(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】呈味改善剤、及び呈味改善方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20231107BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20231107BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20231107BHJP
【FI】
A23L27/00 101Z
A23L27/10 Z
A23L19/00 A
(21)【出願番号】P 2019110651
(22)【出願日】2019-06-13
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 浩平
(72)【発明者】
【氏名】三島 誠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】東 和美
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-161679(JP,A)
【文献】特開2016-056155(JP,A)
【文献】bunnyhops,カナダ西海岸~生ほうれん草とカラメルくるみのサラダ レシピ・作り方,楽天レシピ,2011年08月12日,https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1850002101/,[検索日2023年3月29日]
【文献】樋口直哉(TravelingFoodLab.),ほうれん草とヘーゼルナッツのプラリネ,note,2019年01月29日,https://note.com/travelingfoodlab/n/n945b6c1f3648,[検索日2023年3月29日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュウ酸含有飲食品に添加され
、シュウ酸含有飲食品のえぐみを低減する呈味改善剤であって、カラメルを含有する、呈味改善剤。
【請求項2】
前記シュウ酸含有飲食品100質量部に対する前記カラメルの量が、固形分換算で0.001質量部以上である、請求項1に記載の呈味改善剤。
【請求項3】
前記シュウ酸1質量部に対する前記カラメルの量が、固形分換算で0.001質量部である、請求項1又は2に記載の呈味改善剤。
【請求項4】
前記シュウ酸含有飲食品は、100gあたり、シュウ酸を50mg以上含有する飲食品である、請求項1~3のいずれか1項に記載の呈味改善剤。
【請求項5】
前記シュウ酸含有飲食品は、ほうれん草、たけのこ、チョコレート、コーヒー、紅茶、茶、バナナ、ココア、ピーナッツ、及びアーモンドからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の呈味改善剤。
【請求項6】
前記シュウ酸含有飲食品が、ほうれん草含有食品であり、ほうれん草100質量部に対する前記カラメルの量が、固形分換算で、0.001質量部以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の呈味改善剤。
【請求項7】
前記カラメルが、クラスIのカラメルである、請求項1~6のいずれか1項に記載の呈味改善剤。
【請求項8】
粉末状である、請求項1~7のいずれか1項に記載の呈味改善剤。
【請求項9】
前記シュウ酸含有飲食品に、請求項1~8のいずれか1項に記載の呈味改善剤を添加
し、前記シュウ酸含有飲食品のえぐみを低減する、シュウ酸含有飲食品の呈味改善方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の呈味改善剤と粉末調味料とを含む、シュウ酸含有飲食品
のえぐみを低減するための調味組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呈味改善剤、及び呈味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食可能な植物の中には、シュウ酸を含むものがある。例えば、ほうれん草には、シュウ酸が含まれる。シュウ酸は、えぐみを呈することが知られている。そこで、シュウ酸のえぐみを抑えることが求められている。
【0003】
