けられた位置でONC12がそこに保持されるようになっている。ONC12はしたがって、摩擦のある当接によってキャップ支持部上に保持することができる。
【0036】
キャップ支持部19はその外側表面上に、1つまたはそれ以上の突出部、たとえば1つまたはそれ以上の環状のフランジを含みうる。ONC12はその内側表面上に、1つまたはそれ以上の対応する窪み、たとえば環状の窪みを含みうる。これらの構成は、ONC12が注射デバイス10に取り付けられるときに連結または協働してONC12を注射デバイス10上に保持する摩擦力を高め、この結果、注射デバイス10からONC12を取り外すために必要な力が大きくなる。
【0037】
薬剤16を注射するために、使用者によってデバイス10からONC12が取り外され、この結果
図1Bに示す構成となる。次に、注射デバイス10の近位端を、使用者であっても別の人であってもよい患者の注射部位に押し付ける。使用者は次いで、投薬ボタン13を起動する。このことにより投薬機構がピストン14を押しやり、カートリッジ18から針17を通して患者の注射部位内へと薬剤を放出させる。
【0038】
いくつかの他の注射デバイス(図示せず)は、注射デバイスの起動前に針17の先端を越えて延びている、細長いキャップ支持部19の形態の起動スリーブを含みうる。この場合、ピストン14への力の適用をトリガする起動入力は、遠位方向への起動スリーブの動きによって受けられ、この動きは注射デバイスの動作をトリガするように構成されている。ONC12は起動スリーブを覆うように受けられて、本体9の近位端を閉じる。かかる注射デバイスには投薬ボタンがなくてもよい。
【0039】
使用者がある量の薬剤を自身の皮膚内に注射した後で、針が短時間(たとえば5~20秒)所定位置に残っているのが有利である。これにより、使用者の血流の作用によって、薬剤が注射部位から拡散していく。これは多くの場合「滞留時間」と呼ばれる。注射後に針を取り外すのが早過ぎると、薬剤が注射部位から押し出され、このため使用者が総用量を受けられない結果となりうる。
【0040】
カートリッジ18は透明であり、ハウジング11にはカートリッジ18と一致する窓15が設けられており、カートリッジ18内に含まれている薬剤16が見えるようになっている。注射デバイスの使用者が調べれば、注射中に薬剤16の全量がカートリッジ18から吐出されたかどうかを判定できる。
【0041】
ハウジング11の表面にはラベルが付けられている。このラベルは、薬剤を識別する情報を含む、注射デバイス10内に含まれている薬剤についての情報100を含む。薬剤を識別する情報100は、テキストの形態であってもよい。薬剤を識別する情報100はまた、色の形態であってもよい。薬剤を識別する情報100はまた、バーコード、QRコードなどにコード化されてもよい。薬剤を識別する情報100はまた、黒色および白色のパターン、色のパターン、または色調の形態であってもよい。
【0042】
図2aは、
図1の注射デバイス10に解放可能に取り付けられる補助デバイス2の実施形態の概略図である。補助デバイス2は、
図1Aおよび
図1Bに示す注射デバイスならびに上で検討したような他のタイプの注射デバイスと共に使用するのに適している。補助デバイス2は、
図1の注射デバイス10のハウジング11を取り囲むように構成されているハウジング20を含み、これにより注射デバイス10は補助デバイス2内に少なくとも部分的に保持されるようになっているが、それでもなお、たとえば注射デバイス10が空であり交換を要するときに、補助デバイス2から取り外し可能である。注射デバイス10および補助デバイス2は場合により、注射デバイス10に対して補助デバイス2が適正に配向および配置されることを保証するための、協働する位置合わせ構成を含みうる。
【0043】
補助デバイス2は、補助デバイス2を注射デバイス10に固着および脱着するための取り付け機構8を有する。取り付け機構8は、補助デバイス2の主本体20に対して、ロック位置とロック解除位置の間で回転可能であってもよい。
図2aは、ロック位置にある取り付け機構8を示す。
図2bは、ロック解除位置にある取り付け機構8を示す。いくつかの他の実施形態では、簡単な摩擦嵌めによって、補助デバイス2を注射デバイス10に固着することができる。
【0044】
補助デバイス2のディスプレイユニット4を介して情報が表示される。ディスプレイユニット4はカラーLCDスクリーンであってもよい。ディスプレイユニットはタッチ感知
スクリーンであってもよい。たとえば、ディスプレイユニット4は、補助デバイス2の使用者にスケジュール上の次の注射の時間および日付を示す。注射デバイス10の動作中、補助デバイス2は、以下でより詳細に記載するように、使用者を支援するための情報を表示することもできる。
