(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-02
(45)【発行日】2023-11-13
(54)【発明の名称】電解質分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/28 20060101AFI20231106BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20231106BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20231106BHJP
【FI】
G01N27/28 321Z
G01N27/416 351A
G01N27/416 351J
G01N35/02 B
(21)【出願番号】P 2022540001
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2021007995
(87)【国際公開番号】W WO2022024433
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2020130189
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 望
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悟郎
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-266757(JP,A)
【文献】登録実用新案第3107751(JP,U)
【文献】特開平6-273372(JP,A)
【文献】実開平4-66573(JP,U)
【文献】特開2017-156089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
G01N 35/00-35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルプローブにより分注された試料を希釈する希釈槽と、前記希釈槽で希釈された試料中の特定のイオン濃度を測定するイオン選択性電極とをそれぞれ有する複数の電極部ユニットを備え、
前記複数の電極部ユニットのうち少なくとも1つの電極部ユニットは、
前記サンプルプローブの動作範囲の下方において前記希釈槽の上方にプローブ部が前記希釈槽まで下降するために設けられた開口部を有する着脱可能に配置された第1のカバーと、
前記第1のカバーとは別体で設けられ、前記サンプルプローブの動作範囲の下方とならない範囲において前記イオン選択性電極の上方を覆うように着脱可能に配置された第2のカバーとを有することを特徴とする電解質分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の電解質分析装置において、
前記複数の電極部ユニットは、前記試料を収容した検体容器から前記電極部ユニットに前記試料を分注する前記サンプルプローブの動線に沿って前記希釈槽が位置するように配置され、
前記複数の電極部ユニットのうち少なくとも前記検体容器に最も近い位置に配置された前記電極部ユニットは、前記第1のカバーと前記第2のカバーとを有することを特徴とする電解質分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の電解質分析装置において、
前記複数の電極部ユニットは、それぞれ前記第1のカバーと前記第2のカバーとを有することを特徴とする電解質分析装置。
【請求項4】
請求項2記載の電解質分析装置において、
前記複数の電極部ユニットのうち前記検体容器から最も離れた位置に配置された前記電極部ユニットは、前記希釈槽と前記イオン選択性電極との上方に
プローブ部が前記希釈槽まで下降するために設けられた開口部を有し、その他の部分を一体的に覆うように配置された第3のカバーを有することを特徴とする電解質分析装置。
【請求項5】
請求項2記載の電解質分析装置において、
前記サンプルプローブおよび前記電極部ユニットの動作を制御する制御装置を備え、
前記少なくとも1つの電極部ユニットは、前記第2のカバーを前記電極部ユニットに対して固定可能なインターロックを有し、
