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特許7379146末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/52 20060101AFI20231107BHJP
   C07C 43/30 20060101ALI20231107BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231107BHJP
【FI】
C07C41/52
C07C43/30
C07B61/00 300
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019235058
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102583
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-01-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】三宅 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 美与志
(72)【発明者】
【氏名】金生 剛
(72)【発明者】
【氏名】馬場 啓弘
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-099500(JP,A)
【文献】特公昭47-049046(JP,B1)
【文献】特公昭43-020172(JP,B1)
【文献】特開昭64-025736(JP,A)
【文献】Stephen F.Martin et al.,Tetrahedron,1986年,Volume42, Issue 11,pp.2903-2910,https://doi.org/10.1016/S0040-4020(01)90579-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
H-C≡C(CHOH (1)
(式中、aは1~10の整数を表す。)
で表される末端三重結合を有するアルキノール化合物を、
下記一般式(2)
[CH(CH][CH(CH]NC (2)
(式中、b及びcは独立して、0~9の整数を表す。)
で表される、塩基としてのジアルキルアニリン化合物の存在下、
下記一般式(3)
RCHOCHX (3)
(式中、Xはハロゲン原子を表し、Rは水素原子、炭素数1~9のn-アルキル基、又はフェニル基を表す。)
で表されるハロメチル=アルキル=エーテル化合物とアルコキシメチル化反応させて、下記一般式(4)
H-C≡C(CHOCHOCHR (4)
(式中、R及びaは、上記で定義した通りである。)
で表される、末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物を製造する方法において、
(i)前記アルコキシメチル化反応が、塩基兼該反応の後の抽出溶媒としての前記ジアルキルアニリン化合物(2)以外の追加の溶媒無しに行われる、若しくは、
(ii)前記アルコキシメチル化反応後の後処理操作が、反応混合物を、水の存在下、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、及びアルカリ土類金属炭酸水素塩から選択される塩基との中和反応に付されることによって行われる、又は、
(iii)前記アルコキシメチル化反応が、塩基としての前記ジアルキルアニリン化合物(2)以外の追加の溶媒無しに行われ、且つ前記アルコキシメチル化反応後の後処理操作が、反応混合物を、水の存在下、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、及びアルカリ土類金属炭酸水素塩から選択される塩基との中和反応に付されることによって行われる、
前記方法。
【請求項2】
前記アルコキシメチル化反応が、塩基としての前記ジアルキルアニリン化合物(2)以外の追加の溶媒無しに行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルコキシメチル化反応後の後処理操作が、反応混合物を、水の存在下、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、及びアルカリ土類金属炭酸水素塩から選択される塩基との中和反応に付されることによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アルコキシメチル化反応が、塩基としての前記ジアルキルアニリン化合物(2)以外の追加の溶媒無しに行われ、且つ
前記アルコキシメチル化反応後の後処理操作が、反応混合物を、水の存在下、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、及びアルカリ土類金属炭酸水素塩から選択される塩基との中和反応に付されることによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アルコキシメチル化反応後の後処理操作が中和反応であり、該中和反応から生じた前記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)と前記ジアルキルアニリン化合物(2)とを含む有機層が、蒸留によって前記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)と前記ジアルキルアニリン化合物(2)とに分離される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アルコキシメチル化反応が、前記ハロメチル=アルキル=エーテル化合物(3)に、前記アルキノール化合物(1)と前記ジアルキルアニリン化合物(2)とを滴下することにより行われる、請求項1~のいずれか一項に記載の末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物を製造する方法。
【請求項7】
下記一般式(5)
RCHOCHOCHR (5)
(式中、Rは、上記で定義した通りである。)
で表されるジアルコキシメタン化合物を、亜鉛化合物の存在下、ハロゲン化剤と反応させて、前記ハロメチル=アルキル=エーテル化合物(3)を調製する工程を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物を製造する方法。
【請求項8】
前記ハロメチル=アルキル=エーテル化合物(3)が、クロロメチル=メチル=エーテル、クロロメチル=エチル=エーテル、クロロメチル=プロピル=エーテル、クロロメチル=ブチル=エーテル、又はクロロメチル=ベンジル=エーテルである、請求項1~のいずれか一項に記載の末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物を製造する方法。
【請求項9】
前記ジアルキルアニリン化合物(2)が、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジプロピルアニリン、又はN,N-ジブチルアニリンである、請求項1~のいずれか一項に記載の末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物を製造する方法。
【請求項10】
前記アルキノール化合物(1)が、2-プロピン-1-オール、3-ブチン-1-オール、4-ペンチン-1-オール、又は5-ヘキシン-1-オールである、請求項1~のいずれか一項に記載の末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物を製造する方法。
【請求項11】
前記アルコキシメチル化反応の後に、前記ジアルキルアニリン化合物(2)を回収する工程を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物を製造する方法。
【請求項12】
前記回収したジアルキルアニリン化合物(2)を、前記アルコキシメチル化反応における原料として再利用する工程を更に含む、請求項11に記載の末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物を製造する方法。
【請求項13】
前記回収したジアルキルアニリン化合物(2)が、前記アルコキシメチル化反応を1バッチ行った後に回収されたもの、又は前記アルコキシメチル化反応を複数バッチ繰り返し、バッチ毎に回収されたジアルキルアニリン化合物(2)をまとめたものである、請求項11又は12に記載の末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物を製造する方法。
【請求項14】
下記一般式(1)
H-C≡C(CHOH (1)
(式中、aは1~10の整数を表す。)
で表される末端三重結合を有するアルキノール化合物を、
下記一般式(2)
[CH(CH][CH(CH]NC (2)
(式中、b及びcは独立して、0~9の整数を表す。)
で表されるジアルキルアニリン化合物の存在下、
下記一般式(3)
RCHOCHX (3)
(式中、Xはハロゲン原子を表し、Rは水素原子、炭素数1~9のn-アルキル基、又はフェニル基を表す。)
で表されるハロメチル=アルキル=エーテル化合物とアルコキシメチル化反応させて、下記一般式(4)
H-C≡C(CHOCHOCHR (4)
(式中、R及びaは、上記で定義した通りである。)
で表される、末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物を製造する方法において、
前記アルコキシメチル化反応が、前記ハロメチル=アルキル=エーテル化合物(3)に、前記アルキノール化合物(1)と前記ジアルキルアニリン化合物(2)とを滴下することにより行われる、
前記方法。
【請求項15】
下記一般式(1)
H-C≡C(CHOH (1)
(式中、aは1~10の整数を表す。)
で表される末端三重結合を有するアルキノール化合物を、
下記一般式(2)
[CH(CH][CH(CH]NC (2)
(式中、b及びcは独立して、0~9の整数を表す。)
で表されるジアルキルアニリン化合物の存在下、
下記一般式(3)
RCHOCHX (3)
(式中、Xはハロゲン原子を表し、Rは水素原子、炭素数1~9のn-アルキル基、又はフェニル基を表す。)
で表されるハロメチル=アルキル=エーテル化合物とアルコキシメチル化反応させて、下記一般式(4)
H-C≡C(CHOCHOCHR (4)
(式中、R及びaは、上記で定義した通りである。)
で表される、末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物を製造する方法において、
下記一般式(5)
RCHOCHOCHR (5)
(式中、Rは、上記で定義した通りである。)
で表されるジアルコキシメタン化合物を、亜鉛化合物の存在下、ハロゲン化剤と反応させて、前記ハロメチル=アルキル=エーテル化合物(3)を調製する工程を更に含む、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機合成反応においては、保護基によって水酸基を保護し、別の官能基を反応させて骨格を構築し、その後、当該保護基を脱保護することが一般的に行われている。水酸基の保護基としては、トリメチルシリル基、アセチル基、ベンジル基、ベンゾイル基、及びアルコキシメチル基、例えばメトキシメチル基(MOM基)、等が知られている。特に、アルコキシメチル基は、酸性及び塩基性どちらの反応条件下でも使用が可能であり、且つ酸加水分解条件で容易に脱保護が可能であることから、有機合成において幅広く用いられている。
【0003】
末端三重結合を有するアルキノール化合物のメトキシメチル基による水酸基の保護(アルコキシメチル化)については、溶媒中、塩基の存在下、該アルキノール化合物にクロロメチル=メチル=エーテルを滴下する方法(非特許文献1)、並びに、酸触媒及びハロゲン化リチウム存在下、ジメトキシメタン及びアルキノール化合物を反応させる方法(非特許文献2)が報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Masayoshi Fukuoka et al.,J.Med.Chem.,2012,55,6427-6437.