上記に関連して、特許文献1には、茶飲料等の製造する際にシュウ酸を効率的に除去することが可能な水溶液のシュウ酸除去方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、生の野菜を搾汁し、得られた搾汁に乳酸カルシウムを添加して、シュウ酸および/またはシュウ酸イオンを除去する、野菜ジュースの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4571701号
【文献】特許第2890320号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シュウ酸由来のえぐみを低減できる新たな方法が提供できれば、有用である。従って、本発明の課題は、シュウ酸由来のえぐみを低減することができる、新たな呈味改善剤、及び呈味改善方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、カラメルにシュウ酸由来のえぐみを低減する作用があることを突き止め、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の事項を含んでいる。
[1]シュウ酸含有飲食品に添加される呈味改善剤であって、カラメルを含有する、呈味改善剤。
[2]前記シュウ酸含有飲食品100質量部に対する前記カラメルの量が、固形分換算で0.001質量部以上である、[1]に記載の呈味改善剤。
[3]前記シュウ酸1質量部に対する前記カラメルの量が、固形分換算で0.001質量部である、[1]又は[2]に記載の呈味改善剤。
[4]前記シュウ酸含有飲食品は、100gあたり、シュウ酸を50mg以上含有する飲食品である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の呈味改善剤。
[5]前記シュウ酸含有飲食品は、ほうれん草、たけのこ、チョコレート、コーヒー、紅茶、茶、バナナ、ココア、ピーナッツ、及びアーモンドからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む、[1]~[4]のいずれか1項に記載の呈味改善剤。
[6]前記シュウ酸含有飲食品が、ほうれん草含有食品であり、ほうれん草100質量部に対する前記カラメルの量が、固形分換算で、0.001質量部以上である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の呈味改善剤。
[7]前記カラメルが、クラスIのカラメルである、[1]~[6]のいずれか1項に記載の呈味改善剤。
[8]粉末状である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の呈味改善剤。
[9]前記シュウ酸含有飲食品に、[1]~[8]のいずれか1項に記載の呈味改善剤を添加する、シュウ酸含有飲食品の呈味改善方法。
[10][1]~[8]のいずれか1項に記載の呈味改善剤と粉末調味料とを含む、シュウ酸含有飲食品用調味組成物。
[11]ほうれん草とカラメルとを含有する、飲食品。
[12]ほうれん草100質量部に対し、前記カラメルを固形分換算で0.001質量部以上含有する、[11]に記載の飲食品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シュウ酸由来のえぐみを低減することができる、新たな呈味改善剤、及び呈味改善方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施態様について詳細に説明する。
【0010】
(呈味改善剤)
本実施態様に係る呈味改善剤は、シュウ酸含有飲食品に添加されるものである。この呈味改善剤は、有効成分として、カラメルを含有する。カラメルには、シュウ酸のえぐみを低減する効果がある。カラメルをシュウ酸含有飲食品に添加することにより、シュウ酸含有飲食品のえぐみを低減することができる。
【0011】
カラメルとしては、食用のものであれば特に限定されないが、好ましくは、クラスIに分類されるカラメルである。クラスIのカラメルとは、でん粉加水分解物、糖蜜又は糖類の食用炭水化物を、熱処理して得られたもの、又は酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られたもので、亜硫酸化合物およびアンモニウム化合物を使用していないものである。
【0012】