【0045】
補助デバイス2は、接触感知ボタンなどの使用者入力部6を少なくとも1つ含む。使用者入力部6は1つまたはそれ以上のLEDを含みうる。これらはボタンの周囲に環状に形成される、および/または、ボタンの全体を照明する。これらの使用者入力部6により、使用者は、補助デバイス2をオン/オフにすること、動作をトリガすること(たとえば、別のデバイスとの連結もしくペアリングを確立させること、および/または、補助デバイス2から別のデバイスへの情報の伝達をトリガすること)、あるいは、何かを確認することが、可能になりうる。
【0046】
図3には、
図1Aおよび
図1Bに示す注射デバイス10に取り付けられた状態の補助デバイス2の、主要な内部および外部構成要素のうちのいくつかが図示されている。補助デバイス2は外部に、ディスプレイユニット4と、使用者入力部6と、取り付け機構8と、バッテリ区画102と、を含む。
【0047】
補助デバイス2は内部に、主電子回路24を含む。主電子回路24は、プロセッサ25とメモリとを少なくとも含む。主電子回路24は、プログラムメモリおよびメインメモリの両方を含みうる。プロセッサ25はたとえば、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などであってもよい。プロセッサ25は、プログラムメモリに記憶されたプログラムコード(たとえばソフトウェアまたはファームウェア)を実行し、たとえば中間結果を保存するために、メインメモリを使用する。メインメモリはまた、行われた吐出/注射についてのログブックを記憶するために使用されてもよい。プログラムメモリはたとえば、読み出し専用メモリ(ROM)であってもよく、メインメモリはたとえば、ランダムアクセスメモリ(RAM)であってもよい。
【0048】
補助デバイス2はまた、別のデバイスへと/からワイヤレス方式で情報を送信および/または受信するように構成されているワイヤレスユニット28も含む。かかる送信はたとえば、無線送信または光送信に基づくものでありうる。いくつかの実施形態では、ワイヤレスユニット28はBluetooth(登録商標)送受信機である。代替として、ワイヤレスユニット28を、有線式で、たとえばケーブルまたはファイバ連結を介して、別のデバイスへと/から情報を送信および/または受信するように構成されている有線ユニットによって置換または補完してもよい。データが送信されるときに、転送されるデータ(値)の単位を明示的にまたは黙示的に定めることができる。たとえば、インスリン用量の場合、常に国際単位(IU)を使用してもよく、または別法として、使用される単位を明示的に、たとえばコード化された形態で転送してもよい。送信されるデータはまた、注射と関連付けられたタイムスタンプも含む。
【0049】
補助デバイス2はまた、補助デバイス2の使用者に音響フィードバックを提供するように構成されているオーディオモジュール104も含む。ワイヤレスユニット28およびオーディオモジュール104の両方を主電子回路24に連結してこれによって制御してもよい。補助デバイス2は場合により、取り付け機構がロック位置にあるのかそれともロック解除位置にあるのかを検知するように構成されているロックセンサ106を含む。
【0050】
補助デバイス2はまた、薬剤を識別する情報100を読み取るための光学センサ26も含みうる。薬剤を識別する情報100は、注射デバイスのハウジング11の色、またはハウジングのあるエリアもしくはハウジングに貼り付けたラベルの色でありうる。これらの
実施形態では、光学センサ26は、色を検出するように構成されている単純な光度計であってもよい。いくつかの他の実施形態では、薬剤を識別する情報100はQRコードまたは他の類似のコード化された情報であってもよく、光学センサ26はカメラまたはQRコードリーダであってもよい。さらに、光学センサ26の読み取りを改善するための、1つまたはそれ以上の光源を備えてもよい。光源は、光学センサ26による色の検出を改善するために、特定の波長またはスペクトルの光を提供してもよい。光源を、たとえばハウジング11の湾曲に起因する、望まれない反射が回避または低減されるような方法で配置してもよい。例示の実施形態では、光学センサ26は、注射デバイスおよび/またはその中に含まれている薬剤に関連するコード100(たとえばバーコード、これはたとえば1次元また2次元バーコードでありうる)を検出するように構成されているカメラユニットである。このコード100をたとえば、ハウジング11上に、または注射デバイス10に含まれている薬剤容器上に位置することができるが、これはいくつか例を挙げたに過ぎない。このコード100はたとえば、注射デバイスおよび/もしくは薬剤のタイプ、ならびに/またはさらなる特性(たとえば有効期限)を示すことができる。このコード100はQRコード100であってもよい。QRコードは一般に黒色および白色であり、したがって光学センサ26側での色検出は必要とされない。このことにより、光学センサ26を簡単かつ安価に製造することが可能になる。
