(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】使用済み衛生用品を用いたバイオガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/70 20220101AFI20231107BHJP
B09B 3/35 20220101ALI20231107BHJP
C02F 11/04 20060101ALI20231107BHJP
C02F 11/06 20060101ALI20231107BHJP
B09B 101/67 20220101ALN20231107BHJP
【FI】
B09B3/70
B09B3/35
C02F11/04 ZAB
C02F11/06 A
B09B101:67
(21)【出願番号】P 2019191450
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝義
(72)【発明者】
【氏名】栗田 範朋
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/124527(WO,A1)
【文献】特開2001-327998(JP,A)
【文献】特開2018-130697(JP,A)
【文献】特開2019-177332(JP,A)
【文献】特開2018-021282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B
B29B 17/00
C02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高吸水性ポリマー、パルプ繊維、合成樹脂材料及び排泄物を含む使用済み衛生用品由来の廃棄物を用いてバイオガスを製造する方法であって、
前記高吸水性ポリマーを不活化可能な不活化水溶液中で、前記使用済み衛生用品を破砕する破砕工程と、
破砕された前記使用済み衛生用品を含む前記不活化水溶液から前記高吸水性ポリマー、前記パルプ繊維及び前記合成樹脂材料を分離して、前記排泄物及び前記高吸水性ポリマーの分解物を含んだ処理液を生成する生成工程と、
前記処理液を用いてバイオガスを製造するバイオガス製造工程と、
を備え
、
前記生成工程は、
破砕された前記使用済み衛生用品を含む前記不活化水溶液から、前記高吸水性ポリマー、前記合成樹脂材料及び前記パルプ繊維を分離して、前記排泄物及び残余の前記高吸水性ポリマーを含んだ前記不活化水溶液を有する混合液を生成する分離工程と、
前記混合液をオゾン処理して、前記排泄物と前記残余の前記高吸水性ポリマーの分解物と、を含む第2オゾン処理液を生成する第2オゾン処理工程と、
を含み、
前記バイオガス製造工程は、前記処理液として、少なくとも前記第2オゾン処理液を用いてバイオガスを製造する、
方法。
【請求項2】
前記生成工程は、
破砕された前記使用済み衛生用品を含む前記不活化水溶液から、前記高吸水性ポリマー、前記合成樹脂材料及び前記排泄物を含む前記不活化水溶液を分離して、前記高吸水性ポリマーを含んだ前記パルプ繊維を取り出す取り出し工程と、
前記高吸水性ポリマーを含んだ前記パルプ繊維を水溶液中でオゾン処理して、前記高吸水性ポリマーが分解され除去された前記パルプ繊維と、前記除去された前記高吸水性ポリマーの分解物と、を含む第1オゾン処理液を生成する第1オゾン処理工程と、
前記第1オゾン処理液から、前記パルプ繊維を分離する
パルプ分離工程と、
を含み、
前記バイオガス製造工程は、前記処理液として、少なくとも前記パルプ繊維が分離され、前記高吸水性ポリマーの分解物を含む前記第1オゾン処理液を用いる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生成工程は、前記不活化水溶液中で行われる、
請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記不活化水溶液が有機酸を含む、
請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記有機酸は、クエン酸を含む、
請求項
4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み衛生用品を用いたバイオガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機物を生物学的処理(例示:発酵、嫌気性処理)することによりバイオガスを製造する方法が知られている。このようなバイオガスを製造する方法としては、例えば、特許文献1に、細胞材料含有廃棄物の嫌気性処理方法及び装置が開示されている。この方法は、パルプ含有廃棄物を嫌気性処理することでバイオガスを製造する方法である。この方法は、廃棄物を機械的に処理、特に粉砕する工程と、粉砕した廃棄物を処理水に懸濁/溶解する工程と、生物学的処理段階において、懸濁液の有機成分を分解、浄化および/またはメタン化する工程と、腐食残渣を、プラスチックを多く含む部分とパルプを多く含む部分に分離する工程と、プラスチックを多く含む部分およびパルプを多く含む部分を再生可能材料、燃料またはデポジット製品に調整する工程と、を含む。パルプ含有廃棄物としては、尿や排泄物を含む使用済の衛生用品(例示:おむつや失禁用品)が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、使用済み衛生用品が、バイオガス製造の原料として用いられている。この方法では、生物学的処理段階でバイオガスが製造された後に、腐食残渣から衛生用品のプラスチックやパルプが分離されている。したがって、生物学的処理段階で生物学的処理の対象となる、すなわちバイオガス製造の原料となる、廃棄物を含む処理水には、生物学的処理の対象となり難いプラスチックやパルプが混在している。そのため、生物学的処理において、プラスチックやパルプが処理を阻害することや、プラスチックやパルプに廃棄物の有機成分が付着してしまい、処理すべき有機成分が少なくなること、などにより、処理の効率が落ちるおそれがある。したがって、使用済み衛生用品由来の廃棄物からバイオガスを製造するとき、効率的に製造を行うという観点で改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、使用済み衛生用品由来の廃棄物からバイオガスを製造するとき、効率的に製造を行うことが可能なバイオガスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、高吸水性ポリマー、パルプ繊維、合成樹脂材料及び排泄物を含む使用済み衛生用品由来の廃棄物を用いてバイオガスを製造する方法であって、前記高吸水性ポリマーを不活化可能な不活化水溶液中で、前記使用済み衛生用品を破砕する破砕工程と、破砕された前記使用済み衛生用品を含む前記不活化水溶液から前記高吸水性ポリマー、前記パルプ繊維及び前記合成樹脂材料を分離して、前記排泄物及び前記高吸水性ポリマーの分解物を含んだ処理液を生成する生成工程と、前記処理液を用いてバイオガスを製造するバイオガス製造工程と、を備える、方法、である。