カラメルの含有量は、添加されるべきシュウ酸含有飲食品100質量部に対して、固形分換算で、例えば0.001質量部以上、好ましくは0.02~5質量部、より好ましくは0.05~1.5質量部、更に好ましくは0.15~0.75質量部、最も好ましくは、0.15~0.4質量部である。言い換えれば、呈味改善剤は、シュウ酸含有飲食品100質量部に対するカラメルの量がこのような範囲内になるような量で、シュウ酸含有飲食品に添加される。カラメルの含有量が、0.001質量部以上であれば、シュウ酸由来のえぐみをマスキングする効果が十分に得られる。また、5質量部以下であれば、カラメルの赤味色調が強くなり難く、添加する飲食品の色調に影響を及ぼし難い。
【0013】
あるいは、カラメルの含有量は、シュウ酸含有飲食品に含まれるシュウ酸1質量部に対して、固形分換算で、例えば0.001質量部以上、好ましくは0.03~6.25質量部、より好ましくは0.06~1.88質量部、更に好ましくは0.18~0.94質量部、最も好ましくは、0.19~0.5質量部である。
【0014】
本実施態様に係る呈味改善剤の形態は、特に限定されるものでは無く、固形状、及び液状のいずれであってもよい。好ましくは、呈味改善剤は、固形状であり、より好ましくは顆粒状及び/又は粉末状である。
【0015】
呈味改善剤の添加対象であるシュウ酸含有飲食品としては、シュウ酸を含有するものであればよく、特に限定されないが、例えば、飲食品100gあたり、シュウ酸を50mg以上、100mg以上、200mg以上、300mg以上、400mg以上、又は500mg以上含有する食品が挙げられる。より具体的には、例えば、シュウ酸含有飲食品として、ほうれん草、たけのこ、チョコレート、コーヒー、紅茶、茶、バナナ、ココア、ピーナッツ、及びアーモンドからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む食品が挙げられる。好ましくは、シュウ酸含有飲食品は、ほうれん草を含有する飲食品である。
【0016】
なお、100gあたりのシュウ酸含有量は、ほうれん草で約800mg(Haytowitz DB, Matthews RH. Composition of Foods:Vegetables and Vegetable Products. In: Agriculture handbook. No. 8-11. Edited by Nutrition Monitoring Division, Human Nutrition Information Service, USDA, Washington DC, pp 502, 1984.)、たけのこで約420mg(タケノコの1℃ および20℃ 貯蔵による成分変化、小机ゑつ子、日本栄養・食糧学会誌Vo1. 39 No. 1 49~53 1986)であることが知られている。
【0017】
例えば、この呈味改善剤は、ほうれん草100質量部に対するカラメルの量が、固形分換算で、例えば0.001質量部以上、好ましくは0.02~5質量部、より好ましくは0.05~1.5質量部、更に好ましくは0.15~0.75質量部、最も好ましくは、0.15~0.4質量部となるような量で、添加される。
【0018】
(シュウ酸含有飲食品用調味組成物)
本実施態様に係るシュウ酸含有飲食品用調味組成物は、上記呈味改善剤と粉末調味料とを含むものである。
【0019】
シュウ酸含有飲食品用調味組成物中におけるカラメルの含有量は、特に限定されるものでは無いが、例えば、0.01~50.0質量%、好ましくは0.02~40.0質量%、より好ましくは0.05~30.0質量%である。
シュウ酸含有飲食品用調味組成物は、シュウ酸含有飲食品100質量部に対するカラメルの使用量が、固形分換算で、例えば0.001質量部以上、好ましくは0.02~5質量部、より好ましくは0.05~1.5質量部、更に好ましくは0.15~0.75質量部、最も好ましくは、0.15~0.4質量部となるような量で、シュウ酸含有飲食品に添加される。
あるいは、シュウ酸含有飲食品用調味組成物は、シュウ酸含有飲食品に含まれるシュウ酸1質量部に対するカラメルの使用量が、固形分換算で、例えば0.001質量部以上、好ましくは0.03~6.25質量部、より好ましくは0.06~1.88質量部、更に好ましくは0.18~0.94質量部、最も好ましくは、0.19~0.5質量部となるような量で、シュウ酸含有飲食品に添加される。
【0020】
粉末調味料としては、例えば、塩、砂糖、グラニュー糖、粉末醤油、昆布エキス、鰹だし、煮干しエキス、椎茸エキス、グルタミン酸ナトリウム等のアミノ酸系調味料、及びイノシン酸ナトリウム等の核酸系調味料等が挙げられる。シュウ酸含有飲食品用調味組成物中の粉末調味料の含有量は、例えば、50.0~99.9質量%、好ましくは60.0~99.8質量%、より好ましくは70.0~95.5質量%である。
