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特許7379388注射により薬液を投与するためのデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】注射により薬液を投与するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/24 20060101AFI20231107BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20231107BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20231107BHJP
   A61M 5/148 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
A61M5/24 510
A61M5/28 500
A61M5/32 510B
A61M5/32 510H
A61M5/148
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020569195
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2019065507
(87)【国際公開番号】W WO2019238825
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】18305728.0
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シャーバッハ
(72)【発明者】
【氏名】アンナ・バッカーロ
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-532524(JP,A)
【文献】特表2015-533603(JP,A)
【文献】特表2017-520344(JP,A)
【文献】特開2015-091453(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0200073(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/24
A61M 5/28
A61M 5/32
A61M 5/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射によって薬液(14)を投与するためのデバイス(1)であって、
用量アセンブリ(2)であって、
投与予定の薬液を保持するように適用された潰れ可能なリザーバ(3)と、
ルーメン(41)を有する注射針(4)であって、針の少なくとも大部分が長手方向軸(L)を画成し、注射前に針は該デバイスの内部に位置し、潰れ可能なリザーバに近い針の第1の端部はリザーバに直接または間接的に取り付けられ、作動前に針のルーメン(41)は潰れ可能なリザーバの内部チャンバと流体連通する、注射針と、
を含む用量アセンブリと、
該デバイスを作動させるためにユーザが作動力(A)を加えることができる少なくとも1つのアクチュエータ要素(8)であって、前記作動力は、長手方向軸に垂直な軸に沿った成分を有する、少なくとも1つのアクチュエータ要素と、
セプタム(7)を含むハウジング(6)であって、注射前、用量アセンブリ(2)はハウジング内に配設され、潰れ可能なリザーバ(3)および針(4)は、ハウジングの内部に位置し、セプタムは、潰れ可能なリザーバ(3)から離れた針の第2の端部で針のルーメンを遮る、ハウジングと、
を含み、
ここで、少なくとも1つのアクチュエータ要素は、用量アセンブリおよび潰れ可能なリザーバ(3)の少なくとも一部分に作用するように構成および配置され、少なくとも1つのアクチュエータ要素および用量アセンブリは、作動力に応答して針が前記長手方向軸に沿って、および/または前記長手方向軸に平行な軸に沿って変位可能であるように構成および配置されて、針の一部分はハウジングおよび該デバイスの内部から外部に移動して、薬液の投薬を可能にし、
セプタムは、ショアA硬度が65以下かつ30以上のエラストマーまたはゴム材料から形成され、前記ショアA硬度はDIN 53505に従って測定される、前記デバイス。
【請求項2】
少なくとも1つのアクチュエータ要素(8)および用量アセンブリ(2)は、ユーザによる薬液(14)の投薬および/または前記少なくとも1つのアクチュエータ要素の解放後、針(4)の前記部分がデバイスの外部から内部に移動するように構成および配置される、請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項3】
潰れ可能なリザーバ(3)は、投与予定の薬液(14)の単回用量を含む、請求項1または2に記載のデバイス(1)。
【請求項4】
潰れ可能なリザーバ(3)の壁の少なくとも大部分が可撓性材料から形成され、薬液を投薬し終わっているとき、リザーバの壁の少なくとも大部分は潰れ状態である、請求項1~3のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項5】
潰れ可能なリザーバ(3)は、可撓性ポーチ(31)またはアンプルとして構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記長手方向軸(L)に沿ってまたは平行に非伸長性および/または非圧縮性である、請求項1~5のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項7】
少なくとも1つのアクチュエータ要素(8)は、ハウジング(6)に配設され、ハウジングの横方向かつ外部に位置決めされた外向きの表面を有し、外向きの表面に、ユーザが前記作動力(A)を加えることができる、請求項1~6のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項8】
少なくとも1つのアクチュエータ要素(8)および用量アセンブリ(2)は、作動力(A)に応答して針(4)がセプタム(7)に向けて変位されるように構成および配置され、針はセプタムを穿孔するように付勢され、流体通過のために針のルーメン(41)を開き、潰れ可能なリザーバ(3)は潰れ状態に付勢され、それにより、リザーバに含まれる薬液(14)を針のルーメンを通して排出する、請求項1~7のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項9】