【文献】Emmanuel Vrancken et al.,J.Org.Chem.2007,72,1770-1779.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1においては、溶媒として環境負荷の極めて大きいジクロロメタンを用いている上に、当量以上用いている塩基であるN,N-ジイソプロピルエチルアミンが、反応後の後処理で全量廃水に混入してしまうため、環境及び経済性の観点から好ましくない。また、廃水からの上記塩基の回収及び精製は手間と費用がかかり、回収効率が高くなく、廃水を全量焼却処分する場合には膨大な費用もかかるため、経済性及び環境の観点からも好ましくない。さらに、反応後、水に溶けやすい4-(メトキシメトキシ)-1-ブチンを有機層に抽出するために、抽出溶媒として沸点が低く引火しやすいジエチル=エーテルを用いている上に、収率も58%と極めて低いため、工業的に有利でない。
【0006】
特許文献2においては、高価なハロゲン化リチウムを用いているため、経済的でない。また、反応を完結させるべく、ジメトキシメタンを大過剰量用いて平衡を偏らせる必要があるため、生産性が悪く、収率も75%と低い。さらに、反応後、水に溶けやすい3-(メトキシメトキシ)-1-プロピンを有機層に抽出するために、抽出溶媒として沸点が低く引火しやすいジエチル=エーテルを用いているため、工業的に有利でない。加えて、平衡反応であるために、生成したアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物に原料のアルキノール化合物が混ざってしまい、特に分子量の小さい低級アルキノール化合物のアルコキシメチル化においては、原料のアルキノール化合物と、生成物であるアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物との沸点差が小さい場合があり、蒸留による分離が困難である。
【0007】
また、特に炭素数3~6の低級アルキノール化合物では、メトキシメチル基で保護した対応するメトキシメチル=アルキニル=エーテル化合物は水に溶けやすく、抽出溶媒を用いない場合には、水層へのロスが大きくなり、収率が大きく低下してしまう。さらに、これらの低級アルキノール化合物のアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物は沸点が低く、トルエンやキシレン等の溶媒と沸点が近いため、蒸留分離することが困難であり、使用できる溶媒も限定される。加えて、溶媒を用いることにより、仕込み量が減って生産性が大きく悪化してしまう。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決し、末端三重結合を有するアルキノール化合物から末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物を高収率で製造することを目的とする。また、本発明は、該アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物の製造において、環境及び経済性の観点からも好ましい製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ジアルキルアニリン化合物を塩基兼抽出溶媒として用いて、末端三重結合を有するアルキノール化合物の水酸基をアルコキシメチル基で保護した結果、末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物を高収率で製造できることを見出した。また、用いた塩基兼抽出溶媒であるジアルキルアニリン化合物も高収率で回収でき、該回収したジアルキルアニリン化合物を上記のアルコキシメチル化反応に再利用できることも見出し、本発明を為すに至った。
【0010】
本発明の一つの態様では、
下記一般式(1)
H-C≡C(CHOH (1)
(式中、aは1~10の整数を表す。)
で表される末端三重結合を有するアルキノール化合物を、
下記一般式(2)
[CH(CH][CH(CH]NC (2)
(式中、b及びcは独立して、0~9の整数を表す。)
で表されるジアルキルアニリン化合物の存在下、
下記一般式(3)
RCHOCHX (3)
(式中、Xはハロゲン原子を表し、Rは水素原子、炭素数1~9のn-アルキル基、又はフェニル基を表す。)
で表されるハロメチル=アルキル=エーテル化合物とアルコキシメチル化反応させて、下記一般式(4)
H-C≡C(CHOCHOCHR (4)
(式中、R及びaは、上記で定義した通りである。)
で表される、末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物を製造する方法が提供される。
【0011】
また、本発明の別の態様では、上記アルコキシメチル化反応の後に、上記ジアルキルアニリン化合物(2)を回収すること、及び該回収したジアルキルアニリン化合物(2)を再度アルコキシメチル化反応における原料として再利用することを含む、末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)を製造する方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アルコキシメチル化反応に用いる塩基、すなわち上記ジアルキルアニリン化合物(2)、は、抽出溶媒としても活用できるため、アルコキシメチル化反応時の溶媒及び反応後の抽出溶媒が不要である。また、本発明によれば、高生産性かつ高収率で高純度の上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)を安価に製造することができると共に、反応に用いた上記ジアルキルアニリン化合物(2)を高収率で回収し、該回収したジアルキルアニリン化合物(2)をアルコキシメチル化反応におて再利用することができる。
【0013】
詳細には、本発明によれば、上記ジアルキルアニリン化合物(2)を塩基兼抽出溶媒として用いることにより、アルコキシメチル化反応中に溶媒を用いなくとも、反応性良く、末端に三重結合を有するアルキノール化合物の水酸基をアルコキシメチル化し、反応後は該ジアルキルアニリン化合物(2)が抽出溶媒としての役割を果たすことにより、抽出溶媒を用いなくとも、末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)を高収率で製造することが可能となる。また、本発明によれば、上記ジアルキルアニリン化合物(2)を塩基兼抽出溶媒として用いることにより、該ジアルキルアニリン化合物(2)と上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)とを蒸留により分離精製して、高純度、高収率で該ジアルキルアニリン化合物(2)を回収し、該回収したジアルキルアニリン化合物(2)を当該アルコキシメチル化反応におて再利用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のアルコキシメチル化反応は、下記一般式(1)で示される末端三重結合を有するアルキノール化合物(以下、アルキノール化合物(1)ともいう)を、下記一般式(2)で表されるジアルキルアニリン化合物(以下、ジアルキルアニリン化合物(2)ともいう)の存在下、下記一般式(3)で表されるハロメチル=アルキル=エーテル化合物(以下、ハロメチル=アルキル=エーテル化合物(3)ともいう)と反応させて、下記一般式(4)で表される末端三重結合を有するアルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(以下、アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)ともいう)を得るものである。
H-C≡C(CHOH (1)
[CH(CH][CH(CH]NC (2)
CH OCHX (3)
H-C≡C(CHOCHOCHR (4)
【0015】
まず、上記アルキノール化合物(1)について説明する。
【0016】
一般式(1)において、aは1~10、好ましくは1~4、の整数を表す。
【0017】
