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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 23/00 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
B65D23/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020035725
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021138386
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】吉田 美帆子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潤
(72)【発明者】
【氏名】森城 友弥
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 啓太
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-058605(JP,A)
【文献】特開2009-023236(JP,A)
【文献】特開2018-184181(JP,A)
【文献】特開平09-037966(JP,A)
【文献】特開2010-058795(JP,A)
【文献】特開2008-184182(JP,A)
【文献】特開2015-101024(JP,A)
【文献】特開2010-264708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の内容物を収容する容器であって、前記内容物と接する接液面には、凹凸形状からなる構造発色領域を有し、前記構造発色領域は、前記内容物と接触した箇所において前記凹凸形状による構造発色が消失することにより、前記内容物を表示することができることを特徴とする容器。
【請求項2】
前記容器は、前記内容物が注出される注出口と、前記注出口と対向する底部とを有し、前記構造発色領域が前記注出口の側から前記底部の側にわたって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記構造発色領域が、間隔を介して形成された複数の目盛りを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
前記容器は、シール部を介して樹脂基材の端部を接合してなる前記内容物の収容部を有し、前記収容部において、前記構造発色領域が前記シール部と前記シール部以外の領域とにまたがって前記樹脂基材の前記接液面に形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の容器。
【請求項5】
前記容器に前記内容物が充填されており、前記構造発色が消失することにより、前記内容物の量が表示されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂フィルムの表面に微細な凹凸構造を形成し、光学的、特には視覚的な機能を付与することが提案されている。例えば、特許文献1には、表面に凹凸形状が形成された型を、第1の樹脂からなる樹脂基材に押圧して、樹脂基材の表面に凹凸形状を形成した後、この樹脂基材の表面に第2の樹脂を塗布し、樹脂基材から第2の樹脂を離型することにより、表面に凹凸形状が形成された樹脂成形品を製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6059967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、容器の内容物を確認できるように、容器の材質を透明にしたり、容器の一部に窓を設けたりすることが行われている。しかし、内容物が透明な液体等である場合、又は内容物と容器の色合いが似ている場合には、容器に収容されている内容物が確認しにくい場合がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、内容物が確認しやすい容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、液状の内容物を収容する容器であって、前記内容物と接する接液面には、凹凸形状からなる構造発色領域を有し、前記構造発色領域は、前記内容物と接触した箇所において前記凹凸形状による構造発色が消失することにより、前記内容物を表示することができることを特徴とする容器を提供する。
【0007】
前記容器は、前記内容物が注出される注出口と、前記注出口と対向する底部とを有し、前記構造発色領域が前記注出口の側から前記底部の側にわたって形成されていてもよい。
前記構造発色領域が、間隔を介して形成された複数の目盛りを有してもよい。