【0007】
本方法では、生物学的処理の対象となり難い高吸水性ポリマー、パルプ繊維及び合成樹脂材料が、バイオガス製造工程で原料として使用される処理液から予め分離されている。そのため、予め分離されない場合と比較して、処理液に含まれる高吸水性ポリマー、パルプ繊維及び合成樹脂材料の量が少ない。それに加えて、処理液は、生物学的処理の対象となる排泄物や高吸水性ポリマーの分解物のような有機成分を多く含んでいる。したがって、処理液に対して生物学的処理を行うとき、合成樹脂材料やパルプ繊維が生物学的処理を阻害することや、合成樹脂材料やパルプ繊維に有機成分が付着して、処理すべき有機成分が少なくなることを抑制できる。それにより、生物学的処理の効率の低下を抑制できる。更に、高吸水性ポリマーそのものに対して生物学的処理は困難であるが、高吸水性ポリマーの分解物に対して生物学的処理は可能である。そこで、本方法では、高吸水性ポリマーの分解物をバイオガス製造工程で原料として使用することで、バイオガスの発生量を増加できる。これらによって、使用済み衛生用品由来の廃棄物からバイオガスを製造するとき、より効率的に製造を行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用済み衛生用品由来の廃棄物からバイオガスを製造するとき、効率的に製造を行うことが可能なバイオガスの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るバイオガスの製造方法の例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る生成工程の例を示すフローチャートである。
【
図3】実施形態に係る生成工程の他の例を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態に係るリサイクルシステムの例を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係るリサイクル方法の例を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態に係る使用済み衛生用品のリサイクル方法の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る、高吸水性ポリマー、パルプ繊維、合成樹脂材料及び排泄物を含む使用済み衛生用品由来の廃棄物を用いてバイオガスを製造する方法について説明する。ただし、衛生用品としては、例えば吸収性物品が挙げられ、吸収性物品としては、例えば使い捨ておむつ、尿取りパッド、生理用ナプキン、ベッドシートが挙げられる。排泄物としては、例えば、尿、便、経血が挙げられる。使用済み衛生用品とは、使用者によって使用され、使用者の排泄物を吸収・保持した状態の衛生用品である。ただし、使用されたが排泄物を吸収・保持していないものや未使用だが廃棄されたものを一部含んでもよい。
【0011】
まず、衛生用品の一例である吸収性物品の構成例について説明する。吸収性物品は、表面シートと、裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置された吸収体とを備える。吸収性物品の大きさの一例としては長さ約15~100cm、幅5~100cmが挙げられる。なお、吸収性物品は、一般的な吸収性物品が備える他の部材、例えば拡散シートや防漏壁やサイドシートなどを更に含んでもよい。
【0012】
表面シートの構成部材としては、例えば液透過性の不織布、液透過孔を有する合成樹脂フィルム、これらの複合シート等が挙げられる。裏面シートの構成部材としては、例えば液不透過性の不織布、液不透過性の合成樹脂フィルム、これらの複合シートが挙げられる。拡散シートの構成部材としては、例えば液透過性の不織布が挙げられる。防漏壁やサイドシートの構成部材としては、例えば液不透過性の不織布が挙げられ、防漏壁はゴムのような弾性部材を含んでもよい。ここで、不織布や合成樹脂フィルムの材料としては、吸収性物品として使用可能であれば特に制限はないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂等が挙げられる。したがって、表面シート、裏面シート、拡散シート、防漏壁、サイドシートなどは、主に合成樹脂部材製のフィルムや不織布で構成されている。
【0013】
吸収体の構成部材としては吸収体材料、すなわちパルプ繊維及び高吸水性ポリマーが挙げられる。パルプ繊維としては、吸収性物品として使用可能であれば特に制限はないが、例えば、セルロース系繊維が挙げられる。セルロース系繊維としては、例えば木材パルプ、架橋パルプ、非木材パルプ、再生セルロース、半合成セルロース等が挙げられる。パルプ繊維の大きさとしては、繊維の長径の平均値が例えば数十μmが挙げられ、20~40μmが好ましく、繊維長の平均値が例えば数mmが挙げられ、2~5mmが好ましい。高吸水性ポリマー(SuperAbsorbent Polymer:SAP)としては、吸収性物品として使用可能であれば特に制限はない。高吸水性ポリマーとしては、例えばポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系の吸水性ポリマーが挙げられるが、三次元架橋されたポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。高吸水性ポリマーの重量平均分子量としては、例えば数百万程度が挙げられる。高吸水性ポリマーの大きさ(乾燥時)としては、粒径の平均値が例えば数百μmが挙げられ、200~500μmが好ましい。吸収体は液透過性シートで形成されたコアラップを含んでもよい。
【0014】
吸収体の一方の面及び他方の面はそれぞれ表面シート及び裏面シートに接着剤を介して接合される。平面視で、表面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)は、裏面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)と接着剤を介して接合されている。したがって、吸収体は表面シートと裏面シートとの接合体の内部に包み込まれている。接着剤としては、吸収性物品として使用可能であり、特に制限はないが、例えばホットメルト型接着剤が挙げられる。
【0015】