アルキノール化合物(1)の具体例としては、2-プロピン-1-オール、3-ブチン-1-オール、4-ペンチン-1-オール、5-ヘキシン-1-オール、6-ヘプチン-1-オール、7-オクチン-1-オール、8-ノニン-1-オール、9-デシン-1-オール、10-ウンデシン-1-オール、及び11-ドデシン-1-オール等が挙げられる。
アルキノール化合物(1)の中でも、水への溶解性が高い炭素数3~6の末端三重結合を有する低級アルキノール化合物(a=1~4)、すなわち2-プロピン-1-オール、3-ブチン-1-オール、4-ペンチン-1-オール、及び5-ヘキシン-1-オール、が、該低級アルキノール化合物の保護体である上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)の製造において特に有利である。通常、これらの末端三重結合を有する低級アルキノール化合物をアルコキシメチル化させて、アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物を製造する場合、反応時の溶媒又は抽出溶媒として、抽出力に優れた非水溶性で沸点が低いジクロロメタン又はジエチル=エーテルを用いる必要がある。これらの溶媒を用いた場合、蒸留による該溶媒の分離が必要となり、仕込量が減ることによる生産性低下が生じ、また該溶媒は廃棄物となるため環境に悪い。一方で、これらの溶媒を用いない場合、上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)が水層へ逃げてしまい、その結果、該アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)の収率が極めて低くなってしまう。しかしながら、本発明では、上記のジアルキルアニリン化合物(2)の優れた抽出能力により、低級アルキノール化合物の保護体である上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)であっても、水層へ逃げること無しに、有機層へ抽出することができる。従って、上記ジアルキルアニリン化合物(2)をアルコキシメチル化反応における塩基として用い、さらに、アルコキシメチル化反応後は抽出溶媒としても再活用することによって、上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)の生産性を向上させることができる。
【0018】
アルキノール化合物(1)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
【0019】
次に、上記ジアルキルアニリン化合物(2)について説明する。
【0020】
上記一般式(2)において、b及びcは独立して、0~9、好ましくは0~3、の整数を表す。
【0021】
上記のアルコキシメチル化反応には、塩基兼抽出溶媒としてのジアルキルアニリン化合物(2)を用いる。
トリエチルアミンの様な水溶性化合物は、アルコキシメチル化反応の塩基として使用することができても、該反応後の抽出溶媒として用いることは出来ない。一方、N,N-ジイソプロピルエチルアミンの様な不溶性化合物は、アルコキシメチル化反応の塩基として使用でき、更に該反応後の抽出溶媒として用いることもできるが、沸点が低すぎる。そのため、特に炭素数3~6の低級アルキノール化合物のアルコキシメチル化反応においては、生成物との沸点差が少なく、蒸留によって分離精製することができない。
以上の観点から、塩基としての能力を有し、かつ抽出力もあり、生成物との沸点差が十分にある化合物を使用することが望ましい。アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)との沸点差が十分に確保できるように、用いるジアルキルアニリン化合物を選択することによって、蒸留にて両者を容易に分離することが可能となり、さらに回収したジアルキルアニリン化合物をアルコキシメチル化反応におて再利用することができるため経済的である。そこで、本発明では、上記アルコキシメチル化において、上記ジアルキルアニリン化合物(2)を用いる。
【0022】
ジアルキルアニリン化合物(2)の具体例としては、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジプロピルアニリン、N,N-ジブチルアニリン、N,N-ジペンチルアニリン、N,N-ジヘキシルアニリン、N,N-ジヘプチルアニリン、N,N-ジオクチルアニリン、N,N-ジノニルアニリン、N,N-ジデシルアニリン、N,N-エチルメチルアニリン、N,N-メチルプロピルアニリン、N,N-ブチルメチルアニリン、N,N-エチルプロピルアニリン、及びN,N-ブチルエチルアニリン等が挙げられ、反応性の観点から、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジプロピルアニリン、及びN,N-ジブチルアニリンが好ましく、N,N-ジエチルアニリンがより好ましい。
【0023】
ジアルキルアニリン化合物(2)の使用量は、生産性の観点から、上記アルキノール化合物(1)1molに対して、好ましくは1.0~5.0mol、より好ましくは1.0~2.0mol、である。
【0024】
ジアルキルアニリン化合物(2)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
【0025】
次に、上記ハロメチル=アルキル=エーテル化合物(3)について説明する。
【0026】
上記一般式(3)において、Xはハロゲン原子を表し、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、汎用性の観点から、塩素原子が好ましい。
一般式(3)において、Rは水素原子、炭素数1~9、好ましくは1~4、のn-アルキル基、又はフェニル基を表す。
炭素数1~9のn-アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、及びn-ノニル基等の直鎖状のアルキル基等が挙げられる。
【0027】
ハロメチル=アルキル=エーテル化合物(3)の具体例としては、クロロメチル=メチル=エーテル、クロロメチル=エチル=エーテル、クロロメチル=プロピル=エーテル、クロロメチル=ブチル=エーテル、クロロメチル=ペンチル=エーテル、クロロメチル=ヘキシル=エーテル、クロロメチル=ヘプチル=エーテル、クロロメチル=オクチル=エーテル、クロロメチル=ノニル=エーテル、クロロメチル=デシル=エーテル、クロロメチル=ベンジル=エーテル、ブロモメチル=メチル=エーテル、ブロモメチル=エチル=エーテル、ブロモメチル=プロピル=エーテル、ブロモメチル=ブチル=エーテル、ブロモメチル=ペンチル=エーテル、ブロモメチル=ヘキシル=エーテル、ブロモメチル=ヘプチル=エーテル、ブロモメチル=オクチル=エーテル、ブロモメチル=ノニル=エーテル、ブロモメチル=デシル=エーテル、ブロモメチル=ベンジル=エーテル、ヨードメチル=メチル=エーテル、ヨードメチル=エチル=エーテル、ヨードメチル=プロピル=エーテル、ヨードメチル=ブチル=エーテル、ヨードメチル=ペンチル=エーテル、ヨードメチル=ヘキシル=エーテル、ヨードメチル=ヘプチル=エーテル、ヨードメチル=オクチル=エーテル、ヨードメチル=ノニル=エーテル、ヨードメチル=デシル=エーテル、及びヨードメチル=ベンジル=エーテル等が挙げられ、汎用性の観点から、クロロメチル=メチル=エーテル、クロロメチル=エチル=エーテル、クロロメチル=プロピル=エーテル、クロロメチル=ブチル=エーテル、及びクロロメチル=ベンジル=エーテルが好ましく、クロロメチル=メチル=エーテル及びクロロメチル=エチル=エーテルがより好ましい。
【0028】
ハロメチル=アルキル=エーテル化合物(3)の使用量は、反応性の観点から、上記アルキノール化合物(1)1molに対して、好ましくは1.0~3.0mol、より好ましくは1.0~1.8mol、である。
【0029】
ハロメチル=アルキル=エーテル化合物(3)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
例えば、ハロメチル=アルキル=エーテル化合物(3)は、下記一般式(5)で表されるジアルコキシメタン化合物(以下、ジアルコキシメタン化合物(5)という)を亜鉛化合物(6)の存在下、ハロゲン化剤(7)と反応させることにより、調製される。
【0030】
【化1】
【0031】