前記制御装置は、前記少なくとも1つの電極部ユニットが測定を停止している場合に、前記第2のカバーの前記電極部ユニットからの取り外しを許容するように前記インターロックを制御することを特徴とする電解質分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質分析装置は、人体の血液、尿等の電解質溶液中に含まれる特定の電解質濃度を測定する装置であり、イオン選択性電極を利用して濃度測定を行うものである。電解質分析装置としては、例えば、フロー型電解質分析装置が知られている。フロー型電解質分析装置では、電解質溶液としての血清を直接、あるいは検体希釈液により希釈したサンプル溶液を、イオン選択性電極に供給し、イオン選択性電極と比較電極液との液間電位を測定する。続いて(又は測定に先立って)、イオン選択性電極に電解質濃度が既知である標準液を供給し、血清(又はサンプル溶液)と同様に比較電極液との液間電位を測定する。そして、標準液の液間電位と血清(又はサンプル溶液)の液間電位の2つの液間電位から血清(又はサンプル溶液)の電解質濃度を算出することができる。
【0003】
このようなフロー型電解質分析装置で用いられるイオン選択性電極は、有効期限や測定回数などに制限があり、定期的な交換を必要とする。そのため、例えば、分析中にイオン選択性電極が有効期限を迎えた場合には、新しいイオン選択性電極に交換するまで分析を行うことができず、処理能力の低下を招いてしまう。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、複数個の電気化学的センサからなるセンサ群を具備した生体液分析装置において、上記センサ群に含まれるセンサと同一の電気化学的センサを含むセンサ群を複数個互いに並列に配置し、試料測定時にいずれかのセンサ群を選択可能に構成した生体液分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術においては、例えば、並列に配置した複数のセンサを覆うカバーを開ける際にサンプルプローブと干渉することが考えられるため、センサを交換する際には分析を中断する必要があり、処理能力の低下を招いてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、処理能力の低下を抑制しつつイオン選択性電極を交換することができる電解質分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、サンプルプローブにより分注された試料を希釈する希釈槽と、前記希釈槽で希釈された試料中の特定のイオン濃度を測定するイオン選択性電極とをそれぞれ有する複数の電極部ユニットを備え、前記複数の電極部ユニットのうち少なくとも1つの電極部ユニットは、前記サンプルプローブの動作範囲の下方において前記希釈槽の上方にプローブ部が前記希釈槽まで下降するために設けられた開口部を有する着脱可能に配置された第1のカバーと、前記第1のカバーとは別体で設けられ、前記サンプルプローブの動作範囲の下方とならない範囲において前記イオン選択性電極の上方を覆うように着脱可能に配置された第2のカバーとを有するものとする。
【発明の効果】
【0009】
処理能力の低下を抑制しつつイオン選択性電極を交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】電解質分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】電解質分析装置の分析部における第1及び第2の電極部ユニットの構造例および配置例を概略的に示す上面図であり、イオン選択性電極群カバーが第1の電極部ユニットに装着されている状態を示す図である。
【
図3】電解質分析装置の分析部における第1及び第2の電極部ユニットの構造例および配置例を概略的に示す上面図であり、イオン選択性電極群カバーが取り外されている状態を示す図である。
【
図4】電解質分析装置の分析部における第1及び第2の電極部ユニットの構造例および配置例を概略的に示す上面図であり、イオン選択性電極群が取り外されている状態を示す図である。
【
図5】電解質分析装置における処理内容を示すフローチャートである。
【
図6】第2の実施の形態の電解質分析装置の分析部における第1及び第2の電極部ユニットの構造例および配置例を概略的に示す上面図である。
【
図7】電解質分析装置の分析部における第1及び第2の電極部ユニットの構造例および配置例を概略的に示す上面図であり、希釈槽カバーが取り外されている状態を示す図である。
【
図8】電解質分析装置の分析部における第1の電極部ユニットの構造例および配置例を概略的に示す側面図であり、イオン選択性電極群カバーが第1の電極部ユニットに装着されている状態を示す図である。
【
図9】電解質分析装置の分析部における第1の電極部ユニットの構造例および配置例を概略的に示す側面図であり、イオン選択性電極群カバーが第1の電極部ユニットに装着されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を
図1~
図5を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る電解質分析装置の全体構成を概略的に示す図である。なお、本実施の形態においては、電解質分析装置の一例として、イオン選択性電極(ISE:Ion Selective Electrode)を用いたフロー型電解質分析装置(以降、単に電解質分析装置と称する)を示して説明する。