前記容器は、シール部を介して樹脂基材の端部を接合してなる前記内容物の収容部を有し、前記収容部において、前記構造発色領域が前記シール部と前記シール部以外の領域とにまたがって前記樹脂基材の前記接液面に形成されていてもよい。
前記容器に前記内容物が充填されており、前記構造発色が消失することにより、前記内容物の量が表示されていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内容物が接触していない箇所において構造発色が現れ、内容物が接触している箇所では構造発色が消失するので、内容物を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の容器で(a)空の状態、(b)充填状態を示す斜視図である。
図2】第2実施形態の容器で(a)空の状態、(b)充填状態を示す斜視図である。
図3】第3実施形態の容器で(a)空の状態、(b)充填状態を示す正面図である。
図4】第4実施形態の容器で(a)空の状態、(b)充填状態を示す正面図である。
図5】第5実施形態の容器を示す斜視図である。
図6】第6実施形態の容器を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0011】
図1に、第1実施形態の容器10を示す。この容器10は、樹脂基材等の基材11からなる収容部12と、注出口13とを有し、全体が略円筒状である。収容部12は、注出口13が接合された略円形の肩部21と、略円筒状の胴部22と、肩部21に略平行で略円形の底部23とを有する。肩部21は胴部22の上端部に、底部23は胴部22の下端部に、それぞれ接合されている。
【0012】
容器10は、少なくとも収容部12において基材11が内容物14と接する接液面に、凹凸形状からなる構造発色領域15を有する。図1(a)に示すように、容器10が空の状態では、構造発色領域15が全面的に発色する。図1(b)に示すように、容器10に内容物14が収容されると、構造発色領域15が内容物14と接触した箇所の構造発色が消失するので、内容物14の量を表示することができる。
【0013】
図2に、第2実施形態の容器10Aを示す。この容器10Aは、樹脂基材等の基材11からなる収容部12Aと、注出口13Aとを有するチューブ容器である。収容部12Aは、注出口13Aが接合された略円形の肩部21Aと、筒状の胴部22Aと、肩部21Aとは反対側において胴部22Aの端部を接合してなる底部23Aとを有する。肩部21Aは、胴部22Aの端部に接合されている。
【0014】
容器10Aは、少なくとも収容部12Aにおいて基材11が内容物14と接する接液面に、凹凸形状からなる構造発色領域15を有する。図2(a)に示すように、容器10Aが空の状態では、構造発色領域15が全面的に発色する。図2(b)に示すように、容器10Aに内容物14が収容されると、構造発色領域15が内容物14と接触した箇所の構造発色が消失するので、内容物14の量を表示することができる。
【0015】
図3に、第3実施形態の容器10Bを示す。この容器10Bは、樹脂基材等の基材11からなる収容部12Bと、注出口13Bとを有する自立性パウチである。収容部12Bは、注出口13Bが接合された肩部21Bと、略矩形状の胴部22Bと、胴部22Bの下部に挟み込まれた底部23Bとを有する。胴部22Bは、前後2枚の基材11の端部をシール部24で接合した構成である。肩部21Bは、胴部22Bの上部に注出口13Bを挟み込んだ構成である。底部23Bは、胴部22Bの基材11とは別の底部材25を2つ折りにした構成である。
【0016】
容器10Bは、少なくとも収容部12Bにおいて基材11が内容物14と接する接液面に、凹凸形状からなる構造発色領域15を有する。図3(a)に示すように、容器10Bが空の状態では、構造発色領域15が全面的に発色する。図3(b)に示すように、容器10Bに内容物14が収容されると、構造発色領域15が内容物14と接触した箇所の構造発色が消失するので、内容物14の量を表示することができる。
【0017】
図4に、第4実施形態の容器10Cを示す。この容器10Cは、樹脂基材等の基材11からなる収容部12Cと、注出口13Cとを有する吊下げ用パウチである。収容部12Cは、注出口13Cが接合された肩部21Cと、略多角形状の胴部22Cと、肩部21Cの反対側の端部で胴部22Cを接合してなる底部23Cとを有する。胴部22Cは、前後2枚の基材11の端部をシール部24で接合した構成である。シール部24は、肩部21C及び底部23Cの接合部と連続してもよい。
【0018】
容器10Cは、少なくとも収容部12Cにおいて基材11が内容物14と接する接液面のうち、目盛り16の位置に、凹凸形状からなる構造発色領域15を有する。図4(a)に示すように、容器10Cに内容物14が収容されていない空状態では、目盛り16の構造発色領域15が発色する。図4(b)に示すように、容器10Cに内容物14が収容されると、構造発色領域15が内容物14と接触した箇所の構造発色が消失する。これにより、内容物14の量を表示することができる。
【0019】