次に、使用済み衛生用品由来の廃棄物を用いてバイオガスを製造する方法について説明する。
図1は実施形態に係るバイオガスの製造方法の例を示すブロック図であり、
図2は
図1の生成工程の一例を示すフローチャートであり、
図3は
図1の生成工程の他の例を示すフローチャートである。ただし、本実施形態におけるバイオガスを製造する方法は、使用済み衛生用品の高吸水性ポリマー、パルプ繊維及び合成樹脂材料をリサイクルために、排泄物を含む使用済み衛生用品から高吸水性ポリマー、パルプ繊維及び合成樹脂材料を回収するときに、同時に生成される廃棄物(排泄物などを含む溶液)を、バイオガスの製造に用いている。具体的には、以下に示すとおりである。
【0016】
本実施形態のバイオガスを製造する方法は、前記高吸水性ポリマーを不活化可能な不活化水溶液中で、前記使用済み衛生用品を破砕する破砕工程S1と、破砕された前記使用済み衛生用品を含む前記不活化水溶液から前記高吸水性ポリマー、前記パルプ繊維及び前記合成樹脂材料を分離して、前記排泄物及び前記高吸水性ポリマーの分解物を含んだ処理液を生成する生成工程S2と、前記処理液を用いてバイオガスを製造するバイオガス製造工程S3と、を備えている。
【0017】
不活化水溶液は、使用済み衛生用品中の高吸水性ポリマーを不活化し、高吸水性ポリマーの吸水能力を低下させる。それにより、高吸水性ポリマーが脱水して、粒径が小さくなるので、後続の工程での取り扱いが容易になり、処理の効率が向上する。不活化水溶液としては、例えば、酸性水溶液、すなわち無機酸及び有機酸の水溶液が挙げられる。酸性水溶液は、不活化の程度(高吸水性ポリマーの粒径や比重の大きさ)をpHで調整し易い。酸性水溶液のpHとしては1.0以上、4.0以下が好ましく、1.2以上、2.5以下がより好ましい。pHが高過ぎると、高吸水性ポリマーの吸水能力を十分に低下させることができない。また、殺菌能力が低下するおそれもある。pHが低過ぎると、設備の腐食のおそれがあり、排水処理時の中和処理に多くのアルカリ薬品が必要となる。有機酸としては、例えばクエン酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、アスコルビン酸、等が挙げられるが、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、等のヒドロキシカーボネート系の有機酸が特に好ましく、クエン酸がより好ましい。クエン酸のキレート効果により、排泄物中の金属イオン等がトラップされ除去可能であり、かつクエン酸の洗浄効果で、高い汚れ成分除去効果が期待できる。一方、無機酸としては、例えば硫酸、塩酸、硝酸が挙げられるが、塩素を含まないことやコスト等の観点から硫酸が好ましい。pHは水温により変化するため、本明細書におけるpHは、水溶液温度20℃で測定したpHをいうものとする。有機酸水溶液の有機酸濃度は、特に限定されないが、有機酸がクエン酸の場合は、0.5質量%以上4質量%以下が好ましい。無機酸水溶液の無機酸濃度は、特に限定されないが、無機酸が硫酸の場合は、0.1質量%以上0.5質量%以下が好ましい。
【0018】
なお、不活化水溶液中で使用済み衛生用品を破砕する、という場合、破砕中に使用済み衛生用品が不活化水溶液中に完全に浸漬されている場合だけでなく、以下の場合を含む。すなわち、その場合とは、使用済み衛生用品の一部が不活化水溶液中に浸漬されている場合や、破砕中の使用済み衛生用品に不活化水溶液が噴霧されている場合や、使用済み衛生用品が破砕されつつ不活化水溶液に浸漬される場合や、使用済み衛生用品が破砕された直後に不活化水溶液に浸漬される場合である。
【0019】
使用済み衛生用品を破砕する方法(S1)としては、衛生用品を構成する部材を互いに分離し易い状態・大きさに破砕できれば、特に制限はないが、例えば二軸破砕機(例示:二軸回転式破砕機、二軸差動式破砕機、二軸せん断式破砕機)を用いる方法が挙げられる。破砕物の大きさとしては、例えば大きさの平均値が50mm以上、100mm以下が挙げられる。大きさが小さ過ぎると、部材がすべて細かくなり過ぎて互いに細かく混ざり合って分離し難くなり、大きさが大き過ぎると、部材同士の接合が剥がれ難く、溶液(処理液)が部材内部に浸透し難く分知り難くなる。
【0020】
破砕された使用済み衛生用品を含む不活化水溶液から高吸水性ポリマー、パルプ繊維及び合成樹脂材料を分離する方法(S2)としては、特に制限はなく、分離対象の部材の種類や大きさに応じて公知の方法を適宜選択可能である。分離方法としては、例えば、スクリーン分離機や遠心分離機を用いる方法が挙げられる。また、分離する部材の種類や分離する順序は特に制限はなく、一つの分離工程で複数の種類の部材を同時に分離してもよいし、一種類の部材のみを分離してもよい。
【0021】
高吸水性ポリマー(例示:重量平均分子量は数百万程度)の分解物としては、高吸水性ポリマーが分解して生成された有機物であれば特に制限はない。高吸水性ポリマーの分解物としては、例えば、重量平均分子量が数100~10000程度、好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下の分解物である有機物が挙げられる。高吸水性ポリマーの分解の方法としては、特に制限はないが、例えば物理的及び/又は化学的な方法が挙げられ、例えば熱や光や電気による分解や、酸化や還元や加水による分解が挙げられる。
【0022】
処理液としては、排泄物及び高吸水性ポリマーの分解物を含んでおり、バイオガス製造において用いられる微生物に悪影響を及ぼさなければ特に制限はない。処理液は、例えば上記の不活化水溶液を含んでもよく、オゾンを含む水溶液でもよい。処理液が酸性の水溶液の場合には、その酸性度(又はpH)が、処理液のバイオガス製造において用いられる微生物に悪影響を及ぼさない程度であればよい。
【0023】
バイオガスを製造する方法(S3)としては、排泄物や高吸水性ポリマーの分解物を原料としてバイオガスを製造可能であれば特に制限はない。そのよう方法としては、例えば特許文献1に記載の嫌気性処理方法、特にバイオリアクタを用いて廃棄物を含む処理液の有機成分をメタン化する生物学的処理段階が挙げられる。
【0024】
本方法では、生物学的処理の対象となり難い高吸水性ポリマー、パルプ繊維及び合成樹脂材料が、バイオガス製造工程で原料として使用される処理液から予め分離されている。そのため、予め分離されない場合と比較して、処理液に含まれる高吸水性ポリマー、パルプ繊維及び合成樹脂材料の量が少ない。それに加えて、処理液は、生物学的処理の対象となる排泄物や高吸水性ポリマーの分解物のような有機成分を多く含んでいる。したがって、処理液に対して生物学的処理を行うとき、合成樹脂材料やパルプ繊維が生物学的処理を阻害することや、合成樹脂材料やパルプ繊維に有機成分が付着して、処理すべき有機成分が少なくなることを抑制できる。それにより、生物学的処理の効率の低下を抑制できる。更に、高吸水性ポリマーそのものに対して生物学的処理は困難であるが、高吸水性ポリマーの分解物に対して生物学的処理は可能である。そこで、本方法では、高吸水性ポリマーの分解物をバイオガス製造工程で原料として使用することにより、バイオガスの発生量を増加できる。よって、使用済み衛生用品由来の廃棄物からバイオガスを製造するとき、より効率的に製造を行うことができる。