上記ジアルコキシメタン化合物(5)におけるRは、上記ハロメチル=アルキル=エーテル化合物(3)で定義したRと同じである。
【0032】
ジアルコキシメタン化合物(5)の具体例としては、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、ジプロポキシメタン、ジブトキシメタン、ジペンチロキシメタン、ジヘキシロキシメタン、ジヘプチロキシメタン、ジオクチロキシメタン、ジノロキシメタン、ジデシロキシメタン、及びジベンジロキシメタン等が挙げられる。汎用性の観点から、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、ジプロポキシメタン、ジブトキシメタン、及びジベンジルオキシメタンが好ましく、ジメトキシメタン及びジエトキシメタンがより好ましい。
【0033】
ハロメチル=アルキル=エーテル化合物(3)の調製において使用するジアルコキシメタン化合物(5)の使用量は、反応性の観点から、上記アルキノール化合物(1)1molに対して、好ましくは1.0~10.0mol、より好ましくは1.0~3.0mol、である。
【0034】
亜鉛化合物(6)の具体例としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛、及びヨウ化亜鉛等のハロゲン化亜鉛化合物、酢酸亜鉛等の酢酸塩類、並びにトリフルオロメタンスルホン酸亜鉛等のトリフルオロメタンスルホン酸塩類が挙げられ、汎用性の観点から、ハロゲン化亜鉛が好ましい。
【0035】
ハロメチル=アルキル=エーテル化合物(3)の調製において使用する亜鉛化合物(6)の使用量は、反応性の観点から、上記アルキノール化合物(1)1molに対して、好ましくは0.0001~5.0mol、より好ましくは0.001~1.0mol、である。
【0036】
ハロゲン化剤(7)の具体例としては、塩化オキサリル、臭化オキサリル、ヨウ化オキサリル等のハロゲン化オキサリル化合物、塩化チオニル、臭化チオニル、及びヨウ化チオニル等のハロゲン化チオニル化合物、並びに、アセチル=クロリド、アセチル=ブロミド、アセチル=ヨージド、プロピオニル=クロリド、プロピオニル=ブロミド、プロピオニル=ヨージド、ブチリル=クロリド、ブチリル=ブロミド、ブチリル=ヨージド、バレリル=クロリド、バレリル=ブロミド、バレリル=ヨージド、ヘキサノイルクロリド、ヘキサノイル=ブロミド、ヘキサノイル=ヨージド、ヘプタノイルクロリド、ヘプタノイル=ブロミド、ヘプタノイル=ヨージド、オクタノイルクロリド、オクタノイル=ブロミド、オクタノイル=ヨージド、ノナノイルクロリド、ノナノイル=ブロミド、ノナノイル=ヨージド、デカノイルクロリド、デカノイル=ブロミド、及びデカノイル=ヨージド等の酸ハロゲン化物が挙げられ、反応性の観点から、酸ハロゲン化物が好ましい。
【0037】
ハロメチル=アルキル=エーテル化合物(3)の調製において使用するハロゲン化剤(7)の使用量は、反応性の観点から、上記アルキノール化合物(1)1molに対して、好ましくは1.0~10.0mol、より好ましくは1.0~2.8mol、である。
【0038】
ハロメチル=アルキル=エーテル化合物(3)の調製における反応温度は、用いるジアルコキシメタン化合物(5)の沸点により異なるが、反応性の観点から、好ましくは-40~280℃であり、より好ましくは0~80℃、である。
ハロメチル=アルキル=エーテル化合物(3)の調製における反応時間は、反応のスケールによって異なるが、生産性の観点から、好ましくは1~50時間である。
【0039】
アルコキシメチル化反応においては、ハロメチル=アルキル=エーテル化合物(3)を仕込んだ反応器に、上記アルキノール化合物(1)、そしてジアルキルアニリン化合物(2)を滴下する。該滴下は、上記アルキノール化合物(1)、そしてジアルキルアニリン化合物(2)の順若しくはその逆の順に別々に滴下して行ってもよく、又は、上記アルキノール化合物(1)とジアルキルアニリン化合物(2)とを同時に、又は混合液として滴下して行ってもよい。当該アルコキシメチル化反応は、反応性の観点から、ハロメチル=アルキル=エーテル化合物(3)を仕込んだ反応器に、上記アルキノール化合物(1)とジアルキルアニリン化合物(2)との混合液を滴下することによって行われることが好ましい。
【0040】
アルコキシメチル化反応においては、塩基としてのジアルキルアニリン化合物(2)以外に、必要に応じて溶媒を用いてもよい(例えば、下記の実施例2及び3を参照)。
該溶媒としては、一般的な溶媒、例えば、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、 テトラヒドロフラン(THF)、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、及び1,4-ジオキサン等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びクメン等の炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、及びトリクロロエチレン等の塩素系溶媒類、ジメチル=スルホキシド、γ-ブチロラクトン、及びヘキサメチルホスホリック=トリアミド等の非プロトン性極性溶媒類、アセトニトリル及びプロピオニトリル等のニトリル類、並びに、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、及び酢酸n-ブチル等のエステル類が挙げられる。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒は生成物の沸点と沸点差があるものが好ましいが、該溶媒を用いることで仕込み量が減り生産性が低下すること、及び/又は、該溶媒に含まれる水分の影響で反応性が低下することがあるために、塩基としての上記ジアルキルアニリン化合物(2)以外に、上記の溶媒を用いずに反応を行うことがより好ましい(例えば、下記の実施例4を参照)。
アルコキシメチル化反応に用いる溶媒の使用量は、上記アルキノール化合物(1)1molに対して、好ましくは0~2000g、より好ましくは0~500g、である。
【0041】
アルコキシメチル化反応における反応温度は、反応性の観点から、好ましくは-10~80℃であり、より好ましくは10~40℃である。
アルコキシメチル化反応における反応時間は、反応のスケールによって異なるが、生産性の観点から、好ましくは1~40時間である。
【0042】
次に、上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)について説明する。
【0043】
上記一般式(4)において、Rは上記一般式(3)で定義したとおりであり、且つaは上記一般式(1)で定義した通りである。
【0044】
アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)の具体例としては、3-(メトキシメトキシ)-1-プロピン、3-(エトキシメトキシ)-1-プロピン、3-(プロポキシメトキシ)-1-プロピン、3-(ブトキシメトキシ)-1-プロピン、3-(ペンチロキシメトキシ)-1-プロピン、3-(ヘキソキシメトキシ)-1-プロピン、3-(ヘプチロキシメトキシ)-1-プロピン、3-(オクチロキシメトキシ)-1-プロピン、3-(ノニロキシメトキシ)-1-プロピン、3-(デシロキシメトキシ)-1-プロピン、3-(ベンジロキシメトキシ)-1-プロピン、4-(メトキシメトキシ)-1-ブチン、4-(エトキシメトキシ)-1-ブチン、4-(プロポキシメトキシ)-1-ブチン、4-(ブトキシメトキシ)-1-ブチン、4-(ペンチロキシメトキシ)-1-ブチン、4-(ヘキソキシメトキシ)-1-ブチン、4-(ヘプチロキシメトキシ)-1-ブチン、4-(オクチロキシメトキシ)-1-ブチン、4-(ノニロキシメトキシ)-1-ブチン、4-(デシロキシメトキシ)-1-ブチン、4-(ベンジロキシメトキシ)-1-ブチン、5-(メトキシメトキシ)-1-ペンチン、5-(エトキシメトキシ)-1-ペンチン、5-(プロポキシメトキシ)-1-ペンチン、5-(ブトキシメトキシ)-1-ペンチン、5-(ペンチロキシメトキシ)-1-ペンチン、5-(ヘキソキシメトキシ)-1-ペンチン、5-(ヘプチロキシメトキシ)