少なくとも1つのアクチュエータ要素(8)および用量アセンブリ(2)は、リザーバ(3)からの薬液(14)の投薬後にさらなる力がユーザによって少なくとも1つのアクチュエータ要素に印加されるのに応答して、針(4)が内方向に変位されるように構成および配置され、針は、セプタム(7)を通ってまたは該セプタム内に引き戻され、それにより針がハウジング(6)内に収納される、請求項8に記載のデバイス(1)。
【請求項10】
少なくとも1つのアクチュエータ要素(8)および用量アセンブリ(2)は、少なくとも1つのアクチュエータ要素へのユーザによる作動力の解放に応答して針が内方向に変位されるように構成および配置され、針は、セプタム(7)を通してまたは該セプタム内に引き戻され、それにより針がハウジング(6)内に収納される、請求項8に記載のデバイス(1)。
【請求項11】
少なくとも1つのアクチュエータ要素(8)および用量アセンブリ(2)は、リザーバ(3)からの薬液(14)の投薬が完了した後に針(4)が内方向に変位されるように構成および配置され、針は、セプタム(7)を通ってまたは該セプタム内に引き戻され、それにより針がハウジング内に収納される、請求項8に記載のデバイス(1)。
【請求項12】
潰れ可能なリザーバ(3)は、剛性支持体(32)に配置されている、または剛性支持体(32)を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項13】
剛性支持体(32)は、概して、長手方向軸(L)に垂直な平面、または長手方向軸に平行な、もしくは長手方向軸を含む平面に沿って延び、少なくとも1つのアクチュエータ要素(8)および用量アセンブリ(2)は、潰れ可能なリザーバ(3)が潰れ状態に付勢されるとき、潰れ可能なリザーバが、支持体に向かう方向であって、支持体によって画成
される平面に実質的に垂直な方向に圧縮されるように構成および配置される、請求項12に記載のデバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射により薬液、特に単回用量の薬液を投与するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの薬剤は、体内に注射する必要がある。これは特に、活性化されていない、または経口投与によって効率が著しく低下している薬剤、たとえば、タンパク質(インスリン、成長ホルモン、インターフェロンなど)、炭水化物(たとえばヘパリン)、抗体、および大部分のワクチンに当てはまる。そのような薬剤は、主に、注射器、薬剤ペン、または薬剤ポンプによって注射される。
【0003】
そのような注射器、薬剤ペン、薬剤ポンプのユーザは、医療専門家から薬剤受容者自身まで様々であり、薬剤受容者は子供から高齢者まで様々である。薬物注射は、特定の用量の繰り返しまたは複数回の注射(たとえば、複数回用量レジメンでのワクチン)から、単回用量の単回注射(たとえば、ワクチンまたは緊急ヒドロコルチゾン)まで含むことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
単回用量の送達を可能にすることが好都合であり、それと同時に、力の弱いユーザを含む様々な潜在ユーザにとって潜在的に使いやすい、注射により医療用液体を投与するためのデバイスを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、注射により薬液を投与するためのデバイスであって、
用量アセンブリであって、
投与予定の薬液を保持するように適用された潰れ可能なリザーバと、
少なくとも大部分が長手方向軸を画成し、注射前に該デバイスの内部に位置する、注射針と、
を含む用量アセンブリと、
該デバイスを作動させるためにユーザが力を加えることができる少なくとも1つのアクチュエータ要素であって、上記力は、長手方向軸に垂直な軸に沿った成分を有する、少なくとも1つのアクチュエータ要素と、
を含み、
ここで、少なくとも1つのアクチュエータ要素は、用量アセンブリの少なくとも一部分に作用するように構成および配置され、少なくとも1つのアクチュエータ要素および用量アセンブリは、作動力に応答して針が上記長手方向軸に沿って、および/または上記長手方向軸に平行な軸に沿って変位可能であるように構成および配置されて、針の一部分はハウジングおよび該デバイスの内部から外部に移動して、薬液の投薬を可能にする
デバイスが提供される。
【0006】
使いやすさ、ならびに安全性、および場合によっては使い捨て可能性をさらに促進するために、少なくとも1つのアクチュエータ要素および用量アセンブリは、ユーザによる薬液の投薬および/または上記少なくとも1つのアクチュエータ要素の解放後、針の上記部分がデバイスの外部から内部に移動するように構成および配置されることが望ましい。
【0007】
望ましくは、潰れ可能なリザーバは、投与予定の薬液の単回用量、特に1000μl以下の体積を有する用量を含む。
【0008】
好ましくは、潰れ可能なリザーバの壁の少なくとも大部分が可撓性材料から形成され、特に、潰れ可能なリザーバが投与予定の薬液を含むとき、リザーバの壁の少なくとも大部分は伸長または膨張状態であり、薬液を投薬し終わっているとき(または潰れ可能なリザーバが空であるとき)、リザーバの壁の少なくとも大部分は潰れ状態である。
【0009】
望ましくは、潰れ可能なリザーバは、可撓性ポーチまたはアンプルとして構成される。たとえば、潰れ可能なリザーバは、可撓性のアンプル(たとえばバルーンのような形状を有する)として構成され、リザーバが伸長または膨張状態にあるときにリザーバの内部チャンバを画成する本質的にすべての壁が可撓性材料から形成される。代替として、潰れ可能なリザーバは、剛性支持部分(たとえばブリスタのような形状を有する)に提供される可撓性ポーチ部分として構成され、リザーバが伸長または膨張状態にあるときにリザーバの内部チャンバを画成する壁の少なくとも大部分が可撓性材料から形成される。
【0010】