【0051】
プロセッサ25は、使用者が適正な薬剤を注射していることを検証するために、光学センサ26が読み取った情報100を予め記憶されている情報に照らしてチェックするように、構成することができる。プロセッサ25が情報100を認識しないか、または、使用者がその時点で受けているべきである薬剤とは異なる薬剤を示すものとして情報100を認識する場合には、補助デバイス2は警告信号を生成する。警告信号は、ディスプレイユニット4に表示される単語もしくはグラフィック、またはオーディオモジュール104が生成する音を含みうる。代替として、または追加的に、補助デバイス2は、ワイヤレスユニット28を介して、外部のデバイスに警告信号を送ることができる。
【0052】
補助デバイス2は、非接触加速度センサ110(本明細書では非接触センサまたは第1の非接触センサとも呼ばれる)を含む。非接触加速度センサ110は、補助デバイスの表面または中に位置し、薬物送達デバイスの近位端の方に向けられている。たとえば、非接触加速度センサ110は補助デバイス2の表面上に配設することができるか、または補助デバイス2内に保持することができる。使用されるセンサ技術によっては、混入や損傷を防止するために、非接触加速度センサ110を透明な窓で覆ってもよい。
【0053】
非接触加速度センサ110は、使用者が注射デバイス10からONC12を取り外す際の、センサ110に対する使用者の手の速度の変化を示す信号を出力するように構成されている。非接触加速度センサ110を非接触センサと呼ぶ場合もあるが、その理由は、使用者の手の速度の変化を、センサ110と使用者の手が接触することなく検知できるからである。非接触加速度センサ110は、ONC12自体の動きを検出しないまたはできないような位置にあってもよい。
【0054】
補助デバイス2はまた、低電力プロセッサ112も含む。非接触加速度センサ110は低電力プロセッサ112と連絡しており、低電力プロセッサ112によって少なくとも部分的に制御することができる。低電力プロセッサ112および非接触加速度センサ110はいずれも、バッテリ(図示せず)から電力を引き出すことができ、補助デバイスが低電力モードで動作するように、非常に小さい電流のみを引き出すように設計されている。
【0055】
補助デバイス2はまた、1つまたはそれ以上の加速プロファイルを記憶しているメモリ(図示せず)も含みうる。1つまたはそれ以上の加速プロファイルは、ONC12を取り外すときの典型的な使用者の手の動きを表す。実施形態によっては、このメモリは別個の
構成要素であり、また実施形態によっては、このメモリは低電力プロセッサ112と一体であるかまたは非接触加速度センサ110と一体である。言い換えれば、低電力プロセッサ112を少なくとも1つの加速プロファイルを用いて事前にプログラムしてもよく、または、低電力プロセッサ112は、典型的なキャップ取り外しの動きを示す少なくとも1つの加速プロファイルにアクセスできてもよい。
【0056】
低電力プロセッサ112は主電子回路24に連結されており、主電子回路24のプロセッサ25と信号を交換するように構成されている。低電力プロセッサ112は、非接触加速度センサ110が出力した信号を受信するように、および、非接触加速度センサ110に対する使用者の手の速度の変化を判定するように、構成されている。低電力プロセッサ112は、受信した信号が使用者の手の典型的なキャップ取り外しの動きを示しているかどうかを判定するように構成されている。低電力プロセッサ112はこのことを、受信した信号を1つまたはそれ以上の加速プロファイルに照らしてチェックすることによって、行うことができる。受信した信号が使用者の手の典型的なキャップ取り外しの動きを示していると低電力プロセッサ112が判定する場合、低電力プロセッサ112は、主電子回路24に起動信号を送る。
【0057】