【0014】
図1において、電解質分析装置100は、分析対象である試料(例えば、患者の検体など)の中の特定のイオン濃度を測定する分析部1と、分析部1を含む電解質分析装置全体の動作を制御する制御部31(制御装置)とを備えている。
【0015】
分析部1は、分析対象である試料を収容する検体容器52と、試料中のイオン濃度を測定する複数の電極部ユニット(本実施の形態においては第1及び第2の電極部ユニット11,12の2つの電極部ユニットを例示する)と、検体容器52に収容された試料を第1及び第2の電極部ユニット11,12に分注するサンプルプローブ22と、比較電極液を収容する比較電極液ボトル55a,55bと、希釈液を収容する希釈液ボトル56a,56bと、測定後に不要となった各溶液を廃液として収容する廃液溜め54と、廃液を吸引して廃液溜め54に排出する吸引器53a,53bとから概略構成されている。
【0016】
サンプルプローブ22は、一端を中心として水平方向に回動可能に設けられたカバー部22aと、カバー部22aの他端から下方に突出して延在するように配置されたプローブ部22bとから構成されている。サンプルプローブ22は、上下方向に移動可能であり、カバー部22aを回動することでプローブ部22bの位置を変えるとともに、上下方向に移動させることで検体容器52や第1及び第2の電極部ユニット11,12への挿入を行い、図示しないポンプ装置によって試料の分注(吸引および吐出)を行う。なお、
図1及び後述する
図2~
図4においては、サンプルプローブ22の位置について、検体容器52から試料を吸引する場合を位置22A、試料を第1の電極部ユニット11に分注(吐出)する場合を位置22B、試料を第2の電極部ユニット12に分注(吐出)する場合を位置22Cとして括弧書きで示している。
【0017】
第1の電極部ユニット11は、検体を希釈液ボトル56aから流路を介して送られる希釈液により希釈する希釈槽23aと、希釈槽23aから流路を介して送られる希釈された試料のイオン濃度を測定する複数のイオン選択性電極からなるイオン選択性電極群24aと、比較電極液ボトル55aから流路を介して送られる比較溶液が接液する比較電極24bとを有している。イオン選択性電極群24aは、例えば、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、カルシウムイオン(Ca++)、クロールイオン(Cl-)などのイオン濃度をそれぞれ測定する複数のイオン選択性電極から構成されている。
【0018】
第1の電極部ユニット11における測定処理では、まず、検体容器52に収容された試料を位置22Aにおいて吸引したサンプルプローブ22が位置22Bに移動し、希釈槽23aに吐出(分注)される。続いて、流路の開閉を行うバルブや液体の吸引送出を行うシリンジなどで構成された送液機構58aにより、希釈液ボトル56aの希釈液が流路を介して希釈槽23aに吐出される。これにより、希釈槽23aにおいて試料が希釈・撹拌される。希釈槽23aで希釈・攪拌された試料(以降、試料溶液と称する)は、吸引器53aにより吸引されることで流路を介してイオン選択性電極群24aに送液される。また、送液機構57aにより、比較電極液ボトル55aの比較電極液が流路を介して比較電極24bに送液される。
【0019】
イオン選択性電極群24aに送液された試料溶液と比較電極24bに送液された比較電極液とが接液することで、イオン選択性電極群24aの各イオン選択性電極と比較電極24bとが電気的に導通する。この状態で、比較電極24bとイオン選択性電極群24aの各イオン選択性電極との電位差を測定し、得られた電位差に基づいて試料溶液に含まれる特定のイオンの濃度を測定する。
【0020】
具体的には、例えば、イオン選択性電極群24aの各イオン選択性電極には、試料溶液中の特定のイオンの濃度に応じて起電力が変化する性質を持つイオン感応膜が貼り付けられている。イオン選択性電極は、試料溶液中の各イオン濃度に応じた起電力を出力するので、イオン選択性電極群24aの各イオン選択性電極と比較電極24bとの間の起電力を取得し、各イオンについて取得した起電力から検体中のイオン濃度を演算する。
【0021】
測定結果は、制御部31に送られ、例えば、図示しない表示装置に表示される。イオン濃度の測定が終了すると、イオン選択性電極群24a及び比較電極24bの流路の試料溶液及び比較電極液が吸引器53aにより吸引され、廃液溜め54に排出される。
【0022】
第2の電極部ユニット12は、第1の電極部ユニット11と同様の構成を有している。すなわち、第2の電極部ユニット12は、検体を希釈液ボトル56bから流路を介して送られる希釈液により希釈する希釈槽23bと、希釈槽23bから流路を介して送られる希釈された試料のイオン濃度を測定する複数のイオン選択性電極からなるイオン選択性電極群24cと、比較電極液ボトル55bから流路を介して送られる比較溶液が接液する比較電極24dとを有している。