-1-ペンチン、5-(オクチロキシメトキシ)-1-ペンチン、5-(ノニロキシメトキシ)-1-ペンチン、5-(デシロキシメトキシ)-1-ペンチン、5-(ベンジロキシメトキシ)-1-ペンチン、6-(メトキシメトキシ)-1-ヘキシン、6-(エトキシメトキシ)-1-ヘキシン、6-(プロポキシメトキシ)-1-ヘキシン、6-(ブトキシメトキシ)-1-ヘキシン、6-(ペンチロキシメトキシ)-1-ヘキシン、6-(ヘキソキシメトキシ)-1-ヘキシン、6-(ヘプチロキシメトキシ)-1-ヘキシン、6-(オクチロキシメトキシ)-1-ヘキシン、6-(ノニロキシメトキシ)-1-ヘキシン、6-(デシロキシメトキシ)-1-ヘキシン、6-(ベンジロキシメトキシ)-1-ヘキシン、7-(メトキシメトキシ)-1-ヘプチン、7-(エトキシメトキシ)-1-ヘプチン、7-(プロポキシメトキシ)-1-ヘプチン、7-(ブトキシメトキシ)-1-ヘプチン、7-(ペンチロキシメトキシ)-1-ヘプチン、7-(ヘキソキシメトキシ)-1-ヘプチン、7-(ヘプチロキシメトキシ)-1-ヘプチン、7-(オクチロキシメトキシ)-1-ヘプチン、7-(ノニロキシメトキシ)-1-ヘプチン、7-(デシロキシメトキシ)-1-ヘプチン、7-(ベンジロキシメトキシ)-1-ヘプチン、8-(メトキシメトキシ)-1-オクチン、8-(エトキシメトキシ)-1-オクチン、8-(プロポキシメトキシ)-1-オクチン、8-(ブトキシメトキシ)-1-オクチン、8-(ペンチロキシメトキシ)-1-オクチン、8-(ヘキソキシメトキシ)-1-オクチン、8-(ヘプチロキシメトキシ)-1-オクチン、8-(オクチロキシメトキシ)-1-オクチン、8-(ノニロキシメトキシ)-1-オクチン、8-(デシロキシメトキシ)-1-オクチン、8-(ベンジロキシメトキシ)-1-オクチン、9-(メトキシメトキシ)-1-ノニン、9-(エトキシメトキシ)-1-ノニン、9-(プロポキシメトキシ)-1-ノニン、9-(ブトキシメトキシ)-1-ノニン、9-(ペンチロキシメトキシ)-1-ノニン、9-(ヘキソキシメトキシ)-1-ノニン、9-(ヘプチロキシメトキシ)-1-ノニン、9-(オクチロキシメトキシ)-1-ノニン、9-(ノニロキシメトキシ)-1-ノニン、9-(デシロキシメトキシ)-1-ノニン、9-(ベンジロキシメトキシ)-1-ノニン、10-(メトキシメトキシ)-1-デシン、10-(エトキシメトキシ)-1-デシン、10-(プロポキシメトキシ)-1-デシン、10-(ブトキシメトキシ)-1-デシン、10-(ペンチロキシメトキシ)-1-デシン、10-(ヘキソキシメトキシ)-1-デシン、10-(ヘプチロキシメトキシ)-1-デシン、10-(オクチロキシメトキシ)-1-デシン、10-(ノニロキシメトキシ)-1-デシン、10-(デシロキシメトキシ)-1-デシン、10-(ベンジロキシメトキシ)-1-デシン、11-(メトキシメトキシ)-1-ウンデシン、11-(エトキシメトキシ)-1-ウンデシン、11-(プロポキシメトキシ)-1-ウンデシン、11-(ブトキシメトキシ)-1-ウンデシン、11-(ペンチロキシメトキシ)-1-ウンデシン、11-(ヘキソキシメトキシ)-1-ウンデシン、11-(ヘプチロキシメトキシ)-1-ウンデシン、11-(オクチロキシメトキシ)-1-ウンデシン、11-(ノニロキシメトキシ)-1-ウンデシン、11-(デシロキシメトキシ)-1-ウンデシン、11-(ベンジロキシメトキシ)-1-ウンデシン、12-(メトキシメトキシ)-1-ドデシン、12-(エトキシメトキシ)-1-ドデシン、12-(プロポキシメトキシ)-1-ドデシン、12-(ブトキシメトキシ)-1-ドデシン、12-(ペンチロキシメトキシ)-1-ドデシン、12-(ヘキソキシメトキシ)-1-ドデシン、12-(ヘプチロキシメトキシ)-1-ドデシン、12-(オクチロキシメトキシ)-1-ドデシン、12-(ノニロキシメトキシ)-1-ドデシン、12-(デシロキシメトキシ)-1-ドデシン、及び12-(ベンジロキシメトキシ)-1-ドデシン等が挙げられる。
【0045】
次に、上記アルコキシメチル化反応の終了後に、ジアルキルアニリン化合物(2)を回収する工程、及び上記回収したジアルキルアニリン化合物(2)を、上記アルコキシメチル化反応におて再利用する工程について説明する。
【0046】
まず、上記アルコキシメチル化反応の終了後に、ジアルキルアニリン化合物(2)を回収する工程について説明する。
当該ジアルキルアニリン化合物(2)を回収する工程は、上記アルコキシメチル化反応が終わる毎(すなわち、1バッチ毎)に行われうる。
上記アルコキシメチル化反応においては、上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)の生成と共にジアルキルアニリン化合物(2)に由来するジアルキルアニリン化合物のハロゲン化水素塩が副生する。
上記アルコキシメチル化反応後におけるジアルキルアニリン化合物(2)の回収方法としては、上記アルコキシメチル化反応の終了後における後処理操作において、酸性条件下で上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)を有機層に、ジアルキルアニリン化合物のハロゲン化水素塩を水層に分離して、ジアルキルアニリン化合物(2)を回収する方法(逆抽法)、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)及びジアルキルアニリン化合物(2)を分離し、ジアルキルアニリン化合物(2)を回収する方法、蒸留により、上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)及びジアルキルアニリン化合物(2)を分離し、ジアルキルアニリン化合物(2)を回収する方法等が挙げられる。上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)及びジアルキルアニリン化合物(2)の分離操作の簡便性、収率の観点から、上記アルコキシメチル化反応の後に、蒸留により、上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)及びジアルキルアニリン化合物(2)を分離し、ジアルキルアニリン化合物(2)を回収する方法が好ましい。
【0047】
さらに、上記の蒸留による回収方法においては、収率の観点から、下記の化学反応式に示すように、蒸留前に後処理操作を行うことがより好ましい。
後処理操作として、具体的には、水の存在下、上記アルコキシメチル化反応により得られた上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)及びジアルキルアニリン化合物のハロゲン化水素塩を含む反応生成混合物(有機層)と、塩基との中和反応により、上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)及びジアルキルアニリン化合物(2)を含む有機層を得る(中和工程)。次に、上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)及びジアルキルアニリン化合物(2)を含む有機層を蒸留精製することにより、上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)及びジアルキルアニリン化合物(2)を得る(蒸留工程)。
【0048】
【化2】
【0049】
上記中和工程においては、ジアルキルアニリン化合物(2)のハロゲン化水素塩と、塩基とを中和反応させて、ジアルキルアニリン化合物(2)とすることにより、ジアルキルアニリン化合物(2)が有機層に遊離するため、上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)との混合液が得られる。さらに、ジアルキルアニリン化合物(2)が抽出溶媒としての役割も果たすため、あえて溶媒を加えずとも、水溶性の高い低分子量の上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)を水層にロスすることなく、高収率で有機層に抽出することが出来る。
そして、有機層を蒸留精製することにより、上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)と、ジアルキルアニリン化合物(2)とを高純度で、それぞれ別々に回収することが出来る。