【0021】
シュウ酸含有飲食品用調味組成物には、更に、澱粉が含まれていることが好ましい。
澱粉としては、特に限定されるものでは無く、コーンスターチ、タピオカ澱粉、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、米澱粉、サゴ澱粉、及びこれらの加工澱粉等が挙げられる。加工澱粉は、生澱粉に化学的処置、物理的処理等の処理を行ったものであり、化学的処理としては、例えば、エーテル化、エステル化、酸化、架橋等の処理が挙げられる。エステル化としては、アセチル化、アジピン酸エステル化、コハク酸エステル化、オクテニルコハク酸エステル化、脂肪酸エステル化、リン酸エステル化等が挙げられる。また、物理的処理としては、例えば、アルファ化、油脂加工、湿熱、微粉砕、加熱、温水等の処理が挙げられる。これらの加工澱粉は、同種又は異種の処理を2種以上組み合わせて行ったものであってもよい。
シュウ酸含有飲食品用調味組成物中の澱粉の含有量は、例えば、5.0~50.0質量%、好ましくは10.0~30.0質量%である。この範囲であれば、吸湿しやすい粉末調味料がある場合にその吸湿を防ぐことができる傾向にある。
【0022】
シュウ酸含有飲食品用調味組成物には、更に、デキストリン、ショ糖ステアリン酸エステル等が含まれていることが好ましい。シュウ酸含有飲食品用調味組成物中のデキストリンの含有量は、例えば、3.0~20.0質量%、好ましくは5.0~15.0質量%である。この範囲であれば、吸湿しやすい粉末調味料がある場合にその吸湿を防ぐことができる傾向にある。
【0023】
シュウ酸含有飲食品用調味組成物には、上述した成分の他にも、香辛料、香料、乳化剤、及び炭酸カルシウム等が含まれていてもよい。
香辛料としては、例えば、ゴマ、及び生姜パウダー等が挙げられる。シュウ酸含有飲食品用調味組成物中の香辛料の含有量は、例えば、0.1~10質量%、好ましくは0.5~7質量%である。
香料としては、柑橘類香料などが挙げられ、好ましくは柚子香料が挙げられる。シュウ酸含有飲食品用調味組成物中の香料の含有量は、例えば、0.1~10質量%、好ましくは0.5~7質量%である。
乳化剤としては、ショ糖ステアリン酸エステル等が挙げられる。シュウ酸含有飲食品用調味組成物中の乳化剤の含有量は、例えば、0.1~5質量%、好ましくは0.3~3質量%である。
シュウ酸含有飲食品用調味組成物中の炭酸カルシウムの含有量は、例えば、0.1~3質量%、好ましくは0.3~2質量%である。この範囲であれば、シュウ酸含有飲食品用調味組成物の流動性を向上させることができる傾向にある。
【0024】
本実施態様に係るシュウ酸含有飲食品用調味組成物の形態は、特に限定されるものでは無く、固形状、及び液状のいずれであってもよい。好ましくは、シュウ酸含有飲食品用調味組成物は、固形状であり、より好ましくは顆粒状及び/又は粉末状である。
【0025】
本実施態様に係るシュウ酸含有飲食品用調味組成物の製造方法は、特に限定されない。例えば、シュウ酸含有飲食品用調味組成物を得る場合、所定の原料を混合することにより、シュウ酸含有飲食品用調味組成物を得ることができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明についてより詳細に説明するため、本発明者らによって行われた実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されて解釈されるべきものでは無い。
【0027】
実験例1:粉末シュウ酸含有飲食品用調味組成物の組成の検討
表1に、比較例1及び実施例1~5に係るシュウ酸含有飲食品用調味組成物の組成を示す。尚、表1に記載された数値は、特に指定が無い限り「質量部」を表す。
表1に示される量にて、調味料(粉末醤油、昆布エキス、鰹だし、塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウムを含む)、加工澱粉、デキストリン、香辛料(ごま、生姜パウダー)、柚子香料、乳化剤(ショ糖ステアリン酸エステル)、及び炭酸カルシウムを混合し、比較例1に係る粉末状の粉末シュウ酸含有飲食品用調味組成物を得た。尚、加工澱粉としては、タピオカ加工澱粉(酸化澱粉)を使用した。
また、カラメル(クラスI)を加えた他は比較例1と同様の方法により、実施例1~5に係る粉末状のシュウ酸含有飲食品用調味組成物を得た。