【0023】
第2の電極部ユニット12における測定処理では、まず、検体容器52に収容された試料を位置22Aにおいて吸引したサンプルプローブ22が位置22Cに移動し、希釈槽23bに吐出(分注)される。続いて、流路の開閉を行うバルブや液体の吸引送出を行うシリンジなどで構成された送液機構58bにより、希釈液ボトル56bの希釈液が流路を介して希釈槽23bに吐出される。これにより、希釈槽23bにおいて試料が希釈・撹拌される。希釈槽23bで希釈・攪拌された試料(以降、試料溶液と称する)は、吸引器53bにより吸引されることで流路を介してイオン選択性電極群24cに送液される。また、送液機構57bにより、比較電極液ボトル55bの比較電極液が流路を介して比較電極24dに送液される。
【0024】
イオン選択性電極群24cに送液された試料溶液と比較電極24dに送液された比較電極液とが接液することで、イオン選択性電極群24cの各イオン選択性電極と比較電極24dとが電気的に導通する。この状態で、比較電極24dとイオン選択性電極群24cの各イオン選択性電極との電位差を測定し、得られた電位差に基づいて試料溶液に含まれる特定のイオンの濃度を測定することができる。測定結果は、制御部31に送られ、例えば、図示しない表示装置に表示される。イオン濃度の測定が終了すると、イオン選択性電極群24c及び比較電極24dの流路の試料溶液及び比較電極液が吸引器53bにより吸引され、廃液溜め54に排出される。
【0025】
図2~
図4、
図7は、電解質分析装置の分析部における第1及び第2の電極部ユニットの構造例および配置例を概略的に示す上面図であり、
図2はイオン選択性電極群カバーが第1の電極部ユニットに装着されている状態を、
図3はイオン選択性電極群カバーが取り外されている状態を、
図4はイオン選択性電極群が取り外されている状態、
図7は希釈槽カバーが取り外されている状態をそれぞれ示している。また、
図8は、電解質分析装置の分析部における第1の電極部ユニットの構造例および配置例を概略的に示す側面図であり、プローブが希釈層の上方に移動した状態、
図9は、プローブが希釈層まで下降した状態をそれぞれ示している。
【0026】
図2に示すように、試料を収容した検体容器52から電極部ユニット11,12に試料を分注するサンプルプローブ22は、自身の長手方向端部の所定の位置を回転中心軸として回転移動し、位置22A、位置22B、位置22Cの各位置間を移動できるよう構成される。第1及び第2の電極部ユニット11,12は、サンプルプローブ22の回転中心軸の位置する長手方向端部とは反対側の端部に位置するプローブ部22bがサンプルプローブ22の回転移動に伴って描く動線に沿って希釈槽23a,23bが位置するように配置されている。また、第1及び第2の電極部ユニット11,12は、イオン選択性電極群24a,24c及び比較電極24b,24dがサンプルプローブ22の移動範囲(すなわち、カバー部22aの動作範囲)の下方よりも外側に位置するように配置されている。また、検体容器52(位置22Aにおけるサンプルプローブ22のプローブ部22bの位置)に最も近い位置に第1の電極部ユニット11が、検体容器52から最も離れた位置に第2の電極部ユニット12がそれぞれ配置されている。
【0027】
第1の電極部ユニット11は、サンプルプローブ22の動作範囲の下方において希釈槽23aの上方に、プローブ部22bが希釈槽23aまで下降するために設けられた開口部を有する着脱可能に配置された希釈槽カバー25(第1のカバー)と、サンプルプローブ22の動作範囲の下方とならない範囲においてイオン選択性電極群24a及び比較電極24bの上方を覆うように着脱可能に配置されたイオン選択性電極群カバー26(第2のカバー)とを有している。また、第2の電極部ユニット12は、希釈槽23bとイオン選択性電極群24c及び比較電極24dとの上方に、プローブ部22cが希釈槽23bまで下降するために設けられた開口部を有し、その他の部分を覆うように配置された第3のカバー27を有している。また、
図8に示すように第1の電極部ユニット11は、プローブ部22bが希釈槽23aまで下降するために設けられた開口部を有する着脱可能に配置された希釈槽カバー25(第1のカバー)の下方に希釈槽23aを有し、
図9に示すように
プローブ部22bが希釈槽23aまで下降し、試料を分注する。
【0028】