ONC12を取り外すときの使用者の典型的な手の動きには、ONC12を注射デバイス10に固着する静摩擦力を克服することが関与している。この力は、既に記載したようなフランジ、窪み、およびアンダーカット(undercut)などの構成によって大きくなりうる。使用者はしたがって、ONC12を引く力を大きくして最終的に摩擦力を克服し、ONCは注射デバイス10から急に解放される。この結果近位方向への急激な加速が生じ、これが非接触加速度センサ110によって検出される。使用者がONC12の解放に反応するにはある程度時間がかかる。反応するとき使用者はONC12に加える力を素早く減らし、この結果(近位方向への)急激な減速が生じ、これが非接触加速度センサ110によって検出される。急激な近位方向への加速と急激な近位方向への減速の間に、ほぼ一定の速度(またはより穏やかな加速または減速)の期間が存在しうる。第1の加速プロファイルは上記したONCキャップ取り外しプロセスを表すことができ、既に記載したようにメモリに記憶することができる。
【0058】
いくつかの場合には、摩擦連結の解放によって引き起こされた急な加速に使用者が反応するとき、使用者はONC12を停止させる前に、ONC12を注射デバイスに向けて後方に、すなわち略遠位方向に、短い距離だけ移動させる。言い換えれば、ONC12が再び停止される前に、速度の総変化が近位方向から遠位方向への方向の変化を示すまで、近位方向への急激な減速が継続する。第2の加速プロファイルは、このONCキャップ取り外しプロセス方向の変化を表しうる。
【0059】
使用者によっては、ONC12を異なるように取り外す可能性がある。たとえば、使用者によってはONC12をあまり慎重にならずに取り外す可能性がある。この結果、ONC12およびシリンジのゴム製のニードルシールドを注射デバイス10に保持する摩擦力が克服されるときに急激な加速が生じ、続いて使用者の手が非接触加速度センサ110の範囲または視野角の外に出るまで、ほぼ一定の速度(またはより穏やかな加速)の期間となる。言い換えれば、特徴的な急激な加速、および続く突然の停止(使用者の手がセンサ110の範囲から出ることに起因する)が存在する。突然の停止は、プロセッサ112が非接触加速度センサから受信する信号の終了によって示される場合がある(すなわち、加速度センサからの信号の喪失は、突然のまたは急な停止を示すものでありうる)。第3の加速プロファイルは、この慎重さの低いONCキャップ取り外しプロセスを表しうる。
【0060】
メモリにはまた、ONC12と注射デバイス10の間の静摩擦力のばらつき、および使用者が各個々のキャップ取り外しプロセスを行う仕方の違いを説明する、上記した加速プ
ロファイルの多数の異形も記憶することができる。
【0061】
低電力プロセッサ112はONC12が取り外されていると判定したときにだけ、主電子回路24に起動信号を送る。このことは、補助デバイス2の電力消費を最小限にするという利点を有するが、その理由は、低電力プロセッサ112および非接触加速度センサ110が、主電子回路よりも引き出す電力が少ないように構成されているからである。
【0062】
図4には、さらなる実施形態に係る代替の補助デバイス2が図示されている。
図3を参照して既に記載した構成要素に加えて、
図4の補助デバイス2は、位置センサ114を含む。位置センサ114を低電力プロセッサ112に連結し、これによって少なくとも部分的に制御することができる。位置センサ114は、補助デバイスの表面または中に位置し、薬物送達デバイスの近位端の方に向けられている。位置センサ114は、使用者の手の位置および/または向きを示す信号を出力するように構成されている。たとえば、位置センサ114が出力した信号から、使用者がONC12を把持するために使用しているのが自身の左手であるのかそれとも右手であるのかを判定することが可能でありうる。メモリは、左手および右手でのONC12の取り外しについて個別の加速プロファイルを記憶することができ、したがって位置センサ114からの信号を、低電力プロセッサ112にどの加速プロファイルをチェックすべきかを知らせるために使用することができる。いくつかの実施形態では、メモリは、使用者の左手または右手で把持されるときのONCの特定の向きと関連付けられた、個別の向きプロファイルを記憶することができる。この場合、位置センサ114は受動赤外センサ、静電容量式変位センサ、または3軸電子センサ(たとえば3軸加速度計もしくは3軸コンパス)であってもよい。位置センサ114は、これらのタイプのセンサのうちの1つまたはそれ以上を含みうる。
【0063】