いくつかの実施形態では、潰れ可能なリザーバの近くの針の端部がリザーバに直接または間接的に取り付けられ、作動前に、針のルーメンが、潰れ可能なリザーバの内部チャンバ(したがって、そこに含まれる薬液)と流体連通する。そのような実施形態では、たとえばセプタムによって針の遠位端を遮ることが望ましいことがあり、これは、防腐剤を含まない薬液調合の使用を可能にすることがある。他の実施形態では、潰れ可能なリザーバと針との流体連通は、デバイスの作動中に、たとえば作動中に針の近位端が潰れ可能なリザーバを穿孔することによって最初に確立される。そのような実施形態も、防腐剤を含まない薬液調合の使用を可能にし得るという点で有利である。
【0011】
好ましくは、デバイスはハウジングをさらに含むことがあり、注射前、潰れ可能なリザーバおよび針がハウジングの内部に位置するように用量アセンブリがハウジング内に配設される。より好ましくは、ハウジングは、上記長手方向軸に沿ってまたは平行に非伸長性および/または非圧縮性でよい。そのようなハウジングの形成は、たとえば、注射軸に沿った安定性を提供し、したがって、圧搾作用と呼ぶことができるユーザによる力の印加を容易にすることによって、デバイスを人間工学的に使いやすくするという点で有利であり得ることが判明している。
【0012】
望ましくは、少なくとも1つのアクチュエータ要素は、ハウジングに配設され、ハウジングの横方向かつ外部に位置決めされた外向きの表面を有し、外向きの表面に、ユーザが上記力を加えることができる。
【0013】
ハウジングは、好ましくはセプタムを含むことがあり、注射前、セプタムは、潰れ可能なリザーバから離れた針の端部で針のルーメンを遮る。
【0014】
少なくとも1つのアクチュエータ要素および用量アセンブリは、好ましくは、作動力に応答して針がセプタムに向けて変位されるように構成および配置され、針はセプタムを穿孔するように付勢され、流体通過のために針のルーメンを開き、潰れ可能なリザーバは潰れ状態に付勢され、それにより、リザーバに含まれる薬液を針のルーメンを通して排出する。
【0015】
リザーバからの薬液の排出を助けるためのリザーバの構成および圧縮を容易にするために、潰れ可能なリザーバは、いくつかの実施形態では、部分的に剛性支持体を含み、または他の実施形態では、潰れ可能なリザーバは、たとえば用量アセンブリの一部として提供される剛性支持体に配置される。デバイスの特定の配置に応じて、剛性支持体は、好ましくは、長手方向軸に垂直な平面、または長手方向軸に平行な、もしくは長手方向軸を含む平面に沿って延び、少なくとも1つのアクチュエータ要素および用量アセンブリは、潰れ可能なリザーバが潰れ状態に付勢されるとき、潰れ可能なリザーバが、支持体に向かう方向であって、支持体によって画成される平面に実質的に垂直な方向に圧縮されるように構成および配置される。
【0016】
いくつかの実施形態では、デバイスは、場合によっては、薬液の投薬後にユーザによって少なくとも1つのアクチュエータ要素に継続的な力が印加されるのに応答して、針がデバイスまたはハウジング内に引き戻されるように構成および配置される。たとえば、少なくとも1つのアクチュエータ要素および用量アセンブリは、望ましくは、リザーバからの薬液の投薬後にユーザによって少なくとも1つのアクチュエータ要素にさらなる力が印加されるのに応答して、針が内方向に変位されるように構成および配置され、針は、セプタムを通してまたはその中に引き戻され、それにより針がハウジング内に収納される。
【0017】
他の実施形態では、デバイスは、場合によっては、少なくとも1つのアクチュエータ要素の解放時に針がデバイスまたはハウジング内に引き戻されるように構成および配置される。たとえば、少なくとも1つのアクチュエータ要素および用量アセンブリは、好ましくは、少なくとも1つのアクチュエータ要素へのユーザによる力の解放に応答して針が内方向に変位されるように構成および配置され、針は、セプタムを通してまたはその中に引き戻され、それにより針がハウジング内に収納される。
【0018】
さらに他の実施形態では、デバイスは、場合によっては、リザーバからの薬液の投薬が完了した直後に、針がデバイスまたはハウジング内に自動的に引き戻されるように構成および配置される。たとえば、少なくとも1つのアクチュエータ要素および用量アセンブリは、望ましくは、リザーバからの薬液の投薬が完了した後に針が内方向に変位されるように構成および配置され、針は、セプタムを通してまたはその中に引き戻され、それにより針がハウジング内に収納される。
【0019】
本明細書で述べるデバイスは、好ましくは、鎮痛剤、抗凝固剤、インスリン、インスリン誘導体、ヘパリン、エノキサパリン、ワクチン、成長ホルモン、ペプチド、タンパク質、抗体、炭水化物、多糖類、核酸、およびデュアルアゴニスト、たとえばGLP-GCGR(グルカゴン様ペプチド-グルカゴン受容体)およびGLP-GiP(グルカゴン様ペプチド-グルコース依存性インスリン分泌性ポリペプチド)のうちの1つまたはそれ以上を送達するために使用される。
【0020】
本発明のさらなる適用可能範囲は、以下に示す詳細な説明から明らかになろう。しかし、この詳細な説明から、本発明の精神および範囲内での様々な変更および修正が当業者には明らかになるので、詳細な説明および具体的な例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、例示としてのみ与えられていることを理解されたい。
【0021】
本発明は、例示としてのみ与えられ、したがって本発明を限定するものではない本明細書で以下に示す詳細な説明および添付図面からより完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】注射および作動力の印加前(展開位置)のデバイスを示す、本発明による第1の例示的実施形態の長手方向断面図である。
図1B】作動力の印加中の中間位置にあるデバイスを示し、ここでは薬液はまだ投薬されていない、第1の例示的実施形態の長手方向断面図である。
図1C】作動力の印加の完了時のデバイスを示し、ここでは薬液が投薬されている(投薬位置)、第1の例示的実施形態の長手方向断面図である。
図1D】薬液が投薬され、作動力が解放された後のデバイスを示し、ここでは針が引っ込められている(後退位置)、第1の例示的実施形態の長手方向断面図である。
図2A】本発明による、第2の例示的実施形態の長手方向断面図であって、注射および作動力の印加前(展開位置)のデバイスを示す図である。