イオン選択性電極群カバー26は、第1の電極部ユニット11に装着されてイオン選択性電極群24aを覆う状態において、その内側(下方側であってイオン選択性電極群24a側)にソレノイドロック受け26aを有している。また、第1の電極部ユニット11のイオン選択性電極群カバー26とは異なる構造部には、ソレノイドロック受け26aに対応する位置にソレノイドロック機構11aが設けられている。ソレノイドロック機構11aは、制御部31からの電気信号に基づいて一部を突出させてソレノイドロック受け26aと係合させることにより、イオン選択性電極群カバー26の第1の電極部ユニット11に対する移動を制限して固定し、取り外しできない状態(ロック状態)とする。また、ソレノイドロック機構11aは、制御部31からの電気信号に基づいて突出した一部をソレノイドロック受け26a側から退避させることにより、イオン選択性電極群カバー26を第1の電極部ユニット11に対して取り外し可能な状態(ロック解除状態)とする。ここで、ソレノイドロック機構11a及びソレノイドロック受け26aは、イオン選択性電極群カバー26(第2のカバー)を電極部ユニット11に対して固定可能なインターロックを構成する。
【0029】
ソレノイドロック機構11aがロック解除状態である場合には、
図3に示すように、イオン選択性電極群カバー26を第1の電極部ユニット11に対して取り外すことができる。イオン選択性電極群カバー26を取り外すことにより、オペレータは、イオン選択性電極群24aや比較電極24bなど、第1の電極部ユニット11の内部の構成物にアクセスすることができる。
【0030】
イオン選択性電極群24aは、第1の電極部ユニット11に対して着脱可能に設けられており、オペレータによってイオン選択性電極群装着部124aから取り外すことができる(
図4参照)。オペレータは、例えば、使用回数などの要件に基づいて交換が必要となったイオン選択性電極群24aを取り外し、新たなイオン選択性電極群24aをイオン選択性電極群装着部124aに取り付けることで、イオン選択性電極群24aを交換することができる。なお、イオン選択性電極群装着部124aは、イオン選択性電極群24aが正常に装着された状態であることを検知するセンサ機能を有しており、検知結果を電気信号によって制御部31に送信する。すなわち、制御部31は、イオン選択性電極群装着部124aの検知結果によって、イオン選択性電極群24aが装着された状態(
図3参照)と、イオン選択性電極群24aが取り外された状態(
図4参照)とを判定することができる。
【0031】
また、第1の電極部ユニット11には、イオン選択性電極群カバー26が第1の電極部ユニット11に対して正常に装着された状態であることを検知するイオン選択性電極群カバー装着センサ11cと、ソレノイドロック機構11aが動作していること(ロック状態となっていること)を検知するロック機構動作検知センサ11bとが設けられている。
【0032】
イオン選択性電極群カバー装着センサ11cは、例えば、押下されることで対象を検知する機械式センサであり、ソレノイドロック受け26aによって押下される位置に配置することで、イオン選択性電極群カバー26が正常な位置に装着されていることを検知する。イオン選択性電極群カバー装着センサ11cの検知結果は、電気信号によって制御部31に送られる。すなわち、制御部31は、イオン選択性電極群カバー装着センサ11cの押下が検知された場合(
図2等参照)には、イオン選択性電極群カバー26が正常な位置に装着されていると判定し、押下が検知されない非検知の場合(
図3等参照)には、イオン選択性電極群カバー26が装着されていない(或いは、正常な位置に装着されていない)と判定することができる。
【0033】
また、ロック機構動作検知センサ11bは、例えば、押下される(押し込まれる)ことで対象を検知する機械式センサであり、ソレノイドロック機構11aの一部が突出することによって押下される位置に配置することで、ソレノイドロック機構11aが動作している(ロック状態となっている)ことを検知する。ロック機構動作検知センサ11bの検知結果は、電気信号によって制御部31に送られる。すなわち、制御部31は、ロック機構動作検知センサ11bの押下が検知された場合(
図2等参照)には、ソレノイドロック機構11aが動作している(ロック状態となっている)と判定し、押下が検知されない非検知の場合(
図3等参照)には、ソレノイドロック機構11aが動作している(ロック解除状態となっている)と判定することができる。また、制御部31は、ソレノイドロック機構11aを動作させる電気信号を出力し、かつ、ロック機構動作検知センサ11bの押下が検知されない場合には、ソレノイドロック機構11aの動作に異常が生じていると判定することができる。
【0034】
以上のように構成した電解質分析装置100の動作を
図5を参照しつつ説明する。
【0035】
図5は、電解質分析装置における処理内容を示すフローチャートである。
【0036】
図5において、電解質分析装置100の制御部31は、まず、第1の電極部ユニット11のイオン選択性電極群24aの交換が必要か否かを判定する(ステップS100)。イオン選択性電極群24aの交換の要否判定は、例えば、測定に用いた回数が予め定めた制限回数を超えたか否かで判定する。