構造発色領域15は、微細な凹凸形状により構造発色の機能を有する領域である。構造発色によれば、可視光の波長と同程度又はそれ以下の微細構造に対して可視光が照射されたとき、光の干渉、回折、散乱などにより観察者の眼には色が認識される。構造発色は、色素や着色材とは異なり、材料自体の光学特性(例えば透過率、吸収率など)の波長依存性によるのではなく、前記凹凸形状の形状、寸法、前記凹凸形状の周囲の媒質との屈折率差、観察者が構造発色領域15を目視する方向などにより影響され得る。構造発色領域15は、ホログラムを構成してもよい。
【0020】
容器10,10A,10B,10Cの注出口13,13A,13B,13Cから内容物14を注出又は充填すると、内容物14の量(残量又は充填量)が変化する。このため、構造発色領域15は、注出口13,13A,13B,13Cの側から底部23,23A,23B,23Cの側にわたって形成されていることが好ましい。これにより、内容物14の量の変化に追随して、構造発色が発現又は消失する範囲を変化させることができる。なお、注出口又は底部を有しない容器を含めた場合、内容物14の量が変化する方向(例えば上下方向や長さ方向)に構造発色領域15が連続して形成されるか、当該方向に複数個の構造発色領域15が間隔を介して配置されることが好ましい。
【0021】
構造発色領域15が、基材11の接液面において全面的に形成されていてもよい。ここで、構造発色領域15が基材11上に隙間なく配置されてもよく、構造発色領域15が点状、水玉状、縞状、波線状、網状、格子状等の所定のパターンで基材11上に配置されていてもよい。なお、第4実施形態の容器10Cにおいても、目盛り16のみに構造発色領域15を配置する場合に限られず、基材11の接液面において全面的に構造発色領域15を配置してもよい。
【0022】
構造発色領域15が、シール部24とシール部24以外の領域とにまたがって形成されていてもよい。この場合、シール部24では内容物14の量に影響されることなく、構造発色領域15が常時発色するので、内容物14の量の変化を強調して表示することができる。また、基材11に構造発色領域15を形成する際に、シール部24の位置か否かを区別する必要がないので、構造発色領域15を有する基材11の製造が容易になる。
【0023】
基材11がシール部24において接着、溶着するためのシーラント層を有する場合は、構造発色領域15をシーラント層と同じ材料から構成してもよい。また、構造発色領域15を、基材11上に接着性、溶着性を有する材料を付与して構成してもよい。これにより、シール部24の構造発色領域15においても接着、溶着が可能になるので、シール部24を有する容器10Bを製造しやすくなる。なお、第3実施形態の容器10Bに限らず、他の実施形態においても、収容部12,12A,12B,12Cにシール部24を有する場合は、シール部24とシール部24以外の領域とにまたがるように形成した構造発色領域15を採用することができる。
【0024】
構造発色領域15が基材11の接液面の一部に形成されてもよい。例えば、構造発色領域15が、間隔を介して形成された複数の目盛り16の位置に形成されていると、内容物14の量の変化に追随して、目盛り16の位置の構造発色が発現又は消失するので、目盛り16の表示を強調することができる。なお、第4実施形態の容器10Cに限らず、他の実施形態においても、構造発色領域15を有する目盛り16を設けることができる。
【0025】
容器10,10A,10B,10Cに内容物14を充填した包装体においては、注出口13,13A,13B,13Cが密封されてもよい。注出口は、樹脂、金属等の成形品でもよい。注出口に蓋を設ける方式は特に限定されず、ネジ、接着、薄肉部、嵌合などが挙げられる。この蓋は、注出口と一体に成形してもよい。例えば、薄肉のヒンジを介して注出口と蓋を一体的に連結してもよい。また、注出口の蓋を、注出口とは別の部材から構成してもよい。例えば、注出口の先端にフィルム状の蓋を溶着してもよく、キャップをネジで固定してもよく、キャップを嵌合で固定してもよい。
【0026】
基材11を接合したパウチ容器の場合、成形品の注出口を用いることなく、基材11を切り裂き又は引き裂くことで形成される開口部から内容物を注出してもよい。容器がパウチ容器、計量容器等である場合には、容器の開口部が密閉されることなく、使用されてもよい。例えば図5に示すように、ポリエチレン等の樹脂製の基材11からなる袋状の容器10Dの内面に構造発色領域15を形成し、容器10Dの内面が水に濡れているときに構造発色が消失するように構成すると、容器10Dの内面に付着した水の有無を容易に確認することができる。特に図示しないが、容器10Dの開口部17には、チャック(ジッパー)等の開閉具を設けてもよい。
【0027】