図2B】作動力の印加中の中間位置にあるデバイスを示し、ここでは薬液はまだ投薬されていない、第2の例示的実施形態の長手方向断面図である。
図2C】作動力の印加の完了および薬液の投薬直後(投薬位置)のデバイスを示す、第2の例示的実施形態の長手方向断面図である。
図2D】薬液が投薬された後のデバイスを示し、ここでは針が引っ込められている(後退位置)、第2の例示的実施形態の長手方向断面図である。
図3A】注射および作動力の印加前(展開位置)のデバイスを示す、本発明による第3の例示的実施形態の長手方向断面図である。
図3B】作動力の印加中の中間位置にあるデバイスを示し、ここでは薬液はまだ投薬されていない、第3の例示的実施形態の長手方向断面図である。
図3C】薬液が投薬されている(投薬位置)際のデバイスを示す、第3の例示的実施形態の長手方向断面図である。
図3D】薬液が投薬され、作動力がさらに印加された後のデバイスを示し、ここでは針が引っ込められていない、第3の例示的実施形態の長手方向断面図である。
図3E】薬液が投薬され、作動力の印加が完了した後のデバイスを示し、ここでは針が引っ込められている(後退位置)、第3の例示的実施形態の長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
すべての図において、対応する部分には同じ参照符号が付されている。
【0024】
図1A~Dは、本発明による薬液を投与するためのデバイス1の第1の例示的実施形態を示す。
【0025】
図1Aを参照すると、第1の例示的実施形態は、潰れ可能なリザーバ3および注射針4を含む用量アセンブリ2を含み、針4の少なくとも大部分(この特定の例示的実施形態では、針4の全体)が長手方向軸Lを画成する。潰れ可能なリザーバ3の壁は、可撓性材料から形成される。潰れ可能なリザーバは、好ましくは可撓性のアンプル31として構成され、その円周に沿って、本質的に平面状のリング形状の剛性支持体32によって実質的に支持され、平面状支持体は、概して長手方向軸Lに沿って/平行に位置合わせされる。注射針4は中空であり、したがってルーメン(図面では見えない)を有する。例示的実施形態では、スリーブ状コネクタ5が、リザーバ3の近くで針4の遠位端部分に配置され、コネクタがリザーバの近位部分に結合され、したがって、針の遠位端を介して、針のルーメンはリザーバ、特にリザーバの内部空洞と流体連通する。第1の例示的実施形態は、ハウジング6を含む。ハウジング6は、2つの対向する横方向の細長い開口部または切欠きを含む。ハウジングはセプタム7を含み、セプタムは、ハウジングの一端、すなわち近位端の近くに位置する。注射前、セプタムは、針の第2の近位端で針のルーメンを遮る。また、注射前、針4全体、および潰れ可能なリザーバ3は、ハウジング6の内部に位置する。例示的実施形態は、デバイスを作動させるためにユーザが力を加えることができるアクチュエータ要素8を含む。第1の例示的実施形態では、アクチュエータ要素は、概して、実質的に長方形の開端のボックス状要素として構成される。長手方向軸Lに概して垂直なアクチュエータ要素8の2つの対向する端部分81、82は、概して、外方向に湾曲可能な壁またはアームとして構成され、近位端部分81は、コネクタ5の中央に取り付けられ、アクチュエータ要素8の対向する遠位端部分82は、アクチュエータ要素8の遠位端の近くでハウジングの中央に取り付けられる。アクチュエータ要素8の側部分83、84は、ハウジング6の横方向開口部を通って外方向に延びる。アクチュエータ要素8の側部分83、84は、ハウジング6の横方向かつ外部に位置決めされ、デバイス1を作動させるためにユーザが押して力を加えることができる2つの表面9、10を含む。さらに、アクチュエータ要素8の側部分83、84は、2つの内面11、12を含み、内面11、12は、デバイスの動作中、用量アセンブリの少なくとも一部分(特に、潰れ可能なリザーバ3、より具体的にはアンプル31)に係合し、したがって作用する。図1Aおよび図1Dを参照すると、リザーバ3は、作動されていないおよび/または解放されたアクチュエータ要素8内の開いた内部空間内に位置する。望むなら、ハウジング6は、ハウジングの外側からリザーバ3を見ることができるように観察窓を含むことができ、観察窓は、ハウジングの透明部分または追加の切欠きでよい。潰れ可能なリザーバ3は、一般に、その完全伸長状態で最大体積を有し、その潰れ状態で最小体積を有する。図1Aを参照すると、注射前、リザーバ3は、投与予定の薬液14を含み、したがってリザーバは伸長状態である。特に、図1Aは、例示的実施形態を、その使用準備ができた状態または位置で示し、この状態または位置を本明細書では「展開位置」と呼ぶ。
【0026】
第1の例示的実施形態の使用時、ハウジングの近位端の外面、すなわち静止面15(図1Aに符号が付されている)が、たとえばユーザによってターゲット注射部位に配置される(前述および以下の説明において、「近位」および「遠位」は、静止面に対するものとして用いる)。図1Bを参照すると、ユーザは、次いでアクチュエータ要素8の横方向外面9、10を押し、それにより、両側から内方向作動力(図面では「A→」で表される)を加える。この例示的実施形態では、加えられる作動力は、長手方向軸Lに垂直な軸に本質的に完全に沿っている。図1Bで見ることができるように、作動力が加えられるとき、アクチュエータ要素8の近位および遠位端部分81、82は外方向に曲がり、アクチュエータ要素は、ハウジング内で長手方向軸Lに沿って伸長し(上記ハウジングは、長手方向軸Lに沿ってまたは平行に非伸長性および非圧縮性である)、コネクタ5を静止面に向けて押し、したがって針を上記長手方向軸Lに沿って静止面に向けて変位させる。特に、図1Bを参照すると、針は、セプタムに向けて変位され、セプタムを穿孔するように付勢され、したがって針のルーメンは、リザーバから標的注射部位への流体通過のために開かれる。図1BおよびCで理解できるように、作動力が引き続き加えられると、針はさらに変位されて、ハウジングの静止面15を越えて外方向に延びる。さらに、図1Bおよび図1Cで見られるように、作動力が引き続き加えられると、アクチュエータ要素の横方向内面11、12は、潰れ可能なリザーバ3の一部分の横方向外面(特にアンプル31の外面)と接触し(図1B参照)、潰れ可能なリザーバの外壁が一緒に押圧または圧搾され、したがってリザーバは潰れ状態に付勢され(図1C参照)、それによりリザーバに含まれている薬液14を針4のルーメンを通して排出する。図1Cは、例示的なデバイス1をその投薬位置で示し、作動力の印加が完了し、薬液14を投薬し終わっている。図1Dは、例示的なデバイス1をその後退位置で示し、作動力の解放後、特にユーザがアクチュエータ要素8の横方向外面9、10を押すのをやめたとき、アクチュエータ要素はその元の形状に戻り、したがってコネクタ5を針4と共に静止面15から内方向に引き離し、針がセプタム7内に(またはそれを通して)引き戻され、それにより針が再びハウジング6内に収納される。