使用者がONC12を把持するために使用しているのが自身の左手かそれとも右手かを低電力プロセッサ112が判定した後で、低電力プロセッサ112はこの情報を使用して、ディスプレイ4に表示される情報の向きを制御することができる。たとえば、ONC12が使用者の左手で把持されている場合には、低電力プロセッサ112はディスプレイ4に、ディスプレイ4が使用者がこの(すなわち「左利きの」)向きで容易に読み取り可能なフォーマットで使用者に対して情報を表示させる信号を送ることができる。しかしながら、注射デバイス10が使用者の右手で把持されている場合には、低電力プロセッサ112はディスプレイ4に、ディスプレイ4が使用者がこの(すなわち「右利きの」)向きで容易に読み取り可能なフォーマットで使用者に対して情報を表示させる信号を送ることができる。このことにより、ディスプレイの可読性が改善されて、デバイスの使い易さが改善される。
【0064】
いくつかの実施形態では、位置センサ114を、補助デバイス10の向きおよびしたがって注射デバイス10の向きを判定するように構成することができる。使用者がONC12を取り外すために注射デバイス10をつかむとき、使用者は通常、注射デバイス10を特定の向きで保持する。位置センサ114は、向きを検出し、低電力プロセッサ112に信号を送るように構成することができる。同様に、注射デバイスが使用される(すなわち注射が行われる)とき、注射デバイスは使用者によって特定の向きに保持される。位置センサ114は、この向きを検出し、低電力プロセッサ112に信号を送るように構成することができる。
【0065】
低電力プロセッサ112は、非接触加速度センサ110が出力した信号を受信するように、および注射デバイスの向きを判定するように、構成されている。低電力プロセッサ112は、受信した信号が示しているのが、ペンの向きが使用者がキャップを取り外す向きであることか、それとも注射の開始直前の向きであることか、を判定するように構成されている。低電力プロセッサ112はこのことを、受信した信号を1つまたはそれ以上の向
きプロファイルに照らしてチェックすることによって、行うことができる。受信した信号が典型的な向きを示していると低電力プロセッサ112が判定する場合、低電力プロセッサ112は、主電子回路24に起動信号を送る。受信した信号が注射デバイス10が典型的な向きではないことを示していると低電力プロセッサ112が判定する場合(たとえばそれが特定のプロファイルと相関しない場合)には、低電力プロセッサ112は主電子回路24に起動信号を送らなくてもよく、または、低電力プロセッサ112は、注射デバイス10が典型的な向きではないことを示す信号を送ってもよい。
【0066】
非接触加速度センサ110は、いくつかの異なる形態をとることができる。たとえば、電磁センサが電磁反射に基づいて動作する。センサ110は、可視光または赤外光を使用し、使用者の移動する手から反射した光のドップラー偏移を利用して、加速を検出することができる。代替として、マイクロ波または電波を使用してもよい。これらは可視光よりもエネルギーが本来的に低いという利点を有しており、補助デバイス2のハウジング20の不透明なセクションを通過できる。代替として、非接触加速度センサ110は、静電容量式変位センサとして具現化してもよい。使用者の手の近接度によって、センサが検出する静電容量が変化する。いくつかの他の実施形態では、非接触加速度センサ110と絶対位置センサ114を組み合わせたものとして、静電容量式変位センサを使用してもよい。
【0067】
また補助デバイス2を、加速プロファイルを作成または更新できる機械学習モードにすることもできる。たとえば、使用者または技師は、タッチスクリーン4を使用して、非接触加速度センサの学習モードに入ることができる。使用者または技師は次いで、補助デバイス2のディスプレイ4からの指示の下で、注射デバイス10のONC12を繰り返し取り外して交換することができる。このようにして、補助デバイス2は、現実世界の状況により良好に適合するように加速プロファイルを洗練させること、または、特定の使用者がONC12を取り外す仕方により良好に適合する新しい加速プロファイルを作成することができる。
【0068】
補助デバイス2は、いくつかの他の構成要素を含むことおよびいくつかの他の機能を実行することができる。たとえば補助デバイス2のハウジング20は、注射デバイス10の外側ハウジング11と隣り合うようにおよび注射デバイス内の1つまたはそれ以上の可動構成要素の動きを検出するように配置されている、少なくとも1つのさらなる非接触センサ(図示せず)を保持することができる。可動構成要素の動きを、注射デバイスの起動および薬剤の吐出と関連付けることができる。可動構成要素の例は、(i)ばね、たとえば薬剤吐出中に圧縮解除される予め圧縮したばね、(ii)注射デバイスが起動前の状態にあるかそれとも起動後の状態にあるかに応じて、2つの異なる構成の間を移動するように構成されている要素、(iii)医薬品の吐出中に、長手方向にたとえば注射デバイス10の遠位端から近位端まで移動する、摺動可能な要素、または(iv)医薬品の吐出中に回転するように構成されている回転可能なスリーブ。