【0025】
本実施形態における好ましい態様として、前記生成工程S2は、破砕された前記使用済み衛生用品を含む前記不活化水溶液から、前記高吸水性ポリマー、前記合成樹脂材料及び前記排泄物を含む前記不活化水溶液を分離して、前記高吸水性ポリマーを含んだ前記パルプ繊維を取り出す取り出し工程S201と、前記高吸水性ポリマーを含んだ前記パルプ繊維を水溶液中でオゾン処理して、前記高吸水性ポリマーが分解され除去された前記パルプ繊維と、前記除去された前記高吸水性ポリマーの分解物と、を含む第1オゾン処理液を生成する第1オゾン処理工程S202と、前記第1オゾン処理液から、前記パルプ繊維を分離する分離工程S203と、を含み、前記バイオガス製造工程S3は、前記処理液として、少なくとも前記パルプ繊維が分離され、前記高吸水性ポリマーの分解物を含む前記第1オゾン処理液を用いる。
【0026】
破砕された使用済み衛生用品を含む不活化水溶液から、高吸水性ポリマーを含んだパルプ繊維を取り出す方法(S201)、言い換えると高吸水性ポリマー、合成樹脂材料及び排泄物を含む不活化水溶液を分離する方法してとしては、特に制限はなく、分離対象の部材の種類や大きさに応じて公知の方法を適宜選択可能である。分離方法としては、例えば、スクリーン分離機や遠心分離機を用いる方法が挙げられる。また、分離する部材の種類や分離する順序は特に制限はなく、一つの分離工程で複数の種類の部材を同時に分離してもよいし、一種類の部材のみを分離してもよい。
【0027】
高吸水性ポリマーを含んだパルプ繊維を水溶液中でオゾン処理する方法(S202)としては、水溶液中で、(高吸水性ポリマーを含んだ)パルプ繊維とオゾンとが接触可能な方法であれば、特に制限はない。その方法としては、例えば、パルプ繊維を含む水溶液を貯留させた処理槽において、水溶液を撹拌しつつ、処理槽の下方からマイクロバブル状のオゾンガスを放出して、パルプ繊維とゾンとを接触させる方法が挙げられる。あるいは、パルプ繊維を含む水溶液を貯留させた処理槽に供給口と排出口とを接続されたアスピレータ(エジェクタ)において、パルプ繊維を含む水溶液を供給口から排出口へ流通させつつ、オゾンを含むガスを吸い込み口から吸引させて、パルプ繊維とオゾンとを接触させる方法が挙げられる。あるいは、オゾンを含むオゾンガスとパルプ繊維を含む水溶液とをターボミキサーポンプ内で高速に混合しつつ処理槽内へ送出する方法が挙げられる。あるいは、上記の方法の一種類又は複数種類を直列的に連続して行う方法が挙げられる。
【0028】
第1オゾン処理液からパルプ繊維を分離する方法(S203)としては、特に制限はなく、分離対象の部材の種類や大きさに応じて公知の方法を適宜選択可能であり、例えばスクリーン分離機を用いる方法が挙げられ、複数の種類の方法を直列的に用いてもよい。
【0029】
上記の好ましい態様では、使用済み衛生用品から分離された、高吸水性ポリマーを含んだパルプ繊維を水溶液中でオゾン処理している。それにより、パルプ繊維に付着していた高吸水性ポリマーをオゾンで分解して、高吸水性ポリマーの分解物として第1オゾン処理液に含ませることができる。それゆえ、その高吸水性ポリマーの分解物を、バイオガスの原料に使用できる。また、その際、第1オゾン処理液に、分離しきれなかった微細なパルプ繊維や排泄物由来の有機物が存在したとしても、それらはオゾンにより損傷を受けており、場合によっては分解されていて、生物学的処理をされ易いので、バイオガスの原料に使用することができる。このように、使用済み衛生用品由来の廃棄物のうちから、バイオガスの原料に使用できる廃棄物を増やすことができるので、バイオガスの製造をより効率的に行うことができる。更に、オゾンで高吸水性ポリマーを分解するときに、処理液そのものが殺菌されるので、高吸水性ポリマーの分解物や第1オゾン処理液をバイオガスの原料に使用するとき、生物学的処理に使用される微生物に悪影響を及ぼす菌を抑止できる。それにより、バイオガスの製造をより効率的に行うことができる。
【0030】
本実施形態における他の好ましい態様として、前記生成工程S2は、破砕された前記使用済み衛生用品を含む前記不活化水溶液から、前記高吸水性ポリマー、前記合成樹脂材料及び前記パルプ繊維を分離して、前記排泄物及び残余の前記高吸水性ポリマーを含んだ前記不活化水溶液を有する混合液を生成する分離工程S211と、前記混合液をオゾン処理して、前記排泄物と前記残余の前記高吸水性ポリマーの分解物と、を含む第2オゾン処理液を生成する第2オゾン処理工程S212と、を含み、前記バイオガス製造工程S3は、前記処理液として、少なくとも前記第2オゾン処理液を用いてバイオガスを製造する。
【0031】
破砕された使用済み衛生用品を含む不活化水溶液から、高吸水性ポリマー、合成樹脂材料及びパルプ繊維を分離する方法(S211)としては、特に制限はなく、分離対象の部材の種類や大きさに応じて公知の方法を適宜選択可能である。分離方法としては、例えば、スクリーン分離機や遠心分離機を用いる方法が挙げられる。また、分離する部材の種類や分離する順序は特に制限はなく、一つの分離工程で複数の種類の部材を同時に分離してもよいし、一種類の部材のみを分離してもよい。
【0032】
排泄物及び残余の高吸水性ポリマーを含んだ不活化水溶液を有する混合液をオゾン処理する方法(S212)としては、混合液中で排泄物や高吸水性ポリマーとオゾンとが接触可能な方法であれば、特に制限はない。その方法としては、例えば、高吸水性ポリマーを含んだパルプ繊維を水溶液中でオゾン処理する方法(S202)に記載のとおりである。
【0033】
上記の別の好ましい態様では、使用済み衛生用品から分離された、排泄物及び残余の高吸水性ポリマーを含んだ不活化水溶液を有する混合液をオゾン処理している。それにより、排泄物だけでなく、混合液に残存していた高吸水性ポリマーを、高吸水性ポリマーの分解物としてバイオガスの原料に使用できる。また、その際、第2オゾン処理液に、分離しきれなかった微細なパルプ繊維が存在したとしても、それらはオゾンにより損傷を受けており、場合によっては分解されていて、生物学的処理をされ易いので、バイオガスの原料に使用することができる。このように、使用済み衛生用品由来の廃棄物のうちから、バイオガスの原料に使用できる廃棄物を増やすことができるので、バイオガスの製造をより効率的に行うことができる。更に、オゾンで高吸水性ポリマーを分解するときに、処理液そのものが殺菌されるので、高吸水性ポリマーの分解物や第2オゾン処理液をバイオガスの原料に使用するとき、生物学的処理に使用される微生物に悪影響を及ぼす菌を抑止できる。それにより、バイオガスの製造をより効率的に行うことができる。