【0050】
上記中和工程に用いる塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸バリウム等のアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、並びに、炭酸水素カルシウム及び炭酸水素マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸水素塩が挙げられ、取扱いの観点から、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましい。
該塩基の使用量は、回収率及び抽出効率の観点から、上記アルコキシメチル化反応に使用した上記アルキノール化合物(1)1molに対して、好ましくは0.2~10.0mol、より好ましくは0.7~2.8mol、である。
該塩基は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を併用してもよい。また、該塩基は、市販されているものを用いることができる。
なお、該塩基が固体である場合においては、固体のまま使用してもよいし、アルコキシメチル化反応において用いるジアルキルアニリン化合物(2)、上記一般的な溶媒、又は水に溶かして使用してもよい。
【0051】
中和工程における水の使用量は、溶解性及び収率の観点から、上記アルコキシメチル化反応に使用した末端三重結合を有するアルキノール化合物(1)1molに対して、好ましくは0~5000g、より好ましくは0~1000g、である。
中和工程における反応温度は、反応性の観点から、好ましくは-20~70℃、より好ましくは0~40℃、である。
中和工程における反応時間は、反応スケールや除熱能力により異なるが、生産性の観点から、好ましくは0.1~30時間、である。
中和工程における水層のpHは、ジアルキルアニリン化合物(2)の回収率及び上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)の抽出効率の観点から、好ましくは4.0~10.0、より好ましくは5.0~8.0、である。
pH値は、例えばpH試験紙又は測定対象の液温を25℃としてpHメータを用いて測定できる。
【0052】
中和工程においては、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、 テトラヒドロフラン(THF)、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、及び1,4-ジオキサン等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びクメン等の炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、及びトリクロロエチレン等の塩素系溶媒類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、並びに、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、及び酢酸n-ブチル等のエステル類等の溶媒を添加してもよい。なお、添加した溶媒を除去する必要が生じること、生産効率が低下すること、及び/又は除去した溶媒が廃棄物となることから、溶媒を添加せずに行うことが好ましい。
【0053】
次に、蒸留工程において、上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)とジアルキルアニリン化合物(2)とを含む有機層を蒸留精製することにより、それぞれ別々に回収することが出来る。
当該回収されたジアルキルアニリン化合物(2)は、上記のアルコキシメチル化反応を1バッチ行った後に回収されたもの、又は上記のアルコキシメチル化反応を複数バッチ繰り返し、バッチ毎に回収されたジアルキルアニリン化合物(2)を1ロットとしてまとめたものでありうる。
このようにして回収されたジアルキルアニリン化合物(2)は高純度であり、さらに上記アルコキシメチル化反応におて再利用するため、上記アルコキシメチル化反応を経済的に繰り返すことが可能になる。従って、本発明に従う方法は、環境に優しく、経済的にも極めて有利である。
【0054】
以上のようにして、上記のジアルキルアニリン化合物(2)を塩基兼抽出溶媒として用いる、上記アルコキシメチル=アルキニル=エーテル化合物(4)の製造方法が提供される。
【実施例1】
【0055】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
なお、以下において、「純度」は、特に明記しない限り、ガスクロマトグラフィー(GC)分析によって得られた面積百分率を示し、「生成比」はGC分析によって得られた面積百分率の相対比を示す。また「収率」は、GC分析によって得られた面積百分率を基に算出した収率を示す。
各実施例において、反応のモニタリングや収率の算出は、次のGC条件に従って行った。
GC条件:GC:島津製作所 キャピラリガスクロマトグラフ GC-2014,カラム:DB-5,0.25mmx0.25mmφx30m,キャリアーガス:He(1.55mL/分)、検出器:FID,カラム温度:70℃ 5℃/分昇温 230℃。
収率は、原料及び生成物の純度(%GC)を考慮して、以下の式に従い計算した。
収率(%)={[(反応によって得られた生成物の重量×%GC)/生成物の分子量]
÷[ (反応における出発原料の重量×%GC)/出発原料の分子量]}×100
【0056】
実施例1
3-(メトキシメトキシ)-1-プロピン(4:R=H;a=1)<H-C≡CCHOCHOCH>の製造
【0057】
【化3】
【0058】
室温で、反応器に塩化亜鉛(6.83g、0.0501mol)及びジメトキシメタン(493.05g、6.48mol)を加えて、15~25℃にて4分間撹拌した。撹拌後、アセチル=クロリド(450.00g、5.73mol)を20~35℃にて滴下し、35~40℃にて2時間撹拌して、クロロメチル=メチル=エーテル(3:X=Cl;R=H)を調製した。
続いて、上記クロロメチル=メチル=エーテル(3:X=Cl;R=H)を調製した上記反応器に、2-プロピン-1-オール(1:a=1)(279.01g、4.977mol、純度100%)とN,N-ジエチルアニリン(2:b=1;c=1)(855.45g、5.72mol、純度99.82%)との混合液を20~30℃にて滴下し、20~30℃にて11.5時間撹拌した。次に、反応液に25質量%水酸化ナトリウム水溶液(862.88g、水酸化ナトリウムとして5.39mol)、続いて水(548.00g)を加えて分液し、そして水層を除去して、有機層を得た。得られた有機層を減圧蒸留することにより、3-(メトキシメトキシ)-1-プロピン(4:R=H;a=1)(487.57g、4.86mol、純度99.89%、b.p.=76.9℃/197.8mmHg)が収率97.7%で、続いてN,N-ジエチルアニリン(2:b=1;c=1)(825.86g、5.52mol、純度99.70%、b.p.=110.4~116.1℃/20.0mmHg)が収率96.5%で得られた。
【0059】
3-(メトキシメトキシ)-1-プロピン(4:R=H;a=1)
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=2.41(1H,t,J=2.7Hz,3.36(3H,s),4.20(2H,d,J=2.7Hz),4.69(2H,s);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=53.95,55.51,74.20,79.25,94.69
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 99(M-1),69,61,55,45,39
〔赤外吸収スペクトル〕(NaCl):ν=3292,2953,2893,1448,1152,1102,1049,995,938,920,894,672
N,N-ジエチルアニリン(2)