図6に示す容器10Eは、基材11の周囲を囲むシール部24の内側に2以上の収容室26A,26Bを有する複室容器である。一方の収容室26Aには内容物14が充填され、他方の収容室26Bは空である。収容室26A,26Bの間には、シール部24より剥離強度が低い弱シール部からなる隔壁部27が形成されている。隔壁部27を剥離すると、収容室26A,26Bが密閉されたまま、内容物14を収容室26Aから収容室26Bに移動させることができる。このとき、収容室26Bにおける基材11の内面に構造発色領域15を形成すると、収容室26Bの内面に内容物14が接触したときに構造発色が消失するので、収容室26Bにおける内容物14の有無を容易に確認することができる。
【0028】
特に図示しないが、複室容器に設ける収容室26A,26Bの個数は2つ以上であれば特に限定されず、各収容室26A,26Bの形状、寸法等も任意である。特に図示しないが、1つ以上の収容室26A,26Bに注射針等を介して内容物を注入する注入口、あるいは内容物を注出する注出口を設けてもよい。複室容器は、異なる収容室26A,26Bにそれぞれ収容された内容物を混合するために用いることもできる。いずれか1つ以上の収容室26A,26Bに構造発色領域15を設けてもよく、あるいは全ての収容室26A,26Bに構造発色領域15を設けてもよい。
【0029】
基材11は、容器10,10A,10B,10C,10D,10Eの外から構造発色領域15の発色の有無を目視できるよう、少なくとも一部が透明であることが好ましい。基材11が全面的に透明であってもよく、基材11の一部に透明な領域を有してもよい。透明な領域は、窓状の限られた領域でもよい。基材11は、少なくとも1つの透明材料層を含む積層体であってもよい。前記積層体には、印刷インキ層等の着色層、金属層等の反射層が積層されてもよい。基材11の少なくとも一部において透明とされた領域の全光線透過率は、75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。ここで、全光線透過率は、内容物に接する面から、その反対側の外面まで、光線が全層を透過する値である。
【0030】
構造発色領域15の裏側から基材11を透過して、構造発色が目視できるようにしてもよい。構造発色領域15の裏側の基材11が発色した光を反射して、構造発色領域15とは異なる位置から、構造発色が目視できるようにしてもよい。光の反射は、鏡面反射に限らず、拡散反射、乱反射など反射方向が多様な方向に分散されてもよい。収容部12,12Aが筒状の容器10,10Aの場合は、筒の一部の領域、例えば左右の片側のみに構造発色領域15を形成してもよい。その場合、基材11が構造発色領域15を含む一部の領域を透明にしてもよく、構造発色領域15を含む一部の領域に対向する側にある別の領域を透明にしてもよい。
【0031】
袋状の容器10B,10C,10D,10Eのように、内容物14を介して基材11が対向する場合は、両側の基材11に構造発色領域15を形成してもよく、片側の基材11のみに構造発色領域15を形成してもよい。片側の基材11に構造発色領域15を形成する場合において、構造発色領域15を有する基材11を透明にしてもよく、構造発色領域15を有する基材11に対向する側の基材11を透明にしてもよい。
【0032】
構造発色領域15の凹凸形状の高さは、構造発色を生じるものであれば特に限定されないが、例えば0.001μm~10mm、0.01μm~5mm、0.1μm~30μm、1~5μmなどが挙げられる。前記凹凸形状の高さと幅との比(高さを幅で除した値)であるアスペクト比は、例えば0.05~10程度が挙げられる。ここで、前記凹凸形状の幅とは、基材11の表面に沿って1つの凹凸形状を横断する寸法の最小値である。前記凹凸形状が所定の方向に凸条状又は凹溝状に延在する場合は、延在方向に交差する方向の寸法として、前記凹凸形状の幅が求められる。基材11の表面に垂直な断面における前記凹凸形状の断面形状としては、三角形、四角形等の多角形、半円形、扇形などが挙げられる。
【0033】
基材11の表面に沿った前記凹凸形状の平面形状は、特に限定されず、三角形、四角形等の多角形、円形、楕円形、環状、網状、格子状、ジグザグ状、波形などが挙げられる。前記凹凸形状が凸条状又は凹溝状である場合には、前記凹凸形状の端部が基材11の端部まで達してもよい。内容物14が前記凹凸形状の周囲で円滑に供給されるためには、基材11の表面に沿った前記凹凸形状の形状が有限の範囲内である、微小な突起からなることが好ましい。
【0034】
基材11の表面に沿った前記凹凸形状の寸法、特に限定されないが、例えば0.001μm~10mm、0.01μm~5mm、0.1μm~30μm、1~5μmなどが挙げられる。基材11の表面に沿った前記凹凸形状の長径と短径との比は、例えば、10以下、5以下、2以下であってもよい。また、前記凹凸形状の長径と短径が略同等(比が略1)であってもよい。
【0035】
前記凹凸形状の立体形状は、直方体状、柱状、錐状、球状、半球状などが挙げられる。前記凹凸形状の立体形状が三角錐、四角錐、五角錐、六角錐等の多角錐状(ピラミッド状)である場合には、前記凹凸形状を隙間なく密に配置でき、しかも前記凹凸形状の側面に内容物14を供給できる隙間が形成されるので、好ましい。構造発色領域15は、同一の凹凸形状を規則的に繰り返すパターンであってもよく、2種類以上の凹凸形状を含むパターンであってもよく、不規則なパターンであってもよい。