【0037】
ステップS100での判定結果がYSEの場合、すなわち、イオン選択性電極群24aの交換が必要であると判定した場合には、第1の電極部ユニット11の測定処理を停止し(ステップS110)、第1の電極部ユニット11のイオン選択性電極群24aの交換が必要であり、第1の電極部ユニット11による測定処理を停止したことを、制御部31の図示しない表示装置への表示や音声等によりオペレータに報知するとともに(ステップS120)、第1の電極部ユニット11のソレノイドロック機構11aの突出した一部をソレノイドロック受け26aから退避させることにより、ロック解除状態(インターロック解除)とする(ステップS130)。
【0038】
このとき、第1の電極部ユニット11のイオン選択性電極群カバー26は取り外し可能となり、オペレータはイオン選択性電極群24aにアクセスして交換することが可能となる。また、サンプルプローブ22の可動範囲の下方に位置する希釈槽カバー25は取り外さないため、サンプルプローブ22が第1の電極部ユニット11の上方を通過可能であり、可動中である第2の電極部ユニット12への試料の分注を継続することができ、測定処理を継続することができる。すなわち、イオン選択性電極群24cの交換が必要でない第2の電極部ユニット12へのサンプルプローブ22による試料の分注を阻害せずに第2の電極部ユニット12による測定処理を継続することで、処理能力の低下を抑制しつつ第1の電極部ユニット11のイオン選択性電極群24aを交換することができる。
【0039】
続いて、オペレータによるイオン選択性電極群24aの交換が終了したかどうかを判定する(ステップS140)。交換の終了判定は、例えば、イオン選択性電極群24aの正常な装着がイオン選択性電極群装着部124aによって検知され、かつ、イオン選択性電極群カバー26の正常な装着がイオン選択性電極群カバー装着センサ11cによって検知された場合に、交換終了と判定することにより行う。
【0040】
ステップS140での判定結果がNOの場合、すなわち、イオン選択性電極群24aの交換が終了していない場合には、ステップS110~S130の処理を継続する。
【0041】
また、ステップS140での判定結果がYESの場合、すなわち、イオン選択性電極群24aの交換が終了したと判定した場合には、続いて、第1の電極部ユニット11のソレノイドロック機構11aの一部をソレノイド受け26a側に突出させてロック状態(インターロック稼働)とする(ステップS150)。
【0042】
続いて、インターロックが正常に動作したかどうかを判定する(ステップS160)。インターロックの動作判定は、ロック機構動作検知センサ11bからの検知結果に基づいて行う。
【0043】
ステップS160での判定結果がNOの場合には、インターロックの動作確認を指示する内容の上方を、制御部31の図示しない表示装置への表示や音声等によりオペレータに報知し(ステップS161)、ステップS150の処理に戻る。
【0044】
また、ステップS160での判定結果がYESの場合には、第1の電極部ユニット11を稼働して測定処理を開始し(ステップS170)、処理を終了する。
【0045】
また、ステップS100での判定結果がNOの場合には、第2の電極部ユニット12のイオン選択性電極群24cの交換が必要か否かを判定する(ステップS200)。なお、ステップS100での判定結果がNOの場合、すなわち、イオン選択性電極群24aの交換が必要無いと判定された場合には、第1の電極部ユニット11の稼働を継続し、測定処理を継続する。つまり、サンプルプローブ22により、位置22Aにおいて検体容器52から試料を吸引し、位置22Bまたは位置22Cにおいて第1の電極部ユニット11の希釈槽23aまたは第2の電極部ユニット12の希釈槽23bに吐出することで、第1の電極部ユニット11または第2の電極部ユニット12による測定処理を行う。
【0046】
ステップS200での判定結果がNOの場合、すなわち、イオン選択性電極群24cの交換が必要無いと判定された場合には、第1の電極部ユニット11と第2の電極部ユニット12の稼働を継続し、測定処理を継続する。すなわち、サンプルプローブ22により、位置22Aにおいて検体容器52から試料を吸引し、位置22Bまたは位置22Cにおいて第1の電極部ユニット11の希釈槽23aまたは第2の電極部ユニット12の希釈槽23bに吐出することで、第1の電極部ユニット11または第2の電極部ユニット12による測定処理を行う。
【0047】