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=1.20(6H,t,J=6.9Hz),3.39(4H,q,J=6.9Hz),6.68(1H,ddt,J=7.3Hz,7.3Hz,1.1Hz),6.73(2H,dd,J=9.0Hz,1.1Hz),7.25(2H,dd,J=7.3Hz,5.1Hz);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=12.53,44.25,111.80,115.30,129.21,147.76
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 149(M),134,120,106,91,77
〔赤外吸収スペクトル〕(NaCl):ν=2970,2929,2870,1598,1506,1396,1374,1354,1266,1199,1156,1094,1077,1036,1011,791,745,692
【0060】
実施例2
4-(メトキシメトキシ)-1-ブチン(4:R=H;a=2)<H-C≡C(CHOCHOCH>の製造
【0061】
【化4】
【0062】
室温で、反応器に塩化亜鉛(6.83g、0.0501mol)、ジメトキシメタン(493.05g、6.48mol)及び酢酸メチル(556.05g)を加えて、15~25℃にて12分間撹拌した。撹拌後、アセチル=クロリド(450.00g、5.73mol)を20~35℃にて滴下し、35~40℃にて2時間撹拌して、クロロメチル=メチル=エーテル(3:X=Cl、R=H)を調製した。
続いて、上記クロロメチル=メチル=エーテル(3:X=Cl;R=H)を調製した上記反応器に、3-ブチン-1-オール(1:a=2)(349.35g、4.98mol、純度99.86%)とN,N-ジエチルアニリン(2:b=1;c=1)(855.45g、5.72mol、純度99.82%)との混合液を20~30℃にて滴下し、20~30℃にて7時間撹拌した。次に、反応液に25質量%水酸化ナトリウム水溶液(862.88g、水酸化ナトリウムとして5.39mol)、続いて水(568.17g)を加えて分液し、そして水層を除去して、有機層を得た。得られた有機層を減圧蒸留することにより、4-(メトキシメトキシ)-1-ブチン(4:R=H;a=2)(564.88、4.93mol、純度99.53%、b.p.=94.2℃/115.2mmHg)が収率98.9%で、続いてN,N-ジエチルアニリン(2:b=1;c=1)(824.98g、5.51mol、純度99.64%、b.p.=110.4~116.1℃/20.0mmHg)が収率96.3%で得られた。
【0063】
4-(メトキシメトキシ)-1-ブチン(4:R=H;a=2)
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=1.98(1H,t,J=2.7Hz),2.47(2H,dt,J=2.6Hz,6.7Hz),3.36(3H,s),3.64(2H,6.8Hz),4.63(2H,s);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=19.92,55.20,65.68,69.25,81.25,96.33
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 113(M-1),83,75,61,53,45
〔赤外吸収スペクトル〕(NaCl):ν=3293,2934,2887,1383,1151,1112,1075,1032,918,646
【0064】
実施例3
4-(メトキシメトキシ)-1-ブチン(4:R=H;a=2)<H-C≡C(CHOCHOCH>の製造
【0065】
【化5】
【0066】
室温で、反応器に塩化亜鉛(6.57g、0.0483mol)、ジメトキシメタン(474.95g、6.24mol)及び酢酸メチル(535.64g)を加えて、15~25℃にて30分間撹拌した。撹拌後、アセチル=クロリド(433.48g、5.51mol)を20~35℃にて滴下し、35~40℃にて2時間撹拌することにより、クロロメチル=メチル=エーテル(3:X=Cl、R=H)を調製した。
続いて、上記クロロメチル=メチル=エーテル(3:X=Cl;R=H)を調製した上記反応器に、3-ブチン-1-オール(1:a=2)(336.52g、4.80mol、純度99.86%)と実施例2にて蒸留回収したN,N-ジエチルアニリン(2:b=1;c=1)(824.98g、5.51mol、純度99.64%)の混合液を20~30℃にて滴下し、20~30℃にて7時間撹拌した。次に、反応液に25質量%水酸化ナトリウム水溶液(831.20g、水酸化ナトリウムとして5.19mol)、続いて水(547.31g)を加えて分液し、そして水層を除去して、有機層を得た。得られた有機層を減圧蒸留することにより、4-(メトキシメトキシ)-1-ブチン(4:R=H;a=2)(534.66、4.67mol、純度99.79%、b.p.=94.2℃/115.2mmHg)が収率97.5%で、続いてN,N-ジエチルアニリン(2:b=1;c=1)(799.19g、5.35mol、純度99.80%、b.p.=110.4~116.1℃/20.0mmHg)が収率97.0%で得られた。
【0067】
上記で得られた4-(メトキシメトキシ)-1-ブチン(4)の各種スペクトルデータは、実施例2で得られた各種スペクトルデータと同じであった。
【0068】
実施例4
4-(メトキシメトキシ)-1-ブチン(4:R=H;a=2)<H-C≡C(CHOCHOCH>の製造
【0069】
【化6】
【0070】
室温で、反応器に塩化亜鉛(6.83g、0.0501mol)及びジメトキシメタン(493.05g、6.48mol)を加えて、15~25℃にて11分間撹拌した。撹拌後、アセチル=クロリド(450.00g、5.73mol)を20~35℃にて滴下し、35~40℃にて2時間撹拌して、クロロメチル=メチル=エーテル(3:X=Cl、R=H)を調製した。
続いて、上記クロロメチル=メチル=エーテル(3:X=Cl、R=H)を調製した上記反応器に、3-ブチン-1-オール(1:a=2)(349.35g、4.98mol、純度99.86%)とN,N-ジエチルアニリン(2:b=1;c=1)(855.45g、5.72mol、純度99.82%)との混合液を20~30℃にて滴下し、20~30℃にて5時間撹拌した。次に、反応液に25質量%水酸化ナトリウム水溶液(862.88g、水酸化ナトリウムとして5.39mol)、続いて水(548.00g)を加えて分液し、そして水層を除去して、有機層を得た。得られた有機層を減圧蒸留することにより、4-(メトキシメトキシ)-1-ブチン(4:R=H;a=2)(565.22g、4.93mol、純度99.50%、b.p.=94.2℃/115.2mmHg)が収率99.0%で、続いてN,N-ジエチルアニリン(2:b=1;c=1)(847.88g、5.63mol、純度99.10%、b.p.=110.4~116.1℃/20.0mmHg)が収率98.4%で得られた。
【0071】
上記で得られた4-(メトキシメトキシ)-1-ブチン(4)の各種スペクトルデータは、実施例2で得られた各種スペクトルデータと同じであった。
【0072】
実施例5
4-(メトキシメトキシ)-1-ブチン(4:R=H;a=2)<H-C≡C(CHOCHOCH>の製造
【0073】
【化7】
【0074】
室温で、反応器に塩化亜鉛(6.72g、0.0493mol)及びジメトキシメタン(485.34g、6.38mol)を加えて、15~25℃にて20分間撹拌した。撹拌後、アセチル=クロリド(442.96g、5.64mol)を20~35℃にて滴下し、35~40℃にて2時間撹拌して、クロロメチル=メチル=エーテル(3:X=Cl、R=H)を調製した。
続いて、上記クロロメチル=メチル=エーテル(3:X=Cl、R=H)を調製した上記反応器に、3-ブチン-1-オール(1:a=2)(343.89g、4.90mol、純度99.86%)と実施例4にて蒸留回収したN,N-ジエチルアニリン(2:b=1;c=1)(847.88g、5.63mol、純度99.10%)の混合液を20~30℃にて滴下し、20~30℃にて7時間撹拌した。次に、反応液に25質量%水酸化ナトリウム水溶液(849.39g、水酸化ナトリウムとして5.31mol)、続いて水(559.28g)を加えて分液し、そして水層を除去して、有機層を得た。得られた有機層を減圧蒸留することにより、4-(メトキシメトキシ)-1-ブチン(4:R=H;a=2)(549.56、4.80mol、純度99.82%、b.p.=94.2℃/115.2mmHg)が収率98.1%で、続いてN,N-ジエチルアニリン(2:b=1;c=1)(821.67g、5.48mol、純度99.50%、b.p.=110.4~116.1℃/20.0mmHg)が収率97.3%で得られた。