【0034】
本実施形態における他の好ましい態様として、生成工程S2は、不活化水溶液中で行われる。
この態様では、粉砕工程だけでなく生成工程も不活化水溶液中で行われるので、使用済み衛生用品中の高吸水性ポリマーをより脱水させて、高吸水性ポリマーに含まれる排泄物を高吸水性ポリマーから外部へ放出させることができる。それにより、その高吸水性ポリマーから放出された排泄物もバイオガスの原料に使用することができる。このように、使用済み衛生用品由来の廃棄物のうちから、バイオガスの原料に使用できる廃棄物を増やすことができるので、バイオガスの製造をより効率的に行うことができる。
【0035】
本実施形態における他の好ましい態様として、不活化水溶液が有機酸を含む。
この態様では、不活化水溶液が有機酸を含んでいる。そのため、その有機酸もバイオガスの原料に使用することができる。このように、使用済み衛生用品由来の廃棄物のうちから、バイオガスの原料に使用できる廃棄物を増やすことができるので、バイオガスの製造をより効率的に行うことができる。
【0036】
本実施形態における他の好ましい態様として、有機酸は、クエン酸を含む。
この態様では、不活化水溶液の有機酸としてクエン酸を用いている。そのため、そのクエン酸をバイオガスの原料に使用することで、バイオガスの製造をより効率的に行うことができる。
【0037】
次に、実施形態に係る、使用済み衛生用品の高吸水性ポリマー、パルプ繊維及び合成樹脂材料をリサイクルために、排泄物を含む使用済み衛生用品から高吸水性ポリマー、パルプ繊維及び合成樹脂材料を回収する方法の一例について説明する。排泄物を含む使用済み衛生用品から高吸水性ポリマー、パルプ繊維及び合成樹脂材料を回収する方法については、特に制限はないが、例えば以下の方法を用いることができる。
【0038】
図4は、本実施形態に係るリサイクルシステム1の一例を示すブロック図である。リサイクルシステム1は、使用済み衛生用品から高吸水性ポリマー、パルプ繊維及び合成樹脂材料(フィルム、不織布なd)を回収するリサイクル装置10を備えている。リサイクル装置10は、破袋装置11~pH調整装置23を備えており、更に貯水槽24及び回収装置25を備えてもよい。
図5は、実施形態に係るリサイクル方法の例を示すフローチャートである。リサイクル方法は、使用済み衛生用品から高吸水性ポリマー、パルプ繊維及び合成樹脂材料を回収するリサイクル工程S10を備えている。リサイクル工程S10は穴開け工程S11~pH調整工程S23を備えており、更に第2再供給工程S24及び第1再供給工程S25を備えてもよい。る。以下、各工程について具体的に説明する。
【0039】
なお、本実施形態では、使用済みの衛生用品を、再利用(リサイクル)のために外部から回収・取得して用いる。その際、使用済みの衛生用品は、複数個、収集袋に、排泄物や菌類や臭気が外部に漏れないように封入される。収集袋内の個々の使用済みの衛生用品は、例えば排泄物や菌類が表側に露出せず、臭気が周囲に拡散しないよう排泄物が排泄される表面シートを内側に、主に丸められた状態や折り畳まれた状態で回収等される。
【0040】
穴開け工程S11は破袋装置11により実行される。破袋装置11は、不活化剤を含む不活化水溶液を貯留する溶液槽と、溶液槽内で回転する破袋刃と、を備える。破袋装置11は、溶液槽内に投入された収集袋に、不活化水溶液中で破袋刃により穴を開ける。それにより、不活化水溶液が穴から浸入した収集袋と不活化水溶液との混合液91が生成される。不活化水溶液は、収集袋内の使用済み吸収性物品の高吸水性ポリマーを不活化する。以下、不活化水溶液として酸性水溶液を用いる場合を例に説明する。
【0041】
破砕工程S12は破砕装置12により実行される。破砕装置12は、二軸破砕機を備える。破砕装置12は、混合液91の使用済み衛生用品を含む収集袋を、収集袋ごと破砕する。それにより、使用済み吸収性物品を含む収集袋の破砕物と酸性水溶液とを有する混合液92が生成されると共に、使用済み衛生用品の概ねすべての高吸水性ポリマーが不活化される。ただし、破砕物は、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーと、他の資材(例示:フィルム、不織布、収集袋のような合成樹脂資材)と、を含む。
【0042】
破砕工程S12、又は、穴開け工程S11及び破砕工程S12は、破砕工程S1ということができる。
【0043】
第1分離工程S13は第1分離装置13により実行される。第1分離装置13は、洗浄槽兼ふるい槽として機能する撹拌分離槽を有するパルパー分離機を備える。第1分離装置13は、混合液92を撹拌し、破砕物から排泄物などを除去しつつ、混合液92からパルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を分離する。それにより、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液93が生成されると共に、使用済み吸収性物品のフィルム、不織布や、収集袋のような資材が回収される。それらの資材は、例えば、洗浄水で洗浄された後に溶融、固化されて固形燃料等として再利用できる。
【0044】
第1除塵工程S14は第1除塵装置14により実行される。第1除塵装置14は、スクリーン分離機を備え、混合液93を、スクリーンにより、酸性水溶液中のパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び排泄物と他の資材(異物)とに分離する。それにより、異物の量が低減された、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液94が生成されると共に、他の資材が除去される。
【0045】
第2除塵工程S15は第2除塵装置15により実行される。第2除塵装置15は、スクリーン分離機を備え、混合液94を、第1除塵装置14より細かいスクリーンで、酸性水溶液中のパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び排泄物と他の資材(小異物)とに分離する。それにより、異物の量が更に低減された、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液95が生成されると共に、他の資材が更に除去される。
【0046】