【0069】
主電子回路24は、少なくとも1つのさらなる非接触センサからの信号を受信し、注射デバイス10の動作状態を推測し、注射デバイス10の動作のタイミングに関する情報をメインメモリに記録させるおよび/またはワイヤレスユニット28を介して外部のデバイスへと送信させることができる。主電子回路はまた、注射デバイス10の動作状態に関する情報を補助デバイス2のディスプレイ4に表示させることもできる。たとえば、ディスプレイ4は、注射デバイスが起動前の状態か、現在注射中の状態か、保持(もしくは「滞留時間」)状態か、それとも起動後の状態かを示すことができる。
【0070】
図5は、補助デバイス2が行うことのできる動作を説明するフローチャートである。
【0071】
工程500では、低電力プロセッサ112は、非接触加速度センサ110から信号を受
信する。工程502では、1つまたはそれ以上の加速プロファイルにアクセスする。既に記載したように、低電力プロセッサ112または非接触加速度センサ110は、加速プロファイルを用いて事前にプログラムすることができる。代替として、低電力プロセッサ112は、メモリにアクセスして加速プロファイルを読み出してもよい。工程504では、非接触加速度センサから出力された信号を1つまたはそれ以上の加速プロファイルと比較して、一致を判定する。一致は必ずしも厳密である必要はなく、各加速プロファイルの様々なセクションについて公差を設定してもよい。工程506では、低電力プロセッサ112は、比較に基づいて、薬物送達デバイスの外側針キャップが取り外されていると判定する。
【0072】
工程500から506は、補助デバイス2が注射デバイス10に取り付けられているときはいつでも、たとえば取り付け機構8がロックされていることをロックセンサ106が示しているときはいつでも、切れ目なく継続するプロセスであってもよい。薬物送達デバイスの外側針キャップが取り外されていると低電力プロセッサ112が判定すると、工程508では、低電力プロセッサ112は、補助デバイスの主電子回路24に起動信号を送る。主電子回路24は次いでそれらの、注射デバイス10内の構成要素の動きをモニタし、状態を判定し、ディスプレイ4に表示する機能を実行することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、補助デバイス2によって実行されるさらなる動作工程が存在してもよい。低電力プロセッサ112は、非接触加速度センサ110および位置センサ114の両方から受信した信号に基づいて、ONC12が取り外されているかどうかを判定してもよい。たとえば、非接触加速度センサ110および位置センサ114の両方から受信した信号がONC12が取り外されていることを示す場合には、低電力プロセッサ112はONC12が取り外されていると判定し、補助デバイスの主電子回路24に起動信号を送ってもよい。しかしながら、低電力プロセッサ112が非接触加速度センサ110または位置センサ114のいずれかから1つの信号しか受信しない場合には、低電力プロセッサ112はONC12が取り外されていないと判定し、補助デバイスの主電子回路24に起動信号を送らなくてもよい。これら追加の処理動作は、工程506および508の一部を形成してもよく、または、別個の工程もしくは一連の工程であってもよい。
【0074】
このように非接触加速度センサ110から受信した信号および位置センサ114から受信した信号の両方を使用する(すなわち2つのソースから情報を受信する)ことによって、ONC12が取り外されているかどうかのより正確な判定を行うことができ、この結果、電力消費を低減することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、薬物送達デバイスのONC12が取り外されていると低電力プロセッサ112が判定した後で、低電力プロセッサ112は、タイマ(たとえばカウントダウンタイマ)を開始することができる。低電力プロセッサ112がデバイスの構成要素から、タイマが設定した期間(たとえば1分)内に起動スリーブまたはピストン14が動作していることを示す信号を受信しない場合には、低電力プロセッサ112はディスプレイ4に信号を送ることができる。このことは、使用者がONC12を取り外したが注射手順を開始していないときに生じうる。この場合には、針の孔内に含まれている薬剤が空気と接触し、たとえば干上がってしまう(すなわち蒸発により)可能性があるため、針が詰まるリスクが存在する。したがって、ディスプレイ4がこの状態を示す信号を受信する場合には、ディスプレイ4は使用者にONC12が取り外されていることを思い出させるための警告状態を表示し、注射を始めるかまたはONC12を交換するよう使用者に促すことができ、このことにより、ONC12がデバイスから取り外される時間の量が低減され、針の詰まりの防止に寄与する。代替としてまたは追加的に、いくつかの実施形態では、使用者にはまた、可聴信号によって注射の開始またはキャップの交換を促すこともできる(たとえば、低電力プロセッサ112がスピーカまたはアラームに信号を送ってもよい