【0027】
図2A図2Dは、本発明による薬液を投与するためのデバイス1の第2の例示的実施形態を示す。
【0028】
図2Aを参照すると、第2の例示的実施形態は、潰れ可能なリザーバ3および注射針4を含む用量アセンブリ2を含み、針の少なくとも大部分(この特定の例示的実施形態では、針の全体)が長手方向軸Lを画成する。可撓性ポーチ31は、好ましくは本質的に平面状の剛性支持体32に提供され、平面状支持体は概して長手方向軸Lに沿って位置合わせされ、可撓性ポーチは、可撓性ポーチと向かい合う剛性支持体の部分と共に、潰れ可能なリザーバを画成する。潰れ可能なリザーバは、支持体の通路33に面する出口(図面では見えない)を有する。したがって、潰れ可能なリザーバの壁は、好ましくは、一部が可撓性材料から形成され、一部が剛性材料から形成され、より好ましくは、潰れ可能なリザーバの壁の少なくとも大部分が可撓性材料から形成される。有利には、剛性支持体は、所要の位置でのポーチの安定性を保証し、一方、ポーチの可撓性は、薬物をポーチから絞り出して通路33を通して送達することを可能にする。注射針4は中空であり、したがってルーメン41を有する。例示的実施形態では、針4の遠位部分は平面状支持体32に取り付けられてその中に位置決めされ、針の遠位端は支持体の通路33に位置し、針のルーメン41がリザーバと(特にリザーバの内部空洞と、より特定的には潰れ可能なポーチ31の内部と)流体連通する。例示的実施形態は、ハウジング6を含み、ハウジングは、長手方向軸Lに沿ってまたは平行に非伸長性および非圧縮性である。ハウジング6はセプタム7を含み、セプタムは、ハウジングの近位端に位置する。注射前、セプタム7は、針の第2の近位端で針4のルーメン41を遮る。また、注射前、針4全体、および潰れ可能なリザーバ3は、ハウジング6の内部に位置する。図2Aを参照すると、潰れ可能なリザーバ3は、たとえば、平面状支持体32の近位端とセプタム7の遠位端との間で針4の近位端部分の周りに提供される、形状記憶ポリマーなど形状記憶効果を有する材料から形成されるリング13を介して(または代替として、ばねを介して)ハウジング6内に支持される。例示的実施形態は、デバイス1を作動させるためにユーザが力を加えることができるアクチュエータ要素8を含む。この第2の例示的実施形態では、アクチュエータ要素8は、概してレバーのような要素として配置および構成される。アクチュエータ要素8の遠位部分は、平面状支持体32の遠位端とハウジングの遠位端との間の高さで、ハウジングの側壁の一部分に設けられたピボットマウント80に配置されている。アクチュエータ要素は、概して逆「J」形状を有する。アクチュエータ要素の長いアーム85は、ハウジング内部から、マウント80とは反対側のハウジングの細長い横方向開口部を通って外部に延びる。ハウジング6の外側に延びる長いアーム85の端部分は、ユーザがデバイス1を作動させるために押して力を加えることができる外向きの横方向表面9を提供する。アクチュエータ要素8の短いアーム86は、ハウジング内のマウントから延び、短いアームの端部分は、用量アセンブリ2の遠位端部分、特に平面状支持体32の遠位端に係合する。例示的実施形態を使用準備ができたその展開位置で示す図2Aを参照すると、リザーバは投与予定の薬液14を含み、したがってリザーバは伸長状態である。
【0029】
第2の例示的なデバイス1の使用時、ハウジング6の近位端にある静止面15が、ユーザによって標的注射部位に配置される。図2Bを参照すると、ユーザは、次いでアクチュエータ要素8の長いアーム85の外向きの横方向表面9を押し、上記加えられた作動力(A→を参照)は、長手方向軸Lに垂直な軸に沿った成分を有する。図2Bで見られるように、作動力が加えられると、アクチュエータ要素はマウント80で枢動し、内側の短いアーム86は、用量アセンブリに作用し、特に平面状支持体32を静止面に向けて押し、リング13を圧縮し、したがって上記長手方向軸Lに沿って針4を変位させる。特に、針はセプタムに向けて変位され、セプタムを通って穿孔するように付勢され、したがって針のルーメンは、リザーバからの流体通過のために開かれ、さらに、針は、ハウジングの静止面15を越えて外方向に延びるように変位される。さらに、図1Bおよび図1Cから理解できるように、作動力が引き続き加えられると、アクチュエータ要素8の長いアーム85の横方向内面11の一部分は、潰れ可能なリザーバ3の一部分(特に、圧縮可能なポーチ31の横方向外壁の一部分)と接触し(図2B参照)、潰れ可能なリザーバを押し、したがってリザーバは潰れ状態に付勢され(図2C参照)、それによりリザーバに含まれている薬液14を針4のルーメン41を通して排出する。図2Cは、例示的実施形態をその投薬位置で示し、作動力の印加がちょうど完了し、薬液を投薬し終わっている。図2Dは、例示的なデバイス1をその後退位置で示し、図2C図2Dを比較すると、作動力の印加および薬液の投薬の完了直後に、アクチュエータ要素8の短い内側アーム83の近位端が平面状支持体32の遠位端から係合解除し、リング13がその元の形状に戻り、したがって平面状支持体32を針4と共に内方向に押し戻して静止面15から離し、針はセプタム7内に(またはそれを通して)引き戻され、それにより針がハウジング6内に収納される。
【0030】
図3A図3Eは、本発明による薬液を投与するためのデバイス1の第3の例示的実施形態を示す。
【0031】