第3除塵工程S16は第3除塵装置16により実行される。第3除塵装置16は、サイクロン分離機を備え、混合液95を、遠心分離により、酸性水溶液中のパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び排泄物と他の資材(比重の重い異物)とに分離する。それにより、異物の量がより低減された、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液96が生成されると共に、比重の大きい他の資材が除去される。
【0047】
なお、混合液92などの状態(例示:異物の量や大きさ)により、第1除塵装置14~第3除塵装置16のうちの少なくとも一つを省略してもよい。
【0048】
第2分離工程S17は第2分離装置17により実行される。第2分離装置17は、ドラムスクリーン分離機を備え、混合液96を、ドラムスクリーンにより、酸性水溶液中の高吸水性ポリマーと、パルプ繊維とに分離する。それにより、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液97が生成され、パルプ繊維が混合物98として除去される。
【0049】
第3分離工程S18は、第3分離装置18により実行される。第3分離装置18は、傾斜スクリーンを備えており、混合液97を、スクリーンにより、高吸水性ポリマーを含む固体と、排泄物及び酸性水溶液を含む液体とに分離する。それにより、高吸水性ポリマー(SAP)が回収されると共に、排泄物を含む酸性水溶液、分離できず残った高吸水性ポリマー及び高分子吸水性ポリマーの分解物などを含む混合液101が生成される。
【0050】
第1酸化剤処理工程S19は第1酸化剤処理装置19により実行される。第1酸化剤処理装置19は、酸化剤水溶液を貯留する処理槽と、処理槽内に酸化剤を供給する酸化剤供給装置と、を備える。第1酸化剤処理装置19は、混合物98を、処理槽の上部又は下部から処理槽内に投入し、処理槽内の酸化剤水溶液と混合する。そして、第1酸化剤供給装置により処理槽の下部から供給される酸化剤により、酸化剤水溶液中でパルプ繊維に含まれる高吸水性ポリマーを分解して、酸化剤水溶液に可溶化する。それにより、高吸水性ポリマーが除去されたパルプ繊維と高吸水性ポリマーの分解物を含む酸化剤水溶液とを有する混合液99が生成される。酸化剤は、高吸水性ポリマーを分解可能な酸化剤であり、例えばオゾンが挙げられ、オゾンは殺菌力や漂白力も高く好ましい。第1酸化剤処理工程S19は、高吸水性ポリマーの分解処理をより確実に行うため等の観点から、複数回の処理を連続して行ってもよい。
【0051】
酸化剤水溶液中のオゾン濃度は、好ましくは1~50質量ppmである。濃度が低すぎると、高吸水性ポリマーを完全に可溶化できず、パルプ繊維に高吸水性ポリマーが残留するおそれがあり、濃度が高すぎると、パルプ繊維に損傷を与えるおそれがある。第オゾンでの処理時間は、酸化剤水溶液中のオゾン濃度が高ければ短く、オゾン濃度が低ければ長くし、典型的には5~120分である。酸化剤水溶液中のオゾン濃度(ppm)と処理時間(分)の積(以下、「CT値」ともいう。)は、好ましくは100~6000ppm・分である。CT値が小さすぎると、高吸水性ポリマーを完全に可溶化できず、CT値が大きすぎると、パルプ繊維に損傷を与えるおそれがある。
【0052】
酸化剤としてオゾンを用いる場合、第1酸化剤供給装置はオゾン供給装置であり、処理槽にガス状物質であるオゾン含有ガスを供給する。オゾン供給装置のノズルは、処理槽の下部に配置され、オゾン含有ガスを複数の細かい気泡として酸化剤水溶液中に供給する。酸化剤水溶液としては、オゾンの失活の抑制や、高吸水性ポリマーの不活化の観点から、酸性の水溶液が好ましい。更に、破砕処理や除塵処理で不活化水溶液として酸性水溶液を用いている場合には、各処理間に連続性があるので、水溶液を無駄なく使用することができ、水の量を低減でき、安定的かつ確実に処理を行うことができる。また、酸性の水溶液に使用される酸、したがって、不活化水溶液の不活化剤として使用される酸としては、酸による作業者や装置への影響の低減の観点から有機酸が好ましく、中でも金属の除去の観点からクエン酸が好ましい。
【0053】
酸化剤水溶液中のオゾン濃度は、高吸水性ポリマーを分解することができる濃度であれば、特に限定されないが、好ましくは1~50質量ppmである。濃度が低すぎると、高吸水性ポリマーを完全に可溶化できず、パルプ繊維に高吸水性ポリマーが残留するおそれがあり、濃度が高すぎると、パルプ繊維に損傷を与えるおそれがある。第1酸化剤処理装置19での処理時間は、高吸水性ポリマーを分解することができる時間であれば、特に限定されないが、酸化剤水溶液中のオゾン濃度が高ければ短く、オゾン濃度が低ければ長くし、典型的には5~120分である。酸化剤水溶液中のオゾン濃度(ppm)と処理工程の処理時間(分)の積(以下「CT値」ともいう。)は、好ましくは100~6000ppm・分である。CT値が小さすぎると、高吸水性ポリマーを完全に可溶化できずパルプ繊維に高吸水性ポリマーが残留するおそれがあり、CT値が大きすぎると、パルプ繊維に損傷を与えるおそれがある。
【0054】
第4分離工程S20は、第4分離装置20により実行される。第4分離装置20は、スクリーン分離機を備え、混合液99を、スクリーンにより、パルプ繊維と酸化剤水溶液とに分離する。それにより、パルプ繊維が生成されると共に、高吸水性ポリマーの分解物を含む酸化剤水溶液の混合液104が送出される。混合液104は、高吸水性ポリマーが分解され除去されたパルプ繊維と、除去された高吸水性ポリマーの分解物と、を含む第1オゾン処理液(
図5)ということができる。
【0055】
第1再供給工程S25では、第4分離工程S20にて分離された混合液104が、送液ポンプなどにより、第1酸化剤処理工程S19(第1酸化剤処理装置19)に再供給され、酸化剤水溶液として再利用される。なお、混合液104に分離されたパルプ繊維を洗浄した洗浄水を混合してもよい。また、混合液104は、第1酸化剤処理装置19に戻る前に、混合物98と混合されてから第1酸化剤処理工程S19(第1酸化剤処理装置19)に再供給されてもよい。このようにして、混合液104、すなわち酸化剤水溶液が循環的に利用されることで、酸化剤水溶液に用いられる水の量を低減できる。
【0056】