【0075】
上記で得られた4-(メトキシメトキシ)-1-ブチン(4)の各種スペクトルデータは、実施例2で得られた各種スペクトルデータと同じであった。
【0076】
実施例6
10-(メトキシメトキシ)-1-デシン(4:R=H;a=8)<H-C≡C(CHOCHOCH>の製造
【0077】
【化8】
【0078】
室温で、反応器に塩化亜鉛(2.57g、0.0189mol)及びジメトキシメタン(186.16g、2.45mol)を加えて、15~25℃にて5分間撹拌した。撹拌後、アセチル=クロリド(169.90g、2.16mol)を20~35℃にて滴下し、35~40℃にて2時間撹拌して、クロロメチル=メチル=エーテル(3:X=Cl、R=H)を調製した。
続いて、上記クロロメチル=メチル=エーテル(3:X=Cl、R=H)を調製した上記反応器に、9-デシン-1-オール(1:a=8)(300.98g、1.88mol、純度96.46%)とN,N-ジエチルアニリン(2:b=1;c=1)(323.48g、2.16mol、純度99.82%)との混合液を20~30℃にて滴下し、20~30℃にて18時間撹拌した。次に、反応液に25質量%水酸化ナトリウム水溶液(328.98g、水酸化ナトリウムとして2.06mol)、続いて水(207.22g)を加えて分液し、そして水層を除去して、有機層を得た。得られた有機層を減圧蒸留することにより、N,N-ジエチルアニリン(2:b=1;c=1)(321.31g、2.15mol、純度96.59%、b.p.=110.4~116.1℃/20.0mmHg)が収率99.7%で、続いて10-(メトキシメトキシ)-1-デシン(4:R=H;a=8)(377.06g、1.84mol、純度96.80%、b.p.=110.2~118.2℃/3.0mmHg)が収率97.8%で得られた。
【0079】
10-(メトキシメトキシ)-1-デシン(4:R=H;a=8)
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=1.25-1.43(8H,m),1.51(2H,q-like,J=7.3Hz),1.57(2H,q-like,J=6.8Hz),1.92(1H,t,J=2.7Hz),2.16(2H,td,J=7.3Hz,2.7Hz),3.34(3H,s),3.50(2H,t,J=6.9Hz),4.60(2H,s);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=18.33,26.11,28.40,28.63,28.99,29.23,29.67,55.02,67.77,68.04,84.67,96.33
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 197(M-1),183,165,135,121,107,95,81,67,45
〔赤外吸収スペクトル〕(NaCl):ν=3308,2932,2857,1465,1145,1111,1051,919,630
【0080】
実施例7
3-(エトキシメトキシ)-1-プロピン(4:R=CH ;a=1)<H-C≡CCHOCHOCHCH>の製造
【0081】
【化9】
【0082】
室温で、反応器に塩化亜鉛(6.83g、0.0501mol)及びジエトキシメタン(673.86g、6.47mol)を加えて、15~25℃にて13分間撹拌した。撹拌後、アセチル=クロリド(450.00g、5.73mol)を20~35℃にて滴下し、35~40℃にて2時間撹拌して、クロロメチル=エチル=エーテル(3:X=Cl、R=CH)を調製した。
続いて、上記クロロメチル=エチル=エーテル(3:X=Cl、R=CH)を調製した上記反応器に、2-プロピン-1-オール(1:a=1)(279.01g、4.977mol、純度100%)とN,N-ジエチルアニリン(2:b=1;c=1)(855.45g、5.72mol、純度99.82%)との混合液を20~30℃にて滴下し、20~30℃にて5.5時間撹拌した。次に、反応液に25質量%水酸化ナトリウム水溶液(862.88g、水酸化ナトリウムとして5.39mol)、続いて水(548.00g)を加えて分液し、そして水層を除去して、有機層を得た。得られた有機層を減圧蒸留することにより、3-(エトキシメトキシ)-1-プロピン(4:R=CH;a=1)(552.28g、4.82mol、純度99.64%、b.p.=94.8℃/235.4mmHg)が収率96.9%で、続いてN,N-ジエチルアニリン(2:b=1;c=1)(808.40g、5.41mol、純度99.91%、b.p.=110.4~116.1℃/20.0mmHg)が収率94.6%で得られた。
【0083】
3-(エトキシメトキシ)-1-プロピン(4:R=CH;a=1)
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=1.20(3H,t,J=7.3Hz),2.40(1H,t,J=2.7Hz),3.60(2H,q,J=7.3Hz),4.21(2H,d,J=2.7Hz),4.74(2H,s);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=15.02,53.97,63.60,74.11,79.37,93.36
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 113(M-1),85,69,55,39
〔赤外吸収スペクトル〕(NaCl):ν=3294,2978,2935,2887,1393,1180,1151,1111,1049,1018,996,938,895,667
【0084】
比較例1
3-(メトキシメトキシ)-1-プロピン(4:R=H;a=1)<H-C≡CCH OCHOCH>の製造
【0085】
【化10】
【0086】
室温で、反応器に塩化亜鉛(6.83g、0.0501mol)及びジメトキシメタン(493.05g、6.48mol)を加えて、15~25℃にて5分間撹拌した。撹拌後、アセチル=クロリド(450.00g、5.73mol)を20~35℃にて滴下し、35~40℃にて2時間撹拌して、クロロメチル=メチル=エーテル(3:X=Cl、R=H)を調製した。
続いて、上記クロロメチル=メチル=エーテル(3:X=Cl、R=H)を調製した反応器に、2-プロピン-1-オール(1:a=1)(279.01g、4.977mol、純度100%)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン(739.58g、5.72mol、純度100%)との混合液を20~30℃にて滴下し、20~30℃にて8.0時間撹拌した。次に、反応液に25質量%水酸化ナトリウム水溶液(862.88g、水酸化ナトリウムとして5.39mol)、続いて水(548.00g)を加えて分液し、そして水層を除去して、有機層を得た。得られた有機層を減圧蒸留することにより、3-(メトキシメトキシ)-1-プロピン(4:R=H;a=1)(3.50mol、収率70.4%)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン(5.39mol、収率94.3%)との混合物が1047.08g得られた(混合物の沸点は85.1℃/408.3mmHg~101.5℃/378.2mmHg)。
【0087】
3-(メトキシメトキシ)-1-プロピン(4:R=H;a=1)とN,N-ジイソプロピルエチルアミンの比率は蒸留留分前半では3-(メトキシメトキシ)-1-プロピン(4:R=H;a=1)が高く、蒸留留分後半ではN,N-ジイソプロピルエチルアミンが高かった。以上の結果からN,N-ジイソプロピルエチルアミンの方が3-(メトキシメトキシ)-1-プロピン(4:R=H;a=1)より僅かに沸点が高いと推測されるが、蒸留による分離は不可能であった。