【0036】
基材11から容器を作製する前に、構造発色領域15を基材11に形成することが好ましい。これにより、構造発色領域15を有する基材11を製袋機等の容器作製装置に供給することで、容器を容易に作製することができる。これらの容器に内容物14を充填する工程も特に限定されず、公知の装置及び方法を採用することができる。基材11から容器を作製した後に内容物14を充填してもよく、基材11から容器を作製する一連の工程中で、内容物14を充填してもよい。容器又は包装体を購入した消費者が、容器に適宜の内容物を充填して使用してもよい。
【0037】
基材11の材料としては、特に限定されないが、可撓性、軽量性、耐久性等の観点から、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の樹脂からなるフィルム又はシートが好ましい。基材11が、樹脂に紙、金属等をラミネートした複合積層体、紙、金属箔等であってもよい。基材11はフレキシブルな基材でもよく、樹脂、金属等の成形品のように硬質な基材であってもよい。容器は、バッグインボックスの内袋、ドラム缶ライナー用の内袋のように、外装容器の内側に収容される容器であってもよい。外装容器としては、紙製、木製、樹脂製、金属製等の箱、缶などが挙げられる。
【0038】
構造発色領域15を有する基材11がフレキシブルで、かつ、長尺である場合には、基材11をロール体に巻き取ると、保管、運送などが容易になり、好ましい。また、基材11を流れ方向に搬送しながら連続的に容器10,10A,10B,10C,10D,10Eを作製する場合は、ロール体を用いて、長尺の基材11を容器作製装置に容易に供給することができる。長尺の基材11の長さとしては、特に限定されないが、例えば1m以上、あるいは、10m~1000m等が挙げられる。ロール体に用いる基材11は、例えば、フィルム、シート、ウェブ等の可撓性の基材が好ましい。また、ロール体とする場合、基材11の厚さ、又は、凹凸形状の高さを含めた基材11の厚さは、例えば、5mm以下、さらには1mm以下が挙げられる。
【0039】
構造発色領域15を有する基材11を製造する方法としては、基材11の表面に前記凹凸形状による構造発色領域15を形成する工程を少なくとも有すればよい。基材11は空中でロール等により搬送してもよく、基材11を移動させずに受け台の上に載せて支持してもよい。基材11が長尺又はロール状である場合は、ロール・トゥー・ロール方式で基材11を搬送し、加工開始側で基材11を引き出すロールと、加工終了側で基材11を巻き取るロールとの間で、構造発色領域15を形成する加工工程を行うことが好ましい。構造発色領域15を形成した後で、基材11をロール状に巻き取ったり、基材11の表面に保護フィルムを積層したりして、構造発色領域15を汚染等から保護してもよい。保護フィルムは、基材11から容器10,10A,10B,10C,10D,10Eを作製する前に基材11の表面から剥離除去される。
【0040】
構造発色領域15の凹凸形状は、基材11を構成する材料を塑性的又は弾性的に変形させることで、形成してもよい。例えば、少なくとも表面が熱可塑性樹脂からなる基材11に対して、熱可塑性樹脂を溶融可能な金型を押圧して、金型の凹凸形状を基材11に転写してもよい。基材11を構成し得る流動性の材料を金型に塗布し、塗布された材料を金型の凹凸形状に硬化させた後に、基材11を離型してもよい。
【0041】
構造発色領域15の凹凸形状は、基材11上に粒子、樹脂等の材料を付与して、これらの材料から前記凹凸形状を形成してもよい。粒子の形状は特に限定されないが、球状、半球状、柱状、錐状などが挙げられる。粒子の材質は特に限定されず、シリカ、アルミナ等の無機系材料、樹脂等の有機系材料などが挙げられる。基材11上に樹脂等を所定のパターンで付与する方法としては、グラビアロール等の版を用いて所定のパターンに樹脂等の材料を基材11に付着させてもよく、基材11上に流動性の材料を塗布した後、金型を用いて前記凹凸形状を成形してもよい。レーザー等のビーム加工、エッチング等の化学的可能により前記凹凸形状を形成してもよい。
【0042】
前記凹凸形状を樹脂で形成する場合、可撓性、軽量性、耐久性等の観点から、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の樹脂が好ましい。前記凹凸形状の形成に用いられる樹脂が、基材11に用いられる樹脂材料と同一でも異なってもよい。基材11又は前記凹凸形状を形成するための樹脂を溶媒に溶解させる場合、溶媒の具体例としては、炭化水素系、アルコール系、エーテル系、ケトン系、エステル系、アミド系、その他の各種有機溶媒や水が挙げられる。
【0043】