第2酸化剤処理工程S22は第2酸化剤処理装置22により実行される。第2酸化剤処理装置22は、水溶液(例示:不活化水溶液としての酸性水溶液、事前に処理された混合液101の一部、など)を貯留する処理槽と、処理槽内の水溶液に酸化剤を供給する酸化剤供給装置と、を備えている。第2酸化剤処理装置22は、第3分離装置18より供給された混合液101を、処理槽の上部又は下部から処理槽内に投入し、処理槽内の水溶液と混合する。混合液101は、酸性水溶液の他に、排泄物や、除去しきれなかった高吸水性ポリマーや、高分子吸水性ポリマーの分解物のうちの分子量の比較的大きいもの、などを含んでおり、その粘度は比較的高い(例示:8mPa・s以上)。そして、第2酸化剤処理装置22は、酸化剤供給装置により処理槽の下部から供給される酸化剤で、水溶液中に含まれる排泄物などの分子量の比較的大きい有機物を分解して、水溶液に可溶化する。それにより、分子量の比較的小さい有機物を含む酸性水溶液を有する混合液102が生成される。混合液102の粘度は比較的低い(例示:5mPa・s未満)。また、分解・可溶化と共に殺菌も行うことができる。ただし、酸化剤は、排泄物のような分子量の比較的大きい有機物を分解可能な酸化剤であり、例えばオゾンが挙げられ、オゾンは殺菌力や漂白力も高く好ましい。
【0057】
なお、酸化剤としてオゾンを用いる場合、第1酸化剤処理装置19の場合と同様に、酸化剤供給装置はオゾン供給装置であり、処理槽にガス状物質であるオゾン含有ガスを供給する。なお、第2酸化剤処理装置22は、高吸水性ポリマーの分解処理をより確実に行うため等の観点から、複数個直列に連なり、複数回の処理を連続して行ってもよい。
【0058】
本実施形態では、第2酸化剤処理装置22では、少なくとも二段階の処理を行っている。第一段階の処理は、処理槽の前段に配置された、オゾンを混合可能な送液ポンプ(例示:ターボミキサーポンプ)で処理を行う。この第一段階の処理は効率を高めるために、送液ポンプ内でオゾンと混合液101とを高速で混合して、オゾンをマイクロバブル状にすると共に、その後に送液ポンプの出口において、一時的に加圧することにより、オゾンの混合液101への溶存効率を高めている。それにより分子量の比較的大きい有機物とオゾンとの接触効率を高め、有機物の分解効率を高めている。ただし、有機物の量が多過ぎて混合液101の粘度が高くなり過ぎると、マイクロバブルが消え難くなり、泡立ち状態(ペースト様状態)となり、酸性水溶液として再利用するのが難しくなる現象が生じ得る。そのため、第二段階の処理として、上記の送液ポンプから送出されたオゾンマイクロバブルを含む混合液101を処理槽へ送ると共に、オゾン供給装置により比較的大きなオゾンガスのバブル(例示:直径1mm以上)を処理槽の下方より混合液101へ供給する。このように、混合液101内でオゾンガスをバブリングすることで、有機物の分解を更に進行させて、有機物の分解効率を更に高めることができる。それにより、混合液101の粘性をさらに低下できると共に、残存しているマイクロバブルが大きなバブルに付着したり吸収されたりすることで、混合液101から抜け易くすることができる。それにより、有機物が分解された、再利用可能な混合液101、すなわち混合液102が生成される。
【0059】
なお、混合液101の粘性が高くなり過ぎない場合には、第一段階及び第二段階の処理のうちのいずれか一方を省略できる。あるいは、第一段階の処理を省略し、第一段階及び第二段階の処理を組み合わせて、第二段階の処理において、マイクロバブルを用いてもよい。また、第1酸化剤処理装置19においても、第2酸化剤処理装置22のような二段階の処理を用いてもよいし、第一段階及び第二段階の処理うちのいずれか一方、又は、両者を組み合わせた処理を用いてもよい。
【0060】
酸性水溶液中のオゾン濃度は、高吸水性ポリマーを分解することができる濃度であれば、特に限定されないが、好ましくは1~50質量ppmである。濃度が低すぎると、分子量の比較的大きい有機物を完全に可溶化できず、酸性水溶液の粘度が低下し難くなるおそれがあり、濃度が高すぎると、機器の損傷などのおそれがある。第2酸化剤処理装置22での処理時間は、分子量の比較的大きい有機物を分解することができる時間であれば、特に限定されないが、酸性水溶液中のオゾン濃度が高ければ短く、オゾン濃度が低ければ長くし、典型的には5~120分である。酸性水溶液中のオゾン濃度(ppm)と処理工程の処理時間(分)の積(以下「CT値」ともいう。)は、好ましくは100~6000ppm・分である。CT値が小さすぎると、分子量の比較的大きい有機物を完全に可溶化できず、酸性水溶液の粘度が低下し難くなるおそれがあり、CT値が大きすぎると、機器の損傷などのおそれがある。
【0061】
pH調整工程S23は、pH調整装置23により実行される。pH調整装置23は、例えば、pH調整用の処理槽と、処理槽内の水溶液(又は酸化剤水溶液)のpHを測定するpHセンサと、処理槽内にpH調整剤を供給するpH調整剤供給装置と、を備えている。pH調整装置23は、例えば、第2酸化剤処理装置22より供給された混合液102を処理槽に供給し、混合液102のpHが所定のpH範囲に収まっていなければ、pH調整剤を処理槽内の混合液102に供給してpHを調整する。それにより、pHが調整された混合液102、すなわち混合液103が生成される。混合液103は、有機物が分解された、再利用可能な酸性水溶液ということができ、また、排泄物と残余の高吸水性ポリマーの分解物とを含む第2オゾン処理液(
図5)ということができる。pH調整剤としては、pH調整が可能であれば特に制限されるものではないが、酸性水溶液のpHを上げる(中性に近づける)ための水、及び、pHを下げる(より酸性にする)ためのクエン酸が挙げられる。なお、混合液101のpHが安定している場合には、pH調整装置23を用いなくてもよい。その場合には、混合液102が第2オゾン処理液ということができる。
【0062】
pH調整剤を調整さている混合液103、すなわち再利用可能な酸性水溶液は、リサイクル装置10(の破袋装置11又は破砕装置12若しくは第1分離装置13など)へ再供給されて、再利用される。
【0063】
貯水槽24は、混合液103のうち、再利用されない分を貯留する。また、回収装置25は、貯水槽24に貯留されていた混合液103である混合液105から不活化剤(例示:クエン酸のような有機酸)又は不活化水溶液(例示:クエン酸水溶液のような有機酸水溶液)を回収する。
【0064】
第2再供給工程S24(再供給工程)では、pH調整工程S23にてpHが所定のpH範囲に調整された混合液103(酸性水溶液)が、送液ポンプなどにより、リサイクル装置10(例示:穴開け工程S11、破砕工程S12、第1分離工程S13)に再供給されて、不活化水溶液として再利用される。このようにして、混合液103、すなわち酸性水溶液が循環的に利用されることで、酸性水溶液に用いられる水の量を低減できる。なお、混合液103は、必要に応じて他の工程(装置)へ供給されてもよい。混合液103の余剰分は貯水槽24に貯留される。
【0065】