図3Aを参照すると、第3の例示的実施形態は、潰れ可能なリザーバ3および注射針4を含む用量アセンブリ2を含み、針の少なくとも大部分(この特定の例示的実施形態では、針の全体)が長手方向軸Lを画成する。注射針4は中空であり、したがってルーメン(図面では見えない)を有する。例示的実施形態では、針4の遠位端はコネクタ5を介して潰れ可能なリザーバに取り付けられ、針のルーメンが、リザーバ、特にリザーバの内部空洞と流体連通する。潰れ可能なリザーバの壁は、可撓性材料から形成される。潰れ可能なリザーバは、好ましくは、可撓性のアンプル31として構成され、剛性支持体32に支持され、支持体は、概して長手方向軸Lに垂直に位置合わせされ、リザーバの一部が位置する窪みを有する。さらに、用量アセンブリは、以下では「キャリッジ」と呼ぶハウジング20をさらに含み、潰れ可能なリザーバ3は、キャリッジの内部空洞に位置し、支持体32は、キャリッジの近位端部分21の内面の一部分に配置される。針4は、支持体32とキャリッジ20との両方の近位壁を通って延び、針の大部分は、その近位端と共に支持体およびキャリッジの近位外面を越えて延びる。キャリッジの2つの対向する横方向部分23、24は、外方向に湾曲可能な壁として構成される。キャリッジの遠位端部分22の内面は、キャリッジの内部空洞内に延びる延出部25を含む。延出部の近位端は、支持体の窪みの凹面に一致する凸面を有する。注入前、延出部の最も外側の近位面は、潰れ可能なリザーバの最も外側の遠位面とほぼ接触しているか、またはちょうど接触している。キャリッジ20の遠位端部分22の外側部分(すなわち、キャリッジの内部空洞に対して外側)には、構造26(以下でより詳細に述べる)が設けられ、構造26は、2つのアクチュエータ要素8、8’(以下に述べる)と一緒に協働して、キャリッジの動きのための一種の移動および懸架システムを提供し、上記動きは、長手方向軸Lに沿っているまたは平行である。
【0032】
例示的実施形態は、ハウジング6を含む。ハウジングは、概して、長手方向軸Lに沿ってまたは平行に非伸長性および非圧縮性である。ハウジングはセプタム7を含み、セプタムは、ハウジングの近位端に位置する。ハウジングは、2つの対向する横方向の細長い開口部または切欠きを含む。図3Aを参照すると、注射前、キャリッジは、セプタムの遠位面から離間されてハウジング内に位置決めされ、セプタムが針の近位端で針のルーメンを遮っている。また、図3Aを参照すると、針全体および潰れ可能なリザーバは、ハウジングの内部に位置し、一方、キャリッジは、一部はハウジングの内部に位置し、一部はハウジングの外部に位置し、特に、キャリッジの側壁部分23、24は、ハウジングの横方向開口部を通って外方向に延びる。
【0033】
例示的実施形態は、デバイス1を作動させるためにユーザが力を加えることができる2つのアクチュエータ要素8、8’を含む。図3Aを参照すると、アクチュエータ要素8、8’は、ハウジング6の横方向開口部を通って外方向に延び、各アクチュエータ要素の外向きの側部分83、83’は、ハウジングの外部に位置決めされることを理解することができる。これらの側部分はそれぞれ、横方向に、したがってハウジングの外部に位置決めされた表面9、10を含む。2つの表面9、10は、概して互いに反対向きに位置決めされ、ユーザは、デバイス1を作動させるために力を加えるために、それらの表面を押圧または圧搾することができる。各アクチュエータ要素8、8’の遠位端部分82、82’は、特にそれぞれの内向きの側部分84、84’(84’は見えない)の近くの位置に、マウントピン80、80’(図面では80’は見えない)を含む。各アクチュエータ要素は、ハウジングに、特にハウジングの内面の対向する位置で、ハウジングの遠位端の近くに取り付けられ、各アクチュエータ要素は、マウントピン80、80’の周りで、内方向に、他のアクチュエータ要素に向けて枢動または回転することができる。各アクチュエータ要素8、8’の近位端部分81、81’(81’は見えない)は、特にそれらの内向きの側部分84、84’(84’は見えない)の近くの位置に係合ピン88、88’(88’は見えない)を含む。図3Aを参照すると、アクチュエータ要素8、8’の係合ピン88、88’は、デバイス1の操作中、用量アセンブリ2の少なくとも一部分、特に用量アセンブリのキャリッジ20の構造26に係合し、したがって作用する。特に、キャリッジの構造26は、中央の頂点またはプラトー部分まで遠位に延びる2つの横方向外面27、28を有する概して三角形状を有する。さらに、構造26は、2つのデッドエンドの(dead-end)交差しない内部ガイド通路29、29’(通路29’は、図3A図3Eに破線で示されている)を含み、ガイド通路の開口部は、構造の中央の頂点またはプラトー部分の近くにあるが反対の側にある2つの横方向外面に位置する。各通路29、29’は、一方の横方向外面27、28にあるその開口部から、他方の横方向外面28、27に概して平行に近位方向へ延びる。ガイド通路開口部までの横方向外面27、28の部分およびキャリッジ構造26のガイド通路29、29’の内面は、係合ピンの係合および移動のための表面を提供する。図3A図3Eを参照すると、各係合ピンに関する係合および移動面は、概して逆「V」形状を有することが理解されよう。例示的実施形態を使用準備ができたその展開位置で示す図3Aを参照すると、リザーバは投与予定の薬液14を含み、したがってリザーバは伸長状態である。
【0034】
第3の例示的なデバイスの使用時、ハウジング6の近位端にある静止面15が、ユーザによって標的注射部位に配置される。図3Bを参照すると、ユーザは、次いでアクチュエータ要素の外向きの横方向表面9、10を押圧または圧搾し、上記加えられた作動力(A→を参照)は、長手方向軸Lに垂直な軸に沿った成分を有する。図3Bで見ることができるように、作動力が加えられると、各アクチュエータ要素8、8’は内方向に枢動し、用量アセンブリ2に作用し、特に各係合ピン88、88’は、キャリッジ構造26のそれぞれの横方向外面27、28に沿って遠位方向に移動し、それによりキャリッジ20を静止面に向けて押し、それに対応して針4を上記長手方向軸Lに沿って変位させる。特に、針4はセプタムに向けて変位され、セプタムを通って穿孔するように付勢され、したがって針のルーメンは、潰れ可能なリザーバ3からの流体通過のために開かれ、さらに、針は、ハウジング6の静止面15を越えて外方向に延びるように変位される。