【0028】
1分間沸騰したお湯で茹で冷ました後、軽く水気を絞ったほうれん草100質量部に対して、上記で得られた各シュウ酸含有飲食品用調味組成物を、表1に記載された量で添加した。そして、「ほうれん草のえぐみのマスキング効果」、「全体の風味」、及び「見た目の色合い」を、専門パネラー3人にて評価した。各項目については、下記の基準で評価した。
【0029】
「ほうれん草のえぐみのマスキング効果」の評価基準
◎:えぐみが非常に低減されている。
〇:えぐみが低減されている。
△:えぐみはやや感じられているが、低減はされている。
×:えぐみが感じられる。
【0030】
「全体の風味」の評価基準
◎:おひたしとして非常に良好な風味である。
〇:おひたしとして良好な風味である。
△:やや風味のバランスは崩れているが、おひたしを想起する風味である。
×:風味のバランスが崩れている。
【0031】
「見た目の色合い」の評価基準
◎:醤油様の色である。
〇:醤油としてはやや暗い、もしくはやや明るい色合いである。
△:醤油よりも暗い、もしくは明るい色合いである。
×:醤油とは程遠い暗さ、もしくは明るさである。
【0032】
結果を表1に示す。表1に示されるように、実施例1~5は、いずれも、ほうれん草のえぐみに対するマスキング効果があることが確認された。加えて、全体の風味も良好であった。ほうれん草のえぐみは、シュウ酸に由来するものであるので、この結果から、カラメルが、シュウ酸由来のえぐみに対してマスキング効果を有することが理解できる。
また、カラメルの含有量がほうれん草100質量部に対して0.05~1.5質量部の範囲内にある実施例2~4は、見た目の色合いについても、比較例1に比べて改善されていた。
更に、カラメルの含有量がほうれん草100質量部に対して0.15~0.75質量部の範囲内にある実施例2及び3は、全体の風味及び見た目の色合いの点でより良好であり、カラメルの含有量がほうれん草100質量部に対して0.15~0.4質量部の範囲内にある実施例2は、特に良好であった。
【0033】
実験例2:カラメルによるマスキング効果の確認
続いて、ほうれん草のえぐみのマスキング効果がカラメル自体によるものであることを確認するため、実験例2に係る実験を行った。表2に、実験例2におけるカラメルの添加量(参考例、実施例6及び実施例7)を示す。表2に示されるように、実験例1と同様に、ほうれん草100質量部に対して、カラメルを0.001質量部の量で添加し、実施例6に係る食品を得た。また、ほうれん草100質量部に対して、カラメルを0.2質量部の量で添加し、実施例7に係る食品を得た。また、カラメルが添加されていないほうれん草を、参考例に係る食品として準備した。
参考例、実施例6及び実施例7について、官能評価により、実験例1と同一の基準を用いて、ほうれん草のえぐみのマスキング効果と、全体の風味とを評価した。
【0034】
結果を表2に示す。
表2に示されるように、カラメルを添加した実施例6及び7においては、ほうれん草のえぐみのマスキングが確認された。すなわち、カラメル自体に、ほうれん草のえぐみのマスキング効果が存在することが確認された。また、ほうれん草100gに対して少なくとも0.001gのカラメルを添加すれば、マスキング効果が得られることが確認された。
【0035】
実験例3:市販のカラメルによるマスキング効果の確認
市販のカラメルによりマスキング効果が得られるか否かを確認するため、3種類の市販のカラメル(いずれもクラスI)を準備した。そして、カラメルの種類が異なる点を除いて同様の組成を有する実施例8~10に係る粉末状の粉末シュウ酸含有飲食品用調味組成物を得た。表3に、実施例8~10に係る粉末シュウ酸含有飲食品用調味組成物の組成を示す。
詳細には、実施例8では、クラスIのカラメルとして、池田糖化工業株式会社製カラメルFH-12(商品名)を用いた。実施例9では、クラスIのカラメルとして、池田糖化工業株式会社製カラメルSF-720(商品名)を用いた。実施例10では、クラスIのカラメルとして、池田糖化工業株式会社製カラメルFH-KSF(商品名)を用いた。
得られた実施例8~10に係る粉末シュウ酸含有飲食品用調味組成物を、ほうれん草100質量部に対するカラメルの使用量が0.2質量部になるような量で、ほうれん草に添加し、実験例1と同様の方法及び基準を用いて官能評価を行った。
結果を表3に示す。表3に示されるように、いずれの市販のカラメルを用いた場合であっても、ほうれん草のえぐみのマスキング効果が確認された。また、全体の風味も良好であった。
【0036】