また、ステップS100での判定結果がYSEの場合、すなわち、第1の電極部ユニット11のイオン選択性電極24aの交換が必要であると判定した場合には、第1の電極部ユニット11の測定処理を停止する(ステップS110)のと並行して、ステップS200での判定を行う。そして、ステップS200での判定結果がYESの場合、すなわち、第2の電極部ユニット12のイオン選択性電極群24cの交換が必要であると判定した場合には、第2の電極部ユニット12の測定処理を停止し(ステップS210)、以降、第1の電極部ユニット11に対するステップS120~S170の処理と同様の処理を行い、処理を終了する。すなわち、第2の電極部ユニット12は、図示を省略するが、
図2~
図4及び
図7に示す第1の電極部ユニット11のソレノイドロック機構11a、ロック機構動作検知センサ11b、イオン選択性電極群カバー装着センサ11c、ソレノイドロック受け26aにそれぞれ対応する構成を有しており、これらを用いてステップS220~S270の処理を実施し、処理を終了する。
【0048】
このように、本実施の形態において、第2の電極部ユニット12のイオン選択性電極24cを交換する必要が無い状態においては、第1の電極部ユニット11が動作している期間には第2の電極部ユニット12も動作しており、また、第1の電極部ユニット11が停止している期間においても第2の電極部ユニット12は動作している。
【0049】
以上のように構成した本実施の形態における効果を説明する。
【0050】
従来技術においては、例えば、並列に配置した複数のセンサを覆うカバーを開ける際にサンプルプローブと干渉することが考えられるため、センサを交換する際には分析を中断する必要があり、処理能力の低下を招いてしまうという問題があった。
【0051】
これに対して本実施の形態においては、サンプルプローブ22により分注された試料を希釈する希釈槽23a,23bと、希釈槽23a,23bで希釈された試料中の特定のイオン濃度を測定するイオン選択性電極群24a,24cとをそれぞれ有する複数の電極部ユニット(第1及び第2の電極部ユニット11,12)を備え、第1の電極部ユニット11は、サンプルプローブ22の動作範囲の下方において希釈槽23aの上方に、プローブ部22bが希釈槽23aまで下降するために設けられた開口部を有する着脱可能に配置された希釈槽カバー25(第1のカバー)と、サンプルプローブ22の動作範囲の下方とならない範囲においてイオン選択性電極群24aの上方を覆うように着脱可能に配置されたイオン選択性電極群カバー26(第2のカバー)とを有するように構成したので、処理能力の低下を抑制しつつイオン選択性電極群24aを交換することができる。
【0052】
また、第1の電極部ユニット11では、イオン選択性電極群24aの交換中には測定処理を行うことはできないが、希釈槽23aへの試料の分注および希釈槽23aにおける試料の希釈・攪拌を継続することができる。
【0053】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を
図6を参照しつつ説明する。
【0054】
本実施の形態は、電解質分析装置100Bの分析部1Bの第2の電極部ユニット12Bが希釈槽カバー28とイオン選択性電極群カバー29とを有する場合を例示するものである。
【0055】
図6は、本実施の形態の電解質分析装置の分析部における第1及び第2の電極部ユニットの構造例および配置例を概略的に示す上面図である。図中、第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0056】
図6に示すように、第1及び第2の電極部ユニット11,12Bは、試料を収容した検体容器52から電極部ユニット11,12Bに試料を分注するサンプルプローブ22の動線(正確にはプローブ部22bの動線)に沿って希釈槽23a,23bが位置するように配置されている。また、第1及び第2の電極部ユニット11,12Bは、イオン選択性電極群24a,24c及び比較電極24b,24dがサンプルプローブ22の移動範囲(すなわち、カバー部22aの動作範囲)の下方よりも外側に位置するように配置されている。また、検体容器52(位置22Aにおけるサンプルプローブ22のプローブ部22bの位置)に最も近い位置に第1の電極部ユニット11が、検体容器52から最も離れた位置に第2の電極部ユニット12Bがそれぞれ配置されている。
【0057】
第2の電極部ユニット12Bは、サンプルプローブ22の動作範囲の下方において希釈槽23bの上方にプローブ部22cが希釈槽23bまで下降するために設けられた開口部を有する着脱可能に配置された希釈槽カバー28(第1のカバー)と、サンプルプローブ22の動作範囲の下方とならない範囲においてイオン選択性電極群24c及び比較電極24dの上方を覆うように着脱可能に配置されたイオン選択性電極群カバー29(第2のカバー)とを有している。
【0058】