さらに、図3Bおよび図3Cから理解できるように、作動力が引き続き加えられ、各係合ピン88、88’が、キャリッジ構造26のそれぞれの横方向外面27、28に沿って、それぞれの通路29、29’の開口部まで遠位方向に移動するとき、キャリッジ20の2つの対向する側部分23、24は外方向に曲がり、延出部25は、潰れ可能なリザーバ3を押し、したがってリザーバは潰れ状態(図3C参照)に付勢され、それにより、リザーバに含まれる薬液を針4のルーメンを通して排出する。図3Cは、第3の例示的なデバイス1をその投薬位置で示し、薬液がちょうど投薬し終わっている。図3Eは、第3の例示的なデバイスをその後退位置で示す。図3Dおよび図3Eを参照すると分かるように、薬液の投薬の完了後(図3C参照)、ユーザがアクチュエータ要素8、8’の外向きの側面9、10を押し続けると、各アクチュエータ要素がさらに内方向に枢動し、各アクチュエータ要素の各係合ピン88、88’は、キャリッジ構造26のそれぞれの通路29、29’に沿って近位方向に移動し、キャリッジ20を圧縮解除し(すなわち、キャリッジの側壁23、24がそれらの元の形状に戻ることができるようにし)(図3D参照)、続いてキャリッジを静止面15から遠位方向に引き離し、したがって針4を上記長手方向軸Lに沿って内方向に変位させ、針は、セプタム7を通してまたはその中に引き戻され、それにより針が再びハウジング6内に収容される(図3E参照)。
【0035】
セプタムの穿孔を容易にし、作動力の印加中に、針が最初にセプタムを穿孔し、その後、薬液がルーメンを通して押し出されることを保証する助けとなるように、望ましくは、セプタムは、DIN 53505に従って測定したショアA硬度が65以下、より望ましくは60以下、最も望ましくは55以下の材料、特にエラストマーまたはゴム材料から形成される。たとえば収納および全般的な取扱い中のセプタムの偶発的な穿孔を防ぐ助けとなるように、セプタムは、ショアA硬度が30以上、より望ましくは40以上、最も望ましくは45以上の材料から形成されることが望ましい。
【0036】
本明細書で使用する「薬液」という用語は、少なくとも1つの製薬活性化合物を含む液体医薬製剤であって、上記少なくとも1つの製薬活性化合物が溶解または懸濁されている液体医薬製剤を意味する。以下に述べるように、薬液は、1つまたはそれ以上の疾患の治療のために、少なくとも1つの小分子もしくは大分子、またはそれらの組合せを様々なタイプの配合で含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物としては、低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、ならびにオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。これらの薬学的に活性な化合物の1つまたはそれ以上の混合物も企図される。
【0037】
本発明に記載のデバイスおよび薬液は、多くの異なるタイプの障害の治療および/または予防のために使用可能である。例示的な障害としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。
【0038】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のための例示的な薬学的に活性な化合物としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、もしくはそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、もしくはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「誘導体」という用語は、元の物質と実質的に同様の機能性または活性(たとえば、治療効果)を有するように、構造的に十分同様である任意の物質を指す。
【0039】
例示的なインスリンアナログは、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0040】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストは、たとえば、リキシセナチド/AVE0010/ZP10/リキスミア、エキセナチド/エキセンジン-4/バイエッタ/ビデュリオン/ITCA650/AC-2993(ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド/ビクトーザ、セマグルチド、タスポグルチド、シンクリア/アルビグルチド、デュラグルチド、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0041】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセン/キナムロである。
【0042】
例示的なDPP4阻害剤は、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0043】
例示的なホルモンとしては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0044】
例示的な多糖としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20/シンビスク、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0045】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。
【0046】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本開示に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0047】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0048】
例示的な抗体は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0049】