基材11又は構造発色領域15の凹凸形状に用いられる樹脂材料は特に限定されず、公知の材料を適宜使用可能であるが、その具体例としては、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)やシクロオレフィンコポリマー(COC)等の環状オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、液晶ポリマー、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル等の塩素系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、カルボン酸系モノマーを含有する酸変性樹脂、接着性樹脂などの1種又は2種以上が挙げられる。酸変性樹脂として、酸変性ポリオレフィン樹脂は、熱接着性に優れるので好ましい。カルボン酸系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸又はその無水物が挙げられる。
【0044】
基材11又は構造発色領域15の凹凸形状には、無機や有機の添加剤を含んでもよい。添加剤の具体例としては、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、保存安定剤、レベリング剤、シランカップリング剤、重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤、着色剤、可塑剤、滑剤、溶剤、充填剤、老化防止剤、濡れ性改良剤、離型剤等の一般的な添加剤のほかに、カーボンナノチューブ、フッ化炭素、炭化ケイ素、一酸化ケイ素、無機粒子や金属粒子なども例示できる。
【0045】
基材11又は構造発色領域15の凹凸形状に用いられる樹脂の塗布方法としては、塗布する樹脂組成物の粘度等に適したものであればよく、限定されず、ロールコート、スピンコート、ブレードコート、バーコート、リバースコート、ダイコート、ディップコート、スプレーコート、グラビアコート、カーテンフローコート、キャスト、刷毛塗り、印刷等が挙げられる。塗布する樹脂組成物の粘度(η)は、特に限定されないが、例えば1000~6000mPa・sが挙げられる。
【0046】
実施形態の容器10,10A,10B,10C,10D,10Eは、種々の内容物14の包装、保管、輸送等に用いることができる。内容物14の接触により構造発色領域15の構造発色が消失することから、構造発色領域15の凹凸形状を構成する材料の屈折率は、内容物14を構成する材料の屈折率と同程度であることが好ましい。これらの屈折率差は、例えば、0.1以下、あるいは0.05以下が好ましい。前記凹凸形状及び内容物14は、構造発色及びその目視に適した光透過性を有する。前記凹凸形状及び内容物14が、構造発色を妨げない程度に、着色又はヘーズ(曇り)を有してもよい。
【0047】
包装容器に充填される内容物の種類としては、特に限定されず、飲料品、食料品、調味料、化粧品、医薬品、洗剤、接着剤、家庭用品、工業製品などが挙げられる。容器を構成する各部材には、酸素吸収機能、匂い吸収機能、非吸着機能など、1又は2以上の機能性を付与してもよい。容器を構成する各部材は、それぞれ少なくとも1以上の印刷柄を有してもよい。なお、容器が印刷柄を含まず、構造発色領域15により色彩等を表示する場合には、リサイクルが容易になる。容器を構成する各部材を構成する材料は、樹脂に限らず、紙、布、不織布、繊維、金属、無機化合物などの異種材料を積層又は配合してもよい。
【0048】
実施形態の容器10,10A,10B,10C,10D,10Eによれば、内容物14が接触していない箇所において構造発色が現れ、内容物14が接触している箇所では構造発色が消失するので、内容物14の量、有無、付着位置等を容易に確認することができる。特に、内容物が透明な液体等である場合、又は内容物と容器の色合いが似ている場合でも、内容物を明瞭に表示することができる。内容物と容器又は構造発色の色合いを異ならせることで、構造発色の発現又は消失により見た目が変化する包装体を提供して、包装体の意匠性を向上することができる。
【0049】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。改変としては、各実施形態における構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。また、2以上の実施形態に用いられた構成要素を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0050】
10,10A,10B,10C,10D,10E…容器、11…基材、12,12A,12B,12C…収容部、13,13A,13B,13C…注出口、14…内容物、15…構造発色領域、16…目盛り、17…開口部、21,21A,21B,21C…肩部、22,22A,22B,22C…胴部、23,23A,23B,23C…底部、24…シール部、25…底部材、26A,26B…収容室、27…隔壁部。
図1
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図6