なお、混合液103の酸性水溶液以外の成分の量が増加すると、その成分が分子量の比較的小さい有機物であったとしても、混合液103の粘度が比較的高い状態になり、第2酸化剤処理工程S22でも粘度を比較的低い状態にすることが困難になる場合がある。その場合には、後述される有機酸水溶液の回収方法により、不純物(排泄物など)を除去することで、有機酸水溶液を再利用することができる。
【0066】
以上の方法により、実施形態に係る、使用済み衛生用品の高吸水性ポリマー、パルプ繊維及び合成樹脂材料をリサイクルために、排泄物を含む使用済み衛生用品から高吸水性ポリマー、パルプ繊維及び合成樹脂材料を回収することができる。それと共に、この方法により、排泄物及び前記高吸水性ポリマーの分解物を含んだ処理液として、例えば第1オゾン処理液である混合液104、及び/又は、第2オゾン処理液である混合液103(又は102)を生成することができる。
【0067】
本実施形態では、酸化剤がオゾンであるが、他の酸化剤、例えば、二酸化塩素、過酸化水素、次亜塩素酸、次亜塩素酸の塩類、及び、過酢酸の少なくとも一つを含んでもよい。これらの酸化剤は、酸化作用により、高吸水性ポリマーを分解して低分子量化することができ、それにより、高吸水性ポリマーを分解物の形でバイオガス製造に有効に利用することができる。
【0068】
更に、別の実施形態のバイオガスの製造方法は、使用済み衛生用品から高吸水性ポリマーなどを回収する際に生成された混合液103(混合液105)中の酸性水溶液を再生し、そのとき排出される廃棄物又は再生された酸性水溶液を、バイオガスの製造に用いる。具体的には、以下に示すとおりである。
【0069】
以下、別の実施形態に係る、使用済み衛生用品から高吸水性ポリマーなどを回収する際に生成された混合液103(混合液105)中の有機酸を再生する方法の一例について説明する。混合液105の酸性水溶液が有機酸水溶液の場合には、以下に示す回収方法により、有機酸水溶液中の不純物(排泄物など)を除去して、比較的純度の高い有機酸水溶液107として回収できる。
図6は、別の実施形態に係る有機酸水溶液を回収する方法の一例を示すフローチャートである。
【0070】
有機酸水溶液を回収する方法は、回収装置25で実施される。その方法は、析出ステップS31、混合物収集ステップS32、有機酸生成ステップS33、有機酸水溶液取得ステップS34を備える。析出ステップS31は、混合液105の有機酸水溶液に、2価以上の金属を含む金属塩、又は2価以上の金属を含む塩基を添加することにより、有機酸の非水溶性塩を析出させる。混合物収集ステップS32は、析出ステップを経た有機酸水溶液から、有機酸の非水溶性塩と排泄物に由来する固形排泄物との混合物である固形物を収集すると共に、液状物106を分離する。有機酸生成ステップS33は、固形物に、遊離の有機酸と、非水溶性塩とを生成しうる酸、及び水を添加し、有機酸と、非水溶性塩及び固形排泄物とを含む水溶液を形成する。有機酸水溶液取得ステップS34は、上記水溶液から、非水溶性塩及び固形排泄物を除去し、有機酸を含む有機酸水溶液107を得る。
【0071】
析出ステップS31では、貯水槽24に貯留された排泄物及び有機酸を含む混合液105の有機酸水溶液に、2価以上の金属を含む金属塩、又は2価以上の金属を含む塩基(以下、「非水溶性塩生成用塩」ともいう)を添加することにより、(i)有機酸の非水溶性塩と、排泄物、すなわち(ii)固形排泄物及び(iii)液状排泄物と、(iv)水溶液塩とを含む有機酸水溶液を得る。上記非水溶性塩生成用塩基を構成する2価以上の金属としては、例えば、Mg,Ca,Ba,Fe,Ni,Cu,Zn及びAl、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群が挙げられる。上記非水溶性塩生成用塩基としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化銅、水酸化亜鉛等が挙げられる。上記非水溶性塩生成用塩基は、有機酸に対して、好ましくは0.8~3.0倍当量となるような量で添加される。(i)有機酸の非水溶性塩を形成する観点からである。析出ステップS31では、(i)有機酸の非水溶性塩を形成し、当該塩が結晶化し、そして沈降する。その際に、有機酸水溶液中に分散された(ii)固形排泄物のうち、微細なものが、(i)有機酸の非水溶性塩の表面に付着し、(i)有機酸の非水溶性塩の結晶に取り込まれて凝集する。従って、混合物収集ステップS32において、微細な(ii)固形排泄物が、固形物[(i)有機酸の非水溶性塩及び(ii)固形排泄物]として収集され、液状物106[(iii)液状排泄物及び(iv)水溶性塩]に含まれにくくなる。その結果、液状物106中の浮遊物質(SS)の濃度が低くなり、液状物106と固形物とを分離する固液分離の際にフィルター等の目詰まりがし難くなり、そして液状物106を微生物処理する際に、汚泥の発生量が低減される。
【0072】
混合物収集ステップS32では、上記の析出ステップS31を経た有機酸水溶液を、固形物[(i)有機酸の非水溶性塩及び(ii)固形排泄物]と、液状物106[(iii)液状排泄物及び(iv)水溶性塩]とに分離する。液状物106は、液状排泄物を含んでいるので、バイオガスの製造に用いることができる。
【0073】
有機酸生成ステップS33では、上記固形物に、遊離の有機酸と非水溶性塩とを生成し得る酸(以下、「遊離有機酸生成酸」ともいう)及び水を添加することで、(v)有機酸と、(vi)非水溶性塩と、(ii)固形排泄物とを含む水溶液を形成する。遊離有機酸生成酸としては、有機酸の酸解離常数(pKa,水中)よりも小さい酸解離常数(pKa,水中)を有する酸が好ましく、有機酸又は無機酸であることができ、そして無機酸であることが好ましい。上記無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、ヨウ素酸及び臭素酸等が挙げられる。遊離有機酸生成酸は、有機酸に対して、好ましくは0.8~2.0倍当量となるような量で添加される。(i)有機酸の非水溶性塩を、遊離状態における(v)有機酸にする観点からである。ここで使用される水は、例えば、混合液104から分離された洗浄水の分量に相当する分の溶液の一部又は全部などを使用し得る。
【0074】
有機酸水溶液取得ステップS34では、上記水溶液から、固形物、すなわち、(vi)非水溶性塩及び(ii)固形排泄物を除去し、液状物、すなわち、(v)有機酸を含む(vii)有機酸水溶液107を得る。有機酸水溶液107は、有機酸(例示:クエン酸)を含んでいるので、バイオガスの製造に用いることができる。
【0075】
本発明の吸収性物品は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能である。
【符号の説明】
【0076】
S1 破砕工程
S2 生成工程
S3 バイオガス製造工程