本明細書に記載の化合物は、(a)化合物またはその薬学的に許容可能な塩、および(b)薬学的に許容可能な担体を含む医薬製剤に使用可能である。化合物は、1つもしくはそれ以上の他の活性医薬成分を含む医薬製剤、または本化合物もしくはそれらの薬学的に許容可能な塩が唯一の活性成分である医薬製剤にも使用可能である。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書に記載の化合物と薬学的に許容可能な担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0050】
本明細書に記載のいずれの薬物の薬学的に許容可能な塩も、本明細書に記載のデバイスで使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえば、Na+、もしくはK+、またはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)、(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリール基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容可能な塩のさらなる例は当業者には公知である。
【0051】
薬学的に許容可能な溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)もしくはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0052】
本明細書で述べるデバイスでは、潰れ可能なリザーバは、好ましくは、投与予定の薬液の単回用量を含むことができる。薬液の単回用量は、典型的には、1000μl以下、特に750μl以下、より特定的には500μl以下、さらに特定的には10μl~500μlの体積を有することがある。用量アセンブリ、または代替としてデバイス全体は、好ましくは、使い捨ておよび/または小型に設計され、小型であることは、収納および取扱いの面で有利である。
【0053】
リザーバは、1つまたはそれ以上の製薬活性化合物の収納(たとえば、短期または長期の収納)のための適切なチャンバを提供するように構成される。たとえば、いくつかの場合には、リザーバは、薬物を少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日)収納するように設計される。いくつかの場合には、リザーバは、約1ヶ月から約2年間、薬物を収納するように設計される。収納は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃~約4℃)で行うことができる。デバイスおよびリザーバは、好ましくは、長期収納を可能にすると同時に、防腐剤を含まない薬液を使用できるように構成可能であることが有利であると判明している。
【0054】
一般に、潰れ可能なリザーバが投与予定の薬液を含むとき、リザーバは伸長または膨張状態であり、薬液を投薬し終わっているとき、潰れ可能なリザーバは潰れ状態である。例示的実施形態で論じられるように、潰れ可能なリザーバの壁の少なくとも大部分(およびいくつかの実施形態では本質的にすべての壁)は、好ましくは可撓性材料から形成される。さらに、好ましくは、リザーバの壁の少なくとも大部分は可撓性の材料から形成され、したがって、リザーバが投与予定の薬液を含むとき、壁の少なくとも大部分は伸長または膨張状態であり、リザーバが空であるまたは薬液を投薬し終わっているとき、壁の少なくとも大部分は潰れ状態である。たとえば、潰れ可能なリザーバは、可撓性ポーチまたはアンプルとして構成される。潰れ可能なリザーバの潰れ可能な可撓性の壁は、単層または多層(たとえばラミネート)構造のいずれかを有するポリマー含有フィルムから形成される。ポリマー材料は、ポリエステル、ポリプロピレン、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレンビニルアルコールコポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選択される。適切な市販の材料の例としては、ZEONEX(商標)COP5000単層;TEKNIFLEX(商標)CPTA(COC/LDPC/PCTFEラミネート);TEKNI-PLEX(商標)PTA260(PE/PCTFEラミネート);TEKNI-PLEX(商標)PTA360(PE/PCTFEラミネート);TEKNI-PLEX(商標)PTA2200(PE/PCTFEラミネート);TEKNI-PLEX(商標)PTOA2200(PE/EVOH/PCTFEラミネート);HUHTAMAKI(商標)602204276(PET/Al/PPラミネート);HUHTAMAKI(商標)10224247983(PET-AlOx/PET/PPラミネート);BAREX(商標)またはTPEフィルム層のいずれかでラミネートされたPET-SiOxフィルム層から形成されたSPAETER(商標)フィルムが挙げられる。
【0055】
本発明の例示的実施形態を論じ、本発明の範囲内のいくつかの可能な変形形態について言及してきた。本発明におけるこれらおよび他の変形形態および修正形態は、本発明の範囲から逸脱することなく当業者には明らかであり、本発明は、本明細書に記載する例示的実施形態に限定されないことを理解されたい。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されるべきである。
【符号の説明】
【0056】
1 デバイス
2 用量アセンブリ
3 潰れ可能なリザーバ
31a 潰れ可能なポーチ
32 支持体
33 通路
4 注射針
41 ルーメン
5 コネクタ
6 ハウジング
7 セプタム
8 アクチュエータ要素
80 マウント
81 アクチュエータ要素の近位端部分
82 アクチュエータ要素の遠位端部分
83、84 アクチュエータ要素の横方向側部分
85 長いアーム
86 短いアーム
87 延出部
88 係合ピン
9、10 アクチュエータ要素の横方向外面
11、12 アクチュエータ要素の横方向内面
13 リング
14 薬液
15 静止面
20 キャリッジ
21 キャリッジの近位端部分
22 キャリッジの遠位端部分
23、24 キャリッジの2つの対向する横方向部分
25 キャリッジの延出部
26 キャリッジ構造
27、28 キャリッジ構造の外側移動面
29 キャリッジ構造のガイド通路
L 長手方向軸
A 力
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E