)。
【0076】
いくつかの実施形態では、タイマ期間を事前に定め、補助デバイスのプログラムメモリに記憶することができる。代替としてまたは追加的に、タイマ期間は、使用者が変更しデバイスのメインメモリに記憶すること、または、機械学習モードを使用して作成もしくは更新しメインメモリに記憶することができる。プロセッサ112はさらに、起動スリーブまたはピストン14の動きを検出するセンサ(図示せず)から受信した、注射が行われていることを示す信号を使用するように構成することができる。
【0077】
図6には、8つの異なる注射器ペンの状態(600~607)を示す、デバイス2のディスプレイ4が描かれている。状態600は、(上で検討したように)ONC12の取り外しが検出された後でおよび注射開始よりも前に、ディスプレイ4に表示することができる。見て取れるように、ディスプレイ4は、個々に照明可能ないくつかのセグメント、バー、またはブロック115を示す。ディスプレイは代替としては、アナログ時計またはサイズの変わるシェーディングしたエリアなど、時間の変化を表現する他の手段を示してもよい。注射の開始前は、ブロック115がディスプレイ4の大部分を占めており、このことは、薬剤送達デバイスが薬剤を含むことおよび注射がまだ開始されていないことを示している。
【0078】
注射中、デバイス2内に含まれている薬剤の量は減少し、このことが、プロセッサ112が起動スリーブまたはピストン14の動きを検出するセンサから受信した信号によって検出される。このことは、ディスプレイ4を占めるブロック115の数の変化によって示すことができる。たとえば、注射中、ブロック115の数は(状態601に示すように)減少する。いくつかの実施形態では、ディスプレイ4は全てのブロック115が照明された状態で開始し、薬剤送達デバイスが未使用であることが示されている。次いでブロック115が右から左へと順次取り外され、最終的にはブロックが表示されなくなるが、これは薬剤送達デバイスが空であることを示す。ディスプレイ注射プロセス中は動的であってもよく、たとえばブロック115は明滅してもよい。
【0079】
使用者がある量の薬剤を自身の皮膚内に注射した後で、針が短時間(たとえば5~20秒)所定位置に残されるのが有利である。これは「滞留時間」または「保持時間(hold time)」として知られている。これにより、使用者の血流の作用によって、薬剤が注射部位から拡散していく。注射後に針を取り外すのが早過ぎると、薬剤が注射部位から押し出され、このため使用者が総用量を受けられない結果となりうる。既に述べたように、プロセッサ112は、起動スリーブまたはピストンのセンサから受信した信号の変化を使用して、注射を実行中であると判定することができる。プロセッサ112は、センサから受信した信号の変化が止まったときに、注射が完了したと推測することができる。この検出はしたがって、注射デバイス10の針を所定の長さの時間の間注射部位内に残すように指示する使用者への標示をディスプレイユニット4に表示するための、トリガとして使用することができる。この標示は任意の好適な形態のもの、たとえば、カウントアップまたはカウントダウンするタイマ、または拡大/縮小する、もしくは塗りつぶされたり色が薄くなったりするグラフィックであってもよい。状態602、603、604、605、および606に示すように、インジケータはある時間の期間にわたってカウントダウンしうる。たとえば、インジケータは5秒の期間にわたってカウントダウンしてもよい。このことは、ディスプレイを占めるブロック115の数の減少によって示すことができる。状態607に示すように、滞留時間の終わりに、ディスプレイは、注射が完了したことを使用者に知らせるように変化してもよい。使用者には、注射が完了したことを可聴信号によって知らせることもできる。他の標示の方法(たとえば振動)を使用してもよい。
【0080】
図6に示す状態以外に、ディスプレイは使用者に他の情報を示すことができる。たとえ
ば、ディスプレイは使用者に、注射デバイスをいつ交換すべきか(たとえばいつ空になるか)を示すことができる。
【0081】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0082】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含みうる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0083】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルでありうる。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(たとえば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジでありうるか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0084】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(たとえば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルク・インデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0085】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造たとえばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかでありうる。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、たとえば、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0086】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0087】
インスリン誘導体の例は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0088】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、たとえば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチ
ド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラグルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0089】
オリゴヌクレオチドの例は、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))である。
【0090】
DPP4阻害剤の例は、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0091】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0092】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0093】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0094】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本開示に有用
な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、たとえば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0095】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0096】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0097】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0098】
本明細書に記載するAPI、調合物、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素の修正(追加および/または削除)を、本開示の最大限の精神および範囲から逸脱することなく行うことができ、そこにはかかる修正形態およびそのありとあらゆる等価物が包含されていることを、当業者は理解するであろう。