イオン選択性電極群カバー29は、イオン選択性電極群カバー26同様のソレノイドロック受け29aを有している。また、第2の電極部ユニット12Bは、第1の電極部ユニット11と同様のソレノイドロック機構12aを有している。すなわち、ソレノイドロック機構12a及びソレノイドロック受け29aは、イオン選択性電極群カバー29(第2のカバー)を第2の電極部ユニット12Bに対して固定可能なインターロックを構成する。
【0059】
また、第2の電極部ユニット12Bには、イオン選択性電極群カバー29が第2の電極部ユニット12Bに対して正常に装着された状態であることを検知するイオン選択性電極群カバー装着センサ12cと、ソレノイドロック機構12aが動作していること(ロック状態となっていること)を検知するロック機構動作検知センサ12bとが設けられている。
【0060】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。すなわち、これらにおいても、第1の実施の形態と同様に第1の電極部ユニット11が停止し、かつ、第2の電極部ユニット12Bが動作継続できる構成である。
【0061】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0062】
また、第2の電極部ユニット12Bでは、イオン選択性電極群24cの交換中には測定処理を行うことはできないが、希釈槽23bへの試料の分注および希釈槽23bにおける試料の希釈・攪拌を継続することができる。且つ、第1の実施の形態で示した第1の電極部ユニットの第2カバー26を取り外す手順と同様の手順にて、第2の電極部ユニット第2カバー29は、プローブ部22bの下方には配置されておらず、干渉しないため、単独で取り外すことができる。
【0063】
<その他の実施の形態>
本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。
【0064】
(1)例えば、上記の実施の形態においては、第1の電極部ユニット11および第2の電極部ユニット12Bにおいて、第2のカバー26,29が着脱可能な場合を例示して説明したが、これに限られず、例えば、第2のカバー26,29をヒンジ機構などを介して第1の電極部ユニット11および第2の電極部ユニット12Bに接続し、開閉可能な構成としても良い。
【0065】
(2)また、上記の実施の形態においては、2つの電極部ユニットを備えた場合を例示して説明したが、これに限られず、例えば、3つ以上の電極部ユニットを備え、検体容器52に最も近い位置に配置された電極部ユニットが第1のカバーと第2のカバーとを有する構成としたり、検体容器52から最も離れた位置に配置された電極部ユニットが第3のカバーを有する構成としたりしても良い。
【0066】
(3)また、上記の実施の形態においては、イオン選択性電極群カバー装着センサ11cやロック機構動作検知センサ11bが機械式センサである場合を例示して説明したが、これに限られず、例えば、レーザ式のセンサやカメラ画像による判定を行うセンサを用いる構成としても良い。
【0067】
(4)また、上記の実施の形態においては、イオン選択性電極群の交換が終了したか否かの判定をイオン選択性電極群装着部124aのセンサ機能及びイオン選択性電極群カバー装着センサ11cの検知結果に基づいて行う場合を例示して説明したが、これに限られず、例えば、オペレータにより交換終了を明示する操作が制御部31の図示しない操作装置等により行われた場合に、イオン選択性電極群の交換が終了したと判定しても良い。ただし、この場合においてもイオン選択性電極群装着部124aのセンサ機能やイオン選択性電極群カバー装着センサ11cの検知結果に基づいて、イオン選択性電極群が正常に交換されたかどうかを判定することが好ましい。また、オペレータにより、例えば、イオン選択性電極群に設けられたバーコードなどの個体識別標識の読み取りを行うことで、新規のイオン選択性電極に交換されたことを確認するように構成しても良い。
【0068】
<付記>
なお、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1,1B…分析部、11…第1の電極部ユニット、11a…ソレノイドロック機構、11b…ロック機構動作検知センサ、11c…イオン選択性電極群カバー装着センサ、12,12B…第2の電極部ユニット、12a…ソレノイドロック機構、12b…ロック機構動作検知センサ、12c…イオン選択性電極群カバー装着センサ、22…サンプルプローブ、22a…カバー部、23a,23b…希釈槽、24a…イオン選択性電極群、24b…比較電極、24c…イオン選択性電極群、24d…比較電極、25…希釈槽カバー、26…イオン選択性電極群カバー、27…第3のカバー、28…希釈槽カバー、29…イオン選択性電極群カバー、31…制御部、52…検体容器、53a,53b…吸引器、55a,55b…比較電極液ボトル、56a,56b…希釈液ボトル、57a,57b…送液機構、58a,58b…送液機構、100,100B…電解質分析装置、124a…イオン選択性電極群装着部